(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06F 1/30 20060101AFI20241225BHJP
【FI】
G06F1/30
(21)【出願番号】P 2024178889
(22)【出願日】2024-10-11
【審査請求日】2024-10-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518133201
【氏名又は名称】富士通クライアントコンピューティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 晃
(72)【発明者】
【氏名】奥村 匡史
(72)【発明者】
【氏名】中西 貴洋
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-248788(JP,A)
【文献】特開2001-195277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26- 1/3296
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電圧をもつ第1の直流を、前記第1の電圧と異なる第2の電圧をもつ第2の直流に変換するコンバータであって、異常な電流の検出に応じて前記第2の直流の出力を停止し、イネーブル信号の受信に応じて前記出力を再開するコンバータと、
前記第2の直流を用いて回転するファンと、
前記ファンの単位時間当たりの回転数のデータを取得し、前記回転数が閾値以下であることを示すファンエラーの検出に応じて、前記コンバータに対して前記イネーブル信号が送信されるよう制御するプロセッサと、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記ファンおよび前記プロセッサそれぞれと制御信号線を介して接続されており、前記回転数を計測する他のプロセッサを更に有し、
前記プロセッサは、前記他のプロセッサから前記回転数のデータを取得し、前記ファンエラーの検出に応じて、前記イネーブル信号の送信を前記他のプロセッサに要求する、
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記情報処理装置の起動の際に実行されるBIOS(Basic Input Output System)プログラムに従って、前記回転数のデータの取得、前記ファンエラーの検出および前記イネーブル信号の制御を行う、
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記イネーブル信号が送信された後、前記回転数のデータを再取得して前記ファンエラーが解消されたか判定し、前記ファンエラーが解消されていない場合、前記コンバータに対する前記イネーブル信号の更なる送信を抑止する、
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記ファンエラーの検出に応じて、前記ファン以外の前記第2の直流を使用するデバイスの状態を判定し、前記デバイスが正常である場合には、前記コンバータに対する前記イネーブル信号の送信を抑止する、
請求項1記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理装置は、交流(AC:Alternate Current)から変換された直流(DC:Direct Current)を受け入れ、直流を用いて各種のハードウェア部品を動作させる。例えば、ノート型PC(Personal Computer)は、ACアダプタが出力する直流を用いてバッテリを充電し、ACアダプタまたはバッテリから供給される電力を使用する。
【0003】
情報処理装置には、異なる直流電圧で動作するハードウェア部品が混在していることがある。例えば、CPU(Central Processing Unit)とUSB(Universal Serial Bus)インタフェースは、異なる直流電圧で動作することがある。そこで、情報処理装置は、ある電圧の直流を別の電圧の直流に変換するDC/DCコンバータ(DDC:DC-DC Converter)を含むことがある。例えば、DDCは、ACアダプタが出力する12ボルト(V:Volt)から18V程度の直流を、5Vの直流に変換することがある。
【0004】
なお、バッテリを充電する充電装置が、正極と負極との短絡によって発生する過電流を検出し、電源から正極へ流れる電流を自動的に停止する技術がある。また、他の電子機器に接続されるタブレット型PCが、接続端子の電圧を監視し、一定の電圧変化を検出した場合に他の電子機器への電力供給を開始する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-33593号公報
【文献】特開2019-40239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
DDCは、過電流などの異常な電流を検出した場合、安全のため直流の出力を停止する保護動作を実行することがある。DDCの保護動作は、情報処理装置の電源投入時に起こることがあり、製造後初めて情報処理装置をONにした際に低確率で起こることがある。しかし、DDCは常時動作するよう設計されていることがあり、保護動作が一旦起こると、明示的に復旧作業を行うまで停止したままになってしまうことがある。
【0007】
1つの方法として、プロセッサがDDCの状態を監視し、DDCが正常でない場合にDDCを復旧させることも考えられる。しかし、プロセッサがDDCの状態を直接監視できるようにするための制御信号線や制御ポートを追加することは、ハードウェア設計上の制約から難しいことがある。そこで、1つの側面では、本発明は、保護動作によって停止した電力供給を復旧することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの側面では、第1の電圧をもつ第1の直流を、第1の電圧と異なる第2の電圧をもつ第2の直流に変換するコンバータであって、異常な電流の検出に応じて第2の直流の出力を停止し、イネーブル信号の受信に応じて出力を再開するコンバータと、第2の直流を用いて回転するファンと、ファンの単位時間当たりの回転数のデータを取得し、回転数が閾値以下であることを示すファンエラーの検出に応じて、コンバータに対してイネーブル信号が送信されるよう制御するプロセッサと、を有する情報処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
1つの側面では、保護動作によって停止した電力供給が復旧する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態の情報処理装置を説明するための図である。
【
図2】第2の実施の形態の情報処理装置のハードウェア例を示す図である。
【
図3】DDCに関するハードウェア部品の接続例を示す図である。
【
図4】DDCの保護動作からの復旧例を示す図である。
【
図6】DDC制御の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態を、図面を参照して説明する。
(a)第1の実施の形態
図1は、第1の実施の形態の情報処理装置を説明するための図である。第1の実施の形態の情報処理装置10は、例えば、ノート型PCやタブレット型PCのように、バッテリの電力で動作することが可能なコンピュータである。情報処理装置10は、コンバータ11、ファン12およびプロセッサ13を有する。
【0012】
コンバータ11は、第1の電圧をもつ第1の直流を、第1の電圧と異なる第2の電圧をもつ第2の直流に変換する。コンバータ11が、DC/DCコンバータまたはDDCと呼ばれてもよい。出力電圧である第2の電圧は、入力電圧である第1の電圧より低くてもよい。例えば、第1の電圧が12V~18V程度であり、第2の電圧が5Vである。コンバータ11が、降圧コンバータと呼ばれてもよい。また、コンバータ11が、リニアレギュレータまたはスイッチングレギュレータであってもよい。
【0013】
コンバータ11は、AC/DCコンバータから直流を受け付けてもよい。AC/DCコンバータは、情報処理装置10に接続されるACアダプタであってもよい。また、コンバータ11は、情報処理装置10が有するバッテリから直流を受け付けてもよい。コンバータ11は、情報処理装置10が有するハードウェア部品のうちの一部のハードウェア部品に電力を供給する。コンバータ11は、バッテリに電力が残っている場合、プロセッサ13が動作していない間も一部のハードウェア部品に常に電力を供給することがある。そのため、コンバータ11が、常時電源と呼ばれることがある。
【0014】
コンバータ11は、異常な電流から他のハードウェア部品を保護する保護回路をもつ。コンバータ11は、過電流などの異常な電流を検出する。異常な電流は、情報処理装置10の電源投入時に検出されることがあり、製造後初めてコンバータ11に直流が入力される際に検出されることがある。製造後最初の電源ONでは、各種の電子回路の設計や製造に起因して、一時的に過電流が発生することがある。コンバータ11は、異常な電流の検出に応じて、第2の直流の出力を自動的に停止する。
【0015】
また、コンバータ11は、イネーブル信号15を伝送するイネーブル信号線に接続されている。イネーブル信号15は、パルス信号であってもよい。コンバータ11は、イネーブル信号の受信に応じて、第2の直流の出力を再開する。コンバータ11は、イネーブル信号15を受信する毎に出力のONとOFFを切り替えるトグル処理を実行してもよい。
【0016】
ファン12は、プロセッサ13を冷却する空冷部品である。ファン12は、プロセッサ13が動作している間、コンバータ11が出力する第2の直流を用いて回転する。プロセッサ13は高熱を発するため、通常、プロセッサ13が動作しているもののファン12が回転していない状態は異常である。コンバータ11は、ファン12に加えて、ファン12以外のハードウェア部品に電力を供給してもよい。例えば、コンバータ11は、USBのPD(Power Delivery)回路に電力を供給する。
【0017】
プロセッサ13は、プログラムの命令を実行する。プロセッサ13が、CPUまたはMPU(Micro Processing Unit)と呼ばれてもよい。情報処理装置10がONになると、プロセッサ13は、不揮発性メモリに記憶されたBIOS(Basic Input Output System)プログラムを、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリに読み出し、BIOSプログラムを実行する。プロセッサ13は、以下に説明するコンバータ11の制御を、BIOSプログラムに従って実行してもよい。
【0018】
プロセッサ13は、通常、コンバータ11の出力とは異なる電圧で動作する。よって、プロセッサ13には、ファン12とは異なる経路で電力が供給される。コンバータ11が保護動作によって自動停止した場合、ファン12が動作していないものの、プロセッサ13が正常に動作していることがあり得る。
【0019】
情報処理装置10は、電源関係のハードウェア部品を効率的に制御するため、プロセッサ13とは異なる他のプロセッサを有してもよい。他のプロセッサが、EC(Embedded Controller)と呼ばれてもよい。他のプロセッサは、プロセッサ13と制御信号線を介して接続されてもよく、ファン12と制御信号線を介して接続されてもよい。また、他のプロセッサは、コンバータ11とイネーブル信号線を介して接続されてもよい。
【0020】
プロセッサ13は、以下のようにして、コンバータ11が保護動作によって停止していることを検出し、コンバータ11を復旧させる。プロセッサ13は、データ14を取得する。データ14は、ファン12の単位時間当たりの回転数を示す。プロセッサ13が、回転数を計測してもよい。また、ECなどの他のプロセッサが回転数を計測してもよく、プロセッサ13は他のプロセッサから制御信号線を介してデータ14を読み出してもよい。
【0021】
プロセッサ13は、データ14に基づいて、回転数が閾値以下であることを示すファンエラーを検出する。閾値は0であってもよく、ファンエラーはファン12が回転していないことを示してもよい。ファン12が回転していない場合、データ14は、回転数が0であることを示してもよい。また、ファン12が回転していない場合、データ14は、ファンエラーが発生していることを示してもよい。
【0022】
プロセッサ13は、ファンエラーの検出に応じて、コンバータ11に対してイネーブル信号15が送信されるよう制御する。プロセッサ13が、イネーブル信号線を介してコンバータ11にイネーブル信号15を送信してもよい。また、プロセッサ13は制御信号線を介して他のプロセッサにコンバータ11の復旧を要求してもよく、他のプロセッサがイネーブル信号線を介してコンバータ11にイネーブル信号15を送信してもよい。
【0023】
以上説明したように、第1の実施の形態の情報処理装置10は、コンバータ11、ファン12およびプロセッサ13を有する。コンバータ11は、第1の電圧をもつ第1の直流を、第1の電圧と異なる第2の電圧をもつ第2の直流に変換する。コンバータ11は、異常な電流の検出に応じて第2の直流の出力を停止し、イネーブル信号15の受信に応じて出力を再開する。ファン12は、第2の直流を用いて回転する。
【0024】
プロセッサ13は、ファン12の単位時間当たりの回転数のデータ14を取得し、回転数が閾値以下であることを示すファンエラーの検出に応じて、コンバータ11に対してイネーブル信号15が送信されるよう制御する。
【0025】
これにより、コンバータ11の保護動作によって停止した電力供給が自動的に復旧し、コンバータ11の出力を使用するハードウェア部品が動作しないという障害が解消する。特に、製造後初めて情報処理装置10をONにする際に、設計上または製造上の理由から、一時的に過電流が発生してコンバータ11の保護回路が作動することがある。その場合であっても、情報処理装置10は、バッテリの挿抜や手動によるイネーブル信号15の入力など、エンジニアによる障害対応なしに障害復旧を図ることができる。
【0026】
また、情報処理装置10は、コンバータ11の状態を直接監視するための制御信号線や制御ポートをもたなくてもよい。このため、使用ポート数や回路面積を節約することができ、情報処理装置10のハードウェア設計が容易となる。また、情報処理装置10は、コンバータ11から電力供給を受ける典型的なハードウェア部品の1つであるファン12に関するデータ14を利用して、コンバータ11の状態を推定する。このため、プロセッサ13は、汎用的かつ効率的にコンバータ11の停止を検出することができる。
【0027】
(b)第2の実施の形態
図2は、第2の実施の形態の情報処理装置のハードウェア例を示す図である。第2の実施の形態の情報処理装置100は、ノート型PCである。情報処理装置100は、CPU101、RAM103、ディスプレイ104、チップセット105、SSD(Solid State Drive)106、BIOSメモリ107、入力デバイス108、通信インタフェース109およびUSBインタフェース110を有する。また、情報処理装置100は、EC111、PD回路114、ファン115、DDC116および充電回路117を有する。
【0028】
なお、情報処理装置100は、第1の実施の形態の情報処理装置10に対応する。DDC116は、
図1のコンバータ11に対応する。ファン115は、
図1のファン12に対応する。CPU101は、
図1のプロセッサ13に対応する。
【0029】
CPU101は、プログラムに含まれる命令を実行するプロセッサである。CPU101は、OFFの状態で電源ボタンが押下されると、BIOSメモリ107からBIOSプログラムを読み出して実行する。CPU101は、BIOSプログラムに従い、SSD106からOS(Operating System)プログラムを読み出して実行する。更に、CPU101は、OSプログラムに従い、SSD106からアプリケーションプログラムを読み出して実行する。情報処理装置100が複数のプロセッサを有してもよい。
【0030】
CPU101は、GPU(Graphics Processing Unit)102を有する。GPU102は、画像処理を行い、ディスプレイ104に画像を出力する。なお、GPU102は、CPU101の外部のハードウェア部品としてGPU101に接続されてもよい。
【0031】
RAM103は、CPU101が使用するプログラムおよびその他のデータを一時的に記憶する揮発性半導体メモリである。情報処理装置100は、RAM以外の種類の揮発性メモリを有してもよい。また、RAM103がGPUメモリとして兼用されてもよいし、情報処理装置100がRAM103以外にGPUメモリを別途有してもよい。
【0032】
ディスプレイ104は、操作画面などの画像を表示する表示装置である。ディスプレイ104は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。情報処理装置100に外付けディスプレイが接続されてもよい。
【0033】
チップセット105は、CPU101と周辺機器とを接続する集積回路である。チップセット105が、ハブまたはブリッジと呼ばれてもよい。また、チップセット105がCPU101に含まれていてもよい。チップセット105には、CPU101、SSD106、BIOSメモリ107、入力デバイス108、通信インタフェース109、USBインタフェース110およびEC111が接続されている。
【0034】
SSD106は、OSプログラムやアプリケーションプログラムなどのソフトウェアプログラムと、その他のデータとを記憶する不揮発性ストレージである。ただし、SSD106は、BIOSプログラムを通じてCPU101によって認識される周辺機器の1つであり、BIOSプログラムの実行後にアクセス可能となる。情報処理装置100は、HDD(Hard Disk Drive)などの他の種類の不揮発性ストレージを有してもよい。
【0035】
BIOSメモリ107は、BIOSプログラムを記憶する不揮発性メモリである。BIOSメモリ107は、書き換え不能な狭義のROM(Read Only Memory)でもよいし、フラッシュメモリなどの書き換え可能メモリでもよい。
【0036】
CPU101がリセットされると、CPU101は、最初にBIOSメモリ107の所定のメモリアドレスからBIOSプログラムを読み出す。BIOSプログラムは、情報処理装置100が有する周辺機器を認識するための命令や、認識した不揮発性ストレージからOSプログラムを読み出すための命令を含む。後述するように、第2の実施の形態のBIOSプログラムは、DDC116を制御するための命令も含む。また、BIOSメモリ107は、EC111で実行されるファームウェアを記憶する。
【0037】
入力デバイス108は、ユーザ操作を示す入力信号を生成してCPU101に通知する。入力デバイス108は、例えば、キーボード、タッチパッドまたはタッチパネルである。情報処理装置100が、複数の入力デバイスを有してもよい。また、情報処理装置100に、マウスなどの外付け入力デバイスが接続されてもよい。
【0038】
通信インタフェース109は、ネットワークを介して他の情報処理装置と通信する。通信インタフェース109は、LAN(Local Area Network)ポートをもつ有線通信インタフェースでもよい。また、通信インタフェース109は、基地局やアクセスポイントなどの無線通信装置と無線で通信する無線通信インタフェースでもよい。
【0039】
USBインタフェース110は、外付けのUSBデバイスと接続されるUSBポートをもつ。USBインタフェース110は、接続されたUSBデバイスとの間でデータ信号や制御信号を送受信する。USBポートは、電力供給が可能な充電用信号線(VBUS)をもつ。USBインタフェース110は、いわゆるタイプAやタイプCのように、給電方法や端子形状が異なる複数のUSBポートを有してもよい。
【0040】
例えば、タイプAのUSBポートでは、情報処理装置100からUSBデバイスに電力が供給される。また、タイプCのUSBポートでは、接続されるUSBデバイスの種類に応じて、何れかの方向に電力が供給される。情報処理装置100からUSBデバイスに電力が供給されることもあるし、USBデバイスから情報処理装置100に電力が供給されることもある。第2の実施の形態のUSBインタフェース110は、タイプCのUSBポートに関して、大きな電力の供給が可能なPD機能をもつ。
【0041】
USBデバイスは、HDD、SSD、フラッシュメモリなどのストレージデバイスであることがある。また、USBデバイスは、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光ディスクが挿入される読み取りドライブであることがある。そのため、USBインタフェース110は、記録媒体に記録されたプログラムやその他のデータを読み取ることがあり、情報処理装置100が備える揮発性メモリまたは不揮発性ストレージに当該プログラムやその他のデータを保存することがある。
【0042】
記録媒体から読み取られたプログラムは、CPU101によって実行されることがある。上記のように、記録媒体は、フラッシュメモリや光ディスクなどの可搬記録媒体であることがあり、プログラムやその他のデータの配布に用いられることがある。このような記録媒体が、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」と呼ばれることがある。
【0043】
EC111は、主に電源関係のハードウェア部品の制御に用いられる制御部である。電源関係のハードウェア部品の制御を効率化するため、情報処理装置100は、CPU101とは別に、CPU101と並列に動作するEC111を有している。EC111には、PD回路114、ファン115およびDDC116が接続されている。EC111は、プロセッサ112およびメモリ113を有する。
【0044】
プロセッサ112は、CPU101よりも限定的な演算能力をもつマイクロプロセッサである。プロセッサ112は、OFFの状態で電源ボタンが押下されると、BIOSメモリ107からファームウェアを読み出して起動する。ファームウェアは、情報処理装置100がONである間、常時実行される。ファームウェアを読み出すため、EC111が、BIOSメモリ107と直接接続されていてもよい。メモリ113は、読み出されたファームウェアを一時的に記憶する揮発性半導体メモリである。
【0045】
PD回路114は、PD機能による電力供給を制御する。PD回路114がUSBインタフェース110に含まれていてもよい。情報処理装置100がPDの電力供給側である場合、DDC116から出力される電流が、PD回路114を経由して、タイプCのUSBポートの充電用信号線に供給される。情報処理装置100がPDの電力消費側である場合、タイプCのUSBポートの充電用信号線に流れる電流が、PD回路114を経由して充電回路117に供給され、バッテリが充電される。
【0046】
ファン115は、CPU101を冷却する冷却部品である。ファン115は、回転することで空気の流れを作り出す空冷装置であり、クーラーと呼ばれることがある。CPU101が動作している場合、ファン115が回転しているのが正常である。DDC116は、12V~18Vの直流を5Vの直流に変換する。
【0047】
充電回路117は、情報処理装置100内部のベースとなる電力(システム電力)の供給や、情報処理装置100が有するバッテリの充電を制御する。情報処理装置100には、家庭用電源の交流を12V~18Vの直流に変換するACアダプタ118が接続されることがある。充電回路117は、ACアダプタ118が出力する直流を用いて、情報処理装置100が有するバッテリを充電する。ただし、充電回路117は、PD回路114が出力する直流を用いてバッテリを充電することもある。充電117回路は、ACアダプタ118またはバッテリが出力する直流を、各種のハードウェア部品に供給する。
【0048】
ここで、情報処理装置100の中には、動作電圧が異なるハードウェア部品が混在している。そこで、DC/DCコンバータは、充電回路117が出力する直流を、ハードウェア部品が動作する電圧をもつ直流に変換する。DDC116は、5Vの直流で動作するハードウェア部品に電力を供給する。
【0049】
DDC116は、充電回路117を介して電力が供給される限り、CPU101が動作していない場合であっても、5Vの直流を出力可能である。そこで、DDC116が、常時5V電源と呼ばれることがある。第2の実施の形態では、USBインタフェース110、PD回路114およびファン115が、DDC116から電力供給を受ける。一方、CPU101やEC111には、DDC116とは異なる経路で電力が供給される。
【0050】
DDC116は、保護回路を含んでいる。保護回路は、ACアダプタ118からの過電流など、一時的に発生する異常な電流を検出する。過電流の検出には、前述の特許文献1に記載された電気回路が使用されてもよい。保護回路は、異常な電流を検出すると、5Vの直流の出力を停止した状態に移行する。
【0051】
DDC116が出力する5Vの直流は、タイプAのUSBポートに供給される。また、DDC116が出力する5Vの直流は、PD回路114に供給され、PD回路114を介してタイプCのUSBポートに供給される。このため、DDC116の出力が停止すると、PD回路114に電力が供給されなくなると共に、USBインタフェース110に含まれる各種のUSBポートに接続されたUSBデバイスに電力が供給されなくなる。
【0052】
DDC116が一旦OFFになると、充電回路117を介してDDC116に電力が供給されている限り、自動的にはONに戻らないことがある。操作者は、バッテリを挿抜してDDC116の入力を一時的に断つことで、DDC116をリセットして状態をONに戻すことができる。また、DDC116は、EC111とENABLE(イネーブル)信号線で接続されている。状態がOFFのときにEC111からENABLE信号を受信した場合にも、DDC116がONに戻る。
【0053】
図3は、DDCに関するハードウェア部品の接続例を示す図である。DDC116は、12V~18Vの範囲に収まる電圧をもつ直流を受け付ける。DDC116は、ファン115およびPD回路114に5Vの直流を供給する。EC111は、CPU101と制御信号線で接続されている。また、EC111は、ファン115およびPD114それぞれと制御信号線で接続されている。また、EC111は、DDC116とENABLE信号線で接続されている。
【0054】
CPU101は、動作を開始すると、最初にBIOSプログラムを実行する。CPU101は、BIOSプログラムに従い、OSプログラムが記憶されたSSD106を認識し、OSプログラムを実行する。通常、OSプログラムの実行が開始された時点で、BIOSプログラムの実行は終了している。EC111は、CPU101と同じタイミングで動作を開始し、CPU101の動作中、CPU101と並列にファームウェアを常時実行する。CPU101は、EC111のメモリ113からデータを読み出すことができる。
【0055】
ファン115は、CPU101の動作中、DDC116から供給される5Vの直流を用いて回転する。ファン115は、回転毎にパルス信号を、制御信号線を介してEC111に送信する。EC111は、PWM(Pulse Width Modulation)によってパルス信号をカウントすることで、ファン115の単位時間当たりの回転数を計測する。単位時間当たりの回転数は、例えば、1分間当たり回転数(rpm:rotations per minute)である。計測された回転数は、EC111のメモリ113に保存される。
【0056】
PD回路114は、DDC116から供給される5Vの直流を用いて、USBポートのPD機能を制御する。EC111は、PD回路114との間の制御信号線を介して、PD回路114の状態を監視することができる。
【0057】
DDC116は、ENABLE信号線から、パルス信号であるENABLE信号を受信する。DDC116は、ENABLE信号に応じてトグル動作を実行する。DDC116は、5Vの直流の出力を停止しているOFFのときにENABLE信号を受信すると、OFFをONに切り替える。一方、DDC116は、5Vの直流を出力しているONのときにENABLE信号を受信すると、ONをOFFに切り替える。
【0058】
EC111は、ファームウェアに従って、DDC116にENABLE信号を送信することができる。ただし、EC111は、ファン115やPD回路114と異なり、DDC116から制御信号を受信する制御信号線をもたない。このため、EC111は、DDC116のON/OFFの状態を直接には検知しない。EC111がもつ汎用入出力(GPIO:General Purpose Input/Output)ポートの個数は有限である。EC111がDDC116の状態を直接監視しないことで、EC111の使用ポートが節約される。
【0059】
なお、EC111は、PD回路114との間の制御信号線を介して、USBポートからの過電流を検出することがある。その場合、EC111は、DDC116にENABLE信号を送信することで、DDC116を意図的にOFFに切り替えることがある。
【0060】
図4は、DDCの保護動作からの復旧例を示す図である。情報処理装置100の製造後、操作者は、情報処理装置100にACアダプタ118を接続し、情報処理装置100を初めてONにする。この操作は、情報処理装置100を製造する工場で行われることもあるし、情報処理装置100の出荷先で行われることもある。
【0061】
このとき、DDC116の保護回路が作動して、DDC116が最初からOFFになってしまう障害が発生することがある。このような初回電源投入時の保護動作は、ハードウェア設計や製造工程に起因して、低確率で一時的に過電流が発生することで生じる。そこで、以下に説明するように、第2の実施の形態のBIOSプログラムには、DDC116の常時5V電源を自動的に復旧する処理が実装されている。
【0062】
CPU101は、BIOSプログラムを起動すると、BIOSプログラムに従ってEC111からファン回転数のデータを読み出す。ファン回転数は、EC111とファン115との間の制御信号線を流れる制御信号を用いて、EC111が定期的に計測しているものである。CPU101が読み出すデータは、計測されたファン回転数そのものを含む。ただし、ファン回転数が0rpmである場合、CPU101が受け取る読み出し結果は、ファン回転数にエラーが発生していることを示すファンエラーを含む。
【0063】
CPU101は、ファンエラーを検出する。CPU101は、読み出したファン回転数と閾値とを比較することで、ファンエラーを検出してもよい。例えば、CPU101は、ファン回転数が0rpmである場合にファンエラーありと判定し、ファン回転数が0rpmより大きい場合にファンエラーなしと判定する。また、CPU101は、読み出し結果がファンエラーを含むか否か判定してもよい。なお、上記の説明では、EC111がファン回転数とファンエラーの両方をCPU101に応答しているが、ファン回転数とファンエラーの何れか一方のみをCPU101に応答するようにしてもよい。
【0064】
ファン115は、DDC116の常時5V電源を使用する典型的なハードウェア部品であり、かつ、CPU101が動作している間は回転していることが期待される。そこで、情報処理装置100は、電源投入直後にファン115が回転していない場合、DDC116に障害が発生している可能性が高いと推定する。その場合、PD回路114など、常時5V電源を使用する他のハードウェア部品も正常に動作しないと考えられる。
【0065】
ファンエラーを検出すると、BIOSプログラムを実行中のCPU101は、制御信号線を介してEC111に、DDC116の復旧を指示する。EC111は、ENABLE信号線を介してDDC116に、ENABLE信号を送信する。これにより、DDC116の保護動作が解除され、DDC116が5Vの直流を出力し始めると期待される。一方、ファンエラーを検出しなかった場合、CPU101はEC111にDDC116の復旧を指示せず、EC111はENABLE信号を送信しない。
【0066】
なお、CPU101は、BIOSプログラムの実行中、上記の処理を繰り返し実行してもよい。ファンエラーが検出された場合、CPU101は、DDC116の復旧をEC111に指示した上でCPU101をリセットし、BIOSプログラムを再起動してもよい。一方、第2の実施の形態では、電源投入時に一時的な過電流によってDDC116の保護回路が作動するという障害を想定しているため、CPU101は、OSプログラムの起動後は上記の処理を行わなくてもよい。
【0067】
また、製造後初めての電源投入時の障害を想定している場合、CPU101は、製造後初めての起動または製造から一定回数までの起動の場合のみ、上記の処理を実行してもよい。また、CPU101は、ファンエラーなしに情報処理装置100の起動が1回成功すると、それ以降の起動においては上記の処理を実行しないようにしてもよい。起動回数や復旧の要否を示す制御フラグなどが、BIOSメモリ107に保存されてもよい。
【0068】
図5は、ファン故障の判定例を示す図である。電源投入時にファン115が回転しない原因として、DDC116の障害の他に、ファン115がハードウェア的に故障していることも低確率で考えられる。そこで、CPU101は、DDC116の障害とファン115の故障とを区別する判定処理を行ってもよい。
【0069】
以下では、2通りの判定方法の例を説明する。BIOSプログラムには、この2通りの判定方法のうちの何れか一方のみが実装されてもよいし、両方が実装されてもよい。両方が実装されている場合、CPU101は、何れか一方の判定方法のみを使用してもよいし、2通りの判定方法を併用してもよい。2通りの判定方法を併用する場合、CPU101は、これら判定方法をAND条件として用いて、両方の判定方法がファン故障を示唆している場合にファン115が故障していると判定してもよい。また、CPU101は、これら判定方法をOR条件として用いて、少なくとも一方の判定方法がファン故障を示唆している場合にファン115が故障していると判定してもよい。
【0070】
第1の判定方法では、CPU101は、DDC116の復旧を試みたことを記録しておく。例えば、CPU101は、BIOSメモリ107に、DDC116の復旧を試みたことを示す制御フラグを保存する。CPU101は、CPU101をリセットしてBIOSプログラムを再起動し、ファン115の回転数をEC111から再び読み出す。
【0071】
CPU101は、前回リセット時にDDC116の復旧を試みており、かつ、ファン回転数が0rpmであることを示すファンエラーが再び検出されたか判定する。ファンエラーが再び検出された場合、ファン115が故障していることが考えられる。その場合、CPU101は、DDC116の復旧をそれ以上試行しない。よって、これ以降は、CPU101は、ファン回転数をEC111から読み出さなくてもよく、DDC116の復旧をEC111に指示しなくてもよい。
【0072】
第2の判定方法では、CPU101は、ファンエラーを検出した場合、常時5V電源で動作する他のデバイスの状態を更に確認する。第2の実施の形態では、常時5V電源で動作する他のデバイスとして、USB関連デバイスを想定する。USB関連デバイスが正常に動作している場合、ファンエラーはファン115の故障によって検出されたものである可能性が高い。一方、USB関連デバイスが正常に動作していない場合、ファンエラーはDDC116の障害によって発生したものである可能性が高い。
【0073】
USB関連デバイスは、PD回路114のように、EC111と制御信号線で接続された内部のハードウェア部品であってもよい。その場合、CPU101は、EC111から当該ハードウェア部品の状態を読み出す。また、USB関連デバイスは、USBインタフェース110に接続されるUSBデバイスであってもよい。その場合、CPU101は、USBインタフェース110を介してUSBデバイスとの通信を試みる。
【0074】
ファンエラーが検出され、かつ、他のデバイスが正常に動作していない場合、CPU101は、前述のようにDDC116の復旧を試みる。一方、ファンエラーが検出され、かつ、他のデバイスが正常に動作している場合、CPU101は、DDC116の復旧を試みない。よって、CPU101は、DDC116の復旧をEC111に指示しなくてよい。これにより、CPU101は、DDC116の障害とファン115の故障とを区別することができ、DDC116に対する無駄な復旧処理を削減することができる。次に、情報処理装置100によるDDC制御の手順例について説明する。
【0075】
図6は、DDC制御の手順例を示すフローチャートである。ステップS10において、EC111は、ファン115の回転数を計測する。以降、EC111は、ファン115の回転数を継続的に計測する。ステップS11において、CPU101は、BIOSプログラムに従って、EC111からファン回転数を読み出す。ステップS12において、CPU101は、ステップS11の読み出し結果に基づいて、ファン回転数が0rpmであるファンエラーが検出されたか判断する。ファンエラーが検出された場合はステップS13に処理が進み、ファンエラーが検出されなかった場合はDDC制御が終了する。
【0076】
ステップS13において、CPU101は、BIOSプログラムに従って、常時5V電源を使用するUSB関連デバイスの状態を確認する。なお、状態を確認できる適切なUSB関連デバイスがない場合、CPU101は、ステップS13,S14をスキップしてもよい。ステップS14において、CPU101は、USB関連デバイスが正常に動作しているか判断する。USB関連デバイスが正常である場合、ステップS19に処理が進む。USB関連デバイスが正常でない場合、ステップS15に処理が進む。
【0077】
ステップS15において、CPU101は、BIOSプログラムに従って、DDC116の復旧をEC111に要求する。ステップS16において、EC111は、ENABLE信号線を介してDDC116にENABLE信号を送信する。DDC116は、ENABLE信号を受けて、5Vの直流を出力するか否か切り替えるトグル動作を行う。
【0078】
ステップS17において、CPU101は、CPU101をリセットしてBIOSプログラムを再起動する。CPU101は、BIOSプログラムに従って、EC111からファン回転数を再度読み出す。なお、CPU101のリセットは、ENABLE信号の送信後に自動的に行われなくてもよく、ユーザ操作などの他の契機で行われてもよい。
【0079】
ステップS18において、CPU101は、ステップS17の読み出し結果に基づいて、ファン回転数が0rpmであるファンエラーが再度検出されたか判断する。ファンエラーが再度検出された場合はステップS19に処理が進み、ファンエラーが検出されなかった場合はDDC制御が終了する。
【0080】
ステップS19において、CPU101は、DDC116に対する以降の復旧処理を抑止する。ステップS20において、CPU101は、BIOSプログラムに従い、ファン故障を示すメッセージを出力する。CPU101は、メッセージをディスプレイ104に表示してもよいし、ログとして保存してもよい。その後、CPU101は、OSプログラムの実行に進んでもよいし、OSプログラムの実行を抑止してもよい。
【0081】
以上説明したように、第2の実施の形態の情報処理装置100では、電源投入時に瞬間的な過電流によってDDC116の保護回路が作動しても、常時5V電源が自動的に復旧する。これにより、製造工場の担当者や出荷先のユーザは、バッテリの挿抜などの復旧作業を行わなくてよく、テスト時や使用開始時の利便性が向上する。
【0082】
また、EC111がDDC116の状態を直接監視するための制御信号線をもたなくても、CPU101が常時5V電源の停止を推定できる。このため、EC111のGPIOポート使用数が減少し、情報処理装置100のハードウェア設計が容易となる。また、常時5V電源で動作する典型的なハードウェア部品であるファン115の回転数を参照することで、CPU101は、汎用的かつ効率的に常時5V電源の停止を推定できる。
【0083】
また、EC111がDDC116にENABLE信号を送信すると、CPU101がリセット後にファン回転数を再確認するようにしてもよい。これにより、CPU101は、DDC116の障害とファン115の故障とを区別することができる。また、CPU101は、ファンエラーが検出された際、常時5V電源を使用するUSB関連デバイスの状態を更に確認してもよい。これによっても、CPU101は、DDC116の障害とファン115の故障とを区別することができる。その結果、無駄な復旧処理が抑制される。
【符号の説明】
【0084】
10 情報処理装置
11 コンバータ
12 ファン
13 プロセッサ
14 データ
15 イネーブル信号
【要約】
【課題】保護動作によって停止した電力供給を復旧する。
【解決手段】情報処理装置10は、コンバータ11、ファン12およびプロセッサ13を有する。コンバータ11は、第1の電圧をもつ第1の直流を、第1の電圧と異なる第2の電圧をもつ第2の直流に変換する。コンバータ11は、異常な電流の検出に応じて第2の直流の出力を停止し、イネーブル信号15の受信に応じて出力を再開する。ファン12は、第2の直流を用いて回転する。プロセッサ13は、ファン12の単位時間当たりの回転数のデータ14を取得し、回転数が閾値以下であることを示すファンエラーの検出に応じて、コンバータ11に対してイネーブル信号15が送信されるよう制御する。
【選択図】
図1