(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】塞栓術のための方法及び物質
(51)【国際特許分類】
A61L 31/04 20060101AFI20241224BHJP
A61L 31/02 20060101ALI20241224BHJP
A61L 31/18 20060101ALI20241224BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20241224BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20241224BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241224BHJP
A61K 38/01 20060101ALI20241224BHJP
A61K 49/04 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
A61L31/04 120
A61L31/02
A61L31/18
A61L31/14 300
A61P7/04
A61P35/00
A61K38/01
A61K49/04 210
(21)【出願番号】P 2023510346
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 US2021046154
(87)【国際公開番号】W WO2022036322
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-04-12
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(73)【特許権者】
【識別番号】501083115
【氏名又は名称】メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】オクル、ラフミ
(72)【発明者】
【氏名】カデムホッセイニ、アリレザ
(72)【発明者】
【氏名】ジャバルザデ、エフサン
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0360920(US,A1)
【文献】特表2007-517614(JP,A)
【文献】特開2006-141436(JP,A)
【文献】特開2010-083788(JP,A)
【文献】Reginald K. Avery et al.,An injectable shear-thinning biomaterial for endovascular embolization,Science Translatinal Medicine,2016年,8,365ra156, 1-12,DOI:10.1126/scitranslmed.aah5533
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 31/00-31/18
A61P 35/00
A61K 38/01
A61K 49/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の血管の塞栓術のためのヒドロゲル組成物であって、
(a)ゼラチンと、
(b)ナノシリケートと、
(c)放射線不透過性造影剤と、を含
み、
前記ヒドロゲル組成物は、2%(w/w)~30%(w/w)の前記放射線不透過性造影剤を含み、
前記放射線不透過性造影剤は、イオヘキソール、イオプロミド、イオジキサノール、イオアグレート、イオタラメート、及びイオパミドールから選択されるヨウ素化分子、並びにタンタル粒子から選択される、ヒドロゲル組成物。
【請求項2】
0.1%(w/v)
~20%(w/v)の前記ゼラチンを含む、請求項1に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項3】
18%(w/v)の前記ゼラチンを含む、請求項2に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項4】
前記ゼラチンがA型ゼラチンである、請求項2又は3に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項5】
3%(w/v)
~9%(w/v)の前記ナノシリケートを含む、請求項1に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項6】
9%(w/v)の前記ナノシリケートを含む、請求項5に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項7】
前記ナノシリケートがシリケートナノプレートレットである、請求項5又は6に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項8】
10%(w/w)の前記放射線不透過性造影剤を含み、前記放射線不透過性造影剤がイオヘキソールを含む、
請求項1に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項9】
20%(w/w)の前記放射線不透過性造影剤を含み、放射線不透過性造影剤がタンタル粒子を含む、
請求項1に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項10】
前記ヒドロゲル組成物の粘度が
、10
-11/sの剪断速度下で減少する、
請求項1~9のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項11】
15KPa
~45KPaの変位圧力を有する、
請求項1~9のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項12】
前記放射線不透過性造影剤が、タンタル粒子である、請求項1に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項13】
前記放射線不透過性造影剤が、イオヘキソール、イオプロミド、イオジキサノール、イオアグレート、イオタラメート、及びイオパミドールから選択されるヨウ素化分子である、請求項1に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項14】
前記ヨウ素化分子が、イオヘキソールである、請求項13に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項15】
5%(w/w)~30%(w/w)の前記放射線不透過性造影剤を含む、請求項1に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項16】
10%(w/w)~30%(w/w)の前記放射線不透過性造影剤を含む、請求項1に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項17】
15%(w/w)~30%(w/w)の前記放射線不透過性造影剤を含む、請求項1に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項18】
前記ヒドロゲル組成物は、哺乳動物内における血管の塞栓術のため
に使用されるものであり、前記ヒドロゲル組成物
は前記血管に送達
される、
請求項1に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項19】
前記ヒドロゲル組成物は、哺乳動物内の血管内の血流を減少させるため
に使用されるものであり、前記ヒドロゲル組成物
は前記血管に送達
される、
請求項1に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項20】
前記ヒドロゲル組成物は、哺乳動物内の血管において凝固を誘導するため
に使用されるものであり、前記ヒドロゲル組成物
は前記血管に送達
される、
請求項1に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項21】
前記凝固が、前記送達
後20分未満で誘導される、
請求項20に記載の
ヒドロゲル組成物。
【請求項22】
前記凝固が
、0.5立方センチメートル(cm
3)
~5cm
3の体積を有するブロットクロットの形成を含む、
請求項20に記載の
ヒドロゲル組成物。
【請求項23】
前記ヒドロゲル組成物は、出血性障害を有する哺乳動物を治療するため
に使用されるものであり、前記ヒドロゲル組成物
は前記哺乳動物内の血管に送達
される、
請求項1に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項24】
前記出血性障害が、非外傷性出血、外傷性出血、嚢状動脈瘤、血管奇形、エンドリーク、胃食道静脈瘤、及び動静脈瘻からなる群から選択される、
請求項23に記載の
ヒドロゲル組成物。
【請求項25】
前記ヒドロゲル組成物は、腫瘍を有する哺乳動物を治療するため
に使用されるものであり、前記ヒドロゲル組成物
は、前記腫瘍に栄養を与えている前記哺乳動物内の血管に送達
される、
請求項1に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項26】
前記腫瘍が良性腫瘍である、
請求項25に記載の
ヒドロゲル組成物。
【請求項27】
前記腫瘍が悪性腫瘍である、
請求項25に記載の
ヒドロゲル組成物。
【請求項28】
前記腫瘍が、肝腫瘍、子宮筋腫、前立腺腫瘍、腎腫瘍、及び脳腫瘍からなる群から選択される、
請求項25に記載の
ヒドロゲル組成物。
【請求項29】
前記哺乳動物がヒトである、
請求項18~28のいずれか一項に記載の
ヒドロゲル組成物。
【請求項30】
前記送達がカテーテル誘導送達を含む、
請求項18~29のいずれか一項に記載の
ヒドロゲル組成物。
【請求項31】
前記送達が
、1mL/分
~2mL/分の送達速度を含む、
請求項18~30のいずれか一項に記載の
ヒドロゲル組成物。
【請求項32】
前記送達が
、2mL
~5mLの前記ヒドロゲル組成物を含む、
請求項18~31のいずれか一項に記載の
ヒドロゲル組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1つ以上の血管(例えば、1つ以上の動脈)の塞栓術のための方法及び物質に関する。例えば、本開示は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管(例えば、1つ以上の動脈)の塞栓術のためのヒドロゲル組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
抗凝固療法(ACA)施行中の出血は、罹患率及び死亡率の高い深刻な医学的緊急事態である。米国だけでも、ACAに心房細動を伴う人は260万人を超える(非特許文献1)。クマジンの処方箋は毎年3,000万件以上作成されており、より新しい経口抗凝固剤の処方箋も増加している。クマジン単独での出血頻度は、年間15~20パーセントと推定されている(非特許文献2及び非特許文献3)。出血リスクは、機械弁及び心臓補助装置(CAD)を身につけている患者において更に高くなる(非特許文献4、非特許文献5、及び非特許文献6)。
【0003】
15年前に導入された液体塞栓は、in situでの展開時に自己凝固するように設計され特別に製剤化された物質である。一旦注入されると、液体塞栓は、イオンプロセス、共有結合プロセス、又は熱プロセスによる重合、沈殿及び架橋などの物理化学的メカニズムに基づいて、固体に変化する。しかし、液体塞栓は、カテーテルの捕捉(非特許文献7)、最大36%の再疎通率(非特許文献8)、並びに非標的塞栓、血管毒性(angiotoxicity)、及び/又は壊死を引き起こし得る注入中の漏出などのリスクを伴う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Lloyd-Jonesら,Circulation,121:948(2010)
【文献】Wysowskiら,Arch.Intern.Med.,167:1414(2007)
【文献】Zarehら,West.J.Emerg.Med.,12:386(2011)
【文献】Eckmanら,Circulation,125:3038(2012)
【文献】Kirleyら,Circ.Cardiovasc.Qual.Outcomes,5:615(2012)
【文献】Smithら,J.Thorac.Dis.,7:2112(2015)
【文献】Qureshiら,J.Vasc.Interv.Neurol.,8:37(2015)
【文献】Cekirgeら,Neuroradiology,48:113(2006)
【発明の概要】
【0005】
本開示は、1つ以上の血管(例えば、1つ以上の動脈)の塞栓術のための方法及び物質を提供する。例えば、本開示は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管(例えば、1つ以上の動脈)の塞栓術(例えば、可逆的塞栓術)のためのヒドロゲル組成物を提供する。
【0006】
本明細書で実証されるように、18%(w/v)のA型ゼラチン、9%(w/v)のシリケートナノプレートレット、及び10%(w/w)のイオヘキソール又は20%(w/w)のタンタル粒子のいずれかを含む放射線不透過性ヒドロゲル組成物(例えば、ゲル塞栓物質(GEM))は、臨床カテーテルを使用して罹患血管(例えば、静脈又は動脈)に迅速に送達され、腎動脈及び腸骨動脈などの一次動脈の塞栓術を達成することができる。また、本明細書で実証されるように、18%(w/v)のA型ゼラチン、9%(w/v)のシリケートナノプレートレット、及び10%(w/w)のイオヘキソール又は20%(w/w)のタンタル粒子のいずれかを含む放射線不透過性GEMを使用する塞栓術は、複数のイメージングプラットフォームを使用してin vivoで可視化することができる。
【0007】
ゼラチン、ナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物を送達して、哺乳動物(例えば、ヒト)の血管内において塞栓術を施行できることにより、(例えば、送達中及び/又は送達後に)可視化及びモニタリングできる哺乳動物内における1つ以上の血管を安全かつ迅速に止血する、他に例を見ない実現されていなかった機会が提供される。例えば、ゼラチン、ナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物は、出血(hemorrhage)(例えば、内部器官の出血)などの出血(bleeding)を治療するために使用することができる。例えば、臨床カテーテルを使用して、効率的、効果的、安全、及び/又は費用対効果の高い塞栓術のために本明細書で提供されるヒドロゲル組成物を送達する。
【0008】
概して、本開示の一態様は、(a)ゼラチンと、(b)ナノシリケートと、(c)放射線不透過性造影剤と、を含む、ヒドロゲル組成物を特徴とする。ヒドロゲル組成物は、約0.1%(w/v)~約20%(w/v)のゼラチンを含み得る。ヒドロゲル組成物は、18%(w/v)のゼラチンを含み得る。ゼラチンはA型ゼラチンであり得る。ヒドロゲル組成物は、約3%(w/v)~約9%(w/v)のナノシリケートを含み得る。ヒドロゲル組成物は、約9%(w/v)のナノシリケートを含み得る。ナノシリケートは、シリケートナノプレートレットであり得る。ヒドロゲル組成物は、約2%(w/w)~約30%(w/w)の放射線不透過性造影剤を含み得る。ヒドロゲル組成物は、約10%(w/w)の放射線不透過性造影剤を含み得、放射線不透過性造影剤は、イオヘキソールを含み得る。ヒドロゲル組成物は、約20%(w/w)の放射線不透過性造影剤を含み得、放射線不透過性造影剤は、タンタル粒子を含み得る。ヒドロゲル組成物の粘度は、約10-11/sの剪断速度下で減少し得る。ヒドロゲル組成物は、約15KPa~約45KPaの変位圧力を有し得る。
【0009】
別の態様において、本開示は、哺乳動物内における血管の塞栓術のための方法を特徴とする。本方法は、ゼラチン、ナノシリケート、及び放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物を哺乳動物内の血管に送達することを含み得る、又は本質的にそれからなり得る。哺乳動物はヒトであり得る。送達は、カテーテル誘導送達を含み得る。送達は、約1mL/分~約2mL/分の送達速度を含み得る。送達は、約2mL~約5mLの当該ヒドロゲル組成物を含み得る。
【0010】
別の態様において、本開示は、哺乳動物内の血管内の血流を減少させるための方法を特徴とする。本方法は、ゼラチン、ナノシリケート、及び放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物を哺乳動物内の血管に送達することを含み得る、又は本質的にそれからなり得る。哺乳動物はヒトであり得る。送達は、カテーテル誘導送達を含み得る。送達は、約1mL/分~約2mL/分の送達速度を含み得る。送達は、約2mL~約5mLの当該ヒドロゲル組成物を含み得る。
【0011】
別の態様において、本開示は、哺乳動物内の血管において凝固を誘導するための方法を特徴とする。本方法は、ゼラチン、ナノシリケート、及び放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物を哺乳動物内の血管に送達することを含み得る、又は本質的にそれからなり得る。凝固は、送達後約20分未満で誘導することができる。凝固は、約0.5立方センチメートル(cm3)~約5cm3の体積を有するブロットクロットの形成を含み得る。哺乳動物はヒトであり得る。送達は、カテーテル誘導送達を含み得る。送達は、約1mL/分~約2mL/分の送達速度を含み得る。送達は、約2mL~約5mLの当該ヒドロゲル組成物を含み得る。
【0012】
別の態様において、本開示は、出血性障害を有する哺乳動物を治療するための方法を特徴とする。本方法は、ゼラチン、ナノシリケート、及び放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物を哺乳動物内の血管に送達することを含み得る、又は本質的にそれからなり得る。出血性障害は、非外傷性出血、外傷性出血、嚢状動脈瘤、血管奇形、エンドリーク、胃食道静脈瘤、又は動静脈瘻であり得る。哺乳動物はヒトであり得る。送達は、カテーテル誘導送達を含み得る。送達は、約1mL/分~約2mL/分の送達速度を含み得る。送達は、約2mL~約5mLの当該ヒドロゲル組成物を含み得る。
【0013】
別の態様において、本開示は、腫瘍を有する哺乳動物を治療するための方法を特徴とする。本方法は、ゼラチン、ナノシリケート、及び放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物を、哺乳動物内の腫瘍に栄養を与えている哺乳動物内の血管に送達することを含み得る、又は本質的にそれからなり得る。腫瘍は、良性腫瘍であり得る。腫瘍は、悪性腫瘍であり得る。腫瘍は、肝腫瘍、子宮筋腫、前立腺腫瘍、腎腫瘍、又は脳腫瘍であり得る。哺乳動物はヒトであり得る。送達は、カテーテル誘導送達を含み得る。送達は、約1mL/分~約2mL/分の送達速度を含み得る。送達は、約2mL~約5mLの当該ヒドロゲル組成物を含み得る。
【0014】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は同等の方法及び物質を使用して本発明を実施することができるが、好適な方法及び物質を以下に記載する。本明細書中で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体が参考により組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先される。更に、物質、方法、及び実施例は、例示的なものにすぎず、限定することを意図したものではない。
【0015】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載される。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】GEMを用いた大腿動脈塞栓術のラットモデル。GEM注入の前(
図1A)及び後(
図1B、矢印)のラット大腿動脈(FA;矢印)の画像。GEM注入の前(
図1C、矢印)及び後(
図1D、矢印)の露出したFAのレーザースペックルコントラスト微小灌流イメージング(LSCI)は、血流がないことを示す。
図1Eにおいて、遠位大動脈内のカテーテルからのデジタルサブトラクション血管造影は、右大腿動脈のGEM閉塞を示す(矢印は、GEM閉塞を迂回する側副動脈を示す)。
図1Fは、FA(矢印)のGEM塞栓術後のベースライン、3日目、7日目、及び21日目にLSCIを使用した代表的な後肢の微小灌流画像のパネルであり、対側肢は未処理対照である。
図1Gは、ベースライン、0日目、1日目、3日目、7日目、14日目、及び21日目におけるGEM塞栓術後のLSCI後肢灌流の定量分析(
*ベースラインと比較してp<0.0001;n=6)。
図1Hは、0日目、3日目、7日目及び21日目の塞栓された動脈(矢印)の管腔内に造影剤を有するGEMを示すFAの再構成された最大強度投影(MIP)画像であり、これらは、物質のリモデリングが進行していることを示唆する動脈内のGEMの時間依存的な構造変化を示す(0日目の
*は、外側回旋枝動脈におけるGEMを示す)。
図1Iは、0日目及び21日目のGEMで塞栓されたFAのH&E染色断面であり、0日目の矢印は、GEMによる動脈管腔の完全な閉塞を示す。21日目の矢印は、FAの管腔内の肉芽組織によるGEMのほぼ完全な置換を伴うリモデリングを示す。
【
図2】複数のイメージングモダリティによるGEMの可視性の評価。
図2Aは、ヒト胸部をシミュレートするファントムの内側に0~30%のTa-GEMを装填した8つのシリンジのCT軸方向画像を示す。20%Ta-GEM(破線の輪郭)は、30%Ta-GEM又は50%イオヘキソールGEM(n=4)と比較した場合、同様のハウンスフィールド単位(
図2B)を示す。
図2Cは、10%イオヘキソール、20%Taナノ粒子(Nano-Ta)、又は20%Taマイクロ粒子(Micro-Ta)を含有するGEMが装填されたシリンジの蛍光透視画像であり、蛍光透視画像上の平均ピクセル強度を定量化したところ、20%マイクロTaが最も高い強度をもたらすことを示した(
図2D;n=4)。
図2E及び
図2Fは、20%Ta-GEM(白色の矢印)を使用したブタにおける経皮的肝静脈塞栓術中のそれぞれの超音波検査画像及び蛍光透視画像。
図2Gは、0~30%Taマイクロ粒子を含有するGEMの剪断波エラストグラフィのグラフ概要(n=3)。
図2Hは、20%Ta-GEMを充填したシリンジの標準的なT1及びT2 MRイメージングの横断面図であり、T1シーケンスについての減衰及びT2シーケンスについての明るいシグナルを示す。
図2Iにおいて、筋肉及び肝臓のT1及びT2シグナルを、MRIファントムに対して算出した。
図2J及び
図2Kは、算出されたシグナル(
図2I)に対する20%Ta-GEMのT1及びT2シグナルをグラフに示したものである。これらは、シグナル強度が筋肉又は肝臓より大きいことを示し、20%Ta-GEMがMRIで可視化されることを示唆している。
図2Lは、20%Ta-GEM(白色の矢印、タンタルマイクロ粒子)の走査型電子顕微鏡。
図2Mは、GEM中のTaの均一な分布を示す20%Ta-GEMを装填したシリンジのマイクロCT画像。データは平均±SD(
**P<0.01、
***P<0.001、
****P<0.0001)である。
【
図3】Ta-GEMの物理的及び機械的特性評価。
図3Aは、注入力試験の概略図。表は、試験中に使用したカテーテル及びパラメータを示す(I.D.:カテーテルの内径)。
図3Bは、110cm、2.8Fマイクロカテーテルを通して1mL/分で注入された1mLシリンジ中のGEM及びTa-GEMの代表的な注入力曲線。
図3Cは、2.8Fマイクロカテーテルシステム(n=5)におけるGEM及びTa-GEMの破断力(break loose fworse)及び注入力の概要。
図3Dは、GEM及びTa-GEMをそれぞれ3mLシリンジに装填し、100cm、5Fカテーテルから2mL/分で注入した、代表的な注入力曲線。
図3Eは、5FカテーテルシステムにおけるGEM及びTa-GEMの破断力及び注入力の概要(n=5)。
図3Fは、2mL/分での5Fカテーテルを通したTa-GEMの中断された送達(10秒の送達、続いて5秒の滞留時間)の注入力プロファイル。
図3Gにおいて、37℃でのGEM及びTa-GEMを比較する流動曲線は、剪断減粘特性を示す。
図3Hは、37℃でのGEM及びTa-GEMの振幅掃引。
図3Iは、25℃及び37℃におけるGEM及びTa-GEMの貯蔵弾性率動態の概要(n=3)。データは、
図3C、
図3E、及び
図3Iについての平均±SDである。
図3Jは、in vitro塞栓試験における抵抗圧力曲線。
図3Kは、ピーク圧がコイル単独と比較してTa-GEM+コイルによって最大に生成されることを示すグラフの概要(
**p<0.01、
***p<=0.001、
****p<0.0001、データは平均±SDを表し、n=3)。
図3Lは、注入前後のGEM(緑色で示す)をカテーテル送達した後の血管モデル内部におけるコイル繊維の写真。
【
図4】抗凝固処理を施したブタ腸骨動脈におけるTa-GEM塞栓術の評価。
図4A~
図4Cは、Ta-GEMによる経カテーテル動脈塞栓術の模式図。
図4Dは、コイルが閉塞を達成できなかったこと(黒色の矢印;造影剤は動脈内のコイル塊を通って流れる)を示すデジタルサブトラクション血管造影(DSA)であり、対側腸骨動脈中の白色の矢印は、Ta-GEMによる動脈の完全閉塞を示す。
図4Eにおいて、腸骨動脈への造影剤注入は、コイル塊(黒色の矢印)とその先(白色の矢印)に造影剤が流れていることを示す。
図4Eのコイル塊へのGEMの送達後、
図4FのDSA画像は、血流の突破口のない完全な閉塞を示している(矢印)。
図4Gに関して、
図4Fの冠状マイクロCT画像は、アーチファクトなしに内腸骨動脈を均一にキャスティングするGEM(矢頭)を示しており、対照的に、コイル塊(矢印)は、動脈及び隣接する枝の評価を制限する大きなストリークアーチファクトを発生させた。
図4H~
図4Jにおいて、
図4Hにおける正常なブタ骨盤動脈、
図4IにおけるTa-GEMで塞栓された左内腸骨動脈(矢印)、及び
図4JにおけるTa-GEMの完全回収後のDSAの連続DSA画像は、動脈における血流の回復を示す。Ta-GEMの回収は、動脈の塞栓術の3時間後に行った。
【
図5】ブタ内腸骨動脈閉塞のコンピュータ断層撮影及び組織学検査の評価。
図5Aは、H&E、VGエラスチン、マッソントリクローム及びミエロペルオキシダーゼ(MPO)でそれぞれ染色した塞栓術後0、1、2、又は4週目のマイクロCT画像及び対応する組織学検査上の内腸骨動脈の断面図のパネルを示す。0日目に、Ta-GEMによる動脈の均一な閉塞が存在する(矢印)。続いて、同心円状の線維炎症(fibroinflammator)反応が起こり、GEMが生分解される。
図5Bは、塞栓術後0、1、2、又は4週目の各血管の内側のTa-GEMのセグメント化後の摘出されたブタ内腸骨動脈の再構成された高解像度マイクロCTスキャンの3D冠状レンダリング(矢印はGEMを指し、黒色は動脈の内側;結合組織は灰色で示されている)。経時的に、Ta-GEMの生分解が進行し、線維化の増加がある(灰色)。
図5Cは、左内腸骨動脈(矢印)及び開存性の右内腸骨動脈(矢頭)の内側のTa-GEMを示す、大動脈から腸骨動脈までの再構成された線形描写。
図5Dは、
図5BにおけるマイクロCTセグメント化データセットからの経時的なTa-GEMを定量化したグラフが示されており、動脈内のGEMが徐々に減少していることを明らかにしている。データは平均±SEMであり、n=4、
*p<0.0001、
**p=0.007、ANOVA及びTukeyの事後分析を使用。
【
図6】Ta-GEMを用いたブタ腎動脈塞栓術及びゲルフォームとの比較。Ta-GEMによる腎動脈塞栓術の前(
図6A)及び後(
図6B)の蛍光透視画像であり、2~3mLのTa-GEMの注入後、腎臓への腎動脈流が完全に消失している(矢印)。
図6Cにおいて、最大強度投影画像は、Ta-GEMで閉塞された左主腎動脈及び分節枝を示す(矢印)。軸方向CT(
図6D)及び3D再構成画像(
図6E)は、腎動脈にTa-GEMを有する著しく萎縮した腎臓を示す。
図6F~
図6Iは、それぞれ0、1、2、又は4週目のTa-GEMで塞栓された腎臓の代表的な冠状CT画像。腎臓の皮質にはTa-GEMが存在しない。
図6Jは、対側腎臓の代償性肥大を伴う4週目の塞栓された腎臓の肉眼的外観を示す写真。
図6Kは、腎動脈塞栓術後の総腎容積測定の概要(
***p<0.001、
****p<0.0001、一元配置分散分析を使用、各群n=4)。経時的に、腎臓の萎縮が進行している。ゲルフォーム(黒色の矢印)を用いた腎動脈の塞栓術前(
図6L)及び塞栓術後(
図6M)のDSA画像。
図6Nにおいて、塞栓術後2週間で、軸方向CT画像は、腎動脈塞栓術が成功したにもかかわらず、塞栓された腎臓及び動脈内の血流の増強を示している(破線の輪郭)。データは平均±SEMとして報告した。
【
図7】マイクロCT及び組織学検査を用いた、ラット大腿動脈におけるGEMの形態学的変化の時間依存的特性評価。A~Dにおいて、表面対体積比、表面凸指数、フラクタル次元、及び構造モデル指数のマイクロCT分析はそれぞれ、ラットFA内部のGEMの構造変化を示す。Verhoeff-Van Gieson(E)、マッソントリクローム染色(F)、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)及びCD68(H)で染色した代表的なFA組織切片。I及びJは、塞栓術後の異なる時点における内側厚及び管腔面積の時間依存的変化のグラフ。Kは、3日目の有意な顆粒球浸潤並びに7日目及び21日目までの減少を示す、各時点についての高倍率視野当たりのMPO発現細胞の平均数のグラフ概要。Lは、GEM塞栓術後21日目におけるマクロファージの有意な動員を実証する、高倍率当たりのCD68発現細胞の平均数の概要を示すグラフ。データは平均±SEMである(
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001、
****P<0.0001;n=6)。スケール、200μm。
【
図8】抗凝固状態のラット大腿動脈塞栓術。ヘパリン添加ラットにおける大腿動脈及び静脈のレーザースペックルコントラストイメージング(LSCI)は、ベースラインにおける開存性大腿動脈(A;矢印)及びGEMでの塞栓術後の完全閉塞(B;白色の矢印)を示す。Cは、抗凝固が確認された、ベースラインと比較したヘパリン注入後の活性化凝固時間(ACT)の有意な増加を示すグラフ。Dは、塞栓術後3日目の抗凝固処理ラット及び対照ラットからのTa-GEMを用いた摘出大腿動脈の冠状マイクロCT画像。Eにおいて、LSCIを使用した後肢灌流の定量分析は、塞栓術後1日目及び3日目に抗凝固処理ラットと正常ラットとの間に違いはなく、断片化又は移動のエビデンスがないことを示唆する(n=6)。F及びGにおいて、塞栓術後3日目に抗凝固処理又は未処理ラットから得られたラット大腿動脈断面のそれぞれの組織学的顕微鏡写真は、GEMが両方の血管管腔を持続的にキャスティングしていることを示す。データは平均±SEMである(
***P<0.001、
****P<0.0001;n=6)。スケール、650μm。
【
図9】血液血栓形成性及びGEM無菌性に対するタンタルマイクロ粒子の効果の評価。Aは、血液単独、GEM、Ta-GEM及び臨床で使用されている塞栓コイルを血液と混合した場合の血栓形成までの時間を示す。GEM、Ta-GEM、及びコイルサンプルは、4分という早い段階で血栓形成のエビデンスを示した。Bにおいて、経時的に形成された血餅の平均質量は、血液単独又はGEM単独と比較して、Ta-GEMで増強された血栓形成性を示す。Cは、LBブロスの接種及び37℃で24時間のインキュベーション後のGEM及びGEM-Taの無菌試験のグラフ概要であり、これらを、LBブロス単独及び大腸菌を接種したLBブロスと比較した。光学密度を各アリコートにおいて600nmで測定した。結果は平均±SEMである(
**P<0.01、
****P<0.0001;n=4)。
【
図10】ブタ動脈からのTa-GEMのカテーテル誘導送達及び回収。A~Cは、腸骨動脈へのTa-GEM注入時の連続デジタルサブトラクション血管造影(DSA)画像を示す(リアルタイムビデオについては、動画S1を参照されたい)。これらの画像は、カテーテルから出たときに、遠位の断片化なしに即座に閉塞していることを示している。Dは、剖検時、Ta-GEMを含有する腸骨動脈が示されている(矢印)。E~Hは、最初にTa-GEMで塞栓され(E;白色の矢印)、その後Penumbra吸引カテーテルを使用して回収した((F、G)黄色の矢印)内腸骨動脈の代表的な画像。Hは、GEMの回収後の流れの回復を示す。
【
図11】塞栓術後4週間でのコンピュータ断層撮影血管造影によるブタの動脈閉塞及び臓器の完全性の評価。Aにおいて、造影CT血管造影から再構成された3D画像は、右内腸骨動脈(赤色の矢印)が存在しないことを示し、この動脈は、Ta-GEMで閉塞されているため、不透過とならない。(A)の黄色の点線の円の軸方向画像が(B)に表示される。Bにおいて、赤色の円は、虚血のエビデンスを示す臀筋における区域的低密度(白色の矢印)と共に、塞栓された動脈に流れがないことを示す。対側動脈(小さな黄色の円)は広く開存しており、それぞれの臀筋(青色の矢頭)に低密度又は虚血のエビデンスはない。(A)の青色の点線の円の軸方向画像が(C)に表示される。Cにおいて、遠位後肢の軸方向画像は、足への正常な流出血管(矢印)を示し、非標的塞栓のエビデンスがないことを示唆している。脳(D)、心臓(E)、肺(F)、肝臓(G)、脾臓(H)、腎臓(I)、骨盤(J、K)、後肢(L)の軸方向CT画像のパネルは、正常なX線像を示す。
【
図12】内腸骨動脈塞栓術後の炎症性細胞浸潤の定量分析及び組織学検査。Aは、Ta-GEMで塞栓されたブタの内腸骨動脈の管腔内のMPO発現細胞の平均数の概要グラフであり、塞栓術後2週間で、MPO発現細胞の有意な浸潤が見られる(
**p=0.004、Kruskal-Wallis事後検定によるANOVAを使用)。Bにおいて、動脈壁区画に浸潤するMPO発現細胞のグラフは、塞栓術後2週間で顕著な増加を示す。
**p=0.007、Tukeyの事後検定によるANOVAを使用。データは平均±SEMであり、各データ点についてn=4である。Cにおいて、組織学検査では、塞栓術後0日目に、トリクローム染色は無傷の中膜層を示す。しかし、Dにおいて、14日目には、中膜層の破壊及び線維化がある。Eにおいて、中膜層のエラスチン染色は、内膜層及び中膜層の破壊を示す。スケールバー50マイクロメートル。
【
図13】Fogartyカテーテルを使用したブタの腎動脈塞栓術後のTa-GEMの血管内分布の評価。Aにおいて、中央の主腎動脈内の4フレンチFogartyカテーテルを膨張させ、バルーンが近位に変位し始めるまで、Ta-GEMを連続的に注入した。剖検時の腎臓の冠状切断に続いて、インドシアニングリーンを含有するTa-GEMで塞栓されたこの腎臓の近赤外イメージングは、主腎動脈及び皮質を除く区動脈におけるGEMの分布を示した。Bにおいて、下極を横切る横断面は、Ta-GEMで塞栓された細動脈を示す(矢印)。Cにおいて、皮質を示すスライドのH&Eは、皮質にTa-GEMが存在しない正常な糸球体を実証する。Dは、Ta-GEMで塞栓された葉間細動脈を示すH&E画像。(スケール;500μm)。Eにおいて、(A)の腎臓全体を、マイクロCTスキャナにおいてex vivoで画像化した。これらの画像は、近位弓状細動脈に到達する血管内の塞栓物質を示す。Fにおいて、4つの腎臓において測定された動脈直径のグラフ概要は、塞栓された最小動脈の平均血管径が320μmの範囲であることを明らかにする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態の説明において、本明細書の一部を形成し、本発明を実施することができる特定の実施形態を例示として示す添付の図面を参照することができる。他の実施形態を利用することができ、本発明の範囲から逸脱することなく構造上の変更を行うことができることを理解されたい。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記法、及び他の科学用語又は専門用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有することが意図される。場合によっては、一般的に理解される意味を有する用語は、明確さのために、及び/又は容易な参照のために本明細書において定義され、本明細書におけるこのような定義の包含は、必ずしも、当技術分野において概ね理解されるものに対する実質的な差異を表すと解釈されるべきではない。本明細書に記載又は参照される技術及び手順の態様の多くは、当業者によって十分に理解され、一般的に使用されている。以下の文章は、本発明の様々な実施形態を説明するものである。
【0018】
本開示は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管(例えば、1つ以上の動脈)の塞栓術のための方法及び物質を提供する。例えば、本開示は、血管の塞栓術のために哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管(例えば、1つ以上の動脈)に送達され得るヒドロゲル組成物を提供する。場合によっては、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達されて、血管内の血栓(例えば、人工塞栓)の形成を誘導することができる。場合によっては、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達されて、血管内に塞栓(例えば、人工塞栓)を形成することができる。
【0019】
本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含み得る。場合によっては、本明細書において提供されるヒドロゲル組成物は無菌であり得る。場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、抗菌性であり得る。場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、生物活性であり得る。例えば、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、1つ以上の治療剤を含み得る。
【0020】
本明細書で提供されるヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、任意の種類のゼラチンを含み得る。場合によっては、ヒドロゲル組成物は、単一の種類のゼラチンを含み得る。場合によっては、ヒドロゲル組成物は、2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上)の種類のゼラチンを含み得る。場合によっては、ゼラチンは合成ゼラチンであり得る。場合によっては、ゼラチンは、動物の組織(例えば、皮膚、骨、及び結合組織)から抽出することができる。本明細書で提供されるヒドロゲル組成物に含まれ得るゼラチンの種類の例としては、限定されないが、A型ゼラチン、B型ゼラチン、ウシから抽出されたゼラチン、ブタから抽出されたゼラチン、及び魚から抽出されたゼラチンが挙げられる。
【0021】
本明細書で提供されるヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、任意の量のゼラチンを含み得る。例えば、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、約0.1%(w/v)~約20%(w/v)のゼラチン(例えば、約0.5%(w/v)~約20%(w/v)のゼラチン、約1%(w/v)~約20%(w/v)のゼラチン、約5%(w/v)~約20%(w/v)のゼラチン、約10%(w/v)~約20%(w/v)のゼラチン、約12%(w/v)~約20%(w/v)のゼラチン、約15%(w/v)~約20%(w/v)のゼラチン、約17%(w/v)~約20%(w/v)のゼラチン、約0.1%(w/v)~約18%(w/v)のゼラチン、約0.1%(w/v)~約15%(w/v)のゼラチン、約0.1%(w/v)~約12%(w/v)のゼラチン、約0.1%(w/v)~約10%(w/v)のゼラチン、約0.1%(w/v)~約8%(w/v)のゼラチン、約0.1%(w/v)~約5%(w/v)のゼラチン、約0.5%(w/v)~約18%(w/v)のゼラチン、約1%(w/v)~約15%(w/v)のゼラチン、約5%(w/v)~約12%(w/v)のゼラチン、約8%(w/v)~約10%(w/v)のゼラチン、約1%(w/v)~約5%(w/v)のゼラチン、約5%(w/v)~約10%(w/v)のゼラチン、又は約10%(w/v)~約15%(w/v)のゼラチン)を含み得る。場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、約18%(w/v)のゼラチン(例えば、A型ゼラチン)を含み得る。いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、約0.2%~約1.2%(w/w)(約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、及び約1.2%並びにこれらの間の全ての値及び範囲を含む)のゼラチンを含む。いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、約0.6%~約1.0%(w/w)のゼラチンを含む。いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、約0.4%~約0.8%(w/w)のゼラチンを含む。いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、又は約1.2%(w/w)のゼラチンを含む。いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、約0.6%(w/w)のゼラチンを含む。いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、約0.8%(w/w)のゼラチンを含む。
【0022】
本明細書で提供されるヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、任意の種類のナノシリケートを含み得る。場合によっては、ヒドロゲル組成物は、単一の種類のナノシリケートを含み得る。場合によっては、ヒドロゲル組成物は、2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上)の種類のナノシリケートを含み得る。本明細書で提供されるヒドロゲル組成物に含まれ得るナノシリケートの例としては、限定されないが、Laponite(登録商標)系シリケートナノプレートレット(例えば、Laponite(登録商標)XLG系シリケートナノプレートレット、Laponite(登録商標)XLS系シリケートナノプレートレット、Laponite(登録商標)XL21系シリケートナノプレートレット、及びLaponite(登録商標)D系シリケートナノプレートレット)などのリチウムマグネシウムナトリウムシリケートが挙げられる。
【0023】
本明細書で提供されるヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、任意の量のナノシリケートを含み得る。例えば、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、約3%(w/v)~約9%(w/v)のナノシリケート(例えば、約4%(w/v)~約9%(w/v)のナノシリケート、約5%(w/v)~約9%(w/v)のナノシリケート、約6%(w/v)~約9%(w/v)のナノシリケート、約7%(w/v)~約9%(w/v)のナノシリケート、約8%(w/v)~約9%(w/v)のナノシリケート、約3%(w/v)~約8%(w/v)のナノシリケート、約3%(w/v)~約7%(w/v)のナノシリケート、約3%(w/v)~約6%(w/v)のナノシリケート、約3%(w/v)~約5%(w/v)のナノシリケート、約3%(w/v)~約4%(w/v)のナノシリケート、約4%(w/v)~約8%(w/v)のナノシリケート、約5%(w/v)~約7%(w/v)のナノシリケート、約3%(w/v)~約5%(w/v)のナノシリケート、約4%(w/v)~約6%(w/v)のナノシリケート、約5%(w/v)~約7%(w/v)のナノシリケート、又は約6%(w/v)~約8%(w/v)のナノシリケート)を含み得る。場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、約9%(w/v)のナノシリケート(例えば、シリケートナノプレートレット)を含み得る。いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、約2.5%~約6%(w/w)(約2.5%、約3.0%、約3.5%、約4.0%、約4.5%、約5.0%、約5.5%、及び約6.0%並びにこれらの間の全ての値及び範囲を含む)のナノシリケートを含む。いくつかの実施形態において、ヒドロゲルは、約3.0%~約4.0%(w/w)のナノシリケートを含む。いくつかの実施形態において、ヒドロゲルは、約3.25%~約3.75%(w/w)のナノシリケートを含む。いくつかの実施形態において、ヒドロゲルは、約4.0%~約5.5%(w/w)のナノシリケートを含む。いくつかの実施形態において、ヒドロゲルは、約4.25%~約5.25%(w/w)のナノシリケートを含む。いくつかの実施形態において、ヒドロゲルは、約4.5%~約5.0%(w/w)のナノシリケートを含む。いくつかの実施形態において、ヒドロゲルは、約2.75%、約3.0%、約3.25%、約3.5%、約3.75%、4.0%、約4.25%、約4.5%、約4.75%、約5.0%、約5.25%、又は約5.5%(w/w)のナノシリケートを含む。いくつかの実施形態において、ヒドロゲルは、約4.75%(w/w)のナノシリケートを含む。いくつかの実施形態において、ヒドロゲルは、約4%(w/w)のナノシリケートを含む。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、約3.5%(w/w)のナノシリケートを含む。本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、ゼラチン対ナノシリケートの任意の比を有し得る。例えば、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、約1:2~約1:9(例えば、約1:2~約1:8、約1:2~約1:7、約1:2~約1:6、約1:2~約1:5、約1:2~約1:4、約1:3~約1:9、約1:4~約1:9、約1:5~約1:9、約1:6~約1:9、約1:7~約1:9、約1:3~約1:8、約1:4~約1:7、約1:5~約1:6、約1:2~約1:4、約1:3~約1:6、約1:4~約1:7、又は約1:5~約1:8)のゼラチン対ナノシリケートの比を有し得る。場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、約1:6のゼラチン対ナノシリケートの比を有し得る。
【0024】
場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、水(例えば、超純水)を含み得る。場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、約1:5:6のゼラチン対ナノシリケート対水の比を有し得る。場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、約1:6:5のゼラチン対ナノシリケート対水の比を有し得る。
【0025】
本明細書で提供されるヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、任意の種類の放射線不透過性造影剤を含み得る。場合によっては、ヒドロゲル組成物は、単一の種類の放射線不透過性造影剤を含み得る。場合によっては、ヒドロゲル組成物は、2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上)の種類の放射線不透過性造影剤を含み得る。本明細書で提供されるヒドロゲル組成物中に含まれ得る放射線不透過性造影剤の例としては、限定されないが、ヨウ素化分子(例えば、イオヘキソール、イオプロミド、イオジキサノール、イオアグレート、イオタラメート、及びイオパミドール)、タンタル粒子(例えば、タンタルナノ粒子)、金ナノ粒子(AuNP)、エチルヨウ化油(ethiodized oil)(例えば、Lipiodol(登録商標))、ランタニド系造影剤、及びビスマスが挙げられる。本明細書で提供されるヒドロゲル組成物がタンタル粒子を含む場合、タンタル粒子は、任意の適切なサイズのタンタル粒子であり得る。場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物中に含まれるタンタル粒子は、本質的に同じサイズであり得る。場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物中に含まれるタンタル粒子は、異なるサイズを有し得る。本明細書で提供されるヒドロゲル組成物中に含まれ得るタンタル粒子の例としては、限定されないが、タンタルマイクロ粒子(例えば、約2μmの平均サイズを有するタンタル粒子)、及びタンタルナノ粒子(例えば、約25nm未満の平均サイズを有するタンタル粒子)が挙げられる。場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、約2μmの平均サイズを有するタンタル粒子を含み得る。場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、約30μmの平均サイズを有するタンタル粒子を含み得る。場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、約2nmの平均サイズを有するタンタル粒子を含み得る。いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、約1μm~約15μm(約2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、及び14μm並びにこれらの間の全ての値及び範囲を含む)の中央粒径を有するタンタル粒子を含む。いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、約2μm~約5μmの中央粒径を有するタンタル粒子を含む。
【0026】
本明細書で提供されるヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、任意の量の放射線不透過性造影剤を含み得る。例えば、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、約2%(w/w)~約30%(w/w)(例えば、約2%(w/w)~約25%(w/w)、約2%(w/w)~約20%(w/w)、約2%(w/w)~約15%(w/w)、約2%(w/w)~約10%(w/w)、約2%(w/w)~約5%(w/w)、約5%(w/w)~約30%(w/w)、約10%(w/w)~約30%(w/w)、約15%(w/w)~約30%(w/w)、約20%(w/w)~約30%(w/w)、約25%(w/w)~約30%(w/w)、約5%(w/w)~約25%(w/w)、約10%(w/w)~約20%(w/w)、約5%(w/w)~約10%(w/w)、約10%(w/w)~約15%(w/w)、約15%(w/w)~約20%(w/w)、又は約20%(w/w)~約25%(w/w))の放射線不透過性造影剤を含み得る。場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、約10%(w/w)の放射線不透過性造影剤(例えば、約10%(w/w)のイオヘキソール)を含み得る。場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、約10%(w/w)の放射線不透過性造影剤(例えば、約20%(w/w)のタンタルマイクロ粒子などのタンタル粒子)を含み得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、約10%(w/w)~約30%(w/w)(約15%、約20%、及び約25%、並びにそれらの全ての値及び範囲を含む)のタンタル粒子を含む。いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、約15%(w/w)~約25%(w/w)のタンタル粒子を含む。いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、約20%(w/w)のタンタル粒子を含む。
【0028】
本明細書で提供されるヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、任意の適切な方法を使用して(例えば、哺乳動物内で)可視化することができる。例えば、超音波検査、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴イメージング、及び/又は蛍光透視などのイメージング技術を使用して、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物を可視化することができる。
【0029】
場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、18%(w/v)のゼラチン、9%(w/v)のシリケートナノプレートレット、及び10%(w/w)のイオヘキソールを含み得る。
【0030】
場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、18%(w/v)のゼラチン、9%(w/v)のシリケートナノプレートレット、及び20%(w/w)のタンタルマイクロ粒子を含み得る。いくつかの実施形態では、本開示は、ゼラチン、シリケートナノプレートレット、及びタンタルマイクロ粒子を含むヒドロゲルを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、ゼラチン、シリケートナノプレートレット、タンタルマイクロ粒子、及び水(例えば、脱イオン水)から本質的になるヒドロゲルを提供する。
【0031】
いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、
約15%~約25%のタンタル粒子(w/w)、
約2.5%~約6%のシリケートナノプレートレット(w/w)、
約0.2%~約1.5%のゼラチン(w/w)、及び
水を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、
約17.5%~約22.5%のタンタル粒子(w/w)、
約3.5%~約6%のシリケートナノプレートレット(w/w)、
約0.6%~約1.0%のゼラチン(w/w)、及び
水を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、
約20%のタンタル粒子(w/w)、
約4.75%のシリケートナノプレートレット(w/w)、
約0.8%のゼラチン(w/w)、及び
水を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、
約15%~約25%のタンタル粒子(w/w)、
約2.0%~約5%のシリケートナノプレートレット(w/w)、
約0.4%~約0.8%のゼラチン(w/w)、及び
水を含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、
約20%のタンタル粒子(w/w)、
約4%のシリケートナノプレートレット(w/w)、
約0.7%のゼラチン(w/w)、及び
水を含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、
約17.5%~約22.5%のタンタル粒子(w/w)、
約2.5%~約4.5%のシリケートナノプレートレット(w/w)、
約0.5%~約0.7%のゼラチン(w/w)、及び
水を含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、本開示のヒドロゲルは、
約20%のタンタル粒子(w/w)、
約3.5%のシリケートナノプレートレット(w/w)、
約0.6%のゼラチン(w/w)、及び
水を含む。
【0038】
場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、生分解性であり得る。例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)内の血管に送達されるヒドロゲル組成物の体積は、経時的に減少し得る。場合によっては、哺乳動物(例えば、ヒト)内の血管に送達されるヒドロゲル組成物の体積は、経時的に少なくとも約25%(例えば、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約75%)減少し得る。場合によっては、哺乳動物(例えば、ヒト)内の血管に送達されるヒドロゲル組成物の体積は、送達後約28日間で減少し得る。場合によっては、哺乳動物(例えば、ヒト)内の血管に送達されるヒドロゲル組成物の体積は、送達後約28日間で約75%減少し得る。
【0039】
場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、剪断減粘性ヒドロゲル組成物であり得る。例えば、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物の粘度は、約10-11/sの剪断速度下で減少し得る。
【0040】
場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、血管(例えば、健康な血管又はコイルで塞栓された血管)の平均圧力よりも高い変位圧力を有し得る。例えば、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、約15KPa~約45KPaの変位圧力を有し得る。
【0041】
本明細書で提供されるヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、任意の適切な方法を使用して作製することができる。場合によっては、ゼラチン及び1つ以上のナノシリケートを最初に混合することができ、次いで、1つ以上の放射線不透過性造影剤を添加することができる。例えば、遠心混合、手動混合、高剪断分散、真空混合、ボルテックス、及び/又はシリンジ混合を、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤の混合(例えば、均一混合)に使用して、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物を作製することができる。場合によっては、ヒドロゲル組成物は、実施例1に記載されるように作製することができる。
【0042】
任意選択で、本発明のヒドロゲル組成物は、1つ以上の生物活性薬剤(例えば、塞栓剤、抗炎症剤、凝固を調節する薬剤、抗生物質剤、化学療法剤など)を含み得る。本発明のヒドロゲル組成物は、薬物、細胞、タンパク質、及び生物活性分子(例えば、抗体及び酵素)などの生物活性薬剤の担体又は足場として使用するために製剤化することができる。担体として、このような組成物は、種々の病的状態の治療のために、薬剤を組み込んで、体内の所望の部位に送達され得る。例示的な塞栓剤としては、例えば、ステンレス鋼コイル、吸収性ゼラチン綿撒糸及び粉末、ポリビニルアルコール発泡体、エタノール、接着剤などが挙げられる。例示的な止血剤としては、例えば、Celox、QuikClot、及びHemconが挙げられる。本発明のこのような実施形態における使用に適合させることができる特定の例示的な物質及び方法は、例えば、Hydrogels:Design,Synthesis and Application in Drug Delivery and Regenerative Medicine 1st Edition、Singh、Laverty及びDonnelly(編)、並びにHydrogels in Biology and Medicine(Polymer Science and Technology)UK ed.Edition、J.Michalekらで見られる。更に、足場として、本発明の組成物は、組織修復及び所望の組織の再生(例えば、軟骨、骨、網膜、脳、及び神経組織修復、血管再生、創傷治癒など)において使用するための細胞及び他の薬剤のための柔軟な滞留空間を提供することができる。
【0043】
場合によっては、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、滅菌することができる。任意の適切な方法を使用して、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物を滅菌することができる。例えば、照射(例えば、電離照射)、ガンマ線照射、電子ビーム照射、ガス(例えば、エチレンオキシド)ベースの照射、及び/又はX線照射を使用して、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物を滅菌することができる。場合によっては、ヒドロゲル組成物は、実施例1に記載されるように滅菌することができる。
【0044】
本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)を使用するための方法も本明細書で提供される。場合によっては、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、哺乳動物(例えば、ヒト)内における1つ以上の血管の塞栓術のために使用することができる。例えば、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、血管の塞栓術のために哺乳動物内の1つ以上の血管に送達され得る。場合によっては、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、送達されたヒドロゲル組成物の断片化を伴わずに、塞栓術のために使用することができる。場合によっては、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、ヒドロゲル組成物の移動を伴わずに塞栓術のために使用することができる。場合によっては、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、約35%未満(例えば、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、又は約10%未満)の再疎通率で塞栓術に使用することができる。
【0045】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達されて、血管内の血流を低減又は排除することができる。例えば、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達されて、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、又はそれ以上のパーセントで血管内の血流を減少させることができる。
【0046】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達されて、血管内で凝固を誘導することができる。例えば、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達されて、約20分未満(例えば、約15分未満、約12分未満、約10分未満、約8分未満、又は約3分未満)で血管内の凝固を誘導することができる。例えば、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達されて、血管内に、約0.5立方センチメートル(cm3)~約5cm3(例えば、約0.5cm3~約4.5cm3、約0.5cm3~約4cm3、約0.5cm3~約3.5cm3、約0.5cm3~約3cm3、約0.5cm3~約2.5cm3、約0.5cm3~約2cm3、約0.5cm3~約1.5cm3、約0.5cm3~約1cm3、約1cm3~約5cm3、約1.5cm3~約5cm3、約2cm3~約5cm3、約2.5cm3~約5cm3、約3cm3~約5cm3、約3.5cm3~約5cm3、約4cm3~約5cm3、約4.5cm3~約5cm3、約1cm3~約4.5cm3、約1.5cm3~約4cm3、約2cm3~約3.5cm3、約2.5cm3~約3cm3、約0.5cm3~約1.5cm3、約1.5cm3~約2.5cm3、約2.5cm3~約3.5cm3、又は約3.5cm3~約4.5cm3)の質量又はサイズ(例えば、体積)を有する血栓の形成を誘導することができる。
【0047】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、出血性障害を有する哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達されて、哺乳動物を治療することができる。例えば、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、哺乳動物内の1つ以上の腫瘍に栄養を与えている1つ以上の血管に送達されて、出血性障害に関連する血流を低減又は排除することができる。本明細書に記載されるように(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物を哺乳動物内の1つ以上の血管に送達することによって)治療することができる出血性障害の例としては、限定されないが、出血(例えば、非外傷性出血及び外傷性出血)、嚢状動脈瘤、血管奇形、エンドリーク、胃食道静脈瘤(例えば、出血性胃食道静脈瘤)、及び動静脈瘻が挙げられる。
【0048】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、1つ以上の腫瘍を有する哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達されて、哺乳動物を治療することができる。例えば、本明細書で提供されるヒドロゲル組成物は、哺乳動物内の1つ以上の腫瘍に栄養を与えている1つ以上の血管に送達されて、腫瘍への血流を低減又は排除することができる。場合によっては、腫瘍は悪性腫瘍であり得る。場合によっては、腫瘍は良性腫瘍であり得る。本明細書に記載されるように(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物を哺乳動物内の1つ以上の血管に送達することによって)治療することができる腫瘍の例としては、限定されないが、肝腫瘍、子宮筋腫、前立腺腫瘍、腎腫瘍、及び脳腫瘍が挙げられる。例えば、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の腫瘍に栄養を与えている1つ以上の血管に送達されて、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、95又はそれ以上のパーセントだけ腫瘍のサイズ(例えば、体積)を減少させることができる。
【0049】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)が哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達されるとき、哺乳動物は、塞栓術に関連する合併症を最小限に抑えるか、又は全く経験しないことができる。塞栓術に関連する合併症の例としては、限定されないが、血管痙攣、血栓形成、解離、破裂、壊死、穿刺部位での出血、及び穿刺部位での血腫が挙げられる。
【0050】
本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、任意の種類の哺乳動物内の1つ以上の血管に送達され得る。場合によっては、哺乳動物(例えば、ヒト)は、抗凝固処理され得る(例えば、1つ以上の抗凝固剤を服用し得る)。場合によっては、哺乳動物(例えば、ヒト)は、凝固障害(coagulopathic)であり得る(例えば、哺乳動物の血液が凝固する能力が損なわれている出血性障害を有し得る)。本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)が哺乳動物内の1つ以上の血管に送達され得る哺乳動物の例としては、限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、例えばサル、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、マウス、ラット、及びウサギが挙げられる。
【0051】
本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の任意の種類の血管に送達され得る。場合によっては、血管は罹患血管であり得る。場合によっては、血管は、損傷した血管であり得る。本明細書で提供されるヒドロゲル組成物が送達され得る血管の種類の例としては、限定されないが、動脈、静脈、及び毛細血管が挙げられる。本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)が動脈に送達されるとき、動脈は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の任意の動脈、例えば、腎動脈、腸骨動脈、胃動脈、前立腺動脈、又は腸間膜動脈であり得る。本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)が静脈に送達されるとき、静脈は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の任意の静脈、例えば、門脈及び骨盤静脈であり得る。
【0052】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、哺乳動物(例えば、ヒト)内のリンパ系に送達され得る。
【0053】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、エンドリーク(例えば、修復後の血管移植片のエンドリーク)の部位に送達され得る。
【0054】
本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、哺乳動物(例えば、ヒト)内の任意のサイズの血管に送達され得る。場合によっては、血管は、約50マイクロメートル~約10,000マイクロメートル(1cm)(例えば、約50マイクロメートル~約5,000マイクロメートル、約50マイクロメートル~約1,500マイクロメートル、約50マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約50マイクロメートル~約900マイクロメートル、約50マイクロメートル~約800マイクロメートル、約50マイクロメートル~約700マイクロメートル、約50マイクロメートル~約600マイクロメートル、約50マイクロメートル~約500マイクロメートル、約50マイクロメートル~約400マイクロメートル、約50マイクロメートル~約300マイクロメートル、約50マイクロメートル~約200マイクロメートル、約50マイクロメートル~約100マイクロメートル、約100マイクロメートル~約10,000マイクロメートル、約200マイクロメートル~約10,000マイクロメートル、約300マイクロメートル~約10,000マイクロメートル、約400マイクロメートル~約10,000マイクロメートル、約500マイクロメートル~約10,000マイクロメートル、約600マイクロメートル~約10,000マイクロメートル、約700マイクロメートル~約10,000マイクロメートル、約800マイクロメートル~約10,000マイクロメートル、約900マイクロメートル~約10,000マイクロメートル、約1,000マイクロメートル~約10,000マイクロメートル、約5,000マイクロメートル~約10,000マイクロメートル、約100マイクロメートル~約5,000マイクロメートル、約200マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約300マイクロメートル~約900マイクロメートル、約400マイクロメートル~約800マイクロメートル、約500マイクロメートル~約700マイクロメートル、約100マイクロメートル~約400マイクロメートル、約200マイクロメートル~約500マイクロメートル、約300マイクロメートル~約600マイクロメートル、約400マイクロメートル~約700マイクロメートル、約500マイクロメートル~約800マイクロメートル、約600マイクロメートル~約900マイクロメートル、又は約700マイクロメートル~約1,000マイクロメートル)の直径(例えば、管腔径)を有し得る。
【0055】
本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)を哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達するとき、任意の適切な送達方法を使用することができる。場合によっては、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、血管(例えば、塞栓術を必要とする血管)に直接注入することによって、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達され得る。場合によっては、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、カテーテル誘導送達によって(例えば、塞栓術を必要とする血管に挿入されたカテーテルを介して)、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達され得る。本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)が、カテーテル誘導送達によって哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達されるとき、任意の種類のカテーテル(例えば、Bernsteinカテーテル、マイクロカテーテル、Cobraカテーテル、Fogartyバルーン、及びProGreatカテーテル)を使用することができる。本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)が、カテーテル誘導送達によって哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達されるとき、任意のサイズのカテーテルを使用することができる。例えば、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、約2.8フレンチ~約5フレンチのサイズを有するカテーテルを使用して、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達され得る。
【0056】
本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、任意の送達速度で哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達され得る。例えば、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、約1mL/分~約2mL/分の速度で哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達され得る。
【0057】
任意の量の本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)が、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達され得る。例えば、約2mL~約5mL(例えば、約2mL~約4mL、約2mL~約3mL、約3mL~約5mL、約4mL~約5mL、約2mL~約3mL、又は約3mL~約4mL)の、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)が、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達され得る。
【0058】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)が、哺乳動物(例えば、ヒト)内における1つ以上の血管の塞栓術のために使用された後、ヒドロゲル組成物は、血管から回収され得る。例えば、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)が、血管の塞栓術のために哺乳動物内の1つ以上の血管に送達された後、ヒドロゲル組成物は回収され、血管を通る血流を増加させる(例えば、回復させる)ことができる。任意の適切な方法を使用して、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物を哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管から回収することができる。例えば、吸引カテーテル(例えば、送達カテーテルを通した吸引)及び外科的除去を使用して、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物を哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管から回収することができる。
【0059】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、塞栓術に使用される唯一の活性薬剤として、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達され得る。
【0060】
場合によっては、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、塞栓術に使用される1つ以上の追加の薬剤と組み合わせて、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達され得る。例えば、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)は、固体塞栓物質(例えば、コイル、粒子、発泡体、プラグ、ミクロスフェア、及び/又はビーズ)、液体塞栓物質(例えば、ブチルシアノアクリレート(n-BCA)、及びOnyx(登録商標))と組み合わせて、哺乳動物(例えば、ヒト)内の1つ以上の血管に送達され得る。
【0061】
本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物(例えば、ゼラチン、1つ以上のナノシリケート、及び1つ以上の放射線不透過性造影剤を含むヒドロゲル組成物)が、塞栓術に使用される追加の薬剤と組み合わせて使用される場合、1つ以上の追加の薬剤は、同時に(例えば、同じ組成物中、又は別個の組成物中で)、又は独立して投与され得る。例えば、本明細書で提供される1つ以上のヒドロゲル組成物を最初に投与し、次に1つ以上の追加の薬剤を投与することができ、又はその逆も可能である。
【0062】
本発明を以下の実施例において更に説明する。これらは特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではない。
実施例
実施例1:迅速な動脈塞栓術のためのカテーテル誘導注入可能な生体物質
大腿動脈閉塞のラットモデルにおけるGEM性能の評価
ゲル状塞栓剤に関する主な懸念は、送達中に断片化する可能性があることで、これは、非標的の遠位塞栓及び意図されない組織虚血につながり得る。高速及び高圧の血管系におけるGEMの安定性を評価するために、大腿動脈閉塞のラットモデルを作製した。このモデルでは、大腿動脈(FA)における動脈の流れがGEMで閉塞されている。しかし、遠位後肢への流れは、側副流によって保たれている。GEMのあらゆる破壊は、ラットの後肢において遠位に移動し、その指又は肢への灌流の喪失として現れる。GEMをFAに直接送達した後(
図1A、B)、高解像度レーザースペックルコントラストイメージング(LSCI)は、動脈の流れがないことを示し(
図1C、D)、GEMによる動脈の閉塞が確認された。側副枝を介した後肢への流れを実証するために、2フレンチマイクロカテーテルを頸動脈穿刺から遠位大動脈に送達し、イオヘキソール系造影剤を使用するデジタルサブトラクション血管造影(DSA)を実施した。これにより、FA閉塞及び側副血管の開存性が確認され、血流がFAの閉塞セグメントを迂回することが可能になった(
図1E)。FA塞栓術後、ラットを0、3、7、又は21日間生存させ、LSCIを使用して後肢灌流の連続評価を行った(
図1F、G)。LSCIデータは、指への後肢灌流が保たれていることを示しており、FA中のGEMが、遠位動脈系への断片化なしに注入部位に残っていることを示していた。Tarlovスケールを用いたラットの運動評価もまた、GEMを用いたFA塞栓術後に正常な運動活性を示しており、これは、後肢への持続的な側副灌流を示す血管造影と一致する。
【0063】
FAにおけるGEMの耐久性及び生分解性を評価するために、定量的マイクロCTイメージング及び組織学検査を0、3、7、及び21日目に行った。10マイクロメートル解像度でのFAの軸方向画像は、外側回旋動脈などのより小さな曲がりくねった側枝を含む、FA管腔の均一なキャスティングを実証した(
図1H)。GEMがより細い動脈枝に入り込む能力は、これにより出血シナリオにおいて逆行性出血を防止することができるので、重要な特性である。マイクロCT画像では、生分解の進行(
図1H)、及び線維性組織による生体物質の置換を伴う動脈の持続的な閉塞が実証され、これは組織学検査によって確認された(
図1I)。経時的なマイクロCTデータセットの広範な3D形態計測解析(
図7A~D)により、動脈管腔内部の物質リモデリングに関連する構造変化が裏付けられた。
【0064】
FAのGEM塞栓術により、動脈管腔の初期拡張及び動脈壁の薄化が引き起こされ、21日後、GEMが生分解し、リモデリングして動脈壁張力を低下させ、動脈管腔面積を減少させるにつれて、動脈壁は厚くなる(
図7E~L)。GEM塞栓術に対する免疫反応を評価するために、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)及びCD68免疫染色を行った(
図7G~H)。動脈管腔内のMPO染色細胞の数は、塞栓術後3日目にピークに達し(
図7K)、好中球が末梢から動脈管腔に浸潤したときのGEMに対する急性炎症応答と一致した。対照的に、CD68染色細胞は、塞栓術後21日目にピークに達し(
図7L)、単球/マクロファージが、塞栓された動脈管腔の線維性リモデリングプロセスにおいて役割を果たすことを示唆していた。
【0065】
抗凝固療法施行中のGEM塞栓術の有効性を評価するために、300秒にわたる活性化凝固時間(ACT)値を有するヘパリン添加ラットにおいて、FA閉塞のラットモデルを繰り返した(
図8)。マイクロCT画像は、ヘパリン処理がFAにおけるGEMの形態計測を変化させなかったことを示した(
図8D)。更に、LASCI画像は、ヘパリン処理ラットと未処理ラットとの間で後肢の遠位灌流に差がないことを示し(
図8E)、組織学検査では、FA管腔の持続的キャスティングの存在が確認された(
図8F、G)。ラットのこのコホートにおいて、GEMは、移動、断片化又は再疎通なしにFAの注入部位に局在化したままであり、このことは、GEMが、移動及び非標的塞栓を防ぐためにGEM-血液界面における血栓形成に依存しないことを示唆した。
【0066】
GEM塞栓術に対する全身応答を評価するために、0、3、7、及び21日目に単離したラット血清を用いて、27種のサイトカイン及びケモカインの定量的評価を行った。結果は、ベースラインと比較して、血清サンプル中のTNF-α、IL-1β、IL-6、及びMIP-1αなどの炎症誘発性メディエーターの有意な増加がなかったことを示す。対照的に、IL-1α、IL-10、及びIL-4などの抗炎症性サイトカインの有意な増加があり、7日目にピークに達し、21日目までにベースラインに戻った。これらは、動脈内GEM注入が全身性の炎症誘発性サイトカイン応答を引き起こさなかったことを示唆し、その生体適合性及び安全性プロファイルが更に裏付けられた(表1)。
【0067】
表1.ラットにおける大腿動脈塞栓術後のサイトカイン及びケモカインの血清レベル。大腿動脈塞栓術の3、7、及び21日後にラット血清中で測定されたサイトカイン及びケモカインのマルチプレックス解析。結果は、分散分析を使用して、0日目のベースラインと比較して、7日目にピークに達し、次いで21日目までに低下した、IL-1a、IL-10、及びIL-4レベルの有意な増加を示す。0日目のベースライン対照と比較して、炎症性サイトカインの血清レベルに変化はなかった。結果は平均±SEMである。単位はpg/ml、各群n=6(
*P<0.05、
**P<0.01;n=6)。
【表1】
【0068】
大型動物モデルにおける塞栓術を可能にするためのGEM可視性の増強
塞栓術のブタモデルにおいてGEMを試験する前に、リアルタイムX線蛍光透視中のGEMの可視化を最適化したが、これは、標的化及び制御された送達を達成するために重要であるためである。臨床的には、塞栓術のために今日使用されている金属コイルは、蛍光透視中に視認可能であるが、CTイメージング、MRI、及びUSに伴う大きなアーチファクトを生成する。アーチファクトによる塞栓術後の介入の結果を評価できないことは、今日の臨床診療における大きな後退である。ここでは、CT、MRI、US及び蛍光透視を含む全てのイメージングモダリティにおいて、大きなアーチファクトなしに、GEM及び局所解剖学的可視化を可能にするGEM用の製剤が示される。
【0069】
ラット実験において、10%イオヘキソールを用いて作製されたGEMは、
図1Eに示されるように、蛍光透視イメージングによる可視化には不十分であった。GEMの可視化を改善するために、タンタル(Ta)微粒子が既に様々な医療デバイスで臨床使用されていることから、Ta微粒子を使用した。蛍光透視中に可視化を可能にするのに十分な放射線不透過性を導入するために、SpeedMixerを使用して、2μmの平均サイズを有するTaマイクロ粒子又はTaナノ粒子をGEMと混合して、Ta-GEM(例えば、2~30%w/w Ta-GEM)を形成した。CTファントム試験(
図2A、B)では、20%タンタルと混合されたGEMが、ストリークアーチファクトを全く生じることなく、満足できる可視性を得ることができた。蛍光透視実験では、ナノTaがGEM全体に均一に分布することができず、可視性が悪いことを示した。そのため、その後の実験では、GEM中のマイクロメートルサイズのTa粒子を使用した(
図2C、D)。in vivoでのTa-GEMの可視性を試験するために、21G針を使用して超音波ガイダンス下でブタ肝臓の肝静脈に経皮的にアクセスした。リアルタイムで、Ta-GEM注入中にUS及び蛍光透視イメージングの両方を実施したところ、十分な可視性を示した(
図2E、F)。USイメージングは、GEMがエコー源性であり、直接可視化を可能にすることを示した。更に、剪断波USイメージングは、Taを有する他のサンプルと比較した場合、Taを追加して塞栓剤の剛性が大幅に増大しないことを示した(
図2G)。次に、シリンジに装填された20%Ta-GEMの標準T1及びT2ベースのMRIを行った。予想どおり、T1シーケンスは暗い画像を生成し、T2ベースのシーケンスは明るい画像を生成した。これは、TaのMR特性及びGEMのヒドロゲルの性質から予想されたことである(
図2H~K)。マイクロCT、CT、MRI、及び走査型電子顕微鏡イメージングを含むGEMの分析により、GEM中のTaの均一分散が一貫して実証され、効率的な速度混合技術が示された。これは、イメージング中に均一なシグナルを提供するために重要である(
図2L、M)。
【0070】
Ta-GEM注入性及び剪断減粘特性の評価
臨床カテーテルに接続されシリンジに充填されたTa-GEMを手で注入できることが、GEMの設計における重要な実用要件であった。Ta-GEMが経カテーテル送達に好適であるかどうかを判断するために、2.8フレンチ及び5フレンチの臨床カテーテルを通したGEM及びTa-GEMの注入性を、それぞれ圧縮試験を用いて調べた(
図3A)。両方の系において、Ta-GEMは、GEMに匹敵する注入性を実証し、Ta粒子の添加が注入性に影響を及ぼさなかったことを示唆した(
図3B~E)。次に、送達を中断した場合の効果について調査した。注入力に対する有意な影響はここでも観察されなかった(
図3F)。塞栓術をリアルタイムで評価しながら間欠送達を実行できることは、重要な特性であり、今日、現在の技術では不可能である。
【0071】
注入性に加えて、GEMの機械的特性に対するTaマイクロ粒子の影響を、レオロジー試験を用いて分析した。GEM及びTa-GEMの流動曲線は、類似の剪断減粘特性を実証する(
図3G)。GEM及びTa-GEMの塞栓強度を評価するために、振幅振動試験を実施して、それらの貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’を測定した。
図3Hは、GEM及びTa-GEMの両方が粘弾性であり、G’’の約10倍であるG’値を有することを実証する。更に、GEMと比較してTa-GEMではG’(0.1%歪みで測定)の有意な変化は観察されず(
図3I)、TaがGEMの機械的特性に及ぼす影響は最小限であることが示唆された。これらの結果は、GEMとTa-GEMの塞栓強度が匹敵していることを示唆した。これは、in vitro塞栓実験によって更に確認された(
図3J~L)。GEM及びTa-GEMの変位圧力は類似(それぞれ35.8±3.9KPa及び33.2±2.6KPa;p=0.5)しているが、コイル単独よりも有意に高かった(9.9±1.5KPa、p<0.0001)。より重要なことに、Ta-GEMがコイルと組み合わされるとき、変位圧力は、234.5±21.4KPaに達するか、又はヒトにおける標準的な生理的収縮期圧よりもほぼ15倍大きい。コイルと組み合わされたGEMからの追加の強度は、Ta粒子とコイルとの間の摩擦が増大したためと考えられる。
【0072】
GEM血栓形成性に対するタンタルの効果
Ta-GEMの増強された血栓形成性は、血管閉塞を達成するための塞栓剤における好ましい特性である。Ta-GEMと混合したクエン酸添加ヒト血液のアリコートにおける血液凝固を、患者に使用される標準コイルと比較した。両方のコイル、GEM及びTa-GEMは、血液単独と比較した場合、凝固促進特性を示した。しかし、血餅の質量を測定すると、Ta-GEMは、GEM及び血液単独と比較して、3分後から質量の有意な上昇を示した(
図9A、B)。これらの結果は、Ta-GEMが血餅形成特性を増強し、これが血液-GEM界面で塞栓物質を更に安定化させ得ることを示唆する。
【0073】
GEM滅菌
Ta-GEMを滅菌するために、卓上型X線照射器(RS2000、RAD.SOURCE)を使用した。細菌及び真菌を根絶するのに十分である、GEMへの12000ラドの総線量の11cGy/分の電離放射線曝露の後、照射されたサンプルにおいて検出可能な微生物増殖はなく、その無菌性が確認された(
図9C)。更に、実験室のベンチトップ上、非滅菌条件で調製されたGEMもまた、微生物増殖のエビデンスを示さず、GEM自体の組成物が抗菌性であることを示唆した。
【0074】
塞栓術のブタモデルにおけるTa-GEMの試験
GEMの塞栓効果をブタ動脈系で試験した。実験は、極度の抗凝固状態における一次動脈の塞栓術におけるコイルと比較したGEMの性能を評価するように設計された。止血を達成することができなかったコイルが、コイル塊へのGEM注入によってその後救済され得るかどうか、及びGEMが注入後に動脈から回収され得るかどうかも調査した。今日、抗凝固状態で止血を達成することができる塞栓コイル、又は送達後に除去されるように設計されたコイルはない。
【0075】
GEMを用いたブタモデルにおける腸骨動脈塞栓術
臨床ツール及びイメージング機器を使用して、ワイヤ及びカテーテルの組み合わせを使用して、カテーテル先端を遠位腹部大動脈に送達した。デジタルサブトラクション血管造影(DSA)では、大動脈が一対の外腸骨動脈と内腸骨動脈に分かれているのが特徴的であった。20~30,000単位のヘパリンを静注して、ACT300秒超を達成した後、腸骨動脈にカテーテルを挿入した。続いて、腸骨動脈の約6~7cmを、5フレンチのBernsteinカテーテル又は2.8フレンチのマイクロカテーテルを介して、GEMで塞栓した(
図4;in vivoでのGEMのリアルタイム送達を
図10A~Cに示す)。塞栓術後の大動脈分岐部からのDSAは、標的動脈の即時かつ完全な限局性閉塞を実証した(
図4D、白色の矢印)。比較するのに、種々の長さの取り外し可能な0.018インチ(0.0457cm)又は0.035インチ(0.0889cm)厚のコイルを使用して、対側腸骨動脈を塞栓した。ACA300を超える状態で約50~80cmのコイルを展開したにもかかわらず、これらのコイルは、実験期間中に止血を達成せず、これは臨床経験と一致する(
図4D、E;黒色の矢印)。更に、平均して、GEMを用いた塞栓時間は、コイル塞栓術よりも40倍速く、P<0.00001(
図4D)であり、これは、GEMの独特の側面であるGEM送達の単純さ及び実用性を実証している。
【0076】
次に、一貫して閉塞及び止血を達成できなかったコイル(例えば、
図4D)が、GEMの注入によって救済され得るかどうかを試験した。コイルが抗凝固状態で機能しなかった8例において、コイル塊の近位端に2~3mLのGEMを注入することで、即時止血及び閉塞が可能になった(
図4F)。剖検後に採取された塞栓セグメントのマイクロCTイメージングは、高解像度イメージングであってもCTイメージングアーチファクトがなく、GEMによる腸骨動脈の均一なキャスティングを実証し、介入の成果を評価することができた(
図4G、矢頭)。しかし、コイルで塞栓された隣接する動脈セグメントでは、塞栓された隣接する動脈の評価を妨げる大きなストリークアーチファクトが認められた(
図4G、白色の矢印)。これらのストリークアーチファクトは、CTスキャンを受ける患者に共通して見られる。これらは、治療領域の評価が制限され、脳動脈瘤の症例では、塞栓効果を評価するために侵襲的な血管造影を行うことが多くなる。
【0077】
塞栓術では、常に非標的塞栓が懸念される。安全機構として、意図しない又は偶発的な非標的塞栓が発生した場合に、GEMを回収できるかどうかを評価した。5例では、GEMを用いて腸骨動脈を塞栓し、最大3時間後、脳卒中血栓摘出用にFDAが承認したデバイスであり、流れを回復させる、Penumbra Aspirationカテーテルシステムを使用してGEMを完全に回収した(
図4H~J;
図10E~H)。これらの結果は、GEMを回収できたことを示している。これらの結果はまた、例えば血管外傷患者において、一時的な塞栓術でGEMを回収し、正常な流れを取り戻す可能性があることを初めて示唆するものである。
【0078】
GEMを用いた腸骨動脈塞栓術のブタモデルにおける生存実験
抗凝固のために毎日抗血小板療法を受けながら、ブタ腸骨動脈の塞栓術においてGEMを使用した長期転帰について調査した。塞栓術後28日まで生存した後、動物に造影CT血管造影(CTA)を実施し、次いで屠殺した。16例の動物全てが、各時点で持続的な塞栓を示し、CTAイメージングにおいて非標的塞栓のエビデンスはなかった(
図5)。塞栓された腸骨動脈はGEMで閉塞され、再疎通を示唆する流れはなかった。側副枝を介した大動脈から足首への下後肢灌流も保たれた(
図11A~C)。骨盤又は後肢筋区画内には、GEMの断片化及び脱落を示唆する焦点の明るいスポットはなかった(
図11B)。認定放射線科医によるブタCTA画像の全般的な検討では、所見は問題がないと認められた(
図11D~L)。例えば、リンパ節腫脹のエビデンスはなく、肺、脾臓、腎臓、及び肝臓を含む固形臓器は正常であった。続いて、剖検時に、これらの臓器からの標本も組織学的評価のために収集した。認定病理医によるこれらのスライドの検討では、正常な所見が示された。剖検時、骨盤動脈も解剖し、高解像度マイクロCTスキャナを使用して直ちに画像化した。マイクロCTデータと対応する組織学検査切片を比較した画像解析では、4週間でGEMの生分解が進行していることが明らかになった(
図5)。700Gb~1TBの範囲のマイクロCTデータセットを用いて腸骨動脈をセグメント化し3D再構成したところ、GEMの容積が徐々に減少し(
図5B、各動脈内の黒色はGEM)、塞栓された動脈の管腔径が減少していることが示された。4週間後、マイクロCT体積分析により、GEMの約75%が生分解していることが明らかになった(
図5D)。0日目に、対応する組織学検査画像は、腸骨動脈の均一な閉塞を示し、顕著な組織反応はなく、細胞浸潤はなかった(
図5A)。しかし、経時的に、マクロファージ、筋線維芽細胞及び肉芽組織に似たフィブリンに富んだ動脈管腔で、同心円状の線維炎症反応が起こる。GEMが徐々に結合組織に置き換わるにつれて、生体物質はMPO陽性顆粒球及び散在する多核巨細胞で浸潤されるようになる。顆粒球の大部分は動脈の管腔内にあり(
図5A及び
図12)、内弾性板及び外弾性板の両方は、内膜層及び中膜層の弾性線維の破壊及び中膜層の顕著な線維化を伴う破壊のエビデンスを示した(
図5A、
図12C~E)。管腔の線維化の進行に伴い、GEM塞栓による最初の拡張から4週間後には管腔径が減少した(
図5、H&E及びトリクローム染色)。動脈の内側厚は、ラット動脈壁とは対照的に、4週間にわたって変化しなかった。
【0079】
GEMに対する全身毒性及び炎症応答を評価するために、全血球計算(CBC)、基礎代謝パネル(BMP)、肝機能検査(LFT)、及びサイトカインアレイ解析を行った。塞栓術前のサンプルを、切迫屠殺直前に得た血液サンプルと比較した。CBC、LFT及びBMPを含む塞栓術前後の血液検査では、問題はないことが認められた(P>0.05、表2)。これは、GEMが血小板を消費せず、急性期反応物質を活性化し、感染のために白血球数を増加させず、又は固形臓器を損傷しないことを示しているため、重要な結果である。塞栓前後の血液のサイトカインアレイ解析では、炎症の兆候は見られず、塞栓後のサンプルにおいてほとんどの因子が減少した(表3)。これらの血液検査、サイトカイン解析、組織学検査、及びブタの断面イメージングは、GEMが生体適合性であり、有害な全身応答のエビデンスなしに安全であることを更に実証する。
【0080】
表2.GEMによる動脈塞栓術後のブタにおける全血球計算及び血清化学プロファイル。表は、内腸骨動脈塞栓術の0、1、2、又は4週間後に測定した血液値を示す。WBC、白血球;HTC、ヘマトクリット;MCHC、平均赤血球ヘモグロビン濃度;MCV、平均赤血球容積;RDW、赤血球分布幅;HGB、ヘモグロビン;RBC、赤血球;MPV、平均血小板容積:ALP、アルカリホスファターゼ、CRE、クレアチニン;ALT、アラニンアミノトランスフェラーゼ;BUN、血中尿素窒素。全ての測定値はヨークシャーブタの正常範囲内に留まった。結果は、平均±SEM、単位、ピコグラム/mL、各群n=4である(
*P<0.05)。
【表2】
【0081】
表3.ブタにおける動脈塞栓術後のサイトカイン及びケモカインの血清レベル。内腸骨動脈塞栓術の0、1、2、又は4週間後のサイトカイン及びケモカインのマルチプレックス解析。結果では、全ての測定値において、有意な増加は示されなかった。結果は、平均±SEM、単位、ピコグラム/mL、各群n=4である。GM-CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子;IFNγ、インターフェロンガンマ;IL、インターロイキン;TNF、腫瘍壊死因子。
【表3】
【0082】
GEMを用いた腎動脈塞栓術のブタモデルにおける生存実験
腸骨動脈塞栓術は、28日間にわたり、GEMが永久閉塞(例えば、塞栓術が安定していることを示す血管造影イメージング上の貫流のエビデンスが全くない動脈閉塞)で安定していることを実証した。しかし、塞栓された腸骨動脈より遠位のCT画像で造影の増強が認められたため、塞栓された動脈セグメントの再疎通を確実に否定することはできなかった。これは、塞栓されたセグメントを迂回する広範な骨盤横断側副流又は再疎通によるものであり得る。経時的なGEMの再疎通の可能性を評価するために、16例のブタの主腎動脈を塞栓した。腎臓は、末端器官動脈で構成されており、主腎動脈の塞栓術が成功すると、腎臓の遠位虚血及び萎縮が生じる。しかし、GEMの任意の再疎通が生じると、血流が回復し、萎縮が減少又は消失する。更に、腎動脈は末端動脈であるため、GEMにより塞栓できる最小の血管も、組織学検査により判定及び確認された。
【0083】
5フレンチのCobraカテーテルを使用して、主腎動脈にカテーテルを挿入し、DSAイメージングによって確認した(
図6A)。続いて、2~3mLのGEMを注入し、即座に動脈をキャスティングして閉塞させた(
図6B)。Cobraカテーテルを使用した大動脈からのDSAイメージングは、一貫して腎動脈の完全閉塞を示した。剖検の直前に、臨床CTスキャナを使用したイメージングが行われた(
図6C~E)。これらは、28日間の試験期間中に、塞栓された腎臓に血液が流れず、萎縮が進行していることを明らかにした。4週目までに、塞栓された腎臓は、塞栓された腎動脈又は任意の遠位動脈セグメントにおけるいかなる流れもなく、一貫して約4倍の腎容積の減少を示した(
図6F~K)。これらのデータは、再疎通のエビデンスがないことを示唆している。次に、断片化及び非標的塞栓のあらゆるエビデンスについて評価した。腎臓は末端器官の動脈であるため、5~8マイクロメートルの毛細血管があらゆる剥がれたGEMを捕捉し、マイクロCT、近赤外スペクトルイメージング、及び組織学検査によって可視化される(
図13)。この広範な分析により、腎臓の皮質にはGEMのエビデンスが全く含まれていないことが明らかになった。更なる分析において、GEMが流入できる最小の動脈を判定するために、4フレンチのFogartyバルーンを主腎動脈内で膨張させてその位置を固定し、続いてこのFogartyカテーテルを通してGEMを注入した。Fogartyバルーンが近位の変位を示したときに注入を停止した(
図13)。その後の高解像度マイクロCTイメージングにより、測定された約320マイクロメートルで最小の動脈GEMを検出できることが明らかになった(
図13D~F)。更に、軸方向画像及び再フォーマットされた冠状画像を使用した認定放射線科医による胸部の評価では、腎細動脈から毛細血管への塞栓物質の移動を示唆する限局性の過密(hyperdensity)又は無気肺のエビデンスを示さなかった(
図11E~F)。脳及び四肢指の軸方向、冠状及び矢状方向の画像もまた、非標的塞栓について、及び虚血性変化又は微小血管梗塞のあらゆるエビデンスについて陰性であった(
図11)。
【0084】
ブタ腎動脈におけるゼラチンベースのゲルフォーム塞栓術
GEMの塞栓性能を、今日臨床的に出血管理に使用されているゲルフォームと比較した。GEMで使用されるゼラチンと同様に、ゲルフォームもブタゼラチンから構成される。予め切断したゲルフォーム(EmboCube,Meritt Medical)を50%v/v生理食塩水及び50%イオヘキソールと混合してスラリーを作製した。続いて、これらを使用して腎動脈を塞栓し、即時閉塞させた(
図6L~M)。2週間の生存後、臨床CTスキャナを用いて動物を画像化した。これらの画像は、腎動脈内の再疎通及び持続的な血流から生じる腎臓の造影増強を実証した(
図6N)。これは、剖検及び組織学検査において腎動脈内部にゲルフォームが存在しないことによって確認された。これらのデータは、GEMが、今日塞栓術に使用されている現在の臨床ツールであるコイル及びゲルフォームよりも性能が優れていることを示唆している。
【0085】
実験の部
GEM合成及び滅菌
イオヘキソール非含有GEMは、18%(w/v)のゼラチン(A型,Sigma Aldrich,St.Louis,MO,USA)、9%(w/v)のシリケートナノプレートレット(Laponite XLG,BYK USA Inc.,Rochester Hills,MI,USA)及び超純水を1:6:5の重量比で、他の箇所で説明されているように混合することによって調製した(例えば、Averyら,Sci.Transl.Med.,8:365ra156(2016)、及びGaharwarら,ACS Nano.,8:9833(2014)を参照されたい)。放射線不透過性を導入するために、GEMをイオヘキソール又はタンタル粒子と混合した。イオヘキソール溶液(Omnipaque350mgI/mL,GE HealthCare,MA)をGEMに混合して、最終濃度10%w/wを達成した。平均サイズが2μmのタンタルマイクロ粒子(Ta)(Alfa Aesar,Haverhill,MA,USA)又は粒径が25nm未満のタンタルナノ粒子(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を、様々なw/wレベルでGEMと混合して、GEM-Taヒドロゲル(例えば、20%w/wのTa-GEM)を形成した。SpeedMixer(FlackTek Inc.,Landrum,SC)を使用することによって、全てのGEM製剤の均一な混合を達成した。GEMを滅菌するために、RS2000照射システム(RAD.SOURCE)を使用して、細菌及び真菌を根絶するための確立されたプロトコルに基づいて、160kV、25mAの電離照射線量(11cGy/分に相当)に合計12000ラドで、GEMを装填したシリンジを曝露した。無菌性を確認するために、100mg/mLのアンピシリンの有無で、LB寒天プレート又はLBブロスを使用する標準的な微生物増殖アッセイを行った。107~108CFUの化学的に適格な大腸菌を収容するLBブロスチューブを陽性対照として使用した。0.1mLのPBSのみを有するLBブロスチューブを陰性対照として用いた。GEMバッチ及び各対照から四連のチューブを調製し、37℃インキュベーター内の振盪プラットフォーム上で最大7日間インキュベートした。分析は、Averyら,Sci.Transl.Med.,8:365ra156(2016)に記載されているように実施した。
【0086】
レオロジー試験
流動曲線及び振幅掃引を、他の箇所で説明されているように実施した(例えば、Averyら,Sci.Transl.Med.,8:365ra156(2016)を参照されたい)。Anton Paar MCR 302レオメータ(Anton Paar USA Inc.,Torrance,CA,USA)を使用して、GEMのレオロジー評価を行った。間に500μmの間隙を有する、サンドブラスト加工された直径25mmのアルミニウム上部プレート及びアルミニウム下部プレートを、全ての測定に使用した。流動曲線及び振幅掃引(10rad/s)を25℃及び37℃で得た。37℃での試験では、溶媒トラップを使用し、溶媒トラップの縁を水で満たして加湿環境を提供した。各実験について少なくとも三連でデータを取得した。
【0087】
GEM注入性の分析
以前に確立されたプロトコルに従って、100Nのロードセル(Instron,Norwood,MA)を備えた機械試験機を使用して、注入性を検査した。簡潔には、GEMを1mL又は3mLルアーロックシリンジ(Medallion,Merit Medical,South Jordan,UT)に装填し、それぞれ110cm2.8フレンチのProGreatカテーテル(Terumo Medical Corporation,Somerset,NJ,USA)又は100センチメートル5FのBernsteinカテーテル(Cook Medical Inc,Bloomington,IN)を通して注入した。GEM収容シリンジを、カスタム設計された3Dプリントホルダの内側に挿入し、プランジャをロードセルプレートに対して配置した。5F及び2.8Fに対してそれぞれ2mL/分又は1mL/分のいずれかの速度で圧縮力を適用した。臨床診療中の注入をシミュレートするために、中断された圧縮力も10秒間適用し、続いて5秒間休止した。このサイクルを、5フレンチのカテーテルを通して8回繰り返した。Bluehillバージョン-3ソフトウェア(Instron,Norwood,MA,US)を使用して、生成された経時的な破断力及び注入力を取得し、プロットした。注入性試験を、各条件について少なくとも5回繰り返した。
【0088】
血液凝固時間に対するGEMの効果の評価
凝固時間及び血栓重量を、他の箇所で説明されているように定量化した(例えば、Averyら,Sci.Transl.Med.,8:365ra156(2016)、及びGaharwarら,ACS Nano.,8:9833(2014)を参照されたい)。簡潔に述べると、0.5グラムのGEMアリコートを2mLマイクロチューブに秤量した。GEMを1000RPMで遠心分離して、血液相互作用表面を標準化した。10%(v/v)0.1MのCaCl2を添加することによって、凝固していないクエン酸添加血液を再活性化した。100μLの活性化血液を各GEMサンプルに添加し、3、8、10、12、15、又は20分間反応させた。各時点で、200μLの0.109Mクエン酸ナトリウム溶液を添加することによって、凝固を停止させた。残留液体を除去し、凝固した血液を単離した。凝固した血液を各試験管で秤量して、質量を求めた。
【0089】
大腿動脈閉塞のラットモデル
全てのin vivo試験は、施設動物管理使用委員会(IACUC)によって承認され、連邦及び施設のガイドラインに従って行われた。右大腿動脈を、大腿静脈及び大腿神経から離れた近位深動脈と浅後腹壁動脈との間で切開した。2本の4-0絹結紮糸を遠位端及び近位端の周りに巻き付け、注入時に動脈セグメントを操作し、安定化させた。微小血管クランプを、深部枝(profunda branch)の遠位に配置した。27ゲージ針を用いたGEM注入後、ラットを無作為に4つの群に分け、0、3、7、又は21日間生存させた(各群n=6)。0日目の時点のラットを、GEM塞栓術の1時間後に屠殺し、これらを対照群とした。各ラットを、レーザースペックルコントラストイメージング(LSCI)を使用して連続的に画像化して、後肢微小灌流を定量化し、運動機能を、修正Tarlovスケールを使用して評価した。深部体温を37℃に維持するために、麻酔をかけたラットを加温台の上で腹臥位にしてイメージングを行った。5分間安定させた後、レーザーをラットの上に20センチメートルの設定距離で位置合わせし、灌流イメージングを開始した。データは、ベースライン、注入直後、及び手術後1日目に取得し、その後1週間に1回取得した。灌流データは、GEM注入された後肢足における、注入されていない対側後肢足に対する灌流の比として算出され、ベースラインのパーセントとして表された。
【0090】
抗凝固処理ラットにおける大腿動脈閉塞
6例のラットに、上記のように大腿動脈へのGEM注入前にヘパリンを投与し、GEM注入後3日間抗凝固療法を継続した。活性化凝固時間(ACT)は、ヘパリン投与前及び投与後に浅後腹壁静脈から採取した0.25mLの血液アリコートにおいて、iSTATアナライザ(Abbot,Princeton,NJ)を使用して記録した。ベースラインACT値が記録されたら、250μLの生理食塩水で希釈した1200IU/kgのヘパリンを大腿静脈枝に静脈内注入した。続いて、これらのラットに、GEM注入後3日間、1日2回、150IU/kgのヘパリンを皮下投与した。6例のラットの並行群に、対照群として機能するヘパリンの代わりに同様量の生理食塩水を投与した。
【0091】
ブタにおける経皮的血管内塞栓術
この試験は、施設動物管理使用委員会(IACUC)の承認を得ている。体重48~55kgのヨークシャーブタ(S&S Farms,Brentwoods,CA)を少なくとも4日間順化させた。5mg/kgチレタミン-ゾラゼパム(Telazol,Zoetis)、2mg/mLキシラジン及び0.02mg/kgグリコピロレートの筋肉内注入を用いて麻酔を誘導した。次いで、ブタを仰臥位にし、X線対応の手術台(Pannomed Aeron,DRE,KY)で挿管した。挿管後、1.5~3%のイソフルランの吸入により麻酔を維持した。手術中、心電図、経皮オキシヘモグロビン飽和度(SpO2)、呼気終末CO2濃度、吸気酸素分率、及び深部体温をモニタリングした。超音波ガイダンス(ACUSON S2000,Siemens)及び蛍光透視(OEC9800 plus C-Arm,GE Healthcare Systems,Chicago,IL)を用いて、頸動脈に経皮的にアクセスした。アクセス針及びワイヤを5フレンチのBernsteinカテーテル(Cook Medical)に交換した。GT-グライドワイヤ(Terumo Medical)を介して、造影蛍光透視(350mgI/mL Omnipaque,GE HealthCare、MA)を使用して、カテーテルの先端を腎動脈又は腸骨動脈に進めた。ブタに10,000~30000IUのヘパリンを静脈内投与し、iSTATアナライザ(Abbot Laboratories Princeton,NJ)を用いてACT値を記録した。GEM又はEmboCube(Merit Medical)を、リアルタイム蛍光透視ガイダンス下でカテーテルを使用して、腸骨動脈又は腎動脈の一次動脈枝に送達した。塞栓剤を有するシリンジを、ルアーロックを使用してカテーテルに直接接続した。サブセットにおいて、Medtronic,Terumo,Cook Medical,及びBoston Scientific製などの金属コイルを腸骨動脈に入れた。GEM又はコイルの展開までの時間を各手順について記録した。塞栓術の後、血管造影を複数回繰り返して、血管の開存性を評価した。ブタは、塞栓術後1時間(非生存群)又は塞栓術後1、2、又は4週間(生存群)で屠殺した。屠殺の前に、血液サンプルを分析のために採取し、全動物CTAイメージングを行った。剖検時に、GEM又はコイルを含有する血管組織を摘出し、μCTイメージング及び病理組織学的評価を行った。また、潜在的な毒性を評価するために、肝臓、脾臓、心臓、正常な腎臓の組織を入手し、組織学検査により検討した。
【0092】
CT、US、MRI、及び蛍光透視の取得方法
デュアルソーススキャナ(Siemens Force,Siemens Healthineers,Erlangen,Germany)でCT取得を行った。スパイラルスキャンは、0.6mmの検出器サイズ構成で、それぞれ150kVp及び80kVpのエネルギーレベルで行った。MRI取得は、3.0Tスキャナ(Siemens Skyra,Erlangen,Germany)で行った。本体送信コイルを備えた20チャネルヘッドコイルを使用してデータを取得した。MRI取得は、軸方向シングルショットT2、軸方向デュアルエコー同相及び逆相、T1強調イメージング前、及び平衡定常状態自由歳差運動からなっていた。蛍光透視の取得は、モバイルCアーム(OEC 9800 Plus,GE Healthcare,Illinois,USA)上で実行された。
【0093】
マイクロCTイメージング及び構造解析
摘出された塞栓血管を10%ホルマリンで固定し、70%エタノール中で24時間インキュベートした。マイクロCTイメージングは、SkyScan 1276(Bruker,Kontich,Belgium)を使用して、ラット血管については33kV、223μAで、ブタ動脈については45kV及び200μAで、10μmのピクセルサイズで行った。データ分析は、NRecon,CTvox,Data Viewer及びCTAnソフトウェア(Bruker,Kontich,Belgium)を使用して行った。注入されたGEMにおける構造変化を記録するために、定量的形態計測解析を実施して、表面対体積比、表面凸指数、フラクタル次元、及び構造モデル指数を算出した。塞栓されたブタ血管内部のGEM容積を算出するために、Mimicsソフトウェア(Materialise,Leuven,Belgium)を使用して、GEM及び血管管腔をセグメント化した。
【0094】
病理組織学検査及び免疫組織化学検査
パラフィン埋め込み切片を、H&E,マッソントリクローム又はEVGエラスチン染色で染色し、ミエロペルオキシダーゼ(MPO;ab208670,Abcam)又はCD68(ab125212,Abcam)の免疫染色を、他の箇所で説明されているように実施した(例えば、Averyら,Sci.Transl.Med.,8:365ra156(2016)を参照されたい)。画像解析ソフトウェア(Celleste 4.1,Thermo Fisher Scientific)を用いて、形態計測解析を行った。盲検観察者により、MPO又はCD68陽性細胞を計数した。
【0095】
血清のマルチプレックス解析
サイトカイン、ケモカイン、及び成長因子などの選択されたバイオマーカーを、塞栓術後0、3、7、及び21日目のラットから、並びに0、1、2、及び4週目のブタからの血液サンプルのアリコートから得られた血清サンプルで測定した。ラットの血清サンプルはサイトカイン/ケモカインアレイ27-plexを用いて解析し、ブタのサンプルはブタサイトカイン/ケモカインアレイ13-plex(Eve Technologies,Calgary,CA)を用いて解析した。検体濃度は、ピコグラム/mLで表される。
【0096】
統計解析
異なる時点での群間の解析は、事後多重比較手順による分散分析(ANOVA)を用いて行った。2群間の比較は、studentのt検定を用いて算出した。群間差の統計的有意性は、95%信頼水準(p<0.05)で評価した。データは、平均±平均の標準誤差(SEM)として表示される。本発明者らが得た全ての比較は、GraphPad Prism 7(GraphPad Software,Inc.,La Jolla,CA)を使用した。
【0097】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて説明してきたが、前述の説明は、例示を意図したものであり、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、及び変更は、以下の特許請求の範囲内にある。
【0098】
本明細書で言及される全ての刊行物(例えば、米国特許出願公開第2018/104059号)は、引用された刊行物に関連する態様、方法及び/又は物質を開示及び記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
本開示の番号付き実施形態
1.
(a)ゼラチンと、
(b)ナノシリケートと、
(c)タンタルと、を含む、ヒドロゲル組成物。
【0100】
2.脱イオン水を更に含む、実施形態1に記載のヒドロゲル組成物。
3.約15%~約25%(w/w)のタンタルを含む、実施形態1又は2に記載のヒドロゲル組成物。
【0101】
4.約17.5%~約22.5%(w/w)のタンタルを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
5.約15%、約17.5%、約20%、約22.5%、又は約25%(w/w)のタンタルを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
【0102】
6.約20%(w/w)のタンタルを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
7.ナノシリケートがシリケートナノプレートレットである、実施形態1~6のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
【0103】
8.約2.5%~約6%(w/w)のナノシリケートを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
9.約3.0%~約4.0%(w/w)のナノシリケートを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
【0104】
10.約3.25%~約3.75%(w/w)のナノシリケートを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
11.約4.0%~約5.5%(w/w)のナノシリケートを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
【0105】
12.約4.25%~約5.25%(w/w)のナノシリケートを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
13.約4.5%~約5.0%(w/w)のナノシリケートを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
【0106】
14.約2.75%、約3.0%、約3.25%、約3.5%、約3.75%、4.0%、約4.25%、約4.5%、約4.75%、約5.0%、約5.25%、又は約5.5%のナノシリケート(w/w)を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
【0107】
15.約4.75%(w/w)のナノシリケートを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
16.約4%(w/w)のナノシリケートを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
【0108】
17.約3.5%(w/w)のナノシリケートを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
18.シリケートナノプレートレットの中央径が約1μm~約15μmである、実施形態7~17のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
【0109】
19.シリケートナノプレートレットの中央径が約2μm~約5μmである、実施形態7~17のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
20.約0.2%~約1.2%(w/w)のゼラチンを含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
【0110】
21.約0.6%~約1.0%(w/w)のゼラチンを含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
22.約0.4%~約0.8%(w/w)のゼラチンを含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
【0111】
23.約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、又は約1.2%(w/w)のゼラチンを含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
【0112】
24.約0.6%(w/w)のゼラチンを含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
25.約0.7%(w/w)のゼラチンを含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
【0113】
26.約0.8%(w/w)のゼラチンを含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
27.組成物の粘度が、約10-11/sの剪断速度下で減少する、実施形態1~26のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
【0114】
28.約15KPa~約45KPaの変位圧力を有する、実施形態1~27のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
29.無菌である、実施形態1~28のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物。
【0115】
30.好適な容器にパッケージングされた実施形態1~29のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物を含む、血管の塞栓術において使用するためのキット。
31.好適な容器がシリンジである、実施形態30に記載のキット。
【0116】
32.好適な容器が、約0.5mL~約5mLのヒドロゲル組成物を収容する、実施形態30又は31に記載のキット。
33.好適な容器が、約0.5mL、約1.0mL、約1.5mL、約2.0mL、約2.5mL、約3.0mL、約3.5mL、約4.0mL、約4.5mL又は約5.0mLのヒドロゲル組成物を収容する、実施形態29~32のいずれか1つに記載のキット。
【0117】
34.好適な容器が、約1.0mLのヒドロゲル組成物を収容する、実施形態29~33のいずれか1つに記載のキット。
35.血管の塞栓術のための方法であって、それを必要とする患者において、治療有効量の実施形態1~29のいずれか1つに記載のヒドロゲル組成物を患者の血管に投与することを含む、方法。
【0118】
36.最大血管径が約3mmである、実施形態35に記載の方法。
37.組成物が、カテーテルを通した注入によって血管に投与される、実施形態35又は36に記載の方法。
【0119】
38.血管が、多血性腫瘍(hypervascularized tumor)の血管である、実施形態35~37のいずれか1つに記載の方法。
39.出血及び/又は出血性末梢血管を塞栓する方法であって、それを必要とする患者において、治療有効量の実施形態1~29のいずれか1つに記載の組成物を患者の血管に投与することを含む、方法。
【0120】
40.最大血管径が約3mmである、実施形態39に記載の方法。
41.組成物が、カテーテルを通した注入によって血管に投与される、実施形態39又は40に記載の方法。
【0121】
42.蛍光透視可視化によって血管への組成物の投与を可視化することを更に含む、実施形態35~41のいずれか1つに記載の方法。
43.蛍光透視可視化によって治療有効量の組成物の投与を決定することを更に含む、実施形態35~41のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
44.約0.5mL~約5mLの組成物が投与される、実施形態35~43のいずれか1つに記載の方法。
45.約2mL~約5mLの組成物が投与される、実施形態35~44のいずれか1つに記載の方法。