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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】診断のためのマイクロベシクルの捕捉
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20241224BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241224BHJP
   C08F 8/42 20060101ALI20241224BHJP
   C08F 14/06 20060101ALI20241224BHJP
   C08G 63/91 20060101ALI20241224BHJP
   C08F 12/08 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
G01N33/543 525W
G01N33/543 525U
G01N33/53 D
G01N33/53 V
C08F8/42
C08F14/06
C08G63/91
C08F12/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021556585
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 FR2020050593
(87)【国際公開番号】W WO2020188223
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】1902814
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514058706
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ボルドー
(73)【特許権者】
【識別番号】512082439
【氏名又は名称】アンスティテュ ポリテクニック ドゥ ボルドー
【氏名又は名称原語表記】Institut Polytechnique De Bordeaux
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】518345767
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・ウニヴェルシテール・ドゥ・ボルドー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・プラウィンスキー
(72)【発明者】
【氏名】マリー-クリスティーヌ・デュリュー
(72)【発明者】
【氏名】マリオン・ペティテ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー・ラヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】マリー・クリスティーヌ・エルテル
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァン・ニラテ
(72)【発明者】
【氏名】クリステル・シャンソー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・リガーロー
(72)【発明者】
【氏名】ロール・アレクサンドル
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-510280(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103333878(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107754014(CN,A)
【文献】米国特許第05258041(US,A)
【文献】特開2006-129866(JP,A)
【文献】特表2001-518604(JP,A)
【文献】国際公開第2015/006503(WO,A1)
【文献】Hara, M., Yamagata, K., Tomino, Y. et al.,Urinary podocalyxin is an early marker for podocyte injury in patients with diabetes: establishment of a highly sensitive ELISA to detect urinary podocalyxin.,Diabetologia,2012年08月02日,55,,2913-2919,https://doi.org/10.1007/s00125-012-2661-7
【文献】Anne Stuendl, Marcel Kunadt, Niels Kruse, Claudia Bartels, Wiebke Moebius, Karin M. Danzer, Brit Mollenhauer, Anja Schneider,,Induction of α-synuclein aggregate formation by CSF exosomes from patients with Parkinson’s disease and dementia with Lewy bodies,,Brain,,2016年02月,Volume 139, Issue 2,,Pages 481-494,,https://doi.org/10.1093/brain/awv346
【文献】Kathryna Fontana Rodrigues, Nathalia Teixeira Pietrani, Adriana Aparecida Bosco, Ana Paula Fernandes, Fernanda Magalhaes Freire Campos, Karina Braga Gomes Borges,Circulating microparticles are associated with type 2 diabetes mellitus and correlate with fasting glucose levels,Diabetol Metab Syndr,2018年04月12日,10(Suppl 1):27:,A60,https://doi.org/10.1186/s13098-018-0315-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)又は(II)の化合物が表面上に共有結合によってグラフトされている、固体支持体:
【化1】
式中、
- M+iは金属イオンを表し、iは1、2、又は3であり;
- Lは交換可能なリガンドを表し;
- Xは-(CH2)m-NH2基又は-CH2-NHC(O)-R-NH2基を表し、ここで、Rは、置換型又は非置換型の直鎖状又は分岐状のC2~C10、特にC5~C10のアルキル基であり;
- m=1~12であり;
- n=1、2、又は3であり;
- YはH又は(CH2)p-NH2を表し、ここで、p=0~12である。
【請求項2】
ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、又はポリスチレン(PS)で作製された固体支持体であることを特徴とする、請求項1に記載の固体支持体。
【請求項3】
NHS官能基を用いてプレ官能基化されたPET、グルタルアルデヒドを用いて官能基化されたPVC、又はN-オキシスクシンイミド官能基を用いて官能基化されたPSの固体支持体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の固体支持体。
【請求項4】
MがZn、Cu、Mn、Co、Ni、及びFeから、特にZn及びCuから選択され、より特にMがZnであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の固体支持体。
【請求項5】
以下のことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の固体支持体:
- Xは-(CH2)m-NH2、m=1、n=1を表し、YはHを表す;又は
- Xは-(CH2)m-NH2、m=1、n=2を表し、YはHを表す;又は
- Xは-CH2-NHC(O)-R-NH2を表し、RはC5H10を表し、n=1若しくは2であり、YはHを表す。
【請求項6】
グラフトされた化合物が式(I)の化合物であり、特に以下から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の固体支持体:
【化2A】
【化2B】
【請求項7】
対象からの生体液の試料に存在するマイクロベシクルを捕捉するための方法であって、請求項1から6のいずれか一項に記載の支持体と前記試料を接触させる工程を含む、方法。
【請求項8】
対象からの生体液の試料に存在するマイクロベシクルの特徴づけのための方法であって、請求項1から6のいずれか一項に記載の支持体と前記試料を接触させた後、前記マイクロベシクルを捕捉する工程、及び前記捕捉されたマイクロベシクルを特徴づける工程を含む、方法。
【請求項9】
疾患の診断のための方法であって、請求項1から6のいずれか一項に記載の支持体上に対象からの生体液の試料に存在するマイクロベシクルを捕捉する工程、及び前記疾患に関連するマーカーの存在若しくは非存在の検出、又は前記疾患に特有の前記マーカーのレベルの測定を含む、方法。
【請求項10】
腎症の診断のために、支持体上に捕捉されたマイクロベシクルからのポドカリキシンの存在若しくは非存在を検出する、又はポドカリキシンのレベルを測定する工程;又は
パーキンソン病の診断のために、支持体上に捕捉されたマイクロベシクルからのα-シヌクレインの存在若しくは非存在を検出する、又はα-シヌクレインのレベルを測定する工程;又は
糖尿病性腎症の診断のために、支持体上に捕捉されたマイクロベシクルからのCD41の存在若しくは非存在を検出する、又はCD41のレベルを測定する工程
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか一項に記載の支持体;及び
疾患に関連するマーカー、特にポドカリキシン、α-シヌクレイン、又はCD41を検出又は定量化するための手段
を含む、キット。
【請求項12】
標準化マーカー、特にアネキシンA5又はβ-アクチンを検出又は定量化するための手段を更に含む、請求項11に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患の診断のための官能基化支持体及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞マイクロベシクルは、ストレス後の活性化時の細胞の出芽により細胞外マトリックスへ放出される小胞である。生体液(血液、尿、涙等)へ放出されるマイクロベシクルは、親細胞の成分(脂質、タンパク質、及びRNA又はミトコンドリアDNA)を含有し、及び/又は表面上に担持し、したがって、組織の病的状態の初期マーカーとみなすことができる。
【0003】
国際出願第PCT/FR2012/050610号に記載された方法は、ホスファチジルセリン陽性マイクロベシクルを捕捉するための合成リガンドを用いる。
【0004】
本発明は、国際出願第PCT/FR2012/050610号に提示された捕捉の手段及び方法の改善に関する。本発明は又、以下に提示された実施形態による官能基化支持体を用いる、関心対象となる疾患のバイオマーカーの同定に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際出願第PCT/FR2012/050610号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、細胞マイクロベシクルの捕捉、検出、及び/又は特徴づけに有用な官能基化固体支持体に関する。本発明による支持体は又、診断及び/又は予後診断の方法を実行するために、特に疾患の早期診断のために、医学分野においても有用である。
【0007】
本発明による支持体は、下記のような式(I)又は(II)の化合物を用いて官能基化された、特にポリマー、金属、又はセラミックの、固体支持体である。特定の実施形態によれば、支持体は、下記のような式(I)又は(II)の化合物を用いて官能基化された、ポリマー支持体、特にポリ(塩化ビニル)(又はPVC)、ポリ(エチレンテレフタレート)(又はPET)、又はポリスチレン(又はPS)で作製された支持体である。
【0008】
本発明は又、本発明者らによって同定された特異的なマーカーの存在又は非存在の検出を含む、疾患の診断のための方法に関する。この検出は、特に、本出願に提示された実施形態によりマイクロベシクルを捕捉した後に、実行され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】PETの官能基化における工程を示す図である。
図2】PVCの官能基化における工程を示す図である。
図3】PVCの表面を、それの錯体1での官能基化における各工程において、概略的に示す図である。(A)工程1: 未処理PVC。(B)工程2: エチレンジアミン(EDA)の付加。(C)工程3: グルタルアルデヒド(Glu.)の付加。(D)工程4: 錯体1(C1)の付加。
図4】「DNA-BIND(登録商標)」の表面を、それの錯体1での官能基化における各工程において、概略的に示す図である。(A)工程1: 未処理「DNA-BIND(登録商標)」。(B)工程2: 錯体1(C1)の付加。
図5】健康なドナー及び糖尿病患者の尿に由来するマイクロベシクルにおけるポドカリキシン/β-アクチン比のグラフ表示を示す図である。各点は、1人の患者について得られた比を表す。数学的平均値は、各患者群より上に示されている。統計的データをTukeyのANOVA検定で解析した。*: p<0.05;**: p<0.01、及び***: p<0.001。レジェンド: n=患者の数、健康: 健康なドナー;Normo: 正常アルブミン尿患者、Micro: 微量アルブミン尿患者;Macro: 顕性アルブミン尿患者。
図6】健康なドナー及び糖尿病患者の尿に由来するマイクロベシクルにおけるポドカリキシン/アネキシンA5比のグラフ表示を示す図である。各点は、1人の患者について得られた比を表す。数学的平均値は、各患者群より上に示されている。統計的データをTukeyのANOVA検定で解析した。*: p<0.05;**: p<0.01、及び***: p<0.001、及び****: p<0.0001。レジェンド: n=患者の数、健康: 健康なドナー;Normo: 正常アルブミン尿患者、Micro: 微量アルブミン尿患者;Macro: 顕性アルブミン尿患者。
図7】糖尿病患者の血漿に由来するマイクロベシクルにおける、CD41血小板マーカーの検出及びCD41/アネキシンA5比のグラフ表示を示す図である。A.糖尿病患者2人:正常アルブミン尿(Normo) 1人及び顕性アルブミン尿(Macro) 1人の血漿に由来するマイクロベシクルのタンパク質の電気泳動。CD41並びにβ-アクチン及びアネキシンA5参照タンパク質に対する抗体を用いたウェスタンブロットの顕色。B. ImageJソフトウェアを用いた、CD41及びアネキシンA5に関連したバンドからのシグナルの定量化、及びCD41/アネキシンA5比のグラフ表示。
図8】培養HUVEC細胞から単離されたマイクロベシクルにおけるuPAの酵素活性の検出を示す図である。分光光度法によりmOD/分で測定された初速度の平均値のグラフ表示。説明: すすぎなしの条件の対照=100%;錯体なしのすすぎありの条件=マテリアルなし;錯体を有するすすぎありの条件=マテリアルあり。
図9】ヒト尿から単離され、かつマテリアルにより捕捉されたマイクロベシクルにおけるポドカリキシンの免疫学的検出を示す図である。以下の異なる条件における450nmでの分光光度法により得られた吸光度のグラフ表示: 1 - マイクロベシクル+TMB、2 - 一次抗体+TMB、3 - 二次抗体+TMB、4 - 一次抗体+二次抗体+TMB、5 - 一次抗体+二次抗体+TMB。
図10】マテリアルにより捕捉されたヒト尿由来のマイクロベシクルの濃度の関数としてのポドカリキシンの免疫学的検出を示す図である。ng/μLで表されたマイクロベシクルの濃度の関数としての450nmでの分光光度法により得られた吸光度のグラフ表示。直線の方程式及びR2は、Excelソフトウェアを用いて計算されている。
図11】ヒト血漿から単離され、かつマテリアルにより捕捉されたマイクロベシクルにおけるCD41の免疫学的検出を示す図である。正常アルブミン尿の糖尿病患者P1及びP2のマイクロベシクルにおけるCD41の存在について検出されたシグナルのグラフ表示。対照条件(Ctl)は、試薬TMBの存在下でマイクロベシクルなしのウェルにおいて記録されたバックグラウンドノイズを表す。
図12】マテリアルによるマイクロベシクルの捕捉後のヒト血漿中のCD41の免疫学的検出を示す図である。正常アルブミン尿の糖尿病患者P3、P4、及びP5のマイクロベシクルにおけるCD41の存在について検出されたシグナルのグラフ表示。シグナルは、バックグラウンドノイズ(すなわち、一次抗体を含まないことを除いて、全ての試薬の存在下)について得られたシグナルを差し引いた後に計算されている。
図13】HUVEC細胞の細胞活性化に由来するマイクロベシクルの、マテリアルPVC+C1による捕捉のCryoMEB分析を示す図である。(A)スケールバー10μm。(B)スケールバー2μm。(C)スケールバー500nm。
図14】HUVEC細胞の細胞活性化に由来するマイクロベシクルの、マテリアル「DNA-BIND(登録商標)」+C1による捕捉のCryoMEB分析を示す図である。(A)スケールバー500nm。(B)スケールバー500nm及びマイクロベシクルの直径の測定。
図15】健康な対象からのヒト尿試料に由来するマイクロベシクルの、マテリアル「DNA-BIND(登録商標)」+C1による捕捉のCryoMEB分析を示す図である。(A)スケールバー5μm。(B)スケールバー500nm。(C)スケールバー500nm、及びマイクロベシクルの直径の測定。
図16】捕捉なし(対照、Ctrl)の、及びキット上での37℃、1時間の捕捉後(キット)の、二連での、2つの用量(5μg及び10μg)でのHUVEC細胞モデルのマイクロベシクル上のマーカー、アネキシンA5の検出を示す図である。
図17】捕捉なし(対照、Ctrl)の、及びキットによる4℃、一晩の捕捉後(キット)の、2人の健康な対象からの尿試料のマイクロベシクル上のマーカー、アネキシンA5の検出を示す図である。
図18】捕捉なし(対照、Ctrl)の、及びキットによる4℃、一晩の捕捉後(キット)の、健康な対象からの、及び微量アルブミン尿ステージでの腎症を有する糖尿病患者(Micro)からの尿試料のマイクロベシクル上の病理学的バイオマーカー、ポドカリキシン及びマイクロベシクル参照マーカー、アネキシンA5の検出を示す図である。
図19】捕捉なし(対照、Ctrl)の、及びキットによる4℃、一晩の捕捉後(キット)の、健康な対象からの、及び微量アルブミン尿ステージでの腎症を有する糖尿病患者(Micro)からの尿試料のマイクロベシクルに対応するポドカリキシン/アネキシンA5比の比較を示す図である。
図20】捕捉なし(対照、Ctrl)の、及びキットによる4℃、一晩の捕捉後(キット)の、健康な対象からの、並びにNormo、Micro、及びMacroステージでの腎症を有する糖尿病患者からの尿試料のマイクロベシクルに対応するポドカリキシン/アネキシンA5比の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の態様によれば、本発明は、以下の式(I)又は(II)の化合物が表面上にグラフトされていることを特徴とする、固体支持体に関する:
【0011】
【化1】
【0012】
式中、
- M+iは金属イオンを表し、iは1、2、又は3であり;
- Lは交換可能なリガンドを表し;
- Xは-(CH2)m-NH2基又は-CH2-NHC(O)-R-NH2基を表し、ここで、Rは、置換型又は非置換型の直鎖状又は分岐状のC2~C10、特にC5~C10のアルキル基であり;
- m=1~12であり;
- n=1、2、又は3であり;
- YはH又は(CH2)p-NH2を表し、ここで、p=0~12である。
【0013】
本発明によれば、式(I)又は(II)の化合物は、固体支持体上に共有結合によってグラフトされる。国際出願第PCT/FR2012/050610号に記載された方法は、支持体の表面への錯体の共有結合性グラフティングを教示していない。むしろ、それは、支持体上のポリグルタルアルデヒドの非共有結合性吸着、及びその後、前記錯体のNH2官能基を介したポリグルタルアルデヒドにおける錯体の固定化を記載する。有利には、本発明の方法のおかげで、錯体は、ホスファチジルセリンにとってより接近しやすい。更に、本発明による方法は、官能基化のより良い再現性を与える。したがって、本発明による方法は、共有結合によって固定化された錯体の密度の正確な制御を可能にし、特に、以下の利点を有する:
- マイクロベシクルに存在するホスファチジルセリンとのより良い相互作用のための錯体の提示のより良い制御
- 錯体のグラフティングの密度のより良い制御
- 媒体中で脱離は起こり得ない
- マテリアル間及びバッチ間での官能基化のより良い再現性。
【0014】
式(I)又は(II)の化合物は、陽イオン性であり、それらの対イオンは、例えば、陰イオンのトシル酸、硝酸、硫酸、スルホン酸、チオスルホン酸、ハライド、ヘキサフルオロリン酸、テトラフェニルホウ酸、テトラフルオロホウ酸、過塩素酸等、特に、過塩素酸、硝酸、硫酸、ハライド、及びカルボン酸の陰イオンから選択され得る。
【0015】
特定の実施形態によれば、MはZn、Cu、Mn、Co、Ni、及びFeから選択され、Zn又はCuが好ましく、より特にZnが好ましい。
【0016】
特定の実施形態によれば、YはHを表す。
【0017】
他の特定の実施形態によれば:
- Xは-(CH2)m-NH2、m=1、n=1を表し、YはHを表す;又は
- Xは-(CH2)m-NH2、m=1、n=2を表し、YはHを表す;又は
- Xは-CH2-NHC(O)-R-NH2を表し、RはC5H10を表し、n=1若しくは2であり、YはHを表す。
【0018】
特定の実施形態によれば、グラフトされる化合物は、式(I)の化合物である。
【0019】
別の特定の実施形態によれば、式(I)の化合物は以下から選択される:
【0020】
【化2A】
【0021】
【化2B】
【0022】
本出願が又、過塩素酸イオンとは異なり、特に、陰イオンのトシル酸、硝酸、硫酸、スルホン酸、チオ硫酸、ハライド、ヘキサフルオロリン酸、テトラフェニルホウ酸、及びテトラフルオロホウ酸から、より特に、硝酸、硫酸、ハライド、及びカルボン酸の陰イオンから選択される対イオンと会合した式(Ia)、(Ib)、(Ic)、及び(Id)の化合物を記載していることは理解されるべきである。更に、対イオンを生成するために用いられる塩は、特に、亜鉛塩、銅塩、マグネシウム塩、コバルト塩、ニッケル塩、又は鉄塩、より特に、亜鉛塩、特に過塩素酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、ハロゲン化亜鉛、若しくは炭酸亜鉛であり得る。
【0023】
特定の実施形態によれば、化合物は以下の式の化合物である:
【0024】
【化3】
【0025】
対イオンが、過塩素酸イオンとは異なり、特に、陰イオンのトシル酸、硝酸、硫酸、スルホン酸、チオ硫酸、ハライド、ヘキサフルオロリン酸、テトラフェニルホウ酸、及びテトラフルオロホウ酸から、より特に、硝酸、硫酸、ハライド、及びカルボン酸の陰イオンから選択され得ることは理解されるはずである。特定の実施形態によれば、対イオンは過塩素酸陰イオンである。更に、対イオンを生成するために用いられる塩は、特に、亜鉛塩、銅塩、マグネシウム塩、コバルト塩、ニッケル塩、又は鉄塩、より特に、亜鉛塩、特に過塩素酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、ハロゲン化亜鉛、若しくは炭酸亜鉛であり得る。
【0026】
式(I)又は(II)の化合物は、国際出願第PCT/FR2012/050610号に提示された実施形態に従って調製され得る。
【0027】
本発明の関連において用いられる固体支持体は、特に、マイクロタイタープレート、シート、コーン、チューブ、ウェル、ビーズ、粒子、条片、フィルム、糸、ネジ、又は針であり得る。一般的に、本発明による固体支持体は、可変性の形態及び多孔度の任意の型のマテリアルを作製するために用いられ得る。
【0028】
特定の実施形態において、固体支持体は、式(I)又は(II)の化合物を用いて官能基化されたポリマー、金属、又はセラミックの支持体である。特定の実施形態によれば、支持体はポリマー支持体、特に、ポリ(塩化ビニル)(又はPVC)、ポリ(エチレンテレフタレート)(又はPET)、又はポリスチレン(又はPS)で作製された支持体である。
【0029】
本発明の関連において、「その表面にグラフトされた」とは、式(I)又は(II)の化合物の支持体上へのグラフティングに関して、支持体と式(I)又は(II)の化合物との間の共有結合を意味する。下で記載されているように、式(I)又は(II)の化合物は、直接的又は間接的に支持体と共有結合によって結合し得る。間接的共有結合の場合、式(I)又は(II)の化合物は、プレ官能基化剤により支持体の表面に供給された反応性官能基と共有結合によって結合し、プレ官能基化剤も又、支持体と共有結合によって結合している。
【0030】
固体支持体は、式(I)又は(II)の化合物をグラフトする前に前処理され得る。前処理は、特に、支持体の表面上の望ましくない官能基、特にエステル官能基を破壊して、望ましい官能基の密度を増加させること、及び/又は支持体をより求電子性にすることにより支持体をプレ官能基化することという目的をもち得る。本発明の関連において、支持体がプレ官能基化される場合、前記プレ官能基化は、プレ官能基化剤を用いて共有結合によって実行される。特定の実施形態によれば、用いられる支持体はプレ官能基化されている。したがって、支持体は、例えば、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、又はN-オキシスクシンイミド(NOS)を用いてプレ官能基化され得る。支持体が特にPETで作製されている代表的な実施形態によれば、前処理は、特に支持体の表面上に存在するエステル官能基の加水分解、特に支持体の、特に過マンガン酸カリウムを用いた、酸化による、COOH官能基の密度の増加、並びに電子求引基及びNHS基等の良い脱離基での修飾によるこの表面の求電子性の増加を含み得る。特定の実施形態によれば、用いられるPET(酸化PET)は、酸化トルイジンブルー(TBO)を用いて測定された場合、1×1012個のCOOH/cm2から1×1018個のCOOH/cm2の間、特に1×1013から1×1017の間、より特に1.2×1015から1.2×1017の間で構成される、それの表面上のCOOH官能基の密度を含む。一変形によれば、支持体は、PETで作製され、プレ官能基化前ではそれの表面上に5×1015個から5×1016個のCOOH官能基/cm2の間、より特には、特にNHS基を用いるそのプレ官能基化前に、1.26×1016±10%個のCOOH官能基/cm2を含む。
【0031】
したがって、一実施形態によれば、支持体はPET、特に、とりわけNHS官能基を用いた、プレ官能基化PETで作製された支持体である。特定の実施形態によれば、プレ官能基化PETは、1×1013個のCOOH/cm2から1×1018個のCOOH/cm2の間、特に1×1014個から1×1017個の間、より特に8.1×1014個から8.2×1016個の間で構成される、それの表面上のCOOH官能基の濃度を含む。一変形によれば、プレ官能基化PETで作製された支持体は、それの表面上に5×1015個から1×1016個のCOOH官能基/cm2の間、より特に8.18×1015±10%個のCOOH官能基/cm2を含む。
【0032】
別の特定の実施形態によれば、支持体は、PVC、特に、とりわけグルタルアルデヒドを用いた、プレ官能基化PVCで作製されている。
【0033】
特定の実施形態によれば、固体支持体は、PS、特に、とりわけN-オキシスクシンイミド(NOS)官能基を用いた、プレ官能基化PSで作製された支持体である。特に、このようにプレ官能基化されたPSで作製された支持体のNOS官能基の密度は、1013個から1016個のNOS/cm2の間、特に、1014個から1015個のNOS/cm2の間で構成され得、密度は、より特には、約68×1014個のNOS/cm2である。
【0034】
式(I)又は(II)の化合物は、グラフトされる式(I)又は(II)の化合物を含む溶液中へ固体支持体を導入することにより、任意でプレ官能基化された、前記支持体上に共有結合によって固定化される。支持体がプレ官能基化されている実施形態によれば、プレ官能基化剤は、支持体と共有結合によって結合している。特定の実施形態によれば、溶液は、10-5Mから10-2Mの間、特に10-4Mから5×10-2Mの間、より特に、5×10-4Mから5×10-3Mの間の式(I)又は(II)の化合物を含む。式(I)又は(II)の化合物は、特に、溶液中に約10-3Mの濃度であり得る。固定化時間は大きく異なり得る。しかしながら、特定の実施形態によれば、支持体は、1時間から72時間の間、特に5時間から48時間の間、より特に10時間から24時間の間、更により特に約16時間、式(I)又は(II)の化合物と接触させられる。
【0035】
本発明は更に、式(I)又は(II)の化合物が表面上にグラフトされている支持体に関し、前記支持体は、細胞マイクロベシクルの検出又は特徴づけのために意図されたキットに含まれる。そのようなキットは、有利には、関心対象となる疾患の診断のために、特に医学分析検査室において、用いられ得る。本発明によるキットは、本発明による支持体を含み、任意で、本発明による方法を実行するために使用可能な任意の手段を含み得る。したがって、キットは特に、マイクロベシクルの予備的精製が有用又は必要であると判明しているならば、その予備的精製を実行するための手段を含み得る。キットは又、本発明による方法の遂行中に使用可能なバッファー、特に、マイクロベシクルを懸濁するためのバッファー、洗浄バッファー、又は保存のためのバッファーも含み得る。マイクロベシクル上又は内に存在し得る1つ又は複数のマーカーを検出又は定量化するための手段、特に、タンパク質マーカー又は核酸を検出又は定量化するための手段が、キットに含まれ得る。この目的を達成するために、本発明によるキットは特に、以下を含み得る:
- 上記のような支持体、
- 1つ又は複数のマーカーを検出又は定量化するための手段、及び
- 任意で、本発明による方法を実行するために使用可能なバッファー。
【0036】
更に、キットは、標準化マーカー、特にアネキシンA5及びβ-アクチンから選択される標準化マーカーを検出又は定量化するための手段も含み得る。
【0037】
したがって、特定の実施形態によれば、本発明によるキットは、以下を含み得る:
- 上記のような支持体、
- 1つ又は複数のマーカーを検出又は定量化するための手段
- 1つ又は複数の標準化マーカーを検出又は定量化するための手段、及び
- 任意で、本発明による方法を実行するために使用可能なバッファー。
【0038】
別の特定の実施形態によれば、本発明は、以下を含むキットに関する:
- 上記のような支持体、
- ポドカリキシンを検出又は定量化するための手段
- 標準化マーカー、特にアネキシンA5及びβ-アクチンから選択される標準化マーカー、より特にアネキシンA5を検出又は定量化するための手段、並びに
- 任意で、本発明による方法を実行するために使用可能なバッファー。
【0039】
別の特定の実施形態によれば、本発明は、以下を含むキットに関する:
- 上記のような支持体、
- α-シヌクレインを検出又は定量化するための手段
- 標準化マーカー、特にアネキシンA5及びβ-アクチンから選択される標準化マーカー、より特にアネキシンA5を検出又は定量化するための手段、及び
- 任意で、本発明による方法を実行するために使用可能なバッファー。
【0040】
別の特定の実施形態によれば、本発明は、以下を含むキットに関する:
- 上記のような支持体、
- CD41を検出又は定量化するための手段
- 標準化マーカー、特にアネキシンA5及びβ-アクチンから選択される標準化マーカー、より特にアネキシンA5を検出又は定量化するための手段、及び
- 任意で、本発明による方法を実行するために使用可能なバッファー。
「検出又は定量化するための手段」とは、マーカーを検出又は定量化するための当業者により知られた任意の手段を意味する。当然ながら、用いられる手段は、マーカーの性質に依存し、特に、タンパク質マーカーは免疫学的技術(特に、ELISA及びウェスタンブロット)により検出され、核酸マーカーは、特に、定性的又は定量的であり得る、特異的な増幅技術(特にPCR/qPCR若しくはRT-PCR/RT-qPCR、又はシーケンシング)を用いて検出可能である。他の手段には、検出されるバイオマーカーの性質に依存して、発色アッセイが挙げられる。
【0041】
更に、本発明によるキットは、そのキットを用いて本発明による方法を実行するための指示をユーザーに提供するリーフレットを含み得る。
【0042】
したがって、本発明は又、対象からの生体液の試料に存在するマイクロベシクルを捕捉するための本発明による支持体の使用に関する。本発明者らによって提示されたデータは、本出願において提示された方法を用いて、様々な型の生物学的試料、特に尿又は血液、より特に血漿におけるバイオマーカーの検出を実施することが可能であることを示している。したがって、本発明による方法は、生体液の試料の広範な一団においてマイクロベシクルの検出を提供することができる。生体液は、特に、血液、血清、血漿、唾液、涙、尿、リンパ液、脳脊髄液、又は精液の試料であり得る。対象は、任意の年齢、性別、又は状態の哺乳動物、特に人間である。特定の実施形態によれば、対象は、特に予め実行されたバイオアッセイ又は医師による相談に基づいて、病的状態の疑いがある個体である。別の実施形態において、対象はバイオアッセイも事前の医師による相談も受けていない。
【0043】
したがって、本発明は、マイクロベシクルを含有し得る生体液の試料を、本発明による支持体と接触させる工程を含む、マイクロベシクルを捕捉するための方法に関する。その後、このように捕捉されたマイクロベシクルが特徴づけられ得る。一実施形態によれば、本発明による支持体での捕捉前に、マイクロベシクルは、まず、当業者により知られた手順により生体液の試料から精製又は単離される。しかしながら、以下に提示された実験データは、マイクロベシクルが、有利なことには、本発明による支持体を用いて生体液の試料において直接、捕捉され得ることを示している。したがって、特定の実施形態において、マイクロベシクルは、生体液の試料から直接的に、特に、血液、血清、血漿、唾液、涙液、尿、リンパ液、脳脊髄液、又は精液、より特に血漿又は尿から直接的に、捕捉される。
【0044】
特定の実施形態によれば、捕捉されたマイクロベシクルの特徴づけは、疾患の診断、疾患を発症するリスクの評価、疾患の予後診断、疾患の鑑別診断、疾患の進行のモニタリング、疾患の治療的処置の有効性のモニタリングを可能にする。上記で述べられているように、細胞マイクロベシクルの組成、特に脂質及びタンパク質組成、並びに細胞マイクロベシクルの内容物(例えば、タンパク質及び遺伝子材料、特にRNA又はミトコンドリアDNA)は、それらの起源である細胞の型及びその細胞の状態に依存して変動し得る。したがって、マイクロベシクルは、それらの起源である細胞の状態の検出を可能にし得、それゆえに、病的状態の早期検出のための最適なツールを意味し得る。したがって、一態様によれば、本発明は、様々な疾患、特に、血栓性、炎症性、及び/若しくは代謝性の疾患、又は心血管性若しくは神経血管性疾患若しくは事故、又は糖尿病、癌、アルツハイマー病、パーキンソン病、若しくは任意の他の疾患等の疾患の、診断、鑑別診断、リスクの評価、予後診断、進行のモニタリング、又は治療的処置の有効性のモニタリングのための方法における、本発明による支持体の使用に関する。
【0045】
したがって、本発明は又、様々な疾患、特に、血栓性、炎症性、及び/若しくは代謝性の疾患、又は心血管性若しくは神経血管性疾患若しくは事故、又は糖尿病、癌、アルツハイマー病、パーキンソン病、若しくは任意の他の疾患等の疾患の、診断、鑑別診断、リスク評価、予後診断、進行のモニタリング、又は治療的処置の有効性のモニタリングの方法に関する。したがって、本発明者らは、糖尿病性腎症、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性網膜症、多発性硬化症、動脈瘤の破裂後の血管痙攣、パーキンソン病、又はそれらの派生状態に言及し得る。特定の目的によっては、試験された試料の特徴づけの結果は、対照生体液の試料に実行された特徴づけの結果に対して比較される。
【0046】
有利には、対照生体液は、アッセイされるものと同一の生体液であるが、健康であるとみなされる対象から生じた生体液である。代替として、対照生体液は、アッセイされる生体液と同じ個体からであるが、以前の試料採取に由来する。この代替による対照は、疾患の進行又はその処置のモニタリングを可能にし得る。
【0047】
マイクロベシクルの特徴づけは、当業者により知られた任意の手段により実行され得、上記で言及されているように、特徴づけマーカーの性質が考慮される。したがって、タンパク質マーカーの場合、前記タンパク質マーカーの特異的な抗体を用いる、免疫学的技術が用いられ得る。本発明者らは、特にELISA又はウェスタンブロット技術を挙げたい。核酸、特にミトコンドリアDNA又はRNA(特にメッセンジャーRNA又はマイクロRNA)の検出及び特徴づけは、PCR/qPCR、RT-PCR/RT-qPCR、及びシーケンシング等の特定の核酸の検出の方法の使用を含む。発色アッセイ等の他のアッセイは、検出されるべきバイオマーカーの性質に依存して用いられ得る。有利には、マイクロベシクル上又は内に存在するマーカーの定量化に基づいて標準化が実行され得る。標準化マーカーは、特に、アネキシンA5及びβ-アクチンから選択され得る。例えば、下記に提示された実験データは、ポドカリキシン、α-シヌクレイン、及びCD41のマーカーが、特定の疾患の診断に用いられ得ることを示している。特定の実施形態によれば、これらのマーカーの定量化は、アネキシンA5及びβ-アクチン等の標準化マーカーの並行定量化による相対的基準で実行される。したがって、特定の実施形態によれば、本発明による方法は、捕捉されたマイクロベシクル内又は上に存在するバイオマーカーの量の検出、及び標準化マーカーの量の検出を含む。その後、標準化された量は、様々な疾患の、診断、鑑別診断を決定するために、リスクを評価するために、予後診断、進行のモニタリング、又は治療的処置の有効性のモニタリングのために比較される。
【0048】
第2の態様によれば、本発明は、特定の疾患の存在又は非存在の検出を可能にするバイオマーカーの使用に関する。特徴づけバイオマーカーは、関心対象となる疾患との関連において、選択される。
【0049】
一実施形態によれば、本発明は、対象における腎症の診断、特に早期診断の方法であって、前記対象からの生体液の試料における、ポドカリキシンの存在若しくは非存在の検出、又はポドカリキシンのレベルの測定を含む、方法に関する。特定の実施形態によれば、方法は、ポドカリキシンの標準化マーカー(特に、アネキシンA5又はβ-アクチン)に対する比の測定を含む。より特に、本発明による方法は、特に、本発明による支持体の使用を含む上記の実施形態により、マーカー、ポドカリキシンを含む細胞マイクロベシクルの存在又は非存在の検出を含み得る。本発明は又、対象からの生体液の試料におけるポドカリキシン、特に上記で開示された実施形態により特徴づけられた細胞マイクロベシクル内に含まれるポドカリキシンの、存在若しくは非存在の検出、又はポドカリキシンのレベルの測定を含む、腎症の発症のリスクの評価、腎症の予後診断、腎症の進行のモニタリング、又は腎症の治療的処置の有効性のモニタリングに関する。特定の実施形態によれば、本発明による方法は、患者からの生体液の試料、より特に尿試料に由来するマイクロベシクルにおいて腎障害合併症を検出するための、ポドカリキシン/アネキシンA5比、又はポドカリキシン/β-アクチン比、より特にポドカリキシン/アネキシンA5比を定量化する工程を含む。この比が、健康な対象において計算された比より統計学的に高い場合、腎症を示す。更に、この比が、同じ患者について過去に計算された比に対して増加又は減少している場合には、それは、それぞれ、腎症の進行又は寛解の証拠である。
【0050】
更に、本発明は、対象におけるパーキンソン病の診断の方法であって、前記対象からの生体液の試料におけるα-シヌクレインの存在若しくは非存在の検出、又はα-シヌクレインのレベルの測定を含む、方法に関する。特定の実施形態によれば、方法は、α-シヌクレインの標準化マーカー(特に、アネキシンA5又はβ-アクチン)に対する比の測定を含む。より特に、本発明による方法は、特に、本発明による支持体の使用を含む上記の実施形態により、マーカー、α-シヌクレインを含む細胞マイクロベシクルの存在又は非存在の検出を含み得る。本発明は又、対象からの生体液の試料におけるα-シヌクレイン、特に上記で開示された実施形態により特徴づけられた細胞マイクロベシクル内又は細胞マイクロベシクルの膜内に含まれるα-シヌクレインの、存在若しくは非存在の検出、又はα-シヌクレインのレベルの測定を含む、パーキンソン病の発症のリスクの評価、パーキンソン病の予後診断、パーキンソン病の進行のモニタリング、又はパーキンソン病の治療的処置の有効性のモニタリングに関する。特定の実施形態によれば、本発明による方法は、患者からの生体液の試料に由来するマイクロベシクルにおいてこれらの神経障害(例えば、パーキンソン病)を検出するための、α-シヌクレイン/アネキシンA5比、又はα-シヌクレイン/β-アクチン比、より特にα-シヌクレイン/アネキシンA5比を定量化する工程を含む。この比は、健康な対象について計算された比より統計学的に高い場合、それはパーキンソン病を示す。更に、この比が、同じ患者について過去に計算された比に対して増加又は減少している場合には、それは、それぞれ、パーキンソン病の進行又は寛解の証拠である。本発明は更に、対象における糖尿病性腎症の診断、特に早期診断の方法に関する。特定の実施形態によれば、本発明による方法は、前記対象からの生体液の試料、特に尿又は血漿の試料、より特に血漿試料における血小板マーカーCD41の存在若しくは非存在の検出、又はCD41のレベルの測定を含む。特定の実施形態によれば、方法は、CD41の標準化マーカー(特に、アネキシンA5又はβ-アクチン)に対する比の測定を含む。より特に、本発明による方法は、特に、本発明による支持体の使用を含む上記の実施形態により、マーカーCD41を含む細胞マイクロベシクルの存在又は非存在の検出を含み得る。特定の実施形態によれば、本発明による方法は、患者からの生体液の試料、特に尿又は血漿の試料に由来するマイクロベシクルにおいて糖尿病の腎障害合併症を検出するための、CD41/アネキシンA5比、又はCD41/β-アクチン比、より特にCD41/アネキシンA5比を定量化する工程を含む。この比が、健康な対象について計算された比より統計学的に高い場合、それは糖尿病性腎症を示す。更に、この比が、同じ患者について過去に計算された比に対して増加又は減少している場合には、それは、それぞれ、糖尿病性腎症の進行又は寛解の証拠である。腎症のステージの検出は、特に、生体液の検査試料から得られた特徴づけの結果を、その疾患の異なるステージの特徴を示す1つ又は複数の対照試料(特に、正常アルブミン尿ステージ(Normo)、微量アルブミン尿ステージ(Micro)、又は顕性アルブミン尿ステージ(Macro)における腎症を有する糖尿病患者から得られた対照試料。これらのステージはその疾患の重症度に対応し、Macroステージが最も進行している)の特徴づけの結果と比較する工程を含み得る。したがって、特定の実施形態によれば、本発明による方法は、糖尿病及びその潜在的合併症、特にその腎臓合併症又は神経障害合併症のモニタリング及び早期検出を可能にする。
【0051】
本発明は、ここで、以下の非限定的実施例により例証される。
【実施例
【0052】
略語:
DCM: ジクロロメタン
DMSO: ジメチルスルホキシド
Eq: 当量
EtOAc: 酢酸エチル
MES: 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸
MilliQ: Milli-Q水精製システムで精製された水
MV: マイクロベシクル
NHS: N-ヒドロキシスクシンイミド
NOS: N-オキシスクシンイミド
Cplx: 錯体
PVC: ポリ(塩化ビニル)
PS: ホスファチジルセリン
Pht: フタルイミド
MeCN: アセトニトリル
XPS: X線光電子分光法
EDA: エチレンジアミン
HUVEC: ヒト臍帯静脈内皮細胞
【0053】
この実験セクションに用いられた錯体は、国際出願第PCT/FR2012/050610号に提示された実施形態に従って合成され、特に、以下の式の錯体C1、C2、及びC4であった:
【0054】
【化4A】
【0055】
【化4B】
【0056】
(実施例1)
PET支持体の官能基化及び表面上への錯体のグラフティング
ポリエチレンテレフタレート(PET)を、錯体の共有結合性グラフティングのために選択し、このグラフティングは、錯体の一級アミン官能基が、表面上に存在するカルボン酸と反応することによって起こっている。
【0057】
一般プロトコール:
第一に、i)エステル結合を切断すること、ii)COOH官能基の密度を増加させること、並びにiii)錯体とより迅速にかつより良い収率で反応するために、電子求引基及び良い脱離基、N-ヒドロキシスクシンイミドを用いて、カルボニル基をより求電子性にすることのために、官能基化工程(図1)を用いた。
1) 未処理PETフィルム(Goodfellow社から入手)を、1cm2の10個の小さい四角形を得るために横5cmに縦2cmの長方形へ事前に切断した。この長方形を、96%エタノールを含有するチューブ(falcon社)において超音波処理しながら1時間、クリーニングした。PETをKimtechペーパー上で数分間、乾燥させた
2) 未処理PETのクリーニングされた長方形を、水酸化ナトリウムの溶液(40mL MilliQ/MeCN v/v 1/1中NaOH 10-3M)を含有する別のfalconに60℃で18時間、入れておいた
3) MilliQ水で(3回)、その後、48時間、洗浄。
4) 過マンガン酸カリウムの溶液(38.4mLのMilliQ水及び1.6 mL H2SO4中2g KMnO4)中、60℃で1時間のPET長方形の酸化
5) 酸(HCl 6M)で洗浄、その後、MilliQ水で洗浄(2回)、そして、その長方形を横1cmに縦1cmの小さい正方形へ切断
6) その正方形を、2mLの溶液(1つの正方形につき、2mLのMilliQ水中、76.7mg EDC、23mg NHS、39mg MES)を含む錠剤容器に入れた
7) 各正方形を、2mLの錯体溶液(0.2mL DMSO及び1.8mL MilliQ中10-3M)を含有する錠剤容器に室温で16時間、置く
8) MilliQ水ですすぐ(超音波処理しながら3回)、そして、48時間、洗浄。
【0058】
マテリアルの特徴づけに必要とされる「対照」試料を調製した。これらは、加水分解も酸化もなく、及びEDC/NHS活性化なしでの未処理PETの試料である。工程1)、7)、及び8)は実行されるが、工程2)、3)、4)、5)、及び6)は含まれない。
【0059】
マテリアルの特徴づけ
全ての官能基化工程についての表面上のカルボン酸の密度の定量化:
ポリマーの表面上に存在するCOOH基の密度を定量化するために用いられる方法は、トルイジンブルーOを用いる方法であるが、それは、この陽イオン性化学試薬が表面上でCOO-基と反応するからである。実際には、カルボン酸基を脱プロトン化して、その結果、それらがTBOと反応し、非共有結合性結合を形成するために、塩基性pH(例えば、pH=10)が必要である。マテリアルの表面上に固定されたTBOを再吸収するために、酢酸が加えられて、COO-基を再プロトン化し、それゆえに、イオン結合[COO-…TBO]を切断する。
【0060】
較正曲線は、予め、異なる濃度のTBOを用いて構築される。試料について630nmにおける光学密度の読み取りが報告され、較正曲線により、COOHの表面濃度を見出すことができる。
較正曲線から、未処理PET(供給業者により送達され、エタノールで洗浄され、その後、乾燥されているようなPET)の場合、本発明者らは、1.5pmol/mm2のCOOH官能基の密度を得ている。
同様に、COOH官能基の表面密度は、様々な処理工程におけるPET表面上で評価することができる。本発明者らは以下を得た:
- 加水分解されたPETについて28pmol/mm2
- 酸化されたPETについて210pmol/mm2
- PET-NHSについて136pmol/mm2
- PET+C1について50pmol/mm2
【0061】
光電子分光法による処理の異なる工程におけるPETの表面上の原子百分率の決定
これらの分析を、「VG ESCALAB 220i-XL」分光計を用いて実行した。Si、S、C、N、O、又はZn原子の原子定量化を、溶媒DMSO/H2O 10/90において、X線光電子分光法(XPS)により実行した。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
原子百分率の定量化により、錯体が実際にPETの表面上に固定化されていると述べることができる。実際、いかなる金属も含有しない活性化PETに対して、PET+C1は、Znの原子百分率を含有する。更に、理論的に予想された窒素の百分率の増加に留意されたい。それは、錯体がリガンドのレベルにおいて6個の窒素原子を含有するためである。この結果は、0.93(PET-NHS)から0.65~0.68(PET+C1)へ変化するCOO/C-O、及び0.06(PET-NHS)から0.17~0.25(PET+C1)へ変化するNCO/COO等の比によって裏付けされている。
【0065】
官能基化対非官能基化支持体、及び/又は錯体C1、C2、若しくはC4をグラフトされた支持体のXPS分析
これらの分析を、「VG ESCALAB 220i-XL」分光計を用いて実行した。X線光電子分光法分析について、以下の9つの試料を調製した: クリーニングされた未処理PET(Smp1)、酸化PET(Smp2)、PET-NHS又は活性化PET(すなわち、加水分解され、酸化され、その後、EDC/NHSで活性化されたPET;Smp3)、活性化PET+C1(Smp4)、活性化PET+C2(Smp5)、活性化PET+C4(Smp6)、未処理PET+C1(Smp7)、未処理PET+C2(Smp8)、及び未処理PET+C4(Smp9)。
XPSにより得られた高分解能スペクトルO1sは、試料4から始まる530.5~530.7eVにおける「Zn-O」及び「Cu-O」についてのピークの出現に基づいて、錯体がマテリアルの表面上にグラフトされていることを示している。面積比Zn-O(又はCu-O)/C=Oのレベルにおいて、値はSmp4について0.15、Smp5について0.25、Smp6について0.11であり、活性化工程なしの後の方の値は減少し、Smp7について0.08、Smp8について0.15、及びSmp9について0.14である。これらの結果は、活性化なし(Smp7、8、及び9)では、錯体が支持体の表面に吸着され、共有結合によってグラフトされないという事実により説明することができる。したがって、数回のすすぎ後、錯体は除去され、ほとんどもはや検出されない。
【0066】
【表3】
【0067】
共有結合性グラフティングが起こった場合、アミド結合N-C=Oに対応する400eVにおけるピーク(高分解能スペクトルN1s)が、XPSにより容易に観察され、それは、錯体のNH2とマテリアルのカルボニル基との間の結合が実際に生じていることを意味する。更に、EDC/NHS活性化が実行されず、錯体が表面と接触した時(Smp7、8、及び9)、400eVにおけるピークとは異なるピークが観察されている。このピークは、錯体のX基により生じた遊離NH2に対応し、それは、吸着と相関づけることができ、錯体とマテリアルとの間の共有結合とは相関づけることはできない。
【0068】
表面上にグラフトされた錯体の密度の最適化
表面上の錯体の必要な量のみを用いてマイクロベシクル上に存在するホスファチジルセリンによる錯体へのより良い近づきやすさを促進するためにために、変形として、工程2及び3が実行されず、又は工程2、3、4、及び5が実行されない一般プロトコールに従って、支持体を調製し得る。
実際、PETの加水分解及び/又は酸化の工程を省略することにより、PETの表面上のCOOH基の量を調節し、したがって、PETの表面上に固定化される錯体の量を調節することが可能である。
提案された変形において、未処理PETをクリーニングし、その後、事前酸化なし、又は事前の酸化と加水分解なしで官能基化する。提案された変形に関して、支持体の表面上に存在する-COOH官能基のみが、錯体のグラフティングを目的として、活性化/官能基化される。有利には、酸化工程を受けなかったPETはより少ない量のカルボン酸基を含有するため、したがって、得られたグラフティング密度はより低いだろう(d1)
- 未処理PETについて1.5pmol/mm2のCOOH
- 加水分解されたPETについて28pmol/mm2のCOOH
- 酸化PETについて210pmol/mm2のCOOH
【0069】
(実施例2)
PVCの官能基化及び錯体のグラフティング
一般プロトコール:
用いられるプロトコールは図2を参照して記載される。
1) 1cm2の10個の四角形を有するPVCプレートを、50mLチューブにおいて40mLのMilliQ水中、1時間の超音波処理によりクリーニングした。その後、プレートを、2mLの97%EDA及び38mLのMilliQ水を含む溶液中に30℃で2時間、浸漬した。最後に、10個の四角形のプレートを10mLのMilliQ水中で3回すすぎ、各すすぎ工程において超音波処理を実行した。
2) 4mLの50%グルタルアルデヒド及び30mLのMilliQ水を含むpH 9.5における溶液中に50℃で2時間、プレートを浸漬した。その後、プレートを10mLのMilliQ水中で3回、すすぎ、各すすぎ工程において超音波処理を実行した。
3) 最後に、上記の工程に従って処理された各プレートからの四角形を、10-3Mの錯体、0.1mLのDMSO、及び1.9mLのクエン酸リン酸バッファー(0.5Mクエン酸、0.5Mリン酸二ナトリウム)を含むpH4における溶液中、室温で16時間、撹拌しながら浸漬することにより、錯体をグラフトさせる。その後、PVC四角形を2mLのMilliQ水中で3回、すすぎ、これらのすすぎ工程において超音波処理を実行する。その後、処理されたPVC四角形を2日間に渡って2mLのMilliQ水中で3回、すすいだ。
【0070】
光電子分光法(XPS)による表面の特徴づけ
マテリアルの表面を特徴づけるために、PVCへのXPS分光法による分析を、錯体C1でのそれらの官能基化の各工程において実行した。マテリアルはそれぞれ、図3において概略的に示されている。4つの角及び1つの中央である、5つの表面地点を各マテリアルについて調べた。これらの分析は、「VG ESCALAB 220i-XL」分光計を用いて実行された。
【0071】
結果
スペクトル及びスペクトルのデコンボリューション、加えて、マテリアルの表面上に存在する様々な元素の原子百分率(表3)は、錯体C1での官能基化後、亜鉛(Zn)がマテリアルの表面上にPVCについて0.25%のレベルで存在することを示している。亜鉛は、錯体C1の組成における金属であるため、その存在は、錯体C1がマテリアルの表面上に固定されていることを伝えている。したがって、官能基化はPVCに有効である。更に、表面の5つの異なる地点(4つの角+1つの中央)において決定された原子百分率は、低い標準偏差を示し(表3)、処理の均一性及び結果の再現性を実証している。このことから、本発明者らは、官能基化がPVCにおいて均一であると推定する。
【0072】
(実施例3)
DNA-BIND(登録商標)プレートにおける錯体C1のグラフティング
一般プロトコール
Costar社製のDNA-BIND(登録商標)市販の96ウェルプレート上に錯体を固定化させた。このプレートは、N-オキシスクシンイミド(NOS)官能基でプレ官能基化されたポリスチレン製である。このプレートは68×1014個のNOS/cm2を含有する。このNOSの表面密度は、本発明者らがポリエチレンテレフタレート(PET)上に含有させたCOOH官能基の密度(8.18×1015個のCOOH/cm2)に匹敵する。
1) 溶液(総体積=2mL)を1.78gの錯体、0.2mL DMSO、1.8mLのMilliQ水で調製した。この溶液の200μLを各ウェル(10ウェル)内で沈積させる。グラフティング反応を、遮光して室温で16時間、実行させる。
2)この反応時間後、溶液をウェルから除去し、ウェルをMilliQ水の3回の水流ですすぐ。その後、各ウェルを、新鮮なMilliQ水とインキュベートし、48時間、3回/日、すすぐ。
【0073】
光電子分光法による表面の特徴づけ
マテリアルの表面を特徴づけるために、DNA-BIND(登録商標)へのXPS分光法分析を、錯体C1でのそれらの官能基化の各工程において実行した。マテリアルはそれぞれ、図4において概略的に示されている。4つの角及び1つの中央である、5つの表面地点を各マテリアルについて調べた。これらの分析は、「VG ESCALAB 220i-XL」分光計を用いて実行された。
【0074】
結果
スペクトル及びスペクトルのデコンボリューション、加えて、マテリアルの表面上に存在する様々な元素の原子百分率(表4)は、錯体C1での官能基化後、亜鉛(Zn)がマテリアルの表面上に「DNA-BIND(登録商標)」について0.41%のレベルで存在することを示している。亜鉛は、錯体C1の組成における金属であるため、それの存在は、錯体C1がマテリアルの表面上に固定されていることを伝えている。したがって、官能基化は「DNA-BIND(登録商標)」に有効である。更に、表面の5つの異なる地点(4つの角+1つの中央)において決定された原子百分率は、低い標準偏差を示し(表4)、処理の均一性及び結果の再現性を実証している。このことから、官能基化が2つのマテリアル:PVC及び「DNA-BIND(登録商標)」において均一であると推定される。
【0075】
【表4】
【0076】
(実施例4)
錯体C1をグラフトされたキットDNA-BIND(登録商標)ポリスチレンによるマイクロベシクルの捕捉後のマイクロベシクルにより担持されたマーカーの探索
材料及び方法
a/ 糖尿病患者からの生体液試料の採取
Pr Vincent Rigalleauの糖尿病学部門における糖尿病患者から尿及び血漿の試料を入手した。全ての患者は、ヘルシンキ宣言に従って説明され、かつ倫理委員会によって承認された、自由意思による十分な情報に基づく同意に署名した。尿中のアルブミン尿のレベルを含む臨床像は、各糖尿病患者について確立されている。患者を3つのグループ:正常アルブミン尿患者又はNormo(その疾患の合併症のステージ1)、微量アルブミン尿患者又はMicro(ステージ2)、及び顕性アルブミン尿患者又はMacro(ステージ3)へ分けた。尿試料を又、既知の腎障害合併症をもたない健康なドナーからも収集した。全ての試料を、使用されるまで-80℃で保存する。
【0077】
b/ 細胞モデル:ヒト臍帯静脈内皮細胞、HUVEC
内皮細胞であるヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)(Promocell社、C-12208)は、抗生物質を含まない、基本培地及び増殖因子混合物からなる内皮細胞増殖培地2キット(Promocell社、C-22111)中で培養される。
【0078】
c/ 細胞培養物(ヒト臍帯静脈内皮細胞又はHUVEC)からのモデルマイクロベシクルの単離
モデルマイクロベシクルの産生の活性化のために、HUVECを、PBSバッファーで2回すすぎ、100ng/mLのTNF-α(Peprotech社、参照番号300-01A)を含む培養培地中で24時間、刺激する。細胞の培養培地を、24時間の刺激後、回収し、細胞、細胞デブリ、及びアポトーシス小体を除去するために、50mLチューブにおいて、4℃、2分間、12000gで遠心分離する。上清をきれいなチューブに移し、マイクロベシクルを沈降させるために、4℃、90分間、20000gで遠心分離する。得られたモデルマイクロベシクルのペレットを、1.5mLの冷たいPBSバッファー中での再懸濁により洗浄し、1.5mLチューブへ移し、その後、4℃、90分間、20000gで遠心分離する。この洗浄工程を1回繰り返す。その後、モデルマイクロベシクルのペレットを、ペレットのサイズによって、冷たいPBS(100~500μL)中に再懸濁する。対応するタンパク質の量を、nanodrop分光光度計を用いて280nmにおける吸光度により決定する。モデルマイクロベシクルの試料を、使用されるまで-80℃で保存する。
【0079】
d/ ヒト尿試料からのマイクロベシクルの精製
健康なドナー及び患者からの尿を解凍し、マイクロベシクルを、分画遠心法により精製する:最初の遠心分離を、細胞、細胞デブリ、及びアポトーシス小体を除去するために、4℃、2分間、12000gで実行する。マイクロベシクルを沈降させるために、上清を、4℃、90分間、20000gで遠心分離する。得られたマイクロベシクルのペレットを、1.5mLの冷たいPBSバッファー中での再懸濁により洗浄し、1.5mLチューブへ移し、その後、4℃、90分間、20000gで遠心分離する。この洗浄工程を1回、繰り返す。試料を、使用されるまで-80℃で保存する。
【0080】
e/ ヒト血液試料からのマイクロベシクルの精製
クエン酸ナトリウムチューブに収集された血液を、1500gでの最初の遠心分離に供する。血漿に対応する上部相を注意深く取り出し、血小板を除去するために、12000gで2分間、遠心分離する。その後、血小板を含まない血漿、PFPに対応する上清を、マイクロベシクルを沈降させるために、4℃、20000gで遠心分離する。得られたマイクロベシクルのペレットを、1.5mLの冷たいPBSバッファー中での再懸濁により洗浄し、1.5mLチューブへ移し、その後、4℃、90分間、20000gで遠心分離する。この洗浄工程を1回繰り返す。試料を、使用されるまで-80℃で保存する。
【0081】
f/ タンパク質バイオマーカーの検出
酵素方法: HUVEC細胞の活性化により産生されたモデルマイクロベシクルは、それらの表面上にプラスミノーゲンアクチベーターを有し、そのプラスミノーゲンアクチベーターは、(マイクロベシクルの表面上に存在する)プラスミノーゲンをプラスミンへ活性化する;このプラスミンの活性は、発色基質、メチルマロニル-ヒドロキシプロピル-アルギニル-パラニトロアニリド、CBS0065を用いて検出することができる。発色団は、プラスミンの存在下で黄色生成物へと切断され、その黄色生成物の吸光度は、450nmの波長において分光光度計を用いて測定することができる。HUVECからの単離後のPBSバッファー中に再懸濁されたマイクロベシクルを、錯体1と呼ばれる二核金属錯体1をグラフトされた96ウェルのポリスチレンプレート(DNA-BIND(登録商標)Costar社)のウェル内で沈積させる。25μL中総量2.5μg(A280nm nanodrop技術により決定された)のマイクロベシクルを、室温で1時間、インキュベートする。3回のすすぎ後、各ウェルの酵素活性を決定する。ある特定のウェルは、すすがれず、対照の酵素活性の100%を表す。第一に、IU/mLでのプラスミノーゲンアクチベーターの以下の濃度:0、0.00078125、0.0015625、0.003125、0.00625、0.0125、0.025、及び0.05での段階希釈により、標準範囲を得る。第二に、4μMにおけるプラスミノーゲン溶液及び3mMでの発色基質CBS0065の溶液を調製し、その後、体積対体積で混合する。この混合物の25μLの体積を各ウェルに加える。プレートをクリングフィルムで覆い、各ウェルにおいて405nm及び450nmにおける吸光度を同時に読み取るために。分光光度計に37℃で18時間、置く。この動態研究より、各ウェルの酵素活性を反映する、生成物の平均出現速度を計算することが可能になる; それはmOD/分で表される。
【0082】
g/ ウェスタンブロット
第1の工程は、RIPAバッファー+プロテアーゼインヒビター及びホスファターゼインヒビター(990μLのRIPAバッファー+プロテアーゼインヒビター及びホスファターゼインヒビターのカクテルの10μL(100×))を用いるマイクロベシクルの溶解からなる。PBSを加える前に、単離の最後の工程で得られたマイクロベシクルのペレットのサイズの関数としての体積(ペレットの体積の約4倍のRIPAの体積)のRIPAバッファー+インヒビターを加える。ペレットを、ピペッティングでアップダウンさせることにより再懸濁し、氷中で15分間、放置する。その後、溶解物を、デブリを除去するために、4℃、10分間、10000xgで遠心分離する。上清を、きれいなチューブへ移す。マイクロベシクルの溶解物中に存在するタンパク質の量を、ビシンコニン酸アッセイ(BCA)技術により測定する。その後、そのタンパク質を、バッファーLaemmli 4×+還元剤(DTT、ジチオスレイトール)を用いて変性させる。変性溶解物を、使用前に-80℃で保存することができる。マイクロベシクルの変性溶解物を、4~12%の濃度勾配でSDS-PAGE変性条件下のアクリルアミドゲル上に置く。120Vの一定電圧で約1.5時間、泳動を実行する(泳動最前線がゲルの底部端に達するまで)。ゲルをPVDF膜上へ転写する。TBS-Tween 0.1%バッファー中5%ミルク溶液での室温、1時間の膜の飽和後、TBS-Tween 0.1%バッファー中5%ミルク溶液中に希釈された3つの一次抗体を4℃で一晩、インキュベートする。以下の希釈物が用いられる: ポドカリキシンに対する抗体(Santacruz社、Sc-23904) 1/2000又はCD41に対する抗体(Novus社、MAB 7616) 1/1000;及びβ-アクチンに対する抗体(SIGMA社、A1978-100UL) 1/10000;及びアネキシンA5に対する抗体(SIGMA社、A8604-100UL) 1/2000。TBS-Tween 0.1%バッファー中での2回の洗浄操作後、1/5000の希釈率における、酵素西洋ワサビペルオキシダーゼ、HRPと連結された二次抗体を、TBS-Tween 0.1%中5%ミルク溶液において室温で1時間、インキュベートする。TBS-tween 0.1%バッファー中での2回の洗浄操作後、化学発光による検出を実行する。シグナルはCCDカメラにより捕捉され、その後、シグナルの強度は、フリーソフトウェアImageJを用いて分析される。
【0083】
h/ 統計解析
糖尿病患者の尿から得られたマイクロベシクルにおけるバイオマーカーの検証について、ウェスタンブロットの結果の統計解析を、GraphPad Prismソフトウェアのバージョン7を用いて実施した。
【0084】
i/ ELISA
患者又は健康な個体からの尿又は血漿からの単離後、PBSバッファー中に再懸濁されたマイクロベシクルを、錯体1と呼ばれる二核金属錯体1をグラフトされた96ウェルのポリスチレンプレート(DNA-BIND(登録商標)Costar社)のウェル内で沈積させる。穏やかに水平方向に振動させながら、4℃で一晩のインキュベーションを実施した。PBS中で2回洗浄した後、5%の「ウシ血清アルブミン」(BSA)タンパク質からなる飽和溶液を、プレートの全ウェル内で沈積させ、穏やかに撹拌しながら室温で2時間、インキュベートした。その後、1/500におけるポドカリキシンに対する一次抗体(Santacruz社、Sc-23904)か、又は1/500におけるCD41血小板マーカーに対する一次抗体(Novus社、MAB 7616)かのいずれかを、ウェル内に捕捉されたマイクロベシクルと、穏やかに水平方向に振動させながら、室温で2時間、接触させる。2回の洗浄操作後、1/5000希釈における、酵素HRPと連結された二次抗体を、穏やかに水平方向に振動させながら、室温で1時間、インキュベートする。6回の洗浄操作後、100μLの発色剤TMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)を、穏やかに水平方向に振動させながら、室温で30分間、ウェル内で沈積させる。その反応を、100μLの硫酸を加えることにより停止させ、各ウェルの吸光度を、450nmにおいて分光光度計を用いて測定する。
【0085】
結果
a/ マイクロベシクルにより担持されたタンパク質マーカーの同定
ウェスタンブロット技術による腎障害合併症のステージに従った、糖尿病患者の尿から得られたマイクロベシクルにおけるバイオマーカー、ポドカリキシンの検証
ポドカリキシンは、腎臓だけに存在する糸球体細胞である、有足細胞により発現される膜貫通タンパク質である; それは、有足細胞の細胞病変のマーカーとして文献に記載されている。β-アクチンというタンパク質は、全ての細胞において発現される細胞骨格のタンパク質である; この安定で普遍的な発現は、発現が疾患の関数として変動し得るタンパク質のレベルを定量化することが必要である場合、参照タンパク質としてウェスタンブロットにしばしば用いられることを意味する。
【0086】
アネキシンA5というタンパク質は、全ての細胞において原形質膜の近くに局在している; β-アクチンのように、それも又、ウェスタンブロットにおいて参照タンパク質として用いられる。したがって、健康なドナー又は糖尿病患者の尿から得られたマイクロベシクルにおけるタンパク質ポドカリキシンの発現のウェスタンブロットによる分析は、むしろ、ポドカリキシン/β-アクチン比及びポドカリキシン/アネキシンA5比という比の形で表される。
図5は、ポドカリキシン/β-アクチン比を示す。各点は、健康なドナー又は糖尿病患者から得られた尿マイクロベシクル試料のウェスタンブロット分析後に得られた比を表す。健康なドナーは、平均で0.70という低いポドカリキシン/β-アクチン比を表していることを見ることができ、これは、非病的状態での有足細胞に由来するマイクロベシクルの天然産生のベースラインレベルに対応する。糖尿病に関連づけられた腎症のステージに従ってこの比は徐々に増加する。このように、ポドカリキシン/β-アクチン比は、平均で、正常アルブミン尿患者において1.09に、その後、微量アルブミン尿患者において1.70に、最後に、顕性アルブミン尿患者において3.91に達していることを見ることができる。GraphPad Prismソフトウェアを用いた、Tukey群間比較検定と組み合わせたANOVA統計解析により、群間の有意差が明らかになっている: p値:p<0.001である健康対Macro、p<0.01であるNormo対Macro、及びp<0.05であるMicro対Macro。
図6は、ポドカリキシン/アネキシンA5比を示す。各点は、健康なドナー又は糖尿病患者から得られた尿マイクロベシクル試料のウェスタンブロット分析後に得られた比を表す。前述と同様に、健康なドナーは、平均で0.50という低いポドカリキシン/アネキシンA5比を表していることを見ることができる; これは、非病的状態での有足細胞に由来するマイクロベシクルの天然産生のベースラインレベルに対応する。今度の場合も、糖尿病に関連づけられた腎症のステージに従ってその比は徐々に増加する。このように、ポドカリキシン/アネキシンA5比は、平均で、正常アルブミン尿患者において0.93へ、その後、微量アルブミン尿患者において2.15へ、最後に、顕性アルブミン尿患者において4.33へ変化していることを見ることができる。GraphPad Prismソフトウェアを用いた、Tukey群間比較検定と組み合わせたANOVA統計解析により、群間の有意差が明らかになっている: p<0.05である健康対Normo、p<0.0001である健康対Macro、p<0.0001であるNormo対Macro、及びp<0.01であるMicro対Macro。
結論として、ポドカリキシン/アネキシンA5比は、患者の尿に由来するマイクロベシクルにおいて腎障害合併症を検出するためのキットの関連で用いられ得ることが、構想され得る。この比が増加している場合、これは、有足細胞の細胞病変の証拠である。
【0087】
ウェスタンブロット技術による腎障害合併症のステージに従った糖尿病患者の血漿に由来するマイクロベシクルにおける血小板マーカー、CD41の検出
このパートにおける本発明者らの実験の目的は、ヒト血漿から得られた、遠心分離により精製されたマイクロベシクルにおいてマーカーを検出し得ることを示すことである。このために、本発明者らは、ウェスタンブロット技術による、血小板の膜の表面上に局在したタンパク質、CD41の検出を開発した。血小板の膜の出芽から生じるマイクロベシクルはCD41を発現する。したがって、本発明者らは、正常アルブミン尿の糖尿病患者及び顕性アルブミン尿の糖尿病患者の血漿に由来するマイクロベシクルにおけるCD41/アネキシンA5発現比を分析した(下記図7)。本発明者らは、ウェスタンブロット技術により、血漿に由来するマイクロベシクルからのタンパク質抽出物におけるCD41血小板マーカーの特異的検出を観察することができる。CD41/アネキシンA5比は、個体によって異なる。この実験は、循環マイクロベシクルにより担持されるマーカーが血漿において定量化されることが可能であることを示している。
【0088】
結論
本発明者らは、異なる生体液:尿及び血漿から単離されたマイクロベシクルにおいてタンパク質バイオマーカーを定量化することができることを示している。
【0089】
更に、ポドカリキシン/アネキシンA5比は、腎障害合併症を検出するための診断キットに用いることができた。
【0090】
b/ 錯体C1をグラフトされたDNA-BIND(登録商標)ポリスチレンの表面の検証
モデルマイクロベシクルの捕捉、及びこれらのマイクロベシクルにより担持されたバイオマーカーの酵素検出
マイクロベシクルは、生物学的活性を有するタンパク質である酵素等の生物学的材料を担持する。本発明者らは、DNA-BIND(登録商標)ポリスチレンの表面上の錯体C1のグラフティングを検証するために、国際出願第PCT/FR2012/050610号に記載された酵素技術を用いた。25μL中2.5μgの全マイクロベシクルの量(タンパク質当量)を有するモデルマイクロベシクルが、マテリアルにより、室温で1時間、捕捉される。各実験条件に存在する酵素活性は、酵素反応速度論により分析される。すなわち、その酵素によって触媒された発色産物、CBS0065の出現の速度が18時間、モニターされる。実験条件は以下の通りである:
すすぎなしの条件100%: これは対照条件であり、モデルマイクロベシクルは1時間、ウェル内に置かれたままであり、酵素活性は、ウェルをすすぐことなく、直接的に決定される。検出された酵素活性は、モデルマイクロベシクルの抽出物の最大活性である。したがって、この条件は陽性対照、100%を表す。
錯体なしのすすぎありの条件: モデルマイクロベシクルは、錯体C1をグラフトされていないプレートのウェルにおいて1時間、インキュベートされ、その後、3回、すすがれ、酵素活性が分析される。この条件は、陰性対照を表す; 得られた酵素活性は、モデルマイクロベシクルの非特異的相互作用の証拠である。
錯体を有する、すすぎありの条件: モデルマイクロベシクルは、錯体C1をグラフトされたプレートのウェルにおいて1時間、インキュベートされ、その後、3回、すすがれ、酵素活性が分析される。この条件は、錯体によるマイクロベシクルの捕捉を表す; 得られた酵素活性は、モデルマイクロベシクルの特異的相互作用の証拠である。
図8は、上記の各条件について得られたViの平均値(計算された初速度の平均値)を示す。すすぎなしのマイクロベシクルの対照条件において0.226mOD/分のViの平均値が観察され、それは、2.5μgのマイクロベシクルについて得られたViの最大平均値を表し、したがって、これは100%である。モデルマイクロベシクルが金属錯体をグラフトされていない支持体上でインキュベートされているウェルにおいて0.026mOD/分の初速度の平均値が測定されている。非特異的相互作用の程度は、0.026/0.226=0.115、すなわち、11.5%である。マイクロベシクルが金属錯体C1をグラフトされた支持体上でインキュベートされ、その後、すすがれるウェルにおいて、0.152mOD/分の初速度の平均値が測定されている。したがって、特異的捕捉率は、0.152/0.226=0.672、すなわち、67.2%である。結論として、この実験は、(1)錯体C1をグラフトされたDNA-BIND(登録商標)ポリスチレンの表面がHUVEC細胞モデルのマイクロベシクルの捕捉を可能にすること、及び(2)錯体C1をグラフトされたDNA-BIND(登録商標)ポリスチレンの表面が、モデルマイクロベシクルにより担持される酵素の定量化を可能にすることを示している。更に、マイクロベシクルの67.2%の特異的捕捉は評価され得る。
【0091】
ヒト尿から単離されたマイクロベシクルの捕捉及びこれらのマイクロベシクルにより担持された有足細胞マーカーのELISA検出
本発明者らは、ELISA免疫学的方法によりポドカリキシンの存在及びその検出を試験して、尿から単離されたマイクロベシクルの特異的捕捉を検証し、かつ本発明者らのマテリアル上での捕捉後のバイオマーカーの定量化についての能力を実証した。これを行うために、錯体C1を全体的にグラフトされたDNA-BIND(登録商標)Costar社96ウェルポリスチレンプレート上で、尿から遠心分離により単離されたマイクロベシクルを穏やかに振動させながら4℃で一晩、インキュベートした。分光光度法によりアッセイされる20μg(すなわち、200μLの最終反応物中100ng/μL)のタンパク質と等価の最大量のマイクロベシクルを沈積させた。数回の洗浄操作後、タンパク質ポドカリキシンの存在を、それに対して特異的に方向づけられた抗体を用いて検出した。発色性を有する基質、TMBの存在下で450nmにおける分光光度法によりシグナルを増幅及び検出するために、酵素西洋ワサビペルオキシダーゼと連結された二次抗体を加える。その結果は図9に報告されている。このように、特異的シグナルは、条件:マテリアルにより捕捉されたマイクロベシクル+ポドカリキシンに対する一次抗体+二次抗体で観察することができる。バックグラウンドノイズと等価のシグナルは、様々な対照に対応する全ての他の条件において観察されている。ヒト尿から単離されたマイクロベシクルが特異的に捕捉されたこと、及びマイクロベシクルの表面上のポドカリキシンが特異的に検出されていることが結論づけられ得る。
マテリアル上での捕捉後のヒト尿に由来するマイクロベシクル内のタンパク質ポドカリキシンのバイオマーカーのELISA検出が半定量的とみなされ得ることを実証するために、0.5μgから20μgの間、すなわち、200μLの最終反応物中2.5ng/μLから100ng/μLの間に含まれる濃度で含まれたマイクロベシクルの沈積物の範囲で実行した。マイクロベシクルの異なる量の関数としての吸光度の測定値の結果は図10に提示されている。沈積し、かつマテリアルにより捕捉されたマイクロベシクルの濃度と、タンパク質ポドカリキシンについてELISA技術により検出されたシグナルとの間に線形関係が観察され得る。
このように、マテリアル(Costar社製のDNA-BIND(登録商標)ポリスチレンプレート上にグラフトされた錯体C1)は、尿から単離されたマイクロベシクルの特異的捕捉を可能にするだけでなく、沈積した2.5ng/μLのマイクロベシクルの検出の閾値を以て、ELISA技術によりポドカリキシンの存在を定量化することも可能にする。
【0092】
ヒト血漿から単離されたマイクロベシクルの捕捉及びこれらの循環マイクロベシクルにより担持されるCD41血小板マーカーのELISA検出
本発明者らは、マテリアル(Costar社製のDNA-BIND(登録商標)ポリスチレンプレート上にグラフトされた錯体C1)が又、予め遠心分離により単離された循環マイクロベシクル(すなわち、ヒト血漿から単離された)を捕捉する能力があること、及び捕捉されたマイクロベシクル上のタンパク質の存在をELISA技術により定量化することが可能であることを示したいと思った。このために、本発明者らは、血小板の表面上に存在し、したがって、それらの膜出芽に由来するマイクロベシクルの表面上に見出されるタンパク質CD41を選択した。正常アルブミン尿の糖尿病患者からの血漿から予め遠心分離により単離された循環マイクロベシクルを、錯体C1で官能基化されたポリスチレンプレート中に沈積させ、4℃で一晩、穏やかに振動させながらインキュベートした。ウェルあたり1.5mLの血漿から単離された量のマイクロベシクルを沈積させた。数回の洗浄操作後、タンパク質CD41の存在を、それに対して特異的に方向づけられた抗体を用いて検出した。発色性を有する基質、TMBの存在下で450nmにおける分光光度法によりシグナルを増幅及び検出するために、酵素西洋ワサビペルオキシダーゼと連結された二次抗体を加える。その結果は図11に報告されている。患者(P1及びP2)からの血漿のマイクロベシクルが沈積したウェルにおいて特異的シグナルが観察されている。これらの結果は、循環マイクロベシクルの特異的捕捉だけでなく、それらの表面上のタンパク質、この場合、血小板タンパク質CD41の存在をELISA技術により定量化する可能性も示している。
【0093】
ヒト血漿に含有されるマイクロベシクルの捕捉、及び血小板タンパク質バイオマーカー、CD41のELISAによる検出
最後に、本発明者らは、マテリアル(Costar社製のDNA-BIND(登録商標)ポリスチレンプレート上にグラフトされた錯体C1)が、単離されていないマイクロベシクルを捕捉する能力があることを示したいと思った。したがって、この場合、試料は、予め遠心分離により単離されたマイクロベシクルではなく、マイクロベシクルを含有するヒト血漿から直接的に得られている。本発明者らは、血漿試料のマイクロベシクルにより担持されるタンパク質CD41の存在を、ELISA技術を用いて定量化しようと試みた。このために、正常アルブミン尿の糖尿病患者からの300μLの血漿を、錯体C1をグラフトされたDNA-BIND(登録商標)ポリスチレンプレート上で穏やかに振動させながら4℃で一晩、インキュベートした。数回の洗浄操作後、タンパク質CD41の存在を、それに対して特異的に方向づけられた抗体を用いて検出した。発色性を有する基質、TMBの存在下で450nmにおける分光光度法によりシグナルを増幅及び検出するために、酵素西洋ワサビペルオキシダーゼと連結された二次抗体を加える。その結果は図12に報告されている。そのレベルは低いが、患者(P3、P4、及びP5)からの血漿が、錯体C1をグラフトされたウェル中に沈積しているウェルにおいて、CD41の検出についてのシグナルを観察している。これらの結果は、血漿中に存在するマイクロベシクル(予め精製されていない)の特異的捕捉だけでなく、それらの表面上のタンパク質、この場合、血小板タンパク質CD41の存在をELISA技術により定量化する可能性も示している。
【0094】
(実施例5)
固体支持体上の細胞マイクロベシクルの捕捉による糖尿病性腎症の早期診断
材料及び方法
ヒト生体液の試料: 全ての試料を、使用されるまで-80℃で保存した。
健康な対象からのヒト尿試料: ヒト尿試料は、PessacのInstitute of Chemistry and Biology of Membranes and Nano-objects (CBMN)において、添加物を加えることなく、通常の尿ポットにおいて昼間に健康な対象から収集された。排尿開始時点の尿は収集されず、試料は、使用されるまで-80℃で保存された。
糖尿病患者からのヒト尿試料: ドナーは、正常アルブミン尿ステージ(Normo)、微量アルブミン尿ステージ(Micro)、又は顕性アルブミン尿ステージ(Macro)における腎症を有する糖尿病患者である。これらのステージは、その疾患の重症度に対応し、Macroステージが最も進行している。尿試料は、添加物を加えることなく、通常の尿ポットにおいて昼間に収集された。更に、排尿開始時点の尿は収集されなかった。
マイクロベシクルの精製
細胞モデルに由来するマイクロベシクル: ヒト臍帯静脈内皮細胞、HUVEC(Promocell社;参照番号C-12208)を、完全培地(Promocell社;内皮細胞増殖培地2キット;参照番号C-22111)中で供給業者の推奨に従って培養した。継代3から継代6の間で、細胞を、PBS×1中で2回、すすぎ、その後、マイクロベシクルを産生させるために37℃で24時間、完全培地中、100ng/mLで調製されたTNF-α(Peprotech社;参照番号300-01A)の溶液で活性化した。その後、マイクロベシクルを含有する上清を、50mLチューブへ移した。第一に、細胞デブリ及びアポトーシス小体を、それらを除去するために、4℃で2時間、12000gでの遠心分離(SIGMA社;サーモスタット制御型遠心機3-18KHS)により沈降させた。第二に、マイクロベシクルを含有する上清を新しい50mLチューブへ移し、マイクロベシクルを、4℃で1.5時間、20000gでの遠心分離により沈降させた。上清を除去し、ペレットを1mLのバッファー溶液(HEPES 10mM;NaCl 0.15M;pH 7.4)ですすいだ。マイクロベシクルの溶液を新しい1.5mLマイクロチューブへ移し、4℃で1.5時間、20000gで遠心分離した。上清を除去し、マイクロベシクルのペレットを再び、すすぎ、その後、4℃で1.5時間、20000gで遠心分離した。このマイクロベシクルの最終ペレットを、最後に、バッファー溶液(HEPES 10mM;NaCl 0.15M;pH 7.4)中に再懸濁し、この溶液を、使用されるまで-80℃で保存した。
ヒト尿試料に由来するマイクロベシクル: マイクロベシクルを単離するために、尿を4℃で一晩、解凍し、40mLを、4℃で15分間、1500gで遠心分離した。上清を新しいチューブへ移し、細胞デブリ及びアポトーシス小体を除去するために、4℃で2分間、12000gで遠心分離した。その後、上清を新しいチューブへ移し、マイクロベシクルを沈降させるために4℃で1.5時間、20000gで遠心分離した。上清を除去し、ペレットを1mLのバッファー(HEPES 10mM;NaCl 0.15M;pH 7.4)中ですすいだ。マイクロベシクルの溶液を、1.5mLのマイクロチューブへ移し、4℃で1.5時間、20000gで遠心分離した。上清を除去し、マイクロベシクルのペレットを、再びすすぎ、その後、4℃で1.5時間、20000gで遠心分離した。このマイクロベシクルの最終ペレットを、最後に、バッファー溶液(HEPES 10mM;NaCl 0.15M;pH 7.4)中に再懸濁し、この溶液を、使用されるまで-80℃で保存した。
【0095】
CRYOMEB観察
マイクロベシクルの捕捉: (HUVEC細胞の細胞活性化に由来する、又は健康な対象からのヒト尿試料に由来する)マイクロベシクルを含有するバッファー溶液(HEPES 10mM; NaCl 0.15M;pH 7.4)を、マテリアルあたり300μLの割合で、室温で一晩、インキュベートし、その後、バッファー溶液で10回の連続的すすぎにより除去した。用いられたマテリアルは、PVC+C1及び「DNA-BIND(登録商標)」プレートウェル+C1の1cm2の四角形である。
CRYOMEB観察: 試料を、「Quorum PP3000T」クライオモジュールを備えた「Quanta 250 FEG FEI」電界効果走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。まず、試料を、Tissue-Tek(登録商標)/炭素混合物を用いて支持体へ接着し、その後、ペースト状窒素中で急速に冷却した。その後、それらを顕微鏡の第1チャンバーへ入れて、-95℃で20分間、昇華させ、その後、第2チャンバーにおいて、アルゴン下で白金を10mAで1分間、スプレーすることにより金属化させた。最後に、金属化された試料を、画像取得のために観察チャンバーに置いた。
DNA-BIND(登録商標)支持体上でのマイクロベシクルの捕捉
タンパク質のアッセイ: 各溶液中に存在するマイクロベシクルの量を決定するために、そのタンパク質を、NanoDrop(ND1000;Thermo Fisher SCIENTIFIC社)によりアッセイした。
マイクロベシクルの捕捉: 本出願において「キット」とも呼ばれる、用いられた装置は、錯体C1で官能基化されたDNA-BIND(登録商標)96ウェルプレート(COSTAR社;参照番号2525)である。実験は以下の2つのパートに分かれる:キットによるマイクロベシクルの捕捉に関するパート、及びプレートから離れ、したがって、キットにより捕捉されていない対照マイクロベシクルに関するパート。「対照」パートは、捕捉なしのマイクロベシクルの最初の組成についての情報を伝える。その後、マイクロベシクルを含有するバッファー溶液(HEPES 10mM;NaCl 0.15M;pH 7.4)は、2つの等しいパート: 捕捉のためのパート及び対照のためのパートへ分離される。
マイクロベシクルの捕捉のためのパート: マイクロベシクルを含有するバッファー溶液(HEPES 10mM;NaCl 0.15M;pH 7.4)を、ウェルあたり50μLの割合で、37℃で1時間、又は4℃で一晩、マテリアル上でインキュベートした。プレートを、少しの蒸発をも防止するためにフィルムで覆った。その後、バッファー溶液を除去し、捕捉されたマイクロベシクルを溶液中に存在する他の物体から単離し、かつマテリアル上に非特異的に吸着しているものを除去するために、ウェルを、200μL/ウェルの割合で同じバッファー調合液で10分間、3回、すすいだ。その後、マイクロベシクルを、マイクロベシクルから全てのタンパク質を個々に回収するために、氷中で30分間、ウェルあたり30μLの溶解バッファー(99%のRIPAバッファー、1%のプロテアーゼインヒビターのカクテル)中に溶解させた。ホモジナイゼーション後、その溶液を1.5mLマイクロチューブへ移した。膜デブリを、それを除去するために、4℃で10分間、10000gでの遠心分離により沈降させた。タンパク質を含有する上清を新しいマイクロチューブに回収した。
対照マイクロベシクルのためのパート: マイクロベシクルを含有するバッファー溶液(HEPES 10mM; NaCl 0.15M;pH 7.4)を、1.5mLマイクロチューブにおいて、マイクロチューブあたり50μLの割合で、37℃で1時間、又は4℃で一晩、インキュベートした。溶液のホモジナイゼーション後、マイクロベシクルを、4℃で1.5時間、20000gでの遠心分離により沈降させた。上清を吸引により除去した。その後、マイクロベシクルを再懸濁し、マイクロベシクルから全てのタンパク質を個々に回収するために、氷中で30分間、マイクロチューブあたり30μLの溶解バッファー中に溶解させた。その溶液のホモジナイゼーション後、膜デブリを、それを除去するために、4℃で10分間、10000gでの遠心分離により沈降させた。タンパク質を含有する上清を新しいマイクロチューブに回収した。
【0096】
ウェスタンブロットの分析:
各試料(タンパク質抽出物)を、供給業者により示された比率での30μLの最終試料に対して19.5μLのタンパク質の溶液の割合でローディングバッファー(Bolt(商標)LDS試料バッファー4×+Bolt(商標)試料還元剤10×)を用いて、マイクロチューブ内に調製した。試料をボルテックスし、95℃で5分間、変性させる前に、卓上遠心機で素早く遠心分離した。全試料(30μL)を変性条件でのアクリルアミドゲル上に載せた。サイズマーカーを、常に参照として加えた。試料は、50Vで10分間、その後、120Vで1.5時間、移動した。ゲルに存在するタンパク質を、一定の1.3Aで15分間の半流動体移動によりPVDF膜上へ転写した。膜の非特異的部位を、ミルクバッファー(バッファーTris緩衝食塩水(TBS)-Tween0.1%中5%のスキムミルク)浴で、撹拌しながら室温で1時間、飽和させた。撹拌しながらのTBS-Tween0.1%バッファー中での10分間の2回のすすぎ後、膜を、ミルクバッファー中に調製された一次抗体の溶液において、撹拌しながら4℃で一晩、インキュベートした。用いられた抗体(Ab)は、Ab抗ポドカリキシン(Santacruz社、参照番号Sc-23904;希釈度1/2000)、Ab抗β-アクチン(Sigma社、参照番号A1978;希釈度1/5000)、及びAb抗アネキシンA5(Sigma社、参照番号A8604;希釈度1/2000)である。撹拌しながらのTBS-Tween0.1%バッファー中での10分間の2回のすすぎ後、膜を、ミルクバッファー中に調製された二次抗体の溶液において、撹拌しながら室温で1時間、インキュベートした。シグナルを、シグナル強度によって、Pico(ThermoFisher SCIENTIFIC社、参照番号34580)における発色剤と5分間、又はFemto(ThermoFisher SCIENTIFIC社、参照番号34094)における発色剤と2分間の膜のインキュベーション後の化学発光反応を用いて、ゲルイメージャー(GeneGnome、SYNGENE社)により検出した。画像取得を、GeneSysソフトウェアを用いて実行した。定性的と定量的の両方の分析を、Image Jを用いて実行した。定性的側面を、関心対象となる各マーカーに特異的な分子量におけるバンドの存在により、加えて、それらのシグナルの強度から評価した。定量的側面を、マイクロベシクルの参照マーカー、アネキシンA5のシグナルの強度に対する病理学的マーカー、ポドカリキシンのシグナルの強度の比を計算することにより決定した。この比は、マイクロベシクルの数に対して病理学的マーカーの量を決定することを可能にする。
【0097】
結果
CRYOMEB分析
PVC+C1によるマイクロベシクルの捕捉の画像は図13(HUVEC細胞の細胞活性化に由来するマイクロベシクル)に示され、「DNA-BIND(登録商標)」+C1による捕捉の画像は図14(HUVEC細胞の細胞活性化に由来するマイクロベシクル)及び図15(健康な対象からのヒト尿試料に由来するマイクロベシクル)に示されている。これらの画像は、PVC+C1(図13)について直径40nmから100nmまでの、及び「DNA-BIND(登録商標)」+C1(図14及び図15)に関して平均150nmの、多数の球状物体の存在、並びにそれゆえに、試験された異なるマテリアルにより捕捉されたホスファチジルセリン陽性マイクロベシクルの存在を示している。C1で官能基化された96ウェルプレートは、細胞モデル(HUVEC)に由来するマイクロベシクルを捕捉している。
【0098】
マイクロベシクルの捕捉及びウェスタンブロットによる検出
第一に、キットによるマイクロベシクルの捕捉は、2つの異なる用量でのキット上でのインキュベーション後のモデルマイクロベシクルにより担持される参照マーカー、アネキシンA5の検出により実証された。その結果は図16に示されている。捕捉後のアネキシンA5に対応する分子量における顕著なバンドの存在は、マイクロベシクルの特異的かつ効果的なリクルートメントの証拠を提供する。更に、沈積したマイクロベシクルの量の関数としてのシグナルの強度の変化は、特異的でもある用量応答を示す。第二に、キットによるマイクロベシクルの捕捉は、健康な対象からのヒト尿試料に由来するマイクロベシクル上でのアネキシンA5の検出により実証された。その結果は、図17に示されている。キット上でのインキュベーション後のアネキシンA5の分子量における顕著なバンドの存在は、尿中マイクロベシクルの特異的な捕捉の証拠である。捕捉の検証後、本発明者らは、キットにより捕捉されたマイクロベシクル上の病理学的バイオマーカーの検出を試験した。研究されるバイオマーカーはポドカリキシンであり、有足細胞レベルでの腎症の証拠を提供する。用いられるマイクロベシクルは、健康な対象から、及び微量アルブミン尿ステージ(Micro)の腎症を有する糖尿病患者からの尿試料に由来する。その結果は図18及び図19に示されている。ドナーに関係したデータは、表5に示されている。
【0099】
【表5】
【0100】
図18に示された、キット上での捕捉後のポドカリキシン及びアネキシンA5の特有のバンドの存在は、ウェスタンブロットが、キット上での捕捉後に病理学的マーカーを検出することを可能にすることを示している。更に、図19に示されたシグナルの定量化は、疾患を明らかにするように思われる、ポドカリキシン/アネキシンA5比が、キットなしのマイクロベシクル(黒色で示されている)に関して、及びキットにより捕捉されているマイクロベシクル(灰色で示されている)に関して、同じ桁であることを示している。この結果は、捕捉されたマイクロベシクルの集団が、生体液中に最初に存在する集団を表し、関連診断を可能にすることを示している。最後に、本発明者らは、捕捉なし及びキットによる捕捉後の、健康な対象からの、及び疾患の様々ステージ(Normo、Micro、Macro)における腎症を有する糖尿病患者からの尿試料に由来するマイクロベシクルのポドカリキシン/アネキシンA5比を比較した。その結果は図20に示されており、ドナーに関係した臨床情報は表6に示されている。
【0101】
【表6】
【0102】
図20における概略図は、キット上での捕捉後のマイクロベシクル(灰色)から計算された比が、疾患のステージ(Normo、Micro、Macro)に関わらず、捕捉なしのマイクロベシクル(黒色)から計算された比を表すことを示している。したがって、ウェスタンブロット検出技術は、キットが早期診断を行うために、及び疾患の重症度を評価するために用いられ得ることを検証することを可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18
図19
図20