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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】走行支援制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/02 20060101AFI20241225BHJP
   B60W 30/06 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
B60W40/02
B60W30/06
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021125548
(22)【出願日】2021-07-30
(65)【公開番号】P2023020278
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 美帆
(72)【発明者】
【氏名】日栄 悠
(72)【発明者】
【氏名】丸木 大樹
【審査官】齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-062684(JP,A)
【文献】特開2008-291791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 40/02
B60W 30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方領域を撮影する前カメラ装置と、
前記車両の後方領域を撮影する後カメラ装置と、
前記車両を前記車両の運転者により予め指定された目標区画に向かって走行させる制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットは、
前記車両の前記目標区画への初回走行時において、異なる複数のタイミングで、前記前カメラ装置及び前記後カメラ装置のうち前記目標区画に近い方の登録用カメラ装置が撮影した画像に基いて生成される俯瞰画像である登録俯瞰画像を取得し、
前記登録俯瞰画像を、前記登録用カメラ装置を識別可能なカメラ識別子と、前記登録俯瞰画像の取得時点の前記車両の前後方向の勾配の大きさに関する勾配情報と、を対応付けて、登録俯瞰画像情報として記憶し、
前記車両の前記目標区画への2回目以降の走行時において、
現時点における前記車両の前記目標区画に対する位置である推定位置を推定し、
前記登録俯瞰画像情報のうち前記推定位置と最も近い位置で取得された登録俯瞰画像情報である対応登録俯瞰画像情報の前記勾配情報が前記勾配の大きさが所定の閾値以下であり、且つ、現時点の前記勾配の大きさが前記閾値以下である、との無勾配条件が成立した場合、前記前カメラ装置が現時点にて撮影した画像に基いて生成される俯瞰画像である前方俯瞰画像と前記登録俯瞰画像情報のうち前記前方俯瞰画像の位置に最も近い登録俯瞰画像情報の登録俯瞰画像とのマッチング、及び、前記後カメラ装置が現時点にて撮影した画像に基いて生成される俯瞰画像である後方俯瞰画像と前記登録俯瞰画像情報のうち前記後方俯瞰画像の位置に最も近い登録俯瞰画像情報の登録俯瞰画像とのマッチングにより、前記車両の前記目標区画に対する位置を特定し、
前記無勾配条件が成立しない場合、前記対応登録俯瞰画像情報の前記カメラ識別子によって識別される前記登録用カメラ装置と同じカメラ装置が現時点にて撮影した画像に基いて生成される俯瞰画像である比較俯瞰画像と前記登録俯瞰画像情報のうち前記比較俯瞰画像の位置に最も近い登録俯瞰画像情報の登録俯瞰画像とのマッチングにより、前記車両の目標区画に対する位置を特定し、
前記特定した前記車両の目標区画に対する位置に基いて、前記車両を前記目標区画へと走行させる、
ように構成された、
走行支援制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を予め登録された目標区画へと走行させる走行支援制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、枠線によって区画されてない目標区画へと車両を自動で走行させる走行支援装置が知られている。特許文献1に記載された走行支援装置(以下、「従来装置」と称呼する。)は、車両の目標区画への初回の走行時において、「車両に配設された複数のカメラ」に画像を撮像させて登録画像を取得する。そして、従来装置は、登録画像から「目標区画の周囲に固定して配置された構造物」の点を画像特徴として抽出し、その画像特徴の目標区画に対する位置(以下、「画像特徴位置」と称呼する。)を特定している。
【0003】
車両の目標区画への2回目以降の走行時において、従来装置は、上記カメラに画像を撮像させて比較画像を取得し、比較画像と登録画像とに基いて車両を目標区画へと自動で(運転者の操作なしに)走行させる。より具体的に述べると、従来装置は、比較画像から上記画像特徴を抽出し、抽出した画像特徴と登録モードで抽出された画像特徴とを比較することにより車両の目標区画に対する位置を特定し、車両を目標区画へと走行させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-138664号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明者等は、車両の目標区画に対する位置をより正確に特定するために以下の処理を行う走行支援装置(以下、「検討装置」と称呼する。)を検討している。
検討装置は、車両の目標区画への初回の走行時に、前カメラ装置及び後カメラ装置のうち目標区画に最も近い一のカメラが異なるタイミングで取得した画像のそれぞれに基いて複数の登録俯瞰画像を生成する。そして、検討装置は、登録俯瞰画像と「登録俯瞰画像における所定位置の目標区画に対する位置」とを対応付けて記憶しておく。なお、前カメラ装置は車両の前方領域を撮影し、後カメラ装置は車両の後方領域を撮影する。
【0006】
車両の目標区画への2回目以降の走行時において、検討装置は、後述する前方マッチング及び後方マッチングを行うことにより車両の目標区画に対する詳細な位置を特定する。
前方マッチングは、「前カメラ装置が現時点にて撮影した画像に基き生成される前方俯瞰画像」と「上記登録俯瞰画像のうち一の登録俯瞰画像」とのマッチングである。
後方マッチングは、「後カメラ装置が現時点にて撮影した画像に基き生成される後方俯瞰画像」と「上記登録俯瞰画像のうちの一の登録俯瞰画像」とのマッチングである。
【0007】
ここで、以下の仮定が成立するものとする。
・車両は、目標区画へと車両の後方から進入していく。
・目標区画に最も近いカメラは後カメラ装置となるので、上記複数の登録俯瞰画像は後カメラ装置が撮影した画像に基き生成されている。
・目標区画まで車両が走行する路面に上り勾配がある。
【0008】
上記仮定下においては、後カメラ装置は上り勾配の路面を撮影するのに対して、前カメラ装置は下り勾配の路面を撮影することとなる。たとえ、前カメラ装置と後カメラ装置とが同じ場所を撮影したとしても、勾配の方向が異なるので、前方俯瞰画像と後方俯瞰画像とでは「ずれ」が生じる(即ち、前方俯瞰画像と後方俯瞰画像とが異なってしまう。)。
【0009】
このようなずれが生じている登録俯瞰画像(後方俯瞰画像)と前方俯瞰画像とをマッチングさせても、車両の目標区画に対する位置を正確に特定できない可能性が高い。この結果、検討装置は、車両を目標区画に正確に位置させることができない可能性が高い。
【0010】
本発明は前述した課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、車両が走行する路面に勾配が存在する場合であっても、車両の目標区画に対する位置を正確に特定することにより目標区画に車両を正確に位置させる可能性を高めることができる走行支援装置を提供することにある。
【0011】
本発明の走行支援装置(以下、「本発明装置」と称呼する。)は、
車両の前方領域を撮影する前カメラ装置(22)と、
前記車両の後方領域を撮影する後カメラ装置(24)と、
前記車両を前記車両の運転者により予め指定された目標区画(Ptgt)に向かって走行させる制御ユニット(20)と、
を備える。
【0012】
前記制御ユニットは、
前記車両の前記目標区画への初回走行時において、異なる複数のタイミングで、前記前カメラ装置及び前記後カメラ装置のうち前記目標区画に近い方の登録用カメラ装置が撮影した画像に基いて生成される俯瞰画像である登録俯瞰画像を取得し(ステップ850)、
前記登録俯瞰画像を、前記登録用カメラ装置を識別可能なカメラ識別子と、前記登録俯瞰画像の取得時点の前記車両の前後方向の勾配の大きさに関する勾配情報と、を対応付けて、登録俯瞰画像情報として記憶し(ステップ865)、
前記車両の前記目標区画への2回目以降の走行時において、
現時点における前記車両の前記目標区画に対する位置である推定位置を推定し(ステップ1020)、
前記登録俯瞰画像情報のうち前記推定位置と最も近い位置で取得された登録俯瞰画像情報である対応登録俯瞰画像情報の前記勾配情報が前記勾配の大きさが所定の閾値以下であり、且つ、現時点の前記勾配の大きさが前記閾値以下である、との無勾配条件が成立した場合(ステップ1055「Yes」)、前記前カメラ装置が現時点にて撮影した画像に基いて生成される俯瞰画像である前方俯瞰画像と前記登録俯瞰画像情報のうち前記前方俯瞰画像の位置に最も近い登録俯瞰画像情報の登録俯瞰画像とのマッチング(ステップ1105乃至ステップ1115)、及び、前記後カメラ装置が現時点にて撮影した画像に基いて生成される俯瞰画像である後方俯瞰画像と前記登録俯瞰画像情報のうち前記後方俯瞰画像の位置に最も近い登録俯瞰画像情報の登録俯瞰画像とのマッチング(ステップ1120乃至ステップ1130)により、前記車両の前記目標区画に対する位置を特定し(ステップ1065)、
前記無勾配条件が成立しない場合(ステップ1055「No」)、前記対応登録俯瞰画像情報の前記カメラ識別子によって識別される前記登録用カメラ装置と同じカメラ装置が現時点にて撮影した画像に基いて生成される俯瞰画像である比較俯瞰画像と前記登録俯瞰画像情報のうち前記比較俯瞰画像の位置に最も近い登録俯瞰画像情報の登録俯瞰画像とのマッチング(ステップ1205乃至ステップ1220)により、前記車両の目標区画に対する位置を特定し(ステップ1065)、
前記特定した前記車両の目標区画に対する位置に基いて、前記車両を前記目標区画へと走行させる(ステップ1035)、
ように構成されている。
【0013】
無勾配条件が成立しない場合(即ち、車両が走行する路面に勾配が存在する場合)、登録用カメラ装置と同じカメラ装置が撮影した画像に基いて生成される俯瞰画像と登録俯瞰画像とのマッチングにより、車両の目標区画に対する位置が特定される。これにより、勾配の方向が異なる画像同士がマッチングされることを防止することができ、車両の目標区画に対する位置の特定精度の低下を防止できる。この結果、車両が目標区画に正確に位置させることができる可能性を高めることができる。
【0014】
なお、上記説明においては、発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明の実施形態に係る走行支援装置の概略システム構成図である。
図2図2図1に示した前カメラ装置、後カメラ装置、左カメラ装置及び右カメラ装置の撮影範囲の説明図である。
図3図3は登録俯瞰画像情報の説明図である。
図4図4は勾配の方向が異なる登録俯瞰画像及び比較俯瞰画像の説明図である。
図5図5は第1制御の作動例の説明図である。
図6図6は第2制御の作動例の説明図である。
図7図7図1に示した制御ECUのCPUが実行する第1制御開始ルーチンを示したフローチャートである。
図8図8図1に示した制御ECUのCPUが実行する第1制御ルーチンを示したフローチャートである。
図9図9図1に示した制御ECUのCPUが実行する第2制御開始ルーチンを示したフローチャートである。
図10図10図1に示した制御ECUのCPUが実行する第2制御ルーチンを示したフローチャートである。
図11図11図1に示した制御ECUのCPUが実行する無勾配時位置ずれ量取得サブルーチンを示したフローチャートである。
図12図12図1に示した制御ECUのCPUが実行する勾配時位置ずれ量取得サブルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る走行支援装置(以下、「本支援装置」と称呼する。)10を説明する。図1は、本支援装置10及び本支援装置10が搭載(適用)される車両VAを示している。
【0017】
本支援装置10は、制御ECU20、エンジンECU30、ブレーキECU40、ステアリングECU50を備える。これらのECUは、図示しないCAN(Controller Area Network)を介してデータ交換可能(通信可能)に互いに接続されている。
【0018】
ECUは、エレクトロニックコントロールユニットの略称であり、CPU、ROM、RAM、書き込み可能な不揮発性メモリ(本例においてEEPROM)及びインターフェース(IF)等を含むマイクロコンピュータを主要構成部品として有する電子制御回路である。ECUは「制御ユニット」又は「コントローラ」と称呼される場合がある。CPUは、メモリ(ROM)に格納されたインストラクション(ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。上記ECU20、30、40及び50の総て又は幾つかは、一つのECUに統合されてもよい。
【0019】
本支援装置10は、上記ECU20、30、40及び50に加えて、前カメラ装置22、後カメラ装置24、左カメラ装置26及び右カメラ装置28を備える。以下、これらのカメラ装置22、24、26及び28をそれぞれ区別する必要がない場合、「カメラ装置」と称呼する。
【0020】
これらのカメラ装置の撮像範囲を図2に示す。
前カメラ装置22は、車両VAの前方領域を撮像するよう車両VAの前端部の中央に取り付けられている。後カメラ装置24は、車両VAの後方領域を撮像するように車両VAの後端部の中央に取り付けられている。前カメラ装置22及び後カメラ装置24の撮像範囲の中心軸CA1及びCA2は車両VAの前後方向に延びる。
左カメラ装置26は、車両VAの左側の領域を撮像するように車両VAの左側部に取り付けられている。右カメラ装置28は、車両VAの右側の領域を撮像するように車両VAの右側部に取り付けられている。左カメラ装置26及び右カメラ装置28の撮像範囲の中心軸CA3及びCA4は車両VAの車幅方向に延びる。
各カメラ装置の画角は略180度である。
【0021】
図1に示したように、各カメラ装置は、制御ECU20にデータ交換可能に接続されている。制御ECU20は、カメラ装置が撮像した風景の画像に関する情報(以下、「画像情報」と称呼する。)を取得する。
【0022】
更に、本支援装置10は勾配センサ29を備えている。勾配センサ29は、車両前後方向の加速度と車両上下方向の加速度とを検出する2軸の加速度センサを含む。勾配センサ29は、路面の車両前後方向の勾配Grを表す信号を発生する。勾配Grは、車両VAが水平面を走行しているとき「0」となる。勾配Grは、車両VAが上り坂を走行しているときに正の値となり(Gr>0)、車両VAが下り坂を走行しているときに負の値となる(Gr<0)。
【0023】
更に、本支援装置10は、車輪速センサ32、エンジンセンサ34、駆動装置36及びエンジンアクチュエータ38を備えている。車輪速センサ32、エンジンセンサ34及びエンジンアクチュエータ38は、エンジンECU30にデータ交換可能に接続され、エンジンECU30はこれらのセンサの検出信号を受け取る。
【0024】
車輪速センサ32は車両VAの車輪毎に設けられる。各車輪速センサ32は、対応する車輪が所定角度回転する毎に一つの車輪パルス信号を発生させる。エンジンECU30は、各車輪速センサ32から受け取った車輪パルス信号の単位時間におけるパルス数をカウントし、そのパルス数に基いて各車輪の回転速度(車輪速度)を取得する。エンジンECU30は、各車輪の車輪速度に基いて車両VAの速度を示す車速Vsを取得する。一例として、エンジンECU30は、四つの車輪の車輪速度の平均値を車速Vsとして取得する。制御ECU20は、エンジンECU30から車速Vsを取得することができる。
【0025】
エンジンセンサ34は、車両の駆動源である駆動装置36の運転状態量を検出するセンサである。駆動装置36は「ガソリン燃料噴射式・火花点火・内燃機関」であり、エンジンセンサ34は、スロットル弁開度センサ、機関回転速度センサ及び吸入空気量センサ等である。
【0026】
エンジンアクチュエータ38は一例として「スロットル弁アクチュエータ及び燃料噴射弁」等である。エンジンECU30は、エンジンアクチュエータ38を駆動することによって内燃機関が発生するトルクを変更し、以て、車両VAの駆動力を調整する。
【0027】
ブレーキECU40は、上記車輪速センサ32と接続され、車輪速センサ32から検出信号を受け取る。ブレーキECU40は、車輪速センサ32からの車輪パルス信号に基いて各車輪の回転速度及び車速VsをエンジンECU30と同様に取得する。なお、ブレーキECU40は上記回転速度及び車速VsをエンジンECU30から取得してもよい。
【0028】
更に、本支援装置10は「油圧制御アクチュエータであるブレーキアクチュエータ42」を備え、ブレーキアクチュエータ42はブレーキECU40にデータ交換可能に接続されている。ブレーキアクチュエータ42は、車両VAの図示しないブレーキペダルの踏力によって作動油を加圧するマスタシリンダと、各車輪に設けられる周知のホイールシリンダを含む摩擦ブレーキ装置と、の間の油圧回路(何れも、図示略)に配設される。ブレーキアクチュエータ42はホイールシリンダに供給する油圧を調整し、車両VAの制動力を調整する。
【0029】
更に、本支援装置10は、舵角センサ52及び操舵用モータ54を備える。舵角センサ52及び操舵用モータ54は「周知の電動パワーステアリングシステムの制御装置であるステアリングECU50」にデータ交換可能に接続されている。
【0030】
操舵用モータ54は、車両VAの「ステアリングホイール、ステアリングホイールに連結された図示しないステアリングシャフト及び操舵用ギア機構等を含む、図示しないステアリング機構」に組み込まれている。
【0031】
舵角センサ52は、車両VAの操舵輪の舵角θを検出し、舵角θを表す検出信号を発生させる。ステアリングECU50は、舵角センサ52からこの検出信号を受け取る。
操舵用モータ54は、ステアリングECU50によって向き及び大きさ等が制御される電力に応じてトルクを発生し、このトルクによって操舵アシストトルクを加えたり、左右の操舵輪を操舵したりする。即ち、ステアリングECU50は、操舵用モータ54を用いて舵角θを制御できる。
【0032】
更に、本支援装置10は表示装置60を備える。表示装置60は、タッチパネル(タッチパネル式のディスプレイ)62を含む。表示装置60は、車両VA内の各種ECU及び図示しないナビゲーション装置からの表示情報を受信し、その表示情報をタッチパネル62に表示する。表示装置60は、車両VAの運転者及び乗員がタッチパネル62の画面をタッチしたとき、そのタッチした位置に対応する操作入力を受け付ける。
【0033】
<走行支援制御>
以下、制御ECU20が実行する走行支援制御を説明する。
走行支援制御は、運転者によって指定(登録)された目標区画Ptgtへと車両VAを自動で走行させる制御である。走行支援制御には、第1制御と第2制御とがある。制御ECU20は、車両VAの目標区画Ptgtへの初回走行時には後述する第1制御を走行支援制御として実行し、車両VAの目標区画Ptgtへの2回目以降の走行時には後述する第2制御を走行支援制御として実行する。
【0034】
(作動の概要)
制御ECU20は、目標区画Ptgtの登録時に前カメラ装置22、後カメラ装置24、左カメラ装置26及び右カメラ装置28が撮影した画像に基いて全体俯瞰画像(入口俯瞰画像Pe)を生成する。そして、制御ECU20は、その全体俯瞰画像と車両VAの目標区画Ptgtに対する位置を入口情報として記憶しておく。俯瞰画像は、車両VAの周囲の風景を車両VAの鉛直上方に位置する仮想的な視点から見たときの画像である。
【0035】
制御ECU20は、第1制御の実行中に(即ち、車両VAの目標区画Ptgtへの初回の走行中に)、後述する取得条件が成立したとき、前カメラ装置22及び後カメラ装置24のうち目標区画Ptgtに近い方のカメラ装置(以下、「登録用カメラ装置」と称呼する。)に画像を取得させる。そして、制御ECU20は、その画像に基いて俯瞰画像(以下、「登録俯瞰画像Pr」と称呼する。)を生成し、登録俯瞰画像Pr及び「登録用カメラ装置の識別子であるカメラID」を含む登録俯瞰画像情報(図3を参照。)をEEPROMに記憶しておく。取得条件は複数のタイミングで成立するため、複数の登録俯瞰画像Prが生成される。なお、目標区画Ptgtに近い方のカメラ装置のみが撮影した画像に基いて生成された登録俯瞰画像PrがEEPROMに記憶されるとしたのは、EEPROMの記憶容量の低減のためである。
【0036】
登録俯瞰画像情報は、更に、登録俯瞰画像生成時の勾配Gr、登録俯瞰画像Pr内における所定位置の目標区画Ptgtに対する位置を示す画像座標(Xp、Yp)、及び、車両VAの目標区画Ptgtに対する位置を示す車両座標(Xv,Yv)を含む。
【0037】
第2制御においては、制御ECU20は、所定時間が経過する毎に全体俯瞰画像を生成し、生成した全体俯瞰画像と入口情報とに基き車両VAの目標区画Ptgtに対する位置(大まかな位置)を特定している。
更に、制御ECU20は、以下の前方マッチング及び後方マッチングを行うことにより車両VAの目標区画Ptgtに対するより詳細な位置を特定し、その詳細な位置に基いて車両VAを目標区画Ptgtへと走行させる。
前方マッチング:「前カメラ装置22が撮影した画像に基いて生成された前方俯瞰画像Pfr」と「その前方俯瞰画像Pfrに対応する登録俯瞰画像Pr」とのマッチング
後方マッチング:「後カメラ装置24が撮影した画像に基いて生成された後方俯瞰画像Prr」と「その後方俯瞰画像Prrに対応する登録俯瞰画像Pr」とのマッチング
【0038】
ここで、図4に示したように、目標区画Ptgtまでの経路に車両VAの前後方向の勾配があると仮定する。図4に示した例では、登録用カメラ装置は後カメラ装置24であり、第1制御中に後方俯瞰画像Prrが登録俯瞰画像Prとして記憶されている。
制御ECU20は、第2制御において前方マッチングを行う場合、図4の下方に示した前方俯瞰画像Pfrと図4の上方に登録俯瞰画像Prとをマッチングする。この前方俯瞰画像Pfrは下り勾配の風景の画像に基いて生成された画像であり、登録俯瞰画像Prは上り勾配の風景の画像に基いて生成された画像である。このような勾配の方向が異なる俯瞰画像では「ずれ」が生じる。この「ずれ」の一例を示すと、前方俯瞰画像Pfrの壁KBの所定位置から白線WLまでの長さは、登録俯瞰画像Prの当該長さよりも長くなってしまっている(図4では、太い矢印で図示している。)。
【0039】
このような俯瞰画像同士のマッチングを行っても車両VAの目標区画Ptgtに対する位置を正確に特定できない。
【0040】
そこで、制御ECU20は、車両VAの前後方向の勾配が無いときに成立する無勾配条件が成立する場合、前方マッチング及び後方マッチングにより、車両VAの目標区画Ptgtに対するより詳細な位置を特定する。一方、無勾配条件が成立しない場合、制御ECU20は、前方マッチング及び後方マッチングのうち、「最短登録俯瞰画像情報のカメラIDによって識別されるカメラ装置の側のマッチング」のみを行う。最短登録俯瞰画像情報は、登録俯瞰画像情報のうち車両座標(Xv、Yv)が現時点の車両座標(Xv、Yv)に最も近い登録俯瞰画像情報である。現時点の車両座標(Xv、Yv)は、後述する全体画像位置特定により求められる。なお、最短登録俯瞰画像情報は、「対応登録俯瞰画像情報」と称呼される場合もある。
【0041】
これにより、勾配が有る場合には、勾配の方向が異なる俯瞰画像同士のマッチングが行われることを防止できるので、車両VAの詳細な位置の特定精度を低下させることを防止できる。
【0042】
(作動例)
<第1制御>
図5を参照しながら第1制御の作動例を説明する。
制御ECU20は、車両VAの運転者が目標区画Ptgtを登録するための操作を行った場合、登録画面620をタッチパネル62に表示する。登録画面620においては、俯瞰画像領域622及び登録完了ボタン624が表示される。
【0043】
俯瞰画像領域622には、全体俯瞰画像のうち運転者が所望する領域の俯瞰画像が表示される。図5では、俯瞰画像領域622には、車両VAの左側の風景の俯瞰画像が表示されている。俯瞰画像領域622には、車両俯瞰画像626及び指定枠画像628が表示される。車両俯瞰画像626は、予め記憶されている車両VAの俯瞰画像である。指定枠画像628は、上記目標区画Ptgtとして指定される区画(領域)を示す画像である。指定枠画像628は、運転者のタッチ操作により移動可能に構成されている。運転者は、車両VAを移動(駐車)させたい位置へと指定枠画像628を移動させた後、登録完了ボタン624をタッチ操作する。登録完了ボタン624がタッチ操作されると、制御ECU20は、入口情報をEEPROMに記憶する。
【0044】
入口情報は、入口俯瞰画像Peと車両座標(Xv、Yv)とを対応付けた情報である。車両座標(Xv、Yv)は、車両VAの目標区画Ptgtに対する位置を示す座標である。より詳細に述べると、目標区画Ptgtの所定位置が原点Oに設定された座標系における車両VAの所定位置PPの座標である。上記所定位置PPは、車両VAの右後輪及び左後輪を繋ぐシャフトの中点であり、上記した目標区画Ptgtの所定位置は、車両VAが目標区画Ptgtに位置したときの上記中点である。
【0045】
更に、制御ECU20は、入口俯瞰画像Peから画像特徴を抽出し、画像特徴と「その画像特徴の上記座標系における座標(以下、「特徴座標(Xf、Yf)」と称呼する。)」とを対応付けた情報を入口情報に含めて記憶する。画像特徴は、入口俯瞰画像Peにおいて輝度が大きく変化する所定範囲の画像である。制御ECU20は、周知のステレオ写真測量を用いて、車両座標(Xv、Yv)及び特徴座標(Xf、Yf)を特定する。ステレオ写真測量については、特開2017-138664号公報(段落0030)に記載されている。
【0046】
制御ECU20は、入口情報の記憶後、車両VAの現在位置から目標区画Ptgtまでの目標経路Rtgtを取得する。制御ECU20は、車両VAが目標区画Ptgtに到達するまで所定時間が経過する毎に第1制御を実行する。
【0047】
以下、第1制御を詳細に説明する。
制御ECU20は、全体俯瞰画像及び入口情報に基いて車両VAの目標区画Ptgtに対する位置を特定する。より詳細には、制御ECU20は、全体俯瞰画像から画像特徴を抽出し、「抽出した画像特徴のうち入口情報の画像特徴と一致する画像特徴の全体俯瞰画像内における位置」と「入口情報の車両座標(Xv、Yv)」とに基いて現時点の車両座標(Xv、Yv)を特定する。以下、このような位置特定を「全体画像位置特定」と称呼する。
【0048】
そして、制御ECU20は、車両VAの位置に基いて取得される目標舵角θtgtを含む操舵指令をステアリングECU50に送信する。更に、制御ECU20は、上記位置に基いて取得される目標加減速度Gtgtを含む加減速指令をエンジンECU30及びブレーキECU40に送信する。
【0049】
目標舵角θtgtは、目標経路Rtgtに沿って車両VAが走行するための舵角である。目標加減速度Gtgtは、車両VAが目標経路Rtgt上の図3に示した切返し点Psに到達したときに車両VAが一旦停止し、車両VAが目標区画Ptgtに到達したときに停止するような加速度である。
【0050】
ステアリングECU50は、操舵指令を受信すると、舵角θが目標舵角θtgtと一致するように操舵用モータ54を制御する。エンジンECU30は、加減速指令を受信すると、車両VAの加速度Gが目標加減速度Gtgtと一致するようにエンジンアクチュエータ38を制御する。ブレーキECU40は、加速度Gが目標加減速度Gtgtと一致するようにブレーキアクチュエータ42を制御する。
【0051】
ここで、制御ECU20は、第1制御の実行中に以下の取得条件1乃至3の何れかが成立した場合、上記登録用カメラ装置に撮像させ、その画像に基いて登録俯瞰画像Prを生成する。
【0052】
取得条件1:Lt=L1th
取得条件2:Lt=L2th(L2th<L1th)
取得条件3:Lt=L3th(L3th)
Lt:目標区画Ptgtまでの距離
L1th:第1閾値距離
L2th:第1閾値距離L1thよりも小さな値に設定された第2閾値距離
L3th:第2閾値距離Lt2thよりも小さな値に設定された第3閾値距離
【0053】
その後、制御ECU20は、図3に示した登録俯瞰画像情報をEEPROMに記憶する。登録俯瞰画像情報は、登録俯瞰画像Prと、カメラIDと、勾配Grと、画像座標(Xp、Yp)と、車両座標(Xv、Yv)と、を対応付けた情報である。
カメラIDは、登録用カメラ装置を識別可能な識別子であり、「カメラ識別子」と称呼する場合もある。
勾配Grは、登録俯瞰画像を生成したときの勾配Grであり、勾配センサ29からの信号に基いて勾配Grを特定される。
画像座標(Xp、Yp)は、登録俯瞰画像Pr内における所定位置(例えば、右上の画素)の上記座標系における座標である。
車両座標(Xv、Yv)は、登録俯瞰画像を生成したときの車両VAの所定位置PPの上記座標系における座標である。
なお、登録俯瞰画像情報は、画像座標(Xp、Yp)及び車両座標(Xv、Yv)のうち何れか一方を含んでいればよい。これは、画像座標(Xp、Yp)及び車両座標(Xv、Yv)の一方と「カメラIDによって識別されるカメラ装置の車両VAの配設位置」とに基いて、画像座標(Xp、Yp)及び車両座標(Xv、Yv)の他方が特定可能であるためである。
【0054】
<第2制御>
制御ECU20は、目標区画Ptgtが登録されている場合に車速Vsが閾値車速Vsth以下となったとき、車両VAの周囲に目標区画Ptgtが存在するかを判定する。詳細には、制御ECU20は、所定時間が経過する毎に全体俯瞰画像を生成し、その全体俯瞰画像から画像特徴を抽出する。そして、制御ECU20は、抽出した画像特徴同士の位置関係が入口情報に登録された画像特徴同士の位置関係と一致する場合、目標区画Ptgtが存在すると判定する。
【0055】
目標区画Ptgtが存在する場合に車両VAが停止すると、制御ECU20は、図6に示した確認画面630をタッチパネル62に表示する。確認画面630では、俯瞰画像領域632及び確認ボタン634が表示される。俯瞰画像領域632には、指定枠画像628の代わりに表示枠画像638が表示される点で上記俯瞰画像領域622と異なるがその他の点では上記俯瞰画像領域622と同じである。表示枠画像638は、目標区画Ptgtの車両VAに対する位置に表示される。
【0056】
運転者は、表示枠画像638により示される目標区画Ptgtへの車両VAの走行を希望する場合、確認ボタン634をタッチ操作する。確認ボタン634がタッチ操作されると、制御ECU20は、上記全体画像位置特定により現時点の車両座標(Xvp、Yvp)を特定し、目標区画Ptgtまでの目標経路Rtgtを取得する。その後、制御ECU20は、第2制御を開始する。
【0057】
第2制御においては、制御ECU20は、所定時間が経過する毎に上記全体画像位置特定により現時点の車両座標(Xvp、Yvp)を特定する。
そして、制御ECU20は、現時点の車両座標(Xvp、Yvp)と最短車両座標(Xv、Yv)との間の距離Lcが所定の閾値距離Lcthよりも大きい場合、現時点の車両座標(Xvp、Yvp)に基いて目標舵角θtgt及び目標加減速度Gtgtを取得する。そして、制御ECU20は、操舵指令及び加減速指令を送信する。最短車両座標(Xv、Yv)は、「現時点の車両座標(Xvp、Yvp)からの距離が最も短い登録俯瞰画像情報(以下、「最短登録俯瞰画像情報」と称呼する。)の車両座標(Xv、Yv)」である。
【0058】
一方、上記距離Lcが閾値距離Lcth以下である場合、制御ECU20は、「以下の条件1及び条件2の両方が成立する場合に成立する無勾配条件」が成立する場合、上記前方マッチング及び後方マッチングにより車両座標(Xvp、Yvp)を特定する。
条件1:最短登録俯瞰画像情報の勾配Grの大きさが所定の閾値Grth未満であること。
条件2:現時点の勾配Grの大きさが閾値Grth未満であること。
【0059】
その後、制御ECU20は、上記前方マッチング及び後方マッチングにより特定された車両座標(Xvp、Yvp)に基いて、目標舵角θtgt及び目標加減速度Gtgtを取得し、操舵指令及び加減速指令を送信する
【0060】
ここで、前方マッチング及び後方マッチングの詳細を説明する。
制御ECU20は、全体画像位置特定により特定された車両座標(Xvp、Yvp)に基き前方俯瞰画像Pfrの所定位置の画像座標(Xpp、Ypp)を特定し、登録俯瞰画像情報においてその画像座標(Xpp、Ypp)に最も近い画像座標(Xp、Yp)に対応付けられた登録俯瞰画像Prを取得する。そして、制御ECU20は、前方俯瞰画像Pfrと登録俯瞰画像Prとの位置ずれ量を取得する。
上記位置ずれ量は、前方俯瞰画像Pfr及び登録俯瞰画像Prを周知の位相限定相関関数に適用することにより取得される。位相限定相関関数は、そのピーク値の座標が二つの位置ずれ量を示す関数であり、例えば、特開2016-005098号公報及び特開2021-48913号公報等に記載されている。
同様にして、制御ECU20は、後方俯瞰画像Prrの画像座標(Xpp、Ypp)に最も近い登録俯瞰画像Prを取得し、後方俯瞰画像Prrと登録俯瞰画像Prとの位置ずれ量を取得する。
【0061】
制御ECU20は、上記した前方の位置ずれ量及び後方の位置ずれ量のうち信頼度が高い方の位置ずれ量を選択する。例えば、制御ECU20は、位置限定相関関数のピーク値が大きい方を信頼度が高い方の位置ずれ量として特定する。
【0062】
そして、制御ECU20は、信頼度が高い方の位置ずれ量と当該位置ずれ量の取得に用いた登録俯瞰画像Prの画像座標(Xp、Yp)に基いて、「前方俯瞰画像Pfr及び後方俯瞰画像Prrのうち信頼度が高い方の俯瞰画像」の画像座標(Xp、Yp)を特定する。更に、制御ECU20は、この画像座標(Xp、Yp)と「上記信頼度が高い方の俯瞰画像の生成に用いた画像を撮影したカメラ装置の車両VAへの配設位置」とに基いて、車両座標(Xvp、Yvp)を特定する。
【0063】
一方、上記条件1及び条件2の少なくとも一方が成立しない場合(即ち、無勾配条件が成立しない場合)、制御ECU20は、上記最短登録俯瞰画像情報のカメラIDによって識別されるカメラ装置が撮影した画像に基き俯瞰画像(以下、「比較俯瞰画像」と称呼する。)を生成する。そして、制御ECU20は、全体画像位置特定により特定された車両座標(Xvp、Yvp)に基き比較俯瞰画像の所定位置の画像座標(Xpp、Ypp)を特定し、登録俯瞰画像情報においてその画像座標(Xpp、Ypp)に最も近い画像座標(Xp、Yp)に対応付けられた登録俯瞰画像Prを取得する。
【0064】
制御ECU20は、比較俯瞰画像と登録俯瞰画像Prとの位置ずれ量を取得する。そして、制御ECU20は、位置ずれ量と登録俯瞰画像Prの画像座標(Xp、Yp)とに基いて比較俯瞰画像の画像座標(Xp、Yp)を特定する。更に、制御ECU20は、この画像座標(Xp、Yp)と「比較俯瞰画像の生成に用いた画像を撮影したカメラ装置の車両VAへの配設位置」とに基いて、車両座標(Xvp、Yvp)を特定する。
【0065】
図5に示した例では、第1制御の実行中の時点t1乃至t3にてそれぞれ上記取得条件1乃至3が成立し、後カメラ装置24が撮影した画像に基いて生成された登録俯瞰画像Pr1乃至Pr3が記憶される。時点t1乃至t3の何れにおいても勾配Grの大きさは閾値Grth以上となる。
【0066】
図6に示した例では、第2制御の実行中の時点ta乃至tcの何れの時点においても、無勾配条件が成立せず比較俯瞰画像として後方俯瞰画像Prrが取得される。時点ta乃至tcのそれぞれの時点において、比較俯瞰画像(後方俯瞰画像Prr)と登録俯瞰画像Pr1乃至Pr3とがマッチングされる。
【0067】
(具体的作動)
<第1制御開始ルーチン>
制御ECU20のCPU(以下、「CPU」と表記した場合、特に断りがない限り、制御ECU20のCPUを指す。)は、図7にフローチャートにより示した第1制御開始ルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。
【0068】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、図7のステップ700から処理を開始してステップ705に進む。ステップ705にて、CPUは、第1制御フラグX1exe及び第2制御フラグX2exeの両方の値が「0」であるか否かを判定する。
【0069】
第1制御フラグX1exeの値が「0」に設定されていれば、第1制御が実行されていないことを示し、その値が「1」に設定されていれば、第1制御が実行中であることを示す。第2制御フラグX2exeの値が「0」に設定されていれば、第2制御が実行されていないことを示し、その値が「1」に設定されていれば、第2制御が実行中であることを示す。
なお、第1制御フラグX1exe及び第2制御フラグX2exeの値は、イニシャルルーチンにて、「0」に設定される。イニシャルルーチンは、車両VAの図示しないイグニッション・キー・スイッチがオフ位置からオン位置へと変更されたときにCPUによって実行される。
【0070】
第1制御フラグX1exe及び第2制御フラグX2exeの両方の値が「0」である場合、CPUは、ステップ705にて「Yes」と判定し、ステップ710に進む。ステップ710にて、CPUは、図5に示した登録画面620の登録完了ボタン624がタッチ操作されたか否かを判定する。
【0071】
登録完了ボタン624がタッチ操作されていない場合、CPUはステップ710にて「No」と判定し、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、登録完了ボタン624がタッチ操作された場合、CPUはステップ710にて「Yes」と判定し、ステップ715乃至ステップ750を順に実行する。その後、CPUは、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0072】
ステップ715:CPUは、第1制御フラグX1exeの値を「1」に設定する。
ステップ720:CPUは、前カメラ装置22、後カメラ装置24、左カメラ装置26及び右カメラ装置28から画像を取得し、これらの画像に基いて入口俯瞰画像Peを生成する。
ステップ725:CPUは、入口俯瞰画像Peから画像特徴を抽出する。
ステップ730:CPUは、ステレオ写真測量を用いて「画像特徴の上記座標系における座標である特徴座標(Xf、Yf)」を特定する。
ステップ735:CPUは、ステレオ写真測量を用いて車両座標(Xvp,Yvp)を特定する。
ステップ740:CPUは、入口俯瞰画像Pe、車両座標(Xvp,Yvp)、画像特徴及び特徴座標(Xf、Yf)をそれぞれ対応付けた入口情報を記憶する。
ステップ745:CPUは、車両座標(Xvp、Yvp)に基いて目標経路Rtgtを取得する。
ステップ750;CPUは、車両座標(Xvp、Yvp)に基いて目標舵角θtgt及び目標加減速度Gtgtを取得し、操舵指令及び加減速指令を送信する。
【0073】
CPUがステップ705に進んだときに第1制御フラグX1exe及び第2制御フラグX2フラグの少なくとも一方の値が「1」であれば、CPUは、そのステップ705にて「No」と判定し、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0074】
<第1制御ルーチン>
CPUは、図8にフローチャートにより示した第1制御ルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。
【0075】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、図8のステップ800から処理を開始してステップ805に進む。ステップ805にて、CPUは、第1制御フラグX1exeの値が「1」であるか否かを判定する。
【0076】
第1制御フラグX1exeの値が「0」である場合、CPUは、ステップ805にて「No」と判定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0077】
これに対し、第1制御フラグX1exeの値が「1」である場合、CPUは、ステップ805にて「Yes」と判定し、ステップ810乃至ステップ830を順に実行する。
【0078】
ステップ810:CPUは、全体俯瞰画像を生成する。
ステップ815:CPUは、全体俯瞰画像から画像特徴を抽出する。
ステップ820:CPUは、全体画像位置特定により現時点の車両座標(Xvp、Yvp)を特定する。
ステップ825:CPUは、車両座標(Xvp、Yvp)に基いて目標舵角θtgt及び目標加減速度Gtgtを取得し、操舵指令及び加減速指令を送信する。
ステップ830:CPUは、車両座標(Xvp、Yvp)に基いて上記距離Ltを取得し、上記取得条件が成立したか否かを判定する。
【0079】
取得条件が成立していない場合、CPUは、ステップ830にて「No」と判定し、ステップ835に進む。ステップ835にて、CPUは、車両VAが目標区画Ptgtに到達したか否かを判定する。
【0080】
車両VAが目標区画Ptgtに到達していない場合、CPUは、ステップ835にて「No」と判定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、車両VAが目標区画Ptgtに到達した場合、CPUは、ステップ835にて「Yes」と判定し、ステップ840に進む。ステップ840にて、CPUは、第1制御フラグX1exeの値を「0」に設定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0081】
一方、CPUがステップ830に進んだときに取得条件が成立した場合、CPUは、ステップ830にて「Yes」と判定し、ステップ845乃至ステップ865を順に実行してステップ835に進む。
【0082】
ステップ845:CPUは、前カメラ装置22及び後カメラ装置24から目標区画Ptgtに近い方のカメラ装置を登録用カメラ装置として特定する。
ステップ850:CPUは、登録用カメラ装置からの画像に基いて登録俯瞰画像Prを生成する。
ステップ855:CPUは、登録俯瞰画像Pr内の所定位置の上記座標系における座標を画像座標(Xp、Yp)として特定する。
ステップ860:CPUは、勾配センサ29からの信号に基いて勾配Grを取得する。
ステップ865:CPUは、登録俯瞰画像Pr、登録カメラ装置のカメラID、勾配Gr、画像座標(Xp、Yp)及び車両座標(Xvp、Yvp)を登録俯瞰画像情報として記憶する。
【0083】
<第2制御開始ルーチン>
CPUは、図9にフローチャートにより示した第2制御開始ルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。
【0084】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、図9のステップ900から処理を開始してステップ905に進む。ステップ905にて、CPUは、第1制御フラグX1exe及び第2制御フラグX2exeの両方の値が「0」であるか否かを判定する。
【0085】
第1制御フラグX1exe及び第2制御フラグX2exeの両方の値が「0」である場合、CPUは、ステップ905にて「Yes」と判定し、ステップ910に進む。ステップ910にて、CPUは、図6に示した確認画面630の確認ボタン634がタッチ操作されたか否かを判定する。
【0086】
確認ボタン634がタッチ操作されていない場合、CPUは、ステップ910にて「No」と判定し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、確認ボタン634がタッチ操作された場合、CPUは、ステップ910にて「Yes」と判定し、ステップ915乃至ステップ940を順に実行する。その後、CPUは、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0087】
ステップ915:CPUは、第2制御フラグX2exeの値を「1」に設定する。
ステップ920:CPUは、全体俯瞰画像を生成する。
ステップ925:CPUは、全体俯瞰画像から画像特徴を抽出する。
ステップ930:CPUは、ステレオ写真測量により現時点の車両座標(Xvp、Yvp)を特定する。
ステップ935:CPUは、車両座標(Xvp、Yvp)に基いて目標経路Rtgtを取得する。
ステップ940:CPUは、目標舵角θtgt及び目標加減速度Gtgtを取得し、操舵指令及び加減速指令を送信する。
【0088】
CPUがステップ905に進んだときに第1制御フラグX1exe及び第2制御フラグX2フラグの少なくとも一方の値が「1」であれば、CPUは、そのステップ905にて「No」と判定し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0089】
<第2制御ルーチン>
CPUは、図10にフローチャートにより示した第2制御ルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。
【0090】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、図10のステップ1000から処理を開始してステップ1005に進む。ステップ1005にて、CPUは、第2制御フラグX2exeの値が「1」であるか否かを判定する。
【0091】
第2制御フラグX2exeの値が「0」である場合、CPUは、ステップ1005にて「No」と判定し、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、第2制御フラグX2exeの値が「1」である場合、CPUは、ステップ1005にて「Yes」と判定し、ステップ1010乃至ステップ1030を順に実行する。ステップ1010乃至ステップ1020は、それぞれ、図8に示したステップ810乃至ステップ820と同じ処理であるので、簡単に説明する。
【0092】
ステップ1010:CPUは、全体俯瞰画像を生成する。
ステップ1015:CPUは、全体俯瞰画像から画像特徴を抽出する。
ステップ1020:CPUは、全体画像位置特定により現時点の車両座標(Xvp、Yvp)を特定(推定)する。
ステップ1025:CPUは、登録俯瞰画像情報から最短登録俯瞰画像情報を特定する。
ステップ1030:CPUは、車両座標(Xvp、Yvp)と最短登録俯瞰画像情報の車両座標(Xv、Yv)との距離Lが閾値距離Lth以下であるか否かを判定する。
【0093】
距離Lが閾値距離Lthよりも大きい場合、CPUは、ステップ1030にて「No」と判定し、ステップ1035及びステップ1040を順に実行する。
ステップ1035:CPUは、車両座標(Xvp、Yvp)に基いて目標舵角θtgt及び目標加減速度Gtgtを取得し、操舵指令及び加減速指令を送信する。
ステップ1040:CPUは、車両VAが目標区画Ptgtに到達したか否かを判定する。
【0094】
車両VAが目標区画Ptgtに到達していない場合、CPUは、ステップ1040にて「No」と判定し、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、車両VAが目標区画Ptgtに到達した場合、CPUは、ステップ1040にて「Yes」と判定してステップ1045に進み、第2制御フラグX2exeの値を「0」に設定し、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0095】
一方、CPUがステップ1030に進んだときに距離Lが閾値距離Lth以下である場合、CPUは、ステップ1030にて「Yes」と判定し、ステップ1050及びステップ1055を順に実行する。
【0096】
ステップ1050:CPUは、勾配センサ29からの信号に基き現時点の勾配Grを取得する。
ステップ1055:CPUは、最短登録俯瞰画像情報の勾配Gr及び現時点の勾配Grに基き上記無勾配条件が成立するか否かを判定する。
【0097】
無勾配条件が成立する場合、CPUは、ステップ1055にて「Yes」と判定し、ステップ1060及びステップ1065を順に実行し、ステップ1035に進む。
ステップ1060:CPUは、無勾配時位置ずれ量取得サブルーチンを実行する。実際には、CPUは、ステップ1060に進むと、図11にフローチャートにより示したサブルーチンを実行する。このサブルーチンにおける処理は後述する。
ステップ1065:CPUは、ステップ1060又は後述するステップ1070にて取得した位置ずれ量に基いて車両VAの目標区画Ptgtに対する位置を示す車両座標(Xvp、Yvp)を特定する。
その後、CPUは、ステップ1035にて、ステップ1065にて特定された車両座標(Xvp、Yvp)に基いて目標舵角θtgt及び目標加減速度Gtgtを取得し、操舵指令及び加減速指令を送信する。
【0098】
一方、CPUがステップ1055に進んだときに無勾配条件が成立しない場合、CPUは、ステップ1055にて「No」と判定し、ステップ1070を実行し、ステップ1065に進む。
【0099】
ステップ1070:CPUは、勾配時位置ずれ量取得サブルーチンを実行する。実際には、CPUは、ステップ1070に進むと、図12にフローチャートにより示したサブルーチンを実行する。このサブルーチンにおける処理は後述する。
【0100】
<無勾配時位置ずれ量取得ルーチン>
CPUは、図10に示したステップ1060に進むと、図11に示したステップ1100から処理を開始し、ステップ1105乃至ステップ1135を順に実行する。その後、CPUは、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了し、図10に示したステップ1065に進む。
【0101】
ステップ1105:CPUは、前カメラ装置22からの画像に基き俯瞰画像を前方俯瞰画像Pfrとして生成する。
ステップ1110:CPUは、登録俯瞰画像情報から前方俯瞰画像Pfrに最も近い登録俯瞰画像Prを前方登録俯瞰画像として取得する。
ステップ1115:CPUは、前方俯瞰画像Pfr及び前方登録俯瞰画像を位相限定相関関数に適用することにより位置ずれ量を前方位置ずれ量として取得する。
ステップ1120:CPUは、後カメラ装置24からの画像に基き俯瞰画像を後方俯瞰画像Prrとして生成する。
ステップ1125:CPUは、登録俯瞰画像情報から後方俯瞰画像Prrに最も近い登録俯瞰画像Prを後方登録俯瞰画像として取得する。
ステップ1130:CPUは、後方俯瞰画像Prr及び後方登録俯瞰画像を位相限定相関関数に適用することにより位置ずれ量を後方位置ずれ量として取得する。
ステップ1135:CPUは、前方位置ずれ量及び後方位置ずれ量のうち信頼度が高い方の位置ずれ量を選択する。
【0102】
<勾配時位置ずれ量取得ルーチン>
CPUは、図10に示したステップ1070に進むと、図12に示したステップ1200から処理を開始し、ステップ1205乃至ステップ1220を順に実行する。その後、CPUは、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了し、図10に示したステップ1065に進む。
【0103】
ステップ1205:CPUは、最短登録俯瞰画像情報のカメラIDを取得する。
ステップ1210:CPUは、前カメラ装置22及び後カメラ装置24のうち「ステップ1205にて取得したカメラIDによって識別される登録用カメラ装置」からの画像に基いて俯瞰画像を比較俯瞰画像として生成する。
ステップ1215:CPUは、登録俯瞰画像情報から比較俯瞰に最も近い登録俯瞰画像Prを取得する。
ステップ1220:CPUは、比較俯瞰画像及び登録俯瞰画像Prを位相限定相関関数に適用することにより位置ずれ量を位置ずれ量として取得する。
【0104】
本実施形態によれば、無勾配条件が成立しない場合には「登録俯瞰画像Prの生成に用いた画像を撮影した登録用カメラ装置と同じカメラ装置が撮影した画像に基き生成された比較俯瞰画像」と当該登録俯瞰画像Prとのマッチングにより車両VAの目標区画Ptgtに対する位置が特定される。これにより、勾配の方向が異なる俯瞰画像同士のマッチングが行われないので、車両VAの位置の特定精度を低下させることを防止できる。
【0105】
本発明は上記実施形態及び上記変形例に限定されることなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0106】
上記実施形態では、制御ECU20は、第1制御の実行中及び第2制御の実行中には、全体画像位置特定により車両VAの目標区画Ptgtに対する位置を特定した(図8に示したステップ810乃至ステップ815、図10に示したステップ1010乃至ステップ1020)。制御ECU20は、第1制御の実行中及び第2制御の実行中の車両VAの位置を、上記全体画像位置特定によらずに、車両VAのヨーレート及び車輪の回転数に基いて特定してもよい。ヨーレートは、図示しないヨーレートセンサにより測定される。車輪の回転数は、車輪速センサ32からの信号に基き特定できる。
【0107】
登録俯瞰画像情報には勾配Grを表す値が登録されたが、勾配Grの大きさが閾値Grth以下であるか否かを示す情報が登録されてもよい。登録俯瞰画像に登録されるこのような勾配Grに関する情報を「勾配情報」と称呼する場合もある。
【0108】
車両VAの目標区画Ptgtへの初回走行時(即ち、第1制御)では、制御ECU20が操舵指令及び加減速指令を送信することにより、車両VAが目標区画Ptgtへ自動で走行したが、運転者の運転操作により車両VAが目標区画Ptgtへと走行してもよい。この場合であっても、制御ECU20は、取得条件が成立したときに登録俯瞰画像情報を記憶しておく。
なお、本支援装置10は、ハイブリッド車両及び電気自動車にも適用可能である。
【符号の説明】
【0109】
10…走行支援装置、20…制御ECU、22…前カメラ装置、24…後カメラ装置、30…エンジンECU、40…ブレーキECU、50…ステアリングECU。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12