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特許7610238情報処理方法、プログラム、情報処理装置、及びデータ構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】情報処理方法、プログラム、情報処理装置、及びデータ構造
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/32 20060101AFI20241225BHJP
   G08G 1/0968 20060101ALI20241225BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20241225BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20241225BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241225BHJP
   G06V 10/40 20220101ALI20241225BHJP
【FI】
G01C21/32
G08G1/0968 B
G08G1/00 J
G09B29/00 Z
G06T7/00 650A
G06V10/40
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024518203
(86)(22)【出願日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2023034760
(87)【国際公開番号】W WO2024075572
(87)【国際公開日】2024-04-11
【審査請求日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2022161764
(32)【優先日】2022-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517207875
【氏名又は名称】ダイナミックマッププラットフォーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】小田 博之
(72)【発明者】
【氏名】石井 隆司
(72)【発明者】
【氏名】雨谷 広道
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-195746(JP,A)
【文献】特開2014-038495(JP,A)
【文献】特表2022-530347(JP,A)
【文献】特開2020-160291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G09B 29/00
G06T 7/00
G06V 10/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを含む情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記プロセッサが、
車道以外の通行路における点群データに基づいて、前記通行路の縁部を抽出すること、
前記点群データに基づいて、前記通行路に関する属性情報を特定すること、
前記縁部に関する縁部データと前記属性情報とに基づいて、前記車道以外の通行路における線分データを生成すること、
前記線分データに、当該線分データに対応する前記通行路の属性情報を対応付けること、
を実行し、
前記属性情報は、種類が異なる複数の項目の属性情報を含み、
前記線分データを生成することは、
少なくとも1つの項目の属性情報が分割に関する所定条件を満たす場合に、前記縁部データを分割して前記線分データを生成することを含む、情報処理方法。
【請求項2】
プロセッサを含む情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記プロセッサが、
車道以外の通行路における点群データに基づいて、前記通行路の縁部を抽出すること、
前記点群データに基づいて、前記通行路に関する属性情報を特定すること、
前記縁部に関する縁部データと前記属性情報とに基づいて、前記車道以外の通行路における線分データを生成すること、
前記線分データに、当該線分データに対応する前記通行路の属性情報を対応付けること、
を実行し、
前記線分データを生成することは、
舗装種別、勾配、及び幅員の属性情報の各項目のうち、少なくとも1つの項目に基づいて、線分データを生成することを含む、情報処理方法。
【請求項3】
前記通行路は、歩道、又は道路外側線から道路舗装縁までの舗装部分を含み、
前記抽出することは、
前記歩道の車道反対側の縁部、又は前記舗装部分の舗装縁部を抽出することを含む、請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記通行路は、建物内、又は私有地内の通路を含み、
前記抽出することは、
前記建物内の前記通路の縁部、又は前記私有地内の縁部を抽出することを含む、請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記属性情報は、ユーザにより設定される、路面状態、通行状態、及び障害状態のうち少なくとも1つの項目を含む、請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記プロセッサが、
前記通行路の各属性情報が対応付けられた各線分データを含む、前記通行路の地図データを生成することをさらに実行する、請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項7】
情報処理装置に含まれるプロセッサに、
車道以外の通行路における点群データに基づいて、前記通行路の縁部を抽出すること、
前記点群データに基づいて、前記通行路に関する属性情報を特定すること、
前記縁部に関する縁部データと前記属性情報とに基づいて、前記車道以外の通行路における線分データを生成すること、
前記線分データに、当該線分データに対応する前記通行路の属性情報を対応付けること、
を実行させ
前記属性情報は、種類が異なる複数の項目の属性情報を含み、
前記線分データを生成することは、
少なくとも1つの項目の属性情報が分割に関する所定条件を満たす場合に、前記縁部データを分割して前記線分データを生成することを含む、プログラム。
【請求項8】
情報処理装置に含まれるプロセッサに、
車道以外の通行路における点群データに基づいて、前記通行路の縁部を抽出すること、
前記点群データに基づいて、前記通行路に関する属性情報を特定すること、
前記縁部に関する縁部データと前記属性情報とに基づいて、前記車道以外の通行路における線分データを生成すること、
前記線分データに、当該線分データに対応する前記通行路の属性情報を対応付けること、
を実行させ、
前記線分データを生成することは、
舗装種別、勾配、及び幅員の属性情報の各項目のうち、少なくとも1つの項目に基づいて、線分データを生成することを含む、プログラム。
【請求項9】
プロセッサを含む情報処理装置であって、
前記プロセッサが、
車道以外の通行路における点群データに基づいて、前記通行路の縁部を抽出すること、
前記点群データに基づいて、前記通行路に関する属性情報を特定すること、
前記縁部に関する縁部データと前記属性情報とに基づいて、前記車道以外の通行路における線分データを生成すること、
前記線分データに、当該線分データに対応する前記通行路の属性情報を対応付けること、
を実行し、
前記属性情報は、種類が異なる複数の項目の属性情報を含み、
前記線分データを生成することは、
少なくとも1つの項目の属性情報が分割に関する所定条件を満たす場合に、前記縁部データを分割して前記線分データを生成することを含む、情報処理装置。
【請求項10】
プロセッサを含む情報処理装置であって、
前記プロセッサが、
車道以外の通行路における点群データに基づいて、前記通行路の縁部を抽出すること、
前記点群データに基づいて、前記通行路に関する属性情報を特定すること、
前記縁部に関する縁部データと前記属性情報とに基づいて、前記車道以外の通行路における線分データを生成すること、
前記線分データに、当該線分データに対応する前記通行路の属性情報を対応付けること、
を実行し、
前記線分データを生成することは、
舗装種別、勾配、及び幅員の属性情報の各項目のうち、少なくとも1つの項目に基づいて、線分データを生成することを含む、情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、プログラム、情報処理装置、及びデータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高精度な地図データを生成し、この地図データを用いて自動運転等に利用するための技術開発が盛んに行われている。一般的に、自動運転等に利用される地図データが生成される際、車両に搭載された各種センサにより地物が検出され、この地物に関する地物データが生成され、この地物データが地図データに関連付けられる。これにより、車両は、地図データに関連付けられる地物データを用いて、自車周辺の地物を適切に把握することが可能になる。この地物データには、外界センサの種類に関する情報と、外界センサの種類毎の、地物を検出する際の環境に関する環境情報が含められることが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-73893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来技術では、MMS(Mobile Mapping System)計測を搭載する計測車両が車道を走行した際の点群データや各種データに基づいて高精度な地図データが生成されている。
【0005】
しかしながら、従来の高精度な地図データは、車道を走行する車両向けの地図データであり、車道以外の通行路を走行する車両に使用することができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、車道以外の通行路を走行する車両に使用可能な高精度な地図データを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る情報処理方法は、プロセッサを含む情報処理装置が実行する情報処理方法であって、前記プロセッサが、車道以外の通行路における点群データに基づいて、前記通行路の縁部を抽出すること、前記点群データに基づいて、前記通行路に関する属性情報を特定すること、前記縁部に関する縁部データと前記属性情報とに基づいて、前記通行路に関する線分データを生成すること、前記線分データに、当該線分データに対応する前記通行路の属性情報を対応付けること、を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車道以外の通行路を走行する車両に使用可能な高精度な地図データを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理システムの構成の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る車両の構成の一例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るデータベースの一例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る通行路の地物データに関する情報の一例を示す図である。
図6A】歩道のない道路の一例を示す図である。
図6B】歩道上の様々な障害物の一例を示す図である。
図6C】車歩道に存在するグレーチングの一例を示す図である。
図6D】車の出入りのための切り下げを示す図である。
図7A】歩道及び道路外側舗装路と、幅員などの属性情報との関係の一例を示す図である。
図7B】歩道及び道路外側舗装路と、幅員などの属性情報との関係の一例を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る幅員コードの一例を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る線分データに対応付け可能な属性情報の一例を示す図である。
図10】ケース1における区間切りの一例を示す図である。
図11】ケース2における区間切りの一例を示す図である。
図12】ケース3における区間切りの一例を示す図である。
図13】ケース3における区間切りの他の例を示す図である。
図14】本発明の一実施形態に係る地図データ生成に関する処理の一例を示すフローチャートである。
図15】本発明の一実施形態に係る属性情報の特定から対応付け処理までの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0011】
<システムの概要>
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1の構成の一例を示す図である。図1に示す情報処理システム1は、MMS(Mobile Mapping System)計測を搭載する計測車両(以下、「車両」とも称す。)10と、情報処理装置20と、GNSS(Global Navigation Satellite System)において利用される測位衛星30と、衛星画像を取得可能な観測衛星40とを含み、これらはネットワークNを介して相互にデータの送受信をすることが可能である。また、車両10や情報処理装置20の数は1つ以上あってもよい。
【0012】
車両10は、MMSによる3次元計測を行う車両であり、移動しながら、周辺の地形について3次元計測を実行する。また、車両10は、GNSSの測位衛星30から信号を受信し、自車両の位置情報を検出可能である。位置情報は、緯度、経度、高度の3次元位置情報、又は緯度、経度の2次元位置情報を含む。
【0013】
また、車両10は、各種センサを搭載し、各種センサにより検出されるデータを取得する。各種センサには、車載カメラ、車速センサ、加速度センサなどが含まれる。また、図1に示す車両10は、例えばパーソナルモビリティに計測器等を搭載する例を図示したが、車道を走行する一般的な車両に計測器等が搭載されてもよい。
【0014】
測位衛星30は、位置情報の計測に必要な信号を送信する衛星である。観測衛星40は、例えばSAR(Synthetic Aperture Radar)センサ等を用いて地球を観測し、撮影することで衛星画像を取得する。
【0015】
情報処理装置20は、例えばサーバであり、車両10から、MMSにより計測されたデータや、各種センサにより検知されたデータ等を取得する。また、情報処理装置20は、各衛星30、40から信号や画像を取得する。情報処理装置20は、車両10や各衛星30、40から取得したデータ等を用いて、地図データを生成する。なお、情報処理装置20は、複数の情報処理装置から構成されてもよい。
【0016】
<車両の構成>
図2は、本発明の一実施形態に係る車両10の構成の一例を示す図である。図2に示す例において、車両10は、MMSを用いて計測地域を走行し、走行した車道周辺及び/又は車道以外の通行路周辺の地物の3次元の座標値を計測する。この3次元座標値を計測するため、車両10は、GNSS受信機101と、IMU102と、レーザスキャナ103と、カメラ104とを備える。例えば、これらの機器は、車両10の天部に設けられた天板100に取り付けられる。
【0017】
また、車両10は、車輪に走行距離計105が取り付けられ、車載器としてプロセッサ106と、各種センサ107と、通信装置108とを備える。
【0018】
GNSS受信機101は、GNSSの測位衛星30から測位信号を受信するアンテナを備える。GNSS受信機101は、アンテナによって受信した測位信号に基づいて測位衛星30との疑似距離、測位信号を搬送した搬送波の位相および三次元の座標値を算出する。
【0019】
IMU102は、3軸方向の角速度を計測するジャイロセンサと、加速度を計測する加速度センサを備える。IMU102は、これらのセンサによって自車両の姿勢データを取得する。
【0020】
レーザスキャナ103は、車両10の幅方向において、放射角度を変更させながらレーザ光を放射し、放射先に位置する地物に反射したレーザ光を受光する。レーザスキャナ103は、レーザ光を放射してから受光するまでの時刻を計測し、地物との距離を算出する。
【0021】
カメラ104は、車両10の外部、例えば前方等を撮像する。また、走行距離計105は、車両10の走行距離を計測する。
【0022】
プロセッサ106は、車両10の運転制御等を行い、又は、外部の装置とのデータの送受信を制御する。各種センサ107は、車載カメラ、車速センサ、加速度センサを含む。通信装置108は、外部の装置とデータの送受信を行う。例えば、通信装置108は、MMSにより取得されたデータを情報処理装置20に送信する。なお、点群データ等の計測について、歩道や施設内、敷地内(空港や港湾等を含むが、それに限らない。)では、ハンディタイプや背負子タイプ、固定タイプなどの計測機を用いて計測することもあり得る。
【0023】
<情報処理装置の構成>
図3は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置20の構成の一例を示す図である。情報処理装置20は、1つ又は複数の処理装置(CPU:Central Processing Unit)210、1つ又は複数のネットワーク通信インタフェース220、記憶装置230、ユーザインタフェース250及びこれらの構成要素を相互接続するための1つ又は複数の通信バス270を含む。なお、ユーザインタフェース250は必ずしも必要ではない。
【0024】
記憶装置230は、例えば、DRAM、SRAM、他のランダムアクセス固体記憶装置などの高速ランダムアクセスメモリであり、また、1つ又は複数の磁気ディスク記憶装置、光ディスク記憶装置、フラッシュメモリデバイス、又は他の不揮発性固体記憶装置などの不揮発性メモリでもよく、また、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体でもよい。
【0025】
また、記憶装置230の他の例として、CPU210から遠隔に設置される1つ又は複数の記憶装置でもよい。ある実施形態において、記憶装置230はCPU210により実行されるプログラム、モジュール及びデータ構造、又はそれらのサブセットを格納する。
【0026】
記憶装置230は、情報処理システム1により用いられるデータを記憶する。例えば、記憶装置230は、高精度3次元地図データ(以下、「HD(High Definition)マップ」とも称する。)の生成に関するデータを記憶する。具体例としては、ダイナミックマップ、HDマップ、地物データなどが記憶装置230に記憶される。
【0027】
図4は、本発明の一実施形態に係るデータベースの一例を示す図である。図4に示す例では、記憶装置230はダイナミックマップデータを高精度地図データベースとして記憶する。
【0028】
図4に示す例では、地図データは、例えば、自律走行可能な車両等に用いられる高精度な3次元地図のデータである。具体例としては、この地図データは、周辺車両の情報や交通情報といった、より動的な情報が付加されたリアルタイムに提供されるダイナミックマップと呼ばれる地図のデータである。本実施形態で用いられうる地図データは、例えば4つの階層に分類される。地図データは、静的情報SI1、準静的情報SI2、準動的情報MI1、動的情報MI2に分類される。
【0029】
静的情報SI1は、3次元の高精度な基盤的地図データ(HDデータ)であって、路面情報、車線情報、3次元構造物等を含み、地物を示す3次元位置座標や線形ベクトルデータから構成される。準静的情報SI2、準動的情報MI1及び動的情報MI2は、時々刻々と変化する動的データであって、位置情報を基に静的情報に重畳されるデータである。
【0030】
準静的情報SI2は、交通規制情報、道路工事情報、広域気象情報などを含む。準動的情報MI1は、事故情報、渋滞情報、狭域気象情報などを含む。動的情報MI2は、ITS(Intelligent Transport System)情報を含み、周辺車両、歩行者、信号情報などを含む。
【0031】
ダイナミックマップデータに含まれる静的情報SI1は、HDデータを含み、HDデータは、地物データを含む。この地物データは、アプリケーションがダイナミックマップを利用する際に基本となる情報であり、アプリケーションがダイナミックマップを利用する際の性能向上等に貢献ができる情報である。したがって、地物データにどんな情報を含めるかが重要となる。例えば、ダイナミックマップの利用先としてAGV(Automatic Guided Vehicle)や、自律走行可能なPMV(Personal Mobility Vehicle)などの自動運転システムがあるが、自動運転システムの性能向上に寄与するように、多数の情報の中から適切な情報が検出され、検出された情報が、本実施形態に係る地物データに含められる。
【0032】
なお、車道以外の通行路を走行する自律走行車や遠隔制御車両やユーザにより走行制御される車両のルーティング(経路設定)やナビゲーション(経路案内)等に用いられる地図データは、本実施形態においては静的情報S11のみでもよい。すなわち、車両は、少なくとも静的情報S11のHDマップを取得できれば、自律走行や遠隔制御による走行が可能になる。車両は、車輪を有し走行可能なものであればよく、一般車両、AGV、PMV、車いす、ベビーカー、二輪車、一輪車などを含む。
【0033】
図3に戻り、本実施形態に係る地物データを生成する処理を実行するCPU210について説明する。CPU210は、記憶装置230に記憶されるプログラムを実行することで、地図制御部212、送受信部213、取得部214、抽出部215、特定部216、生成部217、対応付け部218を構成する。
【0034】
CPU210は、地図制御部212の処理を制御し、地図制御部212は、後述する各部の処理を制御し、地図データの生成に関する処理を実行する。
【0035】
地図制御部212は、各種データを用いて、地図データの生成を制御する。例えば、地図制御部212は、HDデータの生成を制御し、HDデータに含まれる地物データの生成についても制御する。地図制御部212は、車道以外の通行路に関するHDマップの生成を制御し、又は、車道に関するHDマップに加えて、車道以外の通行路に関するHDマップの生成を制御するようにしてもよい。
【0036】
送受信部213は、外部装置に対して、ネットワーク通信インタフェース220を介してデータの送受信を行う。例えば、送受信部213は、車両10や各衛星30、40からデータや信号等を受信する受信部として構成され、車両10や各衛星30、40にデータや信号等を送信する送信部としても構成される。具体例として、送受信部213は、車両10から、MMSにより計測された各種データや、車両10に搭載される各種センサ等にセンシングされた各種データを受信し、観測衛星40から、所定位置を含む衛星画像を受信する。
【0037】
取得部214は、送受信部213により受信された各種データを必要に応じて取得し、例えば、少なくとも車道以外の通行路を含む地図データの生成に用いる各種データを取得する。具体例として、取得部214は、車両10により計測された点群データを少なくとも取得する。
【0038】
抽出部215は、車道以外の通行路における点群データに少なくとも基づいて、通行路の縁部を抽出する。例えば、抽出部215は、点群データに含まれる歩道等のエッジを検出することにより、通行路の縁部を抽出してもよい。
【0039】
なお、抽出部215は、通行路の縁部を抽出する際に、MMSにより計測された各種データや、車両10に搭載される各種センサ等にセンシングされた各種データを用いて、以下の地物を抽出してもよい。
・通行路の中心線や仮想の停止線等
・歩道(縦断方向の両端)
・横断歩道、交差点(歩行者が横断する部分)
・歩道の設置されていない道路での道路端(舗装端)
・歩道及び道路端付近で、AGV等の走行において障害になる地物(支柱、施設、街路樹、縁石等)
・道路縁に縦断方向に存在する側溝(蓋・グレーチングの有無の区分)、道路を横断するU字溝等
・施設等の出入り口
抽出部215は、仮想線を抽出する場合、各種データにより抽出された地物データ(例、通行路、歩道など)に基づいて仮想線を生成し、生成した仮想線を抽出する。例えば、抽出部215は、歩道の両端の線分データから仮想の中心線を生成したり、縁石の有無等により仮想の停止線を生成したりする。
【0040】
また、抽出部215は、通行路の地物を抽出する条件として、以下の条件が設定されてもよい。
・歩道等歩行者の通行する範囲(所定距離以内)
(歩道の設置されていない道路であっても、人の歩ける領域のある場合。ただし、側溝が設置されている場合、AGV等は走行できないため、側溝部分は走行には不適とし、側溝部分は通行路に含まない)
【0041】
特定部216は、車道以外の通行路における点群データに少なくとも基づいて、通行路に関する属性情報を特定する。例えば、特定部216は、点群データ等に基づいて、抽出部215により抽出された各地物に対して属性情報を特定する。具体例として、特定部216は、後述するように、少なくとも通行路の幅員を測定し、幅員データを属性情報の項目に付与してもよい。
【0042】
生成部217は、抽出部215により抽出された縁部に関する縁部データと、特定部216により特定された属性情報とに基づいて、通行路に関する線分データを生成する。例えば、生成部217は、縁部データに沿う所定の線分データを、幅員データや地物データなどに基づいて分割し又は区切り、各線分データを生成する。具体例として、生成部217は、幅員データの大きさに応じて幅員データを分類し、隣接する線分データにおいて、幅員データの分類値が異なるように線分データを生成してもよい。
【0043】
生成部217は、線分データとして、縁部に関する縁部データ自体、縁部データに沿う線分データ、通行路を縦断する通行路の略中央に位置する線分データ、又は縁部データに略平行な線分データのうち少なくとも1つを生成してもよい。また、生成部217は、上述した通行路の仮想線、例えば、中心線や停止線などを生成してもよい。
【0044】
対応付け部218は、生成部217により生成された線分データに、この線分データに対応する通行路の属性情報を対応付ける。例えば、対応付け部218は、生成される各線分データに対して、この線分データを生成することの要因となった属性情報を対応付けてもよい。具体例としては、対応付け部218は、幅員データの大きさに応じて線分データが生成される場合、幅員データの数値やコードを線分データに対応付けてもよい。
【0045】
以上の処理により、AGVやPMV、車いす、ベビーカーなど(まとめて「小型車両」とも称する。)の走行を制御するために利用される、歩道等の高精度な地図データに含まれる地物データを生成することが可能になる。これにより、小型車両は、通行路の線分データに沿って、進行方向の走行制御処理を行い、線分データに対応付けられる属性情報に基づいて、速度、走行可否、及び停止判定の少なくとも1つの制御処理を行うことが可能になる。なお、歩道等の地物データを利用するのは、小型車両に限らず、歩道等を走行可能な車両、例えばバイクや車幅が狭い車両でもよい。
【0046】
また、特定部216により特定される属性情報は、種類が異なる複数の項目の属性情報を含んでもよい。例えば、属性情報は、舗装種別、平均横断勾配、横断勾配方向、平均縦断勾配、縦断勾配方向、路面特記事項、通行特記事項、障害特記事項の各項目を含んでもよい。
【0047】
例えば、舗装種別は、点群データ、衛星画像、車両10により撮影される画像等のうちの少なくとも1つに基づいて特定されることが可能であり、アスファルト、コンクリート、カラー舗装、砂利(未舗装)などの選択肢の中から1つが特定される。
【0048】
例えば、平均横断勾配や縦断平均勾配は、点群データ、車両10に搭載される角速度センサ、車両10により撮影される画像等のうち少なくとも1つに基づいて特定されることが可能であり、%表記で特定される。
【0049】
横断勾配方向や縦断勾配方向は、同様に、点群データ、車両10に搭載される角速度センサ、車両10により撮影される画像等のうち少なくとも1つに基づいて特定されることが可能である。横断勾配方向は、車道側なのか民地境界側なのかが特定され、縦断勾配方向は、線分データの起点側なのか、終点側なのかが特定され得る。
【0050】
特記事項としての、路面特記事項、通行特記事項、障害特記事項は、ユーザにより設定されてもよい。例えば、ユーザインタフェース250を用いて、各特記事項に対してユーザが入力した内容を、特定部216は、属性情報に設定してもよい。
【0051】
以上の処理により、車道以外の通行路において、属性情報に適切な項目を含めることが可能になる。例えば、車両の走行制御に適した属性情報を、地物データとしての通行路の線分データに対応付けることができる。これにより、車両は、線分データを利用しつつ、線分データに対応付けられる属性情報を取得して適切な走行制御に利用することが可能になる。
【0052】
また、生成部217は、少なくとも1つの項目の属性情報が分割に関する所定条件を満たす場合に、通行路の縁部データを分割して(又は区切って)線分データを生成することを含んでもよい。例えば、生成部217は、分割に関する所定条件として、少なくとも1つの項目の属性情報が異なることを含んでもよい。例えば、生成部217は、属性情報に含まれる幅員データ、又は勾配などが異なる場合、同様の値(所定範囲内の値)を示す縁部データごとに分割し、各線分データを生成してもよい。
【0053】
以上の処理により、点群データ等により抽出される縁部データを利用して線分データを生成するため、線分データの生成が容易であり、情報処理装置20の処理負荷を軽減することが可能になる。また、車道等と同様に、車道以外の通行路の中央線を線分データにする場合、通行路の幅員はエリアによって異なる場合が多いため、中央線を示す線分データの位置を示す情報が複雑になり、処理負荷が増大したり、記憶容量が増加したりする。
【0054】
他方、縁部データから線分データを生成することで、基本的に直線のデータを線分データとするため、位置情報などのデータを容易に特定することができ、各線分データの位置情報は差分値などを用いることで位置情報の記憶容量を削減することが可能になる。
【0055】
また、通行路は、歩道、又は道路外側線から道路舗装縁までの舗装部分を含んでもよい。このとき、抽出部215は、歩道の車道反対側(例、民地境界側)の縁部、又は舗装部分の舗装縁部を抽出することを含んでもよい。
【0056】
上述したとおり、抽出部215が縁部として歩道の外側の縁部(「歩道外側縁」とも称す。)や、舗装部分の最も外側の縁部(「道路舗装縁」とも称す。)を抽出し、生成部217がこれらの縁部に基づく縁部データから線分データを生成することにより、簡易かつ管理容易な線分データを生成することができる。
【0057】
ここで、歩道外側縁及び道路舗装縁を線分データとして使用する意義は、以下の例が挙げられる。
・抽出部215が別途新たな地物の取得をしなくてよい
・通行路において他に存在する線形より、AGV等が走行するエリア内で水平方向、垂直方向の出入り、変化が少ない
・車道寄りには、バス停などの水平方向の出入り口や、切り下げが一部に設けられうるため、歩道外側縁及び道路舗装縁の線分データの方がより直線的である
・車道寄りには、バス停時刻表、街路樹・植樹帯など、障害になる地物が多い
よって、歩道外側縁(又は道路舗装縁)の線分データに沿ってAGV等を走らせた方が、より安全に又は安定的に走行させることが可能になる。
【0058】
また、通行路は、建物内、又は私有地内の通路を含んでもよい。このとき、抽出部215は、建物内の通路の縁部、又は私有地内の通路の縁部を抽出することを含んでもよい。例えば、建物内や私有地を走行可能でMMS計測可能な小型車両を走行させることにより、取得部214は、建物内、又は私有地内の通行路の点群データ等を取得することができる。
【0059】
以上の処理により、抽出部215が縁部として建物内、又は私有地内の通路の縁部を抽出し、生成部217がこれらの縁部に基づく縁部データから線分データを生成し、対応付け部218が線分データに対応する属性情報を、その線分データに対応付けることができる。これにより、建物内、又は私有地内の通路でも小型車両の走行制御が可能になる。
【0060】
また、生成部217は、通行路の各属性情報が対応付けられた各線分データを含む、通行路の地図データを生成する。例えば、生成部217は、車道以外の通行路のみを示す地図データを生成してもよいし、従来の車道を含む地図データに、車道以外の通行路を示す地物データを追加することで、車道と車道以外の通行路とが統合された地図データを生成してもよい。
【0061】
以上の処理により、車道以外の通行路の地物データを含む地図データを流通させることが可能になり、この地図データの利用機会を増やすことができ、また、車道以外の通行路の地図データの利用可能性を上げることができる。
【0062】
<データ例>
次に、上述した処理で生成される地図データに関するデータの例について、図5~9を用いて説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る通行路の地物データに関する情報の一例を示す図である。図5に示す地物関連情報は、例えば点群データ等により抽出されうる地物に対し、属性情報や各種コードを含む。
【0063】
図5に示す例では、歩道が別途設けられていない道路の場合に、車道の外側に関する地物を抽出したり、AGV等も横断歩道を走行するケースが想定されるため、車道内であっても横断歩道の地物を抽出したりする。
【0064】
図5に示す例では、車道に関する地物として、車道外側線、停止線、横断歩道、縁石(車道側下端)、道路舗装縁(歩道のない部分)が抽出される。また、対象地物の左に表記される符号「1-1」などは、地物を識別する地物コードとして使用されてもよい。
【0065】
また、図5に示す各対象地物には、道に関する「Shape名・形状」、属性に関するコード「class」、属性の1つの項目である「walkwidth」(幅員データ)が対応付けられる。「Shape名・形状」は、roadway(道路)、sidewalk(歩道)、obstacle(障害物)、build(建物)などの地物の種別と、()内に、Line(線状)、Poly(面状、点状)などの形状の種類とを含む。「class」は、属性の種類コードを含む。「walkwidth」(幅員データ)は、点群データなどから計測できる歩道等の幅員データを含む。なお、コード「class」が地物コードとして利用されてもよい。
【0066】
抽出部215は、図5に示す地物関連情報に含まれる対象地物を点群データ等から抽出し、特定部216は、抽出された対象地物に対して、図5に示す地物関連情報を参照して各種コードを特定し、属性情報として対象地物に付与してもよい。
【0067】
(対象地物)
次に、図6を用いて、小型車両の走行支援に使用される対象地物の一例について説明する。抽出部215は、小型車両の走行範囲としての歩道両端縁、道路舗装縁及び道路外側線を抽出する。
【0068】
図6Aは、歩道のない道路の一例を示す図である。図6Aに示す例のように、歩道が設置されていない場合は、道路舗装縁と道路外側線との間を走行可能なエリアとする。また、道路舗装縁は、縁石(下端)の場合があり、道路外側線は、線が引かれていない場合もありうる。なお、歩道が設置されている場合は、歩道の両端縁が抽出される。
【0069】
また、交差点等における走行、停止に関わる範囲、線について抽出部215により抽出されてもよい。例えば、以下の地物が抽出される。
・横断歩道(領域枠)
・車歩道境界縁石の歩道側境界(横断歩道接続すりつけ)
・歩道が無い場合に限り、車道の停止線
【0070】
また、抽出部215は、対象地物として、走行範囲内における障害物(領域枠)を抽出してもよい。例えば、以下の障害物が抽出されうる。
・支柱状のもの(信号柱、樹木、バス停時刻表柱等)
・施設(電気施設、植栽枠、郵便ポスト、電話ボックス等)
・段差解消ブロック等も含む
【0071】
図6Bは、歩道上の様々な障害物の一例を示す図である。図6Bに示す例では、樹木、信号柱、バス停、標識などが障害物として抽出されうる。
【0072】
また、抽出部215は、小型車両の走行範囲内における走行不適範囲(領域枠)を抽出してもよい。例えば、以下の地物を走行不適エリアとして抽出してもよい。
・側溝蓋
・グレーチング
・歩道への出入り(切り下げ、民家・ガレージ等への通路等)
【0073】
図6Cは、車歩道に存在するグレーチングの一例を示す図である。図6Cに示す例では、歩道に1つ、車道端部に1つ、太枠で示されるグレーチングが存在する。図6Dは、車の出入りのための切り下げを示す図である。図6Dに示す例では、楕円部分が切り下げを示す。図6A~Dに示す地物は、抽出部215により抽出されるようにしておくとよい。
【0074】
(線分データの生成、幅員データの属性付与)
図7A及びBは、歩道及び道路外側舗装路と、幅員などの属性情報との関係の一例を示す図である。生成部217は、歩道及び道路外側舗装路(まとめて「歩道等」とも称す。)の幅員を狭める要因となる地物(障害物等)の位置等に基づいて、線分データを生成する。また、生成部217は、生成する線分データの元となる線分データについては、歩道縁(民地側境界)または道路舗装縁を基準にしてもよい。
【0075】
図7Aは、図示された道路の上側に歩道があり、図示された道路の下側に道路外側舗装路がある例を示す。また、歩道内及び道路外側舗装路内には障害物があり、道路外側舗装路はさらに幅員が右に行くにつれて狭くなる。
【0076】
図7Aに示す例では、最終的に生成部217により区間A~C(線分データ)に分割されている。また、区間A~Cの歩道の外側の縁(「外縁」とも称す。)の種類コードは、図5に示す「21」(歩道縁(民地側、外側の縁))が特定部216により付与されている。また、線分データに関連付けられる属性の一項目である幅員データ(外側width)は、後述の幅員コードが特定部216により付与されている。
【0077】
例えば、区間A及びCの幅員コードは、「12」(1m以上、2m未満)であり、区間Bの幅員コードは、障害物があるため、区間A及びCの幅員よりも狭い「11」(0.5m以上、1m未満)である。また、区間A~C(線分データ)の歩道の内側の縁(「内縁」とも称す。)の種類コードは、図5に示す「22」(縁石(歩道縁(歩車道間にある縁石の歩道側縁))が特定部216により付与されている。
【0078】
また、図7Aに示す例では、同様に、最終的に生成部217により区間J~M(線分データ)の車道外側縁(「道縁」とも称す。)に分割されている。また、区間J~Mの種類コードは、図5に示す「11」(車道外側線)が特定部216により付与されている。また、線分データに関連付けられる属性の一項目である幅員データ(道縁width)は、それぞれの区間の幅員データに基づいて幅員コード「0」(0.5m未満)、「11」又は「12」が特定部216により付与されている。また、道路外側舗装路の道路舗装縁についても各区間に種類コード「13」が特定部216により付与されてもよい。
【0079】
図7Bに示す例について、特定部216は、少なくとも点群データ等を用いて、属性情報に含まれる幅員データや、切り下げの勾配等を特定する。例えば、特定部216は、区間Hのエリアの切り下げに対応する種類コード「23」を特定する。また、特定部216は、区間O、Q~Rのエリアは、車道外側線の標示なし、車道外側線から舗装縁までの距離が0.5m未満であることを特定し、幅員コード「0」を付与する。なお、区間Oにおいて道路縁に位置する黒資格は例えば郵便ポストなどの定常的に存在する障害物を示す。この場合、生成部217は、この障害物の両端1mで区切って線分データを生成し、対応付け部218は、この線分データに対し、車両10が走行できないことを示す幅員データ「0」を対応付ける。
【0080】
ここで、図7A及びBを用いて線分データが生成されるまでの処理を説明する。まず、抽出部215は、点群データに少なくとも基づいて車道以外の通行路の縁部を抽出したり、通行路に関する地物、例えば障害物などを抽出したりする。次に、特定部216は、抽出部215により抽出された地物の属性情報を特定する。例えば、特定部216は、図5に示す地物関連情報を用いて、地物のコードを特定し、抽出された対象地物にコードを付与する。次に、生成部217は、抽出された通行路の縁部と、特定された属性情報とに基づいて各区間に分割して各線分データを生成する。最後に、対応付け部218は、生成された各線分データに、対応する属性情報を対応付ける。
【0081】
(幅員コード)
ここで、幅員コードについて説明する。図8は、本発明の一実施形態に係る幅員コードの一例を示す図である。幅員コードを設定する利点は、幅員データの作成、管理コストの削減や、幅員データを利用する側の処理負荷の軽減である。例えば、個々の歩道区間を詳細な幅員の数値を設定すると、処理負荷やコストが増加し、小型車両の経路設定時においても幅員を把握することが煩雑になる。よって、特定部216は、幅員の数値に基づいて概ねの幅員レベル(幅員コード)を設定し、各区間(各線分データ)の属性情報として幅員コードを付与してもよい。図8に示す幅員コードは一例であり、他のレベル(範囲)が設定されてもよい。
【0082】
図9は、本発明の一実施形態に係る線分データに対応付け可能な属性情報の一例を示す図である。図9に示す例では、属性情報は、舗装種別、平均横断勾配、横断勾配方向、平均縦断勾配、縦断勾配方向、路面特記事項、通行特記事項、障害特記事項などを含む。
【0083】
舗装種別は、例えば、アスファルト、コンクリート、カラー舗装、砂利などの路面の表面の種類が点群データ、車両10の撮影画像などに基づいて特定部216により特定されうる。平均横断勾配や縦断平均勾配は、例えば、点群データ、車両10に搭載される角速度センサ、車両10の撮影画像のうち少なくとも1つに基づいて、特定部216により特定されうる。例えば、平均横断勾配や縦断平均勾配は、%表記で特定される。
【0084】
横断勾配方向や縦断勾配方向は、点群データ、車両10に搭載される角速度センサ、車両10の撮影画像のうち少なくとも1つに基づいて、特定部216により特定されうる。横断勾配方向は、車道側に下がるのか民地境界側に下がるのかが特定され、縦断勾配方向は、線分データの起点側に下がるのか、終点側に下がるのかが特定されうる。
【0085】
特記事項としての、路面特記事項、通行特記事項、障害特記事項は、ユーザにより設定されてもよい。例えば、ユーザインタフェース250を用いて、各特記事項に対してユーザが入力した内容を、特定部216は、属性情報に設定してもよい。路面特記事項には、例えば、舗装劣化、ひび割れ、樹木の根による盛り上がりなどが設定されうる。通行特記事項には、例えば、自転車通行多い、日中歩行多いなどが設定されうる。障害特記事項には、例えば、駐車自転車多い、駐車車両多い、置き看板多い、段差解消ブロック多いなどが設定されうる。
【0086】
<線分の分割例>
次に、生成部217による線分データの生成について、いくつかの例を挙げて説明する。以下に示す例では、車道を走行して歩道等の点群データも計測された場合を想定するが、歩道等を別で走行して車両のMMSにより計測されたデータが用いられてもよい。
【0087】
(ケース1)路面上の縦断方向の長さが1mに満たない地物の区間切り
電柱や照明灯支柱のように、路面上の縦断方向区間が1mに満たない地物(約20~40cm程度)があり、この地物により歩道の幅員が狭められている場合、このような小さな地物の区間切りは、小型車両の経路設定時に見逃すことも考えられる。そのため、1mに満たない地物の場合、生成部217は、支柱等のある位置を通過するように、道路中心線(無い場合は仮想する)から歩道縁(民地側境界)または道路舗装縁に向けて略垂線を延ばし、その交点から歩道縁または舗装縁を前後約1m程度(目安)で計2m程度の区間切りを行う。
【0088】
図10は、ケース1における区間切りの一例を示す図である。図10に示す例において、生成部217は、障害物O10を通り、道路中心線から略垂線を延ばした場合の歩道縁の交点を中心にし、この中心から左右(又は前後)に歩道縁に沿って所定距離の範囲で区切り、線分データを生成する。図10に示す区間L10及びL14について、ともに幅員データ(幅員数値)はM10である。他方、区間L12は、障害物O10が存在するため、この区間の幅員データM12は、M10よりも狭い。
【0089】
(ケース2)路面上の縦断方向の長さが1mを超える地物の区間切り
路面上の縦断方向区間が1mを超える地物については、生成部217は、地物の縦断方向の両端(最大部分)の位置を通過するように、道路中心線(無い場合は仮想する)から歩道縁(民地側境界)または道路舗装縁に向けて略垂線を延ばし、幅員の変化開始箇所(狭くなりはじめたところから)間で区間切りを行う。
【0090】
図11は、ケース2における区間切りの一例を示す図である。図11に示す例では、バスベイ、駐車帯などにより歩道が狭くなっている例を示す。生成部217は、中央線から地物の両端(最大部分)を通過する略垂線を設定し、この垂線と歩道縁との交点で区切る。図11に示す区間L20及びL24について、ともに幅員データ(幅員数値)はM20である。他方、区間L22は、一番狭いエリアの幅員データを計測し、M22とする。
【0091】
(ケース3)地物が短距離で連続的に存在する場合の区間切り
幅員を狭める要因となる地物が、縦断方向にある程度の間隔で連続的に存在する場合、生成部217は、個々の地物ごとに区間切りをするのではなく、一体としての区間切りを行う。対応付け部218は、その区間に付与する幅員情報が通り抜けできないことも考慮し、最も狭い幅員情報を対応付ける。ここで連続的とする地物間の距離とは、約5~10m程度とするが、前後の歩道環境により、この距離は限定されない。
【0092】
例えば、対応付け部218は、連続する区間で、途中に建物への間口や歩道の切り下げなど、歩道外への出入りができなく、通り抜けしか用途が無い区間は、最も狭い幅員データを区間に対応付ける(例えば図12)。
【0093】
また、生成部217は、連続する区間であっても、間に歩道の切り下げがある場合は、この前後の地物の区間切り定義に基づいて区間切りを行う(例えば図13)。
【0094】
図12は、ケース3における区間切りの一例を示す図である。図12に示す例では、歩道の幅員をある程度一定の間隔で狭めている地物(障害物O30など)が比較的短距離にあり、その区間内に歩道の切り下げ等、歩道への出入りができない区間の場合を示す。
【0095】
例えば、図12に示すように歩道への出入りができない区間で、歩道を狭める要因となる地物が散在し、区間によって狭まった幅員が異なる場合がある。このとき、対応付け部218は、この区間内に民地側へのアクセス路(玄関口等)が無い場合は、この両端の区間L32を一体的に扱い、障害物O30により最も狭まった幅員M32(M32<M34=M36)を区間L32の属性として対応付ける。これは、最も狭まった幅員を把握することで、小型車両が通り抜け可能かを判断することができるようにするためである。
【0096】
図13は、ケース3における区間切りの他の例を示す図である。図13に示す例では、歩道の幅員をある程度一定の間隔で狭めている地物(障害物O40など)が比較的短距離にあるが、その区間内に歩道の切り下げ等があり、歩道への出入りが可能な区間L44がある場合である。
【0097】
図13に示す例では、対応付け部218は、区間L40、L44、L48に対し、歩道の幅員データを属性情報として付与し、区間L42及びL46に対し、歩道が狭まっている幅員データM42及びM46それぞれを属性情報として付与する。
【0098】
区間L42及びL44は、区間L44に歩道へ出入りできる切り下げが存在するため、連続的な区間として取り扱われない。他方、障害物O40を含む区間L46は、歩道へ出入り可能な切り下げ等が存在しないため、連続的な区間として取り扱われる。なお、図13に示す曲線の矢印は、幅員コードM40が区間L40、L48それぞれの属性に、幅員コードM44が区間L46の属性に対応付けられることを意味する。
【0099】
上述したケース1~3は、線分データの区間切りの一例を示すが、上述した例に限られず、その他の条件等を用いて生成部217は線分データ(区間)を生成してもよい。
【0100】
<動作>
次に、情報処理システム1の地図データ生成に関する各処理について説明する。図14は、本発明の一実施形態に係る地図データ生成に関する処理の一例を示すフローチャートである。図14に示す処理は、情報処理装置20により実行される処理である。
【0101】
ステップS102において、情報処理装置20の取得部214は、車道以外の通行路における点群データを少なくとも取得する。取得部214は、点群データ以外にも、各種センサでセンシングされたデータも取得してもよい。また、取得部214は、合わせて車道に関する点群データや各種データを取得してもよい。
【0102】
ステップS104において、抽出部215は、車道以外の通行路における点群データに少なくとも基づいて、通行路の縁部を抽出する。
【0103】
ステップS106において、特定部216は、取得部214により取得された点群データに基づいて、通行路に関する属性情報を特定する。例えば、特定部216は、図5に示す地物関連情報を参照して、抽出部215により抽出された地物から属性情報を特定する。
【0104】
ステップS108において、生成部217は、抽出部215により抽出された通行路の縁部に関する縁部データと、特定部216により特定された属性情報とに基づいて、通行路に関する線分データを生成する。例えば、生成部217は、図10~13において説明した方法を用いて線分データを生成してもよい。
【0105】
ステップS110において、対応付け部218は、生成部217により生成された線分データに、この線分データに対応する通行路の属性情報を対応付ける。属性情報は、例えば、幅員データや図9に示す各項目のデータのうち少なくとも1つが設定されればよい。好適には、属性情報として幅員データが設定されるとよい。これにより、小型車両が走行可能か否かを判断することが可能になり、小型車両のルーティングやナビゲーションに利用することが可能になる。
【0106】
ステップS112において、生成部217は、対応付け部218により通行路の各属性情報が対応付けられた各線分データを含む、通行路の地図データを生成する。この地図データは、車道のHDマップを含んでもよい。
【0107】
図15は、本発明の一実施形態に係る属性情報の特定から対応付け処理までの一例を示すフローチャートである。図15に示す処理は、図14に示すステップS106乃至S110の処理の具体例を示す。
【0108】
ステップS202において、特定部216は、車道以外の通行路の各エリアの幅員を計測し、幅員データ(数値又は幅員コード)を特定する。
【0109】
ステップS204において、生成部217は、車道以外の通行路内に存在する地物データ(例えば障害物)又は属性情報(例えば幅員データ、勾配など)に基づいて、歩道等の縁部データを分割し、各線分データを生成する。
【0110】
ステップS206において、対応付け部218は、生成部217により生成された各線分データに対し、対応する属性情報を対応付ける(設定する)。
【0111】
ステップS206で処理されるステップS208において、対応付け部218は、計測された通行路の幅員データを、線分データに対応付けられる属性情報の一項目として入力する。なお、属性情報の項目は、図9に示す項目が含められてもよい。
【0112】
以上の処理によれば、車道以外の通行路を走行する車両に使用可能な高精度な地図データを提供することができる。高精度な地図データを利用する車両は、自律走行できなくてもよく、この地図データを用いて、通行路のルーティングやナビゲーションなどに用いられてもよい。
【0113】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。例えば、本発明は、情報処理装置20が実行する処理について、一部の処理を、他の情報処理装置に移行したり、複数の情報処理装置を適宜統合したりしてもよい。
【0114】
<変形例1>
変形例1において、上述した実施形態は、地図データのデータ構造により構成されてもよい。例えば、プロセッサ及びびメモリを備えるコンピュータに用いられ、このメモリに記憶される車道以外の通行路に関する地図データのデータ構造である。このデータ構造は、各線分データと、属性情報とを含む。各線分データは、通行路における点群データに基づいて抽出された縁部に関する縁部データを用いて生成される各線分であって、プロセッサにより車両の進行に関する制御処理に用いられる。例えば、車両は、各線分データに沿って走行するように制御される。よって、線分データはできるだけ直線が好ましいため、歩道縁などの直線の縁部データを分割することで生成されるとよい。
【0115】
また、属性情報は、対応する各線分データに関連付けられる、点群データに基づいて特定される通行路の属性情報であって、プロセッサにより車両の速度、走行可否、及び停止判定の少なくとも1つの制御処理に用いられる。例えば、属性情報は、車両の速度調整、一旦停止、迂回などの経路探索などに使用されうる。具体的には、属性情報の幅員データの大きさに応じて車両の速度が調整され、例えば、車両は、幅員が狭くなるほど速度を遅く調整するとよい。また、車両は、属性情報の切り下げが示すエリアでは、車両の出入りがある可能性があるため、切り下げエリアの前で一旦停止するよう制御してもよい。
【0116】
これにより、上述のデータ構造を有する地図データを車両や車両を遠隔制御する装置に提供することで、車両は車道以外の通行路を自律的に走行することが可能になる。
【0117】
<変形例2>
上述した例では、通行路の地図データは、車両に用いられる例を説明したが、その他のアプリケーションにより利用されてもよい。例えば、視覚障碍者が利用する携帯端末に地図データが提供されることで、詳細な道案内に利用されたり、VR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)などに利用されたり、デジタル広告などに利用されたり、詳細な位置が特定可能なゲームなどに利用されてもよい。
【0118】
<変形例3>
また、車道以外の通行路のHDマップは、従来の車道のHDマップに関連付けることも可能である。例えば、特定部216は、車道の線分データと、通行路の線分データとの位置関係を特定し、対応付け部218は、車道の線分データに、通行路の線分データの位置を特定可能な情報を対応付ければよい。例えば、通行路の線分データの起点の位置情報に一番近い車道の線分データに対し、この車道の線分データの起点の位置情報と通行路の線分データの起点の位置情報との差分値を、車道の線分データに関連付けておく。また、この差分値を示すデータを、車道の線分データの地物データのIDに含めるようにしてもよい。
【0119】
<変形例4>
車道以外の通行路は、船舶等が航行する河川も含まれ得る。例えば、船舶に計測機を搭載し、河川における点群データ等を取得して、河川における3次元高精度マップの生成が可能になる。この際、上述したように、河川を属性情報(河川幅や橋梁の位置、停留船の位置等)に基づいて線分データが生成され、区切られた各線分データに属性情報が付与される。例えば、船舶の操縦を支援する操船支援システムにおいて、この河川のHDマップを利用し、線分データ及び/又は線分データに関連付けられた属性情報を用いて、通行可能か否かを判定する。また、河川のHDマップは、船舶の航路決定や航路案内(ナビゲーション)などにも利用することが可能である。よって、変形例4の場合、上述した通行路を河川にし、車両を船舶に置き換えればよい。
【符号の説明】
【0120】
1…情報処理システム、10…計測車両、20…情報処理装置、30…測位衛星、40…観測衛星、100…天板、101…GNSS受信機、102…IMU、103…レーザスキャナ、104…カメラ、105…走行距離計、106…プロセッサ、107…各種センサ、108…通信装置、210…CPU、212…地図制御部、213…送受信部、214…取得部、215…抽出部、216…特定部、217…生成部、218…対応付け部、230…記憶装置、250…ユーザインタフェース、220…ネットワーク通信インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15