(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/32 20060101AFI20241225BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20241225BHJP
F25B 47/02 20060101ALI20241225BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
B60H1/32 624F
B60H1/32 624H
B60H1/32 624E
B60H1/22 671
B60H1/22 651C
B60H1/22 651A
B60H1/32 624C
B60H1/32 624J
B60H1/22 611C
F25B47/02 570K
F25B47/02 570Z
F25B47/02 570D
F25B1/00 399Y
F25B47/02 570C
F25B47/02 520A
F25B47/02 570A
(21)【出願番号】P 2021050514
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2024-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】重田 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 竜
(72)【発明者】
【氏名】岡本 佳之
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-226418(JP,A)
【文献】特開2019-104349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
B60H 1/22
F25B 47/02
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機、前記冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器、及び、吸熱対象から吸熱する吸熱用熱交換器を含む冷媒回路と、前記冷媒回路を制御する制御装置と、を備えた車両用空調装置において、
前記制御装置は、
前記圧縮機で圧縮させた前記冷媒により前記室外熱交換器を除霜するホットガス除霜モードと、
前記吸熱対象において吸熱させると共に前記圧縮機で圧縮させた前記冷媒により前記室外熱交換器を除霜する吸熱除霜モードと、を含む複数の除霜モードを選択的に実行可能であり、
前記ホットガス除霜モードを優先的に選択するホットガス除霜優先条件が設定されている車両用空調装置。
【請求項2】
前記ホットガス除霜優先条件は外気温度によって設定され、
前記外気温度が前記ホットガス除霜優先条件を満たす場合に、前記ホットガス除霜モードが優先的に選択され、前記外気温度が前記ホットガス除霜優先条件を満たさない場合に、前記吸熱除霜モードが選択される請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記ホットガス除霜優先条件は、前記室外熱交換器の開口面積、及び、前記圧縮機の容量の少なくとも一方に基づいて定められた外気温度である請求項1又は請求項2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記ホットガス除霜モードの実行中に、前記冷媒の温度が閾値Trt1よりも低い状態が所定時間TP1継続した場合に、前記吸熱除霜モードに切り替えて実行する請求項1から請求項3のいずれか1項記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記ホットガス除霜モードの実行中に、前記冷媒の圧力が閾値Prt1よりも低い状態が所定時間TP1継続した場合に、前記吸熱除霜モードに切り替えて実行する請求項1から請求項3のいずれか1項記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記吸熱除霜モードは、前記吸熱用熱交換器が熱媒体回路を循環する熱媒体と前記冷媒との間で熱交換を行わせる冷媒-熱媒体熱交換器であるチラー除霜モードを含む請求項1から請求項5の何れか1項記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記チラー除霜モードの実行中に、前記熱媒体の温度が所定温度Twt1よりも低い場合には、前記熱媒体回路に設けられ前記熱媒体を加熱する補助熱源を動作させる請求項6記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記吸熱除霜モードは、前記吸熱用熱交換器が、車室内に供給される空気から前記冷媒に吸熱させる吸熱器である冷房サイクル除霜モードを含む請求項1から請求項7の何れか1項記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記冷房サイクル除霜モードの実行中に、前記車室内の温度が所定温度Tint1よりも低い場合には、前記車室内に流入する空気を加熱する補助熱源を動作させる請求項8記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記冷媒の温度が予め定めた閾値Trt2以上の状態、または、前記冷媒の圧力が予め定めた閾値Prt2以上の状態が所定時間TP2継続した場合に前記除霜モードの実行を終了させる請求項1から請求項9の何れか1項記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用される車両用空調装置であって、特に、室外熱交換器の除霜を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に適用される空気調和装置では、圧縮機、室内熱交換器(冷房時は蒸発器、暖房時は凝縮器)、室外熱交換器(冷房時は凝縮器、暖房時は蒸発器)、及び膨張弁が接続された冷媒回路を備え、室内熱交換器において冷媒と熱交換した空気を車室内に供給して車室内の空調を行っている。
【0003】
このような車両用空調装置では、暖房運転中に室外熱交換器が吸熱器として機能するため、外気温度が低い場合には、室外熱交換器の表面で凝縮水が凍結して着霜が生じる場合がある。着霜が生じると、熱伝達率が低下して吸熱不足となり車室内の暖房を十分に行うことができないことから、除霜運転を行う必要がある。
そこで、例えば、室外熱交換器に着霜が生じた場合に、圧縮機から吐出した冷媒を室内熱交換器に流した後に、室外熱交換器に循環させる強除霜運転モードと、室外熱交換器をバイパスさせる弱除霜運転モードとを切替えることで、状況に応じて適切な能力の除霜運転を行う車両用空調装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1の車両用空調装置では、強除霜運転モードによる除霜運転時において、外気温度が極端に低い場合には、配管における熱ロスや室外熱交換間の放熱量が大きく、除霜に必要な熱量が圧縮機による熱量だけでは足りず、十分かつムラなく除霜を行うことができないおそれがある。一方、弱除霜運転モードは、外気温が比較的高い(0℃よりも高い)ときの暖房中に室外熱交換器が着霜した場合に室外熱交換器の霜を溶かすために選択される運転モードであり、室外熱交換器に冷媒を循環させないため、室外熱交換器に対して積極的に除霜を行うものではなく、除霜にムラが生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車両の状況に応じて確実かつムラのない除霜を行うこと、などを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、冷媒を圧縮する圧縮機、前記冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器、及び、吸熱対象から吸熱する吸熱用熱交換器を含む冷媒回路と、前記冷媒回路を制御する制御装置と、を備えた車両用空調装置において、前記制御装置は、前記圧縮機で圧縮させた前記冷媒により前記室外熱交換器を除霜するホットガス除霜モードと、前記吸熱対象において吸熱させると共に前記圧縮機で圧縮させた前記冷媒により前記室外熱交換器を除霜する吸熱除霜モードと、を含む複数の除霜モードを選択的に実行可能であり、前記ホットガス除霜モードを優先的に選択するホットガス除霜優先条件が設定されている車両用空調装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の状況に応じて確実かつムラのない除霜を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の冷媒回路の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の制御装置としてのヒートポンプECUの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る車両用空調装置において、ホットガス除霜モードによって室外熱交換器の除霜を行う場合の冷媒の流れを示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る車両用空調装置において、チラー除霜モードによって室外熱交換器の除霜を行う場合の冷媒の流れを示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る車両用空調装置において、冷房サイクル除霜モードによって室外熱交換器の除霜を行う場合の冷媒の流れを示す図である。
【
図6】圧縮の容量と室外熱交換器の開口面積と外気温度(閾値)との関係を示す表である。
【
図7】外気温度と除霜指標Pとの関係を表すグラフを示す。
【
図8】本発明の実施形態に係る車両用空調装置において、除霜モードの選択・切替処理の流れを示し、吸熱除霜としてチラー除霜が選択される場合のフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態に係る車両用空調装置において、除霜モードの選択・切替処理の流れを示し、吸熱除霜として冷房サイクル除霜が選択される場合のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0011】
図1に、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1の概略構成を示す。車両用空調装置1は、例えば、エンジン(内燃機関)が搭載されていない電気自動車(EV)やエンジンと走行用の電動モータを供用する所謂ハイブリッド自動車などの車両に適用することができる。このような車両は、バッテリ(例えば、リチウム電池)が搭載され、外部電源からバッテリに充電された電力を、走行用のモータを含むモータユニットに供給することで駆動し、走行する。車両用空調装置1も、バッテリから供給される電力によって駆動する。
【0012】
本実施形態に係る車両用空調装置1は、冷媒回路Rを備え、冷媒回路Rを用いたヒートポンプ運転を行うことにより車室内の空調(暖房、冷房、除湿、及び除霜)を行う。また、冷媒回路Rに接続される熱媒体回路を用いてバッテリやモータ等の電装機器に対する冷却や暖機を行う。なお、以下の説明において、冷媒とは、ヒートポンプ(圧縮・凝縮・膨張・蒸発)における状態変化を伴う冷媒回路の循環媒体であり、熱媒体とは、このような状態変化を伴わずに熱の吸収と放熱を行う媒体である。
【0013】
冷媒回路Rは、冷媒を圧縮する電動式の圧縮機2と、車室内の空気が通気循環されるHVACユニット10の空気流通路3内に設けられ、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒を放熱させて車室内に供給する空気を加熱する室内熱交換器としての室内コンデンサ(放熱器)4と、暖房時に冷媒を減圧膨張させる室外膨張弁6と、冷房時には冷媒を放熱させる放熱器(凝縮器)として機能し、暖房時には冷媒を吸熱(冷媒に熱を吸収)させる蒸発器として機能すべく冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器7と、冷媒を減圧膨張させる室内膨張弁8と、空気流通路3内に設けられて冷房時及び除湿時に車室内外から冷媒に吸熱させて車室内に供給する空気を冷却する室内熱交換器としての吸熱器9(吸熱用熱交換器)と、アキュムレータ12等が冷媒配管13A~13Hにより接続されて構成されている。
【0014】
室外膨張弁6及び室内膨張弁8は、いずれも図示しないパルスモータにより駆動される電子膨張弁であり、パルスモータに加えられるパルス数によって全閉から全開までの間で開度が適宜制御される。室外膨張弁6は、室内コンデンサ4から流出し室外熱交換器7に流入する冷媒を減圧膨張させる。また、室外膨張弁6は、室外熱交換器7を用いた暖房運転時に、室内コンデンサ4の冷媒出口における過冷却の達成度合いの指標となるSC(サブクール)値が予め定めた目標値となるように、後述するヒートポンプECU11により開度が制御される(SC制御)。室内膨張弁8は、吸熱器9に流入する冷媒を減圧膨張させると共に、吸熱器9における冷媒の過熱度を調整する。
【0015】
室外熱交換器7には、室外送風機(図示せず)が設けられている。室外送風機は、室外熱交換器7に外気を強制的に通風することにより、外気と冷媒とを熱交換させ、停車中にも室外熱交換器7に外気が通風されるようになっている。
【0016】
室外熱交換器7には、冷媒下流側にレシーバドライヤ部14及び過冷却部16が設けられている。室外熱交換器7の冷媒出口側とレシーバドライヤ部14とは、冷媒配管13A及び冷媒配管13Aから分岐した冷媒配管13Bを介して接続されている。冷媒配管13Bには、吸熱器9に冷媒を流す際に開放される開閉弁としての電磁弁17(冷房用)が設けられている。
【0017】
過冷却部16の出口側と吸熱器9の冷媒入口側とは冷媒配管13Cを介して接続されている。冷媒配管13Cには、室外熱交換器7側から順に、逆止弁18、室内膨張弁8、及び、室内熱交換器用弁装置(開閉弁)としての電磁弁32が設けられている。逆止弁18は、吸熱器9に向かう方向が順方向となるように冷媒配管13Cに設けられる。
【0018】
また、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aには、暖房時に開放される開閉弁としての電磁弁21(暖房用)、アキュムレータ12、圧縮機2が順次接続されている。
冷媒配管13Aは、電磁弁21の出口側とアキュムレータ12の入口側との間で冷媒配管13Dに分岐し、冷媒配管13Dは吸熱器9の冷媒出口側に連通接続されている。
【0019】
圧縮機2の冷媒出口と室内コンデンサ4の冷媒入口とは、冷媒配管13Eにより接続されている。室内コンデンサ4の冷媒出口には冷媒配管13Fの一端が接続され、冷媒配管13Fの他端側は室外膨張弁6の手前(冷媒上流側)で冷媒配管13Gと冷媒配管13Hに分岐している。
【0020】
分岐した一方の冷媒配管13Hが室外膨張弁6を介して室外熱交換器7の冷媒入口側に接続されている。また、分岐した他方の冷媒配管13Gは、冷媒配管13Cの逆止弁18と室内膨張弁8との間に接続されている。冷媒配管13Gの冷媒配管13Cとの接続点より冷媒上流側には、電磁弁22が設けられている。
【0021】
これにより、冷媒配管13Gは室外膨張弁6、室外熱交換器7及び逆止弁18の直列回路に対して並列に接続され、室外膨張弁6、室外熱交換器7及び逆止弁18をバイパスする回路となる。
【0022】
吸熱器9の空気上流側における空気流通路3には、外気吸込口と内気吸込口の各吸込口が形成されている(
図1では吸込口25として代表して示す)。吸込口25には吸込切換ダンパ26が設けられている。吸込切換ダンパ26により、車室内の空気である内気(内気循環)と、車室外の空気である外気(外気導入)とを適宜切り換えて吸込口25から空気流通路3内に導入する。吸込切換ダンパ26の空気下流側には、導入した内気や外気を空気流通路3に送給するための室内送風機(ブロワファン)27が設けられている。
【0023】
図1において補助ヒータ23は、補助加熱装置として機能する。補助ヒータ23は、例えば、PTCヒータ(電気ヒータ)から構成されており、空気流通路3の空気の流れに対して、室内コンデンサ4の空気下流側となる空気流通路3内に設けられている。補助ヒータ23が通電されて発熱することにより車室内の暖房を補完する。
【0024】
室内コンデンサ4の空気上流側における空気流通路3内には、空気流通路3内に流入し、吸熱器9を通過した後の空気流通路3内の空気(内気や外気)を室内コンデンサ4及び補助ヒータ23に通風する割合を調整するエアミックスダンパ28が設けられている。
【0025】
なお、補助暖房手段として、例えば、圧縮機廃熱によって加熱した温水を空気流通路3に配置したヒータコアに循環させることにより、送風空気を加熱する形態とすることもできる。
【0026】
冷媒回路Rには、冷媒-熱媒体熱交換器64(吸熱用熱交換器)が接続されている。冷媒-熱媒体熱交換器64は、冷媒流路64Aと熱媒体流路64Bとを備え、冷媒回路Rの一部を構成すると同時に、例えば、機器温度調整回路(図示せず)等の熱媒体回路61の一部を構成する。
【0027】
具体的には、冷媒-熱媒体熱交換器64は冷媒回路Rに以下のように接続される。
冷媒回路Rにおいて、冷媒配管13Cに設けられた逆止弁18の下流側であって、室内膨張弁8の冷媒上流側には、分岐回路としての冷媒配管72の一端が接続されている。冷媒配管72にはチラー膨張弁73及び開閉弁としての電磁弁74が設けられている。
【0028】
チラー膨張弁73は、図示しないパルスモータにより駆動される電子膨張弁であり、パルスモータに加えられるパルス数によって全閉から全開までの間で開度が適宜制御される。チラー膨張弁73は、冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Aに流入する冷媒を減圧膨張させると共に、冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Aにおける冷媒の過熱度を調整する。
【0029】
冷媒-熱媒体熱交換器64において、冷媒流路64Aの入口には冷媒配管72の他端が接続され、冷媒流路64Aの出口には冷媒配管75の一端が接続されている。冷媒配管75の他端は冷媒配管13Dの吸熱器9より冷媒上流側に接続されている。このように、これらのチラー膨張弁73や電磁弁74、冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64A等も冷媒回路Rの一部を構成すると同時に、熱媒体回路61の一部を構成する。
【0030】
チラー膨張弁73が開いている場合、冷媒回路Rを循環して冷媒配管13Gや室外熱交換器7から流出した冷媒の一部又は全部が冷媒配管72に流入し、チラー膨張弁73で減圧された後、冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路に流入して蒸発する。熱媒体流路64Bには、熱媒体が流入する。例えば、熱媒体回路61が機器温度調整回路である場合には、例えばバッテリやモータユニット等の被温調対象を循環する熱媒体が熱媒体流路64Bに流入する。
【0031】
冷媒は、冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Aを流れる過程で熱媒体流路64Bを流れる熱媒体から吸熱する。これにより、例えば、熱媒体回路61が機器温度調整回路である場合に、バッテリやモータユニット等の被温調対象に循環する熱媒体と冷媒回路Rを循環する冷媒との間で熱交換を行い、バッテリやモータユニットの温度を調整する。熱媒体としては、例えば水、HFO-1234yfのような冷媒、クーラント等の液体、空気等の気体が採用可能である。
【0032】
図2に、車両用空調装置1の制御装置としてのヒートポンプECU11の概略構成を示す。ヒートポンプECU11は、走行を含む車両全般の制御を司る車両コントローラ35とCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等の車載ネットワークにより相互に通信可能に接続され、情報の送受信を行う。ヒートポンプECU11及び車両コントローラ35には何れもプロセッサを備えたコンピュータの一例としてのマイクロコンピュータを適用することができる。
【0033】
ヒートポンプECU11には、以下の各センサや検出器が接続され、これらの各センサや検出器等の出力が入力される。
具体的には、ヒートポンプECU11には、車両の外気温度Tamを検出する外気温度センサ33、吸込口25から空気流通路3に吸い込まれる空気の温度を検出するHVAC吸込温度センサ36、車室内の空気の温度(内気温度内気Tin)を検出する内気温度センサ37、吹出口29から車室内に吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ41、圧縮機2の吐出冷媒圧力(吐出圧力Pd)を検出する吐出圧力センサ42、圧縮機2の吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ43、圧縮機2の吸込冷媒温度Tsを検出する吸込温度センサ44、室内コンデンサ4の温度(室内コンデンサ4を経た冷媒の温度又は室内コンデンサ4自体の温度:室内コンデンサ温度TCI)を検出する室内コンデンサ温度センサ46、室内コンデンサ4の圧力(室内コンデンサ4を出た直後の冷媒圧力:室内コンデンサ出口圧力Pci)を検出する室内コンデンサ圧力センサ47と、吸熱器9の温度(吸熱器9を経た空気の温度、又は、吸熱器9自体の温度:吸熱器温度Te)を検出する吸熱器温度センサ48と、吸熱器9の冷媒圧力(吸熱器9内、又は、吸熱器9を出た直後の冷媒の圧力)を検出する吸熱器圧力センサ49と、設定温度や空調運転の切り換えを設定するための空調操作部53と、室外熱交換器7の温度(本実施形態においては室外熱交換器7から吐出直後の吐出冷媒温度TXO)を検出する室外熱交換器温度センサ54と、室外熱交換器7の冷媒圧力(本実施形態においては室外熱交換器7から吐出直後の吐出冷媒圧力PXO)を検出する室外熱交換器圧力センサ56と、が接続されている。
【0034】
上記のほか、ヒートポンプECU11には、冷媒-熱媒体熱交換器64の熱媒体流路を出て熱媒体回路を循環する熱媒体の温度Tw(以下、「チラー水温」という)を検出する熱媒体温度センサ79が接続されている。
【0035】
一方、ヒートポンプECU11の出力には、圧縮機2と、室外送風機(図示せず)と、室内送風機(ブロワファン)27と、吸込切換ダンパ26と、エアミックスダンパ28と、室外膨張弁6と、室内膨張弁8と、電磁弁17,21,22,35,74の各電磁弁と、補助ヒータ23、チラー膨張弁73、が接続されている。ヒートポンプECU11は各センサの出力と空調操作部53にて入力された設定、車両コントローラ35からの情報に基づいてこれらを制御する。
【0036】
このように構成された車両用空調装置1において、暖房運転を行うと、室外熱交換器7では冷媒が蒸発し、外気から吸熱して室外熱交換器7が低温となるため、室外熱交換器7の表面に外気中の水分が霜となって付着する。このため、室外熱交換器7に対して除霜を行う必要があり、この際、車両用空調装置1では、車両の状況に応じて複数の除霜運転モードを適宜選択または切替えて実行することにより室外熱交換器7の除霜を行う。
【0037】
具体的には、本実施形態における車両用空調装置1では、いわゆるホットガスによる除霜を行うホットガス除霜モードと、冷媒回路Rを循環する冷媒に対して、冷媒-熱媒体熱交換器64または吸熱器9において吸熱し室外熱交換器7において放熱を行う吸熱除霜モードとを適宜選択して実行する。
【0038】
ホットガス除霜モードは、除霜ムラが少なく、制御が容易であるが、冷媒の温度調節を圧縮機2のみに依存しているため除霜能力が小さく、外気温が極端に低温の場合には、確実に除霜できない場合がある。
【0039】
一方、吸熱除霜モードは、冷媒-熱媒体熱交換器64または吸熱器9によって冷媒への吸熱を行い、併せて圧縮機2によって圧縮することで冷媒を高温高圧にする。また、補助熱源を用いることができるため、除霜能力が高く、外気温が極端に低温でも用いることができる。
【0040】
このため、本実施形態に係る車両用空調装置1では、車両の状況(室外熱交換器のサイズ、圧縮機の容量、外気温等)に応じて予め設定した条件(詳細は後述)に基づいて、ホットガス除霜モードまたは吸熱除霜モードを選択したり、切替えたりすることにより、確実かつムラのない除霜を行うことができる。
【0041】
(ホットガス除霜モード)
図3に、ホットガス除霜モードによって室外熱交換器7の除霜を行う場合の冷媒回路Rにおける冷媒の流れを示す。
ヒートポンプECU11は、ホットガス除霜モードでは、冷媒回路Rを暖房運転の状態としたまま、室外膨張弁6の弁開度を全開とし、圧縮機2を運転し、圧縮機2から吐出した高温高圧の冷媒を室内コンデンサ4に流入させる。ここで、ホットガス除霜モードでは冷媒の熱を除霜に用いるため、冷媒は、室内コンデンサ4においてほとんど凝縮されずに通過するのみとなる。室内コンデンサ4を出た冷媒は冷媒配管13Fを経て冷媒配管13Hに至り、室外膨張弁6を経て室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した高温高圧の冷媒は、室外熱交換器7において放熱し着霜を融解する。室外熱交換器7では、冷媒の顕熱及び潜熱によって除霜が行われる。したがって、ホットガス除霜モードでは、室外熱交換器7をムラなく除霜することができる。なお、除霜中は、室外送風機を停止させ、グリルシャッターが設けられている場合には閉じる。
【0042】
(吸熱除霜モード)
吸熱除霜モードには、例えば、冷媒-熱媒体熱交換器64を吸熱器として機能させるチラー除霜モード及び吸熱器9を用いる冷房サイクル除霜がある。以下、チラー除霜モード及び冷房サイクル除霜モードについて説明する。
【0043】
(1)チラー除霜
図4に、チラー除霜モードによって室外熱交換器7の除霜を行う場合の冷媒回路Rにおける冷媒の流れを示す。
ヒートポンプECU11は、チラー除霜モードでは、電磁弁17を開放し、室外熱交換器7から流出した冷媒をレシーバドライヤ部14、過冷却部16及び逆止弁18を経て、冷媒配管72に流入させる。また、ヒートポンプECU11は、チラー膨張弁73及び電磁弁74を開放し、冷媒を冷媒-熱媒体熱交換器64の冷媒流路64Aに流入させる。冷媒は、冷媒流路64Aにおいて熱媒体回路61を循環した熱媒体から吸熱する。
【0044】
ヒートポンプECU11は、室内膨張弁8又は電磁弁32の少なくとも何れか一方を閉塞することで、吸熱後の冷媒を冷媒配管75を介して冷媒配管13D,13Aに流入させ、室外膨張弁6の弁開度を全開として圧縮機2を運転し、冷媒を圧縮機2に流入させる。そして、圧縮機2で圧縮されて吐出した高温高圧の冷媒を室内コンデンサ4、室外膨張弁6を経て室外熱交換器7に流入させる。室外熱交換器7に流入した高温高圧の冷媒は、室外熱交換器7において放熱し着霜を融解する。室外熱交換器7では、冷媒の潜熱によって除霜が行われる。なお、除霜中は、室外送風機を停止させ、グリルシャッターが設けられている場合には閉じる。
【0045】
チラー除霜モードでは、除霜の能力が圧縮機2の能力だけでなく、冷媒-熱媒体熱交換器64における冷媒の吸熱の程度にも依存する。ところで、例えば、熱媒体回路61に設けられる補助熱源としての水加熱ヒータ(ECH)を適宜作動させ、熱媒体回路61を循環する熱媒体の温度を上昇させることができる。したがって、水加熱ヒータを補助的に用いて冷媒-熱媒体熱交換器64における熱媒体から冷媒への吸熱量を補完することにより、チラー除霜モードにおける除霜能力を補うことができる。
【0046】
(2)冷房サイクル除霜
図5に、冷房サイクル除霜モードによって室外熱交換器7の除霜を行う場合の冷媒回路Rにおける冷媒の流れを示す。
ヒートポンプECU11は、冷房サイクル除霜モードでは、電磁弁17を開放し、室外熱交換器7から流出した冷媒をレシーバドライヤ部14、過冷却部16及び逆止弁18を経て、冷媒配管72に流入させる。また、ヒートポンプECU11は、室内膨張弁8及び電磁弁32を開放して冷媒を吸熱器9に流入させ、吸熱器9において蒸発・吸熱させる。このとき、室内送風機27を運転し、吹き出された空気が吸熱器9に通風されるように作動させる。ヒートポンプECU11は、吸熱器9において蒸発・吸熱した冷媒を、冷媒配管13D,13Aに流入させ、室外膨張弁6の弁開度を全開として圧縮機2を運転し、冷媒を圧縮機2に流入させる。そして、圧縮機2で圧縮されて吐出した高温高圧の冷媒を、室内コンデンサ4、室外膨張弁6を経て室外熱交換器7に流入させる。室外熱交換器7に流入した高温の冷媒は、室外熱交換器7において放熱し着霜を融解する。室外熱交換器7では、冷媒の潜熱によって除霜が行われる。なお、除霜中は、室外送風機を停止させ、グリルシャッターが設けられている場合には閉じる。
【0047】
冷房サイクル除霜モードでは、除霜の能力が圧縮機2の能力だけでなく、吸熱器9における冷媒の吸熱の程度にも依存する。したがって、補助熱源として空気加熱ヒータ(PTC)等の補助ヒータ23を適宜作動させ、車室内の暖房を補完することで吸熱器9における冷媒への吸熱量も補完することができ、冷房サイクル除霜モードにおける除霜の能力を補うことができる。
【0048】
(除霜モードの選択または切替の条件の設定について)
上述の通り、除霜モードの選択及び切替えは、予め設定した条件に基づいて行われる。本実施形態において、ヒートポンプECU11には、除霜を行っていない状態から除霜の必要が生じた場合に除霜を行う際の除霜モードを選択する条件や、ホットガス除霜モードから吸熱除霜モードへの切替条件の他、吸熱除霜モードにおいて補助熱源を動作させる動作条件、除霜を終了させる除霜終了条件などが予め設定されている。
【0049】
(1)ホットガス除霜モードまたは吸熱除霜モードの選択
上述の通り、ホットガス除霜モードは、制御が容易でムラのない除霜が可能なことから、ホットガス除霜モードによって除霜が可能な状況の場合には、できる限りホットガス除霜モードによる除霜を行うことが好ましい。しかしながら、外気温度が極低温である場合や、車両の状況によってホットガス除霜モードによる除霜が困難である場合には、ヒートポンプECU11が吸熱除霜モードを選択する。
そこで、車両用空調装置1では、ヒートポンプECU11において、除霜を行っていない状態から除霜の必要が生じた場合にホットガス除霜モードを優先的に選択する条件として、ホットガス除霜優先条件を設定している。
【0050】
ホットガス除霜優先条件は、例えば、外気温度によって、すなわち、外気温度に対する閾値として設定することができる。この場合、ヒートポンプECU11では、外気温度がホットガス除霜優先条件を満たす場合にホットガス除霜モードを優先的に選択し、外気温度がホットガス除霜優先条件を満たさない場合に吸熱除霜モードを選択する。
【0051】
図6に圧縮の容量と室外熱交換器の開口面積と外気温度(閾値)との関係を示す。また、
図7に、外気温度Tamと除霜指標Pとの関係を表すグラフを示す。ここで、除霜指標Pは、室外熱交換器の開口面積/圧縮機の容量、または、室外熱交換器の開口面積/圧縮機の最大発熱量(最大電力)を示す。
【0052】
図6に示すように、圧縮機の容量(容積)または圧縮機の最大発熱量(最大電力)が大きいほど除霜能力が高く、室外熱交換器の開口面積が小さいほど除霜が容易である。また、
図7における除霜指標Pは、値が大きくなるほど、圧縮機の発熱量に対して室外熱交換器の開口面積が大きいことを示すので、除霜に要する放熱量が多くなる。したがって、
図7に示すように、除霜指標Pが大きくなるほどホットガス除霜モードよりも吸熱除霜モードが適していると想定される外気温度Tamが高くなる。
【0053】
このように、圧縮機の容量と室外熱交換器の開口面積との関係から、例えば、
図6に示すようにホットガス除霜モードを優先的に選択するホットガス除霜優先条件として、外気温度に対する閾値Txを設定する。ヒートポンプECU11では、外気温度Tamが、閾値Txよりも高い場合にホットガス除霜モードを優先的に選択し、外気温度Tamが閾値Txよりも低い場合に吸熱除霜モードを選択する。なお、ヒートポンプECU11は、外気温度センサ33によって検出された外気温度Tamを取得して、ホットガス除霜優先条件として定められた閾値Txと比較する。
【0054】
このとき、閾値Txに対してヒステリシス(α1,α2)を設け、以下のようにホットガス除霜優先条件を定めることが好ましい。
すなわち、
外気温度Tam ≧ 閾値Tx+α1
である場合に、ホットガス除霜モードを選択し、
外気温度Tam ≦ 閾値Tx-α2
である場合に、吸熱除霜モードを選択する。
【0055】
(2)ホットガス除霜モードから吸熱除霜モードへの切替
また、ホットガス除霜モードによって除霜を行っている際に、車両の状況に応じて吸熱除霜モードに切り替える場合には、除霜モード切替条件として、例えば、冷媒の温度に対する閾値Trt1または冷媒の圧力に対する閾値Prt1を設定する。
ヒートポンプECU11は、ホットガス除霜モードによって除霜を開始しても、冷媒の温度または圧力が、予め設定した閾値(温度の閾値Trt1、圧力Prt1)より低い場合や、ほとんど変化がない等の状態が所定時間TP1継続した場合に、ホットガス除霜モードから吸熱除霜モードに切り替える。
【0056】
冷媒の温度は、例えば、圧縮機2の吸込冷媒温度Ts、圧縮機2の吐出冷媒温度Td、室外熱交換器7から吐出直後の吐出冷媒温度TXOなどを検出して用いる。冷媒の圧力は、例えば、圧縮機2の吸入冷媒圧力Ps、圧縮機2の吐出冷媒圧力Pd、室外熱交換器7から吐出直後の吐出冷媒圧力PXOなどを検出して用いる。
【0057】
(3)吸熱除霜モードによる除霜実行時の補助熱源の動作
また、ヒートポンプECU11には、吸熱除霜モードによる除霜実行時に、補助熱源を動作させるかを定める動作条件及び補助熱源の動作を停止させる動作停止条件が設定されている。
【0058】
チラー除霜モードにおいて、チラー水温(熱媒体の温度)Twが動作条件として設定された温度Twt1よりも低い場合に、補助熱源としての水加熱ヒータ(ECH)を動作させる。また、チラー水温Twが動作停止条件として設定された温度Twt2よりも高くなった場合には、水加熱ヒータの動作を停止させても良い。
【0059】
冷房サイクル除霜モードにおいて、車室内の温度Tinが動作条件として設定された温度Tin1よりも低い場合に、補助熱源としての補助ヒータ23を動作させる。また、車室内の温度Tinが動作停止条件として設定された温度Tin2よりも高くなった場合には補助ヒータ23の動作を停止させても良い。
【0060】
(4)除霜終了
本実施形態においては、また、除霜を終了させる際の除霜終了条件として、冷媒の温度に対する閾値Trt2または冷媒の圧力に対する閾値Prt2を設定する。ヒートポンプECU11では、冷媒の温度または圧力が、予め設定した閾値(温度の閾値Trt2、圧力Prt2)より高い状態が所定時間TP2が経過した場合に除霜モードの実行を終了させる。
【0061】
(除霜モード選択・切替処理)
以下、
図8及び
図9のフローチャートを参照して、本実施形態に係る車両用空調装置における除霜モード選択・切替処理について説明する。以下の説明では、(1)ホットガス除霜モードとチラー除霜モードとを適用する例(
図8)と、(2)ホットガス除霜モードと冷房サイクル除霜モードとを適用する例(
図9)の、2つの例について説明する。
【0062】
(1)ホットガス除霜モードとチラー除霜モードを用いる場合
ヒートポンプECU11は、自動的にまたは空調操作部53に対するマニュアル操作により除霜運転が選択されると、除霜要求ありとして(ステップS11)、外気温度センサ33によって検出された外気温度Tamを取得する。ヒートポンプECU11は、外気温度Tamと予め設定された外気温度に対する閾値Txとを比較する(ステップS12)。ステップS12において、ヒートポンプECU11は、外気温度Tamが閾値Tx以上の場合には、ホットガス除霜モードを選択する(ステップS13)。なお、外気温度Tamが閾値Tx未満の場合には吸熱除霜モードとしてチラー除霜モードを選択する(ステップS15)。
【0063】
ヒートポンプECU11は、ステップS13のホットガス除霜モードによって室外熱交換器7の除霜を開始してから、冷媒の温度(Ts、Td、TXOの何れか)を吸込温度センサ44、吐出温度センサ43、及び室外熱交換器温度センサ54の何れかから取得し、冷媒の温度が予め定めた温度の閾値Trt1より低い状態が所定時間継続した場合に(ステップS14のYES)、ホットガス除霜モードから吸熱除霜モードに切替える(ステップS15)。冷媒の温度が予め定めた温度の閾値Trt1より低い状態が所定時間継続しない場合には、除霜モードの切り替えをせずにステップS19に進む。なお、ステップS14において、ヒートポンプECU11は、冷媒の温度に代えて冷媒の圧力を監視してもよい。この場合には、ヒートポンプECU11は、吐出圧力センサ42や室外熱交換器圧力センサ56などから冷媒の圧力(Ps、Pd、PXOの何れか)を取得し、冷媒の圧力が予め定めた圧力の閾値Prt1よりも低い状態が所定時間継続した場合に(ステップS14のYES)、ホットガス除霜モードから吸熱除霜モードに切替える(ステップS15)。冷媒の圧力が予め定めた圧力の閾値Prt1よりも低い状態が所定時間継続しない場合には、除霜モードの切り替えをせずにステップS19に進む(ステップS14のNO)。
【0064】
ステップS12において外気温度Tamが閾値Tx未満の場合、及び、ステップS14において冷媒の温度が閾値Trt1よりも低い、または、冷媒の圧力が閾値Prt1よりも低いことにより吸熱除霜モードが選択された場合に、吸熱除霜モードとしてチラー除霜モードにより除霜を行う(ステップS15)。
【0065】
ヒートポンプECU11は、チラー除霜モードによる除霜中に、チラー水温Twが所定温度Twt1よりも高いかを監視する(ステップS16)。チラー水温Twが所定温度Twt1よりも高い場合には水加熱ヒータを動作させず(ステップS17)、チラー水温Twが所定温度Twt1よりも低い場合には水加熱ヒータを動作させて(ステップS18)チラー除霜モードを継続する。
なお、水加熱ヒータを動作させた後に、チラー水温Twが上昇して所定温度Twt2よりも高くなった場合には、水加熱ヒータの動作を停止させても良い。
【0066】
ヒートポンプECU11は、冷媒温度Trが予め定めた温度の閾値Trt2よりも高い状態、または、冷媒圧力が予め定めた圧力の閾値Prt2よりも高い状態が所定時間TP2継続するまで除霜を継続する(ステップS19、ステップS20)。ヒートポンプECU11は、冷媒温度Trが予め定めた温度の閾値Trt2よりも高い状態、または、冷媒圧力が予め定めた圧力の閾値Prt2よりも高い状態が所定時間継続した場合に、除霜を終了する(ステップS21)。
【0067】
(2)ホットガス除霜モードと冷房サイクル除霜モードを用いる場合
ヒートポンプECU11は、自動的にまたは空調操作部53に対するマニュアル操作により除霜運転が選択されると、除霜要求ありとして(ステップS31)、外気温度センサ33によって検出された外気温度Tamを取得する。ヒートポンプECU11は、外気温度Tamと予め設定された外気温度に対する閾値Txとを比較する(ステップS32)。ステップS32において、ヒートポンプECU11は、外気温度Tamが閾値Tx以上の場合には、ホットガス除霜モードを選択する(ステップS33)。なお、外気温度Tamが閾値Tx未満の場合には吸熱除霜モードとして冷房サイクル除霜モードを選択する(ステップS35)。
【0068】
ヒートポンプECU11は、ステップS33のホットガス除霜モードによって室外熱交換器7の除霜を開始してから、冷媒の温度(Ts、Td、TXOの何れか)を吸込温度センサ44、吐出温度センサ43、及び室外熱交換器温度センサ54の何れかから取得し、冷媒の温度が予め定めた温度の閾値Trt1より低い状態が所定時間継続した場合に(ステップS34のYES)、ホットガス除霜モードから吸熱除霜モードに切替える(ステップS35)。冷媒の温度が予め定めた温度の閾値Trt1より低い状態が所定時間継続しない場合には、除霜モードを切り替えずにステップS39に進む(ステップS34のNO)。なお、ヒートポンプECU11は、ステップS34では、冷媒の温度に代えて、冷媒の圧力を監視してもよい。この場合、ヒートポンプECU11は、吐出圧力センサ42や室外熱交換器圧力センサ56などから冷媒の圧力(Ps、Pd、PXOの何れか)を取得し、冷媒の圧力が予め定めた圧力の閾値Prt1よりも低い状態が所定時間継続した場合に(ステップS34のYES)、ホットガス除霜モードから吸熱除霜モードに切替える(ステップS35)。冷媒の圧力が予め定めた圧力の閾値Prt1よりも低い状態が所定時間継続しない場合には、除霜モードを切り替えずにステップS39に進む(ステップS34のNO)。
【0069】
ステップS32において外気温度Tamが閾値Tx未満の場合、及び、ステップS34において冷媒の温度が閾値Trt1よりも低い、または、冷媒の圧力が閾値Prt1よりも低いことにより吸熱除霜モードが選択された場合に、吸熱除霜モードとして冷房サイクル除霜モードにより除霜を行う(ステップS35)。
【0070】
ヒートポンプECU11は、冷房サイクル除霜モードによる除霜中に、車室内温度Tinが所定温度Tint1よりも高いかを監視する(ステップS36)。車室内温度Tinが所定温度Tint1よりも高い場合には補助ヒータ23を動作させず(ステップS37)、車室内温度Tinが所定温度Tint1よりも低い場合には補助ヒータ23を動作させて(ステップS38)冷房サイクル除霜モードを継続する。
なお、補助ヒータ23を動作させた後に、車室内温度Tinが上昇して所定温度Tint2よりも高くなった場合には、補助ヒータ23の動作を停止させても良い。
【0071】
ヒートポンプECU11は、冷媒温度Trが予め定めた温度の閾値Trt2よりも高い状態、または、冷媒圧力が予め定めた圧力の閾値Prt2よりも高い状態が所定時間継続するまで除霜を継続する(ステップS39、ステップS40)。ヒートポンプECU11は、冷媒温度Trが予め定めた温度の閾値Trt2よりも高い状態、または、冷媒圧力が予め定めた圧力の閾値Prt2よりも高い状態が所定時間継続した場合に、除霜を終了する(ステップS41)。
【0072】
以上説明してきたように、本実施形態に係る車両用空調装置1によれば、ヒートポンプECU11は、ホットガス除霜モードと吸熱除霜モード(チラー除霜モードまたは冷房サイクル除霜モード)を含む複数の除霜モードを実行可能である。そして、予め定められたホットガス除霜優先条件に従って、簡易な制御でムラのない除霜を実現できるホットガス除霜モードを優先的に実行しながら、ホットガス除霜モードで除霜が困難な場合に吸熱除霜モードを実行する。これにより、状況によらず確実かつムラのない除霜を行うことができる。
【0073】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1:車両用空調装置,2:圧縮機,3:空気流通路,4:室内コンデンサ、6:室外膨張弁,7:室外熱交換器,8:室内膨張弁,9:吸熱器,11:ヒートポンプECU(制御装置),64:冷媒-熱媒体熱交換器,73:チラー膨張弁