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特許7610218磁気ギアード回転機械、発電システム、および磁極片回転子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】磁気ギアード回転機械、発電システム、および磁極片回転子
(51)【国際特許分類】
   H02K 16/02 20060101AFI20241225BHJP
   F16H 49/00 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
H02K16/02
F16H49/00 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021058461
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022155119
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508317402
【氏名又は名称】マグノマティックス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MAGNOMATICS LIMITED
【住所又は居所原語表記】Park House, Bernard Road, Sheffield, South Yorkshire S2 5BQ Great Britain
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】池見 健
(72)【発明者】
【氏名】松下 崇俊
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 幹人
(72)【発明者】
【氏名】カルバリー、 スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】パウエル、 デビッド
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-19365(JP,A)
【文献】特開2012-205348(JP,A)
【文献】国際公開第2012/114368(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0269770(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 16/02
F16H 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に並ぶように配置される複数の固定子磁石を含む固定子と、
前記周方向に並ぶように配置され、磁極数が前記複数の固定子磁石よりも少ない複数の回転子磁石を含む回転子と、
前記固定子と前記回転子との間の径方向位置において前記周方向に並ぶように配置される複数の磁極片を含む磁極片回転子と、
を備える磁気ギアード回転機械であって、
各々の前記磁極片は、前記磁気ギアード回転機械の径方向断面において、
第1エアギャップを隔てて前記回転子と対向する前記磁極片の第1面、及び、第2エアギャップを隔てて前記固定子と対向する前記磁極片の第2面を形成する外側縁と、
前記外側縁に囲まれるように径方向にて前記第1面と前記第2面との間に位置し、前記磁極片の内部の1以上の空隙を画定する1以上の内側縁と、
を含み、
前記径方向断面において、前記第1面と前記空隙との間の前記径方向における最短距離である第1距離は、前記第2面と前記空隙との間の前記径方向における最短距離である第2距離よりも短い
磁気ギアード回転機械。
【請求項2】
各々の前記磁極片は、前記磁気ギアード回転機械の軸方向に積層された複数の電磁鋼板を含み、
前記内側縁は、前記径方向断面において前記空隙を挟んで対向する一対の直線部を含み、
前記一対の直線部間の前記空隙の幅は、各々の前記電磁鋼板の厚さの4倍以下である
請求項1に記載の磁気ギアード回転機械。
【請求項3】
各々の前記磁極片は、前記磁気ギアード回転機械の軸方向に積層された複数の電磁鋼板を含み、
前記内側縁は、前記径方向断面において前記空隙を挟んで対向する一対の直線部を含み、
前記一対の直線部間の前記空隙の幅は、各々の前記電磁鋼板の厚さの2倍以上である
請求項1または2に記載の磁気ギアード回転機械。
【請求項4】
前記第1距離が、前記回転子から前記外側縁までの最短の径方向距離よりも短い請求項1から3のいずれかに記載の磁気ギアード回転機械。
【請求項5】
各々の前記磁極片は、前記内側縁により画定される前記空隙の少なくとも一部を形成する1以上のスリットを含む請求項1から4のいずれかに記載の磁気ギアード回転機械。
【請求項6】
前記スリットは、前記第1面に開口する1以上の開口スリットを含む請求項5に記載の磁気ギアード回転機械。
【請求項7】
前記磁極片回転子は、
前記複数の磁極片を挟んで軸方向の両側にそれぞれ位置する一対のエンドリングと、
前記一対のエンドリング間で前記軸方向に延びる複数の連結バーと
を備え、
各々の前記連結バーは、前記空隙の一部として各々の前記磁極片に形成される軸方向孔内に配置される
請求項1から6のいずれかに記載の磁気ギアード回転機械。
【請求項8】
各々の前記磁極片は、前記内側縁により画定される前記空隙の少なくとも一部を形成する1以上のスリットを含み、
前記スリットは、前記軸方向孔に連通する1以上の連通スリットを含む請求項7に記載の磁気ギアード回転機械。
【請求項9】
前記連通スリットは、前記第1面に開口し、
前記スリットは、前記連通スリットから前記周方向にてずれた位置で前記第1面に開口する1以上の開口スリットを含む請求項8に記載の磁気ギアード回転機械。
【請求項10】
前記スリットは、1つの前記連通スリットを挟んで互いに対称な位置に配置される2つの前記開口スリットを含む請求項9に記載の磁気ギアード回転機械。
【請求項11】
前記連通スリットは、
前記第1面に開口する第1連通スリットと、
前記第1連通スリットに対して前記周方向にてずれた位置、且つ前記第1面に対して前記径方向にてずれた位置に配置される1以上の第2連通スリットと
を含む請求項8に記載の磁気ギアード回転機械。
【請求項12】
前記連通スリットは、1つの前記第1連通スリットを挟んで互いに対称な位置に配置される2つの前記第2連通スリットを含む請求項11に記載の磁気ギアード回転機械。
【請求項13】
前記スリットは、前記軸方向孔に対して前記周方向にてずれた位置に配置され、前記周方向における前記磁極片の端面に開口する1以上の端面開口スリットを
を含む請求項8に記載の磁気ギアード回転機械。
【請求項14】
前記スリットは、1つの前記連通スリットを挟んで互いに対称な位置に配置される2つの前記端面開口スリットを含む請求項13に記載の磁気ギアード回転機械。
【請求項15】
各々の前記磁極片は、前記磁気ギアード回転機械の軸方向における全範囲にわたって、前記空隙を画定する前記内側縁を含む請求項1から14のいずれかに記載の磁気ギアード回転機械。
【請求項16】
原動機と、
前記原動機からの入力によって駆動されて発電するための磁気ギア発電機としての、請求項1から15のいずれかに記載の磁気ギアード回転機械と
を備える発電システム。
【請求項17】
周方向に並ぶように配置された複数の磁極片と、
複数の前記磁極片と前記周方向に交互に配置される複数のホルダと
を備え、
前記磁極片は、径方向断面において、
径方向の一方側を向く第1面、及び、前記径方向の他方側を向く第2面を形成する外側縁と、
前記外側縁に囲まれるように前記径方向にて前記第1面と前記第2面との間に位置し、前記磁極片の内部の1以上の空隙を画定する1以上の内側縁と、
を含み、
前記径方向断面において、前記第1面と前記空隙との間の前記径方向における最短距離である第1距離は、前記第2面と前記空隙との間の前記径方向における最短距離である第2距離よりも短い
磁極片回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気ギアード回転機械、発電システム、および磁極片回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの回転子の間で回転数を変換してトルクを伝達する磁気ギアード回転機械が公知である。例えば、特許文献1で開示される磁気ギアード回転機械は、径方向内側から順に、複数の永久磁石を支持する内部回転子、複数の磁極片を含む外部回転子、および固定子を備える。固定子には、複数の巻線と複数の固定子磁石とが設けられる。巻線で流れる三相交流に応じて生じる回転磁界によって内部回転子が回転すると、内部回転子の永久磁石で生じる磁束が磁極片によって変調される。変調された磁場と固定子磁石の磁場とによって、外部回転子は回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5643857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気ギアード回転機械の稼働時、軸方向に流れる磁束が磁極片を通過すると、磁極片では渦電流が流れる結果、渦電流損失が発生する。渦電流損失を低減させるための対策が求められるが、この対策が複数の固定子磁石における磁路になるべく影響を与えないことが好ましい。
【0005】
本開示は、固定子磁石の磁路への影響を抑制しつつ、渦電流損失を低減できる磁気ギアード回転機械、発電システム、磁極片回転子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の少なくとも一実施形態に係る磁気ギアード回転機械は、
周方向に並ぶように配置される複数の固定子磁石を含む固定子と、
前記周方向に並ぶように配置され、磁極数が前記複数の固定子磁石よりも少ない複数の回転子磁石を含む回転子と、
前記固定子と前記回転子との間の径方向位置において前記周方向に並ぶように配置される複数の磁極片を含む磁極片回転子と、
を備える磁気ギアード回転機械であって、
各々の前記磁極片は、前記磁気ギアード回転機械の径方向断面において、
第1エアギャップを隔てて前記回転子と対向する前記磁極片の第1面、及び、第2エアギャップを隔てて前記固定子と対向する前記磁極片の第2面を形成する外側縁と、
前記外側縁に囲まれるように径方向にて前記第1面と前記第2面との間に位置し、前記磁極片の内部の1以上の空隙を画定する1以上の内側縁と、
を含み、
前記径方向断面において、前記第1面と前記空隙との間の前記径方向における最短距離である第1距離は、前記第2面と前記空隙との間の前記径方向における最短距離である第2距離よりも短い。
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係る発電システムは、
原動機と、
前記原動機からの入力によって駆動されて発電するための磁気ギア発電機としての上記磁気ギアード回転機械と
を備える。
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係る磁極片回転子は、
周方向に並ぶように配置された複数の磁極片と、
複数の前記磁極片と前記周方向に交互に配置される複数のホルダと
を備え、
前記磁極片は、径方向断面において、
径方向の一方側を向く第1面、及び、前記径方向の他方側を向く第2面を形成する外側縁と、
前記外側縁に囲まれるように前記径方向にて前記第1面と前記第2面との間に位置し、前記磁極片の内部の1以上の空隙を画定する1以上の内側縁と、
を含み、
前記径方向断面において、前記第1面と前記空隙との間の前記径方向における最短距離である第1距離は、前記第2面と前記空隙との間の前記径方向における最短距離である第2距離よりも短い。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、固定子磁石の磁路への影響を抑制しつつ、渦電流損失を低減できる磁気ギアード回転機械、発電システム、磁極片回転子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】一実施形態に係る磁気ギアード回転機械を示す概略図である。
図1B】他の実施形態に係る磁気ギアード回転機械を示す概略図である。
図2】一実施形態に係る磁気ギアード回転機械の径方向断面図である。
図3】一実施形態に係る磁極片回転子の斜視図である。
図4A】一実施形態に係る磁極片を示す断面図である。
図4B】他の実施形態に係る磁極片を示す断面図である。
図4C】他の実施形態に係る磁極片を示す断面図である。
図4D】他の実施形態に係る磁極片を示す断面図である。
図4E】他の実施形態に係る仕切部材を示す断面図である。
図4F】他の実施形態に係る仕切部材を示す断面図である。
図4G】他の実施形態に係る仕切部材を示す断面図である。
図5】一実施形態に係る渦電流損失の低減効果を示す図ある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0012】
(磁気ギアード回転機械の概要)
図1A及び図1Bは、それぞれ、磁気ギアード回転機械の例を示す概略図である。ここで、図1A及び図1Bにおいて、「軸方向」は磁気ギアード回転機械10の磁極片回転子30および回転子40の回転軸(rotational axis)に平行な方向であり、「径方向」は磁極片32および回転子40の回転軸(rotational axis)に直交する方向である。
一実施形態では、図1Aに示すように、磁気ギアード回転機械10は、原動機2からの入力によって駆動されて発電するための磁気ギアード発電機10Aである。磁気ギアード発電機10Aは、発電により生成した電力Pを例えば電力系統であってもよい電力供給先4に向けて供給するように構成される。
他の実施形態では、図1Bに示すように、磁気ギアード回転機械10は、例えば電力系統であってもよい電力供給源6からの電力Pの供給を受けて、回転機械8を駆動するように構成される磁気ギアードモータ10Bである。
【0013】
図1Aに示す実施形態では、磁気ギアード発電機10Aは、発電システム1の一部を構成する。発電システム1は、例えば、風力発電システムや潮流発電システムのような再生可能エネルギー発電システムであってもよい。発電システム1が風力発電システムである場合、原動機2は風車ロータである。発電システム1が潮流発電システムである場合、原動機2は水車ロータである。
磁気ギアード発電機10Aは、固定子磁石22及び固定子巻線24を含む固定子20と、磁極片32を含む磁極片回転子30と、回転子磁石42を含む回転子40とを備える。図1Aに示す例では、固定子20は、軸受B1を介して原動機2の回転シャフト3を支持するハウジング21の内部に配置される。磁極片回転子30は、原動機2の回転シャフト3とともに回転するように構成される。磁極片回転子30の磁極片32は、軸方向に積層された複数の電磁鋼板35を含む。磁極片回転子30は、磁極片32の軸方向両端にそれぞれ設けられるエンドリング34を含み、各々のエンドリング34が回転シャフト3に連結される。回転子40は、回転子磁石42の軸方向両端にそれぞれ設けられるエンドプレート44を含む。各々のエンドプレート44は、回転子40が回転シャフト3及び磁極片回転子30よりも高速で回転することを許容するように、軸受B2を介して回転シャフト3(又は回転シャフト3とともに回転する磁極片回転子30)に取り付けられる。回転子40は、磁極片32及びエンドリング34を含む磁極片回転子30と回転シャフト3とによって囲まれる領域内に設けられる。
なお、図1Aに示す実施形態では、磁気ギアード発電機10Aは、径方向の内側に向かって、固定子20、磁極片回転子30、及び回転子40の順に配置された構成を有する。別の実施形態では、磁気ギアード発電機10Aは、径方向の内側に向かって、回転子40、磁極片回転子30、及び固定子20の順に配置された構成を有する。この場合、円筒状の回転シャフト3の径方向内側に、回転子40、磁極片回転子30及び固定子20が配置される。
【0014】
上述の磁気ギアード発電機10Aは、磁気ギアと発電機とを一体化したものであり、高調波型磁気ギア原理および電磁誘導を利用することで、原動機2からの機械的入力を電力に変換するものである。
例えば、磁気ギアード発電機10Aにおける発電は以下の原理により行われてもよい。原動機2の回転シャフト3とともに回転する磁極片回転子(低速ロータ)30の磁極片32によって、固定子磁石22の磁束が変調され、変調された磁場から回転子磁石42が磁力を受けて回転子(高速ロータ)40が回転する。このとき、磁極片回転子30に対する回転子40の回転数の比(増速比)は、回転子磁石42の極対数Nに対する磁極片32の磁極数Nの比(=N/N)で表される。回転子40が回転することで、電磁誘導によって固定子巻線24に電流が発生する。なお、磁極片32の磁極数Nは、固定子磁石22の極対数Nよりも多い。
磁気ギアード発電機10Aの稼働時、磁気ギアード発電機10Aの内部では、N次の磁束(主磁束)、及び、N次よりも高次な高調波磁束(例えば、N+N次の磁束)など種々の磁束が生じ得る。これらの磁束の一部は、例えば固定子磁石22を避けるために、磁極片32を軸方向に通過する漏れ磁束Lfになる。漏れ磁束Lfが生じると、各電磁鋼板35では、面内方向に渦電流が発生し得る。磁極片32のうち例えば軸方向両端部にある電磁鋼板35では、比較的大きな渦電流が発生し得る。
【0015】
図1Bに示す実施形態において、磁気ギアードモータ10Bの基本構成は、図1Aに示す磁気ギアード発電機10Aと共通する。
すなわち、磁気ギアードモータ10Bは、固定子磁石22及び固定子巻線24を含む固定子20と、磁極片32を含む磁極片回転子30と、回転子磁石42を含む回転子40とを備える。図1Bに示す例では、固定子20は、軸受B1を介して回転機械8の回転シャフト9を支持するハウジング21の内部に固定される。磁極片回転子30の磁極片32は、軸方向に積層された複数の電磁鋼板35を含む。磁極片回転子30は、磁極片32の軸方向両端にそれぞれ設けられるエンドリング34を含み、各々のエンドリング34が回転シャフト9に連結される。回転子40は、回転子磁石42の軸方向両端にそれぞれ設けられるエンドプレート44を含む。各々のエンドプレート44は、回転子40が回転シャフト9及び磁極片回転子30よりも高速で回転することを許容するように、軸受B2を介して回転シャフト9(又は回転シャフト9とともに回転する磁極片回転子30)に取り付けられる。回転子40は、磁極片32及びエンドリング34を含む磁極片回転子30と回転シャフト9とによって囲まれる領域内に設けられる。
図1Bに示す実施形態では、磁気ギアードモータ10Bは、径方向の内側に向かって、固定子20、磁極片回転子30、及び回転子40の順に配置された構成を有する。別の実施形態では、磁気ギアードモータ10Bは、径方向の内側に向かって、回転子40、磁極片回転子30、固定子20の順に配置された構成を有する。この場合、円筒状の回転シャフト9の径方向内側に、回転子40、磁極片回転子30及び固定子20が配置される。
【0016】
なお、磁気ギアードモータ10Bは、磁気ギアとモータとを一体化したものであり、固定子巻線24の通電によって発生する回転磁界によって回転子(高速ロータ)40を回転させる。回転子40から磁極片回転子(低速ロータ)30への動力伝達は高調波磁気ギアの原理を利用するものである。
磁気ギアードモータ10Bの稼働時、磁気ギアード発電機10Aと同様、磁極片32では軸方向の漏れ磁束Lfが発生し得る。この場合、各磁極片32では、面内方向に渦電流が発生し得る。磁極片32のうち例えば軸方向両端部にある電磁鋼板35では、比較的大きな渦電流が発生し得る。
【0017】
(磁気ギアード電気機械の内部構造)
続けて、図2を参照して、上述した磁気ギアード回転機械10(10A,10B)の内部構造について説明する。
図2は、一実施形態に係る磁気ギアード回転機械10の径方向断面図である。図2では、図面を見易くする都合、磁気ギアード回転機械10の一部の構成要素にのみ、ハッチングを施している。図2において、「周方向」は、既述の「軸方向」(図1A図1B参照)を基準とした周方向である。s
図2に示すように、磁気ギアード回転機械10の固定子20は、周方向に並ぶように配置された複数の固定子磁石22と固定子巻線24とを含む。固定子磁石22及び固定子巻線24は、ステータコア23に取り付けられる。
【0018】
固定子磁石22は、永久磁石により構成され、径方向において固定子巻線24と磁極片回転子30との間を軸方向に通過するように周方向に複数設けられる。本例の複数の固定子磁石22は、周方向に交互に配置される磁極の異なる複数の固定子磁石22N、22Sによって構成される。図2に示す例では、各々の固定子磁石22は、矩形断面を有する軸方向に長尺なロッド状部材である。
図2には、固定子磁石22がステータコア23の表面に取り付けられた表面磁石型(SPM;Surface Permanent Magnet)の構造を有する固定子20を示している。他の実施形態では、固定子20は、固定子磁石22がステータコア23に埋め込まれた埋込磁石型(IPM;Interior Permanent Magnet)の構造を有していてもよい。
【0019】
固定子巻線24は、ステータコア23に設けられた複数のスロット25内に設けられる。複数のスロット25は周方向に複数設けられ、各々のスロット25は軸方向に延在する。各々のスロット25の軸方向両端は開放されており、ステータコア23の軸方向の両端において、スロット25に収まらない固定子巻線24のコイルエンドがステータコア23から突出してもよい。
【0020】
上記構成の固定子20から径方向にずれた位置に設けられる回転子40は、周方向に並ぶように配置された複数の回転子磁石42を含む。複数の回転子磁石42は、周方向に交互に配置された磁極が互いに異なる複数の永久磁石である。複数の回転子磁石42の磁極数は、複数の固定子磁石22の磁極数よりも少ない。各々の回転子磁石42は、矩形断面を有する長尺なロッド部材であってもよい。
【0021】
図2には、回転子磁石42がロータコア43の表面に取り付けられた表面磁石型(SPM;Surface Permanent Magnet)の構造を有する回転子40を示している。他の実施形態では、回転子40は、回転子磁石42がロータコア43に埋め込まれた埋込磁石型(IPM;Interior Permanent Magnet)の構造を有していてもよい。
【0022】
回転子40は、回転子磁石42及びロータコア43以外にも、図1A及び図1Bを参照して上述したエンドプレート44を含んでいてもよい。エンドプレート44は、軸受B2の取付け位置からロータコア43に向かって径方向に沿って延在する環状プレートである。
【0023】
磁極片回転子30は、上記構成の固定子20と回転子40との間の径方向位置において周方向に並ぶように配置された複数の磁極片32を含む。各々の磁極片32は、第1エアギャップG1を隔てて回転子40と対向し、第2エアギャップG2を隔てて固定子20と対向する。例えば、回転子40と固定子20がいずれも埋込磁石型の構造を有する実施形態では、磁極片回転子30は、回転子磁石42と第1エアギャップG1を隔てて対向し、且つ、固定子磁石22と第2エアギャップG2を隔てて対向する。別の実施形態では、磁極片回転子30は、ステータコア23とロータコア43のそれぞれと対向してもよい。
さらに磁極片回転子30は、複数の磁極片32と周方向に交互に配置される複数のホルダ39を含む。一実施形態に係る各々のホルダ39は非磁性材料によって形成される。別の実施形態では、ホルダ39は磁性体材料によって形成されてもよい。各々の磁極片32は、周方向両側にある2つのホルダ39によって挟まれて保持される。
各々の磁極片32は、軸方向に積層された既述の複数の電磁鋼板35(図1A図1B参照)を含む。
【0024】
続いて、図3を参照し、磁極片回転子30の更なる構成の詳細を説明する。
図3は、一実施形態に係る磁極片回転子30の斜視図である。
図3に示すように、磁極片回転子30は、複数の磁極片32と複数のホルダ39を挟んで軸方向の両側にそれぞれ位置する一対のエンドリング34を含む。一対のエンドリング34の一方を二点鎖線によって図示する。
図3で例示される実施形態では、磁極片回転子30は、一対のエンドリング34の間で軸方向に延びる複数の連結バー36を備える。各々の連結バー36は、各々の磁極片32に形成される軸方向孔86に配置され、一対のエンドリング34によって保持される。複数の連結バー36が配置されることで、磁極片回転子30は複数の磁極片32の集合体を形成することができる。また、複数の連結バー36が配置されることで、磁極片回転子30の回転時に磁極片32が径方向外側にずれることを抑制できる。なお、各々の連結バー36は、例えばチタンまたはステンレス鋼などの非磁性材料によって形成される。
他の実施形態では、磁極片回転子30は、複数の連結バー36を備えなくてもよい。この場合、磁極片32には軸方向孔86が形成されなくてもよい。このような実施形態であっても、磁極片回転子30は複数の磁極片32の集合体を形成することができる。
【0025】
図4A図4Gを参照し、磁極片32の更なる構成の詳細を説明する。
図4A図4Gは、一実施形態に係る磁極片32A~32G(32)を示す断面図である。図4A図4Gでは、一例として、回転子40と固定子20がいずれも表面磁石型の構造を有する実施形態を示す。また、図面を見易くする都合、図示される構成要素にはハッチングを施しておらず、且つホルダ39(図3参照)の図示を省略している。
図4A図4Bでは、複数の連結バー36(図3参照)が設けられていない実施形態を例示し、図4C図4Gでは、複数の連結バー36(図3参照)が設けられた実施形態を例示する。
【0026】
図4A図4Gに示すように、磁極片32A~32G(32)は、径方向断面において、外側縁60と1以上の内側縁70A~70G(70)を含む。外側縁60は、第1エアギャップG1を隔てて回転子40と対向する磁極片32の第1面51、及び、第2エアギャップG2を隔てて固定子20と対向する磁極片32の第2面52を形成する。第1面51は径方向の一方側を向き、第2面52は径方向の他方側を向く。
内側縁70は、外側縁60に囲まれるように径方向にて第1面51と第2面52との間に位置し、磁極片32の内部の1以上の空隙80A~80G(80)を画定する。漏れ磁束Lf(図1A図1B参照)によって各々の磁極片32で生じ得る渦電流は、磁極片32の縁に沿って流れる傾向にある。この点、1以上の空隙80を画定する1以上の内側縁70が設けられることにより、渦電流経路7が内側縁70に沿った経路5A~5G(5)を含むので、磁極片32は渦電流経路7A~7G(7)を長くできる。
また、径方向断面において、第1面51と空隙80A~80G(80)との間の径方向における最短距離である第1距離L1は、第2面と空隙80の径方向における最短距離である第2距離L2よりも小さい。従って、内側縁70は磁極片32において回転子40側に配置され、空隙80を固定子磁石22から径方向に遠ざけることができる。よって、複数の固定子磁石22から生じる周方向に流れる磁束の磁路が空隙80によって遮断されることが抑制される。なお、固定子磁石22から生じる該磁束によって、トルクが磁極片32に付与される。
磁気ギアード回転機械10が磁気ギアード発電機10Aである幾つかの実施形態では、磁極片32に付与される上記トルクは、回転シャフト3と共に回転する磁極片回転子30を制動するためのトルクである。一方、磁気ギアード回転機械10が磁気ギアードモータ10Bである幾つかの実施形態では、磁極片32に付与される上記トルクは、磁極片回転子30の回転を補助するためのトルクである。
【0027】
図4A図4Gで示すように、磁極片32A、32G(32)の空隙80A、80G(80)は、第1距離L1が0よりも大きくなるように配置されてもよい。この場合、内側縁70A、70G(70)は外側縁60と接続しない。渦電流経路7A、7G(7)は、内側縁70A、70Gに沿った経路5A、5G(5)に加えて、空隙80A、80Gと第1面51との間にある中間経路11A、11Gを含んでもよい。
一方、図4B図4Fで示すように、空隙80B~80F(80)は、第1距離L1が0になるように配置されてもよい。この場合、内側縁70B~70F(70)の少なくとも1つが外側縁60に接続されるので、内側縁70に沿った経路5B~5F(5)に誘導される渦電流の割合が増大する。
また、図4B図4Gに示すように、空隙80A~80G(80)は、回転子40から外側縁60までの最短の径方向距離L3よりも第1距離L1が短くなるように配置されてもよい。この場合、内側縁70が回転子40側にある外側縁60に近接するので、内側縁70に沿った経路5B~5Gに誘導される渦電流の割合が増大する。なお、図4Aで示すように、第1距離L1は、回転子40から外側縁60までの最短の径方向距離L3よりも長くてもよい。
【0028】
図4A図4Fで示すように、磁極片32A~32F(32)は、内側縁70A~70F(70)により画定される空隙80A~80F(80)の少なくとも一部を形成する1以上のスリット85A~85F(85)を含んでもよい。回転子磁石42から生じる径方向に流れる磁束の磁路は、なるべく遮断されないことが好ましい。この点、スリット85A~85Fが空隙80A~80Fの少なくとも一部を形成することで、回転子磁石42から生じる磁束の磁路が空隙80によって遮断されることが、スリット85の幅方向において抑制される。
【0029】
図4B図4Dで示すように、スリット85B、85D(85)はいずれも、第1面51に開口する1以上の開口スリット82を含んでもよい。この場合、内側縁70B、70D(70)の少なくとも一部が外側縁60に接続されるので、内側縁70に沿った経路5B、5D(5)に誘導される渦電流の割合がさらに増大する。
図4D図4Fに示すように、内側縁70D、70F(70)は複数設けられてもよい。例えば、図4Dで示される3つの内側縁70Dは、第1面51を介して互いに接続される。また、図4Fで示される3つの内側縁70Fのうち中央側の内側縁70Fは、残る2つの内側縁70Fに対して、第1面51と、磁極片32Fの周方向における端面53とを介して接続される。なお、図4D図4Fでは、空隙80D、80F(80)の個数はいずれも3個である。内側縁70と空隙80の個数はいずれも、例えば2個または4個以上であってもよい。
【0030】
図4C図4Gに示すように、磁極片32C~32G(32)には、空隙80C~80G(80)の一部として軸方向孔86C~86G(86)が形成されてもよい。この場合、既述した各々の連結バー36(図3参照)は、空隙80C~80Gの一部として形成される軸方向孔86C~86G内に配置されてもよい。
また、図4C図4Fに示すように、上述したスリット85A~85Fは、軸方向孔86C~86F(86)と連通する1以上の連通スリット84を含んでもよい。連通スリット84が軸方向孔86に連通することで、軸方向孔86が磁極片32の中央領域に形成される場合であっても渦電流経路7を効果的に延長できる。
また、図4Dに示すように、上述の1以上の開口スリット82は、連通スリット84から周方向にてずれた位置で第1面51に開口してもよい。即ち、スリット85D(85)は、連通スリット84と、連通スリット84から周方向にてずれた位置で第1面51に開口する1以上の開口スリット82を含んでもよい。この場合、磁極片32Dでは、軸方向孔86D及び連通スリット84を画定する内側縁70と、該内側縁70に第1面51を介して接続される別の内側縁70とが配置される。これにより、内側縁70に沿った渦電流の経路5Dを効果的に延長できる。
なお、図4Dで示される磁極片32Dでは、連通スリット84の個数は1個でもよく、開口スリット82の個数は2個以上であってもよい。より具体的な一例として、スリット85D(85)は、1つの連通スリット84を挟んで互いに対称な位置に配置される2つの開口スリット82を含んでもよい。この場合、連通スリット84に対して周方向の一方側と他方側の各々に内側縁70Dに沿った渦電流の経路5Dが形成される。磁極片32Dのうち渦電流が生じる部位が周方向において偏ることが抑制されるので、磁極片32Dの特定の部位だけが過度に温度上昇することを抑制できる。
また、図4Eに示すように、軸方向孔86E(86)と連通する連通スリット84は複数設けられてもよい。例えば、連通スリット84は、第1面51に開口する第1連通スリット84Aと、第1連通スリット84Aに対して周方向にてずれた位置、且つ第1面51に対して径方向にてずれた位置に配置される1以上の第2連通スリット84Bとを含んでもよい。この場合、軸方向孔86E、第1連通スリット84A、及び第2連通スリット84Bを画定する1つの内側縁70Eに沿った渦電流の経路5Eを効果的に延長できる。
なお、図4Eで示される磁極片32Eでは、第1連通スリット84Aの個数は1個でもよく、第2連通スリット84Bの個数は2個以上であってもよい。より具体的な一例として、スリット85E(85)は、1つの第1連通スリット84Aを挟んで互いに対称な位置に配置される2つの第2連通スリット84Bを含んでもよい。この場合、第1連通スリット84Aに対して周方向の一方側と他方側の各々に内側縁70Eに沿った渦電流の経路5Eが形成される。磁極片32Eのうち渦電流が生じる部位が周方向に偏ることが抑制されるので、磁極片32Eの特定の部位だけが過度に温度上昇することを抑制できる。
また、図4Fに示すように、スリット85F(85)は、1以上の端面開口スリット83を含んでもよい。端面開口スリット83は、軸方向孔86F(86)に対して前記周方向にてずれた位置に配置され、周方向における磁極片32F(32)の端面53に開口する。この場合、軸方向孔86F及び連通スリット84を画定する内側縁70と、該内側縁70に第1面51及び端面53を介して接続される別の内側縁70とが配置される。これにより、内側縁70に沿った渦電流の経路5Fを効果的に延長できる。なお、端面53は、磁極片32Fの周方向の一端面であってもよいし、磁極片32Fの周方向の両端面であってもよい。
なお、図4Fで示される磁極片32Fでは、連通スリット84の個数は1個でもよく、端面開口スリット83の個数は2個以上であってもよい。より具体的な一例として、スリット85F(85)は、1つの連通スリット84を挟んで互いに対称な位置に配置される2つの端面開口スリット83を含んでもよい。この場合、連通スリット84に対して周方向の一方側と他方側の各々に内側縁70Fに沿った経路5Fが形成される。磁極片32Fのうち渦電流が生じる部位が周方向に偏ることが抑制されるので、磁極片32Dの特定の部位だけが過度に温度上昇することを抑制できる。
また、内側縁70C、70D(70)は、磁気ギアード回転機械10の軸方向における全範囲にわたって空隙80C、80D(80)を画定してもよい(図5参照)。より具体的な一例として、磁極片32C、32Dに含まれる全ての電磁鋼板35が、空隙80C、80Dを画定する内側縁70C、70Dを含んでもよい。
別の実施形態では、内側縁70C、70Dは、磁気ギアード回転機械10の軸方向における一部において空隙80C、80Dを画定してもよい。より具体的な一例として、磁極片32C、32Dに含まれる一部の電磁鋼板35が、空隙80C、80Dを画定する内側縁70C、70Dを含んでもよい。
【0031】
図4A図4Fに示すように、内側縁70A~70F(70)は、径方向断面において空隙80A~80F(80)を挟んで対抗する一対の直線部87A~87F(87)を含んでもよい。
一対の直線部87間の空隙80A~80Fの幅(寸法W)は、各々の電磁鋼板35(図1参照)の厚さの4倍以下であってもよい。これにより、空隙80A~80Fの幅を狭くできるので、回転子磁石42から生じる磁束の磁路が空隙80A~80Fによって遮断されることを抑制できる。
また、一対の直線部87間の空隙80A~80Fの幅(寸法W)は、各々の電磁鋼板35(図1参照)の厚さの2倍以上であってもよい。空隙80A~80Fの幅(寸法W)が電磁鋼板35の厚さよりも十分に大きいので、電磁鋼板35を安定的に加工できる。
【0032】
図5は、一実施形態に係る渦電流損失の低減効果を示す図である。
図5では、比較例37と、磁極片32C、32Dとの各々を用いて磁気ギアードモータ10Bを規定の条件で駆動したときの渦電流損失をシミュレーションにより求めた結果を示す。
比較例37と磁極片32C、32Dとにおいて採用される、電磁鋼板35の材質、外形寸法、及び積層枚数は同じである。比較例37で示される磁極片は、中央部に軸方向孔86が形成される。
図5で示される通り、スリット85が設けられる本数が多くなる程、渦電流損失は低減することが判る。これは、スリット85の本数が多くなるほど、内側縁70に沿った経路5が長くなる結果、磁極片32における渦電流の抵抗が増え、渦電流が低減したためと考えられる。
なお、漏れ磁束Lfが生じる原理は、磁気ギアードモータ10Bと磁気ギアード発電機10Aとにおいて同様である。従って、磁気ギアードモータ10Bに代えて磁気ギアード回転機械10が稼働した場合の渦電流のシミュレーションにおいても、図5と同様の結果が得られる。即ち、磁気ギアード発電機10Aにおいても、比較例37と磁極片32C、32Dとのうちで磁極片32Dが採用された場合に渦電流損失は最も低い。
【0033】
(まとめ)
以下、幾つかの実施形態に係る磁気ギアード回転機械10及びこれを用いた発電システム1について概要を記載する。
【0034】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る磁気ギアード回転機械(10)は、
周方向に並ぶように配置される複数の固定子磁石(22)を含む固定子(20)と、
前記周方向に並ぶように配置され、磁極数が前記複数の固定子磁石(22)よりも少ない複数の回転子磁石(42)を含む回転子(40)と、
前記固定子(20)と前記回転子(40)との間の径方向位置において前記周方向に並ぶように配置される複数の磁極片(32)を含む磁極片回転子(30)と、
を備える磁気ギアード回転機械(10)であって、
各々の前記磁極片(32)は、前記磁気ギアード回転機械(10)の径方向断面において、
第1エアギャップ(G1)を隔てて前記回転子(40)と対向する前記磁極片(32)の第1面(51)、及び、第2エアギャップ(G2)を隔てて前記固定子(20)と対向する前記磁極片(32)の第2面(52)を形成する外側縁(60)と、
前記外側縁(60)に囲まれるように径方向にて前記第1面(51)と前記第2面(52)との間に位置し、前記磁極片(32)の内部の1以上の空隙(80)を画定する1以上の内側縁(70)と、
を含み、
前記径方向断面において、前記第1面(51)と前記空隙(80)との間の前記径方向における最短距離である第1距離(L1)は、前記第2面(52)と前記空隙(80)との間の前記径方向における最短距離である第2距離(L2)よりも短い。
【0035】
上記(1)の構成によれば、磁気ギアード回転機械(10)の稼働に伴い磁極片(32)で生じる渦電流の経路である渦電流経路(7)が、1以上の内側縁(70)に沿った経路(5)を含むので、磁気ギアード回転機械(10)は渦電流経路(7)を長くできる。従って、磁極片(32)における渦電流抵抗が増加し、渦電流は低減する。また、第1距離(L1)が第2距離(L2)よりも短いので、1以上の内側縁(70)は回転子(40)側に配置され、1以上の空隙(80)を固定子(20)から径方向に遠ざけることができる。従って、複数の固定子磁石(22)から生じる周方向に流れる磁束の磁路が1以上の空隙(80)によって遮断されることが抑制される。これにより、磁極片回転子(30)の回転が阻害されることが抑制される。以上より、固定子磁石(22)の磁路を遮断することを抑制しつつ、渦電流損失を低減できる磁気ギアード回転機械(10)が実現する。
【0036】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
各々の前記磁極片(32)は、前記磁気ギアード回転機械(10)の軸方向に積層された複数の電磁鋼板(35)を含み、
前記内側縁(70)は、前記径方向断面において前記空隙(80)を挟んで対向する一対の直線部(87)を含み、
前記一対の直線部(87)間の前記空隙(80)の幅(寸法W)は、各々の前記電磁鋼板(35)の厚さの4倍以下である。
【0037】
上記(2)の構成によれば、磁気ギアード回転機械(10)は、空隙(80)の幅(寸法W)を狭くできるので、回転子磁石(42)から生じる径方向に流れる磁束の磁路が空隙(80)によって遮断されることを抑制できる。
【0038】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)または(2)の構成において、
各々の前記磁極片(32)は、前記磁気ギアード回転機械(10)の軸方向に積層された複数の電磁鋼板(35)を含み、
前記内側縁(70)は、前記径方向断面において前記空隙(80)を挟んで対向する一対の直線部(87)を含み、
前記一対の直線部(87)間の前記空隙(80)の幅(寸法W)は、各々の前記電磁鋼板(35)の厚さの2倍以上である。
【0039】
上記(3)の構成によれば、空隙(80)の幅が電磁鋼板(35)の厚さによりも十分に大きいので、電磁鋼板(35)を安定的に加工できる。例えば、プレス加工によって電磁鋼板(35)を作製する実施形態においては、空隙(80)の幅(寸法W)が大きいことで、加工時に使用されるパンチを大きくできる。従って、パンチの耐久性が向上するので、電磁鋼板(35)を安定的にプレス加工することができる。
【0040】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)から(3)のいずれかの構成において、
前記第1距離(L1)が、前記回転子(40)から前記外側縁(60)までの最短の径方向距離(L3)よりも短い。
【0041】
上記(3)の構成によれば、内側縁(70)が回転子(40)側にある外側縁(60)に近接するので、内側縁(70)に沿った経路(5)に誘導される渦電流の割合が増大する。従って、磁気ギアード回転機械(10)は渦電流をさらに低減できる。
【0042】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)から(4)のいずれかの構成において、
各々の前記磁極片(32)は、前記内側縁(70)により画定される前記空隙(80)の少なくとも一部を形成する1以上のスリット(85)を含む。
【0043】
上記(5)の構成によれば、磁極片(32)が空隙(80)の少なくとも一部を形成するスリット(85)を含むことで、回転子磁石(42)から生じる径方向に流れる磁束の磁路が空隙(80)によって遮断されることを、スリット(85)の幅方向において抑制できる。
【0044】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記スリット(85)は、前記第1面(51)に開口する1以上の開口スリット(82)を含む。
【0045】
上記(6)の構成によれば、内側縁(70)が外側縁(60)に接続されるので、内側縁(70)に沿った経路(5)に誘導される渦電流の割合がさらに増大する。従って、磁気ギアード回転機械(10)は渦電流をさらに低減できる。
【0046】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)から(6)のいずれかの構成において、
前記磁極片回転子(30)は、
前記複数の磁極片(32)を挟んで軸方向の両側にそれぞれ位置する一対のエンドリング(34)と、
前記一対のエンドリング(34)間で前記軸方向に延びる複数の連結バー(36)と
を備え、
各々の前記連結バー(36)は、前記空隙(80)の一部として各々の前記磁極片(32)に形成される軸方向孔(86)内に配置される。
【0047】
上記(7)の構成によれば、磁極片回転子(30)は、複数の磁極片(32)の集合体を形成することができる。また、連結バー(36)を装着するための磁極片(32)の軸方向孔(86)の内壁を、渦電流経路(7)を長くするための内側縁(70)として利用できる。これにより、磁気ギアード回転機械(10)は渦電流の経路をさらに低減できる。
【0048】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)の構成において、
各々の前記磁極片(32)は、前記内側縁(70)により画定される前記空隙(80)の少なくとも一部を形成する1以上のスリット(85)を含み、
前記スリット(85)は、前記軸方向孔(86)に連通する1以上の連通スリット(84)を含む。
【0049】
上記(8)の構成によれば、軸方向孔(86)は連結バー(36)によって磁極片(32)を確実に支持する観点から磁極片(32)の中央領域に形成される傾向にあるため、渦電流経路(7)の延長効果はあまり期待できない。そこで、軸方向孔(86)に連通する連通スリット(84)が配置されることで、渦電流経路(7)を効果的に延長できる。
【0050】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
前記連通スリット(84)は、前記第1面に開口し、
前記スリット(85)は、前記連通スリット(84)から前記周方向にてずれた位置で前記第1面に開口する1以上の開口スリット(82)を含む。
【0051】
上記(9)の構成によれば、内側縁(70)の少なくとも一部が外側縁(60)に接続されるので、内側縁(70)に沿った経路(5)に誘導される渦電流の割合がさらに増大する。
【0052】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、
前記スリット(85)は、1つの前記連通スリット(84)を挟んで互いに対称な位置に配置される2つの前記開口スリット(82)を含む。
【0053】
上記(10)の構成によれば、軸方向孔(86)及び連通スリット(84)を画定する内側縁(70)と、該内側縁(70)に第1面(51)を介して接続される別の内側縁(70)とが配置される。これにより、内側縁(70)に沿った渦電流の経路(5)を効果的に延長できる。
【0054】
(11)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
前記連通スリット(85)は、
前記第1面(51)に開口する第1連通スリット(85A)と、
前記第1連通スリット(85A)に対して前記周方向にてずれた位置、且つ前記第1面(51)に対して前記径方向にてずれた位置に配置される1以上の第2連通スリット(85B)と
を含む。
【0055】
上記(11)の構成によれば、軸方向孔(86)、第1連通スリット(85A)、及び第2連通スリット(85B)を画定する1つの内側縁(70)に沿った渦電流の経路(5)を効果的に延長できる。
【0056】
(12)幾つかの実施形態では、上記(11)の構成において、
前記連通スリットは、1つの前記第1連通スリットを挟んで互いに対称な位置に配置される2つの前記第2連通スリット(84B)を含む。
【0057】
上記(12)の構成によれば、第1連通スリット(84A)に対して周方向の一方側と他方側の各々に内側縁(70)に沿った渦電流の経路(5)が形成される。磁極片(32)のうち渦電流が生じる部位が周方向において偏ることが抑制されるので、磁極片(32)の特定の部位だけが過度に温度上昇することを抑制できる。
【0058】
(13)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
前記スリット(85)は、前記軸方向孔(86)に対して前記周方向にてずれた位置に配置され、前記周方向における前記磁極片(32)の端面(53)に開口する1以上の端面開口スリット(83)を含む。
【0059】
上記(13)の構成によれば、軸方向孔(86)及び連通スリット(84)を画定する内側縁(70)と、該内側縁(70)に第1面(51)及び端面(53)を介して接続される別の内側縁(70)とが配置される。これにより、内側縁(70)に沿った渦電流の経路(5)を効果的に延長できる。
【0060】
(14)幾つかの実施形態では、上記(13)の構成において、
前記スリット(85)は、1つの前記連通スリット(84)を挟んで互いに対称な位置に配置される2つの前記端面開口スリット(83)を含む。
【0061】
上記(14)の構成によれば、連通スリット(84)に対して周方向の一方側と他方側の各々に内側縁(70)に沿った経路(5)が形成される。磁極片(32)のうち渦電流が生じる部位が周方向に偏ることが抑制されるので、磁極片(32)の特定の部位だけが過度に温度上昇することを抑制できる。
【0062】
(15)幾つかの実施形態では、上記(1)から(14)のいずれかの構成において、
各々の前記磁極片(32)は、前記磁気ギアード回転機械(10)の軸方向における全範囲にわたって、前記空隙(80)を画定する前記内側縁(70)を含む。
【0063】
上記(15)の構成によれば、磁気ギアード回転機械(10)の軸方向における全範囲にわたって、磁気ギアード回転機械(10)は磁極片(32)で生じる渦電流を低減できる。
【0064】
(16)本発明の少なくとも一実施形態に係る発電システム(1)は、
原動機(2)と、
前記原動機(2)からの入力によって駆動されて発電するための磁気ギア発電機(10A)としての、上記(1)から(15)のいずれかに記載の磁気ギアード回転機械(10)と
を備える。
【0065】
上記(16)の構成によれば、上記(1)で記載した理由によって、固定子磁石(22)の磁路を遮断することを抑制しつつ、渦電流損失を低減できる発電システム(1)が実現する。
【0066】
(17)本発明の少なくとも一実施形態に係る磁極片回転子(30)は、
周方向に並ぶように配置された複数の磁極片(32)と、
複数の前記磁極片(32)と前記周方向に交互に配置される複数のホルダ(39)と
を備え、
前記磁極片(32)は、径方向断面において、
径方向の一方側を向く第1面(51)、及び、前記径方向の他方側を向く第2面(52)を形成する外側縁(60)と、
前記外側縁に囲まれるように前記径方向にて前記第1面(51)と前記第2面(52)との間に位置し、前記磁極片(32)の内部の1以上の空隙(80)を画定する1以上の内側縁(70)と、
を含み、
前記径方向断面において、前記第1面(51)と前記空隙(80)との間の前記径方向における最短距離である第1距離(L1)は、前記第2面(52)と前記空隙(80)との間の前記径方向における最短距離である第2距離(L2)よりも短い。
【0067】
上記(17)の構成によれば、上記(1)で記載した理由によって、固定子磁石(22)の磁路を遮断することを抑制しつつ、渦電流損失を低減できる磁極片回転子(30)が実現する。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0069】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0070】
1 :発電システム
2 :原動機
10 :磁気ギアード回転機械
20 :固定子
22 :固定子磁石
30 :磁極片回転子
32 :磁極片
34 :エンドリング
35 :電磁鋼板
36 :連結バー
39 :ホルダ
40 :回転子
42 :回転子磁石
51 :第1面
52 :第2面
60 :外側縁
70 :内側縁
80 :空隙
82 :開口スリット
83 :端面開口スリット
84 :連通スリット
84A :第1連通スリット
84B :第2連通スリット
85 :スリット
86 :軸方向孔
87 :直線部
G1 :第1エアギャップ
G2 :第2エアギャップ
L1 :第1距離
L2 :第2距離
L3 :径方向距離

図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5