(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】検体剥離方法および検体剥離装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/06 20060101AFI20241225BHJP
G01N 1/04 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
G01N1/06 Z
G01N1/04 H
(21)【出願番号】P 2021023716
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】大上 創一
(72)【発明者】
【氏名】前田 豊
(72)【発明者】
【氏名】丁 俊義
(72)【発明者】
【氏名】越原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘典
(72)【発明者】
【氏名】高地 泰浩
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0252935(US,A1)
【文献】国際公開第2020/254250(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/246569(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/149009(WO,A1)
【文献】特開昭60-107542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/06
G01N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドに保持された生体組織切片を削り取って回収するための検体剥離方法であって、
前記スライドに保持された前記生体組織切片を加温し、
加温した前記生体組織切片を刃部によって削り取り、
前記刃部に残った前記生体組織切片を容器内に回収する、検体剥離方法。
【請求項2】
前記刃部に残った前記生体組織切片を回収する工程において、前記刃部に残った前記生体組織切片を冷却する工程を含む、
請求項1に記載の検体剥離方法。
【請求項3】
冷却面に前記刃部を熱的に結合させて、前記刃部に残った前記生体組織切片を冷却する、
請求項2に記載の検体剥離方法。
【請求項4】
前記刃部に残った前記生体組織切片の冷却温度は、5℃~20℃である、
請求項2または3に記載の検体剥離方法。
【請求項5】
前記生体組織切片を削り取る工程において、前記刃部を前記生体組織切片に弾性的に押し当てる、
請求項1ないし4の何れか一項に記載の検体剥離方法。
【請求項6】
前記生体組織切片を削り取る工程を、削り取り方向に交差する方向に前記刃部をずらして複数回実行する、
請求項1ないし5の何れか一項に記載の検体剥離方法。
【請求項7】
前記生体組織切片を削り取る工程における前記刃部の刃面と前記
スライドの表面であるスライド面との間の角度は、38°~51°である、
請求項1ないし6の何れか一項に記載の検体剥離方法。
【請求項8】
前記生体組織切片を加温する工程は、前記スライドが設置される設置部材を加温する工程を含む、
請求項1ないし7の何れか一項に記載の検体剥離方法。
【請求項9】
前記生体組織切片の加温温度は、40℃~50℃である、
請求項1ないし8の何れか一項に記載の検体剥離方法。
【請求項10】
前記刃部に残った前記生体組織切片を回収する工程において、前記刃部から落下した前記生体組織切片が誘導部により前記容器に誘導される、
請求項1ないし9の何れか一項に記載の検体剥離方法。
【請求項11】
前記誘導部は、漏斗形状を有しており、
前記誘導部の上部開口の幅は、前記スライドに保持された前記生体組織切片の幅より大きく、前記誘導部の下部開口は、前記容器の開口より小さい、
請求項10に記載の検体剥離方法。
【請求項12】
前記刃部に残った前記生体組織切片を回収する工程は、前記誘導部を振動させる工程を含む、
請求項10または11に記載の検体剥離方法。
【請求項13】
前記刃部に残った前記生体組織切片を回収する工程は、前記誘導部にイオンを吹き掛ける工程を含む、
請求項10ないし12の何れか一項に記載の検体剥離方法。
【請求項14】
前記生体組織切片が変わるごとに、前記刃部を交換する、
請求項1ないし13の何れか一項に記載の検体剥離方法。
【請求項15】
前記生体組織切片が、FFPE切片である、
請求項1ないし14の何れか一項に記載の検体剥離方法。
【請求項16】
スライドに保持された生体組織切片を削り取って回収する検体剥離装置であって、
前記生体組織切片を保持した前記スライドが設置されるスライド設置部と、
前記スライド設置部に設置されたスライド上の前記生体組織切片を加温する加温部と、
加温された前記生体組織切片を刃部によって削り取る移動機構と、を備える、
検体剥離装置。
【請求項17】
前記刃部に残った前記生体組織切片を冷却する冷却部を備える、
請求項16に記載の検体剥離装置。
【請求項18】
前記冷却部は、冷却面に前記刃部を熱的に結合させて、前記刃部に残った前記生体組織切片を冷却する、
請求項17に記載の検体剥離装置。
【請求項19】
前記刃部を前記生体組織切片に弾性的に押し当てる付勢部を備える、
請求項16ないし18の何れか一項に記載の検体剥離装置。
【請求項20】
前記移動機構を駆動させる駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、を備える、
請求項16ないし19の何れか一項に記載の検体剥離装置。
【請求項21】
前記制御部は、前記生体組織切片を削り取る工程を、削り取り方向に交差する方向に前記刃部をずらして複数回実行するよう、前記駆動部を制御する、
請求項20に記載の検体剥離装置。
【請求項22】
前記加温部は、前記スライド設置部を加温することにより、前記スライド設置部に設置された前記スライド上の前記生体組織切片を加温する、
請求項16ないし21の何れか一項に記載の検体剥離装置。
【請求項23】
前記刃部から落下した前記生体組織切片を、前記スライド設置部の下方に配置された回収用の容器に誘導する誘導部を備える、
請求項16ないし22の何れか一項に記載の検体剥離装置。
【請求項24】
前記誘導部は、漏斗形状を有しており、
前記誘導部の上部開口の幅は、前記スライドに保持された前記生体組織切片の幅より大きく、前記誘導部の下部開口は、前記容器の開口より小さい、
請求項23に記載の検体剥離装置。
【請求項25】
前記誘導部を振動させる振動部を備える、
請求項23または24に記載の検体剥離装置。
【請求項26】
前記誘導部にイオンを吹き掛けるイオナイザーを備える、
請求項23ないし25の何れか一項に記載の検体剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド上の生体組織切片の一部または全部を削り取って回収するための検体剥離方法および検体剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子パネル検査においては、ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片(FFPE切片)が保持されたスライドから剃刀を使って手作業でFFPE切片を削り取り、削り取ったFFPE切片を容器内に回収する作業が必要となる。以下の特許文献1には、FFPE切片が保持されたスライドから関心領域の組織を切断ブレードの回転動作によって削り出し、組織を破砕した後チップへ吸い上げて容器に回収する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
剃刀を使って手作業でスライドに保持された生体切片を削り取って回収する場合、FFPE切片を無駄なく効率的に削り取って回収することが困難であり、さらに削り取ったFFPE切片が飛散し、他のFFPE切片を回収するための容器に入ることによりコンタミネーションを引き起こす可能性がある。また、上記特許文献1のような装置を用いたとしても、スライドに保持されたFFPE切片を回収するために煩雑な工程が必要となるため、回収するためのコストや時間が増大するといった問題が生じる。
【0005】
かかる課題に鑑み、本発明は、コンタミネーションを抑制しながら生体組織切片を無駄なく効率的に削り取って回収できる検体剥離方法および検体剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る検体剥離方法において、スライド(120)に保持された生体組織切片(121)を加温し(S13、S101)、加温した生体組織切片(121)を刃部(110)によって削り取り(S14、S102)、刃部(110)に残った生体組織切片(121)を容器(140)内に回収する(S15、S16、S31、S32、S106~S109)。
【0007】
本発明に係る検体剥離方法によれば、生体組織切片を削り取る際に生体組織切片が加温されて柔らかくなっているため、生体組織切片を安定的かつ滑らかに削り取ることができる。よって、生体組織切片を無駄なく効率的に削り取って回収できる。また、柔らかくなった生体組織切片が刃部で削り取られるため、削り取った生体組織切片が刃部に付着して残りやすい。よって、刃部に残った生体組織切片の飛散を抑制でき、飛散によるコンタミネーションを抑制できる。
【0008】
本発明に係る検体剥離装置(1)は、生体組織切片(121)を保持したスライド(120)が設置されるスライド設置部(51)と、スライド設置部(51)に設置されたスライド(120)上の生体組織切片(121)を加温する加温部(61)と、加温された生体組織切片(121)を刃部(110)によって削り取る移動機構(230)と、を備える。
【0009】
本発明に係る検体剥離装置によれば、本発明に係る検体剥離方法と同様の効果が奏される。さらに、ユーザの負担を軽減して生体組織切片を回収できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンタミネーションを抑制しながら生体組織切片を無駄なく効率的に削り取って回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る、検体剥離装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る、スライド設置部および誘導部設置部の近傍の構成を模式的に示す側面図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、それぞれ、実施形態1に係る、スライド設置部および誘導部設置部の近傍の構成を模式的に示す側面図である。
【
図4】
図4(a)は、実施形態1に係る、刃部の先端の構成を模式的に示す拡大図である。
図4(b)は、実施形態1に係る、スライド設置部および誘導部設置部の近傍の構成を模式的に示す正面図である。
【
図5】
図5(a)、(b)は、それぞれ、実施形態1に係る、スライド設置部および誘導部設置部の近傍の構成を模式的に示す側面図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る、検体剥離装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る、検体剥離装置を用いた検体剥離方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8(a)、(b)は、それぞれ、変更例1に係る、スライド設置部および誘導部設置部の近傍の構成を模式的に示す正面図である。
【
図9】
図9は、変更例1に係る、検体剥離装置を用いた検体剥離方法を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、変更例2に係る、スライド設置部および誘導部設置部の近傍の構成を模式的に示す正面図である。
【
図11】
図11は、変更例2に係る、検体剥離装置の構成を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、変更例2に係る、検体剥離装置を用いた検体剥離方法を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、変更例3に係る、検体剥離装置の構成を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、変更例3に係る、検体剥離装置の構成を示すブロック図である。
【
図15】
図15は、変更例3に係る、検体剥離装置を用いた検体剥離方法を示すフローチャートである。
【
図16】
図16(a)は、実施形態2に係る、検体剥離装置の構成を模式的に示す正面図である。
図16(b)は、実施形態2に係る、検体剥離装置の構成を模式的に示す平面図である。
【
図17】
図17は、実施形態2に係る、検体剥離装置の構成を示すブロック図である。
【
図18】
図18は、実施形態2に係る、検体剥離装置の処理を示すフローチャートである。
【
図19】
図19(a)は、実施形態3に係る構成を模式的に示す斜視図である。
図19(b)は、実施形態3の変更例に係る構成を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施形態は、スライドに保持された生体組織切片の一部を削り取って回収するための検体剥離方法および検体剥離装置を示している。以下の実施形態において、生体組織切片は、ホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPE組織(Formalin-fixed paraffin-embedded tissue))の切片(以下、「FFPE切片」という)である。
【0013】
以下の説明および図面において、同じ符号は同じまたは類似の構成要素を示すこととし、同じまたは類似の構成要素に関する説明を省略する。また、便宜上、各図には、適宜、互いに直交するX、Y、Z軸が付記されており、X、Y、Z軸の各方向に、それぞれ、前後方向、左右方向、および上下方向が対応づけられている。
【0014】
<実施形態1>
実施形態1では、ユーザが検体剥離装置1の移動機構を手作業で操作してFFPE切片を剥離し回収する。
【0015】
図1は、検体剥離装置1の構成を示す斜視図である。
図2は、スライド設置部51および誘導部設置部52の近傍の構成を模式的に示す側面図である。
【0016】
図1に示すように、検体剥離装置1は、筐体10と、一対のガイドレール21と、プーリ22と、ベルト23と、上下移動部30と、左右移動部40と、スライド設置部51と、誘導部設置部52と、留め具53と、加温部61と、冷却部62と、を備える。ガイドレール21、プーリ22、ベルト23、上下移動部30、および左右移動部40は、刃部110をスライド120に対し相対移動させる移動機構を構成する。
【0017】
筐体10(11~13)は、ベース部材11と、壁部材12と、容器載置部材13と、を備える。壁部材12は、ベース部材11に支持されている。壁部材12は、平板12aを備えている。容器載置部材13は、X-Y面(水平面)に平板13aを備えている。壁部材12と容器載置部材13は、平板12aが平板13aに対して垂直になるように配置されている。容器載置部材13の平板13aの上面には、後述する容器140を保持する容器ラック150が載置される。
【0018】
互いに平行な一対のガイドレール21は、壁部材12の前面側の右端および左端において上下方向に延びるようにそれぞれ設置されている。プーリ22は、壁部材12の上端に設置されており、ベルト23が巻き付けられている。ベルト23は、金属により構成されている。
【0019】
上下移動部30(31~37)は、一対の上下移動部材31と、上下移動レバー32と、板部材33と、前後移動部材34と、一対のバネ35と、ガイドレール36と、切替レバー37と、を備える。一対の上下移動部材31は、ガイドレール21に沿って上下方向に移動可能となるように左右のガイドレール21にそれぞれ設置されている。右側の上下移動部材31には、ベルト23の一端が設置されている。上下移動レバー32は、前方に延びた棒状の部材であり、右側の上下移動部材31に設置されている。
【0020】
板部材33は、一対の上下移動部材31に跨がるように、一対の上下移動部材31に設置されている。前後移動部材34の左右端には、前後方向に延びるピン34aがそれぞれ設置されている。ピン34aが板部材33の左右端にそれぞれ設けられた孔に通されることにより、前後移動部材34が板部材33に対して前後方向に移動可能に支持される。右側のバネ35は、前後移動部材34の右端と右側の上下移動部材31とを接続し、左側のバネ35は、前後移動部材34の左端と左側の上下移動部材31とを接続している。ガイドレール36は、前後移動部材34の前面において左右方向に延びるように設置されている。切替レバー37は、板部材33に設置されており、板部材33と前後移動部材34との距離を規定する。
【0021】
左右移動部40(41~43)は、左右移動部材41と、左右移動レバー42と、刃部設置部43と、を備える。左右移動部材41は、ガイドレール36に沿って左右方向に移動可能となるようにガイドレール36に設置されている。左右移動レバー42は前方に延びた棒状の部材であり、左右移動部材41に設置されている。刃部設置部43は、左右移動部材41の下部に設置されており、刃部110を保持可能に構成されている。刃部110は、スライド120に保持されたFFPE切片121を削り取るために用いられ、スライド120が変わるごとに交換される。刃部110として、たとえば、アートナイフプロ替刃平刀 XB157H(オルファ株式会社製)、剃刀替え刃 炭素鋼(フェザー安全剃刀株式会社製)などを用いることができる。
【0022】
ユーザが上下移動レバー32を上下方向に移動させることにより、上下移動部30、左右移動部40および刃部110が、ガイドレール21に沿って上下に移動する。右側の上下移動部材31は金属製のベルト23を介してプーリ22に接続されており、金属製のベルト23は、上下移動部30、左右移動部40および刃部110の重量によって下向きに働く力によって変形しない剛性を有する。このため、ユーザが上下移動レバー32から手を放したとしても、その位置において上下移動部30、左右移動部40および刃部110が停止する。ユーザが左右移動レバー42を左右方向に移動させることにより、左右移動部40および刃部110が、ガイドレール36に沿って左右に移動する。
【0023】
また、ユーザが切替レバー37を操作することにより、バネ35の付勢に抗して前後移動部材34が板部材33に対して所定の間隔だけ離間した状態と、バネ35の付勢に従って前後移動部材34が板部材33に接触する状態とが切り替えられる。これにより、刃部110が、スライド120に対して前方に離間した状態と、スライド120に対して後方に押し付けられる状態とが切り替えられる。
【0024】
スライド設置部51および誘導部設置部52は、高い熱伝導率を有する材料により構成された板状の部材である。スライド設置部51および誘導部設置部52は、たとえば、アルミニウムなどの金属材料により構成される。スライド設置部51および誘導部設置部52の前方側の面は平坦な面であり、壁部材12の平板12aと平行になるように壁部材12に対して設置されている。これにより、スライド設置部51および誘導部設置部52の前方側の面は、水平面に垂直になる。
【0025】
スライド120は、FFPE標本スライドである。スライド120は、ガラス等の透明な材料により構成された板状部材である。スライド120には、FFPE切片121があらかじめ保持されている。FFPE切片121は、一般社団法人 日本病理学会によって策定された「ゲノム診療用病理組織検体取扱い規程」に則って作成されたものなどが好ましい。誘導部130は、漏斗形状を有しており、樹脂により構成されている。誘導部130は、スライド120が変わるごとに交換される。
【0026】
留め具53は、左右方向に延びた板状部材であり、留め具53の左右端にはネジ孔が設けられている。留め具53とスライド設置部51との間にスライド120および誘導部130が挟まれた状態で、留め具53のネジ孔を介してネジがスライド設置部51に留められる。これにより、スライド120がスライド設置部51に設置され、誘導部130が誘導部設置部52に対して設置される。
【0027】
図2に示すように、加温部61は、スライド設置部51を後方側から加温し、冷却部62は、誘導部設置部52を後方側から冷却する。加温部61および冷却部62は、同様の構成を備える。加温部61は、ペルチェ素子と、ペルチェ素子に接続されたヒートシンクと、熱伝導部材61aと、を備える。冷却部62は、ペルチェ素子と、ペルチェ素子に接続されたヒートシンクと、熱伝導部材62aと、を備える。加温部61および冷却部62のそれぞれのペルチェ素子に流す電流の極性を逆にすることにより、一方が加温部61となり、他方が冷却部62となる。
【0028】
容器140は、胴部141の上端に開口141aを有する容器であり、FFPE切片121の削り取り部分を回収するための容器である。以下では、刃部110に残ったFFPE切片121のことを削り取り部分という。容器140は、樹脂製のエッペンドルフチューブなど、検体剥離装置1の処理の次に行われる核酸抽出工程で使用可能な容器であることが好ましい。容器ラック150は、容器140を立てた状態で保持可能な箱状のラックである。容器ラック150は、容器140が誘導部130の下方に位置付けられるよう、筐体10の容器載置部材13の平板13aの上面に載置される。
【0029】
誘導部130は、胴部131と接続面132を備える。胴部131は、上下方向に貫通した筒形状を有する。左右方向(Y軸方向)において、胴部131の上端に位置する上部開口131aの左右方向の長さ(幅)は、スライド120に保持されたFFPE切片121の左右方向の長さ(幅)よりも大きい。胴部131の下端に位置する下部開口131bは、胴部131の上部開口131aよりも小さい。誘導部130の下部開口131bは、容器140の上端の開口141aよりも小さい。接続面132は、胴部131の後方側から上方向に延びており、Y-Z平面に平行な面形状を有する。
【0030】
接続面132がスライド120の後方に位置するよう、接続面132およびスライド120が留め具53によりスライド設置部51の上端に設置される。このとき、スライド120は、誘導部130の上部開口131aの上方に位置付けられる。スライド120は、接続面132を介してスライド設置部51に密着し、誘導部130の胴部131の後方部分は、誘導部設置部52に密着する。
【0031】
加温部61の熱伝導部材61aは、スライド設置部51の後方側の面に密着しており、加温部61は、熱伝導部材61aを介して、スライド設置部51を加温する。これにより、誘導部130の接続面132を介してスライド設置部51に設置されたスライド120が加温され、スライド120に保持されたFFPE切片121が加温される。冷却部62の熱伝導部材62aは、誘導部設置部52の後方側の面に密着しており、冷却部62は、熱伝導部材62aを介して、誘導部設置部52を冷却する。これにより、誘導部設置部52に設置された胴部131の後方内側面131c(胴部131の内側面の後方部分)が冷却される。
【0032】
次に、
図3(a)~
図5(b)を参照して、FFPE切片121の加温、削り取り、冷却および回収について説明する。
【0033】
図3(a)、(b)および
図5(a)、(b)は、スライド設置部51および誘導部設置部52の近傍の構成を模式的に示す側面図である。
図4(a)は、刃部110の先端の構成を模式的に示す拡大図である。
図4(b)は、スライド設置部51および誘導部設置部52の近傍の構成を模式的に示す正面図である。
【0034】
図3(a)に示すように、スライド120からFFPE切片121を削り取り、回収する際には、まずユーザは、上下移動レバー32(
図1参照)を最も上方の位置まで移動させ、切替レバー37(
図1参照)を操作して刃部110がスライド設置部51から前方に離間した状態にする。そして、ユーザは、留め具53を用いて、削り取り対象とするスライド120と、新しい誘導部130とをスライド設置部51に設置する。ユーザは、新しい刃部110を刃部設置部43に設置し、誘導部130の下部開口131bに、新しい容器140の開口141aを位置付ける。
【0035】
続いて、ユーザは、加温部61を起動してスライド設置部51を加温することにより、スライド120に保持されたFFPE切片121を加温する。発明者らの検討によれば、FFPE切片121の加温温度が40℃~50℃に設定されることにより、スライド120上のFFPE切片121が完全な液状になることなく、スライド120上のFFPE切片121を刃部110により円滑に削り取ることが可能な程度に柔らかくすることができる。
【0036】
続いて、
図3(b)に示すように、ユーザは、刃部110の先端がスライド120の前方に位置付けられるよう上下移動レバー32および左右移動レバー42を移動させ、切替レバー37を操作して刃部110が後方に付勢されるようにして、破線で示すように、刃部110の先端をスライド120の表面に位置付ける。この状態から、ユーザは、上下移動レバー32を下に移動させ、刃部110の先端をスライド120の表面に沿って下に移動させる。これにより、スライド120に保持されたFFPE切片121が削り取られ、FFPE切片121の削り取り部分が、刃部110の刃面111(
図4(a)参照)に保持される。
【0037】
図4(a)に示すように、刃面111は、刃部110の前方側の面、すなわちすくい面である。裏面112は、刃部110の後方側の面、すなわち逃げ面である。刃面111とスライド120のスライド面120aとの間の角度θ3は、裏面112とスライド面120aとの間の角度θ1と、刃部110の先端の角度θ2(刃物角)とを加算した角度である。発明者らの検討によれば、角度θ3が38°~51°に設定されることにより、刃部110によって削り取られたFFPE切片121の削り取り部分が刃部110(刃面111)に残りやすくなる。これにより、削り取り部分を効率的に回収できる。
【0038】
図4(b)に示すように、実施形態1では、左右方向において、刃部110の幅w1は、スライド120の幅w2よりも大きい。したがって、左右方向において刃部110の中心位置がスライド120の中心位置に合わせられた状態で、刃部110がスライド120上のFFPE切片121を削ることにより、1回の削り取り工程でスライド120上のFFPE切片121を削り取ることができる。また、左右方向において、上部開口131aの幅w3は、スライド120に保持されたFFPE切片121の左右方向の幅よりも大きく、さらに、スライド120の幅w2よりも大きい。これにより、刃部110によって削り取られたFFPE切片121が、全て誘導部130へと導かれる。
【0039】
図5(a)に示すように、FFPE切片121の削り取りが終わると、ユーザは、刃部110の先端が誘導部130の後方内側面131cに位置付けられるよう、上下移動レバー32を移動させる。そして、ユーザは、冷却部62を起動して誘導部設置部52を冷却することにより、刃部110に保持されたFFPE切片121の削り取り部分を冷却する。発明者らの検討によれば、削り取り部分の冷却温度が5℃~20℃に設定されることにより、刃部110上のFFPE切片121の削り取り部分を固化でき、かつ、削り取り部分に結露が生じることを抑制できる。
【0040】
図5(b)に示すように、
図5(a)の状態から時間が経過すると、固化したFFPE切片121が重力に従って刃部110から落下する。落下したFFPE切片121の削り取り部分は、誘導部130に導かれて容器140の開口141aを通り、容器140内に回収される。こうして、FFPE切片121の回収が完了する。
【0041】
図6は、検体剥離装置1の構成を示すブロック図である。
【0042】
検体剥離装置1は、加温部61と、冷却部62と、駆動部201、202と、操作パネル210と、を備える。
【0043】
操作パネル210は、操作ボタン211、212を含む。ユーザが操作ボタン211を操作すると、操作に応じて駆動部201が加温部61を駆動させる。駆動部201は、加温部61からのフィードバックに応じて、加温部61による加温温度が所定の温度となるように加温部61を制御する。ユーザが操作ボタン212を操作すると、操作に応じて駆動部202が冷却部62を駆動させる。駆動部202は、冷却部62からのフィードバックに応じて、冷却部62による冷却温度が所定の温度となるように冷却部62を制御する。
【0044】
図7は、検体剥離装置1を用いた検体剥離方法を示すフローチャートである。
【0045】
ステップS11において、ユーザは、
図3(a)に示したように、刃部110と容器140を新しいものに交換する。ステップS12において、ユーザは、
図3(a)に示したように、削り取り対象となるスライド120と、新しい誘導部130とを、留め具53を用いてスライド設置部51に設置する。
【0046】
ステップS13の加温工程において、ユーザは、操作ボタン211(
図6参照)を操作して加温部61を駆動させ、スライド120に保持されたFFPE切片121を加温する。ステップS14の削り取り工程において、ユーザは、
図3(b)に示したように、刃部110を用いてスライド120に保持されたFFPE切片121を削り取り、刃面111(
図4(a)参照)上に保持させる。
【0047】
続いて、ユーザは、回収工程を実行する。回収工程は、ステップS15の冷却工程と、ステップS16の判定とにより構成される。
【0048】
ステップS15の冷却工程において、ユーザは、
図5(a)に示したように、刃部110の先端を後方内側面131cに位置付ける。また、ステップS15において、ユーザは、操作ボタン212(
図6参照)を操作して冷却部62を駆動させ、刃部110上のFFPE切片121の削り取り部分を冷却する。ステップS16において、ユーザは、
図5(b)に示したように、刃部110上のFFPE切片121の削り取り部分が容器140に回収されたか否かを目視により判定する。
【0049】
FFPE切片121の削り取り部分が回収できていない場合(ステップS16:NO)、ユーザは、処理をステップS15に戻して、刃部110上のFFPE切片121の削り取り部分の冷却を継続する。他方、FFPE切片121の削り取り部分が回収された場合(ステップS16:YES)、
図7の処理が完了する。
【0050】
<実施形態1の効果>
実施形態1によれば、以下の効果が奏される。
【0051】
ステップS13の加温工程において、スライド120に保持されたFFPE切片121が加温される。ステップS14の削り取り工程において、刃部110がスライド120に対して相対移動され、加温したFFPE切片121が削り取られる。
図7の回収工程において、刃部110に残ったFFPE切片121の削り取り部分が容器140に回収される。
【0052】
この構成によれば、FFPE切片121を削り取る際にFFPE切片121が加温されて柔らかくなっているため、FFPE切片121を安定的かつ滑らかに削り取ることができる。よって、FFPE切片121を無駄なく効率的に削り取って回収できる。また、柔らかくなったFFPE切片121が刃部110で削り取られるため、削り取ったFFPE切片121が刃部110に付着して残りやすい。よって、刃部110に残った生体組織切片の飛散を抑制でき、飛散によるコンタミネーションを抑制できる。
【0053】
ステップS15の冷却工程において、刃部110に残ったFFPE切片121の削り取り部分が、冷却部62により冷却される。これにより、FFPE切片121の削り取り部分が固化して刃部110から剥がれやすくなるため、削り取り部分を円滑に容器140内に回収できる。
【0054】
ステップS15の冷却工程において、誘導部130の後方内側面131c(冷却面)に刃部110が熱的に結合され、FFPE切片121の削り取り部分が冷却部62により冷却される。これにより、FFPE切片121の削り取り部分を円滑に冷却できる。
【0055】
FFPE切片121の削り取り部分の冷却温度は、5℃~20℃である。これにより、削り取り部分を固化でき、かつ、削り取り部分に結露が生じることを回避できる。
【0056】
ステップS14の削り取り工程において、
図1に示したバネ35(付勢部)により、刃部110がFFPE切片121に弾性的に押し当てられる。これにより、
図3(b)に示したように、刃部110とFFPE切片121とが相対移動する際に、刃部110がFFPE切片121に押し付けられ続ける。よって、スライド120上の薄いFFPE切片121を円滑に削り取ることができる。
【0057】
ステップS14の削り取り工程において、
図4(a)に示したように、刃部110の刃面111とスライド面120aとの間の角度θ3は、38°~51°である。これにより、FFPE切片121の削り取り部分が刃部110(刃面111)に残りやすくなり、削り取り部分を効率的に回収できる。
【0058】
ステップS13の加温工程は、スライド120が設置されるスライド設置部51(設置部材)を加温する工程を含む。加温工程において、誘導部130の接続面132(加温面)にスライド120が熱的に結合され、スライド120が接続面132を介して加温部61により加温される。これにより、スライド120に保持されたFFPE切片121を円滑に加温できる。
【0059】
FFPE切片121の加温温度は、40℃~50℃である。このように加温温度が設定されると、スライド120上のFFPE切片121が完全に液状になることなく、スライド120上のFFPE切片121を刃部110により円滑に削り取ることが可能な程度に柔らかくすることができる。
【0060】
図7の回収工程において、刃部110から落下したFFPE切片121の削り取り部分が誘導部130により容器140に誘導される。これにより、FFPE切片121の削り取り部分を円滑に容器140へと導くことができる。
【0061】
誘導部130は、漏斗形状を有している。
図4(b)に示したように、誘導部130の上部開口131aの幅は、スライド120に保持されたFFPE切片121の幅より大きい。これにより、スライド120から削り取られたFFPE切片121を漏れなく誘導部130内へと導くことができる。また、誘導部130の下部開口131bは、容器140の開口141aより小さい。これにより、誘導部130内へと導かれたFFPE切片121を全て容器140内へと導くことができる。
【0062】
ステップS11において、スライド120(FFPE切片121)が変わるごとに、刃部110が交換される。これにより、刃部110を介したFFPE切片121のコンタミネーションを防止できる。また、ステップS12において、スライド120(FFPE切片121)が変わるごとに、誘導部130が交換される。これにより、上記のように冷却時に刃部110が後方内側面131cに接触しても、誘導部130を介したFFPE切片121のコンタミネーションを防止できる。
【0063】
<変更例1>
上記実施形態1では、
図4(b)に示したように、刃部110の幅w1がスライド120の幅w2よりも広く、スライド設置部51に1枚のスライド120が設置された。しかしながら、
図8(a)に示すように、刃部110の幅w11は、スライド120の幅w12より狭くてもよい。また、
図8(b)に示すように、スライド設置部51に複数のスライド120が設置されてもよい。
【0064】
図8(a)、(b)は、変更例1に係る、スライド設置部51および誘導部設置部52の近傍の構成を模式的に示す正面図である。
【0065】
図8(a)に示す構成では、刃部110の幅w11が、スライド120の幅w12およびスライド120上のFFPE切片121の幅よりも狭い。この場合、ユーザは、
図8(a)に示すように、刃部110を下方向に移動させてFFPE切片121を削り取る工程を、左右方向に刃部110をずらして複数回実行する。また、誘導部130の上部開口131aの幅w13は、スライド120の幅w12よりも大きく設定される。これにより、刃部110によって削り取られたFFPE切片121を、全て誘導部130へと導くことができる。
【0066】
図8(b)に示す構成では、刃部110の幅w21がスライド120の幅よりも広いが、スライド設置部51に複数のスライド120が設置され、複数のスライド120の左端から右端までの幅w22が、刃部110の幅w21よりも広くなっている。この場合も、ユーザは、
図8(b)に示すように、刃部110を下方向に移動させてFFPE切片121を削り取る工程を、左右方向に刃部110をずらして複数回実行する。また、誘導部130の上部開口131aの幅w23は、複数のスライド120の左右端の幅w22よりも大きいため、刃部110によって削り取られたFFPE切片121を、全て誘導部130へと導くことができる。
【0067】
図9は、変更例1に係る、検体剥離装置1を用いた検体剥離方法を示すフローチャートである。
図9は、
図8(a)、(b)いずれの場合にも適用されるフローチャートである。
【0068】
変更例1では、
図7に示した実施形態1のフローチャートと比較して、ステップS14とステップS15との間にステップS21、S22が追加されている。以下、実施形態1と異なる部分について説明する。
【0069】
ステップS14の削り取り工程が終わると、ユーザは、FFPE切片121の削り取りが全て完了したか否かを判定する。削り取りが完了していない場合(ステップS21:NO)、ユーザは、ステップS22において刃部110を左右方向に移動させ、再度ステップS14の削り取り工程を行う。こうして、必要なFFPE切片121の削り取りが全て完了すると(ステップS21:YES)、ユーザは、処理をステップS15、S16に進めて、回収工程を行う。
【0070】
なお、
図9では、FFPE切片121の削り取りが全て完了した後で回収工程が行われるが、これに代えて、ステップS14の削り取り工程ごとに、回収工程と左右移動の工程が行われてもよい。
【0071】
<変更例1の効果>
変更例1によれば、ステップS14のFFPE切片121を削り取る工程が、下方向(削り取り方向)に交差する方向(左右方向)に刃部110をずらして複数回実行される。これにより、
図8(a)のように、刃部110の幅w11よりもスライド120の幅w12が広い場合でも、スライド120から満遍なくFFPE切片121を削り取って回収できる。また、
図8(b)のように、刃部110の幅w21よりも複数のスライド120の左右端の幅w22が広い場合でも、複数のスライド120から満遍なくFFPE切片121を削り取って回収できる。
【0072】
<変更例2>
変更例2では、上記実施形態1と比較して、検体剥離装置1が、誘導部130を振動させる振動部70をさらに備える。
【0073】
図10は、変更例2に係る、スライド設置部51および誘導部設置部52の近傍の構成を模式的に示す正面図である。
【0074】
振動部70は、振動子71と、振動子71を駆動させる機構と、を備える。振動部70は、振動子71が誘導部130の側面に接触するよう、筐体10(
図1参照)に設置される。
【0075】
図11は、変更例2に係る、検体剥離装置1の構成を示すブロック図である。
【0076】
検体剥離装置1は、
図6の実施形態1の構成と比較して、振動部70と、駆動部203と、をさらに備える。操作ボタン212は、駆動部202、203に接続されており、ユーザが操作ボタン212を操作すると、操作に応じて、駆動部202が冷却部62を駆動させ、駆動部203が振動部70を駆動させる。駆動部203は、振動子71が所定の周波数で振動するように振動部70を制御する。
【0077】
図12は、変更例2に係る、検体剥離装置1を用いた検体剥離方法を示すフローチャートである。
【0078】
変更例2では、
図7に示した実施形態1のフローチャートと比較して、ステップS15とステップS16との間にステップS31が追加されている。以下、実施形態1と異なる部分について説明する。
【0079】
ステップS14の削り取り工程が終わると、ユーザは回収工程を実行する。変更例2の回収工程は、ステップS15の冷却工程と、ステップS31の振動工程と、ステップS16の判定と、により構成される。ユーザは、ステップS15、S31を並行して実行する。
【0080】
具体的には、ステップS15の冷却工程において、ユーザは、刃部110を後方内側面131cに位置付け、操作ボタン212(
図11参照)を操作する。これにより、刃部110上のFFPE切片121の削り取り部分が冷却され(ステップS15)、振動部70の駆動により誘導部130が振動される(ステップS31)。ユーザは、刃部110上のFFPE切片121の削り取り部分が容器140に回収されるまで、ステップS15、S31を継続して実行する。削り取り部分が回収されると(ステップS16:YES)、
図12の処理が完了する。
【0081】
<変更例2の効果>
変更例2では、
図12に示すように、回収工程が、誘導部130を振動させる振動工程を含む。これにより、誘導部130内でFFPE切片121が留まりにくくなるため、FFPE切片121の削り取り部分をより確実に容器140へと導くことができる。
【0082】
<変更例3>
変更例3では、上記実施形態1と比較して、検体剥離装置1が、誘導部130の内部にイオンを吹き掛けるイオナイザー80をさらに備える。
【0083】
図13は、変更例3に係る、検体剥離装置1の構成を示す斜視図である。
【0084】
イオナイザー80は、イオンの吹き掛け方向が誘導部130の内部に向くよう、支持台14に設置されている。支持台14は、筐体10の容器載置部材13に設置されている。
【0085】
図14は、変更例3に係る、検体剥離装置1の構成を示すブロック図である。
【0086】
検体剥離装置1は、
図6の実施形態1の構成と比較して、イオナイザー80と、駆動部204と、をさらに備える。操作ボタン212は、駆動部202、204に接続されており、ユーザが操作ボタン212を操作すると、操作に応じて、駆動部202が冷却部62を駆動させ、駆動部204がイオナイザー80を駆動させる。駆動部204は、イオナイザー80から所定の出力でイオンが吹き掛けられるようにイオナイザー80を制御する。
【0087】
図15は、変更例3に係る、検体剥離装置1を用いた検体剥離方法を示すフローチャートである。
【0088】
変更例3では、
図7に示した実施形態1のフローチャートと比較して、ステップS15とステップS16との間にステップS32が追加されている。以下、実施形態1と異なる部分について説明する。
【0089】
ステップS14の削り取り工程が終わると、ユーザは回収工程を実行する。変更例3の回収工程は、ステップS15の冷却工程と、ステップS32の静電気除去工程と、ステップS16の判定と、により構成される。ユーザは、ステップS15、S32を並行して実行する。
【0090】
具体的には、ステップS15の冷却工程において、ユーザは、刃部110を後方内側面131cに位置付け、操作ボタン212(
図11参照)を操作する。これにより、刃部110上のFFPE切片121の削り取り部分が冷却され(ステップS15)、イオナイザー80の駆動により誘導部130の内部にイオンが吹き掛けられ、刃部110上のFFPE切片121の削り取り部分および誘導部130の内側面の静電気が除去される(ステップS32)。ユーザは、刃部110上のFFPE切片121の削り取り部分が容器140に回収されるまで、ステップS15、S32を継続して実行する。削り取り部分が回収されると(ステップS16:YES)、
図15の処理が完了する。
【0091】
<変更例3の効果>
変更例3では、
図15に示すように、回収工程が静電気除去工程を含む。静電気除去工程において、刃部110に残ったFFPE切片121の削り取り部分にイオンが吹き掛けられる。これにより、刃部110に残った削り取り部分の静電気が除去されるため、削り取り部分を刃部110から落下させて、円滑に容器140へと導くことができる。また、静電気除去工程において、誘導部130にイオンが吹き掛けられる。これにより、誘導部130の内側面の静電気が除去されるため、刃部110から落下した削り取り部分が誘導部130に留まることを抑制して、削り取り部分を円滑に容器140へと導くことができる。
【0092】
<実施形態2>
上記実施形態1では、ユーザが、上下移動レバー32を操作して刃部110を上下方向に移動させ、左右移動レバー42を操作して刃部110の左右方向に移動させた。また、ユーザが、切替レバー37を操作して、バネ35により刃部110を後方に付勢する状態と、当該付勢を解除する状態とを切り替えた。さらに、ユーザが操作ボタン211、212を操作して、加温部61、冷却部62、振動部70およびイオナイザー80を駆動した。これに対し、実施形態2では、これらのユーザの操作が自動で行われる。
【0093】
図16(a)は、実施形態2に係る、検体剥離装置1の構成を模式的に示す正面図である。
図16(b)は、実施形態2に係る、検体剥離装置1の構成を模式的に示す平面図である。
図16(a)、(b)では、便宜上、上下移動部30および左右移動部40の近傍が示されている。
【0094】
図16(a)、(b)に示すように、検体剥離装置1は、
図1の実施形態1の構成と比較して、モータ301と、一対のプーリ302と、ベルト303と、支持部材304と、モータ311と、一対のプーリ312と、ベルト313と、支持部材314と、モータ321と、をさらに備える。モータ301、311、321は、ステッピングモータにより構成される。また、
図1の実施形態1の構成と比較して、プーリ22と、ベルト23と、上下移動レバー32と、切替レバー37と、左右移動レバー42とが、省略されている。
【0095】
なお、
図16(b)には、便宜上、モータ311、一対のプーリ312、ベルト313、および支持部材314の図示が省略されている。
【0096】
モータ301および一対のプーリ302は、筐体10の壁部材12に設置されている。モータ301の回転軸は、一方のプーリ302に接続されており、ベルト303は、一対のプーリ302に掛けられている。支持部材304は、ベルト303と右側の上下移動部材31とを接続している。モータ301が駆動されると、ベルト303に沿って支持部材304が上下方向に移動し、支持部材304に接続された上下移動部30が上下方向に移動する。
【0097】
モータ311および一対のプーリ312は、前後移動部材34に設置されている。モータ311の回転軸は、一方のプーリ312に接続されており、ベルト313は、一対のプーリ312に掛けられている。支持部材314は、ベルト313と左右移動部材41とを接続している。モータ311が駆動されると、ベルト313に沿って支持部材314が左右方向に移動し、支持部材314に接続された左右移動部40が左右方向に移動する。
【0098】
モータ321は、板部材33に設置されており、モータ321の回転軸321aは、板部材33に設けられた孔を介して、前後移動部材34まで前方に延びている。モータ321が駆動されると、回転軸321aの先端が前後方向に移動する。これにより、一対のバネ35によって板部材33に近づくように付勢された前後移動部材34が、回転軸321aによって前方に押されながら前後に移動する。
【0099】
図17は、実施形態2に係る、検体剥離装置1の構成を示すブロック図である。
【0100】
検体剥離装置1は、
図6の実施形態1の構成と比較して、
図11に示した変更例1の振動部70および駆動部203と、
図14に示した変更例2のイオナイザー80および駆動部204と、移動機構230と、駆動部205と、制御部220と、センサ群240と、をさらに備える。
【0101】
移動機構230は、刃部110をスライド120に対し相対移動させる構成を含む。具体的には、移動機構230は、ガイドレール21と、プーリ22と、ベルト23と、上下移動部30と、左右移動部40と、
図16(a)、(b)に示した、一対のプーリ302と、ベルト303と、支持部材304と、一対のプーリ312と、ベルト313と、支持部材314と、を含む。駆動部205は、
図16(a)、(b)に示したモータ301、311、321を含み、駆動部205は、移動機構230を駆動させる。センサ群240は、刃部110の位置を検出するための複数のセンサを含む。センサ群240の各センサは、たとえば、反射型の光センサや透過型の光センサにより構成される。
【0102】
制御部220は、たとえば、CPUおよびメモリにより構成される。制御部220は、センサ群240の各センサの検出信号に基づいて、駆動部201~205を制御して、それぞれ、加温部61、冷却部62、振動部70、イオナイザー80、移動機構230を駆動させる。
【0103】
操作パネル210は、検体剥離装置1の動作を開始させるための操作ボタン213を含む。ユーザが操作ボタン213を操作すると、制御部220は、センサ群240の各センサの検出信号に基づいて刃部110の位置を検出し、実施形態1においてユーザが行った処理を順次行う。
【0104】
図18は、実施形態2に係る、検体剥離装置1の処理を示すフローチャートである。
【0105】
検体剥離装置1による処理に先立ち、ユーザは、
図7の実施形態1のステップS11、S12と同様、刃部110と容器140を交換し、スライド120および誘導部130を設置する。そして、ユーザは、操作ボタン213(
図17参照)を操作して、検体剥離装置1の処理を開始させる。
【0106】
ステップS101の加温工程において、制御部220は、駆動部201を制御することにより、加温部61を駆動させて、
図3(a)と同様に、スライド設置部51に設置されたスライド120上のFFPE切片121を加温する。ステップS102の削り取り工程において、制御部220は、駆動部205を制御することにより、移動機構230(
図17参照)を駆動させて、
図3(b)と同様に、刃部110を移動させてスライド120上のFFPE切片121を削り取る。ステップS103のインクリメント工程において、制御部220は、削り取り回数を1増加させる。
【0107】
ステップS104において、制御部220は、ステップS102の実行回数(削り取り回数)が所定回数に到達したか否かを判定する。削り取り回数が所定回数に到達していない場合(ステップS104:NO)、制御部220は、ステップS105において、駆動部205を制御することにより、移動機構230を駆動させて刃部110を所定の移動距離だけ右方向または左方向にずらし、再度ステップS102、S103を実行する。所定回数および所定の移動距離は、刃部110の幅とスライド120の幅に応じて、あらかじめ制御部220のメモリに記憶されている。なお、刃部110の幅がスライド120の幅より大きい場合には、削り取り工程は1回だけであるので、ステップS103~105の処理は省略可能である。
【0108】
削り取り回数が所定回数に到達した場合(ステップS104:YES)、制御部220は、回収工程を実行する。回収工程は、ステップS106の冷却工程と、ステップS107の振動工程と、ステップS108の静電気除去工程と、ステップS109の判定とにより構成される。
【0109】
ステップS106の冷却工程において、制御部220は、
図5(a)と同様に、駆動部205を制御することにより、移動機構230を駆動させて刃部110の先端を後方内側面131cに位置付け、駆動部202を制御することにより、冷却部62を駆動させて刃部110上のFFPE切片121の削り取り部分を冷却する。また、制御部220は、ステップS106の冷却工程と並行して、ステップS107において、駆動部203を制御することにより、振動部70を駆動させて誘導部130を振動させ、ステップS108において、駆動部204を制御することにより、イオナイザー80を駆動させて誘導部130の内部にイオンを吹き掛ける。
【0110】
ステップS109において、制御部220は、回収工程が開始されてから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間は、あらかじめ制御部220のメモリに記憶されている。所定時間が経過していない場合(ステップS109:NO)、制御部220は、ステップS106~S108の処理を継続して行う。他方、所定時間が経過した場合(ステップS109:YES)、検体剥離装置1の処理が終了する。
【0111】
<実施形態2の効果>
実施形態2によれば、上記実施形態1および変更例1~3と同様の効果が奏される。
【0112】
さらに、移動機構230により刃部110が移動されるため、ユーザは、刃部110を上下に移動させるために上下移動レバー32を操作する必要がなく、刃部110を左右に移動させるために左右移動レバー42を操作する必要がない。よって、ユーザの負担を軽減して、円滑にFFPE切片121を回収できる。
【0113】
<実施形態3>
実施形態2に示したように検体剥離装置1が自動で動作可能な場合、以下に示すように、検体剥離装置1の周囲を囲むようにケースが配置され、ケースの内部が除湿されてもよい。
【0114】
図19(a)は、実施形態3の構成を模式的に示す斜視図である。
【0115】
実施形態3では、検体剥離装置1の周囲を囲むようにケース410が配置され、ケース410の内部に除湿機401が配置されている。操作パネル210は、ケース410の外側に配置されており、検体剥離装置1および除湿機401に接続されている。
【0116】
実施形態3では、ユーザ400は、ケース410の外側から作業を行う。ユーザ400は、ケース410に設けられた扉411を上方に移動させて、ケース410の内部を開放する。この状態で、ユーザ400は、刃部110、スライド120、誘導部130および容器140を交換する。交換が終わると、ユーザ400は、扉411を閉じてケース410内部を密閉する。そして、ユーザ400は、操作パネル210のボタンを操作して、除湿機401を駆動させ、検体剥離装置1の動作を開始させる。
【0117】
また、ケース410を用いて除湿をすることに代えて、以下に示すように、検体剥離装置1が設置された部屋の内部が除湿されてもよい。
【0118】
図19(b)は、この場合の構成を模式的に示す斜視図である。
【0119】
この変更例では、検体剥離装置1が部屋420の内部に配置され、部屋420の内部に除湿機401が配置されている。操作パネル210は、部屋420の内部に配置されており、検体剥離装置1および除湿機401に接続されている。
【0120】
この変更例では、ユーザ400は、部屋420の内部で作業を行う。ユーザ400は、ドア421から部屋420の中に入り、ドア421を閉めて部屋420の内部を密閉する。そして、ユーザは、刃部110、スライド120、誘導部130および容器140を交換する。交換が終わると、ユーザ400は、操作パネル210のボタンを操作して、除湿機401を駆動させ、検体剥離装置1の動作を開始させる。なお、この場合の検体剥離装置1は、実施形態1、2および変更例1~3のいずれの検体剥離装置でもよい。
【0121】
<実施形態3の効果>
実施形態3によれば、上記実施形態1、2および変更例1~3と同様の効果が奏される。
【0122】
さらに、除湿機401の駆動により、ケース410および部屋420の内部の湿度が低くなるため、刃部110上のFFPE切片121の削り取り部分が冷却される際に、FFPE切片121で結露が生じることが抑制される。これにより、刃部110上の削り取り部分を円滑に容器140へと導くことができる。
【0123】
<その他の変更例>
実施形態1~3および変更例1~3では、加温工程において、
図3(a)に示したように、加温部61がスライド設置部51を加温することにより、スライド設置部51に設置されたスライド120上のFFPE切片121が間接的に加温された。しかしながら、これに代えて、スライド設置部51の前方にヒーターや赤外線ランプが設けられ、温風が吹き掛けられることにより、スライド120上のFFPE切片121が直接的に加温されてもよい。
【0124】
また、冷却工程において、
図5(a)に示したように、冷却部62が誘導部設置部52を冷却することにより、後方内側面131cに接触した刃部110上のFFPE切片121の削り取り部分が間接的に冷却された。しかしながら、これに代えて、誘導部設置部52の前方に冷却装置が設けられ、冷風が吹き掛けられることにより、刃部110上のFFPE切片121の削り取り部分が直接的に冷却されてもよい。
【0125】
また、加温工程において、スライド設置部51の加温および温風の吹き掛けの両方が行われてもよい。冷却工程において、誘導部設置部52の冷却および冷風の吹き掛けの両方が行われてもよい。
【0126】
ただし、温風が吹き掛けられる場合は、スライド120上のFFPE切片121が温風によって飛散する可能性があり、冷風が吹き掛けられる場合は、刃部110上のFFPE切片121の削り取り部分が冷風によって飛散する可能性がある。したがって、上記実施形態1~3および変更例1~3のように、スライド設置部51のみを介して加温が行われるのが好ましく、誘導部設置部52のみを介して冷却が行われるのが好ましい。
【0127】
実施形態1~3および変更例1~3では、加温部61は、スライド設置部51を加温するためのペルチェ素子を備えたが、これに代えて、ヒーターを備えてもよい。
【0128】
実施形態1~3および変更例1~3では、冷却工程において、
図5(a)に示したように、刃部110の先端が誘導部130の後方内側面131c(冷却面)に接触することにより、刃部110上のFFPE切片121の削り取り部分が冷却された。しかしながら、これに限らず、刃部110は、後方内側面131cに接触していなくてもよく、後方内側面131cに刃部110が熱的に結合していれば、刃部110と後方内側面131cとの間に隙間が設けられてもよい。
【0129】
実施形態1~3および変更例1~3では、
図1に示したように、壁部材12が水平面に垂直に配置されたことにより、スライド設置部51および誘導部設置部52が水平面に垂直に配置された。しかしながら、これに限らず、
図1において、壁部材12が水平面に垂直な状態から傾けられて配置されてもよい。この場合、スライド設置部51および誘導部設置部52も、水平面に垂直な状態から傾けられる。ただし、スライド120から削り取られたFFPE切片121を円滑に容器140へと回収するためには、
図1のように、壁部材12が水平面に垂直となるように配置されるのが好ましい。
【0130】
実施形態1~3および変更例1~3では、スライド120がスライド設置部51に設置され、刃部110がバネ35によって後方へと付勢された。しかしながら、これに限らず、刃部110側のバネ35が省略され、スライド設置部51を刃部110に近付ける方向に付勢するバネがスライド設置部51側に設けられてもよい。また、刃部110側とスライド設置部51側の両方に、刃部110およびスライド設置部51を互いに近付けるよう付勢するバネが設けられてもよい。
【0131】
実施形態1~3および変更例1~3では、スライド120がスライド設置部51に設置され、刃部110が移動されることにより、刃部110がスライド120に対して相対移動された。しかしながら、これに限らず、刃部110が壁部材12に設置され、スライド設置部51が移動されることにより、刃部110がスライド120に対して相対移動されてもよい。また、刃部110とスライド120の両方が移動されることにより、刃部110がスライド120に対して相対移動されてもよい。
【0132】
実施形態1~3および変更例1~3では、誘導部130は、樹脂により構成されたが、SUSやアルミニウムにより構成されてもよい。この場合、誘導部130の熱伝導性が樹脂に比べて高くなるため、後方内側面131cに接触した刃部110を円滑に冷却できる。この場合、スライド120の交換に応じて、誘導部130の滅菌や洗浄などの処理をすることが好ましい。
【0133】
実施形態1~3および変更例1~3では、接続面132がスライド設置部51に設置されることにより、誘導部130が誘導部設置部52に設置された。しかしながら、これに限らず、上下方向の長さが
図2の例よりも短い接続面132が、誘導部設置部52に設置されることにより、誘導部130が誘導部設置部52に設置されてもよい。この場合、スライド120は、後方側の面がスライド設置部51の前面に接触するように、スライド設置部51に設置される。スライド120から削り取られたFFPE切片121が、スライド設置部51を介してコンタミネーションを引き起こさないように、スライド120とスライド設置部51との間に、スライド120ごとに交換される誘導部130の接続面132が配置されるのが好ましい。
【0134】
実施形態2では、刃部110の位置を検出するために、センサ群240の各センサが用いられたが、これに代えて、カメラで撮影した静止画や動画に基づいて、刃部110の位置が検出されてもよい。また、移動機構230のモータ301、311、321のステップ数に基づいて、刃部110の位置が検出されてもよい。
【0135】
実施形態2において、ステップS106の冷却工程と、ステップS107の振動工程と、ステップS108の静電気除去工程とは、この順に開始されなくてもよい。ステップS106~S108は、どのような順序で開始されてもよい。
【0136】
実施形態2では、ステップS109において所定時間が経過した場合に、FFPE切片121の削り取り部分の回収が完了したと判定されたが、これに代えて、削り取り部分が回収されたか否かが、光センサやカメラなどに基づいて判定されてもよい。光センサが用いられる場合、制御部220は、容器140内の削り取り部分の有無を、光センサの検出信号に基づいて判定する。カメラが用いられる場合、制御部220は、容器140内の削り取り部分の有無を、カメラで撮影された容器140の静止画や動画に基づいて判定する。
【0137】
実施形態2では、刃部110を移動させる構成として移動機構230および駆動部205を示したが、刃部110を移動させる構成はこれに限らない。また、実施形態2では、刃部110、スライド120、誘導部130および容器140の交換は、ユーザにより行われたが、これらの交換が機構部により自動で行われてもよい。
【0138】
図19(a)に示したように、検体剥離装置1の周囲がケース410により密閉される場合、加温部61に代えて、ケース410内の温度が制御されることにより、スライド120上のFFPE切片121が加温されてもよい。また、冷却部62に代えて、ケース410内の温度が制御されることにより、刃部110上のFFPE切片121の削り取り部分が冷却されてもよい。同様に、
図19(b)に示したように、検体剥離装置1の周囲が部屋420により密閉される場合、加温部61に代えて、部屋420内の温度が制御されることにより、スライド120上のFFPE切片121が加温されてもよい。また、冷却部62に代えて、部屋420内の温度が制御されることにより、刃部110上のFFPE切片121の削り取り部分が冷却されてもよい。
【0139】
実施形態1~3および変更例1~3では、スライド120に保持された生体組織切片はFFPE切片121であったが、これに限らない。たとえば、生体組織切片は、凍結組織切片であってもよい。
【0140】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0141】
1 検体剥離装置
21 ガイドレール(移動機構)
22 プーリ(移動機構)
23 ベルト(移動機構)
30 上下移動部(移動機構)
35 バネ(付勢部、移動機構)
40 左右移動部(移動機構)
51 スライド設置部(設置部材)
61 加温部
62 冷却部
70 振動部
80 イオナイザー
110 刃部
111 刃面
120 スライド
120a スライド面
121 FFPE切片(生体組織切片)
130 誘導部
131a 上部開口
131b 下部開口
131c 後方内側面(冷却面)
140 容器
141a 開口
205 駆動部
230 移動機構
301 モータ(駆動部)
302 プーリ(移動機構)
303 ベルト(移動機構)
304 支持部材(移動機構)
311 モータ(駆動部)
312 プーリ(移動機構)
313 ベルト(移動機構)
314 支持部材(移動機構)
321 モータ(駆動部)