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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】噴霧ノズル
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/02 20060101AFI20241225BHJP
   B05B 1/12 20060101ALI20241225BHJP
   B05B 1/30 20060101ALI20241225BHJP
   B05B 7/12 20060101ALI20241225BHJP
   A01G 25/00 20060101ALN20241225BHJP
【FI】
B05B1/02 101
B05B1/12
B05B1/30
B05B7/12
A01G25/00 601E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022072206
(22)【出願日】2022-04-26
(65)【公開番号】P2023161704
(43)【公開日】2023-11-08
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】397002360
【氏名又は名称】ヤマホ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】今川 良成
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-239964(JP,A)
【文献】特開2005-319365(JP,A)
【文献】特開2023-084837(JP,A)
【文献】特開2004-298778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/02
B05B 1/12
B05B 1/30
B05B 7/12
A01G 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心部に流路が貫通形成された筒状のノズル本体と、前記ノズル本体の先端部に取り付けられ、中央に噴口を有する噴板と、前記ノズル本体の径方向外側に配される作動筒とを備え、
前記ノズル本体は、前記噴板が取り付けられる先端側本体と、外部の液体供給源に接続される後端側本体とが、相対的に軸心まわりに回動不能かつ軸方向移動可能に連結されたものであり、
前記先端側本体は、前記後端側本体の先端部が嵌まり込む係合穴を有し、前記係合穴よりも先端側に前記流路の軸心上に配される中央孔を有する第1オリフィス部が設けられ、前記第1オリフィス部よりも先端側の外周面から流路へ貫通孔が貫通し、前記貫通孔よりも後端側の外周面におねじが形成されており、
前記後端側本体の先端には、前記流路の軸心上に配される中央孔とその周囲に配される周辺孔とを有し、前記先端側本体の係合穴の底面と対向する第2オリフィス部が設けられており、
前記作動筒は、その内周面に設けられためねじが前記先端側本体のおねじとねじ結合して、前記先端側本体に対して軸心まわりに回動可能に取り付けられるとともに、前記後端側本体に対して軸心まわりに回動可能かつ軸方向移動不能に取り付けられており、
前記作動筒を一方向に回動させることにより、前記先端側本体を後端側へ移動させて、前記係合穴の底面を前記第2オリフィス部に当接させたときは、前記第2オリフィス部の中央孔が先端側本体の流路に連通するとともに周辺孔が係合穴の底面で閉じられ、
前記作動筒を逆方向に回動させることにより、前記先端側本体を先端側へ移動させて、前記係合穴の底面を前記第2オリフィス部から離間させたときは、前記第2オリフィス部の中央孔および周辺孔が先端側本体の流路に連通し、
前記後端側本体の後端側から流路に供給された液体は、前記第2オリフィス部および前記先端側本体の第1オリフィス部を通過した後、外部から前記先端側本体の貫通孔を通って流路に導入された空気と混合されて、前記噴板の噴口から噴射されるようになっており、
前記後端側本体の第2オリフィス部にその中央孔の周縁から前記先端側本体の流路に向かって突出する環状突部が設けられ、前記先端側本体の係合穴の底面が第2オリフィス部に当接するときに、前記環状突部が先端側本体の流路の後端部に嵌まり込むようになっていることを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項2】
前記後端側本体の環状突部の外周面および前記先端側本体の流路の後端部の内面が、同一形状のテーパ面で形成されていることを特徴とする請求項に記載の噴霧ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬や水等の液体の散布に用いられる噴霧ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
農薬や水等の液体を散布する際には、液圧送ホース等の液体供給源に噴霧ノズルを接続することにより、液体を霧状にして効率よく散布作業を行うことができる。ただし、その噴霧ノズルは、液体散布の用途に応じたものを用いる必要があり、例えば農作物の葉の表面の一部に液体を散布しようとする場合は噴霧量の少ないものが用いられ、農作物の葉面全体に液体を散布しようとする場合は噴霧量の多いものが用いられる。このため、用途に応じて求められる噴霧量が変われば、液体供給源に接続している噴霧ノズルを異なる種類のものに変更する必要があり、特に大型のブームスプレイヤー等の噴霧器では噴霧ノズルを交換する際の作業負荷が大きくなる。
【0003】
これに対し、噴霧量を切り替えられる構造の噴霧ノズルを用いれば、噴霧ノズルの交換作業を省略したり交換頻度を減らしたりすることができる。このような噴霧量の切替が可能な噴霧ノズルとしては、例えば特許文献1で提案されているものがある。
【0004】
特許文献1の噴霧ノズルは、図6に示すように、軸心部に流路52が貫通形成された筒状のノズル本体51と、そのノズル本体51の先端部に取り付けられ、中央に噴口53aを有する噴板53と、噴板53をノズル本体51に取り付ける先端キャップ54と、ノズル本体51の後端部に連結され、外部の液体供給源である液圧送ホースに接続される基筒55と、基筒55をノズル本体51に取り付ける連結キャップ56と、ノズル本体51の径方向外側に配される筒状の操作用カバー57と、ノズル本体51の流路52の先端部に配される中子58と、ノズル本体51の流路52の途中を仕切るオリフィス板59とを備えている。オリフィス板59は、中央孔59aと、その周囲の複数の周辺孔59bとを有している。ここで、先端とは液体の流れ方向の下流側端、後端とは液体の流れ方向の上流側端のことをいう(以下同じ)。
【0005】
前記ノズル本体51は、先端側本体70と基筒55に連結される後端側本体80とに分割されており、さらに、その先端側本体70が、噴板53および中子58を取り付けられる先端部71と、オリフィス板59を取り付けられる中間部72とに分割されている。先端側本体70の中間部72は、オリフィス板59取付位置よりも先端側に、外周面から流路52に貫通する貫通孔72aが設けられ、貫通孔72aよりも後端側の外周面におねじが設けられている。また、先端側本体70の先端部71と中間部72とは凹凸係合により一体化されており、後端側本体80は凹凸係合により基筒55と一体化されている。そして、先端側本体70の中間部72の後端側内周に後端側本体80の先端側部分が相対的に回動不能かつ軸方向移動可能に嵌め込まれ、後端側本体80の先端面とオリフィス板59の周辺孔59bとが軸方向で対向している。
【0006】
前記操作用カバー57は、その内周面に設けられためねじがノズル本体51を構成する先端側本体70の中間部72のおねじとねじ結合して、ノズル本体51に対して軸心まわりに回動可能に取り付けられている。また、後端部に設けられたフランジ部57aが、ノズル本体51を構成する後端側本体80の後端部と連結キャップ56とによって、軸方向に相対移動不能な状態で挟まれている。これにより、操作用カバー57を回動させると、ノズル本体51の先端側本体70が、オリフィス板59とともに、操作用カバー57およびノズル本体51の後端側本体80に対して相対的に軸方向移動するようになっている。
【0007】
そして、ノズル本体51の先端側本体70の外周面と操作用カバー57の内周面の間には、操作用カバー57の先端側から軸方向に沿って延び、外部と先端側本体70の貫通孔72aとを連通させる連通路60が形成されている。連通路60は途中に屈曲部60aを有しており、その屈曲部60aの後端側近傍にOリング61が配されている。
【0008】
この従来の噴霧ノズルは、上記の構成であり、操作用カバー57を一方向に回動させることにより、ノズル本体51の先端側本体70をオリフィス板59とともに後端側へ軸方向移動させ、連通路60を開放するとともに、オリフィス板59を後端側本体80の先端面に密着させて、オリフィス板59の周辺孔59bを閉じたときは、ノズル本体51の後端側から流路52に供給された液体が、オリフィス板59の中央孔59aを通過した後、外部から連通路60およびノズル本体51の貫通孔72aを通って流路52に導入された空気と混合されて、噴板53の噴口53aから噴射される。このときには、噴霧粒径が大きく、噴霧量の少ない噴霧態様が得られる。
【0009】
一方、操作用カバー57を逆方向に回動させることにより、ノズル本体51の先端側本体70をオリフィス板59とともに先端側へ軸方向移動させ、連通路60をOリング61で閉じるとともに、オリフィス板59を後端側本体80の先端面から離して、オリフィス板59の周辺孔59bを開放したときには、ノズル本体51の後端側から流路52に供給された液体が、オリフィス板59の中央孔59aと各周辺孔59bを通過して、空気と混合されることなく、噴板53の噴口53aから噴射される。このときには、噴霧粒径が小さく、噴霧量の多い噴霧態様が得られる。
【0010】
すなわち、この噴霧ノズルでは、ノズル本体51に取り付けられた操作用カバー57を回動させることより、空気を混入した液体を少量散布する状態と、空気非混入の液体を多量散布する状態とを切り替えられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2005-319365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した従来の噴霧ノズルは、空気非混入の多量散布状態としたとき、噴霧粒径が小さくなってドリフト現象(噴霧された液体が散布対象場所以外へ飛散してしまう現象)を引き起こしやすいため、除草剤等の散布には不向きであった。
【0013】
そこで、本発明は、噴霧量の切り替えが可能で、かつドリフト現象を生じにくい噴霧ノズルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の噴霧ノズルは、軸心部に流路が貫通形成された筒状のノズル本体と、前記ノズル本体の先端部に取り付けられ、中央に噴口を有する噴板と、前記ノズル本体の径方向外側に配される作動筒とを備え、前記ノズル本体は、前記噴板が取り付けられる先端側本体と、外部の液体供給源に接続される後端側本体とが、相対的に軸心まわりに回動不能かつ軸方向移動可能に連結されたものであり、前記先端側本体は、前記後端側本体の先端部が嵌まり込む係合穴を有し、前記係合穴よりも先端側に前記流路の軸心上に配される中央孔を有する第1オリフィス部が設けられ、前記第1オリフィス部よりも先端側の外周面から流路へ貫通孔が貫通し、前記貫通孔よりも後端側の外周面におねじが形成されており、前記後端側本体の先端には、前記流路の軸心上に配される中央孔とその周囲に配される周辺孔とを有し、前記先端側本体の係合穴の底面と対向する第2オリフィス部が設けられており、前記作動筒は、その内周面に設けられためねじが前記先端側本体のおねじとねじ結合して、前記先端側本体に対して軸心まわりに回動可能に取り付けられるとともに、前記後端側本体に対して軸心まわりに回動可能かつ軸方向移動不能に取り付けられており、前記作動筒を一方向に回動させることにより、前記先端側本体を後端側へ移動させて、前記係合穴の底面を前記第2オリフィス部に当接させたときは、前記第2オリフィス部の中央孔が先端側本体の流路に連通するとともに周辺孔が係合穴の底面で閉じられ、前記作動筒を逆方向に回動させることにより、前記先端側本体を先端側へ移動させて、前記係合穴の底面を前記第2オリフィス部から離間させたときは、前記第2オリフィス部の中央孔および周辺孔が先端側本体の流路に連通し、前記後端側本体の後端側から流路に供給された液体は、前記第2オリフィス部および前記先端側本体の第1オリフィス部を通過した後、外部から前記先端側本体の貫通孔を通って流路に導入された空気と混合されて、前記噴板の噴口から噴射される構成を採用した。
【0015】
上記の構成によれば、ノズル本体に取り付けられた作動筒を回動させるだけで、液体を少量散布する状態と多量散布する状態とを容易に切り替えることができる。しかも、散布される液体は空気の混入により噴霧粒径の大きいものとなるので、ドリフト現象の発生を効果的に抑えることができる。
【0016】
また、上記の構成においては、前記後端側本体の第2オリフィス部にその中央孔の周縁から前記先端側本体の流路に向かって突出する環状突部が設けられ、前記先端側本体の係合穴の底面が第2オリフィス部に当接するときに、前記環状突部が先端側本体の流路の後端部に嵌まり込むようになっていることが好ましい。このようにすれば、先端側本体を後端側へ移動させたときに、先端側本体の係合穴の底面が全面で第2オリフィス部と密着しない場合でも、第2オリフィス部の周辺孔を通過した液体が先端側本体の流路へ流れ込みにくくなるので、少量散布状態での意図しない噴霧量の増加を抑えることができる。
【0017】
ここで、前記後端側本体の環状突部の外周面および前記先端側本体の流路の後端部の内面が、同一形状のテーパ面で形成されている構成とすれば、先端側本体が後端側へ移動するときに、環状突部がよりスムーズに先端側本体の流路の後端部に入り込むようにすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の噴霧ノズルは、上述したように、作動筒を回動させることにより、先端側本体を軸方向移動させて、第2オリフィス部の周辺孔を開閉するようにしたものであるから、液体を少量散布する状態と多量散布する状態を容易に切り替えることができる。しかも、空気の混入によって液体の噴霧粒径を大きくできるので、ドリフト現象の発生を効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の噴霧ノズルの使用状態の斜視図
図2図1の噴霧ノズルの分解斜視図
図3図1の噴霧ノズルの縦断正面図(少量散布状態)
図4図3のIV-IV線に沿った断面図
図5図1の噴霧ノズルの先端側本体を軸方向移動させた状態を示す縦断正面図(多量散布状態)
図6】従来の噴霧ノズルの一部縦断正面図(少量散布状態)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1乃至図5に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1は、実施形態の噴霧ノズル10を、外部の液体供給源であるブームスプレイヤーのブームBの長手方向に所定間隔で設けられた導液管(枝管)Pに接続した状態を示す。ここで、ブームBの導液管Pは、図示は省略するが、先端側の外周に噴霧ノズル10を接続するためのおねじが形成されており、その先端に噴霧ノズル10を回り止めするための一対の切欠きが設けられている。
【0021】
この噴霧ノズル10は、図2乃至図4に示すように、軸心部に流路2が貫通形成された筒状のノズル本体1と、そのノズル本体1の先端部に取り付けられる噴板3と、噴板3をノズル本体1に取り付ける先端キャップ4と、ノズル本体1をブームBの導液管Pに接続する連結キャップ5およびロックキャップ6と、ノズル本体1の径方向外側に配される作動筒7と、ノズル本体1の流路2の先端部に配される中子8と、後述するように作動筒7のノズル本体1に対する軸方向移動を規制するためのU字状のスライドピン9とを備えている。なお、図2乃至図4図1と上下方向を逆にして描いたものであり、上方が液体噴出方向となっている(後述の図5も同じ)。
【0022】
ノズル本体1は、噴板3および中子8が取り付けられる先端側本体20と、導液管Pに接続される後端側本体30とを、後述するように、相対的に軸心まわりに回動不能かつ軸方向移動可能に連結したものである。さらに、先端側本体20は、本体先端部21と本体中間部22とに分割されている。
【0023】
先端側本体20の本体先端部21は、中子8が取り付けられる位置に流路出口2aが形成されており、その流路出口2aの底となる段差面から後端面に向かって段階的に拡径する軸孔21aに、本体中間部22の先端側部分が軸方向移動不能かつ回動不能に嵌め込まれるようになっている。
【0024】
そして、本体先端部21の流路出口2aの内周には、一対の円弧状の中子受け23が本体先端部21の先端面から僅かに突出する状態で設けられ、流路出口2aの段差面から軸方向に延びる一対の中子固定用の凹部21bが軸孔21aと連通している。また、本体先端部21の外周には先端キャップ4とねじ結合するおねじ24が設けられている。
【0025】
先端キャップ4は、先端側内周に内フランジ4aを有しており、本体先端部21の先端面にOリング11と噴板3を重ねた状態で、本体先端部21のおねじ24とねじ結合することにより、噴板3の外周縁部を内フランジ4aで締め付けて、Oリング11で噴板3と本体先端部21との間をシールし、噴板3と中子8を本体先端部21に取り付けるようになっている。
【0026】
噴板3は、径方向に沿って延びる断面U字状の膨出部3aが形成されており、その膨出部3aの長手方向中央に幅方向に延びる噴口3bがあけられている。
【0027】
中子8は、流路出口2aまで流れてきた液体の流れを整えるもので、その液体を噴板3に向けて流す一対の孔8aを有している。また、背面(本体先端部21に対向する側の面)には一対の位置決めピン8bが設けられ、前面(噴板3に対向する側の面)の周縁部には一対の突起8cが設けられている。そして、各位置決めピン8bが本体先端部21の中子固定用の凹部21bに挿入され、背面の周縁部の一部が本体先端部21の中子受け23に当接する状態で組み込まれている。
【0028】
また、中子8を噴板3およびOリング11とともに先端キャップ4で本体先端部21に取り付けるときには、中子8の前面の各突起8cが噴板3の膨出部3aの背面(中子8に対向する側の面)の溝に嵌まり込み、これによって中子8と噴板3とが周方向に位置決めされるようになっている。
【0029】
先端側本体20の本体中間部22は、本体先端部21の軸孔21aに挿入される部位の途中に先細りのテーパ部25を有し、そのテーパ部25よりも後端側の外周に複数の凸部26が周方向に等間隔で設けられている。そして、そのテーパ部25が本体先端部21の軸孔21aの内周に圧入され、各凸部26が本体先端部21の内周に設けられた複数の軸方向溝21cに嵌め込まれて、本体中間部22と本体先端部21とが一体化されている。なお、本体中間部22のテーパ部25よりも先端側の外周と本体先端部21の内周との間に、両者の間をシールするOリング12が組み込まれている。
【0030】
また、本体中間部22は、その後端の大径部に後端側本体30の先端部分が嵌まり込む係合穴22aが設けられており、係合穴22aよりも先端側に流路2の軸心上に配される中央孔27aを有する第1オリフィス部27が一体に形成されている。その係合穴22aの中心から第1オリフィス部27の中央孔27aまでの流路2は、内面が後端に向かって広がるテーパ面で形成されている。そして、第1オリフィス部27よりも先端側に、外周面から流路2に貫通する一対の貫通孔28が流路2を挟んで対向するように設けられている。なお、貫通孔28の外側開口付近はその開口よりも大きく切り欠かれ、空気が本体中間部22の外側から貫通孔28に流れ込みやすくなっている。
【0031】
また、本体中間部22の大径部には、貫通孔28よりも後端側の外周面に作動筒7とねじ結合するおねじ29が設けられ、後端部分に後端側本体30と相対回動不能に嵌合するための一対の切欠き22bが設けられている。
【0032】
後端側本体30は、先端部が小径に形成されており、その小径部の外周に、本体中間部22との間をシールするOリング13を組み込むための第1環状溝31が設けられ、軸方向中央部の外周に、後述するようにスライドピン9と係合する第2環状溝32が設けられている。
【0033】
また、その小径先端部の外周には一対の凸部33が設けられており、各凸部33が本体中間部22の切欠き22bに嵌合する状態で小径先端部を本体中間部22の係合穴22aに嵌め込むことにより、先端側本体20と後端側本体30とが相対的に軸心まわりに回動不能かつ軸方向移動可能に連結されている。
【0034】
また、小径先端部には、流路2の軸心上に配される中央孔34aとその周囲に配される周辺孔34bとを有し、本体中間部22の係合穴22aの底面と対向する第2オリフィス部34が一体に形成されている。第2オリフィス部34には、その中央孔34aの周縁から本体中間部22の流路2に向かって突出する環状突部34cが設けられている。環状突部34cは、その外周面が本体中間部22の流路2の後端部の内面と同一形状のテーパ面で形成されており、後述するように本体中間部22の係合穴22aの底面が第2オリフィス部34に当接するときに、本体中間部22の流路2の後端部に嵌まり込むようになっている。
【0035】
さらに、後端側本体30の後端部の外周には、連結キャップ5を係止するためのフランジ35が設けられ、フランジ35よりも後端側に一対の回り止め用凸部36が設けられている。
【0036】
連結キャップ5は、その先端側内周に内フランジ5aを有している。そして、図示は省略するが、後端側本体30の回り止め用凸部36を導液管Pの切欠きに嵌め込んだ状態で導液管Pのおねじとねじ結合することにより、内フランジ5aで後端側本体30のフランジ35を締め付けて、後端側本体30を導液管Pに接続するようになっている。
【0037】
また、ロックキャップ6は、連結キャップ5の後端側に相対的に軸心まわりに回動不能かつ軸方向移動不能に装着され、上記のように連結キャップ5で後端側本体30を導液管Pに接続したときに連結キャップ5を緩み止めするものである。
【0038】
作動筒7は、その内周面に設けられためねじ7aが、本体中間部22の外周面のおねじ29とねじ結合することにより、先端側本体20に対して軸心まわりに回動可能に取り付けられている。
【0039】
また、作動筒7は、外周面が先端側から後端側へ三段階で大径となるように形成されており、その先端小径部と中間部の外周に、回動操作をしやすくするための羽根7bが軸方向に延びる状態で複数設けられている。
【0040】
そして、作動筒7のめねじ7aよりも先端側の内周面は、先端側本体20の外周面とわずかな径方向隙間をおいて対向している。これにより、先端側本体20の外周面と作動筒7の内周面の間には、作動筒7の先端側から軸方向に沿って延び、外部と先端側本体20の貫通孔28とを連通させる連通路37が形成されている。
【0041】
また、作動筒7の後端大径部には、スライドピン9の一対のアーム9aがそれぞれ挿入される2つの横孔7cが設けられ、その2つの横孔7cのアーム挿入側の開口どうしの間に周方向溝7dが設けられている。そして、作動筒7を後端側本体30に取り付けて、スライドピン9の各アーム9aを横孔7cに挿入すると、そのアーム9aの中央部が後端側本体30の第2環状溝32に部分的に入り込むようになっている。このとき、スライドピン9は、アーム9aどうしを繋いでいるアーム連結部9bが作動筒7の周方向溝7dに嵌まり込むと同時に、各アーム9aの先端に設けられた爪9cが横孔7cの挿入側と反対側の周縁に係合する。
【0042】
これにより、作動筒7は、後端側本体30に対して軸心まわりに回動可能かつ軸方向移動不能に取り付けられている。ここで、作動筒7とねじ結合している先端側本体20は、前述のように後端側本体30に軸心まわりに回動不能かつ軸方向移動可能に連結されているので、作動筒7を回動させると先端側本体20が軸方向に移動することになる。
【0043】
この噴霧ノズル10は、上記の構成であり、作動筒7を一方向に回動させることにより、先端側本体20を後端側へ移動させて、その係合穴22aの底面を後端側本体30の第2オリフィス部34に当接させると、第2オリフィス部34の中央孔34aが先端側本体20の流路2に連通するとともに周辺孔34bが係合穴22aの底面で閉じられる(図3および図4の状態)。一方、作動筒7を逆方向に回動させることにより、先端側本体20を先端側へ移動させて、係合穴22aの底面を第2オリフィス部34から離間させると、第2オリフィス部34の中央孔34aおよび周辺孔34bが先端側本体20の流路2に連通し、図3および図4の状態よりも多量の液体が先端側本体20の流路2に送り込まれるようになっている(図5の状態)。
【0044】
ここで、上記のいずれの状態でも、後端側本体30の後端側から流路2に供給された液体は、第2オリフィス部34および先端側本体20の第1オリフィス部27を通過した後、外部から連通路37および先端側本体20の貫通孔28を通って流路2に導入された空気と混合され、中子8を通過して噴板3の噴口3bから噴射される。そして、噴口3bから噴射された液体は、噴板3の膨出部3aの長手方向に薄く、その方向と直交する平面に沿って扇形に広がる扁平な噴霧パターンを形成する。
【0045】
すなわち、この噴霧ノズル10は、作動筒7を回動させるだけで、液体を少量散布する状態と多量散布する状態とを容易に切り替えることができる。しかも、散布量によらず空気を混入した液体を噴射して噴霧粒径の大きい噴霧態様が得られるようにしているので、ドリフト現象を生じにくく、除草剤等の散布にも適したものとなっている。
【0046】
また、少量散布状態とするために先端側本体20を後端側へ移動させたきには、第2オリフィス部34の環状突部34cが先端側本体20の流路2の後端部にスムーズに入り込んでいくようになっているので、先端側本体20の係合穴22aの底面が全面で第2オリフィス部34と密着しない場合でも、第2オリフィス部34の周辺孔34bを通過した液体が先端側本体20の流路2へ流れ込みにくくなり、意図しない噴霧量の増加を抑えることができる。
【0047】
また、第1オリフィス部27が先端側本体20の本体中間部22に、第2オリフィス部34が後端側本体30にそれぞれ一体形成されているので、各オリフィス部27、34の役割を果たすオリフィス板をそれぞれ別体で形成して先端側本体および後端側本体に取り付ける場合に比べて部品点数が少なく、組み立ても容易である。
【0048】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0049】
例えば、先端側本体は、必ずしも実施形態のように本体先端部と本体中間部とに分割する必要はなく、一体形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 ノズル本体
2 流路
3 噴板
3b 噴口
4 先端キャップ
5 連結キャップ
6 ロックキャップ
7 作動筒
7a めねじ
8 中子
9 スライドピン
10 噴霧ノズル
20 先端側本体
21 本体先端部
22 本体中間部
22a 係合穴
27 第1オリフィス部
27a 中央孔
28 貫通孔
29 おねじ
30 後端側本体
34 第2オリフィス部
34a 中央孔
34b 周辺孔
34c 環状突部
B ブーム
P 導液管
図1
図2
図3
図4
図5
図6