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特許7610199マルチレベル段階降伏ダンパに基づく制振構造の最適化設計方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】マルチレベル段階降伏ダンパに基づく制振構造の最適化設計方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/23 20200101AFI20241225BHJP
   G06F 119/14 20200101ALN20241225BHJP
【FI】
G06F30/23
G06F119:14
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024154156
(22)【出願日】2024-09-06
【審査請求日】2024-10-21
(31)【優先権主張番号】202311159812.6
(32)【優先日】2023-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521362302
【氏名又は名称】海南大学
(73)【特許権者】
【識別番号】524335338
【氏名又は名称】海南震控智能科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】HAINAN SEISMIC CONTROL INTELLIGENT TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】B51-07, East and West District, Luneng Sea Blue Fuyuan, Yingbin Peninsula, The Old City Development Zone, Chengmai County,Hainan 571924, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】陳 雲
(72)【発明者】
【氏名】郭 甘
(72)【発明者】
【氏名】劉 濤
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-019327(JP,A)
【文献】特開2021-033822(JP,A)
【文献】特開2020-201893(JP,A)
【文献】特開2008-285899(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104102779(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113312721(CN,A)
【文献】CHEN Yun et al.,STUDY ON THE SEISMIC BEHAVIOR OF GRADED YIELDING METAL DAMPERS,工程力学,Vol.36, No.3,中国,2019年03月20日,pages 53-62,<DOI: 10.6052/j.issn.1000-4750.2018.01.0036>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/398
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチレベル段階降伏ダンパに基づく制振構造の最適化設計方法であって、
SAP2000有限要素ソフトウェアに無制御制振構造モデルを入力するステップS1と、
ダンパの設置位置及び構造最適化予想を決定するステップS2と、
アルゴリズムプログラムのプリセットパラメータを決定して設置するステップS3と、
小地震荷重モードを設置するステップS4と、
アルゴリズムプログラムに入り、解析計算を行い、小地震荷重モードでの、適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位及びヒステリシス曲線を出力するステップS5と、
中地震荷重モードを設置するステップS6と、
アルゴリズムプログラムに入り、解析計算を行い、中地震荷重モードでの、適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位及びヒステリシス曲線を出力するステップS7と、
大地震荷重モードを設置するステップS8と、
アルゴリズムプログラムに入り、解析計算を行い、大地震荷重モードでの、適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位及びヒステリシス曲線を出力するステップS9と、
出力された3つのモードでのヒステリシス曲線によってマルチレベル段階降伏ダンパの骨格曲線を構築するステップS10と、
構築された骨格曲線によってマルチレベル段階降伏ダンパのヒステリシス曲線を逆算するステップS11と、
マルチレベル段階降伏ダンパの設計取り付けを行うステップS12と、
を含み、
アルゴリズムプログラムに入り解析計算を行うステップは、
アルゴリズムプログラムの初期データを設置するステップS101と、
予め設定された範囲内で固定ペア数のダンパ降伏耐荷力と剛性値をランダムに選択するステップS102と、
初期データファイルを入力するステップS103と、
python(登録商標)ソフトウェアを利用してダンパ降伏耐荷力及び剛性値データを読み取るステップS104と、
SAP2000ソフトウェアで設置されたダンパのパラメータを変更するステップS105と、
ソフトウェアSAP2000で解析を実行し、構造解析結果を出力し、結果データファイルを得るステップS106と、
matlab(登録商標)ソフトウェアを利用して結果データを読み取り、結果データを適応度関数に代入して適応度を計算するステップS107と、
制振結果を解析し、現在の個体群における適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位を出力し、反復回数に達したかどうかを判断するステップS108と、
反復回数に達していない場合、選択、交差、変異を経て新たな初期個体群を得て、再び繰り返すステップS109と、
反復回数に達した場合、計算を終了し、アルゴリズムプログラムにより計算された適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位、及びヒステリシス曲線を出力するステップS110と、
を含み、
ステップS107では、制振構造最適化後の最大層間せん断力及び最上層加速度と元構造の対応値との差値の絶対値と、元構造の対応値との比を百分率で求めた後、二乗和を開平して、適応度計算式とし、
【数1】
ここで、Vmaxは最適化後構造の層間せん断力最大値(kN)であり、Vは元構造の最大層間せん断力(kN)であり、Vは構造各層層間せん断力(kN)であり、vは最適化後構造の最大最上層加速度(mm/s)であり、vは元構造の最上層加速度(mm/s)であり、fitnessは適応度関数であり、
ステップS107では、制振構造最適化後の最大層間せん断力及び最上層加速度と元構造の対応値との差値の絶対値と、元構造の対応値との比を百分率で求めて、適応度計算式とし、
【数2】
ここで、Vmaxは最適化後構造の層間せん断力最大値(kN)であり、Vは元構造の最大層間せん断力(kN)であり、Vは構造各層層間せん断力(kN)であり、vは最適化後構造の最大最上層加速度(mm/s)であり、vは元構造の最上層加速度(mm/s)であり、fitnessは適応度関数であり、α、βは重み付け係数であり、
ステップS107では、制振構造最適化後の最大層間変位角と元構造の対応値との差値の絶対値と、元構造の対応値との比を百分率で求めて、適応度計算式とし、
【数3】
ここで、θmaxは最適化後構造の最大層間変位角であり、θは元構造の最大層間変位角であり、fitnessは適応度関数であり、
ステップS107では、制振構造最適化後の最大層間せん断力及び最上層加速度と元構造の対応値との差値の絶対値と、元構造の対応値との比を百分率で求めて、適応度計算式とし、
【数4】
ここで、θmaxは最適化後構造の最大層間変位角であり、θは元構造の最大層間変位角であり、amaxは最適化後構造の最大加速度であり、aは元構造の最大層間加速度であり、umaxは最適化後構造の最大層間変位であり、uは元構造の最大層間変位であり、α、β、χは重み付け係数であり、fitnessは適応度関数である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップS3では、前記アルゴリズムプログラムのプリセットパラメータは、初期個体群数、個体群ランダムな範囲区間、バイナリ符号化長、制振構造モデルの地震波及び地震モード、構造最適化予想を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチレベル段階降伏ダンパに基づく制振構造の最適化設計方法。
【請求項3】
ステップS101では、アルゴリズムプログラムの初期データは、アルゴリズム反復回数、ダンパの剛性及び降伏耐荷力範囲、遺伝選択率、遺伝変異率、遺伝交差率を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載のマルチレベル段階降伏ダンパに基づく制振構造の最適化設計方法。
【請求項4】
ステップS106において出力される構造解析結果は、構造各層の層間せん断力、最上層加速度、構造層間変位角、層間加速度、層間最大変位、ダンパ降伏耐荷力、ダンパ変位、及びヒステリシス曲線を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチレベル段階降伏ダンパに基づく制振構造の最適化設計方法。
【請求項5】
前記個体群ランダムな範囲区間は、ダンパのプリセット剛性の上下限が、基準で要求される構造最大層間変位角を満たしたダンパの剛性から25%無制御構造最大層間剛性であり、ダンパのプリセット耐荷力の上下限が、0から構造25%の最大層間せん断力に設置されることを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載のマルチレベル段階降伏ダンパに基づく制振構造の最適化設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ制振構造の技術分野に関し、具体的に、マルチレベル段階降伏ダンパに基づく制振構造の最適化設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー散逸制振技術は、現在世界各国で広く使用されている耐震技術であり、国内外で一般的に応用されおり、現在、様々なタイプのダンパが開発されている。現在の従来技術は主にダンパの配置位置に関する研究に集中し、ダンパのタイプは主に粘性ダンパなどに集中しているが、段階降伏ダンパのパラメータに関する研究は現在ない。そのため、段階降伏ダンパを応用して制振することについて、段階降伏ダンパの性能を最大限に発揮し、ダンパの制振効果を高めながら経済性を高めることは、実際の工事における構造物の制振に大きく寄与する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、上記の背景技術において提出された問題を解決するために、マルチレベル段階降伏ダンパに基づく制振構造の最適化設計方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を実現するために、本発明はマルチレベル段階降伏ダンパに基づく制振構造の最適化設計方法を提供し、
S1、SAP2000有限要素ソフトウェアに無制御制振構造モデルを入力するステップと、
S2、ダンパの設置位置及び構造最適化予想を決定するステップと、
S3、アルゴリズムプログラムのプリセットパラメータを決定して設置するステップと、
S4、小地震荷重モードを設置するステップと、
S5、アルゴリズムプログラムに入り、解析計算を行い、小地震荷重モードでの、適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位及びヒステリシス曲線を出力するステップと、
S6、中地震荷重モードを設置するステップと、
S7、アルゴリズムプログラムに入り、解析計算を行い、中地震荷重モードでの、適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位及びヒステリシス曲線を出力するステップと、
S8、大地震荷重モードを設置するステップと、
S9、アルゴリズムプログラムに入り、解析計算を行い、大地震荷重モードでの、適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位及びヒステリシス曲線を出力するステップと、
S10、出力された3つのモードでのヒステリシス曲線によって、マルチレベル段階降伏ダンパの骨格曲線を構築するステップと、
S11、構築された骨格曲線によってマルチレベル段階降伏ダンパのヒステリシス曲線を逆算するステップと、
S12、マルチレベル段階降伏ダンパの設計取り付けを行うステップと、を含む。
【0005】
好ましい実施形態では、ステップS3において、アルゴリズムプログラムのプリセットパラメータは、初期個体群数、個体群ランダムな範囲区間、バイナリ符号化長、制振構造モデルの地震波及び地震モード、構造最適化予想を含む。
【0006】
好ましい実施形態では、アルゴリズムプログラムに入り解析計算を行うステップは、
S101、アルゴリズムプログラムの初期データを設置するステップと、
S102、予め設定された範囲内で、固定ペア数のダンパ降伏耐荷力と剛性値をランダムに選択するステップと、
S103、初期データファイルを入力するステップと、
S104、python(登録商標)ソフトウェアを利用してダンパ降伏耐荷力及び剛性値データを読み取るステップと、
S105、SAP2000ソフトウェアで設置されたダンパのパラメータを変更するステップと、
S106、ソフトウェアSAP2000で解析を実行し、構造解析結果を出力し、結果データファイルを得るステップと、
S107、matlab(登録商標)ソフトウェアを利用して結果データを読み取り、結果データを適応度関数に代入して適応度を計算するステップと、
S108、制振結果を解析し、現在の個体群における適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位を出力し、反復回数に達したかどうかを判断するステップと、
S109、反復回数に達していない場合、選択、交差、変異を経て新たな初期個体群を得て、再び繰り返すステップと、
S110、反復回数に達した場合、計算を終了し、アルゴリズムプログラムにより計算された適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位、及びヒステリシス曲線を出力するステップと、を含む。
【0007】
好ましい実施形態では、ステップS101では、アルゴリズムプログラムの初期データは、アルゴリズム反復回数、ダンパの剛性及び降伏耐荷力範囲、遺伝選択率、遺伝変異率、遺伝交差率を含む。
【0008】
好ましい実施形態では、ステップS107では、制振構造最適化後の最大層間せん断力及び最上層加速度と元構造の対応値との差値の絶対値と、元構造の対応値との比を百分率で求めた後、二乗和を開平して適応度計算式とし、
【0009】
【数1】
【0010】
ここで、Vmaxは最適化後構造の層間せん断力最大値(kN)であり、Vは元構造の最大層間せん断力(kN)であり、Vは構造各層層間せん断力(kN)であり、vは最適化後構造の最大最上層加速度(mm/s)であり、vは元構造の最上層加速度(mm/s)であり、fitnessは適応度関数である。
【0011】
好ましい実施形態では、ステップS107では、制振構造最適化後の最大層間せん断力及び最上層加速度と元構造の対応値との差値の絶対値と、元構造の対応値との比を百分率で求めて適応度計算式とし、
【0012】
【数2】
【0013】
ここで、Vmaxは、最適化後構造の層間せん断力最大値(kN)であり、Vは元構造の最大層間せん断力(kN)であり、Vは構造各層層間せん断力(kN)であり、vは最適化後構造の最大最上層加速度(mm/s)であり、vは元構造の最上層加速度(mm/s)であり、fitnessは適応度関数であり、α、βは重み付け係数である。
【0014】
好ましい実施形態では、ステップS107では、制振構造最適化後の最大層間変位角と元構造の対応値との差値の絶対値と、元構造の対応値との比を百分率で求めて適応度計算式とし、
【0015】
【数3】
【0016】
ここで、θmaxは最適化後構造の最大層間変位角であり、θは元構造の最大層間変位角であり、fitnessは適応度関数である。
【0017】
好ましい実施形態では、ステップS107では、制振構造最適化後の最大層間せん断力及び最上層加速度と元構造の対応値との差値の絶対値と、元構造の対応値との比を百分率で求めて適応度計算式とし、
【0018】
【数4】
【0019】
ここで、θmaxは最適化後構造の最大層間変位角であり、θは元構造の最大層間変位角であり、amaxは最適化後構造の最大加速度であり、aは元構造の最大層間加速度であり、umaxは最適化後構造の最大層間変位であり、uは元構造の最大層間変位であり、α、β、χは重み付け係数であり、fitnessは適応度関数である。
【0020】
好ましい実施形態では、ステップS106において出力された構造解析結果は、構造各層の層間せん断力、最上層加速度、構造層間変位角、層間加速度、層間最大変位、ダンパ降伏耐荷力、ダンパ変位、及びヒステリシス曲線を含む。
【0021】
好ましい実施形態では、個体群ランダムな範囲区間は、ダンパのプリセット剛性の上下限が、基準で要求される構造最大層間変位角を満たすダンパの剛性から25%無制御構造最大層間剛性であり、ダンパプリセット耐荷力の上下限が0から構造25%の最大層間せん断力に設置されることを含む。
【0022】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は、以下の通りであり、本発明の最適化設計方法は、小地震荷重モード、中地震荷重モード、大地震荷重モードに対してそれぞれ独立して計算解析を行い、対応するモードでの適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位、及びヒステリシス曲線を得て、3つのモードでのヒステリシス曲線によってマルチレベル段階降伏ダンパの骨格曲線を構築し、構築された骨格曲線によってマルチレベル段階降伏ダンパのヒステリシス曲線を逆算し、その後、後続のマルチレベル段階降伏ダンパの設計を行う。本発明の最適化設計方法により得られた最適化構造は、元構造に対して、ダンパの性能を最大限に発揮することができるだけでなく、構造層間変位角の制御要件を満たすことができる。異なる強度地震の作用の下で、本発明で提出されたマルチレベル段階降伏ダンパに基づく制振構造最適化設計方法はいずれも良好な構造振動制御効果を有し、他の変位型段階降伏ダンパへの普及応用に適し、建築構造制振設計の最適化に重要な参考価値と工事応用価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の好ましい実施形態に係る最適化設計方法のフローチャートである。
図2】本発明の好ましい実施形態に係るアルゴリズムプログラムによる解析計算のフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係るダンパの設置位置の概略図である。
図4】本発明の一実施形態に係る地震波概略図である。
図5A】本発明の一実施形態に係る小地震荷重モードでの対応するヒステリシス曲線である。
図5B】本発明の一実施形態に係る中地震荷重モードでの対応するヒステリシス曲線である。
図5C】本発明の一実施形態に係る大地震荷重モードでの対応するヒステリシス曲線である。
図6】本発明の一実施形態に係る段階降伏ダンパのダンパ降伏耐荷力、降伏変位出力の概略図である。
図7】本発明の一実施形態に係る最適化設計前後の層間変位角データの概略図である。
図8】本発明の一実施形態に係る最適化設計前後の層間加速度データの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例における技術案を明確かつ完全に説明する。本発明における実施例、当業者が創造的な労働をしない前提で得られた他のすべての実施例は、本発明の保護の範囲に属する。
【0025】
(実施例1)
図1、2に示すように、本発明の好ましい実施形態に係るマルチレベル段階降伏ダンパに基づく制振構造の最適化設計方法は、次のステップを含む。
ステップS1、SAP2000有限要素ソフトウェアに無制御制振構造モデルを入力し、無制御制振構造モデルは、ダンパのない元構造モデルである。
ステップS2、ダンパの設置位置及び構造最適化予想を決定する。具体的には、基準の層間変位角限値、層間加速度最適化率を満たす予想などを含むが、これらに限定されない。
ステップS3、アルゴリズムプログラムのプリセットパラメータを決定して設置する。具体的には、アルゴリズムプログラムのプリセットパラメータは、初期個体群数、個体群ランダムな範囲区間、バイナリ符号化長、制振構造モデルの地震波及び地震モード、構造最適化予想を含む。
ステップS4、小地震荷重モードを設置する。
ステップS5、アルゴリズムプログラムに入り解析計算を行い、小地震荷重モードでの、適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位及びヒステリシス曲線を出力する。
ステップS6、中地震荷重モードを設置する。
ステップS7、アルゴリズムプログラムに入り解析計算を行い、中地震荷重モードでの、適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位及びヒステリシス曲線を出力する。
ステップS8、大地震荷重モードを設置する。
ステップS9、アルゴリズムプログラムに入り解析計算を行い、大地震荷重モードでの、適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位及びヒステリシス曲線を出力する。
【0026】
具体的には、図2に示すように、ステップS5、S7、S9におけるアルゴリズムプログラムに入り解析計算を行うステップは、アルゴリズムプログラムの初期データを設置するステップS101と、予め設定された範囲内で固定ペア数のダンパ降伏耐荷力と剛性値をランダムに選択するステップS102と、初期データファイルを入力するステップS103と、pythonソフトウェアを利用してダンパ降伏耐荷力及び剛性値データを読み取るステップS104と、SAP2000ソフトウェアで設置されているダンパのパラメータを変更するステップS105と、ソフトウェアSAP2000に入力して解析を実行し、構造解析結果のデータを出力し、結果データファイルを得るステップS106と、matlabソフトウェアを利用して結果データを読み取り、結果データを適応度関数に代入して適応度を計算するステップS107と、制振結果を解析し、現在の個体群における適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位を出力し、反復回数に達したかどうかを判断するステップS108と、反復回数に達していない場合、選択、交差、変異を経て新たな初期個体群を得て、再び繰り返すステップS109と、反復回数に達した場合、計算を終了し、アルゴリズムプログラムにより計算された適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位、及びヒステリシス曲線を出力するステップS110と、を含む。
【0027】
ステップS101では、アルゴリズムプログラムの初期データは、アルゴリズム反復回数、ダンパの剛性及び降伏耐荷力範囲、遺伝選択率、遺伝変異率、遺伝交差率を含む。
【0028】
ステップS107では、適応度は、次のような4つの計算式のいずれかによって得られるが、これらに限定されるものではなく、必要に応じて適応度関数を調整することができる。
【0029】
1、制振構造最適化後の最大層間せん断力及び最上層加速度と元構造の対応値との差値の絶対値と、元構造の対応値との比を百分率で求めた後、二乗和を開平して、適応度計算式とする。
【0030】
【数5】
【0031】
ここで、Vmaxは最適化後構造の層間せん断力最大値(kN)であり、Vは元構造の最大層間せん断力(kN)であり、Vは構造各層層間せん断力(kN)であり、vは最適化後構造の最大最上層加速度(mm/s)であり、vは元構造の最上層加速度(mm/s)であり、fitnessは適応度関数である。
【0032】
式(1)による適応度の計算は、構造の最上層加速度及び最大層間せん断力の最適化率を総合的に考慮し、構造の地震応答を制御する必要がある場合に適用される。
【0033】
2、制振構造最適化後の最大層間せん断力及び最上層加速度と元構造の対応値との差値の絶対値と、元構造の対応値との比を百分率で求めて適応度計算式とする。
【0034】
【数6】
【0035】
ここで、Vmaxは、最適化後構造の層間せん断力最大値(kN)であり、Vは元構造の最大層間せん断力(kN)であり、Vは構造各層層間せん断力(kN)であり、vは最適化後構造の最大最上層加速度(mm/s)であり、vは元構造の最上層加速度(mm/s)であり、fitnessは適応度関数であり、α、βは重み付け係数である。
【0036】
式(2)による適応度の計算は、異なる比率での層間せん断力及び最上層加速度の最適化率によって、地震応答を制御する場合に適用される。
【0037】
3、制振構造最適化後の最大層間変位角と元構造の対応値との差値の絶対値と、元構造の対応値との比を百分率で求めて適応度計算式とし、
【0038】
【数7】
【0039】
ここで、θmaxは最適化後構造の最大層間変位角であり、θは元構造の最大層間変位角であり、fitnessは適応度関数である。
【0040】
式(3)による適応度の計算は、基準構造変位角の要求を満たして構造変形を制御するために、構造の変位角最適化率を考慮して構造の層間変位を制御する場合に適用される。
【0041】
4、制振構造最適化後の最大層間せん断力及び最上層加速度と元構造の対応値との差値の絶対値と、元構造の対応値との比を百分率で求めて適応度計算式とする。
【0042】
【数8】
【0043】
ここで、θmaxは最適化後構造の最大層間変位角であり、θは元構造の最大層間変位角であり、amaxは最適化後構造の最大加速度であり、aは元構造の最大層間加速度であり、umaxは最適化後構造の最大層間変位であり、uは元構造の最大層間変位であり、α、β、χは重み付け係数であり、fitnessは適応度関数である。
【0044】
式(4)による適応度の計算は、異なる比率での構造層間変位角、層角加速度、及び層間最大変位の最適化率を総合的に考慮して、目標関数の単一化を回避する場合に適用される。
【0045】
さらに、ステップS106において出力された構造解析結果は、構造各層の層間せん断力、最上層加速度、構造層間変位角、層間加速度、層間最大変位、ダンパ降伏耐荷力、ダンパ変位、及びヒステリシス曲線を含む。
【0046】
さらに、個体群ランダムな範囲区間は、ダンパのプリセット剛性の上下限が、基準で要求される構造最大層間変位角を満たすダンパの剛性から25%無制御構造最大層間剛性であり、ダンパプリセット耐荷力の上下限が0から構造25%の最大層間せん断力に設置されることを含む。
【0047】
ステップS10、出力された3つのモードでのヒステリシス曲線によってマルチレベル段階降伏ダンパの骨格曲線を構築する。
【0048】
ステップS11、構築された骨格曲線によってマルチレベル段階降伏ダンパのヒステリシス曲線を逆算する。
【0049】
ステップS12、マルチレベル段階降伏ダンパの設計取り付けを行うことで、制振構造の最適化設計を完成させる。
【0050】
具体的には、3つのモードでのヒステリシス曲線によって段階降伏ダンパの骨格曲線を構築するので、骨格曲線は多種のヒステリシス規則を有し、実際の状況に応じて、段階降伏ダンパのヒステリシス規則を定義し、最後に段階降伏ダンパの設計を行う。段階降伏ダンパの設計思想及び形態は、スリーブリング及びプレギャップタイプなどを含むが、これらに限定されない。
【0051】
(実施例2)
具体的な一実施形態では、9層bench-markモデルを例とし、マルチレベル段階降伏ダンパに基づく制振構造の最適化設計方法を行う。具体的に、次のステップを含む。
ステップS1、SAP2000有限要素ソフトウェアに無制御制振構造モデルを入力し、無制御制振構造モデルは、ダンパのない元構造モデルである。
ステップS2、ダンパの設置位置及び構造最適化予想を決定する。図3に示すように、X、Y方向のそれぞれに4つのダンパ1が対称に配置されている。
ステップS3、アルゴリズムプログラムのプリセットパラメータを決定して設置する。具体的に、アルゴリズムプログラムのプリセットパラメータには、次のものが含まれ、初期個体群数は20に設置され(通常は10~50に設置され、個体群数が大きいほど、計算時間が長くなる)、個体群ランダムな範囲区間は、0から層間せん断力及び剛性の25%であり、バイナリ符号化長は15に設置される(個体群ランダムな範囲区間によって長さを決定する)。地震モードは、小地震加速度70cm/s^2、中震加速度200cm/s^2、大地震加速度400cm/s^2を含み、構造最適化予想は、層間変位角最適化率が30%であり、層間加速度最適化率が15%である(一般規定)ことである。
ステップS4、小地震荷重モードを設置する。
ステップS5、アルゴリズムプログラムに入り解析計算を行い、小地震荷重モードでの、適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位及びヒステリシス曲線を出力する。
ステップS6、中地震荷重モードを設置する。
ステップS7、アルゴリズムプログラムに入り解析計算を行い、中地震荷重モードでの、適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位及びヒステリシス曲線を出力する。
ステップS8、大地震荷重モードを設置する。
ステップS9、アルゴリズムプログラムに入り解析計算を行い、大地震荷重モードでの、適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位及びヒステリシス曲線を出力する。
ここで、小地震、中地震、大地震荷重モードでの対応するヒステリシス曲線を、図5A~5Cに示す。段階降伏ダンパのダンパ降伏耐荷力、降伏変位出力結果を図6に示す。
S10、出力された3つのモードでのヒステリシス曲線によってマルチレベル段階降伏ダンパの骨格曲線を構築する。
S11、構築された骨格曲線によってマルチレベル段階降伏ダンパのヒステリシス曲線を逆算する。
S12、マルチレベル段階降伏ダンパの設計取り付けを行う。
【0052】
ステップS5、S7、S9におけるアルゴリズムプログラムに入り解析計算を行うことは、アルゴリズムプログラムの初期データを設置するステップS101と、予め設定された範囲内で固定ペア数のダンパ降伏耐荷力と剛性値をランダムに選択するステップS102と、初期データファイルを入力するステップS103と、pythonソフトウェアを利用してダンパ降伏耐荷力及び剛性値データを読み取るステップS104と、SAP2000ソフトウェアで設置されているダンパのパラメータを変更するステップS105と、ソフトウェアSAP2000に入力して解析を実行し、構造解析結果のデータを出力し、結果データファイルを得るステップS106と、matlabソフトウェアを利用して結果データを読み取り、結果データを適応度関数に代入して適応度を計算するステップS107と、制振結果を解析し、現在の個体群における適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位を出力し、反復回数に達したかどうかを判断するステップS108と、反復回数に達していない場合、選択、交差、変異を経て新たな初期個体群を得て、再び繰り返すステップS109と、反復回数に達した場合、計算を終了し、アルゴリズムプログラムにより計算された適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位、及びヒステリシス曲線を出力するステップS110とを含む。
【0053】
具体的には、本実施例の適応度関数は、層間変位角限界値を満たした後、制振構造最適化後の最大層間せん断力及び最上層加速度と元構造の対応値との差の絶対値と、元構造の対応値との比を百分率で求めて、適応度関数とし、そのうち、最大層間変位角最適化率が30%以下であり、層間最大加速度最適化率が15%以下であるように設置される。
適応度計算式は次のとおりである。
【0054】
【数9】
【0055】
ここで、Vmaxは最適化後構造の層間せん断力最大値(kN)であり、Vは元構造の最大層間せん断力(kN)であり、Vは構造各層層間せん断力(kN)であり、vは最適化後構造の最大最上層加速度(mm/s)であり、vは元構造の最上層加速度(mm/s)であり、fitnessは適応度関数であり、α、βは重み付け係数である。本実施例では、重み付け係数は1.0を取る。
【0056】
解析計算の結果から、図7図8に示すように、本発明の最適化設計方法により最適化された構造層間変位角及び層間加速度は、効果的に制御されていることが分かる。
【0057】
以上、本発明の実施例を示し、説明したが、当業者にとっては、本発明の原理及び精神を逸脱することなく、これらの実施例に対して様々な変更、修正、置換、及び変形が可能であり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲及びその均等物によって限定される。
【要約】
【課題】 本発明は、マルチレベル段階降伏ダンパに基づく制振構造の最適化設計方法を開示している。
【解決手段】 無制御制振構造モデルを入力するステップと、ダンパの設置位置及び構造最適化予想を決定するステップと、アルゴリズムプログラムのプリセットパラメータを決定して設置するステップと、小地震、中地震、大地震の荷重モードに対してそれぞれ独立にアルゴリズムプログラムの解析計算を行い、対応するモードでの適応度の最大値に対応するダンパ降伏耐荷力、降伏変位、及びヒステリシス曲線を得て、3つのモードでのヒステリシス曲線によってマルチレベル段階降伏ダンパの骨格曲線を構築し、構築された骨格曲線によってマルチレベル段階降伏ダンパのヒステリシス曲線を逆算してから、後続のマルチレベル段階降伏ダンパの設計を行うステップと、を含む。本発明の最適化設計方法により得られた最適化構造は、元構造と比較して、ダンパの性能を最大限に発揮することができるだけでなく、構造層間変位角の制御要件を満たすことができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8