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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】高圧受電設備
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20241224BHJP
   H02J 9/00 20060101ALI20241224BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20241224BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20241224BHJP
   H02B 7/06 20060101ALI20241224BHJP
   H02B 3/00 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
H02J9/06 120
H02J9/00 120
H02J3/00 150
H02J7/34 G
H02B7/06
H02B3/00 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024509508
(86)(22)【出願日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2023039975
(87)【国際公開番号】W WO2024101333
(87)【国際公開日】2024-05-16
【審査請求日】2024-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2022180149
(32)【優先日】2022-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522440522
【氏名又は名称】近藤 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 克彦
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-108563(JP,A)
【文献】特開2021-004908(JP,A)
【文献】国際公開第2020/008985(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
H02J 9/00
H02J 3/00
H02J 7/00
H02J 7/34
H02B 7/06
H02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング筐体と、
前記ハウジング筐体内に設置され、受電する3,000V以上15,000V以下の所定の高圧交流電力を変換し、電力ラインを介して1,000V未満の交流電力をM本(M≧2)の幹線に出力するための電力変換用の電気機器と、
前記ハウジング筐体の外に置かれて交換可能な蓄電装置に接続する蓄電装置接続部と、
前記所定の高圧交流電力を電力源とする高圧受電モードから、前記蓄電装置接続部に接続された蓄電装置の蓄電電力を電力源とするバッテリーモードに切り替える制御を行うコントローラーと、
を備え、
前記電気機器は、
前記蓄電装置接続部に接続された蓄電装置の蓄電電力を電力源として交流電力に変換して前記電力ラインに出力する統合蓄電電力変換部と、
前記電力ラインに通流する交流電力を当該幹線用の低圧交流電力に変換する前記M本の幹線それぞれに対応するM個のインバーターと、
を含み、
前記コントローラーは、
前記統合蓄電電力変換部の動作を制御することと、
前記バッテリーモードにおいて、前記M本の幹線について予め設定された優先設定と、前記蓄電装置の蓄電電力量とに基づいて、前記M個のインバーターの変換動作を制御することと、
を行う、
高圧受電設備。
【請求項2】
前記優先設定は、出力制限を行う非常時設定を少なくとも含む、
請求項1に記載の高圧受電設備。
【請求項3】
前記非常時設定は、優先幹線と上限アンペア容量と確保時間とを含む、
請求項2に記載の高圧受電設備。
【請求項4】
前記非常時設定は、複数段階の出力制限を行う設定を含む、
請求項2又は3に記載の高圧受電設備。
【請求項5】
前記蓄電装置接続部は、交換可能な前記蓄電装置に個別に接続するN(N≧2)個の接続部を有し、
前記電気機器は、
前記N個の接続部に接続された各蓄電装置から出力される蓄電電力を所定の中間直流電力に変換する中間直流電力変換部、
を更に含み、
前記統合蓄電電力変換部は、前記中間直流電力変換部によって変換された前記所定の中間直流電力を交流電力に変換して前記電力ラインに出力し、
前記コントローラーは、前記中間直流電力変換部および前記統合蓄電電力変換部の動作を制御する、
請求項1からの何れか一項に記載の高圧受電設備。
【請求項6】
前記コントローラーは、前記バッテリーモードにおいて、前記優先設定を用いて前記中間直流電力変換部を制御することで、前記N個の接続部に接続された蓄電装置のうち、蓄電電力を優先的に消費させる蓄電装置を可変に選択する制御を行う、
請求項5に記載の高圧受電設備。
【請求項7】
報知装置、
を更に備え、
前記コントローラーは、蓄電電力を優先的に消費させる蓄電装置に関する交換タイミングを前記報知装置から報知させる制御を行う、
請求項6に記載の高圧受電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧受電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
送電系統から高圧交流電力を受電し、低圧交流電力に変換して出力するための電力変換用の各種の電気機器がキュービクルと呼ばれるハウジング筐体内に収められた高圧受電設備が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような高圧受電設備は日本ではキュービクル式高圧受電設備と呼ばれているが、同じような設備に関して、外国では、英語名称として例えば、pad-mounted transformerと呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-103623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したハウジング筐体を備える高圧受電設備は、永続的に送電系統から高圧交流電力が供給されることを前提とした設備であった。そのため、送電系統の停電によって高圧交流電力の受電が断たれた場合には電力を出力することができなかった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、停電時においても電力出力を可能にする、ハウジング筐体を備える高圧受電設備の技術を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、ハウジング筐体と、前記ハウジング筐体内に設置され、受電する3,000V以上15,000V以下の所定の高圧交流電力を変換し、電力ラインを介して1,000V未満の交流電力をM本(M≧2)の幹線に出力するための電力変換用の電気機器と、前記ハウジング筐体の外に置かれて交換可能な蓄電装置に接続する蓄電装置接続部と、前記所定の高圧交流電力を電力源とする高圧受電モードから、前記蓄電装置接続部に接続された蓄電装置の蓄電電力を電力源とするバッテリーモードに切り替える制御を行うコントローラーと、を備え、前記電気機器は、前記蓄電装置接続部に接続された蓄電装置の蓄電電力を電力源として交流電力に変換して前記電力ラインに出力する統合蓄電電力変換部と、前記電力ラインに通流する交流電力を当該幹線用の低圧交流電力に変換する前記M本の幹線それぞれに対応するM個のインバーターと、を含み、前記コントローラーは、前記統合蓄電電力変換部の動作を制御することと、前記バッテリーモードにおいて、前記M本の幹線について予め設定された優先設定と、前記蓄電装置の蓄電電力量とに基づいて、前記M個のインバーターの変換動作を制御することと、を行う、高圧受電設備である。
【0007】
第1の発明の高圧受電設備は、交換可能な蓄電装置に個別に接続する蓄電装置接続部を備えている。停電時には、蓄電装置接続部に接続された蓄電装置の蓄電電力を電力源とするバッテリーモードに切り替えて、蓄電装置接続部に接続された蓄電装置から出力される蓄電電力を所定の交流電力に変換し、当該交流電力をM本の幹線別のインバーターでそれぞれの低圧交流電力に変換して出力する。その際、M本の幹線について予め設定された優先設定と、蓄電装置の蓄電電力量とに基づいて、幹線別のインバーターの変換動作を制御する。
【0008】
よって、第1の発明の高圧受電設備は、蓄電装置を適切に交換することで停電時においても持続的な電力出力が可能となる。加えて、幹線別のインバーターの変換動作を、蓄電装置の蓄電電力量と、各幹線の優先設定とに基づいて制御できるので、蓄電装置の蓄電電力量と各幹線の優先度とに応じた様々な出力電力に係る調整が可能となる。停電時の状況(例えば各幹線の電力需要状況や蓄電装置の蓄電状況)に柔軟に対応した持続的な電力出力が可能となる。
【0009】
第2の発明は、上記の高圧受電設備において、前記優先設定は、出力制限を行う非常時設定を少なくとも含む、高圧受電設備である。
【0010】
「非常時」とは、高圧交流電力ラインからの受電が断たれた「停電時」である。
第2の発明によれば、電力出力を制限することで、残されている蓄電電力を幹線の優先度に応じて優先配分できる。例えば、蓄電装置の交換が遅れるような状況が発生した場合には、優先度の低い幹線への電力出力を制限し、優先度の高い幹線への電力出力を維持するといった制御ができるようになる。
【0011】
第3の発明は、上記の高圧受電設備において、非常時設定は、優先幹線と上限アンペア容量と確保時間とを含む、高圧受電設備である。
【0012】
第3の発明によれば、優先幹線への電力出力を確保するような設定を実現できる。
例えば、上限アンペア容量や確保時間を、優先幹線以外の非優先幹線についての設定とするならば、非優先幹線へ出力する電力の上限アンペア容量や確保時間を制限することで、制限した分の電力出力を優先幹線に差し向けることができる。また例えば、上限アンペア容量や確保時間を優先幹線についての設定として、優先幹線について上限アンペア容量での確保時間分の電力出力を賄うことができるように電力出力を制限する制御を行うことが可能となる。
【0013】
第4の発明は、上記の高圧受電設備において、非常時設定は、複数段階の出力制限を行う設定を含む、高圧受電設備である。
【0014】
第4の発明によれば、非常時の設定を多段階に設定することで、非常時の状況に応じた適切な出力制限を実現できる。
【0015】
第5の発明は、上記の高圧受電設備において、蓄電装置接続部は、交換可能な前記蓄電装置に個別に接続するN(N≧2)個の接続部を有し、前記電気機器は、前記N個の接続部に接続された各蓄電装置から出力される蓄電電力を所定の中間直流電力に変換する中間直流電力変換部、を更に含み、前記統合蓄電電力変換部は、前記中間直流電力変換部によって変換された前記所定の中間直流電力を交流電力に変換して前記電力ラインに出力し、前記コントローラーは、前記中間直流電力変換部および前記統合蓄電電力変換部の動作を制御する、高圧受電設備である。
【0016】
第5の発明によれば、受電した高圧を出力する低圧に直接変換する構成に比べて、電力需給の変化に速やかに対応可能となり、電力変換制御の容易化・効率化を図ることができる。
【0017】
第6の発明は、上記の高圧受電設備において、前記コントローラーは、前記バッテリーモードにおいて、前記優先設定を用いて前記中間直流電力変換部を制御することで、前記N個の接続部に接続された蓄電装置のうち、蓄電電力を優先的に消費させる蓄電装置を可変に選択する制御を行う、高圧受電設備である。
【0018】
第6の発明によれば、蓄電電力を優先的に消費させる蓄電装置を可変に選択することで、蓄電装置の消費配分を変化させることができる。例えば、接続された各蓄電装置が一斉に電池切れを起こす電池切れの集中を抑制することができる。高圧受電設備からの電力出力を継続しつつ、蓄電装置を順次交換する時間を確保することができるため、バッテリーモードでの安定的かつ継続的な電力供給の運用を実現できる。
【0019】
第7の発明は、上記の高圧受電設備において、報知装置、を更に備え、前記コントローラーは、蓄電電力を優先的に消費させる蓄電装置に関する交換タイミングを前記報知装置から報知させる制御を行う、高圧受電設備である。
【0020】
第7の発明によれば、蓄電装置の交換タイミングを報知して、蓄電装置の交換作業を計画するための支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】キュービクル式高圧受電設備に係るシステム構成例を示す概念図。
図2】キュービクル式高圧受電設備の概略構成例を示す図。
図3】記憶装置に記憶されるプログラムやデータの例を示す図。
図4】リファレンスデータのデータ構成例を示す図。
図5】諸量データのデータ構成例を示す図。
図6】優先設定データのデータ構成例を示す図。
図7】キュービクル式高圧受電設備の動作の流れを説明するためのフローチャート。
図8】バッテリーモード処理の流れを説明するためのフローチャート。
図9図8より続くフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用した実施形態の一例を説明するが、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限られないことは勿論である。また、ハウジング筐体を備える高圧受電設備を、日本での呼称である「キュービクル式高圧受電設備」と称して説明する。「キュービクル式高圧受電設備」は、英語名称の1つである「pad-mounted transformer」と言い換えることができる。
【0023】
図1は、キュービクル式高圧受電設備10に係るシステム構成例を示す概念図である。
キュービクル式高圧受電設備10は、例えば、戸建て住宅・集合住宅・商業施設・ビル・工場・駅・学校・病院などの小中規模施設向けの閉鎖型小型変電設備である。英語名称としては、例えば、pad-mounted transformerと呼ばれる設備である。キュービクル式高圧受電設備10は、3,000V以上15,000V以下の所定の高圧交流電力(図1の例では、6.6kV)を受電し、受電する高圧交流電力よりも低圧の交流電力に変換することで電力ラインを介して1,000V未満の所定の低圧交流電力(図1の一例では100V)を出力するための電力変換用の電気機器が金属製のハウジング筐体内に設置された設備である。所定の高圧交流電力は、6.6kVの他、3kVや10kV等でもよい。所定の低圧交流電力は、100Vの他、200Vや400V等でもよい。
【0024】
キュービクル式高圧受電設備10が受電する高圧交流電力は、一般的に、電力送電網等の送電系統から供給される。送電系統が停電して高圧交流電力の受電が断たれた場合に備えて、キュービクル式高圧受電設備10は、非常用電源として、交換可能な複数(N個:Nは「2」以上)の蓄電装置5(5a,5b,…)が外部接続可能になっている。蓄電装置5は、キュービクル式高圧受電設備10のハウジング筐体外に設置されて個別に電気的に接続される。キュービクル式高圧受電設備10の規模によっては、蓄電装置5の一部又は全部をハウジング筐体内に収容する構成であってもよい。
【0025】
蓄電装置5は、充放電可能な2次電池であって、例えば、鉛蓄電池、リチウムイオン蓄電池、リチウムポリマー電池、全固体電池、ニッケル・水素電池、ニッケル・カドミウム電池、ナトリウム硫黄電池(NAS電池)、レドックスフロー電池、などを用いることができる。勿論、これら以外の種類の2次電池であってもよい。
【0026】
蓄電装置5には、物性上の原理に基づく上記のような電池種類の他に、同じ電池種類であっても大電流短時間出力型/小電流長時間出力型、大容量/小容量、といった具合に用途に応じた仕様違い(タイプ違い)も存在する。
【0027】
図2は、キュービクル式高圧受電設備10における電力変換に係る概略構成例を示す図である。キュービクル式高圧受電設備10は、従来のキュービクル式高圧受電設備と同様、多くの開閉装置や、ヒューズ、高圧進相コンデンサーなどの機器を備えるが、本明細書および図面においては、本実施形態の理解を容易にするために、従来同様の機器構成については図示および説明を省略する。
【0028】
キュービクル式高圧受電設備10は、鉄製のハウジング筐体12の中に、電力変換用電気機器14を内蔵する。そして、キュービクル式高圧受電設備10は、コントローラー90を備える。コントローラー90は、高圧交流電力の受電が停止した場合に、動作モードを、高圧交流電力を電力源とする「高圧受電モード」から、外部接続された各蓄電装置5の蓄電電力を電力源とする「バッテリーモード」へ切り替えるように電力変換用電気機器14を制御する電子機器である。
【0029】
電力変換用電気機器14は、例えば、開閉装置18と、1次電圧計20と、1次AC/ACインバーター22と、2次AC/ACインバーター26(26a,26b,…)と、2次電圧計30と、2次電流計32と、を含む。
【0030】
開閉装置18は、送電系統からの高圧交流電力の受電路を開閉する装置であり、断路器や遮断器を用いて構成される。
【0031】
1次電圧計20は、受電した高圧交流電力の電圧を計測して、計測値をコントローラー90へ出力する。計測値は、受電している高圧交流電力の停電をコントローラー90が検知するために用いられる。
【0032】
1次AC/ACインバーター22は、高圧交流電力を降圧して中間交流電力ライン24へ出力する。
【0033】
中間交流電力ライン24は、M本(Mは「2」以上)に分岐する。分岐先は、M個の2次AC/ACインバーター26(26a,26b,…)にそれぞれが接続されてM本の低圧交流電力ライン28(28a,28b,…)に電力出願がなされる。各低圧交流電力ライン28には、2次電圧計30と、2次電流計32と、が設けられている。
【0034】
2次AC/ACインバーター26は、中間交流電力ライン24に通流する交流電力を、低圧交流電力ライン28別の所定の低圧の交流電力に降圧して出力する。2次AC/ACインバーター26の変圧動作は、コントローラー90によって制御される。コントローラー90による2次AC/ACインバーター26の動作制御によって、低圧交流電力ライン28へ電力を出力するか否かのON/OFF制御も行われる。
【0035】
2次電圧計30および2次電流計32は、それぞれ対応する低圧交流電力ライン28の電圧および電流を計測して、計測値をコントローラー90へ出力する。これらの計測値は、後述するキュービクル式高圧受電設備10の給電先(以下、単に「給電先」と言う。)における幹線別電力需要のデータを求めるために使用される。
【0036】
また、キュービクル式高圧受電設備10は、N個(Nは「2」以上)の個別機器群50(50a,50b,…)を有する。N個の個別機器群50は中間直流ライン60に並列接続され、中間直流ライン60はAC/DCインバーター62を介して中間交流電力ライン24と接続されている。
【0037】
1つの個別機器群50は、蓄電装置5を個別に電気的に接続するための蓄電装置接続部51と、蓄電装置5の出力電圧を計測する蓄電装置電圧計53と、蓄電装置5のBMS(Battery Management System)6と通信する通信器55と、診断装置57と、蓄電装置5の表面に着脱されて蓄電装置5の温度を測定する温度計58と、DC/DCコンバーター59と、を含む。なお、温度計58は蓄電装置5に設備されるものとしてもよい。
【0038】
蓄電装置接続部51は、蓄電装置5の規格に応じたソケットやケーブルなどで構成される。1つの蓄電装置接続部51には、1つの蓄電装置5が接続される。
【0039】
蓄電装置電圧計53は、蓄電装置5の出力電圧を計測して、計測値をコントローラー90へ出力する。
【0040】
通信器55は、蓄電装置接続部51に接続されている蓄電装置5に係る諸量を取得する第1の諸量取得部である。通信器55は、BMS6と有線あるいは無線による通信によって、蓄電装置5の諸量(例えば、蓄電容量、時間率容量、充電回数、SoC(State of Charge:残容量)、SoH(State of Health:健全度)、放電特性データ、など)や製造情報(例えば、メーカー名、型式)を含む各種情報を取得し、コントローラー90へ出力する。BMS6と有線接続する場合は、蓄電装置接続部51のソケットおよびケーブルを通信路として用いるとしてもよいし、別途、通信用のケーブルを用意して、BMS6側の通信端子に接続するとしてもよい。
【0041】
診断装置57は、蓄電装置接続部51に接続された蓄電装置5の諸量を取得する第2の諸量取得部である。診断装置57は、通信器55による蓄電装置5の諸量の取得ができない場合に、バックアップとして機能し、SoC、SoH、放電特性、などの諸量を取得して、コントローラー90へ出力する。従って、通信器55および診断装置57によって、確実に蓄電装置5の諸量を取得することができる。
【0042】
診断装置57は、諸量を計測するための計測器(例えば、電圧計、電流計など)と、計測値から諸量を推定或いは診断する演算処理の一部又は全部を担うICチップ等(例えば、バッテリー診断ICなど)とを備える。勿論、当該演算処理の一部又は全部をコントローラー90にて担うとしてもよい。診断装置57は、例えば、鉛蓄電池やリチウムイオン蓄電池などの複数種類の電池種類に対応するバッテリーチェッカーの回路で実現できる。診断装置57がSoHを得るために用いる診断処理方法や推定方法は、適宜、公知技術を利用可能である(例えば、インピーダンス方式など)。利用する診断処理方法や推定方法に応じて、診断装置57は高周波発生器などを含むとしてもよい。
【0043】
温度計58は、蓄電装置5に貼り付ける形態の温度計であり、計測した温度の値をコントローラー90へ出力する。
【0044】
DC/DCコンバーター59は、双方向に昇降圧が可能なDC/DCコンバーターによって構成され、コントローラー90からの指示信号に基づいて、通流方向および電力変換動作が制御される。
【0045】
高圧受電モードにおいては、DC/DCコンバーター59は、蓄電装置接続部51に接続された蓄電装置5に適合する浮動充電をさせるように通流方向を変更し、中間直流電力を当該蓄電装置5の充電用電圧へ変換するように動作制御される。バッテリーモードにおいては、DC/DCコンバーター59は、蓄電装置接続部51に接続された蓄電装置5から出力される蓄電電力を所定の中間直流電力に変換して中間直流ライン60へ出力する中間直流電力変換部として機能するように動作制御される。
【0046】
AC/DCインバーター62は、双方向AC/DCインバーターであり、コントローラー90からの指示信号に基づいて、通流方向および電力変換動作が制御される。
【0047】
高圧受電モードにおいては、AC/DCインバーター62は、蓄電装置5の浮動充電のために、中間交流電力ライン24の交流を直流に変換して中間直流ライン60へ出力する変換部として機能するように動作制御される。
【0048】
バッテリーモードにおいては、AC/DCインバーター62は、蓄電装置接続部51に接続された蓄電装置5の蓄電電力を電力源として交流電力に変換して中間交流電力ライン24に出力する統合蓄電電力変換部として機能するように動作制御される。
【0049】
コントローラー90は、制御論理や制御シーケンスとも呼ばれる所定のプログラムに従った演算処理を実行することで各種機能を実現する一種のコンピューターである。コントローラー90には、画像表示手段であるモニタ92と、キーボードやタッチパネル、バーコードリーダ、マウスなどで実現される入力装置94と、ICメモリやハードディスクなどで実現される記憶装置96と、給電先である施設への放送信号を生成・送信する放送設備98と、が接続される。モニタ92、入力装置94および記憶装置96のうちの一部又は全部を、コントローラー90が備える構成とすることとしてもよい。
【0050】
図3は、記憶装置96に記憶されるプログラムやデータの例を示す図である。
記憶装置96は、制御プログラム100と、キュービクル式高圧受電設備10の現在の動作モードを示す現在モード102と、現在日時106と、停電開始時刻108と、リファレンスデータ110と、蓄電装置タイプ判定基準データ150と、幹線別給電停止予告音声データ160と、諸量データ220と、幹線別電力需要データ230と、優先設定データ240と、適用非常時設定ID280と、消費設定データ290と、蓄電装置交換履歴データ310と、を記憶する。勿論、これら以外のデータも適宜記憶させることができる。
【0051】
制御プログラム100は、コントローラー90が読み込んで演算処理することで、キュービクル式高圧受電設備10の動作を統合的に制御する各種機能を実現する。
【0052】
当該プログラムにより実現される機能として、例えば、
(1)1次電圧計20の電圧値を監視して高圧交流電力ラインの停電を検知し、動作モードを「高圧受電モード」から「バッテリーモード」に切り替える機能、
(2)バッテリーモードにおいて、DC/DCコンバーター59(中間直流電力変換部)の動作を制御して、蓄電装置接続部51に接続された蓄電装置5の蓄電電力を、所定の中間直流電力に変換して中間直流ライン60へ出力させる機能、AC/DCインバーター62の動作を制御して、中間直流ライン60の中間直流電力を、所定の交流電力に変換して中間交流電力ライン24に出力する機能、
(3)バッテリーモードにおいて、M本の幹線(低圧交流電力ライン28)について予め設定された優先設定と、蓄電装置5の蓄電電力量とに基づいて、M本の幹線別のM個のインバーター(2次AC/ACインバーター26)の変換動作を制御する機能、
(4)バッテリーモードにおいて、優先設定を用いてDC/DCコンバーター59(中間直流電力変換部)の動作を制御することで、N個の蓄電装置接続部51に接続された蓄電装置5のうち、蓄電電力を優先的に消費させる蓄電装置を可変に選択する機能、
(5)モニタ92を報知装置として用いて、蓄電電力を優先的に消費させる蓄電装置5に関する交換タイミングを報知する機能、
(6)高圧受電モードにおいて、蓄電装置接続部51に接続された蓄電装置5それぞれに適合する浮動充電をさせるようにDC/DCコンバーター59およびAC/DCインバーター62を制御する機能、
(7)高圧受電モードにおいて、2次電圧計30で計測された電圧および2次電流計32で計測された電流値を継続的に監視・記録して、キュービクル式高圧受電設備10から出力した電力量の幹線毎の時間帯別電力需要を算出する機能、
が含まれる。
【0053】
コントローラー90と診断装置57との機能分担によっては、更に、(8)蓄電装置接続部51に接続された蓄電装置5それぞれの諸量を診断する所定の診断処理の一部又は全部を実行する機能、が含まれるとしてもよい。
【0054】
現在日時106は、コントローラー90のシステムクロックなどを用いて計時される。その他、コントローラー90がインターネットに接続する機能を有する場合は、所定のウェブサイトからキュービクル式高圧受電設備10の設置場所の標準時を取得するとしてもよいし、コントローラー90が電波時計を内蔵して標準時を取得するとしてもよい。
【0055】
リファレンスデータ110は、使用が想定される蓄電装置5の種類別に予め用意されたデータ群であって、蓄電装置5の各種特性や各種諸量の推定や診断に用いられる。
【0056】
図4は、リファレンスデータ110のデータ構成例を示す図である。
1つのリファレンスデータ110は、仕様や定格のデータを含んでおり、例えば、電池規格と、メーカー名と、型式と、蓄電容量と、時間率容量と、出力電圧値と、出力上限電流値と、充電パターンデータと、放電特性データと、温度特性データと、サイクル特性データと、を含む。リファレンスデータ110に含まれる各種データは、蓄電装置5をバッテリーモードで使用したときの持続時間を予測するのに用いられる。なお、必ずしも上記全ての種類のデータをリファレンスデータ110に含めなければならい訳では無い。
【0057】
リファレンスデータ110をコントローラー90が参照することで、蓄電装置接続部51に接続された蓄電装置5の諸量を取得・推定することが容易乃至可能となる。そのため、コントローラー90およびリファレンスデータ110をもって第3の諸量取得部として機能する、とも言える。
【0058】
図3に戻って、蓄電装置タイプ判定基準データ150は、リファレンスデータ110および蓄電装置5の諸量データ220から、蓄電装置接続部51に接続された蓄電装置5のタイプ(例えば、大電流短時間出力型/小電流長時間出力型、大容量/小容量、の組み合わせなど)を判定するためのデータである。
【0059】
幹線別給電停止予告音声データ160は、キュービクル式高圧受電設備10の取扱責任者やキュービクル式高圧受電設備10からの給電先の利用者へ、事前に停電することを報せるための音声データである。
【0060】
図5は、諸量データ220のデータ構成例を示す図である。
諸量データ220は、蓄電装置接続部51に接続された蓄電装置5別に作成され、当該蓄電装置5に係る諸量を含む各種情報が格納される。諸量データ220は、例えば、当該蓄電装置5が接続している蓄電装置接続部51の接続部IDと、当該蓄電装置5のメーカー名と、型式と、蓄電装置タイプ判定基準データ150(図3参照)に基づき判定されたタイプと、蓄電容量と、出力電圧と、SoCと、SoHと、負荷時の放電特性データと、を含む。勿論、これら以外のデータも適宜含めることができる。
【0061】
負荷時の放電特性データは、バッテリーモードにおいて、診断装置57に内蔵される電圧計や電流計で計測される電圧値・電流値に基づいて算定される。蓄電装置5のタイプによっては、負荷時の放電特性データを、リファレンスデータ110の無負荷時の放電特性データと比較することで、SoCの算出や予測持続時間の推定に用いることができる。
【0062】
図3に戻って、幹線別電力需要データ230は、キュービクル式高圧受電設備10の電力供給先の幹線別に用意され、当該幹線における電力需要の履歴および統計を示す各種データを格納する。例えば、幹線ID232と、過去所定時間分(例えば、過去24時間分)の電力需要履歴データ234と、時間帯別電力需要統計データ236と、を含む。時間帯別電力需要統計データ236は、季節を考慮して月別に用意してもよい。これらのデータは、高圧受電モードにおいて、2次電圧計30で計測された電圧値、2次電流計32で計測された電流値から逐次求められて更新される。
【0063】
優先設定データ240は、停電発生などの非常時において各幹線への電力出力を制御するための各種データであって、様々に起こり得る多様な非常時の状況に対応してどのようにキュービクル式高圧受電設備10の給電先へ給電するかを定めている。
【0064】
図6は、優先設定データ240のデータ構成例を示す図である。
優先設定データ240は、優先幹線リスト241と、1つ又は複数の非常時設定データ242と、を含む。
【0065】
優先幹線リスト241は、M本の低圧交流電力ライン28(幹線)のうち、「優先幹線」とする幹線IDのリストであって、どの電力ラインへの電力供給を優先するかを指定する。2次AC/ACインバーター26の識別情報のリストや、2次AC/ACインバーター26への指令信号の出力端子の識別情報のリスト、であってもよい。
【0066】
非常時設定データ242は、高圧交流電力ラインからの受電が断たれたときの想定される状況別に用意されている。1つの非常時設定データ242は、非常時設定ID243と、状況条件244と、非優先幹線別出力制限設定246と、非優先幹線別確保時間設定247と、優先消費設定データ250と、を含む。勿論、これら以外のデータも適宜含めることができる。
【0067】
状況条件244は、非常時の状況を記述する各種データを含む。例えば、状況条件244は、1つ又は複数のサブ条件をANDやORで組み合わせて記述する。サブ条件としては、例えば、優先幹線電力需要条件244aと、総合蓄電電力量条件244bと、交換実績条件244cと、停電連続時間条件244dと、を用いるとしてもよい。勿論、これら以外のサブ条件を用いてもよいし、これらのうちの1つ又は複数を省略してもよい。
【0068】
優先幹線電力需要条件244aは、幹線別電力需要データ230に基づいて、仮に今すぐに停電が発生したと仮定して予測される、今後の優先幹線の電力需要についての条件である。例えば、現在日時106を開始時刻として、今後10分毎の優先幹線の電力需要量(例えば、kWh)の閾値や範囲として記述することができる。
【0069】
総合蓄電電力量条件244bは、蓄電装置接続部51に接続された蓄電装置5の蓄電電力量の残量についての条件である。
【0070】
交換実績条件244cは、停電発生以降の蓄電装置5の交換実績についての条件である。例えば、後述する交換の遅延時間の範囲、タイプ別の交換の有無、などで記述することができる。
【0071】
停電連続時間条件244dは、停電開始時刻108からの経過時間についての条件である。停電の深刻さを判定するための条件とも言える。
【0072】
非優先幹線別出力制限設定246と非優先幹線別確保時間設定247とは、優先幹線ではない他の幹線(非優先幹線)別に用意され、非常時において、状況条件244を満たす状況になった場合に非優先幹線への電力出力をどのように制限するかを指定する。非優先幹線別出力制限設定246は、通常時よりも低い上限アンペア容量を指定し、非優先幹線別確保時間設定247は、電力供給を停止するまでの時間である制限時間を指定する。
【0073】
状況条件244を多様に用意し、それに対応する非優先幹線別出力制限設定246と非優先幹線別確保時間設定247とを設定することで、停電時に電力供給先へどのように電力を供給し続けるかを設定できる。
【0074】
例えば、総合蓄電電力量が比較的潤沢な状況では、優先幹線・非優先幹線の区別無く通常時と同様に電力を供給するが、総合蓄電電力量が減ってきたら非優先幹線への出力制限を開始するとしてもよい。その出力制限の度合も、蓄電装置5の交換遅延が発生している状況や、停電連続時間が長時間におよび停電復旧まで長くかかりそうな状況では、出力制限を更に厳しくする、としてもよい。全体として、例えば、状況条件244がより厳しくなるほど、非優先幹線別出力制限設定246で設定する制限を厳しくし、非優先幹線別確保時間設定247で設定する時間長を短くする、ように多段階に設定することができる。
【0075】
優先消費設定データ250は、停電時に(バッテリーモードにおいて)、蓄電装置接続部51に接続された蓄電装置5のうち、どのタイプ(例えば、大電流短時間出力型か小電流長時間出力型かの用途別、大容量か小容量かの容量別、の組み合わせ)の蓄電装置5を優先的に電力源として使用するか(蓄電電力を消費するか)の優先順位を指定するデータである。
【0076】
優先消費設定データ250は、1つ又は複数用意され、それぞれが蓄電装置接続部51に接続された蓄電装置5のタイプ構成別に蓄電装置タイプ構成条件252と、タイプ別優先消費順位リスト254と、を含む。
【0077】
例えば、状況条件244が「電力需要の日中ピーク値を含む時間帯で電力需要が急速に増加する状況」を示し、且つ蓄電装置タイプ構成条件252が「大電流短時間出力型の蓄電装置5と小電流長時間出力型の蓄電装置5とが接続されている」ことを示す場合が考えられる。この場合、タイプ別優先消費順位リスト254は、電力需要の急激な増加に途切れなく大電流を供給できるように「大電流短時間出力型」の蓄電装置5の優先消費順位を高く、「小電流長時間出力型」の蓄電装置5の優先消費順位を低くするような順位リストが考えられる。
【0078】
また他の例として、状況条件244が「夜間で電力需要が低い状況」を示し、且つ蓄電装置タイプ構成条件252が「大電流短時間出力型の蓄電装置5と小電流長時間出力型の蓄電装置5とが接続されている」ことを示す場合が考えられる。この場合、タイプ別優先消費順位リスト254は、「大電流短時間出力型」の蓄電装置5の優先消費順位を低く、「小電流長時間出力型」の蓄電装置5の優先消費順位を高くするような順位リストが考えられる。
【0079】
図3に戻って、適用非常時設定ID280は、仮に現在日時106において停電が発生したと仮定して、優先設定データ240のうちどの非常時設定データ242を選択・適用するかを、コントローラー90が事前判定した結果を示す。
【0080】
消費設定データ290は、「消費蓄電装置」すなわち仮にバッテリーモードにおける電力源として使用される蓄電装置5毎に用意され、消費蓄電装置接続部ID291と、当該消費蓄電の予測持続時間293と、を対応付けて格納する。消費蓄電装置接続部ID291は、消費蓄電装置とされる蓄電装置5が接続されている蓄電装置接続部51の接続部IDである。
【0081】
「消費蓄電装置」は、停電が発生する前の高圧受電モード中に設定され、その時々の状況に応じて更新される。具体的には、高圧受電モード中に設定される「消費蓄電装置」は、適用非常時設定ID280の非常時設定データ242の優先消費設定データ250のうち、現状に適合する蓄電装置タイプ構成条件252のタイプ別優先消費順位リスト254を参照して(図6参照)、現状において接続されている蓄電装置5の中から、優先消費順位の上位から順に「停電発生直後に想定される電力需要」を賄える蓄電装置5が選択される。
【0082】
「停電発生直後に想定される電力需要」は、停電が発生したと仮定した場合の、停電発生後から所定時間内の電力需要である。例えば、幹線別電力需要データ230(図3参照)を参照して、現在日時106から所定時間内(例えば、30分、1時間など)における全ての幹線の電力需要の合算に所定の安全率を乗じた値を求めた値とする。更に、当該値から、適用非常時設定ID280が示す非常時設定データ242の非優先幹線別出力制限設定246および非優先幹線別確保時間設定247を適用したことで削減される電力需要を差し引いた値としてもよい。
【0083】
なお、安全率は、所定の固定値としてもよいし、電力需要履歴データ234で示される過去所定時間内の電力需要が、時間帯別電力需要統計データ236で示される過去所定時間内の電力需要に対する比率に基づいて決定することとしてもよい。つまり、過去24時間電力需要が統計データよりも大きいならば、その比率に応じてより高い安全率を算定し適用するとしてもよい。
【0084】
予測持続時間293は、「消費蓄電装置」とされた蓄電装置5で「停電発生直後に想定される電力需要」を賄うと仮定して推定される電池切れまでの持続時間であって、例えば、SoCが所定の下限値に達するまでに要する時間として求められる。
【0085】
蓄電装置交換履歴データ310は、バッテリーモードへの動作モードの切り替え時と、電池切れとなった蓄電装置5の切り替え時と、に蓄電装置5別に作成される。
【0086】
1つの蓄電装置交換履歴データ310は、「消費蓄電装置」とされる蓄電装置5の蓄電装置接続部ID311と、交換予測日時313と、交換日時315と、交換遅延時間317と、を含む。交換予測日時313は、停電開始時刻108から当該消費蓄電装置とされる蓄電装置5の予測持続時間293が経過する時点の日時である。交換遅延時間317は、交換予測日時313に達した後に、蓄電装置5が実際に交換されるまでに経過した時間である。蓄電装置5が実際に交換された日時は、交換日時315に設定される。もしも交換予測日時313に達するよりも早く蓄電装置5が交換された場合には、交換遅延時間317はゼロとして更新・設定される。
【0087】
図7は、キュービクル式高圧受電設備10の動作の流れを説明するためのフローチャートである。
キュービクル式高圧受電設備10は、通常、高圧受電モードで作動していて(ステップS2)、コントローラー90は、2次電圧計30および2次電流計32の計測値に基づいて、幹線別電力需要データ230(図3参照)を更新・保存する制御を継続している(ステップS4)。
【0088】
キュービクル式高圧受電設備10への蓄電装置5の初回接続、又は、蓄電装置5の交換接続がなされると、コントローラー90は蓄電装置電圧計53の計測値からこれを検知する(ステップS10のYES)。そして、コントローラー90は、モニタ92で所定の入力設定画面を表示して、接続された蓄電装置5のメーカー名、型式などの情報の入力を作業員に促し、入力された情報を諸量データ220(図5参照)として保存する(ステップS12)。
【0089】
次いで、コントローラー90は、当該接続された蓄電装置5のBMS6と通信して、SoCやSoH等の諸量を取得し、蓄電装置タイプ判定基準データ150(図3参照)を参照してタイプの判定を行う(ステップS14)。なお、BMS6と通信できない場合、或いは諸量に不足がある場合は、診断装置57の診断によって諸量データ220を取得したり、適合するリファレンスデータ110(図4参照)を参照して諸量データ220を補充する。
【0090】
そして、コントローラー90は、接続された蓄電装置5への浮動充電を開始させる(ステップS16)。すなわち、接続された蓄電装置5に対応するリファレンスデータ110(図4参照)から充電パターンデータを参照し、当該充電パターンを再現するように、接続が検知された蓄電装置接続部51へ繋がるDC/DCコンバーター59を個別に制御する。
【0091】
次に、コントローラー90は、所定の非常時設定の判定実行条件が満たされたかを判定する(ステップS20)。当該判定実行条件は、例えば、所定周期(5分毎、10分毎、1時間毎など)であったり、蓄電装置5の交換実施毎であったり、これらの1つ又は複数のタイミングを条件とすることができる。
【0092】
そして、当該判定実行条件が満たされたならば(ステップS20のYES)、コントローラー90は、現時点で停電が発生したと仮定した場合に、優先設定データ240の非常時設定データ242の中から、現状が適合する状況条件244の非常時設定データ242を選択して、適用非常時設定ID280(図3参照)を設定する(ステップS22)。
【0093】
次いで、コントローラー90は、「消費蓄電装置」とする蓄電装置5を設定して、それぞれの予測持続時間293を予測計算する(ステップS24)。
具体的には、コントローラー90は、「停電発生直後に想定される電力需要」を求める。そして、適用非常時設定ID280の示す非常時設定データ242の適合する優先消費設定データ250のタイプ別優先消費順位リスト254に従って蓄電装置5をソートし、優先消費順位の上位から順に蓄電装置5を「消費蓄電装置」とする。「消費蓄電装置」とする蓄電装置5の蓄電容量の合算値を求め、合算値が「停電発生直後に想定される電力需要」に達するまで、ソート順に「消費蓄電装置」とする蓄電装置5を増やしてゆく、としてもよい。
【0094】
次に、コントローラー90は、1次電圧計20の計測値が「0」又は「0」に近い停電相当の値になったならば、高圧交流電力ラインからの受電が停止した、すなわち「停電」と判断して(ステップS50のYES)、コントローラー90はバッテリーモード処理を実行する(ステップS52)。
【0095】
図8から図9は、バッテリーモード処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図8に示すように、バッテリーモード処理において、コントローラー90は、先ず停電開始時刻108を記録し(ステップS62)、動作モードを「バッテリーモード」へ切り替える(ステップS64)。
【0096】
具体的には、コントローラー90は、「消費蓄電装置」とされる蓄電装置5に対応するDC/DCコンバーター59については、当該蓄電装置5の直流電力を中間直流ライン60の所定直流電圧に変換して出力させるように通電方向および電力変換動作を指示・制御する。「消費蓄電装置」とされていない蓄電装置5に対応するDC/DCコンバーター59については、動作を停止させて中間直流ライン60との接続をOFFにする。
【0097】
そして、コントローラー90は、蓄電装置交換履歴データ310を作成してその管理を開始する(ステップS66)。この時、「消費蓄電装置」とされている蓄電装置5毎に、交換予測日時313が決定される。
【0098】
次いで、コントローラー90は、消費中の蓄電装置5の交換予測日時313の報知制御を開始する(ステップS68)。具体的には、例えば、未交換の蓄電装置5の交換予測日時313の一覧をモニタ92に表示させ、交換予測日時313から所定時間前になると注意表示あるいは警告表示を行う。交換予測日時313の一覧表示によって、蓄電装置5の交換に係る作業計画の立案を支援する。
【0099】
コントローラー90は、消費蓄電装置とされる蓄電装置5別に残容量を監視しているので、残容量が所定の切替目安に達した消費蓄電装置があるかを検出する(ステップS70)。検出すると(ステップS70のYES)、コントローラー90は、適用非常時設定ID280が示す非常時設定データ242のうち現状に適合する優先消費設定データ250のタイプ別優先消費順位リスト254が定める優先消費順位に基づいて、「次の消費蓄電装置」を選択する。「次の消費蓄電装置」は、残容量が切替目安に達した蓄電装置5に代えて次の電源として使用する蓄電装置5である。コントローラー90は、蓄電装置接続部51に接続された蓄電装置5のうちの現在の消費蓄電装置以外から「次の消費蓄電装置」を選択する(ステップS72)。
【0100】
そして、コントローラー90は、「次の消費蓄電装置」である蓄電装置5の消費を開始してから、ステップS70で検知した残容量が切替目安に達した「消費蓄電装置」の使用(消費)を停止する(ステップS74)。
【0101】
すなわち、「次の消費蓄電装置」である蓄電装置5のDC/DCコンバーター59を制御して、当該蓄電装置5の直流電力を中間直流ライン60の所定直流電圧に変換して出力させるように通流方向および電力変換動作を指示・制御する。その後、ステップS70で検知した残容量が切替目安値に達した「消費蓄電装置」である蓄電装置5のDC/DCコンバーター59を制御して中間直流ライン60への電力出力をOFFにする。
【0102】
次いで、コントローラー90は、「消費蓄電装置」の設定を「次の消費蓄電装置」の蓄電装置5へ更新する(ステップS76)。具体的には、ステップS70で検知した残容量が切替目安値に達した「消費蓄電装置」の消費設定データ290を破棄して「次の消費蓄電装置」の消費設定データ290を新たに作成する。
【0103】
次いで、コントローラー90は、ステップS70で検知された「消費蓄電装置」である蓄電装置5の交換を、ユーザに求める旨の報知表示をモニタ92で行う(ステップS78)。
【0104】
また、バッテリーモードで動作中に、蓄電装置5の交換が検知されたならば(ステップS80のYES)、コントローラー90は、交換により新たに接続された蓄電装置5のメーカー名や型式の情報入力を受け付け(ステップS82;ステップS12相当)、諸量の取得とタイプの判定を行う(ステップS84;ステップS14相当)。
【0105】
そして、コントローラー90は、新たに接続された蓄電装置5用に新たな蓄電装置交換履歴データ310を追加する(ステップS86)。そして、蓄電装置5が交換されたことで状況が変化したので、コントローラー90は、適用非常時設定ID280の再判定を行い、再判定後の適用非常時設定ID280の示す非常時設定データ242に基づいて、「消費蓄電装置」とされる蓄電装置5別の予測持続時間293を更新する(ステップS88)。
【0106】
図9に移って、コントローラー90は、給電停止が近い非優先幹線がないかを判定する(ステップS100)。具体的には、例えば、コントローラー90は、非優先幹線の中から、それぞれの2次電流計32の計測電流値が、適用非常時設定ID280が示す非常時設定データ242の非優先幹線別出力制限設定246が指定する上限アンペア容量に対して所定割合に達している非優先幹線を「給電停止が近い非優先幹線」と判定する。
【0107】
また、コントローラー90は、非優先幹線別に、電力需要履歴データ234に基づいて停電開始時刻108からの経過時間、すなわち停電発生以降に電力供給を続けている累積時間を算出する。算出した累積時間が、適用非常時設定ID280が示す非常時設定データ242の非優先幹線別確保時間設定247が指定する確保時間の所定割合(例えば、80%から90%)に達している非優先幹線を「給電停止が近い非優先幹線」と判定する。
【0108】
「給電停止が近い非優先幹線」が有るならば(ステップS100のYES)、コントローラー90は、当該非優先幹線の幹線別給電停止予告音声データ160を読み出して、放送設備98から当該音声データの音声を放音させる(ステップS102)。
【0109】
その後、コントローラー90は、適用非常時設定ID280が示す非常時設定データ242の非優先幹線別出力制限設定246が示す出力制限に達した非優先幹線が現れたならば(ステップS110のYES)、該当する非優先幹線の2次AC/ACインバーター26を制御して、当該非優先幹線への電力供給を止める(ステップS112)。
【0110】
また、コントローラー90は、適用非常時設定ID280が示す非常時設定データ242の非優先幹線別確保時間設定247が示す確保時間に達した非優先幹線が現れたならば(ステップS114のYES)、該当する非優先幹線の2次AC/ACインバーター26を制御して、当該非優先幹線への電力供給を止める(ステップS116)。
【0111】
次に、コントローラー90は、所定の非常時設定の判定実行条件が満たされたかを判定する。そして、肯定ならば(ステップS120のYES)、適用非常時設定ID280を再判定して、再判定後の適用非常時設定ID280の示す非常時設定データ242に基づいて、「消費蓄電装置」とされる蓄電装置5別の予測持続時間293を更新する(ステップS122)。
【0112】
コントローラー90は、停電が終了するまで、ステップS70からステップS122を繰り返す(ステップS124のNO)。
バッテリーモード中でも、非常時設定の判定実行条件が満たされる毎に、適用非常時設定ID280が更新される。その際、バッテリーモード中における、キュービクル式高圧受電設備10の給電先における実際の電力の使われ方に応じた非常時設定データ242が参照される。そして、ステップS70からステップS78の処理で更新された適用非常時設定ID280の示す非常時設定データ242における優先消費順位に基づいて「次の消費蓄電装置」が選択されて切り替えられる。よって、蓄電装置5の消費配分を、キュービクル式高圧受電設備10の供給先における実際の電力の使われ方に適切且つ動的に変化させることが可能となる。
【0113】
停電が終了すると(ステップS124のYES)、コントローラー90はバッテリーモード処理を終了する。
【0114】
図7に戻って、バッテリーモード処理を抜けると、コントローラー90は、動作モードを高圧受電モードへ切り替える(ステップS130)。コントローラー90は、各蓄電装置5に対応するDC/DCコンバーター59については、中間直流ライン60の所定直流電圧を充電に適当な直流電圧に変換して蓄電装置5へ出力するように制御する。
【0115】
以上、本実施形態によれば、キュービクル式高圧受電設備10は、接続されている蓄電装置5の蓄電電力が尽きて電池切れになっても、これを交換することで停電時において電力供給を継続できる。
【0116】
すなわち、キュービクル式高圧受電設備10は、停電時において、高圧受電モードから蓄電装置接続部51に接続された蓄電装置5の蓄電電力を電力源とするバッテリーモードへ切り替えて、蓄電装置5の蓄電電力を所定の交流電力に変換し、更にM本の幹線別のインバーターでそれぞれの低圧交流電力に変換して出力できる。その際、M本の幹線について予め設定された優先設定と、蓄電装置5の蓄電電力量とに基づいて、幹線それぞれの2次AC/ACインバーター26の変換動作を制御できる。
【0117】
よって、キュービクル式高圧受電設備10は、蓄電装置5を適切に交換することで停電時においても持続的な電力出力が可能となる。加えて、蓄電装置5の蓄電電力量と、各幹線の優先度に応じた様々な出力電力に係る調整が可能となる。従って、停電時の状況、例えば各幹線の電力需要状況や蓄電装置5の蓄電状況に柔軟に対応した持続的な電力出力が可能となる。
【0118】
また、キュービクル式高圧受電設備10は、非常時の状況を繰り返し判定し、その時々の非常時の状況に応じた蓄電装置5のタイプ別の優先消費順位に基づいて、バッテリーモードにおける電源として使用する蓄電装置5を選択できる。つまり、その時々の非常時の状況に応じて、蓄電装置接続部51に接続された蓄電装置5のうち、蓄電電力を優先的に消費させる蓄電装置5を可変に選択し、優先幹線への電力出力を優先的に確保するようにできる。
【0119】
このことは副次的に、接続された各蓄電装置5が一斉に電池切れを起こす電池切れの集中を抑制することになる。キュービクル式高圧受電設備10からの電力出力を継続しつつ、蓄電装置5を順次交換する時間を確保することができるため、バッテリーモードでの安定的かつ継続的な電力供給の運用を実現できる。
【0120】
以上、本発明を適用した実施形態の一例を説明したが、本発明が適用可能な形態は上記の実施形態そのものに限らず、適宜構成要素の置き換え・省略・追加が可能である。
【0121】
例えば、図2では1次電圧計20を1次AC/ACインバーター22の入力側に設けた構成を示したが、1次AC/ACインバーター22の出力側すなわち中間交流電力ライン24に設けた構成としてもよい。
【0122】
〔概括〕
本明細書で開示されている内容は、次のように概括することができる。
【0123】
(第1の発明)
ハウジング筐体と、
前記ハウジング筐体内に設置され、受電する3,000V以上15,000V以下の所定の高圧交流電力を変換し、電力ラインを介して1,000V未満の交流電力をM本(M≧2)の幹線に出力するための電力変換用の電気機器と、
前記ハウジング筐体の外に置かれて交換可能な蓄電装置に接続する蓄電装置接続部と、
前記所定の高圧交流電力を電力源とする高圧受電モードから、前記蓄電装置接続部に接続された蓄電装置の蓄電電力を電力源とするバッテリーモードに切り替える制御を行うコントローラーと、
を備え、
前記電気機器は、
前記蓄電装置接続部に接続された蓄電装置の蓄電電力を電力源として交流電力に変換して前記電力ラインに出力する統合蓄電電力変換部と、
前記電力ラインに通流する交流電力を当該幹線用の低圧交流電力に変換する前記M本の幹線それぞれに対応するM個のインバーターと、
を含み、
前記コントローラーは、
前記統合蓄電電力変換部の動作を制御することと、
前記バッテリーモードにおいて、前記M本の幹線について予め設定された優先設定と、前記蓄電装置の蓄電電力量とに基づいて、前記M個のインバーターの変換動作を制御することと、
を行う、
高圧受電設備。
【0124】
(第2の発明)
前記優先設定は、出力制限を行う非常時設定を少なくとも含む、
第1の発明の高圧受電設備。
【0125】
(第3の発明)
前記非常時設定は、優先幹線と上限アンペア容量と確保時間とを含む、
第2の発明の高圧受電設備。
【0126】
(第4の発明)
前記非常時設定は、複数段階の出力制限を行う設定を含む、
第2又は第3の発明の高圧受電設備。
【0127】
(第5の発明)
前記蓄電装置接続部は、交換可能な前記蓄電装置に個別に接続するN(N≧2)個の接続部を有し、
前記電気機器は、
前記N個の接続部に接続された各蓄電装置から出力される蓄電電力を所定の中間直流電力に変換する中間直流電力変換部、
を更に含み、
前記統合蓄電電力変換部は、前記中間直流電力変換部によって変換された前記所定の中間直流電力を交流電力に変換して前記電力ラインに出力し、
前記コントローラーは、前記中間直流電力変換部および前記統合蓄電電力変換部の動作を制御する、
第1から第4の何れかの発明の高圧受電設備。
【0128】
(第6の発明)
前記コントローラーは、前記バッテリーモードにおいて、前記優先設定を用いて前記中間直流電力変換部を制御することで、前記N個の接続部に接続された蓄電装置のうち、蓄電電力を優先的に消費させる蓄電装置を可変に選択する制御を行う、
第5の発明の高圧受電設備。
【0129】
(第7の発明)
報知装置、
を更に備え、
前記コントローラーは、蓄電電力を優先的に消費させる蓄電装置に関する交換タイミングを前記報知装置から報知させる制御を行う、
第6の発明の高圧受電設備。
【符号の説明】
【0130】
5…蓄電装置
10…キュービクル式高圧受電設備
14…電力変換用電気機器
22…1次AC/ACインバーター
24…中間交流電力ライン
26…2次AC/ACインバーター
28…低圧交流電力ライン
51…蓄電装置接続部
53…蓄電装置電圧計
57…診断装置
59…DC/DCコンバーター
60…中間直流ライン
62…AC/DCインバーター
90…コントローラー
100…制御プログラム
108…停電開始時刻
110…リファレンスデータ
150…蓄電装置タイプ判定基準データ
220…諸量データ
230…幹線別電力需要データ
240…優先設定データ
241…優先幹線リスト
242…非常時設定データ
244…状況条件
246…非優先幹線別出力制限設定
247…非優先幹線別確保時間設定
250…優先消費設定データ
254…タイプ別優先消費順位リスト
280…適用非常時設定ID
290…消費設定データ
300…幹線別停電後給電実績データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9