(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】エアロゾル生成装置の制御ユニット
(51)【国際特許分類】
A24F 40/57 20200101AFI20241225BHJP
【FI】
A24F40/57
(21)【出願番号】P 2020118103
(22)【出願日】2020-07-08
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】改發 豊
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 啓司
(72)【発明者】
【氏名】藤長 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】藤田 創
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/059049(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110506999(CN,A)
【文献】特開2020-005602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル源と前記エアロゾル源から発生したエアロゾルに香味を付加する香味源のうち少なくとも1つの残量を取得可能に構成される処理装置を備え、
前記処理装置は、
前記残量が閾値以上の場合、前記エアロゾル源を霧化する霧化器への電源からの放電である第1放電と、前記香味源が前記エアロゾルに付加する香味の量を調整可能な調整器への前記電源からの放電である第2放電とを許容し、
前記残量が前記閾値未満の場合、前記第1放電と前記第2放電のうちいずれか一方を抑制するように構成され
るとともに、
通知部を備え、
前記閾値は、第1閾値と第2閾値を含み、
前記処理装置は、
前記香味源の残量と前記エアロゾル源の残量を取得可能であり、
前記香味源の残量が前記第1閾値未満又は/及び前記エアロゾル源の残量が前記第2閾値未満の場合、前記第1放電と前記第2放電のうちいずれか一方のみを抑制し、且つ、ユーザへ前記香味源又は/及び前記エアロゾル源の不足を伝えるように前記通知部を制御するように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
前記処理装置は、
前記香味源の残量を取得可能であり、
前記香味源の残量が前記閾値未満の場合、前記第2放電を抑制するように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
前記処理装置は、
前記エアロゾル源の残量を取得可能であり、
前記エアロゾル源の残量が前記閾値未満の場合、前記第1放電を抑制するように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【請求項4】
請求項1
から3のいずれか1項に記載の制御ユニットであって、
前記処理装置は、前記香味源の残量が前記第1閾値未満且つ前記エアロゾル源の残量が前記第2閾値未満の場合、前記第1放電と前記第2放電のうち前記第1放電のみを抑制する、エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
前記処理装置は、
前記残量が前記閾値未満の場合、前記第1放電と前記第2放電のうちいずれか一方を抑制し、その後に前記第1放電と前記第2放電とを抑制するように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【請求項6】
請求項1に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
前記処理装置は、
エアロゾルの生成が行われている間に、前記香味源と前記エアロゾル源のうち少なくとも1つの残量を取得可能であり、
前記残量が前記閾値未満の場合、前記第1放電と前記第2放電のうち一方を継続させ、前記第1放電と前記第2放電のうち他方を抑制するように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【請求項7】
請求項1に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
前記処理装置は、
前記霧化器による前記エアロゾル源の霧化指令を取得可能であり、
前記霧化指令に応じたエアロゾルの生成後に、前記香味源と前記エアロゾル源のうち少なくとも1つの残量を取得可能であり、
前記残量が前記閾値未満且つ次の前記霧化指令を取得した場合、前記第1放電と前記第2放電のうち一方を実行させ、前記第1放電と前記第2放電のうち他方を抑制するように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
第1通知部を備え、
前記処理装置は、前記第1放電と前記第2放電のうちいずれか一方を抑制する時点以前のタイミングで、前記第1通知部を機能させるように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【請求項9】
請求項8に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
前記処理装置は、前記第1放電と前記第2放電のうちいずれか一方を抑制する時点より前のタイミングで、前記第1通知部を機能させるように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
前記第1通知部は、ユーザの触覚に作用する通知を行うように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【請求項11】
請求項1から6、8から10のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
第2通知部を備え、
前記処理装置は、
前記残量が前記閾値未満の場合、前記第1放電と前記第2放電のうちいずれか一方を抑制し、その後に前記第1放電と前記第2放電とを抑制し、
前記第1放電と前記第2放電とを抑制する時点以前のタイミングで、前記第2通知部を機能させるように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【請求項12】
請求項11に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
前記処理装置は、前記第1放電と前記第2放電とを抑制する時点より前のタイミングで、前記第2通知部を機能させるように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
前記第2通知部は、ユーザの視覚に作用する通知を行うように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【請求項14】
通知部と、
エアロゾル源と前記エアロゾル源から発生したエアロゾルに香味を付加する香味源のうちの一方を加熱する第1ヒータへの電源からの放電と、前記エアロゾル源と前記香味源のうちの他方を加熱し且つ前記第1ヒータとは別体の第2ヒータへの前記電源からの放電とを制御可能に構成される処理装置と、を備え、
前記処理装置は、
前記香味源の残量と前記エアロゾル源の残量を取得可能であり、
前記残量が閾値未満の場合、ユーザへ前記香味源又は/及び前記エアロゾル源の不足を伝えるように前記通知部を制御し、
前記通知部を機能させる前は、前記第1ヒータへの前記電源からの放電と前記第2ヒータへの前記電源からの放電を許容し、
前記通知部を機能させる場合は、前記第1ヒータへの前記電源からの放電と前記第2ヒータへの前記電源からの放電とのいずれか一方を抑制するように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル生成装置の制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、特許文献3、及び特許文献4には、液体を加熱して生成したエアロゾルを香味源に通すことで、香味をエアロゾルに付加し、香味が付加されたエアロゾルをユーザに吸引させることのできる装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、蓄積した容量を消費することにより、エアロゾル又は香味が付加されたエアロゾルの生成に寄与するように構成される要素と、既定の変数を検知するように構成されるセンサと、上記エアロゾルの吸引者に対して通知を行うように構成される通知部と、検知又は推定された上記容量が閾値未満であり、且つ、上記変数が上記エアロゾルの生成を要求するための既定の条件を満たす場合、上記通知部を第1モードで機能させるように構成される制御部とを含む、吸引装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2020/039589号
【文献】特許第6462965号公報
【文献】特表2017-511703号公報
【文献】国際公開第2019/017654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1から特許文献4には、エアロゾル源と香味源の残量が少ない場合のユーザへの通知方法について記載されていない。
【0006】
本発明の目的は、エアロゾル源と香味源の少なくとも一方の交換が必要であることをユーザに伝えることのできるエアロゾル生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のエアロゾル生成装置の制御ユニットは、エアロゾル源と前記エアロゾル源から発生したエアロゾルに香味を付加する香味源のうち少なくとも1つの残量を取得可能に構成される処理装置を備え、前記処理装置は、前記残量が閾値以上の場合、前記エアロゾル源を霧化する霧化器への電源からの放電である第1放電と、前記香味源が前記エアロゾルに付加する香味の量を調整可能な調整器への前記電源からの放電である第2放電とを許容し、前記残量が前記閾値未満の場合、前記第1放電と前記第2放電のうちいずれか一方を抑制するように構成されるとともに、通知部を備え、前記閾値は、第1閾値と第2閾値を含み、前記処理装置は、前記香味源の残量と前記エアロゾル源の残量を取得可能であり、前記香味源の残量が前記第1閾値未満又は/及び前記エアロゾル源の残量が前記第2閾値未満の場合、前記第1放電と前記第2放電のうちいずれか一方のみを抑制し、且つ、ユーザへ前記香味源又は/及び前記エアロゾル源の不足を伝えるように前記通知部を制御するように構成される、ものである。
【0008】
本発明の一態様のエアロゾル生成装置の制御ユニットは、通知部と、エアロゾル源と前記エアロゾル源から発生したエアロゾルに香味を付加する香味源のうちの一方を加熱する第1ヒータへの電源からの放電と、前記エアロゾル源と前記香味源のうちの他方を加熱し且つ前記第1ヒータとは別体の第2ヒータへの前記電源からの放電とを制御可能に構成される処理装置と、を備え、前記処理装置は、前記香味源の残量と前記エアロゾル源の残量を取得可能であり、前記残量が閾値未満の場合、ユーザへ前記香味源又は/及び前記エアロゾル源の不足を伝えるように前記通知部を制御し、前記通知部を機能させる前は、前記第1ヒータへの前記電源からの放電と前記第2ヒータへの前記電源からの放電を許容し、前記通知部を機能させる場合は、前記第1ヒータへの前記電源からの放電と前記第2ヒータへの前記電源からの放電とのいずれか一方を抑制するように構成される、ものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エアロゾル源と香味源の少なくとも一方の交換が必要であることをユーザに伝えることのできるエアロゾル生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】エアロゾル生成装置の概略構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のエアロゾル生成装置の他の斜視図である。
【
図4】
図1のエアロゾル生成装置における電源ユニットの斜視図である。
【
図5】
図1のエアロゾル生成装置のハードウエア構成を示す模式図である。
【
図6】
図1のエアロゾル生成装置のハードウエア構成の変形例を示す模式図である。
【
図7】
図1のエアロゾル生成装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図1のエアロゾル生成装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図9】電力閾値P
maxと増加幅ΔPの一例を示す模式図である。
【
図10】
図8のステップS17において第一負荷21に供給される霧化電力を示す模式図である。
【
図11】
図8のステップS19において第一負荷21に供給される霧化電力を示す模式図である。
【
図12】香味成分残量とリザーバ残量の関係を示すテーブルの一例を示す模式図である。
【
図13】
図1のエアロゾル生成装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図14】第一変形例のエアロゾル生成装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図15】第一変形例のエアロゾル生成装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図16】第二変形例のエアロゾル生成装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図17】第二変形例のエアロゾル生成装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図18】第二変形例のエアロゾル生成装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図19】第二変形例のエアロゾル生成装置の動作の別の例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図20】第二変形例のエアロゾル生成装置の動作の更に別の例を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のエアロゾル生成装置の一実施形態であるエアロゾル生成装置1について、
図1から
図6を参照して説明する。
【0012】
(エアロゾル生成装置)
エアロゾル生成装置1は、香味成分が付加されたエアロゾルを、燃焼を伴わずに生成して、吸引可能とするための器具であり、
図1及び
図2に示すように、所定方向(以下、長手方向Xと呼ぶ)に沿って延びる棒形状となっている。エアロゾル生成装置1は、長手方向Xに沿って、電源ユニット10と、第1カートリッジ20と、第2カートリッジ30と、がこの順に設けられている。第1カートリッジ20は、電源ユニット10に対して着脱可能(換言すると、交換可能)である。第2カートリッジ30は、第1カートリッジ20に対して着脱可能(換言すると、交換可能)である。
図3に示すように、第1カートリッジ20には、第一負荷21と第二負荷31が設けられている。エアロゾル生成装置1の全体形状は、
図1のように、電源ユニット10と、第1カートリッジ20と、第2カートリッジ30と、が一列に並ぶ形状には限らない。電源ユニット10に対して、第1カートリッジ20及び第2カートリッジ30が交換可能に構成されていれば、略箱状等の任意の形状を採用可能である。なお、第2カートリッジ30は、電源ユニット10に対して着脱可能(換言すると、交換可能)であってもよい。
【0013】
(電源ユニット)
電源ユニット10は、
図3、
図4、及び
図5に示すように、円筒状の電源ユニットケース11の内部に、電源12と、充電IC55Aと、MCU(Micro Controller Unit)50と、DC/DCコンバータ51と、吸気センサ15と、電圧センサ52及び電流センサ53を含む温度検出用素子T1と、電圧センサ54及び電流センサ55を含む温度検出用素子T2と、第一通知部45及び第二通知部46を収容する。
【0014】
電源12は、充電可能な二次電池、電気二重層キャパシタ等であり、好ましくは、リチウムイオン二次電池である。電源12の電解質は、ゲル状の電解質、電解液、固体電解質、イオン液体の1つ又はこれらの組合せで構成されていてもよい。
【0015】
図5に示すように、MCU50は、吸気センサ15、電圧センサ52、電流センサ53、電圧センサ54、及び電流センサ55等の各種センサ装置と、DC/DCコンバータ51と、操作部14と、第一通知部45と、第二通知部46とに接続されており、エアロゾル生成装置1の各種の制御を行う。
【0016】
MCU50は、具体的にはプロセッサを主体に構成されており、プロセッサの動作に必要なRAM(Random Access Memory)及び各種情報を記憶するROM(Read Only Memory)等の記憶媒体により構成されるメモリ50aを更に含む。本明細書におけるプロセッサとは、具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0017】
図4に示すように、電源ユニットケース11の長手方向Xの一端側(第1カートリッジ20側)に位置するトップ部11aには、放電端子41が設けられる。放電端子41は、トップ部11aの上面から第1カートリッジ20に向かって突出するように設けられ、第1カートリッジ20の第一負荷21及び第二負荷31の各々と電気的に接続可能に構成される。
【0018】
また、トップ部11aの上面には、放電端子41の近傍に、第1カートリッジ20の第一負荷21に空気を供給する空気供給部42が設けられている。
【0019】
電源ユニットケース11の長手方向Xの他端側(第1カートリッジ20と反対側)に位置するボトム部11bには、外部電源(図示省略)と電気的に接続可能な充電端子43が設けられる。充電端子43は、ボトム部11bの側面に設けられ、例えば、USB(Universal Serial Bus)端子、又はmicroUSB端子等が接続可能である。
【0020】
なお、充電端子43は、外部電源から送電される電力を非接触で受電可能な受電部であってもよい。このような場合、充電端子43(受電部)は、受電コイルから構成されていてもよい。非接触による電力伝送(Wireless Power Transfer)の方式は、電磁誘導型でもよいし、磁気共鳴型でもよいし、電磁誘導型と磁気共鳴型を組合せたものでもよい。また、充電端子43は、外部電源から送電される電力を無接点で受電可能な受電部であってもよい。別の一例として、充電端子43は、USB端子、又はmicroUSB端子が接続可能であり、且つ上述した受電部を有していてもよい。
【0021】
電源ユニットケース11には、ユーザが操作可能な操作部14が、トップ部11aの側面に充電端子43とは反対側を向くように設けられる。より詳述すると、操作部14と充電端子43は、操作部14と充電端子43を結ぶ直線と長手方向Xにおける電源ユニット10の中心線の交点について点対称の関係にある。操作部14は、ボタン式のスイッチ又はタッチパネル等から構成される。電源ユニット10が電源オフの状態において、操作部14による所定の起動操作が行われると、操作部14が電源ユニット10の起動指令をMCU50に出力する。MCU50は、この起動指令を取得すると、電源ユニット10を起動させる。
【0022】
図3に示すように、操作部14の近傍には、パフ(吸引)動作を検出する吸気センサ15が設けられている。電源ユニットケース11には、内部に外気を取り込む不図示の空気取込口が設けられている。空気取込口は、操作部14の周囲に設けられていてもよく、充電端子43の周囲に設けられていてもよい。
【0023】
吸気センサ15は、後述の吸口32を通じたユーザの吸引により生じた電源ユニット10内の圧力(内圧)変化の値を出力するよう構成されている。吸気センサ15は、例えば、空気取込口から吸口32に向けて吸引される空気の流量(すなわち、ユーザのパフ動作)に応じて変化する内圧に応じた出力値(例えば、電圧値又は電流値)を出力する圧力センサである。吸気センサ15は、アナログ値を出力してもよいし、アナログ値から変換したデジタル値を出力してもよい。
【0024】
吸気センサ15は、検出する圧力を補償するために、電源ユニット10の置かれている環境の温度(外気温)を検出する温度センサを内蔵していてもよい。吸気センサ15は、圧力センサではなく、コンデンサマイクロフォン等から構成されていてもよい。
【0025】
MCU50は、パフ動作が行われて、吸気センサ15の出力値が出力閾値以上になると、エアロゾルの生成要求(後述するエアロゾル源22の霧化指令)がなされたと判定し、その後、吸気センサ15の出力値がこの出力閾値を下回ると、エアロゾルの生成要求が終了されたと判定する。なお、エアロゾル生成装置1においては、第一負荷21の過熱を抑制する等の目的のために、エアロゾルの生成要求がなされている期間が上限時間tupper(例えば、2.4秒)に達すると、吸気センサ15の出力値にかかわらずに、エアロゾルの生成要求が終了されたと判定されるようにしている。
【0026】
なお、吸気センサ15に代えて、操作部14の操作に基づいてエアロゾルの生成要求を検出するようにしてもよい。例えば、ユーザがエアロゾルの吸引を開始するために操作部14に対し所定の操作を行うと、操作部14がエアロゾルの生成要求を示す信号をMCU50に出力するように構成してもよい。
【0027】
充電IC55Aは、充電端子43に近接して配置され、充電端子43から入力される電力の電源12への充電制御を行う。なお、充電IC55Aは、MCU50の近傍に配置されていてもよい。
【0028】
(第1カートリッジ)
図3に示すように、第1カートリッジ20は、円筒状のカートリッジケース27の内部に、エアロゾル源22を貯留する貯留部を構成するリザーバ23と、エアロゾル源22を霧化してエアロゾルを発生させる霧化器を構成する第一負荷21と、リザーバ23から第一負荷21の位置へエアロゾル源22を引き込むウィック24と、エアロゾル源22が霧化されることで発生したエアロゾルの粒径を、吸引に適した大きさにするための冷却用の通路を構成するエアロゾル流路25と、第2カートリッジ30の一部を収容するエンドキャップ26と、エンドキャップ26に設けられた、第2カートリッジ30を加熱するための第二負荷31と、を備える。
【0029】
リザーバ23は、エアロゾル流路25の周囲を囲むように区画形成され、エアロゾル源22を貯留する。リザーバ23には、樹脂ウェブ又は綿等の多孔体が収容され、且つ、エアロゾル源22が多孔体に含浸されていてもよい。リザーバ23には、樹脂ウェブ又は綿上の多孔質体が収容されず、エアロゾル源22のみが貯留されていてもよい。エアロゾル源22は、グリセリン、プロピレングリコール、又は水などの液体を含む。
【0030】
ウィック24は、リザーバ23から毛管現象を利用してエアロゾル源22を第一負荷21の位置へ引き込む液保持部材である。ウィック24は、リザーバ23から供給されるエアロゾル源22を第一負荷21が霧化可能な位置で保持する保持部を構成している。ウィック24は、例えば、ガラス繊維や多孔質セラミックなどによって構成される。
【0031】
第1カートリッジ20に含まれるエアロゾル源22は、リザーバ23とウィック24のそれぞれに保持されるが、以下では、リザーバ23に貯留されるエアロゾル源22の残量であるリザーバ残量Wreservoirを、第1カートリッジ20に含まれるエアロゾル源22の残量として取り扱う。リザーバ残量Wreservoirは、第1カートリッジ20の新品時の状態を100%とし、エアロゾルの生成(エアロゾル源22の霧化)が行われるにしたがい減少していくものとする。リザーバ残量Wreservoirは、MCU50によって算出されてMCU50のメモリ50aに記憶される。以下では、リザーバ残量Wreservoirを単にリザーバ残量と記載する場合もある。
【0032】
第一負荷21は、電源12から放電端子41を介して供給される電力によって、燃焼を伴わずにエアロゾル源22を加熱することで、エアロゾル源22を霧化する。原則として、第一負荷21に電源12から供給される電力が多いほど、霧化されるエアロゾル源の量は多くなる。第一負荷21は、所定ピッチで巻き回される電熱線(コイル)によって構成されている。
【0033】
なお、第一負荷21は、エアロゾル源22を加熱することで、これを霧化してエアロゾルを生成可能な素子であればよい。第一負荷21は、例えば、発熱素子である。発熱素子としては、発熱抵抗体、セラミックヒータ、及び誘導加熱式のヒータ等が挙げられる。
【0034】
第一負荷21は、温度と電気抵抗値が相関を持つものが用いられる。第一負荷21としては、例えば、温度の増加に伴って電気抵抗値も増加するPTC(Positive Temperature Coefficient)特性を有するものが用いられる。
【0035】
エアロゾル流路25は、第一負荷21の下流側であって、電源ユニット10の中心線L上に設けられる。エンドキャップ26は、第2カートリッジ30の一部を収容するカートリッジ収容部26aと、エアロゾル流路25とカートリッジ収容部26aとを連通させる連通路26bと、を備える。
【0036】
第二負荷31は、カートリッジ収容部26aに埋設されている。第二負荷31は、電源12から放電端子41を介して供給される電力によって、カートリッジ収容部26aに収容される第2カートリッジ30(より詳細にはこれに含まれる香味源33)を加熱する。第二負荷31は、例えば、所定ピッチで巻き回される電熱線(コイル)によって構成される。
【0037】
なお、第二負荷31は、第2カートリッジ30を加熱することのできる素子であればよい。第二負荷31は、例えば、発熱素子である。発熱素子としては、発熱抵抗体、セラミックヒータ、及び誘導加熱式のヒータ等が挙げられる。
【0038】
第二負荷31は、温度と電気抵抗値が相関を持つものが用いられる。第二負荷31としては、例えば、PTC特性を有するものが用いられる。
【0039】
(第2カートリッジ)
第2カートリッジ30は、香味源33を貯留する。第二負荷31によって第2カートリッジ30が加熱されることで、香味源33が加熱される。第2カートリッジ30は、第1カートリッジ20のエンドキャップ26に設けられたカートリッジ収容部26aに着脱可能に収容される。第2カートリッジ30は、第1カートリッジ20側とは反対側の端部が、ユーザの吸口32となっている。なお、吸口32は、第2カートリッジ30と一体不可分に構成される場合に限らず、第2カートリッジ30と着脱可能に構成されてもよい。このように吸口32を電源ユニット10と第1カートリッジ20とは別体に構成することで、吸口32を衛生的に保つことができる。
【0040】
第2カートリッジ30は、第一負荷21によってエアロゾル源22が霧化されることで発生したエアロゾルを香味源33に通すことによってエアロゾルに香味成分を付加する。香味源33を構成する原料片としては、刻みたばこ、又は、たばこ原料を粒状に成形した成形体を用いることができる。香味源33は、たばこ以外の植物(例えば、ミント、漢方、又はハーブ等)によって構成されてもよい。香味源33には、メントール等の香料が付加されていてもよい。
【0041】
エアロゾル生成装置1では、エアロゾル源22と香味源33によって、香味成分が付加されたエアロゾルを発生させることができる。つまり、エアロゾル源22と香味源33は、エアロゾルを発生させるエアロゾル生成源を構成している。
【0042】
エアロゾル生成装置1におけるエアロゾル生成源は、ユーザが交換して使用する部分である。この部分は、例えば、1つの第1カートリッジ20と、1つ又は複数(例えば5つ)の第2カートリッジ30とが1セットとしてユーザに提供される。なお、第1カートリッジ20と第2カートリッジ30を一体化して1つのカートリッジとして構成してもよい。
【0043】
このように構成されたエアロゾル生成装置1では、
図3中の矢印Bで示すように、電源ユニットケース11に設けられた不図示の取込口から流入した空気が、空気供給部42から第1カートリッジ20の第一負荷21付近を通過する。第一負荷21は、ウィック24によってリザーバ23から引き込まれたエアロゾル源22を霧化する。霧化されて発生したエアロゾルは、取込口から流入した空気と共にエアロゾル流路25を流れ、連通路26bを介して第2カートリッジ30に供給される。第2カートリッジ30に供給されたエアロゾルは、香味源33を通過することで香味成分が付加され、吸口32に供給される。
【0044】
また、エアロゾル生成装置1には、ユーザに対して各種情報を通知する第一通知部45と第二通知部46が設けられている(
図5参照)。第一通知部45は、ユーザの触覚に作用する通知を行うためのものであり、バイブレーター等の振動素子によって構成されている。第二通知部46は、ユーザの視覚に作用する通知を行うためのものであり、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子によって構成される。各種情報を通知する通知部として、更に、ユーザの聴覚に作用する通知を行うため音出力素子が設けられてもよい。第一通知部45と第二通知部46は、電源ユニット10、第1カートリッジ20、及び第2カートリッジ30のいずれに設けられてもよいが、電源ユニット10に設けられることが好ましい。例えば、操作部14の周囲が透光性を有し、LED等の発光素子によって発光するように構成される。
【0045】
(電源ユニットの詳細)
図5に示すように、DC/DCコンバータ51は、電源ユニット10に第1カートリッジ20が装着された状態において、第一負荷21と電源12の間に接続される。MCU50は、DC/DCコンバータ51と電源12の間に接続されている。第二負荷31は、電源ユニット10に第1カートリッジ20が装着された状態において、MCU50とDC/DCコンバータ51との間に接続される。このように、電源ユニット10では、第1カートリッジ20が装着された状態において、DC/DCコンバータ51及び第一負荷21の直列回路と、第二負荷31とが、電源12に並列接続される。
【0046】
DC/DCコンバータ51は、入力電圧を昇圧可能な昇圧回路であり、入力電圧を昇圧した電圧又は入力電圧を第一負荷21に供給可能に構成されている。DC/DCコンバータ51によれば第一負荷21に供給される電力を調整できるため、第一負荷21が霧化するエアロゾル源22の量を制御することができる。DC/DCコンバータ51としては、例えば、出力電圧を監視しながらスイッチング素子のオン/オフ時間を制御することで、入力電圧を希望する出力電圧に変換するスイッチングレギュレータを用いることができる。DC/DCコンバータ51としてスイッチングレギュレータを用いる場合には、スイッチング素子を制御することで、入力電圧を昇圧せずに、そのまま出力させることもできる。
【0047】
MCU50のプロセッサは、第二負荷31への放電を制御するため、香味源33の温度や第二負荷31の温度を取得できるように構成される。また、MCU50のプロセッサは、第一負荷21の温度を取得できるように構成されることが好ましい。第一負荷21の温度は、第一負荷21又はエアロゾル源22の過熱の抑制や、第一負荷21が霧化するエアロゾル源22の量を高度に制御するために用いることができる。
【0048】
電圧センサ52は、第二負荷31に印加される電圧値を測定して出力する。電流センサ53は、第二負荷31を貫流する電流値を測定して出力する。電圧センサ52の出力と、電流センサ53の出力は、それぞれ、MCU50に入力される。MCU50のプロセッサは、電圧センサ52の出力と電流センサ53の出力に基づいて第二負荷31の抵抗値を取得し、この抵抗値に応じた第二負荷31の温度を取得する。第二負荷31の温度は、第二負荷31によって加熱される香味源33の温度と厳密には一致しないが、香味源33の温度とほぼ同じと見做すことができる。
【0049】
なお、第二負荷31の抵抗値を取得する際に、第二負荷31に定電流を流す構成とすれば、温度検出用素子T1において電流センサ53は不要である。同様に、第二負荷31の抵抗値を取得する際に、第二負荷31に定電圧を印加する構成とすれば、温度検出用素子T1において電圧センサ52は不要である。
【0050】
また、
図6に示すように、温度検出用素子T1に代えて、第1カートリッジ20に、第2カートリッジ30又は第二負荷31の温度を検出するための温度検出用素子T3を設ける構成としてもよい。温度検出用素子T3は、第2カートリッジ30又は第二負荷31の近傍に配置される例えばサーミスタにより構成される。
図6の構成においては、MCU50のプロセッサは、温度検出用素子T3の出力に基づいて、第二負荷31の温度又は第2カートリッジ30の温度、換言すると香味源33の温度を取得する。
【0051】
図6に示すように、温度検出用素子T3を用いて香味源33の温度を取得することで、
図5の温度検出用素子T1を用いて香味源33の温度を取得するよりも、香味源33の温度をより正確に取得することが可能となる。なお、温度検出用素子T3は、第2カートリッジ30に搭載される構成としてもよい。温度検出用素子T3を第1カートリッジ20に搭載する
図6に示す構成によれば、エアロゾル生成装置1において最も交換頻度の高い第2カートリッジ30の製造コストを下げることができる。
【0052】
なお、
図5に示すように、温度検出用素子T1を用いて香味源33の温度を取得する場合には、エアロゾル生成装置1において交換頻度が最も低い電源ユニット10に温度検出用素子T1を設けることができる。このため、第1カートリッジ20と第2カートリッジ30の製造コストを下げることができる。
【0053】
電圧センサ54は、第一負荷21に印加される電圧値を測定して出力する。電流センサ55は、第一負荷21を貫流する電流値を測定して出力する。電圧センサ54の出力と、電流センサ55の出力は、それぞれ、MCU50に入力される。MCU50のプロセッサは、電圧センサ54の出力と電流センサ55の出力に基づいて第一負荷21の抵抗値を取得し、この抵抗値に応じた第一負荷21の温度を取得する。なお、第一負荷21の抵抗値を取得する際に、第一負荷21に定電流を流す構成とすれば、温度検出用素子T2において電流センサ55は不要である。同様に、第一負荷21の抵抗値を取得する際に、第一負荷21に定電圧を印加する構成とすれば、温度検出用素子T2において電圧センサ54は不要である。
【0054】
(MCU)
次に、MCU50の機能について説明する。MCU50は、ROMに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される機能ブロックとして、温度検出部と、電力制御部と、通知制御部と、を備える。
【0055】
温度検出部は、温度検出用素子T1(又は温度検出用素子T3)の出力に基づいて、香味源33の温度を取得する。また、温度検出部は、温度検出用素子T2の出力に基づいて、第一負荷21の温度を取得する。
【0056】
通知制御部は、各種情報を通知するように第一通知部45と第二通知部46を制御する。例えば、通知制御部は、第2カートリッジ30の交換タイミングの検出に応じて、第2カートリッジ30の交換を促す通知を行うように第一通知部45と第二通知部46の少なくとも一方を制御する。通知制御部は、第2カートリッジ30の交換を促す通知に限らず、第1カートリッジ20の交換を促す通知、電源12の交換を促す通知、電源12の充電を促す通知等を行わせてもよい。MCU50のメモリ50aには、第2カートリッジ30(香味源33)の交換が必要であるか否かを判定するための交換Flagが記憶される。この交換FlagがFALSEとTRUEのいずれかの値をとる。FALSEは、交換が必要ではないことを意味する。TRUEは、交換が必要であることを意味する。この交換Flagは、香味源33に含まれる香味成分の量(後述の香味成分残量)が閾値TH1以上の場合にはFALSEに設定され、この量が閾値TH1未満の場合にはTRUEに設定される。
【0057】
電力制御部は、吸気センサ15から出力されたエアロゾルの生成要求を示す信号に応じて、第一負荷21及び第二負荷31のうちの少なくとも第一負荷21への電源12からの放電(負荷の加熱に必要な放電)を制御する。つまり、電力制御部は、エアロゾル源22を霧化するための電源12から第一負荷21への第一放電と、香味源33を加熱するための電源12から第二負荷31への第二放電とのうち、少なくとも第一放電を行う。
【0058】
このように、エアロゾル生成装置1では、第二負荷31への放電によって香味源33の加熱が可能となっている。エアロゾルに付加される香味成分量を増やすためには、エアロゾル源22から発生させるエアロゾル量を多くすること、香味源33の温度を高くすること、が有効であることが実験的にわかっている。
【0059】
そこで、電力制御部は、香味源33の温度に関する情報に基づいて、エアロゾルの生成要求毎に生成されるエアロゾルに付加される香味成分の量である単位香味量(以下に説明する香味成分量Wflavor)が目標量へ収束するように、電源12から第一負荷21と第二負荷31への加熱のための放電を制御する。この目標量は適宜決められる値であるが、例えば、単位香味量の目標範囲を適宜決定し、この目標範囲における中央値を目標量として定めてもよい。これにより、単位香味量(香味成分量Wflavor)を目標量に収束させることで、単位香味量をある程度幅を持たせた目標範囲にも収束させることが可能である。なお、単位香味量、香味成分量Wflavor、目標量の単位としては重量が用いられてよい。
【0060】
また、電力制御部は、香味源33の温度に関する情報を出力する温度検出用素子T1(又は温度検出用素子T3)の出力に基づき、香味源33の温度が目標温度(以下に記載する目標温度Tcap_target)へ収束するように、電源12から第二負荷31への加熱のための放電を制御する。
【0061】
(エアロゾル生成に用いられる各種パラメータ)
以下、MCU50の具体的な動作の説明に移る前に、エアロゾル生成のための放電制御に用いられる各種パラメータ等について説明する。
【0062】
ユーザによる1回の吸引動作によって、第1カートリッジ20にて生成されるエアロゾルの重量[mg]をエアロゾル重量Waerosolと記載する。このエアロゾルの生成のために第一負荷21に供給が必要な電力を霧化電力Pliquidと記載する。エアロゾル重量Waerosolは、エアロゾル源22が十分に存在すると仮定すると、霧化電力Pliquidと、霧化電力Pliquidの第一負荷21への供給時間tsense(換言すると、第一負荷21への通電時間又はパフの行われている時間)に比例する。このため、エアロゾル重量Waerosolは、以下の式(1)によりモデル化することができる。式(1)のαは、実験的に求められる係数である。なお、供給時間tsenseは、上述した上限時間tupperが上限値とされる。また、以下の式(1)は、式(1A)に置き換えてもよい。式(1A)では、式(1)に対し、正の値を有する切片bを導入している。これは、霧化電力Pliquidの一部がエアロゾル源22において霧化の前に起きるエアロゾル源22の昇温に用いられる点を考慮して、任意に導入可能な項である。切片bもまた実験的に求めることができる。
【0063】
【0064】
吸引がnpuff回(npuffは0以上の自然数)行われた状態において香味源33に含まれている香味成分の重量[mg]を香味成分残量Wcapsule(npuff)と記載する。なお、新品の状態の第2カートリッジ30の香味源33に含まれている香味成分残量(Wcapsule(npuff=0))をWinitialとも記載する。香味源33の温度に関する情報をカプセル温度パラメータTcapsuleと記載する。ユーザによる1回の吸引動作によって、香味源33を通過するエアロゾルに付加される香味成分の重量[mg]を香味成分量Wflavorと記載する。香味源33の温度に関する情報とは、例えば、温度検出用素子T1(又は温度検出用素子T3)の出力に基づいて取得される香味源33の温度や第二負荷31の温度である。以下では、香味成分残量Wcapsule(npuff)を単に香味成分残量と記載する場合もある。
【0065】
香味成分量Wflavorは、香味成分残量Wcapsule(npuff)、カプセル温度パラメータTcapsule、及びエアロゾル重量Waerosolに依存することが実験的にわかっている。したがって、香味成分量Wflavorは、以下の式(2)によりモデル化することができる。
【0066】
【0067】
1回の吸引が行われる毎に、香味成分残量Wcapsule(npuff)は、香味成分量Wflavorずつ減少する。このため、npuffを1以上としたときの香味成分残量Wcapsule(npuff)は、つまり、1回以上の吸引が行われた後の香味成分残量は、以下の式(3)によりモデル化することができる。
【0068】
【0069】
式(2)のβは、1回の吸引において、香味源33に含まれている香味成分のうちのどの程度の量がエアロゾルに付加されるかの割合を示す係数であり、実験的に求められる。式(2)のγと式(3)のδは、それぞれ実験的に求められる係数である。1回の吸引が行われる期間において、カプセル温度パラメータTcapsuleと香味成分残量Wcapsule(npuff)はそれぞれ変動し得るが、このモデルでは、これらを一定値として取り扱うために、γとδを導入している。
【0070】
(エアロゾル生成装置の動作)
図7及び
図8は、
図1のエアロゾル生成装置1の動作を説明するためのフローチャートである。操作部14の操作等によってエアロゾル生成装置1が起動(電源ON)されると(ステップS0:YES)、MCU50は、電源ON後、又は、第2カートリッジ30の交換後にエアロゾルの生成を行ったか(ユーザによる吸引が1度でも行われたか)否かを判定する(ステップS1)。
【0071】
例えば、MCU50には、吸引(エアロゾルの生成要求)が行われる毎に、npuffを初期値(例えば0)からアップカウントするパフ数カウンタが内蔵されている。このパフ数カウンタのカウント値はメモリ50aに記憶される。MCU50は、このカウント値を参照することで、吸引が1度でも行われた後の状態か否かを判定する。
【0072】
電源ON後の最初の吸引である、又は、第2カートリッジ30が交換された後の最初の吸引の前のタイミングである場合(ステップS1:NO)には、香味源33の加熱がまだ行われていない又は加熱がしばらく行われておらず、香味源33の温度は外部環境に依存する可能性が高い。したがって、この場合には、MCU50は、温度検出用素子T1(又は温度検出用素子T3)の出力に基づいて取得した香味源33の温度を、カプセル温度パラメータTcapsuleとして取得し、この取得した香味源33の温度を、香味源33の目標温度Tcap_targetとして設定し、メモリ50aに記憶する(ステップS2)。
【0073】
なお、ステップS1の判定がNOとなる状態では、香味源33の温度が外気温又は電源ユニット10の温度に近い状態である可能性が高い。そのため、ステップS2においては、変形例として、外気温又は電源ユニット10の温度をカプセル温度パラメータTcapsuleとして取得して、これを目標温度Tcap_targetとしてもよい。
【0074】
外気温は、例えば、吸気センサ15に内蔵される温度センサから取得することが好ましい。電源ユニット10の温度は、例えば、MCU50の内部の温度を管理するためにMCU50に内蔵されている温度センサから取得することが好ましい。この場合、吸気センサ15に内蔵される温度センサと、MCU50に内蔵されている温度センサは、いずれも、香味源33の温度に関する情報を出力する素子として機能する。
【0075】
エアロゾル生成装置1では、上述したように、香味源33の温度が目標温度Tcap_targetへ収束するように、電源12から第二負荷31への放電を制御する。したがって、電源ON後又は第2カートリッジ30の交換後に1回でも吸引が行われた後では、香味源33の温度が目標温度Tcap_targetに近い状態である可能性が高い。したがって、この場合(ステップS1:YES)には、MCU50は、前回のエアロゾルの生成に用いた、メモリ50aに記憶されている目標温度Tcap_targetを、カプセル温度パラメータTcapsuleとして取得し、これをそのまま目標温度Tcap_targetとして設定する(ステップS3)。この場合には、メモリ50aが、香味源33の温度に関する情報を出力する素子として機能する。
【0076】
なお、ステップS3において、MCU50は、温度検出用素子T1(又は温度検出用素子T3)の出力に基づいて取得した香味源33の温度を、カプセル温度パラメータTcapsuleとして取得し、この取得した香味源33の温度を、香味源33の目標温度Tcap_targetとして設定してもよい。このようにすることで、カプセル温度パラメータTcapsuleをより正確に取得できる。
【0077】
ステップS2又はステップS3の後、MCU50は、設定した目標温度Tcap_targetと、現時点における香味源33の香味成分残量Wcapsule(npuff)とに基づいて、目標の香味成分量Wflavorを達成するために必要なエアロゾル重量Waerosolを、式(4)の演算により決定する(ステップS4)。式(4)は、TcapsuleをTcap_targetとした式(2)を変形したものである。
【0078】
【0079】
次に、MCU50は、ステップS4にて決定したエアロゾル重量Waerosolを実現するために必要な霧化電力Pliquidを、tsenseを上限時間tupperとした式(1)の演算により決定する(ステップS5)。
【0080】
なお、目標温度Tcap_target及び香味成分残量Wcapsule(npuff)の組み合わせと、霧化電力Pliquidとを対応付けたテーブルをMCU50のメモリ50aに記憶しておき、MCU50は、このテーブルを用いて霧化電力Pliquidを決定してもよい。これにより、霧化電力Pliquidを高速且つ低消費電力にて決定することができる。
【0081】
エアロゾル生成装置1では、後述するように、エアロゾルの生成要求を検知した時点で香味源33の温度が目標温度に未達の場合に、香味成分量Wflavorの不足をエアロゾル重量Waerosolの増加(霧化電力の増加)により補うものとしている。この霧化電力の増加分を確保するため、ステップS5で決められる霧化電力が、ハードウエア構成によって決められる第一負荷21に供給可能な電力の上限値Pupperよりも低くなるようにする必要がある。
【0082】
具体的には、ステップS5の後、MCU50は、上限値Pupperよりも低い電力閾値Pmaxを設定する(ステップS6a)。MCU50は、ステップS5で決めた霧化電力Pliquidがこの電力閾値Pmaxを超える場合(ステップS6:NO)には、香味源33の目標温度Tcap_targetを増加させて(ステップS7)、ステップS4に処理を戻す。式(4)から分かるように、目標温度Tcap_targetを増やすことで、目標の香味成分量Wflavorを達成するために必要なエアロゾル重量Waerosolを減らすことができる。その結果、ステップS5にて決定される霧化電力Pliquidを減らすことができる。MCU50は、ステップS4~S7を繰り返すことで、当初NOと判断されたステップS6における判断をYESとし、処理をステップS8に移行させることができる。
【0083】
電力閾値Pmaxは、単一の固定値であってもよいが、可変値であることが好ましい。具体的には、電力閾値Pmaxは、複数の値のいずれか1つが設定される。ステップS5にて決定される霧化電力は、前述したように、エアロゾル源22(リザーバ残量Wreservoir)が十分に多いことを前提にして決められる。しかし、霧化電力が同じであっても、リザーバ残量Wreservoirが多い場合と、リザーバ残量Wreservoirが少ない場合とでは、リザーバ残量Wreservoirが少ない場合の方が、ウィック24に供給されるエアロゾル源22の量が少なくなったり、ウィック24に十分な量のエアロゾル源22が保持されるまで時間がかかったりするため、所望のエアロゾル重量を実現できない可能性がある。つまり、リザーバ残量Wreservoirが少ない場合には、必要なエアロゾル重量を実現できない可能性がある。したがって、その分、香味源33の目標温度を上げて、必要なエアロゾル重量を低下させることが好ましい。
【0084】
このような観点から、MCU50は、ステップS6aでは、リザーバ残量Wreservoirを取得し、このリザーバ残量Wreservoirに基づいて、電力閾値Pmaxを設定している。具体的には、MCU50は、リザーバ残量Wreservoirが多いほど、エアロゾル重量が多くなるよう、電力閾値Pmaxを大きい値に設定する。換言すると、MCU50は、リザーバ残量Wreservoirが第1残量の場合には、リザーバ残量Wreservoirが第1残量と異なる第2残量(例えば第1残量よりも多い残量)の場合よりも、電力閾値Pmaxを小さい値に設定する。このようにすることで、第一負荷21に供給される霧化電力をリザーバ残量Wreservoirに基づいて調整することができる。したがって、リザーバ残量Wreservoirによらずに、目標の香味成分量の実現が可能になる。
【0085】
上限値Pupperについて説明する。電源12から第一負荷21への放電時において、第一負荷21を貫流する電流と電源12の電圧をそれぞれI、VLIBと記載し、DC/DCコンバータ51の昇圧率の上限値をηupperと記載し、DC/DCコンバータ51の出力電圧の上限値をPDC/DC_upperと記載し、第一負荷21の温度がエアロゾル源22の沸点の温度に到達している状態における第一負荷21の電気抵抗値をRHTR(THTR=TB.P.)と記載する。このように記載すると上限値Pupperは以下の式(5)により表すことができる。
【0086】
【0087】
式(5)においてΔ=0としたものが、上限値Pupperの理想値である。しかし、実際の回路では、第一負荷21に繋がる導線の抵抗成分や、第一負荷21に繋がる抵抗成分以外の抵抗成分等を考慮する必要がある。このため、ある程度のマージンを設けるべく、式(5)にて調整値のΔを導入している。
【0088】
なお、エアロゾル生成装置1において、DC/DCコンバータ51は、必須ではなく省略することも可能である。DC/DCコンバータ51を省略した場合には、上限値Pupperは、以下の式(6)により表すことができる。
【0089】
【0090】
MCU50は、ステップS5にて決定した霧化電力Pliquidが電力閾値Pmax以下であった場合(ステップS6:YES)には、現時点での香味源33の温度Tcap_senseを温度検出用素子T1(又は温度検出用素子T3)の出力に基づいて取得する(ステップS8)。
【0091】
次に、MCU50は、メモリ50aの交換Flagを参照し、交換FlagがFALSEであれば(ステップS9a:YES)、温度Tcap_senseと目標温度Tcap_targetとに基づいて、第二負荷31を加熱するための第二負荷31への放電を制御する(ステップS9)。具体的には、MCU50は、温度Tcap_senseが目標温度Tcap_targetに収束するように、PID(Proportional-Integral-Differential )制御、又は、ON/OFF制御によって第二負荷31へ電力供給を行う。
【0092】
PID制御は、温度Tcap_senseと目標温度Tcap_targetの差をフィードバックし、そのフィードバック結果に基づいて、温度Tcap_senseが目標温度Tcap_targetに収束するよう電力制御を行うものである。PID制御によれば、温度Tcap_senseを目標温度Tcap_targetに高精度に収束させることができる。なお、MCU50は、PID制御に代えてP(Proportional)制御やPI(Proportional-Integral)制御を用いてもよい。
【0093】
ON/OFF制御は、温度Tcap_senseが目標温度Tcap_target未満の状態では第二負荷31への電力供給を行い、温度Tcap_senseが目標温度Tcap_target以上の状態では、温度Tcap_senseが目標温度Tcap_target未満になるまで第二負荷31への電力供給を停止する制御である。ON/OFF制御によれば、PID制御よりも香味源33の温度を早く上昇させることができる。このため、後述のエアロゾルの生成要求が検知される前の段階にて、温度Tcap_senseが目標温度Tcap_targetに到達する可能性を高めることができる。なお、目標温度Tcap_targetは、ヒステリシスを有していてもよい。
【0094】
MCU50は、交換FlagがTRUEであった場合(ステップS9a:NO)には、ステップS9の処理を行わずにステップS10に処理を移行する。すなわち、MCU50は、交換FlagがTRUEであった場合には、交換FlagがFALSEであった場合と比べて、第二負荷31を加熱するための第二負荷31への放電を抑制するよう制御する。つまり、交換FlagがFALSEであった場合には、第二負荷31への放電が許容され、交換FlagがTRUEであった場合には、第二負荷31への放電が許容されないことになる。なお、第2カートリッジ30の交換直後等のタイミングでは、香味成分残量Wcapsule(npuff)が十分に多くなっていることから、基本的にはステップS9の処理が行われる。
【0095】
第二負荷31を加熱するための第二負荷31への放電を抑制するとは、エアロゾル生成のために第二負荷31へ供給する電力の最小値以上の電力が第二負荷31に供給されないようにすることを言い、理想的には、第二負荷31に電力を全く供給させないことを言う。第二負荷31を加熱するための第二負荷31への放電を許容するとは、上記最小値以上の電力を第二負荷31に供給させることを言う。
【0096】
ステップS9の後のステップS10において、MCU50は、エアロゾルの生成要求の有無を判定する。MCU50は、エアロゾルの生成要求を検出しなかった場合(ステップS10:NO)には、ステップS11にて、エアロゾルの生成要求が行われていない時間(以下、無操作時間と記載)の長さを判定する。そして、MCU50は、無操作時間が所定時間に達していた場合(ステップS11:YES)には、消費電力を低減させたスリープモードへと移行する(ステップS12)。なお、ステップS9にて第二負荷31への放電が開始されていた場合には、ステップS12にてその放電は停止される。MCU50は、無操作時間が所定時間未満であった場合(ステップS11:NO)には、ステップS8に処理を移行する。
【0097】
MCU50は、エアロゾルの生成要求を検知すると(ステップS10:YES)、その時点での香味源33の温度Tcap_senseを温度検出用素子T1(又は温度検出用素子T3)の出力に基づいて取得する(ステップS14)。そして、MCU50は、ステップS14にて取得した温度Tcap_senseが目標温度Tcap_target以上かを否かを判定する(ステップS15)。
【0098】
温度T
cap_senseが目標温度T
cap_target未満である場合(ステップS15:NO)には、MCU50は、香味源33の温度が足りていないことによる香味成分量W
flavorの減少分を補うべく、ステップS5にて決定した霧化電力P
liquidを増加させる。具体的には、まず、MCU50は、リザーバ残量W
reservoirに基づいて、霧化電力の増加幅ΔPを決定し(ステップS19a)、ステップS5にて決定した霧化電力P
liquidにこの増加幅ΔPを加算して得られる霧化電力P
liquid’を第一負荷21に供給して、第一負荷21の加熱を開始する(ステップS19)。増加幅ΔPは、リザーバ残量W
reservoirに応じた可変値とされているが、単一の固定値とされてもよい。
図9は、電力閾値P
maxと増加幅ΔPの組み合わせの例を示す模式図である。
【0099】
図9の例では、増加幅ΔPは、リザーバ残量W
reservoirが閾値TH3以上では一定の値P1となり、リザーバ残量W
reservoirが閾値TH2以上閾値TH3未満では、値P1よりも小さい値となっている。具体的には、リザーバ残量W
reservoirが閾値TH2以上閾値TH3未満の範囲では、リザーバ残量W
reservoirが少ないほど、増加幅ΔPは小さい値となっている。
図9の例では、電力閾値P
maxは、リザーバ残量W
reservoirが閾値TH3以上では一定の値P2となり、リザーバ残量W
reservoirが閾値TH2以上閾値TH3未満では、値P2よりも小さい値となっている。具体的には、リザーバ残量W
reservoirが閾値TH2以上閾値TH3未満の範囲では、リザーバ残量W
reservoirが少ないほど、電力閾値P
maxは小さい値となっている。各リザーバ残量W
reservoirに対応する電力閾値P
maxと増加幅ΔPの和は、上限値P
upper以下となっている。また、値P1と値P2の合計値は、上限値P
upperと同じになっている。
図9に示した閾値TH2は、閾値TH3よりも小さい値であり、第1カートリッジ20の交換の判断を行うためのものである。なお、値P1と値P2の合計値は、上限値P
upper未満になっていてもよい。また、リザーバ残量W
reservoirがゼロになるある程度手前で第1カートリッジ20の交換が判断されるように閾値TH2を設定してもよい。
【0100】
ステップS15において、MCU50は、温度Tcap_senseが目標温度Tcap_target以上であった場合(ステップS15:YES)には、ステップS5にて決定した霧化電力Pliquidを第一負荷21に供給して第一負荷21の加熱を開始する(ステップS17)。なお、ステップS15において、MCU50は、温度Tcap_senseが目標温度Tcap_target以上か否かの判定に先立って、交換FlagがFALSEであるか否かを判定してもよい。交換FlagがFALSEであれば、温度Tcap_senseが目標温度Tcap_target以上か否かを判定し、その結果に応じてステップS17又はステップS19aの処理を行ってもよい。交換FlagがTRUEであれば、温度Tcap_senseが目標温度Tcap_target以上か否かを判定することなく、ステップS19aの処理を行ってもよい。香味成分残量Wcapsule(npuff)が少ない状態では、香味源33の温度が目標温度に近い場合であっても、エアロゾルに付加される香味成分量Wflavorが目標量よりも減少する可能性がある。このことから、ステップS19の処理によってエアロゾル重量を増やすことで、香味成分量Wflavorを目標量に収束させることができる。
【0101】
ステップS19又はステップS17での第一負荷21の加熱開始後、MCU50は、エアロゾルの生成要求が終了されていない場合(ステップS18:NO)には、エアロゾルの生成要求の継続時間が上限時間tupper未満であれば(ステップS18a:YES)、第一負荷21の加熱と、ステップ9の処理が行われている場合には第二負荷31への加熱と、を継続する。MCU50は、エアロゾルの生成要求の継続時間が上限時間tupperに達した場合(ステップS18a:NO)と、エアロゾルの生成要求が終了された場合(ステップS18:YES)には、第一負荷21への電力供給と、ステップ9の処理が行われている場合には第二負荷31への電力供給とを停止する(ステップS21)。
【0102】
MCU50は、温度検出用素子T2の出力に基づき、ステップS17やステップS19での第一負荷21の加熱を制御してもよい。例えば、MCU50が、温度検出用素子T2の出力に基づき、エアロゾル源22の沸点を目標温度としたPID制御やON/OFF制御を実行すれば、第一負荷21やエアロゾル源22の過熱を抑制したり、第一負荷21が霧化するエアロゾル源22の量を高度に制御したりすることができる。
【0103】
図10は、
図8のステップS17において第一負荷21に供給される霧化電力を示す模式図である。
図11は、
図8のステップS19において第一負荷21に供給される霧化電力を示す模式図である。
図11に示すように、エアロゾルの生成要求が検出された時点において、温度T
cap_senseが目標温度T
cap_targetに到達していない場合には、霧化電力P
liquidが増加された上で、第一負荷21に供給される。
【0104】
このように、エアロゾルの生成要求がなされた時点にて、香味源33の温度が目標温度に到達していない場合であっても、ステップS19の処理が行われることで、生成されるエアロゾル量を増やすことができる。この結果、香味源33の温度が目標温度よりも低いことに起因するエアロゾルに付加される香味成分量の減少を、エアロゾル量の増加によって補うことが可能となる。したがって、エアロゾルに付加される香味成分量を目標量に収束させることができる。また、ステップS19にて増加させる霧化電力の増加幅ΔPは、リザーバ残量Wreservoirに基づく値となっている。ステップS19にて霧化電力を増加させる場合でも、リザーバ残量Wreservoirが少ないほど、増加幅ΔPを小さくすることで、リザーバ残量Wreservoirに応じた適切な量のエアロゾルを生成することができる。この結果、リザーバ残量Wreservoirに対して必要以上の電力が供給されることによる意図しない香喫味を持つエアロゾルの発生を抑制できる。
【0105】
一方、エアロゾルの生成要求がなされた時点にて、香味源33の温度が目標温度に到達していた場合には、ステップS5にて決定した霧化電力によって、目標の香味成分量を達成するのに必要な所望のエアロゾル量が生成される。このため、エアロゾルに付加する香味成分量を目標量に収束させることができる。
【0106】
ステップS21の後、MCU50は、ステップS17又はステップS19にて第一負荷21に供給した霧化電力の第一負荷21への供給時間tsenseを取得する(ステップS22)。なお、MCU50が上限時間tupperを越えてエアロゾル生成要求を検知する場合には、供給時間tsenseは上限時間tupperと等しくなる点に留意されたい。更に、MCU50は、パフ数カウンタを“1”進める(ステップS23)。
【0107】
MCU50は、ステップS22にて取得した供給時間tsenseと、エアロゾルの生成要求を受けて第一負荷21に供給した霧化電力と、エアロゾルの生成要求を検知した時点での目標温度Tcap_targetと、この時点の直前の香味成分残量Wcapsule(npuff)と、に基づいて、今回の吸引が終了した時点における香味源33の香味成分残量Wcapsule(npuff)を算出する(ステップS24)。
【0108】
図10に示す制御が行われた場合には、エアロゾルの生成要求の開始から終了までに生成されたエアロゾルに付加される香味成分量W
flavorは、以下の式(7)により求めることができる。式(7)の(t
end‐t
start)は、供給時間t
senseを示す。式(7)の香味成分残量W
capsule(n
puff)は、エアロゾルの生成要求が行われる直前の時点での値である。
【0109】
【0110】
図11に示す制御が行われた場合には、エアロゾルの生成要求の開始から終了までに生成されたエアロゾルに付加される香味成分量W
flavorは、以下の式(7A)により求めることができる。式(7A)の(t
end‐t
start)は、供給時間t
senseを示す。式(7A)の香味成分残量W
capsule(n
puff)は、エアロゾルの生成要求が行われる直前の時点での値である。
【0111】
【0112】
このようにして求めたエアロゾルの生成要求毎のWflavorをメモリ50aに蓄積しおき、今回のエアロゾル生成時における香味成分量Wflavorと、前回以前のエアロゾル生成時における香味成分量Wflavorを含む過去の香味成分量Wflavorの値を式(3)に代入する(つまり、この過去の香味成分量Wflavorの値の積算値に係数δを乗じた値を、Winitialから減算する)ことで、エアロゾルの生成後における香味成分残量Wcapsule(npuff)を高精度に導出してこれを更新することができる。
【0113】
ステップS24の後、MCU50は、メモリ50aに記憶しているリザーバ残量Wreservoirの更新を行う(ステップS24a)。リザーバ残量Wreservoirは、第1カートリッジ20が新品に交換されてからの第一負荷21への霧化電力の供給時間tsenseの累積値を求め、この累積値に基づいて導出することができる。この累積値とリザーバ残量Wreservoirとの関係は実験的に求めておけばよい。または、リザーバ残量Wreservoirは、第1カートリッジ20が新品に交換されてからの第一負荷21への霧化電力の供給時間tsenseと第一負荷21に放電した電力(霧化電力Pliquid、霧化電力Pliquid’)の積の累積値を求め、この累積値に基づいて導出されてもよい。この累積値とリザーバ残量Wreservoirとの関係もまた実験的に求めておけばよい。
【0114】
また、ステップS24aにおいて、MCU50は、ステップS24にて更新した第2カートリッジ30の香味成分残量W
capsule(n
puff)に基づいて、リザーバ残量W
reservoirを導出してもよい。本実施形態では、1つの第1カートリッジ20につき、5つの第2カートリッジ30が使用可能としている。例えば、1つの第2カートリッジ30を使用しているときのリザーバ残量W
reservoirの変化と、その第2カートリッジ30の香味成分残量W
capsule(n
puff)の変化との関係を示すデータを実験的に求めておく。また、新品の第1カートリッジ20のリザーバ残量W
reservoirを5個の第2カートリッジ30で等分し、等分した各残量に上記のデータを対応付けた
図12に示すテーブルを作成してメモリ50aに記憶しておく。MCU50は、ステップS24aにおいて、第1カートリッジ20が新品に交換されてからの第2カートリッジ30の累積の使用個数と、ステップS24で取得した香味成分残量W
capsule(n
puff)と、
図12に示すテーブルと、に基づいて、現在の第2カートリッジ30の使用個数及び香味成分残量W
capsule(n
puff)に対応するリザーバ残量W
reservoirをテーブルから読みだし、この読み出したリザーバ残量W
reservoirを最新の情報としてメモリ50aに記憶する。
【0115】
次に、MCU50は、更新後の香味成分残量Wcapsule(npuff)が閾値TH1未満であるか否かを判定する(ステップS25)。MCU50は、更新後の香味成分残量Wcapsule(npuff)が閾値TH1以上であった場合(ステップS25:NO)には、ステップS29に処理を移行する。MCU50は、更新後の香味成分残量Wcapsule(npuff)が閾値TH1未満であった場合(ステップS25:YES)には、交換Flagを参照する(ステップS25a)。交換FlagがFALSEであった場合(ステップS25a:NO)には、MCU50は、交換FlagをTRUEに設定して(ステップS25b)、ステップS29に処理を移行する。なお、ステップS25は、香味成分残量Wcapsule(npuff)がゼロである場合のみYES(肯定的)と判定されなくてもよい。換言すれば、香味成分残量Wcapsule(npuff)がゼロになるある程度手前でステップS25の判定がYES(肯定的)となるように閾値TH1を設定してもよい。
【0116】
交換FlagがTRUEであった場合(ステップS25a:YES)には、MCU50は、第1カートリッジ20と第2カートリッジ30の少なくとも一方の交換を促す通知を第一通知部45及び第二通知部46の少なくとも一方に行わせる(ステップS26)。そして、MCU50は、パフ数カウンタを初期値(=0)にリセットし、上述の過去のWflavorの値を消去し、更に、目標温度Tcap_targetを初期化する(ステップS27)。更に、MCU50は、交換FlagをFALSEに設定して(ステップS28)、ステップS29の処理を行う。
【0117】
目標温度Tcap_targetの初期化とは、メモリ50aに記憶しているその時点での目標温度Tcap_targetを設定値から除外することを意味する。なお、別の一例として、ステップS1とステップS2を省略して常にステップS3を実行する場合には、目標温度Tcap_targetの初期化とは、メモリ50aに記憶しているその時点での目標温度Tcap_targetを常温又は室温に設定することを意味する。
【0118】
ステップS29において、MCU50は、電源がオフされなければ(ステップS29:NO)、ステップS1に処理を戻し、電源がオフされたら(ステップS29:YES)、処理を終了する。
【0119】
図13は、
図1のエアロゾル生成装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図13は、時刻t1においてエアロゾル生成装置1の電源がONされ、その後の時刻t2において1回目の吸引が開始され、その吸引の終了後の時刻t4において香味成分残量W
capsule(n
puff)が閾値TH1未満となり、その後、時刻t5において2回目の吸引が開始される場合の動作を示している。
【0120】
時刻t1にて電源ONされた後は、
図7のステップS1~ステップS9aの処理が行われるが、1回目の吸引が行われる前の時点では、香味成分残量W
capsule(n
puff)が閾値TH1以上となっている。このため、ステップS9aの判定はYESとなって、
図13に示すように、電源ONされた時刻t1以降には、第二負荷31への放電が開始される。
【0121】
その後、時刻t2にてエアロゾルの生成要求(第一負荷21によるエアロゾル源22の霧化指令)がMCU50により取得されると、第一負荷21への放電が開始される。その後、時刻t3にてエアロゾルの生成要求が終了されると、第一負荷21と第二負荷31の各々への放電が停止される。
【0122】
時刻t3の後、時刻t2の時点での目標温度、その時点での香味成分残量、時刻t2と時刻t3の間の時間(供給時間t
sense)、及び、時刻t2で第一負荷21に供給開始された霧化電力に基づいて、香味成分残量W
capsule(n
puff)が算出される。時刻t4において、この算出した香味成分残量W
capsule(n
puff)が閾値TH1未満となったことが確認されると、
図8のステップS25bに示すように、交換FlagがTRUEに設定される。その後、再び、
図7のステップS1~ステップS9aが実行されるが、ここではステップS9aの判定がNOとなる。このため、時刻t4以降の第二負荷31への放電は抑制される。そして、時刻t5において2回目の吸引が行われると、第一負荷21への放電が開始される。
【0123】
時刻t6において2回目の吸引が終了すると、第一負荷21への放電が停止される。その後は、
図8のステップS25aの判定がYESとなることにより、
図13に示すように、まず第一通知部45が作動して第2カートリッジ30の交換を促す通知が行われる。その後、第二通知部46が作動して第2カートリッジ30の交換を促す通知が行われる。第一通知部45と第二通知部46のそれぞれの作動開始タイミングは同じであってもよいし、
図13と逆であってもよい。第一通知部45と第二通知部46の少なくとも一方の作動開始タイミングは、エアロゾルの生成要求が終了したタイミングと同じであってもよい。
【0124】
(実施形態の効果)
以上のように、エアロゾル生成装置1によれば、ユーザがエアロゾルを吸引する度にそのエアロゾルに含まれる香味成分量が目標量に収束するよう電源12から第一負荷21及び第二負荷31への放電制御がなされる。このため、ユーザに提供される香味成分量を吸引毎に安定させることができ、エアロゾル生成装置1の商品価値を高めることができる。また、第一負荷21にのみ放電を行う場合と比べて、ユーザに提供される吸引毎の香味成分量を安定させることが可能となり、エアロゾル生成装置1の商品価値を更に高めることができる。
【0125】
また、エアロゾル生成装置1によれば、
図7のステップS5にて決定した霧化電力が電力閾値P
maxを超えていて、目標の香味成分量を達成するために必要なエアロゾルの生成が行えないような場合に、電源12から第二負荷31に放電する制御が行われる。このように、必要に応じて第二負荷31への放電を行うため、ユーザに提供される吸引毎の香味成分量を安定させつつ、これを実現するための電力量を低減することができる。
【0126】
また、エアロゾル生成装置1によれば、エアロゾルの生成要求に応じた第一負荷21への放電時間(tsense)と、生成要求を受けた時点でのTcap_targetと、生成要求に応じて第一負荷に放電した電力(霧化電力Pliquid、霧化電力Pliquid’)又は電力量(この電力×tsense))とに基づいて、ステップS24にて香味成分残量を更新し、この香味成分残量に基づいて、ステップS4及びステップS5にて、第一負荷21へ放電する電力を決定する。このため、エアロゾルに付加可能な香味成分量に大きな影響を与える第一負荷21へ放電した電力又は電力量を適切に考慮し、更に、エアロゾルに付加可能な香味成分量に大きな影響を与える第一負荷21へ放電した際の香味源33の温度を適切に考慮した上で、第一負荷21への放電を制御できる。
【0127】
また、エアロゾル生成装置1によれば、エアロゾルの生成要求を検知する前に香味源33の加熱が行われる。このため、エアロゾル生成の前に香味源33を温めておくことができ、エアロゾルの生成要求を受けてから、所望の香味成分量が付加されたエアロゾルを生成するまでに要する時間を短くすることができる。
【0128】
また、エアロゾル生成装置1によれば、電力閾値Pmaxがリザーバ残量Wreservoirに基づいて変更されるため、リザーバ残量Wreservoirに基づいて霧化電力が制御される。このため、エアロゾル源22の残量に基づいた適切な電力を第一負荷21に供給することができる。したがって、適切な香喫味を持つエアロゾルをユーザに提供可能となり、商品価値を向上させることができる。
【0129】
また、エアロゾル生成装置1によれば、香味源33の温度が目標温度に未達な場合に第一負荷21へ供給する電力がリザーバ残量Wreservoirに応じて制御される。このため、適切な香喫味を持つエアロゾルをユーザに提供可能となり、商品価値を向上させることができる。
【0130】
また、エアロゾル生成装置1によれば、電力閾値Pmaxがリザーバ残量Wreservoirに基づいて決定されるため、第二負荷31へ電源12から放電する電力がリザーバ残量Wreservoirに基づいて制御されることになる。このため、エアロゾル源22の残量に基づいた適切な電力を第二負荷31に供給することができる。したがって、適切な香喫味を持つエアロゾルをユーザに提供可能となり、商品価値を向上させることができる。
【0131】
また、エアロゾル生成装置1によれば、エアロゾルの生成要求に応じた第一負荷21への放電時間(tsense)に基づいて、ステップS24にて香味成分残量を更新し、この香味成分残量に基づいて、リザーバ残量Wreservoirを導出することもできる。このようにすることで、リザーバ残量Wreservoirを計測するための専用のセンサが不要となる。このため、エアロゾル生成装置1のコスト増を抑制できる。
【0132】
また、エアロゾル生成装置1によれば、香味成分残量が閾値TH1未満の場合には、第二負荷31への放電が抑制されることで、香味成分残量が多い場合と比較してエアロゾルの香喫味が変化する。このため、第1カートリッジ20と第2カートリッジ30の少なくとも一方の交換が必要なことを、味覚や嗅覚を通じてユーザに伝えることができる。この結果、視覚、触覚、又は聴覚による通知を行う場合と比べて(ユーザの目、手、又は耳を介して通知を伝える場合と比べて)、ユーザにより直感的に交換の必要性を伝えることができる。また、第二負荷31への放電のみを抑制することにより、香味と密接に関連する香味源33を含む第2カートリッジ30の交換が必要であることをユーザに伝えることができる。
【0133】
また、エアロゾル生成装置1によれば、吸引終了後に香味成分残量が算出され、この香味成分残量が閾値TH1未満の場合には、次回の吸引を開始した時点で、第二負荷31への放電は抑制(停止)された状態になる。このため、前回の吸引時におけるエアロゾルの香喫味に対し、今回の吸引時におけるエアロゾルの香喫味の減少を顕著なものとすることができる。この結果、第1カートリッジ20と第2カートリッジ30の少なくとも一方の交換が必要なことを、ユーザが気づきやすくなる。
【0134】
ここまでは、香味成分残量が少なくなった場合の放電制御について説明したが、リザーバ残量が少なくなった場合についても同様の放電制御が可能である。例えば、
図13の時刻t4において、香味成分残量が閾値TH1以上且つリザーバ残量が閾値TH2未満となった場合を想定する。この場合には、MCU50は、時刻t4以降の第二負荷31への放電は実行(
図7のステップS9の処理は実行)し、時刻t5の吸引開始に応じて行うべき第一負荷21の加熱のための第一負荷21への放電は抑制(停止)する(
図8のステップS17又はステップS19の処理は行わない)。そして、MCU50は、第一通知部45と第二通知部46の少なくとも一方を作動させて第1カートリッジ20の交換を促す通知を行わせる。第一負荷21の加熱のための第一負荷21への放電を抑制するとは、エアロゾル生成のために第一負荷21へ供給する電力の最小値以上の電力が第一負荷21に供給されないようにすることを言い、理想的には、第一負荷21に電力を全く供給させないことを言う。第一負荷21への放電を許容するとは、上記最小値以上の電力を第一負荷21に供給させることを言う。
【0135】
このようにすると、リザーバ残量が少ない場合には、第一負荷21への放電が抑制されることで、生成されるエアロゾルの量が大幅に低下する。このため、エアロゾルと密接に関連するエアロゾル源22を含む第1カートリッジ20の交換が必要であることを、味覚を通じてユーザに伝えることができる。
【0136】
また、
図13の時刻t4において、香味成分残量が閾値TH1未満且つリザーバ残量が閾値TH2未満となる場合も考えられる。この場合には、MCU50は、次回のエアロゾルの生成要求に応じて行う加熱のための放電のうち、第一負荷21への放電のみを抑制(停止)し、第二負荷31への放電は許容(実行)することが好ましい。
【0137】
このようにすると、香味成分残量とリザーバ残量の両方が少ない場合には、香味の量とエアロゾルの量のうちユーザがより敏感に感知できるエアロゾルの量が減少されつつ、香味成分残量とリザーバ残量の不足がユーザに通知される。このため、第1カートリッジ20と第2カートリッジ30の両方の交換が必要な状態であることを、ユーザがより気付きやすくなる。また、香味成分残量とリザーバ残量の両方が少ない場合でも、どちらか一方の放電は継続されることで、吸引を行ったのにほとんど味がしないといった状況を防ぐことができ、商品価値を高めることができる。なお、第一負荷21への放電のみを抑制(停止)し、第二負荷31への放電を許容(実行)しても、吸引により香喫味はユーザに送達される点に留意されたい。ただし、この場合における香喫味は、第一負荷21と第二負荷31の両方への放電を許容(実行)する場合における香喫味とは異なるものである点にも留意されたい。
【0138】
また、香味成分残量が閾値TH1未満且つリザーバ残量が閾値TH2以上となるケースと、香味成分残量が閾値TH1以上且つリザーバ残量が閾値TH2未満となるケースと、香味成分残量が閾値TH1未満且つリザーバ残量が閾値TH2未満となるケースとのいずれのケースであっても、MCU50は、次回の吸引開始後には、まず、第一負荷21と第二負荷31のうち一方への放電を抑制(停止)し、且つ、第一負荷21と第二負荷31のうち他方への放電を許容(実行)する制御を行う。このようにすることで、吸引を行っているユーザに対し、香喫味の変化を段階的に感じさせることができる。したがって、第1カートリッジ20と第2カートリッジ30の一方又は両方の交換が必要であることをユーザに気づかせやすくなる。
【0139】
(エアロゾル生成装置の第一変形例)
以上の説明では、香味成分残量を導出し、この香味成分残量に基づいて、エアロゾルの生成要求が行われる前に、目標の香味成分量Wflavorを達成するために必要な霧化電力Pliquidと目標温度Tcap_targetを決定するものとした。この変形例では、エアロゾルの生成要求が行われる前に決める霧化電力Pliquidは一定値とし、その代わりに、香味源33の残量に基づいて目標温度Tcap_targetを可変制御する(具体的には、残量が少ないほど目標温度を上げる)ことで、目標の香味成分量Wflavorを達成するようにしている。
【0140】
第一変形例のエアロゾル生成装置1でも、エアロゾルの生成要求を検知したときに、香味源33の温度が目標温度に未達の場合には、香味成分量Wflavorの不足をエアロゾル重量Waerosolの増加(霧化電力の増加)により補うものとしている。この霧化電力の増加分を確保するため、エアロゾルの生成要求を検知する前に決める霧化電力Pliquidは、上限値Pupperよりも低くなるように設定される。
【0141】
第一変形例では、MCU50は、香味成分残量を導出することはせず、この香味成分残量に相当する他のパラメータを利用して目標温度Tcap_targetを可変制御するようにしている。
【0142】
上述してきた香味成分残量は、吸引が行われる毎に減少する。このため、香味成分残量は、吸引が行われた回数(換言すると、エアロゾルの生成要求に応じた、エアロゾル生成のための第一負荷21への放電動作の累積回数)である吸引回数に反比例する。また、香味成分残量は、吸引に応じてエアロゾル生成のために第一負荷21への放電が行われた時間が長いほど多く減少する。このため、香味成分残量は、吸引に応じてエアロゾル生成のために第一負荷21への放電が行われた時間の累積値(以下、累積放電時間と記載)にも反比例する。したがって、前述してきたような複雑な演算によって香味成分残量を導出しなくても、1個の第2カートリッジ30が使用されているときの吸引回数又は累積放電時間に基づいて、第2カートリッジ30の香味成分残量を算出することができる。
【0143】
式(2)のモデルから分かるように、吸引毎のエアロゾル重量Waerosolをほぼ一定に制御する(霧化電力Pliquidを一定に制御する)ことを想定すると、香味成分量Wflavorを安定化させるためには、香味成分残量の減少(すなわち、吸引回数又は累積放電時間の増加)に合わせて、香味源33の温度を上げる必要がある。第一変形例では、MCU50の電力制御部が、メモリ50aに予め記憶された、吸引回数又は累積放電時間(或いは、これらに基づいて算出される香味源33の残量)と香味源33の目標温度とを対応付けて記憶するテーブルにしたがって目標温度を管理する。
【0144】
図14及び
図15は、第一変形例のエアロゾル生成装置1の動作を説明するためのフローチャートである。操作部14の操作等によってエアロゾル生成装置1の電源がONされると(ステップS30:YES)、MCU50は、メモリ50aに記憶している吸引回数又は累積放電時間(或いは香味源33の残量)に基づいて、香味源33の目標温度T
cap_targetを決定(設定)する(ステップS31)。
【0145】
次に、MCU50は、現時点での香味源33の温度Tcap_senseを温度検出用素子T1(又は温度検出用素子T3)の出力に基づいて取得する(ステップS32)。
【0146】
次に、MCU50は、メモリ50aの交換Flagを参照し、交換FlagがFALSEであれば(ステップS32a:YES)、温度Tcap_senseと目標温度Tcap_targetに基づいて、香味源33を加熱するための第二負荷31への放電を制御する(ステップS33)。具体的には、MCU50は、温度Tcap_senseが目標温度Tcap_targetに収束するように、PID制御又はON/OFF制御によって第二負荷31へ電力供給を行う。
【0147】
MCU50は、交換FlagがTRUEであった場合(ステップS32a:NO)には、ステップS33の処理を行わずにステップS34に処理を移行する。なお、第2カートリッジ30の交換直後等のタイミングでは、香味成分残量が十分に多いことから、基本的にはステップS33の処理が行われる。
【0148】
ステップS33の後、MCU50は、エアロゾルの生成要求の有無を判定する(ステップS34)。MCU50は、エアロゾルの生成要求を検出しなかった場合(ステップS34:NO)には、ステップS35にて、エアロゾルの生成要求が行われていない無操作時間の長さを判定する。そして、MCU50は、無操作時間が所定時間に達していた場合(ステップS35:YES)には、消費電力を低減させたスリープモードへと移行する(ステップS36)。なお、ステップS33にて第二負荷31への放電が開始されていた場合には、ステップS36にてその放電は停止される。MCU50は、無操作時間が所定時間未満であった場合(ステップS35:NO)には、ステップS32に処理を移行する。
【0149】
MCU50は、エアロゾルの生成要求を検知すると(ステップS34:YES)、その時点での香味源33の温度Tcap_senseを温度検出用素子T1(又は温度検出用素子T3)の出力に基づいて取得する(ステップS37)。そして、MCU50は、ステップS37にて取得した温度Tcap_senseが目標温度Tcap_target以上かを否かを判定する(ステップS42)。
【0150】
温度Tcap_senseが目標温度Tcap_target以上である場合(ステップS42:YES)には、MCU50は、予め決められた霧化電力Pliquidを第一負荷21に供給して、第一負荷21の加熱(エアロゾル源22を霧化するための加熱)を開始する(ステップS43)。
【0151】
温度T
cap_senseが目標温度T
cap_target未満である場合(ステップS42:NO)には、MCU50は、香味源33の温度が足りていないことによる香味成分量の減少分を補うべく、予め決められた霧化電力P
liquidを増加させる。具体的には、まず、MCU50は、リザーバ残量W
reservoirを取得し、取得したリザーバ残量W
reservoirに基づいて、霧化電力P
liquidの増加幅ΔPaを決定する(ステップS45)。そして、MCU50は、霧化電力P
liquidにこの増加幅ΔPaを加算して得られる霧化電力P
liquid’を第一負荷21に供給して、第一負荷21の加熱を開始する(ステップS46)。増加幅ΔPaは、例えば
図9に示す増加幅ΔPと同じ可変値が用いられる。
【0152】
ステップS43又はステップS46での第一負荷21の加熱開始後、MCU50は、エアロゾルの生成要求が終了されていない場合(ステップS44:NO)には、エアロゾルの生成要求の継続時間が上限時間tupper未満であれば(ステップS44a:YES)、第一負荷21の加熱と、ステップS33の処理が行われている場合には第二負荷31への加熱と、を継続する。MCU50は、エアロゾルの生成要求の継続時間が上限時間tupperに達した場合(ステップS44a:NO)と、エアロゾルの生成要求が終了された場合(ステップS44:YES)には、第一負荷21への電力供給と、ステップS33が行われている場合には第二負荷31への電力供給とを停止する(ステップS48)。なお、MCU50は、ステップS46において霧化電力Pliquidを増加させる場合、併せて上限時間tupperを短くしてもよい。具体的には、増加前の霧化電力Pliquidと短くする前の上限時間tupperとの積と、霧化電力Pliquidと増加幅ΔPaの和と短くした上限時間tupperとの積が等しくなるように、上限時間tupperの値が決定されてもよい。
【0153】
このように、ステップS46にて霧化電力を増加させる場合でも、リザーバ残量Wreservoirが少ないほど、増加幅ΔPaを小さくすることで、リザーバ残量Wreservoirに応じた適切な電力を第一負荷21に供給することができる。この結果、リザーバ残量Wreservoirに対して必要以上の電力が供給されることによる意図しない香喫味を持つエアロゾルの発生を抑制できる。なお、前述した上限時間tupperの短縮を併せて行えば、意図しない香喫味を持つエアロゾルの発生をより効果的に抑制できる。
【0154】
ステップS48の後、MCU50は、ステップS43又はステップS46にて第一負荷21に供給した霧化電力の第一負荷21への供給時間tsenseを取得する(ステップS49)。そして、MCU50は、この供給時間tsenseに基づいて、メモリ50aに記憶している累積放電時間を更新する(ステップS50)。ステップS31において目標温度を決める際に吸引回数を用いる場合には、ステップS50において、MCU50は、メモリ50aに記憶している吸引回数を更新する。更に、MCU50は、リザーバ残量Wreservoirを更新する(ステップS51)。なお、MCU50は、ステップS46において霧化電力Pliquidを増加させた場合、取得した供給時間tsenseを長くなるように補正してもよい。具体的には、霧化電力Pliquidと増加幅ΔPaの和を霧化電力Pliquidで割った値に供給時間tsenseを掛けた値を、補正した供給時間tsenseとし、その後の処理を行ってもよい。
【0155】
ステップS50で更新された累積放電時間又は吸引回数は、第2カートリッジ30が新品に交換されてからの香味源33の消費量を表すパラメータである。したがって、累積放電時間又は吸引回数と、1つの第2カートリッジ30あたりの累積放電時間又は吸引回数の上限値と、を比較することで、香味源33の残量を取得することが可能になる。例えば、この上限値から累積放電時間又は吸引回数を減算した値を、この上限値で除算して100を乗じることで、香味源33の残量[%]を取得することができる。
【0156】
次に、MCU50は、ステップS50で更新後の吸引回数又は累積放電時間に基づいて算出した香味源33の残量が閾値TH1未満であるか否かを判定する(ステップS52)。MCU50は、香味源33の残量が閾値TH1以上の場合(ステップS52:NO)には、ステップS58に処理を移行する。MCU50は、香味源33の残量が閾値TH1未満の場合(ステップS52:YES)には、交換Flagを参照する(ステップS53)。交換FlagがFALSEであった場合(ステップS53:NO)には、MCU50は、交換FlagをTRUEに設定して(ステップS54)、ステップS58に処理を移行する。
【0157】
交換FlagがTRUEであった場合(ステップS53:YES)には、MCU50は、第2カートリッジ30の交換を促す通知を第一通知部45及び第二通知部46の少なくとも一方に行わせる(ステップS55)。通知の方法は前述した方法と同様である。そして、MCU50は、吸引回数又は累積放電時間を初期値(=0)にリセットする(ステップS56)。更に、MCU50は、交換FlagをFALSEに設定して(ステップS57)、ステップS58の処理を行う。
【0158】
ステップS58において、MCU50は、電源がオフされなければ(ステップS58:NO)、ステップS31に処理を戻し、電源がオフされたら(ステップS58:YES)、処理を終了する。このように、第一変形例によれば、動作を簡略化しつつ、吸引毎の香喫味を安定化させることができる。
【0159】
(エアロゾル生成装置の第二変形例)
図1のエアロゾル生成装置1において、エアロゾルの生成要求に応じてエアロゾルの生成を行っている期間に香味成分残量とリザーバ残量を算出し、香味成分残量とリザーバ残量の少なくとも一方が閾値未満となる場合に、その期間中に、第一負荷21と第二負荷31のいずれか一方への放電を停止させる制御を行ってもよい。
【0160】
図16及び
図17は、第二変形例のエアロゾル生成装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
図16に示すフローチャートは、ステップS9aが削除され、ステップS8の後にステップS9が行われる点を除いては、
図7に示すフローチャートと同じである。
図17に示すフローチャートにおけるステップS15、ステップS17、ステップS19a、及びステップS19は、
図8に示した処理と同じである。したがって、以下では、
図17のステップS17とステップS19よりも後の動作についてのみ説明する。なお、
図17のステップS17とステップS19よりも後の動作は、第2カートリッジ30が交換されてから吸引がn
puff回行われた後、n
puff+1回目の吸引が行われている状態の動作を示している。
【0161】
ステップS17又はステップS19の後、MCU50は、ステップS17又はステップS19の処理を開始してから現時点までの経過時間(霧化電力の第一負荷21への供給時間tsense(now))を取得する(ステップS51)。
【0162】
次に、MCU50は、ステップS51にて取得した供給時間tsense(now)と、ステップS17又はステップS19にて第一負荷21へ供給開始した霧化電力と、エアロゾルの生成要求を検知した時点での目標温度Tcap_targetと、npuff回目の吸引が終わった時点の香味成分残量Wcapsule(npuff)と、に基づいて、現時点での香味源33の香味成分残量Wcapsule(Now)を算出する(ステップS52)。
【0163】
ステップS17又はステップS19の開始から現時点までの期間において生成されるエアロゾルに付加される香味成分量Wflavor(Now)は、式(7)の(tend‐tstart)に供給時間tsense(now)を代入し、式(7)のPliquidに、ステップS17又はステップS19にて第一負荷21へ供給開始した霧化電力を代入し、式(7)のTcap_targetに現時点での目標温度を代入することで算出できる。
【0164】
MCU50は、このようにして算出した香味成分量Wflavor(Now)と、前回(npuff回目)の吸引においてエアロゾルに付加された香味成分量Wflavorを含む過去の香味成分量Wflavorの積算値に式(3)の係数δを乗じた値を、Winitialから減算することで、現時点での香味成分残量Wcapsule(Now)を算出する。または、MCU50は、香味成分残量Wcapsule(npuff)から香味成分量Wflavor(Now)に係数δを乗じた値を減算することで、現時点での香味成分残量Wcapsule(Now)を算出してもよい。
【0165】
ステップS52の後、MCU50は、現時点でのリザーバ残量Wreservoirを算出する(ステップS53)。現時点でのリザーバ残量Wreservoirは、第1カートリッジ20が新品に交換されてから現時点までの第一負荷21への霧化電力の供給時間の累積値を求め、この累積値に基づいて導出することができる。この累積値とリザーバ残量Wreservoirとの関係は実験的に求めておけばよい。上述したのと同様に、MCU50は、ステップS52で算出した香味成分残量Wcapsule(Now)に基づいて、現時点でのリザーバ残量Wreservoirを算出してもよい。
【0166】
次に、MCU50は、香味成分残量Wcapsule(Now)が閾値TH1未満であるか否かを判定する(ステップS54)。MCU50は、香味成分残量Wcapsule(Now)が閾値TH1以上であった場合(ステップS54:NO)には、ステップS55に処理を移行する。ステップS55において、MCU50は、エアロゾルの生成要求が終了されていない場合(ステップS55:NO)には、エアロゾルの生成要求の継続時間が上限時間tupper未満であれば(ステップS55a:YES)、ステップS51に処理を戻す。MCU50は、エアロゾルの生成要求の継続時間が上限時間tupperに達した場合(ステップS55a:NO)と、エアロゾルの生成要求が終了された場合(ステップS55:YES)には、第一負荷21と第二負荷31への加熱のための放電を停止(抑制)する(ステップS56)。
【0167】
ステップS56の後、MCU50は、パフ数カウンタを“1”進める(ステップS57)。更に、MCU50は、現時点での香味成分残量Wcapsule(Now)を、最新の香味成分残量Wcapsule(npuff)としてメモリ50aに記憶する(ステップS58)。ステップS58の後はステップS63の処理が行われる。
【0168】
MCU50は、香味成分残量Wcapsule(Now)が閾値TH1未満であった場合(ステップS54:YES)には、第二負荷31への放電(エアロゾルの生成のための第二負荷31の加熱)を抑制(停止)する(ステップS59)。更に、MCU50は、第2カートリッジ30の交換を促す通知を第一通知部45及び第二通知部46の少なくとも一方に行わせる(ステップS60)。その後、MCU50は、第一負荷21への放電(エアロゾルの生成のための第一負荷21の加熱)を抑制(停止)する(ステップS61)。なお、MCU50は、ステップS59の後にステップS55を実行し、ステップS55における判断が肯定的な場合(ステップS55:YES)は処理をステップS61へ進め、ステップS55における判断が否定的な場合(ステップS55a:YES)は処理をステップS55aへ進めてもよい。さらに、MCU50は、ステップS55aにおける判断が肯定的な場合(ステップS55a:YES)は処理をステップS51に戻し、ステップS55aにおける判断が否定的な場合(ステップS55a:NO)は処理をステップS61へ進めてもよい。このようにすれば、エアロゾルの生成要求の継続時間が上限時間tupperに達した場合(ステップS55a:NO)と、エアロゾルの生成要求が終了された場合(ステップS55:YES)といずれか満たされるまでは、第一負荷21への加熱のための放電は継続される。更に、MCU50は、パフ数カウンタを初期値(=0)にリセットし、上述の過去の香味成分量Wflavor(Now)の値を消去し、更に、目標温度Tcap_targetを初期化する(ステップS62)。ステップS62の後、MCU50は、電源がオフされなければ(ステップS63:NO)、ステップS1に処理を戻し、電源がオフされたら(ステップS63:YES)、処理を終了する。
【0169】
図18は、第二変形例のエアロゾル生成装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図18は、時刻t1においてエアロゾル生成装置1の電源がONされ、その後の時刻t2において吸引が開始され、その吸引の行われている期間の時刻t3において香味成分残量W
capsule(Now)が閾値TH1未満となる場合の動作を示している。
【0170】
時刻t1にて電源ONされた後は、
図16のステップS1~ステップS9の処理が行われるため、
図18に示すように、電源ONされた時刻t1以降には、第二負荷31への放電が開始される。
【0171】
時刻t2にて吸引が開始された以降、MCU50は、所定時間毎に香味成分残量Wcapsule(Now)及びリザーバ残量Wreservoirの更新を行う。そして、エアロゾルの生成要求が行われている間の時刻t3において、香味成分残量Wcapsule(Now)が閾値TH1未満となったことが確認されると、第二負荷31への放電が停止され、且つ、第一通知部45が作動して第2カートリッジ30の交換を促す通知が行われる。その後、時刻t4において第一負荷21への放電が停止され、その後、第二通知部46が作動して第2カートリッジ30の交換を促す通知が行われる。第一負荷21への放電が停止されるタイミング(時刻t4)は、エアロゾルの生成要求が終了される前となる場合もあるし、エアロゾルの生成要求が終了された後となる場合もある。
【0172】
なお、時刻t3において第一通知部45と第二通知部46を同時に作動させてもよいし、時刻t4において第一通知部45と第二通知部46を同時に作動させてもよいし、時刻t3にて第二通知部46を作動させ且つ時刻t4において第一通知部45を作動させてもよいし、時刻t3にて第一通知部45を作動させ且つ時刻t4において第二通知部46を作動させてもよい。
【0173】
以上の第二変形例のエアロゾル生成装置1によれば、エアロゾル生成中に取得した香味源33の香味成分残量が少ない場合に、エアロゾル生成中において、第二負荷31への放電が抑制される。このため、出来る限り早いタイミングで、ユーザに香味源33の残量が少ないことを伝えることができる。
【0174】
第二変形例のエアロゾル生成装置1では、リザーバ残量が少なくなった場合についても同様の放電制御が可能である。例えば、
図19に示すように、時刻t3において、リザーバ残量が閾値TH2未満となった場合を想定する。この場合には、MCU50は、時刻t3以降の第二負荷31への放電は実行し、時刻t3以降の第一負荷21への放電は抑制(停止)する。このようにすると、リザーバ残量が少ない場合には、第一負荷21への放電が抑制されることで、生成されるエアロゾルの量が大幅に低下する。このため、エアロゾルと密接に関連するエアロゾル源22を含む第1カートリッジ20の交換が必要であることを、味覚を通じてユーザに伝えることができる。なお、第一負荷21への放電のみを抑制(停止)し、第二負荷31への放電を許容(実行)しても、吸引により香喫味はユーザに送達される点に留意されたい。ただし、この場合における香喫味は、第一負荷21と第二負荷31の両方への放電を許容(実行)する場合における香喫味とは異なるものである点にも留意されたい。
【0175】
また、
図19の時刻t3において、香味成分残量W
capsule(Now)が閾値TH1未満且つリザーバ残量が閾値TH2未満となる場合も考えられる。この場合には、MCU50は、時刻t3以降において第一負荷21への放電のみを抑制(停止)し、第二負荷31への放電は実行することが好ましい。このようにすると、香味成分残量とリザーバ残量の両方が少ない場合には、香味の量とエアロゾルの量のうちユーザがより敏感に感知できるエアロゾルの量が減少されつつ、香味成分残量とリザーバ残量の不足がユーザに通知される。このため、第1カートリッジ20と第2カートリッジ30の両方の交換が必要な状態であることを、ユーザがより気付きやすくなる。また、香味成分残量とリザーバ残量の両方が少ない場合でも、どちらか一方の放電は継続されることで、吸引を行ったのにほとんど味がしないといった状況を防ぐことができ、商品価値を高めることができる。
【0176】
また、香味成分残量W
capsule(Now)が閾値TH1未満且つリザーバ残量が閾値TH2以上となるケースと、香味成分残量W
capsule(Now)が閾値TH1以上且つリザーバ残量が閾値TH2未満となるケースと、香味成分残量W
capsule(Now)が閾値TH1未満且つリザーバ残量が閾値TH2未満となるケースとのいずれのケースであっても、MCU50は、
図18及び
図19の時刻t3以降は、第一負荷21と第二負荷31のうち一方への放電を停止させ、且つ、第一負荷21と第二負荷31のうち他方への放電を継続させる制御を行う。その後、MCU50は、第一負荷21と第二負荷31の両方への放電を停止させる制御を行う。このようにすることで、吸引を行っているユーザに対し、香喫味の変化を段階的に感じさせることができる。したがって、第1カートリッジ20と第2カートリッジ30の一方又は両方の交換が必要であることをユーザに気づかせやすくなる。
【0177】
図18の例では、第二負荷31への放電の停止と、第一通知部45の作動開始とが同じタイミングとされているが、これに限らない。例えば
図19に示すように、放電の停止が行われた後に第一通知部45を作動させてもよい。
【0178】
また、例えば
図20に示すように、香味成分残量W
capsule(Now)が閾値TH1未満となった時刻t3よりも少し後のタイミングにて第二負荷31への放電を停止し、この放電停止よりも前のタイミング(
図20の例では時刻t3)にて第一通知部45を作動させ、第二負荷31への放電を停止した後に、第二通知部46を作動させてもよい。
【0179】
このようにすることで、第一負荷21又は第二負荷31への放電が抑制されて香喫味が変化する時点よりも前のタイミングで第一通知部45が機能するため、香味源33やエアロゾル源22の残量が少なくなったことを、ユーザがより気付きやすくなる。また、変化した香喫味のエアロゾルが生成される前に第1カートリッジ20又は第2カートリッジ30を交換することが可能になる。この結果、エアロゾル生成装置1の商品性が向上する。また、香喫味が変化する時点の前後で、異なる通知部によって通知が行われるため第1カートリッジ20又は第2カートリッジ30の交換が必要なことを、ユーザがより気付きやすくなる。
【0180】
また、
図20の例では、第二負荷31への放電が停止されたことを契機として、第二通知部46を作動させている。これにより、エアロゾルの生成要求が終了するよりも前のタイミングにて、第二通知部46を作動させることができる。このため、ユーザは香喫味の変化に気付きやすくなる。
【0181】
第二変形例のエアロゾル生成装置1において、第一変形例で説明した、累積放電時間に基づいて目標温度の設定を行う方法を適用することもできる。つまり、MCU50は、累積放電時間に基づいて目標温度を設定し、この目標温度にしたがって第二負荷31への放電を開始すると共に、エアロゾルの生成期間中には、所定間隔で累積放電時間を算出し、算出した累積放電時間が閾値TH4を超えている場合には、
図17のステップS59以降の処理を行い、算出した累積放電時間が閾値TH4以下の場合には、第一負荷21と第二負荷31の各々への放電を継続すればよい。
【0182】
ここまで説明してきたエアロゾル生成装置1では、第1カートリッジ20が電源ユニット10に着脱自在な構成とされているが、第1カートリッジ20は電源ユニット10と一体化された構成であってもよい。
【0183】
また、ここまで説明してきたエアロゾル生成装置1では、第一負荷21と第二負荷31は、電源12から放電される電力によって発熱するヒータとされている。しかし、第一負荷21と第二負荷31は、それぞれ、電源12から放電される電力によって発熱と冷却の双方が可能なペルチェ素子であってもよい。このように第一負荷21と第二負荷31を構成すれば、エアロゾル源22の温度と香味源33の温度に関する制御の自由度が広がるため、単位香味量をより高度に制御することができる。
また、第一負荷21を、超音波などによってエアロゾル源22を加熱することなくエアロゾル源22を霧化することのできる素子で構成してもよい。また、第二負荷31を、超音波などによって香味源33を加熱することなく、香味源33がエアロゾルに付加する香味成分量を変更できるような素子で構成してもよい。
第二負荷31に例えば超音波素子を用いる場合、MCU50は、香味源33を通過するエアロゾルに付加される香味成分量に影響を与えるパラメータとして香味源33の温度ではなく、香味源33に与えている超音波の波長などに基づき、第一負荷21と第二負荷31への放電を制御してもよい。
第一負荷21に用いることができる素子は、上述したヒータ、ペルチェ素子、超音波素子に限られず、電源12から供給される電力を消費することでエアロゾル源22の霧化が可能な素子であればさまざまな素子又はその組合せを利用することができる。同様に、第二負荷31に用いることができる素子は、上述したヒータ、ペルチェ素子、超音波素子に限られず、電源12から供給される電力を消費することでエアロゾルに付加する香味成分量の変更が可能な素子であればさまざまな素子又はその組合せを利用することができる。
【0184】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0185】
(1)
エアロゾル源(エアロゾル源22)と上記エアロゾル源から発生したエアロゾルに香味を付加する香味源(香味源33)のうち少なくとも1つの残量を取得可能に構成される処理装置(MCU50)を備え、
上記処理装置は、
上記残量が閾値以上の場合、上記エアロゾル源を霧化する霧化器(第一負荷21)への電源(電源12)からの放電である第1放電と、上記香味源が上記エアロゾルに付加する香味の量を調整可能な調整器(第二負荷31)への上記電源からの放電である第2放電とを許容し、
上記残量が上記閾値未満の場合、上記第1放電と上記第2放電のうちいずれか一方を抑制するように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【0186】
(1)によれば、香味源とエアロゾル源の少なくとも一方の残量が少ない場合には、霧化器と調整器のいずれか一方への放電が抑制されることで、残量が多い場合と比較してエアロゾルの香喫味が変化する。このため、香味源とエアロゾル源の少なくとも一方の残量が少ないことを、ユーザの味覚を通じてユーザに伝えることができる。この結果、視覚、触覚、又は聴覚による通知を行う場合と比べて、ユーザにより直感的に残量の減少を伝えることができる。
【0187】
(2)
(1)に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
上記処理装置は、
上記香味源の残量(香味成分残量)を取得可能であり、
上記香味源の残量が上記閾値(閾値TH1)未満の場合、上記第2放電を抑制するように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【0188】
(2)によれば、香味源の残量が少ない場合には調整器への放電が抑制されることで、エアロゾルに付加される香味の量が低下する。このため、香味と密接に関連する香味源の交換が必要であることをユーザに伝えられる。
【0189】
(3)
(1)又は(2)に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
上記処理装置は、
上記エアロゾル源の残量(リザーバ残量)を取得可能であり、
上記エアロゾル源の残量が上記閾値(閾値TH2)未満の場合、上記第1放電を抑制するように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【0190】
(3)によれば、エアロゾル源の残量が少ない場合には霧化器への放電が抑制されることで、エアロゾルの量が低下する。このため、エアロゾルと密接に関連するエアロゾル源の交換が必要であることをユーザに伝えられる。
【0191】
(4)
(1)に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
通知部(第一通知部45及び第二通知部46)を備え、
上記閾値は、第1閾値(閾値TH1)と第2閾値(閾値TH2)を含み、
上記処理装置は、
上記香味源の残量(香味成分残量)と上記エアロゾル源の残量(リザーバ残量)を取得可能であり、
上記香味源の残量が上記第1閾値未満且つ上記エアロゾル源の残量が上記第2閾値未満の場合、上記第1放電と上記第2放電のうち上記第1放電のみを抑制し、且つ、ユーザへ上記香味源と上記エアロゾル源の不足を伝えるように上記通知部を制御するように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【0192】
(4)によれば、香味源とエアロゾル源の両方の残量が少ない場合には、香味の量とエアロゾルの量のうちユーザがより敏感に感知できるエアロゾルの量が減少されつつ、香味源とエアロゾル源の不足がユーザに通知される。このため、香味源とエアロゾル源の両方の交換が必要な状態であることを、ユーザがより気付きやすくなる。
【0193】
(5)
(1)から(4)のいずれか1つに記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
上記処理装置は、
上記残量が上記閾値未満の場合、上記第1放電と上記第2放電のうちいずれか一方を抑制し、その後に上記第1放電と上記第2放電とを抑制するように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【0194】
(5)によれば、霧化器と調整器のうちの片方への放電が抑制された後、霧化器と調整器の両方への放電が抑制される。これにより、香喫味が段階的に変化するため、残量が少ない状態であることをユーザがより気付きやすくなる。
【0195】
(6)
(1)に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
上記処理装置は、
エアロゾルの生成が行われている間に、上記香味源と上記エアロゾル源のうち少なくとも1つの残量を取得可能であり、
上記残量が上記閾値未満の場合、上記第1放電と上記第2放電のうち一方を継続させ、上記第1放電と上記第2放電のうち他方を抑制するように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【0196】
(6)によれば、エアロゾル生成中に取得した残量が少ない場合に、エアロゾル生成中において、第1放電と第2放電のうちの一方が抑制される。このため、出来る限り早いタイミングで、ユーザに残量が少ないことを伝えられる。
【0197】
(7)
(1)に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
上記処理装置は、
上記霧化器による上記エアロゾル源の霧化指令を取得可能であり、
上記霧化指令に応じたエアロゾルの生成後に、上記香味源と上記エアロゾル源のうち少なくとも1つの残量を取得可能であり、
上記残量が上記閾値未満且つ次の上記霧化指令を取得した場合、上記第1放電と上記第2放電のうち一方を実行させ、上記第1放電と上記第2放電のうち他方を抑制するように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【0198】
(7)によれば、エアロゾル生成中において、第1放電と第2放電のうちの一方が抑制される場合に比べて、残量が閾値未満となったときに生成されるエアロゾルの香喫味の変化が大きくなる。このため、残量が少なくなっていることを、ユーザがより気付きやすくなる。
【0199】
(8)
(1)から(6)のいずれか1つに記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
第1通知部(第一通知部45)を備え、
上記処理装置は、上記第1放電と上記第2放電のうちいずれか一方を抑制する時点以前のタイミング(
図18の時刻t3、
図20の時刻t3)で、上記第1通知部を機能させるように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【0200】
(8)によれば、第1放電と第2放電のうちいずれか一方を抑制されて香喫味が変化する時点又はその時点よりも前のタイミングで第1通知部が機能する。このため、味覚に加えもう一つの感覚を通じ、残量が少なくなったことを、ユーザがより気付きやすくなる。
【0201】
(9)
(8)に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
上記処理装置は、上記第1放電と上記第2放電のうちいずれか一方を抑制する時点より前のタイミング(
図20の時刻t3)で、上記第1通知部を機能させるように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【0202】
(9)によれば、香喫味が変化するよりも前に味覚とは異なる感覚を通じてユーザに気付きを与えることができる。このため、ユーザは香喫味の変化に気付きやすくなる。さらに、変化した香喫味のエアロゾルが生成される前に香味源又はエアロゾル源を交換することが可能になる。この結果、エアロゾル生成装置の商品性が向上する。
【0203】
(10)
(8)又は(9)に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
上記第1通知部は、ユーザの触覚に作用する通知を行うように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【0204】
(10)によれば、ユーザの触覚に作用する通知部を用いて通知を行うことで、周りの人間には交換の必要性が気付かれにくくなる。このため、エアロゾル生成装置の洗練さが向上し、結果的に商品性が向上する。
【0205】
(11)
(1)から(6)、(8)から(10)のいずれか1つに記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
第2通知部(第二通知部46)を備え、
上記処理装置は、
上記残量が上記閾値未満の場合、上記第1放電と上記第2放電のうちいずれか一方を抑制し、その後に上記第1放電と上記第2放電とを抑制し、
上記第1放電と上記第2放電とを抑制する時点(
図18-
図20の時刻t4)以前のタイミングで、上記第2通知部を機能させるように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【0206】
(11)によれば、第1放電と第2放電が抑制されて香喫味が変化する時点又はその時点よりも前のタイミングで第2通知部が機能する。このため、味覚に加えもう一つの感覚を通じ、残量が少なくなったことを、ユーザがより気付きやすくなる。
【0207】
(12)
(11)に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
上記処理装置は、上記第1放電と上記第2放電とを抑制する時点より前のタイミング(
図20の時刻t4よりも前のタイミング)で、上記第2通知部を機能させるように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【0208】
(12)によれば、香喫味が変化するよりも前に味覚とは異なる感覚を通じてユーザに気付きを与えることができる。このため、ユーザは香喫味の変化に気付きやすくなる。さらに、吸引してもエアロゾルが生成されないという事態を回避することが可能になり、エアロゾル生成装置の商品性が向上する。
【0209】
(13)
(11)又は(12)に記載のエアロゾル生成装置の制御ユニットであって、
上記第2通知部は、ユーザの視覚に作用する通知を行うように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【0210】
(13)によれば、ユーザの視覚に作用する通知部を用いて通知を行うため、残量が少なくなったことを、より気付きやすくなる。
【0211】
(14)
通知部(第一通知部45及び第二通知部46)と、
エアロゾル源(エアロゾル源22)と上記エアロゾル源から発生したエアロゾルに香味を付加する香味源(香味源33)のうちの一方を加熱する第1ヒータ(第一負荷21)への電源からの放電と、上記エアロゾル源と上記香味源のうちの他方を加熱し且つ上記第1ヒータとは別体の第2ヒータ(第二負荷31)への上記電源からの放電とを制御可能に構成される処理装置(MCU50)と、を備え、
上記処理装置は、
上記通知部を機能させる前は、上記第1ヒータへの上記電源からの放電と上記第2ヒータへの上記電源からの放電を許容し、
上記通知部を機能させる場合は、上記第1ヒータへの上記電源からの放電と上記第2ヒータへの上記電源からの放電とのいずれか一方を抑制するように構成される、
エアロゾル生成装置の制御ユニット。
【0212】
(14)によれば、通知部が機能する場合には、第1ヒータと第2ヒータのいずれか一方への放電が抑制される。この抑制によってエアロゾルの香喫味が変化することにより、通知部が機能していることをユーザに認知させやすくなる。この結果、例えば、香味源又はエアロゾル源の残量が少ないことを通知部によって通知することで、ユーザに香味源又はエアロゾル源の交換を促すことができる。
【符号の説明】
【0213】
1 エアロゾル生成装置
T1,T2,T3 温度検出用素子
10 電源ユニット
11a トップ部
11b ボトム部
11 電源ユニットケース
12 電源
14 操作部
15 吸気センサ
20 第1カートリッジ
21 第一負荷
31 第二負荷
22 エアロゾル源
23 リザーバ
24 ウィック
25 エアロゾル流路
26a カートリッジ収容部
26b 連通路
26 エンドキャップ
27 カートリッジケース
30 第2カートリッジ
32 吸口
33 香味源
41 放電端子
42 空気供給部
43 充電端子
45 第1通知部
46 第2通知部
50a メモリ
50 MCU
51 DC/DCコンバータ
52,54 電圧センサ
53,55 電流センサ
55A 充電IC