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特許7610198充填材の製造装置、充填材の製造方法、及び充填材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】充填材の製造装置、充填材の製造方法、及び充填材
(51)【国際特許分類】
   B68G 3/08 20060101AFI20241225BHJP
   D01C 1/00 20060101ALI20241225BHJP
   D01B 1/30 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
B68G3/08
D01C1/00 M
D01B1/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024117737
(22)【出願日】2024-07-23
【審査請求日】2024-07-23
(31)【優先権主張番号】P 2024062547
(32)【優先日】2024-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519381469
【氏名又は名称】青島紗支紡織科技有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】521358556
【氏名又は名称】青島新嘉程家紡有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 暁東
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2023/0175175(US,A1)
【文献】実開昭61-170399(JP,U)
【文献】特開昭61-231257(JP,A)
【文献】特開2013-233192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B68G 1/00-99/00
D01B 1/30
D01B 9/00
D01C 1/00
D01G 13/00
D04H 1/00-76
D06M 10/00-10
D06M 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カポック繊維及び羽毛を含む充填材の製造装置であって、
当該カポック繊維及び当該羽毛が導入される撹拌槽、
当該撹拌槽内で所定方向に延在するように配置された回転軸、
当該回転軸に設けられた攪拌翼、及び、
当該回転軸が延在する方向と交差する方向に気体を吹き込む気体吹込みユニットを備えており、
流速1m/秒以上のイオン化されていない気体のみが当該気体吹込みユニットから当該撹拌槽内に吹き込まれる、充填材の製造装置。
【請求項2】
カポック繊維及び羽毛を含む充填材の製造方法であって、
カポック繊維及び羽毛を、所定方向に延在する回転軸、及び当該回転軸に設けられた撹拌翼を有する撹拌機に入れて混合しつつ、当該回転軸の軸方向と交差する方向に流速1m/秒以上のイオン化されていない気体のみを吹き込む混合工程を含み、
当該充填材中の当該カポック繊維の含有量が10~49質量%の範囲であり、当該充填材中の当該羽毛の含有量が51~90質量%の範囲である、充填材の製造方法。
【請求項3】
カポック繊維及び羽毛を含む充填材であって、
当該カポック繊維が当該羽毛の羽枝に絡んでおり、
当該充填材中の当該カポック繊維の含有量が10~49質量%の範囲であり、
当該充填材中の当該羽毛の含有量が51~90質量の範囲であり、
請求項2に記載された充填材の製造方法で製造された充填材。
【請求項4】
請求項3に記載された充填材であって、寝具又は衣類用である充填材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填材の製造装置、充填材の製造方法、及び充填材に関する。
【背景技術】
【0002】
カポックは東南アジアを中心に生育しているアオイ科の落葉高木であり、農薬、化学肥料などを使用しなくても栽培可能な植物である。カポック繊維は樹木の伐採を伴わずに実から採取される、環境負荷の小さい素材として知られる。カポック繊維(繊維長3~20mm程度)の中空率は極めて大きく(約80%)、エアパック効果でその熱伝導率が小さいため、その断熱効果は高い。さらにカポック繊維は圧倒的に軽く(カポック繊維の密度は綿の密度の1/8)、天然の絹のような光沢、ヌメリ、柔らかさ、及び撥水性を備えている。加えてその弾性が大きく、毛玉に固まりにくく、洗濯後も復元力がある。カポック繊維は、これらの特徴を生かした天然素材として利用されてきた。
【0003】
カポック繊維と、綿、ポリエステル等の繊維素材とを混紡した織物は、柔らかで軽くしっとりとした風合を持つ着心地のよい快適素材とされ「自然に優しく心地よい天然素材」として商品化が行われている。特許文献1は、カポック繊維、カポック繊維以外のセルロース繊維、及びポリエステル繊維等の疎水性繊維が混合されている綿を開示している。特許文献2は、イオン交換繊維とカポック繊維等の天然繊維を含む混綿が記載されている。特許文献3は、ハロゲン含有難燃繊維とカポック繊維等の天然繊維を含む難燃繊維製品を開示している。
【0004】
一方、羽毛は保温性が高い材料として知られている。しかしながら、羽毛は高価であり、その臭いは強い。さらに羽毛を含む製品を洗濯すると、その保温性が低下するため、当該製品を頻繁に洗濯できず、菌類が当該製品に発生しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6873093号公報
【文献】特開2014-69142号公報
【文献】国際公開第2014/046087号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、保温、制菌、及び防ダニ性が高い充填材が希求されている。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、保温、制菌、及び防ダニ性が高い充填材の製造装置、当該充填材の製造方法、及び当該充填材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題に鑑み検討を重ね、流速1m/秒以上のイオン化されていない気体のみを吹き込みながらカポック繊維及び羽毛を撹拌して混合する充填材の製造方法は、前記充填材を製造できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
【0009】
本発明は、カポック繊維及び羽毛を含む充填材の製造装置であって、当該カポック繊維及び当該羽毛が導入される撹拌槽、当該撹拌槽内で所定方向に延在するように配置された回転軸、当該回転軸に設けられた攪拌翼、及び、当該回転軸が延在する方向と交差する方向に気体を吹き込む気体吹込みユニットを備えており、流速1m/秒以上のイオン化されていない気体のみが当該気体吹込みユニットから当該撹拌槽内に吹き込まれる、充填材の製造装置に関する。
【0010】
また本発明は、カポック繊維及び羽毛を含む充填材の製造方法であって、カポック繊維及び羽毛を、所定方向に延在する回転軸、及び当該回転軸に設けられた撹拌翼を有する撹拌機に入れて混合しつつ、当該回転軸の軸方向と交差する方向に流速1m/秒以上のイオン化されていない気体のみを吹き込む混合工程を含み、当該充填材中の当該カポック繊維の含有量が10~49質量%の範囲であり、当該充填材中の当該羽毛の含有量が51~90質量%の範囲である、充填材の製造方法に関する。
【0011】
さらに本発明は、カポック繊維及び羽毛を含む充填材であって、当該カポック繊維が当該羽毛の羽枝に絡んでおり、当該充填材中の当該カポック繊維の含有量が10~49質量%の範囲であり、当該充填材中の当該羽毛の含有量が51~90質量%の範囲であり、前記充填材の製造方法で製造された充填材に関する
記充填材は、好ましくは寝具又は衣類用である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の充填材の製造装置は、保温、制菌、及び防ダニ性が高い充填材の製造装置を提供する。本発明の充填材の製造方法は、前記充填材の製造方法を提供する。本発明の充填材は、前記充填材を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の製造装置の1実施態様を示す説明図。
図2】前記製造装置の平面図。
図3】本発明の製造装置の別の実施形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明について更に詳細に説明する。
なお、数値範囲の「~」は、断りがなければ、以上から以下を表し、両端の数値をいずれも含む。また、数値範囲を示したときは、上限値および下限値を適宜組み合わせることができ、それにより得られた数値範囲も開示したものとする。
さらに図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0015】
[充填材の製造装置]
図1は、本発明のカポック繊維及び羽毛を含む充填材の製造装置の1実施態様を示す説明図である。製造装置1は、カポック繊維及び羽毛が導入される撹拌槽2、当該撹拌槽2内で所定方向に延在するように配置された回転軸3、及び、当該回転軸3に設けられた攪拌翼4を備えている。区画壁は前記撹拌槽2に内設されなくてよい。
【0016】
前記回転軸3は1又は2以上でよく、前記撹拌翼4同士がぶつからない限り、前記回転軸3の延在方向も適宜設定されていてよい。前記回転軸3が2以上である場合、全ての回転軸3は平行であってよい。図1では、2つの回転軸3a、3bが平行に延在されている。前記回転軸3a、3bの回転方向は同じであっても、異なっていてもよい。前記回転軸3a、3bの回転数もそれぞれ適宜設定されてよい。前記撹拌翼4同士がぶつからない限り、前記回転翼4の形状及び数は適宜設定されてよい。図2は、前記製造装置1の平面図である。本実施形態では、3枚の翼が、前記回転軸3が中心となるように配置されている。図3は、本発明の製造装置の別の実施形態を示す断面図である。前記別の実施形態の製造装置は1つの回転軸3を備え、3枚の翼が、当該回転軸3が中心となるように配置されている。
【0017】
前記製造装置1は、前記回転軸3が延在する方向と交差する方向に気体を吹き込む気体吹込みユニット5を備えている。2以上の前記回転軸3が存在する場合、前記気体吹込みユニット5は、少なくとも1つの前記回転軸3が延在する方向と交差する方向に気体を吹き込むように配置される。前記気体吹込みユニット5の形状及び数は適宜設定されてよい。前記気体吹込みユニット5は、2以上の気体吹込み口であってよい。前記気体吹込み口は、少なくとも1つの前記回転軸3と平行に並んでいてよい。図1では、複数の気体吹込み口が、前記2つの回転軸3a、3bが延在する方向と交差する方向(垂直方向)に気体が吹き込まれるよう、前記撹拌槽2の下部に設けられている。前記複数の気体吹込み口は、図示されない送風管に接続されている。
【0018】
前記気体は、空気、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノンからなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでいてよく、好ましくは空気、二酸化炭素、及び窒素からなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、より好ましくは空気を含み、更に好ましくは圧縮空気である。前記気体はイオン化されていない。前記気体は、前記気体吹込みユニット5から流速1m/秒以上で前記撹拌槽内に吹き込まれる。前記流速は、好ましくは1.5m/秒以上であり、より好ましくは2m/秒以上であり、更に好ましくは3m/秒以上である。
【0019】
前記製造装置1は、前記カポック繊維及び羽毛が前記撹拌槽2に供給される供給口6、及び前記カポック繊維及び羽毛の混合物を前記撹拌槽2から排出する排出口7を備えている。前記供給口6及び排出口7の設置場所は限定されない。図1では、前記供給口6及び排出口7は、前記攪拌槽2の上部に設けられている。前記製造装置1は、気体が排出される気体排出口(不図示)を備えていてよい。
【0020】
本願明細書において、羽毛は、ダウンと称され保温性が良好な綿羽(わたばね)と、フェザーと称される大羽(おおはね)(通常6cm以下)を含み、それらの0~100%の任意混合物を意味する。そして、前記綿羽は、羽軸(基部を介して鳥の表皮に付着していた)の先端に糸状の羽枝が総生しているものであり、大羽は、羽軸にたくさんの羽枝が列生し、更には羽枝に小羽枝が列生しているものである(「世界大百科事典」平凡社刊・初版参照)。
カポック繊維は通常使用される天然繊維である。前記カポック繊維の好ましい繊維長は7~28mmであり、その好ましい繊維繊度は0.15~30dtexである。
【0021】
[充填材の製造方法]
本発明のカポック繊維及び羽毛を含む充填材の製造方法は、カポック繊維及び羽毛を、所定方向に延在する前記回転軸3、及び前記回転軸3に設けられた撹拌翼4を有する撹拌機2に入れて混合しつつ、前記回転軸3の軸方向と交差する方向に流速1m/秒以上のイオン化されていない気体のみを吹き込む混合工程を含む。本発明のカポック繊維及び羽毛を含む充填材の製造方法は、バッチ式であっても、連続式であってもよい。
【0022】
原料カポック繊維は解繊され、比重の相違を利用する空気流によりカポック繊維と不純物に分離されてよい。カポック繊維以外の繊維がカメラにより識別されて、前記不純物が除去されたカポック繊維から除かれてよい。カポック繊維以外の繊維が除去されたカポック繊維はカードされ、微細不純物及びカポック短繊維が除去され、精製されたカポック繊維が調製されてよい。
【0023】
高温水蒸気が原料羽毛に吹きかけられ、次いで水蒸気処理された羽毛が乾燥されてよい。前記精製されたカポック繊維及び前記乾燥された羽毛が前記混合工程に付されてよい。
【0024】
本発明のカポック繊維及び羽毛を含む充填材の製造方法がバッチ式である場合、前記カポック繊維及び前記羽毛のそれぞれが同時に前記撹拌槽2に導入されてもよく、順次導入されてもよい。導入回数は1回であっても2回以上であってもよい。前記カポック繊維及び前記羽毛が順次導入される場合、導入順序は適宜設定される。
【0025】
カポック繊維及び羽毛は、前記回転軸3の軸方向と交差する方向に気体が吹き込まれながら撹拌され、カポック繊維が前記羽枝に絡み、均一に混合される。カポック繊維及び羽毛の性状は異なるので、これらを、気体を吹き込まずに撹拌しても、カポック繊維が前記羽枝に絡まず、均一な混合物は得られない。
【0026】
吹き込まれる気体の圧力は、好ましくは、前記撹拌槽2内の圧力より0.1Mpa以上高い。
【0027】
[充填材]
本発明の充填材は、カポック繊維及び羽毛を含む。前記カポック繊維は前記羽毛の羽枝に絡んでいる。本発明の充填材中のカポック繊維の含有量は10~49質量%の範囲であり、前記充填材中の前記羽毛の含有量が51~90質量%の範囲である。好ましくは、本発明の充填材中のカポック繊維の含有量は25~40質量%の範囲であり、前記充填材中の前記羽毛の含有量が60~75質量%の範囲である。充填材中のカポック繊維の含有量が少なすぎる場合、充填材の消臭、防カビ、制菌、防ダニ、吸放湿、及び吸湿発熱性能が低くなる。充填材中の羽毛の量が少なすぎる場合、充填材の保温性が低くなる。
【0028】
本発明の充填材は、カポック繊維及び羽毛以外の繊維を含んでいても、含んでいなくてもよい。本発明の充填材中のカポック繊維及び羽毛の含有量は、好ましくは50~100質量%の範囲であり、より好ましくは70~100質量%の範囲であり、更に好ましくは80~100質量%の範囲であり、特に好ましくは100質量%、すなわち本発明の充填材は、カポック繊維及び羽毛以外の繊維を含まない。
【0029】
本発明の充填材が、本発明の充填材の製造方法により製造される場合、前記カポック繊維が前記羽枝に絡み、前記カポック繊維及び前記羽毛がより均一に混合される。
【0030】
<不可能・非実際的事情>
回転軸の軸方向と交差する方向に気体が吹き込まれずに、10~49質量%の範囲のカポック繊維と51~90質量%の範囲の羽毛が混合される場合、前記カポック繊維が前記羽毛の羽枝に絡まず、前記カポック繊維及び前記羽毛が均一に混合されない。カポック繊維及び羽毛の混合の均一性の装置による定量的測定は不可能、ないし非実際的である。したがって、前記カポック繊維及び前記羽毛がより均一に混合されている本発明の充填材は、製造方法により特定されてよい。
【0031】
好ましくは、本発明の充填材のダウンパワーは300以上、アンモニア、酢酸及びイソ吉草酸のそれぞれに対する消臭性は90以上、抗菌活性値は3.0以上、ダニ忌避率は60%以上、吸湿発熱値は3~8℃、保温率は85%以上の範囲である。
【0032】
本発明の充填材は、例えば敷布団、掛布団、枕等の寝具、防寒着等の衣類、クッション、ぬいぐるみに使用されてよい。
【実施例
【0033】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
実施例及び比較例において、各種物性は以下のとおりに測定ないし算出された。
<ダウンパワー>
充填材のダウンパワーがJIS L1903-2011に従って測定された。30gの充填材が内径29cmのシリンダーに入れられ、荷重用円盤94.3gが負荷されたと時の充填材の高さが測定され、充填材の体積が算出された。1gの充填材の体積がダウンパワーとして算出された。
【0035】
<アンモニア、酢酸及びイソ吉草酸に対する消臭性>
一般社団法人 繊維評価技術協議会のSEKマーク繊維製品認証基準(消臭性試験)に基づいて試験を実施した。0.5gの充填材を500ml三角フラスコに入れ、規定の初発濃度(アンモニア100ppm、酢酸50ppm、イソ吉草酸38ppm)となるよう臭気成分(アンモニア、酢酸及びイソ吉草酸のそれぞれ)のエタノール溶液を滴下し、封をした。2時間後、シリンジによりサンプリングし、ガスクロマトグラフ測定を実施し、空試験濃度(a)と2時間後の試料試験濃度(b)を測定し、下記の式(2)に従い減少率(%)を算出した。
減少率(%)[(a-b)/a]×100・・・(2)
【0036】
<抗黄色ブドウ球菌、抗肺炎桿菌、及び抗モラクセラ菌に対する抗菌活性値>
JIS L 1902に基づく上記の各菌に対する抗菌性は以下の活性値として算出された。
0.4gの充填材の試料をバイヤル瓶に入れ、試験菌液0.2mlを当該試料に接種し、その直後、非イオン界面活性剤(富士フイルム和光純薬株式会社製Polysorbate 80, from Plants)0.2質量%を含む生理食塩水20mlを当該バイヤル瓶に加えて当該試料から菌を洗い出し、洗液中の菌数を、発光測定装置(METTLER TOLEDO社製)を使用してATP量として測定した。また、前記綿の別の試料0.4gを別のバイヤル瓶に入れ、前記試験菌液0.2mlをこの試料に接種し、37±1℃で18±1時間培養した。その後、前記と同様にして、洗液中の菌数を測定した。活性値を下記式(1)により算出した。
活性値=log(菌液接種直後の菌数)-log(培養後の菌数)・・・(1)
【0037】
<ダニ忌避率>
JIS L 1920ガラスA管法に基づく抗ダニ性は以下の忌避率として算出された。
ガラス管(内径2cm、長さ10cm)の一端を粘着テープで塞ぎ、誘引用飼料0.01gを当該ガラス管に入れ、当該粘着テープに均一に付着させた。次に、0.4gの充填材の試料が2cmの厚さになるように詰められ、前記ガラス管の他端から2cmの厚さのダニ用培地を詰め、ガラス管の他端を高密度織物で塞ぎ、25±2℃、75±5%RHの条件で暗所に静置した。48±1時間後、誘引されたダニの数(粘着テープ、誘引用飼料、及び充填材の試料中のダニの数)を計数し、下記式(2)により忌避率を算出した。
ダニ忌避率=(充填材が混合されていない綿の試料に誘引されたダニの数-充填材の試料に誘引されたダニの数)/充填材が混合されていない綿の試料に誘引されたダニの数×100・・・(2)
【0038】
<吸湿発熱性>
20cm×20cmの充填材と綿のそれぞれを4つ折りにして内部に熱電対温度センサーを取り付け、恒温恒湿機の中で20℃、40%RHの環境下で2時間処理した後、20℃、90%RHの環境に変化させたときの温度変化を1分ごとに15分間測定した。充填材と綿を同時に測定し、綿に対する充填材の上昇温度を比較した。
【0039】
<保温性>
保温性試験が「JIS L 1096織物及び編物の生地試験方法」に基づいて実施された。充填材が、一定温度(36±0.5℃)に設定された保温性試験機の熱板に置かれ、2時間後に試験片を介して放散された熱量(a)が測定された。一方、充填材が置かれていない状態で2時間後に放散された熱量(b)が測定され、下記式(3)に従い保温率(%)が算出された。
保温率(%)=(1-a/b)×100・・・(3)
【0040】
<洗濯耐久性>
30cm×30cm×2cmのサイズの充填材の試料(目付100g/cm2)をポリエステル平織生地(繊度経:56dtex、緯:84dtex、密度経:48本/cm、緯:35本/cm)で布団状にして四方を本縫いして洗濯用サンプルを調製した。前記洗濯用サンプルを商業用ドライクリーニング機で10分間×3回洗濯し(1セット)、ポリエステル平織生地を外して充填材の試料の形状及び偏りを以下に示す基準に従って目視で評価した。洗濯は10セット実施され、A評価の回数が表1に示されている。
-綿の試料の形状及び偏りの評価基準-
A:形状及び偏りが確認されなかった。
B:若干の形状及び偏りが確認された。
C:損傷が確認された。
【0041】
[実施例1~3及び対照例1]
原料カポック繊維が解繊され、比重の相違を利用する空気流によりカポック繊維と不純物に分離された。カポック繊維以外の繊維がカメラにより識別されて、前記不純物が除去されたカポック繊維から除かれた。カポック繊維以外の繊維が除去されたカポック繊維はカードされ、微細不純物及びカポック短繊維が除去され、精製されたカポック繊維が調製された。
【0042】
一方、高温水蒸気が原料羽毛に吹きかけられ、次いで水蒸気処理された羽毛が乾燥された。
表1に示される割合で前記精製されたカポック繊維及び前記乾燥羽毛が図1に示される製造装置の撹拌槽内で0.6Mpaの圧縮空気が吹き込まれながら撹拌され、充填材が調製された。実施例1では、前記精製されたカポック繊維及び前記乾燥羽毛のそれぞれが同時に前記撹拌槽に導入された。実施例2及び3では、前記精製されたカポック繊維が前記撹拌槽に導入された後、前記乾燥羽毛が前記撹拌槽に導入され、充填材が調製された。さらに前記乾燥羽毛のみが前記製造装置1に導入され、充填材が調製された(対照例1)。これらの充填材の物性を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例1~3の充填材を構成するカポック繊維は、羽毛の羽枝に絡んでいた。前記充填材のダウンパワーは、対照例1の羽毛のみからなる充填材のダウンパワーと同等であった。さらに実施例1~3の充填材の消臭性、抗菌活性、ダニ忌避率、吸湿発熱性、及び洗濯耐久性は高かった。対照例1の羽毛のみからなる充填材は消臭、抗菌活性、及びダニ忌避性を有しておらず、その吸湿発熱性、保温性、及び洗濯耐久性を測定しなかった。
【0045】
[比較例1]
図1に示される製造装置の気体吹込みユニット5から気体が吹き込まれなかった以外、実施例1と同様にして前記精製されたカポック繊維及び前記乾燥羽毛が撹拌された。しかしながら、前記精製されたカポック繊維及び前記乾燥羽毛が均一に混合されている充填材は調製されなかった。
【符号の説明】
【0046】
1・・・製造装置、2・・・撹拌槽、3・・・回転軸、4・・・撹拌翼、5・・・気体吹込みユニット、6・・・供給口、7・・・排出口。
【要約】
【課題】保温、消臭、防カビ、制菌、防ダニ、吸放湿、吸湿発熱性能、及び洗濯耐性が高い充填材の製造装置、この充填材の製造方法、及びこの充填材を提供する。
【解決手段】カポック繊維及び羽毛を含む充填材の製造装置が、このカポック繊維及びこの羽毛が導入される撹拌槽、この撹拌槽内で所定方向に延在するように配置された回転軸、この回転軸に設けられた攪拌翼、及び、この回転軸が延在する方向と交差する方向に気体を吹き込む気体吹込みユニットを備えており、流速1m/秒以上のイオン化されていない気体のみがこの気体吹込みユニットからこの撹拌槽内に吹き込まれる。カポック繊維及び羽毛を含む充填材の製造方法が、カポック繊維及び羽毛を、所定方向に延在する回転軸、及びこの回転軸に設けられた撹拌翼を有する撹拌機に入れて混合しつつ、この回転軸の軸方向と交差する方向に流速1m/秒以上のイオン化されていない気体のみを吹き込む混合工程を含む。
【選択図】図1
図1
図2
図3