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特許7610408水素貯蔵装置及び水素貯蔵装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】水素貯蔵装置及び水素貯蔵装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 11/00 20060101AFI20241225BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
F17C11/00 C
C01B3/00 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020545694
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2019054752
(87)【国際公開番号】W WO2019166441
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-07-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】102018104830.0
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515056277
【氏名又は名称】ゲーカーエン シンター メタルズ エンジニアリング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】ノイマン,ベッティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ボルネマン,ニルス
【合議体】
【審判長】有家 秀郎
【審判官】津熊 哲朗
【審判官】加藤 範久
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-109402(JP,A)
【文献】特開平9-255301(JP,A)
【文献】特表2017-519705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 11/00
C01B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ボリューム(3)を有する容器(2)と、
上記容器(2)内に配されているバルク材料(4)と
を備え、
上記バルク材料(4)が多数の圧縮成形体(5)を有し、
上記圧縮成形体(5)が、
少なくとも水素を貯蔵可能な粉末由来の第1材料(6)と、
上記第1材料のバインダーである第2材料(7)と
を有し、
上記圧縮成形体(5)が、サイズの変化を補償するための隙間(9)が形成されるように、上記容器(2)内で相互に向きを固定されることなく配されている水素貯蔵装置(1)。
【請求項2】
上記多数の圧縮成形体(5)が体積比率で上記バルク材料(4)の少なくとも50%を占める請求項1に記載の水素貯蔵装置(1)。
【請求項3】
上記バルク材料(4)が上記多数の圧縮成形体(5)間の隙間(9)に少なくとも配置された少なくとも圧縮可能な第3材料(8)を有し、上記第3材料(8)が水素吸収時における上記多数の圧縮成形体(5)の体積膨張を圧縮により補償する請求項1又は請求項2に記載の水素貯蔵装置(1)。
【請求項4】
少なくとも上記第2材料(7)が、上記水素貯蔵装置(1)の最大動作温度から20ケルビン以内で相違する融点を有する、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の水素貯蔵装置(1)。
【請求項5】
上記第2材料(7)が上記最大動作温度よりも高い融点を有する請求項4に記載の水素貯蔵装置(1)。
【請求項6】
上記多数の圧縮成形体(5)の1つ以上の上記圧縮成形体(5)が円柱形状(10)である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の水素貯蔵装置(1)。
【請求項7】
上記多数の圧縮成形体(5)の1つ以上の上記圧縮成形体(5)が第2ボリューム(11)を有する球体に近似した形状(10)であり、上記形状(10)の表面(13)上の各ポイント(12)が、球体形状(16)の直径(15)の5%以下の距離(14)に配置されている請求項1から請求項のいずれか1項に記載の水素貯蔵装置(1)。
【請求項8】
非水素化状態にある上記各圧縮成形体(5)が10mm(立方ミリメートル)以上1000mm(立方ミリメートル)以下の第2ボリューム(11)を有する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の水素貯蔵装置(1)。
【請求項9】
水素貯蔵装置(1)のためのバルク材料(4)としての圧縮成形体(5)の使用であって、
上記圧縮成形体(5)が、
少なくとも水素を貯蔵可能な第1材料(6)と、
圧縮製造前には粉末状である上記第1材料(6)に対するバインダーとして配される第2材料(7)と
を有し、
多数の上記圧縮成形体(5)を、サイズの変化を補償するための隙間(9)が形成されるように容器(2)内で相互に向きを固定することなく配する圧縮成形体(5)の使用。
【請求項10】
水素貯蔵装置(1)の製造方法であって、少なくとも以下のステップ、すなわち、
(a)第1ボリューム(3)及び1つ以上の開口(18)を有する容器(2)を準備するステップと、
(b)上記第1ボリューム(3)を上記1つ以上の開口(18)を介して1種以上のバルク材料(4)で充填し、上記バルク材料(4)が圧縮により製造された多数の圧縮成形体(5)を有し、上記各圧縮成形体(5)が少なくとも水素を貯蔵可能な第1材料(6)と第2材料(7)とを有し、上記第2材料(7)が、圧縮製造前には粉末状である上記第1材料(6)に対するバインダーとして配されるステップと
を含み、
上記ステップ(b)において、
上記多数の圧縮成形体(5)が、サイズの変化を補償するための隙間(9)が形成されるように上記容器(2)内で相互に向きを固定されることなく配される方法。
【請求項11】
上記ステップ(b)において、上記第1ボリューム(3)が上記開口(18)を介してさらに少なくとも圧縮可能な第3材料(8)によって充填され、上記第3材料(8)が上記多数の圧縮成形体(5)間の隙間(9)に少なくとも配置され、上記第3材料(8)が水素吸収時における上記多数の圧縮成形体(5)の体積増加を圧縮により補償する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記第1ボリューム(3)における上記多数の圧縮成形体(5)の充填密度が、上記多数の圧縮成形体(5)の少なくとも一部の圧縮成形体(5)による円柱形状(10)の変化により確定する請求項10又は請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素貯蔵装置及び水素貯蔵装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2015/169740A1号は水素貯蔵手段のための水素貯蔵要素を開示している。水素貯蔵要素は圧縮により製造され、水素貯蔵材料及び熱伝導材料を有する。このような水素貯蔵要素は、堆積しているか幾何学的に相互に固定されているため水素貯蔵装置として機能する。水素貯蔵要素の各層は相対的に位置決めされ、例えば熱伝導、水素の移送等を目的として機能的な関連づけが相互になされている。
【0003】
このような水素貯蔵装置には、国際的に多数の規格を適用することができ、これらの規格は例えば水素貯蔵材料を収容する容器の形状を定義している。このため、水素貯蔵要素は規定された容器の形状にしたがって製造される必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/169740A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この事情を踏まえ、本発明の目的は従来技術について概説された問題を少なくとも部分的に解決することにある。より詳細には、可能な限り容易にかつ低コストに規定を満たすことのできる水素貯蔵装置及び水素貯蔵装置の製造方法を提供する。
【0006】
上述の目的は、請求項1の特徴に係る水素貯蔵装置及び請求項10の特徴に係る製造方法の提供により達成される。好適な態様は従属項で言及される。請求項の中で個々に詳説された特徴は、技術的な常識に照らして相互に組み合わせ可能であり、本発明のさらなる態様を示す明細書及び図面の詳細から追加の事項を補うことも可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的には、第1ボリュームを有する1つ以上の容器を備え、上記容器にバルク材料が配置された水素貯蔵装置が寄与する。上記バルク材料は、圧縮により製造された少なくとも多数の成形体を有し、上記各成形体のそれぞれは少なくとも水素を貯蔵可能な第1材料と第2材料とを有し、上記第2材料が、圧縮製造前には粉末状である上記第1材料に対するバインダーとして配される。
【0008】
「バルク材料」とは、個々が分離した注入可能な形態を有する粒状物質又はその他の物質を意味する。上記バルク材料の特性は粒径及び粒度分布によって特定され、さらにはバルク密度、安息角、含水率及び温度によっても特定される。床(特には非固定床)は容器の中で自由に動く部材を意味し、他の方法によって位置が固定されない部材を意味するものであってもよい。上記バルク材料の構成要素の向きは相互に固定されず、あるいは例えば上記第1ボリュームを有する容器に対しても固定されない。
【0009】
成形体は圧縮によって製造される要素である。この目的のため、粉末状の第1材料がプレス金型に充填され、第2材料(特には第1材料と同様に粉末状である)とともに互いに可動な複数のラムによって圧縮され、50MPa(メガパスカル)以上、特には100MPa以上の圧力のもとで、特には等方圧をかけることにより成形体が製造される。
【0010】
熱圧縮においては、上記成形体の内部に摂氏50℃以上、特に摂氏70℃以上、好ましくは摂氏100℃以上の熱が生成されるとよい。特には、熱圧縮の過程では、上記第2材料の融点に実質的に一致する温度、又は上記第2材料の融点から20ケルビン以内で相違する温度が設定される。温度が上昇することにより、上記第2材料は少なくとも部分的に融解する可能性があり、これにより上記第1材料と上記第2材料との結合が良好になる。
【0011】
上記第2材料の比率は、特には1重量%から5重量%の範囲である。
【0012】
ここでは、水素貯蔵材料の配置を見込むコンテナの形状に水素貯蔵材料を適合させるのではなく、水素貯蔵材料をバルク材料の形態で提供することを提示する。上記バルク材料は実質的にいかなる形状の容器にも導入及び配置される。上記成形体の間には隙間が形成され、この隙間は水素の挿入及び放出の過程で、上記成形体のサイズの変化を補償するようにサイズが変化する。
【0013】
水素を貯蔵可能な上記第1材料及びバインダーとしての上記第2材料は既知であり、例えば国際公開第2015/169740A1号より既知である。ここで使用された第2材料は、特に1種類以上のポリマーである。
【0014】
1種類以上のポリマーを使用することで、光学的、機械的、熱的及び/又は科学的性質を付与することができる。例えば、成形体は、このポリマーにより、良好な熱安定性、周囲の媒質への耐性(耐酸化性、耐食性)、良好な伝導性、良好な水素吸収及び貯蔵能、又はポリマーがなければ実現し得ない例えば機械的強度のような他の性質を有しうる。例えば、水素の貯蔵はできないが大きく膨張可能なポリマー、例えばポリアミド又はポリビニルアセテートの使用も可能である。
【0015】
より詳細には、ポリマーはホモポリマー又はコポリマーであってよい。コポリマーは2種類以上の異なるモノマー単位から構成されるポリマーである。
【0016】
ポリマー(ホモポリマー)は、炭素及び水素に加えて、硫黄、酸素、窒素及びリンから選択される1種以上のヘテロ原子を含むモノマー単位を有することが好ましく、得られるポリマーが、例えばポリエチレンとは対照的に完全に無極性ではないことが好ましい。塩素、臭素、フッ素、ヨウ素及びアスタチンから選択される1種以上のハロゲン原子も存在してよい。ポリマーは、1種以上のモノマー単位が炭素及び水素に加えて、硫黄、酸素、窒素及びリンから選択される1種以上のヘテロ原子、及び/又は、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素及びアスタチンから選択される1種以上のハロゲン原子を含むコポリマーであることが好ましい。同時に、2種以上のモノマー単位が、対応するヘテロ原子及び/又はハロゲン原子を有していてもよい。
【0017】
ポリマーは上記第1材料に対して付着性を有することが好ましい。つまり、ポリマーそれ自体が上記第1材料に良好に付着することでマトリクスを形成し、このマトリクスは水素貯蔵時に生じる圧力下にあっても上記第1材料に安定して付着する。
【0018】
ポリマーの付着性によって、最長時間、すなわち複数サイクルの水素貯蔵及び水素放出にわたって成形体の安定性を高めることができる。サイクルとは、1回の水素化とそれに続く脱水素の作業を指す。成形体は、材料を経済的に使用できるように、500サイクル以上、特には1000サイクル以上にわたって安定していることが好ましい。本発明のこの文脈における「安定」とは、貯蔵可能な水素の量と水素の貯蔵割合(速度)が、500サイクル又は1000サイクル後であっても成形体の使用開始時の値に実質的に一致することを意味する。「安定」とは、特には、上記第1材料が当初配置された成形体内の少なくとも同じ位置に維持されることを意味する。
【0019】
また、「安定」とは、特には、微少な粒子が粗大な粒子(たとえば成形体)から分離及び除去される分離作用がサイクル中に発生しないことであると理解されるべきである。
【0020】
上記第1材料は特には低温水素貯蔵材料である。したがって、発熱過程である水素貯蔵の間、温度は最高150℃に達する。上記第2材料として使用されるポリマーは、これらの温度で安定でなくてはならない。このため、好適なポリマーは180℃以下、特には165℃以下、特には145℃以下では分解されない。
【0021】
より詳細には、ポリマーはEVA、PMMA、EEAMA及びこれらのポリマーの混合物から選択される。
【0022】
EVA(エチルビニルアセテート)とは、ビニルアセテートの割合が2質量%から50質量%の範囲であるエチレンとビニルアセテートのコポリマー群のことである。ビニルアセテートの割合が低いと剛性のフィルムが形成され、ビニルアセテートの割合が高いとポリマーの付着性が高くなる。典型的なEVAは室温で固体でありかつ最大750%の引張伸びを有する。さらに、EVAは応力亀裂に耐性がある。
【0023】
ポリメチルメタクリレート(PMMA)は、合成透明熱可塑性ポリマーである。ガラス転移温度は、モル質量に依存し、約45℃から130℃である。軟化温度は好ましくは80℃から120℃、特には90℃から110℃である。熱可塑性コポリマーは耐候性、耐光性及び耐UV性に優れる。
【0024】
EEAMAは、エチレン、アクリル酸エステル及び無水マレイン酸モノマー単位から形成されるターポリマー(コポリマー)である。EEAMAは、モル質量に応じて約102℃の融点を有する。
【0025】
上記成形体は、上記第1材料及び上記第2材料を、すなわち水素を貯蔵可能な上記第1材料及びバインダーを排他的に有することが好ましい。上記成形体の全重量に対する上記第2材料の重量比率は、好ましくは10重量%以下、特には5重量%以下、好ましくは2重量%以下である。上記成形体におけるバインダーの重量比率は最小限とすべきである。バインダーが同様に水素を貯蔵可能であっても、水素貯蔵容量は上記第1材料ほど顕著ではない(特には20%以下の水素貯蔵容量)。しかしながら、第一にバインダー上記は第1材料の酸化を低減又は完全に抑止することが可能であり、第二に上記成形体において上記第1材料の粉末状の粒子を結合させる。
【0026】
上記第1材料は、好ましくは1種以上の水素化可能な金属及び/又は1種以上の水素化可能な合金を有していてもよい。以下の材料を水素化可能な上記第1材料としてさらに使用することができる。すなわち、アルカリ土類金属、アルカリ金属アラネート、アルカリ土類金属及びアルカリ金属のほう水素化物、金属有機構造体(MOF)、及び/又は当然それぞれの材料の混合物が挙げられる。上記第1材料は、水素化不可能な金属又は水素化不可能な合金もまた有していてもよい。
【0027】
本発明によれば、上記第1材料は低温水素化物及び/又は高温水素化物を有していてもよい。ここで、「水素化物」は水素化形態か非水素化形態かを問わず、水素化可能な金属を意味する。低温水素化物は好ましくは-55℃から180℃の範囲で、特には-20℃から150℃の範囲で、特には0℃から140℃の範囲で水素を貯蔵する。高温水素化物は好ましくは280℃超の範囲で、特には300℃超の範囲で水素を貯蔵する。上述の温度において、水素化物は水素を貯蔵及び放出する。つまり、これらの温度の範囲において水素化物は機能する。
【0028】
この文脈での「水素化物」は、水素化形態及び非水素化形態の両形態における水素化可能材料と理解される。より詳細には、水素貯蔵装置の製造において、水素化形態又は非水素化形態にある水素化可能材料を用いることができる。
【0029】
水素の貯蔵(水素化)は室温の影響を受ける可能性がある。水素化は放熱性の反応であり、発生した反応熱は除去できる。これに対して、脱水素化については、熱の形態でエネルギーが水素化物に供給される必要がある。脱水素化は吸熱性の反応である。
【0030】
水素化された第1状態では、成形体は脱水素化された第2状態よりも大きい第2ボリュームを有する。
【0031】
上記第1材料は、成形体の製造前は特には粉末状である(つまり粒状である)。
【0032】
上記第1材料の粒子のX50粒子径は20μm(マイクロメートル)から700μm、特には50μmから300μmである。ここでX50は50%の粒子の平均粒径が記載した数値以下であることを意味する。本文脈での平均粒径は、重量を基準とした粒径である。ここでは、水素化可能な料を最初に水素化する前の粒径を示す。水素を貯蔵する間、材料には圧力がかかるため、サイクルの繰り返しを通じてX50粒子径が小さくなる可能性がある。
【0033】
粒径の小径化は、上記成形体内において特には第一に上記第2材料、つまりバインダーによって抑制されうる。第二に、上記第2材料は成形体内の粒子を固定する。
【0034】
より詳細には、上記バルク材料において上記多数の成形体は50%以上の体積比率、特には75%以上の体積比率、好ましくは90%以上の体積比率を有する。
【0035】
上記バルク材料は、上記多数の成形体間の隙間に配置され圧縮可能な1種以上の第3材料をさらに有していてもよい。上記第3材料は、水素吸収時における上記多数の成形体の体積増加を圧縮により補償してもよい。
【0036】
より詳細には、上記第3材料は、例えば黒鉛、特には膨張化黒鉛を有する。
【0037】
より詳細には、少なくとも上記第2材料は、水素貯蔵装置の最大動作温度から20ケルビン以内、特には10ケルビン以内で相違する融点を有する。したがって、動作温度が摂氏50℃以下であれば、融点が摂氏70℃以下の第2材料を選択することが好ましい。
【0038】
ここで、上記第2材料の融点は、上記最大動作温度未満であってもよい。
【0039】
本適用で上記第1材料が使用される場合、動作温度は、特には40℃から140℃、特には40℃から80℃の範囲であってよい。高温水素化物を使用する場合、より高い動作温度が見込まれる。
【0040】
このように上記第2材料を選択することで、水素化及び/又は脱水素化の各サイクルにおいて授記第2材料を軟化することができる。軟化によって、各サイクルの時点で上記第1材料と上記第2材料との間に新規の凝集結合を形成することができる。凝集結合は成形体内部だけでなく、特には上記成形体の間にも形成される。
【0041】
より詳細には、上述の通りとすることで、上記第1材料の粒子がさらに分離することによる影響を緩和又は補償することもできる。典型的には、サイズの小さい粒子は成形体から分離し、重力によって容器内部を下降することがありうる。このように上記成形体間の隙間が上記第1材料によって満たされる可能性があり、水素吸収時における上記多数の成形体の体積膨張を、たとえば上記第3材料が配置される場合のように圧縮により補償することが不可能になる可能性がある。(十分な)補償がない体積膨張は、容器の局所的な圧迫、及び少なくとも容器の損傷をもたらす可能性がある。
【0042】
より詳細には、上記第2材料は上記最大動作温度よりも高い融点を有する。
【0043】
上記多数の成形体の1つ以上の上記成形体は円柱形状であってもよい。円柱形状は、特には圧縮によって特に単純な方法で形成することができる。
【0044】
しかしながら、1つ以上の上記成形体が、特には上記多数の成形体の最大数が、好ましくはすべての上記成形体が球体形状を有することが好ましい。球体形状を有することで、上記バルク材料の充填密度を特に高めることが可能であり、特に効果を発揮しやすい水素貯蔵装置を提供できる。しかしながら、既知の理由により、圧縮により球体形状を形成することは困難である。
【0045】
最大密度による球充填(つまち、球体の最大充填密度)は、3次元空間に同一サイズの無限の球体を幾何学配置することであり、球体が相互に接触するのみで、相互に重なり合わず、かつ空きスペースが最小化されるような配置を意味する。このような配置は多数の球体を層状に堆積することにより得られる。一つの層において、各球体は隣接する6つの球体と接触する。最大密度による球充填の球充填密度は約74%である。
【0046】
本発明の場合、特には、上記成形体の充填密度は60%以上、特には65%以上、好ましくは67%以上を充足する。
【0047】
より詳細には、上記多数の成形体の1つ以上の上記成形体が、特には上記多数の成形体の最大数が、好ましくはすべての上記成形体が、第2ボリュームを有する形状を有する。ここでは、上記形状の表面上の各ポイントが、球体形状の直径の5%以下の、特には2%以下の、好ましくは1%以下の距離に配置され、上記球体形状の球体面から上記第2ボリュームを有する場合と同等となる。
【0048】
より詳細には、上記成形体はこのように可能な限り球体形状に近似させた形状を有する。
【0049】
より詳細には、非水素化状態にある上記バルク材料の上記各成形体は、10mm(立方ミリメートル)以上1000mm以下の第2ボリュームを有する。
【0050】
より詳細には、すべての成形体がそれぞれ同一の第2ボリュームを有するバルク材料を使用することも、又は個々の成形体が異なる第2ボリュームを有するバルク材料を使用することも可能である。
【0051】
本発明はさらに、成形体を水素貯蔵装置のためのバルク材料として使用することも提示する(特に上述の記載に則する)。上記成形体は少なくとも水素を貯蔵可能な第1材料及び第2材料を有し、上記第2材料が、圧縮製造前には粉末状である上記第1材料に対するバインダーとして配される。
【0052】
上記水素貯蔵装置に関する詳細は、上記成形体に対しても同様に適用され、逆に、上記成形体に関する詳細は、上記水素貯蔵装置に対しても同様に適用される。
【0053】
本発明はさらに、水素貯蔵装置の製造方法を提示する(特に上述の記載に則する)。この製造方法は少なくとも以下のステップ、すなわち、
(a)第1ボリューム及び1つ以上の開口を有する容器を準備するステップと、
(b)上記第1ボリュームを上記1つ以上の開口を介して1種以上のバルク材料で充填し、上記バルク材料が圧縮により製造された少なくとも多数の成形体を有し、上記各成形体が少なくとも水素を貯蔵可能な第1材料と第2材料とを有し、上記第2材料が、圧縮製造前には粉末状である上記第1材料に対するバインダーとして配されるステップと、を含む。
【0054】
より詳細には、ステップ(b)において、上記第1ボリュームが上記開口を介してさらに1種以上の圧縮可能な上記第3材料によって充填され、上記第3材料が上記多数の成形体間の隙間に少なくとも配置されてもよい。上記第3材料は、特には水素吸収時における上記多数の成形体の体積増加を圧縮により補償してもよい。網目状に形成された上記第3材料は、バルク材料の熱伝導性を大きくするように、及び/又は水素吸収及び放出の速度を加速させるように寄与しうる。
【0055】
より詳細には、上記第1ボリュームにおける上記多数の成形体の充填密度は、上記多数の成形体うち少なくとも一部の成形体の形状を変化させることで調整することができる。より詳細には、注入時に(つまり、容器の充填時に)異なる形状の成形体の供給を制御することで充填密度を調整することができる。
【0056】
上記製造方法に関する詳細は、上記水素貯蔵装置及び上記成形体に対しても同様に適用され、逆に、上記水素貯蔵装置及び上記成形体に関する詳細は、上記製造方法に対しても適される。
【0057】
なお、但し書きとして、ここで使用した序数詞(第1、第2等)は、主に(単に)複数の事物又は同種のパラメーターを区別す役割を果たすものであることを付言する。すなわち、より詳細には、これらの項目又はパラメーターの間に相互の依存関係及び/又は順序性が定義されているとは限らない。依存関係及び/又は順序性が必要である場合は、明示的に記載されるか、又は当業者が具体的な構成を参照することで明らかとなる。
【0058】
以下、本発明及び技術環境を、図面を参照しつつ詳説する。なお、示した実施例によって発明を限定することは意図していない。より詳細には、明示的な記載に反するものでない限り、図面で詳説された事項の部分的な側面を抽出し、他の構成要素及び本明細書及び/又は図面から示唆される事項と組み合わせることは可能である。より詳細には、図面、特に示した比率は単に模式的なものでしかないことを付言する。同一の序数詞は同一の事物を示す。このため、必要に応じて他の図面からの詳説を参照することも可能である。図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】多数の成形体を有する床
図2図1に示す床の詳細
図3】水素貯蔵装置を示す側面図
図4】水素貯蔵装置を示す斜視図
図5】第1実施形態に係る成形体の形状の一部を示す側面断面図
図6】第2実施形態に係る成形体の形状の一部を示す側面断面図
図7】第3実施形態に係る成形体の形状の一部を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1は多数の成形体5を有する床を示す。図2図1に示す床の詳細を示す。以下では、図1及び図2を組み合わせて説明する。
【0061】
上記床は多数の成形体5からなるバルク材料4を示す。各成形体5が少なくとも水素を貯蔵可能な第1材料6と第2材料7とを有し、第2材料7が、圧縮製造前には粉末状である第1材料6に対するバインダーとして配される。
【0062】
成形体5が相互に凝集結合していることは明らかである。これは第2材料7が、水素貯蔵装置1の最大動作温度から20ケルビン以内で相違する融点を有することで実現される。このように第2材料7を選択することで、水素化及び/又は脱水素化の各サイクルにおいて第2材料を軟化することができる。軟化によって、各サイクルの時点で第1材料6と第2材料7との間に新規の凝集結合を形成することができる。凝集結合は成形体5の内部及び成形体5の間に形成される。
【0063】
ここで、成形体5はすべて円柱形状10を有し、各成形体5が同一の第2ボリューム11を有する。
【0064】
隙間9は成形体5の間に形成され、水素貯蔵装置1内で隙間9は圧縮可能な第3材料8により充填される(図3及び図4参照)。
【0065】
図3は水素貯蔵装置1を示す側面図である。 図4は水素貯蔵装置を示す斜視図である。以下では、図3及び図4を組み合わせて説明する。
【0066】
各水素貯蔵装置1は第1ボリューム3を有する容器2を備え、バルク材料4が容器2の中に配置される。バルク材料4は圧縮により製造された少なくとも多数の成形体5を有し、各成形体5が少なくとも水素を貯蔵可能な第1材料6と第2材料7とを有し、第2材料7が、圧縮製造前には粉末状である第1材料6に対するバインダーとして配される。
【0067】
水素を貯蔵可能な第1材料6は、水素を貯蔵可能な第1材料6を配置するために配された容器2の形状に適合するのではなく、バルク材料4として提供される。このバルク材料は開口18を介して実質的に任意の形状を有する容器2に充填及び配置される。成形体の間には隙間9が形成され、隙間9は水素の挿入及び放出の過程で、成形体のサイズの変化を補償するようにサイズが変化する。
【0068】
バルク材料4はさらに、多数の成形体5間の隙間9に配置された1種以上の圧縮可能な第3材料8を有する。第3材料8は、水素吸収時における多数の成形体5の体積増加を圧縮により補償してもよい(図3を参照)。
【0069】
ここで、成形体5はすべて円柱形状10を有し、各成形体5が同一の第2ボリューム11を有する。水素化した第1状態19では、成形体5は脱水素化した第2状態20よりも大きな第2ボリューム11を有する。容器2における第2ボリュームの膨張は成形体5の判例に図示される。
【0070】
図5は、第1実施形態に係る成形体5の形状10の一部を側面断面図として示す。図6は、第2実施形態に係る成形体5の形状10の一部を側面断面図として示す。図7は、第3実施形態に係る成形体5の形状10の一部を側面断面図として示す。以下では、図5及び図7を組み合わせて説明する。
【0071】
成形体5は球体形状16であることが好ましい。球体形状16であることによりバルク材料4の充填密度を特に高めることが可能になり、特に効果を発揮しやすい水素貯蔵装置1を提供できる。しかしながら、球体形状16は、既知の理由により圧縮による製造が困難である。
【0072】
したがって、形状10及び第2ボリューム11を有する成形体5が製造され、形状10の表面13上の各ポイント12が、球体形状16の直径15の5%以下の距離14に配置され、球体形状16の球体面17から第2ボリュームを有する場合と同等となる。より詳細には、このように、成形体5は球体形状16に可能な限り近似させた形状10を有し(図5及び図6を参照)、同一の第2ボリュームを有する球体状16であることを示している。
【0073】
図7は円柱形状10を有する成形体5の側面図を示す。成形体5は直径15であり、第2ボリューム11を有する。
【符号の説明】
【0074】
1 水素貯蔵装置
2 容器
3 第1ボリューム
4 バルク材料
5 成形体
6 第1材料
7 第2材料
8 第3材料
9 隙間
10 形状
11 第2ボリューム
12 ポイント
13 表面
14 距離
15 直径
16 球体形状
17 球体面
18 開口
19 第1状態
20 第2状態

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7