(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
F02M25/08 311D
F02M25/08 311A
(21)【出願番号】P 2023008838
(22)【出願日】2023-01-24
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】細井 雅仁
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0110440(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0313763(US,A1)
【文献】特表2012-503135(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0326840(US,A1)
【文献】特開2015-135121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタであって、
前記蒸発燃料を取り込むチャージポート、前記蒸発燃料を排出するパージポート、及び大気に開放された大気ポートを有する外側ケースと、
前記外側ケースの内部に配置されると共に、前記大気ポートが直接又は他の部屋を介して接続される内部空間を有する内側ケースと、
前記内側ケースの前記内部空間に配置された第1吸着室と、
前記内側ケースの前記内部空間にて前記蒸発燃料の流路における前記第1吸着室と前記大気ポートとの間に配置された第2吸着室と、
前記第1吸着室に収納された第1吸着材と、
前記第2吸着室に収納された第2吸着材と、
前記蒸発燃料の流路における前記第2吸着材と前記大気ポートとの間に配置された板状のフィルタと、
を備え、
前記第2吸着室の気体の流れ方向は、前記第1吸着室の気体の流れ方向と交差し、
前記フィルタは、
前記第2吸着材に接触する第1板面と、
少なくとも一部が前記外側ケースに接触する第2板面と、
前記第1板面と前記第2板面とを接続する側面と、
を有し、
前記第2板面及び前記側面の少なくとも一方は、前記内側ケース及び前記外側ケースの双方から離れた開放部を有する、キャニスタ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャニスタであって、
前記外側ケースは、前記フィルタの前記第2板面と平行な方向に延伸するリブを有し、
前記第2板面は、
前記リブと接触する接触部と、
前記開放部と、
を有する、キャニスタ。
【請求項3】
請求項2に記載のキャニスタであって、
前記内側ケースは、前記フィルタの前記側面を覆う収容部を有し、
前記収容部は、前記リブと接触する、キャニスタ。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のキャニスタであって、
前記リブは、前記内側ケースの前記外側ケースへの挿入方向と平行な方向に延伸し、
前記リブは、前記内側ケースの前記外側ケースへの挿入をガイドするように傾斜したガイド面を有する、キャニスタ。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載のキャニスタであって、
前記外側ケースは、前記リブと共に、前記内側ケースを挟む保持部を有する、キャニスタ。
【請求項6】
請求項2又は請求項3に記載のキャニスタであって、
前記外側ケースは、前記内側ケースが挿入された本体部を有し、
前記リブは、
前記フィルタの前記第2板面に接触する支持部と、
前記本体部と前記支持部とを連結する脚部と、
を有し、
前記支持部の幅は、前記脚部の幅よりも大きい、キャニスタ。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載のキャニスタであって、
前記側面は、前記開放部を有する、キャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の燃料タンクには、蒸発した燃料の大気放出を防ぐキャニスタが装着される。キャニスタは、蒸発燃料を吸着材に吸着させると共に、吸引した空気により吸着材から燃料を脱離してパージを行い、エンジンに供給する。
【0003】
キャニスタには、通常、複数の吸着室が設けられる。これら複数の吸着室における気体の流れ方向を変化させたキャニスタが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように流れ方向が異なる複数の吸着室を有するキャニスタにおいて、吸着室の位置及び形状によっては、キャニスタのケースの成形時に金型が引き抜けない部位が発生する。このような場合、ケースを複数のパーツに分割する必要がある。
【0006】
ケースが複数のパーツに分割されたキャニスタでは、複数のパーツに跨るように吸着材のフィルタが配置される。そのため、車両の振動によってフィルタが脱落するおそれがある。
【0007】
本開示の一局面は、製造コストを低減しつつフィルタを安定して保持できるキャニスタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタである。キャニスタは、蒸発燃料を取り込むチャージポート、蒸発燃料を排出するパージポート及び大気に開放された大気ポートを有する外側ケースと、外側ケースの内部に配置されると共に、大気ポートが直接又は他の部屋を介して接続される内部空間を有する内側ケースと、内側ケースの内部空間に配置された第1吸着室と、内側ケースの内部空間にて蒸発燃料の流路における第1吸着室と大気ポートとの間に配置された第2吸着室と、第1吸着室に収納された第1吸着材と、第2吸着室に収納された第2吸着材と、蒸発燃料の流路における第2吸着材と大気ポートとの間に配置された板状のフィルタと、を備える。
【0009】
第2吸着室の気体の流れ方向は、第1吸着室の気体の流れ方向と交差する。フィルタは、第2吸着材に接触する第1板面と、少なくとも一部が外側ケースに接触する第2板面と、第1板面と第2板面とを接続する側面と、を有する。第2板面及び側面の少なくとも一方は、内側ケース及び外側ケースの双方から離れた開放部を有する。
【0010】
このような構成によれば、内側ケースを外側ケースの内部に挿入することで、互いに流れ方向の異なる第1吸着室と第2吸着室とを有するキャニスタを得ることができる。また、フィルタの第2板面が外側ケースに接触すると共に、フィルタの第2板面及び側面の少なくとも一方に開放部が設けられることで、気体の流路を確保しつつ、フィルタを安定保持することができる。
【0011】
本開示の一態様では、外側ケースは、フィルタの第2板面と平行な方向に延伸するリブを有してもよい。第2板面は、リブと接触する接触部と、開放部と、を有してもよい。このような構成によれば、フィルタの開放部の面積を確保しつつ、フィルタを安定保持することができる。
【0012】
本開示の一態様では、内側ケースは、フィルタの側面を覆う収容部を有してもよい。収容部は、リブと接触してもよい。このような構成によれば、フィルタがリブから受ける負荷が収容部に分散される。そのため、車両の振動によるフィルタの損傷を抑制できる。
【0013】
本開示の一態様では、リブは、内側ケースの外側ケースへの挿入方向と平行な方向に延伸してもよい。リブは、内側ケースの外側ケースへの挿入をガイドするように傾斜したガイド面を有してもよい。このような構成によれば、内側ケースの外側ケースへの挿入作業が容易となる。そのため、製造コストの低減効果が促進される。
【0014】
本開示の一態様では、外側ケースは、リブと共に、内側ケースを挟む保持部を有してもよい。このような構成によれば、内側ケースの振動が抑制される。そのため、フィルタが安定して保持される効果が促進される。
【0015】
本開示の一態様では、外側ケースは、内側ケースが挿入された本体部を有してもよい。リブは、フィルタの第2板面に接触する支持部と、本体部と支持部とを連結する脚部と、を有してもよい。支持部の幅は、脚部の幅よりも大きくてもよい。このような構成によれば、フィルタとリブとの接触面積を大きくすることができる。
【0016】
本開示の一態様では、側面は、開放部を有してもよい。このような構成によれば、第2板面の全体を外側ケースで支持することができるため、フィルタの保持の安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態におけるキャニスタの模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のキャニスタにおける外側ケースの本体部の模式的な断面図である。
【
図3】
図3Aは、
図1のキャニスタにおける内側ケースの模式的な斜視図であり、
図3Bは、
図1のキャニスタにおける第2吸着室周辺の模式的な断面図である。
【
図4】
図4Aは、
図1のキャニスタにおける内側ケースとリブとの関係を示す模式的な正面図であり、
図4Bは、
図1のキャニスタにおける内側ケースとリブとの関係を示す模式的な底面図である。
【
図5】
図5A及び
図5Bは、
図3Bとは異なる実施形態におけるキャニスタの第2吸着室周辺の模式的な断面図である。
【
図6】
図6A及び
図6Bは、
図1とは異なる実施形態におけるリブの模式的な断面図であり、
図6Cは、
図3Bとは異なる実施形態におけるキャニスタの第2吸着室周辺の模式的な断面図である。
【
図7】
図7は、
図1とは異なる実施形態におけるキャニスタの模式的な断面図である。
【
図8】
図8Aは、
図7のキャニスタにおける内側ケースの模式的な斜視図であり、
図8Bは、
図7のキャニスタにおける第2吸着室周辺の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示すキャニスタ1は、車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離する蒸発燃料処理装置である。
【0019】
キャニスタ1は、外側ケース2と、内側ケース3と、第1吸着室4と、第2吸着室5と、第3吸着室6と、第1吸着材7と、第2吸着材8と、第3吸着材9とを備える。
【0020】
<外側ケース>
外側ケース2は、内側ケース3と第3吸着室6とが配置される内部空間と、チャージポート21と、パージポート22と、大気ポート23とを有する筐体である。
【0021】
チャージポート21は、配管によって車両の燃料タンクに接続される。チャージポート21は、燃料タンクで発生した蒸発燃料をキャニスタ1内に取り込むように構成されている。
【0022】
パージポート22は、パージ弁を介して車両のエンジンの吸気管に接続される。パージポート22は、キャニスタ1内の蒸発燃料をキャニスタ1から排出し、エンジンに供給するように構成されている。
【0023】
大気ポート23は、大気に開放される。大気ポート23は、蒸発燃料を取り除いた気体を大気中に放出する。また、大気ポート23は、外部空気(つまりパージ空気)を取り込むことで、キャニスタ1が吸着した蒸発燃料を脱離(つまりパージ)させる。
【0024】
外側ケース2は、チャージポート21と、パージポート22と、大気ポート23とが設けられると共に、内側ケース3を挿入可能な開口を有する本体部2Aと、本体部2Aの開口に取り付けられる蓋部2Bとを有する。
【0025】
図2に示すように、本体部2Aは、内側ケース3が配置される第1空間2Cと、第3吸着室6が配置される第2空間2Dと、第1空間2Cと第2空間2Dとの連通路を構成する連通部2Eとを有する。
【0026】
また、外側ケース2は、本体部2Aの第1空間2Cを構成する内面から突出した板状のリブ24を有する。リブ24は、第1空間2C内において、内側ケース3の挿入方向と平行な方向(つまり、第2吸着室5を画定する第1フィルタ5Aの第2板面52と平行な方向)に延伸している。リブ24の厚み方向は、リブ24の本体部2Aからの突出方向及び延伸方向と直交する。リブ24の幅(つまり厚み)は、本体部2Aからの突出方向に沿って一定である。
【0027】
<内側ケース>
図3A及び
図3Bに示す内側ケース3は、外側ケース2の内部に配置されると共に、大気ポート23が、他の吸着室を介さずに直接接続された内部空間を有する。
【0028】
内側ケース3は、例えば金型を用いた樹脂の成形によって得られる。内側ケース3は、筒状の筒体31と、シール部材32と、凸部33とを有する。筒体31は、気体の流れ方向を変える第1端部31Aと、フランジ状の第2端部31Bとを有する。
【0029】
第1端部31Aは、大気ポート23と接続される端部である。第1端部31Aは、筒体31の中央部で構成される第1吸着室4に対し気体の流れ方向を略90°回転させる回転部31Dと、回転部31Dよりも内径が大きい収容部31Fとを有する。
【0030】
回転部31Dは、第1吸着室4と隣接して設けられ、軸方向に延伸する複数の仕切部材31Cによって第1吸着室4と区画されている。回転部31Dは、第1吸着室4と、収容部31Fによって構成される第2吸着室5とを連通する空間を構成している。
【0031】
筒体31の中心軸は、回転部31Dにおいて曲がっている。また、回転部31Dの内部には、リブ31Eが配置されている。リブ31Eは、第1フィルタ5Aとは反対側から第2吸着材8に接触している。なお、
図3Aでは、リブ31Eは図示が省略されている。
【0032】
収容部31Fは、回転部31Dよりも筒体31の軸方向外側に、回転部31Dと連続して設けられた筒状の部位である。収容部31Fには、第2吸着材8の配置によって第2吸着室5が形成されている。
【0033】
収容部31Fの端部には、第1フィルタ5Aが収容されている。収容部31Fは、第1フィルタ5Aの側面53を覆っている。また、収容部31Fの外側の端部は、外側ケース2のリブ24と接触している。
【0034】
第2端部31Bは、第1端部31Aとは反対側の端部である。つまり、第2端部31Bは、第3吸着室6と連通する端部である。第2端部31Bは、筒体31のうち第2端部31B以外の部分よりも外径が大きい。ただし、第2端部31Bの外径は、第1端部31Aの外径以下であってもよい。
【0035】
第2端部31Bの外周面には、シール部材32が配置されている。シール部材32は、弾性を有するリング状の部材であり、第2端部31Bの外周面に設けられた溝に嵌め込まれている。シール部材32は、外側ケース2と内側ケース3との接合部分における隙間を埋めるように配置されている。
【0036】
シール部材32としては、Oリング、ガスケット等が使用できる。シール部材32の摩擦力によって、外側ケース2に対し内側ケース3の位置が保持される。なお、本実施形態では、内側ケース3は、シール部材32以外の部位で外側ケース2に接合されていない。つまり、本実施形態では、内側ケース3と外側ケース2との溶着点が存在しない。
【0037】
凸部33は、第1端部31Aから大気ポート23に向かって突出している。凸部33は、第2フィルタ5Bを大気ポート23に向けて押圧する。
【0038】
<第1吸着室>
図1に示すように、第1吸着室4は、内側ケース3の内部空間(具体的には筒体31の中央部)に配置されている。
【0039】
第1吸着室4は、第1吸着材7を収納し、外側ケース2が構成する流路によって第3吸着室6との間で気体の流通が自在となるように第3吸着室6に連通している。第1吸着室4は、気体の流れ方向が第3吸着室6と平行となるように、第3吸着室6の径方向において第3吸着室6と並ぶように配置されている。
【0040】
第1吸着室4は、内側ケース3の筒体31の内部に配置された第1フィルタ4Aと、第2フィルタ4Bとによって画定されている。
図3Bに示すように、第1フィルタ4Aは、仕切部材31Cに接触している。
【0041】
図1に示すように、第2フィルタ4Bは、第3吸着室6との連通路と第1吸着室4とを区画している。第2フィルタ4Bは、格子状のグリッド4Cを介して、スプリング4Eによって第2吸着室5及び大気ポート23に向かって押圧されている。なお、グリッド4Cは、スリット状、多孔状等であってもよい。
【0042】
第1吸着室4を画定する第1フィルタ4A及び第2フィルタ4Bは、第1吸着材7を通過させない一方で、気体を通過させるように構成されている。つまり、フィルタ4A,4Bは、第1吸着材7を第1吸着室4内で挟持している。
【0043】
<第2吸着室>
第2吸着室5は、内側ケース3の内部空間(具体的には第1端部31A内)に配置されている。
【0044】
第2吸着室5は、第2吸着材8を収納し、蒸発燃料の流路における第1吸着室4と大気ポート23との間に配置されている。第2吸着室5は、第1吸着室4及び大気ポート23の双方に連通している。第2吸着室5の気体の流れ方向は、第1吸着室4の気体の流れ方向と交差する(具体的には略直交する)。
【0045】
第2吸着室5の気体の流れ方向と垂直な断面の面積は、第1吸着室4の気体の流れ方向と垂直な断面の面積よりも大きい。また、第2吸着室5の気体の流れ方向の長さは、第1吸着室4の気体の流れ方向の長さよりも小さい。ただし、第2吸着室5の気体の流れ方向の長さは、第1吸着室4の気体の流れ方向の長さよりも大きくてもよい。
【0046】
図3Bに示すように、第2吸着室5は、内側ケース3の第1端部31Aを塞ぐように配置された第1フィルタ5Aと、第1端部31A内の段差及びリブ31Eとによって画定されている。また、第1フィルタ5Aと大気ポート23との間には、第2フィルタ5Bが配置されている。
【0047】
第1フィルタ5Aは、蒸発燃料の流路における第2吸着材8と大気ポート23との間に配置された板状の部材であり、大気ポート23に連通する空間と第2吸着室5とを区画している。
【0048】
第1フィルタ5Aは、内側ケース3の収容部31Fに、第2吸着材8と重なるように圧入されている。つまり、収容部31Fは、第2吸着材8と第1フィルタ5Aとを収容している。
【0049】
第1フィルタ5Aは、第2吸着材8に接触する第1板面51と、一部が外側ケース2のリブ24に接触する第2板面52と、第1板面51と第2板面52とを接続する側面53とを有する。
【0050】
第1板面51は、第2吸着材8の大気ポート23に向かって気体が排出される面の全体を覆っている。側面53は、その全体が内側ケース3の収容部31Fに内側から接触している。
【0051】
図4A及び
図4Bに示すように、第2板面52は、外側ケース2のリブ24に接触する接触部と、リブ24に接触しない開放部とを有する。第2板面52の開放部は、内側ケース3及び外側ケース2の双方から離れた部位である。
【0052】
なお、
図4A及び
図4Bでは、第2板面52は並列して互いに平行に配置された複数のリブ24に接触しているが、第2板面52は、1つのリブ24のみに接触してもよい。第2板面52が複数のリブ24に接触する場合、第2板面52には、複数の接触部と、複数の開放部とが交互に配置される。
【0053】
また、リブ24は、第1フィルタ5Aと同時に収容部31Fの端縁にも接触している。具体的には、リブ24は、リブ24の延伸方向において第2板面52の接触部を挟んだ少なくとも2か所で収容部31Fに接触している。
【0054】
第1フィルタ5Aの開放部は、外側ケース2のうち、リブ24が突出した内面と対向している。そのため、第2吸着室5を通過した気体は、この内面との衝突によって流れの向きが変化する。
【0055】
図3に示す第2フィルタ5Bは、外側ケース2に例えば超音波溶着によって固定されている。内側ケース3は、凸部33が第2フィルタ5Bに押し当てられるように、外側ケース2に挿入される。そのため、凸部33で第2フィルタ5Bが保持できる場合は、第2フィルタ5Bは必ずしも外側ケース2に固定されなくてもよい。
【0056】
第2吸着室5を画定する第1フィルタ5Aと、大気ポート23に隣接して配置された第2フィルタ5Bとは、第1吸着室4のフィルタ4A,4Bと同様の機能を有する。
【0057】
第2吸着材8は、粒状の吸着材を固めたブロック状の集塊、又は繊維状の吸着材の集合体である。第2吸着材8の大気ポート23と反対側の面は、第1端部31Aの段差及びリブ31Eに接触する。そのため、第2吸着材8と仕切部材31Cとの間には、回転部31Dで構成されるバッファ空間が設けられている。このバッファ空間には、吸着材は配置されていない。
【0058】
第2吸着室5において第1フィルタ5Aの溶着が行われないため、溶着時の振動によって吸着材の集塊又は集合体が分離することが抑制できる。また、第2吸着室5の断面積が第1吸着室4の断面積よりも大きくされているため、第2吸着材8として通気抵抗の大きい集塊又は集合体を用いても、キャニスタ1の通気抵抗の上昇を抑制することができる。
【0059】
第1吸着室4を通過した気体は、回転部31Dで流れの向きが変えられ、第2吸着室5に進入する。さらに、第2吸着室5を通過した気体は、第1フィルタ5Aと対向する外側ケース2の内壁によって再び流れの向きが変えられる。その後、気体は、大気ポート23から放出される。
【0060】
なお、内側ケース3は、第1吸着材7及び第2吸着材8が充填されたカートリッジの状態で、外側ケース2の本体部2Aに組み付けられる。内側ケース3の組付け後、外側ケース2の蓋部2Bが本体部2Aに取り付けられる。
【0061】
<第3吸着室>
図1に示すように、第3吸着室6は、外側ケース2の内部かつ内側ケース3の外部(具体的には外側ケース2の第2空間2D)に配置されている。
【0062】
第3吸着室6は、第3吸着材9を収納し、チャージポート21及びパージポート22が接続されている。第3吸着室6は、チャージポート21から取り込んだ蒸発燃料を吸着する。また、第3吸着室6は、吸着した蒸発燃料をパージポート22から排出する。
【0063】
第3吸着室6は、外側ケース2の内部にそれぞれ配置された第1フィルタ6A及び第2フィルタ6Bによって画定されている。第1フィルタ6Aは、第3吸着室6に接続されたチャージポート21及びパージポート22に連通する空間と、第3吸着室6とを区画している。
【0064】
第2フィルタ6Bは、第1吸着室4との連通路と第3吸着室6とを区画している。第2フィルタ6Bは、格子状のグリッド6Cを介して、スプリング6Dによってチャージポート21及びパージポート22に向かって押圧されている。なお、グリッド6Cは、スリット状、多孔状等であってもよい。
【0065】
第3吸着室6を画定するフィルタ6A,6Bは、第1吸着室4のフィルタ4A,4Bと同様の機能を有する。
【0066】
チャージポート21から取り込まれた蒸発燃料は、第3吸着室6において第3吸着材9に吸着される。第3吸着室6で吸着しきれなかった蒸発燃料は、内側ケース3内の第1吸着室4に移動し、第1吸着室4において第1吸着材7に吸着される。
【0067】
さらに、第1吸着室4で吸着しきれなかった蒸発燃料は、内側ケース3内で第2吸着室5に移動し、第2吸着室5において第2吸着材8に吸着される。蒸発燃料が吸着された気体は、大気ポート23から放出される。
【0068】
また、大気ポート23から吸気することで、第1吸着室4、第2吸着室5、及び第3吸着室6それぞれにおいて吸着材に吸着されていた蒸発燃料は、パージポート22からエンジンに排出される。その結果、蒸発燃料を含んだ空気がエンジンに供給される。
【0069】
<吸着材>
第1吸着材7、第2吸着材8及び第3吸着材9は、それぞれ、空気等と共にキャニスタ1に供給された蒸発燃料やブタンを吸着する。また、外部空気の導入により蒸発燃料やブタンを脱離する。脱離された蒸発燃料は、エンジンに供給される。
【0070】
第1吸着材7、第2吸着材8及び第3吸着材9の素材としては、例えば活性炭、ゼオライト等が使用できる。活性炭としては、例えば、粒状の吸着材の集合体、ハニカム形状等に成形された成形活性炭、繊維状活性炭をシート状、直方体上、円柱状、角柱状に成形したもの等が用いられる。第1吸着材7、第2吸着材8及び第3吸着材9は、同じ種類の吸着材であってもよいし、異なる種類の吸着材であってもよい。
【0071】
<第1実施形態の変形例>
図5Aに示すように、リブ24は、内側ケース3の外側ケース2への挿入をガイドするように傾斜したガイド面24Aを有してもよい。ガイド面24Aは、大気ポート23に近づくに連れて外側ケース2の内面からの距離が大きくなるように傾斜している。
【0072】
つまり、ガイド面24Aは、大気ポート23とは反対側から外側ケース2に挿入される内側ケース3の第1端部31Aを、外側ケース2の第1空間2Cの内側に誘導するように構成されている。これにより、内側ケース3の外側ケース2への挿入作業が容易となる。そのため、キャニスタ1の製造コストの低減効果が促進される。
【0073】
また、
図5Bに示すように、外側ケース2は、保持部25を有してもよい。保持部25は、リブ24と共に、内側ケース3の第1端部31Aを挟む板状又はブロック状の部位である。保持部25は、外側ケース2の第1空間2Cにおいて、リブ24と対向するように、本体部2Aの内面から突出している。保持部25により、内側ケース3の振動が抑制される。そのため、第1フィルタ5Aが安定して保持される効果が促進される。
【0074】
さらに、
図6A及び
図6Bに示すように、リブ24は、支持部24Bと、脚部24Cとを有してもよい。支持部24Bは、第1フィルタ5Aの第2板面52に接触する部位である。脚部24Cは、外側ケース2の本体部2Aと支持部24Bを連結する部位である。
【0075】
支持部24Bの幅は、脚部24Cの幅よりも大きい。つまり、リブ24は、延伸方向と直交する断面がT字状であってもよい。これにより、第1フィルタ5Aとリブ24との接触面積を大きくすることができる。また、
図6Bのように支持部24Bを面取りすることで、第1フィルタ5Aの損傷が抑制できる。
【0076】
また、
図6Cに示すように、リブ24は、外側ケース2の本体部2Aのうち、大気ポート23が設けられた壁の内面から突出してもよい。これにより、リブ24が撓みやすくなるため、内側ケース3の外側ケース2への組付けが容易となる。
【0077】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)内側ケース3を外側ケース2の内部に挿入することで、互いに流れ方向の異なる第1吸着室4と第2吸着室5とを有するキャニスタ1を得ることができる。また、第1フィルタ5Aの第2板面52が外側ケース2に接触すると共に、第1フィルタ5Aの第2板面52に開放部が設けられることで、気体の流路を確保しつつ、第1フィルタ5Aを安定保持することができる。
【0078】
(1b)第1フィルタ5Aの第2板面52が第2板面52と平行に延伸するリブ24と接触することで、第1フィルタ5Aの開放部の面積を確保しつつ、第1フィルタ5Aを安定保持することができる。
【0079】
(1c)内側ケース3の収容部31Fがリブ24と接触することで、第1フィルタ5Aがリブ24から受ける負荷が収容部31Fに分散される。そのため、車両の振動による第1フィルタ5Aの損傷を抑制できる。
【0080】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
図7に示すキャニスタ101は、燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離する。キャニスタ101は、外側ケース2と、内側ケース103と、第1吸着室4と、第2吸着室105と、第3吸着室6と、第1吸着材7と、第2吸着材8と、第3吸着材9とを備える。
【0081】
キャニスタ101の外側ケース2、第1吸着室4、第3吸着室6、及び吸着材7,8,9は、
図1のキャニスタ1と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0082】
<内側ケース>
内側ケース103は、外側ケース2の内部に配置されると共に、大気ポート23に通ずるように接続された内部空間を有する。内側ケース103は、例えば金型を用いた樹脂の成形によって得られる。
【0083】
図8A及び
図8Bに示すように、内側ケース103は、筒状の筒体131と、シール部材32と、凸部33とを有する。シール部材32と凸部33とは、
図1のキャニスタ1の内側ケース3と同じものである。
【0084】
筒体131は、第1端部131Aと、第2端部131Bとを有する。第2端部131Bは、
図1の内側ケース3の第2端部31Bと同じものである。第1端部131Aは、大気ポート23と接続される端部である。第1端部131Aは、仕切部材131Cによって第1吸着室4と区画された回転部131Dと、収容部131Fとを有する。仕切部材131C及び回転部131Dは、
図1の内側ケース3の仕切部材31C及び回転部31Dと同じものである。
【0085】
収容部131Fは、
図1の内側ケース3の収容部31Fの一部を切り欠いたものである。具体的には、収容部131Fは、第1フィルタ105Aの側面153の一部を内側ケース103から露出させる切欠き131Gを有する。切欠き131Gは、収容部131Fのうち、大気ポート23に近い領域に設けられている。
【0086】
<第2吸着室>
第2吸着室105は、内側ケース103の内部空間(具体的には第1端部131A内)に配置されている。
【0087】
第2吸着室105は、第2吸着材8を収納し、蒸発燃料の流路における第1吸着室4と大気ポート23との間に配置されている。第2吸着室105の機能は、
図1のキャニスタ1の第2吸着室5と同じである。
【0088】
第2吸着室105は、内側ケース103の第1端部131Aを塞ぐように配置された第1フィルタ105Aと、第1端部131A内の段差とによって画定されている。また、第1フィルタ105Aと大気ポート23との間には、
図1のキャニスタ1と同じ第2フィルタ5Bが配置されている(
図7参照)。
【0089】
第1フィルタ105Aは、蒸発燃料の流路における第2吸着材8と大気ポート23との間に配置された板状の部材であり、大気ポート23に連通する空間と第2吸着室105とを区画している。第2吸着室105を画定する第1フィルタ105Aは、第1吸着室4のフィルタ4A,4Bと同様の機能を有する。
【0090】
第1フィルタ105Aは、内側ケース103の収容部131Fに、第2吸着材8と重なるように圧入されている。つまり、収容部131Fは、第2吸着材8と第1フィルタ105Aとを収容している。
【0091】
第1フィルタ105Aは、第2吸着材8に接触する第1板面151と、外側ケース2の本体部2Aの内面に接触する第2板面152と、第1板面151と第2板面152とを接続する側面153とを有する。
【0092】
第1板面151は、第2吸着材8の大気ポート23に向かって気体が排出される面の全体を覆っている。第2板面152は、その全体が本体部2Aの内面に接触している。側面153は、一部が収容部131Fの切欠き131Gから露出している。
【0093】
このように、側面153は、内側ケース103及び外側ケース2の双方から離れた開放部を有する。第2吸着材8を通過した気体は、第1フィルタ105Aの側面153の開放部から、大気ポート23に向かって流れる。
【0094】
[2-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)第1フィルタ105Aの第2板面152の全体を外側ケース2で支持することができるため、第1フィルタ105Aの保持の安定性が向上する。
【0095】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0096】
(3a)上記実施形態のキャニスタにおいて、第2吸着材と大気ポートとの間に配置される第1フィルタは、内側ケースの収容部に、例えば超音波溶着によって固定されてもよい。
【0097】
(3b)上記実施形態のキャニスタにおいて、内側ケースと大気ポートとの間に、吸着材を収容する補助室がさらに設けられてもよい。つまり、大気ポートは、他の部屋(つまり補助室)を介して内側ケースに接続されてもよい。
【0098】
(3c)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0099】
1,101…キャニスタ、2…外側ケース、2A…本体部、2B…蓋部、
2C…第1空間、2D…第2空間、2E…連通部、3,103…内側ケース、
4…第1吸着室、5,105…第2吸着室、5A,105A…第1フィルタ、
5B…第2フィルタ、6…第3吸着室、7…第1吸着材、8…第2吸着材、
9…第3吸着材、21…チャージポート、22…パージポート、23…大気ポート、
24…リブ、24A…ガイド面、24B…支持部、24C…脚部、25…保持部、
31,131…筒体、31A,131A…第1端部、31B,131B…第2端部、
31C,131C…仕切部材、31D,131D…回転部、
31F,131F…収容部、32…シール部材、51,151…第1板面、
52,152…第2板面、53,153…側面、131G…切欠き。