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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】バイオ炭に基づく黒色インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/037 20140101AFI20241224BHJP
   C09D 11/08 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
C09D11/037
C09D11/08
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2024500556
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 US2022036671
(87)【国際公開番号】W WO2023287701
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2024-01-09
(31)【優先権主張番号】63/221,153
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507385165
【氏名又は名称】サン ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ガイ・ファンアウデンホーフェン
(72)【発明者】
【氏名】ポール・サコット
(72)【発明者】
【氏名】ミハエラ・マダラス
(72)【発明者】
【氏名】ジョージー・エム・ローゼン
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・アルクリオ
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-531606(JP,A)
【文献】国際公開第2020/220047(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/062312(WO,A1)
【文献】特表2007-517123(JP,A)
【文献】国際公開第2021/138184(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、バイオ炭顔料、及びロジン付加物を含む水系液体黒色インク組成物であって、前記ロジン付加物が、ロジン付加物の炭素含有量に基づいて100%のバイオ再生可能炭素(BRC)含有量を有し、
前記ロジン付加物が、ロジンモノマー酸及び/又はダイマー酸とアルファヒドロキシカルボン酸との反応生成物であるロジンエステルである100%バイオ再生可能炭素(BRC)ロジン付加物であり、かつ、水系液体黒色インク組成物中の炭素含有量の70%~100%がバイオ再生可能炭素(BRC)である、
水系液体黒色インク組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の水系液体黒色インク組成物であって、前記の水、バイオ炭顔料、及びロジン付加物が、下記(a)及び(b)の混合物として提供される、組成物:
(a)水系液体黒色インク組成物の総重量に基づいて50重量%~70重量%の黒色顔料分散液[ここで黒色顔料分散液は以下の成分(i)及び(ii)を含む:
(i)黒色顔料分散液の総重量に基づいて10重量%~40重量%のバイオ炭、及び
(ii)黒色顔料分散液の総重量に基づいて5重量%~20重量の混合ビヒクル
(ここで、混合ビヒクルは下記の成分(1)及び(2)を含む:
(1)混合ビヒクルの総重量に基づいて、10重量%~30重量%の水、及び
(2)混合ビヒクルの総重量に基づいて、10重量%~30重量%の前記ロジン付加物];
(b)水系液体黒色インク組成物の総重量に基づいて30重量%~50重量%の追加の前記混合ビヒクル。
【請求項3】
前記黒色顔料分散液が、
(a)1重量%~5重量%の界面活性剤又は
(b)10重量%~50重量%の追加の水、又は
(c)1重量%~5重量%の界面活性剤及び10重量%~50重量%の追加の水ここで、全ての量黒色顔料分散液の総重量に基づく)
をさらに含む、請求項2に記載の水系液体黒色インク組成物。
【請求項4】
前記混合ビヒクルが、
(a)5重量%~15重量%のL-乳酸混合物、及び/又は
(b)10重量%~30重量%のアンモニア、及び/又は
(c)1重量%~10重量%のワックス懸濁液、及び/又は
(d)1重量%~5重量%の微粉化ワックス、及び/又は
(e)0.05重量%~1重量%のシリコーン化合物、及び/又は
(f)0.5重量%~3重量%のキレート剤のうちの1つ以上
を更に含み、
全ての量が、混合ビヒクルの総重量に基づいている、請求項2に記載の水系液体黒色インク組成物。
【請求項5】
前記ワックス懸濁液が、前記ワックス懸濁液の総重量に基づいて、25重量%のワックス及び75重量%の水を含む、請求項4に記載の水系液体黒色インク組成物。
【請求項6】
前記ワックスが、アミドワックス、微粉化ワックス、エルカミドワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、カルナバワックス、ダイズワックス、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の水系液体黒色インク組成物。
【請求項7】
前記微粉化ワックスが、エチレンビステアラミド微粉化ワックスである、請求項に記載の水系液体黒色インク組成物。
【請求項8】
前記アルファヒドロキシ酸が、リンゴ酸乳酸、酒石酸、アスコルビン酸、クエン酸、グリコール酸、2-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシカプリル酸、マンデル酸、フィチン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の水系液体黒色インク組成物。
【請求項9】
前記ロジンエステルが、1つ以上のポリオールと更に反応されて、高分子量変性ロジンエステルをもたらしている、請求項に記載の水系液体黒色インク組成物。
【請求項10】
前記ロジンが、フリーラジカル伸長法を使用して、不飽和化合物と重合されている、請求項に記載の水系液体黒色インク組成物。
【請求項11】
前記ロジン付加物が、100%BRCロジン-クエン酸エステル樹脂である、請求項に記載の水系液体黒色インク組成物。
【請求項12】
前記ロジン-クエン酸エステル樹脂が、ロジン-クエン酸エステル樹脂を乳酸と更に反応させることによって変性されている、請求項11に記載の水系液体黒色インク組成物。
【請求項13】
水系液体黒色インク組成物の総炭素含有量に基づいて、前記組成物の炭素含有量の80%以上がBRC(バイオ再生可能炭素)である、請求項1に記載の水系液体黒色インク組成物。
【請求項14】
水系液体黒色インク組成物の総炭素含有量に基づいて、前記組成物の炭素含有量の90%以上がBRC(バイオ再生可能炭素)である、請求項に記載の水系液体黒色インク組成物。
【請求項15】
水系液体黒色インク組成物の総炭素含有量に基づいて、前記組成物の炭素含有量の100%がBRC(バイオ再生可能炭素)である、請求項に記載の水系液体黒色インク組成物。
【請求項16】
(a)前記水系液体黒色インク組成物の総重量に基づいて、30重量%~50重量%の混合ビヒクルであって、
i.前記混合ビヒクルの総重量に基づいて、10重量%~30重量%の水と、
ii.前記混合ビヒクルの総重量に基づいて、10重量%~30重量%のロジン付加物と、
iii.前記混合ビヒクルの総重量に基づいて、5重量%~15重量%のL-乳酸混合物であって、前記L-乳酸混合物の総重量に基づいて、88重量%のL-乳酸及び22重量%の水を含む、L-乳酸混合物と、
iv.前記混合ビヒクルの総重量に基づいて、10重量%~30重量%の14.5ボーメのアンモニアと、
v.前記混合ビヒクルの総重量に基づいて、1重量%~10重量%のワックス懸濁液であって、前記ワックス懸濁液の総重量に基づいて、25重量%のワックス及び75重量%の水を含む、ワックス懸濁液と、
vi.前記混合ビヒクルの総重量に基づいて、1重量%~5重量%の微粉化ワックスと、
vii.前記混合ビヒクルの総重量に基づいて、0.05重量%~1重量%のシリコ-ン化合物と、
viii.前記混合ビヒクルの総重量に基づいて、0.5重量%~3重量%の亜鉛キレート剤と、を含む、混合ビヒクル;及び、
(b)前記水系液体黒色インク組成物の総重量に基づいて、50重量%~70重量%の黒色顔料分散液であって、
i.前記黒色顔料分散液の総重量に基づいて、10重量%~40重量%のバイオ炭と、
ii.前記黒色顔料分散液の総重量に基づいて、1重量%~5重量%の界面活性剤と、
iii.前記黒色顔料分散液の総重量に基づいて、5重量%~20重量%の前記パート(a)の混合ビヒクルと、
iv.前記黒色顔料分散液の総重量に基づいて、10重量%~50重量%の追加の水と、を含む、黒色顔料分散液と、を含み、
前記水系液体黒色インク組成物中の炭素含有量の75%~100%がバイオ再生可能炭素(BRC)である、請求項1に記載の水系液体黒色インク組成物。
【請求項17】
請求項に記載の水系液体黒色インク組成物を含む、基材。
【請求項18】
請求項17に記載の基材を含む、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が本明細書によって組み込まれる、2021年7月13日に提出された米国仮出願第63/221,153号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、高いバイオ再生可能炭素(bio-renewable carbon)を含有する黒色インク及びコーティングに関する。インク及びコーティングは、水、熱分解されたセルロース(例えば、バイオ炭(Biochar))顔料、及びロジン付加物を含有する。本発明のインク及びコーティングは、マイクロ波に安全である。
【背景技術】
【0003】
数年間、印刷インク業界は、最大量の再生可能かつ責任を持って調達された炭素を使用して製品を構築しようとしている。原材料の制限には、持続可能な方法で調達された炭素の割合、及び許容可能な物理的性能を提供するために必要な化学物質が含まれる。
【0004】
印刷インクには、炭素材料の2つの一般的な形態がある。炭素材料の第1の形態は、高BRC(バイオ再生可能含有量)材料、すなわち、近年の生育している供給源(天然由来の材料)を起源とする炭素を有するものを表す。第2の種類は、低BRC又はゼロBRCとみなされる古代炭素(例えば、石油、石炭)を起源とする原材料である。責任あるインク配合物の傾向は、最終的な分解生成物である二酸化炭素の環境及び気候への影響を軽減するために、低BRC材料をより高いBRC材料に置き換えることである。インク業界内で、材料中の総炭素の割合としてのBRC測定のための1つの方法は、試料中に存在する炭素14同位体(14C)対炭素12同位体(12C)の比率を測定し、既知の基準と比較することである。炭素14試験は、「炭素年代測定」と広く称され、炭素含有量のマイクログラム当たりに放出されるベータ放射線をカウントすることによって、試料の年齢を決定する。14Cの5730年の半減期を考慮すると、最後の生存から300年未満の原材料を含有することが知られている任意の試料では、ベータ排出量をカウントすることで、持続可能な(BRC)炭素の相対的な割合及び古代炭素の割合も決定できる。BRC法には、1950年から2015年までの期間を含め、いくつかの課題がある。1950年から1963年にかけて、地上での核爆発により、地球の大気中の14C含有量はCOとして190%も増加した。14Cの量は1963年にピークに達し、地球上の植物はそれ以来過剰な14Cを消費しており、2015年には14Cを1950年以前のレベルに戻している。これらの年はまた、BRC比較のための歴史的な参照の一部である。試験試料の年齢(生存以来)が知られている場合、BRCは、1950年から2015年まで生存する材料について正確に正規化することができる。
【0005】
国際公開第2021/062312号は、植物炭化炭素顔料を開示しており、これは液体分散液として提供され得る。植物炭化炭素顔料は、炭水化物(すなわち、植物材料)を熱分解することによって生成される。顔料分散液は、ミリング流体に含まれるマイクロフィブリル化セルロースを含み得る。マイクロフィブリル化セルロースは、顔料粒子の間に挿入することによって抗凝固剤として機能することができるが、水に溶けない多糖であるセルロースの粒子状形態である。
【0006】
国際公開第2021/231829号は、ロジン付加物を含む高BRCを有するインク及びコーティングを記載している。顔料として使用されるバイオ炭の開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2021/062312号
【文献】国際公開第2021/231829号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高いバイオ再生可能炭素(bio-renewable carbon)を含有する黒色インク及びコーティングに関する。インク及びコーティングは、水、熱分解されたセルロース(例えば、バイオ炭(Biochar))顔料、及びロジン付加物を含有する。本発明のインク及びコーティングは、マイクロ波に安全である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、組成物中の総炭素に対して、70%~100%のBRCを含有する黒色インク及びコーティング組成物を提供する。本発明は、熱分解された炭水化物(例えば、バイオ炭)を仕上げインク又はコーティングに使用することができることが示された初めてのものであり、インク又はコーティングは、印刷業界の要件を満たすために必要な物理的特性を有する。
【0010】
本発明の黒色インク及びコーティング組成物は、水、バイオ炭顔料、及びロジン付加物を含み、ロジン付加物は、100%のバイオ再生可能炭素(BRC)含有量を有する。
【0011】
特定の態様では、本発明は、水系液体黒色インク組成物であって、
(a)インク組成物の総重量に基づいて、30重量%~50重量%の混合ビヒクルであって、
i.混合ビヒクルの総重量に基づいて、10重量%~30重量%の水と、
ii.混合ビヒクルの総重量に基づいて、5重量%~15重量%のL-乳酸混合物を含み、L-乳酸混合物の総重量に基づいて、88重量%のL-乳酸及び22重量%の水を含む、L-乳酸混合物と、
iii.混合ビヒクルの総重量に基づいて、10重量%~30重量%のロジン付加物と、
iv.混合ビヒクルの総重量に基づいて、10重量%~30重量%の14.5ボーメのアンモニアと、
v.混合ビヒクルの総重量に基づいて、1重量%~10重量%のワックス懸濁液であって、ワックス懸濁液の総重量に基づいて、25重量%のワックス及び75重量%の水を含む、ワックス懸濁液と、
vi.混合ビヒクルの総重量に基づいて、1重量%~5重量%の微粉化ワックスと、
vii.混合ビヒクルの総重量に基づいて、0.05重量%~1重量%のシリコ-ン化合物と、
viii.混合ビヒクルの総重量に基づいて、0.5重量%~3重量%の亜鉛キレート剤と、を含む、混合ビヒクルと、
(b)インク組成物の総重量に基づいて、50重量%~70重量%の黒色分散液であって、
i.黒色分散液の総重量に基づいて、10重量%~40重量%のバイオ炭と、
ii.黒色分散液の総重量に基づいて、1重量%~5重量%の界面活性剤と、
iii.黒色分散液の総重量に基づいて、5重量%~20重量%のパート(a)の混合ビヒクルと、
iv.黒色分散液の総重量に基づいて、10重量%~50重量%の水と、を含む、黒色分散液と、を含み、
インク組成物中の炭素含有量の75%~100%がバイオ再生可能炭素(BRC)である、水系液体黒色インク組成物を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、ロジン付加物は、100%BRCのロジンエステル樹脂、好ましくはロジン-クエン酸エステル樹脂である。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明のインク及びコーティング組成物は、100%BRCを含む。
【0014】
本発明のこれら及び他の目的、利点、及び特色は、以下により完全に説明される配合物及び方法の詳細を閲読する際に、当業者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の詳細な記述
本発明は、100%BRC炭素含有顔料材料(例えば、バイオ炭)の第1の開示であり、100%BRCインク樹脂及び100%BRCインク添加剤と組み合わせて使用されるとき、完全に機能的な印刷インクを製造するために使用される。本発明によって提供される溶液は、以下に記載されるように、インク性能特性の包括的なセットを示す、バイオ炭と100%BRCロジン付加物との組み合わせである。
【0016】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示的及び説明的なものに過ぎず、特許請求される任意の主題を限定するものではないことを理解されたい。
【0017】
見出しは、体系化の目的のためにのみ使用され、決して発明を限定することを意図するものではない。
【0018】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、発明が属する技術の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書の開示全体を通して言及される全ての特許、特許出願、公開出願、及び刊行物、ウェブサイト、並びに他の公開資料は、別段留意されない限り、任意の目的のために参照によりその全体が組み込まれる。本明細書に説明されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料が、本発明の実施又は試験で使用され得るが、好ましい方法が説明される。
【0019】
定義
本願では、単数の使用は、別段具体的に記述されない限り、複数を含む。本明細書で使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が別途明確に示さない限り、複数の形態も同様に含むことが意図される。
【0020】
本出願では、「又は」の使用は、特に明記しない限り、「及び/又は」を意味する。また、それが使用される文脈から明らかな場合、「及び」は、一度に全てが真実であるか、又は存在することが不可能である代替案のリストなどで「又は」と解釈され得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」及び/又は「含んでいる(comprising)」という用語は、記述された特色、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成成分の存在を指定するが、1つ以上の他の特色、整数、ステップ、動作、要素、構成成分、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を除外しない。更に、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、「構成されている(composed)」、「構成されている(comprised)」という用語又はそれらの変形が詳細な説明又は特許請求の範囲のいずれかにおいて使用される限り、そのような用語は、「含む(comprising)」という用語と同様の様式で包括的であることが意図される。
【0022】
「からなる(consist of)」、「からなる(consists of)」、又は「からなる(consisting of)」という用語が特許請求の範囲の本文で使用される場合、「からなる(consist of)」、「からなる(consists of)」、及び/又は「からなる(consisting of)」で始まる特許請求の範囲の用語が、「からなる(consist of)」、「からなる(consists of)」、又は「からなる(consisting of)」の直後に列挙される要素に限定され、その特定の特許請求の範囲の用語に関連する列挙されていない要素に対して閉鎖的である。「それらの組み合わせ」という用語は、「からなる(consist of)」、「からなる(consists of)」、又は「からなる(consisting of)」の後に続く列挙された要素のリストに含まれる場合、列挙された要素のうちの2つ以上の組み合わせを意味する。
【0023】
本明細書で使用される場合、範囲及び量は、特定の値又は範囲について「約」として表すことができる。「約」は、正確な量も含むことが意図される。したがって、「約5パーセント」は、「約5パーセント」を意味し、「5パーセント」も意味する。「約」は、意図された用途又は目的のための典型的な実験誤差内を意味する。
【0024】
数値範囲が列挙される場合、それは、具体的に列挙されるか否かにかかわらず、エンドポイント、その範囲内の全ての値、及びその範囲内の全てのより狭い範囲を含むことを理解されたい。
【0025】
本開示を通して、別途示されない限り、全ての部分及び割合は、重量単位(総重量に基づく重量%又は質量%)であり、全ての温度は℃である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「天然材料」は、微生物、それらの反応生成物、及びそれらの組み合わせ、並びに水に由来する、植物性(植物系)、鉱物系、動物由来の材料である。天然材料は、自然界で発生するように使用することができるか、又は成分の元の物理的、化学的、若しくは生物学的状態を顕著に変化させない加工を受けることができる。容認可能な加工の例としては、脱水、抽出、押し出し、遠心分離、濾過、蒸留、粉砕、ふるい分け、圧縮、凍結、乾燥、ミリングなどが挙げられる。天然材料としては、水、天然樹脂、天然消泡剤、天然ワックス、天然着色剤、バイオ溶媒、天然鉱物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書で使用される場合、「BRC」は、バイオ再生可能炭素を指し、これは更に、地球の自然環境の一部である非古代炭素(すなわち、非化石系炭素)として定義され得る。非古代炭素(最終的な大気炭素組み込みから40,000年未満)は放射性炭素(14C)を含有し、古代(化石系)炭素は放射性炭素を含有しない。BRCは、天然の再生可能資源を指し、天然の再生、又は(ヒトの生涯などの)限られた時間内の他の繰り返しのプロセスのいずれかを通じて、使用及び消費によって枯渇した部分を置き換えるために補充することができる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「植物系」は、植物系の供給源からの成分質量の50%以上を含有する材料を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「天然由来」は、再生可能な炭素含有量に基づいて、分子量で50%以上の天然又はバイオ系由来を有する材料を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「天然鉱物」は、独特の化学式及び一貫した一連の物理的特性(例えば、結晶構造、硬度、色など)を有する、地球上に天然に存在する無機材料を指す。また、「誘導鉱物」は、天然の鉱物成分(例えば、炭酸カルシウム、シリカ、水和シリカ、フッ化ナトリウム、二酸化チタン)と同じ化学組成を有する、地球上に天然に存在する無機材料の化学処理を通じて得られる材料である。
【0031】
本明細書で使用される場合、「バイオ系」は、農業、植物、動物、真菌、微生物、海洋、又は林業材料から再生可能な由来の炭素を含有する材料を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「熱分解された炭水化物」、「熱分解されたセルロース」、及び「バイオ炭」は、野菜及び果物の廃棄物、骨、角、象牙、及び同様の材料の部分燃焼又は熱分解によって得られる炭素質材料を指す。熱分解は、材料をチャンバーに入れ、酸素がほとんど又は全く存在しない状態で加熱することを伴う。
【0033】
本明細書で使用される場合、「再生可能」は、地球の自然環境の一部である材料を指す。再生可能資源は、自然に発生しており、天然の再生又は他の繰り返しプロセスのいずれかを通じて、限られた時間(ヒトの生涯内など)で、使用及び消費によって枯渇した部分を置き換えるために補充することができる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「混合ビヒクル」、「ワニス」、及び「粉砕ワニス」は、顔料を含有しない本発明の組成物を指す。混合ビヒクル、ワニス、又は粉砕ワニスは、顔料と混合され、着色インク又はコーティングとして使用されてもよく、又は透明コーティングとしてそのまま(すなわち、顔料なしで)使用されてもよい。
【0035】
本明細書で使用される場合、「持続可能な」は、環境に有害ではない、又は天然資源を枯渇させない、それによって長期的な生態的バランスをサポートする品質を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「基材」は、インク又はコーティングが塗布され得る任意の表面又は物体を意味する。基材としては、セルロース系基材、紙、紙板、布地(例えば、綿)、皮革、織物、フェルト、コンクリート、石積み、石、プラスチック、プラスチック又はポリマーフィルム、スパンボンド不織布(例えば、ポリプロピレン、ポリエステルなどからなる)、ガラス、セラミック、金属、木材、複合材、それらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。基材は、金属若しくは金属酸化物、又は他の無機材料の1つ以上の層を有し得る。不織布基材が特に好ましい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「物品(article)」又は「物品(articles)」という用語は、基材又は製造品を意味する。物品の例としては、セルロース系基材、紙、紙板、プラスチック、プラスチック又はポリマーフィルム、ガラス、セラミック、金属、複合材などの基材、並びに出版物(例えば、小冊子)、ラベル、及びパッケージング材料(例えば、カードボードシート又は段ボール)、容器(例えば、ボトル、缶)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、金属化箔(例えば、ラミネートアルミニウム箔)、金属化ポリエステル、金属容器などの製造品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用する場合、「インク及びコーティング」、「インク」、及び「コーティング」は、交換可能に使用され、本発明の組成物、又は指定された場合、従来技術に見られる組成物(比較)を指す。インク及びコーティングは、典型的には樹脂、溶媒、及び任意選択により場合によっては着色剤を含有する。コーティングは、しばしば、無色又は透明であると考えられ、一方、インクは、典型的には着色剤を含む。
【0039】
本明細書で使用される場合、印刷された又はコーティングされた基材の「面」は、インク又はコーティングが塗布された側を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、印刷された又はコーティングされた基材の「背面」は、インク又はコーティングが塗布されていない側を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「不飽和化合物」は、1つ以上のC=C結合(炭素-炭素二重結合)を含有する炭素含有材料である。
【0042】
水系組成物
本発明は、100%バイオ再生可能炭素構成成分を使用して、ロートグラビア及びフレキソ印刷要件内で実施するために必要な物理的特性を有する水系黒色液体インクを提供する。材料の独自の構造及び相互作用は、完全に機能的なインク製品につながる重要な特徴である。国際公開第2021/162312号は、バイオ炭を使用して仕上げインクを顔料化することができることを示唆しているが、仕上げインクではなく、顔料分散液のみが記載されている。更に、国際公開第2021/162312号は、バイオ炭と組み合わせたロジン樹脂付加物の使用を開示していない。国際公開第2021/162312号で使用されるマイクロフィブリル化セルロースは、顔料粒子の間にインターカレートすることによって抗凝固剤として機能することができる多糖類であるセルロースの粒子状形態である。これは、水溶性ではなく、分散剤の機能を有しない。本発明で使用されるロジン樹脂は、天然ロジンに由来するテルペン化学物質であり、顔料粒子に吸着し、粒子が凝集するのを防ぐために立体及びイオン相互作用を提供することによって分散剤として機能するように変性される。当業者は、マイクロフィブリル化セルロース及び本発明のロジン樹脂付加物が等価ではなく、交換可能に使用することができないことを認識するであろう。
【0043】
印刷インク(及びコーティング)は、複数の原材料の複合材であり、それぞれが全体的な性能の一部を担い、全てが互いに互換性があり、時間の経過とともに化学的安定性を保証する必要がある。当業者は、水系印刷インクが、典型的には、約30~40%の炭素含有化合物、60%以上の水、及び約1%のアンモニアを含有することを認識する。炭素寄与は、配合物中の炭素含有化合物の量、及び各個々の化合物中の元素炭素の量の両方を考慮する。代表的な炭素含有化合物を、表Aに相対的な元素炭素寄与についてまとめる。
【0044】
【表1】
【0045】
本発明のインク及びコーティング組成物は、好ましくは、全ての元素状炭素含有化合物に対して100%のBRC寄与を有する。すなわち、本発明の任意の構成成分内の元素状炭素が100%BRC未満でないことが好ましい。顔料含有量は、一般的に中国から調達され、有機顔料を製造するために使用される持続可能な炭素(染料)中間体の欠如のために、100%BRCインクにとって主要な課題となっている。有機着色剤が典型的な液体インクの炭素含有量のほぼ半分を占めることを考慮すると、この事実は、100%BRC仕上げインクの構築に厳しく制限されているように思われる。持続可能な炭素含有量を含有する多くのカーボンブラック顔料及び顔料分散液の市販製品は、100%のBRCを達成しない。部分的に持続可能な含有量でありながら、100%のBRCを達成していないカーボンブラックの例の1つは、OrionのPrintex Nature Blackである。このランププロセス顔料は、100%BRC大豆ふすまワックスの不完全燃焼を使用して、高いBRC黒色顔料を生成するが、BRCは85%として文献に列挙されている。更に検査すると、天然ガス(古代由来)が燃焼プロセスを増強するために使用され、最終的な顔料製品に持続不可能な炭素をもたらす。
【0046】
マイクロ波感受性は、食品を加熱するための利点として知られているが、これは印刷されたインクの責任である。印刷されたインク(特に多くのカーボンブラック)は、マイクロ波エネルギーに曝されると、しばしば熱、煙、火花、及び炎の生成を示す。炭素含有量が非常に高いため、マイクロ波に安全な高純度炭素顔料の古代供給源(例えば、石油系)はほとんどない。酸素含有量が4%を超える炭素顔料は、酸素の非感受性特性により、マイクロ波に安全である傾向がある。最近の生きている生物に由来するバイオ炭顔料は、典型的には、(残留リグニン及びセルロース構造からの)4%を超える酸素含有量を含有し、典型的にはマイクロ波に安全である。
【0047】
堆肥化性は、熱、光、化学反応、及び微生物代謝活性を介した化学分解の特徴である。理論に拘束されないが、コンセンサスは、生きている天然構造に近いインクの構成成分は、もはや天然の食品構造に類似していない高度に化学的に変性された化合物よりも、微生物によってより容易に代謝される傾向があるということである。
【0048】
仕上げインクには、バイオ炭と古代供給源のカーボンブラック顔料との特別な処方集の考慮事項がある。これらの考慮事項には、レオロジー及び粘度安定性、塗布密度(所望の粘度での顔料送達)、所望の粘度での固体、並びに基材へのフレキソ及びロートグラビア送達が含まれる。これらの性能の考慮事項の全ては、インク中の構成成分間の凝集及び接着相互作用に基づいている。バイオ炭炭素と古代供給源炭素との主な違いは、酸素含有量(水素結合相互作用を形成する傾向)、及び機械的崩壊に対する構造的耐性である。
【0049】
仕上げインク内には、樹脂と顔料との間に吸引力による水素結合相互作用がある。当業者は、樹脂及び顔料の両方に必要な水素結合化学の機能量を説明するであろう。水素結合が少なすぎると、アニロックスからプレート、基材への湿式送達に必要な接着性及び凝集性が生じない。一方、樹脂及び顔料の両方が、吸引力を脱局在化するための幾何学形状を有する過剰な水素結合構造を含有する場合、結果は、組成物中に存在する所与の量の固体に対する粘度の上昇である。より高い粘度は、印刷粘度を達成するためにより多くの水の添加、及び顔料割合の損失(すなわち、低い塗布色強度)を必要とするであろう。(古代供給源のカーボンブラックとは対照的に)バイオ炭黒色顔料の特定の例では、より大きな水素結合特性が、セルロースからの残留酸素構造として存在する。これは、水素結合構造がほとんどない/全くない構造の一方の極を有する樹脂選択(例えば、ロジンクエン酸)によって減衰される。この幾何学的形状は、顔料の吸引力を局在化する(すなわち、より多くの水素結合を有する一方の極に局在化する)。
【0050】
最適なインクのレオロジーのための配合は、乾燥印刷インク内のそれらの同じ吸引力を排除することなく、湿った吸引力を最小限に抑える試みである。バイオ炭顔料は、水素結合を低下させ、より大きな流れ、より大きな塗布固体を生成し、より粘度を低下させる薬剤と組み合わせる必要がある。バイオ炭の過剰な酸素含有量を単離し、吸引力を低下させるためのそのような薬剤の1つは、本発明で使用される100%BRCロジン付加物である。
【0051】
ロジン付加物材料の例としては、限定されないが、LawterのFiltrezロジンフマル酸塩、LawterのReactolロジン系ポリエステル、及びPolimeros SinteticosのAmberylロジンマレイン酸塩が挙げられる。
【0052】
好ましい実施形態では、本発明で使用されるロジン付加物は、アニオン性変性ロジン樹脂エステルである。ロジン付加物の調製は、国際公開第2021/231829号に記載されている。ロジンモノマー及びダイマー酸からなるコロフォニーは、最初に、アルファヒドロキシカルボン酸と呼ばれる一般構造の材料と反応する。アルファヒドロキシカルボン酸の例としては、リンゴ酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、アスコルビン酸、クエン酸、グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシカプリル酸、マンデル酸、フィチン酸、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。この最初の反応は、ロジンエステルを生成する。任意の数のポリオールとの第2の反応は、高い分子量の変性ロジンエステルをもたらすことができる。ロジンはまた、フリーラジカルプロパゲーション法を使用して、任意の数の不飽和化合物と重合してもよい。特に好ましい材料は、100%BRCロジン-クエン酸エステル樹脂である。ロジン付加物材料は好ましくは乳酸で変性される。
【0053】
これらの420~920の分子量の変性ロジンは、水素結合部位がゼロの極と、1つを超えるバイオ炭粒子と相互作用できない水素結合部位を有する別の極とを示し、吸引力の非局在化及び粘度の上昇を排除する。言い換えれば、長い吸引力の列は、短い局所的な吸引力よりも移動するのに多くのエネルギーを必要とする。ロジン-クエン酸エステル樹脂構造の例のいくつかを以下に示す(国際公開第2021/231829号より)。
【0054】
【表2】
【0055】
バイオ炭顔料は市販されており、粒径オプションの範囲のものがある。バイオ炭顔料は、機械的崩壊に対する高い弾力性の点で、古代のカーボンブラック顔料とは異なる。バイオ炭は、より小さい平均粒径に対して粉砕することなく、機械的エネルギーを吸収する傾向があり、その結果、構造を避けるのではなく、構造の屈曲が生じる。印刷インクにおける黒色顔料の使用は、光吸収効率を最適化するために、粒径を約1μm以下に低減する必要がある。確立された粒子低減技術が存在し、インク業界ではミリングとして知られている。(耐破断性)粒子を低減するための一般的な確立されたプロセスの1つは、化学的に微小亀裂に浸透する化学物質を用いたプレミックスステップである。水が浸透し、凍結し、膨張するガラスの亀裂の膨張と同様に、界面活性剤化学は、難しい粉砕顔料に化学的に浸透するためにインク業界で一般的に利用されており、機械的低減プロセスを強化している。バイオ炭サプライヤは、粒径を低減するための追加の機械的技術及び装置を有することに留意されたい。
【0056】
本発明の重要な属性は、#2 EZ Zhanカップ粘度計で28秒近くの印刷粘度で30%近くの非顔料固体を達成することである。インクの基材への送達を成功させるには、固体と粘度との両方に複雑な関係がある。樹脂固体は、印刷インクの物理的性能を提供する主な要因である。顔料固体(バイオ炭)は、色の強度を提供する主な要因である。樹脂と顔料との組み合わせは、高粘度で低固体の点で相互作用しないことが最も重要である。本発明の配合物は、ロジン-クエン酸エステル樹脂とバイオ炭との低粘度、高固体相溶性を示す。
【0057】
印刷インク中の堅牢な機械的摩擦抵抗は、表面硬度(本発明の鉛筆硬度試験で決定)と柔軟性との組み合わせである。インク又はコーティングのガラス転移温度(Tg)が25℃未満であるとき、フィルムがほぼ室温で形成されるように、最適な柔軟性が達成される。ほとんどのパッケージングは、室温近く、すなわち約22℃~約30℃で典型的なパッケージング用途を有する。Tgが室温より低いと、ポリマー及び添加剤は25℃で弾性及び強靭性を示す。パッケージング使用温度より低いTgを有する樹脂は皮膜形成剤である。Tgがより高く、例えば約50℃であり、パッケージが30℃で機械的にストレスを受けている場合、インクは亀裂/粉砕/粉末になる可能性がある。逆に、Tgがパッケージ使用温度をはるかに下回っている場合、Tgが使用温度に近い場合に比べて、インクがもっと染み付いたり、転移を起こし易くなる。この状況は「粘着性がある」と言うことができる。表面硬度は、皮膜形成が存在するより高いレベルでは常に機械的利点である。歴史的に、2Hを超える鉛筆硬度及び皮膜形成を有する可撓性パッキングは、堅牢な機械的抵抗を示すであろう。
【0058】
印刷された基材のブロック抵抗は、基材が圧延されたときにインクが基材の印刷されていない側に転移されるのを防止することである。当業者は、50psi、120°F(約49℃)及び66%の相対湿度を72時間を超える持続時間にわたって生成させ、高温トラックでの印刷物の輸送をシミュレートする実験室ブロック試験装置を使用する。印刷された試料は、ブロック試験装置に装填される前に、巻き上げられ、対面構成を生成する。
【0059】
耐熱性は、加熱成形装置の使用に起因する多くのパッケージング用途の要件である。運動耐熱性の一般的な複製は、加熱されたスレッド(400°F、又は約204℃)を、Sutherland Rub Testerと組み合わせて使用することである。第2の静的耐熱性試験は、Sentinel Heat Sealerを利用し、印刷された試料をアルミニウム箔の間に配置する。箔は、400°F及び80psiに曝され、インクの箔への転移を評価する。耐熱性を達成及び確認することの利点は、熱間成形装置上での印刷インクの転移及び積層を防ぐことである。
【0060】
独自のパッケージング用途には、追加の(特定の)性能要件がある。例えば、ファストフード業界は、パッケージングにおける持続可能性及びBRCの向上を非常に重視している。ファストフードは、サンドイッチ包装、持ち運び用袋、折り畳みカートン、ポリエチレン(PE)カップ、及び前もって印刷された段ボールパッケージングを使用している。これらの用途では、インクは、(水に濡れたナプキン摩擦でシミュレートされた)ソフトドリンクの溶解性、インクを移動させることなく調味料と接触すること、及び入れ子になった容器の積み重ね内でのインク転移がないことに耐えなければならない。機能的な100%BRC黒色インクの究極の証明は、必要な全ての特性を同時に達成することである。
【0061】
本出願に示されるいくつかの仕上げインクの例は、粉砕/混合ビヒクルとして、又は塗布可能/必要な場合にコーティングとして、独自の100%BRCワニスを使用して、多くの一般的な用途要件に対して良好に機能する。
【0062】
一実施形態では、本発明は、コーティング(すなわち、そのままで、コーティング又はワニスと称される)、顔料粉砕ビヒクル、又はインク組成物のための混合ビヒクル(実施例で言及される)として使用することができる水系ワニス組成物を提供する。これらの用語のいずれかの使用は、水系ワニスを指す。ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルは、ロジン付加物及び水を含む。いくつかの実施形態では、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルは、L-乳酸、アンモニア、ワックス、シリコ-ン化合物、又はキレート剤のうちの1つ以上を更に含む。
【0063】
ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルは、典型的には、ワニスの総重量に基づいて、約10重量%~約30重量%の水を含む。例えば、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルは、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルの総重量に基づいて、約10重量%~約25重量%の水、又は約10重量%~約20重量%、又は約10重量%~約15重量%、又は約15重量%~約30重量%、又は約15重量%~約25重量%、又は約15重量%~約20重量%、又は約20重量%~約30重量%、又は約20重量%~約25重量%、又は約25重量%~約30重量%を含み得る。
【0064】
ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルは、典型的には、ワニスの総重量に基づいて、約10重量%~約30重量%のロジン付加物を含む。例えば、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルは、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルの総重量に基づいて、約10重量%~約25重量%のロジン付加物、又は約10重量%~約20重量%、又は約10重量%~約15重量%、又は約15重量%~約30重量%、又は約15重量%~約25重量%、又は約15重量%~約20重量%、又は約20重量%~約30重量%、又は約20重量%~約25重量%、又は約25重量%~約30重量%を含み得る。
【0065】
存在する場合、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルは、典型的には、約5重量%~15重量%のL-乳酸組成物を含む。例えば、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルは、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルの総重量に基づいて、約5重量%~約10重量%のL-乳酸組成物、又は約10重量%~約15重量%を含み得る。L-乳酸組成物は、典型的には、約88重量%のL-乳酸、及び約22重量%の水を含む、水中の分散液/溶液として提供される。
【0066】
存在する場合、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルは、典型的には、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルの総重量に基づいて、約10重量%~約30重量%のアンモニア組成物を含む。例えば、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルは、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルの総重量に基づいて、約10重量%~約25重量%のアンモニア組成物、又は約10重量%~約20重量%、又は約10重量%~約15重量%、又は約15重量%~約30重量%、又は約15重量%~約25重量%、又は約15重量%~約20重量%、又は約20重量%~約30重量%、又は約20重量%~約25重量%、又は約25重量%~約30重量%を含み得る。アンモニア組成物は、典型的には、14.5ボーメのアンモニアとして提供される。
【0067】
ワックスは、ワックス懸濁液として、又は微粉化ワックスとして、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルに含まれ得る。好ましくは、ワックスは、75%~100%のBRCを含有する天然ワックスである。存在する場合、ワックス懸濁液は、典型的には、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルの総重量に基づいて、約1重量%~10重量%のワックス懸濁液の量で存在する。例えば、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルは、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルの総重量に基づいて、約1重量%~約5重量%のワックス懸濁液、又は約5重量%~約10重量%を含み得る。ワックス懸濁液は、典型的には、約25重量%のワックス、及び約75重量%の水を含む懸濁液として提供される。存在する場合、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルは、典型的には、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルの総重量に基づいて、約1重量%~約5重量%の量の微粉化ワックスを含む。好適なワックス懸濁液としては、アミドワックス(例えば、エチレンビステアラミド(EBS)ワックス)、エルカミドワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、カルナバワックス、ダイズワックス、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
存在する場合、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルは、典型的には、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルの総重量に基づいて、約0.05重量%~約1重量%のシリコ-ン化合物を含む。存在する場合、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルは、典型的には、ワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルの総重量に基づいて、約0.5重量%~約3重量%のキレート剤を含む。ある特定の実施形態では、キレート剤は、亜鉛キレート剤である。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明は、黒色顔料分散液を提供する。黒色顔料分散液は、混合ビヒクル及びバイオ炭を含む。いくつかの実施形態では、黒色顔料は、追加の水及び界面活性剤を更に含み得る。
【0070】
黒色顔料分散液は、典型的には、顔料分散液の総重量に基づいて、上述のように、約5重量%~約20重量%のワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクルを含む。例えば、顔料分散液は、顔料分散液の総重量に基づいて、約5重量%~約15重量%のワニス/粉砕ビヒクル/混合ビヒクル、又は約5重量%~約10重量%、又は約10重量%~約20重量%、又は約10重量%~約15重量%、又は約15重量%~約20重量%を含み得る。
【0071】
黒色顔料分散液は、典型的には、顔料分散液の総重量に基づいて、約10重量%~約40重量%のバイオ炭を含む。例えば、顔料分散液は、顔料分散液の総重量に基づいて、約10重量%~約35重量%のバイオ炭、又は約10重量%~約30重量%、又は約10重量%~約25重量%、又は約10重量%~約20重量%、又は約10重量%~約15重量%、又は約15重量%~約40重量%、又は約15重量%~約35重量%、又は約15重量%~約30重量%、又は約15重量%~約25重量%、又は約15重量%~約20重量%、又は約20重量%~約40重量%、又は約20重量%~約35重量%、又は約20重量%~約30重量%、又は約20重量%~約25重量%、又は約25重量%~約40重量%、又は約25重量%~約35重量%、又は約25重量%~約30重量%、又は約30重量%~約40重量%、又は約30重量%~約35重量%、又は約35重量%~約40重量%を含み得る。
【0072】
存在する場合、黒色顔料分散液は、典型的には、顔料分散液の総重量に基づいて、約1重量%~約5重量%の界面活性剤を含む。例えば、黒色顔料分散液は、顔料分散液の総重量に基づいて、約1重量%~約2重量%の界面活性剤を含み得る。
【0073】
界面活性剤は、異なる極性化学物質の湿潤及び/又は均等な分布を生成するために用いられる。仕上げ水系インク内のバイオ炭顔料の組み合わせのために、界面活性剤は、それらの親水性親油性(HLP)バランス構造のために適切に選択された場合、最大5倍の有用性を有することができる。界面活性剤の有用性としては、以下が挙げられる:1)顔料の最小サイズへのミリング中に、界面活性剤は、(非常に極性の)バイオ炭が再凝集すること及び/又はより大きな粒子分離を生じさせるのを防ぎ、2)カラー濃縮物(分散液)の製造中に(比較的低い極性の)ロジン-クエン酸エステル樹脂との密接な(シアリング(sheering))接触を可能にし、3)目標粘度で仕上げインクの樹脂固体を最大化し、4)湿ったインクの均一な厚さを意図した基材に転移させることを可能にし、かつ5)基材への塗布中に色の横方向の色の均一性を維持することである。界面活性剤は、その構造の一部として常に高極性及び低極性を有する。界面活性剤の最良の使用(又は使用しない)は、当業者にとって、完成した水系インクを構築する際の非常に複雑な決定である。
【0074】
追加の水を顔料分散液に添加する場合、典型的には、分散液の総重量に基づいて、約10重量%~約50重量%の量で添加される。例えば、水は、分散液の総重量に基づいて、約10重量%~約40重量%、又は約10重量%~約30重量%、又は約10重量%~約20重量%、又は約20重量%~約50重量%、又は約20重量%~約40重量%、又は約20重量%~約30重量%、又は約30重量%~約50重量%、又は約30重量%~約40重量%、又は約40重量%~約50重量%の量で添加され得る。
【0075】
本発明の組成物は、任意の好適な基材に塗布され得る。好ましい基材としては、可撓性パッケージングに使用される基材が挙げられる。その後、基材を使用して、ファストフード包装、カップなどの物品を調製することができる。
【実施例
【0076】
本発明を更に例解する以下の非限定的な実施例によって、本発明は更に説明され、発明の範囲を限定することを意図するものではなく、またそのように解釈するべきではない。
【0077】
実施例1及び2.混合ビヒクル
本発明の混合ビヒクルを表1の配合に従って調製した。
【0078】
【表3】
【0079】
最終的な実施例1の混合ビヒクルは、62スピンドルを備えたBrookfield DV-E Viscometerを使用して30rpmで測定して670cpsの粘度を有し、25℃でpH=9である。
【0080】
実施例1における主な性能樹脂は、210mgKOH/gの酸価を有する100%BRCロジン-クエン酸エステル樹脂である。実施例1の式は、6.50のpHで、乳酸とロジン-クエン酸エステル樹脂との間で生じる湿潤反応である。反応は、エステルが完全に中和される前に起こる。乳酸は、ロジン-クエン酸エステル樹脂中に追加のエステル結合を生成し、酸価を低下させ、分子量を上昇させ、非皮膜形成ロジン-クエン酸エステル樹脂から、室温(25℃)で皮膜形成樹脂を生成するガラス転移温度(Tg)を低下させると考えられる。乳酸との反応前に、ロジン-クエン酸樹脂は、35℃を超えるTgを有し、以下に記載されるように試験され、これが可撓性に責任を負っている。乳酸と反応した後、最終的な構造は、25℃未満のTgで、ロジンクエン酸樹脂の無水物部位への乳酸(アルファヒドロキシル構造)のDiels-Alder付加反応であると、Sun Chemical Eurolabによって決定され、より大きな可撓性の機械的利点をもたらした。
【0081】
実施例2の混合ビヒクルは、乳酸を追加のロジン-クエン酸エステル樹脂に置き換えたこと以外は、実施例1の混合ビヒクルと同様である。実施例2の配合物を表2に示す。
【0082】
【表4】
【0083】
最終的な実施例2の混合ビヒクルは、62スピンドルを備えたBrookfield DV-E粘度計を使用して測定して85cpsの粘度を有し、25℃でpH=9.6である。
【0084】
実施例1の混合ビヒクルは、必要な機械的強度を示すが、実施例2の混合ビヒクルはそうではない。一般に、機械的強度は、表面硬度及び可撓性の産物である。表面硬度は、以下に記載されるように、鉛筆硬度試験を使用して測定することができる。可撓性は、Tgによって評価され、当業者は、25℃未満及び15℃を超える値が機械的利点に寄与することを理解する。Tgが30℃を超える組成物は、脆性の欠点を有し得る。15℃未満のTgは、汚れのかたちで、機械的力に対する抵抗がないという欠点を有し得る。Tg特性は、鉛筆硬度と連動して機能する。機械的強度は、色移り又は擦り傷に対する耐性として印刷インクにおいて最も頻繁に現れる。物体が印刷物と接触すると、ドライインクが粉末になり、皮膚、衣服などに転移される可能性が高いのは不利である。ドライインクが一緒に保持され、粉砕されたインク又はインク粉末の生成なしに、機械的エネルギーを付与して屈曲することは有利である。実施例2は、より高いTg(より低い可撓性)により、実施例1よりも機械的に劣っている。
【0085】
【表5】
【0086】
実施例1のTgを低下させる化学的変性は、最終的に、仕上げインクにおいて屈曲する(粉砕しない)能力及び機械的強靭性を生じさせる。
【0087】
実施例3~5.バイオ炭(Biochar)顔料分散液
実施例3~5は、バイオ炭色の分散液である。化学官能性及びその後の仕上げインク性能を以下に記載する。3つの全てのバイオ炭黒色分散液は、化学の一部として実施例1の混合ビヒクルを利用する。実施例3は、実施例1の100%BRC混合ビヒクルと組み合わせて、アニオン界面活性剤を使用する。実施例4は、実施例と組み合わせて非イオン性界面活性剤を使用する。実施例5は、界面活性剤を完全に省略する。実施例3~5の配合物をそれぞれ表3~5に示す。
【0088】
【表6】
【0089】
実施例3の黒色分散液は、#2 EZ Zahnカップで45秒を超える粘度を有し、25℃でpH=9.0である。
【0090】
【表7】
【0091】
実施例4の黒色分散液は、#2 EZ Zahnカップで42秒の粘度を有し、25℃でpH=9.5である。
【0092】
【表8】
【0093】
実施例5の分散液は、ブレードエネルギーが導入された後(60秒)、しばらくの間流れ、次いで、注ぐことのできない固体になる。これは、「セットアップ」として知られている。その固体を撹拌して注ぐ必要がある。しかしながら、記述されている、この色分散液を使用する仕上げインクは、セットアップしない(すなわち、注ぐことができるままで留まっている)。実施例5は、pH=9.3を有する。
【0094】
実施例6~8.実施例3~5の黒色分散液を使用した仕上げインク
実施例6~8は、実施例3~5の黒色分散液を含有する仕上げインクである。実施例6~8の配合物をそれぞれ表6~8に示す。
【0095】
【表9】
【0096】
実施例6の仕上げインクは、#2 EZ Zahnカップで31秒の粘度を有し、25℃でpH=9.4である。
【0097】
【表10】
【0098】
実施例7の仕上げインクは、#2 EZ Zahnカップで35秒の粘度を有し、25℃でpH=9.1である。
【0099】
【表11】
【0100】
実施例8の仕上げインクは、#2EZ Zahnカップで40秒の粘度を有し、25℃でpH=8.8である。
【0101】
実施例9及び10.先行技術の化学に基づくバイオ炭黒色顔料分散液
実施例9~10は、Aquagreen化学に基づく追加のバイオ炭黒色顔料分散液である。実施例9及び10の配合物をそれぞれ表9及び10に示す。Aquagreenは、表B、C、及びDに列挙される性能特性について、3年を超えて業務上印刷され/機能的に堅牢であることが証明されている、Sun Chemicalからの業務用インクシリーズである。これらは、高いBRC含有量を有するが、100%のBRC含有量には至らないという点での比較である。本発明の黒色分散液から調製されたインクは、市販の化学的性質に基づいて黒色分散液から調製された高BRCインクと同等以上の特性を示す。Aquagreen化学に基づく顔料分散液及びインクは、最も近い先行技術である。必要な性能特性を達成するために、Aquagreen組成物は、高分子量樹脂エマルションを含有することに留意されたい。注目すべきは、本発明のインクは、高分子量樹脂エマルションなしで必要な性能を達成することである。
【0102】
【表12】
【0103】
実施例9の顔料分散液は、47.1%の総不揮発性含有量(TNV%)、及び96.7%のBRCを有する。
【0104】
【表13】
【0105】
実施例11.比較技術(混合)ビヒクル
実施例11は、市販の技術(混合ビヒクル)である。これは、Sun Chemicalから入手可能なである、GP37000030A Aquagreen Tech Vehicleである。
【0106】
実施例12及び13.比較黒色仕上げインク
実施例12及び13は、実施例9及び10の黒色顔料分散液、並びに実施例11の混合ビヒクルを使用して調製した比較の黒色仕上げインクである。実施例12及び13の配合物を表11及び12に示す。
【0107】
【表14】
【0108】
実施例12の比較の仕上げインクは、45.2%のTNV及び82.0%のBRCを有する。
【0109】
【表15】
【0110】
実施例13の比較の仕上げインクは、39.4%のTNV及び81.5%のBRCを有する。
【0111】
実施例14.仕上げインクの性能
以下は、フレキソ印刷及びロートグラビア印刷基材用途における仕上げインク有用性の能力である。
【0112】
周囲湿潤安定性/室温での初回対1週間の粘度
典型的な水系プリンタは、#2 EZ Zahnカップ粘度計で、18秒~35秒の粘度範囲で最高の印刷性能が得られる。非還元インクは、その範囲内の未切削粘度(uncut viscosity)に配合されるべきである。インク試料は、均一性を確保するために、10秒間手で激しく振り回される。この試験は、#2 EZ Zhanカップ粘度計を使用して初期粘度を記録し、7日後に粘度を記録する。5秒を超える粘度変化(増減)は、許容できない。
【0113】
B.加熱された湿潤安定性/120°F(約49℃)で24時間
この試験は、湿潤試料を2回目の粘度測定の前に24時間、120°Fのオーブンに置くことを除いて、周囲湿潤安定性試験と同一である。5秒を超える粘度変化(増減)は許容できない。
【0114】
C.25秒印刷粘度での色強度/塗布密度
インクは、水道水を使用して#2 EZ Zahnカップ上で25秒まで低減され、次いで、200ライン7.0BCMハンドプルーファーを使用してC1S漂白板紙に塗布される。塗布されたインクを120°Fの対流オーブンで60秒間乾燥させる。X-Rite939(Daylight65、10段階のオブザーバーに設定)を使用して、3つの読み取り値の平均密度(V)を決定する。これは、最適なアニロックスの選択又は範囲を決定するために、V=1.40の標準プロセス密度と比較される。ロートグラビア印刷及びフレキソ印刷用途の場合、(シリンダー又はアニロックス)容積の選択は、典型的には、1.2BCM(10億立方ミクロン)から15.0BCMである。低いBCM(浅いと呼ばれる)で塗布される色密度を得ることは、高いBCM(深い)オプションを使用するよりもはるかに困難である。7.0フレキソアニロックスBCMは、ラインアートワークの一般的な容積であり、2.0BCMはアートワークに一般的である。
【0115】
D.静的耐熱性/Sentinelヒートシール機
Sentinelヒートシール機は、上部加熱されたジョーを使用して、40psi、400°F、1秒の持続時間に設定される。上記の試験Cのようにインクを塗布する。印刷試料は、アルミニウム箔のダル側に揃えられ、構造はヒートシール機のジョーに挿入され、クランプシューが押される。構造物を室温まで冷却させ、箔を印刷されたインク表面から除去する。箔へのインクの視覚的な転移は合格の結果ではない。
【0116】
E.運動耐熱性/Sutherland摩擦試験機加熱スレッド
この試験は、前もって印刷された段ボール基材に使用される加熱ラミネートプロセスに特有のものである。インクは、7インチの長さ、2インチの幅のストリップで基材上に塗布される(上記の試験Cで説明される印刷方法を使用する)。基材は、装置の底面までインク側が貼り付けられている。加熱されたスレッドは400°Fに加温される。加熱されたスレッドは、印刷試料の表面上に引っ張られ、インクが付着した領域からインクが付着していない領域に渡される。試験は、25サイクルに設定される。完了すると、基材は、印刷されていない領域へのインクの転移について検査される。合格性能は、目に見えるインク除去がなく、基材の非インク領域への色の移動もない。
【0117】
F.印刷品質/フィラメント検査
手袋(ラテックス手袋)をはめた手を使用して、10セント硬貨の大きさのインク量で人差し指を濡らす。インクが乾くまで、濡れた人差し指を親指に5秒単位でタップする。引っ張りながら、指と親指との間の領域を点検する。フィラメント(クモの巣のように見える)が現れた場合、それは凝集性/接着性の均衡が凝集に偏っていることを示している。インクプレートとアニロックスとの間、又はグラビアシリンダーとストックとの間に形成されるフィラメントは、インクが堆積するか、又は非印刷領域に放たれることにつながる。合格結果は、目に見えるフィラメントがないことである。
【0118】
G.印刷品質/pH=9でのガラス再湿潤
上記Cの印刷方法を使用して、インクをガラス基材に塗布し、インクをガラス上で乾燥させる。これは、何らかの理由で印刷稼働が稼働の途中で停止した場合の、アニロックスプレート上のインク乾燥をシミュレートする。水道水及びpH=9.0にするモノエタノールアミン(MEA)(水道水源に応じて0.2%MEAが必要)の100g溶液を調製する。乾燥インクを45度の角度で上向きにした状態でガラス基材を保持し、pH9溶液を5mlピペットし、6インチ離れた印刷領域にゆっくりと滴下する。合格結果は、滴下領域のガラスからインクを完全に除去されることである。すなわち、乾燥インクの除去によって示されるガラスプレート上のインクの再湿潤は、アニロックスプレート界面における再湿潤を予測させる。インクを再湿潤することができない場合、これは非画像領域にインクが積層することを引き起こし、インクが送達されるべきではない領域に送達され、これは、汚れた印刷ともいわれる。
【0119】
H.印刷品質/グラビアを5分間乾燥してから再湿潤
Geigerラボグラビアプレス機を使用して、20秒まで減じられた100グラムのインク#2 EZ Zahnカップをパンに装填する。ブレードを噛み合わせた状態で、プレス機を50%の速度にする。点検制御として試験印刷を引っ張る。ブレードを離さずにプレス機の回転を止める。周囲条件下で、インクをシリンダー内で15分間乾燥させる。これは、潜在的な停電及びセルのプラグインへの影響を模す。15分後にプレス機の回転を上げ始める。Geigerシリンダーを5分間再湿潤させる。別の印刷物を引っ張る。不均一なインク送達の証拠がないか点検する。合格結果は、再湿潤後に印刷された画像が均一なままであり、乾燥インクを含有するエッチングの領域におけるインク送達の量が少ないことを示さないときである。
【0120】
ブロック抵抗/表面から裏面へのインク転移
20# MG用紙に長さ10インチ、幅3インチの帯状の印刷されたインクを用意する(上記Cに記載されている印刷方法を使用する)。印刷物を指でシリンダーに巻き上げる。シリンダーを1.5インチ×3インチの構成に平らに折り畳む。ブロックテスターを120°F、50psi、相対湿度66%に設定する。平坦化された基材シリンダーをブロックテスターに入れ、24時間放置する。ブロックテスターから取り外したら、試料を開き、印刷面からストックの印刷されていない裏側へのインクの転移を点検する。合格結果は、ストックの裏側への目に見えるインク転移がないことである。
【0121】
J.機械的な擦り傷/Sutherland摩擦
29秒の粘度をもつ仕上げインクを、500ライン4.0BCMハンドプルーファーを使用して、ポリエチレンコーティングされた紙のポリエチレン(PE)側の#2 EZ Zahnカップに塗布し、120°Fの対流オーブンで30秒間乾燥させ、次いで周囲条件で16時間を超えて硬化させる。この試験は、2#スレッドを備えたSutherland摩擦試験機を使用して実施され、25サイクルに設定される。印刷シートを、同じストックの印刷されていないPE表面に面する2#スレッド(インク表面が露出するようにインク側を下にして)に取り付け、これをSutherland底面上に取り付ける。試験は、25サイクルの摩擦で構成される。nk密度を、設定D65光/10段階のオブザーバーを使用して、X-Rite939分光光度計で測定した。基材密度の非試験領域(すなわち、非インク転移)部分から取った測定値を、最も高いインク転移領域の測定密度(主要寄与度V、C、M、Y)から減算して、インク転移のみを決定する。X-Rite転移密度は、確立された/過去の印刷業界の機械的摩擦要件を満たすために0.100未満でなければならない。主要色寄与度は、X-Rite939のような多くの密度計によって自動的に決定される。それは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(V)に関して、可視光の主反射率波長である。主吸光度の例は、ピンクについてはマゼンタ、及び濃いフォレストグリーンについてはシアンである。主吸光度波長を識別することは、観察された転移のリスクが最も高い色をデータが含むことを保証する。
【0122】
K.BRC/ASTM方法D6866
バイオ炭顔料及び実施例1の混合ビヒクルの試料を、Beta Analytical,Miami,FLに提出した。両方の試料は、100BRC評価を達成した。本発明の組成物において使用される他の材料のBRC含有量は、公的に利用可能なサンプリングデータベースにおいて利用可能である。組成物中の各材料の寄与率は、材料の%BRCに組成物中の重量%を掛けることによって計算することができる。例えば、澱粉など一部のアイテムは、100%BRCとして一般的に認識されていることに留意されたい。
【0123】
L.マイクロ波に対する安全性
仕上げインクは、上記Cに記載された印刷方法を使用して、20# MGサンドイッチ包装ストックに塗布される。4インチ×2インチの印刷された試料を1200ワットの電子レンジに入れ、100gの水を含む紙コップも電子レンジに入れる(マイクロ波エミッターを焼損から保護するため)。タイマーは、強設定で3分間に設定される。試験は、煙/火花/炎の何らかの兆候がある場合に停止する。3分間が問題なく完了した場合、印刷された試料を除去し、変色又は熱がないか点検する。合格結果は、熱、変色、火花、煙、又は炎の証拠がないことである。
【0124】
M.運動耐水性/湿潤ナプキン試験
これは水に濡れたナプキン-定量的機械的摩擦転移試験である。インクを20# MGサンドイッチ包装ストックに塗布し、硬化させる(上記と同じ方法)。完全に水に濡れたナプキンを、2#Sutherlandスレッドを載せて4インチの印刷ストックにわたって横方向に引っ張る。3インチ×4インチのコピー用紙をスレッドと湿潤ナプキンとの間に配置し、試験中に全ての層を一緒に保持する。次いで、ナプキンを乾燥させる。X-rite939密度(主要寄与度V、C、M、Y)を、インクなしのバックグラウンド、及び最大インク転移面積について測定する。バックグラウンド密度をインク転移領域から減算し、インクのみの転移密度を決定する。業界標準で許容されるには、過去のインク転移密度値が0.050未満でなければならない。
【0125】
N.特定の製品耐性-調味料
この試験は、印刷インクの上から調味料を優しく拭き取り、ナプキンへのインクの転移を評価する。PEコーティングされた漂白ストックのPE側をインクで印刷する。試験は、上に列挙したPEコーティングされたストックの印刷/硬化したPE側を採用した。各調味料(ケチャップ、マスタード、マヨネーズ、植物油)を、直径1インチ(2.54cm)の円形に印刷されたストックのインク領域上に置く。15秒後、ナプキンを使用して調味料を除去する。ナプキンをインク転移について点検し、1~5のスケールで格付けする。1=目に見えるインク転移なし、2=ほぼ認識不可能なインクの転移、3=わずかなインクの転移、4=中程度のインクの転移、5=インクの過剰な転移。合格結果は、ナプキンにわずかなインク転移~全くインク転移なし(1~3の格付け)であることを示している。
【0126】
O.オーバープリントワニス(OPV)の使用-要件
いくつかの実施形態では、本発明の混合ビヒクルは、オーバープリントワニスを必要とする用途、又は追加の抵抗特性を必要とする用途のための100%BRCコーティングとして使用することができる。水又は機械的抵抗に対して堅牢でない用途の場合、本発明の混合ビヒクルは、200ライン7.0BCMハンドプルーファーを使用して、0.5#/reamを超える乾燥塗布重量で印刷領域に塗布される。次に、コーティングされた印刷領域を、必要な特性について再試験する。多くのインクの最終用途には、通常、オーバープリントワニスが必要とされるほど、非常に極端な抵抗要件がある。典型的にはオーバープリントワニスを利用するそのような用途の1つの例は、ファストフードパッケージング市場内の前もって印刷されたクラムシェル又はフライドポテトのスクープである。これらのパッケージは、印刷された色の上にOPVを有している。食品接触が起こる場合インク転移は許容されない。フライドポテトのスクープは、入れ子構造(長いチューブが次のチューブの中に入っている)で出荷され、インクの転移は許可されていない。
【0127】
コールドカップなどの他の用途では、多くの場合、最終使用及び加工要因に応じてOPV使用のオプションがある。
【0128】
P.鉛筆硬度法
ウェットプロスペクティブ(すなわち、試験される)組成物(必要に応じて、単一のポリマー、ビヒクル、又は仕上げインクであり得る)を、8インチの距離にわたって1.0ミルByrdアプリケーションを使用してガラスに塗布する。ポリマー表面を空気乾燥機で30秒間、又は触って完全に乾燥するまで乾燥させる。既知の鉛筆硬度を有する対照ポリマーを、ガラスの異なる領域に塗布してもよい(各帯にはラベルを付けるべきである)。ガラスは、(鉛筆からの)炭素転移が見落とされないように、試験中に白い紙又は表面の上に置かれる。4B鉛筆を快適に保持し、試験面の上部の1インチの領域にわたって前後に描く。30度の角度で最初のパッチに非常に軽い圧力をかけ、80度の角度で(同じ領域で)2番目のパッチに重い圧力をかけるが、鉛筆又はグラファイトの先端が壊れているほど重くはない。
【0129】
炭素転移が印刷面に転移されているかどうか、及び表面が変更又は破壊されているかどうかを評価する。ポリマーが鉛筆で粉砕されたときに違いを感じるかどうかを評価する。柔らかい鉛筆から硬い鉛筆に移動して、炭素を転移したり、印刷の表面を変更したりしない最初の鉛筆は、樹脂の表面硬度(4B、3B、2B、FB、F、HB、H、2H、3H、4H)である。使用する鉛筆が試験面よりも硬い場合、表面が粉砕したり、粉末化する可能性があり、あるいは、炭素は転移しないであろう。表面が粉砕又は粉末化する場合、これは綿密な点検で明らかになり、鉛筆には破壊的な振動として「感じる」ことができる。可撓性は表面硬度とは異なることを念頭に置いて頂きたい。粉砕された表面は、炭素転移を可能にし得る。この試験の履歴合格結果は、2H以上の硬度である。
【0130】
Q.皮膜形成法
この試験は、室温(約25℃)などの所望の温度においてポリマーが皮膜を形成するかどうかを決定するために用いられる。ポリマーをガラス表面に塗布し、乾燥させる。ガラス表面は、所望の温度に加熱される。一連の試験は、25℃、35℃などの異なる温度で行うことができる。カミソリ刃は、ガラス表面から乾燥したポリマーを除去するために使用される。ポリマーがシート状に離れる場合、ポリマーは、ガラスが加熱された温度で皮膜を形成している。ポリマーが粉末である場合、ポリマーは、その温度で皮膜を形成していない。合格結果は、前述の機械的利点を有する、室温での皮膜の形成である。
【0131】
結果
本発明の仕上げインクを、上に列挙した性能試験のいくつかで試験した。結果が以下の表B、C、及びDに示されている。
【0132】
【表16】
【0133】
【表17】
【0134】
「オーバープリント」が表Dに示されている場合、これは、仕上げインクが、オーバープリントワニスとして使用される実施例1の混合ビヒクルでオーバープリントされた後においてもまた試験されたことを意味する。
【0135】
【表18】
【0136】
性能データは、3つの100%BRCバイオ炭黒色インク全てが、列挙されている固有及び動的特性に対して良好に機能することを示している。固有の運動特性のいくつかにおいてそれ自体で最適ではないが、実施例6及び8は、オーバーラッカー(すなわち、オーバープリントワニス)を使用する用途に推奨され得る。オーバーラッカーを有する現在のファストフードパッケージング用途の例としては、折り畳みカートン、クラムシェル用の前もって印刷された段ボール、ディスプレイ材料(例えば、Happy Meals)、及びコールドカップが挙げられる。実施例7は、オーバープリントワニスが利用可能でない用途のための最良の100%BRCの推奨である。オーバープリントされていないファストフードの用途には、持ち帰り用袋、サンドイッチ包装、ピンチボトム袋、及び直接印刷されたクラムシェルが含まれる。
【0137】
本発明は、その好ましい実施形態を含めて詳細に説明されている。しかしながら、当業者は、本開示を考慮すると、本発明の範囲及び趣旨に含まれる本発明の修正及び/又は改善を行うことができることを理解されたい。