(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】熱処理システム
(51)【国際特許分類】
F27B 9/26 20060101AFI20241224BHJP
F27D 3/12 20060101ALI20241224BHJP
H01M 4/36 20060101ALN20241224BHJP
【FI】
F27B9/26
F27D3/12 Z
H01M4/36 Z
(21)【出願番号】P 2022146363
(22)【出願日】2022-09-14
【審査請求日】2024-04-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591076109
【氏名又は名称】エヌジーケイ・キルンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】棚村 雅史
(72)【発明者】
【氏名】大山 智明
(72)【発明者】
【氏名】磯野 隆規
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-154582(JP,A)
【文献】特開平08-313161(JP,A)
【文献】特開平09-105585(JP,A)
【文献】特開2005-026513(JP,A)
【文献】特開2008-145095(JP,A)
【文献】国際公開第2019/138887(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00 - 9/40
F27D 3/00 - 5/00
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
匣鉢本体と前記匣鉢本体に取付可能な蓋とを備える匣鉢に収容される被処理物を熱処理する熱処理炉であって、搬入口と搬出口とを備え、前記搬入口から前記搬出口に匣鉢を搬送する間に前記匣鉢に収容された被処理物を熱処理する、熱処理炉と、
前記熱処理炉の前記搬出口から搬出された前記匣鉢から前記蓋を取り外す蓋外し装置と、
前記蓋外し装置で前記蓋が外された前記匣鉢本体を搬送する本体搬送装置と、
前記蓋外し装置で外された前記蓋を搬送する蓋搬送装置と、
前記本体搬送装置の搬送経路上に設けられ、前記熱処理炉で熱処理された前記被処理物を前記匣鉢本体から回収する回収装置と、
前記本体搬送装置の搬送経路上であって、前記回収装置の下流に設けられ、前記被処理物が収容されていない前記匣鉢本体に、熱処理前の前記被処理物を供給する供給装置と、
前記本体搬送装置で搬送され、前記供給装置で熱処理前の前記被処理物が供給された前記匣鉢本体に、前記蓋搬送装置で搬送された前記蓋を取り付ける蓋取付け装置と、
を備えており、
前記蓋搬送装置の搬送経路は、前記本体搬送装置の搬送経路と平行であると共に、前記熱処理炉と前記本体搬送装置の搬送経路との間に配置されており、
前記蓋が前記蓋搬送装置の搬送経路の蓋外し装置側の入口から蓋取付け装置側の出口まで搬送される搬送時間は、前記匣鉢本体が前記本体搬送装置の搬送経路の蓋外し装置側の入口から蓋取付け装置側の出口まで搬送される搬送時間より短くされている、熱処理システム。
【請求項2】
前記匣鉢本体が前記本体搬送装置の搬送経路の蓋外し装置側の入口から蓋取付け装置側の出口まで搬送される搬送時間は、前記蓋が前記蓋搬送装置の搬送経路の蓋外し装置側の入口から蓋取付け装置側の出口まで搬送される搬送時間の1.1~5.0倍である、請求項1に記載の熱処理システム。
【請求項3】
前記蓋搬送装置の搬送経路の蓋取付け装置側の出口近傍に設けられ、前記蓋を整列させる蓋整列機構をさらに備えている、請求項1に記載の熱処理システム。
【請求項4】
前記蓋搬送装置の搬送経路に設けられ、前記蓋を清掃する清掃装置をさらに備えている、請求項1に記載の熱処理システム。
【請求項5】
前記蓋搬送装置の搬送経路に設けられ、前記蓋の不良を検査する蓋検査装置をさらに備えている、請求項1に記載の熱処理システム。
【請求項6】
前記蓋搬送装置の搬送経路であって、前記蓋検査装置の下流に設けられ、前記蓋検査装置で不良と判定された蓋を回収する蓋回収装置をさらに備えている、請求項5に記載の熱処理システム。
【請求項7】
前記蓋搬送装置の搬送経路に設けられ、前記蓋搬送装置の搬送経路に蓋を供給する蓋供給装置をさらに備えている、請求項6に記載の熱処理システム。
【請求項8】
前記蓋供給装置から供給される蓋を保管する蓋保管部をさらに備えている、請求項7に記載の熱処理システム。
【請求項9】
前記本体搬送装置の搬送経路を覆う第1フードと、
前記蓋搬送装置の搬送経路を覆う第2フードと、をさらに備えており、
前記蓋搬送装置の搬送面から前記第2フードまでの高さは、前記本体搬送装置の搬送面から前記第1フードまでの高さより小さくされている、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、被処理物を熱処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱処理炉(例えば、ローラーハースキルンやプッシャーキルン等)を用いて、被処理物を熱処理することがある。例えば、粉体等の被処理物を熱処理炉で熱処理する際には、被処理物は匣鉢に収容された状態で熱処理される。匣鉢は、再利用して繰り返し用いられる。例えば、特許文献1には、匣鉢に被処理物を供給する供給装置と、匣鉢内の被処理物を熱処理する熱処理炉と、匣鉢内から被処理物を回収する回収装置と、供給装置と熱処理炉と回収装置との間で匣鉢を搬送する搬送装置を備える熱処理システムの一例が開示されている。匣鉢は、搬送装置の搬送経路に沿って、供給装置と熱処理炉と回収装置との間を搬送方向に循環する。特許文献1では、匣鉢には蓋が取り付けられた状態で、熱処理炉内に投入される。一方で、匣鉢に被処理物を供給するときと、匣鉢内の被処理物を回収するときには、匣鉢本体から蓋を取り外す必要がある。特許文献1の熱処理システムは、熱処理炉と回収装置との間と、供給装置と熱処理炉との間に、匣鉢本体から蓋を取り外すと共に、匣鉢本体に蓋を取付ける蓋外し機構を備えている。2つの蓋外し機構のそれぞれは、蓋を把持するアームを備えている。アームで蓋を把持することで匣鉢本体から蓋が外され、匣鉢本体のみが回収装置や供給装置に搬送される。そして、回収装置で被処理物が回収され、あるいは、供給装置で被処理物が供給された匣鉢本体は、アームの下方に戻され、アームに把持されていた蓋が匣鉢本体に取り付けられる。このように、特許文献1の熱処理システムでは、同一の匣鉢本体には同一の蓋が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の熱処理システムでは、匣鉢本体と蓋との組み合わせが決められている。しかしながら、被処理物と直接接触した状態で熱処理炉内を搬送される匣鉢本体は、匣鉢本体の上部に取り付けられる蓋よりも劣化し易く、使用可能な回数が少なくなることが多い。同じ匣鉢本体に同じ蓋を取り付けて何度も熱処理に使用すると、熱処理時の熱変形により他の組み合わせで使用することができなくなることがある。このため、匣鉢本体と蓋との組み合わせが決まっていると、匣鉢本体が使用不能となったときに、蓋はまだ使用可能であっても匣鉢本体と一緒に使用できなくなる。
【0005】
本明細書は、匣鉢本体と蓋をそれぞれ効率良く使用するための技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する技術の第1の態様では、熱処理システムは、熱処理炉と蓋外し装置と本体搬送装置と蓋搬送装置と回収装置と供給装置と蓋取付け装置を備えている。熱処理炉は、匣鉢本体と匣鉢本体に取付可能な蓋とを備える匣鉢に収容される被処理物を熱処理する。熱処理炉は、搬入口と搬出口とを備え、搬入口から搬出口に匣鉢を搬送する間に匣鉢に収容された被処理物を熱処理する。蓋外し装置は、熱処理炉の搬出口から搬出された匣鉢から蓋を取り外す。本体搬送装置は、蓋外し装置で蓋が外された匣鉢本体を搬送する。蓋搬送装置は、蓋外し装置で外された蓋を搬送する。回収装置は、本体搬送装置の搬送経路上に設けられ、熱処理炉で熱処理された被処理物を匣鉢本体から回収する。供給装置は、本体搬送装置の搬送経路上であって、回収装置の下流に設けられ、被処理物が収容されていない匣鉢本体に、熱処理前の前記被処理物を供給する。蓋取付け装置は、本体搬送装置で搬送され、供給装置で熱処理前の被処理物が供給された匣鉢本体に、蓋搬送装置で搬送された蓋を取り付ける。蓋が蓋搬送装置の搬送経路の蓋外し装置側の入口から蓋取付け装置側の出口まで搬送される搬送時間は、匣鉢本体が本体搬送装置の搬送経路の蓋外し装置側の入口から蓋取付け装置側の出口まで搬送される搬送時間より短くされている。
【0007】
上記の熱処理システムでは、熱処理後に匣鉢本体から取り外された蓋と匣鉢本体が異なる搬送経路で搬送される。また、蓋搬送装置で搬送される蓋は、本体搬送装置で搬送される匣鉢本体より短い搬送時間で搬送される。蓋と匣鉢本体の搬送時間が異なるため、蓋と匣鉢本体の組み合わせが固定されないように匣鉢を使用することができる。このため、例えば、匣鉢本体が使用不能となっても、蓋は使用を継続できる。このように、匣鉢本体と蓋の使用回数をそれぞれ適切に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1に係る熱処理システムの概略構成を示す図。
【
図2】熱処理炉の概略構成を示す図であり、匣鉢の搬送方向に平行な平面で熱処理炉を切断したときの縦断面図。
【0009】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0010】
本明細書に開示する技術の第2の態様では、上記の第1の態様において、匣鉢本体が本体搬送装置の搬送経路の蓋外し装置側の入口から蓋取付け装置側の出口まで搬送される搬送時間は、蓋が蓋搬送装置の搬送経路の蓋外し装置側の入口から蓋取付け装置側の出口まで搬送される搬送時間の1.1~5.0倍であってもよい。このような構成によると、蓋の搬送時間を好適に短くすることができる。
【0011】
本明細書に開示する技術の第3の態様では、上記の第1又は第2の態様において、蓋搬送装置の搬送経路の蓋取付け装置側の出口近傍に設けられ、蓋を整列させる蓋整列機構をさらに備えていてもよい。蓋は、蓋搬送装置の搬送経路を搬送される間に蛇行し、傾く可能性がある。蓋整列機構を備えることによって、蓋搬送装置の搬送経路の蓋取付け装置側の出口で蓋を整列することができ、蓋搬送装置から蓋取付け装置に傾いていない状態の蓋を送り出すことができる。
【0012】
本明細書に開示する技術の第4の態様では、上記の第1~3の態様のいずれか1つにおいて、熱処理システムは、蓋搬送装置の搬送経路に設けられ、蓋を清掃する清掃装置をさらに備えていてもよい。このような構成によると、蓋に付着した被処理物を清掃することができ、蓋を好適に再利用することができる。
【0013】
本明細書に開示する技術の第5の態様では、上記の第1~4の態様のいずれか1つにおいて、熱処理システムは、蓋搬送装置の搬送経路に設けられ、蓋の不良を検査する蓋検査装置をさらに備えていてもよい。このような構成によると、蓋に割れ等の不良があるか否かを検査することができ、再利用不能な蓋を適切に排除することができる。
【0014】
本明細書に開示する技術の第6の態様では、上記の第5の態様において、熱処理システムは、蓋搬送装置の搬送経路であって、蓋検査装置の下流に設けられ、蓋検査装置で不良と判定された蓋を回収する蓋回収装置をさらに備えていてもよい。このような構成によると、不良と判定された蓋を、蓋搬送装置の搬送経路から適切に回収することができる。
【0015】
本明細書に開示する技術の第7の態様では、上記の第1~6の態様のいずれか1つにおいて、熱処理システムは、蓋搬送装置の搬送経路に設けられ、蓋搬送装置の搬送経路に蓋を供給する蓋供給装置をさらに備えていてもよい。このような構成によると、蓋搬送装置の搬送経路に蓋を供給可能となる。これにより、例えば蓋の破損等により蓋搬送装置で搬送される蓋の数が減少した場合であっても、蓋取付け装置で蓋が不足することを回避することができる。
【0016】
本明細書に開示する技術の第8の態様では、上記の第7の態様において、熱処理システムは、蓋供給装置から供給される蓋を保管する蓋保管部をさらに備えていてもよい。
【0017】
本明細書に開示する技術の第9の態様では、上記の第1~7の態様のいずれか1つにおいて、熱処理システムは、本体搬送装置の搬送経路を覆う第1フードと、蓋搬送装置の搬送経路を覆う第2フードと、をさらに備えていてもよい。蓋搬送装置の搬送面から第2フードまでの高さは、本体搬送装置の搬送面から第1フードまでの高さより小さくされていてもよい。蓋は、匣鉢上面を覆うためのものであり、蓋の高さ方向の寸法は、匣鉢本体の高さ方向の寸法よりも小さい。このため、蓋を搬送する蓋搬送装置の搬送経路を覆う第2フードの高さを、匣鉢本体を搬送する本体搬送装置の搬送経路を覆う第1フードの高さより小さくしても、蓋搬送装置は蓋を適切に搬送することができる。蓋搬送装置の搬送経路を覆う第2フードの高さを小さくすることによって、第2フードの表面積が小さくなり、第2フードを製造するコストを低減することができる。また、第2フードの重量が小さくなるため、例えばメンテナンス等の際に、第2フードを着脱するときの作業負担を低減することができる。また、第2フード全体が小さくなるため、取外した第2フードを省スペースで保管することができる。
【実施例】
【0018】
図面を参照して、本実施例に係る熱処理システム1について説明する。
図1に示すように、熱処理システム1は、熱処理炉10と、循環搬送装置(30、34、36、38)と、蓋外し装置50と、被処理物供給装置40と、被処理物回収装置42と、本体清掃装置44と、本体割れ検知装置46と、蓋清掃装置52と、蓋割れ検知装置54と、蓋回収装置56と、蓋供給装置58と、蓋保管庫60と、蓋取付け装置64を備えている。
【0019】
熱処理システム1は、匣鉢2(
図2参照)に収容された被処理物を熱処理する。本実施例では、匣鉢2に収容される被処理物は、リチウムイオン電池正極材の粉体である。
図2及び
図3に示すように、匣鉢2は、本体3と、本体3に取り付け可能な蓋4を備えている。
図1に示すように、匣鉢2は、循環搬送装置(30、34、36、38)によって搬送される。匣鉢2(本体3及び蓋4)は、熱処理炉10を搬送され、蓋外し装置50(後に詳述)で蓋4が本体3から外され、本体3は後述の本体搬送装置34で搬送され、蓋4は後述の蓋搬送装置36で搬送される。すなわち、本体3と蓋4は、熱処理炉10外の一部の区間において、異なる搬送経路で搬送される。そして、本体3と蓋4は蓋取付け装置64(後に詳述)で合流して本体3に蓋4が取り付けられ、匣鉢2(本体3及び蓋4)は、再び熱処理炉10を搬送される。このように、本実施例の熱処理システム1では、匣鉢2は、熱処理炉10と各種装置(後に詳述)の間を循環するように構成されている。被処理物は、匣鉢2が熱処理炉10内を搬送される間に熱処理される。
【0020】
熱処理炉10は、匣鉢2内の被処理物を熱処理する。
図2及び
図3に示すように、熱処理炉10は、炉体12と、搬送装置(24、26)を備えている。熱処理炉10は、搬送装置(24、26)によって匣鉢2が炉体12内を搬送される間に、匣鉢2内に収容される被処理物を熱処理する。
【0021】
炉体12は、外形が略直方体形状であり、その内部の熱処理空間が天井壁14aと、底壁14bと、炉入口壁14cと、炉出口壁14dと、側壁14e、14fによって囲まれている。
図2に示すように、天井壁14aは、底壁14bに対して平行に(すなわち、XY平面と平行に)配置されている。炉入口壁14cは、搬送経路の入口端に配置されており、搬送方向に対して垂直に(すなわち、YZ平面と平行に)配置されている。炉出口壁14dは、搬送経路の出口端に配置されており、炉入口壁14cに対して平行に(すなわち、YZ平面と平行に)配置されている。
図3に示すように、側壁14e、14fは、搬送方向に対して平行、かつ、天井壁14a及び底壁14bに対して垂直に(すなわち、XZ平面と平行に)配置されている。炉体12内の熱処理空間には、複数のヒータ16a、16bと、複数の搬送ローラ24が配置されている。ヒータ16aは、搬送ローラ24の上方の位置に搬送方向に所定の間隔で配置され、ヒータ16bは、搬送ローラ24の下方の位置に搬送方向に所定の間隔で配置されている。ヒータ16a、16bが発熱することで、炉体12内の空間18が加熱されると共に匣鉢2内に収容される被処理物が加熱される。
図2に示すように、炉入口壁14cには、開口15aが形成されており、炉出口壁14dには、開口15bが形成されている。匣鉢2は、搬送装置(24、26)によって開口15aから熱処理炉10内に搬送され、開口15bから熱処理炉10外へ搬送される。すなわち、開口15aは搬入口として用いられ、開口15bは搬出口として用いられる。
【0022】
搬送装置(24、26)は、複数の搬送ローラ24と、駆動装置26を備えている。搬送ローラ24は、匣鉢2を搬送する。搬送装置(24、26)は、開口15aから熱処理炉10内に匣鉢2を搬送し、開口15bから匣鉢2を熱処理炉10外に搬送する。搬送ローラ24は円筒状であり、その軸線は搬送方向と直交する方向に(すなわち、Y方向に)伸びている。複数の搬送ローラ24は、全てが同じ直径を有しており、搬送方向に一定のピッチで等間隔に配置されている。搬送ローラ24は、その軸線回りに回転可能に支持されており、駆動装置26の駆動力が伝達されることによって回転する。駆動装置26は、搬送ローラ24を駆動する駆動装置(例えば、モータ)である。駆動装置26は、動力伝達機構を介して、搬送ローラ24に接続されている。駆動装置26の駆動力が動力伝達機構(例えば、スプロケットとチェーンによる機構)を介して搬送ローラ24に伝達されると、搬送ローラ24は回転するようになっている。駆動装置26は、搬送ローラ24が略同一の速度で回転するように、搬送ローラ24のそれぞれを駆動する。駆動装置26は、制御装置28によって制御されている。なお、本実施例では、複数の搬送ローラ24は、全て同じ直径を有しているが、このような構成に限定されない。熱処理炉10内には、異なる直径の搬送ローラが設置されていてもよい。
【0023】
図1に示すように、循環搬送装置(30、34、36、38)は、熱処理炉10の搬出口(すなわち、開口15b)から搬出された匣鉢2を、熱処理炉10の搬入口(すなわち、開口15a)まで搬送する。循環搬送装置(30、34、36、38)は、複数の搬送ローラ32(
図4及び
図5参照)と、駆動装置(図示省略)を備えている。搬送ローラ32は円筒状であり、その軸線は搬送方向と直交する方向に伸びている。複数の搬送ローラ32は、全てが同じ直径を有しており、搬送方向に一定のピッチで等間隔に配置されている。搬送ローラ32は、その軸線回りに回転可能に支持されており、駆動装置の駆動力が伝達されることによって回転する。駆動装置は、搬送ローラ32を駆動する駆動装置(例えば、モータ)である。駆動装置は、動力伝達機構を介して、搬送ローラ24に接続されている。駆動装置の駆動力が動力伝達機構(例えば、スプロケットとチェーンによる機構)を介して搬送ローラ32に伝達されると、搬送ローラ32は回転するようになっている。駆動装置は、搬送ローラ32が略同一の速度で回転するように、搬送ローラ32のそれぞれを駆動する。なお、本実施例では、複数の搬送ローラ32は、全てが同じ直径を有しているが、このような構成に限定されない。循環搬送装置(30、34、36、38)の搬送経路には、異なる直径の搬送ローラが設置されていてもよい。
【0024】
循環搬送装置(30、34、36、38)は、搬出搬送装置30と、本体搬送装置34と、蓋搬送装置36と、搬入搬送装置38を備えている。搬出搬送装置30は、熱処理炉10の搬出口(すなわち、開口15b)から搬出された匣鉢2を、蓋外し装置50まで搬送する。本体搬送装置34は、蓋外し装置50(後に詳述)で蓋4が外された本体3を、蓋取付け装置64まで搬送する。蓋搬送装置36は、蓋外し装置50で本体3から外された蓋4を、蓋取付け装置64まで搬送する。搬入搬送装置38は、蓋取付け装置64(後に詳述)で本体3に蓋4が取り付けられた匣鉢2を、熱処理炉10の搬入口(すなわち、開口15a)まで搬送する。本実施例では、蓋外し装置50で本体3から蓋4が外されると、本体3は本体搬送装置34で搬送され、蓋4は蓋搬送装置36で搬送され、本体3と蓋4は、蓋取付け装置64で合流する。すなわち、本体3と蓋4によって構成される匣鉢2について、熱処理炉10外の一部の区間では、本体3と蓋4が別の搬送経路で搬送される。また、本実施例では、蓋4が蓋搬送装置36の搬送経路を搬送される間にかかる搬送時間は、本体3が本体搬送装置34の搬送経路を搬送される間にかかる搬送時間より短くされている。なお、本体搬送装置34と蓋搬送装置36については、後に詳述する。
【0025】
蓋外し装置50は、熱処理炉10の搬出口の下流に配置されている。蓋外し装置50は、熱処理炉10の搬出口から搬出された匣鉢2(詳細には、本体3に蓋4が取り付けられた匣鉢2)の本体3から蓋4を取り外す装置である。なお、蓋外し装置50は、匣鉢2の本体3から蓋4を取り外すように構成されていればよく、具体的な構成については特に限定されない。例えば、蓋外し装置50は、蓋4を把持する把持部を備え、把持部を本体3に対して昇降可能に構成する。蓋4を把持した把持部を本体3に対して上昇させることによって、本体3から蓋4が取り外される。蓋4が取り外されると、本体3は、本体搬送装置34の搬送経路に送られる。本体3から取り外された蓋4は、蓋搬送装置36の搬送経路に送られる。
【0026】
本体搬送装置34の搬送経路には、被処理物回収装置42と、本体清掃装置44と、本体割れ検知装置46と、被処理物供給装置40が配置されている。本体3は、蓋外し装置50から搬出されると、本体搬送装置34によって被処理物回収装置42、本体清掃装置44、本体割れ検知装置46及び被処理物供給装置40に搬送される。
【0027】
被処理物回収装置42は、本体搬送装置34の搬送経路上に配置されている。被処理物回収装置42は、蓋外し装置50と本体清掃装置44との間に配置されている。被処理物回収装置42は、熱処理炉10で熱処理された被処理物(すなわち、粉体)を本体3から回収する装置である。なお、被処理物回収装置42は、本体3から粉体を回収するように構成されていればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、被処理物回収装置42は、本体3を上下方向に反転させて回収する反転回収部と、本体3の表面に付着した被処理物(本実施例では、粉体)をエアで剥離して回収するエア回収部を備えている。反転回収部は、本体3を上下方向に反転させることによって、本体3内の粉体を回収用容器に移動させる。これにより、本体3内に収容されていた粉体のほぼ全てが回収用容器に移動する。その後、反転回収部は、本体3を再び上下方向に反転させて元の向きに戻す。エア回収部は、反転回収部で本体3内の粉体が回収された後に使用される。エア回収部は、本体3の内表面にエアを吹き付けながら本体3内のエアを吸引する。本体3の内表面にエアを吹き付けることによって、本体3の内表面に付着している粉体が内表面から剥離する。本体3の内表面にエアを吹き付けながら本体3内のエアを吸引すると、本体3の内表面から剥離された粉体がエアと共に吸引される。これにより、本体3の内表面に残留した粉体が回収され、粉体の回収率が上昇する。なお、上記の例では、被処理物回収装置42はエア回収部を備えていたが、このような構成に限定されない。例えば、本体3の内表面に残留した粉体は、回転ブラシで本体3の内表面から剥離して回収するように構成されていてもよい。
【0028】
本体清掃装置44は、本体搬送装置34の搬送経路上に配置されている。本体清掃装置44は、被処理物回収装置42と本体割れ検知装置46との間に配置されている。本体清掃装置44は、被処理物回収装置42において被処理物(すなわち、粉体)が回収された後の本体3の内表面を清掃する装置である。なお、本体清掃装置44は、本体3の内表面を清掃するように構成されていればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、本体清掃装置44は、回転ブラシを用いて本体3の内表面に付着している物質を剥離させながら、本体3内の空気等を吸引する。吸引した空気等には、剥離された物質が含まれる。本体清掃装置44で本体3の内表面を清掃することにより、本体3の内表面に残留した粉体等を完全に除去することができる。
【0029】
本体割れ検知装置46は、本体搬送装置34の搬送経路上に配置されている。本体割れ検知装置46は、本体清掃装置44と被処理物供給装置40との間に配置されている。本体割れ検知装置46は、本体3の割れを検知することによって、本体3が割れていないか否かを検査するための装置である。匣鉢2は、熱処理炉10において被処理物の熱処理に繰り返し使用される。本体割れ検知装置46は、本体3が熱処理炉10において被処理物の熱処理に使用された後、再使用する前に割れていないか否かを検査する。なお、本体割れ検知装置46は、本体3の割れを検知するように構成されていればよく、具体的な構成については特に限定されない。例えば、本体割れ検知装置46は、レーザを用いて本体3の割れを検出してもよい。また、本体割れ検知装置46は、本体3にガスを封入し、本体3内の圧力を測定することによって本体3の割れを検出してもよい。本体3の割れが検知された場合、本体3は本体搬送装置34の搬送経路から取り出される。すなわち、本体割れ検知装置46は、本体3を熱処理システム1から回収する回収装置としても機能する。本体3の割れが検知されなかった場合、本体3は、本体搬送装置34によって被処理物供給装置40に搬送される。なお、本実施例では、本体割れ検出装置46は、本体3の回収装置としても機能するが、本体割れ検出装置46の下流に、本体3を熱処理システム1から回収する回収装置を設置してもよい。
【0030】
被処理物供給装置40は、本体搬送装置34の搬送経路上に配置されている。被処理物供給装置40は、本体割れ検知装置46と蓋取付け装置64との間に配置されている。被処理物供給装置40は、本体3内に被処理物(すなわち、粉体)を供給する装置である。なお、被処理物供給装置40は、本体3内に粉体を供給するように構成されていればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、被処理物供給装置40は、供給部と均し部を備えている。供給部は、本体3の内部に粉体を供給するように構成されている。具体的には、供給部は、本体3の上方から本体3の内部に粉体を落下させる供給口を備えている。供給口は、供給部内に本体3を配置したときに、本体3の中心部の上方に位置するように配置されている。供給部は、位置決め装置を備えており、位置決め装置は、供給部に搬送された本体3を、供給口の下方に位置するように位置決めする。なお、供給部には、複数の供給口が配置されていてもよい。供給部は、粉体を上方から落下させることで本体3内に粉体を供給するため、供給部で本体3に粉体が供給されると、本体3内の粉体の上面は、供給口の下方の位置で盛り上がった状態となる。均し部は、供給部で本体3内に供給された粉体を均す。具体的には、均し部は、平板の側面で本体3内の粉体の上面を押さえることで粉体の上面を均すように構成されている。均し部で粉体の上面を均すことによって、本体3に収容された粉体の上面は略水平面となる。
【0031】
蓋搬送装置36の搬送経路には、蓋清掃装置52と、蓋割れ検知装置54と、蓋回収装置56と、蓋供給装置58が配置されている。蓋4は、蓋外し装置50から搬出されると、蓋搬送装置36によって蓋清掃装置52、蓋割れ検知装置54、蓋回収装置56及び蓋供給装置58に搬送される。
【0032】
蓋清掃装置52は、蓋搬送装置36の搬送経路上に配置されている。蓋清掃装置52は、蓋外し装置50と蓋割れ検知装置54との間に配置されている。蓋4が本体3に取り付けられたときの本体3側の表面には、本体3に収容されている被処理物(すなわち、粉体)が付着することがある。蓋清掃装置52は、蓋4に付着した被処理物を清掃する装置である。なお、蓋清掃装置52は、蓋4を清掃するように構成されていればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、蓋清掃装置52は、上記の本体清掃装置44と略同一の構成を有することができる。蓋清掃装置52で蓋4を清掃することにより、蓋4の表面に残留した粉体等を完全に除去することができる。
【0033】
蓋割れ検知装置54は、蓋搬送装置36の搬送経路上に配置されている。蓋割れ検知装置54は、蓋清掃装置52と蓋回収装置56との間に配置されている。蓋割れ検知装置54は、蓋4の割れを検知することによって、蓋4が割れていないか否かを検査するための装置である。上述したように、匣鉢2は、熱処理炉10において被処理物の熱処理に繰り返し使用される。蓋割れ検知装置54は、蓋4が熱処理炉10において被処理物の熱処理に使用された後、再使用する前に割れていないか否かを検査する。なお、蓋割れ検知装置54は、蓋4の割れを検知するように構成されていればよく、具体的な構成については特に限定されない。例えば、蓋割れ検知装置54は、上記の本体割れ検知装置46と略同一の構成を有することができる。
【0034】
蓋回収装置56は、蓋搬送装置36の搬送経路上に配置されている。蓋回収装置56は、蓋割れ検知装置54の下流に配置されており、本実施例では、蓋割れ検知装置54と蓋供給装置58との間に配置されている。蓋回収装置56は、蓋割れ検知装置54で割れが検知された蓋4を回収する。すなわち、蓋割れ検知装置54で割れが検知された蓋4は、蓋回収装置56から下流(具体的には、蓋供給装置58)に搬送されない。蓋割れ検知装置54で割れが検知された蓋4を蓋回収装置56で回収することによって、不良の蓋4が再利用されることを回避することができる。蓋割れ検知装置54で割れが検知されなかった蓋4は、蓋回収装置56を通過して、蓋供給装置58に搬送される。
【0035】
蓋供給装置58は、蓋搬送装置36の搬送経路上に配置されている。蓋供給装置58は、蓋回収装置56と蓋取付け装置64との間に配置されている。蓋供給装置58は、蓋搬送装置36の搬送経路上に新たな蓋4を供給する。具体的には、蓋回収装置56で蓋4が回収されると、蓋供給装置58は、新たな蓋4(すなわち、熱処理システム1内で搬送経路を循環する蓋4以外の蓋4)を蓋搬送装置36の搬送経路に供給する。蓋回収装置56で蓋4が回収されると、熱処理システム1内で搬送経路を循環する蓋4の数が減ってしまう。蓋供給装置58で蓋4を供給することによって、蓋4を自動で供給することができ、本体3に取り付ける蓋4が不足することを回避することできる。
【0036】
また、蓋供給装置58の近傍には、蓋4を保管する蓋保管庫60が配置されている。蓋保管庫60は、蓋搬送装置36の搬送経路とは異なる位置に配置されており、蓋供給装置58に蓋4を補充可能な位置に配置されている。本実施例では、蓋保管庫60は、蓋搬送装置36の搬送経路に接続されており、蓋搬送装置36の搬送経路の一部を介して蓋供給装置58に蓋4を補充するように構成されている。蓋保管庫60を配置することによって、蓋供給装置58から供給する蓋4が不足することを抑制することができる。
【0037】
蓋取付け装置64は、熱処理炉10の搬入口の上流に配置されている。蓋取付け装置64では、本体搬送装置34の搬送経路と蓋搬送装置36の搬送経路が合流する。すなわち、蓋取付け装置64には、本体搬送装置34で搬送された本体3(具体的には、被処理物供給装置40で被処理物が供給された本体3)が搬入されると共に、蓋搬送装置36で搬送された蓋4(具体的には、蓋供給装置58を通過した蓋4又は蓋供給装置58から搬送経路上に供給された蓋4)が搬入される。蓋取付け装置64は、本体搬送装置34で搬送された本体3に、蓋搬送装置36で搬送された蓋4を取り付ける装置である。なお、蓋取付け装置64は、本体3に蓋4を取り付けるように構成されていればよく、具体的な構成については特に限定されない。例えば、蓋取付け装置64は、蓋4を把持する把持部を備え、把持部は本体3に対してXYZ方向に移動可能に構成される。把持部で把持された蓋4は、本体3の上方に移動され、本体3に取り付けられる。蓋取付け装置64に搬入される前に、本体3には、被処理物供給装置40で被処理物が供給されている。蓋取付け装置64では、被処理物が収容された本体3に蓋4が取り付けられる。
【0038】
また、蓋搬送装置36の搬送経路の蓋取付け装置64側の出口近傍には、蓋4を整列させる蓋整列機構62が設置されている。
図2及び
図3に示すように、本実施例では、匣鉢2は上面視すると矩形であり、蓋4も上面視すると矩形である。蓋4は、蓋搬送装置36の搬送経路を搬送される間に傾くことがある。蓋4が傾いていると、蓋取付け装置64で蓋4を把持できないことがある。蓋整列機構62は、蓋4の搬送方向の前面を、搬送方向に直交するように整列させる。蓋整列機構62は、例えば、平板上のストッパにより構成することができる。蓋整列機構62のストッパは、搬送方向に直交するように設置され、上下方向に移動可能である。蓋整列機構62のストッパが上方に移動すると、蓋整列機構62のストッパに蓋4の前面が当接して、蓋4の前面が搬送方向に直交した方向に整列される。蓋整列機構62のストッパを下方に移動させると、匣鉢2は、蓋整列機構62の上方を通過することができる。蓋整列機構62を設置することによって、蓋取付け装置64で蓋4をより確実に把持することができ、本体3に蓋4を適切に取り付けることができる。本体3に蓋4が取り付けられると、匣鉢2(すなわち、本体3に蓋4が取り付けられた匣鉢2)は、搬入搬送装置38によって熱処理炉10に搬入される。
【0039】
ここで、本体搬送装置34と蓋搬送装置36について、さらに詳細に説明する。本実施例では、蓋4が蓋搬送装置36の搬送経路を搬送される間にかかる搬送時間は、本体3が本体搬送装置34の搬送経路を搬送される間にかかる搬送時間より短くされている。すなわち、本体搬送装置34の搬送経路(すなわち、本体3が蓋外し装置50から蓋取付け装置64までの間)には、被処理物回収装置42、本体清掃装置44、本体割れ検知装置46及び被処理物供給装置40が配置されている。本体3が各装置42、44、46、40を搬送される際には、それぞれ作業時間が発生する。一方、蓋搬送装置36の搬送経路(すなわち、蓋4が蓋外し装置50から蓋取付け装置64までの間)には、蓋清掃装置52、蓋割れ検知装置54、蓋回収装置56及び蓋供給装置58が配置されている。蓋4が蓋清掃装置52と蓋割れ検知装置54を搬送される際には、それぞれ作業時間が発生する。しかしながら、再利用される蓋4(蓋割れ検知装置54で割れが検知されなかった蓋4)は、蓋回収装置56及び蓋供給装置58を通過するだけであり、蓋4が蓋回収装置56及び蓋供給装置58を通過する際には作業時間は発生しない。また、蓋4は本体3と比較して体積が小さいため、その表面積も小さく、蓋清掃装置52と蓋割れ検知装置54でかかる作業時間も、本体清掃装置44と本体割れ検知装置46でかかる作業時間より短い。このため、蓋4が蓋搬送装置36の搬送経路を搬送される間にかかる搬送時間(以下、単に蓋4の搬送時間ともいう)は、本体3が本体搬送装置34の搬送経路を搬送される間にかかる搬送時間(以下、単に本体3の搬送時間ともいう)より短くすることできる。具体的には、本体3の搬送時間は、蓋4の搬送時間の1.1~5.0倍である。
【0040】
蓋4の搬送時間が本体3の搬送時間より短いことにより、蓋4の数を、本体3の数より少なくすることができる。本実施例では、熱処理システム1で同時に使用されている蓋4の総数を、本体3の総数よりも少なくしている。熱処理システム1をある時点でみると、熱処理炉10と搬出搬送装置30と搬入搬送装置38では、蓋4の総数と本体3の総数は同数となる。このため、蓋搬送装置36を搬送される蓋4の総数が、本体搬送装置34を搬送される本体3の総数よりも少なくなる。匣鉢2(すなわち、本体3と蓋4)が熱処理炉10と搬出搬送装置30と搬入搬送装置38を搬送される搬送時間と、本体3の搬送時間と、蓋4の搬送時間とを調整することで、熱処理炉で被処理物の熱処理を効率的に行いながら、蓋4の数を本体3の数よりも少なくすることができる。蓋4の数を本体3の数よりも少なくすることで、蓋4にかかるコストを低減できる。また、蓋4の搬送時間が本体3の搬送時間より短いことと、蓋4の数を本体3の数より少なくできることにより、蓋4と本体3は、毎回同じ組み合わせで使用されない。蓋4と本体3を同じ組み合わせで使用し続けると、熱処理時に蓋4と本体3が熱変形し、蓋4と本体3を異なる組み合わせで使用できなくなることがある。このように蓋4と本体3の組み合わせが固定されると、蓋4と本体3のどちらか一方が使用不要となったときに、他方も再利用できなくなる。本実施例では、蓋4と本体3の組み合わせが固定されないため、蓋4と本体3のどちらか一方が使用不要になっても、他方は再利用することができる。特に、本体3は、熱処理時に被処理物と直接接触するため、蓋4よりも再利用可能な回数が少ないことが多い。本実施例では、本体3と蓋4をそれぞれ適切な回数だけ再利用することができる。また、蓋4の搬送時間を短くできることにより、蓋4は、本体3と比較して、熱処理炉10から搬出されてから再び熱処理炉10に搬入されるまでの時間を短くすることができる。このため、蓋4は、完全に冷却される前に再び熱処理炉10に搬入することができ、蓋4の温度を上昇させるためのエネルギーを低減することができる。なお、上述したことから明らかなように、蓋4と本体3は毎回同じ組み合わせで使用されないが、蓋4と本体3を繰り返し使用すると、蓋4と本体3が偶発的には同じ組み合わせとなることがある。しかしながら、蓋4の数に対する本体3の数を調整することで、蓋4と本体3が偶発的に同じ組み合わせとなる頻度を低く制御することができる。このため、蓋4と本体3が偶発的には同じ組み合わせとなっても、それが問題となることはない。
【0041】
なお、本実施例では、本体搬送装置34により本体3を搬送させる搬送速度(図示しない駆動装置による駆動力)と、蓋搬送装置36により蓋4を搬送させる搬送速度(図示しない駆動装置による駆動力)は同一であるが、このような構成に限定されない。例えば、蓋搬送装置36により蓋4を搬送させる搬送速度を、本体搬送装置34により本体3を搬送させる搬送速度より速くしてもよい。
【0042】
また、
図4に示すように、本体搬送装置34の搬送経路は、フード70で覆われており、
図5に示すように、蓋搬送装置36の搬送経路は、フード72で覆われている。本体搬送装置34の搬送経路がフード70で覆われていることにより、本体搬送装置34を搬送される本体3に外部の異物等が付着することを抑制することができる。同様に、蓋搬送装置36の搬送経路がフード72で覆われていることにより、蓋搬送装置36を搬送される蓋4に外部の異物等が付着することを抑制することができる。また、図示は省略するが、搬出搬送装置30の搬送経路と搬入搬送装置38の搬送経路も、フードで覆われている。このため、搬出搬送装置30及び搬入搬送装置38を搬送される匣鉢2に外部の異物等が付着することを抑制することができる。
【0043】
また、蓋4の高さ方向の寸法は、本体3の高さ方向の寸法より小さい(
図2及び3参照)。このため、
図4及び
図5に示すように、蓋搬送装置36の搬送面からフード72までの高さT2は、本体搬送装置34の搬送面からフード70までの高さT1より小さくすることができる。高さT2を高さT1より小さくすることによって、蓋搬送装置36の搬送経路を覆うフード72の高さ方向の寸法を小さくすることができ、フード72の表面積を低減でき、フード72にかかるコストを低減することができる。また、フード72を小さくすることによって、フード72の重量も軽くなる。このため、例えばメンテナンス等の際に作業者がフード72を取り外す際に、作業者の負担を低減することができる。また、フード72を小さくできることによって、例えば予備のフード72等を保管するための保管場所を省スペースにすることができる。
【0044】
実施例で説明した熱処理システム1に関する留意点を述べる。実施例の本体3は、「匣鉢本体」の一例であり、被処理物供給装置40は、「供給装置」に一例であり、被処理物回収装置42は、「回収装置」の一例であり、蓋清掃装置52は、「清掃装置」の一例であり、蓋割れ検知装置54は、「蓋検査装置」の一例であり、フード70は、「第1フード」の一例であり、フード72は、「第2フード」の一例である。
【0045】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0046】
1:熱処理システム
2:匣鉢
10:熱処理炉
30:搬出搬送装置
32:搬送ローラ
34:本体搬送装置
36:蓋搬送装置
38:搬入搬送装置
40:被処理物供給装置
42:被処理物回収装置
44:本体清掃装置
46:本体割れ検知装置
50:蓋外し装置
52:蓋清掃装置
54:蓋割れ検知装置
56:蓋回収装置
58:蓋供給装置
60:蓋保管庫
62:蓋整列装置
64:蓋取付け装置