(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】生体電極
(51)【国際特許分類】
A61B 5/256 20210101AFI20241224BHJP
A61B 5/291 20210101ALI20241224BHJP
【FI】
A61B5/256 100
A61B5/291
(21)【出願番号】P 2023500681
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2022003137
(87)【国際公開番号】W WO2022176559
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2021024067
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 真之
(72)【発明者】
【氏名】二嶋 諒
(72)【発明者】
【氏名】林 隆浩
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-512211(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230445(WO,A1)
【文献】特開2003-260034(JP,A)
【文献】特開2017-074411(JP,A)
【文献】特開2017-074370(JP,A)
【文献】特許第6888747(JP,B1)
【文献】国際公開第2020/080395(WO,A1)
【文献】NOKのオイルシール「Le- μ' s」(レミューズ)に驚く。しかもオイルシールだけじゃない! フレ板、脳波用,Motor-Fan[モーターファン],2019年11月15日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/ 25
A61B5/369
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の身体に接触する電極部材を備え、
前記電極部材は、板状の電極部本体と、前記電極部本体の電極突起部形成面から突出するように設けられた複数の電極突起部と、を有し、
複数の前記電極突起部は、前記電極部本体の前記電極突起部形成面の中央部を避けるように、当該電極突起部形成面の外周部に配置され、
前記電極突起部形成面に対して直交する方向における、それぞれの前記電極突起部の基端部から先端部までの突起高さが、6~15mmであり、
複数の前記電極突起部のそれぞれは、前記電極突起部形成面の前記外周部上の一つの仮想円又は複数の仮想同心円の円周上に位置するように配置され、
且つ、複数の前記電極突起部は、前記電極突起部形成面の前記外周部に等間隔に配置されており、
複数の前記電極突起部のそれぞれは、頂点が丸められた斜円錐状の形状を有
するとともに、基端部から先端部に向かって横断面積が徐々に小さくなるように形成されており、且つ、複数の前記電極突起部のそれぞれは、前記円周上に位置するように配置され複数の前記電極突起部の配置中心から見て、前記先端部の中心が前記基端部の横断面の中心よりも径方向外側に位置するように形成されている、生体電極。
【請求項2】
被験者の脳波測定に用いられる、請求項
1に記載の生体電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体電極に関し、被験者の頭皮との良好な接触を実現することが可能な生体電極に関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設等において被験者の健康状態を診断するために、被験者の身体に生体電極を配し、各種の電気信号を検出することが行われている。例えば、被験者の頭皮に電極を配することによって脳波の計測が行われる。
【0003】
従来、脳波測定用電極として、例えば、導電性シリコーンゴム等からなる電極部を備えた生体電極が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような生体電極の電極部としては、例えば、被験者と接触する面側に先端を鋭くした複数の突起が設けられ、このような複数の突起によってブラシ状に構成されたものを挙げることができる。また、脳波測定用の生体電極は、例えば、電極部を配設するための台座を更に備え、その台座に、相手部品との組み付け用端子や端子支持用の絶縁ゴム等が設けられている。
【0004】
従来、脳波測定用の生体電極において、被験者の頭皮との接触面積を向上させるために、電極部の先端の突起の本数は、より多く設定されている。以下、電極部に設けられた突起の本数を、電極部の「突起本数」ということがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、脳波測定用の生体電極における電極部の突起本数を多くすると、1つの電極部に対して突起が密集して配置されることとなるため、毛髪の多い被験者の脳波を計測する場合に、頭皮と電極部との間に毛髪を収納する空間が少なくなってしまう。このため、このような生体電極は、電極部が頭皮から浮き易くなってしまい、逆に、頭皮に接触し難くなってしまうという問題があった。
【0007】
また、毛髪の多い被験者の脳波を検出する場合、毛髪による生体電極の浮き上がりを防止して各電極部と被験者の頭皮とをしっかりと接触させるため、生体電極に強い押し付け力を加える必要が生じる。ただし、上述したような生体電極に強い押し付け力を加えた状態の使用が長時間続くと、被験者の頭皮に痛みを伴うという問題が発生してしまうことがある。
【0008】
上記の課題に鑑み、本発明によれば、被験者の頭皮との良好な接触を実現することが可能な生体電極が提供される。特に、脳波計測に適し、毛髪の多い被験者であっても頭皮との良好な接触を実現することが可能な生体電極が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下の生体電極を提供する。
【0010】
[1]被験者の身体に接触する電極部材を備え、
前記電極部材は、板状の電極部本体と、前記電極部本体の電極突起部形成面から突出するように設けられた複数の電極突起部と、を有し、
複数の前記電極突起部は、前記電極部本体の前記電極突起部形成面の中央部を避けるように、当該電極突起部形成面の外周部に配置され、
前記電極突起部形成面に対して直交する方向における、それぞれの前記電極突起部の基端部から先端部までの突起高さが、6~15mmであり、
複数の前記電極突起部のそれぞれは、前記電極突起部形成面の前記外周部上の一つの仮想円又は複数の仮想同心円の円周上に位置するように配置され、且つ、複数の前記電極突起部は、前記電極突起部形成面の前記外周部に等間隔に配置されており、
複数の前記電極突起部のそれぞれは、頂点が丸められた斜円錐状の形状を有するとともに、基端部から先端部に向かって横断面積が徐々に小さくなるように形成されており、且つ、複数の前記電極突起部のそれぞれは、前記円周上に位置するように配置され複数の前記電極突起部の配置中心から見て、前記先端部の中心が前記基端部の横断面の中心よりも径方向外側に位置するように形成されている、生体電極。
【0014】
[2]被験者の脳波測定に用いられる、前記[1]に記載の生体電極。
【発明の効果】
【0015】
本発明の生体電極は、被験者の頭皮との良好な接触を実現することができるという効果を奏する。また、本発明の生体電極は、電極の過剰な押し付けが不要となり、測定時の頭皮の痛みを軽減することができるという効果を奏する。特に、毛髪の多い被験者、毛髪の長い被験者、毛髪の体積が大きい(別言すれば、毛髪が太い)被験者等であっても、安定した頭皮との接触を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一の実施形態の生体電極を模式的に示す正面図である。
【
図4】生体電極を脳波計測用に使用した一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0018】
図1は、本発明の一の実施形態の生体電極を模式的に示す正面図である。
図2は、
図1に示す生体電極の底面図である。
図3は、
図2におけるA-A断面図である。
図4は、生体電極を脳波計測用に使用した一例を示す説明図である。
【0019】
図1~
図3に示すように、生体電極1は、板状の電極部本体21と、この電極部本体21の電極突起部形成面21bから突出するように設けられた複数の電極突起部22と、を有する電極部材20を備えたものである。電極部材20は、例えば、複数の電極突起部22の先端側部分を被験者の身体(皮膚)に接触させることによってコネクタを介して当該被験者の生体信号を検出する(取り出す)ことを可能にする。生体電極1は、例えば、脳波測定用の生体電極として用いられる。この場合、生体電極1は、電極部材20における複数の電極突起部22の先端側部分が被験者の頭皮に接触するように被験者の頭部に取り付けられる。例えば、
図4に示すように、被験者60の頭部の所望箇所に対して生体電極1を複数個配することにより、その被験者60の脳波等の各種の電気信号を検出することができる。
【0020】
生体電極1は、電極部材20の複数の電極突起部22を被験者の身体と接触させて、被験者の身体からの電気信号の感知、被験者への電気刺激の伝達、又は上記した感知と伝達の双方を行うために好適に用いることができる。具体的には、例えば、医療用計測器、ウェアラブル計測器、健康モニタリング機器等の生体電極1として用いることができる。特に、生体電極1は、電気信号として脳波を計測する際に好適に用いることができる。
【0021】
本実施形態の生体電極1は、電極部材20を支持するための支持部材10を更に備えている。支持部材10は、電気絶縁性の材料から構成されている。例えば、支持部材10は、シリコーンゴム等により形成することができる。本実施形態の生体電極1においては、支持部材10は、円板状に形成されている。支持部材10は、電極部材20を支持する支持面10aと、支持面10aとは反対側の背面10bと、を有する。また、支持部材10の中心部には、支持部材10を厚さ方向に貫通する(すなわち、支持面10aから背面10bまでを貫通する)貫通孔10cが形成されている(例えば、
図3参照)。
【0022】
なお、支持部材10は、支持面10a、背面10b及び貫通孔10cに相当する構成を有していればよく、必ずしも円板状に形成される必要はない。
【0023】
生体電極1において、電極部材20は、例えば、導電性ゴム等により構成されており、上述のように、支持部材10に支持される電極部本体21と、電極部本体21から支持部材10とは反対側に突出する複数の電極突起部22と、を有する。導電性ゴムとしては、例えば、シリコーンゴムと金属粒子とを含むいわゆる導電性シリコーンゴムを挙げることができる。シリコーンゴムとしては、例えば、室温硬化型の液状シリコーンゴムを挙げることができる。また、金属粒子としては、例えば、銀粒子を挙げることができる。室温硬化型の液状シリコーンゴムとは、硬化前には液状又はペースト状であり、20℃~100℃で硬化反応が進行してゴム弾性体となるシリコーンゴムのことである。銀粒子は、複数の銀粒子(一次粒子)が集まって凝集した凝集粒子(凝集体)やフレーク状の銀粒子を含みうる。
【0024】
電極部材20を形成する導電性ゴムは、銀粒子に代えて、導電性を有する他の金属粒子や炭素系材料粒子(カーボンブラックやカーボンナノチューブ等)などを含むことができ、また、補強材、充填剤及び種々の添加剤などを適宜含むことができる。
【0025】
電極部材20の電極部本体21は、支持部材10と同様の形状を有していることが好ましい。即ち、本実施形態の生体電極1において、電極部本体21は、円板状に形成されている。電極部本体21は、支持部材10の支持面10aに支持される被支持面21aと、被支持面21aとは反対側の電極突起部形成面21bと、を有する。
【0026】
複数の電極突起部22は、電極部本体21の電極突起部形成面21bに突出形成されている。複数の電極突起部22は、電極部本体21の電極突起部形成面21bの中央部28を避けるように、電極突起部形成面21bの外周部29に配置されている。
【0027】
本実施形態の生体電極1においては、上述したような電極突起部形成面21bの外周部29に配置された各電極突起部22の突起高さhに関して特に主要な構成を有している。即ち、本実施形態の生体電極1においては、電極突起部形成面21bに対して直交する方向における、それぞれの電極突起部22の基端部から先端部までの突起高さhが、6~15mmである。以下、電極突起部形成面21bに対して直交する方向における、それぞれの電極突起部22の基端部から先端部までの突起高さhを、単に「電極突起部22の突起高さh」ということがある。
【0028】
生体電極1は、突起高さhが6~15mmの電極突起部22が電極突起部形成面21bの外周部29のみに配置されているため、このような電極突起部22によって囲われた電極突起部形成面21bの中央部28が、被験者の毛髪を収納する空間となる。この中央部28における空間は、電極突起部22の突起高さhに相当する空間高さを有しており、当該空間内にて、被験者の毛髪を良好に収納することができる。このため、生体電極1は、被験者の頭皮との良好な接触を実現することができ、また、被験者への生体電極1の過剰な押し付けが不要となり、測定時の頭皮の痛みを軽減することもできる。特に、毛髪の多い被験者、毛髪の長い被験者(例えば、毛髪を伸ばしている女性)、毛髪の体積が大きい(別言すれば、毛髪が太い)被験者等であっても、安定した頭皮との接触を実現することができる。
【0029】
電極突起部22の突起高さhが6mm未満であると、電極突起部形成面21bの中央部28の空間高さが低すぎて、中央部28の空間にて被験者の毛髪を十分に収納することができないことがある。例えば、一般的に、平均毛髪太さは0.085mmであり、被験者の頭皮の単位面積当たりに生えている毛髪の本数は208本/cm2程度である。以下、単位面積当たりに生えている毛髪の本数を「毛髪の密度(本/cm2)」ということがある。
【0030】
ここで、
図4に示すようにして生体電極1を被験者60の頭部に複数個配して脳波等の電気信号を検出する場合、測定箇所Ozで示される被験者60の後頭部が、上部などからの毛髪の影響を受け、生体電極1がより浮き易い箇所といえる。そして、
図4における箇所xは、測定箇所Ozでの測定時に毛髪が重なり影響を受けると想定される範囲であり、測定箇所Ozから箇所xまでの長さは5mmである。このため、毛髪が重なり影響を受ける範囲の長さを5mmと規定すると、上述した一般的な被験者に関する平均毛髪太さ(mm)及び毛髪の密度(本/cm
2)から、単位長さ当たりの毛髪の本数は14本/cmとなり、当該範囲(5mm)上までの直線範囲の毛髪の本数は72本となり、当該範囲(5mm)上までの直線範囲の毛髪が全て重なった場合の毛髪嵩(別言すれば、重なった毛髪の高さ)は6mmとなる。このため、電極突起部22の突起高さhが6mm以上とすることで、電極突起部22によって囲われた中央部28の空間にて、被験者の毛髪を良好に収納することができる。
【0031】
また、毛髪が太く、毛髪の密度が高い被験者の場合は、平均毛髪太さは0.150mm程度であり、毛髪の密度は300本/cm2程度である。そして、このような被験者に関する平均毛髪太さ(mm)及び毛髪の密度(本/cm2)から、単位長さ当たりの毛髪の本数は17本/cmとなり、上記範囲(5mm)の直線状の毛髪の本数は87本となり、上記範囲(5mm)上までの直線状の毛髪が全て重なった場合の毛髪嵩は13mmとなる。このため、電極突起部22の突起高さhを15mm確保すれば、毛髪が太く、毛髪の密度が高い被験者の場合であっても、電極突起部22によって囲われた中央部28の空間にて、その毛髪を良好に収納することができる。そして、電極突起部22の突起高さhが15mmを超えると、電極突起部22の突起高さhが過剰となり、電極突起部22を成形して形成する際の型からの脱型性が悪化することがある。また、生体電極1の小スペース化の観点においても、電極突起部22の突起高さhが過剰となることは好ましくない。
【0032】
電極突起部形成面21bの外周部29における、複数の電極突起部22の配置については、バランスの観点より、電極突起部形成面21bの外周部29に対して、円形状の配置が好ましい。例えば、複数の電極突起部22のそれぞれは、電極突起部形成面21bの外周部29上における仮想円25の円周上に位置するように配置されていることが好ましい。なお、仮想円は、一つの仮想円であってもよいし、複数の仮想同心円であってもよい。但し、電極突起部22の配置は、上記したものに限定されることはなく、例えば、複数の電極突起部22が配置された点を結んで描かれる形状が、三角形や四角形等の形状であってもよい。
【0033】
複数の電極突起部22は、電極突起部形成面21bの外周部29に等間隔に配置されていることが好ましい。なお、隣接する2つの電極突起部22の相互間隔は、厳密に等間隔である必要はなく、概ね等間隔であればよい。また、電極突起部22の配置は、上記した態様に限定されることはなく、例えば、電極突起部形成面21bの外周部29において、隣接する2つの電極突起部22の相互間隔の全てが同一でなく、例えば、2種類以上の相互間隔を有するような一定の配列パターンを有するものであってもよい。更に、例えば、複数の電極突起部22が電極突起部形成面21bの外周部29に無作為(ランダム)に配置されていてもよい。
【0034】
電極突起部形成面21bの外周部29に配置される電極突起部22の本数については特に制限はなく、電極突起部形成面21bの大きさ等に応じて適宜決定することができる。
【0035】
また、それぞれの電極突起部形成面21bの形状についても特に制限はなく、突起高さhが6~15mmとなるように、電極部本体21の電極突起部形成面21bから突出するように形成されていればよい。ここで、電極突起部形成面21bの形状の一例について、
図1~
図3に示す生体電極1における電極突起部形成面21bを例として説明する。
【0036】
図1~
図3に示す生体電極1のように、例えば、複数の電極突起部22のそれぞれは、基端部(根元部)から先端部に向かって、換言すれば、電極突起部形成面21bから離れるにしたがって横断面積が徐々に小さくなるように形成されていることが好ましい。例えば、複数の電極突起部22のそれぞれは、円形の横断面を有しており、基端部から先端部に向かって徐々に縮径している。そして、複数の電極突起部22のそれぞれの基端部の横断面の中心C1が、上述したような外周部29上における仮想円25の円周上に位置するように配置されていることが好ましい。このような構成において、複数の電極突起部22のそれぞれの基端部の横断面の中心C1が、厳密に仮想円25の円周上に位置する必要はなく、概ねその円周上に位置していればよい。
【0037】
複数の電極突起部22のそれぞれの先端部は、半球状に形成されていることが好ましい。また、複数の電極突起部22のそれぞれは、複数の電極突起部22の配置中心Oから見て、先端部の中心(先端部の横断面の中心ともいう)C2が基端部の横断面の中心C1よりも径方向外側に位置するように形成されていることが好ましい。例えば、このような電極突起部22は、先端部の頂点が丸められた斜円錐状の形状を有する。このように構成することによって、電極突起部22によって囲われた電極突起部形成面21bの中央部28の空間をより広く確保することができる。
【0038】
生体電極1において、コネクタ30は、スナップボタン型コネクタとして形成されている。より具体的には、コネクタ30は、スナップボタン型コネクタにおけるオス側コネクタとして形成されている。コネクタ30は、例えば、
図3に示すように、互いに嵌合された第1導電部材40と第2導電部材50とを含む。
【0039】
第1導電部材40及び第2導電部材50は、例えば、ステンレス鋼で形成されている。第1導電部材40は、一端側が電極部材20の電極部本体21に埋設されるとともに支持部材10を貫通して延びて他端側が支持部材10の背面10bから突出している。第2導電部材50は、第1導電部材40の他端側に嵌合された状態で、支持部材10の背面10b上に配置されている。そして、スナップボタン型コネクタにおける図示省略のメス側コネクタが第2導電部材50に装着(嵌合)されることにより、生体電極1の電極部材20が外部と電気的に接続されるようになっている。即ち、コネクタ30は、一部が電極部材20の電極部本体21に埋設されているととともに支持部材10を貫通して延びて支持部材10の背面10b上に外部との接続部が位置するように構成されている。
【0040】
例えば、測定装置のリード線の先端に取り付けられているメス側コネクタが第2導電部材50に装着(嵌合)されることにより、生体電極1の電極部材20が測定装置に電気的に接続される。測定装置は、生体電極1の電極部材20の複数の電極突起部22によって検出される生体信号を入力し、入力された生体信号の加工、表示、解析などを行うための装置であり、特に制限されないが、例えば、脳波測定装置、ウェアラブル情報機器及び健康モニタリング機器が該当する。
【0041】
図3を参照して第1導電部材40及び第2導電部材50について具体的に説明する。第1導電部材40及び第2導電部材50は、フランジ付き有底円筒状に形成されている。
【0042】
第1導電部材40は、一端に開口端41aを有するとともに他端に閉塞端41bを有する第1有底円筒部41と、第1有底円筒部41の開口端41aから径方向外側に延在する第1フランジ部42と、を有する。第1有底円筒部41の外径は、支持部材10の貫通孔10cの径とほぼ同じ設定されている。第1有底円筒部41の外周面における閉塞端41bの近傍の部位には、径方向に凹んだ嵌合部43が形成されている。第1フランジ部42は、径方向の内側よりも外側の方が第1有底円筒部41の閉塞端41b側に位置するように僅かに傾斜している。
【0043】
第1導電部材40は、主に第1フランジ部42の第1有底円筒部41側とは反対側の面が電極部材20の電極部本体21に埋設され、第1有底円筒部41が支持部材10の貫通孔10cに挿通されており(すなわち、支持部材10を貫通して延びており)、第1有底円筒部41の閉塞端41b側の部位(嵌合部43を含む)が支持部材10の背面10bから突出している。なお、以下では、第1フランジ部42の第1有底円筒部41側とは反対側の面を「埋設面」という。
【0044】
第2導電部材50は、一端に開口端51aを有するとともに他端に閉塞端51bを有する第2有底円筒部51と、第2有底円筒部51の開口端51aから径方向外側に延在する第2フランジ部52と、を有する。第2有底円筒部51は、開口端51aから閉塞端51bに向かうほど内径が大きくなるように形成されている。第2有底円筒部51の開口端51aの内径は、第1導電部材40の第1有底円筒部41の外周面に形成された嵌合部43の外径とほぼ同じに設定されている。なお、第2有底円筒部51の側面と底面とは滑らかな曲面で接続されている。第2フランジ部52は、径方向の内側よりも外側の方が第2有底円筒部51の閉塞端51bから離れるように傾斜した傾斜部を有している。
【0045】
第2導電部材50は、カシメなどにより、第2有底円筒部51の開口端51aが第1導電部材40の第1有底円筒部41の嵌合部43に嵌合固定されており、これにより、生体電極1のコネクタ30が形成されている。
【0046】
次に、生体電極1の製造方法の一例について説明する。但し、生体電極1の製造方法については以下の方法に限定されることはない。また、以下の説明において、コネクタ30は予め支持部材10に取り付けられているものとする。具体的には、第1導電部材40の第1有底円筒部41が閉塞端41b側から支持部材10の貫通孔10cに挿通され、支持部材10の背面10bから突出する第1導電部材40の第1有底円筒部41の嵌合部43に第2導電部材50の第2有底円筒部51の開口端51aが嵌合されており、これによって、支持部材10とコネクタ30との組立体が事前に形成されているものとする。したがって、以下の製造方法においては、コネクタ30は、支持部材10側に設けられた部材として扱われている。
【0047】
生体電極1の製造においては、まず、シリコーンゴムと金属粒子とを含む液状又はペースト状の導電性ゴムを撹拌し、撹拌された導電性ゴムを電極部材20の形状を有した成形型(キャビティ)に注入する。これにより、成形型内で導電性ゴムが電極部材20の形状に形成される。
【0048】
次に、コネクタ30が取り付けられた支持部材10、即ち、支持部材10とコネクタ30との組立体を支持部材10の支持面10aを下向きにして成形型内の導電性ゴム上に載置する。これにより、支持部材10の支持面10aが、電極部材20の形状に形成された導電性ゴムの電極部本体21の被支持面21aに相当する部位に載置される。また、第1導電部材40の第1フランジ部42の埋設面が、電極部材20の形状に形成された導電性ゴムの電極部本体21に相当する部位に埋設される。
【0049】
次に、支持部材10とコネクタ30との組立体が載置された状態で電極部材20の形状に成形された導電性ゴムを架橋する。これにより、電極部材20の形状に形成された導電性ゴムが硬化して、第1導電部材40と電極部材20とが一体化される。即ち、コネクタ30と複数の電極部本体21を有する電極部材20とが一体に成型される。このようにして、支持部材10、電極部材20及びコネクタ30が一体化される。その後、一体化された支持部材10、電極部材20及びコネクタ30を、成形型から取り出し、必要に応じて後処理を施すことにより、生体電極1を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の生体電極は、被験者の身体と接触させて、被験者の身体からの電気信号の感知、被験者への電気刺激の伝達、又は上記した感知と伝達の双方を行うための生体電極として利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1:生体電極
10:支持部材
10a:支持面
10b:背面
10c:貫通孔
20:電極部材
21:電極部本体
21a:被支持面
21b:電極突起部形成面
22:電極突起部
25:仮想円
28:中央部
29:外周部
30:コネクタ
40:第1導電部材
41:第1有底円筒部
41a:開口端
41b:閉塞端
42:第1フランジ部
43:嵌合部
50:第2導電部材
51:第2有底円筒部
51a:開口端
51b:閉塞端
52:第2フランジ部
60:被験者
C1:電極突起部の基端部の横断面の中心
C2:電極突起部の先端部の中心
h:突起高さ
O:複数の電極突起部の配置中心
Oz:測定箇所
x:箇所