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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】二重容器、及びその分別方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/00 20060101AFI20241225BHJP
【FI】
B65D1/00 111
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020157390
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051111
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】江口 鉄明
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-069877(JP,A)
【文献】特開2015-163520(JP,A)
【文献】特開2019-119501(JP,A)
【文献】特開2020-055557(JP,A)
【文献】特開2019-010741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻と内袋とを有する容器本体を備える二重容器であって、
前記容器本体の口部は、前記外殻と前記内袋とが積層されることで構成され、
前記口部において、前記内袋には、前記外殻の上端よりも上方に、前記外殻から前記内袋を引き出すための引き出し部を備え、下記(1)又は(2)の構成をさらに備える、二重容器。
(1)前記口部に装着され且つ内容物を吐出するキャップを備え、前記キャップは、前記口部へ装着された際に前記引き出し部と係合する係合爪を備えており、使用後、前記キャップを持ち上げると、前記内袋が前記外殻から引き出される。
(2)前記内袋の上端部と前記外殻の上端との間に配置されるスペーサーを備え、前記引き出し部は、前記外殻の上端と前記内袋の上端部の間であって周方向の少なくとも一部に、上下方向の隙間を設けることで形成され、前記隙間は、前記スペーサーを取り外すことで形成される。
【請求項2】
請求項1に記載の二重容器であって、
前記構成(1)を備えるとともに、前記内袋の上端部には、前記外殻の上端を上方側から塞ぐフランジ部が形成され、
前記引き出し部は、前記フランジ部の少なくとも一部が前記外殻の上端の外縁よりも径方向外側に突出することで形成されてる、二重容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の二重容器であって、
前記構成(1)を備え、
前記キャップは、前記口部に形成された係合部と係合する被係合部が内周面に形成された筒状部を備え、
前記係合爪は、前記筒状部の内周面における前記被係合部よりも上方の位置に形成される、二重容器。
【請求項4】
請求項3に記載の二重容器であって、
前記口部に形成された係合部は雄ねじ部であって、前記キャップの前記被係合部は前記雄ねじ部に螺入される雌ねじ部であって、
前記係合爪は、前記キャップが前記螺入により前記口部に完全に装着されると前記引き出し部と係合して前記内袋が前記キャップに保持されるよう構成されている、二重容器。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれかに記載の二重容器であって、
前記構成(1)を備え、
前記引き出し部の硬度は、前記容器本体の収容部における前記内袋の硬度よりも高硬度となっている、二重容器。
【請求項6】
請求項1に記載の二重容器であって、
前記構成(2)を備え、
前記スペーサーは、周方向に亘って形成されるとともに、2つ以上に分割されることで取り外し可能に構成される、二重容器。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れかに記載の二重容器であって、前記容器本体は、前記外殻を形成する外殻プリフォームと前記内袋を形成する内袋プリフォームを二重に組み合わせて二軸延伸ブロー成形することで形成される、二重容器。
【請求項8】
請求項7に記載の二重容器であって、
前記外殻プリフォームは射出成形されたプリフォームであり、前記内袋プリフォームは、ブロー成形されたチューブ状成形体である、二重容器。
【請求項9】
請求項1~請求項8の何れかに記載の二重容器であって、
内容物の減少に伴って前記内袋が収縮するよう構成される、二重容器。
【請求項10】
請求項1に記載の二重容器の分別方法であって、
前記引き出し部に他の部材を係合させて当該引き出し部を前記外殻の上端から引き上げるか、又は、前記引き出し部を把持して当該引き出し部を前記外殻の上端から引き上げて、前記内袋と前記外殻を分離する工程を備える、分別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外殻と内袋とを有する容器本体を備える二重容器が知られている。例えば、特許文献1には、外殻プリフォームと内袋プリフォームとを重ねた状態で二軸延伸ブロー成形を行い、内容物の減少に伴って内袋が収縮するよう構成された二重容器(いわゆる、積層剥離容器)を成形することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-10741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような二重容器の外殻と内袋とが別素材で成形されている場合や、使用後の内袋内に内容物が付着している場合等において、当該二重容器をリサイクルする際には、外殻と内袋とを分別することが望まれる。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、外殻から内袋を容易に取り出すことの可能な二重容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、外殻と内袋とを有する容器本体を備える二重容器であって、前記容器本体の口部は、前記外殻と前記内袋とが積層されることで構成され、前記口部において、前記内袋の上端部には、前記外殻の上端を上方側から塞ぐフランジ部が形成され、前記フランジ部は、前記外殻から前記内袋を引き出すための引き出し部を備える、二重容器が提供される。
【0007】
本発明によれば、内袋のフランジ部が引き出し部を備えていることから、当該引き出し部を外殻の口部の上端から引き上げることで、内袋を容易に引き出すことが可能となっている。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0009】
好ましくは、前記口部に装着され且つ内容物を吐出するキャップを備え、前記引き出し部は、前記フランジ部の少なくとも一部が前記外殻の上端の外縁よりも径方向外側に突出することで形成されており、前記キャップは、前記口部へ装着された際に前記引き出し部を保持する保持部を備える。
【0010】
好ましくは、前記キャップは、前記口部に形成された雄ねじ部に螺入される雌ねじ部が内周面に形成された筒状部を備え、前記保持部は、前記筒状部の内周面における前記雌ねじ部よりも上方の位置に形成され且つ前記引き出し部と係合する係合爪である。
【0011】
好ましくは、前記引き出し部は、前記外殻の上端と前記フランジ部の間であって周方向の少なくとも一部に、上下方向の隙間を設けることで形成される。
【0012】
好ましくは、前記フランジ部と前記外殻の上端との間に配置されるスペーサーを備え、前記隙間は、前記スペーサーを取り外すことで形成される。
【0013】
好ましくは、前記スペーサーは、周方向に亘って形成されるとともに、2つ以上に分割されることで取り外し可能に構成される。
【0014】
好ましくは、前記隙間は、前記フランジ部の下面の周方向の一部に窪みを設けることで形成される。
【0015】
好ましくは、前記容器本体は、前記外殻を形成する外殻プリフォームと前記内袋を形成する内袋プリフォームを二重に組み合わせて二軸延伸ブロー成形することで形成される。
【0016】
好ましくは、前記外殻プリフォームは射出成形されたプリフォームであり、前記内袋プリフォームは、ブロー成形されたチューブ状成形体である。
【0017】
好ましくは、内容物の減少に伴って前記内袋が収縮するよう構成される。
【0018】
また、本発明によれば、上記二重容器の分別方法であって、前記引き出し部に他の部材を係合させて当該引き出し部を前記外殻の上端から引き上げるか、又は、前記引き出し部を把持して当該引き出し部を前記外殻の上端から引き上げて、前記内袋と前記外殻を分離する工程を備える、分別方法好ましくは、前記引き出し部に他の部材を係合させて当該引き出し部を前記外殻の上端から引き上げるか、又は、前記引き出し部を把持して当該引き出し部を前記外殻の上端から引き上げて、前記内袋と前記外殻を分離する工程を備える、分別方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る二重容器1の上部を示す断面図である。
図2図1の二重容器1において、容器本体2にキャップ3を装着する前の状態を示す分解図である。
図3図1の二重容器1の容器本体2の口部22にキャップ3を装着した状態を示す拡大図である。
図4】二重容器1の製造工程の一例を示すものであり、外殻プリフォーム23Xへ内袋プリフォーム24Xを装着する工程を示す概略図である。
図5】外殻プリフォーム23Xと内袋プリフォーム24Xを重ねた状態を示す図である。
図6図3の二重容器1の容器本体2からキャップ3を取り外した様子を示す説明図である。
図7図7Aは、本発明の第2実施形態に係る二重容器1の上部を示す断面図であり、図7Bは、同二重容器1が備えるスペーサー4の平面図である。
図8図8Aは、図7Bのスペーサー4を取り外す前の状態を示す説明図であり、図8Bは、同スペーサー4を取り外した状態を示す説明図である。
図9図7Aの二重容器1の外殻23から内袋24を取り外す様子を示す説明図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る二重容器1の口部22を示す模式図である。
図11図10の二重容器1の外殻23から内袋24を取り外す様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0021】
1.第1実施形態
1-1.二重容器1の構成
本発明の第1実施形態に係る二重容器1は、いわゆるスクイズ式であり、図1に示すように、容器本体2と、キャップ3とを備える。
【0022】
容器本体2は、内容物を収容する収容部21と、収容部21から内容物を吐出する口部22とを備える。口部22は、図2及び図3に示すように、キャップ3を装着可能な雄ねじ部22aを備える。
【0023】
図1図3に示すように、容器本体2、すなわち収容部21及び口部22は、外殻23と内袋24とが積層されることで構成される。外殻23は、内袋24の外側に配置される。本実施形態の二重容器1は、いわゆる積層剥離容器であり、内容物が充填された内袋24は、内容物の減少に伴って外殻23から離れて収縮するようになっている。
【0024】
外殻23には、図1に示すように、収容部21に設けられた凹部21aにおいて、外気導入孔25が設けられている。外気導入孔25は、外殻23と内袋24の間の中間空間に外気を導入するための孔である。外気導入孔25には、外殻23と内袋24の間の中間空間への空気の出入りを調整するための弁部材26が装着されている。
【0025】
また、図2に示すように、口部22において、内袋24の上端部には、外殻23の上端23aを上方側から塞ぐフランジ部24aが形成されており、フランジ部24aの下面24bは、外殻23の上端23aと当接している。そして、フランジ部24aは、図2及び図3に示すように、その先端が周方向に亘って外殻23の上端23aの外縁よりも径方向外側に突出する突出部24a1を備えており、突出部24a1は外殻23から内袋24を引き出すための引き出し部として機能する。
【0026】
ここで、本実施形態の容器本体2は、図4及び図5に示すように、外殻23を形成する外殻プリフォーム23Xと内袋24を形成する内袋プリフォーム24Xを二重に組み合わせ、その後赤外線ヒーターで温めて二軸延伸ブロー成形することで形成される。
【0027】
本実施形態において、外殻プリフォーム23Xは、射出成形機を用いて射出成形されたプリフォーム(射出成形プリフォーム)である。ただし、外殻プリフォーム23Xを押出成形等によって成形することも可能である。また、外殻プリフォーム23Xの構成材料、したがって成形される外殻23の構成材料としては、任意の熱可塑性樹脂が挙げられ、二重容器1の用途や性能等に応じて適宜選択することができる。容器本体2を復元性があって且つ自立性の容器とするためには、例えば、外殻23としてある程度剛性のある材料を選定すること好適である。熱可塑性樹脂としては、リサイクル性に優れたPET(ポリエチレンテレフタレート)を用いることが好ましく、耐熱性PETとすることも好適である。ただし、熱可塑性樹脂として、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等を用いることも可能である。
【0028】
また、外殻23を多層構成とすることも可能である。例えば、2層のプリフォームや、商品名ナイロンMXD6、商品名ナイロンMXD6+脂肪酸塩、PGA(ポリグリコール酸)、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)またはPEN(ポリエチレンナフタレート)等のガスバリア性や遮光性を有する樹脂を中間層とする3層以上からなるプリフォームとすることも可能である。
【0029】
一方、本実施形態において、内袋プリフォーム24Xは、溶融状態の筒状のパリソンを一対の分割金型で挟んでパリソン内部にエアーを吹き込むダイレクトブロー成形により成形されたチューブ状成形体とすることが好ましい。ただし、内袋プリフォーム24Xを、プリフォームを再加熱してブローするインジェクションブローにより成形することも可能ある。内袋プリフォーム24Xの構成材料、したがって成形される内袋24の構成材料についても、付与する機能性に応じて、適宜、材質や添加剤等を選定することができるが、オレフィン系樹脂とすることが好適である。付与する機能性としては、低吸着性、酸素バリア性、遮光性等が挙げられる。例えば、低吸着性を付与するためには、環状ポリオレフィン樹脂等を用いることが好適である。また、酸素バリア性を付与するためには、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)を用いることが好適であり、EVOHは、延伸適性タイプとすることが好ましい。さらに、遮光性を付与するためには、着色材や紫外線吸収剤等を添加すればよい。また、内袋24は、多層構成とすることが好適であり、オレフィン多層構成、特に、PE多層構成とすることが好ましい。この場合、最内層をEVOHとすれば、柑橘成分の吸着防止も可能である。なお、内袋24の構成材料は、内袋24が外殻23から剥離自在とするため、外殻23の構成材料との間で互いに接着性のないものを選択することが好ましい。
【0030】
また、内袋24の層構成は、具体的には例えば、容器内側から順に、PE層/リプロ層/接着層/EVOH層/接着層/PE層とするのが好適である。ここで、リプロ層は、容器の成形時に出たバリをリサイクルして使用した材料からなるものである。また、内袋24の層構成は、最内層をEVOH層とする場合には、容器内側から順に、EVOH層/接着層/EVOH層/接着層/リプロ層/PE層とするのが好適である。
【0031】
なお、外殻プリフォーム23Xと内袋プリフォーム24Xを重ね合わせて二軸延伸ブロー成形を行う際、口部22については金型から露出させ、ブロー成形を行わない。つまり、本実施形態の二重容器1の口部22の形状は、外殻プリフォーム23X及び内袋プリフォーム24Xの成形時に決められることになる。したがって、口部22における外殻23及び内袋24(フランジ部24aを含む)は、それぞれ収容部21における外殻23及び内袋24よりも厚肉であり、高硬度となっている。また、外殻プリフォーム23Xと内袋プリフォーム24Xを重ね合わせた状態において、外殻プリフォーム23Xの上端23aと内袋プリフォーム24Xのフランジ部24aは当接するようになっている(図5参照)。
【0032】
キャップ3は、図2に示すように、キャップ本体31と、ヒンジ32により当該キャップ本体31と接続されたキャップカバー33とを備える。キャップ本体31は、主キャップ部材34と、逆止弁35と、吐出部材36の3つの部材から構成される。
【0033】
主キャップ部材34は、筒状部としての外側筒部34aと、外側筒部34aの内部に配置される内側筒部34bと、これらの上端同士を接続する環状部34cとから構成される。外側筒部34aの内周面には、容器本体2の口部22の雄ねじ部22aと螺合する雌ねじ部34dが形成される。また、内側筒部34bの内側には、逆止弁35を支持する弁座34eが形成される。外側筒部34aと内側筒部34bの間には、容器本体2の口部22の先端が挿入される挿入空間Sが形成される。
【0034】
逆止弁35は、弁体35aと、弁体35aから放射状に延びる弾性片35bと、弾性片35bを支持する環状支持部35cとを備える。環状支持部35cは、下方が弁座34eに支持されるとともに、上方が吐出部材36がキャップ本体31の環状部34cに係合することで保持され、主キャップ部材34の内側筒部34b内に固定される。この際、弁体35aは、弁座34eの中央に着座する。そして、逆止弁35は、収容部21内(内袋24内)の圧力が上昇すると、弁体35aが弁座34eから押し上げられるよう構成される。これにより、容器本体2の収容部21をスクイズすることで、収容部21内の内容物を吐出部材36の吐出口36aから吐出可能となっている。また、スクイズを止めると、弁体35aを支持する逆止弁35の弾性片35bの付勢力により、逆止弁35が閉じるようになっている。このような構成により、本実施形態の二重容器1では、内袋24内への外気の流入が防止されるため、内容物の劣化が抑制されるようになっている。
【0035】
また、本実施形態のキャップ3は、容器本体2の口部22へ装着された際に内袋24のフランジ部24aを保持する保持部としての係合爪34fを備える。係合爪34fは、主キャップ部材34の外側筒部34aの内周面であって環状部34c近傍の位置に設けられる。係合爪34fは、具体的には、径方向内側に向かって、言い換えると挿入空間Sに向かって突出する突起である。係合爪34fは、外側筒部34aの内周面において周方向に亘って形成されていてもよく、フランジ部24aと係合するのであれば、周方向の一部にのみ形成されていても良い。
【0036】
1-2.キャップ3の装着
図2は、容器本体2にキャップ3を装着する前の状態を示す分解図であり、図3は、容器本体2の口部22にキャップ3を装着した状態を示す拡大図である。図2及び図3に示すように、本実施形態のキャップ3は、その挿入空間Sに容器本体2の口部22の先端を挿入し、口部22に形成された雄ねじ部22aにキャップ3の外側筒部34aに形成された雌ねじ部34dを螺合することで、容器本体2に装着される。
【0037】
ここで、本実施形態の二重容器1は、容器本体2側では内袋24のフランジ部24aが径方向外側に突出した突出部24a1を有し、キャップ3側では、主キャップ部材34の外側筒部34aの内周面に係合爪34fを有している。そして、キャップ3が完全に装着されると、図3に示すように、これら突出部24a1と係合爪34fが係合し、内袋24がキャップ3に保持されるようになっている。
【0038】
1-3.二重容器1の使用
上記のようにしてキャップ3が装着された二重容器1は、スクイズ式の容器であり、キャップ3を口部22に装着した状態で口部22を下側に向けて傾斜させた状態で外殻23を圧縮することによって内容物を吐出することができる。この際、外殻23の圧縮に伴って弁部材26が閉塞され、その結果、外殻23と内袋24の間の中間空間の圧力が高まり、その圧力によって内袋24が圧縮されると、内容物によって逆止弁35が押されて逆止弁35が開状態になって内容物が逆止弁35を通過する。逆止弁35を通過した内容物は、吐出部材36の吐出口36aから吐出される。
【0039】
内容物の吐出後に外殻23に加えていた力を除くと、外殻23が復元力によって元の形状に戻ろうとする。すると、中間空間が減圧状態になることによって弁部材26が開状態となり、外気導入孔25を通じて中間空間に外気が導入されて外殻23が元の形状に復元する。また、中間空間の圧力低下に伴って内容物に加わっていた圧力も低下して逆止弁35が閉状態となり、内袋24が密閉状態となる。
【0040】
なお、内容物が減少すると、内袋24は、収容部21においては薄肉であるため外殻23から離れて収縮するようになっている(図6参照)。ただし、内袋24は、口部22においては、上述したように外殻23と内袋24を重ね合わせた状態でブロー成形を行わないため剛性を有している。したがって、二重容器1の使用中、収容部21において内袋24が収縮しても、フランジ部24aの突出部24a1とキャップ3の係合爪34fの係合状態は維持される。
【0041】
1-3.分別方法
次に、二重容器1の廃棄(リサイクル)にあたって二重容器1を分別する方法、具体的には、外殻23から内袋24を取り出して外殻23と内袋24とを分離させる方法を説明する。なお、分離前の容器本体2にキャップ3が装着された状態においては、上述したように、内袋24のフランジ部24aに形成された突出部24a1とキャップ3の係合爪34fが係合することで、内袋24がキャップ3に保持されている(図3参照)。
【0042】
二重容器1の廃棄にあたっては、キャップ3を回して容器本体2の雄ねじ部22aとキャップ3の雌ねじ部34dの螺合を解消し、容器本体2に対してキャップ3を上方に持ち上げる。すると、内袋24のフランジ部24a(突出部24a1)とキャップ3の係合爪34fとは係合状態が維持されるため、図6に示すように、内袋24がキャップ3の上昇に伴って引き上げられる。ここで、内袋24は、内容物を全て吐出させた後には外殻23から剥離した状態となっているため、外殻23から容易に引き出すことが可能である。
【0043】
以上のように、本実施形態の二重容器1の分別方法は、引き出し部としてのフランジ部24aの突出部24a1に他の部材としてのキャップ3の係合爪34fを係合させてフランジ部24aを外殻23の上端23aから引き上げることで、内袋24と外殻23を分離する工程を備えた方法となっている。
【0044】
1-4.作用効果
本実施形態の二重容器1によれば、内袋24のフランジ部24aが外殻23の上端23aの外縁よりも径方向外側に突出した突出部24a1を備えていることで、当該突出部24a1が外殻23から内袋24を引き出すための引き出し部として機能する。そして、容器本体2にキャップ3を装着すると当該突出部24a1がキャップ3の係合爪34fと係合するため、使用後に容器本体2からキャップ3を取り外して上方に持ち上げることで、内袋24を外殻23から引き出すことが可能となっている。そして、内袋24を外殻23から完全に引き出すことで、外殻23と内袋24を容易に分離し、分別して廃棄等することが可能となっている。
【0045】
また、本実施形態の二重容器1を積層剥離容器とし、例えば、外殻23をPET、内袋24をオレフィン多層構成とすることで、内袋24もPETにより成形する場合と比較して当該内袋24が柔軟になる。内袋24をPETにより成形する場合には、内袋が縮みにくいため内容量の減少に伴って吐出の際に大きなスクイズ力が必要になるが、内袋24をオレフィン多層構成とすることで、スクイズの際の使用感を向上させ、内容物が減少しても同じスクイズ力で内容物を吐出させることが可能となる。さらに、内袋24をバイオマスPEで作製すれば、容器本体2全体をエコな素材とすることも可能である。
【0046】
1-5.第1実施形態の変形例
なお、上記第1実施形態に係る発明は、以下の各態様でも実施可能である。
【0047】
(1)上記実施形態では、内袋24のフランジ部24aは、周方向に亘って外殻23の上端23aの外縁よりも径方向外側に突出する突出部24a1を備えていた。しかしながら、フランジ部24aは、その少なくとも一部が外殻23の上端23aの外縁よりも径方向外側に突出していれば、引き出し部として機能する。つまり、フランジ部24aの当該突出部分がキャップ3の係合爪34fと係合することで、キャップ3を取り外す際に内袋24を引き出すことができる。
【0048】
(2)上記実施形態では、容器本体2の口部22が雄ねじ部22aを備え、キャップ3が雌ねじ部34dを備えるネジ式キャップであったが、打栓式のキャップ3であっても良い。打栓式のキャップ3の場合も、打栓された際に内袋24のフランジ部24aとキャップ3の係合爪34fとが係合するよう構成することで、キャップ3を取り外すとともに内袋24を引き出すことが可能である。
【0049】
(3)上記実施形態では、フランジ部24a(突出部24a1)を保持する保持部として、キャップ3は径方向内側に向かって突出する突起である係合爪34fを備えていた。しかしながら、キャップ3を装着した際にフランジ部24aを保持することができれば、係合爪34fを備えていなくても良い。保持部の他の構成としては、例えば、挿入空間S(図2参照)内でフランジ部24aを挟着する構成が挙げられる。
【0050】
(4)上記実施形態では、フランジ部24aに形成された突出部24a1をキャップ3に係合させて内袋24を引き出す構成であった。しかしながら、突出部24a1をキャップ3に係合させず、キャップ3を取り外した後に突出部24a1を把持して当該フランジ部24aを外殻23の上端23aから引き上げ、内袋24と外殻23を分離するようにしても良い。
【0051】
2.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態に係る二重容器1について説明する。本実施形態の二重容器1は、第1実施形態の二重容器1と類似しているため、以下、第1実施形態と同様の構成要素についてはその説明を省略する。
【0052】
本実施形態の二重容器1の容器本体2は、図7Aに示すように、内袋24のフランジ部24aが外殻23の上端23aの外縁よりも径方向外側に突出していない。その代わりに、外殻23から内袋24を引き出すための引き出し部は、外殻23の上端23aとフランジ部24aの間であって周方向の少なくとも一部に、上下方向の隙間R(図8B参照)を設けることで形成される。すなわち、本実施形態のフランジ部24aは、外殻23との間に隙間Rがあることによって引き出し部として機能する。
【0053】
より具体的に説明すると、本実施形態の二重容器1は、成形過程において例えば外殻プリフォーム23Xと内袋プリフォーム24Xを重ね合わせる際(図4参照)、図7A及び図8Aに示すように、内袋24のフランジ部24aと外殻23の上端23aの間にスペーサー4(図7B参照)を配置する。スペーサー4は、円弧状であり、口部22において周方向に亘って形成されるとともに、2つに分割されることで取り外し可能に構成される。ただし、二重容器1は、一対のスペーサー4を配置した状態で容器として使用される。そして、二重容器1の使用後、当該二重容器1を外殻23と内袋24とに分離する際には、図8Bに示すように、スペーサー4を取り外すことで、内袋24のフランジ部24aと外殻23の上端23aの間に上下方向の隙間Rを形成する。
【0054】
本実施形態の二重容器1は、隙間Rを形成することによって、二重容器1を分離させる際に内袋24のフランジ部24aを容易に把持できるようになり、図9に示すように、外殻23から内袋24を容易に引き出せるようになっている。
【0055】
このような構成によっても、フランジ部24aに外殻23から内袋24を引き出すための引き出し部を構成することが可能であり、二重容器1を容易に分別して廃棄等することができる。つまり、本実施形態における二重容器1の分別方法は、内袋24のフランジ部24aと外殻23の上端23aの間に配置されたスペーサー4を取り外す工程と、スペーサー4を取り外した状態でフランジ部24aを把持して当該フランジ部24aを外殻23の上端23aから引き上げ、内袋24と外殻23を分離する工程とを備えた方法といえる。
【0056】
3.第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態に係る二重容器1について説明する。本実施形態の二重容器1は、第1実施形態の二重容器1と類似しているため、以下、第1実施形態と同様の構成要素についてはその説明を省略する。
【0057】
本実施形態の二重容器1の容器本体2は、図10に示すように、内袋24のフランジ部24aが外殻23の上端23aの外縁よりも径方向外側に突出していない。本実施形態においても、第2実施形態と同様、外殻23から内袋24を引き出すための引き出し部は、外殻23の上端23aとフランジ部24aの間であって周方向の少なくとも一部に、上下方向の隙間Rを設けることで形成される。すなわち、本実施形態のフランジ部24aは、外殻23との間に隙間Rがあることによって引き出し部として機能する。
【0058】
より具体的に説明すると、本実施形態の二重容器1において、隙間Rは、フランジ部24aの下面24bの周方向の一部に窪み24cを設けることで形成される。窪み24cは、例えば、周方向の対向する2ヶ所に設けることが好適である。ただし、窪み24cの形状及び数は、フランジ部24aを指でつまんで内袋24を引き出しやすければ、任意に設計することができる。
【0059】
本実施形態の二重容器1は、隙間Rを形成することによって、二重容器1を分離させる際に内袋24のフランジ部24aを容易に把持できるようになり、図11に示すように、外殻23から内袋24を容易に引き出せるようになっている。
【0060】
このような構成によっても、フランジ部24aに外殻23から内袋24を引き出すための引き出し部を構成することが可能であり、二重容器1を容易に分別して廃棄等することが可能となっている。つまり、本実施形態における二重容器1の分別方法は、窪み24cを有するフランジ部24aを把持して当該フランジ部24aを外殻23の上端23aから引き上げ、内袋24と外殻23を分離する工程を備えた方法といえる。
【0061】
なお、本実施形態の内袋24の構成を有する容器本体2に対し、窪み24cと嵌り合う突起を備えたキャップ3を装着し、第1実施形態と同様、キャップ3を取り外すことで内袋24を引き出す構成とすることも可能である。
【0062】
4.その他の変形例
上記実施形態では、二重容器1はスクイズ式であり、口部22を下側に向けて傾斜させた状態で外殻23を圧縮することによって内容物を吐出する構成であった。しかしながら、二重容器1を、口部22にポンプを取り付け、ポンプの作用によって内袋24内へ挿入したチューブを介して内容物を吸い上げて吐出するポンプ式とすることも可能である。なお、ポンプ式の二重容器1とする場合は、外気導入孔25及び弁部材26は設けず、収容部21の底部を開放して、底部から外気を導入する構成とすることが好適である。
【0063】
上記実施形態の二重容器1は、内容物の減少に伴って内袋24が収縮する積層剥離容器であった。しかしながら、本発明の二重容器1は、使用時に内袋24が収縮しないものであっても良い。つまり、この場合、内袋24は、剥離はしないものの外殻23とは接着しておらず、外殻23から簡単に分離できるよう構成される。このように使用時に内袋24が剥離しない二重容器1であっても、使用後に内袋24を取り出すことで、外殻23と分別して廃棄処分することが可能である。そして、このような構成によれば、一般的にはリサイクルに向かないとされるドレッシングやソース用の容器としてPET容器を用いることが可能となる。つまり、内袋24として酸素バリア性に優れる材料を使用しつつも、使用後に内袋24を取り外すことができるため、内容物の付着していないPET製の外殻23をリサイクルすることが可能となっている。
【符号の説明】
【0064】
1 :二重容器
2 :容器本体
3 :キャップ
4 :スペーサー
21 :収容部
21a :凹部
22 :口部
22a :雄ねじ部
23 :外殻
23X :外殻プリフォーム
23a :上端
24 :内袋
24X :内袋プリフォーム
24a :フランジ部
24a1 :突出部(引き出し部)
24b :下面
24c :窪み
25 :外気導入孔
26 :弁部材
31 :キャップ本体
32 :ヒンジ
33 :キャップカバー
34 :主キャップ部材
34a :外側筒部(筒状部)
34b :内側筒部
34c :環状部
34d :雌ねじ部
34e :弁座
34f :係合爪(保持部)
35 :逆止弁
35a :弁体
35b :弾性片
35c :環状支持部
36 :吐出部材
36a :吐出口
R :隙間
S :挿入空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11