(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】バンドおよび時計
(51)【国際特許分類】
A44C 5/10 20060101AFI20241224BHJP
A44C 5/04 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
A44C5/10 511G
A44C5/10 510J
A44C5/04 J
(21)【出願番号】P 2022050712
(22)【出願日】2022-03-25
【審査請求日】2024-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】野間 陽介
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-149807(JP,A)
【文献】実公昭47-21651(JP,Y1)
【文献】実開昭57-062911(JP,U)
【文献】特開平11-253215(JP,A)
【文献】特開2003-79410(JP,A)
【文献】米国特許第03857237(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 5/00-5/04,5/10,11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが連結ピンを有する複数の駒であって、他の駒の連結ピンを保持することにより前記他の駒と所定方向に連結された複数の駒を有する時計のバンドであって、
前記複数の駒は、前記他の駒から取外し可能な調節駒を含み、
前記調節駒は、
胴部と、
前記胴部の前記所定方向における一端から延出して前記胴部の方向に巻かれた弾性体により形成され、前記他の駒の連結ピンを前記胴部との間から取外し可能に保持する保持部と、を有し、
前記保持部の先端部は前記保持部の内側に向かって折り込まれ、前記保持された他の駒の連結ピンを前記内側に折り込まれた先端部の弾性力により前記胴部の側に押圧して固定する、
ことを特徴とするバンド。
【請求項2】
前記胴部は、前記保持部に対向する湾曲面を有し、
前記保持部の先端部は、前記保持された連結ピンを前記湾曲面に押圧して固定する、
請求項1に記載のバンド。
【請求項3】
前記調節駒は、前記胴部の上面を覆う、前記胴部とは別体として形成されて前記所定方向に延伸する弾性体である板材をさらに有し、
前記保持部は、前記板材の、前記胴部から延出した部分が巻かれることにより形成される、
請求項1または2に記載のバンド。
【請求項4】
前記胴部の前記所定方向に延伸する側面には胴部貫通孔が形成され、
前記板材は、前記胴部貫通孔を覆うように前記胴部の前記側面に延出する延出部を有し、
前記延出部には、前記胴部貫通孔に対向するように板材貫通孔が形成され、
前記胴部と前記板材とは、前記胴部貫通孔および前記板材貫通孔を貫通する結合ピンによって結合される、
請求項3に記載のバンド。
【請求項5】
前記板材は、前記胴部の前記上面と下面とを覆い、
前記胴部と板材とは、前記板材が前記胴部の下面と係合することによって結合される、
請求項3に記載のバンド。
【請求項6】
請求項1-5のいずれか一項に記載のバンドを有することを特徴とする時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドおよび時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時計を腕等の身体に装着するためのバンドとして、複数の駒をピンによって連結したものが知られている。このようなバンドは、ピンを取り外して駒を着脱することにより、利用者の身体に合わせて長さを調節可能である。駒の着脱には工具や技術が必要であるため、バンドの調節は熟練した技術者によってなされることが一般的である。しかしながら、近年は電子商取引により時計を購入する利用者が増加しており、工具や技術を有しない利用者が自ら駒を着脱してバンドの調節をできるようにすることが求められている。他方で、時計の通常の利用時に駒が外れることがないように駒を適切に連結することも求められている。
【0003】
特許文献1には、駒の上面を覆う頂板の両端部が折り込まれて形成されたループにピンを嵌合させることにより駒が連結されるバンドが記載されている。このバンドにおいて、ループはピンが取外し可能となるように完全には閉塞しておらず、ピンは駒の内部においてループに対向するように配置されたばねに当接してループ内に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のバンドは、ピンをループ内に保持するためにループの外側にバネを有しており、構造が複雑であった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成で駒を適切に連結し、かつ利用者が道具を用いることなく駒を着脱することを可能とするバンドおよび時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るバンドは、それぞれが連結ピンを有する複数の駒であって、他の駒の連結ピンを保持することにより他の駒と所定方向に連結された複数の駒を有する時計のバンドであって、複数の駒は、他の駒から取外し可能な調節駒を含み、調節駒は、胴部と、胴部の所定方向における一端から延出して胴部の方向に巻かれた弾性体により形成され、他の駒の連結ピンを胴部との間から取外し可能に保持する保持部と、を有し、保持部の先端部は保持部の内側に向かって折り込まれ、保持された他の駒の連結ピンを内側に折り込まれた先端部の弾性力により胴部の側に押圧して固定することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るバンドにおいて、胴部は、保持部に対向する湾曲面を有し、保持部は、連結ピンを湾曲面に押圧して固定することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るバンドにおいて、調節駒は、胴部の上面を覆う、胴部とは別体として形成されて所定方向に延伸する弾性体である板材をさらに有し、保持部は、板材の、胴部から延出した部分が巻かれることにより形成されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るバンドにおいて、胴部の所定方向に延伸する側面には胴部貫通孔が形成され、板材は、胴部貫通孔を覆うように胴部の側面に延出する延出部を有し、延出部には、胴部貫通孔に対向するように板材貫通孔が形成され、胴部と板材とは、胴部貫通孔および板材貫通孔を貫通する結合ピンによって結合されることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るバンドにおいて、板材は、胴部の上面と下面とを覆い、胴部と板材とは、板材が胴部の下面と係合することによって結合されることが好ましい。
【0012】
本発明に係る時計は、本発明に係るバンドを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るバンドおよび時計は、簡易な構成で駒を適切に連結し、かつ利用者が道具を用いることなく駒を着脱することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0016】
図1は、実施形態に係る時計1の斜視図である。時計1は、本体部11およびバンド12等を有する。本体部11は、計時機能を有する機械式時計、クォーツ式アナログ時計、デジタル時計等である。バンド12は、本体部11の12時側に接続される12時側バンド121と、本体部11の6時側に接続される6時側バンド122とを有する。12時側バンド121の本体部11に接続されていない側の端部と、6時側バンド122の本体部11に接続されていない側の端部とは、不図示の中留めを介して相互に接続され、環状に形成される。利用者は、環状に形成されたバンド12に腕等を通すことで、時計1を装着する。以降の説明では、利用者が時計1を装着した状態で外部から視認可能な側(
図1の上側)を時計1の上側と称し、利用者に接触する側(
図1の下側)を時計1の下側と称することがある。
【0017】
バンド12は、その延伸方向に沿って連結された複数の駒を有する。複数の駒は、それぞれが後述する連結ピンを有し、他の駒の連結ピンを保持することによって他の駒とバンド12の延伸方向に連結される。複数の駒は、利用者によって他の駒から取外し可能に連結された調節駒13と、利用者によって他の駒から取り外されないように連結された固定駒14とを有する。
図1に示す例では、複数の駒は、本体部11に近いものが固定駒14であり、不図示の中留めに近いものが調節駒13であるように配列されている。利用者は、調節駒13をバンド12から取り外すことにより、バンド12の長さを調節することができる。なお、バンド12の延伸方向は、所定方向の一例である。
【0018】
図2は調節駒13の斜視図であり、
図3は調節駒13の分解斜視図である。調節駒13は、中駒15と、中駒15を挟んで配置された一対の外駒16とを有する。一対の外駒16は、連結ピンP1の両端を保持する。中駒15は、連結ピンP1を保持可能に形成される。中駒15が他の調節駒13の連結ピンP1を保持することにより、二つの調節駒13が連結ピンP1により連結される。
【0019】
中駒15は、胴部17と、胴部17の上面を覆い、バンド12の延伸方向に延伸する板材18とを有する。胴部17は、ABS樹脂等の樹脂またはステンレス若しくはチタン等の金属により形成される。板材18は、ステンレスまたはチタン等の弾性体である金属により形成される。
【0020】
胴部17の、バンド12の延伸方向に延伸する一対の側面の略中央には、胴部17の上面と接続するように凹部171がそれぞれ形成される。また、胴部17には、一対の凹部171の底面を貫通する胴部貫通孔172が形成される。胴部貫通孔172には、Cリング173が挿入される。胴部17の、バンド12の延伸方向における一端には、外駒16と係合するための係合部174が形成される。また、胴部17の、バンド12の延伸方向における他端には、湾曲面175が形成される。湾曲面175の下端には、湾曲面175と胴部17の下面とを接続するように切欠状の傾斜面176が形成される。
【0021】
板材18は、バンド12の延伸方向に延伸する胴部17の一対の側面にそれぞれ延出する一対の延出部181を有する。例えば、延出部181は板材18の一部を折り曲げることにより形成される。一対の延出部181は、胴部17の側面に形成された凹部171にそれぞれ嵌合する。好ましくは、延出部181が凹部171に嵌合した状態で、延出部181の表面は胴部17の側面と同一平面を形成する。これにより、中駒15の側面が平坦になり、中駒15と外駒16との接触面積が大きくなるため、中駒15と外駒16とが適切に結合される。
【0022】
一対の延出部181には、胴部貫通孔172に対向するように板材貫通孔182がそれぞれ形成される。板材貫通孔182は、延出部181が凹部171に嵌合した状態で、胴部貫通孔172と同軸になるように形成される。
【0023】
板材18は、胴部17の湾曲面175が形成されている側の一端から延出する。板材18の胴部17から延出した部分が胴部17の方向に巻かれることにより、後述する連結ピンを保持する保持部183が形成される。
【0024】
一対の外駒16は、柱状の連結部161によって相互に連結される。
図2および
図3に示す例では、連結部161は外駒16の下方に形成されており、四角柱状の形状を有している。一対の外駒16には、相互に対向するように、第1貫通孔162および第2貫通孔163がそれぞれ形成される。第1貫通孔162は、中駒15と一対の外駒16とを結合して調節駒13を形成するための結合ピンP2を挿通可能な形状を有する。第2貫通孔163は、一対の外駒16を結合するとともに複数の調節駒13を連結するための連結ピンP1を挿通可能な形状を有する。
【0025】
胴部17の係合部174は、外駒16の連結部161に係合可能となるように、連結部161に相補的な形状を有する。
図2および
図3に示す例では、連結部161が四角柱状であるため、係合部174は矩形状の切欠きによって形成されている。係合部174は、連結部161と係合した状態で、板材貫通孔182および胴部貫通孔172が第1貫通孔162に対向するように形成される。
【0026】
胴部17の係合部174が外駒16の連結部161に係合した状態で、一対の外駒16の第1貫通孔162、一対の延出部181の板材貫通孔182および胴部貫通孔172に結合ピンP2が挿通される。挿通された結合ピンP2は、胴部貫通孔172にあらかじめ挿入されたCリング173を貫通する。これにより、結合ピンP2がCリング173の内周と嵌合する。また、結合ピンP2が貫通することによってCリング173の外径が広げられ、Cリング173の外周が胴部貫通孔172の内周と嵌合する。このようにして、結合ピンP2が第1貫通孔162、板材貫通孔182および胴部貫通孔172に挿通された状態で保持される。
【0027】
胴部17と板材18とは、板材貫通孔182および胴部貫通孔172に挿通された結合ピンP2によって結合される。すなわち、板材貫通孔182および胴部貫通孔172に結合ピンP2が挿通されることにより、板材18の胴部17に対する平行移動が規制される。板材18の延出部181が凹部171に嵌合することにより、板材18の結合ピンP2を軸とする回動が規制される。
【0028】
また、中駒15と外駒16とは、結合ピンP2によって結合される。すなわち、外駒16の第1貫通孔162および胴部17の胴部貫通孔172に結合ピンP2が挿通されることにより、中駒15の外駒16に対する平行移動が規制される。胴部17の係合部174が外駒16の連結部161に係合することにより、中駒15の結合ピンP2を軸とする回動が規制される。
【0029】
一対の外駒16は、第2貫通孔163に挿通された連結ピンP1の両端を保持する。すなわち、一対の外駒16の第2貫通孔163には、連結ピンP1が挿通される。また、第2貫通孔163には、挿通された連結ピンP1の両端を塞ぐように、栓P1aが嵌合する。このようにして、連結ピンP1が第2貫通孔163に挿通された状態で保持される。
【0030】
図4は調節駒13の断面図であり、
図5および
図6は調節駒13の保持部183の近傍を拡大した一部拡大断面図である。
図4、
図5および
図6は、
図2のIV-IV断面における断面図である。
図4および
図5は、保持部183が他の調節駒13の連結ピンP1を保持することにより、二つの調節駒13が連結ピンP1によって連結された状態を示す。
図6は、保持部183が他の調節駒13の連結ピンP1を保持していない状態を示す。
【0031】
板材18の保持部183は、外力が加わっていない状態において、胴部17との最小距離Dが連結ピンP1の外径よりも小さくなるように形成され、他の調節駒13の連結ピンP1を内側に保持する。他の調節駒13の連結ピンP1が保持部183に保持されることにより、連結ピンP1により複数の調節駒13が連結される。
【0032】
保持部183の先端部184は、保持部183の内側に向かって折り込まれる。これにより、板材18には屈曲部185が形成され、先端部184は、折り込まれた状態から元に戻ろうとする方向Eに弾性力を作用させる板バネとして機能する。先端部184は、保持部183によって保持された連結ピンP1を折り込まれた先端部184の弾性力により保持部183の内側の胴部17の側に押圧して固定する。これにより、保持部183の先端を折り込むという簡易な構成により保持部183の内側で連結ピンP1が移動しなくなるため、振動等によって連結ピンP1が保持部183から脱落し、調節駒13がバンド12から外れることが防止される。すなわち、保持部183の先端部184が保持部183の内側に向かって折り込まれることにより、複数の調節駒13が適切に連結される。
【0033】
また、保持部183の先端部184が折り込まれることにより、屈曲部185の胴部17に対向する面Sが丸みを帯びる。これにより、連結ピンP1が保持部183の内側に入りやすくなり、調節駒13の取付けが容易になる。また、面Sが鋭利な屈曲面である場合と比較して利用者にとっての安全性が向上する。
【0034】
胴部17の湾曲面175は、保持部183との距離が最小距離Dとなる位置まで連続する。これにより、連結ピンP1が保持部183から取り外される際に、連結ピンP1が湾曲面175によって保持部183の外側まで案内されるため、調節駒13の取外しが容易になる。また、先端部184は、連結ピンP1を湾曲面175に押圧して固定する。これにより、連結ピンP1が保持された状態から取り外された状態になるまで、連結ピンP1が継続して湾曲面175に案内されるため、調節駒13の取外しがより容易になる。
【0035】
湾曲面175の下部には、湾曲面175と胴部17の下面とを接続するように切欠状の傾斜面176が形成される。これにより、連結ピンP1が保持部183の内側に入りやすくなり、調節駒13の取付けが容易になる。なお、
図4および
図5に示す例では傾斜面176は平面として形成されているが、このような例に限られない。傾斜面176は曲面によって形成されてもよく、複数の平面または曲面を組み合わせて形成されてもよい。
【0036】
調節駒13をバンド12から取り外すときには、利用者は調節駒13を上方に引き上げる。このとき、保持部183に保持されている連結ピンP1の両端は他の調節駒13の外駒16に保持されているため、上方に移動することはない。したがって、連結ピンP1が保持部183に対して相対的に下方に移動する。連結ピンP1は先端部184によって湾曲面175の方向に押圧されているため、
図5の矢印Fに示すように、湾曲面175に接触したまま保持部183と胴部17との間に移動する。保持部183と胴部17との最小距離Dは連結ピンP1の外径Gよりも小さいため、弾性体である保持部183は、連結ピンP1に押されて保持部183と胴部17との間のすき間が広がるように弾性変形する。この状態で保持部183と胴部17との最小距離Dが連結ピンP1の外径以上になると、連結ピンP1が保持部183と胴部17との間から取り外される。すなわち、保持部183は、他の調節駒13の連結ピンP1を取外し可能に保持する。
【0037】
調節駒13をバンド12に取り付けるときには、利用者は調節駒13を他の調節駒13の連結ピンP1に上方から押し付ける。このとき、屈曲部185の胴部17に対向する面が丸みを帯びており、胴部17の下面に傾斜面176が形成されているため、連結ピンP1は保持部183と胴部17との間に入り込む。保持部183と胴部17との最小距離Dは連結ピンP1の外径Gよりも小さいため、弾性体である保持部183は、連結ピンP1に押圧される。屈曲部185の胴部17に対向する面は丸みを帯びているため、保持部183の連結ピンP1との接触面Sは、連結ピンP1が押し込まれる方向に対して直交せずに傾斜する。
図6に示す例では、連結ピンP1が上方に押し込まれており、接触面Sは水平方向に対して傾斜している。屈曲部185が連結ピンP1から受ける押圧力は概ね接触面Sに直交する方向であるから、保持部183は、押圧力により保持部183と胴部17との間のすき間が広がるように弾性変形する。この状態で保持部183と胴部17との間の最小距離Dが連結ピンP1の外径G以上になると、連結ピンP1が保持部183の内側に入り、連結ピンP1が保持部183に保持される。このようにして、利用者は道具を用いることなく調節駒13を着脱することができる。
【0038】
また、
図4および
図5に示す例では二つの調節駒13が連結されているが、調節駒13と固定駒14も同様に連結される。すなわち、固定駒14が有する連結ピンを調節駒13の保持部183が保持することにより、固定駒14と調節駒13とが連結される。
【0039】
以上説明したように、バンド12は、連結ピンP1によって連結された複数の駒であって、他の駒の連結ピンP1を保持することにより他の駒とバンド12の延伸方向に連結された複数の駒を有する。複数の駒は、他の駒から取外し可能な調節駒13を有する。調節駒13は、胴部17と、胴部17の所定方向における一端から延出して胴部17の方向に巻かれた弾性体により形成され、連結ピンP1を胴部17との間から取外し可能に保持する保持部183とを有する。保持部183の先端部184は保持部183の内側に向かって折り込まれ、保持された連結ピンP1を弾性力により押圧して固定する。これにより、バンド12は、簡易な構成で駒を適切に連結し、かつ利用者が道具を用いることなく駒を着脱することを可能とする。
【0040】
また、胴部17は、保持部183に対向する湾曲面175を有する。保持部183は、連結ピンP1を湾曲面175に押圧して固定する。これにより、連結ピンP1が湾曲面175に沿って保持部183の外側まで案内されるため、調節駒13の取外しが容易になる。一般的に、利用者がバンド12を調節するときは、利用者は、あらかじめ連結されている複数の調節駒13を、バンド12が適切な長さになるまで順次取り外す。したがって、調節駒13の取外しが容易になることにより、バンドを調節する利用者の利便性が大きく向上する。
【0041】
また、調節駒13は、胴部17の上面を覆う、胴部17とは別体として形成されて所定方向に延伸する弾性体である板材18をさらに有する。板材18が胴部17とは別体として形成されることにより、バンド12の構成がより簡易なものとなる。すなわち、板材18を胴部17とは別体とすることにより、保持部183は平板状の板材18が巻かれることにより形成可能であり、延出部181は板材18を折り曲げることで形成可能である。また、胴部17は弾性を有する必要がないため、成形が容易な樹脂等により形成することができる。このように、板材18を胴部17とは別体とすることにより、調節駒13の構成がより簡易なものとなり、その製造が容易になる。
【0042】
また、胴部17の所定方向に延伸する側面には胴部貫通孔172が形成される。板材18は、胴部貫通孔172を覆うように胴部17の側面に延出する延出部181を有する。胴部17と板材18とは、胴部貫通孔172および板材貫通孔182を貫通する結合ピンP2によって結合される。これにより、別体として形成された胴部17と板材18とが適切に結合される。
【0043】
時計1およびバンド12には、次のような変形例が適用されてもよい。
【0044】
上述した説明では、板材18は胴部17と別体として形成されるものとしたが、板材18は胴部17と一体として形成されてもよい。すなわち、胴部17は弾性体により形成され、所定方向における一端から延出した部分が胴部17の方向に巻かれることによって保持部が形成されてもよい。これにより、胴部17と板材18とを連結するための、胴部17の凹部171および板材18の延出部181を形成する必要がなくなるため、バンド12の構造がより簡易になる。また、従来の時計のバンドと同様の一様な質感が表現される。
【0045】
上述した説明では、胴部17は湾曲面175を有するものとしたが、胴部17は湾曲面175を有しなくてもよい。例えば、胴部17の保持部183に対向する側面は平面であってもよく、複数の平面が組み合わせられた屈曲面であってもよい。この場合も、調節駒13が引き上げられた場合には保持部183が弾性変形して連結ピンP1が取り外されるため、利用者は道具を用いることなく駒を着脱することができる。また、このようにすることで、胴部17の形成が容易になる。
【0046】
上述した説明では、外駒16が連結部161を有するものとしたが、外駒16は連結部161を有しなくてもよい。これにより、中駒15が結合ピンP2を軸として外駒16に対して回動可能になるため、バンド12がより自在に屈曲するようになり、利用者にとっての利便性が向上する。
【0047】
上述した説明では、バンド12は調節駒13および固定駒14を有するものとしたが、調節駒13のみを有するものとしてもよい。
【0048】
上述した説明では、結合ピンP2はCリング173によって胴部貫通孔172に挿通された状態で保持されるものとしたが、このような例に限られない。例えば、結合ピンP2は、連結ピンP1と同様に栓によって保持されてもよい。結合ピンP2はコイルばね等の弾性体が内蔵されて両端が伸縮可能なばね棒であり、内蔵された弾性体の弾性力によって保持されてもよい。また、結合ピンP2は従来の時計に用いられている任意のピンであってもよい。
【0049】
図7は、他の実施形態に係るバンドの調節駒23の分解斜視図であり、
図8は、調節駒23の断面図である。
図8は、
図4と同様の断面における断面図である。調節駒23は、中駒25と、中駒25を挟むように配置された一対の外駒26とを有する。中駒25と一対の外駒26とは、結合ピンP2によって結合される。複数の調節駒23は、連結ピンP1によって連結される。
【0050】
外駒26は、連結部161を有しない点で外駒16と相違する。すなわち、一対の外駒26には、相互に対向するように、結合ピンP2を挿入するための第1貫通孔262および連結ピンP1を挿入するための第2貫通孔263がそれぞれ形成される。
【0051】
中駒25は、胴部27と、胴部27の上面を覆い、所定方向に延伸する板材28とを有する。胴部27は、凹部171、Cリング173および係合部174を有しない点で胴部17と相違する。また、胴部27は、傾斜面176に代えて切欠部277をさらに有する点で胴部17と相違する。胴部27の他の構成は胴部17のものと同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。板材28は、延出部181を有しない点で板材18と相違する。また、板材28は、屈曲部286をさらに有する点で板材18と相違する。板材28の他の構成は板材18のものと同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。調節駒23においては中駒25がCリング173を有しないため、結合ピンP2は、連結ピンP1と同様に、第1貫通孔262に嵌合する栓P2aによって保持される。
【0052】
切欠部277は、胴部27の下面の、保持部183に対向する側面との接続部に形成される。板材28の保持部183が形成されていない側の端部は、胴部27の上面、保持部183に対向する側面の反対側の側面および下面を覆うように曲げられる。また、板材28の保持部183が形成されていない側の先端部、すなわち胴部27の下面に接触する先端部は、胴部27の方向に折り込まれて屈曲部286を形成する。板材28が胴部27の上面、側面および下面を覆うとともに、板材28の屈曲部286が胴部27の切欠部277と係合することにより、胴部27と板材28とが結合する。
【0053】
好ましくは、切欠部277の、バンドの延伸方向における深さFは、板材28の厚さよりも大きい。これにより、胴部27と板材28とが結合したときに屈曲部286の一部が切欠部277から突出して連結ピンP1が保持部183から取り外される際の障害となることが防止され、調節駒23の取外しが容易になる。
【0054】
以上説明したように、胴部27の下面には切欠部277が形成され、板材28の保持部183が形成されていない側の端部は胴部27の方向に折り込まれて屈曲部286を形成する。板材28が胴部27の上面、側面および下面を覆うとともに、屈曲部286が切欠部277に係合することにより、胴部27と板材28とが結合する。これにより、より簡易な構成で駒を連結することが可能となる。すなわち、板材28は弾性体平板を折り曲げることのみによって形成可能である。
【0055】
また、切欠部277は、胴部27の下面の、保持部183に対向する側面との接続部に形成される。これにより、外部から胴部27と板材28との境界が視認されにくくなり、従来の時計と同様の一様な質感が表現される。
【0056】
上述した説明では、切欠部277が、胴部27の下面の、保持部183に対向する側面との接続部に形成されるものとしたが、このような例に限られない。切欠部277に代えて、胴部27の下面の任意の位置に板材28の屈曲部286が係合可能な溝が形成されてもよい。また、胴部27の側面に屈曲部286が係合可能な溝が形成されてもよい。これらの場合も、胴部27と板材28とが適切に結合される。
【0057】
上述した説明では、胴部27はCリングを有しないものとしたが、胴部17の場合と同様にCリングを有し、結合ピンP2はCリングによって保持されてもよい。この場合、調節駒23は栓P2aを有しなくてもよい。また、結合ピンP2は従来の時計に用いられている任意のピンであってもよい。
【0058】
図9は、他の実施形態に係るバンドの調節駒33の斜視図である。調節駒33は、交互に配置された二つの第1駒35と三つの第2駒36とを有する。第1駒35および第2駒36の構成は、中駒15および外駒16の構成とそれぞれ同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。すなわち、三つの第2駒36のうち、第1駒35を挟んで隣接する二つの第2駒36は、下方に設けられた柱状の連結部161によって相互に連結される。二つの第1駒35および三つの第2駒36は、一つの結合ピンP2によって結合される。二つの第1駒35は保持部183を有し、他の調節駒33の連結ピンP1を取外し可能に保持する。これにより、複数の調節駒33が連結ピンP1によって連結される。
【0059】
このように、調節駒33は複数の第1駒35を有する多段構造である。これにより、利用者により繊細な印象を与えることができる。従来の時計では、駒を連結するピンを取り外して駒を着脱する必要があるが、取外し可能なピンを用いる場合には調節駒33のような多段構造を実現することが困難となる場合がある。例えば、ピンとして両端が伸縮可能なばね棒を用いる場合、所望の弾性を得るために、ばねは所定の長さを有する必要がある。したがって、ピンを短くすることができないためにピンの延伸方向における中駒の幅を小さくすることが難しく、多段構造の実現が困難となる場合がある。調節駒33は、ピンを取り外すことなく駒を着脱可能であるため、ピンの種類にかかわらず多段構造を実現することができる。
【0060】
上述した説明では、調節駒33は二つの第1駒35および三つの第2駒36を有するものとしたが、このような例に限られず、より多くの第1駒35および第2駒36を有してもよい。また、上述した説明では、第1駒35および第2駒36はそれぞれ中駒15および外駒16と同様の構成を有するものとしたが、中駒25および外駒26と同様の構成を有するものとしてもよい。
【0061】
当業者は、本発明の範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 時計
12 バンド
13 調節駒
17 胴部
172 胴部貫通孔
175 湾曲面
18 板材
181 延出部
182 板材貫通孔
183 保持部
184 先端部
P1 連結ピン
P2 結合ピン