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特許7610202超音波トランスデューサーアレイ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサーアレイ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20241225BHJP
   H04R 31/00 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
H04R17/00 332A
H04R31/00 330
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020187348
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076783
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】303043999
【氏名又は名称】天草池田電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100169133
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 牧子
(72)【発明者】
【氏名】中妻 啓
(72)【発明者】
【氏名】小田川 裕之
(72)【発明者】
【氏名】松本 勇
(72)【発明者】
【氏名】西浦 由成
(72)【発明者】
【氏名】清島 庸典
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/001954(WO,A1)
【文献】特開2018-089621(JP,A)
【文献】国際公開第2012/132261(WO,A1)
【文献】特開2008-131055(JP,A)
【文献】国際公開第2018/225415(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-31/00
B05D 1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の超音波トランスデューサーでパラメトリックスピーカーを構成する超音波トランスデューサーアレイであって、
該超音波トランスデューサーは1枚の金属基板上に複数形成されており、
該超音波トランスデューサーは、該金属基板が振動板を兼ねるモノモルフ圧電素子であり、
該圧電素子に用いられる圧電体は多孔質セラミクスで形成されており、
該金属基板は、各超音波トランスデューサーが形成された各領域の周縁部の一部が切り抜かれると共に前記各領域の内側は切り抜かれておらず、各超音波トランスデューサーを保持する複数の梁が形成されていることを特徴とする、
超音波トランスデューサーアレイ。
【請求項2】
該多孔質セラミクスは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で形成されていることを特徴とする、
請求項1記載の超音波トランスデューサーアレイ。
【請求項3】
該金属基板の厚みは、1mm以上5mm以下であることを特徴とする、
請求項1又は2記載の超音波トランスデューサーアレイ。
【請求項4】
該超音波トランスデューサーが形成される該領域は、略円形、略楕円形或いは略多角形の形状であることを特徴とする、
請求項1乃至3の何れか一に記載の超音波トランスデューサーアレイ。
【請求項5】
該金属基板は、非平面の形状を有していることを特徴とする、
請求項1乃至4の何れか一に記載の超音波トランスデューサーアレイ。
【請求項6】
該圧電体の厚みは10μm以上50μm以下であることを特徴とする、
請求項1乃至5の何れか一に記載の超音波トランスデューサーアレイ。
【請求項7】
複数の超音波トランスデューサーでパラメトリックスピーカーを構成する超音波トランスデューサーアレイの製造方法であって、
該超音波トランスデューサーの振動板を兼ねる、1枚の金属基板上に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ゾルゲル溶液とPZT粉末の複合体で構成される圧電材料溶液を、スプレー塗布し、その後、焼成することにより、圧電体となる多孔質セラミックを形成し、
該圧電体上に、各超音波トランスデューサーに対応する対向電極を複数形成することにより各超音波トランスデューサーが形成されており、
さらに、該金属基板は、各超音波トランスデューサーが形成された各領域の周縁部の一部が切り抜かれると共に前記各領域の内側は切り抜かれておらず、各超音波トランスデューサーを保持する複数の梁が形成されていることを特徴とする、
超音波トランスデューサーアレイの製造方法。
【請求項8】
該圧電材料溶液において、PZTゾルゲル溶液に対するPZT粉末質量比が1.25以下であることを特徴とする、
請求項7記載の超音波トランスデューサーアレイの製造方法。
【請求項9】
該金属基板は、各超音波トランスデューサーに対応して非平面の形状に形成されていることを特徴とする、
請求項7又は8に記載の超音波トランスデューサーアレイの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサーアレイ、超音波トランスデューサーアレイの製造方法、超音波トランスデューサーアレイを用いたパラメトリックスピーカー及び超音波トランスデューサーアレイを用いたパラメトリックスピーカーの使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パラメトリックスピーカーは超音波を使うことで鋭い指向性を持たせることができる音響システムである。特定の狭い範囲にいる人に選択的に音を流すことができるため、特に道路工事現場等の特殊環境下での情報伝達に有効である。
【0003】
一般的な超音波スピーカー=トランスデューサーは、単体では約60乃至70度の指向性しか持たないが、トランスデューサーを平面に複数個並べ、パラメトリック・アレイを構成すると、指向性が非常に鋭くなる。超音波の直進性と、複数個並べるパラメトリック効果により、パラメトリックスピーカーは、超指向性と耳元から音が聞こえてくるという特性を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018ー89621号公報
【文献】特開2019ー186836号公報
【文献】特開2019ー68313号公報
【文献】特開平11ー262084号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】M.Kobayashi, T.R.Olding, M.Sayer, C.-K.Jen, “Piezoelectric thick film ultrasonic transducers fabricated by a sol-gel spray technique”, Proceedings of Ultrasonics, Volume 39, Issue 10, October 2002, PP. 675-680
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、パラメトリックスピーカーを構成する超音波トランスデューサーアレイは、通常単体の超音波トランスデューサーを複数個並べることで構成するしかなく、コスト面での課題があった、さらに、前記のような特殊環境下での使用のためには要求仕様に対して耐熱性が低いという課題があり、普及の妨げとなっていた。
【0007】
このため、パラメトリックスピーカーを構成する超音波トランスデューサーアレイに於いて、低コストで効率良く素子を形成する製造方法が求められると共に、パラメトリックスピーカーの使用条件に於いて求められる動作温度範囲(高温特性)を実現することが求められていた。
【0008】
また、従来、高速道路注意喚起スピーカー等に用いられるパラメトリックスピーカーの主要部品である放射部に使用されている超音波素子(超音波トランスデューサー)は単体に印加出来る電圧が最大約80Vで高出力化が難しい事や、単体での指向性は60乃至70度と広く、指向性を鋭くする為には超音波素子を複数個並べることで構成するしかなく、コスト面での課題があった。さらに、超音波素子を構成する部品が樹脂製のケース内に圧電セラミック、金属板、コーン形共振子などの複数の部品で構成されており複雑で耐熱温度が低く、夏場の高温となる高速道路等の特殊環境下での使用のためには要求仕様に対して耐熱性が低いという課題があり、普及の妨げとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、超音波トランスデューサーアレイ、超音波トランスデューサーアレイの製造方法、超音波トランスデューサーアレイを用いたパラメトリックスピーカー及び超音波トランスデューサーアレイを用いたパラメトリックスピーカーの使用方法に関するものである。
【0010】
本発明は、パラメトリックスピーカーを構成する超音波トランスデューサーアレイであって、該超音波トランスデューサーは平面上にマトリクス状に複数が形成されてなり、該超音波トランスデューサーは振動板を有するモノモルフ圧電素子であって、該圧電素子に用いられる圧電体は多孔質セラミクスであり、ゾルゲル法を用いて形成されたことを特徴とする、超音波トランスデューサーアレイであり、かかる超音波トランスデューサーアレイを用いたパラメトリックスピーカーである。
【0011】
また本発明は、パラメトリックスピーカーを構成する超音波トランスデューサーアレイの製造方法であって、該超音波トランスデューサーは基板上に複数が形成されてなり、該超音波トランスデューサーは振動板を有するモノモルフ圧電素子であって、該圧電素子に用いられる圧電体は多孔質セラミクスであり、該圧電体はゾルゲル法を用いて形成され、該形成方法は対象物の表面に圧電膜を構築するために圧電材料溶液を噴射システムによりスプレー塗布し、その後焼成することにより形成されることを特徴とする、超音波トランスデューサーアレイの製造方法である。また本発明は、圧電材料溶液をスプレー塗布する噴射システムは、圧電材料溶液を前記対象物の表面に噴射する噴射部と、圧電材料溶液を保持する保持部と、保持部に保持された前記圧電材料溶液を攪拌する攪拌部と、保持部から前記噴射部に至る供給経路を用いて該保持部が保持する該圧電材料溶液を該噴射部に供給する循環部を備え、該循環部は、該噴射部において噴射しないときに該噴射部から該保持部に至る回収経路を用いて該噴射部に供給された該圧電材料溶液を回収する構成であることを特徴とする、超音波トランスデューサーアレイの製造方法である。
【0012】
また本発明は、該圧電素子に用いられる圧電材料溶液がチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ゾルゲル溶液とPZT粉末の複合体であることを特徴とする。さらに本発明は、該該圧電素子に用いられる圧電材料溶液がチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ゾルゲル溶液とPZT粉末の複合体であって、該圧電材料溶液において、PZTゾルゲル溶液に対するPZT粉末質量比が1.25以下であることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、超音波トランスデューサーが基板上に直線状、マトリクス状或いはダイヤゴナル状に複数が形成されてなることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、該超音波トランスデューサーに用いられる基板が振動板を兼ねることを特徴とする。さらに本発明は、該超音波トランスデューサーに用いられる基板は振動板を兼ね、さらに電極としても機能することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、該超音波トランスデューサーに用いられる基板が金属であることを特徴とし、さらに本発明は、該超音波トランスデューサーに用いられる基板がステンレス薄板であることを特徴とする。さらに本発明は、該超音波トランスデューサーに用いられる基板の厚みが1mm以上5mm以下であることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを形成する個々の超音波トランスデューサーが略円形、略楕円形或いは略多角形の形状の領域で形成されることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを形成する個々の超音波トランスデューサーが略円形、略楕円形或いは略多角形の形状の領域で形成され、且つ、該領域はその周縁部の一部が切り抜かれ、個々の超音波トランスデューサーが梁により保持される構造であることを特徴とする。さらに本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを形成する個々の超音波トランスデューサーが梁により保持される構造であり、該梁は個々超音波トランスデューサー毎に2乃至6箇所に形成されることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを形成する個々の超音波トランスデューサーが非平面の形状に形成されることを特徴とし、さらに本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを形成する個々の超音波トランスデューサーは非平面の形状に形成され、該形状は略球面、略楕円面或いは略放物面であることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを形成する個々の超音波トランスデューサーに用いられる圧電体は多孔質セラミクスであり、該圧電体の厚みは10μm以上50μm以下であることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを形成する個々の超音波トランスデューサーに用いられる圧電体は多孔質セラミクスであり、該圧電体の厚みは10μm以上50μm以下であることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを形成する個々の超音波トランスデューサーが圧電体上に対向電極を形成されてなることを特徴とする。
【0022】
また本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを用いたパラメトリックスピーカーの使用方法であって、道路工事現場、鉄道工事現場あるいはトンネル工事現場を含む特殊環境下での情報伝達に用いることを特徴とする。
【0023】
また本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを用いたパラメトリックスピーカーの使用方法であって、高速道路上での常設型或いは車載型注意喚起用、料金所発券機音声案内における注意喚起用或いは駅ホームでの転落防止用注意喚起用に用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明は大面積の対象物に均一な圧電膜を形成することが出来、さらにその形成領域を規定することが可能であるので、複数の超音波素子を一体的に形成することが可能となり、圧倒的なコストダウンが可能となる。また従来の超音波素子は最大印加電圧が低い事や平面構造のみ製作可能で単体での指向性は60乃至70度である為、平面に複数個並べてパラメトリック・アレイを構成し指向性を鋭くする必要があるなど高コストであった。新開発の超音波素子は多孔性で抗電界が高く印加電圧の向上が出来、及び曲面などの形状で製作可能であり単体での指向性が実現可能で低コストを実現できる。又、圧電膜スプレー塗布技術にて生成したPZT薄膜は空気層を持つ多孔性でキュリー温度が高い事及び素子を構成する部品が金属である事により高耐熱性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明に係る超音波トランスデューサーアレイの一例を示す図面代用写真である。
図2図2は、本発明に係る超音波トランスデューサーアレイの製造方法におけるゾルゲル法による圧電体幕生成方法の例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、超音波トランスデューサーアレイ、 超音波トランスデューサーアレイの製造方法、超音波トランスデューサーアレイを用いたパラメトリックスピーカー及び超音波トランスデューサーアレイを用いたパラメトリックスピーカーの使用方法に関するものである。
【0027】
本発明は、パラメトリックスピーカーを構成する超音波トランスデューサーアレイであって、該超音波トランスデューサーは平面上にマトリクス状に複数が形成されてなり、該超音波トランスデューサーは振動板を有するモノモルフ圧電素子であって、該圧電素子に用いられる圧電体は多孔質セラミクスであり、ゾルゲル法を用いて形成されたことを特徴とする、超音波トランスデューサーアレイであり、かかる超音波トランスデューサーアレイを用いたパラメトリックスピーカーである。従来の超音波素子は最大印加電圧が低い事や平面構造のみ製作可能で単体での指向性は60乃至70度である為、平面に複数個並べてパラメトリック・アレイを構成し指向性を鋭くする必要があるなど高コストであったが、新開発の超音波素子は多孔性で抗電界が高く印加電圧の向上が出来、及び曲面などの形状で製作可能であり単体での指向性が実現可能で低コストを実現できる。又、圧電膜スプレー塗布技術にて生成したPZT薄膜は空気層を持つ多孔性でキュリー温度が高い事及び素子を構成する部品が金属である事により高耐熱性を実現できた。
【0028】
また本発明は、パラメトリックスピーカーを構成する超音波トランスデューサーアレイの製造方法であって、該超音波トランスデューサーは基板上に複数が形成されてなり、該超音波トランスデューサーは振動板を有するモノモルフ圧電素子であって、該圧電素子に用いられる圧電体は多孔質セラミクスであり、該圧電体はゾルゲル法を用いて形成され、該形成方法は対象物の表面に圧電膜を構築するために圧電材料溶液を噴射システムによりスプレー塗布し、その後焼成することにより形成されることを特徴とする、超音波トランスデューサーアレイの製造方法である。また本発明は、圧電材料溶液をスプレー塗布する噴射システムは、圧電材料溶液を前記対象物の表面に噴射する噴射部と、圧電材料溶液を保持する保持部と、保持部に保持された前記圧電材料溶液を攪拌する攪拌部と、保持部から前記噴射部に至る供給経路を用いて該保持部が保持する該圧電材料溶液を該噴射部に供給する循環部を備え、該循環部は、該噴射部において噴射しないときに該噴射部から該保持部に至る回収経路を用いて該噴射部に供給された該圧電材料溶液を回収する構成であることを特徴とする、超音波トランスデューサーアレイの製造方法である。本発明に係る超音波トランスデューサーアレイの製造方法は、大面積の対象物に均一な圧電膜を形成することが出来、さらにその形成領域を規定することが可能であるので、複数の超音波素子を一体的に形成することが可能となり、圧倒的なコストダウンが可能となる。
【0029】
また本発明は、該圧電素子に用いられる圧電材料溶液がチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ゾルゲル溶液とPZT粉末の複合体であることを特徴とする。さらに本発明は、該該圧電素子に用いられる圧電材料溶液がチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ゾルゲル溶液とPZT粉末の複合体であって、該圧電材料溶液において、PZTゾルゲル溶液に対するPZT粉末質量比が1.25以下であることを特徴とする。かかる構成とすることにより、安定した成膜が実現されるとともに、空気層を持つ多孔性でキュリー温度が高い事により高耐熱性を実現することができる。
【0030】
また本発明は、超音波トランスデューサーが基板上に直線状、マトリクス状或いはダイヤゴナル状に複数が形成されてなることを特徴とする。本発明によれば、複数の超音波素子を一体的に形成することが可能となり、圧倒的なコストダウンが可能となった。
【0031】
また本発明は、該超音波トランスデューサーに用いられる基板が振動板を兼ねることを特徴とする。さらに本発明は、該超音波トランスデューサーに用いられる基板は振動板を兼ね、さらに電極としても機能することを特徴とする。
【0032】
また本発明は、該超音波トランスデューサーに用いられる基板が金属であることを特徴とし、さらに本発明は、該超音波トランスデューサーに用いられる基板がステンレス薄板であることを特徴とする。さらに本発明は、該超音波トランスデューサーに用いられる基板の厚みが1mm以上5mm以下であることを特徴とする。かかる構成とすることにより、複数の超音波素子を一体的に形成することが可能となると同時に、基板が金属である事により高耐熱性を実現できた。
【0033】
また本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを形成する個々の超音波トランスデューサーが略円形、略楕円形或いは略多角形の形状の領域で形成されることを特徴とする。かかる形状は、個々の超音波トランスデューサーの性能向上に寄与るす。
【0034】
また本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを形成する個々の超音波トランスデューサーが略円形、略楕円形或いは略多角形の形状の領域で形成され、且つ、該領域はその周縁部の一部が切り抜かれ、個々の超音波トランスデューサーが梁により保持される構造であることを特徴とする。さらに本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを形成する個々の超音波トランスデューサーが梁により保持される構造であり、該梁は個々超音波トランスデューサー毎に2乃至6箇所に形成されることを特徴とする。
【0035】
また本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを形成する個々の超音波トランスデューサーが非平面の形状に形成されることを特徴とし、さらに本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを形成する個々の超音波トランスデューサーは非平面の形状に形成され、該形状は略球面、略楕円面或いは略放物面であることを特徴とする。これにより、さらなる指向性の向上と高効率が実現できる。
【0036】
また本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを形成する個々の超音波トランスデューサーに用いられる圧電体は多孔質セラミクスであり、該圧電体の厚みは10μm以上50μm以下であることを特徴とする。圧電膜スプレー塗布技術にて生成したPZT薄膜は空気層を持つ多孔性でキュリー温度が高く、高耐熱性を実現できる。
【0037】
また本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを形成する個々の超音波トランスデューサーが圧電体上に対向電極を形成されてなることを特徴とする。かかる構成も、超音波トランスデューサーアレイの一体的形成に寄与し、圧倒的なコストダウンが可能となった。
【0038】
また本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを用いたパラメトリックスピーカーの使用方法であって、道路工事現場、鉄道工事現場あるいはトンネル工事現場を含む特殊環境下での情報伝達に用いることを特徴とする。また本発明は、該超音波トランスデューサーアレイを用いたパラメトリックスピーカーの使用方法であって、高速道路上での常設型或いは車載型注意喚起用、料金所発券機音声案内における注意喚起用或いは駅ホームでの転落防止用注意喚起用に用いることを特徴とする。本発明に係る超音波トランスデューサーアレイを用いたパラメトリックスピーカーはその超指向性、高耐熱性、高効率という特徴から、上記のような特殊環境下で非常な効果を発揮することができる。
【実施例1】
【0039】
以下、本発明に係る超音波トランスデューサーアレイを実施例に基づいて説明する。図1は、本発明に係る超音波トランスデューサーアレイの一例を示す図面代用写真である。
【0040】
本実施例に於いては、超音波トランスデューサーは基板上に複数が形成されてなり、該超音波トランスデューサーは振動板を有するモノモルフ圧電素子であって、該圧電素子に用いられる圧電体は多孔質セラミクスであり、該圧電体はゾルゲル法を用いて形成され、該形成方法は対象物の表面に圧電膜を構築するために圧電材料溶液を噴射システムによりスプレー塗布し、その後焼成することにより形成された。
【0041】
本実施例に於いては、複数の超音波トランスデューサーは基板上に直線状に5素子が形成され、その形状は円形であって、夫々の素子は2箇所の梁によって保持される形状となっている。
【0042】
該超音波トランスデューサーに用いられる基板は振動板を兼ね、さらに電極としても機能するようにした。該超音波トランスデューサーに用いられる基板としてはステンレス薄板を用い、板厚は2mmのものを用いた。
【0043】
ここで、超音波トランスデューサーは基板上に直線状だけでなく、マトリクス状或いはダイヤゴナル状に複数が形成されてよい。超音波トランスデューサーに用いられる基板は振動板を兼ねることが有効であり、基板が振動板を兼ね、さらに電極としても機能することがさらに望ましい。
【0044】
また、超音波トランスデューサーアレイを形成する個々の超音波トランスデューサーは円形だけでなく略円形、略楕円形或いは略多角形の形状の領域で形成されて良い。個々の超音波トランスデューサー領域はその周縁部の一部が切り抜かれ、個々の超音波トランスデューサーが梁により保持される構造であることが有効である。該梁は個々超音波トランスデューサー毎に2乃至6箇所に形成されることが望ましい。
【0045】
本実施例に於いては、複数の超音波トランスデューサーは平面で形成されているが、本発明に係るゾルゲル法により圧電材料溶液をスプレー塗布する噴射システムにより圧電体膜を形成する方法によれば複数の超音波トランスデューサーは個々の超音波トランスデューサーが非平面の形状に形成されても良い。これにより、さらに指向性と効率が高いパラメトリックスピーカーを構成する超音波トランスデューサーアレイの形成が可能となる。ここで、非平面の形状は略球面、略楕円面或いは略放物面とすることが望ましい。
【0046】
図2は、本発明に係る超音波トランスデューサーアレイの製造方法におけるゾルゲル法による圧電体膜生成方法の例を示す概念図である。本発明に係るパラメトリックスピーカーを構成する超音波トランスデューサーアレイは平面上にマトリクス状に複数が形成されてなり、該超音波トランスデューサーは振動板を有するモノモルフ圧電素子であって、該圧電素子に用いられる圧電体は多孔質セラミクスであり、ゾルゲル法を用いて形成された。
【0047】
本発明に係る圧電体の形成は、対象物の表面に圧電膜を構築するために圧電材料溶液を噴射システムによりスプレー塗布し、その後焼成することにより形成される方法である。圧電材料溶液をスプレー塗布する噴射システムは、圧電材料溶液を前記対象物の表面に噴射する噴射部と、圧電材料溶液を保持する保持部と、保持部に保持された前記圧電材料溶液を攪拌する攪拌部と、保持部から前記噴射部に至る供給経路を用いて該保持部が保持する該圧電材料溶液を該噴射部に供給する循環部を備え、該循環部は、該噴射部において噴射しないときに該噴射部から該保持部に至る回収経路を用いて該噴射部に供給された該圧電材料溶液を回収する構成とした。
【0048】
該圧電素子に用いられる圧電材料溶液はチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ゾルゲル溶液とPZT粉末の複合体を用いた。該圧電材料溶液において、PZTゾルゲル溶液に対するPZT粉末質量比が1.25以下であることが望ましい。本実施例に於いてはPZTゾルゲル溶液に対するPZT粉末質量比を1に設定した。
【0049】
平面への吹き付けでは、吹き付けのスプレーガンを吹き付け対象に対し2次元的に走査することで均一な塗膜形成を行ってもよい。非平面の形状として略球面、略楕円面或いは略放物面とする場合は平面的な形状の場合とほぼ同一の方法で塗布が可能であるが、自由曲面への吹き付けにおいては平面への吹き付けで確立した塗布パラメータをもとに6軸塗装ロボットを制御し吹き付けを行うことが有効である。
【0050】
本実施例では、前記のように圧電材料溶液を噴射システムによりスプレー塗布したのち、摂氏150度で10分の仮焼成、摂氏650度で5分の焼結工程を経たのち、コロナ放電による分極処理を行って圧電膜を得た。さらに、圧電膜表面に対向電極を形成して超音波トランスデューサーとして機能するようにした。圧電体は多孔質セラミクスに形成されている。
【0051】
なお、本発明は上記の処理条件に限定されるものではなく、機能を発揮できる処理条件を設定することができる。
【0052】
本実施例では、圧電体の厚みは焼結、分極工程後で30μmであった。ここで、圧電体の厚みは10μm以上50μm以下であることが望ましく、20μm以上40μm以下であることがさらに望ましい。
【0053】
本実施例に於いて製造された超音波トランスデューサーアレイはパラメトリックスピーカーに好適に使用される。本発明に係る超音波トランスデューサーアレイを用いたパラメトリックスピーカーの使用方法としては、道路工事現場、鉄道工事現場あるいはトンネル工事現場を含む特殊環境下での情報伝達に用いたり、高速道路上での常設型或いは車載型注意喚起用、料金所発券機音声案内における注意喚起用或いは駅ホームでの転落防止用注意喚起用に用いることにより、その超指向性、高耐熱性、高効率という特徴から、上記のような特殊環境下で非常な効果を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上述べてきたように、本発明に係る超音波トランスデューサーアレイ、 超音波トランスデューサーアレイの製造方法、超音波トランスデューサーアレイを用いたパラメトリックスピーカー及び超音波トランスデューサーアレイを用いたパラメトリックスピーカーの使用方法は、複数の超音波素子を一体的に形成することが可能となり、圧倒的なコストダウンが可能となる。また従来の超音波素子は最大印加電圧が低い事や平面構造のみ製作可能で単体での指向性は60乃至70度である為、平面に複数個並べてパラメトリック・アレイを構成し指向性を鋭くする必要があるなど高コストであった。新開発の超音波素子は多孔性で抗電界が高く印加電圧の向上が出来、及び曲面などの形状で製作可能であり単体での指向性が実現可能で低コストを実現できる。又、圧電膜スプレー塗布技術にて生成したPZT薄膜は空気層を持つ多孔性でキュリー温度が高い事及び素子を構成する部品が金属である事により高耐熱性を実現できる。
【符号の説明】
【0055】
1 超音波トランスデューサー
2 梁部
図1
図2