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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】予測インク送達システムおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20241224BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
B41J2/175
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/01 109
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021574341
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 GB2020052473
(87)【国際公開番号】W WO2021069885
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】1914512.7
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516154934
【氏名又は名称】ザール テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】XAAR TECHNOLOGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】コンディ アンガス
(72)【発明者】
【氏名】スピード デビッド
(72)【発明者】
【氏名】トリップ レンゾ
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-520011(JP,A)
【文献】特開2019-001157(JP,A)
【文献】特開2017-047413(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02641661(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第106853689(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)内の流体圧力を制御するためのプロセッサ制御サブコントローラ(20)であって、
印刷方針(106)を実行する前に、前記サブコントローラ(20)が、
前記1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)の各々に対する、液滴吐出ヘッド移動プロファイル(111)を受信することであって、前記液滴吐出ヘッド移動プロファイル(111)は、前記印刷方針(106)を使用して決定されるものであることと、
それぞれの前記液滴吐出ヘッド移動プロファイル(111)を使用して、前記1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)の各々について、1つ以上の所定の場所(51)でそれぞれの誘発された流体圧力プロファイル(170)決定することと、
前記1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)で維持されることになるそれぞれの前記誘発された流体圧力プロファイルおよび所定の圧力値の幅(150)に基づいて、前記1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)の各々に対してそれぞれの圧力補正データを生成することと、
前記1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)の各々に対する前記それぞれの圧力補正データを使用して、それぞれの圧力補正ファイル(180)を生成することであって、前記1つ以上の所定の場所(51)は、前記1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)に前記所定の圧力値の幅(150)を維持するように、流体圧力を調整するために制御されることになる位置であることと、
を行うように構成されている、サブコントローラ(20)。
【請求項2】
前記サブコントローラ(20)が、前記それぞれの圧力補正データを生成するために計算を実施するように構成されている、および/または前記サブコントローラ(20)が、ルックアップテーブルを使用して、前記それぞれの圧力補正データを生成するよう構成されている、および/または前記サブコントローラ(20)が、コンパレータを使用して、前記それぞれの圧力補正データを生成するように構成されている、
請求項1に記載のサブコントローラ(20)。
【請求項3】
前記サブコントローラ(20)が、事前較正プロセスを使用して、前記誘発された流体圧力プロファイルおよび/または前記それぞれの圧力補正データを生成するように構成されている、
請求項1または2に記載のサブコントローラ(20)。
【請求項4】
前記1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)および1つ以上の制御デバイス(10)が流体供給システム(40)に流体接続されるときに、前記1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)で前記所定の圧力値の幅(150)を維持するために、前記流体供給システム(40)の一部または全部における前記流体圧力を動的に調整するように、前記圧力補正ファイル(180)を使用して前記1つ以上の所定の場所(51)に位置する前記1つ以上の制御デバイス(10)を制御するようにさらに構成されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のサブコントローラ(20)。
【請求項5】
前記1つ以上の所定の場所(51)で測定された1つ以上の圧力測定値を受信するようにさらに構成されており、
前記サブコントローラ(20)は、任意に、少なくとも1つ以上の前記圧力測定値および前記所定の圧力値の幅(150)および/または前記それぞれの圧力補正データに基づいて、1つ以上のそれぞれの圧力補正を決定するようにさらに構成されており、前記サブコントローラ(20)が、前記1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)および1つ以上の前記制御デバイス(10)が前記流体供給システム(40)に流体接続されるときに、前記1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)で前記所定の圧力値の幅(150)を維持するために、流体供給システムの一部または全部における前記流体圧力を動的に調整するように、前記それぞれの圧力補正を使用して前記1つ以上の所定の場所(51)に位置する前記1つ以上の制御デバイス(10)を制御するようにさらに構成されている、
請求項4に記載のサブコントローラ(20)。
【請求項6】
1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)内の流体圧力を制御することを含む印刷プロセスを制御するように構成されたプロセッサ制御コントローラ(30)であって、
前記コントローラ(30)が、印刷方針を受信することと、
前記印刷方針を使用して前記1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)の各々に対するそれぞれの液滴吐出ヘッド移動プロファイル(111)を計算することと、
前記液滴吐出ヘッド移動プロファイル(111)を、請求項1~5のいずれか一項に記載のサブコントローラ(10)に送信するようにさらに構成されているか、または請求項1~5のいずれか一項に記載のサブコントローラ(10)の機能を組み込むことと、
を行うように構成されている、コントローラ(30)。
【請求項7】
前記液滴吐出ヘッド移動プロファイル(111)に従って前記1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)を移動させるように、1つ以上の移動デバイス(70)を制御するようにさらに構成されており、前記1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)が、前記1つ以上の移動デバイス(70)上に装着されている、
請求項6に記載のコントローラ(30)。
【請求項8】
前記印刷方針が、印刷コマンドを含み、
前記コントローラ(30)が、前記印刷コマンドを実行するように、前記1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)を制御するようにさらに構成されており、
前記印刷方針が、流体要件を含み、
前記コントローラ(30)が、前記流体要件を満たすように流体供給(41)を制御するようにさらに構成されている、
請求項6または7に記載のコントローラ(30)。
【請求項9】
流体供給部(41)と、請求項1~5のいずれか一項に記載のサブコントローラ(20)および/または請求項6~8のいずれか一項のコントローラ(30)と、を備える、流体供給システム(40)であって、
前記流体供給部(41)が、流体リザーバ(41)および1つ以上の流体供給経路(42)を備え、
前記1つ以上の流体供給経路(42)が、第1の端で前記流体リザーバ(41)に接続されており、第2の端で1つ以上の液滴吐出ヘッドに接続するように構成され、
前記流体供給システム(40)は、任意に、前記1つ以上の流体供給経路(42)および1つ以上の流体リターン経路(43)を備える貫流システムとして構成される、
流体供給システム(40)。
【請求項10】
前記流体供給システム(40)が、前記1つ以上の所定の場所(51)に位置する1つ以上の制御デバイス(10)をさらに備え、
1つ以上の前記制御デバイス(10)が、前記サブコントローラ(20)および/または前記コントローラ(30)と通信しており、
1つ以上の前記制御デバイス(10)が、動作時に前記流体供給システム(40)の一部または全部内で前記流体圧力を動的に調整するように制御可能であるように構成されており、
前記制御デバイス(10)が、前記サブコントローラ(20)および/または前記コントローラ(30)によって制御される、
請求項9に記載の流体供給システム(40)。
【請求項11】
前記1つ以上の所定の場所(51)が、前記流体リザーバ(41)に隣接して流体接続される場所、ならびに/あるいは前記流体リザーバ(41)内に位置する、および/または前記1つ以上の流体供給経路(42)のうちの1つ内に位置する、もしくはそこに流体接続されている場所、および/または前記1つ以上の流体供給経路の前記第2の端に隣接して位置するか、もしくはそこに流体接続されている場所、および/または前記1つ以上の流体リターン経路(43)の前記第2の端に隣接して位置するか、もしくはそこに流体接続されている場所のうちの1つ以上を含む、
請求項9または10に記載の流体供給システム(40)。
【請求項12】
前記流体供給システム(40)内の前記1つ以上の所定の場所(51)における圧力を測定するために位置する1つ以上の圧力センサ(50)をさらに備え、
前記1つ以上のセンサ(50)が、前記サブコントローラ(20)および/または前記コントローラ(30)と通信して、そこに圧力測定値を提供する、
請求項9~11のいずれか一項に記載の流体供給システム。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか一項に記載の流体供給システム(40)に流体接続された1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)と、1つ以上の移動デバイス(70)を使用して印刷する方法であって、
前記1つ以上の移動デバイス(70)が、前記1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)のうちの1つ以上を装着するように構成されており、
前記方法が、印刷方針(106)を実行する前に、
液滴吐出ヘッド移動プロファイル(111)を受信する工程と、
それぞれの前記液滴吐出ヘッド移動プロファイル(111)を使用して、前記1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)の各々について、1つ以上の所定の場所(51)でそれぞれの誘発された流体圧力プロファイル(170)を決定する工程と、
前記1つ以上の液滴吐出ヘッド(60)で維持されることになるそれぞれの前記誘発された流体圧力プロファイルおよび所定の圧力値の幅(150)に基づいて、それぞれの圧力補正データを生成する工程と、
前記それぞれの圧力補正データに基づいて、前記1つ以上の所定の場所(51)に対するそれぞれの圧力補正ファイル(180)を生成する工程と、
印刷する際には、動作中に前記流体供給システム(40)内の前記流体圧力を制御し、それによって、前記所定の圧力値の幅(150)を維持する工程と、
を含む、印刷する方法。
【請求項14】
前記それぞれの圧力補正データを生成することが、計算を実施することを含む、ならびに/または前記それぞれの圧力補正データを生成することが、ルックアップテーブルを使用することを含む、ならびに/または前記それぞれの圧力補正データを生成することが、コンパレータを使用することを含む、ならびに/または前記誘発された流体圧力プロファイルおよび/もしくは前記それぞれの圧力補正データを生成することが、事前印刷較正プロセスを実施することを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、前記1つ以上の所定の場所で前記流体供給システム(40)内の前記圧力を感知することを含み、
前記方法が、感知された前記圧力と前記所定の圧力値の幅(150)との間に差がある場合、前記流体供給システム(40)内の前記圧力を調整することをさらに含む、
請求項12を引用する請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サブコントローラ、コントローラ、流体供給システムおよび印刷のための装置、ならびに印刷のための方法に関し、これは、液滴吐出ヘッドが印刷中に加速/減速されるか、または、おそらく、液滴吐出ヘッドが位置および配向の変化、複数の方向および自由度にも供される用途に特に好適であり得る。そのような用途は、壁および傾斜表面などの大きいまたは複雑な形状、または3D物体上に印刷することを含み得る。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出ヘッドは、インクジェット印刷などのより従来的な用途、もしくは3D印刷、または他のラピッドプロトタイピング技術かを問わず、現在広く使用されている。したがって、流体、例えば、インクは、新たな基材に付着し、かつ堆積した材料の機能性を増加させる新規の化学特性を有することができる。産業用途、例えば、セラミックタイルまたは織物などの基材上に直接印刷するため、またはフラットスクリーンテレビ用のLCDまたはOLEDディスプレイの色フィルタなどの素子を形成するために使用することができる液滴吐出ヘッドが開発されてきた。液滴吐出ヘッドを使用したそのような産業印刷技術は、短い生産工程、製品のカスタマイズ、さらには特注設計の印刷さえも可能にする。したがって、新たな、かつ/またはますます困難な吐出用途に好適になるように、液滴吐出ヘッドが進化および特殊化し続けることを理解されたい。しかしながら、液滴吐出ヘッドの分野における数々の開発が行われてきたが、改善の余地が依然として存在する。
【0003】
ほとんどの用途では、液滴吐出ヘッドに流体を送達するために、何らかの形態の流体供給システムが必要である。流体供給システムの目的は、液滴吐出ヘッドによって吐出された流体を補充することに限定され得、より複雑なシステムは、液滴吐出ヘッド内の1つ以上の点における温度、流体流量、圧力、例えば、メニスカス位置が制御されるようにノズル内の圧力、その他を制御し得る。
【0004】
液滴吐出ヘッドの信頼できる性能を確保するために、ノズルプレート上に流体が滲出することを防止するために、液滴吐出ヘッドのノズル内に流体メニスカスを維持することが望ましく、これを行うために、液滴吐出ヘッドのノズル(複数可)内の圧力が大気圧以下に保たれる。この陰圧は、一般に、背圧またはメニスカス圧力と呼ばれる。また、メニスカスが液滴吐出ヘッド内に引き戻されるように、背圧が低過ぎるときに発生する、液滴吐出ヘッド内に空気が取り込まれることを防止することも望ましい。それゆえに、背圧は、1)流体がノズルプレート上に滲出し始める圧力、および/または2)空気がノズルを通して取り込まれる圧力によって一般的に決定される窓内に保たれなければならない。さらに、この窓内の背圧の変動は、望ましくない液滴体積、および基材上で印刷される画像に観察可能な欠陥につながり得る速度変動を結果的にもたらすために十分であり得る。それゆえに、信頼性がある高品質の液滴吐出のために、背圧を制御し、その変動を最小に保つことが多くの場合に必要である(例えば、Xaar1003プリントヘッドについて、±2mbarの範囲が指定される)。背圧の変動は、様々な源、例えば、印字デューティの変動に由来し得、加えて、液滴吐出ヘッドが基材上で移動される走査用途では、液滴吐出ヘッドの加速および減速もまた、背圧の変動につながり得る。それゆえに、液滴吐出ヘッド用の流体供給システムは、背圧の変化に応答して補償するための何らかの形態の制御デバイスまたはプロセスを含むことが多い。制御は、アクティブ(フィードバックループなど)またはパッシブ(圧力減衰器/ダンパなど)であってもよい。
【0005】
近年、全体を覆うか、または画像および/もしくはテキストおよび/もしくは織物で表面を装飾および/もしくはカスタマイズするかのいずれかのために、三次元物体などのより複雑および/もしくは大きい形状、または壁などの表面、または車両などの物体上に印刷することに関心が高まっている。従来、これらの多くは、スプレー塗装などの技術を使用してコーティングされているが、これは、環境被害またはオペレータへの危害を防止するために対処することが困難または高価であり得る、大気中への流体の大量の小粒子の放出に起因して望ましくない場合がある。それゆえに、液滴吐出ヘッドを使用して複雑なおよび/または大きい形状および表面上に印刷することは、大気中への大量の小粒子の放出なしで、標的化および制御された様式で表面上に印刷する能力に起因して、関心が集まる。そのような技術はまた、インク/流体体積の要件、および、したがって、コストを低減し得る。さらに、印刷技術は、複数の色または流体タイプを一度に使用すること、および限られた数の通過で複雑な印刷ジョブの印刷を可能にし得る。
【0006】
大型/複雑な形状および表面上に印刷することは、例えば、多軸機械またはガントリシステムまたはロボットアームなどの産業用ロボットの使用を必要とし得る。そのような用途における液滴吐出ヘッドの移動は、大きくて急速な圧力変化につながり得、既存の制御方法は、補償することができない場合があり、液滴吐出ヘッドの滲出もしくは空気の取り込みを防止することを困難にするか、または印刷された画像に観察可能な欠陥を引き起こす。本発明の目的は、そのような不利益を防止することである。
【0007】
図10aは、走査用途における移動液滴吐出ヘッド60を使用して、基材81上に印刷することを図示する。走査用途では、液滴吐出ヘッド60は、一方向のみに前後に移動されるが、一方、基材81は、液滴吐出ヘッド移動方向84に対して直角にある基材移動方向83で液滴吐出ヘッド60の下に移動される。動作中、アイドル液滴吐出ヘッド60は、基材上で移動して(図10a(i))第1のスワス82(i)を印刷する前に、一定の印刷速度に達するように加速される。第1の印刷スワスの完了後、液滴吐出ヘッド60が減速され、次いで、反対方向に加速されて、図10a(ii)に示されるように、次のスワス82(ii)を印刷する。液滴吐出ヘッド60の加速および減速は、流体に作用する慣性力に起因して圧力変化を誘発することになるが、通常、例えば、基材81のいずれかの側への印刷領域の外側の領域内で加速/減速を実施することによって効果が制限される。
【0008】
図10bは、移動液滴吐出ヘッド60を使用して、三次元(3D)物体80上に印刷することを図示する。図10aに図示される走査用途に関しては、液滴吐出ヘッド60は、加速および減速されて、物体80の様々な部位で正しい場所および速度を得る。加えて、液滴吐出ヘッド60の配向は、物体80の表面に向かって配向された液滴を保つように変化しなければならないことになる。しかしながら、走査用途とは異なり、そのような速度および配向の変化は、印刷されない領域に制限されることができず、また、ノズル内の所望の位置の範囲内のメニスカスを維持するために、誘発される圧力変化は、補償される必要がある。これを行うために、上記に論じられるように、背圧が制御される必要がある。
【0009】
図11a~cは、3つの異なる位置の液滴吐出ヘッド60を図示し、液滴吐出ヘッド60の配向の変化が、液滴吐出ヘッド60のノズルプレート61で流体に作用する流体カラムの高さをどのように変化させ(Δh)、その結果、誘発された圧力170(ΔP)をどのように変化させることになるかを説明する。図11aおよび11bでは、液滴吐出ヘッド60は、センサ/コントローラ50/10に強固に固定されるが、図11cでは、液滴吐出ヘッド60は、センサ/コントローラ50/10に対して回転すること、および湾曲経路160に沿って移動することができる。図11cにおける高さの差Δh3は、液滴吐出ヘッド60が湾曲経路160に沿って移動する際の、所与の時間インスタンスに対して示されている。
【0010】
ΔP=ρgΔh、式中、ρは、流体の密度(典型的には、約1000kg/m)、およびΔhは、ノズルプレート61とセンサ/コントローラ50/10上の所定の場所51との間の流体カラムの高さである。重力加速度gが10m/sであるとする場合、
【表1】
【0011】
それゆえに、三次元物体、または水平ではない表面に対処するために、1つ以上の液滴吐出ヘッド60を移動させることを伴う印刷方針は、流体カラムの高さΔhが変動するにつれて、誘発された圧力変化につながり得、これは、背圧の変化を引き起こし、ノズル内のその所望の位置範囲の外側に移動するメニスカスに潜在的につながることが上記から理解され得る。背圧を能動的に制御することが知られている、例えば、重力供給システムにおいて、リザーバ内の流体のレベルは、リザーバ内の流体レベルとノズルプレート61との間で測定される、流体カラムの高さΔhを制御するように調整され得る。図11a~cに示されるものなどの他のシステムでは、重要な流体カラムの高さΔhは、ノズルプレート61と、制御デバイス10が位置する所定の場所51との間の高さである(図11a~cに示される)。圧力は、所定の場所51で測定され、所望の範囲内に背圧を維持するために、制御デバイス10を使用して調整され得る。しかしながら、液滴吐出ヘッド60が急速に加速/減速されるか、配向もしくは方向の変化を有する場合、測定された圧力変化に応答して前記背圧を調整することは、遅過ぎる可能性があり、最良な場合でも、物体/基材上の印刷された画像の観察可能な欠陥につながり得る液滴吐出性能における望ましくない変動、または最悪の場合、滲出もしくは空気の取り込みにつながり、後者は、空気が液滴吐出ヘッドから除去されることができない場合、ノズルの故障につながり得る。本発明は、上記の欠陥を予防するために、より効果的な圧力予測を提供し、圧力予測を使用することによる、より効果的な圧力制御、ならびに補正方法において圧力予測を実施するための流体供給システム、コントローラ、および装置を提供することを目的としている。
【発明の概要】
【0012】
本発明の態様は添付の独立請求項に記載され、本発明の特定の実施形態の詳細は添付の従属請求項に記載されている。
【0013】
本開示の第1の態様によると、1つ以上の液滴吐出ヘッド内の流体圧力を制御するためのプロセッサ制御サブコントローラが提供され、サブコントローラが、
・1つ以上の液滴吐出ヘッドの各々に対する液滴吐出ヘッド移動プロファイルを受信することと、
・それぞれの液滴吐出ヘッド移動プロファイルを使用して、1つ以上の液滴吐出ヘッドの各々について、1つ以上の所定の場所でそれぞれの誘発された流体圧力プロファイルを決定することと、
・1つ以上の液滴吐出ヘッドで維持されることになる、それぞれの誘発された流体圧力プロファイルおよび所定の圧力窓に基づいて、1つ以上の液滴吐出ヘッドの各々に対してそれぞれの圧力補正データを生成することと、を行うように構成されている。
【0014】
本開示の第2の態様によると、1つ以上の液滴吐出ヘッド内の流体圧力を制御することを含む印刷プロセスを制御するように構成されたプロセッサ制御コントローラが提供され、コントローラが、
・印刷方針を受信することと、
・印刷方針を使用して1つ以上の液滴吐出ヘッドの各々に対するそれぞれの液滴吐出ヘッド移動プロファイルを計算することと、を行うように構成されている。
【0015】
特定の実施形態によると、1つ以上の液滴吐出ヘッド移動ファイルを、第1の態様によるサブコントローラに送信するようにさらに構成された、第2の態様によるコントローラが提供される。
【0016】
特定の他の実施形態によると、第1の態様によるサブコントローラの機能を組み込むようにさらに構成された、第2の態様によるコントローラが提供される。
【0017】
本開示の第3の態様によると、流体供給部と、第1の態様によるサブコントローラまたは第2の態様によるコントローラと、を備える、流体供給システムが提供され、流体供給部が、流体リザーバおよび1つ以上の流体供給経路を備え、1つ以上の流体供給経路が、第1の端で流体供給部に接続されており、第2の端で1つ以上の液滴吐出ヘッドに接続するように構成されている。
【0018】
特定の実施形態によると、第3の態様による流体供給システムが提供され、流体供給システムが、1つ以上の所定の場所に位置する1つ以上の制御デバイスをさらに備え、1つ以上の制御デバイスが、第1の態様によるサブコントローラおよび/または第2の態様によるコントローラと通信している。
【0019】
特定の実施形態によると、1つ以上の所定の場所における圧力を測定するために位置し、かつ第1の態様によるサブコントローラおよび/または第2の態様によるコントローラと通信して、そこに圧力測定値を提供する、1つ以上の圧力センサをさらに備える、第3の態様による流体供給システムが提供される。
【0020】
本開示の第4の態様によると、第3の態様による流体供給システムを備える装置が提供され、装置が、1つ以上の流体供給経路の第2の端で流体供給システムに流体接続された1つ以上の液滴吐出ヘッドと、1つ以上の移動デバイスと、をさらに備え、移動デバイスが、その上に1つ以上の液滴吐出ヘッドのうちの1つ以上を装着するように構成されている。
【0021】
本開示の第5の態様によると、第3の態様による流体供給システムに流体接続された1つ以上の液滴吐出ヘッド、または第4の態様による装置を使用して印刷する方法が提供され、方法が、
・液滴吐出ヘッド移動プロファイルを受信する工程と、
・それぞれの液滴吐出ヘッド移動プロファイルを使用して、1つ以上の液滴吐出ヘッドの各々について、1つ以上の所定の場所でそれぞれの誘発された流体圧力プロファイルを決定する工程と、
・誘発された流体圧力プロファイルおよび所定の圧力窓に基づいて、1つ以上の所定の場所における圧力補正データを生成する工程と、
・圧力補正データに基づいて、1つ以上の所定の場所に対するそれぞれの圧力補正ファイル(複数可)を生成する工程と、を含む。
【0022】
一実施形態によると、圧力補正ファイル(複数可)を生成することが、流体供給システムにおけるさらに予測可能な圧力変動を調整することをさらに含み得る。
【0023】
あるいは、または加えて、方法は、感知された圧力と所定の圧力窓との間に差が存在する場合に、流体供給システム内の圧力を調整することをさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】プロセッサ、流体供給システム、移動デバイス、および液滴吐出ヘッドを図示し、流体供給システムは、流体供給部、プロセッサによって制御されるサブコントローラ、および制御デバイスを備える。
図2a】半円経路で一緒に移動する液滴吐出ヘッドおよびセンサ/コントローラを図示する。
図2b図2aの液滴吐出ヘッドおよびセンサ/コントローラに対する、誘発された圧力プロファイルおよび圧力調整プロファイルの代表的な図である。
図3図1のサブコントローラのためのプロセス工程を図示する。
図4図1にあるものと同様のプロセッサ、流体供給システム、移動デバイス、および液滴吐出ヘッドを図示し、流体リザーバ内の制御デバイス、および圧力センサをさらに備える。
図5図4のサブコントローラのためのプロセス工程を図示する。
図6】制御デバイス、センサ、サブコントローラ、およびマスターコントローラを備える、貫流可能な流体供給システムを図示し、貫流可能な流体供給システムが、液滴吐出ヘッドに接続されている。
図7図6のコントローラのためのプロセス工程を図示する。
図8】3D物体をアドレス指定している装置を図示し、装置は、流体供給システムと、移動デバイスと、流体供給システムに接続され、かつ移動デバイス上に装着された、液滴吐出ヘッドと、を備える。
図9】制御デバイスと、マスターコントローラと、液滴吐出ヘッドに接続された流体供給システムと、を備える、流体供給システムを図示する。
図10a】移動液滴吐出ヘッドを使用して移動基材上に印刷することを図示する。
図10b】移動液滴吐出ヘッドを使用して3D物体上に印刷することを図示する。
図11a】垂直に配向された液滴吐出ヘッドおよびセンサ/コントローラを図示する。
図11b】水平に配向された液滴吐出ヘッドおよびセンサ/コントローラを図示する。
図11c】センサ/コントローラとは独立して回転する液滴吐出ヘッドを図示する。
【0025】
図面は原寸に比例したものではなく、特定の特徴がより明瞭に見えるように誇張されたサイズで示されている場合があることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで、実施形態およびそれらの様々な実施を、図面を参照して説明する。以下の説明全体を通して、適切な場合に、同様の要素に同様の参照番号が使用される。
【0027】
図1は、プロセッサ35、流体供給システム40、移動デバイス70、および移動デバイス70上に装着された液滴吐出ヘッド60を図示し、流体供給システム40は、流体供給部46、プロセッサ35によって制御されるサブコントローラ20、および制御デバイス10を備える。流体供給部46は、流体リザーバ41および流体供給経路42を備え、流体供給経路42の第1の端は、流体リザーバ41に接続され、流体供給経路42の第2の端は、矢印44によって示されるように、動作中に、流体供給部46が、流体リザーバ41から流体供給経路42を介して液滴吐出ヘッド60に流体(インクなど)を送達するように、液滴吐出ヘッド60に接続するように構成されている。他の構成では、流体供給部は、ポンプ、ダンパ、流量計、流量調節器、追加の中間リザーバ、弁、ヒータ/クーラ、温度センサ、脱気装置などの、流体供給部の動作に必要とされるさらなる構成要素を含み得ることが理解され得る。プロセッサ35は、サブコントローラ20、液滴吐出ヘッド60、移動デバイス70、および流体リザーバ41、存在する場合、ポンプ、流量調節器などのその任意の構成部品を制御するように構成されている。プロセッサ35はまた、オペレータがそれとインターフェースし、印刷プロセスを調整する手段を備え得、例えば、プロセッサ35は、パーソナルコンピュータ、または任意の他の好適な装置であり得る。
【0028】
制御デバイス10は、流体供給部46の圧力を制御することができるように、流体供給経路42に流体接続されるように、流体供給経路42内に位置するか、またはそこに隣接する流体供給システムの一部である。この実施態様では、制御デバイス10は、液滴吐出ヘッド60に近接して位置する。サブコントローラ20は、制御デバイス10を制御するように構成されている。サブコントローラは、システムオンチップモジュールであり得る。サブコントローラは、ソフトウェア要素および/またはFPGA論理を含み得る。
【0029】
ここで図2aを参照すると、これは、移動プロファイルが、液滴吐出ヘッド60によって追跡される半円経路160から(例えば、それに基づいて計算されて)導出され得るように、一緒に移動している液滴吐出ヘッド60および制御デバイス10を図示する。図2bは、図2aの液滴吐出ヘッド60が半円経路160に沿って移動する際に、ノズルプレート61と所定の場所51との間の流体カラムの高さΔhが時間と共に変動するときに、予測された誘発された流体圧力プロファイル170がどのように変動し得るかの概略図である。図2bはまた、補正された圧力プロファイル200の表現を図示し、誘発された圧力プロファイル170は、所定の圧力窓150内に留まるように補正されている。
【0030】
既に説明されたように、誘発された圧力変化の測定値に応答して流体供給部を調整する方法が存在するが、誘発された圧力が急速に変化している用途(配向および/または位置および/または速度の変化に起因して)では、そのような方法は、低速過ぎて応答することができない場合があり、それゆえに、滲出/空気の取り込み、または液滴サイズおよび速度、したがって、印刷品質/外観の望ましくない変動を防止するために、所定の圧力窓150内でノズルプレート61における圧力を制御することができない。本出願は、印刷方針を実行する前に、一部/全部の誘発された圧力変化を、それを決定(予測)することによって補償し、次いで、予測された誘発された圧力変化および所定の圧力窓150を使用して、所望の圧力補償方式を計算する。次いで、図1に図示されるような装置が、印刷時に使用されて、制御デバイス10は、印刷方針が実行される際、および印刷が進行する際に、流体供給部46の圧力を経時的に調整して、予測された圧力変化を補償する。これは、例えば、プロセッサ35からの移動プロファイル111と共に提供されるときにサブコントローラ20内で実施され得る一連のプロセス工程140を図示する、例えば、図3に示されるように行われ得る。そのため、液滴吐出ヘッド移動プロファイル111がプロセッサ35によってサブコントローラ20に提供される場合、サブコントローラ20は、
・液滴吐出ヘッド移動プロファイル111を使用して、液滴吐出ヘッド60について、所定の場所51で誘発された流体圧力プロファイル170を決定すること(工程115)と、
・液滴吐出ヘッド60で維持されるべき、誘発された流体圧力プロファイル170および所定の圧力窓150に基づいて、液滴吐出ヘッド60に対する圧力補正データを決定すること(工程120)と、を行うように構成されている。
【0031】
次いで、サブコントローラ20は、液滴吐出ヘッド60に対する圧力補正ファイル180を生成して(工程125)、次いで、外部デバイスに圧力補正ファイル180を提供すること、または圧力補正ファイル180を使用して、制御デバイス10を直接制御すること(工程126)、または内部コントローラを有し得る制御デバイス10に圧力補正ファイルを供給して、流体供給部46内の圧力を経時的に調整および制御することを行うように構成されている。制御デバイス10に近接してサブコントローラ20を配置することは、制御デバイスへ/から送信される通信が、短い時間スケールで伝達および受信されることを確保するために望ましい場合がある。
【0032】
所定の圧力窓150は、メニスカス圧力窓であり得、それによって、上限は、ノズルプレート61が湿潤し始める圧力(Pm=0mbar)であり、下限は、空気がノズルを通して取り込まれる圧力である。これらの限界は、使用される液滴吐出ヘッドのタイプ、ノズルサイズおよび形状(ノズルレイアウト)、ならびに使用される流体の特性などの、様々な因子に依存する。また、例えば、メニスカス圧力窓内の圧力変動が、液滴サイズおよび速度、したがって、印刷外観の望ましくない変動につながるほど十分に有意である場合、メニスカス圧力窓よりも狭い所定の圧力窓150が使用され得ることも理解され得る。
【0033】
所定の場所51は、液滴吐出ヘッド60に所定の圧力窓150を維持するように、流体圧力を調整するために制御が適用されることになる位置であることがさらに理解され得る。そのような制御が適用される場所およびやり方に依存して、所定の場所51は、固定場所にあり得るか、または移動場所にあり得ることがさらに理解され得る。例えば、制御デバイス10は、移動デバイス70上に位置し、かつ液滴吐出ヘッド60と共に移動し得るか、または2つが互いに独立して移動し得るか、または液滴吐出ヘッドのみが移動し得るが、制御デバイスの位置が固定されている。しかしながら、既に説明されたように、図11a~11cを参照すると、それは、相対移動、したがって、誘発された圧力170を決定するときに重要である、所定の場所51とノズルプレート61との間の流体カラムの高さΔhである。
【0034】
圧力補正データが決定され得るいくつかのやり方が存在することが理解され得、例えば、サブコントローラ20は、圧力補正データを生成するために計算を実施し得る。これは、物理法則を使用して計算され得、あるいは、サブコントローラ20は、ルックアップテーブルを使用し得るか、またはそれぞれの圧力補正データを生成するためにコンパレータを有し得る。コンパレータは、決定された誘発された流体圧力を、所定のまたは事前記憶された誘発された圧力と比較して、比較に基づいて、圧力補正データを出力し得る。さらに、サブコントローラがルックアップテーブルを使用する場合、これは、事前決定され、サブコントローラ20にコード化され得るか、または移動プロファイル111と共にサブコントローラに提供され得る。あるいは、サブコントローラ20は、事前較正プロセスを使用して、誘発された圧力プロファイル170および/または圧力補正データを生成し、例えば、装置は、ルックアップテーブルを生成するために、較正スイープを実施するために使用され得るか、または装置は、移動プロファイル111を使用して液滴吐出ヘッド経路を辿るために使用されて、その結果、誘発された圧力プロファイル170を測定および記録し、それを所定の誘発された圧力プロファイルと比較し、この比較から、圧力補正データが計算または決定され得る。例として、1つ以上の圧力センサ50は、液滴吐出ヘッドが通ることになる経路に沿って移動され、圧力変動が測定され得る。この様式で1つ以上の圧力センサ50を使用して、そのような較正スイープを実施するとき、センサは、測定された圧力がノズル内の圧力を表すように統合されなければならないことが理解され得る。あるいは、任意の他の好適な方法が、圧力補正データを決定するために使用され得る。次いで、圧力補正データは、圧力補正ファイル180を生成するために使用され得、サブコントローラ20は、液滴吐出ヘッド60および制御デバイス10が流体供給部46に流体接続されるときに、液滴吐出ヘッド60における所定の圧力窓150を維持するために、流体供給システム40の一部または全部の流体圧力を動的に調整するために、圧力補正ファイル180を使用して、所定の場所51に位置する制御デバイス10を制御するようにさらに構成され得る。
【0035】
多くの実施態様では、液滴吐出ヘッド60の近くに制御デバイス10を配置することが便利であり得ることが理解され得る。しかしながら、他の実施態様では、図4の点線で図示されるように、流体リザーバ41内に制御デバイス10bを配置することが好適であり得、またさらに、図4に図示されるように、いくつかの実施態様では、1つよりも多い制御デバイス10が望ましい場合がある。例えば、図4では、制御デバイスのうちの少なくとも1つは、流体リザーバ41に隣接して位置して流体接続されるか、または流体リザーバ41内に位置するかのいずれかであり、制御デバイス10のうちの少なくとも1つは、流体供給経路42に流体接続される。さらに、制御デバイス10のうちの少なくとも1つは、流体供給経路42の第2の端に隣接して位置して、流体接続される。例えば、圧力補正データがグローバルおよびローカルデータに分割され得るとき、1つよりも多い制御デバイス10が望ましい場合があり、それにより、液滴吐出ヘッドの高さのより低速の変化が、流体リザーバ41内の流体を制御することによって流体供給部46内の流体の圧力を調整することによって、グローバルに補償され得るが、一方、より急速な変化(例えば、所与の高さにおけるプリントヘッドの配向において)は、液滴堆積ヘッド60に近接して位置する制御デバイス10を使用して局所的に制御される。そのような状況では、圧力補正ファイル180は、2つの圧力補正ファイル180とすることができ、各制御デバイス10毎に1つとすることができる。さらに、流体供給システム40には、他の圧力変動源が存在し得ることが理解されるべきであり、それらのいくつかはまた、印刷負荷もしくは印刷デューティが変動する際の流体需要の変化、または静水圧変動を引き起こす液体リザーバ41の枯渇もしくは流体供給システム40内のポンプ(複数可)の既知の性能に起因する変動、パイプ長さに起因する圧力変動、または粘性減衰などに先立って、予測可能である/計算可能である/測定可能である/較正され得る。そのような場合のプロセス工程は、より多くの誘発された圧力変化170を決定し、より多くの因子を補償する圧力補正ファイル(複数可)180を生成するために、ポンプ性能、流体需要データ、リザーバ枯渇情報などの追加情報がサブコントローラ20に提供されることを除いて、図3のものと同様である図5に図示されたものと同様であり得る。
【0036】
図4はまた、液滴吐出ヘッド60に隣接する所定の場所における、またはそこに隣接する圧力を測定するために、液滴吐出ヘッド60に近接して位置する圧力センサ50をさらに備える、流体供給システム40を図示する。さらに、センサ50は、サブコントローラ20と通信して、それに圧力測定値を提供する。さらに、センサ50が、所定の場所に隣接しているが、そこではない場所における圧力を測定する場合、圧力測定を提供するセンサ、またはサブコントローラ20/コントローラ30が、場所における差を考慮して圧力測定値を調整し得ることが理解され得る。流体供給システム40内に1つよりも多いセンサ50が存在し得ること、例えば、システム内に存在する制御デバイス10毎に隣接して1つ、または(適用可能である場合)液滴吐出ヘッド60毎に隣接して1つ存在し得ることが理解され得る。言い換えると、圧力センサ50は、サブコントローラ20に接続され、それによって制御されて、その結果、サブコントローラ20は、所定の場所51において、またはそこに近接して測定される、流体供給経路42内の圧力の1つ以上の圧力測定値を受信するように構成されている。そのようなセンサ50は、制御デバイス10が期待どおりに実施していること、および所望されるように流体圧力を調整していることのチェックを提供し得る。あるいは、センサ50はまた、流体供給システム40内の予測不可能な圧力変動を検出し得る。これらは、システムが動作している環境からのノイズもしくは振動、または移動デバイスからの同様のもの、または任意の他の予測不可能な圧力変動源に起因し得る。いくつかの実施態様では、予測可能な誘発された圧力変動および予測不可能な圧力変動の両方に対して調整し得るシステムを有することが望ましい場合があり、それに応じて、サブコントローラ20は、少なくとも1つ以上の圧力変動測定値、所定の圧力窓150、および/またはそれぞれの圧力補正データに基づいて、1つ以上の応答性圧力補正を決定するようにさらに構成され得る。次いで、サブコントローラ20は、液滴吐出ヘッド60における所定の圧力窓150を維持するために、流体供給システム40の一部または全部における流体圧力を動的に調整するために、応答性圧力補正を使用して制御デバイス10のうちの1つ以上を制御するようにさらに構成され得る。流体供給システム40内に位置するサブコントローラ20を使用することは、任意の測定された圧力変動への迅速な応答を確保するために、そのようなシナリオにおいて望ましい場合がある。
【0037】
ここで図6を参照すると、これは、プロセッサ35と、既に説明されたものと同様の流体供給システム40、流体供給経路42の第2の端で流体供給システム40に接続された液滴吐出ヘッド60、および液滴吐出ヘッド60が装着されている移動デバイス70を備える、印刷のための装置90と、を図示する。既に説明された構成との主な違いは、図6が、貫流システムを図示することであり、貫流システムは、流体リターン経路43がその第1の端で流体リザーバ41に、かつその第2の端で液滴吐出ヘッド60に接続されるように、1つ以上の流体供給経路42および1つ以上の流体リターン経路43を備える流体供給システム40である。貫流とは、リターン流矢印45によって示されるように、流体が流体供給システム40の周囲および液滴吐出ヘッド60を通って循環し、ある割合の流体が、液滴吐出ヘッド60内のノズルから引き出されて吐出され、残りの割合が、流体リザーバ41に戻されることを意味する。さらに、液滴吐出ヘッド60に隣接して位置する制御デバイス10aは、流体供給経路42および/または流体リターン経路43のいずれかにおいて流体圧力を制御するように構成されており、それにより、制御デバイスの少なくとも1つが、1つ以上の流体リターン経路のうちの1つの第2の端に隣接して位置することが分かる。それにより、流体リターン経路の第1の端が流体リザーバ41に位置し、第2の端が液滴吐出ヘッド60に隣接している。
【0038】
図6は、流体供給システム40がコントローラ30およびサブコントローラ20を備えるという点で、既に説明された構成とはさらに異なる。図6のコントローラ30は、既に説明された構成において、プロセッサ35で実施された工程のうちのいくつかを実施することが理解され得る。そのため、例えば、図6では、コントローラ30は、液滴吐出ヘッド60内の流体圧力を制御することを含む印刷プロセスを制御するように構成されたプロセッサ制御コントローラ30であり、コントローラ30は、
・プロセッサ35から印刷方針を受信することと、
・印刷方針を使用して、液滴吐出ヘッド60に対する液滴吐出ヘッド移動プロファイル111を計算することと、を行うように構成されている。
【0039】
次いで、コントローラ30は、実質的に本明細書に説明されたものであり得る、液滴吐出ヘッド移動プロファイル111をサブコントローラ20に送信するように構成されている。図7は、プロセスにおける主な工程を図示する:
・工程100-印刷ジョブデータを受信する、
・工程105-印刷ジョブデータを使用して、印刷方針106を決定する、
・工程110-移動プロファイル111を決定する、
・工程140を実施して(図3を参照して既に説明されたように)、圧力補正ファイル126を決定する、
・工程130-印刷ジョブを実行する。
【0040】
図6の装置90では、コントローラ30は、移動プロファイルをサブコントローラ20に送信して工程140を実施する。一旦、圧力補正ファイル126がサブコントローラ20によって決定されると、コントローラ30は、次いで、印刷ジョブを実行する。これは、コントローラ30が、液滴吐出ヘッド移動プロファイル111に従って液滴吐出ヘッド60を移動させるように、移動デバイス70を制御するようにさらに構成され得、また、印刷方針が、印刷コマンドを含み得、コントローラ30が、印刷コマンドを実行するように、液滴吐出ヘッド60を制御するようにさらに構成され得ることを意味する。またさらに、印刷方針は、流体要件を含み得、コントローラ30は、流体要件を満たすように、流体供給システム40および/または流体リザーバ41を制御するようにさらに構成され得る。上記のプロセスは、必要なタスクまたは工程のうちの1つの特定の部分であり、他の実施形態では、タスクのバランスがプロセッサ35、コントローラ30、およびサブコントローラ20の間で異なって分配され得ることが理解され得る。
【0041】
ここで図8を考慮すると、これは、プロセッサ35および装置90を図示する。装置90は、図6に説明されるものと同様である。単純化のために、流体供給システムは、流体供給経路を示す矢印を有する単純化された形態で図示されている。この構成では、移動デバイス70は、ロボットアーム72として概略的に示され、液滴堆積ヘッド60は、ロボットアーム72上のマウント71上に配置され、3D物体80をアドレス指定して示されている。ロボットアーム72の使用は、液滴吐出ヘッドが、3D物体80の表面または非平坦表面上の隆起および輪郭に対処することを可能にすることが分かる。したがって、装置90は、3つ以上の方向および/または配向で移動可能であるように構成された移動デバイス70を備え、さらに、移動デバイス70は、複数の自由度を有するロボットアーム72である。移動デバイス70は、複数の自由度を有する任意の好適なデバイスまたは機構とすることができることが理解され得る。図6に図示される構成との主な違いは、図8の構成では、サブコントローラ20が省略されており、コントローラ30がサブコントローラ20の機能を組み込むように構成されていることである。特定の実施態様の要件によると、流体供給システム40は、1つ以上の所定の場所51に位置する1つ以上の制御デバイス10を備え得、制御デバイス10は、サブコントローラ20および/またはコントローラ30と通信し得ることが理解され得る。
【0042】
ここで図9を参照すると、これは、装置90およびプロセッサ35を備える、以前の図と同様の構成を図示する。装置90は、上記の実施態様と同様の特徴を備えるが、1つの液滴吐出ヘッド60の代わりに、2つが存在し、両方、同じ移動デバイス70上に装着されている。他の実施態様では、複数の液滴吐出ヘッド60が存在し得、全て、同じ移動デバイス70上に装着され得るか、または移動デバイス70またはロボットアーム72毎に1つの液滴吐出ヘッド60が存在し得るか、または移動デバイス70毎に1つよりも多い液滴吐出ヘッド60が存在する、複数の液滴吐出ヘッド60および複数の移動デバイス70を含む、1つ以上の移動デバイス70上に装着された液滴吐出ヘッド60の列または配列の任意の他の構成が存在し得る。図8と同様、図9は、コントローラ30を有するが、サブコントローラ20を有していないため、コントローラ30は、サブコントローラ20の機能を含むことになる。コントローラはまた、さらなる機能を含み得る。例えば、図9のコントローラ30は、液滴吐出ヘッド60、移動デバイス70、および制御デバイス10bを組み込む流体供給部41と通信して、それらを制御する。また、3つのさらなる制御デバイスが存在し、1つ(10a)は、流体供給経路42が2つの副経路42-1および42-2に分割する点に隣接して位置し、1つ(10-1、10-2)は、各液滴吐出ヘッド60に隣接して位置し、2つの副経路42-1、42-2の各々は、それらのそれぞれの第2の端で液滴吐出ヘッド60に接続されている。流体供給経路42は、2つよりも多い液滴吐出ヘッド60が存在する場合、より多くの副経路に分割され得ること、または別個の流体供給経路42a、b、c…nが、液滴吐出ヘッド60毎または液滴吐出ヘッド60のグループ毎に提供され得ることが理解され得、各液滴吐出ヘッド60が流体供給システム40に接続され、かつ流体を供給されるように、後者において同様の流体供給経路分割点を有する。したがって、流体供給システム40は、複数の流体供給経路42および複数の制御デバイス10を備え得る。図9は、液滴吐出ヘッド60毎の制御デバイス(10-1および10-2)を図示するが、1:1の関係は必要とされない場合があることが理解され得、単一の制御デバイス10が、例えば、いくつかの液滴吐出ヘッド60を、例えば、それらが密接にグループ化されている場合、および/または液滴吐出ヘッド60間の固定位置関係において、制御してもよい。1つ以上の制御デバイス10は、動作中に流体供給システム40の一部または全部の中で流体圧力を動的に調整するように制御可能であるように構成され得、制御デバイス10は、図9にあるように、コントローラ30によって、または他の実施態様で図示されるようにサブコントローラによって制御され得る。
【0043】
本明細書に説明される構成および実施態様は、垂直もしくは非平坦もしくは三次元表面上に、または三次元形状もしくは物体などの複雑な形状上に印刷する方法と共に使用され得る。そのような方法は、本明細書に説明されるように流体供給システム40に流体接続された1つ以上の液滴吐出ヘッド60を使用し得、方法は、
・1つ以上の液滴吐出ヘッド移動プロファイル111を受信する工程と、
・それぞれの液滴吐出ヘッド移動プロファイル111を使用して、1つ以上の液滴吐出ヘッドの各々について、1つ以上の所定の場所でそれぞれの誘発された流体圧力プロファイルを決定する工程と、
・誘発された流体圧力プロファイルおよび所定の圧力窓に基づいて、1つ以上の所定の場所における圧力補正データを生成する工程と、を含む。
【0044】
所定の圧力窓は、使用される液滴吐出ヘッド、使用される流体、流体供給システム40と液滴吐出ヘッド60との間の距離および/または角度、流体供給パイプ直径、ならびに流体供給システム40が備え得る任意の他の構成要素に依存し得、さらに、所定の圧力窓は、印刷性能を最適化するために、メニスカス圧力窓または(可能なより狭い)圧力範囲であり得る。印刷する方法は、動作中に流体供給システム40内の流体圧力を制御し、それによって、1つ以上の液滴吐出ヘッド60における所定の圧力窓150を維持するが、一方で、印刷コマンドを受信し、印刷コマンドを実行して、それにより、液滴吐出ヘッド(複数可)60が、基材上に画像を印刷するが、一方で、液滴吐出ヘッド60の移動プロファイル111に従って1つ以上の液滴吐出ヘッド60を移動させることをさらに含み得る。
【0045】
流体供給システム40内に他の予測可能な圧力変動が存在する場合、それゆえに、圧力補正データの生成が、流体供給システム40内のさらに予測可能な圧力変動のために調整することをさらに含み得ることが理解され得る。実施態様に依存して、圧力補正データを計算する1つ以上のやり方が実装され得、例えば、印刷する方法は、以下のうちの1つ以上を含み得る:
・圧力補正データを生成することが、例えば、物理の公式および/または法則を使用して、計算を実施することを含む、
・圧力補正データを生成することが、ルックアップテーブルを使用することを含む、
・圧力補正データを生成することが、コンパレータを使用することを含む、
・圧力補正データを生成することが、事前印刷較正プロセスを実施することを含む。
【0046】
一旦、圧力補正データが決定されると、印刷する方法は、1つ以上の制御デバイス10、および圧力補正ファイルとして提供され得る圧力補正データを使用して、流体供給システム40内の圧力を動的に調整することによって、動作中に流体供給システム40内の流体圧力を制御することを含み得る。
【0047】
印刷する方法は、例えば、1つ以上の所定の場所51で、1つ以上のセンサ50を使用して、1つ以上の場所で流体供給システム40内の圧力を感知することをさらに含み得る。これは、制御デバイスが流体供給システムにおける誘発された圧力を正しく補正していることのチェックとして実施され得るか、または、センサが、追加的/代替的に使用されて、例えば、環境的に誘発された振動、または装置90の構成部品からの振動に起因する、流体供給システム40における予測不可能な圧力変動を測定し得る。それゆえに、方法は、感知された圧力と所定の圧力窓との間に差が存在する場合に、流体供給システム40内の圧力を調整することをさらに含み得る。
【0048】
移動プロファイル111を決定するために、印刷方針が決定される必要があり得ることが理解され得、これは、プロセッサ35内で計算/画定され得る。例えば、印刷する方法は、印刷方針を決定することが、印刷グリッド、印刷解像度、スワスプロファイル、層数、およびステッチングのうちの1つ以上を使用することを含むように、印刷ジョブデータを決定または受信すること、および印刷ジョブデータを使用することを伴い得る。何が印刷されるかが決定されると、印刷する方法は、印刷方針を決定することをさらに含み、印刷方針を決定することは、1つ以上の液滴吐出ヘッド60に対する液滴吐出ヘッド移動プロファイル111を計算することを含む。そのような計算は、液滴吐出ヘッド経路、液滴吐出ヘッド速度、液滴吐出ヘッドの加速もしくは減速、および/または液滴吐出ヘッド配向を計算することを含み得ることが理解され得る。印刷方針を決定することはまた、印刷コマンドおよび流体要件を決定することを含み得る。
【0049】
コントローラは、コンピューティングデバイス、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、プロセッサ素子およびFPGA論理を含むシステムオンチップモジュール、または流体供給システムおよび/もしくは液滴吐出ヘッドの様々な構成要素の機能を制御するための任意の他の好適なデバイスとすることができる。プロセッサは、例えば、マイクロプロセッサまたはコンピュータであってもよい。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11a-c】