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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241225BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022046215
(22)【出願日】2022-03-23
(65)【公開番号】P2023140401
(43)【公開日】2023-10-05
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 雄佑
(72)【発明者】
【氏名】陳 希
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-091208(JP,A)
【文献】特開2015-210588(JP,A)
【文献】特開2016-115129(JP,A)
【文献】特開2020-115302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B60R 21/00-21/13
B60R 21/34-21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方領域に存在している物標についての情報である第1情報を取得する第1物標情報取得手段と、
前記自車両の前側方領域に存在している物標についての情報である第2情報を取得する第2物標情報取得手段と、
前記第1情報及び前記第2情報の少なくとも一方に基づいて前記自車両と衝突する可能性が高いと判定される物標である衝突リスク物標が存在すると判定された場合に前記自車両と前記衝突リスク物標との衝突を回避するための支援である衝突回避支援を実行する衝突回避支援制御手段と、
を備える運転支援装置において、
前記衝突回避支援制御手段が、前記第2情報が取得された前記物標である第2物標の中から、前記自車両と衝突する可能性を前記第2情報に基づいて判定する対象とする前記第2物標である衝突判定対象物標を選定する衝突判定物標選定部を備え、
前記衝突判定物標選定部が、複数の条件からなる条件群である第1衝突判定条件群に含まれる全ての条件が同時に成立する前記第2物標を前記衝突判定対象物標として選定し、
前記第1衝突判定条件群が、
前記第2物標情報取得手段の物標検出範囲である第2範囲から前記第1物標情報取得手段の物標検出範囲である第1範囲と前記第2範囲とが重複する範囲である第3範囲を除く範囲である特定範囲に前記第2物標が存在するという条件である第1条件と、
前記自車両の走行予測軌跡である第1軌跡と前記第2物標の走行予測軌跡である第2軌跡とが交差するという条件である第2条件と、
前記第1軌跡における前記自車両の前方側の前記自車両から所定の距離以内の位置において前記第1軌跡と前記第2軌跡とが交差するという条件である第3条件と、
からな
前記衝突判定物標選定部が、
前記自車両の位置を原点とし、前記自車両の進行方向をX軸の正方向とし、当該X軸に直交し前記自車両の左側方に向かう方向をY軸の正方向とし、X>0且つY<0である範囲を第1象限とし、X>0且つY>0である範囲を第2象限とし、X<0且つY>0である範囲を第3象限とし、X<0且つY<0である範囲を第4象限とするX-Y座標系において、前記第2物標の前記自車両に対する相対速度VのX軸成分Vx及びY軸成分Vyから以下の式(1)によって算出される角度である交差角度θが、前記第1象限又は前記第2象限に前記第2物標が存在するときは-50°≦θ≦45°を満足する場合に、前記第3象限又は前記第4象限に前記第2物標が存在するときは0°≦θ≦45°を満足する場合に、それぞれ前記第3条件が成立すると判定する、
【数1】
ことを特徴とする、運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載された運転支援装置であって、
前記第1物標情報取得手段の物標検出精度が所定の閾値未満である範囲が前記第3範囲から除かれる、
ことを特徴とする、運転支援装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された運転支援装置であって、
前記第1衝突判定条件群が、前記第1条件乃至前記第3条件に加えて、
前記自車両の位置を原点とし、前記自車両の進行方向をX軸の正方向とし、当該X軸に直交し前記自車両の左側方に向かう方向をY軸の正方向とするX-Y座標系において、前記第2物標の前記自車両に対する相対速度VのY軸成分Vy及び前記第2物標のY座標と前記自車両のY座標との差Δyから以下の式(2)によって算出されるECT値が所定の閾値以下であるという条件である第4条件、
【数2】
を更に含む、
ことを特徴とする、運転支援装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項の何れか1項に記載された運転支援装置であって、
前記衝突判定物標選定部が、前記衝突判定対象物標として選定した前記第2物標の数が所定の閾値よりも少ない場合は、前記第3範囲に前記第2物標が存在するという条件である第5条件を前記第1条件に代えて含む前記第1衝突判定条件群である第2衝突判定条件群に含まれる全ての条件が同時に成立する前記第2物標の少なくとも一部を前記衝突判定対象物標として更に選定する、
ことを特徴とする、運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関する。より具体的には、衝突回避支援を有効に実行しつつ、衝突回避支援を実行するための制御装置における演算処理負荷を効果的に低減することができる運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野においては、自車両の周辺に存在する物標を検出し、当該物標と自車両とが衝突する可能性が高いと判定される場合に、当該物標と自車両との衝突を回避するための支援(以降、「衝突回避支援」と称呼される場合がある。)を行う運転支援装置が知られている。
【0003】
しかしながら、自車両の周辺に存在する物標を検出するための手段として従来使用されてきた前方レーダの画角が狭いため、例えば交差点等において側方から自車両に接近してくる物標を前方レーダによって早期に検出することは困難であった。そこで、昨今では、側方から自車両に接近してくる物標を早期に検出すること等を目的として自車両の前側方(右前及び左前)に存在する物標を検出するレーダ(以降、「前側方レーダ」と称呼される場合がある。)が広く導入されている。
【0004】
図1は、前方レーダ及び前側方レーダを備える自車両に対して他車両が側方から接近してくる様子を示す模式図である。図1において、自車両10が備える前方レーダ(図示せず)によって物標を検出することが可能な領域Fには縦のストライプによるハッチングが施されており、自車両10が備える前側方レーダ(図示せず)によって物標を検出することが可能な領域Sには横のストライプによるハッチングが施されている。その結果、領域Fと領域Sとが重なる範囲には縦横の格子によるハッチングが施されている。
【0005】
領域Fによって示されるように前方レーダの画角が狭いため、自車両10に対して側方から接近してくる他車両20を前方レーダによって早期に検出することは困難である。しかしながら、領域Sによって示されるように自車両10の前側方に向かって広い画角を有する前側方レーダを導入することにより、他車両20を早期に検出することができる。尚、図1に示すように、本明細書においては、自車両の進行方向をX軸の正方向とし、自車両の右側方から左側方へ向かう方向をY軸の正方向とする。また、図示しないが、自車両の位置を原点とするものとする。
【0006】
上記のように前側方レーダを導入することにより、より確実に衝突回避支援を行うことが可能となる一方、自車両の周辺に存在する物標として検出される物標の数が増えることに起因して衝突回避支援を実行するための制御装置における演算処理負荷も増大する。このような演算処理負荷の増大に対応すべく制御装置の演算処理能力を高めようとすると、衝突回避支援を実行する運転支援装置のコスト増大に繋がる虞がある。従って、自車両と衝突する可能性が低いと判定される物標については衝突回避支援の対象外として演算処理負荷を低減する必要性が益々高まっている。
【0007】
例えば、特許文献1には、自車両の周囲情報を受信する周囲情報受信部と自車両の車両情報を受信する車両情報受信部と周囲情報および車両情報に基づいて自車両の周囲状況を判断する周囲状況判断部と周囲状況に基づいて自車両のアクチュエータを制御する車両制御部とを備える車両用制御装置が開示されている。当該車両用制御装置においては、周囲情報センサから送信されたデータの受信処理を行うデータ受信部と受信処理されたデータを周囲状況判断部が利用可能な形式に変換する変換処理を行うデータ変換部と受信処理されたデータに基づいて受信処理の対象から除外するデータまたは変換処理の対象から除外するデータを決定する除外データ決定部とを周囲情報受信部が備える。これにより、センサから送信されるデータの処理にかかる負荷を低減することができるとされている。
【0008】
上記従来技術においては、受信処理又は変換処理の対象から除外するデータを決定するための具体的な手法として、例えば予め定められた信頼度が所定の閾値よりも低いセンサ又は予め定められた信頼度が所定の閾値よりも低い物標若しくは自車両の進行方向とは反対側に存在する物標を検出するセンサから出力されるデータを除外することが挙げられている。しかしながら、閾値よりも低い信頼度を有するセンサによって検出される物標、閾値よりも低い信頼度を有する物標及び/又は自車両の進行方向とは反対側に存在する物標が自車両に衝突する可能性が必ずしも低いとは言えない。
【0009】
一方、上記手法によれば、例えば予め定められた信頼度が所定の閾値よりも高いセンサ並びに予め定められた信頼度が所定の閾値よりも高い物標又は自車両の進行方向と同じ側に存在する物標を検出するセンサから出力されるデータは受信処理又は変換処理の対象から除外されない。従って、閾値よりも高い信頼度を有するセンサによって検出される物標、閾値よりも高い信頼度を有する物標及び/又は自車両の進行方向と同じ側に存在する物標については、たとえ自車両に衝突する可能性が低くても、受信処理又は変換処理の対象から除外されないので、センサから送信されるデータの処理にかかる負荷を必ずしも低減することはできない。
【0010】
即ち、当該技術分野においては、衝突回避支援を有効に実行しつつ、衝突回避支援を実行するための制御装置における演算処理負荷を効果的に低減することができる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2020-119183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述したように、当該技術分野においては、衝突回避支援を有効に実行しつつ、衝突回避支援を実行するための制御装置における演算処理負荷を効果的に低減することができる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明者は、鋭意研究の結果、前側方レーダによって検出される物標のうち、前方レーダの物標検出範囲に存在せず且つ当該物標の走行予測軌跡と自車両の走行予測軌跡とが自車両の前方側の自車両から所定の距離以内の位置において交差する物標を、前側方レーダによって取得された情報に基づいて自車両と衝突する可能性を判定する対象とすることにより、上記課題を解決することができることを見出した。
【0014】
具体的には、本発明に係る運転支援装置(以降、「本発明装置」と称呼される場合がある。)は、第1物標情報取得手段と、第2物標情報取得手段と、衝突回避支援制御手段と、を備える運転支援装置である。第1物標情報取得手段は、自車両の前方領域に存在している物標についての情報である第1情報を取得する。第2物標情報取得手段は、自車両の前側方領域に存在している物標についての情報である第2情報を取得する。衝突回避支援制御手段は、第1情報及び第2情報の少なくとも一方に基づいて自車両と衝突する可能性が高いと判定される物標である衝突リスク物標が存在すると判定された場合に自車両と衝突リスク物標との衝突を回避するための支援である衝突回避支援を実行する。
【0015】
更に、本発明装置においては、衝突回避支援制御手段が、第2情報が取得された物標である第2物標の中から、自車両と衝突する可能性を第2情報に基づいて判定する対象とする第2物標である衝突判定対象物標を選定する衝突判定物標選定部を備える。衝突判定物標選定部は、以下に列挙する第1条件乃至第3条件からなる条件群である第1衝突判定条件群に含まれる全ての条件が同時に成立する第2物標を衝突判定対象物標として選定する。
【0016】
第1条件は、第2物標情報取得手段の物標検出範囲である第2範囲から第1物標情報取得手段の物標検出範囲である第1範囲と第2範囲とが重複する範囲である第3範囲を除く範囲である特定範囲に第2物標が存在するという条件である。
第2条件は、自車両の走行予測軌跡である第1軌跡と第2物標の走行予測軌跡である第2軌跡とが交差するという条件である。
第3条件は、第1軌跡における自車両の前方側の自車両から所定の距離以内の位置において第1軌跡と第2軌跡とが交差するという条件である。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、本発明装置においては、第1条件乃至第3条件の全てが同時に成立する第2物標を衝突判定対象物標として選定する。換言すれば、本発明装置においては、第1条件乃至第3条件のうちの何れか1つでも成立しない第2物標は衝突判定対象物標として選定されない。これにより、本発明装置においては、自車両と衝突する可能性が低い第2物標を衝突回避支援の対象から除外することができる。従って、本発明装置によれば、衝突回避支援を有効に実行しつつ、衝突回避支援を実行するための制御装置における演算処理負荷を効果的に低減することができる。
【0018】
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】前方レーダ及び前側方レーダを備える自車両に対して他車両が側方から接近してくる様子を示す模式図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る運転支援装置(第1装置)の構成の一例を示す模式的なブロック図である。
図3】自車両の走行予測軌跡である第1軌跡と第2物標の走行予測軌跡である第2軌跡とが交差するか否かの判定(簡易交差判定)について説明する模式図である。
図4】第1装置において実行される衝突判定対象物標選定ルーチンにおける種々の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2実施形態に係る運転支援装置(第2装置)における第1範囲、第2範囲、第3範囲及び特定範囲の一例を示す模式図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る運転支援装置(第3装置)の好ましい態様において用いられる座標系を例示する模式図である。
図7】好ましい態様に係る第3装置において第3条件が成立するか否かを判定するための指標となる交差角度θについて説明する模式図である。
図8】本発明の第4実施形態に係る運転支援装置(第4装置)において実行される衝突判定対象物標選定ルーチンにおける種々の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】本発明の第5実施形態に係る運転支援装置(第5装置)において実行される衝突判定対象物標選定ルーチンにおける種々の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
《第1実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る運転支援装置(以降、「第1装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0021】
図2は、第1装置の構成の一例を示す模式的なブロック図である。図2に描かれている破線の矢印は、図2に例示する第1装置における情報(を含むデータ信号)の流れを表している。
【0022】
第1装置101は、第1物標情報取得手段110と、第2物標情報取得手段120と、衝突回避支援制御手段130と、を備える運転支援装置である。第1物標情報取得手段110は、自車両の前方領域に存在している物標についての情報である第1情報I1を取得する。第1物標情報取得手段110は、例えば、自車両の前方領域に存在している物標を検出するように構成されたミリ波レーダなどのレーダ装置である(以降、「前方レーダ」と称呼される場合がある。)。第1情報I1は、例えば、第1物標情報取得手段110によって検出される物標の位置及び速度及び進行方向についての情報を含む。
【0023】
第2物標情報取得手段120は、自車両の前側方領域に存在している物標についての情報である第2情報I2を取得する。第2物標情報取得手段120は、例えば、自車両の前側方領域に存在している物標を検出するように構成されたミリ波レーダなどのレーダ装置である(以降、「前側方レーダ」と称呼される場合がある。)。第2情報I2は、例えば、第2物標情報取得手段120によって検出される物標の位置及び速度及び進行方向についての情報を含む。
【0024】
衝突回避支援制御手段130は、第1情報I1及び第2情報I2の少なくとも一方に基づいて自車両と衝突する可能性が高いと判定される物標である衝突リスク物標が存在すると判定された場合に自車両と衝突リスク物標との衝突を回避するための支援である衝突回避支援を実行する。衝突回避支援には、例えば、ドライバに対する警報及び衝突を回避するための車両制御等が含まれる。警報の具体例としては、例えば、音、光及び振動の発生、並びに画像及び/又は文字の表示等を挙げることができる。
【0025】
警報としての音は、例えば、自車両が備えるオーディオ機器及び/又はブザー等、音を発生する装置である音発生装置から発生させることができる。尚、このような音の具体例としては、例えば、音響(例えば、アラーム音等)、音声(合成音声を含む)、及び音楽等を挙げることができる。警報としての光は、例えば、自車両が備える警告灯等、光を発生する装置である光発生装置が備える電球及び/又は発光素子(例えば、発光ダイオード(LED)等)等から発生させることができる。
【0026】
警報としての振動は、例えば、自車両が備えるハンドル及び/又はシート等を振動させるように組み込まれたモータ及び/又はバイブレータ等、振動を発生する装置である振動発生装置から発生させることができる。警報としての画像及び/又は文字は、例えば、自車両が備えるマルチインフォメーションディスプレイ(MID:Multi-Information Display)及び/又はマルチメディア(MM:MultiMedia)機器のディスプレイ等、画像及び/又は文字を表示する画像表示装置によって表示することができる。尚、このような画像の具体例としては、例えば、静止画(例えば、図形、図柄及びマーク等)及び動画(例えば、アニメーション等)等を挙げることができる。
【0027】
車両制御の具体例としては、例えば、自動制動及び自動操舵等を挙げることができる。このような車両制御は、例えば、衝突回避支援制御手段によって制御されるアクチュエータ等によって自車両が備える制動機構及び操舵機構を操作することによって実行することができる。
【0028】
更に、第1装置101においては、第2物標情報取得手段120によって検出された物標であっても、自車両と衝突する可能性が低い物標については、衝突回避支援の対象から予め除外される。換言すれば、第1装置101においては、第2物標情報取得手段120によって検出された物標のうち自車両と衝突する可能性が高い物標につき、自車両と衝突する可能性を第2情報I2に基づいて判定する対象とする。
【0029】
具体的には、衝突回避支援制御手段130が、第2情報I2が取得された物標である第2物標の中から、自車両と衝突する可能性を第2情報I2に基づいて判定する対象とする第2物標である衝突判定対象物標を選定する衝突判定物標選定部131を備える。衝突判定物標選定部131は、以下に列挙する第1条件乃至第3条件からなる条件群である第1衝突判定条件群に含まれる全ての条件が同時に成立する第2物標を衝突判定対象物標として選定する。
【0030】
第1条件は、第2物標情報取得手段120の物標検出範囲である第2範囲から第1物標情報取得手段110の物標検出範囲である第1範囲と第2範囲とが重複する範囲である第3範囲を除く範囲である特定範囲に第2物標が存在するという条件である。第1範囲は、第1物標情報取得手段110によって自車両の前方領域に存在している物標を検出することが可能な領域であり、例えば図1に例示した領域Fである。第2範囲は、第2物標情報取得手段120によって自車両の前側方領域に存在している物標を検出することが可能な領域であり、例えば図1に例示した領域Sである。第3範囲は、これらの第1範囲と第2範囲とが重複する範囲であり、例えば図1に例示した領域Fと領域Sとが重なる範囲(縦横の格子によるハッチングが施された範囲)である。特定範囲は、第2範囲から第3範囲を除く範囲であり、例えば図1において縦のストライプによるハッチングが施された領域全体(領域F)から縦横の格子によるハッチングが施された範囲(領域Fと領域Sとが重なる範囲)を除く範囲である。
【0031】
上記のように、第3範囲は、第1範囲と第2範囲とが重複する範囲である。即ち、第3範囲に存在する第2物標は、第2物標情報取得手段120のみならず、第1物標情報取得手段110によっても検出される物標である。従って、衝突回避支援の実行に伴う演算処理負荷を低減する観点からは、第2物標情報取得手段120によって検出される第2物標のうち第3範囲に存在する第2物標については、自車両と衝突する可能性を第2情報I2に基づいて判定する対象から除外することが望ましい。換言すれば、衝突回避支援の実行に伴う演算処理負荷を低減する観点からは、第2物標情報取得手段120によって検出される第2物標のうち第3範囲に存在しない第2物標についてのみ、自車両と衝突する可能性を第2情報I2に基づいて判定する対象とすることが望ましい。従って、第1装置においては、自車両と衝突する可能性を第2情報I2に基づいて判定する対象とするための条件の1つとして、第2範囲から第3範囲を除く範囲である特定範囲に第2物標が存在するという条件(第1条件)を課すのである。
【0032】
しかしながら、必ずしも特定範囲に存在する第2物標の全てにおいて自車両と衝突する可能性が高い訳ではない。例えば、第2物標の走行予測軌跡と自車両の走行予測軌跡とが交差しない場合、当該第2物標と自車両とが衝突する可能性が低いと判断することができる。そこで、第1装置においては、衝突判定対象物標とすべき第2物標を選定するための条件群である第1衝突判定条件群が、上述した第1条件に加えて、以下の第2条件をも含む。
【0033】
第2条件は、自車両の走行予測軌跡である第1軌跡と第2物標の走行予測軌跡である第2軌跡とが交差するという条件である。第1軌跡は、例えば自車両の車両情報(例えば、位置、車速、進行方向及び/又は操舵角等)に基づいて算出することができる。第2軌跡は、例えば第2物標の第2情報I2に基づいて算出することができる。後述するように、衝突判定対象物標とすべき第2物標を選定するルーチンは、所定の短い時間間隔(例えば、0.05秒)にて繰り返し実行される。第2条件が成立するか否かを正確に判定する観点からは、上記ルーチンが実行される度に実際の自車両及び第2物標の移動経路に正確に合致する第1軌跡及び第2軌跡を算出することが望ましい。しかしながら、この場合、第2条件が成立するか否かを判定するための演算処理負荷が過大となる虞がある。一方、自車両と第2物標とがすれ違うのに要する期間は極めて短いので、第1軌跡及び第2軌跡を直線であると見做して算出しても実際の第1軌跡及び第2軌跡と直線であると見做した第1軌跡及び第2軌跡とのずれは小さいと考えることができる場合もある。
【0034】
図3は、上述した第2条件が成立するか否か、即ち自車両の走行予測軌跡である第1軌跡と第2物標の走行予測軌跡である第2軌跡とが交差するか否かの判定(以降、「簡易交差判定」と称呼される場合がある。)について説明する模式図である。図3に示す例において、自車両10が今後もX軸の正方向に向かって真っ直ぐに走行し、第2物標である他車両20が式「x=ay+b」によって表される直線(破線)に沿って太い実線の矢印によって示されるように走行する場合、自車両10の走行予測軌跡である第1軌跡(X軸)と第2物標(他車両20)の走行予測軌跡である第2軌跡(破線)とがX軸上の点pにおいて交差する。即ち、この場合は第2条件が成立する。
【0035】
一方、自車両10が、一点鎖線によって描かれた曲線によって表されているように、Y軸上の点cを中心とし且つ半径Rを有する円弧状の第1軌跡に沿って走行する場合は、式「x+(y-R)=R」によって表される第1軌跡(一点鎖線)と第2物標(他車両20)の走行予測軌跡である第2軌跡(破線)とは交差しない。即ち、この場合は第2条件が成立しない。しかしながら、このように自車両10が円弧状の第1軌跡(一点鎖線)に沿って走行する場合であっても、第2物標である他車両20が太い破線の矢印によって示されるように上記とは異なる第2軌跡に沿って走行する場合には、点qによって例示するように第1軌跡と第2軌跡とが交差する場合がある。この場合は第2条件が成立する。
【0036】
上記から明らかであるように、自車両の走行予測軌跡である第1軌跡と第2物標の走行予測軌跡である第2軌跡とが交差するか否かの判定(簡易交差判定)は、第1軌跡を表す式と第2軌跡を表す式との連立方程式が実数解を有するか否かによって定まると言うことができる。図3に例示したように自車両10が式「x+(y-R)=R」によって表される円弧状の第1軌跡に沿って走行し且つ第2物標である他車両20が式「x=ay+b」によって表される直線状の第2軌跡に沿って走行する場合は、式「x+(y-R)=R」と式「x=ay+b」との連立方程式が実数解を有するか否かによって第1軌跡と第2軌跡とが交差するか否かを判定することができる。
【0037】
尚、前述したように自車両と第2物標とがすれ違うのに要する期間は極めて短いことに鑑みて第1軌跡及び第2軌跡を直線であると見做して簡易交差判定を行う場合は、第1軌跡及び第2軌跡の両方を一次式によって表してもよい。この場合は、2つの一次式からなる連立方程式(連立一次方程式)を解くことによって簡易交差判定を行うことができるので、衝突回避支援の実行に伴う演算処理負荷を低減することができる。
【0038】
ところで、特定範囲に存在し且つ簡易交差判定の結果として第1軌跡と第2軌跡とが交差すると判定された第2物標の全てにおいて自車両と衝突する可能性が高い訳ではない。例えば第1軌跡と第2軌跡とが自車両の遙か前方において交差する場合及び第1軌跡と第2軌跡とが自車両の後方において交差する場合等においては、当該第2軌跡に沿って走行する第2物標と自車両とが衝突する可能性が低いと判断することができる。そこで、第1装置においては、衝突判定対象物標とすべき第2物標を選定するための条件群である第1衝突判定条件群が、上述した第1条件及び第2条件に加えて、以下の第3条件をも含む。
【0039】
第3条件は、第1軌跡における自車両の前方側の自車両から所定の距離以内の位置において第1軌跡と第2軌跡とが交差するという条件である。第3条件が成立するか否か、即ち第1軌跡における自車両の前方側の自車両から所定の距離以内の位置において第1軌跡と第2軌跡とが交差するか否かは、例えば自車両及び第2物標の位置、速度及び進行方向等に基づいて判定することができる。当該判定の具体的な方法については、本発明の他の実施形態に関する説明において後に詳述する。
【0040】
以降、第1衝突判定条件群に含まれる第1条件乃至第3条件の全てが同時に成立する第2物標が衝突判定物標選定部131によって衝突判定対象物標として選定されるルーチンを「衝突判定対象物標選定ルーチン」と称呼する。図4は、第1装置において実行される衝突判定対象物標選定ルーチンにおける種々の処理の流れの一例を示すフローチャートである。第1装置101においては、以下に詳述する衝突判定対象物標選定ルーチンが所定の短い時間間隔(例えば、0.05秒)にて繰り返し実行される。
【0041】
衝突判定対象物標選定ルーチンが開始されると、ステップS10において、上述した第1条件が成立するか否か(即ち、特定範囲に第2物標が存在するか否か)が判定される。第2物標の位置は第2物標情報取得手段120によって取得される第2情報I2に基づいて特定することができる。第1条件が成立する場合(ステップS10:Yes)、次のステップS20において、上述した第2条件が成立するか否か(即ち、自車両の走行予測軌跡である第1軌跡と第2物標の走行予測軌跡である第2軌跡とが交差するか否か)が判定される。前述したように、第1軌跡は例えば自車両の車両情報(例えば、位置、車速、進行方向及び/又は操舵角等)に基づいて算出することができ、第2軌跡は例えば第2物標の第2情報I2に基づいて算出することができる。
【0042】
第2条件が成立する場合(ステップS20:Yes)、次のステップS30において、上述した第3条件が成立するか否か(即ち、第1軌跡における自車両の前方側の自車両から所定の距離以内の位置において第1軌跡と第2軌跡とが交差するか否か)が判定される。前述したように、第3条件が成立するか否か、即ち第1軌跡における自車両の前方側の自車両から所定の距離以内の位置において第1軌跡と第2軌跡とが交差するか否かは、例えば自車両及び第2物標の位置、速度及び進行方向等に基づいて判定することができる。
【0043】
第3条件が成立する場合(ステップS30:Yes)、上述した第1条件乃至第3条件からなる条件群である第1衝突判定条件群に含まれる全ての条件が同時に成立するので、次のステップS40において、当該第2物標が突判定対象物標として選定される。一方、第1条件が成立するか否かを判定するステップS10、第2条件が成立するか否かを判定するステップS20及び第3条件が成立するか否かを判定するステップS30の何れかにおいて判定結果が「No」である場合は、その時点において衝突判定対象物標選定ルーチンが一旦終了される。従って、第1条件乃至第3条件のうち何れか1つ以上が成立しない第2物標は衝突判定対象物標として選定されない。
【0044】
即ち、第1装置においては、第2物標情報取得手段によって検出される第2物標のうち自車両と衝突する可能性が低い第2物標は衝突回避支援の対象から予め除外される。その結果、第1装置によれば、衝突回避支援を有効に実行しつつ、衝突回避支援を実行するための制御装置における演算処理負荷を効果的に低減することができる。
【0045】
尚、以上のような第1装置の機能は、例えば、自車両に搭載されたECUによって実現することができる。本明細書において、「ECU」は、マイクロコンピュータを主要部として備える電子式制御装置(Electronic Control Unit)であり、「コントローラ」とも称呼される。マイクロコンピュータは、CPU(プロセッサ)、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェース等を含む。CPUは、ROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現するように構成されている。これら各種機能は、第1装置を構成する特定の1つのECUによって実行されてもよく、或いは、複数のECUによって分散的に実行されてもよい。後者の場合、複数のECUは、例えば、CAN(Controller Area Network)を介して接続されて互いに通信可能であるように構成することができる。
【0046】
《第2実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る運転支援装置(以降、「第2装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0047】
上述したように、第1装置においては、上述した第1条件乃至第3条件からなる条件群である第1衝突判定条件群に含まれる全ての条件が同時に成立する第2物標が衝突判定対象物標(自車両と衝突する可能性を第2情報に基づいて判定する対象とする第2物標)として選定される。換言すれば、第1装置においては、上述した第1条件乃至第3条件のうち何れか1つ以上が成立しない第2物標は衝突判定対象物標として選定されない。従って、第1装置によれば、衝突回避支援を有効に実行しつつ、衝突回避支援を実行するための制御装置における演算処理負荷を効果的に低減することができる。
【0048】
ところで、自車両の前方領域に存在している物標についての情報である第1情報を取得する第1物標情報取得手段の物標検出精度は必ずしも物標検出範囲の全域に亘って均一であるとは限らない。例えば、物標検出範囲に対応する画角の両端近傍の範囲等における物標検出精度が物標検出範囲に含まれる他の範囲における物標検出精度よりも低い場合がある。
【0049】
上記のように第1物標情報取得手段の物標検出精度が低い範囲を(第1物標情報取得手段の物標検出範囲である第1範囲と第2物標情報取得手段の物標検出範囲である第2範囲とが重複する範囲である)第3範囲の一部として第2範囲から除くと、当該範囲に存在する物標は(当該範囲における物標検出精度が低い)第1物標情報取得手段によってしか検出することができなくなってしまう。従って、衝突回避支援をより確実且つ有効に実行する観点からは、上記のように第1物標情報取得手段の物標検出精度が低い範囲が(第2物標情報取得手段による物標検出範囲である第2範囲から除かれる)第3範囲に含まれないようにすることが望ましい。
【0050】
そこで、第2装置は、上述した第1装置であって、第1物標情報取得手段の物標検出精度が所定の閾値未満である範囲が第3範囲から除かれることを特徴とする、運転支援装置である。
【0051】
図5は、第2装置における第1範囲、第2範囲、第3範囲及び特定範囲の一例を示す模式図である。図5において、自車両10が備える第1物標情報取得手段(例えば前方レーダ)によって物標を検出することが可能な領域F(第1範囲)には縦のストライプによるハッチングが施されている。一方、自車両10が備える第2物標情報取得手段(例えば前側方レーダ)によって物標を検出することが可能な領域S(第2範囲)には横のストライプによるハッチングが施されている。その結果、領域Fと領域Sとが重なる範囲(第3範囲)には縦横の格子によるハッチングが施されている。
【0052】
前述した第1装置においては、第2範囲(横のストライプによるハッチングが施されている範囲)から第3範囲(縦横の格子によるハッチングが施されている範囲)を除く範囲(領域Sのうち横のストライプによるハッチングのみが施されている範囲)が特定範囲となる。従って、第3範囲に存在する第2物標は、自車両と衝突する可能性を第2情報I2に基づいて判定する対象から除外される。その結果、第1装置によれば、衝突回避支援を有効に実行しつつ、衝突回避支援を実行するための制御装置における演算処理負荷を効果的に低減することができる。
【0053】
しかしながら、上述したように、自車両の前方領域に存在している物標についての情報である第1情報を取得する第1物標情報取得手段の物標検出精度は必ずしも物標検出範囲の全域に亘って均一であるとは限らない。例えば、物標検出範囲に対応する画角の両端近傍の範囲等における物標検出精度が物標検出範囲に含まれる他の範囲における物標検出精度よりも低い場合がある。
【0054】
図5に示す例においては、第1物標情報取得手段の物標検出範囲に対応する画角の両端近傍の範囲等における物標検出精度が物標検出範囲に含まれる他の範囲における物標検出精度よりも低い。具体的には、図5においてグレーの背景色を有する範囲は、第1物標情報取得手段の物標検出精度が所定の閾値未満である範囲である。上述したように、このように第1物標情報取得手段の物標検出精度が低い範囲を第3範囲の一部として第2範囲から除くと、当該範囲に存在する物標は第1物標情報取得手段によってしか検出することができなくなってしまう。衝突回避支援をより確実且つ有効に実行する観点からは、このように第1物標情報取得手段の物標検出精度が低い範囲については、第3範囲ではなく、衝突判定対象物標として第2物標が選定される特定範囲の一部として扱うことが望ましい。
【0055】
そこで、第2装置においては、図5においてグレーの背景色を有する範囲、即ち第1物標情報取得手段の物標検出精度が所定の閾値未満である範囲が第3範囲から除かれる。換言すれば、第1物標情報取得手段の物標検出精度が所定の閾値以上である範囲と第2範囲とが重複する範囲が第3範囲として扱われる。これにより、第2装置によれば、第1物標情報取得手段の物標検出精度が低い範囲までもが第3範囲の一部として第2範囲から除かれることにより当該範囲に存在する物標が第1物標情報取得手段によってしか検出することができなくなることが回避される。従って、第2装置によれば、衝突回避支援をより確実且つ有効に実行することができる。
【0056】
尚、第1物標情報取得手段によって物標を検出可能な範囲のうち何れの範囲を第3範囲から除くべきであるかを決定する基準となる第1物標情報取得手段による物標検出精度の閾値は、例えば衝突回避支援の適切な実行に必要とされる物標検出精度及び/又は第2装置が搭載される車両の仕向け地における衝突回避支援に関する法規制等に応じて適宜設定することができる。
【0057】
《第3実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第3実施形態に係る運転支援装置(以降、「第3装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0058】
上述したように、第1装置及び第2装置においては、第1軌跡における自車両の前方側の自車両から所定の距離以内の位置において第1軌跡と第2軌跡とが交差する場合に第3条件が成立すると判定される。第3条件が成立するか否か、即ち第1軌跡における自車両の前方側の自車両から所定の距離以内の位置において第1軌跡と第2軌跡とが交差するか否かは、例えば自車両及び第2物標の位置、速度及び進行方向等に基づいて判定することができる。
【0059】
しかしながら、衝突回避支援の実行に伴う演算処理負荷を低減する観点からは、より簡便な手法により、第1軌跡における自車両の前方側の自車両から所定の距離以内の位置において第1軌跡と第2軌跡とが交差するか否かを判定することが望ましい。
【0060】
そこで、第3装置は、上述した第1装置又は第2装置であって、衝突判定物標選定部が、自車両の進行方向と第2物標の進行方向とがなす角度が所定の範囲内にある場合に第3条件が成立すると判定することを特徴とする、運転支援装置である。
【0061】
例えば、自車両の進行方向(縦方向)に直交する方向(横方向)において自車両から所定の距離だけ離れた位置に存在する第2物標の進行方向が自車両の進行方向と平行である場合は、自車両の走行予測軌跡(第1軌跡)と第2物標の走行予測軌跡(第2軌跡)とは交差しない。一方、第2物標の進行方向が自車両の進行方向と直交する場合は、第1軌跡と第2軌跡とが交差する場合がある。また、第2物標の進行方向が縦方向と横方向との中間にある場合は、例えば自車両の進行方向と第2物標の進行方向とがなす角度、自車両及び第2物標の位置関係及び速度等により、第1軌跡と第2軌跡とが交差する可能性が変化する。従って、第3条件が成立すると衝突判定物標選定部が判定するための基準となる自車両の進行方向と第2物標の進行方向とがなす角度の範囲は、例えば自車両の進行方向と第2物標の進行方向とがなす角度、自車両及び第2物標の位置関係並びに速度等に応じて変化するものであってもよい。或いは、当該角度の範囲は、例えば自車両と第2物標とが衝突する可能性が高い状況において想定される自車両の進行方向と第2物標の進行方向とがなす角度、自車両及び第2物標の位置関係並びに速度等に応じて定められた固定された範囲であってもよい。
【0062】
好ましい態様に係る第3装置においては、自車両の進行方向(縦軸方向)及び縦方向に直交する方向(横軸方向)を座標軸とする座標系における何れの象限に第2物標が存在するかに応じて、第3条件が成立すると衝突判定物標選定部が判定するための基準となる自車両の進行方向と第2物標の進行方向とがなす角度の範囲が定められる。
【0063】
即ち、好ましい態様に係る第3装置においては、所定のX-Y座標系において第2物標が存在する象限に応じて定められる所定の範囲内に交差角度θがある場合に第3条件が成立すると判定するように衝突判定物標選定部が構成されている。
【0064】
具体的には、当該X-Y座標系は、自車両の位置を原点とし、自車両の進行方向をX軸の正方向とし、当該X軸に直交し自車両の左側方に向かう方向をY軸の正方向とする座標系である。当該X-Y座標系においては、X>0且つY<0である範囲を第1象限とし、X>0且つY>0である範囲を第2象限とし、X<0且つY>0である範囲を第3象限とし、X<0且つY<0である範囲を第4象限とする。交差角度θは、第2物標の自車両に対する相対速度V(ベクトル)のX軸成分Vx及びY軸成分Vyから以下の式(1)によって算出される角度である。
【0065】
【数3】
【0066】
更に、好ましい態様に係る第3装置においては、衝突判定物標選定部が、第1象限又は第2象限に第2物標が存在するときは交差角度θが「-50°≦θ≦45°」を満足する場合に、第3象限又は第4象限に第2物標が存在するときは交差角度θが「0°≦θ≦45°」を満足する場合に、それぞれ第3条件が成立すると判定する。
【0067】
図6は、好ましい態様に係る第3装置において用いられる座標系を例示する模式図である。図6に例示するX-Y座標系は、自車両10の位置を原点Oとし、自車両10の進行方向をX軸の正方向とし、当該X軸に直交し自車両10の左側方に向かう方向をY軸の正方向とする座標系である。また、当該X-Y座標系においては、X>0且つY<0である範囲を第1象限とし、X>0且つY>0である範囲を第2象限とし、X<0且つY>0である範囲を第3象限とし、X<0且つY<0である範囲を第4象限とする。
【0068】
次に、図7は、好ましい態様に係る第3装置において第3条件が成立するか否かを判定するための指標となる交差角度θについて説明する模式図である。図7に例示するX-Y座標系もまた、図6と同様に、自車両10の位置を原点Oとし、自車両10の進行方向をX軸の正方向とし、当該X軸に直交し自車両10の左側方に向かう方向をY軸の正方向とする座標系である。また、X>0且つY<0である範囲を第1象限とし、X>0且つY>0である範囲を第2象限とし、X<0且つY>0である範囲を第3象限とし、X<0且つY<0である範囲を第4象限とする点もまた、図6と同様である。
【0069】
図7に示すように、他車両20aは第1象限に存在する。即ち、他車両20aの位置を示す座標を(xa,ya)とすると、xa>0且つya<0である。また、他車両20aの自車両10に対する相対速度Va(ベクトル)のX軸成分及びY軸成分をそれぞれVxa及びVyaとすると、他車両20aの交差角度θaは、上述した式(1)と同様に、以下の式(1a)によって表すことができる。
【数4】
【0070】
また、他車両20bは第2象限に存在する。即ち、他車両20bの位置を示す座標を(xb,yb)とすると、xb>0且つyb>0である。また、他車両20bの自車両10に対する相対速度Vb(ベクトル)のX軸成分及びY軸成分をそれぞれVxb及びVybとすると、他車両20bの交差角度θbは、上述した式(1)と同様に、以下の式(1b)によって表すことができる。
【数5】
【0071】
図7に例示する他車両20a及び他車両20bのように相対速度V(ベクトル)のX軸成分VxがX軸の負方向に向いている場合は交差角度θが負の値となる。この場合、交差角度θの値が過剰に小さい(絶対値が過剰に大きい)と、他車両が自車両10の後方を通過し自車両10と衝突しない可能性が高いと考えられる。一方、相対速度V(ベクトル)のX軸成分VxがX軸の正方向に向いている場合は交差角度θが正の値となる。この場合、交差角度θの値が過剰に大きい(絶対値が過剰に大きい)と、他車両が自車両の前方を通過し自車両と衝突しない可能性が高いと考えられる。
【0072】
従って、第1象限又は第2象限に存在する他車両については、交差角度θの値が負の値である所定の下限値から正の値である所定の上限値までの間にある他車両については自車両と衝突する可能性があると考えられる。斯かる観点に基づく鋭意研究の結果、本発明者は、第1象限又は第2象限に第2物標が存在するときは交差角度θが「-50°≦θ≦45°」を満足する場合に第3条件が成立すると判定するように衝突判定物標選定部を構成することが望ましいことを見出したのである。
【0073】
一方、図示しないが、第3象限に存在する他車両の位置を示す座標はx<0且つy>0であり、第4象限に存在する他車両の位置を示す座標はx<0且つy<0であり、これらの他車両の自車両に対する相対速度V(ベクトル)のX軸成分及びY軸成分をそれぞれVx及びVyとすると、これらの他車両の交差角度θもまた、上述した式(1)と同様に表すことができる。
【0074】
これらの他車両の相対速度V(ベクトル)のX軸成分VxがX軸の負方向に向いている場合は交差角度θが負の値となり、他車両が自車両の後方を通過し自車両と衝突しない可能性が高いと考えられる。一方、相対速度V(ベクトル)のX軸成分VxがX軸の正方向に向いている場合は交差角度θが正の値となる。この場合、交差角度θの値が過剰に大きい(絶対値が過剰に大きい)と、他車両が自車両の前方を通過し自車両と衝突しない可能性が高いと考えられる。
【0075】
従って、第3象限又は第4象限に存在する他車両については、交差角度θの値が正の値であって所定の上限値までの間にある他車両については自車両と衝突する可能性があると考えられる。斯かる観点に基づく鋭意研究の結果、本発明者は、第3象限又は第4象限に第2物標が存在するときは交差角度θが「0°≦θ≦45°」を満足する場合に第3条件が成立すると判定するように衝突判定物標選定部を構成することが望ましいことを見出したのである。
【0076】
以上のように、第3装置においては、自車両の進行方向と第2物標の進行方向とがなす角度に基づく簡便な手法により、第1軌跡における自車両の前方側の自車両から所定の距離以内の位置において第1軌跡と第2軌跡とが交差するか否かを判定することができる。従って、第3装置によれば、衝突回避支援の実行に伴う演算処理負荷を効果的に低減することができる。
【0077】
尚、図6及び図7に示す例においては、自車両10の先頭の中心を自車両の位置とし、この位置を原点0としているが、自車両10の位置は先頭の中心以外の任意の位置とすることができる。
【0078】
《第4実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第4実施形態に係る運転支援装置(以降、「第4装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0079】
上述したように、第1装置乃至第3装置を始めとする本発明に係る運転支援装置(本発明装置)においては、第1条件乃至第3条件の全てが同時に成立する第2物標を衝突判定対象物標として選定する。換言すれば、本発明装置においては、第1条件乃至第3条件のうちの何れか1つでも成立しない第2物標は衝突判定対象物標として選定されない。これにより、本発明装置においては、自車両と衝突する可能性が低い第2物標を衝突回避支援の対象から除外することができる。従って、本発明装置によれば、衝突回避支援を有効に実行しつつ、衝突回避支援を実行するための制御装置における演算処理負荷を効果的に低減することができる。
【0080】
しかしながら、第1条件乃至第3条件の全てが同時に成立する場合、即ち、特定範囲に存在する第2物標の走行予測軌跡(第2軌跡)と自車両の走行予測軌跡(第1軌跡)とが自車両の前方側の所定の距離以内の位置において交差する場合であっても、例えば、第2物標が自車両の前方に進入してくる速度及び自車両の進行方向に直交する方向(横方向)における第2物標と自車両との間の距離によっては、第2軌跡と第1軌跡との交差点に第2物標が到達するのに長時間を要し、当該交差点に第2物標が到達する前に当該交差点を自車両が通過してしまう可能性がある。従って、自車両と衝突する可能性が低い第2物標を衝突回避支援の対象から確実に除外して衝突回避支援の実行に伴う演算処理負荷を低減する観点からは、自車両の前方に到達するのに要する期間が所定の閾値よりも長い第2物標が衝突判定対象物標として選定されないようにすることが望ましい。
【0081】
そこで、第4装置は、上述した第1装置乃至第3装置の何れかであって、第1衝突判定条件群が、上述した第1条件乃至第3条件に加えて、以下に記載する第4条件を更に含むことを特徴とする、運転支援装置である。
【0082】
第4条件は、所定のX-Y座標系において第2物標の自車両に対する相対速度及び第2物標と自車両との位置関係に基づいて算出されるECT値が所定の閾値以下であるという条件である。
【0083】
具体的には、当該X-Y座標系は、自車両の位置を原点とし、自車両の進行方向をX軸の正方向とし、当該X軸に直交し自車両の左側方に向かう方向をY軸の正方向とする座標系である。ECT値は、第2物標の自車両に対する相対速度VのY軸成分Vy及び第2物標のY座標と自車両のY座標との差Δyから以下の式(2)によって算出される値である。
【0084】
【数6】
【0085】
ECT値に基づいて第4条件が成立するか否かを判定するための基準となる「所定の閾値」は、例えば自車両及び第2物標の位置関係(例えば、第1軌跡と第2軌跡との交差点と自車両との間の距離等)並びに自車両の速度等に応じて変化する値であってもよい。或いは、当該「所定の閾値」は、例えば自車両と第2物標とが衝突する可能性が高い状況において想定される自車両及び第2物標の位置関係(例えば、第1軌跡と第2軌跡との交差点と自車両との間の距離等)並びに自車両の速度等に応じて定められた固定値であってもよい。
【0086】
図8は、第4装置において実行される衝突判定対象物標選定ルーチンにおける種々の処理の流れの一例を示すフローチャートである。図8に例示するフローチャートは、上述した第3条件が成立するか否かを判定するステップS30の後に、上記第4条件が成立するか否かを判定するステップS35が追加されている点を除き、図4に例示したフローチャートと同様である。
【0087】
即ち、図8に例示するフローチャートによって表される第4装置において実行される衝突リスク除外ルーチンにおいても、ステップS10からステップS30までは図4に例示したフローチャートと同様である。そして、ステップS30の後に、ステップS35において、第4条件が成立するか否か、即ち、上記ECT値が所定の閾値以下であるか否かが判定される。
【0088】
第4条件が成立する場合(ステップS35:Yes)、上述した第1条件乃至第4条件からなる条件群である第1衝突判定条件群に含まれる全ての条件が同時に成立するので、次のステップS40において、当該第2物標が突判定対象物標として選定される。一方、第1条件が成立するか否かを判定するステップS10、第2条件が成立するか否かを判定するステップS20、第3条件が成立するか否かを判定するステップS30及び第4条件が成立するか否かを判定するステップS35の何れかにおいて判定結果が「No」である場合は、その時点において衝突判定対象物標選定ルーチンが一旦終了される。従って、第1条件乃至第4条件のうち何れか1つ以上が成立しない第2物標は衝突判定対象物標として選定されない。
【0089】
上述したように、第4装置においては、上述した第1条件乃至第3条件に加えて、第4条件もが同時に成立する第2物標が衝突判定対象物標として選定される。即ち、特定範囲に存在し且つ走行予測軌跡(第2軌跡)と自車両の走行予測軌跡(第1軌跡)とが自車両の前方側の所定の距離以内の位置において交差するのみならず、自車両の前方に到達するのに要する期間が所定の閾値以下であるという条件を満たす第2物標が衝突判定対象物標として選定される。その結果、第4装置によれば、自車両と衝突する可能性が低い第2物標を衝突回避支援の対象からより確実に除外して衝突回避支援の実行に伴う演算処理負荷をより有効に低減することができる。
【0090】
《第5実施形態》
以下、本発明の第5実施形態に係る運転支援装置(以降、「第5装置」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0091】
上述したように、第1装置乃至第4装置を始めとする本発明に係る運転支援装置(本発明装置)においては、衝突判定物標選定部が、上述した第1条件乃至第3条件を含む第1衝突判定条件群又は上述した第1条件乃至第4条件を含む第1衝突判定条件群に含まれる全ての条件が同時に成立する第2物標を衝突判定対象物標として選定する。これにより、本発明装置によれば、衝突回避支援を有効に実行しつつ、衝突回避支援を実行するための制御装置における演算処理負荷を効果的に低減することができる。
【0092】
しかしながら、第2物標情報取得手段によって第2情報が取得される物標の数が常に多いとは限らず、また第2物標情報取得手段によって第2情報が取得される物標の数が多い場合であっても衝突判定対象物標として選定される第2物標の数が常に多いとは限らない。即ち、第2物標情報取得手段によって検出される物標の数及び/又は状態によっては、衝突判定対象物標として選定される第2物標の数が少なく、衝突回避支援の実行に伴う演算処理負荷に対して衝突回避支援を実行するための制御装置の演算処理能力に余裕がある場合がある。
【0093】
上記のような場合、第1衝突判定条件群に含まれる全ての条件が同時に成立しなかったがために衝突判定対象物標として選定されなかった第2物標の少なくとも一部を衝突判定対象物標として更に選定してもよい。特に、第1物標情報取得手段の物標検出範囲である第1範囲と第2物標情報取得手段の物標検出範囲である第2範囲とが重複する範囲である第3範囲に存在する(第1条件が不成立)ことを理由として衝突判定対象物標として選定されなかった第2物標については、特定範囲に存在する第2物標と同様に、第2物標の走行予測軌跡(第2軌跡)と自車両の走行予測軌跡(第1軌跡)とが自車両の前方側の所定の距離以内の位置において交差する可能性がある。斯かる第3範囲に存在する物標については、第1物標情報取得手段によって第1情報が取得され、自車両と衝突する可能性が高いと判定される物標については衝突回避支援の対象とされる。
【0094】
しかしながら、例えば第1物標情報取得手段による検出漏れ等、不測の事態を未然に防ぎ、衝突回避支援をより確実に実行する観点からは、演算処理能力に余裕がある場合において、斯かる第3範囲に存在する第2物標についても、第2物標の走行予測軌跡(第2軌跡)と自車両の走行予測軌跡(第1軌跡)とが自車両の前方側の所定の距離以内の位置において交差するか否か、即ち第2条件及び第3条件が成立するか否かについて判定し、これらの条件が成立する場合には、衝突判定対象物標として選定し、衝突回避支援の対象とすることが望ましい。
【0095】
そこで、第5装置は、上述した第1装置乃至第4装置の何れかであって、衝突判定物標選定部が、衝突判定対象物標として選定した第2物標の数が所定の閾値よりも少ない場合は、第2衝突判定条件群に含まれる全ての条件が同時に成立する第2物標の少なくとも一部を衝突判定対象物標として更に選定することを特徴とする、運転支援装置である。第2衝突判定条件群は、第3範囲に第2物標が存在するという条件である第5条件を第1条件に代えて含む第1衝突判定条件群である。
【0096】
即ち、第2衝突判定条件群は、第5条件と第2条件と第3条件とを含み、第1衝突判定条件群と同様に、ECT値が所定の閾値以下であるという条件である第4条件を更に含むこともできる。
【0097】
図9は、第5装置において実行される衝突判定対象物標選定ルーチンにおける種々の処理の流れの一例を示すフローチャートである。図9に例示するフローチャートは、第1衝突判定条件群に含まれる全ての条件が成立する第2物標を衝突判定対象物標として選定するステップS40の後に、ステップS50乃至ステップS90が追加されている点を除き、図4に例示したフローチャートと同様である。尚、当該衝突判定対象物標選定ルーチンの全体を図9に描くことを可能とするため、図9においてはステップS10乃至ステップS30が1つに纏めて記載されているが、これら3つのステップにおいて実行される処理は図4に例示したフローチャートを参照しながら説明したものと同様である。
【0098】
図9に例示するフローチャートによって表される第5装置において実行される衝突リスク除外ルーチンにおいても、ステップS10からステップS40までは図4に例示したフローチャートと同様である。そして、ステップS40の後に、ステップS40において衝突判定対象物標として選定された第2物標の数が所定の閾値よりも少ないか否か、即ち、衝突回避支援の実行に伴う演算処理負荷に対して衝突回避支援を実行するための制御装置の演算処理能力に余裕があるか否かが判定される。
【0099】
ステップS40において衝突判定対象物標として選定された第2物標の数が所定の閾値よりも少ない場合(ステップS50:Yes)、次のステップS60乃至ステップS80において第2衝突判定条件群に含まれる全ての条件が同時に成立するか否かが判定される。ステップS60においては上述した第5条件が成立するか否か(即ち、第3範囲に第2物標が存在するか否か)が判定される。
【0100】
第5条件が成立する場合(ステップS60:Yes)、次のステップS70において、上述した第2条件が成立するか否か(即ち、自車両の走行予測軌跡である第1軌跡と第2物標の走行予測軌跡である第2軌跡とが交差するか否か)が判定される。即ち、ステップS70において実行される処理は上述したステップS20において実行される処理と同様であり、処理の対象となる第2物標が存在する範囲が異なる。
【0101】
第2条件が成立する場合(ステップS70:Yes)、次のステップS80において、上述した第3条件が成立するか否か(即ち、第1軌跡における自車両の前方側の自車両から所定の距離以内の位置において第1軌跡と第2軌跡とが交差するか否か)が判定される。即ち、ステップS80において実行される処理は上述したステップS30において実行される処理と同様であり、処理の対象となる第2物標が存在する範囲が異なる。
【0102】
第3条件が成立する場合(ステップS80:Yes)、上述した第5条件、第2条件及び第3条件からなる条件群である第2衝突判定条件群に含まれる全ての条件が同時に成立するので、次のステップS90において、当該第2物標が突判定対象物標として更に選定される(追加される)。一方、第5条件が成立するか否かを判定するステップS60、第2条件が成立するか否かを判定するステップS70及び第3条件が成立するか否かを判定するステップS80の何れかにおいて判定結果が「No」である場合は、その時点において衝突判定対象物標選定ルーチンが一旦終了される。従って、第5条件、第2条件及び第3条件のうち何れか1つ以上が成立しない第2物標は衝突判定対象物標に追加されない。
【0103】
即ち、第5装置においては、衝突判定対象物標として選定される第2物標の数が所定の閾値よりも少ない場合、第3範囲に存在する第2物標のうち第2条件及び第3条件が成立する第2物標が衝突判定対象物標に追加される。従って、第5装置においては、衝突回避支援の実行に伴う演算処理負荷に対して衝突回避支援を実行するための制御装置の演算処理能力に余裕がある場合は、第2軌跡と第1軌跡とが自車両の前方側の所定の距離以内の位置において交差する可能性がある第3範囲に存在する第2物標についても、自車両と衝突する可能性が第2情報に基づいて判定される。その結果、第5装置によれば、衝突回避支援を実行するための制御装置の演算処理能力の範囲内において、衝突回避支援を更に有効に実行することができる。
【0104】
尚、図9に示した例においては、第1条件乃至第3条件が第1衝突判定条件群に含まれ、第5条件、第2条件及び第3条件が第2衝突判定条件群に含まれている。しかしながら、前述したように、第1衝突判定条件群は、第1条件乃至第3条件に加えて、第4条件を更に含むことができる。同様に、第2衝突判定条件群は、第5条件、第2条件及び第3条件に加えて、第4条件を更に含むことができる。
【0105】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0106】
10…自車両
20,20a,20b…第2物標(他車両)
101…運転支援装置(第1装置)
110…第1物標情報取得手段
120…第2物標情報取得手段
130…衝突回避支援制御手段
131…衝突判定物標選定部
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9