(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】冷却器ユニット、半導体装置および冷却器ユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20241224BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20241224BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20241224BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2024529609
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2022078232
(87)【国際公開番号】W WO2023088614
(87)【国際公開日】2023-05-25
【審査請求日】2024-07-02
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】サントラリア,リュイス
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-86906(JP,A)
【文献】特開2020-141047(JP,A)
【文献】国際公開第2021/019594(WO,A1)
【文献】特表2022-524751(JP,A)
【文献】特表2022-524961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29、23/34-23/473
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーモジュール(30)の液体冷却用の冷却器ユニット(1)であって、
-上部(15)および下部(16)を備え、前記上部(15)と共に前記パワーモジュール(30)に結合されるように構成されている少なくとも1つのインサート(10)と、
-冷却剤のための内部流路(27)を提供し、前記流路(27)までハウジング(20)の壁(25)を貫通し、前記少なくとも1つのインサート(10)と幾何学的に連携して構成されている少なくとも1つの凹部(21)を備える前記ハウジング(20)であって、前記少なくとも1つのインサート(10)が、銅を含み、動作中に前記冷却剤が前記流路(27)を通って前記少なくとも1つのインサート(10)の前記下部(16)の周りを流れるように、前記凹部(21)の内部に配置され、前記ハウジング(20)にレーザ溶接される、ハウジング(20)と、
を備え、
-前記少なくとも1つのインサート(10)および前記ハウジング(20)が各々、それぞれの溶接領域(14、24)を備え、前記少なくとも1つのインサート(10)の前記溶接領域(14)が、前記インサート(10)の縁部(13)に形成され、前記ハウジング(20)の前記溶接領域(24)が、前記少なくとも1つの凹部(21)を制限する前記ハウジング(20)の縁部(28)に形成され、それにより、溶接継手が、前記インサート(10)の側壁(17)の前記溶接領域(14、24)に少なくとも部分的にレーザ溶接によって形成され
、
-前記インサート(10)の前記上部(15)が、前記冷却器ユニット(1)を前記パワーモジュール(30)に結合するための所定の結合特性を提供するように構成されている前記流路(27)から外方に面する粗面、凹部分、および隆起部のうちの少なくとも1つを含む所与の表面構造を有する上面(11)を備える、
冷却器ユニット(1)。
【請求項2】
前記ハウジング(20)がアルミニウムを含む、請求項1に記載の冷却器ユニット(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのインサート(10)が、前記インサート(10)の前記上部(15)および前記下部(16)の少なくとも一方を部分的または完全に覆う少なくとも1つのコーティングを備える、
請求項1または2に記載の冷却器ユニット(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのコーティングがニッケルを含み、前記インサート(10)の前記下部(16)を覆う、請求項3に記載の冷却器ユニット(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのコーティングが銀を含み、前記インサート(10)の前記上部(15)を覆う、請求項
3に記載の冷却器ユニット(1)。
【請求項6】
前記インサート(10)の前記下部(16)が、前記冷却剤の所与の流れおよびインサートと冷却剤との間の所与の熱交換面を提供するように構成されている前記流路(27)に面する所与の表面構造を有する下面(12)を備える、
請求項1または2に記載の冷却器ユニット(1)。
【請求項7】
前記所与の構造が、ピンフィン領域、リブおよびスカイブ構造、ならびに蛇行チャネルのうちの少なくとも1つを備える、請求項6に記載の冷却器ユニット(1)。
【請求項8】
前記ハウジング(20)が、動作中の前記冷却剤の流れ方向を画定する入口(22)および出口(23)を備え、前記ハウジング(20)が、それぞれのインサートを収容するように構成された2つ以上の凹部(21)を備え、銅を含む前記少なくとも1つのインサート(10)が、前記ハウジング(20)の前記入口(22)よりも前記出口(23)に近い前記凹部(21)の1つに配置される、
請求項1または2に記載の冷却器ユニット(1)。
【請求項9】
前記冷却器ユニット(1)が、各々が銅を含む3つのインサート(10)を備え、前記ハウジング(20)が、各々が前記流路(27)まで前記ハウジング(20)の前記壁(25)を貫通し、各々が関連する前記インサート(10)と幾何学的に連携して構成されている3つの凹部(21)を備え、前記インサート(10)が、それぞれの関連する前記凹部(21)の内側に配置され、各々が前記ハウジング(20)にレーザ溶接されている、
請求項1または2に記載の冷却器ユニット(1)。
【請求項10】
半導体装置であって、
-
請求項1または2に記載の冷却器ユニット(1)と、
-前記冷却器ユニット(1)の前記インサート(10)の前記上部(15)に結合されている、電子機器を有するパワーモジュール(30)と、
を備える、半導体装置。
【請求項11】
前記インサート(10)および前記パワーモジュール(30)が、接着、焼結、はんだ付け、および接合の少なくとも1つによって互いに結合される、請求項
10に記載の半導体装置。
【請求項12】
パワーモジュール(30)の液体冷却用の冷却器ユニット(1)の製造方法であって、
-上部(15)および下部(16)を備え、前記上部(15)と共に前記パワーモジュール(30)に結合されるように構成されている少なくとも1つのインサート(10)を提供することであって、前記少なくとも1つのインサート(10)が銅を含む、ことと、
-冷却剤のための内部流路(27)を提供し、前記流路(27)までハウジング(20)の壁(25)を貫通し、前記少なくとも1つのインサート(10)と幾何学的に連携して構成されている少なくとも1つの凹部(21)を備える前記ハウジング(20)を提供することであって、前記少なくとも1つのインサート(10)および前記ハウジング(20)の各々がそれぞれ溶接領域(14、24)を備え、前記少なくとも1つのインサート(10)の前記溶接領域(14)が前記インサート(10)の縁部(13)に形成され、前記ハウジング(20)の前記溶接領域(24)が前記少なくとも1つの凹部(21)を制限する前記ハウジング(20)の縁部(28)に形成され
、前記インサート(10)の前記上部(15)が、前記冷却器ユニット(1)を前記パワーモジュール(30)に結合するための所定の結合特性を提供するように構成されている前記流路(27)から外方に面する粗面、凹部分、および隆起部のうちの少なくとも1つを含む所与の表面構造を有する上面(11)を備える、ことと、
-前記少なくとも1つのインサート(10)が前記ハウジング(20)に接触するように、前記少なくとも1つのインサート(10)を前記凹部(21)の内側に配置することと、
-少なくとも部分的に前記インサート(10)の側壁(17)の前記溶接領域(14、24)に溶接継手が形成されるように、かつ動作中に前記冷却剤が前記流路(27)を通って前記少なくとも1つのインサート(10)の前記下部(16)の周りを流れるように、前記少なくとも1つのインサート(10)および前記ハウジング(20)を共にレーザ溶接することと、
を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
明細書
本開示は、パワーモジュール用冷却器ユニットおよびパワーモジュール用冷却器ユニットの製造方法に関する。本開示はさらに、対応する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールは、例えば自動車用インバータに使用され、動作中に熱を放散するために冷却器を必要とする。そのような冷却器は、パワーモジュールに固定され、安定した接続および緊密で信頼性の高い封止を設定するために追加の構成要素を必要とする場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
パワーモジュールとの安定した結合を可能にし、パワーモジュールの動作中に信頼性が高く効果的な放熱に寄与する冷却器を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実施形態は、確実な結合を可能にし、信頼性の高い放熱に寄与する、パワーモジュールの液体冷却用の冷却器ユニットに関する。本開示の実施形態はまた、そのような冷却器ユニット用の対応する製造方法および対応する半導体装置に関する。
【0005】
一実施形態によれば、パワーモジュールの液体冷却用の冷却器ユニットは、少なくとも1つのインサートとハウジングとを備える。少なくとも1つのインサートは、上部および下部を備え、その上部でパワーモジュールに結合されるように構成される。ハウジングは、冷却剤のための内部流路を提供し、流路までハウジングの壁を貫通する少なくとも1つの凹部を備える。少なくとも1つの凹部は、インサートと凹部の形状および/またはそれぞれの高さ、それぞれの幅および/またはそれぞれの長さなどの延長部が少なくとも部分的に互いに一致するように、少なくとも1つのインサートと幾何学的に連携して構成される。少なくとも1つのインサートは、銅を含み、動作中に冷却剤が流路を通って少なくとも1つのインサートの下部の周りを流れるように、凹部の内側に配置され、ハウジングにレーザ溶接される。少なくとも1つのインサートおよびハウジングは各々、それぞれの溶接領域を備える。インサートの溶接領域は、縁部または周辺部位、例えばインサートの縁部の上面、底面および/または側壁に形成される。ハウジングの溶接領域は、インサートの支持面をさらに形成し得る少なくとも1つの凹部を制限するハウジングの縁部または周辺部位に形成される。縁部は、対応するインサートまたはハウジングのそれぞれの周辺部位に関連する。したがって、溶接継手は、少なくとも部分的にインサートの側壁の溶接領域にレーザ溶接によって形成される。レーザ溶接によって形成された溶接継手は、さらに、上面および/または底面および/または側壁に周方向または外周方向に少なくとも部分的に形成されることができる。
【0006】
記載された構成を使用することにより、パワーモジュールへの確実な結合を可能にし、パワーモジュールの動作中の信頼性の高い放熱にさらに寄与する冷却器ユニットが実現可能である。とりわけ、冷却器ユニットは、高電圧用途、例えば少なくとも0.5kVの電圧で使用するためのパワーモジュールに適している。
【0007】
冷却器ユニットは、その上部またはその上部の上面がパワーモジュールに面するように、意図されたパワーモジュールに接続可能に特別に構成される。冷却器ユニットが銅を含むことで、十分な放熱が可能になる。したがって、インサートの銅は、冷却器ユニットのセクションで利用可能であり得る。この点において、インサートは、全体的にまたはセクションごとに銅で作られることができ、インサートは裸銅および/または銅合金の形態の銅を含むことができる。レーザ溶接された銅インサートにより、ハウジングへの安定した確実な接続が設定され、その熱伝導性により、銅インサートは有益な放熱を可能にする。
【0008】
上部および下部は、第1および第2のセクションまたは部分とも呼ばれ得るインサートのセクションまたは部分を示す。上部および下部は、互いに結合された2つの別個の要素または銅板のような共通の単一要素の2つの部分を実現することができる。したがって、上部および下部は、一体に形成されたインサートの部分を示すことができる。上部および下部は、同じ形状および同じ幾何学的延長部を備えてもよく、互いに異なってもよい。後者の場合、例えば、上部が板状の部分を形成してもよく、下部がより厚い直方体またはブロック状の部分を形成してもよい。さらに、上部および/または下部は、平坦な表面および/または構造化表面を部分的にまたは完全に備えてもよい。
【0009】
さらに、必ずしも銅を含まないインサートをハウジングに結合することも可能である。インサートは、パワーモジュールから熱を確実に放散するために冷却器ユニットのハウジングよりも高い熱伝導率を提供する材料および/または形状を備える嵌め込み体を実現することができる。
【0010】
さらなる実施形態によれば、ハウジングはアルミニウムを含む。この点において、ハウジングは、全体的にまたはセクションごとにアルミニウムで作られることができ、ハウジングは、裸アルミニウムおよび/またはアルミニウム合金の形態のアルミニウムを含むことができる。代替的または追加的に、ハウジングは銅も含むことができる。
【0011】
重量、コスト、材料特性に関する仕様に応じて、代替的にハウジングが完全に銅または銅合金で作られることも可能である。そのような構成によれば、溶接継手は必要なく、ハウジングおよび少なくとも1つのインサートは一体に作製することができ、少なくとも1つのインサートは、パワーモジュールに結合するためにハウジングの上面に対応する少なくとも1つの接続領域を実現する。
【0012】
上述の実施形態によれば、銅インサートは、アルミニウムハウジングにレーザ溶接され、それに設けられた凹部の内側に確実に接続される。ハウジングの少なくとも1つの凹部は、少なくとも1つのインサートによって覆われている空洞または開口部を形成する。インサートは、例えば、空洞内に挿入されるか、または上方から開口部内に配置され、その接触縁部でレーザ溶接され、冷却剤の入口および出口を除いて密閉型冷却器を形成する。したがって、あるセクションにおいて、インサートは、ハウジングの上面に銅カバーを形成する。組み立てられた状態または取り付けられた状態の観点から、パワーモジュールは、例えば接着、はんだ付け、焼結および/または拡散接合によってインサートの上面に接続される。
【0013】
本開示に関連して、従来の冷却器は、クランプ機構を使用してパワーモジュールに機械的に固定されるという認識である。そのような従来の構成は、ねじ留めクランプを含む比較的複雑であり、Oリングのような追加の封止を必要とする。特に、ゴム製シール、ねじ接続の使用は、トルクの損失をもたらし、その結果、熱サイクルによる信頼性の損失をもたらし、したがって長期動作における漏れによる冷却剤の損失のリスクをもたらす可能性がある。
【0014】
ハウジングにレーザ溶接されている銅インサートの記載された構造により、追加の封止要素は必要ない。さらに、レーザ溶接は、インサートをハウジングに確実に接続することを可能にし、接着剤または溶接コーティングを必要としない。これにより、上記構成は、冷却器ユニットを形成するために確実にかつ信頼性高く組み立てられることができる。
【0015】
本開示に関連するさらなる認識は、従来の溶接プロセスが接合パートナーに強い熱的影響を及ぼすことである。ここで、成形パッケージ本体のようなプラスチック部品を有する組み立てられたパワーモジュールに対する熱的影響は、非常に重要であると考えられることができる。正確に局所化されたレーザ溶接により、溶接プロセスの熱的影響は明らかに制限され、溶接プロセスは、隣接する構成要素を危険にさらすことなく、または危険にさらすことを低減して確実に実行することができる。パワーモジュールの設定に応じて、パワーモジュールは、インサートのレーザ溶接後にインサートに取り付けられることができ、インサートは、冷却器ユニットの一部を形成する、および/またはパワーモジュールの一部、例えばパワーモジュールの底面のベースプレートを形成するスタンドアロン要素を実現することができる。
【0016】
さらなる実施形態によれば、少なくとも1つのインサートは、インサートの上部および下部の少なくとも一方を部分的または完全に覆う少なくとも1つのコーティングを備える。例えば、少なくとも1つのコーティングはニッケルを含み、インサートの下部を覆う。ニッケルコーティングは、動作中の冷却剤とのその接触による腐食からインサートを保護するように構成されることができる。しかしながら、ニッケルコーティングは、他の目的にも使用することができる。代替的または追加的に、少なくとも1つのコーティングは、銀および/または金を含み、冷却器ユニットをパワーモジュールに結合するための所定の結合特性を提供するように構成されたインサートの上部を覆う。代替的または追加的に、溶接継手の形成およびインサートのハウジングへの結合を改善するために、ハウジングおよびインサートの溶接領域の一方または両方にコーティングが形成されることができる。したがって、インサートは、完全にコーティングされていなくてもよく、または完全にもしくは部分的にコーティングされていてもよい。上面のコーティングおよび/または下面のコーティングは、ニッケル、銀、金ならびに/または保護および/もしくは接続特性を提供するのに適した他の材料から調製されることができ、無電解または電解めっきプロセスもしくは他の適用可能なプロセスによって形成されることができる。
【0017】
さらなる実施形態によれば、インサートの下部は、流路に面する所与の表面構造を有する下面を備える。したがって、下部は、インサートと冷却剤との間に広範な熱交換面を提供するために所与の冷却構造を形成することができる。インサートの下部は、少なくとも冷却剤が流路を通って流れるときに、部分的に冷却剤と接触する。所与の表面構造の形状および/または向きは、少なくとも部分的に冷却剤の層流または好ましくは乱流を提供するように構成されることができる。したがって、下部の下面の表面構造は、流れる冷却剤の流れ挙動に有利に影響を及ぼすように設計されることができる。この点において、所与の表面構造を形成することの観点から、冷却剤の圧力降下および流量も考慮に入れられてもよい。表面構造は、例えば、冷却剤に熱を効果的に伝達するための表面積の増加を伴って全体的な熱効率を高めるために、円筒形状または円錐形状を有するピンを使用するピンフィン領域によって実現されることができる。追加的または代替的に、表面構造は、リブおよび/またはスカイブ構造および/または蛇行チャネルを備えることができる。あるいは、インサートの下部は、その下面に特定の構造なしで形成されることができ、したがって平坦な表面を備えることができる。一実施形態によれば、インサートは、その上面および/または底面に平坦な表面を有する単純な銅板を実現することができる。ピンまたはスカイブ加工フィンなどの冷却構造は、インサートの平坦な下部が取り付けられることができるヒートシンクに組み込まれることができる。
【0018】
さらなる実施形態によれば、インサートの上部は、冷却器ユニットをパワーモジュールに結合するための所定の結合特性を提供するように構成されている、流路から外方に面する所与の表面構造を有する上面を備える。上面の所与の表面構造は、粗面、凹部分および/または隆起部を備えることができる。したがって、上面は、平坦な表面として形成されてもよく、所定の粗さを備えてもよい。代替的または追加的に、上面は、接合プロセスおよびパワーモジュールへの接合接続の信頼性を改善するための1つまたは複数の凹部分もしくは隆起部を備えることができる。所与の表面は、上面を完全に覆うことができ、またはパワーモジュールとの接合接続の領域に限定されてもよい。
【0019】
さらなる実施形態によれば、ハウジングは、動作中の冷却剤の流れ方向を画定する入口および出口を備える。ハウジングは、それぞれの2つ以上のインサートを収容するように構成された2つ以上の凹部をさらに備え、銅を含む少なくとも1つのインサートは、ハウジングの入口よりも出口に近い凹部の1つに配置される。コスト削減のために、冷却器ユニットは、アルミニウム製の1つまたは複数のインサートを備えることができる。したがって、アルミニウムインサートは、熱的に重要でないパワーモジュール、例えば冷却剤入口の近くで使用されることができるが、1つまたは複数の銅インサートは、アルミニウムと比較して銅の熱伝導率が高いため、熱的により重要なパワーモジュール、例えば冷却剤出口の近くで必要とされる。代替的または追加的に、インサートのそれぞれの下部の異なる冷却構造によっても異なる冷却特性を達成することができる。
【0020】
また、最も重要なパワーモジュールが銅インサートに取り付けられるが、必ずしも出口の近くに取り付けられないような、異なる特性を有するパワーモジュールの状況もあり得る。加えて、入口温度が低下または低くなり、冷却剤の熱特性が悪化する場合もあり得る。この場合、冷却剤の流れ方向に対して、最初のパワーモジュールのチップの温度が最後のパワーモジュールの温度よりも高くなる可能性がある。これらの場合、ハウジングの出口よりも入口の近くに銅インサートを有することもおそらく好ましい。したがって、1つまたは複数の銅インサートの位置は、放熱の改善の観点から特定の状況に関して考慮されるべきである。
【0021】
さらなる実施形態によれば、冷却器ユニットは、各々が銅を含む3つのインサートを備え、ハウジングは、各々が流路までハウジングの壁を貫通する3つの凹部を備える。凹部は各々、関連するインサートと幾何学的に連携して構成され、インサートはそれぞれの関連する凹部の内側に配置され、各々がハウジングにレーザ溶接される。
【0022】
一実施形態によれば、半導体装置は、記載された冷却器ユニットの一実施形態と、冷却器ユニットのインサートの上部に結合されている電子機器を有するパワーモジュールとを備える。電子機器は、チップ、集積回路、および/または他の個別装置、特にパワー半導体装置を含むことができる。チップまたは他の装置は、典型的には、例えば絶縁基板、(絶縁金属)ベースプレート、PCB、またはリードフレームに取り付けられる。装置は、モジュールハウジングまたはカプセルにカプセル化されることができる。基板、ベースプレートなどの裏面などは、典型的には、インサートに取り付けるために露出される。したがって、インサートは、説明した冷却器ユニットの構成要素を形成することができる。あるいは、インサートは、ベースプレートとして機能するパワーモジュールの構成要素を形成することができる。したがって、パワーモジュールはそれ自体のベースプレートを備えることができ、かつ/またはインサートは(追加の)ベースプレートとして機能する。しかしながら、パワーモジュールがハウジングに固定されると、インサートもハウジングに結合され、したがって、上述の冷却器ユニットが形成される。
【0023】
さらなる実施形態によれば、インサートの上部の上面およびパワーモジュールは、接着、焼結、はんだ付け、および接合、または他の適用可能な接合方法のうちの少なくとも1つによって互いに結合される。
【0024】
一実施形態によれば、記載された冷却器ユニットの一実施形態を製造する方法は、少なくとも1つの銅インサートを提供することと、ハウジングに少なくとも1つの凹部を提供することとを含む。本方法は、少なくとも1つのインサートがハウジングに、例えば周縁部に接触するように、少なくとも1つのインサートを凹部の内側に配置することをさらに含む。少なくとも1つのインサートは、下部がハウジング内の流路に面するように凹部の内側に配置される。本方法は、動作中に冷却剤が流路を通って少なくとも1つのインサートの下部の周りを流れるように、少なくとも1つのインサートおよびハウジングを共にレーザ溶接することをさらに含む。
【0025】
記載された半導体装置および記載された製造方法が冷却器ユニットの一実施形態を備えるか、または製造することに関連する結果として、冷却器ユニットの記載された特徴および特性も半導体装置および製造方法に関して開示され、逆もまた同様である。
【0026】
記載された液体冷却用の冷却器ユニットは、従来のモジュールと比較して、熱性能を低下させることなく、または熱性能をほとんど低下させることなく、または熱性能を向上することさえある、ピンフィンベースプレートのないパワー半導体モジュールに適している。これはまた、パワーモジュールのより薄いベースプレートを組み立てることを可能にする。パワーモジュールは、平坦な裏面を有するベースプレートを備えてもよいし、あるいはパワーモジュールは、基板、ヒートシンク、もしくはリードフレームのダイパッドの露出した裏面を有する成形パワーパッケージのように、またはプリント回路基板のようにベースプレートを備えなくてもよい。
【0027】
ハウジングに溶接された銅インサートを使用することにより、アルミニウムインサートと比較して熱抵抗を約10%以上低減することができる。設定のより優れた熱性能は、銅の明らかに高い熱伝導率と、より薄いベースプレートを可能にし、それぞれの設定に応じて熱抵抗を潜在的に減らす銅のより高い機械的強度により、冷却器ユニットのインサートが銅製のピンフィンベースプレートとして作用する場合に達成されることができる。インサートまたはベースプレートは、例えばアルミニウム製の冷却器フレームを実現するハウジングに接合される。接合は、アルミニウムハウジングと銅インサートとの間のレーザ溶接によって行われる。本開示に関連するさらなる認識は、裸銅または銅合金インサートの溶接接合が熱的影響に関してあまり重要ではないため、レーザ溶接プロセスを最適に適用され得ることである。
【0028】
インサートは、パワーモジュールが冷却器ユニットに接続される位置を画定する。冷却器ユニットの記載された実施形態は、銅インサートまたはベースプレートがレーザ溶接によってハウジングに接合されているアルミニウムハウジングを使用する場合に、以下の利点の1つまたは複数を可能にする。
【0029】
●パワーモジュールベースプレートとして機能することができる少なくとも1つの銅インサートを使用する設定の熱性能は、銅のより高い熱伝導率のためにアルミニウムインサートの使用と比較して改善される。
【0030】
●より薄いベースプレートまたはインサートは、アルミニウムインサートと比較して調製されることができるが、パワーモジュールのピンフィンベースプレートと比較しても調製されることができる。
【0031】
○銅は、アルミニウムと比較してより良好な機械的安定性を提供する。
○パワーモジュールの組み立てプロセスにおけるパワーモジュールベースプレートの反りは、ベースプレートの十分な厚さを必要とし、あまり関連性がないか、または考慮されてはならない。
【0032】
●銅製の完全な冷却器ユニットの実現は高価であり、重量が大きくなるが、それも可能である。コストを抑えるために、冷却器ユニットの関連部分のみを銅または銅合金で作ることができる。
【0033】
●平坦なベースプレートを有する、またはベースプレートを有さないパワーモジュールのアセンブリは、コスト効率が低く、複雑ではない。
【0034】
●(成形)パワーモジュールの直接接合(焼結、はんだ付け、接着、拡散接合)は、ベースプレートを有さずに実現可能であるが、基板、ヒートシンク、またはダイパッドの露出した裏面は、(例えば、アルミニウムインサートに必要とされるように)銅インサートの上面の追加のコーティングなしで可能である。
【0035】
例示的な実施形態は、概略図および参照番号を用いて以下に説明される。図面は以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】異なる図におけるパワーモジュール用の冷却器ユニットの一実施形態を示す図である。
【
図2】異なる図におけるパワーモジュール用の冷却器ユニットの一実施形態を示す図である。
【
図3】異なる図におけるパワーモジュール用の冷却器ユニットの一実施形態を示す図である。
【
図4】異なる図におけるパワーモジュール用の冷却器ユニットの一実施形態を示す図である。
【
図5】異なる図におけるパワーモジュール用の冷却器ユニットの一実施形態を示す図である。
【
図6】
図1~
図5による冷却器ユニットのインサートの一実施形態の斜視図である。
【
図7】
図1~
図5による成形パワーパッケージおよび冷却器ユニットの側面図である。
【
図8】冷却器ユニットの一実施形態を製造するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれる。図に示される実施形態は例示的な表現であり、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。同一の参照番号は、同一の機能を有する要素または構成要素を示す。要素または構成要素が図中のそれらの機能に関して互いに対応する限り、以下の図の各々についてその説明は繰り返さない。明確にするために、要素は、場合によってはすべての図に対応する参照符号で表示されない場合がある。
【0038】
図1は、成形パワーパッケージまたはパワーモジュール30(
図2~
図7も参照されたい)の液体冷却用の冷却器ユニット1の一実施形態の斜視図を示す。冷却器ユニット1は、各々が上部15および下部16をそれぞれ備える3つのインサート10を備える。インサート10は、それぞれの上部15でパワーモジュール30または複数のパワーモジュール30に結合されるように構成される。
【0039】
冷却器ユニット1は、冷却剤のための内部流路27を提供するハウジング20をさらに備える。ハウジングは、動作中に冷却剤がハウジング20を通って流れることができるように、冷却剤のための入口22および出口23をさらに備える。ハウジング20は、流路27までハウジング20の壁を貫通する3つの凹部をさらに備える。壁は、ハウジング20の下部26に接続されたハウジング20の上部25に属する。したがって、ハウジング20は、例えば、2部品から組み立てられることができる。あるいは、ハウジング20は一体に作られることができる。図示の実施形態によれば、入口22および出口23は、ハウジング20の下部26に属する。凹部21は、インサート10と幾何学的に連携して構成され、インサート10は銅または銅合金を含む。あるいは、インサート10の少なくとも1つは、銅または銅合金を含む。
【0040】
インサート10およびハウジング20の上部15、25および下部16、26は、それぞれ、積層方向A(
図3~
図7を参照されたい)から見たセクションまたは部分を示す。これらの部分は、第1および第2のセクションまたは部分とも呼ばれ得る。上部15、25および下部16、26は、互いに結合された2つの別個の要素、または一体に形成された共通の単一要素の2つの部分を実現することができる。
【0041】
インサート10は、関連する凹部21の内側に配置され、ハウジング20にレーザ溶接されるように構成され、これにより、動作中に冷却剤が入口22を通ってハウジング20内に流入し、流路27を通ってインサート10の下部16の周りを流れ、出口23を通ってハウジング20から流出する。
図2~
図5は、冷却器ユニット1またはそのセクションのさらなる図を示す。
【0042】
ハウジング20は、銅インサート10とレーザ溶接されているアルミニウムを含む。したがって、インサート10およびハウジング20は、レーザ溶接継手が形成されるそれぞれの溶接領域14、24を備える。インサート10の溶接領域14は、インサート10の縁部13に形成され、周方向(
図5も参照されたい)に形成されてもよい。縁部13は、関連するインサート10の上部15の周方向または周囲側壁17を実現する段差縁部として形成されることができる。段差縁部13は、薄肉化されたセクションで必要とされるレーザエネルギーの量が減少するため、信頼性の高いレーザ溶接に寄与する薄肉化された最外部を備える。したがって、それぞれのインサート10の上面11には、最外縁部に対して突起または突出領域が形成されてもよく、関連するパワーモジュール30に接続されるように構成されている上部15の一部を実現してもよい。レーザ照射が上面から行われる場合、縁部13の溶接領域14にレーザ溶接プロセスを改善するための構造を形成することもできる。そのような表面構造はまた、パワーモジュール30の取り付けを改善するための粗面、凹部分および/または突出部を備えることができる。
【0043】
ハウジング20のそれぞれの溶接領域24は、それぞれの凹部21を制限するハウジング20の縁部28に形成される。縁部28はまた、周方向に形成されることができ、関連するインサート10のそれぞれの縁部13(
図5参照)のための支持面をさらに実現することができる。したがって、銅インサート10をアルミニウムハウジング20にしっかりと接続するために、溶接領域14、24において周方向または少なくとも部分的にレーザ溶接によって溶接継手が形成される。
図5には、矢印がレーザ溶接継手の形成のための可能な位置を示す断面図が図示されている。したがって、レーザ溶接によって、対応する溶接継手がインサート10の側壁17および/または縁部13の底面に形成されることができる。
【0044】
ハウジング20は、局所的に薄肉化されて形成されてもよく、かつ/またはレーザ溶接継手の有益な形成に寄与する溶接領域24の溝、凹部または窪みのような溶接に有用な構造を備えてもよい。そのような構造は、溶接領域14、24内の所定の位置にレーザエネルギーを誘導するために、ハウジング20の上部25の上面、側面、および/または底面に形成されることができる。したがって、レーザ溶接は、積層方向Aに対して上面側および/または底面側から行われることができる(
図3および
図7を参照されたい)。したがって、「上」、「下」、「上面」、「底面」、「側面」という用語は、図に示され、積層方向Aに描かれたものに対する位置および/または向きを指すために使用される。
【0045】
インサート10および/またはハウジング20は、上述の溶接構造を備えることができる。インサート10は、上面から、側面から、および/または底面からハウジング20に溶接されることができる。後者では、インサート10は、ハウジング20が組み立てられる前、つまりハウジング20の下部26が上部25に接続される前に、ハウジング20の上部25にレーザ溶接される。
【0046】
インサート10は、ベースプレートの形状を有することができ、横方向B(
図3~
図5および
図7を参照されたい)に垂直な積層方向Aに対してハウジング20の上部の上面の上方に突出することができる。インサート10の一部は、特に冷却剤入口22に近いアルミニウムで作られてもよい。インサート10は、それぞれの上部15および/またはそれぞれの下部16を部分的または完全に覆うコーティングを備えることができる。そのようなコーティングは、ニッケルを含んでもよく、インサート10を腐食から保護するために、動作中に冷却剤と接触するそれぞれの下部16を覆うように形成されてもよい。
【0047】
追加的または代替的に、コーティングは銀を含むことができ、冷却器ユニット1を関連するパワーモジュール30に結合するための改善された結合特性を提供するために、インサート10の上部15または上面11を覆うように形成されることができる。パワーモジュール30またはパワーパッケージは、接着、焼結、はんだ付け、拡散接合、または任意の他の適用可能な接合方法によってインサート10の上面に取り付けられる。接合されるパワーモジュール30の裏面は、例えば、ベースプレートによって、または基板、ダイパッド、ヒートシンクの露出した裏面によって、またはプリント回路基板によって提供される。
図7には、冷却器ユニット1の底面側に固定されたパワーモジュール30の一実施形態が断面側面図で概略的に示されている。
【0048】
インサート10の下部16は、冷却構造を形成し、好ましくは冷却剤の乱流を提供するために、流路27に面する所与の表面構造を有する下面12を備えることができる。インサート10の下部16は、冷却剤が流路27を通って流れてインサート10から熱を放散するときに、少なくとも接続されたパワーモジュール30の動作中に部分的に冷却剤と接触する。したがって、下部16の下面12の表面構造は、流れる冷却剤の流れ挙動に有利に影響を及ぼすように設計されることができる。表面構造は、例えば、円筒形状または円錐形状を有するピンを用いたピンフィン領域によって実現されることができる。追加的または代替的に、表面構造は、リブおよび/またはスカイブ構造を備えることができる。インサート10の下面12におけるそのようなスカイブ構造が
図6に示されている。
【0049】
冷却器ユニット1を形成するための対応する製造方法のステップは、
図8に示すフローチャートに従うことができる。ステップS1において、銅インサート10が提供され、場合によっては上面11および/または下面12に所与の表面構造を備える。
【0050】
ステップS2において、アルミニウムハウジング20が提供され、場合によっては縁部28の溶接領域24に所定の構造を備える。
【0051】
ステップS3において、インサート10は、インサート10が周縁部13および28の部位においてハウジング20に接触するように、関連する凹部21の内側に配置される。インサート10は、それぞれの下部16がハウジング20の内部の流路27に面するように、凹部21の内部に配置される。
【0052】
さらなるステップS4において、溶接プロセスは、インサート10をハウジング20にしっかりと接続するために、溶接領域14、24においてレーザ溶接によって実行される。したがって、動作中、冷却剤は、流路27を通ってインサート10の下部16の周りを流れ、パワーモジュール30から熱を放散することができる。したがって、レーザ溶接された銅ベースプレートを有する密閉型冷却器が実現可能である。
【0053】
上述の
図1~
図8に示されている、または
図1~
図8によって説明されている実施形態は、改良された冷却器ユニット1および冷却器ユニット1の製造方法の例示的な実施形態を表す。したがって、それらはすべての実施形態の完全なリストを構成するものではない。実際の配置および方法は、例えば、冷却器ユニットに関して示された実施形態とは異なる場合がある。
【0054】
参照符号
【符号の説明】
【0055】
1 冷却器ユニット
10 冷却器ユニットのインサート
11 インサートの上面
12 インサートの下面
13 インサートの縁部
14 インサートの溶接領域
15 インサートの上部
16 インサートの下部
17 縁部の側壁
20 冷却器ユニットのハウジング
21 ハウジングの凹部
22 ハウジングの入口
23 ハウジングの出口
24 ハウジングの溶接領域
25 ハウジングの上部
26 ハウジングの下部
27 流路
28 ハウジングの縁部
30 パワーモジュール
A 積層方向
B インサート/ハウジングの横方向
S(i) 冷却器ユニットの製造方法のステップ