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<図1>
  • -記録用紙 図1
  • -記録用紙 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】記録用紙
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/52 20060101AFI20241224BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
B41M5/52 100
B41M5/50 120
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023511304
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2022015190
(87)【国際公開番号】W WO2022210605
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2021060712
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100226827
【弁理士】
【氏名又は名称】芝田 美香
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(74)【代理人】
【識別番号】100208649
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 満
(72)【発明者】
【氏名】北村 優佳
(72)【発明者】
【氏名】菅俣 祐太郎
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-110287(JP,A)
【文献】特開平07-276785(JP,A)
【文献】特開2016-210155(JP,A)
【文献】特開2007-152633(JP,A)
【文献】特開2016-215467(JP,A)
【文献】国際公開第2016/195041(WO,A1)
【文献】特開平10-037097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/52
B41M 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルムからなる基材層のいずれか一方の面に、スチレン系樹脂を含む受容層を設けられた、溶剤インクジェット用記録用紙であって、
前記受容層が少なくとも一方向に延伸された延伸多孔質層である、記録用紙
【請求項2】
熱可塑性樹脂フィルムからなる基材層のいずれか一方の面に、スチレン系樹脂を含む受容層を設けられた、溶剤インクジェット用記録用紙であって、
前記受容層が無機フィラー及び有機フィラーを含まないか、又は、前記受容層が無機フィラー又は有機フィラーを含み、かつ前記受容層における前記無機フィラー及び前記有機フィラーの含有量の合計が20質量%以下である、記録用紙。
【請求項3】
熱可塑性樹脂フィルムからなる基材層のいずれか一方の面に、スチレン系樹脂を含む受容層を設けられた、溶剤インクジェット用記録用紙であって、
前記スチレン系樹脂が、スチレン系単量体、エチレン及びブタジエンの共重合体;スチレン系単量体、α-オレフィン及びブタジエンの共重合体;スチレン系単量体、エチレン、α-オレフィン及びブタジエンの共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、記録用紙。
【請求項4】
熱可塑性樹脂フィルムからなる基材層のいずれか一方の面に、スチレン系樹脂を含む受容層を設けられた、溶剤インクジェット用記録用紙であって、
前記基材層が、前記熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂を含む、熱可塑性樹脂フィルムであり、
前記受容層が、更にポリオレフィン系樹脂を含む、記録用紙。
【請求項5】
前記受容層の厚みが3μm以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の溶剤インクジェット用記録用紙。
【請求項6】
前記受容層の層強度が0.9~2.0kgf/cmであることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の溶剤インクジェット用記録用紙。
【請求項7】
前記溶剤インクジェット用記録用紙の基材層側(裏面層側)表面のJIS B0601:2003による算術平均粗さ(Ra)が、0.2μm以上であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の溶剤インクジェット用記録用紙。
【請求項8】
前記溶剤インクジェット用記録用紙の受容層側表面のJIS K7125:1999による静摩擦係数が、0.10~0.70であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の溶剤インクジェット用記録用紙。
【請求項9】
前記溶剤インクジェット用記録用紙の基材層側(裏面層側)表面のJIS K6911:2006に準拠して測定した表面抵抗率が、1×10 ~9×10 12 Ωであることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の溶剤インクジェット用記録用紙。
【請求項10】
前記溶剤インクジェット用記録用紙のJIS L1096:2010による曲げ反発A法(ガーレ法)による剛軟度が、0.3~10mNであることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の溶剤インクジェット用記録用紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は、コンピュータで作製したフルカラー画像を、版を作らずにそのまま印刷することができる。版を作る必要がないこと、コンピュータで作製した画像は変更が容易であることなどから、インクジェット印刷の使用が様々な分野で広がっている。
インクジェット印刷に使用されるインクは、家庭用インクジェットプリンタに使用されているように、水系インクが一般的であるが、溶剤系インクも耐水性やインク定着性の良さなどから好まれている。これまで水系インクが使用されていたような室内展示等においても、溶剤系インクが使用されるようになってきている。
【0003】
記録用紙では、記録後に溶剤系インク中の溶剤を早期に乾燥することが可能な高い吸収性が求められる。このような溶剤吸収性を実現するために、種々の検討かなされてきた(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-234677号公報
【文献】特開2001-270238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような塩化ビニル系共重体を含有する受容層では、溶剤による波打ち、ブロッキングの発生、及び耐候性が低いなどの問題がある。これらの問題を添加剤で改善しようとすれば、印刷適性に悪影響が生じる場合がある。また、特許文献2のような顔料コートでは、水や汚れが付着しやすく、受容層強度が低い、光沢性が低い、及び画像の鮮明性が低いなどの問題がある。
【0006】
本発明は上記先行技術の問題を鑑み、高い平滑性と優れた光沢性とを兼ね備え、画像濃度が高く、溶剤系インクの吸収性・乾燥性に優れ、且つ印刷物を屋外に長期間暴露する場合にも耐水・防汚処理を必要としない、記録用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、これらの課題を解決する為に、鋭意検討を進めた結果、熱可塑性樹脂フィルムからなる基材層のいずれか一方の面に、スチレン系樹脂を含む受容層を有する構成をとることによって、所期の特性を有する記録用紙を提供し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の通りである。
【0008】
(1)熱可塑性樹脂フィルムからなる基材層のいずれか一方の面に、スチレン系樹脂を含む受容層が設けられた、記録用紙。
(2)前記受容層が少なくとも一方向に延伸されていることを特徴とする(1)に記載の記録用紙。
(3)前記受容層の厚みが3μm以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の記録用紙。
(4)前記スチレン系樹脂が、スチレン系単量体、エチレン及びブタジエンの共重合体;スチレン系単量体、α-オレフィン及びブタジエンの共重合体;及びスチレン系単量体、エチレン、α-オレフィン及びブタジエンの共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の記録用紙。
(5)前記記録用紙の基材層側(裏面層側)表面のJIS B0601:2003による算術平均粗さ(Ra)が、0.2μm以上であることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の記録用紙。
(6)前記記録用紙の受容層側表面のJIS K7125:1999による静摩擦係数が、0.10~0.70であることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の記録用紙。
(7)前記記録用紙の基材層側(裏面層側)表面のJIS K6911:2006に準拠して測定した表面抵抗率が、1×10~9×1012Ωであることを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の記録用紙。
(8)前記記録用紙のJIS L1096:2010による曲げ反発A法(ガーレ法)による剛軟度が、0.3~10mNであることを特徴とする(1)~(7)のいずれかに記載の記録用紙。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い平滑性と優れた光沢性とを兼ね備え、画像濃度が高く、インクの吸収性・乾燥性に優れ、且つ印刷物を屋外に長期間暴露する場合にも耐水・防汚処理を必要としない、記録用紙を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】記録用紙の層構成の一例を示す模式断面図である。
図2】記録用紙の層構成の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の記録用紙について詳細に説明する。以下は本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれに限定されない。
【0012】
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリルとメタクリルの両方を示す。
【0013】
[記録用紙]
図1は、本実施形態の記録用紙の層構成の一例を示す模式断面図である。図1に示す記録用紙100は、熱可塑性樹脂フィルムからなる基材層20のいずれか一方の面に、スチレン系樹脂を含む受容層10を少なくとも備える。また、図2に示すように、基材層20は、コア層21及び裏面層22の2層構造を有していてもよい。すなわち、本実施形態の記録用紙100は、受容層10と、コア層21と、裏面層22とをこの順に有していてもよい。インクジェット印刷層は、図1及び図2の受容層10側の面上に設けられる。
【0014】
(受容層)
受容層は、基材層上に設けられ、本実施形態の記録用紙の最表面に位置する。受容層は、溶剤系インクを受容する。
【0015】
<スチレン系樹脂>
受容層は、スチレン系樹脂を含有する。受容層がスチレン系樹脂を含有することにより、溶剤系インクの吸収性及び乾燥性を向上させることができる。
【0016】
スチレン系樹脂は、スチレン由来の構成単位を主に有する重合体であり、スチレン系単量体の単独重合体又は他の単量体成分との共重合体である。
受容層は、溶剤インクジェット印刷時の滲み抑制の観点から、上記スチレン系樹脂として、スチレン系単量体の単独重合体、並びに、スチレン系単量体及び他の単量体との共重合体のみからなるものであってもよい。一方、受容層は、基材層との層間強度の観点から、上記スチレン系樹脂として、スチレン系単量体の単独重合体、並びに、スチレン系単量体及び他の単量体との共重合体を含むことが好ましい。
受容層に用いられるスチレン系樹脂は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、及びビニルナフタレン等が挙げられる。
【0017】
共重合体における他の単量体としては、オレフィンが好適に用いられる。オレフィンとしては、例えば、αオレフィン;ジエン系単量体;並びに、エチレン、プロピレン及びシクロヘキセン等のその他の単量体等が挙げられる。α-オレフィンの具体的な例としては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、及び1-デセン等が挙げられる。ジエン系単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、及びクロロプレン等が挙げられる。共重合体は、単量体成分が2元系でも3元系以上の多元系でもよく、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
また、共重合体における他の単量体成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、酢酸ビニル、及びアクリロニトリル等を用いてもよい。
【0018】
スチレン系樹脂は、例えば、スチレン単独重合体、スチレン・エチレン共重合体、スチレン・プロピレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・エチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・ブチレン共重合体、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン・ブタジエン共重合体、及びスチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体等が挙げられる。共重合体は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。スチレン系樹脂は水素添加物でもよい。
【0019】
なかでもスチレン系樹脂は、スチレン系単量体とブタジエンとの共重合体を含むことが好ましく、スチレン系単量体、エチレン及びブタジエンの共重合体;スチレン系単量体、α-オレフィン及びブタジエンの共重合体;及びスチレン系単量体、エチレン、α-オレフィン及びブタジエンの共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0020】
上記スチレン系樹脂は、例えば、スチレン・エチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・1-ブテン・ブタジエン共重合体、スチレン・1-ペンテン・ブタジエン共重合体、スチレン・1-ヘキセン・ブタジエン共重合体、スチレン・4-メチル-1-ペンテン・ブタジエン共重合体、スチレン・1-ヘプテン・ブタジエン共重合体、スチレン・1-オクテン・ブタジエン共重合体、スチレン・1-ノネン・ブタジエン共重合体、スチレン・1-デセン・ブタジエン共重合体、スチレン・エチレン・1-ブテン・ブタジエン共重合体、スチレン・エチレン・1-ペンテン・ブタジエン共重合体、スチレン・エチレン・1-ヘキセン・ブタジエン共重合体、スチレン・エチレン・4-メチル-1-ペンテン・ブタジエン共重合体、スチレン・エチレン・1-ヘプテン・ブタジエン共重合体、スチレン・エチレン・1-オクテン・ブタジエン共重合体、スチレン・エチレン・1-ノネン・ブタジエン共重合体、及びスチレン・エチレン・1-デセン・ブタジエン共重合体等が挙げられる。
【0021】
受容層におけるスチレン系樹脂の含有量は、溶剤系インクの吸収性及び乾燥性を向上させ、印刷後の波打ちを抑制する観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。一方、スチレン系樹脂の含有量は、コア層と受容層との層間強度の観点から、100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。また、スチレン系樹脂がスチレン系単量体の単独重合体、並びに、スチレン系単量体及び他の単量体との共重合体を含む場合の、上記共重合体の含有量は、基材層との層間強度の観点から、スチレン系樹脂全量に対して5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。また、上記共重合体の含有量は、平滑性の観点から、スチレン系樹脂全量に対して30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0022】
受容層は、スチレン系樹脂のみを用いた樹脂フィルムであってもよいし、本発明の効果を阻害しない範囲でスチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂が含有されていてもよい。スチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂は、画像鮮明性の観点から当該スチレン系樹脂と相溶性を有する樹脂であってもよく、乾燥性の観点から当該スチレン系樹脂と相溶性を有しない樹脂であってもよい。ここで、「スチレン系樹脂と相溶性を有する樹脂」とはスチレン系樹脂と1対1の質量比で混合して230℃で加熱した際に単一相を形成する樹脂をいう。受容層中の熱可塑性樹脂がスチレン系樹脂のみからなる場合、又は、スチレン系樹脂と当該スチレン系樹脂と相溶性を有する樹脂とを含む場合、溶剤インクジェット印刷時の滲みを抑制できる傾向がある。また、受容層中の熱可塑性樹脂がスチレン系樹脂と、当該スチレン系樹脂と相溶性を有しない樹脂とを含む場合、樹脂間に生じた隙間を通じて溶剤が浸み込みやすくなり溶剤系インクの乾燥性が向上する傾向がある。
併用できる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン・環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;及び芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート等のポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの中でも、隣接する基材層がポリオレフィン系樹脂を含む場合に当該基材層との層間強度低下を抑制する観点から、併用できる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0023】
<フィラー>
受容層は、フィラーを含有してもよい。使用できるフィラーとしては、例えば無機フィラー又は有機フィラー等が挙げられる。基材層がポリオレフィン系樹脂等の耐溶剤性が高い樹脂を含む場合、印刷時のスチレン系樹脂の溶解による受容層の収縮に基材層が追従して、印刷面側にカールが発生することがある。しかし、受容層がフィラーを含有することにより、スチレン系樹脂が溶解しても受容層の収縮を抑制することができ、カール発生を低減させることができる。また、受容層がフィラーを含有すると、スチレン系樹脂など周囲の熱可塑性樹脂との間に隙間が生まれやすく、溶剤系インクの乾燥性が向上する傾向がある。受容層が少なくとも一方向に延伸された延伸層である場合、フィラーの含有により、受容層内部に空孔が形成され、延伸多孔質層となりやすい。受容層が延伸多孔質層であると、溶剤系インクの吸収性及び乾燥性が一層高まる。
【0024】
<<無機フィラー>>
無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、白土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、アルミナ、ゼオライト、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、又はガラスファイバー等の無機粒子を使用することができる。無機フィラーのレーザー回折による粒度分布計で測定した平均粒径は、通常は0.01~15μmであり、好ましくは0.1~5μmである。
【0025】
<<有機フィラー>>
有機フィラーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、メラミン樹脂、ポリエチレンサルファイト、ポリイミド、ポリエチルエーテルケトン、又はポリフェニレンサルファイト等の有機粒子を使用することができる。
【0026】
フィラーとしては、上記無機フィラー及び有機フィラーをそれぞれ単独で用いることもできるし、併用することもできる。
受容層におけるフィラーの含有量(無機フィラーと有機フィラーを併用する場合は、その合計量)は、例えば、65質量%以下、又は、55質量%以下であることができる。また、光沢性又は平滑性を得る観点からは、受容層におけるフィラーの含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。受容層を多孔質層として溶剤系インクの吸収性及び乾燥性を得る観点からは、受容層におけるフィラーの含有量は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。
【0027】
<その他の成分>
受容層は、必要に応じて、硬化剤、インクセット剤、紫外線吸収剤、又は界面活性剤等をさらに含有することができる。これらは本発明の効果を妨げない範囲で含有させることができる。
【0028】
受容層は、無延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよい。溶剤吸収量や溶剤吸収速度の制御を容易とする観点から、受容層は、少なくとも一方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましい。
【0029】
受容層の表面は、酸化処理が施されていてもよい。酸化処理により、表面の濡れ性を調整でき、印刷の滲みを抑制することができる傾向がある。また、酸化処理により、表面の極性の割合を調整でき、溶剤系インクとの化学的な結合力が得られやすく、記録用紙とインクジェット印刷層との密着性を向上できる傾向がある。
酸化処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理等が挙げられ、これらの処理は組み合わせることができる。これらのなかでも、酸化処理としては、コロナ放電処理又はフレーム処理が好ましく、コロナ放電処理がより好ましい。
【0030】
<受容層の特性>
<<溶剤吸収量>>
受容層の溶剤吸収量は、5ml/m以上が好ましく、10ml/m以上がより好ましく、15ml/m以上がさらに好ましい。一方、受容層の溶剤吸収量は、100ml/m以下が好ましく、90ml/m以下がより好ましく、80ml/m以下がさらに好ましい。受容層の溶剤吸収量が上記範囲内であれば、溶剤系インクの乾燥性に優れるため、溶剤インクジェット印刷後の記録用紙を他の用紙と重ねて保存したときの溶剤系インク移りを減らすことができる傾向がある。
なお、受容層における溶剤吸収量の具体的な測定方法は、実施例のところで説明する。
【0031】
<<溶剤吸収速度>>
受容層の溶剤吸収速度は、10ml/m・s以上が好ましく、20ml/m・s以上がより好ましく、30ml/m・s以上がさらに好ましい。一方、受容層の溶剤吸収速度は、100ml/m・s以下が好ましく、90ml/m・s以下がより好ましく、80ml/m・s以下がさらに好ましい。受容層の溶剤吸収速度が上記範囲内であれば、溶剤系インクが受容層に速やかに浸透することから、複数色の溶剤系インクを重ねても溶剤系インクが混じることがなく、多色印刷を行ったときの滲みが少なくなる傾向がある。
なお、受容層の溶剤吸収速度の具体的な測定方法は、実施例のところで説明する。
【0032】
<<層強度>>
受容層の層強度は、0.9kgf/cm以上が好ましく、1.0kgf/cm以上がより好ましく、1.1kgf/cm以上がさらに好ましい。一方、受容層の層強度は、2.0kgf/cm以下が好ましく、1.9kgf/cm以下がより好ましく、1.8kgf/cm以下がさらに好ましい。受容層の層強度が上記範囲内であれば、記録用紙を屋外に掲示した際に、砂等によって受容層が削られることが少なく、耐候性が高いため、印刷絵柄を長期間維持することができる傾向がある。
なお、受容層における層強度の具体的な測定方法は、実施例のところで説明する。
【0033】
<<空孔率>>
受容層が内部に空孔を有する場合の空孔率は、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましい。一方、空孔率は、70%以下が好ましい。空孔率が5%以上であることにより、溶剤吸収量が増加し、インク乾燥性が向上する傾向がある。また、空孔率が70%以下であることにより、平滑性及び光沢性が向上する傾向がある。
【0034】
<<厚み>>
受容層の厚みは、溶剤を十分に吸収する観点から、3μm以上が好ましく、4μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましい。一方、受容層の厚みは、カールバランスの観点から、100μm以下が好ましく、90μm以下がより好ましく、80μm以下がさらに好ましい。
【0035】
(基材層)
基材層は、熱可塑性樹脂を含有する樹脂フィルムであり、記録用紙の支持体として設けられる。基材層は、単層構造であってもよく、2層又は3層以上の多層構造のものであってもよい。また、基材層の少なくとも一方の面に受容層が積層されるため、受容層との密着性向上のために、基材層はコロナ放電処理されていてもよい
【0036】
熱可塑性樹脂としては、受容層で挙げた熱可塑性樹脂を用いることができる。なかでも、機械的強度の観点から、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0037】
<ポリオレフィン系樹脂>
ポリオレフィン系樹脂の具体的な例としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、及びポリメチル-1-ペンテン等が挙げられる。
【0038】
ポリプロピレン系樹脂としては、主なモノマーにプロピレンが用いられるのであれば特に限定されない。ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体又はシンジオタクティック重合体等が挙げられる。また、ポリプロピレン系樹脂としては、主成分となるプロピレンと、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、又は1-オクテン等のα-オレフィンとの共重合体である、プロピレン-α-オレフィン共重合体等を使用することもできる。共重合体は、モノマー成分が2元系でも3元系以上の多元系でもよく、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。また、プロピレン単独重合体とプロピレン共重合体とを併用してもよい。
【0039】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば密度が0.940~0.965g/cmの高密度ポリエチレン、密度が0.920~0.935g/cmの中密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm以上0.920g/cm未満の直鎖線状低密度ポリエチレン、エチレン等を主体とし、プロピレン、ブテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4-メチルペンテン-1等のα-オレフィンを共重合させた共重合体、マレイン酸変性エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体の金属塩(金属は亜鉛、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム等)、エチレン・環状オレフィン共重合体、及びマレイン酸変性ポリエチレン等が挙げられる。
【0040】
また、ポリオレフィン系樹脂としては、その樹脂フィルムの接着性又は成形性の向上の観点から、そのグラフト変性物を必要に応じて使用することもできる。
グラフト変性には公知の手法を用いることができる。具体的には、グラフトモノマーとして不飽和カルボン酸又はその誘導体を用いたグラフト変性物を挙げることができる。上記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びシトラコン酸等を挙げることができる。上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、上記不飽和カルボン酸の酸無水物、エステル化物、アミド化物、イミド化物、及び金属塩等を挙げることができる。
【0041】
具体的なグラフトモノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸-N-モノエチルアミド、マレイン酸-N,N-ジエチルアミド、マレイン酸-N-モノブチルアミド、マレイン酸-N,N-ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸-N-モノエチルアミド、フマル酸-N,N-ジエチルアミド、フマル酸-N-モノブチルアミド、フマル酸-N,N-ジブチルアミド、マレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、(メタ)アクリル酸ナトリウム、及び(メタ)アクリル酸カリウム等を挙げることができる。
【0042】
グラフトモノマーは、ポリオレフィン系樹脂に対して、通常0.005~10質量%、好ましくは0.01~5質量%用いることができる。
【0043】
基材層に用いるポリオレフィン系樹脂としては、上記の中から1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。成形性、機械的強度又はコスト等の観点からは、基材層としては、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂の樹脂フィルムであることが好ましく、ポリプロピレン系樹脂の樹脂フィルムであることがより好ましい。なかでも、プロピレン単独重合体が基材層の主原料として取扱いやすく、好ましい。
【0044】
ポリプロピレン系樹脂の樹脂フィルムには、フィルム成形性の観点から、プロピレン単独重合体と融点が同等程度以下の樹脂を併用することが可能である。そのような樹脂としてはポリエチレン系樹脂、具体的には高密度又は低密度のポリエチレンが挙げられる。ポリエチレン系樹脂の含有量は、例えば2~25質量%とすることができる。
【0045】
基材層は、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂のみを用いた樹脂フィルムであってもよいし、本発明の効果を阻害しない範囲でポリオレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂が含有されていてもよい。
【0046】
<フィラー>
基材層は、フィラーを含有してもよい。基材層がフィラーを含有することにより、基材層が延伸フィルムである場合に、延伸によりフィラーを起点とした空孔が形成され多孔質層となる。基材層が多孔質層である場合、基材層及び記録用紙の軽量化が可能となる。さらには、基材層が多孔質層であることにより紙の風合いを有する白色フィルムが得られやすくなる。したがって、基材層中のフィラー含有の有無により、フィルムの白色度又は不透明度の調整が容易となる。
【0047】
基材層に用いることができるフィラーは、受容層で挙げたものと同一のものを用いることができる。フィラーとしては、無機フィラー及び有機フィラーをそれぞれ単独で用いることもできるし、併用することもできる。
基材層におけるフィラーの含有量(無機フィラーと有機フィラーを併用する場合は、その合計量)は、0~60質量%であることが好ましく、0~50質量%がより好ましい。
【0048】
<その他の成分>
基材層は、必要に応じて、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、滑剤、又は核剤等をさらに含有することができる。
熱安定剤としては、例えば立体障害フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、又はアミン系酸化防止剤等を、通常0.001~1質量%の範囲内で使用することができる。
光安定剤としては、例えば立体障害アミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤、又はベンゾフェノン系光安定剤を、通常0.001~1質量%の範囲内で使用することができる。
分散剤又は滑剤としては、例えばシランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又はそれらの塩等が挙げられる。これらは、例えばフィラーを分散させる目的で、通常0.01~4質量%の範囲内で使用することができる。
【0049】
基材層は、無延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよい。記録用紙の強度を高める観点から、基材層は、少なくとも一方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましい。
基材層が多層構造である場合、少なくとも一方向に延伸された延伸フィルムを含むことが好ましく、内部に空孔を有する多孔質延伸フィルムを含むことがより好ましい。延伸フィルムを含む基材層は、機械的強度が高く、厚みの均一性に優れているため、後加工性に優れた記録用紙を得ることができる。
基材層が多層構造である場合、各層の延伸軸数は、1軸/1軸、1軸/2軸、2軸/1軸、1軸/1軸/2軸、1軸/2軸/1軸、2軸/1軸/1軸、1軸/2軸/2軸、2軸/2軸/1軸、又は2軸/2軸/2軸であってもよい。
【0050】
<基材層の特性>
<<空孔率>>
基材層は、空孔をフィルム内部に多数有するものであることが好ましい。すなわち、基材層は多孔質層であることが好ましい。また、次式(1)で算出された空孔率が5~60%であることが好ましく、10~45%であることがより好ましい。空孔の存在により、光拡散率の向上し、不透明度の高い基材層を得ることが可能となる。さらに、空孔の存在により、空孔が溶剤系インク中の溶剤への膨潤による寸法変化を抑制し、溶剤インクジェット印刷後の記録用紙の波打ちの発生を抑制できる傾向がある。
【0051】
【数1】
(ρは基材層の真密度を示し、ρは基材層の密度を示す)
【0052】
<<厚み>>
基材層の厚みは、40~200μmが好ましく、より好ましくは50~150μmである。基材層の厚みが上記範囲内であれば、ガーレ剛軟度が高くなり、またカールバランスに優れる。
【0053】
<コア層及び裏面層>
基材層は、上述したように単層構造であってもよく、2層又は3層以上の多層構造のものであってもよい。基材層が多層構造であると、各層で特性を異ならせて様々な機能を発揮させることができため好ましい。特に、基材層20は、図2に示すようにコア層21及び裏面層22を有することが好ましい。
【0054】
<コア層>
コア層は、熱可塑性樹脂を含有する樹脂フィルムであり、記録用紙の支持体として設けられる。コア層の組成は基材層の組成と同一である。
【0055】
コア層の厚みは、後述する裏面層の厚さに応じて適宜決定することができる。コア層の厚みとしては、十分なコシを得る観点から、40~200μmが好ましく、より好ましくは50~150μmである。
【0056】
コア層の空孔率は、5~60%であることが好ましく、10~45%であることがより好ましい。空孔の存在により、光拡散率が向上し、不透明度の高いコア層を得ることが可能となる。
【0057】
<裏面層>
裏面層は、受容層とは反対側のコア層表面に設けられる。裏面層は、主として、記録用紙を重ねて保管する際、印刷後の溶剤が受容層から蒸散することを促進し、溶剤による紙面の波打ちを抑制する機能を有する。また、裏面層表面は、平滑性を備える受容層とは異なり、適度な表面粗さを有している。裏面層表面が適度な表面粗さを有することにより、記録用紙を重ねて保管する際、ブロッキングの発生を防ぐことができる。
【0058】
また、裏面層は、記録用紙に帯電防止性能を付与することによって印刷工程でのトラブルを発生し難くしてハンドリング性を改善させることができる。
裏面層が帯電防止性能を有することにより、記録用紙が内部に電荷を有している場合であっても、裏面層面は静電吸着力が低いものとなり、印刷工程でロールへの貼り付きやシート同士のブロッキング等のトラブルが発生し難いものとなる。
【0059】
<裏面層の組成>
裏面層には、基材層と同様の材料を用いることができる。ただし、裏面層におけるフィラーの含有量(無機フィラーと有機フィラーを併用する場合は、その合計量)は、表面粗さ及び静摩擦係数の観点から、5~60質量%であることが好ましく、10~50質量%がより好ましい。
【0060】
裏面層の厚みは、上述したコア層の厚さに応じて適宜決定することができる。裏面層の厚みとしては、適当な表面粗さの発現の観点から、1~50μmが好ましく、1~20μmがより好ましく、さらに好ましくは2~10μmである。
【0061】
裏面層の空孔率は、5~60%であることが好ましく、5~50%であることがより好ましく、10~40%であることがより好ましい。空孔の存在により、裏面層の表面粗さを所定の範囲に制御することができる傾向がある。
【0062】
裏面層の表面にはさらに塗布層を設けることもできる。塗布層は、アンカー剤及びポリマー型帯電防止剤等を含むことができる。塗布層がアンカー剤を含むことにより、塗布層の上にインクジェット印刷層を設ける場合、塗布層とインクジェット印刷層との密着性を向上することができる傾向がある。また、塗布層が帯電防止剤を含むことにより、裏面層側の帯電防止性能を向上することができる傾向がある。アンカー剤としては、例えば、ポリイミン系重合体、及びポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物等が挙げられる。また、ポリマー型帯電防止剤としては、アンモニウム塩構造やホスホニウム塩構造を有するもの等が挙げられる。アンカー剤及び帯電防止剤を併用する場合、個々の成分の性能を十分に発揮させる観点から、固形分比率でアンカー剤100質量部に対し、帯電防止剤0~200質量部が好ましく、より好ましくは20~150質量部、さらに好ましくは30~100質量部である。
【0063】
[記録用紙の特性]
(剛軟度)
記録用紙はポスター等の掲示物の使用にも適しており、掲示物の使用の用途の場合は貼付時の扱いやすさの観点からある程度の剛性を有していることが好ましい。記録用紙の剛軟度は、0.3mN以上が好ましく、0.4mN以上がより好ましく、0.5mN以上がさらに好ましい。一方、記録用紙の剛軟度は、10mN以下が好ましく、5mN以下がより好ましく、3mN以下がさらに好ましい。記録用紙の剛軟度が上記範囲内であれば、記録用紙自体にコシがあって取り扱いが容易となる。また、被貼付体に貼付する際等にしわが入りにくくなる傾向がある。さらに、印刷後の波打ちを抑制することができる傾向がある。
本実施形態における剛軟度はJIS L1096:2010による曲げ反発A法(ガーレ法)に基づくものである。
なお、記録用紙におけるガーレ法による剛軟度の具体的な測定方法は、実施例のところで説明する。
【0064】
(光沢度)
記録用紙の受容層側表面の光沢度は、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。受容層表面の光沢度が上記下限値以上であれば、少なくとも顔料コート等を用いた記録用紙と比べて十分高い光沢度が得られていると言え、画像が鮮明となり、かつ見栄えが良くなる傾向がある。
本実施形態における光沢度はJIS P 8142:1993による光沢度に基づくものである。
なお、記録用紙の受容層側表面の光沢度の具体的な測定方法は、実施例のところで説明する。
【0065】
(静摩擦係数)
記録用紙の受容層側表面の静摩擦係数は、0.10以上が好ましく、0.20以上がより好ましく、0.30以上がさらに好ましい。一方、記録用紙の受容層側表面の静摩擦係数は、0.70以下が好ましく、0.65以下がより好ましく、0.60以下がさらに好ましい。記録用紙の受容層側表面の静摩擦係数が上記範囲内であれば、印刷機における記録用紙の搬送精度が良好となる。なお、摩擦係数は受容層側表面の算術平均粗さにも影響を受け、この算術平均粗さが大きくなると静摩擦係数が低下する傾向がある。
本実施形態における静摩擦係数はJIS K7125:1999に基づくものである。
なお、記録用紙の受容層側表面の静摩擦係数の具体的な測定方法は、実施例のところで説明する。
【0066】
(算術平均粗さ(Ra))
記録用紙の基材層側表面(基材層としてコア層及び裏面層を設けた場合は裏面層側)の算術平均粗さ(Ra)は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。一方、記録用紙の基材層側表面の算術平均粗さは、1.0μm以下が好ましく、0.9μm以下がより好ましく、0.8μm以下がさらに好ましい。記録用紙の基材層側表面の算術平均粗さ(Ra)が上記範囲内であれば、記録用紙を重ねて保管した際、ブロッキングの発生を抑制することができる傾向がある。
本実施形態における算術平均粗さ(Ra)はJIS B0601:2003に基づくものである。
なお、記録用紙の基材層側表面の算術平均粗さ(Ra)の具体的な測定方法は、実施例のところで説明する。
【0067】
(表面抵抗率)
記録用紙の基材層側表面(基材層としてコア層及び裏面層を設けた場合は裏面層側)の表面抵抗率は、1×10-1Ω以上が好ましく、1×10Ω以上がより好ましく、1×10Ω以上がさらに好ましい。一方、記録用紙の基材層側表面の表面抵抗率は、9×1012Ω以下が好ましく、5×1012Ω以下がより好ましく、1×1012Ω以下がさらに好ましい。記録用紙の基材層側表面の表面抵抗率が上記範囲内であれば、印刷工程でロールへの貼り付きや記録用紙同士のブロッキング等の発生を抑制することができる傾向がある。
本実施形態における表面抵抗率はJIS K6911:2006に基づくものである。
なお、記録用紙の基材層側表面の表面抵抗率の具体的な測定方法は、実施例のところで説明する。
【0068】
(厚み)
本実施形態の記録用紙は、少なくとも受容層及び基材層を含むものであり、記録用紙の全体厚みは40~200μmが好ましい。本実施形態では、紙的な風合をさらに付加させるために受容層と基材層との間に、例えば無機フィラーを8~55質量%含有するプロピレン系樹脂の層等のその他の層をさらに形成してもよい。さらに、その他の層には、延伸性を良好とするために少量のプロピレン系共重合体、高密度ポリエチレン、ポリスチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体の低融点樹脂等を含有させることもできる。
【0069】
[記録用紙の製造方法]
本実施形態の記録用紙は、受容層及び基材層(コア層及び裏面層)をこの順に積層することにより製造することができ、その製造方法は特に限定されない。例えば以下の方法により、受容層、コア層及び裏面層からなる記録用紙を製造することができる。
【0070】
予めコア層用の樹脂組成物を溶融混練し、これをシート状に押し出し、ロール群の周速差を利用して縦方向に延伸する。次いで、この縦延伸フィルム上に、予め受容層用の樹脂組成物及び裏面層用の樹脂組成物を別々に溶融混練し、所望の層構成になるように、シート状にラミネートし、これを横方向にテンターを用い、特定の温度で延伸する。そして熱処理、冷却により記録用紙を得ることができる。
【0071】
(延伸)
各層は、積層前に個別に延伸されていてもよいし、積層後にともに延伸されてもよい。また、無延伸層と延伸層とが積層された後に再び延伸されてもよい。
【0072】
フィルムを延伸する場合の延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法、圧延法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸法、及びテンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等が挙げられる。また、延伸方法としては、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。
【0073】
延伸を実施するときの延伸温度は、フィルムに使用する熱可塑性樹脂が、非結晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該熱可塑性樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該熱可塑性樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、具体的には熱可塑性樹脂の融点よりも2~60℃低い温度が好ましい。
【0074】
延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20~350m/分の範囲内であることが好ましい。
また、延伸倍率についても、使用する熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができる。例えば、プロピレンの単独重合体又はその共重合体を含む樹脂フィルムを一方向に延伸する場合、その延伸倍率は、下限が通常は1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上である一方、上限が通常は12倍以下であり、好ましくは10倍以下である。二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で、下限が通常は1.5倍以上であり、好ましくは10倍以上である一方、上限が通常は60倍以下であり、好ましくは50倍以下である。
【0075】
(表面処理)
基材層は、受容層との密着性を高める観点から、酸化処理が施されて表面が活性化していることが好ましい。また、受容層の表面は酸化処理が施されていてもよい。酸化処理により、表面の濡れ性を調整でき、印刷の滲みを抑制することができる傾向がある。
酸化処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、又はオゾン処理等が挙げられ、これら処理は組み合わせることができる。なかでも、酸化処理としては、コロナ放電処理又はフレーム処理が好ましく、コロナ放電処理がより好ましい。
【0076】
コロナ放電処理を実施する場合の放電量は、好ましくは600J/m(10W・分/m)以上であり、より好ましくは1,200J/m(20W・分/m)以上である一方、好ましくは12,000J/m(200W・分/m)以下であり、より好ましくは10,800J/m(180W・分/m)以下である。フレーム処理を実施する場合の放電量は、好ましくは8,000J/m以上であり、より好ましくは20,000J/m以上である一方、好ましくは200,000J/m以下であり、より好ましくは100,000J/m以下である。
【0077】
裏面層の表面に塗布層を設ける場合の塗工手段としては、具体的には、グラビア塗工、メイヤーバー塗工、ロール塗工、ブレード塗工、又はサイズプレス塗工等の塗工手段を採用することができる。また、塗工量は一般的には0.01~20g/m、好ましくは0.1~15g/mにすることができる。
【0078】
[記録用紙の用途]
上記のようにして得られる記録用紙は、溶剤と溶剤系インク特有の色材を用いた溶剤系インクに対して、好適に用いることができる。
【0079】
溶剤系インクに用いられる溶剤としては、例えば、ポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤が挙げられる。溶剤系インクに用いられる色材としては、例えば、油溶性染料としてナフトール染料、アゾ染料、金属錯塩染料、アントラキノン染料、キノイミン染料、インジゴ染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、カーボニウム染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、フタロシアニン染料、ペリニン染料等が挙げられる。顔料としては、カーボンブラック、各種色顔料が使用されており、有機顔料として不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、ペリノン顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、ペリレン顔料、及びアニリンブラック等が挙げられる。
【実施例
【0080】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
【0081】
[試験方法]
(溶剤吸収量)
記録用紙の受容層の溶剤吸収量は、JIS P 8140で規定される吸水度試験器を用いて測定することができる。記録用紙の溶剤吸収量は、試験片における受容層の表面に溶剤(富士フイルム和光純薬(株)製ジエチレングリコールエチルメチルエーテル)を60秒間接触させ、余分な溶剤を除去した後に試験片の質量を測定した。次いで、元の試験片の質量から測定した試験片の質量を差し引き、1mあたりに吸収した溶剤の質量を溶剤吸収量(ml/m)とした。
【0082】
(溶剤吸収速度)
記録用紙の受容層の溶剤吸収速度は、JIS P 8140で規定される吸水度試験器を用いて測定することができる。記録用紙の溶剤吸収速度は、試験片における受容層の表面に溶剤(富士フイルム和光純薬(株)製、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル)を5秒間接触させ、溶剤吸収量を算出し、溶剤接触時間で除した値を溶剤吸収速度(ml/m・s)とした。
【0083】
<層強度>
記録用紙の受容層の層強度は、受容層側表面にセロハンテープ(ニチバン(株)製、商品名:CT-18)を貼り付け、JAPAN TAPPI No.18-2(内部結合強さ試験方法)に準じてインターナルボンドテスター(熊谷理機工業(株)社製、商品名)を用い、インクの剥離強度を測定し、2回の測定結果の平均値を層強度とした。
【0084】
<厚み>
記録用紙の厚み(全厚)は、JIS K7130:1999に準拠し、定圧厚さ測定器((株)テクロック製、商品名:PG-01J)を用いて測定した。また、記録用紙における各層の厚みは、測定対象試料を液体窒素にて-60℃以下の温度に冷却し、ガラス板上に置いた試料に対してカミソリ刃(シック・ジャパン(株)製、商品名:プロラインブレード)を直角に当て切断し断面観察用の試料を作成し、得られた試料を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、商品名:JSM-6490)を使用して断面観察を行い、組成外観から樹脂組成物ごとの境界線を判別して、記録用紙の全厚に観察される各層厚み比率を乗算して求めた。
【0085】
<ガーレ剛軟度>
記録用紙のガーレ剛軟度は、JIS L1096:2010に準拠し、温度23℃湿度50%RHの環境下で、MD方向について、ガーレ剛軟度試験機(大栄科学精器製作所(株)製、商品名:GAS-100)を用いて測定した。
【0086】
<光沢度>
記録用紙の受容層側表面の光沢度は、JIS P 8142:1993に準拠して測定し、75度鏡面光沢度を測定した。
【0087】
<静摩擦係数>
記録用紙の受容層側表面の静摩擦係数は、JIS K7125:1999に準拠し、擦係数試験器(東洋精機(株)製、商品名:TR-2)を用いて、測定した。
【0088】
<算術平均粗さRa>
記録用紙の基材層側表面(基材層としてコア層及び裏面層を設けた場合は裏面層側)の算術平均粗さRa(μm)は、JIS B0601:2003に準拠し、三次元粗さ測定装置((株)小坂研究所製、商品名:SE-3AK)、及び解析装置((株)小坂研究所製、商品名:SPA-11)を用いて測定した。
【0089】
<表面抵抗率>
記録用紙の基材層側表面(基材層としてコア層及び裏面層を設けた場合は裏面層側)の表面抵抗率は、23℃、相対湿度50%の条件下で、表面抵抗率が1×10Ω以上の場合は、JIS K6911:2006に準拠し2重リング法の電極を用いて測定した。表面抵抗率が1×10Ω未満の場合は、JIS K7194:1994に準拠し、4深針法で測定することによって求めた抵抗(R)に、補正係数Fを乗じてこれを表面抵抗率とした。
【0090】
(印刷適性の評価)
記録用紙を、温度23℃,相対湿度50%の雰囲気下で1日間保管した後、記録用紙の受容層面に、インクジェット印刷機「SC-S80650」(セイコーエプソン株式会社株式会社製)を用い、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態でSC10BK70のインクを、解像度:720×1440dpiでベタ印刷を行い、その後、50℃×30秒の熱処理(加熱乾燥)を行った。下記の基準で印刷適性を評価した。
【0091】
<濃度>
溶剤インクジェット印刷の後、印刷面をポータブル分光濃度計(エックスライト(株)製、商品名「508」)を用いて1試料あたり9箇所の黒色部の印刷濃度を測定し、平均値を求め、濃度を下記の基準で判定した。
3(良好):1.4以上でインク発色が良好
2(可):1.4未満、1.2以上で若干の濃度低下が見られるが問題とならない(実用下限)
1(不可):1.2未満(実用に満たない)
【0092】
<滲み>
溶剤インクジェット印刷の後、印刷後の記録用紙上の画像の状態をルーペで拡大して目視で観察した。記録用紙の滲みは、観察した画像の状態から、下記の基準で評価した。
3(良好):画像が鮮明である
2(可):目視ではインク滲みが不明瞭であるが、ルーペによる観察ではドット面積が広がっている(実用下限)
1(不可):画像にかすれが生じている(実用に適さない)
【0093】
<乾燥>
溶剤インクジェット印刷の後、1時間毎に印刷サンプルを任意に一枚抜出し、ベタ画像部のインクの乾燥状態を指でこすり確認した。乾燥性は下記の基準で評価した。
3(良好):非常に乾燥が速い(10分以内で乾燥し、指につかない)
2(可):乾燥が速く、問題とならない(10分超20分以内で乾燥、実用下限)
1(不可):乾燥がやや遅く問題となる(20分でも乾燥しない、実用に適さない)
【0094】
<定着>
<<擦過>>
溶剤インクジェット印刷の後、画像部分を、印刷から1日後に30mm×120mmのサイズに切り取り、学振試験機(スガ試験機社製)にセットした。ドライ条件での評価として、常温下で乾燥したガーゼを荷重215gの錘に取り付け、この錘で印刷した画像部分の表面を100回擦り、インクの剥離具合を目視観察にて評価した。また、ウェット条件での評価として、常温下で20μLの純水を浸みこませたガーゼを荷重215gの錘に取り付け、この錘で印刷した画像部分の表面を100回擦り、インクの剥離具合を目視観察した。擦過は下記の基準で評価した。
3(良好):擦った画像部分の95%以上が残存
2(可):擦った画像部分の80%以上が残存(実用下限)
1(不可):擦った画像部分の残存率が80%未満(実用に適さない)
【0095】
<<インク密着>>
溶剤インクジェット印刷の後、印刷面に、セロハンテープ(ニチバン社製、商品名:セロテープ(登録商標)CT-18)の粘着面を貼り付け、指で3回擦って十分に密着させた。密着させたセロハンテープを180度方向に300m/minの速度で手剥離した後、小型汎用画像解析装置(ニレコ社製、型式名:LUZEX-AP)を用いて、記録用紙上のインクの残存率を算出した。具体的には、印刷面を撮影して得られた画像に2値化処理を実施し、インクが占める面積の割合を残存率として算出した。インク密着は算出したインクの残存率から、下記の基準で評価した。
3(良好):インクの残存率が80%以上
2(可):インクの残存率が50%以上80%未満(実用下限)
1(不可):インクの残存率が50%未満(実用に適さない)
【0096】
<カール>
溶剤インクジェット印刷の後、記録用紙を100mm×100mmのサイズに切り取り、23℃、相対湿度50%の条件下で1日間保管した。記録用紙を印刷面を上にして平置きし、端部のカール高さを下記の基準で評価した。
3(良好):カール高さが-5mm~+10mm
2(可):カール高さが+11mm~+50mm(実用下限)
1(不可):カール高さが+51mm以上、もしくは-6mm以下(実用に適さない)
【0097】
<波打ち>
記録用紙の受容層面に、溶剤インクジェット印刷機「ラミレスIII:PJ-1634NX」(武藤工業株式会社製)を用いてブラックベタを印刷し、印刷部分の波打ちの発生度合いを目視により下記の基準で評価した。
3(良好):波打ちの発生が無く、極めて良好なレベル
2(可):波打ちの発生が僅かである(実用下限)
1(不可):波打ちの発生が見られる(実用に適さない)
【0098】
<ブロッキング>
記録用紙を、ロール状に巻回して、温度40℃,相対湿度50%の雰囲気下で1日間保管した後、ロールからの引出時にブロッキングを引き起こすことなくスムースな引き出しが可能であるかを観察した。ブロッキングを下記の基準で評価した。
3(良好):剥離音がなくスムースに引き出せる
2(可):剥離音があるが、引き取り後の基材層の外観を損ねていない(実用下限)
1(不可):大きな剥離音があり、かつ引き取り後の基材層の外観を損ねている(実用に適さない)
【0099】
<耐候性>
ポスター等の用途においては、屋外使用によってインクの剥がれが発生し問題となる場合がある。しかし耐候性の評価は、実際に屋外で暴露試験を行うと、気候や天候等の種々の変動因子によって結果が振れやすい。本実施形態では、印刷物に、JIS K-7350-4に準拠して、均一な条件で耐候性の促進処理(暴露試験)を行った後に、溶剤インクジェット印刷し、インク密着の評価を行った。より具体的には、以下の条件で促進処理を行った。
超促進耐候性試験機(ダイプラ・ウィンテス(株)製、商品名「メタルウェザー KU-R5N-A」、メタルハライドランプ式)及び295~450nmの紫外線光を透過するガラスフィルター「KF-2フィルター」(商品名)を使用した。上記の手順で印刷された記録用紙を90mm×150mmの寸法に切り取って得た試験片を、印刷面側が暴露面となるように、四方をアルミ箔テープ「AL-T」(竹内工業(株)製、商品名)でステンレス板(100mm×200mm)に貼り付けて固定し、これを試験機内に設置した。試験片の面の放射照度を90W/mとし、ブラックパネル温度を63℃とした。温度63℃、相対湿度50%での暴露5時間及び温度30℃、相対湿度98%での暴露3時間を1サイクルとして、促進処理はこれを2サイクル実施した。したがって、印刷面への放射露光量は5.18×106J/mであった。
次いで、耐候性促進処理を施した試験片を、擦過性の場合と同様に摩擦試験及び評価を行った。
3(良好):擦った画像部分の95%以上が残存
2(可):擦った画像部分の80%以上が残存(実用下限)
1(不可):擦った画像部分の残存率が80%未満(実用に適さない)
【0100】
[実施例及び比較例]
(実施例1~13及び比較例1~3)
以下の手順に従って、実施例1~13及び比較例1~3の記録用紙を製造した。表1に記録用紙の製造に用いた樹脂組成物の配合比率(質量部)を示す。
【0101】
【表1】
【0102】
(実施例1)
表1に記載の樹脂組成物aを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸し、単層1軸延伸シートを得た。次いで、樹脂組成物cを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して上記単層1軸延伸シートの第1面に積層すると同時に、樹脂組成物aを230℃に設定した1台の押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して上記単層1軸延伸シートの第2面に積層して、3層積層シートを得た。次いで、この3層積層シートを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて3層積層シートを約150℃に加熱して横方向に8.5倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。次いで60℃に冷却し、耳部をスリットして、樹脂組成物aの1軸延伸層が裏面層であり、肉厚が140μm、各層の樹脂組成物(c/a/a)、各層厚み(20μm/100μm/20μm)、各層延伸軸数(1軸/2軸/1軸)〕の積層樹脂フィルムを得た。
【0103】
攪拌機を備えた容器中に、ポリエチレンイミン溶液50質量部(日本触媒(株)製、商品名:エポミンP-1000)、下記式で示される第4級アンモニウム塩構造を分子鎖内に含むカチオン系のメタクリル酸エステル共重合体の帯電防止機能を有するポリマー溶液50質量部をこの順に添加し、次いで水で固形分濃度20質量%となる様に希釈し、そのまま20分間攪拌し混合して、分散して塗工液bを調製した。
【0104】
【化1】
【0105】
上記積層樹脂フィルムの裏面層の表面にコロナ放電による表面処理を施して、コロナ放電処理面側に塗工液bを塗布、乾燥して、厚さ0.1μmの塗布層を設け、70℃のオーブンで60秒乾燥後、実施例1の記録用紙を得た。
【0106】
(実施例2~6、10、11)
実施例1において、樹脂組成物cの代わりに表2に記載の受容層の樹脂組成物d、e、f、g、h、j又はkを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2~6、10、11の記録用紙を得た。
【0107】
(実施例7)
実施例1において、樹脂組成物cの代わりに表2に記載の受容層の樹脂組成物iを用い、肉厚を170μm、各層厚みを(50μm/100μm/20μm)としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7の記録用紙を得た。
【0108】
(実施例8)
実施例7において、肉厚を130μm、各層厚みを(10μm/100μm/20μm)としたこと以外は実施例7と同様にして、実施例8の記録用紙を得た。
【0109】
(実施例9)
実施例7において、肉厚を125μm、各層厚みを(5μm/100μm/20μm)としたこと以外は実施例7と同様にして、実施例9の記録用紙を得た。
【0110】
(実施例12)
表1に記載の樹脂組成物bを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸し、単層1軸延伸シートを得た。次いで、樹脂組成物aを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して上記単層1軸延伸シートの第1面に積層し、2層積層シートを得た。次いで、この2層積層シートを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて2層積層シートを約150℃に加熱して横方向に8.5倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行い、2層積層延伸シートを得た。次いで、樹脂組成物dを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して上記2層積層延伸シートの樹脂組成物bからなる層側の面に積層し、3層積層シートを得た。次いで60℃に冷却し、耳部をスリットして、樹脂組成物aの1軸延伸層が裏面層であり、肉厚が140μm、各層の樹脂組成物(d/b/a)、各層厚み(20μm/100μm/20μm)、各層延伸軸数(無延伸/2軸/1軸)〕の積層樹脂フィルムを得た。
【0111】
上述した実施例1と同様の方法を用いて塗工液bを調製した。上記積層樹脂フィルムの裏面層の表面にコロナ放電による表面処理を施して、コロナ放電処理面側に塗工液bを塗布、乾燥して、厚さ0.1μmの塗布層を設け、70℃のオーブンで60秒乾燥後、実施例12の記録用紙を得た。
【0112】
(実施例13)
表1に記載の樹脂組成物aを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。次いで、樹脂組成物dを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して上記無延伸シートの第1面に積層すると同時に、可塑性樹脂組成物aを230℃に設定した1台の押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して無延伸シートの第2面に積層して、3層積層シートを得た。次いで、耳部をスリットして、樹脂組成物aの無延伸層が裏面層であり、肉厚が120μm、各層の樹脂組成物(d/a/a)、各層厚み(20μm/80μm/20μm)、各層延伸軸数(無延伸/無延伸/無延伸)〕の積層樹脂フィルムを得た。
【0113】
上述した実施例1と同様の方法を用いて塗工液bを調製した。上記積層樹脂フィルムの裏面層の表面にコロナ放電による表面処理を施して、コロナ放電処理面側に塗工液bを塗布、乾燥して、厚さ0.1μmの塗布層を設け、70℃のオーブンで60秒乾燥後、実施例13の記録用紙を得た。
【0114】
(比較例1)
表1に記載の樹脂組成物bを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸し、単層1軸延伸シートを得た。次いで、樹脂組成物bを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して上記単層1軸延伸シートの第1面に積層し、2層積層シートを得た。
一方、水55重量部、微粉末シリカ〔水沢化学工業(株)製「ミズカシルP-78F」、平均粒径12.5μm〕20重量部及び疎水性樹脂(アクリル系樹脂エマルジョン)〔BASFジャパン(株)製「アクロナールYJ-2870D」、固形分濃度50重量%〕25重量部を混合、分散して塗工液aを調製した。
上記で得た2層積層シートの一方の面にコロナ放電による表面処理を施し、コロナ放電処理面側に塗工液a塗布、乾燥して、厚さ40μmの塗工層を設け、70℃のオーブンで60秒乾燥後、厚み140μmの比較例1の記録用紙を得た。
【0115】
(比較例2)
表1に記載の樹脂組成物lを160℃に設定した2本の9インチのテストロール(西村工機社製蒸気加熱型)で、5分間混練し圧延して、厚みが140μmの塩化ビニル系樹脂シートを作製した(カレンダー加工)。得られた塩化ビニル系樹脂シートに、37t油圧成型機(王子機械社製)にて、170℃の温度で、最大70kg/cmの圧力をかけプレスし、表面を鏡面に仕上げ、厚み140μmの比較例2の記録用紙を得た。
【0116】
(比較例3)
実施例1において、受容層の樹脂組成物cの代わりに樹脂組成物bを用い、基材層の樹脂組成物aの代わりに樹脂組成物bを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3の記録用紙を得た。
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
表2及び表3の結果から、熱可塑性樹脂フィルムからなる基材層のいずれか一方の面に、スチレン系樹脂を含む受容層を設けられた実施例1~13の記録用紙は、高い平滑性と優れた光沢性とを兼ね備え、画像濃度が高く、インクの吸収性・乾燥性に優れ、且つ印刷物を屋外に長期間暴露する場合にも耐水・防汚処理を必要としない、記録用紙であることが分かった。
【0120】
一方、スチレン系樹脂を含む受容層を設けられていない、顔料コート層が設けられた比較例1の記録用紙は、インクの吸収性・乾燥性に優れ、波打ちやブロッキングの発生を防止できているものの、光沢性及び画像濃度が低く、またインクの定着性に劣るため印刷物を屋外に長期間暴露する場合に耐水・防汚処理を必要とするものであった。また、スチレン系樹脂を含む受容層を設けられていない、塩化ビニル系共重合体を含有する受容層が設けられた比較例2の記録用紙は、優れた光沢性を有し、インクの吸収性・乾燥性に優れ、画像濃度に優れるものの、波打ちやブロッキングの発生を防止できておらず、耐候性に劣るものであった。さらに、スチレン系樹脂を含む受容層を設けられていない、プロピレン単独重合体を含有する受容層が設けられた比較例3の記録用紙は、インクの吸収性・乾燥性に劣り、且つ溶剤インクジェット印刷適正にも劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明に係る記録用紙は、高い平滑性と優れた光沢性とを兼ね備え、画像濃度が高く、インクの吸収性・乾燥性に優れ、且つ印刷物を屋外に長期間暴露する場合にも耐水・防汚処理を必要としない記録用紙である。このため、本発明に係る記録用紙は、シール、ラベル、サイン、ポスター、広告等の掲示物としてとして非常に有用である。
また、本発明に係る記録用紙は、溶剤系インクを用いた溶剤インクジェット用記録用紙としての用途に非常に有用である。
【0122】
本出願は、2021年3月31日に出願された日本特許出願である特願2021-060712号に基づく優先権を主張し、当該日本特許出願のすべての記載内容を援用する。
【符号の説明】
【0123】
100・・・記録用紙、10・・・受容層、20・・・基材層、21・・・コア層、22・・・裏面層

図1
図2