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特許7610203野生動物監視システム、野生動物監視方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】野生動物監視システム、野生動物監視方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/00 20060101AFI20241225BHJP
   G06Q 50/00 20240101ALI20241225BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20241225BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20241225BHJP
【FI】
G08B25/00 510M
G06Q50/00
G08B21/02
H04N23/60
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020193095
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022081882
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】511213982
【氏名又は名称】ダイワ通信株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】岩本 秀成
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/093330(WO,A1)
【文献】特開2020-184924(JP,A)
【文献】特開2021-027460(JP,A)
【文献】特開2018-033050(JP,A)
【文献】特表2018-520680(JP,A)
【文献】国際公開第2019/138329(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0311109(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0322483(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111950362(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109829888(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/00-31/00
G06Q 50/00
H04N 23/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既定の場所で画像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された画像に基づいて、野生動物の個体を特定する個体特定手段と、
前記個体特定手段により特定された個体に関連付けて、この個体の行動特性に関する情報をデータベースに登録する行動登録手段と、
前記データベースに登録された各個体の行動特性に応じて、警告を出力する警告手段と
を有する野生動物監視システム。
【請求項2】
前記撮影手段は、動画像を撮影し、
前記個体特定手段は、前記撮影手段により撮影された動画像に基づいて、熊の個体を特定し、
前記撮影手段により撮影された動画像に基づいて、熊の行動パターンを特定する行動パターン特定手段
をさらに有し、
前記行動登録手段は、前記個体特定手段により特定された個体に関連付けて、この個体の行動パターンをデータベースに登録し、
前記警告手段は、前記データベースに登録された各個体の行動パターンに応じた範囲の住民の端末に対して、警告情報を送信する
請求項1に記載の野生動物監視システム。
【請求項3】
前記撮影手段は、動画像を撮影し、
前記個体特定手段は、前記撮影手段により撮影された動画像に基づいて、熊の個体を特定し、
前記個体特定手段により熊の個体が特定された場合に、この個体に対して威嚇音を出力する威嚇音出力手段
をさらに有する請求項1に記載の野生動物監視システム。
【請求項4】
前記行動登録手段は、前記個体特定手段により特定された個体に関連付けて、この個体が撮影された場所を示す位置情報をデータベースに登録し、
前記データベースに登録された位置情報に基づいて、各個体の行動範囲を特定する行動範囲特定手段
をさらに有し、
前記警告手段は、前記行動範囲特定手段により特定された行動範囲に対応する地域に対して、警告を出力する
請求項1に記載の野生動物監視システム。
【請求項5】
前記行動登録手段は、前記個体特定手段により特定された個体に関連付けて、この個体が撮影された場所を示す位置情報をデータベースに登録し、
前記データベースに登録された位置情報に基づいて、人の居住地域における行動履歴の有無を判定する行動履歴判定手段
をさらに有し、
前記警告手段は、前記行動履歴判定手段により行動履歴が有ると判定された個体の位置情報に応じて、警告を出力する
請求項1に記載の野生動物監視システム。
【請求項6】
前記個体特定手段は、特定された個体が成獣であるか幼獣であるかを特定し、
前記行動登録手段は、前記個体特定手段により特定された個体に関連付けて、この個体が撮影された場所を示す位置情報と、特定された成獣でるか幼獣であるかとをデータベースに登録し、
前記データベースに登録された情報に基づいて、幼獣と行動を共にする成獣であるか否かを判定する親子判定手段
をさらに有し、
前記警告手段は、前記親子判定手段による判定結果に応じて、警告を出力する
請求項1に記載の野生動物監視システム。
【請求項7】
撮影装置が、既定の場所で画像を撮影する撮影ステップと、
コンピュータが、前記撮影ステップにより撮影された画像に基づいて、野生動物の個体を特定する個体特定ステップと、
コンピュータが、前記個体特定ステップにより特定された個体に関連付けて、この個体の行動特性に関する情報をデータベースに登録する行動登録ステップと、
コンピュータが、前記データベースに登録された各個体の行動特性に応じて、警告を出力する警告ステップと
を有する野生動物監視方法。
【請求項8】
既定の場所で画像を撮影する撮影ステップと、
前記撮影ステップにより撮影された画像に基づいて、野生動物の個体を特定する個体特定ステップと、
前記個体特定ステップにより特定された個体に関連付けて、この個体の行動特性に関する情報をデータベースに登録する行動登録ステップと、
前記データベースに登録された各個体の行動特性に応じて、警告を出力する警告ステップと
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野生動物監視システム、野生動物監視方法、及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、撮像部と、検知対象に関連する複数の学習モデルを記憶するメモリと、複数の前記学習モデルより選択された学習モデルに基づいて人工知能を構築し、構築した前記人工知能を用いて、前記撮像部が撮影する映像から前記検知対象を検知する処理部と、を有する監視カメラが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、道路上の所定領域を対象に移動物体を捉え、その移動軌跡をもとに路上行動動物の存在有無を判定する処理手段と、前記処理手段にて行動動物が存在することを判定したとき、前記道路上の走行車両に対して所定の警告メッセージを提示する表示手段とを具備してなることを特徴とする動物出現報知システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-113964号公報
【文献】特開2002-260150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、熊等の野生動物の行動パターンをより精度高く検知し、地域住民に警告する野生動物監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る野生動物監視システムは、既定の場所で画像を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により撮影された画像に基づいて、野生動物の個体を特定する個体特定手段と、前記個体特定手段により特定された個体に関連付けて、この個体の行動特性に関する情報をデータベースに登録する行動登録手段と、前記データベースに登録された各個体の行動特性に応じて、警告を出力する警告手段とを有する。
【0007】
好適には、前記撮影手段は、動画像を撮影し、前記個体特定手段は、前記撮影手段により撮影された動画像に基づいて、熊の個体を特定し、前記撮影手段により撮影された動画像に基づいて、熊の行動パターンを特定する行動パターン特定手段をさらに有し、前記行動登録手段は、前記個体特定手段により特定された個体に関連付けて、この個体の行動パターンをデータベースに登録し、前記警告手段は、前記データベースに登録された各個体の行動パターンに応じた範囲の住民の端末に対して、警告情報を送信する。
【0008】
好適には、前記撮影手段は、動画像を撮影し、前記個体特定手段は、前記撮影手段により撮影された動画像に基づいて、熊の個体を特定し、前記個体特定手段により熊の個体が特定された場合に、この個体に対して威嚇音を出力する威嚇音出力手段をさらに有する。
【0009】
好適には、前記行動登録手段は、前記個体特定手段により特定された個体に関連付けて、この個体が撮影された場所を示す位置情報をデータベースに登録し、前記データベースに登録された位置情報に基づいて、各個体の行動範囲を特定する行動範囲特定手段をさらに有し、前記警告手段は、前記行動範囲特定手段により特定された行動範囲に対応する地域に対して、警告を出力する。
【0010】
好適には、前記行動登録手段は、前記個体特定手段により特定された個体に関連付けて、この個体が撮影された場所を示す位置情報をデータベースに登録し、前記データベースに登録された位置情報に基づいて、人の居住地域における行動履歴の有無を判定する行動履歴判定手段をさらに有し、前記警告手段は、前記行動履歴判定手段により行動履歴が有ると判定された個体の位置情報に応じて、警告を出力する。
【0011】
好適には、前記個体特定手段は、特定された個体が成獣であるか幼獣であるかを特定し、前記行動登録手段は、前記個体特定手段により特定された個体に関連付けて、この個体が撮影された場所を示す位置情報と、特定された成獣でるか幼獣であるかとをデータベースに登録し、前記データベースに登録された情報に基づいて、幼獣と行動を共にする成獣であるか否かを判定する親子判定手段をさらに有し、前記警告手段は、前記親子判定手段による判定結果に応じて、警告を出力する。
【0012】
本発明に係る野生動物監視方法は、既定の場所で画像を撮影する撮影ステップと、前記撮影手段により撮影された画像に基づいて、野生動物の個体を特定する個体特定ステップと、前記個体特定手段により特定された個体に関連付けて、この個体の行動特性に関する情報をデータベースに登録する行動登録ステップと、前記データベースに登録された各個体の行動特性に応じて、警告を出力する警告ステップとを有する。
【0013】
本発明に係るプログラムは、既定の場所で画像を撮影する撮影ステップと、前記撮影手段により撮影された画像に基づいて、野生動物の個体を特定する個体特定ステップと、前記個体特定手段により特定された個体に関連付けて、この個体の行動特性に関する情報をデータベースに登録する行動登録ステップと、前記データベースに登録された各個体の行動特性に応じて、警告を出力する警告ステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熊等の野生動物の行動パターンをより精度高く検知し、地域住民に警告する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】野生動物監視システム1の全体構成を説明する図である。
図2】野生動物監視システム1における、撮影装置3の機能構成を説明する図である。
図3】野生動物監視システム1における、野生動物監視装置7の機能構成を説明する図である。
図4】(a)は、熊出現管理DB600により管理される熊出現情報を例示する表であり、(b)は、住民情報管理DB610により管理される地域住民情報を例示する表である。
図5】野生動物監視システム1による警告内容を例示する図である。
図6】野生動物監視システム1による野生動物監視処理(S10)を説明するフローチャートである。
図7】変形例の野生動物監視システム1における、野生動物監視装置7の機能構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、野生動物監視システム1の全体構成を説明する図である。
図1に例示するように、野生動物監視システム1は、一、又は、複数の撮影装置3、各撮影装置3に接続している発報装置5、野生動物監視装置7、ユーザ端末9を含み、ネットワーク11を介して互いに接続している。
撮影装置3は、既定の場所で画像を撮影する監視カメラである。具体的には、撮影装置3は、野生動物が出現する里山に複数設置された監視カメラであり、動画像を撮影する。撮影装置3は、熊が出現すると推測される場所、例えば、熊の食糧があるゴミ置き場、木の実のなる山林、人の居住地域と里山との境界周辺等に設置される。撮影装置3は、例えば、GPS機能が搭載され、動画像には、位置情報が関連付けられている。撮影装置3は、撮影した動画像を野生動物監視装置7に送信する。図1に例示するように、本実施形態では、撮影装置3は、里山に出現する熊を撮影する。撮影装置3は、熊を検知した場合に、発報装置5に熊への発報を通知する。
本例において、画像が、動画像である場合を具体例として説明する。
【0017】
発報装置5は、例えば、撮影装置3が設置された構造物に設置され、発報装置5は、有線または無線によって、撮影装置3と通信する。具体的には、発報装置5は、スピーカであり、撮影装置3から通知される野生動物の検知結果に応じて威嚇音を出力する。本例において、発報装置5は、スピーカである場合について説明するが、これに限定されず、発報装置5は、撮影装置3から熊を検知したことを示す情報を受信した場合、熊を追い出すための音、周波数、光を出力してもよい。なお、発報装置5は、撮影装置3が設置された構造物とは別の構造物に設置されてもよい。
野生動物監視装置7は、コンピュータ端末であり、撮影装置3により送信された動画像を受信し、野生動物の個体を特定し、特定した個体に応じた警告をユーザ端末9に行う。本例において、野生動物が熊である場合を具体例として説明する。
ユーザ端末9は、ユーザが操作するコンピュータ端末であり、具体的には、スマートフォン、タブレット端末、またはパーソナルコンピュータである。ユーザ端末9は、野生動物監視装置7より野生動物が出現したことの警告を受信する。
【0018】
図2は、撮影装置3の機能構成を例示する図である。
図2に例示するように、撮影装置3には、動画像撮影プログラム30がインストールされる。
動画像撮影プログラム30は、熊検知部300、及び動画像送信部302を有する。なお、本プログラムの一部又は全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェアによって実現されてもよく、また、OS(Operating System)の機能を一部借用して実現されてもよい。
【0019】
熊検知部300は、撮影中の動画像データ内に写っている熊を検知する。具体的には、熊検知部302は、既に登録されている熊の動画像と類似する物体が写っているか否かを検知する。熊検知部300は、動画像送信部302へ熊を検知したことを通知する。
動画像送信部302は、熊検知部300により熊が検知された場合に、熊の写っている動画像データを野生動物監視装置7へ送信する。
【0020】
図3は、野生動物監視装置7の機能構成を例示する図である。
図3に例示するように、野生動物監視装置7には、野生動物監視プログラム70がインストールされると共に、熊出現管理データベース600(熊出現管理DB600)、及び住民情報管理DB610(住民情報管理DB610)が構成される。なお、これらの機能構成は、撮影装置3の中に構成されてもよいし、クラウドサーバ上で構成されてもよい。
野生動物監視プログラム70は、動画像受信部700、個体特定部702、行動パターン特定部704、行動登録部706、行動範囲特定部708、行動履歴判定部710、親子判定部712、危険度算出部714、警告部716、及び威嚇音出力部718を有する。なお、本プログラムの一部又は全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェアによって実現されてもよく、また、OS(Operating System)の機能を一部借用して実現されてもよい。
【0021】
動画像受信部700は、撮影装置3により撮影された野生動物の動画像を受信する。具体的には、撮影装置3により撮影された熊の動画像を受信し、個体特定部702及び行動パターン特定部704へ通知する。
個体特定部702は、撮影装置3により撮影された画像に基づいて、野生動物の個体を特定する。具体的には、個体特定部702は、動画像に写った熊の身体的特徴、例えば、体格、毛の模様、顔に基づいて、これまでに登録されている熊であるか否かを判別する。これまでに登録されている熊でない場合に、個体特定部702は、新たな熊として熊出現管理DB600に登録する。さらに、個体特定部702は、特定された熊の個体が成獣であるか幼獣であるかを特定する。例えば、個体特定部702は、動画像に写った熊の大きさ、または周辺に残っている足跡等から熊が成獣であるか幼獣であるかを特定する。
【0022】
行動パターン特定部704は、撮影装置3により撮影された動画像に基づいて、熊の行動パターンを特定する。具体的には、行動パターン特定部704は、動画像に基づいて、熊がとっている行動を判別し、特定する。具体的には、行動パターン特定部704は、熊の行動が食料探しであるか否か、食料探しである場合は、どんな食料を探しているのか、熊が威嚇行動をとっているのか、暴れているのか等の熊の行動を特定する。
【0023】
行動登録部706は、個体特定部702により特定された個体に関連付けて、この個体の行動特性に関する情報を、熊出現管理DB600に登録する。具体的には、行動登録部706は、個体特定部702により特定された個体に関連付けて、この個体の行動パターンを熊出現管理DB600に登録する。ここで、熊の行動パターンとは、具体的には、「田畑へ侵入して食料を探す」、「熊が好む木の実のなる山林へ出没」、「ゴミ捨て場を漁る」等の熊の行動内容である。
さらに、行動登録部706は、個体特定部702により特定された個体に関連付けて、この個体が撮影された場所を示す位置情報を熊出現管理DB600に登録する。位置情報とは、撮影装置3が設置されている場所の緯度及び経度の座標、または熊の出現位置の緯度及び経度の座標をいう。
また、行動登録部706は、個体特定部702により特定された個体に関連付けて、この個体が撮影された場所を示す位置情報と、特定された熊が成獣であるか幼獣であるかを熊出現管理DB600に登録する。
【0024】
行動範囲特定部708は、行動登録部706により熊出現管理DB600に登録された位置情報に基づいて、各個体の行動範囲を特定する。具体的には、行動範囲特定部708は、同一の熊の個体が複数の撮影装置3により撮影され、位置情報が複数登録されているか否かを確認し、複数登録されている場合に、登録されている複数の位置情報に基づいて、熊の行動範囲を特定する。
行動履歴判定部710は、行動登録部706により熊出現管理DB600に登録された位置情報に基づいて、人の居住地域における行動履歴の有無を判定する。具体的には、行動履歴判定部710は、熊出現管理DB600に登録される位置情報から既定の範囲内に、住民情報管理DB610に登録される位置情報(住民の居住場所)が存在するか否か判別する。行動履歴判定部710は、熊の位置情報から既定の範囲内に、住民の居住地域の位置情報が存在する場合に、その熊は人の居住地域において行動履歴があると判定する。一度人の居住地域において、人の食べ物を食べたことのある熊は、再度同じ場所に出現し、人を襲う虞があるため、行動履歴判定部710による人の居住地域における行動履歴の有無の判定は、より精度の高い危険度の把握に役立つ。
【0025】
親子判定部712は、熊出現管理DB600に登録された情報に基づいて、幼獣と行動を共にする成獣であるか否かを判定する。具体的には、親子判定部712は、撮影装置3により撮影された動画像に2体の熊を検知した場合、又は熊出現管理DB600に登録されている熊の幼獣と成獣との出現した位置情報とが既定の範囲内にある場合に、熊の成獣と幼獣とが行動を共にしていると判定する。
危険度算出部714は、熊の危険度を、行動パターン特定部704により特定された行動パターンと、親子判定部712により判定された熊の幼獣と行動を共にしているか否かとに基づいて、算出する。具体的には、行動パターン特定部704により、「威嚇している」、「暴れている」と行動が特定された場合、または親子判定部712により熊の幼獣と行動を共にしていると判定された場合には、危険度が高いことが推定されるため、危険度算出部714は、より高い危険度を算出する。危険度は、数値により表されてもよいし、危険度の大きさを「大」「中」「小」のように表現してもよい。
【0026】
警告部716は、行動登録部706により熊出現管理DB600に登録された各個体の行動特性に応じて、警告を出力する。さらに、警告部716は、熊出現管理DB600に登録された各個体の行動パターンに応じた範囲の住民の端末に対して、警告情報を送信する。具体的には、警告部716は、行動パターンが特定の餌場を目的地としていない食料探しである場合、動画像の撮影場所からさらに食料を求め、人の居住地域に侵入する虞があるため、より広い範囲の住民の端末に対して警告情報を送信する。また、行動パターンが、特定の餌場を目的地とした食料探しである場合は、警告部716は、特定の餌場周辺の住民の端末に対して警告情報を送信する。さらに、行動パターンが威嚇である場合は、熊が撮影場所から遠く離れて人の居住地域に侵入する危険性は低いと判断し、警告部716は、熊の位置情報の周辺の住民のユーザ端末9に対して警告情報を送信する。
【0027】
さらに、警告部716は、行動範囲特定部708により特定された行動範囲に対応する地域に対して、警告を出力する。
また、警告部716は、行動履歴判定部710により住民の居住地域での行動履歴が有ると判定された個体の位置情報に応じて、警告を出力する。 そして、警告部716は、親子判定部712による判定結果に応じて、警告を出力する。具体的には、警告部716は、警告の内容に幼獣と行動を共にしている旨を送信内容に加え、地域住民に避難を促す。
威嚇音出力部718は、個体特定部702により熊の個体が特定された場合に、この個体に対して威嚇音を出力する。具体的には、威嚇音出力部718は、熊の個体に対して威嚇音を出力するよう発報装置5に通知する。また、これに限定されず、威嚇音出力部718は、撮影装置3に対して熊の個体が特定されたことを通知し、撮影装置3が発報装置5に対して威嚇音を出力するよう通知してもよい。
【0028】
図4(a)は、熊出現管理DB600により管理される熊出現情報を例示する表であり、(b)は、住民情報管理DB610により管理される地域住民情報を例示する表である。
図4(a)に例示するように、熊出現管理DB600では、熊出現情報を管理する。熊出現情報には、個々の熊を識別する個体ID、熊を撮影した撮影装置3の識別情報である撮影装置3ID、撮影された動画像に関連付けられる位置情報、撮影された熊の行動パターン、撮影された熊が成獣であるか幼獣であるか、撮影された熊の行動範囲、撮影された熊が幼獣と行動を共にするか否か、撮影された熊の人の居住地域への侵入履歴の有無が含まれ、これらが関連付けられている。
また、図4(b)に例示するように、住民情報管理DB610では、地域住民情報を管理する。地域住民情報には、住民を識別する住民ID、居住地域、居住地域の位置情報、住民の連絡先情報が含まれ、これらが関連付けられている。
【0029】
図5は、野生動物監視システム1による警告内容を例示する図である。
図5に例示するように、野生動物監視装置7の警告部716は、行動登録部706により熊出現管理DB600に登録された熊の個体の行動特性に応じて、警告内容を作成し、住民情報管理DB610に管理される連絡先情報に基づいて、警告を出力する。具体的には、警告部716は、熊の出現日時、熊の個体情報(成獣又は幼獣、何頭出現したか、幼獣を連れているか)、熊の出現場所、熊の行動、熊の危険度、及び熊の位置情報を示した地図をユーザ端末9に送信する。また、警告部716は、危険度算出部714により算出された危険度が高く、熊の行動が人に危害を加える虞がある場合に、熊の行動が危険であること、出現場所へ近づかないことを警告内容に含める。
【0030】
図6は、野生動物監視システム1による野生動物監視処理(S10)を説明するフローチャートである。
図6に例示するように、ステップ100(S100)において、撮影装置3の熊検知部300は、撮影した動画像のデータ内に写っている熊を検知する。撮影装置3の動画像送信部302は、検知した熊が写っている動画像データを、野生動物監視装置7へ送信する。
ステップ105(S105)において、野生動物監視装置7の動画像受信部700は、動画像送信部302により送信された動画像データを受信し、野生動物監視装置7の個体特定部702は、動画像データに写っている熊の身体的特徴に基づいて、既に熊出現管理DB600において管理されている熊であるか、新たに登録が必要な熊であるかを判別する。
【0031】
ステップ110(S110)において、野生動物監視装置7の威嚇音出力部718は、個体特定部702により熊の個体が特定された場合に、熊の個体に対して威嚇音を出力するよう発報装置5に通知する。発報装置5は、威嚇音出力部718による威嚇音の出力通知に応じて、熊に対して威嚇音を出力する。
ステップ115(S115)において、個体特定部702は、検知された熊が成獣であるか幼獣であるかを、動画像に写った熊の大きさ、または周辺に残っている足跡等から判別する。
ステップ120(S120)において、野生動物監視装置7の行動パターン特定部704は、動画像データにおける熊の行動を特定する。具体的には、行動パターン特定部704は、熊の行動の種類を分類する。
【0032】
ステップ125(S125)において、野生動物監視装置7の行動範囲特定部708は、検知された熊の行動範囲を特定する。具体的には、個体特定部702により特定された熊が既に登録済みである場合に、熊出現管理DB600に登録済みの同一の熊が出現した位置情報と、今回熊が出現した位置情報とに基づいて、熊の行動範囲を特定する。また、行動範囲特定部708は、行動パターン特定部704により特定された熊の行動パターンに基づいて、熊の行動範囲を推測してもよい。例えば、「ごみ置き場を漁りに来ている」、「食料を求め田畑への侵入している」等、目的地が特定されている行動パターンをとっている場合に、熊の行動範囲は、ゴミ置き場周辺、または田畑周辺が行動範囲として特定してもよい。
ステップ130(S130)において、野生動物監視装置7の行動履歴判定部710は、検知された熊における、熊出現管理DB600に登録された位置情報に基づいて、人の居住地域における行動履歴の有無を判定する。
【0033】
ステップ135(S135)において、野生動物監視装置7の親子判定部712は、個体特定部702により特定された熊が幼獣と行動を共にしているか否かを判定する。具体的には、親子判定部712は、熊が検知された動画像データ中に熊の幼獣が写っているか否かを判別する。また、親子判定部712は、熊出現管理DB600に既に登録されている情報に基づいて、熊の幼獣と行動を共にしていたか否かを判別する。
ステップ140(S140)において、野生動物監視装置7の行動登録部706は、個体特定部702により特定された熊の個体を、特定された熊が写っている動画像データの位置情報と、行動パターン特定部704により特定された熊の行動パターンと、行動範囲特定部708により特定された熊の行動範囲と、個体特定部702により判定された熊が成獣であるか幼獣であるかと、親子判定部712により特定された熊の幼獣と行動を共にしているか否かと、行動履歴判定部710により判定された人の居住地域での行動履歴の有無とに関連付けて熊出現管理DB600に登録する。既に登録済みの個体である場合は、登録済みの個体IDに関連付けて特定された熊の出現情報を熊出現管理DB600に追加登録する。
【0034】
ステップ145(S145)において、危険度算出部714は、個体特定部702により特定された熊の危険度を、熊出現管理情報に基づいて、算出する。具体的には、行動パターン特定部704により、「威嚇している」、「暴れている」と行動が特定された場合、親子判定部712により熊の幼獣と行動を共にしていると判定された場合、または人の居住地域への侵入履歴がある場合には、危険度が高いことが推定されるため、危険度算出部714は、より高い危険度を算出する。
ステップ150(S150)において、警告部716は、行動パターン特定部704により特定された熊の行動パターンに応じた範囲の住民の端末に対して警告情報を送信する。具体的には、警告部716は、危険度算出部714により算出された危険度と、熊が出現した日時と、位置情報とを、住民情報管理DB610に格納される熊の行動範囲に対応する地域住民に、住民の連作先情報に基づいて送信する。
【0035】
以上説明したように、野生動物監視システム1は、里山に複数設置された撮影装置3により熊を検知した場合に、野生動物監視装置7により熊の個体を特定し、熊の個体別の行動特性を管理するため、熊の個体別に警告を行うことができる。また、野生動物監視システム1は、熊の危険度に基づいて、警告を行う地域の範囲を広げたり、警告内容を変更するため、より信頼度の高い警告を地域住民へ行うことができる。
【0036】
上記実施形態に限定されず、野生動物監視装置7は、機械学習を用いて熊の個体、行動パターンを特定し、危険度を算出してもよい。具体的は、野生動物監視装置7には、野生動物監視プログラム80がインストールされ、個体特定部702、行動パターン特定部704、親子判定部712に代わり、個体特定部802、行動パターン特定部804、親子判定部812を有し、行動範囲特定部708及び危険度算出部714に代わり、AI処理部814を有する。
個体特定部802、行動パターン特定部804、親子判定部812は、ディープラーニングを用いて、熊の個体及び行動パターンを特定し、親子判定を行う。
【0037】
AI処理部814は、個体特定部802、行動パターン特定部804、親子判定部812により特定された情報に基づいて、人工知能を用いて熊の危険度及び行動範囲を算出する。具体的には、AI処理部814は、熊に関するデータを組み合わせた入力データに基づいて、熊の危険度と行動範囲とを推測する。熊に関するデータとは、「各行動パターンをとっている熊の特徴」、「時間別の熊の行動の特徴」、「時期による熊の行動の特徴」、及び「幼獣を連れた熊の成獣の特徴」である。入力データの組み合わせを変えることで、より精度の高い危険度を算出し、地域住民に警告することが可能である。
ここで、「各行動パターンをとっている熊の特徴」とは、「食料探し」「威嚇行動」「興奮している時の行動」「幼獣を守る行動」等の動画像データをいう。「時間別の熊の行動の特徴」とは、「夜間の食料探し」「日中の威嚇行動」等の動画像データをいう。「時期による熊の行動の特徴」とは、「春の繁殖期の熊の行動」、「夏の食べ物が少ない時の熊の行動」、「秋の冬眠に向けた食料集めの行動」、「冬の冬眠中及び出産の行動」等の動画像データをいう。入力データを事前に入力することで、野生動物監視装置7は、より精度の高い警告を実現することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 野生動物監視システム
3 撮影装置
5 発報装置
7 野生動物監視装置
9 ユーザ端末
11 ネットワーク
30 動画像撮影プログラム
70 野生動物監視プログラム
300 熊検知部
302 動画像送信部
600 熊出現管理データベース
610 住民情報管理データベース
700 動画像受信部
702、802 個体特定部
704、804 行動パターン特定部
706 行動登録部
708 行動範囲特定部
710 行動履歴判定部
712、812 親子判定部
714 危険度算出部
716 警告部
718 威嚇音出力部
814 AI処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7