(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】食品冷凍装置
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20241225BHJP
F25D 13/00 20060101ALI20241225BHJP
F25D 25/02 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
F25D11/00 101B
F25D13/00 A
F25D25/02 L
(21)【出願番号】P 2021056956
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187908
【氏名又は名称】山本 康平
(72)【発明者】
【氏名】石田 雅昭
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-060186(JP,A)
【文献】特開2012-013382(JP,A)
【文献】特開2003-214751(JP,A)
【文献】特開平03-225173(JP,A)
【文献】特開2019-049399(JP,A)
【文献】特開2019-049398(JP,A)
【文献】実開平04-113874(JP,U)
【文献】特開2016-211817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00
F25D 13/00
F25D 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収容する食品庫と、
前記食品庫内を冷却するための冷却器と、
前記食品庫内の空気の温度又は前記食品の温度を検知する温度検知部と、
前記食品庫内に空気の循環流を形成するための庫内ファンと、
前記食品に向かって送風するための食品冷却用ファンと、
前記冷却器
、前記庫内ファン及び前記食品冷却用ファンを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記温度検知部による検知温度が設定温度に到達した後に前記検知温度が前記設定温度に維持されるように前記冷却器を制御する待機モードから、前記待機モードよりも冷却能力が高くなるように前記冷却器を制御する急速冷凍モードに切り替え
、
前記制御部は、前記待機モードにおいて、前記庫内ファンを駆動させる一方で前記食品冷却用ファンを停止させ、前記急速冷凍モードにおいて、前記食品冷却用ファンを駆動させる、食品冷凍装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記急速冷凍モードにおいて、前記庫内ファンを前記待機モードにおける回転周波数よりも高めて駆動させる、請求項1に記載の食品冷凍装置。
【請求項3】
前記食品庫内は、仕切り板により空調空間と食品収容空間に仕切られ、
前記庫内ファンは、前記空調空間内の空気を前記食品収容空間に吹き出すよう前記空調空間に設けられ、
前記食品冷却用ファンは、前記食品収容空間に複数設けられている、請求項1又は2に記載の食品冷凍装置。
【請求項4】
前記設定温度は、冷蔵の温度帯において設定されている、請求項1
~3のいずれか1項に記載の食品冷凍装置。
【請求項5】
金属からなり、前記食品が載置される食品プレートをさらに備えた、請求項1
~4のいずれか1項に記載の食品冷凍装置。
【請求項6】
前記食品プレートは、
前記食品が載置される載置面を有するプレート本体と、
前記プレート本体のうち前記載置面と反対側の面に設けられたフィンと、を含む、請求項
5に記載の食品冷凍装置。
【請求項7】
前記制御部は、信号入力に基づいて、前記急速冷凍モードから復温モードに切り替え、
前記復温モードでは、前記食品庫内の空気の温度が前記設定温度まで上がるように、前記冷却器が前記制御部により制御される、請求項1~6のいずれか1項に記載の食品冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、食品の冷凍等に用いられる食品冷却庫が知られている。
【0003】
特許文献1に記載された食品冷却庫は、ブラストチラーであり、冷却ユニットに接続された冷却器と、当該冷却器で熱交換した冷気を庫内に循環させるための冷却器用送風機と、庫内温度を検出する庫内センサと、食品の芯温を検出する芯温センサとを備えている。この冷却庫では、芯温センサの検出温度に基づいて、冷却器用送風機の回転周波数が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のエアーブラスト方式では、強い勢いで食品に冷風を当てることにより、食品温度を急速に下げることができる。しかし、食品に対する冷風の当たり方にムラが生じるため、食品の凍結速度にもムラが生じる。したがって、従来の食品冷凍装置では、食品の冷凍ムラを抑制するのが困難という課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、食品の冷凍ムラを抑制することが可能な食品冷凍装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る食品冷凍装置は、食品を収容する食品庫と、前記食品庫内を冷却するための冷却器と、前記食品庫内の空気の温度又は前記食品の温度を検知する温度検知部と、前記食品庫内に空気の循環流を形成するための庫内ファンと、前記食品に向かって送風するための食品冷却用ファンと、前記冷却器、前記庫内ファン及び前記食品冷却用ファンを制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記温度検知部による検知温度が設定温度に到達した後に前記検知温度が前記設定温度に維持されるように前記冷却器を制御する待機モードから、前記待機モードよりも冷却能力が高くなるように前記冷却器を制御する急速冷凍モードに切り替える。前記制御部は、前記待機モードにおいて、前記庫内ファンを駆動させる一方で前記食品冷却用ファンを停止させ、前記急速冷凍モードにおいて、前記食品冷却用ファンを駆動させる。
【0008】
この食品冷凍装置によれば、待機モードにおいて食品庫内の空気温度を設定温度に到達させた後当該設定温度に維持する間に食品温度を当該設定温度に接近させ、又は待機モードにおいて食品温度を設定温度に到達させた後当該設定温度に維持することにより、食品の温度ムラを小さくすることができる。したがって、食品の温度ムラが小さくなった状態で待機モードから急速冷凍モードに切り替えることができるため、食品の冷凍ムラを抑制することができる。また、庫内ファンと食品冷却用ファンとを併用することにより、食品を効率的に冷却することが可能になる。また、急速冷凍モードにおいて、食品冷却用ファンを駆動させることにより、急速冷凍モード中の食品の冷却速度を上げることができる。
前記制御部は、前記急速冷凍モードにおいて、前記庫内ファンを前記待機モードにおける回転周波数よりも高めて駆動させてもよい。
前記食品庫内は、仕切り板により空調空間と食品収容空間に仕切られ、前記庫内ファンは、前記空調空間内の空気を前記食品収容空間に吹き出すよう前記空調空間に設けられ、前記食品冷却用ファンは、前記食品収容空間に複数設けられていてもよい。
【0009】
上記食品冷凍装置において、前記設定温度は、冷蔵の温度帯において設定されていてもよい。
【0010】
この構成によれば、待機モードから急速冷凍モードに切り替えて食品を冷凍する際に、食品温度が設定温度から氷結点に到達するまでの時間を短くすることができる。このため、食品温度が氷結点に到達するまでの間に食品の温度ムラが大きくなるのを抑制することができる。
【0011】
上記食品冷凍装置は、金属からなり、前記食品が載置される食品プレートをさらに備えていてもよい。
【0012】
この構成によれば、食品庫内を循環する冷風だけでなく金属製のプレートをさらに用いることにより、食品をより効率的に冷却して冷凍速度を上げることができる。
【0013】
上記食品冷凍装置において、前記食品プレートは、前記食品が載置される載置面を有するプレート本体と、前記プレート本体のうち前記載置面と反対側の面に設けられたフィンと、を含んでいてもよい。
【0014】
この構成によれば、フィンによって食品プレートの伝熱面積をより広げることができるため、食品をさらに効率的に冷却することが可能になる。
【0019】
上記食品冷凍装置において、前記制御部は、信号入力に基づいて、前記急速冷凍モードから復温モードに切り替えてもよい。前記復温モードでは、前記食品庫内の空気の温度が前記設定温度まで上がるように、前記冷却器が前記制御部により制御されてもよい。
【0020】
この構成によれば、次の食品の冷凍処理に備えて食品庫内を簡単且つ速やかに復温させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、食品の冷凍ムラを抑制することが可能な食品冷凍装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態1に係る食品冷凍装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1における食品プレートの構成を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る食品冷凍装置により実行される待機モード及び急速冷凍モードを説明するためのグラフである。
【
図4】本発明の実施形態1に係る食品冷凍装置により実行される待機モード及び急速冷凍モードを説明するためのフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態2に係る食品冷凍装置における庫内温度制御を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態3に係る食品冷凍装置における庫内温度制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
【0024】
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係る食品冷凍装置1の構成を、
図1及び
図2に基づいて説明する。本実施形態に係る食品冷凍装置1は、食品F1を急速冷凍するための装置である。食品F1の種類は特に限定されないが、例えばカレーやシチュー等の加熱調理直後の温かいものである。
図1に示すように、食品冷凍装置1は、食品庫10と、食品収容ラック20と、冷却器30と、加熱器31と、加湿器32と、庫内ファン40と、複数台の食品冷却用ファン41と、庫内温度検知部T1と、食品温度検知部T2と、制御部50とを主に備えている。
【0025】
食品庫10は、食品F1を収容するものであり、庫本体11と、扉12とを含む。
図1に示すように、庫本体11内の空間は、上下に延びる仕切り板13により、食品収容空間11Aと空調空間11Bとに仕切られている。食品収容空間11Aの開口部は、扉12により開閉可能となっている。
【0026】
食品収容ラック20は、食品収容空間11Aに配置されている。食品収容ラック20は、上下に間隔を空けて配置された複数枚の棚板21を含む。この棚板21の上に食品F1が載せられる。
【0027】
冷却器30は、食品庫10内を冷却するためのものである。具体的に、冷却器30は、蒸気圧縮冷凍サイクルを含む冷凍機における蒸発器であり、空調空間11Bに配置されている。冷却器30は、食品庫10内を循環する空気を、冷媒との熱交換を介して冷却する。
【0028】
加熱器31は、食品庫10内を循環する空気を加熱するためのヒータである。本実施形態では、
図1に示すように、加熱器31が空調空間11Bにおいて冷却器30よりも下流側に配置されている。なお、本明細書における上下流は、食品庫10内における空気の循環方向を基準とする。
【0029】
加湿器32は、食品庫10内を循環する空気を加湿するためのものであり、空調空間11Bにおいて冷却器30よりも上流側(庫本体11の底面上)に配置されている。本実施形態における加湿器32は、パン皿式のものであり、加湿用水が溜まった蒸発皿及び当該蒸発皿内に配置された加湿ヒータ(図示しない)を含む。加湿器32を設けることにより、冷凍処理する際の食品F1の乾燥を抑制することができる。しかし、加湿器32は、本発明の食品冷凍装置における必須の構成要素ではなく、省略されてもよい。
【0030】
庫内ファン40は、食品庫10内に空気の循環流を形成するためのものであり、モータ40Aにより駆動する。庫内ファン40を駆動させることにより、食品収容空間11Aを下向きに流れると共に空調空間11Bを上向きに流れる空気の循環流が食品庫10内に形成される。
図1に示すように、庫本体11の底面と仕切り板13の下端との間には、食品収容空間11Aから空調空間11Bへ空気を吸い込むための吸込口が形成されている。また庫本体11の上面と仕切り板13の上端との間には、空調空間11Bから食品収容空間11Aへ空気を吹き出すための吹出口が形成されている。庫内ファン40は、当該吹出口に臨む位置に配置されている。
【0031】
食品冷却用ファン41は、食品F1に向かって送風するためのものである。
図1に示すように、食品冷却用ファン41は、複数の棚板21のそれぞれに1台ずつ配置されている。食品冷却用ファン41は、棚板21の後端(扉12と反対側の端)側に配置されており、扉12の内面に向かって送風する。
【0032】
庫内温度検知部T1は、食品庫10内の空気の温度を検知するセンサである。本実施形態では、
図1に示すように、庫内温度検知部T1が食品収容空間11Aにおける吹出口の近傍に配置されている。庫内温度検知部T1の検知信号は、制御部50に送信される。なお、庫内温度検知部T1の位置はこれに限定されず、食品収容空間11Aにおける吸込口の近傍に配置されていてもよいし、吹出口及び吸込口の近傍にそれぞれ配置されていてもよい。また図示は省略するが、食品庫10内には湿度検知部も配置されている。
【0033】
食品温度検知部T2は、食品F1の温度を直接検知するセンサである。食品温度検知部T2の検知信号は、制御部50に送信される。なお、
図1では食品温度検知部T2が1つのみ示されているが、複数の食品温度検知部T2が設けられていてもよい。この場合、複数の食品温度検知部T2によって食品F1における複数の部分や複数の食品F1の温度をそれぞれ検知し、それらの温度差に基づいて食品F1全体や複数の食品F1の温度の均一性を確認することができる。
【0034】
食品冷凍装置1は、食品プレート60をさらに備えている(
図2)。食品プレート60は、食品F1が載置されるものであり、例えばアルミニウムやステンレス等の金属からなる。食品プレート60は棚板21(
図1)上に置いて使用されるものであり、当該棚板21には食品プレート60を支持するための支持部(図示しない)が設けられている。
【0035】
図2に示すように、食品プレート60は、プレート本体61と、複数の熱交換フィン62とを含む。プレート本体61は、例えば平面視矩形状の板であり、食品F1が載置される上面61A(載置面)と、当該上面61Aと反対側を向く下面61Bとを有する。熱交換フィン62は、プレート本体61の幅(
図2中の紙面左右方向の長さ)よりも小さい幅(
図2中の紙面上下方向の長さ)を有する平面視矩形状の板であり、プレート本体61の下面61Bに設けられている。より具体的には、
図2に示すように、熱交換フィン62は、プレート本体61に対して垂直に取り付けられており、熱交換フィン62の長手方向は、プレート本体61の長手方向に対して平行である。複数の熱交換フィン62は、プレート本体61の短手方向において互いに間隔を空けて配置されており、互いに平行である。なお、熱交換フィンは、平行型フィンに限定されず、例えばピン型フィンやオフセット型フィンでもよい。
【0036】
食品プレート60は、プレート本体61及び熱交換フィン62の長手方向が食品冷却用ファン41(
図1)による送風方向と一致するように棚板21上に配置される。このため、食品冷却用ファン41から吹き出された空気は、隣接する熱交換フィン62(
図2)の間の隙間を当該熱交換フィン62の長手方向に沿って流れる。
【0037】
制御部50は、食品冷凍装置1の各種動作を制御するコンピュータであり、食品庫10の外に配置された制御盤からなる。具体的には、制御部50は、冷却器30の冷却能力を制御し、加熱器31の加熱能力を制御し、加湿器32による加湿量を制御し、庫内ファン40及び食品冷却用ファン41の駆動(オン/オフ及び回転周波数)を制御する。
【0038】
制御部50は、庫内温度検知部T1による検知温度が食品F1の氷結点よりも高い第1設定温度(設定温度)に到達した後に当該検知温度が第1設定温度に維持されるように冷却器30を制御する待機モードから、当該待機モードよりも冷却能力が高くなるように冷却器30を制御する急速冷凍モードに切り替える。以下、この制御について、
図3及び
図4に基づいて説明する。
図3は、食品庫10内の空気温度の時間変化(実線)及び食品温度の時間変化(破線)をそれぞれ示すグラフであり、横軸が時間を示し、縦軸が温度を示している。
図4は、上記制御の内容を示すフローチャートである。
【0039】
冷凍処理の開始前は食品庫10内が常温であり、この状態で食品F1が食品庫10内にセットされる(
図4のステップS10)。具体的には、扉12が開かれ、食品F1が載せられた食品プレート60(
図2)が棚板21(
図1)上の定位置に配置され、その後扉12が閉じられる。これにより、食品F1が食品収容空間11Aに収容される。
【0040】
次に、食品庫10内の冷却が開始される(ステップS20)。このステップS20では、食品庫10内の空気温度(庫内温度検知部T1の検知温度)が常温から第1設定温度に近づくように、冷却器30の冷却能力が制御部50によって制御される。具体的には、庫内温度検知部T1の検知温度と第1設定温度との差に基づいて、冷凍機が制御部50によりフィードバック制御される。この間、食品F1の表面温度も食品温度検知部T2により検知される。ステップS20では、庫内ファン40が制御部50によって駆動される一方、食品冷却用ファン41は停止している。また食品F1の乾燥を防ぐため、ステップS20中に加湿器32を作動させてもよい。
【0041】
ここで、「第1設定温度」は、食品F1の氷結点よりも高い温度であり、制御部50に入力されている。また「氷結点」は、食品F1の凍結が開始する温度であり、食品F1の種類によって異なる。例えば、魚介類の氷結点は-1.3℃であり、牛肉の氷結点は-1.7℃であり、トマトの氷結点は-1℃であり、リンゴの氷結点は-2℃であり、サクランボの氷結点は-4℃である。本実施形態では、第1設定温度は、冷蔵の温度帯において設定されており、5℃以下(例えば3℃)に設定されている。
【0042】
図3のグラフ中の斜線領域は「最大氷結晶温度帯」と呼ばれる領域であり、食品F1の冷凍プロセス中に氷が生成する温度帯である。最大氷結晶温度帯は、例えば-1℃~-5℃の範囲であり、その上限値が食品F1の氷結点に相当する。
【0043】
食品庫10内の空気温度が第1設定温度に到達すると(
図4のステップS30のYES)、当該空気温度が第1設定温度に維持されるように制御部50が冷却器30を制御する(ステップS40)。
図3に示すように、食品庫10内の空気温度が第1設定温度に到達した時点t1では食品温度は第1設定温度に未到達であり、その後の時点t2において食品温度が庫内温度に遅れて第1設定温度に到達する。食品庫10内の冷却開始から食品温度が第1設定温度に到達するまでの間が待機モードに相当する(
図3中の時点t0~t2)。
【0044】
食品温度が第1設定温度に到達すると(
図4のステップS50のYES)、制御部50が食品冷凍装置1の運転モードを待機モードから急速冷凍モードに切り替える。急速冷凍モードでは、第2設定温度と庫内温度検知部T1の検知温度との差に基づいて冷凍機がフィードバック制御されると共に(ステップS60)、制御部50が食品冷却用ファン41を駆動させる(ステップS70)。第2設定温度は、第1設定温度及び最大氷結晶温度帯の下限温度よりも低い温度であり、食品F1の種類によって異なる。また本実施形態では、急速冷凍モードにおける庫内ファン40の回転周波数は、待機モードにおける庫内ファン40の回転周波数よりも高い。
【0045】
ステップS60では、待機モード中のステップS20に比べてより低い設定温度が用いられるため、冷却器30の冷却能力が増加する。このため、
図3に示すように、食品庫10内の空気温度及び食品温度は、いずれも待機モード中に比べて急勾配で低下する。
【0046】
これにより、最大氷結晶温度帯における冷却速度を上げることができる。最大氷結晶温度帯における冷却速度が遅い場合、冷凍プロセス中に形成される氷の結晶が大きくなり、その結果食品F1の細胞が壊れて解凍時に味を損なうことがある。これに対し、最大氷結晶温度帯における冷却速度を上げることにより、上述のような問題の発生を防ぐことができる。ステップS60では、食品庫10内を循環する冷気及び食品プレート60(
図2)により食品F1が冷却され、食品F1が急速冷凍される。
【0047】
食品庫10内の空気温度が第2設定温度に到達すると(
図4のステップS80のYES)、当該空気温度が第2設定温度に維持されるように制御部50が冷却器30を制御する(ステップS90)。その後、冷凍処理された食品F1が食品庫10の外へ取り出され(ステップS100)、冷凍庫等にて保存される。
【0048】
以上の通り、本実施形態に係る食品冷凍装置1によれば、待機モードにおいて食品庫10内の空気温度を第1設定温度に到達させた後当該第1設定温度に維持する間に、食品温度を第1設定温度に接近させ、氷結点の近傍温度において食品F1の温度ムラを小さくすることができる。したがって、氷結点の近傍温度において食品F1の温度ムラが小さくなった状態で待機モードから急速冷凍モードに切り替えることができ、最大氷結晶温度帯における冷却ムラを抑制して急速冷凍することができるため、食品F1の冷凍ムラを抑制することができる。なお、「食品F1の温度ムラ」とは、同一の食品F1内における温度ムラ(例えば、食品F1の表面温度と食品F1の内部温度との差による温度ムラ)と、複数の食品F1間の温度ムラとが含まれる。
【0049】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る食品冷凍装置について、
図5に基づいて説明する。実施形態2に係る食品冷凍装置は、基本的に実施形態1と同様の構成を備え且つ同様の効果を奏するものであるが、食品温度検知部T2を備えていない点で異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0050】
図5は、実施形態2における食品F1の冷凍プロセスの制御フローを示している。
図5の制御フローは、ステップS51についてのみ
図4の制御フローと異なっている。すなわち、
図5中のステップS11~S41及びS61~S101は、
図4中のステップS10~S40及びS60~S100と同じである。
【0051】
実施形態2では、食品庫10内の空気温度が第1設定温度に到達した後(
図5のステップS31のYES)、所定の設定時間だけ当該空気温度が第1設定温度に維持される。この設定時間は、食品庫10内の空気温度が第1設定温度に到達した後食品温度が第1設定温度に到達するまでの時間として予備実験等で予め確認された時間であり、制御部50に入力されている。
【0052】
ステップS51では、制御部50に内蔵されたタイマーにより食品庫10内の空気温度が第1設定温度に到達した時点からの経過時間がカウントされ、当該経過時間が設定時間に到達したか否かが判定される。当該設定時間が経過した後(ステップS51のYES)、実施形態1と同様に、制御部50が食品冷凍装置の運転モードを待機モードから急速冷凍モードに切り替える。
【0053】
本実施形態によれば、食品温度検知部T2が省略された装置構成でも、待機モードにて食品F1の温度を安定させた後急速冷凍モードに切り替えることができる。このため、食品冷凍装置の構成をより簡易化することができる。
【0054】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係る食品冷凍装置について、
図6に基づいて説明する。実施形態3に係る食品冷凍装置は、基本的に実施形態1と同様の構成を備え且つ同様の効果を奏するものであるが、制御部50が復温モードをさらに実行する点で異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0055】
図6は、実施形態3における食品F1の冷凍プロセスの制御フローを示している。
図6の制御フローは、ステップS110,S120をさらに含む点が
図4の制御フローと異なっている。すなわち、
図6中のステップS12~S102は、
図4中のステップS10~S100と同じである。
【0056】
ステップS102において冷凍処理後の食品F1が食品庫10から取り出された後、制御部50に復温信号が入力されると(ステップS110のYES)、制御部50は当該信号入力に基づいて食品冷凍装置の運転モードを急速冷凍モードから復温モードに切り替える(ステップS120)。例えば、タッチパネル等の入力部(図示しない)に入力された復温信号を制御部50が受け付けてもよいし、ステップS102において扉12を開いた後閉じたことを検知することによって復温信号が制御部50に入力されてもよい。復温モードでは、食品庫10内の空気の温度が第1設定温度まで上がるように、冷却器30の冷却能力が制御部50により制御される。このとき、制御部50が加熱器31を作動させてもよい。
【0057】
このようにして食品庫10内が復温された後、次の食品F1が食品庫10内に収容され、再び冷凍処理が行われる。本実施形態に係る食品冷凍装置によれば、食品F1の冷凍処理を連続して行う際に、食品庫10内を簡単に復温させることができる。
【0058】
(実施形態4)
次に、本発明の実施形態4に係る食品冷凍装置について説明する。実施形態4に係る食品冷凍装置は、基本的に実施形態1,3と同様であるが、冷却器30の制御において庫内温度検知部T1の代わりに食品温度検知部T2が用いられる点で異なっている。
【0059】
本実施形態では、制御部50は、待機モードにおいて、食品温度検知部T2による検知温度が第1設定温度に到達した後に当該検知温度が第1設定温度に維持されるように冷却器30を制御する。すなわち、
図4の制御フローにおいて、ステップS30~S50の代わりに、食品温度が第1設定温度に到達したか否かを判定し、続いて食品温度を第1設定温度に所定時間維持し、その後急速冷凍モードに切り替わる。なお、この場合には、食品庫10内の空気温度がマイナス温度になる可能性がある。このため、制御部50は、待機モードにおいて、食品温度検知部T2による検知温度に基づき冷却器30を制御するとともに、食品庫10内の空気温度が氷結点よりも高くなるように冷却器30を制御する。
【0060】
また本実施形態では、制御部50は、急速冷凍モードにおいて、食品温度検知部T2による検知温度が第2設定温度に維持されるように冷却器30を制御してもよい。すなわち、
図4の制御フローのステップS80において食品温度が第2設定温度に到達したか否かを判定し、ステップS90において食品温度を第2設定温度に維持してもよい。
【0061】
(その他実施形態)
ここで、本発明のその他実施形態について説明する。
【0062】
食品冷却用ファン41は省略されてもよい。この場合、機器の故障トラブルを減らすことができる。
【0063】
食品プレート60において、熱交換フィンが柱状であってもよい。また食品プレート60内にヒートパイプ(図示しない)が設けられ、食品F1の冷却能力の向上が図られていてもよい。また食品プレート60が省略され、食品F1が棚板21上に直接載せられてもよい。
【0064】
食品温度検知部T2は、食品F1の表面温度を検知するものでもよいし、食品F1の中心温度(芯温)を検知するものでもよい。
【0065】
待機モード中に食品冷却用ファン41を駆動させてもよい。また急速冷凍モード中に食品冷却用ファン41を停止状態としてもよい。
【0066】
待機モードから急速冷凍モードに切り替わる際に、庫内ファン40の回転周波数を一定に保持してもよい。
【0067】
食品温度が第1設定温度に到達した直後に急速冷凍モードが実行される場合に限定されず、食品温度が第1設定温度に到達した後急速冷凍モードが実行されるまでの間にさらに待機時間が設けられていてもよい。この場合、食品F1の全体温度をさらに均一化した後に急速冷凍モードを実行することができる。
【0068】
食品庫10は、
図1に示される背面吹き出しタイプに限定されず、天井吹き出しタイプであってもよい。
【0069】
実施形態2におけるステップS51(
図5)の判定が、実施形態1又は実施形態3に適用されてもよい。この場合、食品温度検知部T2は運転制御には用いられず、食品F1の温度モニタ用に利用される。
【0070】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1 食品冷凍装置
10 食品庫
30 冷却器
40 庫内ファン
41 食品冷却用ファン
50 制御部
60 食品プレート
61 プレート本体
61A 上面(載置面)
62 熱交換フィン(フィン)
F1 食品
T1 庫内温度検知部(温度検知部)
T2 食品温度検知部(温度検知部)