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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】手摺装置
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/18 20060101AFI20241225BHJP
【FI】
E04F11/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020206353
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022093194
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 浩一
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 正則
(72)【発明者】
【氏名】疋田 誠二
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-000914(JP,U)
【文献】特開2004-003197(JP,A)
【文献】特開平11-200579(JP,A)
【文献】米国特許第04108422(US,A)
【文献】特開2004-143674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/00-11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラケットに対して固定及び取り外しを可能とする手摺と、
前記手摺の内部において前記手摺の延在方向に沿って摺動可能に設けられ、前記ブラケットに設けられた係合部に係合可能なロック部材と、
前記手摺に対して回動可能に設けられ、かつ前記ロック部材を押圧して前記係合部に係合させる押圧面、及び前記押圧面よりも軸部からの距離が短く前記ロック部材の摺動を許容する許容面を有するカム部材と、
を備え
前記カム部材は、前記押圧面と前記許容面との間に、前記押圧面よりも前記軸部からの距離が長い突出面を備える手摺装置。
【請求項2】
ブラケットに対して固定及び取り外しを可能とする手摺と、
前記手摺の内部において前記手摺の延在方向に沿って摺動可能に設けられ、前記ブラケットに設けられた係合部に係合可能なロック部材と、
前記手摺に対して回動可能に設けられ、かつ前記ロック部材を押圧して前記係合部に係合させる押圧面、及び前記押圧面よりも軸部からの距離が短く前記ロック部材の摺動を許容する許容面を有するカム部材と、
を備え、
前記ロック部材に設けられ、かつ前記手摺から突出する操作部を備え手摺装置。
【請求項3】
前記操作部は、前記手摺から突出した状態から、前記ロック部材の押圧方向に回動されることで前記手摺に収容される請求項に記載の手摺装置。
【請求項4】
ブラケットに対して固定及び取り外しを可能とする手摺と、
前記手摺の内部において前記手摺の延在方向に沿って摺動可能に設けられ、前記ブラケットに設けられた係合部に係合可能なロック部材と、
前記手摺に対して回動可能に設けられ、かつ前記ロック部材を押圧して前記係合部に係合させる押圧面、及び前記押圧面よりも軸部からの距離が短く前記ロック部材の摺動を許容する許容面を有するカム部材と、
を備え、
前記ロック部材を前記カム部材に向けて引き寄せる付勢部材を備え手摺装置。
【請求項5】
ブラケットに対して固定及び取り外しを可能とする手摺と、
前記手摺の内部において前記手摺の延在方向に沿って摺動可能に設けられ、前記ブラケットに設けられた係合部に係合可能なロック部材と、
前記手摺に対して回動可能に設けられ、かつ前記ロック部材を押圧して前記係合部に係合させる押圧面、及び前記押圧面よりも軸部からの距離が短く前記ロック部材の摺動を許容する許容面を有するカム部材と、
を備え、
前記係合部は、前記ロック部材の押圧方向に向かうにつれて、前記ロック部材に対して縮幅する凹部であ手摺装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、床から立設する支柱に設けられた取り付け金具に対して、手摺に簡単に取り付けることができる手摺装置が開示されている。当該手摺装置では、手摺内部のガイドレールに対して固定片が摺動可能に設けられており、螺子体を螺入させて固定片をガイドレールに固定すると共に、固定片を取り付け金具の係合受け部に圧入することにより、手摺が取り付け金具に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-003197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の手摺装置は、取り付けに際し螺子体を操作するための工具が必要であり、取り付け及び取り外しに手間と時間が掛かる。また、当該手摺装置の固定は、固定片の係合受け部への当接に頼るため、手摺がぐらつく場合がある。
【0005】
本発明は、ブラケットに対して取り外し可能な手摺の固定が容易であり、かつ固定時のぐらつきを抑制可能な手摺装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の手摺装置は、ブラケットに対して固定及び取り外しを可能とする手摺と、前記手摺の内部において前記手摺の延在方向に沿って摺動可能に設けられ、前記ブラケットに設けられた係合部に係合可能なロック部材と、前記手摺に対して回動可能に設けられ、かつ前記ロック部材を押圧して前記係合部に係合させる押圧面、及び前記押圧面よりも軸部からの距離が短く前記ロック部材の摺動を許容する許容面を有するカム部材と、を備えている。
【0007】
第1の態様の手摺装置は、ブラケットに対して手摺を固定したり取り外したりすることを可能としている。ブラケットは、例えば、床から立設する支柱又は壁面に設置される。当該手摺装置では、手摺に対してロック部材が当該手摺の延在方向に沿って摺動可能に設けられ、ロック部材に隣接してカム部材が回動可能に設けられている。そして、作業者がカム部材を回動させることで押圧面により押圧されたロック部材がブラケットの係合部と係合し、手摺はブラケットに対して固定される。また、作業者がカム部材を回動させることで許容面がロック部材と向き合い、ロック部材をブラケットから後退させることで、手摺をブラケットから取り外すことができる。以上、第1の態様によれば、カム部材を回動させることにより、ブラケットに対して取り外し可能な手摺の固定を容易に行うことができる。また、カムを用いてロック部材をブラケットに対して強く係合することができるため、固定時のぐらつきが抑制される。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様の手摺装置であって、前記カム部材は、前記押圧面と前記許容面との間に、前記押圧面よりも前記軸部からの距離が長い突出面を備える。
【0009】
第2の態様では、押圧面においてロック部材を押圧しているカム部材を回動させた場合、カム部材はロック部材との接触位置を押圧面から突出面に移動させた後、許容面と面する位置になることで、手摺のブラケットからの取り外しが可能となる。すなわち、ブラケットから手摺を取り外す場合、カム部材は押圧面よりも高い突出面を乗り越える必要がある。そのため、第2の態様によれば、手摺を握る利用者が誤ってカム部材に触れたり、ロック部材から反力を受けたりして、カム部材が回動することで、固定が解除された手摺がブラケットから脱落することが抑制される。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様の手摺装置であって、前記ロック部材に設けられ、かつ前記手摺から突出する操作部を備える。
【0011】
第3の態様によれば、操作部をロック部材に設けることにより、係合部に対して強く係合しているロック部材を、工具を使用せずに摺動させることができる。
【0012】
本発明の第4の態様は、第3の態様の手摺装置であって、前記操作部は、前記手摺から突出した状態から、前記ロック部材の押圧方向に回動されることで前記手摺に収容される。
【0013】
第4の態様によれば、操作部を手摺に対して収容可能に設けることにより、ロック部材を操作しない手摺の使用時においてロック部材の誤操作が抑制されると共に、ブラケット付近の見た目の悪化を防ぐことができる。
【0014】
本発明の第5の態様は、第1~第4の何れか1の態様の手摺装置であって、前記ロック部材を前記カム部材に向けて引き寄せる付勢部材を備える。
【0015】
第5の態様では、カム部材の許容面がロック部材と向き合っている場合、付勢部材によりロック部材は押圧方向と反対側に後退している。そのため、第5の態様によれば、ブラケットに手摺を固定する場合、及び取り外す場合に、作業者がロック部材を手で後退させて保持する操作が不要となる。
【0016】
本発明の第6の態様は、第1~第5の何れか1の態様の手摺装置であって、前記係合部は、前記ロック部材の押圧方向に向かうにつれて、前記ロック部材に対して縮幅する凹部である。
【0017】
第6の態様によれば、カム部材の回動操作により係合部と係合したロック部材が、押圧方向に向かう場合における係合力を上げることできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ブラケットに対して取り外し可能な手摺の固定が容易であり、かつ固定時のぐらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】第1の実施形態に係る手摺装置の斜視図である。
図1B】第1の実施形態に係る手摺装置の断面図である。
図2】第1の実施形態に係る手摺装置の側面図である。
図3】第1の実施形態に係る手摺装置の側方断面図である。
図4】第1の実施形態に係る手摺装置のスライドロックの側面図である。
図5】第1の実施形態に係る手摺装置のカムの側面図である。
図6】第1の実施形態に係る手摺装置における手摺とブラケットとの固定部の底面斜視図であって、固定解除状態を示す図である。
図7】第1の実施形態に係る手摺装置における手摺とブラケットとの固定部の側方断面図であって、固定解除状態を示す図である。
図8】第1の実施形態に係る手摺装置における手摺とブラケットとの固定部の底面斜視図であって、固定状態を示す図である。
図9】第1の実施形態に係る手摺装置における手摺とブラケットとの固定部の側方断面図であって、固定状態を示す図である。
図10】第2の実施形態に係る手摺装置における手摺とブラケットとの固定部の側方断面図であって、固定解除状態を示す図である。
図11】第2の実施形態に係る手摺装置における手摺とブラケットとの固定部の側方断面図であって、固定状態を示す図である。
図12A】第3の実施形態に係る手摺装置の斜視図であって、スライドロックとブラケットとの固定解除状態を示す図である。
図12B】第3の実施形態に係る手摺装置の斜視図であって、スライドロックとブラケットとの固定状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態について説明する。なお、各図において、作業者が壁面12に面した場合の右側を右方、左側を左方とし、上側を上方、下側を下方とし、奥側を前方とし、手前側を後方とする。また、幅と表記した場合は、特に断りのない限り、手摺30を断面視した場合の幅、すなわち、前後方向の幅を指す。
【0021】
図1Aに示されるように、通路の壁面12には公知の連続手摺である固定手摺130が固定され、この固定手摺130は扉14の前では途切れており、この途切れている部分、つまり固定手摺130同士の間に本発明の手摺装置10が設けられている。
【0022】
(構成)
図1A図1B及び図2に示されるように、本実施形態の手摺装置10は、壁面12に対して固定された複数のブラケット20と、ブラケット20に固定され、壁面12に沿って左右に延在する手摺30と、を含んで構成されている。
【0023】
(ブラケット)
本実施形態のブラケット20は、手摺30を固定する左ブラケット20Lと、右ブラケット20Rと、を含む。左ブラケット20Lは扉14の左方に設けられて、右ブラケット20Rは扉14の右方に設けられている。図1Bに示されるように、ブラケット20は、壁面12から立設し、かつブラケット20の下端部を挿通したアンカーボルト90が、ナット92により締結されることで壁面12に固定されている。なお、ブラケット20の壁面12に対する固定部分では、アンカーボルト90及びナット92が隠れるようにカバー21で覆われている。また、ブラケット20は、側面視が略Z字状であって、壁面12から後方に延在した後、上方に向きを変えて上方に延びている。
【0024】
ブラケット20は、その上端部分に手摺30の後述するレール34に収容される固定部22を備えている。また、図3に示されるように、左ブラケット20L及び右ブラケット20Rの固定部22には、それぞれ、レール34の延在方向(すなわち、左右方向)に沿って形成された溝である凹部24が設けられている。この凹部24は、開口から奥に向かうにつれて、上下方向の幅が縮小するようにテーパーが付けられている。具体的に、左ブラケット20Lの固定部22には、前後方向に貫通し、かつ右方に開いた凹部24を有する。また、右ブラケット20Rの固定部22には、前後方向に貫通し、かつ左方に開いた凹部24を有する。
【0025】
(手摺)
図1Aに示されるように、本実施形態の手摺30は、ブラケット20に対して取り付け及び取り外しを可能とする可動手摺として構成されている。手摺30は、壁面12に設けられた扉14と対応する部分に設けられている。本実施形態では、手摺30をブラケット20から取り外すことにより、扉14における人の出入りに支障が無くなる。
【0026】
図1B図2及び図3に示されるように、手摺30は、樹脂製のエンドキャップ31と、樹脂製の笠木32と、笠木32の内部に収容されたアルミニウムの押出材により形成されたレール34と、を含む。エンドキャップ31は、レール34の左右両端に固定されている。断面視において、笠木32は、下方が開放されたC字状であり、レール34は、下方が開放された開断面を有している。この笠木32の下部において、後述する解除操作部44及びカム60に対応する部分は、C字状の断面における開放部分を切り欠くことで拡幅させた幅広口32Aとして形成されている。この幅広口32Aは、解除操作部44が摺動し、カム60が回動した場合に干渉しないように形成されている。なお、図2図6及び図8における手摺30については、笠木32の図示を省略している。
【0027】
レール34は、内部に収容部34Aを有し、収容部34Aの下部に開口部34Bを有している。開口部34Bの幅は収容部34Aの幅よりも狭い。また、収容部34Aには、金属製のスライドロック40と、樹脂製のカム60と、が収容されている。
【0028】
また、レール34の前後側の壁面にはそれぞれ、当該壁面を貫通する長孔36及び丸孔38が形成されている。長孔36は、レール34の延在方向と同じ左右方向に沿って延びている。丸孔38は、長孔36の左右方向に隣接して設けられている。
【0029】
(スライドロック)
スライドロック40は、左ブラケット20L及び右ブラケット20Rの各々に対応して左右両側に設けられている。なお、各スライドロック40は互いに向きを反転させた状態で設置されている。
【0030】
スライドロック40は、レール34の収容部34A内において摺動可能に収容されている。本実施形態において、スライドロック40の幅は収容部34Aの幅よりもわずかに狭く、開口部34Bの幅よりも広い。そのため、スライドロック40は、開口部34Bから下方に落ちることなく、収容部34A内を摺動する。
【0031】
図4に示されるように、スライドロック40は、本体部42と、解除操作部44と、スプリングピン46と、を含む。本体部42は、拡幅部42Aと、係合突起42Bと、ガイド部42Cと、を含む。拡幅部42Aは、幅がレール34の開口部34Bよりも広く、左右方向に延在する部位である。係合突起42Bは、対応するブラケット20の凹部24に向けて左方又は右方に突出形成され、凹部24に挿入される部位である。
【0032】
ガイド部42Cは、拡幅部42Aの下端から下方に向けて形成された台形状の部位である。このガイド部42Cは、前後に一対形成されており、一対のガイド部42Cの間は本体部42において下方に開口する溝42Dとして形成される。そして、溝42Dの内部には、解除操作部44が回動可能に収容される。また、ガイド部42Cには、前後方向に貫通する貫通孔42Eが形成されている。さらに、ガイド部42Cには、貫通孔42Eに隣接する場所に幅方向外側に向けて突出する突起部47が形成されている。
【0033】
拡幅部42Aの幅方向両側であって、かつ係合突起42Bと反対側の端部には、左右方向に延びる収容溝48が形成されている。この収容溝48は、後述するコイルスプリング80が収容される(図3参照)。また、収容溝48の左右中央付近には、本体部42を幅方向に貫通する貫通孔49が形成されている。
【0034】
ここで、図2及び図4に示されるように、貫通孔49と、レール34の長孔36とを一致させ、ピン82が挿通されることで、スライドロック40は、長孔36の長さの範囲内でレール34に対する摺動が可能となる。なお、ピン82は幅方向両端付近の外周面に溝が形成されており、当該溝にE型のスナップリング84が嵌め込まれることで、ピン82のレール34及びスライドロック40からの脱落が防止されている。
【0035】
図7及び図9に示されるように、ピン82の両端側には、それぞれ、コイルスプリング80の一端が固定されている。このコイルスプリング80の他端側は、後述するピン83の端部に固定されている。補足すると、コイルスプリング80は、引張コイルバネであって、両端のフックがピン82とピン83とに固定されている。これにより、ピン82はピン83側に常時引き付けられている、換言すると、スライドロック40はカム60側に常時付勢されている。
【0036】
図4に示されるように、解除操作部44は、ハンマ状の部材であって、溝42Dに収容される基部側に挿通孔44Aが形成されている。また、解除操作部44の頭部側の幅は溝42Dの幅よりも広めに形成されている。本体部42の貫通孔42Eと、解除操作部44の挿通孔44Aとの軸を一致させ、スプリングピン46を挿通することで、解除操作部44は本体部42に対して軸支される。貫通孔42Eの径は、挿入前のスプリングピン46の径よりも小さいため、拡径方向に弾性を有するスプリングピン46は貫通孔42Eに対して固定される。また、挿通孔44Aの径は、スプリングピン46の径よりも大きい。そのため、解除操作部44はスプリングピン46、すなわち本体部42に対して回動が可能となる。
【0037】
(カム部材)
図3に示されるように、カム60は、各スライドロック40の各々に対応して左右両側に設けられている。なお、各カム60は互いに向きを反転させた状態で設置されている。
【0038】
図5に示されるように、カム60は、胴部61と、固定操作部64と、開放操作部66と、を含む。また、胴部61の上方側には、前後方向に貫通する軸部としての貫通孔68が形成されている。側面視において、胴部61は、略直角三角形状の部位であって、底辺から縦辺にかけてカム面62として形成されている。カム面62は、胴部61の縦辺の貫通孔68寄りに設けられた許容面62Aと、底辺に設けられた押圧面62Bと、許容面62Aと押圧面62Bとの間に設けられた突出面62Cと、を含む。
【0039】
許容面62Aは、スライドロック40と面している場合に、レール34に対するスライドロック40の摺動を許容する機能を有している。押圧面62Bは、スライドロック40と面して接触している場合に、スライドロック40を固定部22側に押圧する機能を有している。許容面62Aは、押圧面62Bよりも貫通孔68からの距離が短くなるように形成されている。ここで、貫通孔68から押圧面62Bまでの距離と、貫通孔68から許容面62Aまでの距離との差は、スライドロック40の移動量となる。突出面62Cは、押圧面62Bよりも貫通孔68からの距離が長くなるように形成されている。
【0040】
固定操作部64は、押圧面62Bの一端側(図の左方側)から貫通孔68から遠ざかる方向(図の下方側)に向けて延在している。固定操作部64は、カム60をスライドロック40側(図の反時計方向)に回動させる場合に作業者が操作をする部位である。また、固定操作部64は、許容面62A側(図の右方側)が開放された断面略U字状を呈しており、幅方向両側の側板部64Aと、一対の側板部64Aを接続する背板部64Bと、を含む。側板部64Aの下方端には、前後方向に貫通する孔である係止孔64Cが形成されている。また、背板部64Bの下方端から胴部61に向けて左右方向に貫通する一対の溝部64Dが形成されている(図6参照)。
【0041】
開放操作部66は、背板部64Bの上方端から許容面62Aと反対側(図の左方側)に向けて突出している。開放操作部66は、カム60をスライドロック40と反対側(図の時計方向)に回動させる場合に作業者が操作をする部位である。後述する固定状態において、開放操作部66は幅広口32Aから手摺30の下方に突出している(図3及び図9参照)。
【0042】
ここで、図2に示されるように、貫通孔68と、レール34の丸孔38とを一致させ、ピン83が挿通されることで、カム60はピン83を中心として左右方向の回動が可能となる。なお、貫通孔68に図示しないシリコンチューブを挿入してからピン83を挿通することにより、カム60の回動時に突出面62Cを乗り越える際の抵抗を低減させることができる。また、後述する固定状態において、スライドロック40に対するカム60の押圧力にシリコンチューブの弾性力が加わることで、スライドロック40の係合を確実にすることができる。
【0043】
また、ピン82と同様にピン83は幅方向両端付近の外周面に溝が形成されており、当該溝にE型のスナップリング84が嵌め込まれることで、ピン83のレール34及びカム60からの脱落が防止されている。
【0044】
(手摺の着脱方法)
以下、ブラケット20に対する手摺30の着脱方法について説明する。ここで、ブラケット20に対して手摺30が固定される前の状態を固定解除状態、ブラケット20に対して手摺30が固定された状態を固定状態、として説明する。固定解除状態は、ブラケット20に設置された手摺30がブラケット20に対して固定されていない状態に限らず、手摺30がブラケット20から取り外された状態も含む。
【0045】
なお、左ブラケット20L及び右ブラケット20Rを壁面12に対して設置する場合、左ブラケット20Lと右ブラケット20Rとの間隔は、手摺30におけるスライドロック40及びカム60の位置関係を考慮して設定されている。具体的には、カム60の押圧面62Bがスライドロック40を押圧し、係合突起42Bが凹部24に挿入された場合の係合力が適正となるように設定される。
【0046】
(1)固定方法
はじめに、固定解除状態の手摺30をブラケット20に固定する方法について説明する。
【0047】
まず、固定に際し作業者は、図6及び図7に示されるように、カム60の固定操作部64が手摺30から下方に突出していることを確認する。次に作業者は、レール34においてスライドロック40に隣接する収容部34Aに、ブラケット20の固定部22が収容されるように、手摺30をブラケット20に設置する。
【0048】
そして、作業者は、固定操作部64をスライドロック40側(右方側)に操作することで、カム60をスライドロック40側に回動させる。なお、操作の際は、左右両方の固定操作部64を同時に操作するとよい。回動されたカム60では、スライドロック40と面していた許容面62Aが、突出面62Cに移ることで突出面62Cがスライドロック40をブラケット20側に押圧する。そして、スライドロック40は、コイルスプリング80の付勢力に反してブラケット20側に摺動を開始する。
【0049】
さらに、作業者が固定操作部64を操作してカム60を回動させた場合、図8及び図9に示されるように、カム60では、突出面62Cがスライドロック40を乗り越えて、押圧面62Bがスライドロック40と接触する。そして、カム60はスライドロック40をブラケット20に対して押圧し続けると共に、ブラケット20の凹部24に挿入された係合突起42Bが凹部24と係合する。これにより、手摺30はブラケット20に固定された固定状態となる。
【0050】
一方、カム60が回動されて押圧面62Bがスライドロック40と接触した場合、溝部64Dにガイド部42Cの先端が収容される。またこの場合、カム60の背板部64Bが解除操作部44を上方に回動させることで、固定解除状態において手摺30からぶら下がった状態で幅広口32Aから突出していた解除操作部44が手摺30に収容される。
【0051】
さらにこの場合、係止孔64Cに突起部47が収容される。これにより、カム60の逆方向への回動が抑制され、押圧面62Bがスライドロック40と接触した状態が維持される。
【0052】
(2)取り外し方法
次に、固定状態の手摺30をブラケット20から取り外す方法について説明する。
【0053】
まず、作業者は、図8及び図9に示される幅広口32Aから突出した開放操作部66をスライドロック40の反対側(左方側)に操作することで、カム60をスライドロック40の反対側に回動させる。これにより、背板部64Bにより上方に収容されていた解除操作部44は自重で下方に回動し、幅広口32Aから手摺30の下方に突出する。また、カム60の回動により、スライドロック40と接していた押圧面62Bに代わり、許容面62Aがスライドロック40と面する。
【0054】
ここで、許容面62Aがスライドロック40と面した場合、スライドロック40は摺動可能となるが、係合突起42Bが凹部24対して係合した状態であるため、コイルスプリング80の付勢力を受けてもスライドロック40は摺動しない。そのため、作業者は解除操作部44をカム60側(左方側)に向けて強く操作することで、係合突起42Bの凹部24との係合が解除され、スライドロック40はカム60側に摺動する。つまり、手摺30は固定解除状態となる。そして、図6及び図7に示されるように、凹部24との係合が解除されたスライドロック40は、コイルスプリング80によりカム60側に常に付勢されるため、作業者が解除操作部44から手を離しても、スライドロック40はカム60と接触した状態を維持する。
【0055】
そして、作業者が手摺30を上方に持ち上げることにより、ブラケット20から手摺30が取り外される。
【0056】
(実施形態のまとめ)
本実施形態の手摺装置10は、ブラケット20に対して手摺30を固定したり取り外したりすることが可能に形成されている。手摺装置10では、手摺30に対してスライドロック40が手摺30の延在方向に沿って摺動可能に設けられ、スライドロック40に隣接してカム60が回動可能に設けられている。そして、作業者がカム60を回動させることで押圧面62Bにより押圧されたスライドロック40がブラケット20の凹部24と係合し、手摺30はブラケット20に対して固定された固定状態となる。また、作業者がカム60を回動させることで許容面62Aがスライドロック40と向き合い、スライドロック40がブラケット20から後退することで固定解除状態となり、手摺30はブラケット20から取り外すことができる。
【0057】
以上、本実施形態によれば、カム60を回動させることにより、ブラケット20に対して取り外し可能な手摺30の固定を容易に行うことができる。また、カム60を用いてスライドロック40をブラケット20に対して強く係合することができるため、固定状態における手摺30のぐらつきが抑制される。
【0058】
また、本実施形態では、押圧面62Bにおいてスライドロック40を押圧しているカム60を回動させた場合、カム60はスライドロック40との接触位置を押圧面62Bから突出面62Cに移動させた後、許容面62Aと面する位置になる。そして、スライドロック40のブラケット20に対する係合を解除することで、固定状態から固定解除状態となり、手摺30のブラケット20からの取り外しが可能となる。このように、ブラケット20から手摺30を取り外す場合、カム60は押圧面62Bよりも高い突出面62Cを乗り越える必要がある。そのため、本実施形態によれば、手摺30を握る利用者が誤ってカム60に触れたり、スライドロック40から反力を受けたりして、カム60が回動した結果、固定解除状態となった手摺30がブラケット20から脱落することが抑制される。
【0059】
また、本実施形態は、スライドロック40に設けられ、かつ手摺30から突出する解除操作部44を備えることを特徴としている。本実施形態によれば、解除操作部44をスライドロック40に設けることにより、凹部24に対して強く係合しているスライドロック40を、工具を使用せずに摺動させることができる。
【0060】
特に本実施形態のスライドロック40では、解除操作部44を本体部42に対して収容可能とすることで、手摺30の固定状態において、解除操作部44を手摺30に収容させることできる。これにより、本実施形態によれば、スライドロック40を操作しない手摺30の固定状態においてスライドロック40の誤操作が抑制される。また、手摺30の下方に解除操作部44が突出しないため、ブラケット20付近の見た目の悪化を防ぐことができる。
【0061】
また、本実施形態は、スライドロック40をカム60に向けて引き寄せるコイルスプリング80を備えることを特徴としている。カム60において許容面62Aがスライドロック40と面している場合、コイルスプリング80によりスライドロック40はカム60側に常に後退している。そのため、本実施形態によれば、ブラケット20に手摺30を固定する場合、及び取り外す場合に、作業者がスライドロック40を手で後退させて保持する操作が不要となる。
【0062】
さらに、本実施形態の凹部24は、開口から奥に向かうにつれて、係合突起42Bに対して上下方向の幅が縮小するようにテーパーが付けられている。そのため、本実施形態によれば、カム60の回動操作により係合突起42Bが凹部24に挿入されるほど、両者は強く係合する。つまり、本実施形態によれば、凹部24にテーパーが無い場合と比べて、係合突起42Bと凹部24との係合力を上げることできる。
【0063】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態とスライドロック40及びカム60の形状が異なる。以下、第1の実施形態との相違点について説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成については、第1の実施形態と同一の符号を付しており、詳細な説明については省略する。
【0064】
図10に示されるように、本実施形態のスライドロック40は、側面視において略L字状を呈しており、解除操作部44が本体部42と一体に形成されている。また、解除操作部44の前後方向両側に突起部47が形成されている。
【0065】
本実施形態のカム60は、側面視において略Z字状を呈している。背板部64Bの先端側から開放操作部66側に向けて、スライドロック40の解除操作部44が挿通可能な開口部64Eが形成されている。
【0066】
図11に示されるように、手摺30をブラケット20に固定する場合、作業者がカム60を回動させることにより、解除操作部44は開口部64Eを挿通し、係止孔64Cに突起部47が収容される。
【0067】
以上、本実施形態によれば、上述した効果の他に以下の効果を有している。本実施形態では、手摺30をブラケット20に固定する場合、カム60を操作しても解除操作部44は回動せず、下方に突出した状態である。そのため、解除操作部44は、手摺30の下方から突出することがあるものの、回動しない解除操作部44により、スライドロック40の剛性は確保される。そのため、固定状態から固定解除状態にする場合に、係合突起42Bと凹部24との係合が強い場合であっても、作業者は解除操作部44に対して強い力を掛けることができる。
【0068】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、第1の実施形態とブラケット20及びスライドロック40の形状が異なる。以下、第1の実施形態との相違点について説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成については、第1の実施形態と同一の符号を付しており、詳細な説明については省略する。
【0069】
図12A及び図12Bは、レール34の内部の斜視図である。図12Aに示されるように、本実施形態のブラケット20において固定部22の前後両側には、左右方向に沿って延びる溝部25が形成されている。
【0070】
一方、本実施形態のスライドロック40における係合突起42Bの先端には、上下方向に貫通し、係合突起42Bの先端からカム60側に向かって延びる係合溝42Fが形成されている。この係合溝42Fにより、係合突起42Bの先端は前後方向に分離している。
【0071】
図12Bに示されるように、手摺30をブラケット20に固定する場合、作業者がカム60を回動させることにより、2つに分離している係合突起42Bの先端はそれぞれ溝部25に挿入される。
【0072】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。また、本実施形態によれば、左ブラケット20Lと右ブラケット20Rとを共通化することができる。
【0073】
[備考]
上述した各実施形態では、ブラケット20が壁面12に設置していたが、この限りではなく、床から立設する支柱に対してブラケット20を設置してもよい。また、各実施形態は、手摺30が2つのブラケット20で固定される構成であったが、この限りではなく、3つ以上のブラケット20により手摺30を固定してもよい。
【0074】
図3に示されるように、第1の実施形態において、左ブラケット20Lでは右方が開口するように凹部24が設けられ、右ブラケット20Rでは左方が開口するように凹部24が設けられている。そのため、手摺30をブラケット20に設置した場合、左右方向両側のスライドロック40が左右方向内側から外側に向けて摺動されることで手摺30は固定状態となる。しかし、凹部24の開口の向きはこの限りではない。例えば、左ブラケット20Lでは左方が開口するように凹部24を設け、右ブラケット20Rでは右方が開口するように凹部24を設けてもよい。この場合は、左右方向両側のスライドロック40が左右方向外側から内側に向けて摺動されることで手摺30は固定状態となる。
【符号の説明】
【0075】
10・・・手摺装置、12・・・壁面、14・・・扉、20・・・ブラケット
20L・・・左ブラケット(ブラケット)、20R・・・右ブラケット(ブラケット)
21・・・カバー、22・・・固定部、24・・・凹部(係合部)、25・・・溝部
30・・・手摺、31・・・エンドキャップ、32・・・笠木、32A・・・幅広口
34・・・レール、34A・・・収容部、34B・・・開口部、36・・・長孔
38・・・丸孔、40・・・スライドロック(ロック部材)、42・・・本体部
42A・・・拡幅部、42B・・・係合突起、42C・・・ガイド部
42D・・・溝、42E・・・貫通孔、44・・・解除操作部(操作部)
44A・・・挿通孔、46・・・スプリングピン、47・・・突起部
48・・・収容溝、49・・・貫通孔、60・・・カム(カム部材)
61・・・胴部、62・・・カム面、62A・・・許容面、62B・・・押圧面
62C・・・突出面、64・・・固定操作部、64A・・・側板部
64B・・・背板部、64C・・・係止孔、64D・・・溝部、64E・・・開口部
66・・・開放操作部、68・・・貫通孔(軸部)
80・・・コイルスプリング(付勢部材)、82・・・ピン、83・・・ピン
84・・・スナップリング、90・・・アンカーボルト、92・・・ナット
130・・・固定手摺
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B