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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】車両運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/14 20060101AFI20241225BHJP
   B60W 30/182 20200101ALI20241225BHJP
【FI】
B60W30/14
B60W30/182
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021010174
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022114062
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 大介
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-094981(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0170348(US,A1)
【文献】特開2016-205201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行している車線を該自車両の前方で走行する先行車と前記自車両との間の距離である前方車間距離が設定前方車間距離に維持されるように前記自車両を自動で加減速する自動加減速制御を実行する車両運転支援装置において、
前記自動加減速制御の実行中に前記自車両が高速道路を走行しており且つ前記自車両の前方に前記高速道路の本線から分岐する分岐路であって前記自車両の減速が行われると予測される地点である分岐路が存在し且つ前記本線に設けられている複数の車線のうち前記分岐路が設けられている側の車線を前記自車両が走行しており且つ前記分岐路までの距離が所定距離以下になったときにエコモードでの前記自車両の走行が要求されている場合、前記自動加減速制御を中断し、前記自車両を惰行させるように構成されている、
車両運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の前方を先行車が走行している場合には、その先行車に自車両が追従して走行するように自車両を自動で加減速する自動加減速制御を実行し、自車両の前方を走行する先行車が存在しない場合には、予め設定されている車速(設定車速)で自車両が走行するように自車両を自動で加減速する自動加減速制御を実行する車両運転支援装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-168788号公報
【発明の概要】
【0004】
例えば、自車両が高速道路の本線を走行しているときに自動加減速制御が実行されている場合、自車両は、先行車が存在する場合には、先行車の車速と同等の車速で走行し、先行車が存在しない場合には、設定車速で走行する。従って、自車両が高速道路の出口分岐路にさしかかったときの自車両の車速も先行車の車速と同等の車速であるか或いは設定車速である。このため、運転者は、自車両を出口分岐路に進入させたときに自車両を比較的大きく制動しなければならない。これによると、自車両のエネルギーを大きく損失することになり、その結果、自車両のエネルギー消費量が大きくなってしまう。特に、運転者が自車両のエネルギー消費量を小さく抑えるためのいわゆるエコモードでの自車両の走行を希望している場合、自車両のエネルギー消費量を大きくしてしまうような自車両の走行を回避することが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、自動加減速制御を実行していることによる自車両のエネルギー消費量の増大を抑制することができる車両運転支援装置を提供することにある。
【0006】
本発明に係る車両運転支援装置は、自車両が走行している車線を該自車両の前方で走行する先行車と前記自車両との間の距離である前方車間距離が設定前方車間距離に維持されるように前記自車両を自動で加減速する自動加減速制御を実行する装置である。そして、本発明に係る車両運転支援装置は、前記自動加減速制御の実行中に前記自車両が高速道路を走行しており且つ前記自車両の前方に前記高速道路の本線から分岐する分岐路であって前記自車両の減速が行われると予測される地点である分岐路が存在し且つ前記本線に設けられている複数の車線のうち前記分岐路が設けられている側の車線を前記自車両が走行しており且つ前記分岐路までの距離が所定距離以下になったときにエコモードでの前記自車両の走行が要求されている場合、前記自動加減速制御を中断し、前記自車両を惰行させるように構成されている。
【0007】
自車両の減速が行われる高速道路の分岐路に自車両が達するまで自動加減速制御を実行していると、高速道路の分岐路に自車両が達したとき、自車両が先行車に追従するように自車両の車速が制御されているので、自車両の車速が比較的大きく、自車両を比較的大きく制動する必要が生じ、自車両のエネルギー消費量が大きくなってしまう。
【0008】
本発明によれば、自車両の減速が行われると予測される地点である高速道路の分岐路までの距離が所定距離以下になったときにエコモードでの自車両の走行が要求されている場合、自動加減速制御を中断し、自車両を惰行させる。従って、高速道路の分岐路に自車両が達したとき、自車両の車速が比較的小さくなっているので、自車両を大きく制動する必要がない。このため、エコモードでの自車両の走行が要求されているときに自車両のエネルギー消費量の増大を抑制することができる。
【0009】
本発明の構成要素は、図面を参照しつつ後述する本発明の実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置及びその車両運転支援装置が搭載された車両(自車両)を示した図である。
図2図2は、前方車間距離及び後方車間距離等を示した図である。
図3図3は、高速道路の分岐路を示した図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置が自動加減速制御等を実行したときの車速等の変化を示したタイムチャートである。
図5図5は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置について説明する。図1に、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置10が示されている。車両運転支援装置10は、自車両100に搭載される。
【0012】
<ECU>
車両運転支援装置10は、ECU90を備えている。ECUは、エレクトロニックコントロールユニットの略称である。ECU90は、マイクロコンピュータを主要部として備える。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェース等を含む。CPUは、ROMに格納されたインストラクション又はプログラム又はルーチンを実行することにより、各種機能を実現するようになっている。
【0013】
<駆動装置等>
自車両100には、駆動装置21及び制動装置22が搭載されている。
【0014】
<駆動装置>
駆動装置21は、自車両100を走行させるために自車両100に与えられる駆動力を出力する装置であり、例えば、内燃機関及びモータ等である。駆動装置21は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、駆動装置21の作動を制御することにより駆動装置21から出力される駆動力を制御することができる。
【0015】
<制動装置>
制動装置22は、自車両100を制動するために自車両100に与えられる制動力を出力する装置であり、例えば、ブレーキ装置である。制動装置22は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、制動装置22の作動を制御することにより制動装置22から出力される制動力を制御することができる。
【0016】
<センサ等>
更に、自車両100には、アクセルペダル31、アクセルペダル操作量センサ32、ブレーキペダル33、ブレーキペダル操作量センサ34、自動加減速操作器41、エコ走行操作器42、前後情報検出装置43、車速検出装置44及び道路情報取得装置50が搭載されている。
【0017】
<アクセルペダル操作量センサ>
アクセルペダル操作量センサ32は、ECU90に電気的に接続されている。アクセルペダル操作量センサ32は、アクセルペダル31の操作量を検出し、検出した操作量の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてアクセルペダル31の操作量をアクセルペダル操作量APとして取得する。ECU90は、アクセルペダル操作量AP及び自車両100の車速V0から要求駆動力Pd_reqを演算により取得する。要求駆動力Pd_reqは、駆動装置21に出力が要求される駆動力である。
【0018】
<ブレーキペダル操作量センサ>
ブレーキペダル操作量センサ34は、ECU90に電気的に接続されている。ブレーキペダル操作量センサ34は、ブレーキペダル33の操作量を検出し、検出した操作量の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてブレーキペダル33の操作量をブレーキペダル操作量BPとして取得する。ECU90は、ブレーキペダル操作量BPから要求制動力Pb_reqを演算により取得する。要求制動力Pb_reqは、制動装置22に出力が要求される制動力である。
【0019】
<自動加減速操作器>
自動加減速操作器41は、自車両100の運転者により操作される装置であり、例えば、スイッチやボタン等からなる。これらスイッチやボタン等は、例えば、自車両100のステアリングホイールに設けられ、或いは、自車両100のステアリングコラムに取り付けられたレバーに設けられる。
【0020】
本例において、自動加減速操作器41は、自動加減速選択スイッチ、車速設定スイッチ、車速増加ボタン、車速減少ボタン及び車間距離設定ボタンを含んでいる。自動加減速操作器41は、ECU90に電気的に接続されている。
【0021】
後述する自動加減速制御が実行されていないときに自動加減速選択スイッチが運転者により操作されると、自動加減速操作器41からECU90に信号が送信される。ECU90は、その信号を受信した場合、自動加減速制御の実行を運転者が要求していると判断する。一方、自動加減速制御が実行されているときに自動加減速選択スイッチが運転者により操作されると、自動加減速操作器41からECU90に信号が送信される。ECU90は、その信号を受信した場合、自動加減速制御の終了を運転者が要求していると判断する。
【0022】
又、自動加減速制御が実行されているときに車速設定スイッチが運転者により操作されると、自動加減速操作器41からECU90に信号が送信される。ECU90は、その信号を受信した場合、その時点の自車両100の車速V0を自動加減速制御における設定車速Vsetとして設定する。
【0023】
又、自動加減速制御が実行されているときに車速増加ボタンが運転者により操作されると、自動加減速操作器41からECU90に信号が送信される。ECU90は、その信号を受信した場合、設定車速Vsetを大きくする。一方、自動加減速制御が実行されているときに車速減少ボタンが運転者により操作されると、自動加減速操作器41からECU90に信号が送信される。ECU90は、その信号を受信した場合、設定車速Vsetを小さくする。
【0024】
又、自動加減速制御が実行されているときに車間距離設定ボタンが運転者により操作されると、自動加減速操作器41からECU90に信号が送信される。この信号は、運転者が車間距離設定ボタンを操作することにより自動加減速制御における自車両100と先行車101との間の距離(前方車間距離D1)として要求している距離を表す信号(要求車間距離信号)である。本例において、運転者は、車間距離設定ボタンを操作することにより、前方車間距離D1として長めの距離、中程度の距離及び短めの距離のうちの1つを選択することができる。
【0025】
図2に示したように、前方車間距離D1は、自車両100と先行車101との間の距離である。本例において、先行車101は、自車両100が走行している車線(自車線LN0)を自車両100の前方で走行する車両であって、自車両100からの距離(前方車間距離D1)が所定先行車判定距離D1th以下である車両である。
【0026】
ECU90は、要求車間距離信号を受信した場合、その信号が表している距離を設定前方車間距離D1setとして設定する。尚、所定先行車判定距離D1thは、設定前方車間距離D1setよりも長い距離となるように定められている。
【0027】
<エコ走行操作器>
エコ走行操作器42は、自車両100の運転者により操作される装置であり、例えば、スイッチやボタン等からなる。これらスイッチやボタン等は、例えば、自車両100のステアリングホイールに設けられ、或いは、自車両100のステアリングコラムに取り付けられたレバーに設けられる。
【0028】
エコ走行操作器42は、それがオフ位置に操作された状態にあるときに操作されるとオン位置となる。エコ走行操作器42は、オン位置に操作されると、ECU90に信号を送信する。ECU90は、その信号を受信した場合、エコモードでの自車両100の走行を運転者が要求していると判断する。ECU90は、エコモードでの自車両100の走行を運転者が要求していると判断した場合、エコ走行条件Cecoが成立していると判断する。
【0029】
一方、エコ走行操作器42は、それがオン位置に操作されている状態にあるときに操作されるとオフ位置となる。エコ走行操作器42は、オフ位置に操作されると、ECU90に信号を送信する。ECU90は、その信号を受信した場合、エコモードでの自車両100の走行を運転者が要求していないと判断する。別の言い方をすると、ECU90は、通常モードでの自車両100の走行を運転者が要求していると判断する。ECU90は、エコモードでの自車両100の走行を運転者が要求していないと判断した場合、エコ走行条件Cecoが成立していないと判断する。
【0030】
尚、エコモードでの自車両100の走行は、自車両100の走行に消費されるエネルギー量をできる限り少なくする自車両100の走行である。例えば、自車両100を走行させるエネルギーとして、内燃機関から出力される動力が使用される場合、エコモードでの自車両100の走行は、燃費ができる限り高くなるような自車両100の走行であり、自車両100を走行させるエネルギーとして、モータから出力される動力が使用される場合、エコモードでの自車両100の走行は、電費ができる限り高くなるような自車両100の走行である。
【0031】
<前後情報検出装置>
前後情報検出装置43は、自車両100の前方及び後方の情報を検出する装置である。前後情報検出装置43は、例えば、カメラ、レーダセンサ(ミリ波レーダ等)、超音波センサ(クリアランスソナー)及びレーザーレーダ(LiDAR)等の装置である。
【0032】
前後情報検出装置43は、ECU90に電気的に接続されている。前後情報検出装置43は、自車両100の前方の情報(前方情報)及び自車両100の後方の情報(後方情報)をECU90に送信する。ECU90は、前方情報から先行車101と自車両100との間の距離(前方車間距離D1)及び先行車101の車速V1等を取得することができる。又、ECU90は、後方情報から後続車102と自車両100との間の距離(後方車間距離D2)及び後続車102の車速V2等を取得することができる。
【0033】
図2に示したように、後方車間距離D2は、自車両100と後続車102との間の距離である。本例において、後続車102は、自車両100が走行している車線(自車線LN0)を自車両100の後方で走行する車両であって、自車両100からの距離(後方車間距離D2)が所定後続車判定距離D2th以下である車両である。
【0034】
<車速検出装置>
車速検出装置44は、自車両100の車速V0を検出する装置であり、例えば、車輪速センサである。車速検出装置44は、ECU90に電気的に接続されている。車速検出装置44は、自車両100の車速V0を検出し、その車速V0の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて車速V0を取得することができる。
【0035】
<道路情報取得装置>
道路情報取得装置50は、自車両100が現在走行している道路に関する情報を取得する装置であり、本例においては、GPS装置51、データベース52及び受信装置53を含んでいる。
【0036】
<GPS装置>
GPS装置51は、ECU90に電気的に接続されている。GPS装置51は、GPS信号を受信し、受信したGPS信号をECU90に送信する。ECU90は、GPS信号に基づいて自車両100の現在位置を取得することができる。
【0037】
<データベース>
データベース52には、地図データDmapが格納されている。尚、車両運転支援装置10は、自車両100の外部のデータベースから無線で地図データDmapを取得するように構成されていてもよい。
【0038】
データベース52は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、自車両100の現在位置を地図データDmapと照合し、自車両100が現在走行している道路に関する情報(道路情報Iroad)を取得することができる。
【0039】
ECU90は、道路情報Iroadに基づいて自車両100が走行している道路の種別(例えば、自車両100が走行している道路が一般道路及び高速道路の何れかであるか)を特定することができる。
【0040】
又、ECU90は、図2に示したように、複数の車線LN1、LN2及びLN3が設けられている道路を自車両100が走行している場合において、自車両100が何れの車線を走行しているのかを道路情報Iroad及び自車両100の現在位置等に基づいて特定することができる。尚、図2に示した例においては、ECU90は、道路情報Iroad及び自車両100の現在位置等に基づいて自車両100が走行している車線を車線LN1であると特定することができる。
【0041】
尚、前後情報検出装置43がカメラを含んでいる場合、ECU90は、そのカメラにより撮影された画像に基づいて複数の車線のうち何れの車線を自車両100が走行しているのかを特定するように構成されてもよい。
【0042】
又、ECU90は、「自車両100の前方に分岐路Rbranchが存在する場合において自車両100とその分岐路Rbranchとの距離(分岐路到達距離D11)」、「自車両100が高速道路Rhighの本線Rmainを走行しており且つ自車両100の前方の高速道路Rhighの本線Rmainに料金所が存在する場合において自車両100とその料金所との距離(料金所到達距離D12)」及び「自車両100の前方に下り坂が存在する場合において自車両100とその下り坂との距離(下り坂到達距離D13)」を道路情報Iroad及び自車両100の現在位置等に基づいて取得することができる。
【0043】
本例において、分岐路Rbranchは、図3に示したように、高速道路Rhighの本線Rmainから分岐する道路であり、例えば、「高速道路Rhighの本線Rmainと高速道路Rhighの出口とを結ぶ道路」、「高速道路Rhighの本線Rmainとサービスエリア及びパーキングエリア等とを結ぶ道路」及び「高速道路Rhighの本線Rmainと別の高速道路Rhighの本線Rmainとを結ぶ道路」等である。
【0044】
<受信装置>
受信装置53は、自車両100の外部から到来する無線信号を受信する装置であり、本例においては、道路の渋滞の情報を表す無線信号を受信する。受信装置53は、ECU90に電気的に接続されている。受信装置53は、受信した無線信号をECU90に送信する。ECU90は、その無線信号が表す情報(道路情報Iroad)に基づいて自車両100の前方の地点で渋滞が発生している場合にその渋滞が発生している場所を特定することができる。更に、ECU90は、その渋滞が発生している場所及び自車両100の現在位置等に基づいて自車両100とその渋滞が発生している場所との間の距離(渋滞到達距離D14)を取得することができる。
【0045】
<車両運転支援装置の作動の概要>
次に、車両運転支援装置10の作動の概要について説明する。車両運転支援装置10は、自動加減速条件Caccが成立したか否かを判定しており、自動加減速条件Caccが成立していない場合、通常加減速制御を実行する。
【0046】
通常加減速制御は、アクセルペダル操作量AP及び自車両100の車速V0から取得した要求駆動力Pd_reqがゼロよりも大きい場合、要求駆動力Pd_reqが出力されるように駆動装置21の作動を制御し、ブレーキペダル操作量BPから取得した要求制動力Pb_reqがゼロよりも大きい場合、要求制動力Pb_reqが出力されるように制動装置22の作動を制御する制御である。
【0047】
一方、車両運転支援装置10は、自動加減速条件Caccが成立した場合、自動加減速制御を実行する。車両運転支援装置10は、自動加減速制御の実行を運転者が要求したと判断した場合、アクセルペダル31又はブレーキペダル33が運転者により操作されているか否かを問わず、自動加減速条件Caccが成立したと判定するように構成されてもよいが、本例においては、自動加減速制御の実行を運転者が要求したと判断したときにアクセルペダル31もブレーキペダル33も運転者により操作されていない場合、自動加減速条件Caccが成立したと判定する。
【0048】
尚、車両運転支援装置10は、自動加減速制御の実行中に自動加減速制御の終了を運転者が要求していると判定した場合、自動加減速条件Caccが不成立となった(即ち、自動加減速制御を終了する条件(自動加減速終了条件Cend)が成立した)と判定する。又、車両運転支援装置10は、自動加減速制御の実行中にアクセルペダル31又はブレーキペダル33が運転者により操作された場合も、自動加減速条件Caccが不成立となったと判定する。
【0049】
車両運転支援装置10は、自動加減速制御の実行時、先行車101が存在する場合、自動加減速制御として追従走行制御を実行する。追従走行制御は、前方車間距離D1が設定前方車間距離D1setに維持されるように自車両100を自動で加速したり減速したりする制御である。
【0050】
車両運転支援装置10は、追従走行制御の実行時、前方車間距離D1を設定前方車間距離D1setに制御するために必要な自車両100の加速度Gを要求加速度Greqとして算出する。そして、車両運転支援装置10は、その要求加速度Greqを達成するための要求駆動力Pd_req又は要求制動力Pb_reqを算出し、その要求駆動力Pd_req又は要求制動力Pb_reqが出力されるように駆動装置21及び/又は制動装置22の作動を制御することにより自車両100を自動で加速したり減速したりする。
【0051】
これにより、自車両100は、先行車101に追従して走行する。別の言い方をすると、自車両100の車速V0が先行車101の車速V1と等しくなるように自車両100が自動で加速されたり減速されたりするとも言える。従って、追従走行制御は、自車両100の車速V0を目標車速(先行車101の車速V1)に制御する自動加減速制御であると言える。
【0052】
一方、車両運転支援装置10は、自動加減速制御の実行時、先行車101が存在しない場合、定速制御を実行する。定速制御は、自車両100の車速V0が設定車速Vsetに維持されるように自車両100を自動で加速したり減速したりする制御である。
【0053】
車両運転支援装置10は、定速制御の実行時、自車両100の車速V0を設定車速Vsetに制御するために必要な自車両100の加速度Gを要求加速度Greqとして算出する。そして、車両運転支援装置10は、その要求加速度Greqを達成するための要求駆動力Pd_req又は要求制動力Pb_reqを算出し、その要求駆動力Pd_req又は要求制動力Pb_reqが出力されるように駆動装置21及び/又は制動装置22の作動を制御することにより自車両100を加速したり減速したりする。
【0054】
これにより、自車両100は、設定車速Vsetで走行する。別の言い方をすると、自車両100の車速V0が設定車速Vsetとなるように自車両100が自動で加速されたり減速されたりするとも言える。従って、定速制御は、自車両100の車速V0を目標車速(設定車速Vset)に制御する自動加減速制御であると言える。
【0055】
更に、車両運転支援装置10は、自動加減速制御の実行中、減速条件Cdecが成立したか否かを判定している。減速条件Cdecは、自車両100が所定距離(所定減速予測距離Dth)を走行したときに自車両100の減速が行われると予測されたときに成立し、そうした自車両100の減速が行われると予測されなくなったときに不成立となる。
【0056】
例えば、図3に示したように、高速道路Rhighには、本線Rmainから分岐する道路(分岐路Rbranch)が設けられている。車両が高速道路Rhighの本線Rmainから分岐路Rbranchに進入すると、車両の減速が行われる可能性がある。
【0057】
本例において、車両運転支援装置10は、自車両100が高速道路Rhighの本線Rmainを走行しているときに道路情報Iroadに基づいて自車両100の前方に分岐路Rbranchが存在すると判定した場合、その本線Rmainに設けられている複数の車線LN1乃至LN3のうち分岐路Rbranchが設けられている側の車線(図3に示した例においては、最も左側の車線LN1)を自車両100が走行しているか否かを判定する。車両運転支援装置10は、分岐路Rbranchが設けられている側の車線を自車両100が走行していると判定した場合、自車両100の現在位置から分岐路Rbranchまでの距離(分岐路到達距離D11)を減速予測距離Ddecとして取得する。そして、車両運転支援装置10は、その減速予測距離Ddecが所定距離(所定減速予測距離Dth)に等しくなったとき、自車両100が所定減速予測距離Dthを走行した時点で自車両100の減速が行われると予測する。
【0058】
又、車両が走行している高速道路Rhighの本線Rmainに料金所が設置されている場合、その料金所に車両がさしかかったときにも、車両の減速が行われる可能性がある。又、車両の前方の道路が下り坂になっている場合、その下り坂に車両がさしかかったとき及びその下り坂を車両が走行している間も、車両の減速が行われる可能性がある。又、車両の前方において渋滞が発生している場合、その渋滞が発生している場所に車両がさしかかったときにも、車両の減速が行われる可能性がある。
【0059】
車両運転支援装置10は、自車両100が高速道路Rhighの本線Rmainを走行しているときに道路情報Iroadに基づいて自車両100の前方に料金所が存在すると判定した場合、自車両100からその料金所までの距離(料金所到達距離D12)を減速予測距離Ddecとして取得する。そして、車両運転支援装置10は、その減速予測距離Ddecが所定減速予測距離Dthに等しくなったとき、自車両100が所定減速予測距離Dthを走行した時点で自車両100の減速が行われると予測する。
【0060】
又、車両運転支援装置10は、道路情報Iroadに基づいて自車両100の前方に下り坂が存在すると判定した場合、自車両100からその下り坂までの距離(下り坂到達距離D13)を減速予測距離Ddecとして取得する。そして、車両運転支援装置10は、その減速予測距離Ddecが所定減速予測距離Dthに等しくなったとき、自車両100が所定減速予測距離Dthを走行した時点で自車両100の減速が行われると予測する。
【0061】
又、車両運転支援装置10は、道路情報Iroadに基づいて自車両100の前方で渋滞が発生していると判定した場合、自車両100からその渋滞発生場所までの距離(渋滞到達距離D14)を減速予測距離Ddecとして取得する。そして、車両運転支援装置10は、その減速予測距離Ddecが所定減速予測距離Dthに等しくなったとき、自車両100が所定減速予測距離Dthを走行した時点で自車両100の減速が行われると予測する。
【0062】
尚、減速条件Cdecは、上述した条件に加え、後続車102が存在しないとの条件を含んでいてもよい。
【0063】
車両運転支援装置10は、自動加減速制御の実行中に減速条件Cdecが成立した場合、エコ走行条件Cecoが成立しているか否かを判定する。
【0064】
車両運転支援装置10は、エコ走行条件Cecoが成立している場合、自動加減速制御を中断し、要求駆動力Pd_reqがゼロとなる加速度Gを要求加速度Greqとして算出する。そして、車両運転支援装置10は、その要求加速度Greqを達成するための要求駆動力Pd_reqを算出し、その要求駆動力Pd_reqが駆動装置21から出力されるよう(即ち、駆動装置21から出力される駆動力がゼロとなるよう)に駆動装置21の作動を制御することにより自車両100を惰行させる惰行制御を実行する。これにより、自車両100は減速する。
【0065】
尚、駆動装置21がモータを含んでいる場合、車両運転支援装置10は、自車両100を惰行させる場合、自車両100の走行エネルギーによりモータを回転させて電力を回生することにより自車両100を惰行させる惰行制御を実行するように構成されてもよい。
【0066】
又、車両運転支援装置10は、エコ走行条件Cecoが成立していない場合、自動加減速制御を継続する。
【0067】
車両運転支援装置10によれば、例えば、定速制御の実行中に減速条件Cdec及びエコ走行条件Cecoが成立した場合、自車両100の車速V0は、図4に示したように推移する。図4に示した例においては、時刻t40にて自動加減速条件Cacc及びエコ走行条件Cecoが成立する。このとき、先行車101が存在しないので、定速制御が開始される。そして、このとき、自車両100の車速V0が設定車速Vsetよりも小さいので、自車両100が自動で加速され、時刻t41にて自車両100の車速V0が設定車速Vsetに到達する。その後、自車両100の車速V0が設定車速Vsetに維持される。
【0068】
そして、時刻t42にて減速条件Cdecが成立する。このとき、エコ走行条件Cecoが成立しているので、定速制御が中断され、惰行制御が開始される。従って、自車両100の車速V0が徐々に小さくなる。
【0069】
<効果>
車両運転支援装置10によれば、自車両100が所定減速予測距離Dthを走行した時点で自車両100の減速が行われると予測された場合、自車両100の惰行が開始される。このため、自車両100の減速が行われる場所にさしかかった時点で車速V0が比較的小さくなっている。このため、そのときに自車両100の車速V0を所望の車速まで低下させるために必要な制動の程度が小さくてすみ、その結果、自車両100のエネルギー消費量を小さく抑制することができる。
【0070】
<車両運転支援装置の具体的な作動>
次に、車両運転支援装置10の具体的な作動について説明する。車両運転支援装置10のECU90のCPUは、図5に示したルーチンを所定演算時間の経過毎に実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは、図5のステップ500から処理を開始し、その処理をステップ510に進め、自動加減速条件Caccが成立しているか否かを判定する。
【0071】
CPUは、ステップ510にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ520に進め、減速条件Cdecが成立したか否かを判定する。CPUは、ステップ520にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ530に進め、エコ走行条件Cecoが成立しているか否かを判定する。CPUは、ステップ530にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ540に進め、惰行制御を実行する。これにより、自車両100が減速し、車速V0が小さくなる。次いで、CPUは、処理をステップ595に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0072】
一方、CPUは、ステップ530にて「No」と判定した場合、処理をステップ550に進め、先行車101が存在するか否かを判定する。CPUは、ステップ550にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ560に進め、追従走行制御を実行する。次いで、CPUは、処理をステップ595に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0073】
一方、CPUは、ステップ550にて「No」と判定した場合、処理をステップ570に進め、定速制御を実行する。次いで、CPUは、処理をステップ595に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0074】
又、CPUは、ステップ520にて「No」と判定した場合も、処理をステップ550に進め、先行車101が存在するか否かを判定する。CPUは、ステップ550にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ560に進め、追従走行制御を実行し、ステップ550にて「No」と判定した場合、処理をステップ570に進め、定速制御を実行する。次いで、CPUは、処理をステップ595に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0075】
又、CPUは、ステップ510にて「No」と判定した場合、処理をステップ580に進め、通常加減速制御を実行する。次いで、CPUは、処理をステップ595に進め、本ルーチンを一旦終了する。
【0076】
以上が、車両運転支援装置10の具体的な作動である。
【0077】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【符号の説明】
【0078】
10…車両運転支援装置、21…駆動装置、22…制動装置、41…自動加減速操作器、42…エコ走行操作器、43…前後情報検出装置、50…道路情報取得装置、90…ECU、100…自車両、101…先行車、102…後続車、Rhigh…高速道路、Rmain…高速道路の本線、Rbranch…分岐路
図1
図2
図3
図4
図5