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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】CT装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20241224BHJP
【FI】
G01N23/046
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024182570
(22)【出願日】2024-10-18
【審査請求日】2024-10-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】山本 輝夫
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-219224(JP,A)
【文献】特開2005-312949(JP,A)
【文献】特開2005-351747(JP,A)
【文献】特開2018-134288(JP,A)
【文献】特開2024-071371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/046
A61B 6/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を回転させながら撮影するCT装置であって、
前記被検査物が載置され、前記被検査物を移動及び回転させる検査台と、
前記被検査物に放射線ビームを照射する放射線源と、
前記被検査物を挟んで前記放射線源に対向して設けられる検出器と、
前記放射線源の焦点と前記被検査物の中心までの距離FCDにおいて、前記被検査物が回転中に前記放射線源と接触しないために必要となる最低限の距離である限界距離FCDを算出する限界距離算出部と、
設定されたスキャンエリアにおいて必要となる前記放射線源の焦点と前記被検査物の中心までの距離であるスキャンエリア距離FCDsを算出するスキャンエリア距離算出部と、
前記限界距離FCDと前記スキャンエリア距離FCDsを比較して、撮影を行う際の前記距離FCDとなる撮影距離を決定する比較部と、
撮影中、前記比較部によって決定された前記撮影距離に基づいて、前記検査台を制御して前記被検査物を前記放射線源に接離させる検査台制御部と、
を備えるCT装置。
【請求項2】
前記限界距離算出部は、描画された透視画像に外接するROIの寸法に基づいて前記限界距離FCDを算出する請求項1に記載のCT装置。
【請求項3】
前記ROIは、前記限界距離算出部によって描画される請求項2に記載のCT装置。
【請求項4】
前記限界距離算出部は、算出した限界距離FCDに予め設定された所定の距離を加え、
前記比較部は、限界距離FCDに前記所定の距離を加えた距離とスキャンエリア距離FCDsを比較して、前記撮影距離を決定する請求項1乃至3の何れかに記載のCT装置。
【請求項5】
各回転角度における透視画像の拡大率を算出する拡大率算出部を更に備え、
前記拡大率算出部は、回転角度によって前記撮影距離が変化する場合、前記撮影距離のうち最も短い距離において撮影される透視画像と同一の拡大率になるように、前記拡大率を算出する請求項1乃至3の何れかに記載のCT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などといった小型電子部品を高分解能で検査する産業用のCT装置が広く使用されている。このCT装置は、放射線として例えばX線ビームを照射する放射線源と、放射線源のX線ビームを2次元の分解能で検出する検出器が対向して配置される。放射線源と検出器の間には回転可能な検査台が設けられている。被検査物は、検査台に載置され、撮影中、回転し、全方位に放射線が照射される。
【0003】
一般的に、放射線源の焦点と被検査物の回転中心までの距離をFCDという。FCDは短い方が分解能が上がるため、被検査物を放射線源にできる限り近づけて撮影を行うことがある。
【0004】
撮影対象となる被検査物が長方形や楕円形などアスペクト比の高い形状であると、短辺部分が放射線源に対向する場合は、被検査物を放射線源に近づけることができる一方、長辺部分が放射線源に対向する場合には離す必要がある。そのため、被検査物の形状を把握して、撮影時におけるFCDを当該被検査物の形状に応じて変化させる必要がある。そこで、被検査物Aの回転中心から端部までの寸法dを算出して、当該寸法dに応じて、被検査物を放射線源に対して、接離させる手法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2024-71371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、撮影を行う場合、事前にスキャンエリアを設定している。設定されたスキャンエリアの大きさに応じて必要となるFCDsは、被検査物の形状とは別に算出する必要がある。このFCDsが、被検査物の寸法dを超える場合、被検査物の寸法dに応じてFCDを制御すると、スキャンエリアが小さくなってしまうという問題が生じる。
【0007】
本発明の実施形態は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、被検査物の形状及び設定したスキャンエリアに応じたFCDを実現し、最適な分解能を実現するCT装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態におけるCT装置は、被検査物を回転させながら撮影するCT装置であって、前記被検査物が載置され、前記被検査物を移動及び回転させる検査台と、前記被検査物に放射線ビームを照射する放射線源と、前記被検査物を挟んで前記放射線源に対向して設けられる検出器と、前記放射線源の焦点と前記被検査物の中心までの距離FCDにおいて、前記被検査物が回転中に前記放射線源と接触しないために必要となる最低限の距離である限界距離FCDを算出する限界距離算出部と、設定されたスキャンエリアにおいて必要となる前記放射線源の焦点と前記被検査物の中心までの距離であるスキャンエリア距離FCDsを算出するスキャンエリア距離算出部と、前記限界距離FCDと前記スキャンエリア距離FCDsを比較して、撮影を行う際の前記距離FCDとなる撮影距離を決定する比較部と、撮影中、前記比較部によって決定された前記撮影距離に基づいて、前記検査台を制御して前記被検査物を前記放射線源に接離させる検査台制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態のCT装置を模式的に示す側面図である。
図2】実施形態のCT装置を模式的に示す平面図である。
図3】制御部の構成を示すブロック図である。
図4】実施形態における撮影距離FCDの算出の方法を示すフローチャートである。
図5】透視画像上でROIを設定した状態を示す図である。
図6】被検査物の回転中心から端部までの距離を示す図である。
図7】限界距離FCDと回転角度の関係を示すグラフである。
図8図7のグラフを90度ずらした際の限界距離FCDと回転角度の関係を示すグラフである。
図9】限界距離FCDに所定の距離を加えた場合における回転角度との関係を示すグラフである。
図10】スキャンエリアの設定を示す図である。
図11】スキャンエリア距離FCDsが限界距離FCDの最大値よりも長い場合における撮影距離を示すグラフである。
図12】スキャンエリア距離FCDsが限界距離FCDの最小値よりも短い場合における撮影距離を示すグラフである。
図13】スキャンエリア距離FCDsが限界距離FCDの最小値以上最大値以下の場合における撮影距離を示すグラフである。
図14】透視画像の拡大前後を示す図であり、(a)が拡大前の透視画像、(b)が拡大後の透視画像である。
図15】変形例のCT装置を模式的に示す側面図である。
図16】変形例の被検査物の移動の仕方を示す図である。
図17】変形例の被検査物の回転中心の移動の軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
以下、実施形態に係るCT装置について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、実施形態のCT装置を模式的に示す側面図である。図2は、実施形態のCT装置を模式的に示す平面図である。
【0011】
CT装置100は、被検査物Aの非破壊検査に供する装置である。CT装置100は、被検査物Aの周囲に当該被検査物Aを透過する放射線ビームBを照射し、被検査物Aを透過したことで減弱した放射線量を検出する。そして、この検出結果に基づいて被検査物Aの断面画像であるCT画像を生成する。また、CT装置100は、生成された複数のCT画像から3D画像を生成する。被検査物Aとは、アスペクト比の高い形状ものであり、例えば、回転軸C方向から見た形状が楕円形である円柱状のものである。本実施形態では、撮影中、被検査物Aの形状に応じて、被検査物Aを放射線源2に対して接離させる。
【0012】
CT装置100は、図1に示すように、検査台1、放射線源2、検出器3、フィルタ部4、カメラ5、表示部6、入力部7及び制御部8を備える。検査台1は、被検査物Aを載置する載置面を有する台である。検査台1は、載置面に平行な方向又は直交する方向に移動可能である。また、検査台1は、載置面に垂直な方向を回転軸Cにして回転可能である。検査台1は、撮影中、被検査物Aを回転・移動させる。検査台1は、回転テーブル11、昇降機構12、Y機構13及びX機構14を有する。
【0013】
回転テーブル11は、被検査物Aを載置する。回転テーブル11は、回転テーブル11の回転軸Cが被検査物Aの中心と同軸になるように、被検査物Aを載置される。回転テーブル11は、例えば、モータ等の駆動源を含んでいるアクチュエータで構成され、載置面に垂直な方向を回転軸Cにして回転可能に設けられている。放射線ビームBが照射している間、この回転テーブル11が回転することで、被検査物Aの全方位に放射線ビームBが照射される。なお、回転テーブル11の上に試料テーブルを設け、試料テーブルに被検査物Aを載置してもよい。
【0014】
昇降機構12は、回転テーブル11の下に設けられている。昇降機構12は、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。昇降機構12は、載置面に直交する方向に移動可能である。即ち、昇降機構12を載置面に直交する方向に移動させることで、被検査物Aの高さを調整することができる。
【0015】
Y機構13は、昇降機構12の下方に設けられている。Y機構13は、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。Y機構13は、載置面と平行な方向で、かつ、放射線ビームBの光軸と直交する方向(以下、Y方向ともいう。)に移動可能である。
【0016】
X機構14は、Y機構13の下方に設けられている。X機構14は、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。X機構14は、放射線ビームBの光軸と平行な方向(以下、X方向ともいう。)に移動可能である。X機構14は、検査台1、放射線源2及び検出器3をそれぞれ独立して移動可能に構成されている。X機構14によって被検査物Aを移動させることで、被検査物Aを放射線源2から接離させる。
【0017】
放射線源2は、例えば、被検査物Aを透過する放射線ビームBを照射する。放射線ビームBは、放射線源2の焦点Fを頂点とし、ファン角及びコーン角を有して円錐状に拡がる放射線の束である。本実施形態では、放射線源2は、例えば、反射型又は透過型のマイクロフォーカスX線管又はナノフォーカスX線管であり、放射線ビームBはX線ビームである。なお、放射線ビームBとしては、X線ビームに限らず、例えばγ線など被検査物Aを透過するものであれば用いることができる。放射線源2は、支持フレーム21に支持されている。放射線源2は、X機構14によってX方向に移動可能である。
【0018】
検出器3は、検査台1及び被検査物Aを挟んで放射線源2に対向して設けられる。検出器3は、撮像領域の中心が、放射線源2の光軸と一致するように設けられる。検出器3は、放射線ビームBの透過経路に応じて減弱した放射線強度の二次元分布を検出し、透視画像を出力する。検出器3は、例えばフラットパネルディテクタ(FPD)により構成される。検出器3は、支持フレーム31に支持されている。検出器3は、X機構14によって被検査物Aとの距離が調整される。
【0019】
フィルタ部4は、被検査物Aと放射線源2の間の放射線源2に近接した位置に配置されている。フィルタ部4は、厚さ数mm程度の薄板状の部材である。フィルタ部4は、銅、アルミニウム、鉄等またはこれらを含む合金から成る金属板である。フィルタ部4は、複数設けられており、フィルタ部4は素材や厚さが異なる。
【0020】
フィルタ部4は、移動機構(不図示)によって移動可能に設けられている。移動機構は、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。移動機構は、ユーザが選択したフィルタ部4を放射線源2の光軸上に移動させる。光軸上に配置されたフィルタ部4に放射線ビームBが照射され、フィルタ部4を透過した放射線ビームBが被検査物Aに照射される。フィルタ部4を透過させることで、メタルアーチファクトが生じることを抑制する。
【0021】
また、CT装置100は、コリメータ(不図示)を備えていてもよい。コリメータは、放射線ビームBの進路や入射面積を制限する装置である。コリメータは、タングステンやモリブデンなど高比重で遮蔽能力の高い材料からなる。コリメータは、放射線源2と被検査物Aとの間に、放射線源2からの放射線ビームBの光軸を中心として、上下対称に設けられる。
【0022】
カメラ5は、回転テーブル11の上方に設けられている。即ち、カメラ5は、被検査物Aを挟んで回転テーブル11に対向して設けられている。カメラ5は、例えば、CCDカメラである。カメラ5は、被検査物Aの上方から被検査物Aを撮影する。
【0023】
表示部6は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどのモニタである。表示部6は、被検査物Aの透視画像、CT画像、3D画像の各種画像、撮影領域、撮影時間、撮影条件などを表示する。
【0024】
入力部7は、キーボード、マウス、タッチパネルなどを用いることができる。入力部7は、本撮影又は試し撮影のメニュー選択、撮影時間、撮影条件の修正、移動機構の手動操作、撮影の開始、被検査物Aの観察したい個所の選択などの各種操作を受け付ける。
【0025】
制御部8は、コンピュータ及びドライバ回路により構成される。コンピュータは、HDDまたはSSDといったストレージ、RAM、CPUなどにより構成される。制御部8は、CT装置100の各構成部材を制御する。制御部8は、入力部7と接続されており、ユーザは入力部7を介して制御部8にCT装置100の各構成部材を制御させる。
【0026】
図3は、制御部8の構成を示すブロック図である。制御部8は、図3に示すように、検査台制御部81、放射線源制御部82、再構成部83、カメラ制御部84、限界距離算出部85、スキャンエリア距離算出部86、比較部87及び拡大率算出部88を有する。
【0027】
検査台制御部81は、回転テーブル11、昇降機構12、Y機構13及びX機構14を制御する。検査台制御部81の制御によって、検査台1に載置された被検査物Aを放射線ビームBの光軸に合わせたり、放射線ビームBの照射中に被検査物Aを1回転させることができる。また、検査台制御部81の制御によって検査台1を移動させることで、放射線源2の焦点Fと被検査物Aの中心までの距離FCDが調整される。即ち、撮影中、被検査物Aを放射線源2に対して近づけたり、離したりさせることができる。検査台制御部81は、比較部87の結果に基づいて、撮影中、X機構14を制御して、距離FCDを変更する。
【0028】
放射線源制御部82は、放射線源2を制御し、被検査物Aに放射線ビームBを照射させる。即ち、検査台制御部81及び放射線源制御部82の制御により、被検査物Aの全方位に放射線ビームBを照射させる。
【0029】
再構成部83は、360度方向で得られたビュー数分の透視画像に基づいて、放射線ビームBに包含されるCT撮影領域を再構成するものである。再構成部83は、透視画像を限界距離算出部85に送信する。再構成部83は、拡大率算出部88が拡大率を算出している場合、当該拡大率を踏まえて再構成する。再構成部83は、被検査物Aの載置面に直交する方向に等間隔で連続的にならんだ複数の断面像を再構成し、この複数の断面像により3次元データを形成する。3次元データはMPR(Multi-planer Reconstruction)表示等で表示部6に表示され得る。
【0030】
カメラ制御部84は、カメラ5を制御する。カメラ制御部84は、カメラ5の位置や撮影のタイミングを制御する。カメラ制御部84は、カメラ5で撮影されたデータをスキャンエリア距離算出部86に送信する。
【0031】
限界距離算出部85は、被検査物Aの透視画像に基づいて限界距離FCDを算出する。限界距離FCDとは、距離FCDにおいて、被検査物Aが回転中に放射線源2と接触しないために必要となる最低限の距離である。限界距離算出部85は、被検査物Aの360度分の限界距離FCDを算出する。
【0032】
限界距離算出部85は、算出した限界距離FCDに所定の距離αを加えてもよい。例えば、放射線源2の焦点Fと放射線が放射される放射線源2の窓までに距離がある場合、この長さを所定の距離αとして加えてもよい。また、放射線源2と被検査物Aと間に若干隙間を形成させるため、この隙間分の長さを所定の距離αとして加えてもよい。
【0033】
スキャンエリア距離算出部86は、カメラ5によって撮影された画像上において、スキャンエリアを設定する。スキャンエリアの設定は、ユーザが入力部7を用いて設定してもよいし、スキャンエリア距離算出部86がカメラ5によって撮影された画像から最適となるスキャンエリアを自動的に設定させてもよい。
【0034】
スキャンエリア距離算出部86は、設定されたスキャンエリアの直径Saを算出する。そして、スキャンエリア距離算出部86は、設定されたスキャンエリアにおいて必要となる放射線源2の焦点Fと被検査物Aの中心までのスキャンエリア距離FCDsを算出する。
【0035】
比較部87は、限界距離算出部85によって算出された限界距離FCDとスキャンエリア距離算出部86によって算出されたスキャンエリア距離FCDsを比較して、各回転角度における撮影距離FCDを決定する。撮影距離FCDとは、実際に撮影を行う際の放射線源2の焦点Fと被検査物Aの中心までの距離である。より詳細には、比較部87は、限界距離FCDの最小距離FCDLmin及び最大距離FCDLmaxとスキャンエリア距離FCDsを比較する。最小距離FCDLminとは、回転角度0度~360度の限界距離FCDのうち、最も短い距離を指す。最大距離FCDLmaxとは、回転角度0度~360度の限界距離FCDのうち、最も長い距離を指す。比較部87は、比較結果に基づいて、回転中の距離FCDを決定し、決定した撮影距離FCDを検査台制御部81に送信する。なお、比較部87は、限界距離FCDに所定の距離αが加えられている場合には、所定の距離αを加えた距離とスキャンエリア距離FCDsを比較して、撮影距離FCDを決定する。
【0036】
拡大率算出部88は、比較部87が決定した撮影距離FCDに基づいて拡大率を算出する。具体的には、拡大率算出部88は、撮影中において、距離FCDが変化する場合、撮影された画像の拡大率が同一になるように、拡大率を算出する。拡大率算出部88は、撮影距離FCDが最も短い撮影最小距離FCDminを基準にして、各回転角度における拡大率が撮影最小距離FCDminと同一になるように、拡大率を算出する。
【0037】
[動作]
次に、本実施形態における撮影距離FCDの算出について、図4のフローチャートを用いて説明する。まず、CT装置100は、被検査物Aの透視画像を取得する(ステップS01)。回転テーブル11を回転させ、放射線源2から放射線ビームBを被検査物Aの全方位に照射させ、透視画像を取得する。
【0038】
取得した透視画像は、表示部6に表示される。図5に示すように、透視画像は、楕円形に表示される。ユーザは、表示部6に表示された透視画像に外接する長方形のROIを描画する(ステップS02)。
【0039】
限界距離算出部85は、長方形のROIに基づいて、回転角度0度における回転中心からROIの端部までの画素数dgを算出する(ステップS03)。そして、限界距離算出部85は、画素数dgに基づいて、図6に示す回転軸Cから被検査物Aの端部(放射線ビームが照射される90度手前側の端部)までの距離dを算出する。限界距離算出部85は、下記式(1)によって、距離d(mm)を算出する。この距離dが限界距離FCDとなる(ステップS04)。
【0040】
(数式1)
dpm:1画素あたりの寸法
【0041】
限界距離算出部85は、被検査物Aの全方位、即ち、回転角度0度から360度分まで限界距離FCDを算出する。本実施形態では、限界距離算出部85は、45度の間隔において、限界距離FCDを算出している。限界距離算出部85は、図7のグラフに示すように、回転角度0度~360度における限界距離FCDを算出する。なお、限界距離FCDを算出する回転角度のピッチは、細かい方が好ましい。即ち、限界距離FCDを算出する回転角度のピッチは、例えば、90度間隔よりも45度間隔の方が好ましい。より細かい回転角度のピッチで限界距離FCDを算出することで、精度よく被検査物Aの寸法を算出することができる。
【0042】
もっとも、上記のように算出した限界距離FCDは、図6に示すように、放射線ビームが照射される90度手前に位置するときに算出した距離である。そのため、放射線源2と対向する位置に算出した限界距離FCDに対応する部分の被検査物Aが配置されるためには、90度ずらす必要がある。図7のグラフを90度ずらすと、図8のようになる。
【0043】
限界距離算出部85は、算出した限界距離FCDに所定の距離αを加える(ステップS05)。所定の距離αは、放射線源2の焦点Fと放射線が放射される放射線源2の窓までの距離や放射線源2と被検査物Aと間に若干隙間を設けるため、予め所定の距離αが記憶部(不図示)に記憶されている。限界距離FCDに所定の距離αを加えると、図9に示すように、各回転角度において、所定の距離α分増加する。限界距離算出部85は、所定の距離αを加えた距離を限界距離FCDとする。
【0044】
次に、スキャンエリア距離算出部86は、スキャンエリアを設定する(ステップS06)。スキャンエリア距離算出部86は、例えば、図10に示すように、カメラ5によって撮影された画像上において、円形のスキャンエリアSを設定する。スキャンエリア距離算出部86は、スキャンエリアSの直径Saを算出する。直径Sa(mm)の算出は、画像上の画素数に基づいて算出すればよい。
【0045】
そして、スキャンエリア距離算出部86は、直径Saに基づいて、下記式(2)に基づいて、スキャンエリア距離FCDsを算出する(ステップS07)。
【0046】
(数式2)
D:検出器3の縦方向の長さ
FDD:放射線源2の焦点Fと検出器3の距離
【0047】
なお、ステップS06及びステップS07は、必ずしもステップS01~ステップS05の後に行う必要はない。即ち、ステップS06及びステップS07は、ステップS01~ステップS05の前に行ってもよいし、ステップS01~ステップS05と同時並行で行ってもよい。
【0048】
限界距離FCDとスキャンエリア距離FCDsの算出が終わると、比較部87は、限界距離FCDとスキャンエリア距離FCDsを比較する(ステップS08)。比較部87は、限界距離FCDの最小距離FCDLmin及び最大距離FCDLmaxとスキャンエリア距離FCDsを比較する。
【0049】
比較部87は、比較結果に基づいて、撮影距離FCDを決定する(ステップS09)。図11に示すように、スキャンエリア距離FCDsが最大距離FCDLmax以上の場合、限界距離FCDを撮影距離FCDにすると、スキャンエリアSが小さくなってしまう。そのため、比較部87は、スキャンエリア距離FCDsの距離を撮影中の距離である撮影距離FCDとして決定する(図11の太い実線参照)。この場合、撮影距離FCDは一定なので、撮影中に被検査物Aが放射線源2に対して接離することはない。
【0050】
一方、図12に示すように、スキャンエリア距離FCDsが最小距離FCDLmin以下の場合、スキャンエリア距離FCDsを撮影距離FCDとすると、被検査物Aが放射線源2に接触してしまう。そのため、比較部87は、限界距離FCDを撮影距離FCDとして決定する(図12の太い実線参照)。
【0051】
また、図13に示すように、スキャンエリア距離FCDsが最小距離FCDLminよりも長く最大距離FCDLmaxよりも短い場合、限界距離FCD及びスキャンエリア距離FCDsのどちら一方のみを撮影距離に採用すると、回転角度によっては、被検査物Aが放射線源2に接触してしまったり、又は、スキャンエリアSが小さくなってしまう。そのため、比較部87は、限界距離FCDがスキャンエリア距離FCDs以下となる部分はスキャンエリア距離FCDsを撮影距離FCDと決定し、限界距離FCDがスキャンエリア距離FCDs以上となる部分は、限界距離FCDを撮影距離FCDと決定する(図13の太い実線参照)。即ち、限界距離FCDがスキャンエリア距離FCDs以下になる部分では、撮影距離FCDは一定であり、限界距離FCDがスキャンエリア距離FCDs以上となる部分では、限界距離FCDに基づいて撮影距離FCDが変化する。
【0052】
撮影距離FCDが決定すると、拡大率算出部88は、拡大率を算出する(ステップS10)。図12図13に示すように、撮影距離FCDが、回転テーブル11の回転に伴い変化する場合、回転角度によって生成される透視画像の大きさが異なる。そこで、拡大率算出部88は、撮影距離FCDを踏まえて、各回転角度における拡大率を算出する。
【0053】
具体的には、拡大率算出部88は、撮影距離FCDが最も短い撮影最小距離FCDminの拡大率と同一になるように、各回転角度における拡大率を算出する。拡大率算出部88は、下記式(3)に基づいて、拡大率を算出する。そのため、図14に示すように、小さく撮影された透視画像も拡大され、同一の大きさの透視画像を生成できる。なお、図11に示すように、撮影距離FCDが一定の場合には、拡大率算出部88は、拡大率を算出する必要はない。
【0054】
(数式3)
【0055】
拡大率の算出が終わると、撮影を開始する(ステップS11)。即ち、検査台制御部81は、比較部87によって決定された撮影距離FCDとなるように、X機構14を制御する。即ち、アスペクト比の高い被検査物Aにおいて、長辺部分が放射線ビームBの光軸上に配置される際に、被検査物Aは放射線源2から離れ、短辺部分が放射線ビームBの光軸上に配置される際に、被検査物Aは放射線源2に接近するように検査台制御部81はX機構14を制御する。
【0056】
被検査物Aの撮影が終わると、再構成部83は、360度方向で得られたビュー数分の透視画像に基づいてCT画像を生成する(ステップS13)。この時、再構成部83は、拡大率算出部88によって算出された拡大率を踏まえて透視画像を生成し・CT画像を生成する。
【0057】
[効果]
以上のとおり、本実施形態のCT装置100は、被検査物Aが載置され、被検査物Aを移動及び回転させる検査台1と、被検査物Aに放射線ビームBを照射する放射線源2と、被検査物Aを挟んで放射線源2に対向して設けられる検出器3と、放射線源2の焦点Fと被検査物Aの中心までの距離FCDにおいて、被検査物Aが回転中に放射線源2と接触しないために必要となる最低限の距離である限界距離FCDを算出する限界距離算出部85と、設定されたスキャンエリアSにおいて必要となる放射線源2の焦点Fと被検査物Aの中心までの距離であるスキャンエリア距離FCDsを算出するスキャンエリア距離算出部86と、限界距離FCDとスキャンエリア距離FCDsを比較して、撮影距離FCDを決定する比較部87と、比較部87によって決定された撮影距離FCDに基づいて、撮影中、検査台1を制御して被検査物Aを放射線源2に接離させる検査台制御部81と、を備える。
【0058】
このように、本実施形態のCT装置100は、被検査物Aの形状に対応する限界距離FCDのみではなく、スキャンエリアSに応じて必要となるスキャンエリア距離FCDsも踏まえて撮影距離FCDを決定している。そのため、スキャンエリアSが小さくなることなく、最適な撮影距離FCDで撮影を行うことができる。よって、最適な分解能によって画質の良いCT画像を生成することができる。
【0059】
限界距離算出部85は、算出した限界距離FCDに予め設定された所定の距離αを加え、比較部87は、所定の距離αを加えた限界距離FCDとスキャンエリア距離FCDsを比較して、撮影距離FCDを決定する。
【0060】
これにより、所定の距離α分の被検査物Aと放射線源2の間に空間的な余裕が生まれる。そのため、回転中に被検査物Aが放射線源2と接触することを効果的に防止できる。また、放射線源2の焦点と放射線ビームBを照射する窓までに一定の距離がある場合、当該距離を踏まえて、所定の距離αを設定し、限界距離FCDに所定の距離αを加えることで、被検査物Aと放射線源2の接触を防止することができる。
【0061】
各回転角度における透視画像の拡大率を算出する拡大率算出部88を更に備え、拡大率算出部は、回転角度によって撮影距離FCDが変化する場合、撮影距離FCDのうち最も短い撮影最小距離FCDminにおいて撮影される透視画像と同一の拡大率になるように、拡大率を算出する。
【0062】
撮影距離FCDが変化する場合、撮影される被検査物Aの透視画像の拡大率も変化する。そこで、拡大率算出部88によって撮影最小距離FCDminを基準に、各回転角度の拡大率を算出する。これにより、各透視画像は同一の大きさになり、それに基づいてCT画像を生成できる。また、撮影最小距離FCDminの時が最も分解能が高い(1画素サイズが小さい)ので、この高い分解能に合わせて画像を生成することができる。
【0063】
[変形例]
【0064】
(1)上記実施形態では、透視画像上でユーザが、被検査物Aの外接を描画したが、ROIの描画は自動的に行ってもよい。即ち、限界距離算出部85は、透視画像を画像処理することで、ROIを描画し、この描画したROIに基づいて画素数dgを算出してもよい。これにより、ユーザによる描画を省くことができるので、生産性が向上する。
【0065】
(2)上記実施形態では、限界距離算出部85は、透視画像上にROIを描画して画素数dgなど各値を算出して、限界距離FCDを求めたが、透視画像に基づいて算出する必要はない。例えば、各回転角度における限界距離FCDをユーザが目視によって決定してもよい。この場合、スキャンエリアについてもユーザが目視により設定する。比較部87は、設定された各数値を限界距離算出部85によって算出された限界距離FCD及びスキャンエリア距離算出部86によって算出されたスキャンエリア距離FCDsとして捉え、撮影距離FCDを決定する。これにより、撮影前に透視画像を作成する必要がなくなるので、X線を放射する必要がなくなる。
【0066】
(3)撮影中、被検査物Aを回転及び昇降させながら連続的に撮影するヘリカルスキャン方式に適用してもよい。これにより、撮影時間を短縮することができる。
【0067】
(4)検査台1は、図15に示しように、回転テーブル11の上にXYテーブル15を有していてよい。XYテーブル15は、被検査物Aを載置する。XYテーブル15は、被検査物AをX方向又はY方向に移動させる。XYテーブル15は、回転テーブル11の回転に伴い、回転する。検査台制御部81は、比較部87が決定した撮影距離FCDに基づいてXYテーブル15を制御して、被検査物Aを移動させる。
【0068】
具体的には、図16に示すように、XYテーブル15を用いて、被検査物Aの回転中心Acを放射線源2から照射される放射線ビームの光軸上に配置させつつ、撮影距離FCDとなるように被検査物Aを移動させる。具体的に、図16(a)に示すように、回転角度0度のとき、被検査物Aの回転中心Acは、回転軸Cと同軸上に配置されている。このとき、被検査物Aの長辺方向が光軸と平行に配置されている。回転テーブル11の回転が開始されると、被検査物Aの短辺方向が光軸と平行となるように被検査物Aは回転する。図16(b)に示すように、回転テーブル11が45度回転すると、XYテーブル15も45度回転する。このとき、被検査物Aの回転中心Acは、撮影距離FCDが回転角度0度のときよりも放射線源2に近づく位置(回転軸Cから放射線源2に半径の1/2の距離近づく位置)に配置される。そして、図16(c)に示すように、回転角度90度になると、被検査物Aの回転中心Acは、放射線源2に最も近づく。即ち、撮影距離FCDは、撮影最小距離FCDminとなる。
【0069】
そして、回転角度90度~180度においては、被検査物Aの長辺方向が光軸と平行となるように回転するので、図16(d)及び(e)に示すように、被検査物Aの回転中心Acは、放射線源2から離れていき、回転角度180度のときに、回転軸Cと同軸上に配置される。さらに、回転角度180度~270度においては、再度被検査物Aの短辺方向が光軸と平行となるように回転するので、図16(f)及び(g)に示すように、被検査物Aの回転中心Acは、放射線源2に接近する方向に移動し、回転角度270度のときに、放射線源2に最も近づき、撮影最小距離FCDminとなる。回転角度270度~360度においては、被検査物Aの長辺方向が光軸と平行となるように回転するので、図16(h)及び(i)に示すように、被検査物Aの回転中心Acは、放射線源2から離れる方向に移動し、回転角度360度のときに回転角度0度の位置に戻ってくる。回転角度0度~360度において、XYテーブル15上における被検査物Aの回転中心Acの軌跡をプロットすると、図17のようになる。
【0070】
このように、被検査物Aの位置をX機構14によって移動させるのではなく、XYテーブル15によって被検査物Aを移動させてもよい。
【0071】
(5)透視画像を撮影する際の回転角度のピッチは、等間隔である必要はなく、被検査物Aの形状に応じて変化させてもよい。即ち、被検査物Aにおいて、簡素な形状部分は、例えば、45度間隔など回転角度のピッチを大きくし、複雑な形状部分は、例えば、10度間隔など回転角度のピッチを小さくしてもよい。これにより、被検査物Aの寸法をより正確に算出することができ、被検査物Aと放射線源2の接触を防止しつつ、画質精度の良い画像を生成できる。また、例えば、簡素な形状部分は、回転角度のピッチを大きくしても画質への影響は少ない。そのため、全体のビュー数を減らすことができるので、スキャン時間を短縮することができる。
【0072】
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0073】
100 CT装置
1 検査台
11 回転テーブル
12 昇降機構
13 Y機構
14 X機構
2 放射線源
21 支持フレーム
3 検出器
31 支持フレーム
4 フィルタ部
5 カメラ
6 表示部
7 入力部
8 制御部
81 検査台制御部
82 放射線源制御部
83 再構成部
84 カメラ制御部
85 限界距離算出部
86 スキャンエリア距離算出部
87 比較部
88 拡大率算出部
【要約】
【課題】被検査物の形状及び設定したスキャンエリアに応じたFCDを実現し、最適な分解能を実現する。
【解決手段】CT装置100は、被検査物Aが載置され、被検査物Aを移動及び回転させる検査台1と、被検査物Aに放射線ビームBを照射する放射線源2と、被検査物Aを挟んで放射線源Aに対向して設けられる検出器3と、放射線源2の焦点Fと被検査物Aの中心までの距離FCDにおいて、被検査物Aが回転中に放射線源2と接触しないために必要となる最低限の距離である限界距離FCDを算出する限界距離算出部85と、設定されたスキャンエリアSにおいて必要となる放射線源2の焦点Fと被検査物Aの中心までの距離であるスキャンエリア距離FCDsを算出するスキャンエリア距離算出部86と、限界距離FCDとスキャンエリア距離FCDsを比較して、撮影距離FCDを決定する比較部87と、撮影中、比較部87によって決定された撮影距離FCDに基づいて、検査台1を制御して被検査物Aを放射線源2に接離させる検査台制御部81と、を備える。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17