(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】がん免疫療法のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/155 20060101AFI20241224BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241224BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241224BHJP
A61K 33/243 20190101ALI20241224BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20241224BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20241224BHJP
A61K 31/4188 20060101ALI20241224BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20241224BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20241224BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20241224BHJP
A61K 31/17 20060101ALI20241224BHJP
A61K 31/166 20060101ALI20241224BHJP
A61K 31/475 20060101ALI20241224BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20241224BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
A61K31/155
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K33/243
A61K31/7048
A61K31/519
A61K31/4188
A61K31/7068
A61K31/675
A61K31/337
A61K31/17
A61K31/166
A61K31/475
A61K35/17
A61K39/395 N
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023031570
(22)【出願日】2023-03-02
(62)【分割の表示】P 2019510324の分割
【原出願日】2017-08-18
【審査請求日】2023-03-31
(32)【優先日】2016-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】300020418
【氏名又は名称】ザ ユーエイビー リサーチ ファンデイション
(73)【特許権者】
【識別番号】319009314
【氏名又は名称】イン8バイオ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リジー、スティーブン、エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ホー、ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ラム、ローレンス、エス.
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/053750(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/142675(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0009813(US,A1)
【文献】PLOS ONE,2013年,Vol.8, No.1, e51805,pp.1-9
【文献】Human Gene Therapy,2012年,Vol.23, No.7,pp.711-721
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61K 35/00-35/768
A61K 31/00-33/44
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、メトトレキサート(MTX)、トリメトトレキサート(TMTX)、テモゾロミド、ラルチトレキセド、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR)、6-ベンジルグアニジン(6-BG)、ニトロソ尿素、シタラビン、カンプトテシン、シクロホスファミド、イホスファミド、5-フルオロウラシル、アザシチジン、マイトマイシン、アドリアマイシン、ビンクリスチン、ビンデシン、パクリタキセル、アブラキサン、ビス-クロロニトロソ尿素(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、プロカルバジン、ビンクリスチン、およびフォテムスチンから選択される、1種または複数の抗がん剤を含む、がんを治療するための医薬組成物であって、
前記抗がん剤に
対する耐性を付与するポリペプチドを発現するように遺伝子改変されているγδT細
胞を含む単離された細胞傷害性免疫細胞の
拡大された集団と
、CTLA-4、PDL1、またはPD1に対する抗体から選択される、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用さ
れる、医薬組成物。
【請求項2】
CTLA-4、PDL1、またはPD1に対する抗体から選択される、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤を含む、がんを治療するための医薬組成物であって、
シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、メトトレキサート(MTX)、トリメトトレキサート(TMTX)、テモゾロミド、ラルチトレキセド、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR)、6-ベンジルグアニジン(6-BG)、ニトロソ尿素、シタラビン、カンプトテシン、シクロホスファミド、イホスファミド、5-フルオロウラシル、アザシチジン、マイトマイシン、アドリアマイシン、ビンクリスチン、ビンデシン、パクリタキセル、アブラキサン、ビス-クロロニトロソ尿素(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、プロカルバジン、ビンクリスチン、およびフォテムスチンから選択される、1種または複数の抗がん剤と、
前記抗がん剤に
対する耐性を付与するポリペプチドを発現するように遺伝子改変されているγδT細
胞を含む
、単離された細胞傷害性免疫細胞の
拡大された集団と組み合わせて使用さ
れる、医薬組成物。
【請求項3】
γδT細
胞を含む単離された細胞傷害性免疫細胞の
拡大された集団を含む、がんを治療するための医薬組成物であって、
CTLA-4、PDL1、またはPD1に対する抗体から選択される少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤と
、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、メトトレキサート(MTX)、トリメトトレキサート(TMTX)、テモゾロミド、ラルチトレキセド、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR)、6-ベンジルグアニジン(6-BG)、ニトロソ尿素、シタラビン、カンプトテシン、シクロホスファミド、イホスファミド、5-フルオロウラシル、アザシチジン、マイトマイシン、アドリアマイシン、ビンクリスチン、ビンデシン、パクリタキセル、アブラキサン、ビス-クロロニトロソ尿素(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、プロカルバジン、ビンクリスチン、およびフォテムスチンから選択される、1種または複数の抗がん剤と組み合わせて使用され、
前記細胞傷害性免疫細胞は、
前記抗がん剤
に対する耐性を付与するポリペプチドを発現するように遺伝子改変され
ている、医薬組成物。
【請求項4】
CTLA-4、PDL1、またはPD1に対する抗体から選択される少なくとも1種の
免疫チェックポイント阻害剤と、γδT細
胞を含む
単離された細胞傷害性免疫細胞の
拡大された集団とを含む、
がんを治療するための医薬組成物であって、
シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、メトトレキサート(MTX)、トリメトトレキサート(TMTX)、テモゾロミド、ラルチトレキセド、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR)、6-ベンジルグアニジン(6-BG)、ニトロソ尿素、シタラビン、カンプトテシン、シクロホスファミド、イホスファミド、5-フルオロウラシル、アザシチジン、マイトマイシン、アドリアマイシン、ビンクリスチン、ビンデシン、パクリタキセル、アブラキサン、ビス-クロロニトロソ尿素(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、プロカルバジン、ビンクリスチン、およびフォテムスチンから選択される1種または複数の抗がん剤と組み合わせて使用され、
前記
γδT細胞は、前記抗がん剤に対する耐性を付与するポリペプチドを発現
するように遺伝子改変されている、医薬組成物。
【請求項5】
前記がんが、グリオーマ、膠芽腫、リンパ腫、黒色腫、神経芽細胞腫、非小細胞肺がん、腎細胞癌および小細胞肺がんから選択される、請求項1~
4の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記がんが、グリオーマ、膠芽腫または神経芽細胞腫である、請求項
5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記
単離された細胞傷害性免疫細胞
の拡大された集団が、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)由来である、請求項1~6の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記
単離された細胞傷害性免疫細胞の
拡大された集団がNK細胞をさらに含む、請求項1~7の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記
単離された細胞傷害性免疫細胞の
拡大された集団が、さらに、他の免疫担当細胞を含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記抗がん剤に対する耐性を付与するポリペプチドが、アルキルグアニントランスフェラーゼ(AGT)、P140KMGMT、O
6メチルグアニンDNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)、L22Y-DHFR、チミジル酸シンターゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、または多剤耐性-1タンパク質(MDR1)
である、請求項1~
9の何れか1項の医薬組成物。
【請求項11】
前記抗がん剤に対する耐性を付与するポリペプチドが、P140KMGMT
である、請求項
10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、トレメリムマブ
、PD-L1モノクローナル抗体(抗B7-H1;MEDI4736)、MK-3475
、ニボルマブ、CT-011、BY55モノクローナル抗体、AMP224、BMS-936559、MPLDL3280A、MSB0010718C
、イピリムマブおよびペンブロリズマ
ブから選択される、請求項1~
11の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記単離された細胞傷害性免疫細胞の拡大された集団の投与および前記
免疫チェックポイント阻害剤の投与が実質的に同時にまたは順次行われる、請求項1~
12の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、PD1、またはPDL1を標的とする、請求項1~13の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、PD1を標的とする、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4を標的とする、請求項1~13の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記抗がん剤がテモゾロミドであり、前記抗がん剤に対する耐性を付与するポリペプチドがMGMTまたはP140KMGMTである、請求項1~16の何れか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年8月18日に出願された米国仮特許出願第62/376680号の利益を主張する。上記出願の全教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
がんの検出および治療の分野において著しい進歩がなされてきたが、末期がんおよび転移がんの治療は依然として大きな課題である。細胞傷害性化学療法剤は、最も使用され成功裏に利用されている抗がん治療に属する。しかしながら、これらは一様に有効ではなく、免疫療法などの新規の療法と共にこれらの薬剤を導入することは問題がある。例えば、化学療法剤は、剤の非特異的毒性プロファイルのために、頑強な抗腫瘍免疫担当細胞の確立にとって有害となり得る。細胞増殖経路を標的とする低分子ベースの療法もまた、抗腫瘍免疫の確立を妨げる可能性がある。免疫療法的アプローチに見られるさらなる複雑さは、MHCクラスI抗原発現の下方制御、腫瘍もしくはエフェクター細胞表面上の免疫チェックポイント分子の提示、またはエフェクター細胞受容体の下方制御をもたらす可溶性腫瘍リガンドの血漿中への排出を通して腫瘍細胞が身体の免疫応答の裏をかく能力である。このような過程は、正常に見える腫瘍をもたらし、免疫系攻撃の回避をもたらす。しかしながら、一過的に有効な化学療法レジメンを、新規の免疫担当細胞療法と免疫チェックポイント阻害剤の両方と組み合わせることができれば、抗新生物療法における有意な改善が達成され得る。
【0003】
標的免疫細胞に薬剤耐性を付与するために潜在的に使用され得るいくつかの薬剤耐性遺伝子が同定されており、遺伝子療法技術の進歩により、薬剤耐性遺伝子療法研究におけるこれらの遺伝子の使用の実行可能性を試験することが可能になった。例えば、shRNA戦略を使用して、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)のレベルを低下させて、6-チオクアニンに対する耐性を付与した。また、ヒトアルキルグアニントランスフェラーゼ(hAGT)をコードする薬物耐性遺伝子MGMTは、ニトロソ尿素およびテモゾロミド(TMZ)などのアルキル化剤の細胞傷害性効果に対する耐性を付与するDNA修復タンパク質である。6-ベンジルグアニン(6-BG)はニトロソ尿素毒性を増強するAGTの阻害剤であり、この薬剤の細胞傷害性効果を増強するためにTMZと同時投与される。AGTの変異体をコードするMGMTのいくつかの変異型は、6-BGによる不活性化に対して大いに耐性であるが、DNAを修復する能力を保持している。P140KMGMTベースの薬剤耐性遺伝子療法は、マウス、イヌ、アカゲザルおよびヒトの細胞、特に造血細胞に化学防護を付与することが示されている。
【0004】
腫瘍細胞はしばしば、がん性を明らかにする細胞表面分子を発現する。しかしながら、これらの同じ細胞はまた、表面上に正常細胞のものを模倣する免疫チェックポイント分子を提示し、それによって免疫攻撃を回避し得る。免疫チェックポイントは通常、CTLA-4およびPD-1を含む特異的受容体/リガンドペア間の相互作用によって調節される。CTLA-4、PD-1およびそのリガンドは、T細胞機能および他の細胞機能の全段階を通して重要な役割を果たす共シグナル伝達分子(co-signaling molecule)のCD28-B7ファミリーのメンバーである。PD-1受容体は活性化T細胞(およびB細胞)の表面で発現され、通常の環境下では、樹状細胞またはマクロファージなどの抗原提示細胞の表面上で発現されるそのリガンド(PD-L1およびPD-L2)に結合する。この相互作用はシグナルをT細胞に送り、本質的にこれをオフにするまたはこれを阻害する。がん細胞は表面上でPD-L1の高レベルの発現を駆動することによってこの系を利用する。これにより、がん細胞が、PD-1経路の制御を獲得し、腫瘍微小環境に入り得るPD-1を発現するT細胞のスイッチを切り、かくして抗がん免疫応答を抑制することが可能になる。
【0005】
チェックポイント阻害剤は、CTLA-4またはPD-1などの受容体/リガンドペアをブロックすることによって腫瘍細胞を暴露する(unmask)手段を提供し、T細胞が免疫応答を開始することを可能にする。がんについて米国食品医薬品局から承認された6種の免疫チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ(YERVOY(登録商標))、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標))、デュルバルマブ(IMFINZI(商標))、アベルマブ(BAVENCIO)およびニボルマブ(OPDIVO(登録商標))である。YERVOY(登録商標)はT細胞の表面上のCTLA-4を標的とするモノクローナル抗体であり、黒色腫の治療に承認されている。KEYTRUDA(登録商標)はPD-L1を標的とし、黒色腫および非小細胞肺がんの治療に使用される。OPDIVO(登録商標)もPD-1を標的とし、黒色腫、腎細胞癌および非小細胞肺がんの治療に承認されている。有効であることが証明され得るさらなるチェックポイント標的は、TIM-3、LAG-3、種々のB-7リガンド、CHK 1およびCHK 2キナーゼ、BTLA、A2aRなどである。
【0006】
典型的には、チェックポイント阻害剤治療に関連する活性および高い奏効率(ORR)は、高い突然変異荷重を伴う腫瘍と関連している。突然変異頻度は一般に、腫瘍免疫原性の増加をもたらす高い新生抗原シグナル伝達と相関している。
【0007】
2017年5月、米国食品医薬品局(FDA)は、以前の治療後に進行した切除不能もしくは転移性のマイクロサテライト不安定性が高い(MSI-H)もしくはミスマッチ修復不全(dMMR)固形腫瘍を有し、満足のいく代替治療選択肢がない、またはフルオロピリミジン、オキサリプラチンおよびイリノテカンによる治療後に進行したMSI-HもしくはdMMR結腸直腸がんを有する成人および小児患者についてペンブロリズマブを早期承認した。これは組織/部位に関係ない適応症に対するFDAの最初の承認である。dMMRを有する患者は、超変異状態をもたらす遺伝子突然変異を修正することの不能性を付与する欠陥を有する。
【0008】
臨床データは、ORRが典型的に0%である結腸直腸がんなどのがんにおいて、チェックポイント阻害剤治療により、ORRが、高い突然変異荷重のためにdMMRを有する患者において62%に増加することを実証した(Le DTらASCO 2015.Abstract LBA100)。同様に、Hodgesら(Neuro-Oncology、19(8)、1047~1057、2017)による分析は、膠芽腫(GBM)が典型的に低い突然変異荷重を有し、分析したGBMの3.5%のみが高い腫瘍突然変異荷重を示すことを実証している。しかしながら、dMMRを有するGBM患者において、Boufettらによって彼らが他の高悪性度腫瘍に対して最も高い突然変異荷重を有することが分かった(JCO、2016 34:19、2206~2211)。Boufettらは、単剤ニボルマブで治療した場合に現在の標準的治療に難治性であった再発性多巣性GBMの2人の小児患者の注目に値する、耐久性のある反応を記載している。dMMR突然変異がこれらの2人の患者をチェックポイント阻害による応答に駆り立てたが、標準的治療に対する反応の失敗もまたdMMRに起因していた可能性がある。これは、一般的にGBMは有意に免疫原性ではなく、チェックポイント阻害剤で治療した場合に有意なORRを示す可能性は低いことを示唆するデータを支持している。
【0009】
2005年以来、最前線のGBMに対する標準治療は、化学療法テモゾロミド(TMZ)による治療を含むStuppプロトコルであった(Stuppら、N Engl J Med 2005;352:987~996 2005年3月10日)。TMZは、二本鎖DNA切断を引き起こすアルキル化剤である。TMZは、DNA中に誤対合およびGCからATへの点突然変異の形成を引き起こすO6-メチルグアニン(O6MeG)付加物を生成することによって機能する(Roosら、Cancer Letters 332(2013)237)。TMZによる有効な治療に対する耐性機構は、O6-位からメチル付加物を除去するO6-メチルグアニン-メチルトランスフェラーゼ(MGMT)である。機能しているMMRシステムを有する細胞では、GCからATへの点突然変異が、2サイクルのDNA複製後に二本鎖切断を引き起こすだろう。Roosが指摘するように、「O6MeGはアポトーシスを直接誘因しない;これはMMRおよびDNAの複製を要する」。したがって、高い突然変異荷重および新生抗原荷重により免疫療法および/またはチェックポイント阻害に最も反応する可能性が最も高いと新たに診断されたGBM患者もまた、従来のアルキル化化学療法に反応する可能性が最も低い。この認識は、MMRおよびMLH1突然変異が実際にはGBM患者における生存についての負の予後因子であるという所見を説明するであろう(Draaismaら、Acta Neuropathol Commun.2015;3:88)。これらの患者は、TMZによる従来の療法に反応しない。
【0010】
本発明はこの課題に対する解決策を提供する。dMMRによる超変異は、強い免疫原性シグナル伝達をもたらし得るが、これらはまた、標準的な化学療法剤に対する低い反応および低い生存率をもたらす可能性がある。二本鎖DNA切断を引き起こすことによって、TMZは腫瘍における超変異および強力な免疫原性シグナル伝達を駆動する能力を実証した。化学療法治療中にリンパ球を生かしておくことができれば、化学療法で超変異を人工的に作り出すことによって、腫瘍免疫原性およびチェックポイント阻害に対する反応性を高めながら、標準治療に対する腫瘍感受性を維持することができる。
【0011】
残念なことに、時間の経過と共にTMZによって駆動される超変異がMMRシステムに突然変異を引き起こし、TMZおよび他のアルキル化剤に対する感受性が低下する可能性がある。理論によって拘束されないが、TMZまたは他のアルキル化剤によって引き起こされる超変異は、長期の免疫原性を誘発し得ないサブクローンサイン11突然変異である可能性が最も高い(Alexandrovら、Nature、第500巻、2013年8月22日)。しかしながら、短期間ではあるが、本発明者らのデータは、二本鎖切断の開始が、腫瘍細胞表面上のNKG2D受容体リガンドの一過的上方制御をもたらし、自然免疫応答の活性化および薬剤耐性γδT細胞による腫瘍殺傷を誘因するDNA損傷応答を誘因し得ることを実証している(Lambら、PLOS ONE、第8巻、第1号、2013年1月)。
【0012】
したがって、本発明は、がんの進行の早期で両機構を一緒に標的とする。理論によって拘束されないが、TMZによって引き起こされるDNA損傷は、DNA損傷応答に関連する毛細血管拡張性運動失調症突然変異(ATM)および毛細血管拡張性運動失調症Rad-3関連(ATR)タンパク質キナーゼの上方制御をもたらす。DNA損傷応答ならびにATMおよびATRの上方制御は、腫瘍細胞表面上のMICA/BおよびULBP16などのNKG2Dリガンドの上方制御ならびに抗腫瘍免疫応答の開始をもたらす。化学療法に感受性の腫瘍の大部分を殺傷しながら、DNA損傷による免疫反応を上方制御し、チェックポイント阻害により免疫細胞のブレーキを解除することにより、がん患者に対してより強く、より耐久性のある反応を生み出すことを目指している。
【0013】
したがって、がん、特に化学療法に対して一過的反応を示すがんを治療する現在の方法を強化、置換または補足する併用療法に対する差し迫った必要性が依然としてある。薬剤耐性免疫担当細胞、免疫チェックポイント阻害剤および化学療法を含む併用療法が、このような補足的アプローチを提供する。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、化学療法中の薬物誘発毒性からの保護を含む、がんに対する免疫担当細胞の免疫応答を増強し、それによって免疫療法と化学療法の併用投与を可能にする組成物および方法を含むがんを治療するための併用療法、1つまたは複数のサイクルおよび/または用量の免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせた「薬剤耐性免疫療法」と呼ばれる抗がん治療を提供する。チェックポイント阻害剤と薬剤耐性免疫療法との組み合わせは、任意の順序で順次、または実質的に同時に投与することができる。薬剤耐性免疫療法は、単離された細胞傷害性免疫細胞の遺伝子改変を含む。好ましくは、単離された細胞傷害性免疫細胞は、当技術分野で公知の任意の方法を用いて遺伝子改変される。好ましくは、遺伝子改変の方法は、それだけに限らないが、HIVベースのレンチウイルスシステムまたは遺伝子編集システムを含む。好ましくは、遺伝子編集システムは、それだけに限らないが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはクラスター化された等間隔にスペーサーが入った短い回文型のリピート配列(CRISPR)と関連するCas9などのタンパク質を含む指向性エンドヌクレアーゼを使用して薬剤耐性付与遺伝要素を免疫担当細胞株に送達することを含む。遺伝子操作された免疫担当細胞は、非改変細胞と比較して、特定の化学療法細胞傷害剤に対する有意な耐性を発達させる;しかしながら、薬剤耐性は、化学療法剤の存在下または非存在下で遺伝子操作された細胞が標的がん細胞を殺傷する能力に影響を及ぼさない。このような薬物耐性免疫療法は、例えば、Spencer H.T.らの米国特許出願公開第2015/0017137号明細書に記載されている。
【0015】
本発明は、患者のがんを治療する方法であって、細胞傷害性免疫細胞の場合により濃縮されたおよび/または場合により拡大された集団を得るステップであって、細胞傷害性免疫細胞が治療剤に耐性になるよう遺伝子改変された細胞を含むステップと;遺伝子改変された細胞傷害性免疫細胞の集団と組み合わせて、遺伝子操作された細胞が耐性である有効量の治療剤を、それを必要とする患者に投与するステップと、さらに有効量の少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤を患者に投与して、それによって患者のがんを治療するステップとを含む方法を提供する。
【0016】
好ましくは、本発明の組成物および方法で使用される細胞傷害性免疫細胞の集団は、γδT細胞を含む。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞の集団は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%のγδT細胞を含む。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞の集団は、約50%~約95%のγδT細胞を含む。好ましくは、本発明の組成物および方法で使用される細胞傷害性免疫細胞の集団は、γδT細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞の集団は、約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上のNK細胞を含む。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞の集団は、約5%~約25%のNK細胞を含む。好ましくは、本発明の組成物および方法で使用される細胞傷害性免疫細胞の集団は、γδT細胞、NK細胞、ならびにそれだけに限らないが、単球、樹状突起およびマクロファージを含む他の免疫担当細胞を含む。好ましくは、本発明の組成物および方法で使用される細胞傷害性免疫細胞の集団は、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)由来のγδT細胞を含む。
【0017】
好ましくは、本発明の組成物および方法で使用される細胞傷害性免疫細胞の集団はNK細胞を含む。好ましくは、本発明の組成物および方法で使用される細胞傷害性免疫細胞の集団は、NK細胞およびγδT細胞を含む。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞の集団は、約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上のNK細胞を含む。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞の集団は、約5%~約25%のNK細胞を含む。好ましくは、本発明の組成物および方法に使用される細胞傷害性免疫細胞の集団は、NK細胞、γδT細胞、ならびにそれだけに限らないが、単球、樹状突起およびマクロファージを含む他の免疫担当細胞を含む。好ましくは、本発明の組成物および方法で使用される細胞傷害性免疫細胞の集団は、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)由来のNK細胞を含む。
【0018】
好ましくは、治療剤に耐性になるよう遺伝子改変された細胞傷害性免疫細胞の集団を得るステップは、例えば、それだけに限らないが、血液または腫瘍生検を含む組織試料を含む生物学的試料を対象から得ることによって、細胞傷害性免疫細胞の集団をヒト対象または動物対象などの対象から得ることを含む。試料を場合により細胞傷害性免疫細胞および他の免疫担当細胞について濃縮してもよい、および/または試料中に存在する細胞を場合により拡大させて試料中に存在する細胞の集団を増加させてもよい。細胞傷害性免疫細胞は、好ましくはプロモーターと作動可能に連結した異種核酸配列を含むベクターで安定に形質転換または遺伝子編集されており、異種核酸配列は1種または複数の化学療法剤に対する耐性を細胞に付与するポリペプチドをコードする。
【0019】
好ましくは、本発明は、がん細胞の生存を阻害する特徴を有する細胞傷害性治療剤、γδT細胞、NK細胞またはこれらの任意の組み合わせを含み、場合によりさらに他の免疫担当細胞を含む細胞傷害性免疫細胞の集団であって、細胞傷害性治療剤に耐性になるよう遺伝子改変されている集団と、がん細胞上の細胞表面タンパク質を遮断する免疫チェックポイント阻害剤とを含む、患者のがんを治療するシステムを提供する。
【0020】
好ましくは、本発明は、がん細胞上の細胞表面タンパク質を遮断する免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて、がん細胞の生存を阻害し、がん細胞においてストレスタンパク質を誘導する特徴を有する治療剤、細胞傷害性免疫細胞の集団(前記細胞傷害性免疫細胞はγδT細胞、NK細胞またはこれらの任意の組み合わせを含み、場合によりさらに他の免疫担当細胞を含み、前記細胞傷害性免疫細胞は治療剤に耐性になるよう遺伝子改変されている)を含む患者の膠芽腫を治療するシステムを提供する。
【0021】
好ましくは、本発明の組成物および方法で使用される細胞傷害性免疫細胞の集団は、γδT細胞の約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%超が化学療法剤に対する耐性を付与するポリペプチドを発現しているγδT細胞、またはγδT細胞の約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%超が化学療法に対する耐性を付与するポリペプチドをコードする核酸を含むγδT細胞を含む単離組成物、または化学療法剤に対する耐性を付与するポリペプチドをコードする核酸を含むγδT細胞から本質的になる単離組成物を含む。好ましくは、化学療法剤に対する耐性を付与するポリペプチドは、O6メチルグアニンDNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)、ジヒドロ葉酸レダクターゼの薬物耐性変異体(L22Y-DHFR)、チミジル酸シンターゼ、および/または多剤耐性-1タンパク質(MDR1)である。
【0022】
好ましくは、本発明の組成物および方法で使用される細胞傷害性免疫細胞の集団は、NK細胞の約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%超が化学療法剤に対する耐性を付与するポリペプチドを発現しているNK細胞を含む。好ましくは、本発明の組成物および方法で使用される細胞傷害性免疫細胞は、NK細胞の約50%超が化学療法剤に対する耐性を付与するポリペプチドを発現しているNK細胞を含む。好ましくは、本発明の組成物および方法で使用される細胞傷害性免疫細胞の集団は、NK細胞の約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%超が化学療法剤に対する耐性を付与するポリペプチドをコードする核酸を含むNK細胞を含む。好ましくは、本発明の組成物および方法で使用される細胞傷害性免疫細胞は、NK細胞の約50%超が化学療法剤に対する耐性を付与するポリペプチドをコードする核酸を含むNK細胞を含む。好ましくは、化学療法剤に対する耐性を付与するNK細胞によって発現されるポリペプチドは、O6メチルグアニンDNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)、ジヒドロ葉酸レダクターゼの薬物耐性変異体(L22Y-DHFR)、チミジル酸シンターゼ、および/または多剤耐性-1タンパク質(MDR1)である。
【0023】
好ましくは、本発明は、少なくとも1種のチェックポイント阻害剤と、γδT細胞、NK細胞またはこれらの任意の組み合わせを含む細胞傷害性免疫細胞の単離された集団とを含む組成物であって、細胞傷害性免疫細胞の集団の約5%超、好ましくは約50%超は、がん細胞の生存を阻害することができる治療剤に対する耐性を付与するポリペプチドを発現する、組成物を提供する。
【0024】
本発明の前記のおよび他の目的、特徴および利点は、同様の参照文字が異なる図面を通して同様の部分を指す添付の図面に示されるように、本発明の好ましい実施形態の以下のより詳細な説明から明らかになるであろう。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに本発明の原理を例示することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ドナー1由来のPBMCのインビトロ培養前のγδT細胞上のチェックポイント分子の発現を示す図である。
【
図2】ドナー1由来のインビトロ濃縮γδT細胞上のチェックポイント分子の上方制御を示す図である。
【
図3】ドナー2由来のPBMCのインビトロ培養前のγδT細胞上のチェックポイント分子の発現を示す図である。
【
図4】ドナー2由来のインビトロ濃縮γδT細胞上のチェックポイント分子の上方制御を示す図である。
【
図5】IL2およびZolによる刺激時のヒトγδT細胞上のPD-1およびCTLA-4の上方制御を示す図である。
【
図6】膠芽腫腫瘍細胞上のPD-L1発現を示す図である。
【
図7】GMP製造γδT細胞の細胞傷害性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、記載される特定の実施形態に限定されず、当然、それ自体変化し得る。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されるべきである。
【0027】
範囲の値が提供される場合、(文脈上明らかにそうでないと指示されていない限り)下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限と下限の間のそれぞれの介在値、および他の明言される値またはその明言される範囲内の介在値が、本発明の範囲内に包含されると理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立により小さな範囲に含まれてもよく、また明言される範囲内の任意の具体的に除外された限度を条件として、本発明内に包含される。明言される範囲が限度の一方または両方を含む場合、含まれる限度のいずれかまたは両方を除外した範囲も本発明に含まれる。
【0028】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料も本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料をここに記載する。
【0029】
本明細書に引用される全ての刊行物および特許は、あたかも各個々の刊行物または特許が具体的かつ個別的に参照により組み込まれることが示されているかのように参照により本明細書に組み込まれ、関連して刊行物が引用される方法および/または材料を開示および記載するために参照により本明細書に組み込まれる。いかなる刊行物の引用も出願日前のその発明についてのものであり、本発明が先行発明のためにこのような刊行物に先行する権利がないことの自認として解釈されるべきではない。さらに、提供される公開日は実際の公開日とは異なる可能性があり、独立に確認する必要があるかもしれない。
【0030】
特に指示しない限り、本明細書は、当業者が備えている技能の範囲内である化学、合成有機化学、生化学、生物学、分子生物学、分子イメージングなどの技術を記載する。このような技術は文献に十分に説明されている。
【0031】
以下の例は、当業者に完全な本発明ならびに本方法を実施し、本明細書で開示および特許請求される組成物および化合物を使用する方法の説明を提供するために提示される。
【0032】
特に指示しない限り、本発明は特定の材料、試薬、反応材料、製造方法などに限定されず、それ自体変化し得る。本明細書で使用される用語は特定の特徴を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されるべきである。本発明では、論理的に可能である場合には、ステップを異なる順序で実行することも可能である。
【0033】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。よって、例えば、「支持体(a support)」への言及は、複数の支持体を含む。本明細書および以下の特許請求の範囲において、反対の意図が明らかでない限り、以下の意味を有するように定義されるべきいくつかの用語に言及する。
【0034】
定義
開示される主題の説明および特許請求において、以下の用語は、以下に示される定義に従って使用されるであろう。
【0035】
「投与」とは、本発明の化合物、細胞集団を含む生物学的材料、またはこれらの組み合わせをヒトまたは動物対象に導入することを意味する。化合物の1つの好ましい投与経路は静脈内である。化合物の他の好ましい投与経路は、腹腔内もしくは胸膜内、またはカテーテルを介した脳への投与であり得る。しかしながら、経口、局所、皮下、腹腔内、動脈内、吸入、膣内、直腸内、鼻腔内、脳脊髄液への導入、または身体区画への点滴注入などの任意の投与経路を使用することができる。固形腫瘍などの標的組織部位への直接注射も企図される。
【0036】
本明細書で使用される「治療剤」という用語は、がん細胞と相互作用し、それによって細胞の増殖状態を低下させる、および/または細胞を死滅させることができる化合物またはその誘導体を指す。治療剤の例としては、それだけに限らないが、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド);代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート(MTX)、5-フルオロウラシルまたはこれらの誘導体);置換ヌクレオチド;置換ヌクレオシド;DNA脱メチル化剤(代謝拮抗物質としても知られる;例えば、アザシチジン);抗腫瘍抗生物質(例えば、マイトマイシン、アドリアマイシン);植物由来の抗腫瘍剤(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、TAXOL(登録商標)、パクリタキセル、アブラキサン);シスプラチン;カルボプラチン;エトポシドなどを含む化学療法剤が挙げられる。このような薬剤にはさらに、それだけに限らないが、抗がん剤トリメトトレキサート(TMTX);テモゾロミド;ラルチトレキセド;S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR);6-ベンジルグアニジン(6-BG);ニトロソ尿素[例えば、ビス-クロロニトロソ尿素(BCNU;カルムスチン)、ロムスチン(CCNU)+/-プロカルバジンおよびビンクリスチン(PCVレジメン)、フォテムスチン];シタラビン;およびカンプトテシン;またはこれらのいずれかの治療的誘導体を含み得る。
【0037】
本明細書で使用される「治療上有効量」という用語は、治療される疾患、状態または障害の症状のうちの1つまたは複数をある程度軽減する、投与される化合物または治療活性組成物の量を指す。がんまたは未制御の細胞分裂に関連する病態に関して、治療上有効量は、(1)腫瘍のサイズを減少させる、(2)異常な細胞分裂、例えばがん細胞分裂を阻害する(すなわち、ある程度遅くする、好ましくは停止する);(3)がん細胞の転移を予防するもしくは減少させる、および/または(4)例えば、がんもしくは血管新生を含む未制御のもしくは異常な細胞分裂に関連するもしくは部分的にこれによって引き起こされる病態を伴う1つもしくは複数の症状をある程度軽減する効果を有する量を指す。
【0038】
本明細書で使用される疾患の「治療すること」または「治療」という用語は、疾患にかかりやすいがまだ疾患の症状を経験もしておらず示してもいないヒト対象または動物対象において疾患が発生するのを防ぐこと(予防的治療)、疾患を抑制すること(発達を遅らせるまたは停止すること)、疾患の症状または副作用を軽減すること(姑息療法を含む)、および疾患の後退を引き起こすことを指す。がんに関しては、これらの用語はまた、がんに罹患している個体の平均余命を延ばすことができること、または疾患の症状のうちの1つもしくは複数が軽減されることを意味する。がんに関して、「治療すること」はまた、対象における抗腫瘍反応を増強または延長することを含む。
【0039】
本明細書で使用する場合、「組み合わせ」、「併用療法」および/または「併用治療レジメン」の任意の投与形態は、別々もしくは組み合わせ製剤で同時に、または数分、数時間もしくは数日で区切られた異なる時間に順次投与されるが、何らかの方法で一緒に作用して所望の治療反応をもたらすことができる少なくとも2種の治療活性薬物または組成物を指す。
【0040】
本明細書で使用される「増強すること」という用語は、対象または腫瘍細胞が本明細書に開示される治療に反応する能力を改善することを可能にすることを指す。例えば、増強された反応は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは98%またはそれ以上の反応性の増加を含み得る。本明細書で使用する場合、「増強すること」はまた、化学療法、薬物耐性免疫担当細胞、および免疫チェックポイント阻害剤を含む併用療法などの治療に反応する対象の数を増強することを指すこともできる。例えば、増強された反応は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは98%またはそれ以上の治療に反応する対象の合計割合を指し得る。
【0041】
本明細書で使用される「対象」および「患者」という用語は、ヒト、哺乳動物(例えば、ネコ、イヌ、ウマ等)、生細胞、および他の生存生物を含む。生存生物は、例えば単一の真核細胞のように単純なものでも、哺乳動物のように複雑なものでもよい。典型的な患者は哺乳動物、特に霊長類、特にヒトである。獣医学用途には、多種多様な対象、例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタなどの家畜;ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウなどの家禽類;ならびに飼いならされた動物、特にイヌおよびネコなどのペットが適している。診断または研究用途には、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類、および近交系ブタなどのブタなどを含む多種多様な哺乳動物が適切な対象となる。好ましくは、系は試料および対象を含む。「生存宿主」という用語は、生きていて、死んでいない上記の宿主または生物を指す。「生存宿主」という用語は、宿主全体または生物全体を指し、生存宿主から切除された部分(例えば、肝臓または他の臓器)だけではない。
【0042】
本明細書で使用される「γδT細胞(ガンマデルタT細胞)」という用語は、表面上に別個のT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞の小サブセットを指す。T細胞の大部分は、α-TCR鎖およびβ-TCR鎖と呼ばれる2本の糖タンパク質鎖で構成されたTCRを有する。対照的に、γδT細胞では、TCRは1本のγ鎖および1本のδ鎖で構成されている。このグループのT細胞は通常αβT細胞よりはるかに一般的ではないが、上皮内リンパ球(IEL)として知られているリンパ球の集団内に、腸粘膜でそれらの最も高い存在量で見られる。γδT細胞を活性化する抗原性分子はまだほとんど知られていない。しかしながら、γδT細胞は、それらが抗原処理およびペプチドエピトープのMHC提示を必要としないように思われるが、いくらかはMHCクラスIB分子を認識するという点で独特である。さらに、γδT細胞は、脂質抗原の認識において顕著な役割を果たし、MIC-AおよびMIC-Bなどのストレス関連抗原に応答すると考えられている。
【0043】
本明細書で使用される「ヒト人工多能性幹細胞」(hiPSC)という用語は、任意の他の種類のヒト細胞、例えば治療用免疫担当細胞の生成を可能にする胚様多能性状態に再プログラミングされた皮膚細胞または血球などのヒト成人細胞から直接生成することができる多能性幹細胞の一種を指す。hiPSCが得られるヒト成人細胞を治療される患者から得てもよく、または成人細胞を異なる個体から得てもよい。ヒト成人細胞を、例えば、成人細胞を多能性幹細胞に変換することができる転写因子をコードする遺伝子を導入するためのレトロウイルス系またはレンチウイルス系を用いて多能性幹細胞に形質転換することができる。
【0044】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、免疫グロブリンまたはその一部を指し、供給源、起源の種、製造方法、および特性にかかわらず、抗原結合部位を含む任意のポリペプチドを包含する。抗体は、重鎖および/または軽鎖またはこれらの断片で構成され得る。本発明の抗体またはその抗原結合フラグメント、変異体、または誘導体には、それだけに限らないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、またはキメラ抗体、単鎖抗体、エピトープ結合フラグメント、例えばFab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、Fvs、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、VLドメインもしくはVHドメインのいずれかを含むフラグメント、Fab発現ライブラリーによって産生されるフラグメント、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体が含まれる。ScFv分子は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第5892019号明細書に記載されている。本発明の免疫グロブリンまたは抗体分子は、任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)または免疫グロブリン分子のサブクラスであり得る。
【0045】
本明細書で使用される「生物学的治療薬」または「生物製剤」という用語は、生物学的供給源で製造されるまたはそれから抽出される任意の医薬品を指す。生物製剤は化学合成医薬品とは異なる。生物製剤の例としては、ワクチン、血液または血液成分、アレルゲン、体細胞、遺伝子療法、組織、抗体治療薬および融合タンパク質を含む組換え治療用タンパク質、ならびに生細胞が挙げられる。生物製剤は、糖、タンパク質もしくは核酸またはこれらの物質の複雑な組み合わせから構成され得る、または細胞および組織などの生命体であり得る。生物製剤は、ヒト、動物、微生物などの種々の天然源から単離され、バイオテクノロジー法および他の技術によって製造され得る。生物学的治療薬の具体例としては、それだけに限らないが、免疫刺激剤、T細胞増殖因子、インターロイキン、抗体、融合タンパク質、およびがんワクチンなどのワクチンが挙げられる。
【0046】
本明細書で使用される「がん」という用語は、異常な細胞が制御なしに分裂する疾患に対する一般的な用語として、その通常の意味を与えられるべきである。特に、また本発明の実施形態の文脈において、がんは血管新生関連がんを指す。がん細胞は近くの組織に侵入し、血流およびリンパ系を通って身体の他の部分に広がることができる。がんにはいくつかの主要な種類があり、例えば、癌腫は皮膚または内臓を裏打ちするもしくは覆う組織で発生するがんである。肉腫は、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、または他の結合組織もしくは支持組織で発生するがんである。白血病は骨髄などの造血組織で発生し、多数の異常な血球を産生させ、血流に入らせるがんである。リンパ腫は免疫系の細胞で発生するがんである。
【0047】
正常細胞が指定され、制御され、調整された単位として挙動する能力を失うと、腫瘍が形成される。一般に、固形腫瘍は、通常嚢胞も液体領域も含まない異常な組織塊である(脳腫瘍の中には、嚢胞および中心壊死領域が液体で満たされているものがある)。単一腫瘍が、その内部に様々な細胞の集団を有することさえあり、道を誤った過程が様々である。固形腫瘍は良性(がん性ではない)または悪性(がん性)であり得る。様々な種類の固形腫瘍は、これらを形成する細胞の種類に因んで命名される。固形腫瘍の例は、肉腫、癌腫およびリンパ腫である。白血病(血液がん)は通常、固形腫瘍を形成しない。
【0048】
代表的ながんには、それだけに限らないが、とりわけ急性リンパ芽球性白血病、成人;急性リンパ芽球性白血病、小児;急性骨髄性白血病、成人;副腎皮質癌;副腎皮質癌、小児;AIDS関連リンパ腫;AIDS関連悪性腫瘍;肛門がん;星状細胞腫、小児小脳;星状細胞腫、小児大脳;胆管がん、肝外;膀胱がん;膀胱がん、小児;骨がん、骨肉腫/悪性線維性組織球腫;膠芽腫、小児;膠芽腫、成人;脳幹グリオーマ、小児;脳腫瘍、成人;脳腫瘍、脳幹グリオーマ、小児;脳腫瘍、小脳星状細胞腫、小児;脳腫瘍、大脳星状細胞腫/悪性グリオーマ、小児;脳腫瘍、上衣腫、小児;脳腫瘍、髄芽腫、小児;脳腫瘍、テント上原始神経外胚葉腫瘍、小児;脳腫瘍、視覚路および視床下部グリオーマ、小児;脳腫瘍、小児(その他);乳がん;乳がんおよび妊娠;乳がん、小児;乳がん、男性;気管支腺腫/カルチノイド、小児:カルチノイド腫瘍、小児;カルチノイド腫瘍、消化管;癌腫、副腎皮質;癌腫、膵島細胞;原発不明の癌腫;中枢神経系リンパ腫、原発;小脳星状細胞腫、小児;大脳星状細胞腫/悪性グリオーマ、小児;子宮頸がん;小児がん;慢性リンパ性白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖性疾患;腱鞘の明細胞肉腫;結腸がん;結腸直腸がん、小児;皮膚T細胞リンパ腫;子宮内膜がん;上衣腫、小児;上皮がん、卵巣;食道がん;食道がん、小児;ユーイングファミリー腫瘍;頭蓋外胚細胞腫瘍、小児;性腺外胚細胞腫瘍;肝外胆管がん;眼がん、眼内黒色腫;眼がん、網膜芽細胞腫;胆嚢がん;胃(胃)がん;胃(胃)がん、小児;消化管カルチノイド腫瘍;胚細胞腫瘍、頭蓋外、小児;胚細胞腫瘍、性腺外;胚細胞腫、卵巣;妊娠性絨毛腫瘍;グリオーマ、小児脳幹;グリオーマ、小児視覚路および視床下部;有毛細胞白血病;頭頸部がん;肝細胞(肝臓)がん、成人(原発);肝細胞(肝臓)がん、小児(原発);ホジキンリンパ腫、成人;ホジキンリンパ腫、小児;妊娠中のホジキンリンパ腫;下咽頭がん;視床下部および視覚路グリオーマ、小児;眼内黒色腫;膵島細胞癌(内分泌膵臓);カポジ肉腫。腎臓がん;喉頭がん;喉頭がん、小児;白血病、急性リンパ芽球性、成人;白血病、急性リンパ芽球性、小児;白血病、急性骨髄性、成人;白血病、急性骨髄性、小児;白血病、慢性リンパ球性;白血病、慢性骨髄性;白血病、有毛細胞;口唇がんおよび口腔がん;肝がん、成人(原発);肝がん、小児(原発);肺がん、非小細胞;肺がん、小細胞;リンパ芽球性白血病、成人急性;リンパ芽球性白血病、小児急性;リンパ性白血病、慢性;リンパ腫、AIDS関連;リンパ腫、中枢神経系(原発);リンパ腫、皮膚T細胞;リンパ腫、ホジキン、成人;リンパ腫、ホジキン、小児;リンパ腫、妊娠中ホジキン;リンパ腫、非ホジキン、成人;リンパ腫、非ホジキン、小児;リンパ腫、妊娠中非ホジキン;リンパ腫、原発性中枢神経系;マクログロブリン血症、ワルデンシュトレーム型;男性乳がん;悪性中皮腫、成人;悪性中皮腫、小児;悪性胸腺腫、髄芽腫、小児;黒色腫;黒色腫、眼内;メルケル細胞癌;中皮腫、悪性;原発不明の転移性扁平上皮頸部がん;多発性内分泌腫瘍症候群、小児;多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍。;菌状息肉腫;骨髄異形成症候群;骨髄性白血病、慢性;骨髄性白血病、小児急性;骨髄腫、多発性;骨髄増殖性疾患、慢性;鼻腔がんおよび副鼻腔がん;上咽頭がん;上咽頭がん、小児;神経芽細胞腫;神経線維腫;非ホジキンリンパ腫、成人;非ホジキンリンパ腫、小児;妊娠中の非ホジキンリンパ腫;非小細胞肺がん;口腔がん、小児;口腔および口唇がん;中咽頭がん;骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫;卵巣がん、小児;卵巣上皮がん;卵巣胚細胞腫瘍;卵巣低悪性度腫瘍;膵がん;膵がん、小児;膵がん、膵島細胞;;副鼻腔がんおよび鼻腔がん;副甲状腺がん;陰茎がん;褐色細胞腫;松果体およびテント上原始神経外胚葉腫瘍、小児;下垂体腫瘍;形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;妊娠および乳がん;妊娠およびホジキンリンパ腫;妊娠および非ホジキンリンパ腫;原発性中枢神経系リンパ腫;原発性肝がん、成人;原発性肝がん、小児;前立腺がん;直腸がん;腎細胞(腎臓)がん;腎細胞がん、小児;腎盂および尿管、移行上皮がん;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫、小児;唾液腺がん;唾液腺がん、小児;肉腫、ユーイングファミリー腫瘍;肉腫、カポジ;肉腫(骨肉腫)/骨の悪性線維性組織球腫;肉腫、横紋筋肉腫、小児;肉腫、軟組織、成人;肉腫、軟組織、小児;セザリー症候群;皮膚がん;皮膚がん、小児;皮膚がん(黒色腫);皮膚癌、メルケル細胞;小細胞肺がん;小腸がん;軟部組織肉腫、成人;軟部肉腫、小児;原発不明の頸部扁平上皮癌、転移性;胃(胃)がん;胃(胃)がん、小児;テント上原始神経外胚葉腫瘍、小児;T細胞リンパ腫、皮膚;精巣がん;胸腺腫、小児;胸腺腫、悪性;甲状腺がん;甲状腺がん、小児;腎盂および尿管の移行上皮がん;絨毛性腫瘍、妊娠性;小児の原発部位不明のがん;小児の異常ながん;尿管および腎盂、移行上皮がん;尿道がん;子宮肉腫;膣がん;視覚路および視床下部グリオーマ、小児;外陰がん;ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症;およびウィルムス腫瘍が含まれる。
【0049】
腫瘍を悪性または良性として分類することができる。両方の場合で、細胞の異常な凝集および増殖がある。悪性腫瘍の場合、これらの細胞はより攻撃的に挙動し、侵襲性が増加するという特性を獲得する。最終的には、腫瘍細胞は、起源をもつ微視的環境から離れ、身体の別の領域に広がり(極めて異なる環境では、通常は増殖を助長しない)、この新しい場所での急速な増殖および分裂を継続する能力を獲得しさえし得る。これは転移と呼ばれる。いったん悪性細胞が転移すると、治癒を達成することはより困難になる。良性腫瘍は浸潤する傾向が少なく、転移する可能性が低い。
【0050】
脳腫瘍は脳内に広範囲に広がっているが、通常は脳外に転移することはない。神経膠腫は脳内で非常に侵襲的で、半球を横切ることさえある。しかし、これらは制御されない様式で分裂する。位置によっては、これらは悪性病変と同じくらい生命を脅かし得る。この一例は脳内の良性腫瘍であり、これは成長して頭蓋骨内の空間を占有し、脳への圧力を増加させ得る。
【0051】
本明細書で使用される「濃縮された」という用語は、本明細書に開示されるように、濃縮前の同じ1つまたは複数の細胞型の総百分率に対して、試料中に存在する1つまたは複数の細胞傷害性免疫細胞型(例えば、γδT細胞および/またはNK細胞)の総百分率を増加させることを指す。例えば、濃縮前の試料中の1つまたは複数の細胞傷害性免疫細胞型の総百分率は、例えば、0%~10%であったが、1つまたは複数の細胞傷害性免疫細胞型について「濃縮」されている試料は試料中約10%~100%の1つまたは複数の細胞傷害性免疫細胞型を含み得る。好ましくは、濃縮された試料は、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の1つまたは複数の細胞傷害性免疫細胞型を含む。試料は、標準的な技術、例えばフローサイトメトリー技術を使用して1つまたは複数の細胞型について濃縮され得る。
【0052】
本明細書で使用される「高度に濃縮された」という用語は、濃縮前の同じ細胞傷害性免疫細胞型の総百分率は、例えば、0%~10%であったが、1つまたは複数の細胞傷害性免疫細胞型が試料中少なくとも約70%~約100%の細胞傷害性免疫細胞型を構成し得るように、試料中の1つまたは複数の細胞傷害性免疫細胞型の総百分率を増加させることを指す。好ましくは、高度に濃縮された試料は、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、またはそれ以上の1つまたは複数の細胞傷害性免疫細胞型を含む。試料は、標準的な技術、例えばフローサイトメトリー技術を使用して1つまたは複数の細胞型について高度に濃縮され得る。
【0053】
試料中の1つまたは複数の細胞傷害性免疫細胞の増殖に関して本明細書で使用される「拡大された」および「拡大」という用語は、試料中の1種または複数の細胞傷害性免疫細胞の数を例えば少なくとも約2倍、好ましくは約5倍、好ましくは少なくとも10倍、好ましくは少なくとも約50倍以上増加させることを意味する。細胞傷害性免疫細胞集団の拡大は、当技術分野で知られているように任意の数の方法によって達成することができる。例えば、T細胞を、フィーダーリンパ球およびインターロイキン-2(IL-2)またはインターロイキン-15(IL-15)のいずれか(IL-2が好ましい)の存在下での非特異的T細胞受容体刺激を用いて急速に拡大させることができる。非特異的T細胞受容体刺激は、約30ng/mlのOKT3、マウスモノクローナル抗CD3抗体(ORTHO-MCNEIL(登録商標)、Raritan、NJから入手可能)を含むことができる。あるいは、300IU/mlのIL-2またはIL-15(IL-2が好ましい)などのT細胞増殖因子の存在下、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)結合ペプチド、例えば0.3μMのMART-1:26-35(27L)またはgp100:209-217(210M)などのベクターから場合により発現させることができる、がんの1種または複数の抗原(1つまたは複数のエピトープなどの抗原性部分、または細胞を含む)で、インビトロで末梢血単核細胞(PBMC)を刺激することによって、T細胞を急速に拡大することができる。
【0054】
本明細書で使用される「融合タンパク質」という用語は、例えば少なくとも1つの標的結合部位、および少なくとも1つの異種部分、すなわち自然状態では自然に結合していない部分を有する免疫グロブリン抗原結合ドメインを含むキメラ分子を指す。アミノ酸配列は通常、融合ポリペプチド中で一緒にされる別々のタンパク質中に存在してもよい、またはアミノ酸配列は通常同じタンパク質中に存在してもよいが融合ポリペプチド中に新しい配置で配置される。融合タンパク質は、例えば化学合成によって、またはペプチド領域が所望の関係でコードされているポリヌクレオチドを作製および翻訳することによって作製することができる。
【0055】
本明細書で使用される「がんを減少させる」という用語は、腫瘍塊のサイズまたは体積の減少、対象における転移腫瘍の数の減少、がんの増殖状態(がん細胞が増殖している程度)の減少等を指す。
【0056】
本明細書で使用される「単離された」および「単離された細胞の集団」という用語は、対象中で見られる組織または状態から取り出された1個の細胞または複数の細胞を指す。この用語はさらに、それだけに限らないが、細胞表面マーカー、色素または標識などのレポーターマーカーのようなパラメータに従って分離された細胞を含み得る。
【0057】
本明細書で使用される「発現した」または「発現」という用語は、遺伝子の2本の核酸鎖のうちの一方の領域に対して少なくとも部分的に相補的なRNA核酸分子をもたらす遺伝子からの転写を指す。本明細書で使用される「発現した」または「発現」という用語はまた、タンパク質、ポリペプチド、またはその一部もしくは断片を得るための前記RNA核酸分子からの翻訳も指す。
【0058】
本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼからの転写開始部位を決定するDNA配列を指す。「プロモーター近位エレメント」は、転写開始部位の約200塩基対以内の調節配列であり得る。
【0059】
「組換え細胞」という用語は、自然状態で共有結合していない核酸セグメントの新しい組み合わせを有する細胞を指す。当業者に利用可能な広範囲の核酸操作技術を用いて、核酸セグメントの新しい組み合わせを生物に導入することができる。組換え細胞は、単一真核細胞、または単一原核細胞、または哺乳動物細胞であり得る。組換え細胞は、ゲノム外のベクターを保有していてもよい。ゲノム外核酸ベクターは細胞のゲノムに挿入されない。組換え細胞はさらに、ゲノム内のベクターまたはその一部を保有していてもよい。「ゲノム内」という用語は、組換え細胞のゲノム内に組み込まれた核酸構築物を定義する。
【0060】
本明細書で使用される「組換え核酸」および「組換えDNA」という用語は、真核細胞または原核細胞で自然には見られない少なくとも2つの核酸配列の組み合わせを指す。核酸配列には、それだけに限らないが、核酸ベクター、遺伝子発現調節エレメント、複製起点、発現時に抗生物質耐性を付与する適切な遺伝子配列、タンパク質をコードする配列などが含まれる。「組換えポリペプチド」という用語は、その位置、純度または構造のいずれかにおいて天然に存在するポリペプチドとは異なるように、組換えDNA技術によって産生されるポリペプチドを含むことを意味する。一般に、このような組換えポリペプチドは、自然状態で通常観察されるものとは異なる量で細胞中に存在するであろう。
【0061】
本明細書で使用される「作動可能に」または「作動可能に連結した」という用語は、所望の機能を実行するためのコード配列および制御配列の構成を指す。したがって、コード配列に作動可能に連結した制御配列は、コード配列の発現をもたらすことができる。DNAポリメラーゼがプロモーター配列に結合し、コード配列を、コードされたタンパク質に翻訳され得るmRNAに転写する場合、コード配列は細胞内の転写調節領域に作動可能に連結されているまたはその制御下にある。制御配列は、それらがその発現を指示するように機能する限り、コード配列と連続している必要はない。したがって、例えば、介在するまだ未翻訳の転写された配列がプロモーター配列とコード配列との間に存在することができ、プロモーター配列をなおコード配列に「作動可能に連結している」と見なすことができる。
【0062】
コード配列および制御配列などの核酸配列に関する「異種」および「外因性」という用語は、通常は、組換え構築物の領域もしくは特定の染色体遺伝子座と関連していない、および/または通常は特定の細胞に関連していない配列を示す。したがって、核酸構築物の「異種」領域は、自然状態では他の分子と関連して見られない別の核酸分子内のまたは別の核酸分子に結合した核酸の識別可能なセグメントである。例えば、構築物先端の異種領域は、自然状態ではコード配列に関連して見られない配列が隣接するコード配列を含み得る。異種コード配列の別の例は、コード配列自体が自然状態では見られない構築物(例えば、天然遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)である。同様に、通常は宿主細胞に存在しない構築物で形質転換された宿主細胞は、本発明の目的のために異種と見なされるだろう。
【0063】
好ましくは、プロモーターを、配列の付加もしくは欠失によって改変する、または天然および合成配列ならびに合成および天然配列の組み合わせであり得る配列を含む代替配列で置換する。多くの真核生物プロモーターは、2種類の認識配列:TATAボックスおよび上流プロモーターエレメントを含む。転写開始部位の上流に位置する前者は正しい部位で転写を開始するようにRNAポリメラーゼを誘導することに関与しているが、後者は転写速度を決定するようであり、TATAボックスの上流にある。エンハンサーエレメントはまた、連結プロモーターからの転写を刺激することができるが、多くは特定の細胞型において独占的に機能する。ウイルス、例えばSV40、ラウス肉腫ウイルス(RSV)およびCMVプロモーターに由来する多くのエンハンサー/プロモーターエレメントは、広範囲の細胞型において活性であり、「構成的」または「普遍的」と称される。クローニング部位に挿入された核酸配列は、目的のポリペプチドをコードする任意のオープンリーディングフレームを有することができるが、ただし、コード配列が目的のポリペプチドをコードする場合、適切なmRNA分子の産生を阻止し得る、および/または異常にスプライシングされたもしくは異常なmRNA分子を産生し得る隠れたスプライス部位を欠くべきである。
【0064】
終止領域は比較的互換性があるように思われるので、主に使用される終止領域は便利なものの1つである。終止領域は、目的の意図した核酸配列に固有のものでも、別の供給源に由来するものでもよい。
【0065】
本明細書で使用される「標的療法」という用語は、免疫系のあらゆる態様を標的とする任意の治療用分子を指す。
【0066】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、一本鎖、二本鎖、環状またはスーパーコイル状のDNAまたはRNAで構成されたポリヌクレオチドを指す典型的なベクターは、機能的遺伝子発現を可能にするために適切な距離で作動可能に連結した以下の要素で構成され得る:複製起点、プロモーター、エンハンサー、5’mRNAリーダー配列、リボソーム結合部位、核酸カセット、終止およびポリアデニル化部位、ならびに選択マーカー配列。特定の用途では、これらの要素のうちの1つまたは複数を省略することができる。核酸カセットは、発現させる核酸配列を挿入するための制限部位を含むことができる。機能的ベクターにおいて、核酸カセットは翻訳開始および終止部位を含む発現される核酸配列を含む。
【0067】
特定のコード配列が適切な調節配列と共にベクター中に位置するようにベクターを構築し、制御配列に対するコード配列の位置および配向をコード配列が制御または調節配列の「制御」下で転写されるようなものにする。目的の特定のタンパク質をコードする配列の改変はこの目的を達成するために望ましいかもしれない。例えば、場合によっては、適切な配向で制御配列に結合するように配列を改変する;またはリーディングフレームを維持する必要があるかもしれない。制御配列および他の調節配列は、ベクターに挿入する前にコード配列に連結することができる。あるいは、コード配列を、制御配列および制御配列と共にリーディングフレーム内にあり、その調節制御下にある適切な制限部位を既に含む発現ベクターに直接クローニングすることができる。
【0068】
本明細書で使用される「レンチウイルス系ベクター」という用語は、外因性ポリヌクレオチド配列を部位特異的に宿主ゲノムに作動可能に挿入するように設計されたレンチウイルスベクターを指す。レンチウイルス系ターゲティングベクターは、それだけに限らないが、例えば、HIV-1、HIV-2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、またはネコ免疫不全ウイルス(FIV)に基づき得る。好ましくは、レンチウイルス系ターゲティングベクターは、HIV系ターゲティングベクターである。このベクターは、HIVのポリヌクレオチド配列の全部または一部を含み得る。
【0069】
「形質転換」、「形質導入」および「形質導入」という用語」は全て、1つまたは複数のレシピエント細胞へのポリヌクレオチドの導入を示す。
【0070】
免疫チェックポイント阻害剤との併用薬剤耐性免疫療法
がんに対する化学療法治療の主な制限は、免疫担当細胞の死滅およびそうでなければ望ましくない感染症を防ぐ、またはがん細胞に対する防御を提供するであろう有効な免疫系の喪失を引き起こす薬物誘発免疫毒性である。化学療法の重度の毒性効果に対抗するための1つの戦略は、薬剤耐性を付与するcDNA配列を発現するように設計されたレトロウイルスベクターの導入によって細胞傷害性免疫担当細胞を選択的に遺伝子改変することであり、これにより化学療法剤の同時投与に耐えることができるがん細胞を積極的に標的とすることができる。
【0071】
免疫チェックポイントタンパク質は、免疫系におけるT細胞機能を調節する。T細胞は細胞性免疫において中心的な役割を果たす。チェックポイントタンパク質は、T細胞にシグナルを送り、本質的にT細胞機能のスイッチを切るまたはこれを阻害する特定のリガンドと相互作用する。がん細胞は、その表面上のチェックポイントタンパク質の高レベル発現を駆動して、腫瘍微小環境に入るT細胞の表面上のチェックポイントタンパク質を発現するT細胞の制御をもたらし、それによって抗がん免疫応答を抑制することによってこの系を利用する。よって、チェックポイントタンパク質の阻害は、T細胞機能の回復およびがん細胞に対する免疫応答をもたらすであろう。チェックポイントタンパク質の例としては、それだけに限らないが、CTLA-4、PDL1(B7-H1、CD274)、PDL2(B7-DC、CD273)、PD1、B7-H3(CD276)、B7-H4(B7-S1、B7x、VCTN1)、BTLA(CD272)、HVEM、TIM3(HAVcr2)、GAL9、LAG3(CD223)、VISTA、KIR、2B4(CD244;CD2ファミリーの分子に属し、全てのNK、γδ、およびメモリーCD8+(αβ)T細胞上で発現される)、CD160(BY55とも呼ばれる)、CGEN-15049、CHK1およびCHK2キナーゼ、OX40、A2aRならびに種々のB-7ファミリーリガンドが挙げられる。
【0072】
プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)は、T細胞およびプロB細胞上で発現され、その運命/分化において役割を果たす288アミノ酸の細胞表面タンパク質分子である。PD-1は、B7ファミリーのメンバーである2つのリガンド、PD-L1およびPD-L2を有する。PD-L1タンパク質は、LPSおよびGM-CSF処理に応答してマクロファージおよび樹状細胞(DC)において、ならびにTCRおよびB細胞受容体シグナル伝達の際にT細胞およびB細胞において上方制御される。PD-1はT細胞応答を負に調節する。
【0073】
PD-1は、免疫監視からの腫瘍特異的エスケープにおいて役割を果たす。慢性骨髄性白血病(CML)と急性骨髄性白血病(AML)の両方において、PD-1が腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)で高度に発現されることが実証されている。PD-1は、黒色腫浸潤性Tリンパ球(TIL)においても上方制御されている[Dotti(2009)Blood 114(8):1457~58]。腫瘍は、PD-1リガンドPDL-1およびPDL-2を発現することが分かった。例えば、PDL-1は膠芽腫、特に間葉サブタイプに見られる。(Nat Rev Neurol 2015:11:504~515)。腫瘍によるPDL-1およびPDL-2の発現は、CTLにおけるPD-1の上方制御と合わせて、T細胞機能性の喪失およびCTLが有効な抗腫瘍応答を媒介することができないことの寄与因子であり得る。研究者らは、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)に慢性的に感染したマウスでは、抗PD-1抗体の投与がPD-1-PDL相互作用を阻止し、いくらかのT細胞機能性(増殖およびサイトカイン分泌)を回復させ、ウイルス量の減少をもたらすことができることを示した(Barberら(2006)Nature 439(9):682~687)。
【0074】
腫瘍細胞自体はPD-L1を発現しており、この機構を介してT細胞応答を制限すると考えられている。PD-1の阻害は、B16黒色腫モデルにおいてエフェクターT細胞の拡大およびT制御性細胞集団の制限をもたらすことがさらに示された。PD-1、CTLA-4またはIDO(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)の遮断は、IL-2産生を回復させ、腫瘍微小環境中に存在するCD8+T細胞の増殖増加を可能にする。抗PDL1治療が、抗原特異的ワクチン産生CD8+T細胞の拡大を救済し、腫瘍を拒絶することを可能にすることが示された。これらのデータは、PD-1/PD-L1軸が活性化腫瘍特異的T細胞を調節することを示唆している。
【0075】
黒色腫、非小細胞肺がんおよび腎細胞癌の臨床試験では、いくらかの抗PD-1遮断患者での抗腫瘍反応が示された。進行性黒色腫、非小細胞肺がん、前立腺がん、腎細胞がん、膀胱がんおよび結腸直腸がんの症例におけるPD-1阻害の有意な利点も記載されている。マウスモデルにおける研究はこの証拠をグリオーマ治療に応用した。IDO、CTLA-4およびPD-L1阻害剤の併用治療を投与した場合の腫瘍浸潤Tregの減少および生存率の増加が記載されている。
【0076】
現在、臨床試験で試験されているいくつかのPD-1阻害剤がある。CT-011は、PD-1に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体である。自家幹細胞移植を受けたびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者における第II相臨床試験が最近完了した。予備的結果は、対照群の47%と比較して、追跡調査期間の最後に対象の70%が無増悪であり、対照群の62%と比較して、対象の82%が生存していることを示した。この試験は、CT-011がPD-1機能を遮断するだけでなく、ナチュラルキラー細胞の活性も増強し、それによって抗腫瘍免疫応答を強化することを決定した。
【0077】
BMS 936558は、PD-1剤を標的とする完全ヒトIgG4モノクローナル抗体である。第I相試験では、進行した治療抵抗性悪性腫瘍を有する対象に隔週でBMS-936558を投与すると、持続的な部分的または完全な退縮を示した。黒色腫(28%)および腎細胞癌(27%)の対象で最も有意な奏効率が観察されたが、非小細胞肺がん(NSCLC)の対象でも実質的な臨床活性が観察され、いくつかの奏効は1年超持続した。これはまた比較的高い耐容性を示した;グレード3以上の有害事象が対象の14%で発生した。
【0078】
BMS 936559は、PD-1リガンドPD-L1を標的とする完全ヒトIgG4モノクローナル抗体である。第I相の結果は、この薬物を隔週で投与すると、特に黒色腫患者で持続的な反応が得られることを示した。奏効率は、進行期NSCLC、黒色腫、RCCまたは卵巣がんの対象のがんの種類に応じて6%~17%に及び、ある対象は1年以上持続する奏効を経験した。
【0079】
MK 3475は、進行性、局所進行性または転移性の癌腫、黒色腫またはNSCLCの対象における薬物の投与、安全性および耐容性を評価する5部試験における第I相開発中のヒト化IgG4抗PD-1モノクローナル抗体である。
【0080】
MPDL 3280Aは、PD-L1を標的とし、進行性固形腫瘍を有する対象において、化学療法の有無にかかわらず、BRAF V600変異型転移性黒色腫の対象においてBRAF阻害剤ベムラフェニブおよび血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)を標的とするベバシズマブと組み合わせて第I相試験を受けているモノクローナル抗体である。
【0081】
AMP224は、第2のPD-1リガンド、PD-L2の細胞外ドメイン、およびIgG1の融合タンパク質であり、PD-L2/PD-1相互作用を遮断する能力を有する。AMP-224は現在、進行がんの対象における単独療法として第I相試験を受けている。
【0082】
Medi 4736は、進行悪性黒色腫、腎細胞癌、NSCLCおよび結腸直腸がんの対象における第I相臨床試験中の抗PD-L1抗体である。
【0083】
CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質)は、免疫系を下方制御するタンパク質受容体である。CTLA4はT細胞の表面上に見られ、抗原に対する細胞性免疫攻撃をもたらす。T細胞の攻撃は、T細胞上のCD28受容体を刺激することによってオンにすることができる。T細胞の攻撃はCTLA4受容体を刺激することによってオフにすることができる。T細胞の表面上のCTLA-4を標的とするモノクローナル抗体である、ファースト・イン・クラスの免疫療法であるイピリムマブ(YERVOY(登録商標))は、黒色腫の治療のためのものであった。
【0084】
好ましくは、本発明は、それを必要とする対象のがんを治療する方法であって、薬剤耐性免疫担当細胞および免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせた治療剤を対象に投与するステップを含む方法を提供する。好ましくは、チェックポイント阻害剤は生物学的治療剤または小分子である。好ましくは、チェックポイント阻害剤はモノクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、融合タンパク質またはこれらの組み合わせである。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、OX40、B-7ファミリーリガンドまたはこれらの組み合わせであり得るチェックポイントタンパク質を阻害する。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、OX40、A2aR、B-7ファミリーリガンドまたはこれらの組み合わせであり得るチェックポイントタンパク質のリガンドと相互作用する。
【0085】
好ましくは、治療剤は化学療法剤、免疫刺激剤、T細胞増殖因子、インターロイキン、抗体、ワクチンまたはこれらの任意の組み合わせである。好ましくは、インターロイキンはIL-7またはIL-15である。好ましくは、インターロイキンはグリコシル化IL-7である。
【0086】
好ましくは、薬物耐性免疫担当細胞、治療剤、およびチェックポイント阻害剤は、同時に、または任意の順序で順次、単独で、または1つ、引き続いて同時に他の2つ、または同時に2つ、引き続いて3つ目で投与される。好ましくは、薬物耐性免疫担当細胞は、治療剤および免疫チェックポイント阻害剤の前に投与される。好ましくは、チェックポイント阻害剤はPD-1阻害剤またはCTLA-4阻害剤である。
【0087】
好ましくは、本発明の組成物および方法で使用される細胞傷害性免疫細胞の集団は、γδT細胞、NK細胞またはこれらの任意の組み合わせを含む。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞の集団は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%のγδT細胞を含む。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞の集団は、約50%~約95%のγδT細胞を含む。好ましくは、本発明の組成物および方法で使用される細胞傷害性免疫細胞の集団は、γδT細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞の集団は、約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上のNK細胞を含む。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞の集団は、約5%~約25%のNK細胞を含む。
【0088】
好ましくは、本発明の組成物および方法で使用される細胞傷害性免疫細胞の単離された組成物は、γδT細胞、NK細胞またはこれらの任意の組み合わせを含み、場合によりそれだけに限らないが:単球、マクロファージおよび樹状細胞を含む他の免疫担当細胞をさらに含み、組成物中に存在する細胞傷害性免疫細胞の約5%超、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超またはそれ以上が化学療法剤に対する耐性を付与するポリペプチドを発現する。好ましくは、本発明により使用される細胞傷害性免疫細胞の単離された組成物は、γδT細胞、NK細胞またはこれらの任意の組み合わせを含み、(存在する場合)γδT細胞の少なくとも約50%超および(存在する場合)NK細胞の約50%超が化学療法剤に対する耐性を付与するポリペプチドを発現する。好ましくは、化学療法剤に対する耐性を付与するポリペプチドは、O6メチルグアニンDNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)、ジヒドロ葉酸レダクターゼの薬物耐性変異体(L22Y-DHFR)、チミジル酸シンターゼ、多剤耐性-1タンパク質(MDR1)である。
【0089】
好ましくは、本発明は、対象のがんを治療する方法であって、化学療法剤およびγδT細胞、NK細胞またはこれらの任意の組み合わせを含み、さらに場合により、それだけに限らないが、化学療法剤に対する耐性を付与するポリペプチドを発現するよう遺伝子操作された単球、マクロファージおよび樹状細胞を含む他の免疫担当細胞を含む免疫担当細胞の化学療法耐性組成物と組み合わせた免疫チェックポイント阻害剤を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法を提供する。エキソビボでの薬剤耐性γδT細胞、NK細胞またはこれらの任意の組み合わせを含む組成物の生成および拡大は、この設定において、化学療法およびチェックポイント阻害剤と同時に免疫担当細胞に基づく療法の投与を可能にし、腫瘍クリアランスを潜在的に改善しながら、抗腫瘍免疫が確立され維持され、長期の腫瘍クリアランスをおそらくもたらし得る。好ましくは、免疫担当細胞が、各腫瘍認識部分が腫瘍抗原を認識する、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ以上の異なる腫瘍認識部分を発現するよう遺伝子操作される。
【0090】
好ましくは、本発明はがん、特にがん性腫瘍を治療する方法を提供する。本発明の方法は、がん性細胞の増殖を死滅させるまたは減少させることができる化学療法剤の使用を、免疫療法および免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて、薬剤耐性を発達させるまたは化学療法剤から逃れるがん性細胞を有効に排除する。本発明の方法は、例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる、Lamb L.S.の米国特許第7078034号明細書に記載される、それだけに限らないが、治療される患者または別の供給源からのγδT細胞を含む細胞傷害性免疫細胞の単離を提供する。次いで、単離された細胞に、選択された化学療法剤に対する耐性を細胞に付与するポリペプチドをコードする異種ヌクレオチド配列を含む核酸ベクターをトランスフェクトすることができる。次いで、がん、特に腫瘍の治療を必要とする患者は、化学療法剤およびチェックポイント阻害剤の前、後またはこれらと共に、1回または複数回のトランスフェクトされたT細胞を受けることができる。薬剤それ自体は、標的がん細胞に対して毒性であることを意図しており、細胞の増殖および生存率を低下させるが、腫瘍の微小環境を誘導して局所的腫瘍由来免疫抑制を低下させ、細胞の腫瘍内への移動ならびにストレス関連タンパク質のがん細胞の細胞表面上の形成を改善することもできる。例えば、トランスフェクトされたγδT細胞は、このようなストレス関連リガンドを認識し、それゆえ標的化することができ、それによってがん細胞を特異的または優先的に標的化することができるという特徴を有する。
【0091】
好ましくは、γδT細胞、NK細胞またはこれらの組み合わせを含む遺伝子改変された細胞傷害性免疫細胞は、それだけに限らないが、腫瘍塊への直接注入、腫瘍塊に進入する血管への送達またはその両者の組合せなどによって直接標的化腫瘍に送達され得る。例えば、細胞は、腫瘍塊に挿入されたカニューレ挿入針またはカテーテルを通じた直接移植、腔内切除後、腹腔内または脳室内で、患者の脳内の膠芽腫塊に送達され得ると考えられる。
【0092】
好ましくは、対象のヒトまたは動物患者のがんを治療するために免疫療法と化学療法を組み合わせたいくつかのプロトコルでは、サイトカイン(IL-2、IL-12、GM-CSFなど)を患者に送達して細胞傷害性リンパ球の形成を促進することができる。他の方法では、抗CD137特異的抗体を使用することができる。CD137は、腫瘍壊死因子(TNF)/神経成長因子(NGF)ファミリーの受容体であり、活性化Tリンパ球およびBリンパ球ならびに単球によって発現され;そのリガンドは、免疫応答の調節において重要な役割を果たすことが分かっている。抗CD137モノクローナル抗体は、活性化T細胞および新たに単離されたマウス樹状細胞(DC)などのCD137発現免疫細胞に特異的に結合し、それによって腫瘍細胞に対する免疫応答、特に細胞傷害性T細胞応答を刺激することができる。
【0093】
好ましくは、本発明は、細胞傷害性免疫細胞の集団を得るステップであって、単離された細胞傷害性免疫細胞が治療剤に耐性になるよう遺伝子改変されているステップと;有効量の治療剤を、それを必要とする患者に投与するステップと;単離された遺伝子改変された細胞傷害性免疫細胞の集団を患者に投与するステップであって、細胞傷害性免疫細胞が腫瘍に送達されるステップと;有効量の免疫チェックポイント阻害剤を患者に投与して、それによって患者のがんを減少させるステップとを含む、患者のがんを治療する方法を提供する。
【0094】
好ましくは、細胞傷害性免疫細胞はγδT細胞である。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞はγδT細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞である。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞はγδT細胞、NK細胞であり、それだけに限らないが、単球、マクロファージおよび樹状細胞を含む他の免疫担当細胞をさらに含み得る。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞はがんを有する患者から単離することができる。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞はがんを有する患者以外の供給源から単離してもよい。
【0095】
好ましくは、細胞傷害性免疫細胞は、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)由来のγδT細胞である。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞は、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)由来のγδT細胞およびNK細胞である。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞は、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)由来であり、γδT細胞、NK細胞であり、それだけに限らないが、単球、マクロファージおよび樹状細胞を含む他の免疫担当細胞をさらに含み得る。好ましくは、多能性幹細胞はがんを有する患者から単離することができる。好ましくは、多能性幹細胞はがんを有する患者以外の供給源から単離してもよい。
【0096】
好ましくは、治療剤は、異種核酸を受け取ると、前記治療剤に対する耐性を発達させる細胞を特徴とし、異種核酸は細胞内で発現される。好ましくは、治療剤は、
アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド);代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート(MTX)、5-フルオロウラシルまたはこれらの誘導体);DNA脱メチル化剤(代謝拮抗物質としても知られる;例えば、アザシチジン);置換ヌクレオチド;置換ヌクレオシド;抗腫瘍抗生物質(例えば、マイトマイシン、アドリアマイシン);植物由来の抗腫瘍剤(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、TAXOL(登録商標)、パクリタキセル、アブラキサン);シスプラチン;カルボプラチン;エトポシドなど
からなる群から選択される細胞傷害性化学療法剤であり得る。このような薬剤にはさらに、それだけに限らないが、抗がん剤トリメトトレキサート(TMTX);テモゾロミド;ラルチトレキセド;S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR);6-ベンジルグアニジン(6-BG);ニトロソ尿素[例えば、ビス-クロロニトロソ尿素(BCNU;カルムスチン)、ロムスチン(CCNU)+/-プロカルバジンおよびビンクリスチン(PCVレジメン)、フォテムスチン];シタラビン;カンプトテシン;およびこれらのいずれかの治療的誘導体を含み得る。
【0097】
好ましくは、治療剤に耐性になるよう遺伝子改変された細胞傷害性免疫細胞の集団を得るステップは、例えば、それだけに限らないが、血液または腫瘍生検を含む組織試料を含む生物学的試料を対象から得ることによって、細胞傷害性免疫細胞の集団をヒト対象または動物対象などの対象から得ることを含む。試料を場合により細胞傷害性免疫細胞および他の免疫担当細胞について濃縮してもよい、および/または試料中に存在する細胞を場合により拡大させて試料中に存在する細胞の集団を増加させてもよい。細胞は、好ましくはプロモーターと作動可能に連結した異種核酸配列を含むベクターで安定にトランスフェクトまたは遺伝子編集されており、異種核酸配列は1種または複数の化学療法剤などの治療剤に対する耐性を細胞に付与するポリペプチドをコードする。好ましくは、安定にトランスフェクトされた細胞傷害性免疫細胞の集団は生存可能に維持され得る。
【0098】
好ましくは、治療剤はトリメトトレキサートまたはメトトレキサートであり得、異種核酸配列はジヒドロ葉酸レダクターゼまたはその誘導体をコードする。好ましくは、治療剤はテモゾロミドまたはその治療上活性な誘導体であり得、異種核酸配列はO6メチルグアニンDNAメチルトランスフェラーゼまたはその誘導体をコードし得る。好ましくは、化学療法剤はシスプラチン、ドキソルビシンもしくはパクリタキセル、またはこれらの治療上活性な誘導体であり得、異種核酸配列は多剤耐性-1タンパク質(MDR1)、またはその誘導体をコードし得る。
【0099】
好ましくは、単離された遺伝子改変された細胞傷害性免疫細胞、治療剤、および免疫チェックポイント阻害剤を患者に同時投与することができる。好ましくは、遺伝子改変された細胞傷害性免疫細胞、治療剤、および免疫チェックポイント阻害剤を患者に順次投与することができる。好ましくは、遺伝子改変された細胞傷害性免疫細胞、治療剤、および免疫チェックポイント阻害剤を患者に付随して投与することができる。好ましくは、遺伝子改変された細胞傷害性免疫細胞は、患者の腫瘍内に直接投与される、または腫瘍の近位にあり、腫瘍につながる血管に投与される。好ましくは、腫瘍は膠芽腫である。
【0100】
好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は生物学的治療剤または小分子であり得る。好ましくは、チェックポイント阻害剤はモノクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、融合タンパク質、抗原結合フラグメントまたはこれらの組み合わせである。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、OX40、B-7ファミリーリガンドまたはこれらの組み合わせであり得るチェックポイントタンパク質を阻害する。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、OX40、B-7ファミリーリガンドまたはこれらの組み合わせであり得るチェックポイントタンパク質のリガンドと相互作用する。例示的な免疫チェックポイント阻害剤には、トレメリムマブ(CTLA-4遮断抗体)、抗OX40、PD-L1モノクローナル抗体(抗B7-H1;MEDI4736)、MK-3475(PD-1遮断薬)、OPDIVO(登録商標)/ニボルマブ(抗PD1抗体)、CT-011(抗PD1抗体)、BY55モノクローナル抗体、AMP224(抗PDL1抗体)、BMS-936559(抗PDL1抗体)、MPLDL3280A(抗PDL1抗体)、MSB0010718C(抗PDL1抗体)およびYERVOY(登録商標)/イピリムマブ(抗CTLA-4チェックポイント阻害剤)が含まれる。チェックポイントタンパク質リガンドには、それだけに限らないが、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、CD28、CD86およびTIM-3が含まれる。
【0101】
好ましくは、本発明は、CTLA-4を阻害する免疫チェックポイント阻害剤薬物のクラスの使用を提供する。本発明の方法に使用するのに適した抗CTLA4アンタゴニストには、限定されないが、抗CTLA4抗体、ヒト抗CTLA4抗体、マウス抗CTLA4抗体、哺乳動物抗CTLA4抗体、ヒト化抗CTLA4抗体、モノクローナル抗CTLA4抗体、ポリクローナル抗CTLA4抗体、キメラ抗CTLA4抗体、MDX-010(イピリムマブ)、トレメリムマブ、抗CD28抗体、抗CTLA4アドネクチン、抗CTLA4ドメイン抗体、単鎖抗CTLA4フラグメント、重鎖抗CTLA4フラグメント、軽鎖抗CTLA4フラグメント、および同時刺激経路を刺激するCTLA4の阻害剤が含まれる。好ましくは、さらなる抗CTLA4アンタゴニストには、それだけに限らないが、以下が含まれる:CD28抗原がその同族リガンドに結合する能力を破壊することができ、CTLA4がその同族リガンドに結合する能力を阻害することができ、同時刺激経路を介してT細胞応答を増強することができ、B7がCD28および/またはCTLA4に結合する能力を破壊することができ、B7が同時刺激経路を活性化する能力を破壊することができ、CD80がCD28および/またはCTLA4を結合する能力を破壊することができ、CD80が同時刺激経路を活性化する能力を破壊することができ、CD86がCD28および/またはCTLA4に結合する能力を破壊することができ、CD86が同時刺激経路を活性化する能力を破壊することができ、一般に活性化から同時刺激経路を破壊することができる任意の阻害剤。これは必然的に、数ある抗CTLA4アンタゴニストの中でも、数ある同時刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4の小分子阻害剤;数ある同時刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4に対する抗体;数ある同時刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4に対するアンチセンス分子;数ある同時刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4に対するアドネクチン、数ある同時刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4のRNAi阻害剤(一本鎖と二本鎖の両方)を含む。
【0102】
好ましくは、免疫刺激剤、T細胞増殖因子およびインターロイキンは、チェックポイント阻害剤および薬物耐性免疫療法と組み合わせて使用され得る。免疫刺激剤は、その成分のいずれかの活性化を誘導するまたは活性を増加させることによって免疫系を刺激する物質(薬物および栄養素)である。免疫刺激剤は、それだけに限らないが、細菌ワクチン、コロニー刺激因子、インターフェロン、インターロイキン、他の免疫刺激剤、治療用ワクチン、ワクチン組み合わせおよびウイルスワクチンを含む。T細胞増殖因子はT細胞の増殖を刺激するタンパク質である。T細胞増殖因子の例としては、IL-2、IL-7、IL-15、IL-17、IL21およびIL-33が挙げられる。
【0103】
好ましくは、本発明は、少なくとも1種のチェックポイント阻害剤と、γδT細胞、NK細胞またはこれらの任意の組み合わせを含む細胞傷害性免疫細胞の単離された集団とを含む組成物であって、細胞傷害性免疫細胞の集団の約5%超、好ましくは約50%超は化学療法剤に対する耐性を付与するポリペプチドを発現する、組成物を提供する。好ましくは、組成物は少なくとも1種のチェックポイント阻害剤と、γδT細胞およびNK細胞を含む細胞傷害性免疫細胞の単離された集団とを含み、細胞傷害性免疫細胞の集団の約50%~約95%はγδT細胞であり、細胞傷害性免疫細胞の集団の約5%~約25%はNK細胞である。
【0104】
好ましくは、本明細書に開示される治療剤、免疫チェックポイント阻害剤、生物学的治療剤または医薬組成物を、例えば、経口または非経口、例えば静脈内、筋肉内、皮下、眼窩内、嚢内、腹腔内、直腸内、大槽内、腫瘍内、血管内、皮内を含む種々の経路によって、または例えば、それぞれ皮膚パッチもしくは経皮イオン導入法を使用した皮膚を通した受動的もしくは促進された吸収によって、個体に投与することができる。治療薬、チェックポイント阻害剤、生物学的治療剤または医薬組成物はまた、病的状態の部位に、例えば腫瘍に供給する血管内に静脈内または動脈内投与することができる。
【0105】
好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は、0.0001mg/kg未満、0.0001~0.001mg/kg、0.001~0.01mg/kg、0.01~0.05mg/kg、0.05~0.1mg/kg、0.1~0.2mg/kg、0.2~0.3mg/kg、0.3~0.5mg/kg、0.5~0.7mg/kg、0.7~1mg/kg、1~2mg/kg、2~3mg/kg、3~4mg/kg、4~5mg/kg、5~6mg/kg、6~7mg/kg、7~8mg/kg、8~9mg/kg、9~10mg/kg、少なくとも10mg/kg、またはこれらの任意の組み合わせ用量で投与される。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、少なくとも週に1回、少なくとも週に2回、少なくとも週に3回、少なくとも2週間に1回、または少なくとも1ヶ月もしくは数ヶ月に1回投与される。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、単回投与、2回投与、3回投与、4回投与、5回投与、または6回以上の投与として投与される。
【0106】
好ましくは、本発明は、がん細胞の生存を阻害する特徴を有する細胞傷害性治療剤と、治療剤に耐性になるよう遺伝子改変されている細胞傷害性免疫細胞の単離された集団と、免疫チェックポイント阻害剤とを含む患者のがんを治療するためのシステムを提供する。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞の集団は、γδT細胞、NK細胞またはこれらの任意の組み合わせを含む。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞の集団は、γδT細胞およびナチュラルキラー細胞を含み、場合により他の免疫担当細胞を含む。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞の集団は、プロモーターに作動可能に連結した異種核酸配列を含んでもよく、異種核酸配列は、細胞内で発現されると細胞に治療剤に対する耐性を付与するポリペプチドをコードする。好ましくは、治療剤は、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド);代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート(MTX)、5-フルオロウラシルまたはこれらの誘導体);DNA脱メチル化剤(代謝拮抗物質としても知られる;例えば、アザシチジン);置換ヌクレオチド;置換ヌクレオシド;抗腫瘍抗生物質(例えば、マイトマイシン、アドリアマイシン);植物由来の抗腫瘍剤(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、TAXOL(登録商標)、パクリタキセル、アブラキサン);シスプラチン;カルボプラチン;エトポシドなどからなる群から選択される細胞傷害性化学療法剤である。このような薬剤にはさらに、それだけに限らないが、抗がん剤トリメトトレキサート(TMTX);テモゾロミド;ラルチトレキセド;S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR);6-ベンジルグアニジン(6-BG);ニトロソ尿素[例えば、ビス-クロロニトロソ尿素(BCNU;カルムスチン)、ロムスチン(CCNU)+/-プロカルバジンおよびビンクリスチン(PCVレジメン)、フォテムスチン];シタラビン;カンプトテシン;およびこれらのいずれかの治療的誘導体を含み得る。好ましくは、治療剤はトリメトトレキサートまたはメトトレキサートであり、異種核酸配列はジヒドロ葉酸レダクターゼまたはその誘導体をコードする。好ましくは、治療剤はテモゾロミドまたはその治療剤誘導体であり、異種核酸配列はO6メチルグアニンDNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)またはその誘導体をコードする。好ましくは、治療剤はニトロソ尿素またはその治療剤誘導体であり、異種核酸配列はO6メチルグアニンDNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)またはその誘導体をコードする。
【0107】
好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は生物学的治療剤または小分子である。好ましくは、チェックポイント阻害剤はモノクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、融合タンパク質、抗原結合フラグメントまたはこれらの組み合わせである。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、OX40、B-7ファミリーリガンドまたはこれらの組み合わせであり得るチェックポイントタンパク質を阻害する。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、OX40、B-7ファミリーリガンドまたはこれらの組み合わせであり得るチェックポイントタンパク質のリガンドと相互作用する。例示的な免疫チェックポイント阻害剤には、トレメリムマブ(CTLA-4遮断抗体)、抗OX40、PD-L1モノクローナル抗体(抗B7-H1;MEDI4736)、MK-3475(PD-1遮断薬)、OPDIVO(登録商標)/ニボルマブ(抗PD1抗体)、CT-011(抗PD1抗体)、BY55モノクローナル抗体、AMP224(抗PDL1抗体)、BMS-936559(抗PDL1抗体)、MPLDL3280A(抗PDL1抗体)、MSB0010718C(抗PDL1抗体)およびYERVOY(登録商標)/イピリムマブ(抗CTLA-4チェックポイント阻害剤)が含まれる。チェックポイントタンパク質リガンドには、それだけに限らないが、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、CD28、CD86およびTIM-3が含まれる。
【0108】
好ましくは、本発明は、CTLA-4を阻害するチェックポイント阻害剤薬物のクラスの使用を網羅する。本発明の方法に使用するのに適した抗CTLA4アンタゴニストには、限定されないが、抗CTLA4抗体、ヒト抗CTLA4抗体、マウス抗CTLA4抗体、哺乳動物抗CTLA4抗体、ヒト化抗CTLA4抗体、モノクローナル抗CTLA4抗体、ポリクローナル抗CTLA4抗体、キメラ抗CTLA4抗体、MDX-010(イピリムマブ)、トレメリムマブ、抗CD28抗体、抗CTLA4アドネクチン、抗CTLA4ドメイン抗体、単鎖抗CTLA4フラグメント、重鎖抗CTLA4フラグメント、軽鎖抗CTLA4フラグメント、および同時刺激経路を刺激するCTLA4の阻害剤が含まれる。
【0109】
好ましくは、さらなる抗CTLA4アンタゴニストには、それだけに限らないが、以下が含まれる:CD28抗原がその同族リガンドに結合する能力を破壊することができ、CTLA4がその同族リガンドに結合する能力を阻害することができ、同時刺激経路を介してT細胞応答を増強することができ、B7がCD28および/またはCTLA4に結合する能力を破壊することができ、B7が同時刺激経路を活性化する能力を破壊することができ、CD80がCD28および/またはCTLA4を結合する能力を破壊することができ、CD80が同時刺激経路を活性化する能力を破壊することができ、CD86がCD28および/またはCTLA4に結合する能力を破壊することができ、CD86が同時刺激経路を活性化する能力を破壊することができ、一般に活性化から同時刺激経路を破壊することができる任意の阻害剤。これは必然的に、数ある抗CTLA4アンタゴニストの中でも、数ある同時刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4の小分子阻害剤;数ある同時刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4に対する抗体;数ある同時刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4に対するアンチセンス分子;数ある同時刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4に対するアドネクチン、数ある同時刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4のRNAi阻害剤(一本鎖と二本鎖の両方)を含む。
【0110】
好ましくは、免疫刺激剤、T細胞増殖因子およびインターロイキンが使用され得る。免疫刺激剤は、その成分のいずれかの活性化を誘導するまたは活性を増加させることによって免疫系を刺激する物質(薬物および栄養素)である。免疫刺激剤は、それだけに限らないが、細菌ワクチン、コロニー刺激因子、インターフェロン、インターロイキン、他の免疫刺激剤、治療用ワクチン、ワクチン組み合わせおよびウイルスワクチンを含む。T細胞増殖因子はT細胞の増殖を刺激するタンパク質である。T細胞増殖因子の例としては、IL-2、IL-7、IL-15、IL-17、IL21およびIL-33が挙げられる。
【0111】
好ましくは、本明細書に開示される治療剤、チェックポイント阻害剤、生物学的治療剤または医薬組成物を、例えば、経口または非経口、例えば静脈内、筋肉内、皮下、眼窩内、嚢内、腹腔内、直腸内、大槽内、腫瘍内、血管内、皮内を含む種々の経路によって、または例えば、それぞれ皮膚パッチもしくは経皮イオン導入法を使用した皮膚を通した受動的もしくは促進された吸収によって、個体に投与することができる。治療薬、チェックポイント阻害剤、生物学的治療剤または医薬組成物はまた、病的状態の部位に、例えば腫瘍に供給する血管内に静脈内または動脈内投与することができる。
【0112】
好ましくは、本発明の方法を実施する際に投与される薬剤の総量は、単一用量として、ボーラスとして、もしくは比較的短期間にわたる注入によって、対象に投与することができる、または複数回用量を長期間にわたって投与する分割治療プロトコルを使用して投与することができる。当業者であれば、対象の病的状態を治療するための組成物の量が、対象の年齢および一般的健康状態、ならびに投与経路および投与される治療の数を含む多くの因子に依存することを知っているだろう。これらの因子を考慮して、当業者は必要に応じて特定の用量を調整するであろう。
【0113】
好ましくは、チェックポイント阻害剤は、0.0001mg/kg未満、0.0001~0.001mg/kg、0.001~0.01mg/kg、0.01~0.05mg/kg、0.05~0.1mg/kg、0.1~0.2mg/kg、0.2~0.3mg/kg、0.3~0.5mg/kg、0.5~0.7mg/kg、0.7~1mg/kg、1~2mg/kg、2~3mg/kg、3~4mg/kg、4~5mg/kg、5~6mg/kg、6~7mg/kg、7~8mg/kg、8~9mg/kg、9~10mg/kg、少なくとも10mg/kg、またはこれらの任意の組み合わせ用量で投与される。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、少なくとも週に1回、少なくとも週に2回、少なくとも週に3回、少なくとも2週間に1回、または少なくとも1ヶ月もしくは数ヶ月に1回投与される。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、単回投与、2回投与、3回投与、4回投与、5回投与、または6回以上の投与として投与される。
【0114】
好ましくは、本発明は、がん細胞の生存を阻害し、がん細胞においてストレスタンパク質を誘導する特徴を有する治療剤、細胞傷害性免疫細胞の単離された集団(前記細胞傷害性免疫細胞はγδT細胞、NK細胞またはこれらの任意の組み合わせを含み、さらに場合により他の免疫担当細胞を含み、細胞傷害性免疫細胞の集団は治療剤に耐性になるよう遺伝子改変されている)、およびチェックポイント阻害剤を含む患者の膠芽腫を治療するシステムを提供する。好ましくは、細胞傷害性免疫細胞の集団は、プロモーターに作動可能に連結した異種核酸配列を含み、異種核酸配列は、細胞内で発現されると細胞に治療剤に対する耐性を付与するポリペプチドをコードする。
【0115】
好ましくは、治療剤は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗腫瘍抗生物質、および植物由来の抗腫瘍剤からなる群から選択される細胞傷害性化学療法剤である。
【0116】
好ましくは、治療剤は、トリメトトレキサート(TMTX)、メトトレキサート(MTX)、テモゾロミド、ラルトリトレキセド(reltritrexed)、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR)、カンプトテシン、6-ベンジルグアニジン、シタラビン、およびこれらのいずれかの治療的誘導体からなる群から選択される。
【0117】
好ましくは、治療剤はトリメトトレキサートまたはメトトレキサートであり、異種核酸配列はジヒドロ葉酸レダクターゼまたはその誘導体をコードする。
【0118】
好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は生物学的治療剤または小分子であり得る。好ましくは、チェックポイント阻害剤はモノクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、融合タンパク質、抗原結合フラグメントまたはこれらの組み合わせである。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、OX40、B-7ファミリーリガンドまたはこれらの組み合わせであり得るチェックポイントタンパク質を阻害する。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、OX40、B-7ファミリーリガンドまたはこれらの組み合わせであり得るチェックポイントタンパク質のリガンドと相互作用する。例示的な免疫チェックポイント阻害剤には、トレメリムマブ(CTLA-4遮断抗体)、抗OX40、PD-L1モノクローナル抗体(抗B7-H1;MEDI4736)、MK-3475(PD-1遮断薬)、OPDIVO(登録商標)/ニボルマブ(抗PD1抗体)、CT-011(抗PD1抗体)、BY55モノクローナル抗体、AMP224(抗PDL1抗体)、BMS-936559(抗PDL1抗体)、MPLDL3280A(抗PDL1抗体)、MSB0010718C(抗PDL1抗体)およびYERVOY(登録商標)/イピリムマブ(抗CTLA-4チェックポイント阻害剤)が含まれる。チェックポイントタンパク質リガンドには、それだけに限らないが、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、CD28、CD86およびTIM-3が含まれる。
【0119】
好ましくは、本発明は、CTLA-4を阻害する免疫チェックポイント阻害剤薬物の特定のクラスの使用を網羅する。本発明の方法に使用するのに適した抗CTLA4アンタゴニストには、限定されないが、抗CTLA4抗体、ヒト抗CTLA4抗体、マウス抗CTLA4抗体、哺乳動物抗CTLA4抗体、ヒト化抗CTLA4抗体、モノクローナル抗CTLA4抗体、ポリクローナル抗CTLA4抗体、キメラ抗CTLA4抗体、MDX-010(イピリムマブ)、トレメリムマブ、抗CD28抗体、抗CTLA4アドネクチン、抗CTLA4ドメイン抗体、単鎖抗CTLA4フラグメント、重鎖抗CTLA4フラグメント、軽鎖抗CTLA4フラグメント、および同時刺激経路を刺激するCTLA4の阻害剤が含まれる。
【0120】
好ましくは、さらなる抗CTLA4アンタゴニストには、それだけに限らないが、以下が含まれる:CD28抗原がその同族リガンドに結合する能力を破壊することができ、CTLA4がその同族リガンドに結合する能力を阻害することができ、同時刺激経路を介してT細胞応答を増強することができ、B7がCD28および/またはCTLA4に結合する能力を破壊することができ、B7が同時刺激経路を活性化する能力を破壊することができ、CD80がCD28および/またはCTLA4を結合する能力を破壊することができ、CD80が同時刺激経路を活性化する能力を破壊することができ、CD86がCD28および/またはCTLA4に結合する能力を破壊することができ、CD86が同時刺激経路を活性化する能力を破壊することができ、一般に活性化から同時刺激経路を破壊することができる任意の阻害剤。これは必然的に、数ある抗CTLA4アンタゴニストの中でも、数ある同時刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4の小分子阻害剤;数ある同時刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4に対する抗体;数ある同時刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4に対するアンチセンス分子;数ある同時刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4に対するアドネクチン、数ある同時刺激経路のメンバーの中でも、CD28、CD80、CD86、CTLA4のRNAi阻害剤(一本鎖と二本鎖の両方)を含む。
【0121】
好ましくは、免疫刺激剤、T細胞増殖因子およびインターロイキンが使用され得る。免疫刺激剤は、その成分のいずれかの活性化を誘導するまたは活性を増加させることによって免疫系を刺激する物質(薬物および栄養素)である。免疫刺激剤は、それだけに限らないが、細菌ワクチン、コロニー刺激因子、インターフェロン、インターロイキン、他の免疫刺激剤、治療用ワクチン、ワクチン組み合わせおよびウイルスワクチンを含む。T細胞増殖因子はT細胞の増殖を刺激するタンパク質である。T細胞増殖因子の例としては、IL-2、IL-7、IL-15、IL-17、IL21およびIL-33が挙げられる。
【0122】
好ましくは、本明細書に開示される治療剤、免疫チェックポイント阻害剤、生物学的治療剤または医薬組成物を、例えば、経口または非経口、例えば静脈内、筋肉内、皮下、眼窩内、嚢内、腹腔内、直腸内、大槽内、腫瘍内、血管内、皮内を含む種々の経路によって、または例えば、それぞれ皮膚パッチもしくは経皮イオン導入法を使用した皮膚を通した受動的もしくは促進された吸収によって、個体に投与することができる。治療薬、チェックポイント阻害剤、生物学的治療剤または医薬組成物はまた、病的状態の部位に、例えば腫瘍に供給する血管内に静脈内または動脈内投与することができる。
【0123】
好ましくは、本発明の方法を実施する際に投与される薬剤の総量は、単一用量として、ボーラスとして、もしくは比較的短期間にわたる注入によって、対象に投与することができる、または複数回用量を長期間にわたって投与する分割治療プロトコルを使用して投与することができる。当業者であれば、対象の病的状態を治療するための組成物の量が、対象の年齢および一般的健康状態、ならびに投与経路および投与される治療の数を含む多くの因子に依存することを知っているだろう。これらの因子を考慮して、当業者は必要に応じて特定の用量を調整するであろう。
【0124】
好ましくは、チェックポイント阻害剤は、0.0001mg/kg未満、0.0001~0.001mg/kg、0.001~0.01mg/kg、0.01~0.05mg/kg、0.05~0.1mg/kg、0.1~0.2mg/kg、0.2~0.3mg/kg、0.3~0.5mg/kg、0.5~0.7mg/kg、0.7~1mg/kg、1~2mg/kg、2~3mg/kg、3~4mg/kg、4~5mg/kg、5~6mg/kg、6~7mg/kg、7~8mg/kg、8~9mg/kg、9~10mg/kg、少なくとも10mg/kg、またはこれらの任意の組み合わせ用量で投与される。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、少なくとも週に1回、少なくとも週に2回、少なくとも週に3回、少なくとも2週間に1回、または少なくとも1ヶ月もしくは数ヶ月に1回投与される。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、単回投与、2回投与、3回投与、4回投与、5回投与、または6回以上の投与として投与される。
【0125】
本明細書では、比率、濃度、量、および他の数値データを範囲の形式で表すことがあることに留意すべきである。このような範囲の形式は便宜上および簡潔さのために使用され、したがって範囲の限度として明示的に列挙された数値だけでなく、あたかも各数値および部分範囲が明示的に列挙されているかのように、その範囲内に包含される全ての個々の数値または部分範囲も含む柔軟な様式で解釈されるべきであることが理解されるべきである。例示のために、「約0.1%~約5%」の濃度範囲は、約0.1重量%~約5重量%の明示的に列挙される濃度を含むだけでなく、示される範囲内の個々の濃度(例えば、1%、2%、3%および4%)および部分範囲(例えば、0.5%、1.1%、2.2%、3.3%および4.4%)も含むと解釈されるべきである。「約」という用語は、修飾されている1つまたは複数の数値の±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、±6%、±7%、±8%、±9%もしくは±10%またはそれ以上を含むことができる。さらに、「約「x」~「y」」という句は、「約「x」~約「y」」を含む。
【0126】
本発明の精神および原理から実質的に逸脱することなく、上記の発明に対して多くの変形および修正を加えることができる。このような修正および変形は全て、本発明の範囲内の本明細書に含まれ、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。
【0127】
例
以下の例は実例として提供されるものであり、決して特許請求される本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0128】
例1-がん治療パラダイム
化学療法剤、薬剤耐性γδ-T細胞および/または薬剤耐性ナチュラルキラー細胞、および1種または複数の免疫チェックポイント阻害剤を含む併用療法を使用してがん患者を治療する。化学療法剤は、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド)、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート(MTX)、5-フルオロウラシルまたはこれらの誘導体)、抗腫瘍抗生物質(例えば、マイトマイシン、アドリアマイシン)、植物由来の抗腫瘍剤(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、TAXOL(登録商標)、パクリタキセル、アブラキサン)、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシドなどから選択される。このような薬剤にはさらに、それだけに限らないが、抗がん剤トリメトトレキサート(TMTX)、テモゾロミド、ラルチトレキセド、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR)、6-ベンジルグアニジン(6-BG)、ビス-クロロニトロソ尿素(BCNU)、シタラビンおよびカンプトテシン、またはこれらのいずれかの治療的誘導体を含み得る。薬剤耐性γδ-T細胞およびナチュラルキラー細胞は化学療法剤に対して耐性である。1種または複数の免疫チェックポイント阻害剤は単独でまたは他の免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用され、免疫チェックポイントタンパク質CTLA-4、PDL1(B7-H1、CD274)、PDL2(B7-DC、CD273)、PD1、B7-H3(CD276)、B7-H4(B7-S1、B7x、VCTN1)、BTLA(CD272)、HVEM、TIM3(HAVcr2)、GAL9、LAG3(CD223)、VISTA、KIR、2B4(CD244;CD2ファミリーの分子に属し、全てのNK、γδ、およびメモリーCD8+(αβ)T細胞上で発現される)、CD160(BY55とも呼ばれる)、CGEN-15049、CHK1およびCHK2キナーゼ、OX40、A2aRならびに種々のB-7ファミリーリガンドの阻害剤から選択される。
【0129】
化学療法と組み合わせた免疫療法活性の評価
応答評価基準には、固形腫瘍における応答評価基準(WHO;World Health Organization Offset Publication 第48号、1979)に基づく評価;RECIST(固形腫瘍における応答評価基準;J Natl Cancer Inst 2000;92:205~16;Eisenhauer EAら、Eur J Cancer 2009;45:228~47);免疫関連応答基準(Jedd WEら、Clin Cancer Res 2009;15(23)、7412~7420);およびiRANO(神経腫瘍学における免疫療法応答評価;Okada Hら、Lancet Oncol 2015年11月;16(15):e534~42)が含まれる。
【0130】
結果
薬剤耐性γδ-T細胞(および/または薬剤耐性ナチュラルキラー細胞)および免疫チェックポイントタンパク質の1種または複数の阻害剤をさらに含む併用療法としての化学療法は、化学療法単独、または薬剤耐性γδ-T細胞(および/または薬剤耐性ナチュラルキラー細胞)と組み合わせた化学療法と比較して、増強したまたは長期の抗腫瘍反応;医学的に有益な反応;相加的または相乗的な抗腫瘍活性;新しい病変を伴わない、ベースライン病変の縮小;腫瘍の退縮;総腫瘍量が着実に減少する可能性がある、永続的に安定な疾患;総腫瘍量の増加後の反応;および新しい病変の存在下での反応をもたらす。他の臨床所見には、腫瘍サイズの増加によって測定される腫瘍浸潤リンパ球の増加;および長期生存促進が含まれ得る。
【0131】
例えば、テモゾロミド(TMZ)処置腫瘍は、腫瘍細胞の表面上に増加した数のMICA、MICBおよびULBP1~6などのストレスリガンドを発現する。腫瘍細胞の死滅は、NKG2Dなどの受容体が腫瘍特異的ストレスリガンドを認識する、薬剤耐性γδ-T細胞および/または薬剤耐性ナチュラルキラー細胞によって促進される。しかしながら、腫瘍細胞はMICAおよびMICBを酵素的に切断し、可溶性MICAおよびMICBを放出することができる。血漿中のエフェクター細胞受容体が結合すると、これは受容体発現の下方制御をもたらし、免疫エスケープをもたらす可能性がある。TMZなどの化学療法は、血漿中の可溶性リガンドの濃度を有意に増加させることなく、腫瘍組織上のストレスリガンドの細胞表面発現を増加させることが分かっている。CTLA-4の抗体阻害剤に対する応答者は、MICAなどのNKG2Dリガンドに対して体液性応答を生じさせる能力を実証した。これらの応答は可溶性MICAの減少をもたらし、腫瘍表面上で増幅されたストレスリガンド発現が薬剤耐性γδ-T細胞および/または薬剤耐性ナチュラルキラー細胞による腫瘍細胞殺傷を増強することを可能にし得る。
【0132】
例2-グリオーマおよびγδT細胞におけるチェックポイント分子の発現および機能の分析
GMP製造されたγδT細胞および膠芽腫腫瘍細胞におけるチェックポイント分子の発現を評価し、インビトロで濃縮されたγδT細胞の機能を評価した。
【0133】
方法
γδT細胞のエキソビボ拡大
健康なドナーからのヒトアフェレーシス産物コレクションを、Hemacare(Van Nuys CA)から購入した。産物をUAB Cell Therapy LaboratoryのGMP施設に移した。静置培養の場合:全ての操作を、クラス10K/ISO 7分類気流で囲まれたクラス100層流フードで行った。産物をHBSS(ハンクス平衡塩類溶液)でv/v希釈し、単核細胞をFicoll(Sigma-Aldrich;St.Louis、MO)で密度勾配分離により単離した。間期を収穫し、HBSS中で2回洗浄した。細胞ペレットを、2mMゾレドロン酸(Novartis;Basel HV)および100u/mL IL2(Miltenyi Biotec)を補足したCTS(商標)OpTmizer(商標)T Cell Expansion無血清培地(ThermoFisher Scientific;Waltham、MA)に再懸濁した。細胞を標準的なT150またはT75フラスコ中で培養した。閉鎖系培養の場合:培地、ストックおよび緩衝液の調製を含む全ての操作を、GMPグレードの試薬を使用してバイオセーフティキャビネット内のISO 7クリーンルームで行った。産物の自動化Ficoll分離および培養を、カスタマイズされた細胞処理プログラムおよびTS520チュービングセットを使用して、CLINIMACS PRODIGY(登録商標)(Miltenyi Biotec Ltd;Bergisch Gladbach、ドイツ)バイオリアクターで行った。次いで、細胞を、OpTmizer無血清培養(ThermoFisher Scientific;Waltham、MA)において、ゾレドロネート(Zometa;Novartis、Basel)とインターロイキン-2(Miltenyi Biotec Ltd;Bergisch Gladbach、ドイツ)の組み合わせ(ZOL/IL-2)を使用して、CLINIMACS PRODIGY(登録商標)のCentriCult-Unitで拡大した。培養物を1~2×106細胞/mlの密度に保ち、13日目の細胞収穫まで1日おきにIL-2 100u/mlを補足した。定期的にフラスコ内の小規模培養と比較して、プロセスを連続的に監視して増殖の動態および表現型を決定した。13日の培養後、拡大したγδT細胞を表現型決定し、標準的白血病細胞株およびグリオーマ腫瘍細胞に対して細胞傷害性を決定した。
【0134】
フローサイトメトリー分析
マルチパラメトリックフローサイトメトリー分析を使用して、ドナーPBMCおよび培養産物における表現型および機能的プロファイルを決定した。DuraClone T細胞サブセット(Beckman Coulter)と抗PD-1、抗CTLA-4および抗PD-L1パネルを使用して、フローサイトメトリーを用いてチェックポイント分子の発現およびγδT細胞濃縮を監視した。産物の試料を培養1日目および13日目に分析した。フローサイトメトリーを用いて、新たに解離したPDX由来膠芽腫腫腫瘍細胞をPD-L1発現について分析した。PD-L1抗体およびそれぞれのアイソタイプ(IgG1)で染色する前に、PDX由来膠芽腫細胞の単細胞懸濁液を15分間FcR Block(Biolegend)でブロックした。染色細胞をBD fortessa X-20フローサイトメーターで取得した。
【0135】
フローサイトメトリーに基づく細胞傷害性評価
K562細胞に対するインビトロ細胞傷害性アッセイを用いて、細胞産物の効力を決定した。拡大したγδT細胞を、フローサイトメトリーに基づく細胞傷害性アッセイを用いて、ヒト白血病細胞株(K562)および腫瘍細胞(JX22T、JX12TおよびJX59T)に対する細胞傷害性について13日目に評価した。Basic Cytotoxicity Assay Kit(https://immunochemistry.com)には、CFSEおよび7-AADの2種類の蛍光試薬が含まれている。緑色蛍光膜染色剤であるCFSEを使用して標的細胞(K562)を標識した。未染色のエフェクター細胞を増加するエフェクター対標的比で添加し、標的細胞と共に4時間インキュベートした後、7-AAD、赤色蛍光生/死染色剤を添加し、引き続いて取得し、フローサイトメーターを用いて分析する。細胞傷害性を、赤色チャネルで検出された緑色標的細胞の割合として計算する。細胞傷害性%の式=死細胞数/生細胞数+死細胞数×100。
【0136】
結果および考察
2人の健康なドナー(ドナー1:043692;ドナー2:043988)から新たに単離したPBMCをインビトロでのγδT細胞の拡大に使用した。フローサイトメトリーによってチェックポイント発現を調べた際、本発明者らは拡大したγδT細胞におけるPD-1およびCTLA-4およびPD-L1の上方制御に注目した。13日目に、PD-1は20%を超増加し、CTLA-4発現は3~6%に及んだ。興味深いことに、両方のドナーでPD-L1も上方制御された(9%超)[
図1~
図4]。形質導入されていないγδT細胞と比較して、MGMTで形質導入されたγδT細胞におけるチェックポイント分子の発現レベルに有意な変化は見られなかった。刺激された培養物と比較して、休止中(IL2およびZOLなし)のγδT細胞でPD-1およびCTLA-4-T細胞の中程度の下方制御も観察された[
図5]。
【0137】
PDX由来グリオーマ細胞上のPD-L1発現もフローサイトメトリーによって分析した。アイソタイプ対照と比較して、PD-L1受容体発現は低いまたは検出不能であった。PD-L1発現の割合は、JX12T(0%)、JX22T(1.8%)およびJX59T(10.4%)と異なっていた[
図6]。
【0138】
次に、免疫抑制性受容体の遮断が、γδT細胞のがん細胞に対する細胞傷害性を増加させる能力に何らかの効果を及ぼすかどうかを調べた[
図7]。グリオーマ腫瘍細胞(JX22T、JX12T、JX59T)およびK562(慢性骨髄性白血病から確立された細胞株)を、20μg/mlの濃度で1種または複数のチェックポイント抗体を含むアッセイ混合物中、20:1の比で製造したγδT細胞に暴露した。高レベルの細胞溶解活性が、K562[PD-L1(52%)、CTLA-4(5%)、CTLA-4+PD-1(7%)、PD-1(7)]について観察された。腫瘍細胞溶解のささやかな増加が、PD-1(3%)、CTLA-4(2)PD-1+CTLA-4(5)コンボおよびPD-L1(8)遮断についてJX12T腫瘍細胞について観察された。しかしながら、チェックポイント遮断は、JX22TおよびJX59Tに対するMGMT改変γδT細胞の細胞傷害性を増加させなかった。
【0139】
膠芽腫腫瘍細胞は有意なレベルのPD-L1を発現しないという所見は、Gargらによって既に公開された報告と一致している[Preclinical efficacy of immune-checkpoint monotherapy does not recapitulate corresponding biomarkers-based clinical predictions in glioblastoma.OncoImmunology、2016]。Joseph等によって導かれた研究により、膠芽腫腫瘍の腫瘍浸潤性骨髄細胞における高レベルのPD-L1発現が見い出された[Immunosuppressive tumor-infiltrating myeloid cells mediate adaptive immune resistance via a PD-1/PD-L1 mechanism in glioblastoma、Neuro-Oncology 9(6)、796~806、2017]。膠芽腫腫瘍微小環境の骨髄/間質区画は高レベルのPD-L1を発現しており、GMP製造T細胞/γδT細胞はPD-1を上方制御するという本発明者らの所見のために、本発明者らは、膠芽腫を有効に治療し、高い奏効率を達成するための、PD-1、PD-L1遮断抗体およびテモゾロミドを使用した全身治療ならびにMGMT発現γδT細胞の局所注入を含む包括的な治療計画を提案する。
【0140】
本明細書で参照される特許および科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。全ての米国特許および本明細書で引用される公開または非公開の米国特許出願は参考により組み込まれる。本明細書で引用される全ての公開外国特許および特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で引用される全ての他の公開された参考文献、文書、原稿および科学文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0141】
本発明をその好ましい実施形態を参照して具体的に示し、説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更がなされ得ることが当業者によって理解されるだろう。本明細書に記載される実施形態のいずれも相互に排他的ではなく、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく種々の方法で組み合わせることができることも理解されよう。