(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】プリント回路基板のためのインクジェットインク
(51)【国際特許分類】
C08F 220/34 20060101AFI20241224BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20241224BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20241224BHJP
H05K 3/06 20060101ALI20241224BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
C08F220/34
C09D11/30
B41M5/00 120
B41M5/00 100
H05K3/06 H
H05K1/03 610N
(21)【出願番号】P 2022572612
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2021062969
(87)【国際公開番号】W WO2021239488
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-25
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593194476
【氏名又は名称】アグフア-ゲヴエルト,ナームローゼ・フエンノートシヤツプ
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソヴァジョ,マリオン
(72)【発明者】
【氏名】ロキュフィエ,ヨハン
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-515093(JP,A)
【文献】特開2005-133071(JP,A)
【文献】特開2009-167346(JP,A)
【文献】特表2020-512412(JP,A)
【文献】特開2001-066770(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03533844(EP,A1)
【文献】特表2017-517136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C09D
B41M
H05K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの重合性化合物及び接着促進剤を含む放射線硬化性組成物であって、接着促進剤が:
- アクリレートまたはメタクリレートから選択される重合性基、並びに
- 少なくとも1つの窒素含有5又は6員ヘテロ芳香族環を含む接着促進基
を含み、
窒素含有5又は6員ヘテロ芳香族環が、N-アルキル化ベンゾイミダゾールであり、及び
窒素含有5又は6員ヘテロ芳香族環が、少なくとも3.5の共役酸のpKaを有することを特徴とし、
接着促進剤が、式II
【化2】
(式中、
R
3は、水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群から選択され;
R
4及びR
5は、水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群から独立して選択され;
R
4及びR
5は一緒になって、5~8員環を形成するために必要な原子を表す場合があり;
R
6及びR
7は、水素及びメチル基からなる群から独立して選択され;
Yは、酸素原子、硫黄原子及びNR
8から選択され;
R
8は、水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群から選択され;
L
3は、n+m価連結基を表すが、但しn+mは6以下であることを条件とし;
n及びmは、1~5の整数を独立して表す。)
による化学構造を有し、
重合性化合物は、アクリロイルモルホリン、
環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、イソボルニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2-(ビニルエトキシ)エチルアクリレート
、ウレタンアクリレート
、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート及び2-(アクリロイルオキシ)エチルスクシネートからなる群から選択される
放射線硬化性組成物。
【請求項2】
二又は多官能性アルコキシシラン、並びにエポキシド及びオキセタンからなる群から選択される基で官能化された単官能性アルコキシシランから選択されるシラン化合物をさらに含む、請求項1に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項3】
二又は多官能性アルコキシシランが、式III
【化3】
(式中、
Lは、置換又は非置換アルキレン基、置換又は非置換アルケニレン基、置換又は非置換アルキニレン基及び置換又は非置換アリーレン基からなる群から選択される二価連結基を表し;
Rは、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群から選択される基を表す。)
による少なくとも2つのアルコキシシラン部分を含む、請求項2に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項4】
インクジェットインクである、請求項1に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項5】
インクジェット印刷工程を含むプリント回路基板(PCB)の製造方法であって、請求項1に定義される放射線硬化性組成物を基板上に噴射し硬化させる、方法。
【請求項6】
硬化がLED UV放射線を用いて行われる、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
インクジェット印刷工程がはんだマスク印刷を含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
加熱工程も含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項9】
基板が、導電性回路が設けられた誘電体基板である、請求項
5に記載の方法。
【請求項10】
誘電体基板がポリイミド系基板である、請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路基板の製造方法において使用するための放射線硬化性インクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板(PCB)の生産ワークフローは、特に短期生産のために、プロセス工程の量を低減し、費用及び環境への影響を低減するために、標準ワークフローからデジタルワークフローに徐々に移行している。
【0003】
インクジェット印刷は、はんだマスク上のエッチングレジストからレジェンド印刷に向かうPCB製造プロセスの様々な工程のための好ましいデジタル製造技術である。好ましいインクジェットインクは、UV硬化性インクジェットインクである。
【0004】
PCBの異なる製造工程において、様々な基板に対するインクジェットインクの接着性は、極めて重要である。放射線硬化性インクジェットインクがはんだマスクの製造に使用される場合、いくつかの基板上の硬化インクジェットの接着は、はんだ付け(はんだ耐性)及びENIGメッキ(ENIGメッキ耐性)中に用いられる過酷な条件に耐える必要がある。特に、過酷で変化する条件(pH及び温度)が用いられるENIGメッキプロセスは、インクジェットインクの接着要件に関して非常に厳しいものである。
【0005】
より多くのモバイル装置が使用されるにつれて、可撓性PCBの需要が高まっている。そのような可撓性PCBは、典型的には、より薄い銅回路を有する。はんだマスクは、銅回路によく接着しなければならず、従来、剛性PCBにおいては、回路とはんだマスクとの間の接着を改善するために、銅の前処理、例えばマイクロエッチングが行われる。しかしながら、これらの前処理の全ては銅を除去し、従ってより薄い銅回路をもたらす。
可撓性PBCの銅回路が薄くなるにつれて、このような前処理は、薄すぎる銅回路をもたらすため望ましくない。
【0006】
銅回路とはんだマスクとの間の接着を改善するための代替的アプローチとして、プライマー又は表面処理溶液の提供が提案されている。特許文献1(Shikoku Chemicals Corp.)は、アゾールシラン化合物を含む表面処理溶液を開示している。特許文献2(Camtek)は、基板、例えば銅に物理的に結合する極性基と、表面エネルギーを基板上に印刷される配合物に向けて最適化する基とを含む分子の中間層、好ましくは単層による表面処理を開示している。
しかしながら、そのようなプライマー又は表面処理溶液の提供は、追加のプロセス工程を必要とし、製造プロセスを複雑化し、製造コスト及びその生態学的影響を増加させる。
【0007】
従って、はんだ付け及びENIGメッキ中に用いられる過酷な条件下で、未処理銅への卓越した接着性を有する放射線硬化性はんだマスクインクジェットインクが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許出願公開第3018137号明細書
【文献】国際公開第2014/111942号パンフレット
【発明の概要】
【0009】
インクジェット印刷工程(それによって改善されたはんだ及びENIG耐性を有するはんだマスクが実現される)を含む可撓性プリント回路基板(PCB)の製造方法における使用のための放射線硬化性インクジェットインクを提供することが本発明の目的である。
【0010】
本発明の目的は、請求項1に定義される放射線硬化性インクジェットインクにより実現される。
【0011】
本発明のさらなる目的は、以後の記載から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
例えば単官能性重合性化合物における用語「単官能性」は、重合性化合物が1つの重合性基を含むことを意味する。
【0013】
例えば二官能性重合性化合物における用語「二官能性」は、重合性化合物が2つの重合性基を含むことを意味する。
【0014】
例えば多官能性重合性化合物における用語「多官能性」は、重合性化合物が3つ以上の重合性基を含むことを意味する。
【0015】
用語「アルキル」は、アルキル基中の炭素原子の各数について可能な全ての変異体、即ち、メチル、エチル、3つの炭素原子の場合:n-プロピル及びイソプロピル;4つの炭素原子の場合:n-ブチル、イソブチル及び第3級ブチル;5つの炭素原子の場合:n-ペンチル、1,1-ジメチル-プロピル、2,2-ジメチルプロピル及び2-メチル-ブチル等を意味する。
【0016】
特に明記しない限り、置換又は非置換アルキル基は、好ましくは、C1~C6-アルキル基である。
【0017】
特に明記しない限り、置換又は非置換アルケニル基は、好ましくは、C2~C6-アルケニル基である。
【0018】
特に明記しない限り、置換又は非置換アルキニル基は、好ましくは、C2~C6-アルキニル基である。
【0019】
特に明記しない限り、置換又は非置換アルカリール基は、好ましくは、1つ、2つ、3つ又はそれを超えるC1~C6-アルキル基を含むフェニル又はナフチル基である。
【0020】
特に明記しない限り、置換又は非置換アラルキル基は、好ましくは、フェニル基又はナフチル基を含むC7~C20-アルキル基である。
【0021】
特に明記しない限り、置換又は非置換アリール基は、好ましくは、フェニル基又はナフチル基である。
【0022】
特に明記しない限り、置換又は非置換ヘテロアリール基は、好ましくは、1つ、2つ又は3つの酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子又はそれらの組み合わせで置換された5員環又は6員環である。
【0023】
例えば置換アルキル基における用語「置換」は、アルキル基がそのような基に通常存在する原子、即ち、炭素及び水素以外の原子で置換されている場合があることを意味する。
例えば、置換アルキル基は、ハロゲン原子又はチオール基を含む場合がある。非置換アルキル基は、炭素原子及び水素原子のみを含む。
【0024】
特に明記しない限り、置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換アラルキル基、置換アルカリール基、置換アリール及び置換ヘテロアリール基は、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル及び第3級ブチル、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸エステル、スルホンアミド、-Cl、-Br、-I、-OH、-SH、-CN及び-NO2からなる群から選択される1つ以上の成分で置換されている。
【0025】
放射線硬化性組成物
本発明による放射線硬化性組成物は、少なくとも1つの、以下に記載される重合性化合物及び接着促進剤を含む。
【0026】
放射線硬化性組成物は、さらに、開始剤、接着促進剤、着色剤、ポリマー分散剤、重合阻害剤、難燃剤又は界面活性剤等の他の成分を含む場合がある。
【0027】
放射線硬化性組成物は、好ましくは放射線硬化性インクジェットインクである。
【0028】
放射線硬化性インクジェットインクは、いずれかのタイプの放射線で硬化される場合があるが、好ましくはUV放射線、より好ましくはUV LEDからのUV放射線で硬化される。従って、放射線硬化性インクジェットインクは、好ましくはUV硬化性インクジェットインクである。
【0029】
信頼性のある工業用インクジェット印刷のために、放射線硬化性インクジェットインクの粘度は、全て1000s-1の剪断速度で、好ましくは、45℃で20mPa.s以下、より好ましくは、45℃で1~18mPa.s、最も好ましくは、45℃で4~14mPa.sである。
【0030】
好ましい噴射温度は、10~70℃、より好ましくは20~55℃、最も好ましくは25~50℃である。
【0031】
良好な画像品質及び接着性のために、放射線硬化性インクジェットインクの表面張力は、好ましくは、25℃で18~70mN/mの範囲、より好ましくは、25℃で20~40mN/mの範囲である。
【0032】
接着促進剤
放射線硬化性インクジェットインクは、以下を含む接着促進剤を含む:
- アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、マレイミド、ビニルエーテル及びビニルエステルから選択される重合性基、並びに
- 少なくとも1つの窒素含有5又は6員ヘテロ芳香族環を含む接着促進基。
【0033】
窒素含有5又は6員ヘテロ芳香族環の窒素は、好ましくは、水素に共有結合されていない。
【0034】
窒素含有5又は6員ヘテロ芳香族環は、好ましくは、N-アルキル化イミダゾール、N-アルキル化ベンゾミダゾール、ピリジン、キノリン及びイソキノリンから選択され、より好ましくは、ピリジン及びN-アルキル化イミダゾールから選択される。最も好ましくは、窒素含有5又は6員ヘテロ芳香族環は、N-アルキル化イミダゾールである。
【0035】
窒素含有5又は6員ヘテロ芳香族環は、好ましくは、少なくとも3.5、より好ましくは少なくとも4.5の共役酸のpKaを有する。
【0036】
エチレン性不飽和結合は、好ましくは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド及びメタクリルアミドからなる群から、より好ましくはアクリレート及びメタクリレートからなる群から選択される。エチレン性不飽和結合は、最も好ましくはアクリレートである。
【0037】
接着促進剤は、好ましくは、少なくとも2つの窒素含有5又は6員ヘテロ芳香族環を含む。
【0038】
好ましい態様では、接着促進剤は、オリゴマー接着促進剤である。
【0039】
より好ましい態様では、接着促進剤は、式Iによるオリゴマー接着促進剤である。
【化1】
(式中、
R
1は、水素及びメチル基からなる群から選択され;
Xは、酸素原子、硫黄原子及びNR
2からなる群から選択され;
L
1は、15以下の炭素原子を含む二価連結基を表し;
L
2は、8以下の炭素原子を含む二価連結基を表し;
R
2は、水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群から選択される基を表し;
Aは、窒素含有5又は6員ヘテロ芳香族環を表し、
L
2は、好ましくは、置換又は非置換アルキレン基、より好ましくは非置換アルキレン基、最も好ましくはC1~C6非置換アルキレン基を表す。
Xは、好ましくは酸素原子又はNR
2、より好ましくは酸素原子を表し、
R
1は、好ましくは水素を表す。)
【0040】
別の好ましい態様では、接着促進剤は、式IIによる接着促進剤である。
【化2】
(式中、
R
3は、水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群から選択され;
R
4及びR
5は、水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群から独立して選択され;
R
4及びR
5は、5~8員環を形成するために必要な原子を表す場合があり;
R
6及びR
7は、水素及びメチル基からなる群から独立して選択され;
Yは、酸素原子、硫黄原子及びNR
8からなる群から選択され;
R
8は、水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群から選択され;
L
3は、n+m価連結基を表すが、但しn+mは6以下であることを条件とし;
n及びmは、1~5の整数を独立して表し、
Yは、好ましくは酸素原子を表し、
R
4及びR
5は、好ましくは、水素及び置換又は非置換アルキル基、より好ましくは水素からなる群から選択され;
R
6、R
7及びR
8は、好ましくは水素を表し、
R
3は、好ましくは、水素及び置換又は非置換アルキル基、より好ましくは水素及びC1~C6アルキル基からなる群から選択される。)
【0041】
本発明による典型的な接着促進剤を、下記の表1に示す。
【表1-1】
【0042】
【0043】
上述した接着促進剤の量は、全て放射線硬化性組成物の総重量に対して、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.25~5重量%、最も好ましくは0.5~2.5重量%である。
【0044】
放射線硬化性組成物は、例えばアクリル酸又は他の酸含有アクリレート等の接着促進剤をさらに含む場合がある。そのようなさらなる接着促進剤は、好ましくは、下記に記載する単官能性アルコキシシラン化合物及びニ若しくは多官能性アルコキシシラン化合物から選択される。
【0045】
さらなる接着促進剤
放射線硬化性組成物は、さらなる接着促進剤を含む場合がある。そのようなさらなる接着促進剤は、好ましくは、下記に記載する単官能性アルコキシシラン化合物及びニ若しくは多官能性アルコキシシラン化合物から選択される。
【0046】
単官能性アルコキシシラン化合物
放射線硬化性インクジェットインクは、好ましくは、エポキシド及びオキセタンからなる群から選択される環状エーテル基で官能化された単官能性アルコキシシランを含む。環状エーテルは、好ましくはエポキシドである。
【0047】
単官能性アルコキシシランは、少なくとも1つのアルコキシ基、より好ましくは少なくとも2つのアルコキシ基、最も好ましくは3つのアルコキシ基を含む。
【0048】
アルコキシ基は、好ましくはC1~C4アルコキシ基、より好ましくはメトキシ、エトキシ又はイソプロポキシ基、最も好ましくはメトキシ又はエトキシ基である。
【0049】
エポキシド及びオキセタンからなる群から選択される環状エーテル基で官能化された単官能性アルキルシランの典型的な例は、表2に示される。
【表2-1】
【0050】
【0051】
単官能性アルコキシシランの量は、全てインクジェットインクの総重量に対して、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~7.5重量%、最も好ましくは1~5重量%である。
【0052】
二又は多官能性アルコキシシラン化合物
放射線硬化性組成物は、好ましくは、二又は多官能性アルコキシシラン化合物を含む。
【0053】
二又は多官能性アルコキシシランは、好ましくは、式IIIよる少なくとも2つのアルコキシシラン部分を有する。
【化3】
(式中、
Lは、置換又は非置換アルキレン基、置換又は非置換アルケニレン基、置換又は非置換アルキニレン基及び置換又は非置換アリーレン基からなる群から選択される二価連結基を表し;
Rは、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群から選択される基を表し;
Lは、好ましくは、置換又は非置換アルキレン基、より好ましくは非置換アルキレン基、最も好ましくはプロピレン基を表す。
Rは、好ましくは、置換又は非置換アルキル基、より好ましくは非置換アルキル基、最も好ましくはC1~C6アルキル基、特に好ましくはメチル又はエチル基を表す。)
【0054】
二又は多官能性アルキルシランの典型的な例は、表3に示される。
【表3-1】
【0055】
【0056】
特に好ましくは、二又は多官能性アルキルシランは、European Coating Journal,2014(7/8),21-25)に開示されているポリ(ウレタンシラン)ハイブリッド架橋剤である。
【0057】
そのような化合物は、EvonikからVESTANAT(登録商標)EP-MF製品群として市販されている。
【0058】
二又は多官能性アルコキシシランの量は、全てインクジェットインクの総重量に対して、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~7.5重量%、最も好ましくは1~5重量%である。
【0059】
放射線硬化性組成物は、アクリル酸又は他のカルボン酸基含有アクリレート等の接着促進剤をさらに含む場合がある。
【0060】
接着促進剤の総量は、全てインクジェットインクの総重量に対して、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは0.5~15重量%、最も好ましくは1~10重量%である。
【0061】
量が少なすぎると、インクジェットインクの接着性が不十分になる場合があり、量が多すぎると、インク粘度が増大する場合があり、インクの貯蔵寿命がより重要になる場合がある。
【0062】
光開始剤
放射線硬化性インクジェットインクは、好ましくは、光開始剤、好ましくはフリーラジカル光開始剤を含む。
【0063】
フリーラジカル光開始剤は、化学線に暴露されたときにフリーラジカルの形成によってモノマー及びオリゴマーの重合を開始する化学化合物である。NorrishI型開始剤は、励起後に開裂し、直ちに開始ラジカルを生じる開始剤である。NorrishII型開始剤は、化学線によって活性化され、実際の開始フリーラジカルとなる第2の化合物からの水素引き抜きによってフリーラジカルを形成する光開始剤である。この第2の化合物は、重合相乗剤又は共開始剤と呼ばれる。I型及びII型光開始剤の両方を、本発明において単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0064】
適切な光開始剤は、CRIVELLO,J.V.,et al.Photoinitiators for Free Radical,Cationic and Anionic Photopolymerization.2nd edition.Edited by BRADLEY,G..London,UK:John Wiley and Sons Ltd,1998.p.276-293に開示されている。
【0065】
フリーラジカル光開始剤の特定の例は、以下の化合物又はそれらの組み合わせを含む場合があるが、それらに限定されない:ベンゾフェノン及び置換ベンゾフェノン;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン;ベンジルジメチルケタール;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン;2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン又は5,7-ジヨード-3-ブトキシ-6-フルオロン。
【0066】
好ましい光開始剤は、アシルホスフィンオキシド化合物である。アシルホスフィンオキシド化合物は、モノ-アシルホスフィンオキシド及びジ-アシルホスフィンオキシドからなる群から選択される場合がある。好ましいアシルホスフィンオキシド光開始剤は、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPO)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(TPO-L)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)(BAPO)、ビス(2,6-ジメチル-ベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド及び2,4,6-トリメトキシベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシドである。
【0067】
他の好ましい光開始剤は、例えば、IGM resinsからEsacure(登録商標)KIP ITとして入手可能なオリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル-フェニル]プロパノン]等のα-ヒドロキシ-ケトンI型光開始剤である。
【0068】
好ましい光開始剤の量は、全て放射線硬化性インクジェットインクの総重量に対して、0.2から20重量%まで、より好ましくは0.5から10重量%まで、最も好ましくは1から8重量%まで、特に好ましくは1.5から6重量%までである。
【0069】
感光性をさらに高めるために、放射線硬化性インクジェットインクは、共開始剤をさらに含む場合がある。共開始剤の適切な例は、3つの群に分類することができる:
(1)メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン及びメチルモルホリン等の第3級脂肪族アミン;
(2)アミルパラジメチル-アミノベンゾエート、2-n-ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)-エチルベンゾエート、エチル-4-(ジメチル-アミノ)ベンゾエート、及び2-エチルヘキシル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート等の芳香族アミン;並びに
(3)ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジエチル-アミノエチルアクリレート)又はN-モルホリノアルキル-(メタ)アクリレート(例えば、N-モルホリノエチル-アクリレート)等の(メタ)アクリル化アミン。
【0070】
好ましい共開始剤は、アミノベンゾエートである。
【0071】
好ましい低分子アミノベンゾエートは、RAHNからのGenocure(登録商標)EPDである。
【0072】
特に好ましくは、アミノベンゾエート共開始剤は、重合性、オリゴマー及びポリマーアミノベンゾエート共開始剤からなる群から選択される。
【0073】
重合性共開始剤は、欧州特許出願公開第2033949号(Agfa Graphics N.V.)に開示されている。
【0074】
より好ましい態様では、アミノベンゾエート共開始剤は、オリゴマーアミノベンゾエート誘導体である。
【0075】
特に好ましくは、アミノベンゾエートは、アミノベンゾエートのポリエーテル誘導体であり、ここでポリエーテルは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、そのコポリマー、及びポリ(テトラヒドロフラン)、エトキシル化又はプロポキシル化ネオペンチルグリコール、エトキシル化又はプロポキシル化トリメチルプロパン及びエトキシル化又はプロポキシル化ペンタエリトリトールからなる群から選択される。
【0076】
好ましいオリゴマーアミノベンゾエートは、国際公開第1996/33157号(Lambson Fine Chemicals Ltd.)及び国際公開第2011/030089号(Sun Chemicals B.V.)に開示されている。ポリエチレングリコールビスp-ジメチルアミノベンゾエートの典型的な例は、IGM Resinsから市販されているOMNIPOL ASA、及びLambson Fine Chemicalsから市販されているSpeedcure 7040である。
【0077】
他のオリゴマー又はポリマー共開始剤は、例えば、IGMからのESACURE A198、多官能性アミン、及びARKEMAからのSARTOMER(登録商標)CN3755、アクリル化アミン共開始剤である。
【0078】
重合性化合物
放射線硬化性組成物は、少なくとも1種の重合性化合物を含む。
【0079】
重合性化合物は、好ましくはフリーラジカル重合性化合物である。
【0080】
フリーラジカル重合性化合物は、モノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーであってもよい。モノマーは、希釈剤とも呼ばれる。
【0081】
これらのモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーは、異なる程度の官能性、即ち、異なる量のフリーラジカル重合性基を有する場合がある。
【0082】
単、ニ、三及び高官能性モノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーの組み合わせを含む混合物を使用する場合がある。放射線硬化性インクジェットインクの粘度は、モノマーとオリゴマーの比を変えることによって調節される場合がある。
【0083】
好ましい態様では、モノマー、オリゴマー又はポリマーは、重合性基として少なくとも1つのアクリレート基を含む。
【0084】
好ましいモノマー及びオリゴマーは、欧州特許出願公開第1911814号の段落[0106]~[0115]に列挙されるものである。
【0085】
好ましい態様では、放射線硬化性インクジェットインクは、ビニルエーテル基及びアクリレート又はメタクリレート基を含むモノマーを含む。このようなモノマーは、欧州特許
出願公開第2848659号、段落[0099]~[0104]に開示されている。ビニルエーテル基及びアクリレート基を含む特に好ましいモノマーは、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレートである。
【0086】
重合性化合物は、好ましくは、アクリロイルモルホリン、環状トリメチルプロパンホルモル(formol)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2-(ビニルエトキシ)エチルアクリレート及びウレタンアクリレートからなる群から選択される。
【0087】
フェノール化合物
放射線硬化性インクジェットインクは、好ましくは、フェノール化合物、より好ましくは、国際公開第2018/087056号(Agfa Gevaert、Electra
Polymers)の段落[053]~[068]に開示されている、少なくとも2つのフェノール基を含むフェノール化合物を含む。
【0088】
フェノール化合物の量は、インクジェットインクの総重量に対して、好ましくは0.5~20重量%、より好ましくは1~15重量%、最も好ましくは2.5~10重量%である。
【0089】
着色剤
放射線硬化性インクジェットは、実質的に無色のインクジェットインクであってもよく、又は少なくとも1つの着色剤を含んでもよい。例えば、インクジェットインクがエッチングレジストとして使用される場合、着色剤は、導電性パターンの製造業者に一時的なマスクを明確に見えるようにし、品質の目視検査を可能にする。インクジェットインクがはんだマスクを適用するために使用される場合、インクジェットインクは、典型的には着色剤を含む。はんだマスクの好ましい色は緑色であるが、黒色又は赤色等の他の色を使用してもよい。
【0090】
着色剤は、顔料又は染料である場合がある。
【0091】
着色顔料は、HERBST,Willy,et al.Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications.3rd edition.Wiley - VCH,2004.ISBN 3527305769によって開示されているものから選択される場合がある。適切な顔料は、国際公開第2008/074548号の段落[0128]~[0138]に開示されている。
【0092】
インクジェットインク中の顔料粒子は、インクジェット印刷装置、特に噴射ノズルを通るインクの自由な流れを可能にするのに十分に小さくなければならない。また、最大の色強度のために、また沈降を遅くするために小さい粒子を使用することが望ましい。最も好ましくは、平均顔料粒径は、150nm以下である。顔料粒子の平均粒径は、動的光散乱の原理に基づいて、Brookhaven Instruments Particle
Sizer BI90plusを使用して測定することが好ましい。
【0093】
一般に、染料は、顔料よりも高い光退色を示すが、噴射性に問題を生じない。アントラキノン染料は、UV硬化性インクジェット印刷に使用される通常のUV硬化条件下でほんのわずかな光退色しか示さないことが見出された。好ましい態様では、放射線硬化性インクジェットインク中の着色剤は、LANXESSからのMacrolex(商標)Blue 3R(CASRN 325781-98-4)等のアントラキノン染料である。
【0094】
他の好ましい染料は、クリスタルバイオレット及び銅フタロシアニン染料を含む。
【0095】
好ましい態様では、着色剤は、放射線硬化性インクジェットインクの総重量に基づいて、0.5~6.0重量%、より好ましくは1.0~2.5重量%の量で存在する。
【0096】
ポリマー分散剤
放射線硬化性インクジェット中の着色剤が顔料である場合、放射線硬化性インクジェットは、顔料を分散させるための分散剤、より好ましくはポリマー分散剤を含むことが好ましい。
【0097】
適切なポリマー分散剤は、2種のモノマーのコポリマーであるが、3種、4種、5種、又はさらにそれを超えるモノマーを含む場合がある。ポリマー分散剤の特性は、モノマーの性質及びポリマー中のそれらの分布の両方に依存する。コポリマー分散剤は、好ましくは、以下のポリマー組成を有する:
・ 統計的に重合したモノマー(例えば、ABBAABABに重合したモノマーA及びB);
・ 交互重合モノマー(例えば、ABABABABに重合したモノマーA及びB);
・ 勾配(テーパー状)重合モノマー(例えば、AAABAABBABBBに重合したモノマーA及びB);
・ ブロックコポリマー(例えば、AAAAABBBBBBに重合したモノマーA及びB)、ここで、ブロックの各々のブロック長(2、3、4、5又はさらにそれを超える)は、ポリマー分散剤の分散能力のために重要である;
・ グラフトコポリマー(グラフトコポリマーは、主鎖に結合したポリマー側鎖を有するポリマー主鎖からなる);及び
・ これらのポリマーの混合形態、例えばブロック状勾配コポリマー。
【0098】
適切なポリマー分散剤は、欧州特許出願公開第1911814号の「分散剤」のセクション、より具体的には[0064]~[0070]及び[0074]~[0077]に列挙されている。
【0099】
ポリマー分散剤の市販の例は、以下である:
・ BYK CHEMIE GMBHから入手可能なDISPERBYK(商標)分散剤;
・ NOVEONから入手可能なSOLSPERSE(商標)分散剤;
・ EVONIKからのTEGO(商標)DISPERS(商標)分散剤;
・ MUENZING CHEMIEからのEDAPLAN(商標)分散剤;
・ LYONDELLからのETHACRYL(商標)分散剤;
・ ISPからのGANEX(商標)分散剤;
・ CIBA SPECIALTY CHEMICALS INCからのDISPEX(商標)及びEFKA(商標)分散剤;
・ DEUCHEMからのDISPONER(商標)分散剤;及び
・ JOHNSON POLYMERからのJONCRYL(商標)分散剤。
【0100】
重合阻害剤
放射線硬化性インクジェットインクは、インクの熱安定性を改善するための少なくとも1つの阻害剤を含む場合がある。
【0101】
適切な重合阻害剤は、フェノール型酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、蛍光体型酸化防止剤、(メタ)アクリレートモノマーに一般的に使用されるヒドロキノンモノメチ
ルエーテル、及びヒドロキノンを含み、t-ブチル-カテコール、ピロガロール、2,6-ジ-tert.ブチル-4-メチルフェノール(=BHT)も使用される場合がある。
【0102】
適切な市販の阻害剤は、例えば、Sumitomo Chemical Co.Ltd.により製造されるSumilizer(商標)GA-80、Sumilizer(商標)GM及びSumilizer(商標)GS;Rahn AGからのGenorad(商標)16、Genorad(商標)18及びGenorad(商標)20;Ciba Specialty ChemicalsからのIrgastab(商標)UV10及びIrgastab(商標)UV22、Tinuvin(商標)460及びCGS20;Kromachem LtdからのFloorstab(商標)UV群(UV-1、UV-2、UV-5及びUV-8)、Cytec Surface SpecialtiesからのAdditol(商標)S群(S100、S110、S120及びS130)である。
【0103】
これらの重合阻害剤を過剰に添加すると、硬化速度が低下する場合があるため、配合に先立ち、重合を防止できる量を決定することが好ましい。重合阻害剤の量は、放射線硬化性インクジェットインク全体の5重量%未満であることが好ましく、3重量%未満であることがより好ましい。
【0104】
界面活性剤
放射線硬化性インクジェットインクは、少なくとも1種の界面活性剤を含む場合がある。
【0105】
界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、又は双性イオン性であってもよく、通常、放射線硬化性インクジェットインクの総重量に基づいて1重量%未満の総量で添加される。
【0106】
適切な界面活性剤は、フッ素化界面活性剤、脂肪酸塩、高級アルコールのエステル塩、高級アルコールのアルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩、及びリン酸エステル塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、高級アルコールのエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物、並びにそれらのアセチレングリコール及びエチレンオキシド付加物(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、並びにAIR PRODUCTS & CHEMICALS INCから入手可能なSURFYNOL(商標)104、104H、440、465及びTG)を含む。
【0107】
好ましい界面活性剤は、フッ素系界面活性剤(フッ素化炭化水素等)及びシリコーン界面活性剤から選択される。シリコーン界面活性剤は、好ましくはシロキサンであり、アルコキシル化、ポリエーテル変性、ポリエーテル変性ヒドロキシ官能性、アミン変性、エポキシ変性、及び他の変性、又はそれらの組み合わせであり得る。好ましいシロキサンは、ポリマー、例えばポリジメチルシロキサンである。
【0108】
好ましい市販のシリコーン界面活性剤は、BYK ChemieからのBYK(商標)333及びBYK(商標)UV3510を含む。
【0109】
好ましい態様では、界面活性剤は、重合性化合物である。
【0110】
好ましい重合性シリコーン界面活性剤は、(メタ)アクリル化シリコーン界面活性剤を含む。最も好ましくは、(メタ)アクリル化シリコーン界面活性剤は、アクリレートがメタクリレートよりも反応性が高いため、アクリル化シリコーン界面活性剤である。
【0111】
好ましい態様では、(メタ)アクリル化シリコーン界面活性剤は、ポリエーテル変性(メタ)アクリル化ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性(メタ)アクリル化ポリジメチルシロキサンである。
【0112】
好ましくは、界面活性剤は、放射線硬化性インクジェットインクの総重量に基づいて0~3重量%の量で、放射線硬化性インクジェットインク中に存在する。
【0113】
難燃剤
放射線硬化性インクジェットインクは、好ましくは難燃剤を含む。
【0114】
好ましい難燃剤は、アルミナ三水和物及びベーマイト等の無機難燃剤、並びに有機ホスフェート(例えば、リン酸トリフェニル(TPP)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビスフェノールAジフェニルホスフェート(BADP)、及びリン酸トリクレシル(TCP));有機ホスホネート(例えば、ジメチルメチルホスホネート(DMMP));及び有機ホスフィネート(例えば、アルミニウムジメチルホスフィネート)等の有機蛍光体化合物である。
【0115】
他の好ましい有機蛍光体化合物は、米国特許第8273805号(JNC Corporation))及び欧州特許出願公開第3498788号(Agfa Gevaert)に開示されている。
【0116】
インクジェットインクの調製
着色放射線硬化性インクジェットインクの調製は、当業者に周知である。好ましい調製方法は、国際公開第2011/069943号の段落[0076]~[0085]に開示されている。
【0117】
プリント回路基板の製造方法
本発明によるプリント回路基板(PCB)の製造方法は、上述したような放射線硬化性インクジェットインクを基板上に噴射し硬化させる、少なくとも1つのインクジェット印刷工程を含む。
【0118】
好ましい態様によれば、PCBの製造方法は、はんだマスクが提供されるインクジェット印刷工程を含む。
【0119】
はんだマスクは、典型的には、導電性パターンを含む誘電体基板上に放射線硬化性インクジェットインクを噴射し硬化させることによって提供される。
【0120】
噴射され硬化した放射線硬化性インクジェットインクに、熱処理が適用されることが好ましい。熱処理は、好ましくは80℃~250℃の温度で行われる。温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。はんだマスクの炭化を防止するために、温度は、200℃以下、より好ましくは160℃以下であることが好ましい。
【0121】
熱処理は、典型的には、15~90分間で行われる。
【0122】
熱処理の目的は、はんだマスクの重合度をさらに高めることである。
【0123】
基板は、典型的には、導電性回路が設けられた誘電体基板である。
【0124】
電子デバイスの誘電体基板は、いずれの非導電性材料であってもよい。基板は、典型的
には、紙/樹脂複合体又は樹脂/ガラス繊維複合体、セラミック基板、ポリエステル又はポリイミドである。可撓性PCBのために、誘電体基板は、好ましくはポリイミド系基板である。
【0125】
導電性回路は、典型的には、金、銀、パラジウム、ニッケル/金、ニッケル、スズ、スズ/鉛、アルミニウム、スズ/アルミニウム及び銅等の、電子デバイスを準備するために従来より使用されているいずれかの金属又は合金から作製される。導電性回路は、好ましくは銅、より好ましくは未処理銅から作製される。
【0126】
放射線硬化性インクジェットインクは、電子ビーム又は紫外(UV)放射線等の化学線にインクを曝露することにより硬化する場合がある。好ましくは、放射線硬化性インクジェットインクはUV放射線によって、より好ましくはUV LED硬化を用いて硬化される。
【0127】
PCBの製造方法は、2つ、3つ、またはそれを超えるインクジェット印刷工程を含む場合がある。例えば、方法は、2つのインクジェット印刷工程を含む場合があり、ここで一方のインクジェット印刷工程において、金属表面上にエッチングレジストが設けられ、他方のインクジェット印刷工程において、導電性回路を含む誘電体基板上にはんだマスクが設けられる。
【0128】
第3のインクジェット印刷工程がレジェンド印刷のために用いられる場合がある。
【0129】
インクジェット印刷装置
放射線硬化性インクジェットインクは、印刷ヘッドに対して移動している基板上に、ノズルを介して制御された方法で小滴を噴射する1つ以上の印刷ヘッドによって噴射される場合がある。
【0130】
インクジェット印刷システムの好ましい印刷ヘッドは、圧電ヘッドである。圧電インクジェット印刷は、電圧が印加されたときの圧電セラミック変換器の動きに基づいている。電圧を印加することにより、印刷ヘッド内の圧電セラミック変換器の形状が変化し、空隙が生じ、次いで、そこにインクが充填される。電圧を再び取り除くと、セラミックは元の形状に膨張し、印刷ヘッドからインク滴が噴出する。しかしながら、本発明によるインクジェット印刷方法は、圧電インクジェット印刷に限定されるものではない。他のインクジェット印刷ヘッドを使用することができ、これは、連続タイプ等の様々なタイプを含む。
【0131】
インクジェット印刷ヘッドは、通常、移動するインク受容表面(基板)を横切る横断方向に往復走査する。しばしば、インクジェット印刷ヘッドは、戻るときに印刷しない。高い面積スループットを得るためには、双方向印刷が好ましい。別の好ましい印刷方法は、「シングルパス印刷プロセス」によるものであり、これは、インク受容表面の幅全体に及ぶページ幅インクジェット印刷ヘッド又は複数の互い違いインクジェット印刷ヘッドを使用することによって行うことができる。シングルパス印刷プロセスでは、インクジェット印刷ヘッドは、通常静止したままであり、インク受容表面がインクジェット印刷ヘッドの下で輸送される。
【0132】
硬化装置
放射線硬化性インクジェットインクは、インクを電子ビーム又は紫外線放射等の化学線に曝露することによって硬化させることができる。好ましくは、放射線硬化性インクジェットインクは、紫外線放射によって、より好ましくはUV LED硬化を用いて硬化される。
【0133】
インクジェット印刷では、硬化手段は、インクジェットプリンターの印刷ヘッドと組み合わされて配置される場合があり、インクジェットプリンターと一緒に移動し、その結果、硬化性液体は、噴射された直後に硬化放射線に曝露される。
【0134】
このような構成では、UV LEDを除いて、印刷ヘッドに接続され、印刷ヘッドと共に移動する十分小さな放射線源を提供することが困難になる可能性がある。従って、光ファイバ束又は内部反射可撓性チューブ等の可撓性放射線伝導手段によって放射線源に接続された、静止固定放射線源、例えば硬化UV光源を使用する場合がある。
【0135】
あるいは、化学線は、放射線ヘッド上のミラーを含むミラーの配置によって、固定源から放射線ヘッドに供給されてもよい。
【0136】
放射線源はまた、硬化される基板を横切って延在する細長い放射線源であってもよい。これは、印刷ヘッドによって形成された画像の次の列がその放射線源の下を段階的に又は連続的に通過するように、印刷ヘッドの横断経路に隣接していてもよい。
【0137】
放射光の一部が光開始剤又は光開始剤系によって吸収され得る限り、いずれの紫外線光源、例えば、高圧又は低圧水銀ランプ、冷陰極管、ブラックライト、紫外線LED、紫外線レーザー及びフラッシュライトも、放射線源として使用されてよい。これらのうち、好ましい紫外線光源は、300~400nmの主波長を有する比較的長い波長のUV寄与を示すものである。具体的には、光散乱が低減され、その結果、より効率的な内部硬化をもたらすため、UV-A光源が好ましい。
【0138】
UV放射は、一般に、以下のようにUV-A、UV-B及びUV-Cとして分類される:
・ UV-A:400nm~320nm
・ UV-B:320nm~290nm
・ UV-C:290nm~100nm。
【0139】
好ましい態様では、放射線硬化性インクジェットインクは、UV LEDによって硬化される。インクジェット印刷装置は、好ましくは360nmより大きい波長を有する1つ以上のUV LED、好ましくは380nmより大きい波長を有する1つ以上のUV LED、最も好ましくは約395nmの波長を有するUV LEDを含むことが好ましい。
【0140】
さらに、異なる波長又は照度の2つの光源を連続的に又は同時に使用してインク画像を硬化させることが可能である。例えば、第1のUV源は、UV-C、特に260nm~200nmの範囲に富むように選択することができる。次いで、第2のUV源は、UV-Aに富む、例えばガリウムドープランプ、又はUV-A及びUV-Bの両方において高い異なるランプであってもよい。2つのUV源の使用は、例えば急速な硬化速度、及び高い硬化度の利点を有することが見出されている。
【0141】
硬化を促進するために、インクジェット印刷装置は、多くの場合、1つ以上の酸素枯渇ユニットを含む。酸素枯渇ユニットは、硬化環境中の酸素濃度を低下させるために、調節可能な位置及び調節可能な不活性ガス濃度を有する窒素又は他の比較的不活性なガス(例えば、CO2)のブランケットを配置する。残留酸素レベルは、通常、200ppmもの低さに維持されるが、一般に200ppm~1200ppmの範囲である。
【実施例】
【0142】
材料
以下の実施例で使用される全ての材料は、特に明記しない限り、ALDRICH CH
EMICAL Co(ベルギー)及びACROS(ベルギー)等の標準供給源から容易に入手可能であった。使用した水は、脱イオン水であった。
【0143】
DISP-1は、表4による組成を有する濃縮黒色顔料分散物であり、以下のように調製した:
【表4】
【0144】
濃縮黒色顔料分散物DISP-1を、液体媒体としての235g VEEA中で、31.9gのSpecial Black 550、14.6gのSunfast Blue
15 4、2.8gの阻害剤INHIB及び65.6gのPRESOLを、DISPERLUX(商標)ディスパーザー(DISPERLUX S.A.R.L.、Luxembourgからの)を備えた容器内で30分間混合することによって作製した。続いて、この混合物をWAB Willy A.Bachofen社(スイス)からのDYNO(商標)-MILL RL内で、0.40mmイットリウム安定化酸化ジルコニウムビーズを使用して粉砕した。ビーズミルを磨砕ビーズで42%満たし、11.8m/sの先端速度を用いることにより再循環モードで188分間操作した。粉砕チャンバは、操作中に水冷した。平均粒径は116nmであった。
【0145】
VEEAは、NIPPON SHOKUBAIから入手可能な2-(2-ビニルエトキシ)エチルアクリレートである。
【0146】
PRESOLは、429gのEFKA7701を633gのVEEAに溶解した後、10.7gのINHIBを加えることにより調製した。
【0147】
EFKA 7701は、BASFにより供給されるポリマー分散剤である。
【0148】
INHIBは、表5による組成を有する重合阻害剤を形成する混合物である。
【表5】
【0149】
Cupferron(商標)ALは、WAKO CHEMICALS LTDからのアルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンである。
【0150】
DPGDAは、ARKEMAからSartomer SR508として入手可能なジプ
ロピレンジアクリレートである。
【0151】
ACMOは、RAHNから入手可能なアクリロイルモルホリンである。
【0152】
EDIOXMAは、IGM Resinsにより供給される、Photomer 4141として市販されているトリメチロールホルマールアクリレートとトリメチロールプロパントリアクリレートの混合物である。
【0153】
ISOPAは、Arkemaにより供給される、Sartomer CD420として市販されている3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレートである。
【0154】
NK ESTERは、KOWA Europe GMBHにより供給される2-(アクリロイルオキシ)エチルスクシネートである。
【0155】
MONOSIL-1は、DOW CORNINGからSilane Z-6040として入手可能な3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランである。
【0156】
MULTISIL-9は、EVONIKからVestanat(登録商標)EP-MF-204として入手可能な二官能性アルコキシシランである。
【0157】
BAPOは、BASFからIrgacure(商標)819として入手可能なビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド光開始剤である。
【0158】
ITXは、LAMBSON SPECIALTY CHEMICALSからの、イソプロピルチオキサントン異性体の混合物であるSpeedcure(商標)ITXである。
【0159】
TPOは、Rahn AGにより供給される、Genocure TPOとして市販されている2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである。
【0160】
Omnipol ASAは、IGM Resinsにより供給される、低分子量ポリ(エチレングリコール)の4-ジメチル-安息香酸エステルである。
【0161】
Ebecryl 1360は、ALLNEXからのポリシロキサンヘキサアクリレートスリップ剤である。
【0162】
FR01は、ADEKA PALMAROLからADK Stab FP600の商品名で市販されている難燃剤である。
【0163】
方法
インクジェットインクの接着性
接着性は、ISO2409:1992Paints and varnishes cross-cut test(国際標準1992-08-15)に従って、BRAIVE
INSTRUMENTSからのBraive No.1536クロスカットテスターを使用し、Tesatape(商標)4104 PVCテープと組み合わせて、切断間の間隔を1mmとして評価した。
【0164】
評価は、表6に記載の基準に従って行い、クロスカットにおける接着性とクロスカットの外側の接着性との両方を評価した。
【表6】
【0165】
はんだ耐性
インクジェットインクのはんだ耐性は、SOLDER CONNECTIONから入手可能な「K」グレード63:37スズ/鉛はんだで充填された、L&M PRODUCTSから入手可能なSPL600240 Digital Dynamic Solder
Potを使用して評価した。はんだの温度は、290℃に設定した。
【0166】
Q-チップを使用して、SOLDER CONNECTIONからのはんだフラックスSC7560Aを、サンプルの表面に塗布して(即ち、接着性で記載されるような銅表面上のインクジェットのコーティング)、表面を洗浄した。サンプルをはんだポットの上方に10分間置くことによってはんだフラックスを乾燥させた。
【0167】
サンプルをはんだポット内に配置した後、はんだ波を10秒間形成した。これを合計3回繰り返した後、サンプルを少なくとも10分間冷却した。
【0168】
次いで、インクジェットインクの接着性を、上述したように評価した。
【0169】
ENIG耐性
最初に、基板を酸性クリーナー(Umicoreクリーナー865)の浴に40℃で4分間浸した。次いで、基板を除去し、脱イオン水(DW)の濯ぎ浴に室温(RT)で90秒間浸した。
【0170】
第2に、基板を水中の8.5重量% Na2S208及び±3.2重量% H2S04(98%)を含むマイクロエッチング浴に26~33℃の温度で100秒間浸した。次いで、基板を除去し、DWの濯ぎ浴にRTで90秒間浸した。
【0171】
第3に、基板をパラジウム活性剤浴(Accemulta MKN 4)にほぼ30℃の温度で90秒間浸した。次いで、基板を除去し、DWの濯ぎ浴にRTで90秒間浸した。
【0172】
次いで、基板をニッケル浴(Nimuden NPR 4)にほぼ85℃の温度で35分間浸した。次いで、基板を除去し、DWの濯ぎ浴にRTで90秒間浸した。
【0173】
最後に、基板を金浴(Gobright TAM 55)にほぼ80℃の温度で12分間浸した。次いで、基板を除去し、DWの濯ぎ浴にRTで90秒間浸した。
【0174】
次いで、インクジェットインクの接着性を、上述したように評価した。
【実施例1】
【0175】
この実施例は、本発明による接着促進剤の合成を例示する。
【0176】
【0177】
14.4g(0.15mol) 2-エチル-イミダゾールを44.4g((0.15mol)トリメチロールプロパントリアクリレートに加え、混合物を70℃まで4時間加熱した。この混合物を室温に冷却させ、ADH-1をさらに精製することなく接着促進剤として使用した。ADH-1をLC-MSを使用して分析した。混合物の主成分を下記の表7に列挙する。
【表7】
【0178】
【0179】
40g(0.36mol) 3-ヒドロキシメチル-ピリジンを600mlメチルtert.ブチルエーテルに溶解した。101ml(73g、0.72mol)トリエチルアミンを加えた。混合物を-4℃に冷却した。34ml(45g、0.36mol) 3-
クロロ-プロイオニル(proionyl)クロリドを45分かけて滴加する一方で、温度を5℃未満に保った。反応を室温で72時間継続させた。反応混合物を500ml水及び300ml水で2回抽出した。プールした水画分を300mlメチルtert.ブチルエーテルで抽出した。メチルtert.ブチルエーテル画分をプールし、MgSO4上で乾燥し、減圧下で蒸発させた。
【0180】
粗ADH-2を、Graceresolv RS80カラム上の分取カラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン/塩化メチレン50/50からヘキサン/酢酸エチル50/50への勾配溶出を用いて精製した。
【0181】
11.2gのADH-2を単離した(Merckにより供給されるTLC Silica gel 60F254上でのTLC分析、溶離液:ヘキサン/酢酸エチル50/50、Rf:0.45)
【0182】
【0183】
39g(0.32mol) 2-(アミノエチル)ピリジンを350mlテトラヒドロフランに溶解した。0.35g BHTを安定剤として加え、混合物を-5℃に冷却した。51.1g(0.33mol) 2-イソシアナトエチルメタクリレートを加える一方で、温度を0℃未満に維持した。反応を0℃で30分間、次いで室温で30分間継続させた。溶媒を減圧下で除去した。残留物を酢酸エチルで処理し、さらにヘキサンで処理した。
【0184】
粗ADH-3を単離し、Prochrom LC80カラム上の分取カラムクロマトグラフィーにより、固定相としてKromasil Si60A 10μm、及び溶離液として塩化メチレン/エタノール85/15を使用して精製した。
【0185】
57.5g(収率:65%)のADH-3を単離した(Merckにより供給されるTLC Silica gel 60F254でのTLC分析:溶離液塩化メチレン/エタノール85/15:Rf=0.51)。
【0186】
【0187】
39g(0.32mol) 2-(2-ヒドロキシメチル)ピリジンを350ml酢酸エチルに溶解した。0.35g BHT及び0.25gジブチル錫ジラウレートを加え、混合物を-5℃に冷却した。51.6g(0.33mol) 2-イソシアナトエチルメタクリレートを加える一方で、温度を-5℃に維持した。反応を室温で16時間継続させた。
【0188】
溶媒を減圧下で除去し、残留物を酢酸エチルで処理した。この混合物を100mlに濃縮し、ADH-4をゆっくり結晶化させた。
【0189】
結晶化ADH-4を単離し、酢酸エチルで処理し、単離し、乾燥した。83g(収率:93%)のADH-4を単離した。
【0190】
【0191】
7.15g(30mmol)のネオペンチルグリコールジアクリレートを30ml酢酸エチルに溶解した。0.11g BHTを安定剤として加えた。3.08g(24mmol) 1-(3-アミノプロピル)-イミダゾール(imidazool)を15分かけて加えた。反応混合物を加熱還流し、反応を還流下で16時間継続させた。
【0192】
混合物を室温に冷却させ、溶媒を減圧下で除去した。
【0193】
9.48g(収率:93%)のADH-5を粘性油として単離し、さらに精製することなく使用した。
【実施例2】
【0194】
この実施例は、本発明による硬化したインクジェットインクの、未処理銅に対する改善された接着性と、そのような硬化インクジェットインクの改善されたはんだ及びENIG耐性を示す。
比較インクCOMP-1及び本発明のインクINV-1~INV-5の調製
【0195】
比較放射線硬化性インクジェットインクCOMP-1及び本発明の放射線硬化性インクジェットインクINV-1~INV-5を表8に従って調製した。重量百分率(重量%)は全て、放射線硬化性インクジェットインクの総重量に基づく。
【0196】
【0197】
比較サンプルCOMP-01及び本発明のサンプルINV-1~INV-06を、Microcraft MJP 2013 K1(解像度720×1440dpi、45℃の噴射温度で3回の複数パス、LED 395nm 8Wランプを使用した各パス後に50%ピンキュア(pincure))を用いてインクを噴射して、最終厚さ+/- 22μmを有するはんだマスク層を得ることにより得た。印刷後、サンプルをオーブン内で150℃で1時間焼いた。
【0198】
硬化インクの未処理銅への接着性と、はんだ及びENIG耐性を、上述したように試験した。結果を表9に示す。
【0199】
【0200】
表9の結果から、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合及び1つの窒素含有5又は6員ヘテロ芳香族環を含む接着促進剤が、インクジェットインクの未処理銅に対するはんだ
マスク性能を有意に改善することが明らかである。