(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】コンテンツ評価システム
(51)【国際特許分類】
H04N 21/254 20110101AFI20241224BHJP
H04N 21/258 20110101ALI20241224BHJP
【FI】
H04N21/254
H04N21/258
(21)【出願番号】P 2024152480
(22)【出願日】2024-09-04
【審査請求日】2024-09-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591101434
【氏名又は名称】株式会社ビデオリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中野 恵那
(72)【発明者】
【氏名】阿部 良一
【審査官】大西 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-188031(JP,A)
【文献】特開2020-177497(JP,A)
【文献】特開2021-022084(JP,A)
【文献】特表2014-520329(JP,A)
【文献】特許第7519563(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0125054(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00 -21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツ素材から受け手が喚起される感情で該コンテンツ素材を評価するコンテンツ評価システムであって、
前記コンテンツ素材から受け手が喚起される感情を感情可視化技術により可視化した感情評価指標として、受け手が喚起される感情である感情ラベルと該感情ラベルをスコアリングした感情スコアとを生成する評価パラメータ生成部と、
前記評価パラメータ生成部により生成された感情評価指標から前記コンテンツ素材を評価するコンテンツ評価部と
を備え
、
前記コンテンツ評価部は、
前記評価パラメータ生成部により生成された前記感情ラベルをポジティブ要素とネガティブ要素に分けて、該ポジティブ要素に含まれる各要素の前記感情スコアと、該ネガティブ要素に含まれる各要素の該感情スコアとから前記コンテンツ素材を評価する際に、
前記ポジティブ要素に含まれる各要素の前記感情スコアと、前記ネガティブ要素に含まれる各要素の該感情スコアとの中から、該感情スコアの上位の要素の前記感情ラベルを基にした印象指標をもって前記コンテンツ素材を評価することを特徴とするコンテンツ評価システム。
【請求項2】
請求項1記載のコンテンツ評価システムにおいて、
前記コンテンツ評価部は、該コンテンツ評価部による前記印象指標で、前記コンテンツ素材を分類することを特徴とするコンテンツ評価システム。
【請求項3】
コンテンツ素材から受け手が喚起される感情で該コンテンツ素材を評価するコンテンツ評価システムであって、
前記コンテンツ素材から受け手が喚起される感情を感情可視化技術により可視化した感情評価指標として、受け手が喚起される感情である感情ラベルと該感情ラベルをスコアリングした感情スコアとを生成する評価パラメータ生成部と、
前記評価パラメータ生成部により生成された感情評価指標から前記コンテンツ素材を評価するコンテンツ評価部と
を備え、
前記コンテンツ評価部は、前記感情スコアの時間推移から、時間当たりの変化の大きな該感情スコアの上位の要素の前記感情ラベルおよび当該変化の大きな時点を感情変化起点として抽出し、該感情変化起点をもって前記コンテンツ素材を評価することを特徴とするコンテンツ評価システム。
【請求項4】
コンテンツ素材から受け手が喚起される感情で該コンテンツ素材を評価するコンテンツ評価システムであって、
前記コンテンツ素材から受け手が喚起される感情を感情可視化技術により可視化した感情評価指標として、受け手が喚起される感情である感情ラベルと該感情ラベルをスコアリングした感情スコアとを生成する評価パラメータ生成部と、
前記評価パラメータ生成部により生成された感情評価指標から前記コンテンツ素材を評価するコンテンツ評価部と
を備え、
前記コンテンツ評価部は、前記感情スコアの時間推移から、特定の閾値を超えた該感情スコア部分に対応した前記コンテンツ素材の部分を、該感情スコアに対応した前記感情ラベルと共に抽出することを特徴とするコンテンツ評価システム。
【請求項5】
請求項4記載のコンテンツ評価システムにおいて、
前記コンテンツ評価部は、前記特定の閾値を超えた該感情スコア部分に対応した前記コンテンツ素材の部分を抽出し、抽出した該コンテンツ素材の部分同士を連結することを特徴とするコンテンツ評価システム。
【請求項6】
請求項1
乃至5のうちいずれか1項記載のコンテンツ評価システムにおいて、
前記コンテンツ評価部による評価結果を広告取引システムに提供することを特徴とするコンテンツ評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツ素材から受け手が喚起される感情で該コンテンツ素材を評価するコンテンツ評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明者らは、下記特許文献1に示すように、クリエイターが制作したコンテンツ素材から受け手が喚起される感情およびその評価値から、コンテンツによって喚起させたい感情に適したクリエイターを選出可能なシステムの開発を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本願発明者らは、コンテンツ素材そのものの評価を行う開発を行い、鋭意研究の中で、コンテンツの評価は、プラス要素といっても(マイナス要素といっても)、多種多様なプラス要素(マイナス要素)が絡み合っているとの知見に到達した。
【0005】
以上の事情に鑑みて、本発明は、コンテンツ素材そのものを多面的に評価することができるコンテンツ評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明のコンテンツ評価システムは、コンテンツ素材から受け手が喚起される感情で該コンテンツ素材を評価するコンテンツ評価システムであって、
前記コンテンツ素材から受け手が喚起される感情を感情可視化技術により可視化した感情評価指標として、受け手が喚起される感情である感情ラベルと該感情ラベルをスコアリングした感情スコアとを生成する評価パラメータ生成部と、
前記評価パラメータ生成部により生成された感情評価指標から前記コンテンツ素材を評価するコンテンツ評価部と
を備え、
前記コンテンツ評価部は、
前記評価パラメータ生成部により生成された前記感情ラベルをポジティブ要素とネガティブ要素に分けて、該ポジティブ要素に含まれる各要素の前記感情スコアと、該ネガティブ要素に含まれる各要素の該感情スコアとから前記コンテンツ素材を評価する際に、
前記ポジティブ要素に含まれる各要素の前記感情スコアと、前記ネガティブ要素に含まれる各要素の該感情スコアとの中から、該感情スコアの上位の要素の前記感情ラベルを基にした印象指標をもって前記コンテンツ素材を評価することを特徴とする。
【0007】
かかる第1発明のコンテンツ評価システムによれば、評価パラメータ生成部により生成された感情評価指標からコンテンツ素材そのものを多面的に評価することができる。
【0008】
具体的には、生活者の「こんなコンテンツが見たい」という潜在的ニーズは、コンテンツ素材のジャンルや内容などの情報だけでは拾いきれないところ、コンテンツ素材に感情ラベルおよび感情スコアを付与することで、そのコンテンツ素材は○○な感情を喚起させるという特徴が抽出され、視聴者の感情に即したコンテンツの提供が可能になる。
【0010】
また、第1発明のコンテンツ評価システムによれば、コンテンツ素材から受け手が喚起される感情を感情可視化技術により可視化した感情評価指標である感情ラベルをポジティブ要素とネガティブ要素に分けて、ポジティブ要素に含まれる各要素の感情スコアと、ネガティブ要素に含まれる各要素の感情スコアとからコンテンツを評価する。
【0011】
そのため、コンテンツそのものをプラス面であるポジティブ要素に含まれる各要素およびその感情スコアと、マイナス面であるネガティブ要素に含まれる各要素およびその感情スコアとか、多種多様なプラス要素およびマイナス要素の絡み合いを紐解いて総合的に評価することができる。
【0014】
なお、第1発明のコンテンツ評価システムにおいて、ポジティブ要素に含まれる各要素の感情スコアを+と加算すると共に、ネガティブ要素に含まれる各要素の感情スコアを-として加算した全体の感情スコアのトータルスコアを算出してもよい。
【0015】
このようにして算出されたコンテンツ素材全体のトータルスコアは、多種多様なプラス要素およびマイナス要素の絡み合いを紐解いて総合的にコンテンツ素材を評価することができる。
【0016】
ここで、トータルスコアは、動画全体の場合や毎秒毎の積算の場合のほか、感情スコアの部分的な項目や、もしくは部分的な時点のスコアが採用可能である。すなわち、1以上のスコアをもって算出され得る。
【0019】
さらに、第1発明のコンテンツ評価システムによれば、感情スコアの上位の要素は、そのコンテンツ素材の印象を決定し得る要素となり得ることから、かかる感情スコアの上位の要素の感情ラベルを元に印象判定を経て決定される印象指標を生成する。
【0020】
このようにして算出されたコンテンツ素材の印象指標は、多種多様なプラス要素およびマイナス要素の絡み合いを紐解いて総合的にコンテンツ素材を評価することができる。
【0021】
このように、第1発明のコンテンツ評価システムによれば、コンテンツ素材そのものを多面的に総合評価することができる。
【0022】
第2発明のコンテンツ評価システムは、第1発明において、
前記コンテンツ評価部は、該コンテンツ評価部による前記印象指標で、前記コンテンツ素材を分類することを特徴とする。
【0023】
第2発明のコンテンツ評価システムによれば、コンテンツ評価部による印象指標に基づいて、コンテンツ素材を分類することができ、コンテンツ素材そのものを多面的に総合評価することができる。
【0024】
第3発明のコンテンツ評価システムは、コンテンツ素材から受け手が喚起される感情で該コンテンツ素材を評価するコンテンツ評価システムであって、
前記コンテンツ素材から受け手が喚起される感情を感情可視化技術により可視化した感情評価指標として、受け手が喚起される感情である感情ラベルと該感情ラベルをスコアリングした感情スコアとを生成する評価パラメータ生成部と、
前記評価パラメータ生成部により生成された感情評価指標から前記コンテンツ素材を評価するコンテンツ評価部と
を備え、
前記コンテンツ評価部は、前記感情スコアの時間推移から、時間当たりの変化の大きな該感情スコアの上位の要素の前記感情ラベルおよび当該変化の大きな時点を感情変化起点として抽出し、該感情変化起点をもって前記コンテンツ素材を評価することを特徴とする。
【0025】
第3発明のコンテンツ評価システムによれば、感情スコアの変化は、そのコンテンツ素材の印象等の起点になり得ることから、かかる感情スコアの変化の大きな感情レベルおよびその時点を感情変化起点として抽出する。
【0026】
このようにして抽出された感情変化起点は、例えば、多種多様なプラス要素およびマイナス要素の絡み合いを紐解いて総合的にコンテンツ素材を評価することができ、例えば、コンテンツ素材への広告(CM)の差し込みなどに活用することができる。
【0027】
具体的には、AVOD(Advertising Video On Demand)などでは、コンテンツ制作者が意図しないタイミングで広告が挿入されることがあり、視聴体験の質を下げてしまう場合があり得るところ、コンテンツ素材と広告(コンテンツ素材としての広告)に感情スコアを付与することで、適切なタイミングで広告を挿入することができる。
【0028】
このように、第3発明のコンテンツ評価システムによれば、コンテンツ素材そのものを多面的に総合評価して、その結果を利活用することができる。
【0029】
第4発明のコンテンツ評価システムは、コンテンツ素材から受け手が喚起される感情で該コンテンツ素材を評価するコンテンツ評価システムであって、
前記コンテンツ素材から受け手が喚起される感情を感情可視化技術により可視化した感情評価指標として、受け手が喚起される感情である感情ラベルと該感情ラベルをスコアリングした感情スコアとを生成する評価パラメータ生成部と、
前記評価パラメータ生成部により生成された感情評価指標から前記コンテンツ素材を評価するコンテンツ評価部と
を備え、
前記コンテンツ評価部は、前記感情スコアの時間推移から、特定の閾値を超えた該感情スコア部分に対応した前記コンテンツ素材の部分を、該感情スコアに対応した前記感情ラベルと共に抽出することを特徴とする。
【0030】
第4発明のコンテンツ評価システムによれば、感情スコアの変化から、特定の閾値を超えた感情スコア部分は、そのコンテンツ素材のインパクト、すなわち、印象を決定し得る要素になり得ることから、かかる感情スコアが特定の閾値を超えた感情スコア部分(時間)およびその感情ラベルを抽出する。
【0031】
このようにして抽出された、感情スコアが特定の閾値を超えた感情スコア部分(時間)およびその感情ラベルは、例えば、多種多様なプラス要素およびマイナス要素の絡み合いを紐解いて総合的にコンテンツ素材を評価することができ、例えば、サムネイル制作などに活用することができる。
【0032】
ここで、閾値を超えた部分の抽出は、閾値を超えた部分の前後を含むと共に、閾値の代わりに抽出した代表値を用いてもよい。
【0033】
このように、第4発明のコンテンツ評価システムによれば、コンテンツ素材そのものを多面的に総合評価して、その結果を利活用することができる。
【0034】
第5発明のコンテンツ評価システムは、第4発明において、
前記コンテンツ評価部は、前記特定の閾値を超えた該感情スコア部分に対応した前記コンテンツ素材の部分を抽出し、抽出した該コンテンツ素材の感情スコア部分同士を連結することを特徴とする。
【0035】
第5発明のコンテンツ評価システムによれば、特定の閾値を超えた感情スコア部分は、そのコンテンツ素材のインパクト、すなわち、印象を決定し得る要素になり得ることから、抽出した特定の閾値を超えた感情スコア部分に対応するコンテンツ素材の部分(時間)同士を連結することで、コンテンツの効率的かつ的確な短尺化を図ることができる。
【0036】
このように、第5発明のコンテンツ評価システムによれば、コンテンツ素材そのものを多面的に総合評価して、その結果を利活用することができる。
【0037】
第6発明のコンテンツ評価システムは、第1~第5発明のいずれかにおいて、
前記コンテンツ評価部による評価結果を広告取引システムに提供することを特徴とする。
【0038】
第6発明のコンテンツ評価システムによれば、コンテンツ素材そのものを多面的に総合評価した評価結果を広告取引の指標として利活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施形態のコンテンツ評価システムに関する全体構成を示すブロック図。
【
図2】
図1のコンテンツ評価システムのコンテンツ評価部における処理内容を示す説明図。
【
図3】
図1のコンテンツ評価システムのコンテンツ評価部における処理内容を示す説明図。
【
図4】
図1のコンテンツ評価システムのコンテンツ評価部における処理内容を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の一実施形態のコンテンツ評価システムの構成を以下に
図1を参照して説明する。
【0041】
図1に示すように、コンテンツ評価システムは、コンテンツ素材から受け手が喚起される感情で該コンテンツ素材を評価するシステムであって、コンテンツ取得部10と、調査データ取得部20と、評価パラメータ生成部30と、コンテンツ評価部40とを備える。
【0042】
コンテンツ取得部10は、評価対象となるコンテンツ素材を取得する。コンテンツ素材は、コンテンツデータベースDB1から取得する場合のほか、外部サーバなどから取得する。
【0043】
調査データ取得部20は、コンテンツ素材に関連する情報やコンテンツ素材の評価に関する情報(例えば、放送における視聴データなど)を取得する手段であって、調査データベースDB2から取得する場合のほか、外部サーバなどから取得する。
【0044】
ここで、コンテンツ素材としては、例えば、CM素材データであって、CM素材には、映像データそのもののほか、CMタイトル、広告主、制作年、商材、出演者(タレント・キャラクター)、広告会社名、制作者名、10桁CMコード、BGM(音楽・効果音)、ナレーション、テロップ、使用言語、秒数、字幕、フォーマット、配信(放送)先、地域などのCM属性情報が含まれる。
【0045】
評価パラメータ生成部30は、コンテンツ素材から受け手が喚起される感情を感情可視化技術により可視化した感情評価指標として、受け手が喚起される感情である感情ラベルと該感情ラベルをスコアリングした感情スコアとを生成する。
【0046】
具体的には、評価パラメータ生成部30は、膨大な量のコンテンツ素材とコンテンツ素材に描写された対象物、表現対象(BGM、効果音、自然音、演奏、発言など、必ずしも物ではない表現形式を含む)およびそれに対する調査データを教師データとして、これを基にコンテンツ素材に対しての感情評価指標を生成するエンジンを構成する(評価指標をパラメータ化するエンジンを構成する)。
【0047】
コンテンツ評価部40は、評価パラメータ生成部30により生成された感情評価指標からコンテンツ素材を評価する。
【0048】
以上が本実施形態のコンテンツ評価システムの構成である。なお、以上の構成において、各処理部10~40は、それぞれ例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のハードウェアにより構成され、後述する各種処理を実行するプログラムをメモリ(不図示)に記憶保持し、そのプログラムを実行することにより、各種処理を実行するための演算装置(シーケンサ)として機能する。また、各処理部10~40との一部または全部は、他のサーバ(外部サーバ)により構成し、分散処理によりコンテンツ評価システムを実現してもよい。
【0049】
次に、コンテンツ評価システムによる処理内容の詳細を説明する。
【0050】
図2(A)に示すように、評価パラメータ生成部30は、コンテンツ取得部10が取得したコンテンツ素材の映像データから素材のメタデータ化する。具体的には、映像データに写っている対象物ごとに受け手が喚起された感情の感情ラベルを付与した際のスコアのほか、映像データに写っているナレーション、テロップなどがメタデータとして抽出される。
【0051】
ここで、対象物ごとに感情ラベルを付与した際のスコアリングは、対象物の出現位置 (特定時間から特定時間まで、特定座標 xy から特定座標 xy)について、例えば、おもしろい 感情スコアa、インパクトがある 感情スコアb、・・(なお、感情スコアa、bなどは、実際には0~10点のいずれか)などのスコアリングが行われる。
【0052】
図2(B)に示すように、このようなスコアリングを動画の場面や毎秒ごとに、感情ラベルごとの感情スコア(スコアリング値)が算出され、例えば、動画の時点ごとに、楽しい、や悲しいといった感情ラベルのスコアリング値の推移(時間変化)として把握される。
【0053】
コンテンツ評価部40は、
図2(A)に示すように、評価パラメータ生成部30により生成された感情ラベルをポジティブ要素とネガティブ要素に分けて、該ポジティブ要素に含まれる各要素の感情スコアと、該ネガティブ要素に含まれる各要素の該感情スコアとからコンテンツ素材を評価する(コンテンツは、CMに限らず、番組、動画、映画、スライドショー、音声、録音、テレビ、ラジオ、チャンネル、ライブ撮影、ライブ配信などであってもよい)。
【0054】
ポジティブ要素の感情ラベルとしては、例示するように、おもしろい、インパクトがある、興奮する、楽しい、信頼できる、興味深い、温かみがある、うっとりする、ひらめく、懐かしいであって、それぞれの感情ラベルにa、b、・・jの感情スコア(a~jは、実際には0~10点のいずれか)が一体に付加されている。
【0055】
なお、ポジティブ要素の感情ラベルは、上記のほか、ワクワクする、斬新な、高級感のある、情緒のある、親しみやすい、癒される、さわやかな、スタイリッシュな、分かりやすい、説得力のある、共感できる、独自性を感じる、こだわりを感じる、新鮮な、多様な、ち密な、感動する、尊敬する、憧れる、かわいい、好き、好意的、完成度が高い、迫力のある、達成感、時代に合っているなどが挙げられる。
【0056】
ネガティブ要素の感情ラベルとしては、例示するように、あきる、不安、しつこい、混乱する、嫌悪感、不信感、怖い、悲しい、恥ずかしい、気持ち悪いであって、それぞれの感情ラベルにk、l、・・tの感情スコア(k~tは、実際には0~10点のいずれか)が一体に付加されている。
【0057】
なお、ネガティブ要素の感情ラベルは、上記のほか、平凡な、荒っぽい、怪しい、うそっぽい、威圧的、不快、不愉快、差別的、軽蔑する、むかつく、完璧すぎる、時代に合っていないなどが挙げられる。
【0058】
さらに、ポジティブ、ネガティブの各要素内での組合せで、ポジティブ、ネガティブのスコアを算出するのみならず、例えばポジティブ要素である、分かりやすい、説得力のある、共感できる、高級感のある、などの複数の項目の組み合わせでスコアが異常に高得点(ある所定の閾値以上)である場合に、できすぎている、や、逆に怪しい、というネガティブ要素に含まれる感情スコアが算出されてもよい。
【0059】
また、ポジティブ、ネガティブの各要素の感情ラベルのそれぞれの項目について、○○の余韻、という感情ラベルがあってもよい。○○の余韻は、時間変化において、コンテンツの中で、○○そのものの時間推移に対して、ある一定時間、もしくは可変時間遅延(遅行)した値を推移する指標である。
【0060】
コンテンツ評価部40ではコンテンツ素材の解析により、これらの感情ラベルと、感情ラベルに対応したスコアが付与されるが、必ずしもすべての感情ラベルが付与されるわけではない。この場合、必ずしも感情スコアを考慮しなくても、コンテンツに付与された感情ラベルのみで、コンテンツの特徴づけを行ってもよい。
【0061】
具体的に、コンテンツ評価部40は、次のような評価処理の全部または一部を行う。
【0062】
まず、
図3(A)に示すように、コンテンツ評価部40は、ポジティブ要素に含まれる各要素の感情スコアを+とすると共に、ネガティブ要素に含まれる各要素の該感情スコアを-としてトータルした該感情スコアのトータルスコアをもってコンテンツ素材を評価する。
【0063】
図3(A)では、コンテンツ素材としてのCM素材データ『あああ』についてのトータルスコアは、43点であり、『いいい』については、61点であり、『ううう』については、37点のように、コンテンツ評価部40によりトータルスコアが算出される。
【0064】
なお、上記トータルスコアは、特定の時点(場面)またはCM素材全体の感情スコアを用いているが、これに代えて、毎秒ごとの感情スコアを集計してもよい。
【0065】
すなわち、Σ ( aT~jT)-Σ(kT~tT )をトータルスコアとして算出して用いてもよい。なおこの場合、Tは時間(秒)である。
【0066】
かかる
図3(A)の評価処理では、最終的に算出されるスコアが例えば、CM のクオリティー評価における点数となり、広告取引時の指標の一つとして活用が期待される。
ここで各感情スコアは、トータルスコアとしてコンテンツ全体の総和として Σ(ある感情ラベルスコア) T としたが、コンテンツ内での最大値 max (ある感情ラベルスコア)T を採用してもよい。一般化すると、コンテンツ内におけるある感情ラベルのスコアの時間推移から算出される代表値を採択し、コンテンツのスコアとしての計算に用いられてもよい。
【0067】
このように、トータルスコアは、動画全体の場合や毎秒毎の積算の場合のほか、感情スコアの部分的な項目や、もしくは部分的な時点のスコアが採用可能であり、1以上のスコアをもって算出され得る。
【0068】
次に、
図3(B)に示すように、コンテンツ評価部40は、ポジティブ要素に含まれる各要素の感情スコアと、ネガティブ要素に含まれる各要素の該感情スコアとの中から、該感情スコアの上位の要素の感情ラベルを基にした印象指標をもってコンテンツ素材を評価する。これにより、例えば「癒される」という印象指標により複数のコンテンツ素材をカテゴライズ(ラベリング、タグ付け)し、既存の動画配信サービスにコンテンツを配信したりすることができる。
【0069】
図3(B)では、コンテンツ評価部40により、コンテンツ『あああ』では、感情スコアの上位の要素として、上位から順に、楽しい、興奮する、混乱する、興味深い、しつこいの感情ラベルが印象指標として抽出される。同様に、コンテンツ『いいい』については、信頼できる、飽きるの2つの要素の感情ラベルが印象指標として抽出される。また、コンテンツ『ううう』については、温かみがある、懐かしい、不安、悲しいの4つの感情ラベルの要素が印象指標として抽出される。
【0070】
なお、感情スコアは、特定の時点(場面)またはCM素材全体の感情スコアを用いているが、これに代えて、毎秒ごとの感情スコアを集計した値を用いて印象指標を抽出してもよい。
【0071】
また、本実施形態では、上位の感情スコアの感情ラベルから順に抽出する場合について説明したが、これに代えて、ノーム(平均値)と比較して差分が大きい順番に抽出される感情ラベルを印象指標としてもよい。
【0072】
かかる
図3(B)の評価処理では、最終的に算出される感情スコアをもとに、そのコンテンツが特にどのような感情を喚起するコンテンツなのかを判定することが可能となる。
【0073】
次に、コンテンツ評価部40は、
図2(B)に示す時間推移、すなわち、ポジティブ要素に含まれる各要素の感情スコアと、ネガティブ要素に含まれる各要素の該感情スコアとの時間推移から、時間当たりの変化の大きな該感情スコアの上位の要素の感情ラベルおよび当該時点を感情変化起点として抽出し、当該感情変化起点をもってコンテンツ素材を評価する。
【0074】
これにより、
図2(B)では、コンテンツ評価部40は、例えば、「おもしろい」のスコアが高い時間帯には、感情変化起点がなく、広告を差し込まず、「あきる」のスコアが高くなった時間帯(図中5分頃)を感情変化起点として抽出し、このタイミングで広告を差し込み、視聴者の視聴体験や、視聴感を損なわないように感情推移のスコアを活用することができる。
【0075】
なお、感情変化起点の抽出としては、単位時間当たりの感情スコアの傾きのほか、感情スコアが高い=傾きプラスからゼロもしくは傾きプラスからマイナスの時点としてもよく、また最大値としてもよい。
【0076】
また、抽出される感情変化起点として複数の感情ラベルが抽出された場合には、複数の感情ラベル(感情スコア)の組み合わせを考慮してもよい。
【0077】
さらに、広告の差し込みとして、挿入されるCMについては、上記実施形態で印象指標として抽出された被挿入のコンテンツと同一の感情ラベルがついたCMを挿入することが好ましい。これにより。動画や番組と同一の感情ラベルがついたCMが提示されることにより、動画の流れコンテキストを切ることなく(動画の視聴離脱の回避)、またCMの視聴効果もコンテキストに沿ったものとして、効果が得られるものとして期待される。
【0078】
また感情ラベルは、性年代などの属性との掛け合わせで付与されて、スコアがつけられてもよい。例えば「新鮮な」というもとの感情ラベルに対し、「新鮮な(10代女性)」と「新鮮な(40代男性)」と別の感情ラベルが新たに付与されてもよい。これによると例えば、「新鮮な(10代女性)」と「新鮮な(40代男性)」の感情スコアの時間推移は、同じコンテンツを解析しても異なる推移(波形)を取ることができる。すなわち、例えばインターネットでのコンテンツの動画配信などにおいて、上記で論述した、感情変化起点の抽出ポイントや、当該感情変化ポイントにおいて挿入されうるCMの感情ラベルについても、それぞれが異なるポイント(タイミング)が抽出されうるし、異なるCM(ターゲティングCM)が挿入されてもよい。
【0079】
さらには、コンテンツ内の対象物への感情ラベルの付与について、例えば、昭和年代におけるアニメキャラクターに対し、40代男性を想定する場合は、「懐かしい(40代男性)」という感情ラベルが、10代女性を想定する場合は、「新鮮な(10代女性)」という感情ラベルが付与されて、高いスコアが付与されてもよい。
【0080】
次に、コンテンツ評価部40は、
図4(A)に示すように、ポジティブ要素に含まれる各要素の感情スコアと、ネガティブ要素に含まれる各要素の該感情スコアとの時間推移から、特定の閾値を超えた該感情スコア部分を、感情スコアに対応した感情ラベルと共に抽出する。
【0081】
図4(A)では、例えば、サムネイルにインパクトを持たせたい場合の例であり、「インパクトのある」のスコアが最も高くなっているシーンを抽出することができ、サムネイル制作に活用することができる。
【0082】
なお、閾値については、感情ラベルの感情スコアの値に基づいて、ユーザーが任意に閾値を設定してもよく、感情ラベルによって最大値・最小値が異なるが、閾値設定時には感情スコアを正規化してもよい。また、ここでも、複数の感情ラベル(感情スコア)の組み合わせを考慮してもよい。
【0083】
なお、サムネイルを抽出するというのは一例であり、例えば動画プレイヤーソフトウェアで動画を再生させる場合等においては、再生のシークバー上に、再生(ポインタ)をジャンプさせやすいように抽出したポイントを表示するといったことに応用してもよい。
【0084】
次に、コンテンツ評価部40は、
図4(B)に示すように、(
図4(A)においてさらに)特定の閾値を超えた感情スコア部分を抽出し、抽出した感情スコア部分同士を連結する。
【0085】
図4(B)では、長尺コンテンツを短尺化する場面において、インパクトを重視する場合の例であり、「インパクトのある」の感情スコアが高いシーンを複数抽出し、これを連結することができる。
【0086】
なお、短尺化の切り出し位置は、「インパクトのある」スコアが閾値をまたいだところを、 in 点 /out 点にすること以外に、閾値を超える x 秒前を in 点にしたり、閾値を下回った y 秒後をout 点にしたり、in-out点の外側のシーンチェンジ点から抽出するなどして、短尺部分を連結する際に見やすくするようにしてもよい。
なお 以上詳しく説明したが、感情スコアの時間推移については、変化のノイズを除去するために、時間移動平均(平滑化)処理を行ってもよい。
【0087】
また、閾値を超えた部分の抽出は、閾値を超えた部分の前後を含むと共に、閾値の代わりに、前述した代表値を用いてもよい。
【0088】
以上詳しく説明したように、本実施形態のコンテンツ評価システムによれば、多種多様なプラス要素およびマイナス要素の絡み合いを紐解いてコンテンツ素材そのものを多面的に総合評価することができる。
【符号の説明】
【0089】
10…コンテンツ取得部、20…調査データ取得部、30…評価パラメータ生成部、40…コンテンツ評価部、DB1…コンテンツデータベース、DB2…調査データデータベース。
【要約】
【課題】コンテンツ素材そのものを多面的に評価することができるコンテンツ評価システムを提供する。
【解決手段】コンテンツ評価システムは、コンテンツ素材から受け手が喚起される感情で該コンテンツ素材を評価するシステムであって、コンテンツ取得部10と、調査データ取得部20と、評価パラメータ生成部30と、コンテンツ評価部40とを備える。
【選択図】
図1