(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】未加硫ゴム部材の巻取り方法および装置並びにタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/08 20060101AFI20241225BHJP
B65H 18/10 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
B29D30/08
B65H18/10
(21)【出願番号】P 2021071053
(22)【出願日】2021-04-20
【審査請求日】2024-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】宇和 紘志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭佑
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-161714(JP,A)
【文献】特開2006-205662(JP,A)
【文献】特開平05-301300(JP,A)
【文献】特開平07-290596(JP,A)
【文献】特表2003-512213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/72
B65H 18/00-18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の未加硫ゴム部材を、ライナを介在させて渦巻き状に巻き取る未加硫ゴム部材の巻取り方法において、
前記ライナが、ライナ幅方向両端部にライナ厚さ方向に突出して長手方向に延在する桟部を有し、それぞれの前記桟部の間に前記未加硫ゴム部材を収容して渦巻き状に巻き取り、半径方向に隣り合う前記ライナの間にそれぞれの前記桟部を介在させて前記未加硫ゴム部材には外周側に位置する前記ライナを非接触状態にして、かつ、前記未加硫ゴム部材の長手方向先端部および後端部では、前記未加硫ゴム部材と外周側に位置する前記ライナとの間に押圧体を介在させて、前記押圧体によって前記先端部および前記後端部を、内周側に位置する前記ライナに押圧することを特徴とする未加硫ゴム部材の巻取り方法。
【請求項2】
前記押圧体が、前記未加硫ゴム部材よりも柔らかい軟質層と、この軟質層の外周側に積層されて前記未加硫ゴム部材よりも硬い硬質層とを一体化した積層構造である請求項1に記載の未加硫ゴム部材の巻取り方法。
【請求項3】
前記押圧体として、前記先端部を覆う押圧体と、前記後端部を覆う押圧体との2つを使用する請求項1または2に記載の未加硫ゴム部材の巻取り方法。
【請求項4】
前記押圧体として、前記未加硫ゴム部材の全長を覆う1つの押圧体を使用する請求項1または2に記載の未加硫ゴム部材の巻取り方法。
【請求項5】
長尺の未加硫ゴム部材を、ライナを介在させて渦巻き状に巻き取る未加硫ゴム部材の巻取り方法において、
前記未加硫ゴム部材を前記ライナに載置して渦巻き状に巻き取り、前記未加硫ゴム部材の全長を覆う押圧体を、前記未加硫ゴム部材と外周側に位置する前記ライナとの間に介在させて、前記押圧体が、その幅方向両端部に厚み方向に突出してその長手方向に延在する桟部を有し、それぞれの前記桟部の間に前記未加硫ゴム部材を収容し、半径方向に隣り合う前記ライナの間にそれぞれの前記桟部を介在させて前記未加硫ゴム部材には外周側に位置する前記ライナを非接触状態にして、かつ、前記押圧体によって前記未加硫ゴム部材を内周側に位置する前記ライナに押圧することを特徴とする未加硫ゴム部材の巻取り方法。
【請求項6】
前記押圧体のそれぞれの前記桟部の間の範囲が、前記未加硫ゴム部材よりも柔らかい軟質層と、この軟質層の外周側に積層されて前記未加硫ゴム部材よりも硬い硬質層とを一体化した積層構造である請求項5に記載の未加硫ゴム部材の巻取り方法。
【請求項7】
一対の回転可能な巻き芯と、これら巻き芯によって巻き取りおよび繰り出しされるライナと、前記ライナに対して長尺の未加硫ゴム部材を供給するゴム部材搬送手段とを備えて、前記未加硫ゴム部材が前記ライナを介在させていずれか一方の前記巻き芯に渦巻き状に巻き取られる構成にした未加硫ゴム部材の巻取り装置において、
前記ライナがライナ幅方向両端部にライナ厚さ方向に突出して長手方向に延在する桟部を有し、それぞれの前記桟部の間に前記未加硫ゴム部材が収容されて渦巻き状に巻き取られて、半径方向に隣り合う前記ライナの間にそれぞれの前記桟部を介在させて前記未加硫ゴム部材には外周側に位置する前記ライナが非接触状態になり、かつ、前記未加硫ゴム部材の長手方向先端部および後端部で、前記未加硫ゴム部材と外周側に位置する前記ライナとの間に介在する押圧体を備えて、前記先端部および前記後端部は前記押圧体によって内周側に位置する前記ライナに押圧される構成にしたことを特徴とする未加硫ゴム部材の巻取り装置。
【請求項8】
一対の回転可能な巻き芯と、これら巻き芯によって巻き取りおよび繰り出しされるライナと、前記ライナに対して長尺の未加硫ゴム部材を供給するゴム部材搬送手段とを備えて、前記未加硫ゴム部材が前記ライナを介在させていずれか一方の前記巻き芯に渦巻き状に巻き取られる構成にした未加硫ゴム部材の巻取り装置において、
前記ライナに載置された前記未加硫ゴム部材が渦巻き状に巻き取られ、前記未加硫ゴム部材の全長を覆う押圧体を備えて、前記押圧体がその幅方向両端部に厚み方向に突出してその長手方向に延在する桟部を有し、それぞれの前記桟部の間に前記未加硫ゴム部材が収容されて、前記未加硫ゴム部材と外周側に位置する前記ライナとの間に前記押圧体が介在して、半径方向に隣り合う前記ライナの間にはそれぞれの前記桟部が介在して前記未加硫ゴム部材には外周側に位置する前記ライナが非接触状態になり、かつ、前記押圧体によって前記未加硫ゴム部材が内周側に位置する前記ライナに押圧される構成にしたことを特徴とする未加硫ゴム部材の巻取り装置。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載の未加硫ゴム部材の巻取り方法によって巻き取られていた前記未加硫ゴム部材を繰り出して、定尺に切断して形成された定尺部材を用いてグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫することを特徴とするタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫ゴム部材の巻取り方法および装置並びにタイヤの製造方法に関し、さらに詳しくは、巻き取られていた長尺の未加硫ゴム部材を定尺に切断して形成されたそれぞれの定尺部材の所定形状を維持しつつ、形状のばらつきを抑制できる未加硫ゴム部材の巻取り方法および装置並びにこの定尺部材を使用したタイヤの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ等のゴム製品を製造する工程では、押出機等によって押出された長尺の未加硫ゴム部材を、ライナを介在させて巻取り装置によって巻き取って一時的に保管することがある。巻き取られていた長尺の未加硫ゴム部材は、必要時に繰り出されて定尺に切断されて使用される。従来、様々なライナが提案されていて、幅方向両端部に桟を備えている桟付きライナなど様々なタイプがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1で提案されているような桟付きライナを使用した場合、巻き取られた長尺の未加硫ゴム部材は、内周側のライナと外周側のライナとの間に桟が介在するため、外周側のライナによって押し潰されることがなく所定形状を維持するには適している。一方、特許文献2で提案されているライナは桟の代わりに、流体の注入によって膨張する弾性体で形成された押圧体を備えている。この押圧体は、未加硫ゴム部材と外周側のライナとの間に介在して未加硫ゴム部材に当接する。押圧体によって強く押圧されると未加硫ゴム部材は大きく変形するので所定形状を維持するには不利である。
【0004】
ところで、押出された未加硫ゴム部材は、経時変形することが知られている。一般に、未加硫ゴム部材は経時的に長手方向には収縮し、幅寸法および厚さ寸法は増大する。ライナを介在させて巻き取られている長尺の未加硫ゴム部材は、内周側の非伸縮性のライナに付着しているのでこの経時変形は抑制される。しかしながら、桟付きライナを使用した場合、未加硫ゴム部材の長手方向先端および後端は自由端であるため、他の部位(長手方向中央部)に比して内周側のライナに対する付着具合が弱くなる。それ故、巻き取られて保管されている長尺の未加硫ゴム部材の長手方向先端部および後端部は、他の部位(長手方向中央部)に比して経時変形が大きくなる。
【0005】
その結果、巻き取られていた長尺の未加硫ゴム部材の長手方向先端部および後端部を定尺に切断した定尺部材と、他の部位を定尺に切断した定尺部材とでは、長手方向寸法は同じであっても、幅寸法および厚さ寸法に差異が生じる。即ち、長尺の未加硫ゴム部材を定尺に切断する位置に起因して、切断したそれぞれの定尺部材では、幅寸法および厚さ寸法にばらつきが生じて形状がばらつく。これに伴い、それぞれの定尺部材の重量にもばらつきが生じる。このように形状のばらつきが大きい定尺部材を使用してタイヤを製造すると、タイヤ重量の過不足につながり、タイヤの走行性能などに悪影響が生じる場合がある。そのため、巻き取られていた長尺の未加硫ゴム部材を定尺に切断して形成されたそれぞれの定尺部材の形状のばらつきを抑制するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-301300号公報
【文献】特開2004-358823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、巻き取られていた長尺の未加硫ゴム部材を定尺に切断して形成されたそれぞれの定尺部材の所定形状を維持しつつ、形状のばらつきを抑制できる未加硫ゴム部材の巻取り方法および装置並びにこの定尺部材を使用したタイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の未加硫ゴム部材の巻取り方法は、長尺の未加硫ゴム部材を、ライナを介在させて渦巻き状に巻き取る未加硫ゴム部材の巻取り方法において、前記ライナが、ライナ幅方向両端部にライナ厚さ方向に突出して長手方向に延在する桟部を有し、それぞれの前記桟部の間に前記未加硫ゴム部材を収容して渦巻き状に巻き取り、半径方向に隣り合う前記ライナの間にそれぞれの前記桟部を介在させて前記未加硫ゴム部材には外周側に位置する前記ライナを非接触状態にして、かつ、前記未加硫ゴム部材の長手方向先端部および後端部では、前記未加硫ゴム部材と外周側に位置する前記ライナとの間に押圧体を介在させて、前記押圧体によって前記先端部および前記後端部を、内周側に位置する前記ライナに押圧することを特徴とする。
【0009】
本発明の別の未加硫ゴム部材の巻取り方法は、長尺の未加硫ゴム部材を、ライナを介在させて渦巻き状に巻き取る未加硫ゴム部材の巻取り方法において、前記未加硫ゴム部材を前記ライナに載置して渦巻き状に巻き取り、前記未加硫ゴム部材の全長を覆う押圧体を、前記未加硫ゴム部材と外周側に位置する前記ライナとの間に介在させて、前記押圧体が、その幅方向両端部に厚み方向に突出してその長手方向に延在する桟部を有し、それぞれの前記桟部の間に前記未加硫ゴム部材を収容し、半径方向に隣り合う前記ライナの間にそれぞれの前記桟部を介在させて前記未加硫ゴム部材には外周側に位置する前記ライナを非接触状態にして、かつ、前記押圧体によって前記未加硫ゴム部材を内周側に位置する前記ライナに押圧することを特徴とする。
【0010】
本発明の未加硫ゴム部材の巻取り装置は、一対の回転可能な巻き芯と、これら巻き芯によって巻き取りおよび繰り出しされるライナと、前記ライナに対して長尺の未加硫ゴム部材を供給するゴム部材搬送手段とを備えて、前記未加硫ゴム部材が前記ライナを介在させていずれか一方の前記巻き芯に渦巻き状に巻き取られる構成にした未加硫ゴム部材の巻取り装置において、前記ライナがライナ幅方向両端部にライナ厚さ方向に突出して長手方向に延在する桟部を有し、それぞれの前記桟部の間に前記未加硫ゴム部材が収容されて渦巻き状に巻き取られて、半径方向に隣り合う前記ライナの間にそれぞれの前記桟部を介在させて前記未加硫ゴム部材には外周側に位置する前記ライナが非接触状態になり、かつ、前記未加硫ゴム部材の長手方向先端部および後端部で、前記未加硫ゴム部材と外周側に位置する前記ライナとの間に介在する押圧体を備えて、前記先端部および前記後端部は前記押圧体によって内周側に位置する前記ライナに押圧される構成にしたことを特徴とする。
【0011】
本発明の別の未加硫ゴム部材の巻取り装置は、一対の回転可能な巻き芯と、これら巻き芯によって巻き取りおよび繰り出しされるライナと、前記ライナに対して長尺の未加硫ゴム部材を供給するゴム部材搬送手段とを備えて、前記未加硫ゴム部材が前記ライナを介在させていずれか一方の前記巻き芯に渦巻き状に巻き取られる構成にした未加硫ゴム部材の巻取り装置において、前記ライナに載置された前記未加硫ゴム部材が渦巻き状に巻き取られ、前記未加硫ゴム部材の全長を覆う押圧体を備えて、前記押圧体がその幅方向両端部に厚み方向に突出してその長手方向に延在する桟部を有し、それぞれの前記桟部の間に前記未加硫ゴム部材が収容されて、前記未加硫ゴム部材と外周側に位置する前記ライナとの間に前記押圧体が介在して、半径方向に隣り合う前記ライナの間にはそれぞれの前記桟部が介在して前記未加硫ゴム部材には外周側に位置する前記ライナが非接触状態になり、かつ、前記押圧体によって前記未加硫ゴム部材が内周側に位置する前記ライナに押圧される構成にしたことを特徴とする。
【0012】
本発明のタイヤの製造方法は、上記のいずれかの未加硫ゴム部材の巻取り方法によって巻き取られていた前記未加硫ゴム部材を繰り出して、定尺に切断して形成された定尺部材を用いてグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の未加硫ゴム部材の巻取り方法および装置によれば、前記ライナまたは前記押圧体の幅方向両端部に突設されたそれぞれの桟部が、半径方向に隣り合う前記ライナの間に介在して長尺の前記未加硫ゴム部材には外周側に位置する前記ライナが非接触状態になる。そのため、前記未加硫ゴム部材は外周側に位置するライナによって押し潰されることがなく所定形状を維持するには有利になる。そして、前記未加硫ゴム部材の長手方向先端部および後端部は、前記押圧体によって内周側に位置する前記ライナに押圧されるので、この先端部および後端部は、内周側に位置する前記ライナに確実に付着する。前記ライナは非伸縮性なので、前記ライナの剛性によって前記未加硫ゴム部材の先端部および後端部の経時変形が抑制されて、他の部位(長手方向中央部)の経時変形との差異が実質的に無くなる。その結果、長尺の前記未加硫ゴム部材を定尺に切断して形成されたそれぞれの定尺部材の所定形状を維持しつつ、形状のばらつきを抑制するには有利になる。
【0014】
本発明のタイヤの製造方法によれば、長尺の前記未加硫ゴム部材を定尺に切断して形成されたそれぞれの定尺部材は所定形状を維持しつつ形状のばらつきが抑制されている。そのため、いずれの定尺部材を使用してタイヤを製造しても、目標仕様に合致したタイヤを製造するには有利になる。また、製造されたそれぞれのタイヤの品質のばらつきを抑制するにも有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の未加硫ゴム部材の巻取り装置を側面視で例示する説明図である。
【
図2】
図1の巻取り装置を平面視で例示する説明図である。
【
図3】ライナおよび押圧体を横断面視で例示する説明図である。
【
図4】
図3のライナおよび押圧体を縦断面視で例示する説明図である。
【
図5】長尺の未加硫ゴム部材を一方の巻き芯に巻き取り始める状態を側面視で例示する説明図である。
【
図6】
図5の長尺の未加硫ゴム部材の先端部に押圧体を載置する状態を側面視で例示する説明図である。
【
図7】
図6の押圧体を長尺の未加硫ゴム部材とともに一方の巻き芯に巻き取る状態を側面視で例示する説明図である。
【
図8】押圧体が載置された長尺の未加硫ゴム部材がライナに載置されている状態を横断面視で例示する説明図である。
【
図9】
図8のライナ、押圧体および長尺の未加硫ゴム部材を縦断面視で例示する説明図である。
【
図10】
図8の押圧体の外周側にライナを介在させて長尺の未加硫ゴム部材が巻き取られた状態を横断面視で例示する説明図である。
【
図11】
図10のライナ、押圧体および長尺の未加硫ゴム部材を縦断面視で例示する説明図である。
【
図12】長尺の未加硫ゴム部材が巻取り装置に巻き取られて保管されている状態を側面視で例示する説明図である。
【
図13】従来の桟付きライナを介在させて巻き取られた状態の長尺の未加硫ゴム部材の先端部を縦断面視で模式的に例示する説明図である。
【
図14】従来の桟付きライナを介在させて巻き取られた状態の長尺の未加硫ゴム部材の後端部を縦断面視で模式的に例示する説明図である。
【
図15】押圧体の別の実施形態とライナを横断面視で例示する説明図である。
【
図16】
図15の押圧体およびライナを縦断面視で例示する説明図である。
【
図17】
図15の押圧体が載置された長尺の未加硫ゴム部材がライナに載置されている状態を横断面視で例示する説明図である。
【
図18】
図17のライナ、押圧体および長尺の未加硫ゴム部材を縦断面視で例示する説明図である。
【
図19】
図17の押圧体の外周側にライナを介在させて、長尺の未加硫ゴム部材および押圧体が巻き取られた状態を横断面視で例示する説明図である。
【
図20】
図19のライナ、押圧体および長尺の未加硫ゴム部材を縦断面視で例示する説明図である。
【
図21】長尺の未加硫ゴム部材が巻き取られて保管されている巻取り装置の別の実施形態を側面視で例示する説明図である。
【
図22】巻取られていた長尺の未加硫ゴム部材を繰り出して定尺に切断する工程を側面視で例示する説明図である。
【
図23】成形されたグリータイヤの上半分を横断面視で例示する説明図である。
【
図24】
図23のグリーンタイヤを加硫している加硫装置の左半分を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の未加硫ゴム部材の巻取り方法および装置並びにタイヤの製造方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0017】
図1、2に例示する本発明の未加硫ゴム部材の巻取り装置1(以下、巻取り装置1という)の実施形態は、長尺の未加硫ゴム部材LR(以下、長尺部材LRという)をライナ7を介在させて渦巻き状に巻き取ってストックする。長尺部材LRは例えば、ゴム押出機やこれに類する装置から押出されて所定の断面形状に型付けされている。
【0018】
巻取り装置1に巻き取られた長尺部材LRは、必要な時に、巻取り装置1から繰り出され、所定長さに切断されて定尺部材SRに形成される。定尺部材SRとしては、タイヤのトレッドゴム、サイドゴムなど、ゴム製品に使用される種々の部材を例示できる。長尺部材LRの長さは特に限定されないが例えば2m~120m程度である。
【0019】
巻取り装置1は、一対の回転可能な巻き芯3A、3Bと、これら巻き芯3A、3Bによって巻き取りおよび繰り出しされるライナ7と、ライナ7に対して長尺部材LRを供給するゴム部材搬送手段12Aと、押圧体8とを備えている。この実施形態では巻取り装置1は、さらに長尺部材LRの所定位置に押圧体8を配置する押圧体配置手段13と、位置センサ14と、制御部16とを備えている。
【0020】
それぞれの巻き芯3A、3Bは、中心軸3cを中心にした円筒形状である。それぞれの巻き芯3A、3Bにはライナ7が巻き付けられて架け渡されている。一方の巻き芯3Aには、ライナ7を介在させて長尺部材LRが渦巻き状に巻き取られ、他方の巻き芯3Bには空のライナ7が巻き付けられている。一方の巻き芯3Aは他方の巻き芯3bよりも外径が大きくなっている。それぞれの巻き芯3A、3Bの外径を同じにすることもできるが、巻き取られた長尺部材LRを過度に屈曲させないために、巻き芯3Aの外径を大きくして、巻き取られた長尺部材LRの曲率半径をできるだけ大きくするとよい。
【0021】
この実施形態では、移動可能な台車のフレーム2に一対の巻き芯3A、3Bが回転可能に支持されている。詳述すると、フレーム2の水平部分の離間した位置に軸受け部2aが形成されていて、これら軸受け部2aにそれぞれの中心軸3cが回転可能に支持されている。それぞれの軸受け部2aに支持されている中心軸3cが開閉可能な軸押え部2bによって押さえられることで、中心軸3cが軸受け部2aから外れることが防止される。巻き芯3A、3Bをフレーム2から取り外す際には、閉じた状態の軸押え部2bを開いた状態にする。
【0022】
一方の巻き芯3Aの中心軸3cの一端部は、床面に設置されたモータなどの回転駆動部4に対して着脱自在になっている。この中心軸3cの一端部を、回転駆動部4に装着して回転駆動部4を稼働させると、この中心軸3cが回転駆動されて、巻き芯3Aが中心軸3cを中心にして回転駆動される。
【0023】
この実施形態では、それぞれの巻き芯3A、3Bの側面に対して近接および離反移動するブレーキ機構5が備わっている。ブレーキ機構5がそれぞれの巻き芯3A、3Bの側面に対して近接して当接することで、それぞれの巻き芯3A、3Bは中心軸3cを中心にして回転しないようにロックされる。長尺部材LRの巻取りおよび繰り出しの際には、ブレーキ機構5は解除されて巻き芯3A、3Bは回転可能になる。ブレーキ機構5はそれぞれの巻き芯3A、3Bの回転を停止できる様々な構成を採用できる。ブレーキ機構5は任意で設けることができる。
【0024】
図3、
図4に例示するようにライナ7は、硬質樹脂製や金属製の板状体である。この実施形態ではライナ7は幅方向両端部に、厚さ方向に突出する桟部7aを有している。いわゆる、桟付きのライナ7がこの実施形態では使用されている。それぞれの桟部7aは、ライナ7の長手方向全長に渡って延在しているが、全長に渡って途切れることなく連続させることも、全長に渡って断続的に配置することもできる。ライナ7は、長尺部材LRの引張強さの程度ではまったく伸縮しない非伸縮性を有している。それぞれの桟部7aは容易に塑性変形しない仕様になっていて、例えば、硬質樹脂、加硫ゴムなどで形成される。
【0025】
それぞれの桟部7aの厚さ(高さ)は、長尺部材LRの最大厚さよりも大きく設定される。1種類のライナ7で、寸法が異なる複数種類の長尺部材LRの巻取りに対応可能にするため、桟部7aは巻取り対象となる長尺部材LRの中で、最大厚さが最も大きい長尺部材LRに合わせて桟部7aの厚さは設定される。桟部7aの幅は、ライナ7が巻き芯3A、3Bに巻き取られた際に桟部7aが潰れない強度を確保できるように設定される。
【0026】
押圧体8は、それぞれの桟部7aの間に配置される。この実施形態では押圧体8は硬質層9と軟質層10とが積層されて一体化した積層構造になっている。軟質層10は、長尺部材LRよりも柔らかい仕様になっている。軟質層10が長尺部材LRに当接して押圧しても長尺部材LRは殆ど変形することがなく、専ら軟質層10が変形するだけである。軟質層10としては例えば、ウレタンなどの樹脂製のスポンジ体が使用される。
【0027】
軟質層10の幅は、長尺部材LRの上側面を概ね覆うことができる寸法に設定される。軟質層10の厚さは、長尺部材LRの上面の最大凹凸(最大高低差)よりも大きくして、軟質層10を長尺部材LRの上面に押し付けて変形させると、長尺部材LRの上側面の全体に接触する寸法に設定される。長尺部材LRの上面が平坦面の場合は、軟質層10の厚さは例えば、10mm以下程度にする。軟質層10の長さは、長尺部材LRの先端部Rf、後端部Rbをそれぞれ覆うことができる寸法に設定され、例えば、1000mm~4000mm程度にする。軟質層10の長さは、長尺部材LRの全長と同等またはそれ以上にすることもできる。
【0028】
軟質層10の外周側に積層される硬質層9は、長尺部材LRよりも硬い仕様になっている。硬質層9が軟質層10を押圧すると、硬質層9は実質的に変形することがなく、専ら軟質層10が変形するだけである。硬質層9としては例えば、硬質樹脂、硬質の加硫ゴムなどが使用される。硬質層9とライナ7とは同じ材質にすることも異なる材質にすることもできる。
【0029】
硬質層9の幅および長さは、基本的に軟質層10と同じ大きさに設定される。硬質層9の厚さは、長尺部材LRがライナ7を介して巻き芯3A巻き取られた際に、軟質層10が長尺部材LRの上面に押し付けられて変形して、長尺部材LRの上側面の全体に接触できるように設定される。尚、押圧体8は、硬質層9を省略して軟質層10の一層構造にすることもでき、硬質層9と軟質層10を適宜の数、積層した3層以上の積層構造にすることもできる。
【0030】
ゴム部材搬送手段12Aは、長尺部材LRを実質的に塑性変形させることなくライナ7に向かって長手方向に搬送できるものであればよく、この実施形態では搬送コンベヤが使用されている。このゴム部材搬送手段12Aは移動可能に設定されているが、所定位置に固定されたゴム部材搬送手段12Aを用いることもできる。
【0031】
押圧体配置手段13は、押圧体8を長尺部材LRの所定位置に配置できるものであればよく、ロボットアームなどを用いることもできるが、この実施形態では搬送コンベヤが使用されている。この押圧体配置手段13は移動可能に設定されているが、所定位置に固定された押圧体配置手段13を用いることもできる。
【0032】
ゴム部材搬送手段12Aの上方位置には位置センサ14が配置されている。位置センサ14は、ゴム部材搬送手段12Aによって搬送されている長尺部材LRの先端および後端を検知する。位置センサ14としては、公知の非接触センサ等が採用される。位置センサ14による検知信号は制御部16に入力される。押圧体配置手段13は、位置センサ14による検知信号に基づいて制御部16によって制御される。
【0033】
制御部16は、巻取り装置1の様々な機構、手段の動作を制御する。したがって、制御部16は、押圧体配置手段13の他に、回転駆動部4、ゴム部材搬送手段12Aなどを制御する。制御部16としてはコンピュータが用いられる。尚、図面中の矢印L、W、Hはそれぞれ、長尺部材LR、ライナ7および押圧体8の長手方向、幅方向、厚さ方向を示している。
【0034】
次に、本発明の未加硫ゴム部材の巻取り方法の手順の一例を説明する。
【0035】
まず、
図5に例示するように、他方の巻き芯3Bから空のライナ7の先端部分を一方の巻き芯3Aに架け渡して巻き付けておく。これにより、一方の巻き芯3Aではそれぞれの桟部7aを外周側に突出した状態にする。この状態でゴム部材搬送手段12Aによって、長尺部材LRを一方の巻き芯3Aに巻き付けられているライナ7の上に向かって搬送する。押圧体配置手段13には押圧体8を軟質層10が下側になるようにして載置しておく。
【0036】
位置センサ14は、搬送中の長尺部材LRの先端を検知すると、その検知信号を制御部16に入力する。
図6に例示するように、制御部16は位置センサ14から入力された検知信号に基づいて押圧体配置手段13を稼働させる。これにより、押圧体8は搬送されている長尺部材LRに向かって搬送されて、長尺部材LRの先端部Rfに載置される。長尺部材LRは、先端部Rfに押圧体8が載置された状態で引き続き、ライナ7の上に向かって搬送される。
【0037】
次いで、
図7に例示するように巻き芯3Aに巻付けられているライナ7に長尺部材LRの先端部Rfが載置されるタイミングで、制御部16は回転駆動部4を稼働させて巻き芯3Aを回転駆動させる。これにより、長尺部材LRはライナ7を介して巻き芯3Aを中心にして渦巻き状に巻き取られる。
図7では、桟部7aが一部切り欠かれて記載されている。空のライナ7を繰り出す他方の巻き芯3Bは、回転駆動される一方の巻き芯3Aとは反対方向に回転することになる。
【0038】
図8、
図9に例示するように、長尺部材LRは桟部7aの間に収容されて、ライナ7に載置される。長尺部材LRの先端部Rfには押圧体8が載置された状態になる。軟質層10が長尺部材LRの上面に接触しているが、それほど圧縮変形していないため、軟質層10の下面と長尺部材LRの上面との間には隙間が存在している。
【0039】
図10、
図11に例示するように、長尺部材LRおよびライナ7の巻取りが進むと、既に巻き取られた長尺部材LRおよびライナ7の部分の外周側に、新たに巻き取られた長尺部材LRおよびライナ7の部分が順次配置される。これにより、先端部Rfに載置されていた押圧体8は、新たに巻き取られたライナ7の部分によって、先端部Rfに向かって押圧される。これに伴って、先端部Rfは押圧体8によってライナ7の表面に確実に押し付けられる。
【0040】
長尺部材LRの全長を巻き取るまで、引き続き、ゴム部材搬送手段12Aによって長尺部材LRを搬送しつつ、巻き芯3Aを回転駆動する。位置センサ14は、ゴム部材搬送手段12Aによって搬送中の長尺部材LRの後端を検知すると、その検知信号を制御部16に入力し、制御部16はこの検知信号に基づいて押圧体配置手段13を稼働させる。これにより、別の押圧体8が長尺部材LRに向かって搬送されて、長尺部材LRの後端部Rbに載置される。上述した先端部Rbの場合と同様に、後端部Rbに載置されていた押圧体8は、新たに巻き取られたライナ7の部分によって、後端部Rbに向かって押圧される。これに伴って、後端部Rbは押圧体8によってライナ7の表面に確実に押し付けられる。
【0041】
長尺部材LRの全長の巻取りが完了すると、ゴム部材搬送手段12Aの稼働および巻き芯3Aの回転駆動を停止する。そして、ブレーキ機構5によってそれぞれの巻き芯3A、3Bが回転しないようにロックする。
図12に例示するように、ライナ7を介して巻き芯3Aを中心にして渦巻き状に巻き取られた長尺部材LRは、必要になるまで一時的に保管される。
【0042】
この実施形態では、先端部Rf、後端部Rbにはそれぞれ押圧体8を載置した状態で長尺部材LRを巻き取っているが、押圧体8を使用しない場合は、
図13、
図14に例示するように、先端部Rf、後端部Rbは経時変形する。詳述すると、
図13、
図14に例示するように幅方向両端部に桟部7aを備えた桟付きライナ7を介して長尺部材LRを巻き取ると、桟部7aは半径方向(
図13、
図14では上下方向)に隣り合うライナ7の間に介在するので長尺部材LRには外周側(
図13、
図14では上側)に位置するライナ7が非接触状態になる。長尺部材LRの長手方向中央部(先端部Rfと後端部Rbとの間の部分)は、自重などが十分に作用して、内周側(
図13、
図14では下側)に位置するライナ7に確実に付着する。ライナ7は容易に伸縮しないため、ライナ7に付着している長尺部材LRの経時変形はライナ7の剛性によって抑制される。
【0043】
一方、先端部Rf、後端部Rbは自由端であるため、内周側に位置するライナ7に対する付着具合が長尺部材LRの長手方向中央部に比して弱くなる。そのため、巻き取られて保管されている長尺部材LRの先端部Rfおよび後端部Rbは、長手方向中央部に比して経時変形が大きくなる。その結果、先端部Rfおよび後端部Rbでは、経時的に長手方向には収縮し、幅寸法および厚さ寸法は増大する。
【0044】
上述した実施形態では、長尺部材LRの先端部Rfおよび後端部Rbでは、長尺部材LRと外周側に位置するライナ7との間に押圧体8を介在させて、押圧体8によって先端部Rfおよび後端部Rbを、内周側に位置するライナ7に押圧する。その結果、先端部Rfおよび後端部Rbの経時変形が抑制されるので、長尺部材LRの全長に渡って経時変形が小さく、かつ、長尺部材LRの位置の違いに起因する経時変形の程度のばらつきも小さくなる。
【0045】
この実施形態では、先端部Rfのみを覆う押圧体8と、後端部Rbのみを覆う押圧体8との2つを使用しているが、1つまたは複数の押圧体8によって少なくとも先端部Rfおよび後端部Rbを覆うことができればよい。長尺部材LRの全長を覆う1つの押圧体8を使用すると、位置センサ14が長尺部材LRの先端を検知した時に、押圧体配置手段13を稼働すれば済むので、長尺部材LRの後端を検知して押圧体配置手段13を稼働する必要がない。一方、先端部Rfを覆う押圧体8と、後端部Rbを覆う押圧体8とを別々にして2つの押圧体8にすると、長尺部材LRの他の部位を覆う必要がないので押圧体8を短尺化するには有利になる。
【0046】
この実施形態のように、ブレーキ機構5を用いてそれぞれの巻き芯3A、3Bの回転がロックされていると、巻き取られているライナ7の巻き戻し(巻き付けの緩み)が生じ難くなる。これに伴い、先端部Rfおよび後端部Rbを、内周側に位置するライナ7により確実に安定して付着させ続けることができるので、先端部Rfおよび後端部Rbの経時変形を抑制するには益々有利になる。
【0047】
図15、
図16に例示する押圧体8を用いることもできる。この押圧体8は、板状の硬質層9と、硬質層9の幅方向両端部で硬質層9の厚さ方向に突出する桟部11と、それぞれの桟部11の間で硬質層9に下面に接合された軟質層10とを備えている。この押圧体8とともに、桟部7aを備えていない板状のライナ7が使用される。
【0048】
押圧体8(硬質層9、軟質層10、桟部11)は、長尺部材LRの全長を覆う長さを有して延在している。硬質層9および軟質層10の長さ以外の仕様は先の実施形態と同様である。桟部11の仕様は先の実施形態の桟部7aと同様である。
【0049】
この押圧体8を長尺部材LRに載置して長尺部材LRとともに巻き取る手順は、先の実施形態と同様、押圧体配置手段13と位置センサ14とを用いればよい。押圧体8は長尺部材LRとともにライナ7を介して巻き芯3Aを中心にして渦巻き状に巻き取られる。
【0050】
図17、
図18に例示するように、桟部11の間に配置された長尺部材LRの上面には軟質層10が接触して載置され、硬質層9は長尺部材LRには接触しない。この状態で長尺部材LRはライナ7に載置される。軟質層10が長尺部材LRの上面に接触しているが、それほど圧縮変形していないため、軟質層10の下面と長尺部材LRの上面との間には隙間が存在している。また、それぞれの桟部11の下面とライナ7の表面との間にも隙間があって、それぞれの桟部11は宙に浮いた状態になっている。
【0051】
図19、
図20に例示するように、長尺部材LR、押圧体8およびライナ7の巻取りが進むと、既に巻き取られた長尺部材LR、押圧体8およびライナ7の部分の外周側に、新たに巻き取られた長尺部材LR、押圧体8およびライナ7の部分が順次配置される。これにより、長尺部材LRに載置されていた押圧体8は、新たに巻き取られたライナ7の部分によって、既に巻き取られた長尺部材LRに向かって押圧される。これに伴って、長尺部材LRは全長に渡って押圧体8によってライナ7の表面に確実に押し付けられる。
【0052】
長尺部材LRの全長の巻取りが完了すると、ゴム部材搬送手段12Aの稼働および巻き芯3Aの回転駆動を停止し、ブレーキ機構5によってそれぞれの巻き芯3A、3Bが回転しないようにロックする。先の実施形態と同様、
図12に例示するように、ライナ7を介して巻き芯3Aを中心にして渦巻き状に巻き取られた長尺部材LRは、必要になるまで一時的に保管される。
【0053】
図21に例示するように、巻き芯3Aの下方位置のフレーム2に、巻き芯3Aに向かって突出する支持ローラ6を設けることもできる。この支持ローラ6は、ブレーキ機構5に代えて、或いは、ブレーキ機構5に加えて設けることができる。支持ローラ6は、巻き芯3Aに巻き取られたライナ7の最外周面を下方から支えるので、ライナ7が自重や長尺部材LRの重さなどによって下方に垂れ下がることが防止される。即ち、支持ローラ6によって巻き取られているライナ7の巻き戻し(巻き付けの緩み)が生じ難くなる。支持ローラ6の数、大きさ、配置は適宜決定できる。支持ローラ6は上下に移動可能にして所望の上下位置で固定できる構造にしてもよい。
【0054】
一時的に保管されていた長尺部材LRは、必要時に、巻き取られていた巻き芯3Aから繰り出されて、
図22に例示するように所定長さXの定尺に切断される。この実施形態では、長尺部材LRが公知の搬送コンベヤなどのゴム部材搬送手段12Bによって搬送されつつ、繰り出される。長尺部材LRは、ゴム部材搬送手段12Bの上で、公知の切断機15によって定尺に切断されて定尺部材SRが形成される。
【0055】
上述した巻取り装置1のそれぞれの実施形態では、ライナ7の幅方向両端部に突設されたそれぞれの桟部7a、または、押圧体8の幅方向両端部に突設されたそれぞれの桟部11が、半径方向に隣り合うライナ7の間に介在するので、巻き取られた長尺部材LRには外周側に位置するライナ7が非接触状態になる。そのため、長尺部材LRは未加硫ゴムなので柔らかく変形し易いが、外周側に位置するライナ7によって押し潰されることがなく所定形状を維持するには有利になる。
【0056】
そして、長尺部材LRの少なくとも先端部Rfおよび後端部Rbは、押圧体8によって内周側に位置するライナ7に押圧されて経時変形が抑制されている。そのため、先端部Rfおよび後端部Rbの経時変形と、他の部位(長手方向中央部)の経時変形との差異が実質的に無くなっている。その結果、巻き取られていた長尺部材LRの先端部Rfおよび後端部Rbを定尺に切断した定尺部材SRと、他の部位を定尺に切断した定尺部材SRとでは、長手方向寸法が同じだけでなく、幅寸法および厚さ寸法の差異も殆ど無くなる。即ち、巻き取って一時的に保管していた長尺部材LRを定尺に切断する際の長手方向位置の違いに起因して、それぞれの定尺部材SRの幅寸法および厚さ寸法にばらつきが生じる不具合が解消される。これに伴い、それぞれの定尺部材SRの重量のばらつきも抑制される。
【0057】
したがって、本発明は、それぞれの定尺部材SRの所定形状を維持しつつ、形状のばらつきを抑制するには有利になっている。従来、先端部Rfおよび後端部Rbは、他の部位(長手方向中央部)に比して経時変形が大きいため、定尺部材SRとして使用できずに無駄になることがあったが、本発明によれば、このような無駄を削減することもできる。
【0058】
本発明のタイヤの製造方法の手順の一例を説明する。
【0059】
図23に例示するように、定尺部材SRを使用して公知の方法でグリーンタイヤGを成形する。この実施形態では、定尺部材SRがトレッドゴムとして用いられている。一対のビード部材Tbの間に架け渡されているカーカス層の外周側に、ベルト層とともに定尺部材SRが円環状に配置されてグリーンタイヤGが成形される。
【0060】
次いで、
図24に例示するように、成形されたグリーンタイヤGを加硫用モールド18の中に配置して型閉めした状態で公知の加硫装置17を用いて加硫する。所定の加硫時間の経過後に、加硫用モールド18を開型して完成した空気入りタイヤTを外部に取り出す。
【0061】
それぞれの定尺部材SRは所定形状を維持しつつ形状のばらつきが抑制されている。そのため、いずれの定尺部材SRを使用してタイヤTを製造しても、目標仕様(タイヤ重量や均一性など)に合致したタイヤTを製造するには有利になる。また、製造されたそれぞれのタイヤTの品質のばらつきを抑制するにも有利になる。尚、本発明は空気入りタイヤに限らず、その他の種々のタイプのタイヤを製造する際に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 巻取り装置
2 フレーム
2a 軸受け部
2b 軸押え部
3A、3B 巻き芯
3c 中心軸
4 回転駆動部
5 ブレーキ機構
6 支持ローラ
7 ライナ
7a 桟部
8 押圧体
9 硬質層
10 軟質層
11 桟部
12A、12B ゴム部材搬送手段
13 押圧体配置手段
14 位置センサ
15 切断機
16 制御部
17 加硫装置
18 加硫用モールド
G グリーンタイヤ
Tb ビード部
T 加硫済みタイヤ
LR 長尺の未加硫ゴム部材(長尺部材)
Rf 先端部
Rb 後端部
SR 定尺に切断された未加硫ゴム部材(定尺部材)