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特許7609873電力供給網と電力貯蔵装置を通じた電力供給とを備えたポータブル人工呼吸器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】電力供給網と電力貯蔵装置を通じた電力供給とを備えたポータブル人工呼吸器
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20241224BHJP
   A61M 16/16 20060101ALN20241224BHJP
【FI】
A61M16/00 380
A61M16/16 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022537156
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2020085254
(87)【国際公開番号】W WO2021122212
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】102019134830.7
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515233591
【氏名又は名称】ハミルトン メディカル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カウテル・サイヒ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・バランドゥン
(72)【発明者】
【氏名】ニコ・シノゴヴィツ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ザック
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエレ・ウィットン
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-505690(JP,A)
【文献】特表2003-527160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
A61M 16/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物に呼吸ガスを供給するためのポータブル人工呼吸器(10)であって、
‐ハウジング(12)と、
‐吸気呼吸ガスを前記ハウジング(12)の呼吸ガスハウジング排気口(20)に輸送するように構成された呼吸ガス輸送装置(13)と、
‐制御命令を入力し、情報を出力するための入力/出力装置(18)と、
‐前記入力/出力装置(18)及び前記呼吸ガス輸送装置(13)と信号を伝達するように接続されている制御装置(16)と、
‐当該ポータブル人工呼吸器(10)に関して外部である供給電圧源と電力を伝達するために接続するように構成され、前記制御装置(16)、前記入力/出力装置(18)及び前記呼吸ガス輸送装置(13)に電力を供給するように構成されて配置された供給網に基づく第1の電力供給装置(14)と、
‐貯蔵装置に基づく第2の電力供給装置(30)であって、電気エネルギーを貯蔵するための電力貯蔵装置(34)を有し、少なくとも前記呼吸ガス輸送装置(13)に電力を供給するように構成されている第2の電力供給装置(30)と、
‐前記吸気呼吸ガスを加湿するように構成された加湿装置(26)であって、前記第1の電力供給装置(14)によっても、前記第2の電力供給装置(16)によっても、電力を供給され得る加湿装置(26)と、
を含んでなり、
前記呼吸ガス輸送装置(13)、前記入力/出力装置(18)及び前記制御装置(16)は、前記ハウジング(12)内に受容されており、
前記第2の電力供給装置(30)が、当該ポータブル人工呼吸器(10)の前記ハウジング(12)とは別個の電力供給装置ハウジング(32)を有しており、前記電力供給装置ハウジングが、当該ポータブル人工呼吸器(10)の前記ハウジング(12)と、共に動くように物理的に解除可能に連結可能であり、
前記第2の電力供給装置(30)が、動作可能な状態で設置された当該ポータブル人工呼吸器(10)を観察した場合に、前記ハウジング(12)内に受容された前記加湿装置(26)の下に配置されているポータブル人工呼吸器(10)において、
前記第1の電力供給装置(14)は、当該ポータブル人工呼吸器(10)の前記ハウジング(12)内に受容されており、前記第2の電力供給装置(30)が、当該ポータブル人工呼吸器(10)の前記ハウジング(12)から分離している場合に、当該ポータブル人工呼吸器(10)は専ら前記第1の電力供給装置(14)によって電気エネルギーが供給され得ることを特徴とする、ポータブル人工呼吸器(10)。
【請求項2】
前記第2の電力供給装置(30)が、前記制御装置(16)及び前記入力/出力装置(18)に電力を供給するようにも構成されていることを特徴とする請求項1に記載の人工呼吸器(10)。
【請求項3】
前記第2の電力供給装置(30)の前記電力貯蔵装置(34)が、前記第1の電力供給装置(14)によって充電可能であり、好ましくは、前記制御装置(16)は、前記第1の電力供給装置(14)による前記電力貯蔵装置(34)の充電プロセスを制御するように構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の人工呼吸器(10)。
【請求項4】
前記第2の電力供給装置(30)が、前記第1の電力供給装置(14)による当該人工呼吸器の電力供給が終了した場合、無中断の電力供給装置として構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の人工呼吸器(10)。
【請求項5】
前記第2の電力供給装置(30)が、当該人工呼吸器(10)を動作可能な状態で設置する場合に、前記第2の電力供給装置(30)と当該人工呼吸器(10)との高さの合計の下側20%内に配置されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の人工呼吸器(10)。
【請求項6】
前記第2の電力供給装置(30)が、当該人工呼吸器(10)を動作可能な状態で設置する場合に、前記第2の電力供給装置(30)を含めた当該人工呼吸器(10)の最も下側に位置する機能装置であることを特徴とする、請求項5に記載の人工呼吸器(10)。
【請求項7】
前記電力供給装置ハウジング(32)には、誘導面(31a、31b)が形成されており、前記誘導面上に衝突した液体は、意図的に、少なくとも1つの所定の誘導部(33)に誘導されることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の人工呼吸器(10)。
【請求項8】
前記電力供給装置ハウジング(32)が、動作可能な状態で設置された当該人工呼吸器(10)を観察した場合、当該人工呼吸器(10)の前記ハウジング(12)における重力の作用方向において投影された輪郭の内側に完全に受容されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の人工呼吸器(10)。
【請求項9】
前記ハウジング(12)がタワー型ハウジングであり、動作可能な状態で設置された場合に、前記ハウジングの最も大きい寸法が、高さの寸法であることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の人工呼吸器(10)。
【請求項10】
当該人工呼吸器(10)から患者まで至る、加温可能な呼吸ガス導管(46)を含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の人工呼吸器(10)。
【請求項11】
前記制御装置(16)は、前記電力貯蔵装置(34)の充電状態が第1の境界充電状態を下回る場合、前記加湿装置(26)の気化装置(24)を停止させ、前記充電状態が前記第1の境界充電状態よりも値の低い第2の境界充電状態を下回る場合、前記呼吸ガス導管(46)の加温装置を停止させるように構成されていることを特徴とする、請求項10に記載の人工呼吸器(10)。
【請求項12】
前記ハウジング(12)が下面(12a)を有し、前記電力供給装置ハウジング(32)が共に移動するように前記ハウジング(12)と連結されている場合、前記下面(12a)は前記電力供給装置ハウジング(32)と連結されており、前記電力供給装置ハウジング(32)が前記ハウジング(12)から連結を解除されている場合、前記ハウジング(12)はその下面(12a)に載置されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の人工呼吸器(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
生物に呼吸ガスを供給するためのポータブル人工呼吸器であって、
‐ハウジングと、
‐吸気呼吸ガスをハウジングの呼吸ガスハウジング排気口に輸送するように構成された呼吸ガス輸送装置と、
‐制御命令を入力し、情報を出力するための入力/出力装置と、
‐入力/出力装置及び呼吸ガス輸送装置と信号を伝達するように接続されている制御装置と、
‐人工呼吸器に関して外部である供給電圧源と、電力を伝達するために接続するように構成され、制御装置、入力/出力装置及び呼吸ガス輸送装置に電力を供給するように構成されて配置された供給網に基づく第1の電力供給装置と、
を含んでおり、
呼吸ガス輸送装置、入力/出力装置、制御装置及び第1の電力供給装置は、ハウジング内に受容されている。
【背景技術】
【0002】
このようなポータブル人工呼吸器は、特にいわゆる「ハイフロー人工呼吸」から知られており、ハイフロー人工呼吸によると、患者に、その呼吸リズムとは無関係に、概ね一定の高い呼吸ガスフローが供給される。当該呼吸ガスフローは、毎分100リットルにまで達する。呼吸ガスフローは一般的に、鼻カニューレを通って鼻孔の領域に放出されるか、又は、患者の鼻と口とを覆う鼻口マスク若しくは気管カニューレを通じて与えられる。従って、吸気に際して患者が供給された呼吸ガスフローの少なくとも一部を吸入することは、不可避である。呼気は、一般的に呼気の間にも供給される呼吸ガスフローに反して行われる。
【0003】
このような人工呼吸器は、一般的に呼吸ガス貯蔵装置を有しており、例えば呼吸ガスが大気に対する陽圧下で受容されている呼吸ガスボンベの形状で有している。呼吸ガス輸送装置は、呼吸ガスボンベと、呼吸ガスボンベに高圧下で貯蔵された呼吸ガスを、患者に負担とならない呼吸ガス圧力まで減圧する減圧弁と、を含んでいる。
【0004】
別のポータブル人工呼吸器は、呼吸ガス輸送装置として送風機を有しており、送風機は、動作している間、供給電圧源によって電力を供給される。
【0005】
既知の解決法の欠点は、第1に可動性が高い場合に、ボンベの内容物によって動作時間が制限されること、第2に可能な動作時間が長い場合に、供給電圧源による電力供給によって可動性が制限されることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、無中断の長い動作時間も、可能な限り制限されない可動性も提供する、冒頭に挙げた種類のポータブル人工呼吸器を供給することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、本課題を、本出願の冒頭に記載したようなポータブル人工呼吸器において、人工呼吸器が、貯蔵装置に基づく第2の電力供給装置を有しており、当該電力供給装置は、電気エネルギーを貯蔵するための電力貯蔵装置を有し、少なくとも呼吸ガス輸送装置に電力を供給するように構成されていることによって解決する。
【0008】
貯蔵装置に基づく第2の電力供給装置によって、ポータブル人工呼吸器は、専ら供給電圧源への接続に依存してはおらず、これによって、エネルギー供給として専ら供給網との接続を有しているポータブル人工呼吸器に対して、可動性が著しく増大する。従って、呼吸ガス輸送装置としての送風機による略無制限な呼吸ガスの備蓄を利用可能にし、呼吸ガスを持続的に患者に供給することが可能である。以下において「電力貯蔵装置」と呼ばれる、電気エネルギーのための固有の貯蔵装置を有する、設けられた第2の電力供給装置ゆえに、患者の移動半径は一時的に、専ら供給網による供給に対して、著しく増大し得る。この際、呼吸ガス輸送装置が供給電圧源によって、つまり例えば公共の電力供給網によって電力を供給される動作段階と、呼吸ガス輸送装置が、第2の電力供給装置の電力貯蔵装置によって電力を供給される動作段階とは、交替可能である。これによって、可能な可動性と同時に、最大限の動作時間が得られる。従って、人工呼吸を施されている患者は、例えば病院内を、電力供給網からは独立して、様々な処置室又は/及び診察室の間で移動することができる。
【0009】
従って、好ましくは、呼吸ガス輸送装置は、空気を人工呼吸器の周囲から吸い込み、呼吸ガスハウジング排気口に向かって輸送する送風機を含んでいる。動作中、呼吸ガスハウジング排気口には一般的に、呼吸ガス輸送管、好ましくは柔軟な呼吸ガスホースが接続されており、これによって、呼吸ガスが、ハウジングから患者へと誘導される。好ましくは、当該人工呼吸器は、冒頭に挙げたハイフロー人工呼吸器である。
【0010】
人工呼吸器は、送風機に加えて、周囲空気とは異なるさらなる呼吸ガス備蓄の接続のための接続構造、例えば接続管又はクイックカプラを有し得る。例えば、送風機によって吸入された周囲空気に、純粋な酸素又は別の所望のガス、混合ガス、又は、エアロゾルを含有するガスが混合され得る。従って、送風機によって吸入された周囲空気は、呼吸ガスハウジング排気口に到達する前に、好ましくは混合室、又は、接続構造から延在するさらなる導管も合流する混合誘導区間を通るように誘導される。
【0011】
第2の電力供給装置の電力貯蔵装置の貯蔵容量は、好ましくは、換気動作が、第2の電力供給装置のみによって、少なくとも1時間、好ましくは数時間維持され得るように設計されている。
【0012】
患者に呼吸ガスを確実に供給するためには、基本的に、第2の電力供給装置が、専ら呼吸ガス輸送装置に電気エネルギーを供給すれば十分である。しかしながら、好ましくは、第2の電力供給装置は、患者への単なる呼吸ガスの供給を超えて、患者への呼吸ガスの供給の可能な限り広範囲にわたる制御及び調節の可能性にも資するものである。従って、好ましくは、第2の電力供給装置は、制御装置及び入力/出力装置に電力を供給するようにも構成されていることが規定されている。特に好ましくは、第2の電力供給装置は、第1の電力供給装置と同じ人工呼吸器内部の機能装置の供給に用いられるので、この特に好ましい態様に係る第2の電力供給装置は、第1の電力供給装置を完全に代替することができる。
【0013】
この場合にも、好ましくは電力貯蔵装置は、人工呼吸器の動作が、第2の電力供給装置のみによって、少なくとも1時間、好ましくは数時間維持され得るように寸法設計されていることが有効である。
【0014】
呼吸ガスをその湿度に関して調整するために、人工呼吸器は、本発明の好ましいさらなる発展形態によると、吸気呼吸ガスを加湿するように構成された加湿装置を有し得る。この際、同様に好ましくは、加湿装置は、第1の電力供給装置によっても第2の電力供給装置によっても、電力を供給され得る。これは、加湿装置が、第1の電力供給装置によって、又は、第2の電力供給装置によって、電力を供給され得ることを意味している。例えば、加湿装置は、電気によって動かされて、水又は水溶液を気化させ、吸気呼吸ガスに供給する加温板又は別の気化装置を有することが可能である。
【0015】
人工呼吸器から患者まで至る呼吸ガス導管は、好ましくは、呼吸ガス導管内での凝縮を回避するために、加温され得る。この呼吸ガス導管の加温装置の熱出力も、第1の電力供給装置又は第2の電力供給装置によって、選択的に供給され得る。電気による加温は、エネルギーを非常に大量に消費するので、電気エネルギーを節約し、第2の電力供給装置の動作時間を延長するために、第2の電力供給装置による人工呼吸器の電力供給の際、好ましくは呼吸ガス導管の加温装置は、分離して停止し得る。
【0016】
第2の電力供給装置の電力貯蔵装置は、好ましくは再充電可能である。このために、第2の電力供給装置は、充電機器と導電的に接続されていてよく、当該充電機器自体は、やはり充電電力貯蔵装置又は供給電圧源と接続可能である。人工呼吸器の動作又は動作可能な状態の創出に必要な装置の数を可能な限り少なくするという目的で、好ましくは第2の電力供給装置の電力貯蔵装置は、第1の電力供給装置によって充電可能である。これは容易に可能である。なぜなら、第1の電力供給装置は、供給電圧源と接続可能であり、従って、供給電圧源から、第2の電力供給装置の電力貯蔵装置を充電するための電気エネルギーが十分に供給されるからである。第2の電力供給装置の電力貯蔵装置の制御されない充電と、それによって起こり得る過充電とを回避するために、好ましくは、制御装置は、第1の電力供給装置による電力貯蔵装置の充電プロセスを制御するように構成されている。このために、制御装置は、連続的に、又は、断続的に、電力貯蔵装置の充電状態を確認し、確認結果に応じて充電プロセスを終了させることができる。
【0017】
供給電圧源の故障の際、例えば公共電力供給のブラックアウトの間、又は、電気のヒューズの作動による局地的な供給網の遮断の後で、少なくとも呼吸ガス輸送装置が、患者を危険にさらすことなく、さらに呼吸ガスを輸送すること、好ましくは人工呼吸器全体が動作を続けることを保証可能にするために、好ましくは、第2の電力供給装置が、第1の電力供給装置による人工呼吸器の電力供給が終了した場合のための、無中断の電力供給装置として構成されていることが規定されている。この際、電力供給の中断は、第1の電力供給装置から第2の電力供給装置に切り替える際、50msまでは、当業者によって一般的に、「無中断」と見なされるべきである。医療に使用するゆえに好ましくは、第2の電力供給装置は、第1の電力供給装置の供給が終了した場合、文字通りの意味で、少なくとも呼吸ガス輸送装置の電力供給、好ましくは他の機能装置の電力供給を、無中断に継続するので、第2の電力供給装置による電力供給は、第1の電力供給装置による電力供給に継ぎ目なく続いている。
【0018】
基本的に、第2の電力供給装置は、人工呼吸器のハウジングに受容されていてよい。一般的に、第2の電力供給装置が必要とするような電力貯蔵装置は、その平均よりも大きい密度ゆえに、大きい重量を有しているので、ポータブル人工呼吸器の重量を制限し、従って人工呼吸器の可動性を改善するために、好ましくは、第2の電力供給装置が、人工呼吸器のハウジングとは別の電力供給装置ハウジングを有することが考えられている。これによって、第2の電力供給装置は、不要な場合に、人工呼吸器のハウジングから分離され得る。これは例えば、人工呼吸器が専ら第1の電力供給装置によって電気エネルギーを供給される動作段階において考えられ得る。従って、好ましい一実施形態によると、第2の電力供給装置の電力供給装置ハウジングは、共に移動するために、物理的に解除可能に、人工呼吸器のハウジングと連結され得る。つまり、第2の電力供給装置が、物理的に人工呼吸器のハウジングと連結されている場合、当該ハウジングと共に輸送可能でもあり、従って、ハウジングと電力供給装置ハウジングとを含む対象のみを移動させればよい。この場合、人工呼吸器を移動させる者の手は空いている。
【0019】
第2の電力供給装置の電力貯蔵装置と、従って第2の電力供給装置全体との、容積単位の重量が平均よりも大きいことについては、既に指摘した。ここで議論されている人工呼吸器が、可能な限り高い構造安全性を有していることを確実化するために、第2の電力供給装置は、人工呼吸器を動作可能な状態で設置する際、第2の電力供給装置と人工呼吸器との高さの合計の、下側20%内に配置されている。上述のハウジングと電力供給装置ハウジングとの、分離可能性も含んだ好ましい物理的な連結可能性を考慮して、好ましくは第2の電力供給装置は、第2の電力供給装置を含む人工呼吸器の最も下に位置する機能装置であり、これによって、人工呼吸器の深く位置するだけではなく、可能な限り深く位置する重心が形成される。人工呼吸器の可能な限り深く位置する重心という視点は、第2の電力供給装置が人工呼吸器のハウジングと連結可能であり、ハウジングから分離可能である場合だけではなく、第2の電力供給装置が、人工呼吸器のハウジングに受容されている場合にも適用される。
【0020】
上述の加湿装置は、液体の備蓄と、従って同様に平均よりも大きい容積単位当たりの重量とを有し得るので、好ましくは加湿装置と、しかしながら少なくともその液体の備蓄と、第2の電力供給装置とは、すぐ近くに配置されている。好ましくは、加湿装置と、しかしながら少なくともその液体の備蓄と、第2の電力供給装置とは、動作可能に準備できた人工呼吸器を観察した場合、重なり合って配置されており、好ましくは第2の電力供給装置は、加湿装置の下に配置されている。
【0021】
設置された人工呼吸器に予期せずつまづくことを回避するために、好ましくは電力供給装置ハウジングは、動作可能な状態で設置された人工呼吸器を観察した場合、人工呼吸器のハウジングの、重力の作用方向において投影された輪郭の内側に完全に受容されている。従って、電力供給装置ハウジングは、側方において、人工呼吸器のハウジングからは突出していない。可能な限り高い構造安全性の理由から、好ましくは電力供給装置ハウジングは、人工呼吸器の最も下に位置する機能ユニットを形成している場合、人工呼吸器のハウジングの重力の作用方向において投影された輪郭から離れてもいない。好ましくは、ハウジングと電力供給装置ハウジングとは、これらの間の不可避の接合部を除いて、ハウジングと電力供給装置ハウジングとから成る装置全体の同一平面上の外壁を形成している。
【0022】
可能な限り深い重心を得るために、第2の電力供給装置は、好ましくは人工呼吸器を動作可能な状態で設置した場合に人工呼吸器の最も下に位置する機能装置であり、上述の理由から、同様に好ましくは加湿装置の液体の備蓄の下に配置されているので、液体が、液体の備蓄からの漏れであれ凝縮水であれ、重力によって動かされて、ハウジング上を流れ落ち、電力供給装置ハウジングに到達することが生じ得る。
【0023】
第2の電力供給装置の湿気による損傷を回避するために、電力供給装置ハウジングは、好ましくは防湿に構成されている。
【0024】
人工呼吸器の設置個所の周囲、特に人工呼吸器が動作中に位置している設置地面における湿気による損傷を回避するために、電力供給装置ハウジングには、好ましくは誘導面が形成されており、当該誘導面上に衝突した液体は、意図的に、少なくとも1つの所定の誘導部に誘導され、誘導部では、誘導された液体が待ち受けられ、収集され得る。
【0025】
誘導面は、好ましくは少なくとも2つの傾斜の異なる面部分を含んでおり、これらの面部分は、連結された第2の電力供給装置と共に、人工呼吸器の動作可能な状態での方向付けでは、重力の作用方向において連続している。この際、好ましくは第1の面部分は、その第1の傾斜に基づいて、液体を、人工呼吸器の外壁から、内側に向かってハウジングと電力供給装置ハウジングとの間の隙間空間内へ、第1の傾斜の方向において第1の面部分に続く第2の面部分に誘導し、第2の面部分は、その第2の傾斜に基づいて、第1の面部分から受け取った液体を、誘導部へと誘導する。誘導部は、好ましくは、人工呼吸器の外面に、好ましくはハウジングと電力供給装置ハウジングとの接合部に位置している。誘導された液体による人工呼吸器の動作及び作動の障害を回避するために、誘導部は、好ましくは人工呼吸器の前面には存在せず、特に好ましくは人工呼吸器の背面に存在している。背面では、誘導部に用意された吸収力のある布またはスポンジによって、誘導された液体が回収され得る。
【0026】
液体の誘導は、電力供給装置ハウジングの表面で行われるので、第1の面部分及び第2の面部分は、好ましくは電力供給装置ハウジングの表面の部分として構成されており、ハウジングに連結された状態において、ハウジングと電力供給装置ハウジングとの間の分離間隙を、電力供給装置ハウジングの側で画定する。
【0027】
可能な限り広範囲にわたって液体を誘導するために、好ましくは第1の面部分は、少なくとも部分的に、ハウジングの周りを、重力によって行われる誘導ゆえに好ましくはハウジングの垂直軸の周りを取り巻いている。好ましくは、第1の面部分は、電力供給装置ハウジングの前面上と、前面に異なる側で接続している両方の側面上とに延在している。第1の面部分は、電力供給装置ハウジングの本体中央に向かう方向において傾斜していてよく、これによって、液体を、人工呼吸器の外面から、内側に向かってハウジングと電力供給装置ハウジングとの間の分離間隙体積内に誘導することができる。第1の面部分は、湾曲軸の周りで湾曲していてもよく、これによって、電力供給装置ハウジングの外壁に沿って、可能な限り大きい長さが得られる。従って、湾曲軸は、好ましくは第1の面部分の1つ又は複数の傾斜軸とは異なっている。
【0028】
第2の面部分は、好ましくは第1の面部分に直接接続されている。第2の面部分は、最も単純な場合、平らな傾斜面であってよく、その測地学的に最も深い点に、誘導部が位置している。
【0029】
可能な限り小さい接地面を要求するために、ハウジングは、好ましくはタワー型ハウジングであり、その最大の寸法は、動作可能な状態で設置された場合、高さの寸法である。好ましくは、ハウジングは、少なくとも幅の1.5倍の高さを有し、同様に、少なくとも深さの1.5倍の高さを有している。このとき、「幅」及び「深さ」は、互いに直交し、かつ、ハウジングの高さ方向に直交する寸法方向である。
【0030】
操作を容易にするために、ハウジングは、その上側端部領域に、入力/出力装置を有し得る。入力/出力装置の操作ユニットの特に良好なアクセスは、入力/出力装置が、高さ方向に対しても深さ方向に対しても、幅方向において延在する設置軸の周りで傾斜又は/及び湾曲した入力/出力面を有しており、入力/出力面に、ボタン、スイッチ、表示面等の操作ユニットが配置又は構成されていることによって得られる。
【0031】
制御装置は、貯蔵装置に基づく第2の電力供給装置からのエネルギーのみを用いて、可能な限り長い動作時間を得るために、人工呼吸器、特に人工呼吸器内及び人工呼吸器上の加温装置、好ましくは全ての加温装置、より好ましくは上述の加温板の動作を、制御装置と信号を伝達するように接続された温度センサの検出信号に従って開ループ制御又は閉ループ制御し、温度センサから制御装置に伝達された温度信号が、所定の境界温度を超過しない温度を表すように構成されている。所定の境界温度は、人工呼吸器に接続された呼吸ガスホースの近位端部領域の範囲における吸気呼吸ガスの温度を表す場合、30℃から40℃の範囲であってよく、好ましくは33℃から38℃の領域である。好ましくは、境界温度は35℃である。
【0032】
人工呼吸器は、好ましくは少なくとも1つの温度センサを含んでおり、当該温度センサは、人工呼吸器に接続された呼吸ガスホースの近位端部領域の範囲における吸気呼吸ガスの温度を検出し、制御装置に伝達する。好ましくは、少なくとも1つの温度センサが呼吸ガスホースに配置されており、具体的には、好ましくは患者への吸気呼吸ガスの分配の前方50cm以内、好ましくは30cm以内の領域に配置されている。
【0033】
可能な限り長い時間にわたって換気動作を維持するために、制御装置はさらに、電力貯蔵装置の充電状態に依存して、人工呼吸器の予め選択されたコンポーネントに電力を供給するように構成されていてよい。
【0034】
特に電力を大量に消費するのは、電動の加温装置である。従って、制御装置は、電力貯蔵装置の充電状態に依存して、1つ又は複数の加温装置を停止するように構成されていてよい。停止は、例えば電力供給装置の中断又はスイッチオフによって行われ得る。この停止は、異なるコンポーネントに関する異なる境界充電状態に依存して段階をつけて行われ得るものであり、異なるコンポーネントには、値が異なる境界充電状態が割り当てられており、当該境界充電状態を下回ると、各コンポーネントの停止がもたらされる。電力貯蔵装置の充電状態が、第1の境界充電状態を下回る場合、制御装置は、気化装置、特にその加温板を停止させることができる。圧力変更装置及びその他のコンポーネントは、さらに動作することができる。充電状態が、第1の境界充電状態よりも値の低い第2の境界充電状態を下回る場合、呼吸ガス導管の加温装置を停止させることを規定してよい。やはり、圧力変更装置及びさらなるコンポーネントはさらに動作することができる。
【0035】
最後に、第2の境界充電状態よりも値の低い第3の境界充電状態を下回る場合、制御装置が換気動作を停止することを規定してよい。第3の境界充電状態は、値が最も低い充電状態であってよく、制御装置による1つ又は複数のコンポーネントの意図的な停止をもたらす。しかしながら、到達されるまではデータ記憶装置、特に揮発性データ記憶装置が電力を供給される、さらに値の低い境界充電状態が存在可能であり、これによって、データが動作を通じて出力されるか、又は、人工呼吸器の不揮発性記憶媒体内に保存され得る。
【0036】
以下において、本発明を、添付された図面を用いて詳細に説明する。示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明に係るポータブル人工呼吸器の、斜め前方及び上方からの斜視図である。
図2図1に係る人工呼吸器の背面図である。
図3図1において破線で示した第2の電力供給装置の、斜め前方及び上方からの斜視図である。
図4図1に係るポータブル人工呼吸器を、人工呼吸器にはめ込まれた、液体の備蓄を有する容器、及び、接続された換気ホースと共に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1及び図2では、本発明に係るポータブル人工呼吸器の実施形態を、全体として参照符号10で表している。人工呼吸器10はハウジング12を含んでおり、ハウジング12内には、送風機の形状の呼吸ガス輸送装置13、当業者は「電源ユニット」とも呼ぶ、供給網に基づく第1の電力供給装置14、制御装置16、及び、入力/出力装置18が受容されている。ハウジング12内部の装置は、ただ破線で示されている。
【0039】
呼吸ガス輸送装置13は、送風機として、周囲空気を吸気ポート(図示せず)を通じて吸い込み、呼吸ガスハウジング排気口20において、呼吸ガスハウジング排気口20に接続されていはいるが、本図には示されていない呼吸ガス導管に放出する。呼吸ガス輸送装置13は、吸い込まれた周囲空気を、呼吸ガスハウジング排気口20までだけではなく、呼吸ガスハウジング排気口に接続された呼吸ガス導管を通って患者まで輸送するために十分な陽圧を形成する。
【0040】
本図に示された例では、呼吸ガスハウジング排気口20は、図には示されていない以下においてさらに言及される加湿装置の液体備蓄タンクに開口している。
【0041】
好ましくは凝縮を回避するために加温可能である、患者に至る呼吸ガスホースの接続は、接続構造21において行うことが可能であり、接続構造21から、吸気呼吸ガスは、加湿装置の液体備蓄タンクを通過した後、患者に供給される。
【0042】
当該実施例の人工呼吸器10は、いわゆる「ハイフロー」人工呼吸器10であり、人工呼吸を施されている患者の呼吸リズムとは無関係に、人工呼吸を施されている患者に、その呼気段階の間も、吸気呼吸ガスを連続的に供給する。しかしながら、本発明は、当該機器の型に限定されるものではない。
【0043】
制御装置16は、呼吸ガス輸送装置13、第1の電力供給装置14、及び、入力/出力装置18と、信号を伝達するように接続されており、これによって、制御装置16は、入力/出力装置18に入力された制御命令又は/及びパラメータを、さらなる処理のために受信し、制御命令を、呼吸ガス輸送装置13、第1の電力供給装置14及び入力/出力装置18に伝達することが可能である。制御命令を伝達する可能性の他に、制御装置16は、信号を伝達する接続を通じて、呼吸ガス輸送装置13、第1の電力供給装置14及び入力/出力装置18の動作パラメータを検出し、これらの動作を監視することができる。同様に、制御装置16は、入力/出力装置18にデータを伝達することが可能であり、当該データは、入力/出力装置18において、外に向かって、認識できるように表示又は出力される。
【0044】
第1の電力供給装置14は、公共の電力供給網に接続するために、電力ケーブル22を通じて、供給電圧源(図示せず)、例えばコンセントと接続可能である。
【0045】
参照符号23で、さらなる呼吸ガス源を、好ましくは周囲空気とは異なるさらなる呼吸ガスと接続するための接続構造が示されている。呼吸ガス輸送装置13によって吸い込まれた周囲空気は、呼吸ガスハウジング排気口20に放出する前に、人工呼吸器10内のさらなるガスと混合され得る。
【0046】
入力/出力装置18は、好ましくは幅方向Bに対して平行な設置軸の周りで傾斜しており、従って、その入力表面18aは、操作者によって容易に到達可能である。入力表面18aは、例えばタッチセンサ式のスクリーン、すなわちいわゆる「タッチスクリーン」であってよい。タッチセンサ式のスクリーンに関して典型的であるような、単に区切られ、機能を割り当てられたボタンに対して代替的又は付加的に、入力/出力装置18は、プッシュボタン、ロータリースイッチ等の1つ又は複数のスイッチも含み得る。例えば、機械的なプッシュボタンとして形成された、オン/オフスイッチ19が言及される。
【0047】
図1及び図2において、人工呼吸器10は、換気動作を行う準備ができた状態で示されている。
【0048】
さらなる機能装置として、人工呼吸器10は、加湿装置26の加温板24を有しており、その図示されていない液体備蓄タンクは、ハウジング12の前面の凹所28に挿入可能である。加湿装置26の加温板24も、制御装置16によって制御される。このために、制御装置16は、1つ又は複数の湿度センサと信号を伝達するように接続されていてよく、湿度センサは、呼吸ガス輸送装置13によって輸送される吸気呼吸ガスの、加湿装置26を通過した後の湿度、及び、場合によっては加湿装置26を通過する前の湿度も検出し、制御装置16に伝達する。
【0049】
液体の備蓄を有する加湿装置26は、比較的大きい容積単位当たりの重量を有しているので、加湿装置26は、ハウジング12内で、高さ方向Hにおいて、可能な限り下側に配置されており、これによって、人工呼吸器10の可能な限り深い重心が形成される。この理由から、同様に容積単位当たりの重量が大きい第1の電力供給装置14も、ハウジング12内で可能な限り下側に配置されている。好ましくは、加湿装置26の液体の備蓄と第1の電力供給装置とは、ハウジング12の下側3分の1内に位置している。
【0050】
人工呼吸器10はさらに、図3に示された第2の電力供給装置30を有しており、第2の電力供給装置30は、図示された好ましい実施形態において、人工呼吸器10のハウジング12とは別個に構成された電力供給装置ハウジング32を有している。第2の電力供給装置30は、第1の電力供給装置14のような供給網に基づく電力供給装置ではなく、以下において「電力貯蔵装置」とも呼ばれる電気エネルギー貯蔵装置34を有している。
【0051】
電力貯蔵装置34は、好ましくはリチウムイオン蓄電池のように、複数回再充電することが可能な蓄電池である。しかしながら、電力貯蔵装置は、他の種類の蓄電池、又は/及び、電気エネルギー貯蔵装置として、少なくとも1つのコンデンサを有していてもよい。
【0052】
人工呼吸器10は、第2の電力供給装置30を用いて、及び、用いずに、動作することができるので、図1では、第2の電力供給装置30は、単に破線で示唆されている。
【0053】
第2の電力供給装置30は、人工呼吸器10のハウジング12の下面12aに、第2の電力供給装置30が連結された状態においてハウジング12と共に移動可能であるように、物理的に解除可能に連結され得る。連結を解除された状態において、ハウジング12は、その下面12aで載置され得る。
【0054】
第2の電力供給装置30は、その上面30aに連結構造36を有しており、連結構造36は、電力を伝達するように、ハウジング12の下面12a上の連結相手側構造と、機械的に形状接続的に係合し得る。図3が示すように、連結構造36は、突起として構成されている。従って、ハウジング12の下面12a上の図示されていない連結相手側構造は、凹所の形状で形成されている。ロック装置38は、第2の電力供給装置30を、第2の電力供給装置30から残りの人工呼吸器10への電気エネルギーの伝達の準備ができた状態においてロックする。ロック装置38は、自動的にロックするようにプレテンションを加えられていてよく、例えば第2の電力供給装置30の下面30bでの作動係合によって、人工呼吸器10のハウジング12から第2の電力供給装置30の連結を解除するために、ロック解除可能であってよい。
【0055】
電力供給装置ハウジング32の前面には、充電状態表示40が配置されていてよく、充電状態表示40は、例えば複数のLEDを含むことが可能であり、電力貯蔵装置34が充電される程に、より多くの数のLEDが点灯する。付加的又は代替的に、充電状態表示40は、例えば電力貯蔵装置34が空になることによる、第2の電力供給装置30の動作終了が目前に迫っているといった付加的な情報を伝えるために、その光の色を、例えば緑から赤へ、赤から緑へ、と変化させることが可能である。プッシュボタン40aを用いて、充電状態表示40を作動することが可能であり、充電状態表示40は、エネルギーを節約するために、プッシュボタン40aを操作した場合のみ、数秒という短い所定の時間にわたってのみ、電力貯蔵装置34の充電状態を表示する。
【0056】
第2の電力供給装置30が、ハウジング12上に、動作可能な状態で配置されている場合に、制御装置16は、第2の電力供給装置30の動作も制御することができる。例えば、操作入力によって、両方の電力供給装置14及び30が、電力供給者として利用可能であるか、人工呼吸器が、第1の電力供給装置14又は第2の電力供給装置30によって、電気エネルギーを供給されるべきであるかが確認され得る。例えば、停電になった、又は、第1の電力供給装置14が故障した、又は、電力ケーブル22が欠けている、といった理由で第1の電力供給装置14が利用できない場合、人工呼吸器10は、自動的に第2の電力供給装置30によって、電気エネルギーを供給される。
【0057】
第1の電力供給装置14が、電力供給者として利用できる場合、動作にとって重要な機能装置、例えば呼吸ガス輸送装置13、制御装置16自体、場合によっては入力/出力装置18、又は/及び、加湿装置26への供給の後で、電力貯蔵装置34の充電のために十分な備蓄が利用可能である限りにおいて、制御装置16は、第1の電力供給装置14による電力貯蔵装置34の充電を指示することができる。
【0058】
第2の電力供給装置30は、人工呼吸器10において、無中断の電力供給装置として機能する。すなわち、第1の電力供給装置14による人工呼吸器10の電力供給の停止は、短時間で、第2の電力供給装置30によって補償されるので、人工呼吸器10の換気動作に、重大な中断は生じない。これは実践では、第2の電力供給装置30は、遅くとも第1の電力供給装置14が停止した後50ms以内に、電気エネルギーを、それまで第1の電力供給装置14によって電力を供給されていた機能装置に与えるということを意味している。
【0059】
従って、第2の電力供給装置30は、ハウジング12の下面12aに取り付けることが可能である。なぜなら、第2の電力供給装置30は、その容積に関して、平均よりも大きい重量を有しており、従って、第2の電力供給装置30を含む人工呼吸器10全体の所望の深い重心に寄与し得るからである。
【0060】
図1が示唆するように、高さ方向Hに対して平行な垂直軸の周りを取り巻く外側面30cは、概ね同一平面上で、ハウジング12の外側面12cに、ハウジング12の下側端部領域において接続しており、概ね加温板24とハウジング12の下面12aとの間で接続している。
【0061】
ハウジング12は、タワー型ハウジングであり、つまり、高さ方向Hにおいて、幅方向B及び深さ方向Tにおけるよりもはるかに大きい寸法を有している。図示された例では、ハウジング12の外側面12cを有する領域における幅方向の寸法は、深さ方向における寸法と略同じ大きさである。ハウジング12の外側面12cと接地面との間には、傾斜面が構成されていてよく、当該傾斜面は、傾斜面31aの補完的な構成として、好ましくは第2の電力供給装置30又は電力供給装置ハウジング32の上面30aにも形成されていてよい。従って、第2の電力供給装置30は、移動の遊びが非常に小さく、非常に安定しており、ハウジング12の下面12aと、大きな安定性でもって解除可能に連結され得る。
【0062】
さらに、傾斜面31aは、上述の、人工呼吸器の外壁から所定の誘導部33へ液体を誘導するための上面30aの第1の面部分として用いられる。当該例の場合、2つの誘導部33が存在している。
【0063】
傾斜面31aは、第2の電力供給装置30の本体中央に向かう方向において傾斜している。傾斜面31aはさらに、高さ方向に対して平行な湾曲軸の周りに複数回湾曲しており、これによって、傾斜面31aは、図2に示された人工呼吸器10の背面の反対側の前面にわたっても、前面に接続された2つの面にわたっても延在し得る。
【0064】
傾斜面31aの測地学的に深い位置にある縁部には、第2の面領域31bが接続されており、第2の面領域31bは、誘導部33が面領域31bの測地学的に最も深い場所であるように傾斜しており、これによって、傾斜面31aから第2の面領域31bにあふれる液体は、さらに重力によって動かされて、誘導部33に向かって流れる。
【0065】
傾斜面31aは、電力供給装置ハウジング32の上面30aの外側縁部を直接の始点としているので、ハウジング12の外側面12cを、重力によって動かされて、ハウジング12と電力供給装置ハウジング32との間の接合部42に向かって下方へ流れる液体は、接合部に到達すると、まず傾斜面31aを通じて、次に第2の面領域31bを通じて、接合部42から誘導部33に誘導される。
【0066】
図示された実施例では、高さ方向Hは、重力の作用方向に対して平行に、しかしながら反対の方向に延在している。特に図1において認識できるように、ハウジング12に連結された第2の電力供給装置30は、完全に、ハウジング12の重力の作用方向に沿って投影された輪郭内に位置しており、当該輪郭から側方において突出することはない。第2の電力供給装置30は、ハウジング12の投影された輪郭から離れてもおらず、幅方向B及び深さ方向Tによって形成される面におけるその広がりにおいて、ハウジング12の輪郭面に略一致している。
【0067】
図4には、図1に係る人工呼吸器10が、液体備蓄タンク44と共に示されており、液体備蓄タンク44は、凹所28にはめこまれている。接続構造21には、換気ホース46が連結されており、換気ホース46は、加湿装置26によって調整された呼吸ガスを、図示されていない患者に向かって誘導する。
【0068】
換気ホース46の第1の部分46aの、人工呼吸器10から離れた端部には、温度センサ48が配置されており、温度センサ48は、換気ホース46内、特に第1の部分46aの端部における呼吸ガスの温度を検出し、無線を通じて、又は、換気ホース46内若しくは換気ホース46上に誘導された、換気ホース46を接続構造21と連結する際に、好ましくは自動的に信号を伝達するように制御装置16と接続されるケーブルを通じて、制御装置16に伝達する。
【0069】
温度センサ48の温度信号を基に、制御装置16は、特に人工呼吸器10が第2の電力供給装置30によってのみ電気エネルギーを供給される場合に、加温板24の動作を、しかしまた場合によっては換気ホース46内に設けられている加温装置の動作を、温度センサ48における呼吸ガスが、所定の温度範囲内の温度、例えば30℃から40℃、好ましくは33℃から38℃、特に好ましくは35℃の温度範囲を有するように制御することができる。
【0070】
換気ホース46の人工呼吸器10のより近くに位置する第1の部分46aは、図4において短縮して示されている。
【0071】
第1の部分46aには、換気ホース46の第2の部分46bが接続されており、第2の部分46bの端部には、鼻カニューレ50が配置されており、鼻カニューレ50は、ヘッドバンド52を通じて、患者の頭部に既知の方法で固定され得る。鼻カニューレ50を通じて、呼吸ガスが連続的に、患者に与えられ得る。
【符号の説明】
【0072】
10 人工呼吸器
12 ハウジング
12a 下面
12c 外側面
13 呼吸ガス輸送装置
14 第1の電力供給装置
16 制御装置
18 入力/出力装置
18a 入力表面
19 オン/オフスイッチ
20 呼吸ガスハウジング排気口
21 接続構造
22 電力ケーブル
23 接続構造
24 加温板
26 加湿装置
28 凹所
30 第2の電力供給装置
30a 上面
30b 下面
30c 外側面
31a 傾斜面
31b 第2の面領域
32 電力供給装置ハウジング
33 誘導部
34 電力貯蔵装置
36 連結構造
38 ロック装置
40 充電状態表示
40a プッシュボタン
42 接合部
44 液体備蓄タンク
46 換気ホース
46a 第1の部分
46b 第2の部分
48 温度センサ
50 鼻カニューレ
52 ヘッドバンド
B 幅方向
H 高さ方向
T 深さ方向
図1
図2
図3
図4