(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/18 20200101AFI20241225BHJP
G06F 30/27 20200101ALI20241225BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20241225BHJP
G06F 113/14 20200101ALN20241225BHJP
【FI】
G06F30/18
G06F30/27
G06Q50/06
G06F113:14
(21)【出願番号】P 2021038426
(22)【出願日】2021-03-10
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】端山 寛文
(72)【発明者】
【氏名】池原 基博
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-083294(JP,A)
【文献】特開平09-184310(JP,A)
【文献】特開平10-021288(JP,A)
【文献】特開2006-115570(JP,A)
【文献】特開2001-241072(JP,A)
【文献】配管・配管支持装置の3D設計自動化技術の確立 [online],東芝プラントシステム株式会社,2020年12月08日,[検索日 2024.08.29],インターネット,URL:https://www.toshiba-tpsc.co.jp/pdf/topics/20201208.pdf
【文献】笹間宏 外1名,配管系の自動設計システムに関する研究,日本機械学会論文集 [online],1972年,第38巻,第310号,pp. 1256-1266,[検索日 2024.08.29],インターネット,URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikai1938/38/310/38_310_1256/_article/-char/ja/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
G06Q 50/04 -50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置と、データベースとを有し、
前記データベースは、多層階の建築物のBIM(Building Information Modeling)データと、前記建築物の建築法令規則と、前記建築物の給水配管に必要な部材の仕様および価格とが含まれる参照情報をあらかじめ記憶し、
前記情報処理装置は、
外部から設定パラメータを入力する入力部と、
前記入力部が入力した設定パラメータと、前記データベースに記憶されている参照情報とに基づいて、前記建築物の給水配管を算出する算出部と、
前記算出部が算出した給水配管を示す配管情報を出力する出力部とを有
し、
前記算出部は、水道管から前記建築物へ供給される水の経路を算出し、該算出した水の経路に基づいて仮配管を行い、該仮配管のうちの最高階最長経路の探索を行い、該最高階最長経路に基づいて、揚程計算を行い、該計算した揚程に基づいて、前記水道管から供給される水を該建築物の上層階へ上げるためのポンプの要否を算出する情報処理システム。
【請求項2】
前記算出部は、前記ポンプが必要であると算出した場合、前記ポンプの必要な出力を算出し、該算出した出力に応じたポンプを、前記データベースに記憶された参照情報から選択する請求項
1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記算出部は、前記ポンプが吸い上げる水を貯留する受水槽の要否を算出する請求項2または請求項
2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記算出部は、前記受水槽が必要であると算出した場合、前記入力部が入力した設定パラメータに応じた受水槽を、前記データベースに記憶された参照情報から選択する請求項
3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記データベースは、前記設定パラメータに対して前記算出部が算出した給水配管について機械学習を行った学習済みの学習モデルを記憶し、
前記算出部は、前記入力部が入力した設定パラメータを前記学習モデルに入力することで前記学習モデルから前記給水配管を取得する請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
外部から設定パラメータを入力する入力部と、
前記入力部が入力した設定パラメータと、多層階の建築物のBIMデータと前記建築物の建築法令規則と前記建築物の給水配管に必要な部材の仕様および価格とが含まれる参照情報をあらかじめ記憶するデータベースに記憶されている参照情報とに基づいて、前記建築物の給水配管を算出する算出部と、
前記算出部が算出した給水配管を示す配管情報を出力する出力部とを有
し、
前記算出部は、水道管から前記建築物へ供給される水の経路を算出し、該算出した水の経路に基づいて仮配管を行い、該仮配管のうちの最高階最長経路の探索を行い、該最高階最長経路に基づいて、揚程計算を行い、該計算した揚程に基づいて、前記水道管から供給される水を該建築物の上層階へ上げるためのポンプの要否とを算出する情報処理装置。
【請求項7】
情報処理装置が、外部から設定パラメータを入力する処理と、
情報処理装置が、前記入力した設定パラメータと、多層階の建築物のBIMデータと前記建築物の建築法令規則と前記建築物の給水配管に必要な部材の仕様および価格とが含まれる参照情報をあらかじめ記憶するデータベースに記憶されている参照情報とに基づいて、
水道管から前記建築物へ供給される水の経路を算出し、該算出した水の経路に基づいて仮配管を行い、該仮配管のうちの最高階最長経路の探索を行い、該最高階最長経路に基づいて、揚程計算を行い、該計算した揚程に基づいて、前記水道管から供給される水を該建築物の上層階へ上げるためのポンプの要否とを算出して、前記建築物の給水配管を算出する処理と、
情報処理装置が、前記算出した給水配管を示す配管情報を出力する処理とを行う情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
外部から設定パラメータを入力する手順と、
前記入力した設定パラメータと、多層階の建築物のBIMデータと前記建築物の建築法令規則と前記建築物の給水配管に必要な部材の仕様および価格とが含まれる参照情報をあらかじめ記憶するデータベースに記憶されている参照情報とに基づいて、
水道管から前記建築物へ供給される水の経路を算出し、該算出した水の経路に基づいて仮配管を行い、該仮配管のうちの最高階最長経路の探索を行い、該最高階最長経路に基づいて、揚程計算を行い、該計算した揚程に基づいて、前記水道管から供給される水を該建築物の上層階へ上げるためのポンプの要否とを算出して、前記建築物の給水配管を算出する手順と、
前記算出した給水配管を示す配管情報を出力する手順とを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
マンション等の多層階の建築物において、水道管から供給される水の給水配管を設計する上で、階に応じてどのように給水を行うかが重要な課題の1つになる。例えば、多層階を低層ゾーンと中層ゾーンと高層ゾーンとに分けて、それぞれのゾーンに応じたポンプ性能を持つ増圧給水部を用いて給水を行うシステムが考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような技術においては、それぞれのゾーンの前段のゾーンそれぞれに増圧給水部を設ける必要がある。また、それぞれのポンプ性能とそれぞれに設けられた増圧給水部に必要な瞬時最大数量とに基づいて、増圧給水部を決定するものであるため、給水配管の設計にその他の条件を考慮することができない。このように、柔軟な給水配管を容易に行うことができないという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、柔軟な給水配管を容易に行うことができる情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の情報処理システムは、
情報処理装置と、データベースとを有し、
前記データベースは、多層階の建築物のBIM(Building Information Modeling)データと、前記建築物の建築法令規則と、前記建築物の給水配管に必要な部材の仕様および価格とが含まれる参照情報をあらかじめ記憶し、
前記情報処理装置は、
外部から設定パラメータを入力する入力部と、
前記入力部が入力した設定パラメータと、前記データベースに記憶されている参照情報とに基づいて、前記建築物の給水配管を算出する算出部と、
前記算出部が算出した給水配管を示す配管情報を出力する出力部とを有する。
【0007】
また、本発明の情報処理装置は、
外部から設定パラメータを入力する入力部と、
前記入力部が入力した設定パラメータと、多層階の建築物のBIMデータと前記建築物の建築法令規則と前記建築物の給水配管に必要な部材の仕様および価格とが含まれる参照情報をあらかじめ記憶するデータベースに記憶されている参照情報とに基づいて、前記建築物の給水配管を算出する算出部と、
前記算出部が算出した給水配管を示す配管情報を出力する出力部とを有する。
【0008】
また、本発明の情報処理方法は、
外部から設定パラメータを入力する処理と、
前記入力した設定パラメータと、多層階の建築物のBIMデータと前記建築物の建築法令規則と前記建築物の給水配管に必要な部材の仕様および価格とが含まれる参照情報をあらかじめ記憶するデータベースに記憶されている参照情報とに基づいて、前記建築物の給水配管を算出する処理と、
前記算出した給水配管を示す配管情報を出力する処理とを行う。
【0009】
また、本発明のプログラムは、
コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
外部から設定パラメータを入力する手順と、
前記入力した設定パラメータと、多層階の建築物のBIMデータと前記建築物の建築法令規則と前記建築物の給水配管に必要な部材の仕様および価格とが含まれる参照情報をあらかじめ記憶するデータベースに記憶されている参照情報とに基づいて、前記建築物の給水配管を算出する手順と、
前記算出した給水配管を示す配管情報を出力する手順とを実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、柔軟な給水配管を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の情報処理システムの実施の一形態を示す図である。
【
図2】
図1に示したデータベースに記憶されたデータの一例を示す図である。
【
図3】
図2に示したカタログデータの一例を示す図である。
【
図4】
図2に示したカタログデータの他の例を示す図である。
【
図5】
図1に示した情報処理装置の内部構成の一例を示す図である。
【
図6】
図1に示した情報処理システムにおける情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図1に示した情報処理システムにおける情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図1に示した情報処理システムにおける情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図5に示した入力部に表示された入力画面の一例を示す図である。
【
図10】ステップS32にて
図5に示した出力部が表示した画面の一例を示す図である。
【
図11】
図10に示した出力ボタンが選択された場合に出力部が表示する画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の情報処理システムの実施の一形態を示す図である。本形態における情報処理システムは
図1に示すように、データベース100と、情報処理装置200とを有する。データベース100と情報処理装置200とは、互いに直接接続されていても良いし、一般に用いられる通信ネットワークを介して接続されていても良い。データベース100と情報処理装置200との接続には、無線や有線が用いられる。データベース100は、様々な情報を記憶する、外部からアクセス可能な記憶装置である。決められたIDやパスワード等を用いて、特定の者にデータベース100へのアクセス権を与えたものであっても良いし、データベース100に誰でもがアクセスできるものであっても良い。情報処理装置200は、データベース100に記憶されたデータと、外部から情報処理装置200に入力されたデータとに基づいて、様々な値を算出して出力する。
【0014】
図2は、
図1に示したデータベース100に記憶されたデータの一例を示す図である。
図1に示したデータベース100は
図2に示すように、BIMデータ110と、途中式データ120と、法令規則データ130と、特記仕様マニュアル140と、カタログデータ150と、歩掛データ160とを記憶する。以下、データベース100に記憶されたこれらのデータを参照情報と称する。
【0015】
BIMデータ110は、多層階の建築物の躯体モデルのデータを含むBIM(Building Information Modeling)データである。躯体モデルには、建築物を構成するコンクリートと配筋情報とが含まれる。また、躯体モデルには、給水の始点である引き込み箇所を示す情報と、終点となる給水箇所を示す情報とが含まれる。
【0016】
途中式データ120は、情報処理装置200が算出した数値や式等を含む。途中式データ120は、情報処理装置200が過去に計算で使用した計算式等も含むものであっても良い。
【0017】
法令規則データ130は、建築設計を行う上で順守すべき建築法律や建築規則のデータである。法令規則データ130は、建築法律や建築規則が改正される度に遅滞なく更新される。なお、法令規則データ130は、データベース100に記憶されているものではなく、外部の専門機関に設けられているものを使用しても良い。各建築法律や建築規則は、例えば、建築基準法や、水道法、ビル管法等である。
【0018】
特記仕様マニュアル140は、設計図特記仕様や施工主仕様等の、独自(オリジナル)の仕様を示すデータであっても良い。特記仕様マニュアル140は、給水配管を設計するたびに情報処理装置200に外部から入力された情報が含まれる。また、標準的に用いられる建築工事標準仕様書は特記仕様マニュアル140にあらかじめ含まれていても良い。
【0019】
カタログデータ150は、カタログや仕様書に掲載された、建築物を構成する部材や、建築物の給水配管を行う上で必要となる部材や工具等の仕様や価格を示すデータである。この部材には、例えば、ポンプや、受水槽、配管材、水栓等が挙げられる。カタログデータ150は、それぞれの部材のカタログに記載されたデータを一覧表としてまとめられたものであっても良い。カタログデータ150は、その部材を製造販売している業者ごとにまとめられていても良い。
【0020】
歩掛データ160は、作業ごとに、その作業に必要な手間を数値化したデータを含む。歩掛データ160は、過去の作業の統計的データに基づいて、あらかじめ計算された値であっても良いし、外部から入力(設定)された値であっても良い。
【0021】
データベース100に記憶されているこれらのデータは、1つのデータベース100に記憶されているのではなく、互いに別々の複数のデータベースに記憶されているものでも良いことは言うまでもない。
【0022】
図3は、
図2に示したカタログデータ150の一例を示す図である。
図3に示した例は、カタログデータ150に含まれるポンプのカタログに記載された諸元の一覧表の例である。ポンプは、建築物の外部または内部に設けられ、外部に敷設された水道管からの水を吸い上げて建築物の内部(特に上層階)へ給水する。
図3に示すように、それぞれの品名(型番)を持つポンプについて、呼び径(吸込、吐出)、型式、出力、相および電圧、最大給水量、全揚程、圧力タンクの封入圧力、騒音値、価格および専有容積が記憶されている。カタログデータ150に含まれるそれぞれポンプに関する項目は
図3に示したものに限らず、他の項目を含むものであっても良い。また、
図3に示した一覧表は、それぞれの項目のうち、所望の項目を指定して並べ替えを行うことができる。つまり、
図3に示した一覧表は、情報処理装置200等の外部の装置から優先する項目を指定すれば、その優先順位に応じた順序で並べ替えることができる。
【0023】
図4は、
図2に示したカタログデータ150の他の例を示す図である。
図4に示した例は、カタログデータ150に含まれる受水槽のカタログに記載された諸元の一覧表の例である。受水槽は、建築物の外部または内部に設けられ、外部に敷設された水道管からの水を一旦貯留する槽である。受水槽に貯留された水は、ポンプを用いて吸い上げられて建築物の内部(特に上層階)へ給水される。
図4に示すように、それぞれの品名(型番)を持つ受水槽について、材質、型式、専有容量、静水圧、耐震性、積雪荷重および価格が記憶されている。カタログデータ150に含まれるそれぞれ受水槽に関する項目は
図4に示したものに限らず、他の項目を含むものであっても良い。また、
図4に示した一覧表は、それぞれの項目のうち、所望の項目を指定して並べ替えを行うことができる。つまり、
図4に示した一覧表は、情報処理装置200等の外部の装置から優先する項目を指定すれば、その優先順位に応じた順序で並べ替えることができる。
【0024】
その他、カタログデータ150に配管材のカタログに記載された諸元の一覧表が含まれる場合、配管材ごとの材質や型式、価格等が記憶される。また、カタログデータ150に水栓のカタログに記載された諸元の一覧表が含まれる場合、水栓ごとの必要給水圧力や価格等が記憶される。
【0025】
図5は、
図1に示した情報処理装置200の内部構成の一例を示す図である。
図1に示した情報処理装置200は
図5に示すように、入力部210と、算出部220と、出力部230とを有する。なお、
図5には、
図1に示した情報処理装置200が具備する構成要素のうち本形態に関わる主要な構成要素のみを示した。
【0026】
入力部210は、外部から設定パラメータを入力する。具体的に入力部210は、外部から受け付ける操作に基づいて情報を入力する。入力部210は、一般的なPC(Personal Computer)に具備されたキーボードやマウス、操作キー等であっても良いし、情報を表示するディスプレイへの指等の物体の接触や接近に基づいて情報を入力するタッチパネルであっても良い。
【0027】
算出部220は、入力部210が入力した設定パラメータと、データベース100に記憶されている参照情報とに基づいて、建築物の給水配管を算出する。このとき、算出部220が算出する給水配管には、給水(受水)方式や、配管経路、必要なコスト等の情報が含まれる。具体的に算出部220は、水道管から建築物へ供給される水の経路を算出する際、入力部210が入力した設定パラメータと、データベース100に記憶された参照情報とに基づいて、水道管から供給される水を建築物の上層階へ上げるためにポンプが必要か否かを算出する。算出部220は、ポンプが必要であると算出した場合、ポンプの必要な出力を算出する。そして、算出部220は、算出した出力に応じたポンプを、データベース100に記憶された参照情報から選択する。さらに、算出部220は、入力部210が入力した設定パラメータと、データベース100に記憶された参照情報とに基づいて、ポンプが汲み上げる水を貯留させる受水槽が必要であるか否かを算出する。算出部220は、受水槽が必要であると算出した場合、受水槽の必要な容量を算出する。そして、算出部220は、算出した容量に応じた受水槽を、データベース100に記憶された参照情報から選択する。
【0028】
出力部230は、算出部220が算出した給水配管を示す配管情報を出力する。出力部230は、配管情報をディスプレイに画面表示するものであっても良いし、他の装置へ送信するものや、印刷するものであっても良い。出力部230における配管情報の出力態様の具体例は後述する。なお、出力部230がタッチパネル機能を具備しているディスプレイである場合、そのディスプレイは入力部210の機能と出力部230の機能とを併せ持つ。
【0029】
以下に、
図1に示した情報処理システムにおける情報処理方法について説明する。
図6、
図7および
図8は、
図1に示した情報処理システムにおける情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0030】
まず、入力部210が外部からの操作を受け付け、所定のパラメータを入力する(ステップS1)。このとき、入力部210は、操作を行う者が所定のパラメータを入力するための入力画面を表示する。
【0031】
図9は、
図5に示した入力部210に表示された入力画面の一例を示す図である。
図9に示した入力画面は、算出部220がこの給水配管の設計(計算)を開始する際に、特定の操作を行うことで表示される。表示される入力画面は
図9に示したものに限らず、必要なパラメータを入力できるものであれば良い。入力画面は、例えば、各パラメータを入力するための入力欄を並べて表示するものであっても良い。例えば、
図5に示した入力部210には
図9に示すように、入力画面として、BIMおよび特記仕様をデータベース100に記憶された参照情報の中から選択するための参照ボタンと、3つのケースについて受水槽の設置の要否、優先項目を入力するためのプルダウンメニュー等を含む入力フォームが表示される。優先順位については、
図9に示した例においては、ポンプおよび受水槽についての優先項目(価格、積雪荷重、騒音値、静水圧、専有面積、耐震性等)が設定できるような入力画面となっている。例えば、ポンプおよび受水槽について価格を優先するように設定すれば、算出部220は、価格を優先して設置するポンプおよび受水槽をカタログデータ150から選択する。また、複数のケースを入力可能となっている。
【0032】
必要なパラメータの入力が完了すると、算出部220は、入力されたパラメータとBIMデータ110とに基づいて、この建築物の階数が3階を超えるものであるかどうかを判定する(ステップS2)。この建築物が3階を超えるものではない場合、算出部220は、入力されたパラメータとデータベース100に記憶されている参照情報とに基づいて、配管方式として水道直結直圧方式を採用し、水道から当該建築物へ供給される水の経路を算出して仮配管を行う(ステップS3)。このとき、算出部220は、データベース100に記憶されているBIMデータ110、法令規則データ130および特記仕様マニュアル140を参照する。続いて、算出部220は、仮配管を行った経路のうち、最高階最長経路を探索する(ステップS4)。最高階最長経路とは、その建築物の最上階であって、その建築物への給水の始点である引き込み箇所から最も遠い水の出力位置までの経路である。算出部220は探索した最高階最長経路をデータベース100のBIMデータ110へ出力する(書き込む)(ステップS5)。このとき、ステップS1にて入力されたパラメータが複数のケースのパラメータである場合、その複数のケースごとに最高階最長経路がデータベース100のBIMデータ110へ書き込まれる。
【0033】
算出部220は、入力されたパラメータとデータベース100に記憶されているBIMデータ110とに基づいて、揚程計算を行う(ステップS6)。算出部220は、揚程計算の結果をデータベース100の途中式データ120へ出力する(書き込む)(ステップS7)。続いて、算出部220は、入力されたパラメータと、ステップS4にて探索した経路と、ステップS6にて計算した揚程とに基づいて、最高階最長経路の末端から出力される水の圧力(水圧)が必要な圧力(水圧)を満たしているか否かを判定する(ステップS8)。ここで、必要な圧力(水圧)は、法令規則データ130に従った値であって、ステップS1にて入力部210が入力した設定パラメータに含まれる場合、その値を満たすものである。出力される水の圧力(水圧)が必要な圧力(水圧)を満たしていない場合、算出部220はポンプの設置が必要であると判定する(ステップS9)。一方、ステップS2にて、この建築物が3階を超えるものである場合、ステップS9の処理が行われる。
【0034】
ポンプの設置が必要であると判定されると、算出部220は、データベース100の法令規則データ130に基づいて、受水槽の設置の義務があるか否かを判定する(ステップS10)。受水槽の設置の義務がない場合、算出部220は、ステップS1にて入力されたパラメータに基づいて、受水槽の設置の要望があるか否かを判定する(ステップS11)。受水槽の設置の要望がない場合、算出部220は、入力されたパラメータとデータベース100に記憶されている参照情報とに基づいて、配管方式としてポンプを用いた(受水槽を設置しない)増圧給水方式を採用し、水道から当該建築物へ供給される水の経路を算出して仮配管を行う(ステップS12)。このとき、算出部220は、データベース100に記憶されているBIMデータ110、法令規則データ130および特記仕様マニュアル140を参照する。続いて、算出部220は、仮配管を行った経路のうち、最高階最長経路を探索する(ステップS13)。算出部220は探索した最高階最長経路をデータベース100のBIMデータ110へ出力する(書き込む)(ステップS14)。このとき、ステップS1にて入力されたパラメータが複数のケースのパラメータである場合、その複数のケースごとに最高階最長経路がデータベース100のBIMデータ110へ書き込まれる。
【0035】
算出部220は、入力されたパラメータとデータベース100に記憶されているBIMデータ110とに基づいて、揚程計算を行う(ステップS15)。算出部220は、揚程計算の結果をデータベース100の途中式データ120へ出力する(書き込む)(ステップS16)。続いて、算出部220は、入力されたパラメータと、ステップS13にて探索した経路と、ステップS15にて計算した揚程と、カタログデータ150のポンプの仕様とに基づいて、ポンプから出力される水の圧力(水圧)が必要な圧力(水圧)を満たしているか否かを判定する(ステップS17)。ここで、必要な圧力(水圧)とは、最高階最長経路の末端からあらかじめ設定された圧力(水圧)の水を出力するために必要なポンプが出力する水の圧力(水圧)である。ポンプから出力される水の圧力(水圧)が必要な圧力(水圧)を満たしていない場合、算出部220は、入力されたパラメータとデータベース100に記憶されている参照情報とに基づいて、ポンプの出力を上げることができるか否かを判定する(ステップS18)。このとき、算出部220は、カタログデータ150からさらに出力値が大きなポンプを選択し、選択したポンプの中から入力されたパラメータや法令規則データ130、特記仕様マニュアル140の条件を満たすものがあるか否かを判定する。ポンプの出力を上げられると判定した場合、算出部220は、ポンプの出力を1つアップさせ(ステップS19)、ステップS15の処理を行う。このポンプの出力を1つアップするということは、カタログデータ150に含まれる複数のポンプの出力を仕様に応じて次に大きな値に上げる、または出力が次に大きなポンプへ変更するということである。一方、ステップS18にて、ポンプの出力をこれ以上、上げられないと判定した場合、算出部220は、受水槽の設置が必要であると判定する(ステップS20)。
【0036】
受水槽の設置が必要であると判定した場合、算出部220は、入力されたパラメータとデータベース100に記憶されている参照情報(特に、カタログデータ150の受水槽の仕様)とに基づいて、配管方式として受水槽を用いた受水槽方式を採用し、水道から当該建築物へ供給される水の経路を算出して仮配管を行う(ステップS21)。このとき、算出部220は、データベース100に記憶されているBIMデータ110、法令規則データ130および特記仕様マニュアル140を参照する。続いて、算出部220は、仮配管を行った経路のうち、最高階最長経路を探索する(ステップS22)。算出部220は探索した最高階最長経路をデータベース100のBIMデータ110へ出力する(書き込む)(ステップS23)。このとき、ステップS1にて入力されたパラメータが複数のケースのパラメータである場合、その複数のケースごとに最高階最長経路がデータベース100のBIMデータ110へ書き込まれる。
【0037】
算出部220は、入力されたパラメータとデータベース100に記憶されているBIMデータ110とに基づいて、揚程計算を行う(ステップS24)。算出部220は、揚程計算の結果をデータベース100の途中式データ120へ出力する(書き込む)(ステップS25)。続いて、算出部220は、入力されたパラメータと、ステップS22にて探索した経路と、ステップS24にて計算した揚程と、カタログデータ150のポンプの仕様とに基づいて、ポンプから出力される水の圧力(水圧)が必要な圧力(水圧)を満たしているか否かを判定する(ステップS26)。ポンプから出力される水の圧力(水圧)が必要な圧力(水圧)を満たしていない場合、算出部220は、ポンプの出力を1つアップさせ(ステップS27)、ステップS24の処理を行う。
【0038】
一方、ステップS26にて、ポンプから出力される水の圧力(水圧)が必要な圧力(水圧)を満たしている場合は、算出部220は、そのポンプおよび受水槽を用いた受水槽方式の受水槽配管ポンプの価格を、データベース100に記憶されているカタログデータ150と、歩掛データ160とに基づいて算出する(ステップS28)。このとき、ステップS1にて入力部210が入力した設定パラメータにその条件としてポンプの価格が含まれている場合、ポンプの価格がステップS1にて入力部210が入力した設定パラメータを満たすようなポンプを算出部220は選択する。また、算出部220は、カタログデータ150に基づいて、受水槽の容量を計算する(ステップS29)。このとき、ステップS1にて入力部210が入力した設定パラメータにその条件として受水槽の容量が含まれている場合、受水槽の容量がステップS1にて入力部210が入力した設定パラメータを満たすような受水槽を算出部220は選択する。また、算出部220は、カタログデータ150に基づいて、配管ポンプの容積を計算する(ステップS30)。このとき、ステップS1にて入力部210が入力した設定パラメータにその条件としてポンプの容積が含まれている場合、ポンプの容積がステップS1にて入力部210が入力した設定パラメータを満たすようなポンプを算出部220は選択する。また、算出部220は、ステップS1にて入力されたその他指定された優先項目を計算する(ステップS31)。このように、ポンプの必要な出力は配管によって算出されるが、価格やその他の性能については、入力部210が入力した設定パラメータに従って算出部220が選択する。そして、出力部230は、算出部220が計算した結果を、給水配管を示す配管情報として出力する(ステップS32)。例えば、出力部230は、算出部220が算出した結果を画面表示する。
【0039】
図10は、ステップS32にて
図5に示した出力部230が表示した画面の一例を示す図である。
図10に示した画面表示を行う出力部230は、
図5に示した入力部210を兼ねたタッチパネル機能を具備するディスプレイ(表示部)である。
図10に示すように、算出部220が算出した結果が複数表示される。出力部230が表示する、算出部220が算出した結果は、BIMデータの表示を選択するための表示ボタンと、受水槽の要否を入力するための表示と、専有容積、価格、騒音値およびその他の項目である。また、上述した処理で途中式データ120に書き込まれた途中式の表示を選択するためのボタン、算出部220が再計算を行うことを指示するためのボタンおよび、結果を出力するためのボタン(出力ボタン)が表示される。再計算を行うことを指示するためのボタンが選択されると、ステップS1の処理から再度行うことができ、入力部210が異なる設定パラメータを入力することで、出力部230が異なる結果を出力することができる。
図10に示した例は、配管方式として受水槽を用いた受水槽方式を採用した場合のものである。
【0040】
図11は、
図10に示した出力ボタンが選択された場合に出力部230が表示する画面の一例を示す図である。
図11に示すように、
図10に示した表示に加えて、選択された項目についても画面表示される。結果としては、算出部220が算出した複数のケースについて表示される。
【0041】
なお、
図10および
図11に示した出力データは、BIMデータ110にも出力される(書き込まれる)。また、出力データがBIMデータ110に書き込まれることで、書き込まれた出力データがその後の統計データとして使用されても良い。
【0042】
図1に示したデータベース100は、入力部210が入力した設定パラメータに対して算出部220が算出した給水配管について機械学習を行った学習済みの学習モデルを記憶するものであっても良い。その場合、算出部220は、入力部210が入力した設定パラメータを学習モデルに入力することで学習モデルから給水配管の情報を取得する。学習モデルは、学習フェーズをあらかじめ設けて構築するものであっても良いし、専門の企業等から入手したものであっても良い。
【0043】
このように、本発明においては、外部から入力された設定パラメータと、データベースにあらかじめ記憶された、BIMデータ、建築法令規則および給水配管に必要な部材の仕様および価格とが含まれる参照情報とに基づいて、建築物の給水配管を算出して給水配管を示す配管情報を出力する。そのため、各要望に応じた柔軟な給水配管を、人手による計算を行うことなく、容易に行うことができる。
【0044】
以上、各構成要素に各機能(処理)それぞれを分担させて説明したが、この割り当ては上述したものに限定しない。また、構成要素を所定の割り当てでいくつかの装置に搭載するものであっても良い。
【0045】
上述した各構成要素が行う処理は、目的に応じてそれぞれ作製された論理回路で行うようにしても良い。また、処理内容を手順として記述したコンピュータプログラム(以下、プログラムと称する)を、各構成要素を具備した情報処理装置200にて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを情報処理装置200に読み込ませ、実行するものであっても良い。情報処理装置200にて読取可能な記録媒体とは、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)、Blu-ray(登録商標) Disc、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの移設可能な記録媒体の他、情報処理装置200に内蔵されたROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリやHDD(Hard Disc Drive)等を指す。この記録媒体に記録されたプログラムは、情報処理装置200に設けられたCPUにて読み込まれ、CPUの制御によって、上述したものと同様の処理が行われる。ここで、CPUは、プログラムが記録された記録媒体から読み込まれたプログラムを実行するコンピュータとして動作するものである。
【符号の説明】
【0046】
100 データベース
110 BIMデータ
120 途中式データ
130 法令規則データ
140 特記仕様マニュアル
150 カタログデータ
160 歩掛データ
200 情報処理装置
210 入力部
220 算出部
230 出力部