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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】リニアテーブル装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/08 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
F16C29/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023575976
(86)(22)【出願日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2023033451
【審査請求日】2023-12-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000170853
【氏名又は名称】黒田精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 達登
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 喜実
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-034736(JP,A)
【文献】特開2000-266151(JP,A)
【文献】実開平03-033041(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/08
F16H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの軸線方向に沿って延在する凹溝を有するベース部材と、
前記凹溝内に設けられ、前記軸線方向に沿って移動する可動部を有する駆動装置と、
前記凹溝の開口を塞ぐように前記軸線方向に沿って延在し、前記ベース部材に固定された両端部を有する帯状のシートプレートと、
前記可動部に連結され、前記シートプレート上を移動する可動テーブルと、を備え、
前記可動テーブルは、
前記シートプレートの一部を前記ベース部材から離反する方向に湾曲させた状態で収容するシート収容室と、
当該可動テーブルの移動方向における前記シート収容室の前後に設けられた一対のローラとを有し、
前記ローラの各々は、前記軸線方向に直交して前記シートプレートを横切る方向に延在する回転軸線周りに回転可能に設けられ、前記シートプレートの、前記ベース部材から離反する側の面に当接する複数の当接部及び隣接する前記当接部間の外周に形成された少なくとも1つの周溝を含むローラ本体部と、前記ローラ本体部の回転軸線方向の両端に前記ローラ本体部と一体的に設けられた軸受係合軸部とを有し、
前記可動テーブルは、更に、軸受室と、前記軸受室に設けられ、前記軸受係合軸部を回転可能に支持する軸受部とを有し、
前記ローラの各々は、更に、前記ローラ本体部と前記軸受係合軸部との間に前記軸受係合軸部よりも大径で、前記軸受室内に位置する大径部を含み、
前記大径部及び前記軸受係合軸部と前記可動テーブルとが協働して前記大径部と前記軸受室の内周面との間の、他と比べて隙間が狭くなった部分によってラビリンスシールを構成するリニアテーブル装置。
【請求項2】
一つの軸線方向に沿って延在する凹溝を有するベース部材と、
前記凹溝内に設けられ、前記軸線方向に沿って移動する可動部を有する駆動装置と、
前記凹溝の開口を塞ぐように前記軸線方向に沿って延在し、前記ベース部材に固定された両端部を有する帯状のシートプレート、
前記可動部に連結され、前記シートプレート上を移動する可動テーブルと、を備え、
前記可動テーブルは、
前記シートプレートの一部を前記ベース部材から離反する方向に湾曲させた状態で収容するシート収容室と、
当該可動テーブルの移動方向における前記シート収容室の前後に設けられた一対のローラとを有し、
前記ローラの各々は、前記軸線方向に直交して前記シートプレートを横切る方向に延在する回転軸線周りに回転可能に設けられ、前記シートプレートの、前記ベース部材から離反する側の面に当接する複数の当接部及び隣接する前記当接部間の外周に形成された少なくとも1つの周溝を含むローラ本体部と、前記ローラ本体部の回転軸線方向の両端に前記ローラ本体部と一体的に設けられた軸受係合軸部とを有し、
前記可動テーブルは、更に、前記軸受係合軸部を回転可能に支持する軸受部と、前記シートプレートの両側の各側縁に沿って前記軸線方向に延在する一対のサイドメンバと、前記一対のローラ間において前記シートプレートが接触することなく通過し、前記一対のサイドメンバ間に延在して当該一対のサイドメンバを互いに接合するクロスメンバと、前記一対のサイドメンバの各々の一方の端部及び他方の端部の各々に取り付けられ、前記軸受部を保持する4個の軸受保持ブロックと、前記一対のサイドメンバ、前記クロスメンバ及び前記軸受保持ブロックの前記ベース部材から離反する側を覆うべく前記一対のサイドメンバに固定されたカバー部材とを有し、
前記カバー部材は前記一対のサイドメンバ及び前記4個の軸受保持ブロックと協働して前記シート収容室を画定するリニアテーブル装置。
【請求項3】
前記軸受保持ブロックの各々は、互いに直交する3面を有し、前記3面が対応する前記サイドメンバの一方の端部及び他方の端部に設けられた互いに直交する3面に面接触している請求項2に記載のリニアテーブル装置。
【請求項4】
前記ベース部材は、前記シート収容室に連通する内部空間を含み、前記内部空間を負圧にする空気吸引口を有する請求項1又は2に記載のリニアテーブル装置。
【請求項5】
前記ベース部材は、前記開口の両側縁に沿って前記軸線方向に延在し、前記シートプレートを磁気的に吸着する磁気部を有する請求項1又は2に記載のリニアテーブル装置。
【請求項6】
前記駆動装置は、前記ベース部材に回転可能に支持されて前記軸線方向に延在するボールねじ軸と、前記ボールねじ軸にねじ係合するボールナットとを有し、
前記可動部は前記ボールナットを含んでいる請求項1又は2に記載のリニアテーブル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアテーブル装置に関し、更に詳細にはシートプレートを含むリニアテーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアテーブル装置として、軸線方向に延在する凹溝を有するベース部材と、凹溝の開口を塞ぐように軸線方向に沿って延在し、ベース部材に固定された両端部を有する帯状のシートプレートとを有し、可動テーブルが、シートプレートの一部をベース部材から離反する方向に湾曲させた状態で収容するシート収容室と、可動テーブルの移動方向におけるシート収容室の前後に設けられたシートプレート案内部とを含むものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平02-043142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可動テーブルの移動により発生する摩耗粉等のパーティクルを回収するために、可動テーブルの移動下においてシート収容室外からシート収容室内に流れる空気の流れが生じる。この場合、シートプレート案内部が、シート収容室外からシート収容室内に流れる空気の流れの障壁になり、空気の流れを阻害する。このため、空気流によるパーティクルの回収が阻害される。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑み、リニアテーブル装置において、シート収容室外からシート収容室内に流れる空気の流れが阻害されることを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、リニアテーブル装置であって、一つの軸線方向に沿って延在する凹溝を有するベース部材と、前記凹溝内に設けられ、前記軸線方向に沿って移動する可動部を有する駆動装置と、前記凹溝の開口を塞ぐように前記軸線方向に沿って延在し、前記ベース部材に固定された両端部を有する帯状のシートプレートと、前記可動部に連結され、前記シートプレート上を移動する可動テーブルとを備え、前記可動テーブルは、前記シートプレートの一部を前記ベース部材から離反する方向に湾曲させた状態で収容するシート収容室と、当該可動テーブルの移動方向における前記シート収容室の前後に設けられた一対のローラとを有し、前記ローラの各々は、前記軸線方向に直交して前記シートプレートを横切る方向に延在する回転軸線周りに回転可能に設けられ、前記シートプレートにおける前記ベース部材から離反する側の面に当接し、外周に形成された少なくとも1つの周溝を含む。
【0007】
この態様によれば、シート収容室外からシート収容室内に流れる空気の流れがローラによって阻害されることが抑制される。
【0008】
上記の態様において、前記ベース部材は、前記シート収容室に連通する内部空間を含み、前記内部空間を負圧にする空気吸引口を有していてもよい。
【0009】
この態様によれば、シート収容室外とシート収容室内との圧力差が生じ、圧力差によってシート収容室外からシート収容室内に確実に空気が流れる。
【0010】
上記の態様において、前記ベース部材は、前記開口の両側縁に沿って延在し、前記シートプレートを磁気的に吸着する磁気部を有していてもよい。
【0011】
この態様によれば、シートプレートによって凹溝の開口を塞ぐことが良好に行われる。
【0012】
上記の態様において、前記ローラの各々は、前記シートプレートと当接する当接部及び前記周溝を含むローラ本体部と、前記ローラ本体部の回転軸線方向の両端に前記ローラ本体部と一体的に設けられた軸受係合軸部とを有し、前記可動テーブルは前記軸受係合軸部を回転可能に支持する軸受部を有していてよい。
【0013】
この態様によれば、ローラの部品点数及び組立工程が増大することが抑制される。
【0014】
上記の態様において、前記ローラの各々は、更に、前記ローラ本体部と前記軸受係合軸部との間に前記軸受係合軸部よりも大径の大径部を含んで前記ローラ本体部と前記軸受部との間にラビリンスシールを構成していてもよい。
【0015】
この態様によれば、軸受部に発生するパーティクルが軸受部の外部に飛散することが抑制される。
【0016】
上記の態様において、前記可動テーブルは、前記シートプレートの両側の各側縁に沿って前記軸線方向に延在する一対のサイドメンバと、前記一対のローラ間において前記シートプレートが接触することなく通過し、前記一対のサイドメンバ間に延在して当該一対のサイドメンバを互いに接合するクロスメンバと、前記一対のサイドメンバの各々の一方の端部及び他方の端部の各々に取り付けられ、前記軸受部を保持する4個の軸受保持ブロックと、前記一対のサイドメンバ、前記クロスメンバ及び前記軸受保持ブロックの前記ベース部材から離反する側を覆うべく前記一対のサイドメンバに固定されたカバー部材とを有し、前記カバー部材は前記一対のサイドメンバ及び前記4個の軸受保持ブロックと協働して前記シート収容室を画定していてもよい。
【0017】
この態様によれば、パーティクルが可動テーブルの外部に飛散することが抑制される。
【0018】
上記の態様において、前記軸受保持ブロックの各々は、互いに直交する3面を有し、前記3面が対応する前記サイドメンバの一方の端部及び他方の端部に設けられた互いに直交する3面に面接触している。
【0019】
この態様によれば、各軸受保持ブロックのサイドメンバに対する取付位置が容易に高精度に設定される。
【0020】
上記の態様において、前記駆動装置は、前記ベース部材に回転可能に支持されて前記軸線方向に延在するボールねじ軸と、前記ボールねじ軸にねじ係合するボールナットとを有し、前記可動部は前記ボールナットを含んでいてもよい。
【0021】
この態様によれば、可動テーブルの駆動が高精度に行われる。
【発明の効果】
【0022】
以上の態様によれば、シート収容室外からシート収容室内に流れる空気の流れが阻害されることが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明によるリニアテーブル装置の実施形態を示す斜視図
図2】本実施形態によるリニアテーブル装置の要部の拡大斜視図
図3図1の線III-IIIに沿った拡大断面図
図4図3の線IV-IVに沿った断面図
図5図3の線V-Vに沿った断面図
図6】本実施形態によるリニアテーブル装置の拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明によるリニアテーブル装置の実施形態を、図1図6を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明では、説明の便宜上、互いに直交する各上下、左右及び前後の各方向を図に示されているように定義する。
【0025】
図1に示されているように、リニアテーブル装置10はベース部材12を有する。ベース部材12は、一つの軸線方向に沿って、本実施形態では前後方向に延在する直線状のレール部材14と、レール部材14の前端及び後端に固定された前端部材16及び後端部材18と、レール部材14の上部に設けられた上部カバー20とを有し、これらの内側に内部空間30(図3参照)を画定している。前後方向はレール部材14の長手方向になり、これより以降の説明では、前後方向をレール部材14の長手方向と云うことがある。
【0026】
レール部材14は、図3に示されているように底壁14A及び底壁14Aの左右両側に設けられた左右の側壁14B及び14Cを有し、上方が開口した凹溝22を形成している。つまり、レール部材14は、底壁14A及び左右の側壁14B、14Cにより、凹形断面形状を形成し、上方が開口した凹溝22を画定している。
【0027】
上部カバー20は左右に分割された左側部材24及び右側部材26を有する。左側部材24及び右側部材26は、縦片部24A、26A及び縦片部24A、26Aの各々の上端から互いに近付く方向に延出した平板状の横片部24B、26Bを備え、各々鉤形断面形状を有する。左側部材24及び右側部材26は、縦片部24A、26Aを対応する側壁14B及び14Cに固定され、且つ前端及び後端を前端部材16及び後端部材18に固定され、横片部24Bと26Bとの間にレール部材14の長手方向に延在する帯状の開口28を画定している。
【0028】
これにより、本実施形態では、上部カバー20の開口28が、凹溝22の上側を外方に向けて開放する、凹溝22の実質的な開口をなす。
【0029】
リニアテーブル装置10は、凹溝22内を、レール部材14の左右の側壁14B及び14Cの各々に設けられた左右のリニアボールベアリング32に案内されてレール部材14の延在方向に移動可能なスライダ34と、スライダ34をレール部材14の長手方向に駆動する駆動装置36とを有する。
【0030】
駆動装置36は、前端部材16、後端部材18に回転可能な支持された軸端を含み、レール部材14の長手方向(前後方向)に延在するボールねじ軸38と、スライダ34に固定され、ボールねじ軸38にねじ係合するボールナット40(可動部)とを有する。駆動装置36は、後端部材18に配置された電動モータ(不図示)によってボールねじ軸38が回転駆動されることにより、ボールナット40をレール部材14の長手方向に直線移動させる。このボールナット40の直線移動により、スライダ34はリニアボールベアリング32に案内されてレール部材14に対してレール部材14の長手方向に高い位置精度をもって略水平に移動する。
【0031】
これにより、本実施形態では、スライダ34及びボールナット40が、凹溝22内に設けられてレール部材14の長手方向に移動する駆動装置36の可動部をなす。
【0032】
ベース部材12には帯状のシートプレート44が取り付けられている。シートプレート44は、所要の弾性を有する磁性体、例えば、フェライト系やマルテンサイト系のステンレス鋼等により構成され、図1に示されているように、開口28を塞ぐように、レール部材14の長手方向に沿って延在し、ねじ46によって前端部材16及び後端部材18に固定された両端部44A、44Bを有する。
【0033】
シートプレート44は、図2に示されているように、両側の各側縁44Cが上部カバー20の左側部材24及び右側部材26の横片部24B、26B上をオーバラップする左右方向長を有する。横片部24B、26Bの各々がシートプレート44とオーバラップする部分の上面には帯状の磁気シート(磁気部)25がレール部材14の長手方向に沿って貼り付けられている。
【0034】
シートプレート44の両側縁44Cは、後述する可動テーブル50のシート収容室70内に位置する部分以外においては、対応する磁気シート25に磁気的に吸着する。これにより、シートプレート44は、シート収容室70内に位置する部分以外においては、横片部24B、26B上を密着状態でレール部材14の長手方向に沿って略水平な平板状に延在し、開口28を塞ぐ。
【0035】
リニアテーブル装置10は可動テーブル50を有する。可動テーブル50は、図2図6に示されているように、シートプレート44の左右両側の各側縁44Cに沿って互いに平行に前後方向に延在する一対のサイドメンバ52と、一対のサイドメンバ52間に延在して各サイドメンバ52の前後方向の中間部の下部を互いに接合するクロスメンバ56と、各サイドメンバ52の前端(一方の端部)にねじ58によって固定された一対の前側軸受保持ブロック60と、各サイドメンバ52の後端(他方の端部)にねじ62によって固定された一対の後側軸受保持ブロック64と、サイドメンバ52、クロスメンバ56、前側軸受保持ブロック60及び後側軸受保持ブロック64のベース部材12から離反する側(上側)を覆うべく、ねじ66によってサイドメンバ52の上部に固定された下方開放の直方形箱状のカバー部材68とを有し、平面視で矩形をなしている。
【0036】
カバー部材68は、一対のサイドメンバ52、前側軸受保持ブロック60及び後側軸受保持ブロック64と協働して、これらの内側に、下方に向けて開口したシート収容室70(図5参照)を画定する。カバー部材68は、更に、一対のサイドメンバ52、前側軸受保持ブロック60及び後側軸受保持ブロック64と協働して、これらの外側を取り囲む矩形枠状の外周空間69を画定している。シート収容室70と外周空間69とは下側において互いに連通している。
【0037】
クロスメンバ56は、シートプレート44と接触しない範囲で可及的に大きい横断面積をもって左右のサイドメンバ52を互いに剛固に接合すべく、図5に示されているように、略水平な上面の56Aの前側及び後側の各々がシートプレート44の湾曲形状に倣う方向に傾斜した傾斜面56B、56Cになっている。
【0038】
可動テーブル50はクロスメンバ56の下部から下方に延出し、開口28を上下方に通過するくびれ部72Aを含む連結部72を有する。可動テーブル50は連結部72によってスライダ34の上部に一体的に連結されている。これにより、可動テーブル50はスライダ34と一体的に前後方向に略水平に移動する。可動テーブル50のくびれ部72Aよりも上側はシートプレート44上をレール部材14の長手方向(前後方向)に略水平に移動する。
【0039】
各サイドメンバ52はカバー部材68を上下に貫通してカバー部材68の上方に露出した部分を含む複数の取付座部74を有する。取付座部74にはリニアテーブル装置10による移動対象物(不図示)が取り付けられる。
【0040】
各前側軸受保持ブロック60は、図4に示されているように、左右方向に延在し、対応するサイドメンバ52の前端面52Aに面接触する後面61Aを含む端片部60Aと、端片部60Aから後方に延出し、対応するサイドメンバ52の内側面52Bに面接触する外側面61Bを含む側片部60Bとを有し、対応するサイドメンバ52の前端の角部に係合する平面視で鉤形形状を有する。
【0041】
各前側軸受保持ブロック60は、図2に示されているように、対応するサイドメンバ52の前端の下縁に沿って形成された鉤形切欠部53に係合する凸部60Cを有する。各凸部60Cは対応する鉤形切欠部53の下面52Cに面接触する上面61Cを含む。
【0042】
つまり、各前側軸受保持ブロック60は、図6に示されているように、互いに直交する前後方向、左右方向及び上下方向の3面(後面61A、外側面61B、上面61C)が対応するサイドメンバ52の前端角部の互いに直交する3面(前端面52A、内側面52B、下面52C)に各々面接触することにより、対応するサイドメンバ52に対する前後方向、左右方向及び上下方向の各取付位置を容易且つ精度よく一義的に設定される。
【0043】
各前側軸受保持ブロック60の側片部60Bは、図4に示されているように、内方に向けて開口した軸受室60Dを有し、軸受室60Dに嵌挿されたボール軸受(軸受部)76を保持している。
【0044】
ここで言う「内方に向けて」は、各前側軸受保持ブロック60の側片部60Bがサイドメンバ52に隣接する側から遠ざかる方向であり、左右一対の前側軸受保持ブロック60の側片部60Bが互いに対向する方向である。
【0045】
左右一対の前側軸受保持ブロック60間には前側ローラ80が配置されている。前側ローラ80は、シートプレート44を左右方向に横切る方向に延在する回転軸線を有し、ローラ本体部82と、ローラ本体部82の回転軸線方向の左右両端にローラ本体部82と一体的に設けられた軸受係合軸部84とを有する。
【0046】
ローラ本体部82は、図4に示されているように中心軸線方向に等間隔をおいた3箇所の各々に形成された当接部82Aと、隣接する当接部82A間に形成された周溝82Bとを有する。各当接部82Aはシートプレート44の上面44Eと当接する。周溝82Bは、ローラ本体部82の外周の、中心軸線方向に等間隔をおいた2箇所に設けられ、各々、凹形の溝断形状を有する空間を画定する。
【0047】
各前側軸受保持ブロック60に設けられた左右一対のボール軸受76の各々は前側ローラ80の対応する軸受係合軸部84を左右方向に延在する回転軸線周りに回転可能に支持している。
【0048】
各後側軸受保持ブロック64は、図4に示されているように、左右方向に延在し、対応するサイドメンバ52の後端面52Dに面接触する前面65Aを含む端片部64A及び端片部64Aから前方に延出し、対応するサイドメンバ52の内側面52Bに面接触する外側面65Bを含む側片部64Bとを有し、平面視で対応するサイドメンバ52の後端の角部に係合する鉤形形状を有する。
【0049】
各後側軸受保持ブロック64は、図2に示されているように、対応するサイドメンバ52の後端の下縁に沿って形成された鉤形切欠部55に係合する凸部64Cを有する。各凸部64Cは対応する鉤形切欠部55の下面52Eに面接触する上面65Cを含む。
【0050】
つまり、各後側軸受保持ブロック64は、図6に示されているように、互いに直交する前後方向、左右方向及び上下方向の3面(前面65A、外側面65B、上面65C)が対応するサイドメンバ52の後端角部の互いに直交する3面(後端面52D、内側面52B、下面52E)に各々面接触することにより、対応するサイドメンバ52に対する前後方向、左右方向及び上下方向の各取付位置を容易且つ精度よく一義的に設定される。
【0051】
各後側軸受保持ブロック64の側片部64Bは、図4に示されているように、内方に向けて開口した軸受室64Dを有し、軸受室64Dに嵌挿されたボール軸受(軸受部)78を保持している。
【0052】
ここで言う「内方に向けて」は、各後側軸受保持ブロック64の側片部64Bがサイドメンバ52に隣接する側から遠ざかる方向であり、左右一対の後側軸受保持ブロック64の側片部64Bが互いに対向する方向である。
【0053】
左右一対の後側軸受保持ブロック64間には後側ローラ90が配置されている。後側ローラ90は、シートプレート44を左右方向に横切る方向に延在する回転軸線(中心軸線)を有し、ローラ本体部92と、ローラ本体部92の回転軸線方向の左右両端にローラ本体部92と一体的に設けられた軸受係合軸部94とを有する。
【0054】
ローラ本体部92は、図4に示されているように中心軸線方向に等間隔をおいた3箇所の各々に形成された当接部92Aと、隣接する当接部92A間に形成された周溝92Bとを有する。各当接部92Aはシートプレート44の上面44Eと当接する。周溝92Bは、ローラ本体部92の外周の、中心軸線方向に等間隔をおいた2箇所に設けられ、各々、凹形の溝断形状を有する空間を画定する。
【0055】
前側ローラ80と後側ローラ90とは同一構成である。前側ローラ80はローラ本体部82及び軸受係合軸部84を含む全体を切削加工等により一体成形されている。後側ローラ90はローラ本体部92及び軸受係合軸部94を含む全体を切削加工等により一体成形されている。
【0056】
各後側軸受保持ブロック64に設けられた一対のボール軸受78の各々は後側ローラ90の対応する軸受係合軸部94を左右方向に延在する回転軸線周りに回転可能に支持している。
【0057】
前側ローラ80の各周溝82B及び後側ローラ90の各周溝92Bは切削加工に形成されていてよく、複数の周溝82Bを有する前側ローラ80の全体及び複数の周溝92Bを有する後側ローラ90全体は、各々、1ブロックの一つの部品である。これにより、ローラ本体部82及びローラ本体部92の各々に複数の周溝82B、92Bが設けられても、前側ローラ80、後側ローラ90の組立工程及び部品点数が増加することがない。
【0058】
更に、ローラ本体部82と軸受係合軸部84、ローラ本体部92と軸受係合軸部94とが、各々一体構造であることにより、前側ローラ80及び後側ローラ90の各々の組立工程及び部品点数が増加することもなく、前側ローラ80及び後側ローラ90の各々に組立誤差が生じることがない。
【0059】
ローラ本体部82と軸受係合軸部84、ローラ本体部92と軸受係合軸部94とが、各々一体構造であっても、左右一対の前側軸受保持ブロック60及び後側軸受保持ブロック64の各々が左右のサイドメンバ52とは別体であることにより、前側ローラ80、後側ローラ90の左右のサイドメンバ52に対する組付けが困難になることがない。前側ローラ80の組付けは、前側ローラ80の左右の軸受係合軸部84の各々に前側軸受保持ブロック60を取付け、前側ローラ80と左右の前側軸受保持ブロック60との組立体をねじ58によって左右のサイドメンバ52の前端に組み付ける手順で行われればよい。同様に、後側ローラ90の組付けは、後側ローラ90の左右の軸受係合軸部94の各々に後側軸受保持ブロック64を取付け、後側ローラ90と左右の後側軸受保持ブロック64との組立体をねじ62によって左右のサイドメンバ52の後端に組付ける手順で行われればよい。
【0060】
前側ローラ80と後側ローラ90とは、互いに平行に延在する回転軸線周りに各々回転可能であり、クロスメンバ56の前方と後方とに位置して、換言すると、可動テーブル50の移動方向におけるシート収容室70の前後に設けられて前後一対である。換言すると、クロスメンバ56は前側ローラ80と後側ローラ90との各々の間に前後方向の間隔をおいて位置する。
【0061】
各サイドメンバ52に対する各前側軸受保持ブロック60及び各後側軸受保持ブロック64の取付位置の精度が高いことにより、各サイドメンバ52に対するボール軸受76、78の位置精度が高くなり、ついては可動テーブル50に対する前側ローラ80及び後側ローラ90の各々の位置精度が高くなる。これにより、前側ローラ80及び後側ローラ90の各々がシートプレート44に対して所期通りに有効に作用する。
【0062】
シート収容室70は、前側ローラ80、後側ローラ90及びクロスメンバ56を収容している。
【0063】
シートプレート44は、前端部材16に対する固定部と後端部材18に対する固定部との間に余剰部分が生じるよう、ねじ46による前端部材16に対する固定部とねじ46による後端部材18に対する固定部との間の前後方向長(長手方向長)よりも長い前後方向長(長手方向長)を有する。
【0064】
シートプレート44は、上述の長さ設定により、図2及び図5に示されているように、シート収容室70において、磁気シート25の磁気吸着から離れ、ベース部材12から離反する方向(上方向)に円弧状に湾曲する湾曲部45を生成する。換言すると、シート収容室70は、前側ローラ80と後側ローラ90との間においてシートプレート44の一部をベース部材12から離反する方向に湾曲させた状態で、つまり湾曲部45を収容する。
【0065】
湾曲部45はシートプレート44の上述の余剰部分に自身の弾性により生じる。シートプレート44が有する所要の弾性は、可動テーブル50の前後方向に伴って湾曲部45の発生位置がシートプレート44の前後方向に変化することに適した弾性である。
【0066】
クロスメンバ56は、ベース部材12から離反する方向に膨出した山形の横断面形状を有する。
【0067】
シートプレート44は、前側ローラ80及び後側ローラ90の下側を前後方向にくぐり、通常状態ではカバー部材68の平らな上壁部68Aの下方を、所定の高さを有する正常状態の湾曲部45によってクロスメンバ56に接触することなくクロスメンバ56の上方を前後方向に通過する。
【0068】
上部カバー20の左側部材24の前後2箇所には、図1及び図3に示されているように、空気吸引口13を有するニップル15が取り付けられている。空気吸引口13には吸引ポンプ等による負圧源(不図示)が接続される。
【0069】
ベース部材12の内部空間30は、図3に示されているように、可動テーブル50に対応する前後方向位置において、連結部72の周りの空間及び開口28によってシート収容室70に連通している。これにより、外周空間69、内部空間30及びシート収容室70が負圧状態になる。
【0070】
可動テーブル50の移動により生じたパーティクルは、内部空間30及びシート収容室70が負圧状態であることにより、内部空間30及びシート収容室70に回収され、シート収容室70から可動テーブル50の外部に飛散することが抑制された状態で、空気吸引口13から外部に排出される。
【0071】
前側ローラ80のローラ本体部82の当接部82A及び後側ローラ90のローラ本体部92の当接部92Aの各々は、シートプレート44におけるベース部材12から離反する側の面、つまり上面44Eに転動可能に当接している。ローラ本体部82、92は、シートプレート44に対して僅かな押圧力をもって当接すればよい。ローラ本体部82及びローラ本体部92の各々がシートプレート44の上面44Eに当接する位置は、図5に示されているように、シートプレート44が磁気シート25との磁気吸着から離れた位置よりも前後方向に僅かにシート収容室70側に偏倚した位置である。
【0072】
シートプレート44は、湾曲部45が発生する開始位置及び終了位置の近傍において、自身の弾性変形によって僅かな押圧力をもってローラ本体部82、92の当接部82A、92Aと当接することにより、湾曲部45が振動等によって不要に変形することが抑制される。このことにより、湾曲部45の形状が安定し、シートプレート44が湾曲部45以外の部分において磁気シート25に安定して磁気吸着し、シートプレート44による開口28の閉塞が安定して行われる。
【0073】
前側ローラ80及び後側ローラ90の各周溝82B、92Bは、ローラ本体部82、92の各々の配置部において、シート収容室70の内部とシート収容室70の外部、つまり外周空間69とを互いに連通する空気通路になる。
【0074】
これにより、ローラ本体部82、92が前後方向の空気の流れの障壁になり難く、外周空間69からシート収容室70内に流れようとする空気の流れが阻害されることが抑制される。この結果、ローラ本体部82、92の各々の配置部において外周空間69からシート収容室70内に流れる空気の流量が、周溝82B、92Bがない場合に比して増大する。
【0075】
このことにより、ローラ本体部82、92の各々の配置部において、外周空間69からシート収容室70内に流れる空気流により摩耗粉等のパーティクルがシート収容室70に回収されることが良好に行われるようになる。
【0076】
前側ローラ80及び後側ローラ90の各々は、図4に示されているように、ローラ本体部82、92と各軸受係合軸部84、94との間に、ローラ本体部82、92の外径より小さい外径の小径部86、96と、小径部86、96及び軸受係合軸部84、94の外径よりも大きい外径(大径)の大径部88、98とを、ローラ本体部82、92側から軸受係合軸部84、94に向けて順に有する。大径部88、98は、軸受室60D、64Dの内径よりも僅かに小さい外径を有し、軸受室60D、64D内に位置している。
【0077】
これにより、前側ローラ80と前側軸受保持ブロック60との間及び後側ローラ90と後側軸受保持ブロック64との間の各々に無接触シールであるラビリンスシールが構成される。このラビリンスシールにより、軸受室60D、64D内で発生したパーティクルが軸受室60D、64D外に飛散することが抑制される。このことにより、軸受室60D、64D内で発生したパーティクルによって前側ローラ80、後側ローラ90の配置部分が汚染されることが抑制される。
【0078】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。
【0079】
例えば、ローラ本体部82、ローラ本体部92の各々に設けられる周溝82B、92Bの個数は、2個に限られることなく、1個或いは3個以上の複数個であってもよい。当接部82A、92Aの個数は、3個に限られることなく、周溝82B、92Bの個数に従って2個以上の複数個であってもよい。当接部82A、92A及び周溝82B、92Bは、ローラ本体部82、ローラ本体部92の軸長に応じた個数に定められてよい。当接部82A、92A及び周溝82B、92Bは軸線方向に必ずしも等間隔に設けられる必要はない。可動テーブル50の駆動装置36は、ボールねじ軸38、ボールナット40を含むボールねじ式のものに限られることはなく、リニアモータ等のリニアアクチュエータであってもよい。
【0080】
上述の実施形態は、リニアテーブル装置10が水平に配置された場合を想定しており、例えば、リニアテーブル装置10が鉛直に配置された場合は、レール部材14の延在方向は上下方向になる。
【符号の説明】
【0081】
10 :リニアテーブル装置
12 :ベース部材
13 :空気吸引口
14 :レール部材
14A :底壁
14B :側壁
14C :側壁
15 :ニップル
16 :前端部材
18 :後端部材
20 :上部カバー
22 :凹溝
24 :左側部材
24A :縦片部
24B :横片部
25 :磁気シート(磁気部)
26 :右側部材
26A :縦片部
26B :横片部
28 :開口
30 :内部空間
32 :リニアボールベアリング
34 :スライダ
36 :駆動装置
38 :ボールねじ軸
40 :ボールナット(可動部)
44 :シートプレート
44A :端部
44B :端部
44C :側縁
44E :上面
45 :湾曲部
46 :ねじ
50 :可動テーブル
52 :サイドメンバ
52A :前端面
52B :内側面
52C :下面
52D :後端面
52E :下面
53 :鉤形切欠部
55 :鉤形切欠部
56 :クロスメンバ
56A :上面
56B :傾斜面
56C :傾斜面
58 :ねじ
60 :前側軸受保持ブロック(軸受部)
60A :端片部
60B :側片部
60C :凸部
60D :軸受室
61A :後面
61B :外側面
61C :上面
62 :ねじ
64 :後側軸受保持ブロック(軸受部)
64A :端片部
64B :側片部
64C :凸部
64D :軸受室
65A :前面
65B :外側面
65C :上面
66 :ねじ
68 :カバー部材
68A :上壁部
69 :外周空間
70 :シート収容室
72 :連結部
72A :くびれ部
74 :取付座部
76 :ボール軸受(軸受部)
78 :ボール軸受(軸受部)
80 :前側ローラ
82 :ローラ本体部
82A :当接部
82B :周溝
84 :軸受係合軸部
86 :小径部
88 :大径部
90 :後側ローラ
92 :ローラ本体部
92A :当接部
92B :周溝
94 :軸受係合軸部
96 :小径部
98 :大径部
【要約】
【課題】空気流によるシート収容室に対するパーティクルの回収を改善すること。
【解決手段】シート収容室70を画定する可動テーブル50の前後に前側ローラ80及び後側ローラ90を有し、前側ローラ80及び後側ローラ90の各々の外周に周溝82B、92Bが設けられている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6