(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 17/34 20200101AFI20241225BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20241225BHJP
G01S 17/931 20200101ALN20241225BHJP
【FI】
G01S17/34
G01C3/06 120Q
G01S17/931
(21)【出願番号】P 2021063566
(22)【出願日】2021-04-02
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅重
(72)【発明者】
【氏名】大山 浩市
(72)【発明者】
【氏名】松本 義輝
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0377089(US,A1)
【文献】国際公開第2019/204301(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0051146(US,A1)
【文献】特表2012-502301(JP,A)
【文献】特開昭64-068680(JP,A)
【文献】特開2008-275594(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108845333(CN,A)
【文献】国際公開第2020/018805(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0333443(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51,
G01S 17/00-17/95,
G01C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調光を出力する変調光出力部(2,12)と、
前記変調光が分岐された一方の光である入力光を出射光として空間に出射する送信用スキャナ(3,13)と、
前記出射光が測距対象物で反射した光を入射光として入射し、その入射した入射光を反射光として出力する受信用スキャナ(4,14)と、
前記反射光と、前記変調光が分岐された他方の光である参照光とを合波して自装置から前記測距対象物までの距離を計測する計測部(5,15)と、を備える測距装置(1,11,21)において、
前記送信用スキャナは、前記出射光の出射角が前記入力光に対する周波数依存性を持ち、
前記変調光出力部は、互いに異なる変調周波数を持つ少なくとも2つの変調光を含み、前記2つの変調光の変調周波数が同時に同じ変調周波数となるように変調周波数を互いに近付く方向にチャープし
、前記2つの変調光の変調周波数が同じ変調周波数になったことに応じてチャープ方向を切り換えて変調周波数を互いに遠ざかる方向にチャープして変調光を出力する測距装置。
【請求項2】
前記変調光出力部は、前記2つの変調光の占有周波数帯域が同じとなるように変調光を出力する請求項1に記載した測距装置。
【請求項3】
前記変調光出力部は、前記2つの変調光の変調周波数のチャープ方向を切り換える際に、一方の変調周波数の第1方向へのチャープの傾きに対して他方の変調周波数の第1方向へのチャープの傾きが一致し、他方の変調周波数の第2方向へのチャープの傾きに対して一方の変調周波数の第2方向へのチャープの傾きが一致するように変調光を出力する請求項1又は2に記載した測距装置。
【請求項4】
変調光を出力する変調光出力部(2,12)と、
前記変調光が分岐された一方の光である入力光を出射光として空間に出射する送信用スキャナ(3,13)と、
前記出射光が測距対象物で反射した光を入射光として入射し、その入射した入射光を反射光として出力する受信用スキャナ(4,14)と、
前記反射光と、前記変調光が分岐された他方の光である参照光とを合波して自装置から前記測距対象物までの距離を計測する計測部(5,15)と、を備える測距装置(1,11,21)において、
前記送信用スキャナは、前記出射光の出射角が前記入力光に対する周波数依存性を持ち、
前記変調光出力部は、互いに異なる変調周波数を持つ少なくとも2つの変調光を含み、前記2つの変調光の変調周波数が同時に同じ変調周波数とならないように変調周波数を互いに近付く方向にチャープし
、前記2つの変調光の変調周波数がそれぞれ異なる所定の変調周波数になったことに応じて、一方の変調光の変調周波数がチャープする傾きが、他方の変調光の変調周波数がチャープしていた傾きの延長線に対して一致するようにチャープ方向を切り換えて変調周波数を互いに遠ざかる方向にチャープして変調光を出力する測距装置。
【請求項5】
前記変調光出力部は、前記2つの変調光の変調周波数のチャープ方向を切り換える際に、一方の変調周波数の第1方向へのチャープの傾きの延長線に対して他方の変調周波数の第1方向へのチャープの傾きが近付き、他方の変調周波数の第2方向へのチャープの傾きの延長線に対して一方の変調周波数の第2方向へのチャープの傾きが近付くように変調光を出力する請求項4に記載した測距装置。
【請求項6】
前記変調光出力部は、一方の変調周波数の第1方向へのチャープの傾きの延長線に対して他方の変調周波数の第1方向へのチャープの傾きが近付いて一致し、他方の変調周波数の第2方向へのチャープの傾きの延長線に対して一方の変調周波数の第2方向へのチャープの傾きが近付いて一致するように変調光を出力する請求項5に記載した測距装置。
【請求項7】
前記変調光出力部は、一方の変調周波数の第1方向へのチャープ及び他方の変調周波数の第2方向へのチャープを終了したときの周波数差と、一方の変調周波数の第1方向へのチャープの傾き又は他方の変調周波数の第2方向へのチャープの傾きとに基づいて、一方の変調周波数の第2方向へのチャープ及び他方の変調周波数の第1方向へのチャープを開始する起点を特定する請求項5又は6に記載した測距装置。
【請求項8】
前記変調光出力部(2)は、少なくとも2つの波長可変レーザー(6,7)を備え、前記少なくとも2つの波長可変レーザーから出力される変調光を出力する請求項1から7の何れか一項に記載した測距装置。
【請求項9】
前記変調光出力部(12)は、発振光を出力するレーザー光源(16)と、前記レーザー光源から出力された前記発振光を外部変調する外部変調器(17)と、前記外部変調器から出力される変調光を出力する請求項1から7の何れか一項に記載した測距装置。
【請求項10】
前記計測部は、前記参照光同士の干渉により発生するビート信号を算出し、その算出したビート信号を除去した上で、自装置から前記測距対象物までの距離を計測する請求項1から9に記載した測距装置。
【請求項11】
前記参照光をモニタする光検出器(22)を備え、
前記計測部は、前記光検出器が前記参照光をモニタすることで、前記参照光同士の干渉により発生するビート信号を算出する請求項10に記載した測距装置。
【請求項12】
前記送信用スキャナと前記受信用スキャナとは1つのスキャナで兼用されている請求項1から11の何れか一項に記載した測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や自律ロボットの周辺環境認識センサや建設土木現場における形状計測等への応用を目的として、ライダ(LiDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)の開発が進展している。例えば非特許文献1には、コヒーレント検波を用いるFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式の測距装置が開示されている。FMCW方式では、測距対象物で反射した光を高感度で検出可能であり、自装置から測距対象物までの距離を計測可能であることに加え、測距対象物の速度も計測可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, VOL. 31, NO. 22, NOVEMBER 15, 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、FMCW方式では、チャープ帯域をある程度まで広げないと、距離分解能及びフレームレートを高めることができない。一方、2つ以上の出射光を空間に出射し、且つ出射角に周波数依存性を持つスキャナを送信用スキャナに用いた場合、チャープ帯域を広げ過ぎると、空間分解能が大きくなり、測距対象物のサイズが小さい場合に複数の出射光の全てが測距対象物に当たらない可能性が高くなる。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、距離分解能及びフレームレートを高めると共に空間分解能の増大を抑えることで、自装置から測距対象物までの距離を適切に計測することができる測距装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明によれば、測距装置(1,11,21)において、送信用スキャナ(4,14)は、レーザー光源(2,3,12)の発振光が変調された変調光が分岐された一方の光である入力光を出射光として空間に出射する。受信用スキャナ(5,15)は、出射光が測距対象物で反射した光を入射光として入射し、その入射した入射光を反射光として出力する。計測部(6,16)は、反射光と、変調光が分岐された他方の光である参照光とを合波して自装置から測距対象物までの距離を計測する。送信用スキャナは、出射光の出射角が入力光に対する周波数依存性を持つ。変調光出力部は、互いに異なる変調周波数を持つ少なくとも2つの変調光を含み、2つの変調光の変調周波数が同時に同じ変調周波数となるように変調周波数を互いに近付く方向にチャープし、2つの変調光の変調周波数が同じ変調周波数になったことに応じてチャープ方向を切り換えて変調周波数を互いに遠ざかる方向にチャープして変調光を出力する。
【0007】
出射光の出射角が入力光に対する周波数依存性を持つ送信用スキャナを用い、2つの変調光の変調周波数が同時に同じ変調周波数となるように変調周波数を互いに近付く方向にチャープし、2つの変調光の変調周波数が同じ変調周波数になったことに応じてチャープ方向を切り換えて変調周波数を互いに遠ざかる方向にチャープして変調光を出力するようにした。チャープ帯域を最大RF中心周波数帯域の2倍まで広げることができ、距離分解能及びフレームレートを高めることができる。又、送信用スキャナから出射される出射角が初期値以上に広がらず、空間分解能の増大を抑えることができる。これにより、距離分解能及びフレームレートを高めると共に空間分解能の増大を抑えることで、自装置から測距対象物までの距離を適切に計測することができる。
【0008】
請求項4に記載した発明によれば、測距装置(1,11,21)において、送信用スキャナ(4,14)は、レーザー光源(2,3,12)の発振光が変調された変調光が分岐された一方の光である入力光を出射光として空間に出射する。受信用スキャナ(5,15)は、出射光が測距対象物で反射した光を入射光として入射し、その入射した入射光を反射光として出力する。計測部(6,16)は、反射光と、変調光が分岐された他方の光である参照光とを合波して自装置から測距対象物までの距離を計測する。送信用スキャナは、出射光の出射角が入力光に対する周波数依存性を持つ。変調光出力部は、互いに異なる変調周波数を持つ少なくとも2つの変調光を含み、2つの変調光の変調周波数が同時に同じ変調周波数とならないように変調周波数を互いに近付く方向にチャープし、2つの変調光の変調周波数がそれぞれ異なる所定の変調周波数になったことに応じて、一方の変調光の変調周波数がチャープする傾きが、他方の変調光の変調周波数がチャープしていた傾きの延長線に対して一致するようにチャープ方向を切り換えて変調周波数を互いに遠ざかる方向にチャープして変調光を出力する。
【0009】
出射光の出射角が入力光に対する周波数依存性を持つ送信用スキャナを用い、2つの変調光の変調周波数が同時に同じ変調周波数とならないように変調周波数を互いに近付く方向にチャープし、2つの変調光の変調周波数がそれぞれ異なる所定の変調周波数になったことに応じて、一方の変調光の変調周波数がチャープする傾きが、他方の変調光の変調周波数がチャープしていた傾きの延長線に対して一致するようにチャープ方向を切り換えて変調周波数を互いに遠ざかる方向にチャープして変調光を出力するようにした。チャープ帯域を最大RF中心周波数帯域の2倍まで広げることができ、距離分解能及びフレームレートを高めることができる。又、送信用スキャナから出射される出射角が初期値以上に広がらず、空間分解能の増大を抑えることができる。これにより、距離分解能及びフレームレートを高めると共に空間分解能の増大を抑えることで、自装置から測距対象物までの距離を適切に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図12】ビート信号の周波数とFFT強度との関係を示す図
【
図14】ビート信号の周波数とFFT強度との関係を示す図
【
図16】ビート信号の周波数とFFT強度との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。以下に示す各実施形態において、先行する実施形態で説明した内容に対応する部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略することがある。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態について
図1から
図2を参照して説明する。測距装置は、例えば自動車に搭載され、自車周辺の他車や歩行者等を測距対象物として検知し、衝突を未然に回避して安全安心な走行を確保することを目的として用いられる。
図1に示すように、測距装置1は、変調光出力部2と、送信用スキャナ3と、受信用スキャナ4と、計測部5とを備える。変調光出力部2は、第1波長可変レーザー6と、第2波長可変レーザー7とを備える。計測部5は、コヒーレント検波器8と、DSP(Digital Signal Processor)9とを備える。第1波長可変レーザー6及び第2波長可変レーザー7は、レーザー光源に相当する。
【0013】
第1波長可変レーザー6及び第2波長可変レーザー7は、それぞれDFB(Distributed Feedback)レーザー、DBR(Distributed Bragg Reflector)レーザー、外部共振型レーザー等から構成される。第1波長可変レーザー6は、キャリア周波数よりも高周波帯域側で変調周波数をアップチャープ又はダウンチャープした変調光を出力する。第2波長可変レーザー7は、キャリア周波数よりも低周波帯域側で変調周波数をアップチャープ又はダウンチャープした変調光を出力する。即ち、キャリア周波数をfc、RF中心周波数をfo、RFチャープ帯域をk、時間をtとすると、第1波長可変レーザー6が出力する変調光の変調周波数f1は、
f1=fc+fo±kt
となり、第2波長可変レーザー7が出力する変調光の変調周波数f2は、
f2=fc-fo±kt
となる。
尚、後述するように、第1波長可変レーザー6及び第2波長可変レーザー7は、それぞれ変調光の変調周波数が互いに近付くように変調出力するので、ktで変調した時のf1がチャープする傾きとf2チャープする傾きは逆方向になる。即ち、
f1=fc+fo±k
の数式における「±」は「プラスマイナス」を意味し、
f2=fc-fo±kt
の数式における「±」は「マイナスプラス」を意味する。
【0014】
第1波長可変レーザー6及び第2波長可変レーザー7から出力される変調光は入力光と参照光とに分岐され、入力光は送信用スキャナ3に入力され、参照光はコヒーレント検波器8に入力される。送信用スキャナ3は、第1波長可変レーザー6及び第2波長可変レーザー7から入力光を入力すると、その入力した入力光を出射光として空間に照射する。送信用スキャナ3は、周波数依存性を持ち、出射光の出射角が入力光の周波数に対して依存する。送信用スキャナ3から空間に照射された出射光が測距対象物に当たって反射すると、その反射した光が入射光として受信用スキャナ4に入射される。受信用スキャナ4は、入射光を入射すると、その入射した入射光を反射光としてコヒーレント検波器8に出力する。送信用スキャナ3及び受信用スキャナ4は、例えば光フェーズドアレイ(OPA:Optical Phased Array)から構成される。
【0015】
コヒーレント検波器8は、受信用スキャナ4から反射光を入力すると、その入力した反射光と、第1波長可変レーザー6及び第2波長可変レーザー7から入力した参照光とを合波してビート信号を生成して出力する。この場合、反射光と参照光との間には測距装置1(自装置)から測距対象物までの距離に応じた時間差による周波数差が生じており、その周波数差がビート信号に含まれている。
【0016】
DSP9は、コヒーレント検波器8から出力されたビート信号の同相成分I及び直交信号Qを入力し、その入力した同相成分I及び直交信号Qをデジタル信号に変換し、ビート信号の位相及び周波数を算出する。DSP9は、周波数の平均値を算出し、ドップラーシフトを算出し、測距対象物の速度を算出する。又、DSP9は、位相からドップラーシフトの成分を除去し、位相の絶対値の平均値を算出し、その算出した位相の絶対値の平均値と、予め記憶している距離との関係に基づいて自装置から測距対象物までの距離を算出する。
【0017】
上記した測距装置1において、第1波長可変レーザー6及び第2波長可変レーザー7は、それぞれ以下に示すように変調光を変調出力する。尚、第1波長可変レーザー6が出力する+1次の「fc+fo」を初期値とする変調光を第1変調光と称し、第2波長可変レーザー7が出力する-1次の「fc-fo」を初期値とする変調光を第2変調光と称する。
図2に示すように、第1波長可変レーザー6は、第1変調光の変調周波数を「fc+fo」から「fc」まで「T0」から「T1」の時間で直線的にダウンチャープして出力し、第2波長可変レーザー7は、第2変調光の変調周波数を「fc-fo」から「fc」まで「T0」から「T1」の時間で直線的にアップチャープして出力する。その後、第1波長可変レーザー6は、第1変調光の変調周波数を「fc」から「fc+fo」まで「T1」から「T2」の時間で直線的にアップチャープして出力し、第2波長可変レーザー7は、第2変調光の変調周波数を「fc」から「fc-fo」まで「T1」から「T2」の時間で直線的にダウンチャープして出力する。即ち、第1波長可変レーザー6及び第2波長可変レーザー7は、第1変調光の変調周波数と第2変調光の変調周波数とが互いに近付くように変調出力し、第1変調光の変調周波数と第2変調光の変調周波数とが同じとなったタイミングでチャープ方向を切り換える。
【0018】
上記したように第1変調光及び第2変調光の変調出力を制御することで、+1次周波数から-1次周波数までの帯域であるチャープ帯域を、0次周波数から+1次周波数又は-1次周波数までの帯域である最大RF中心周波数帯域の2倍まで広げることができ、距離分解能及びフレームレートを高めることができる。又、チャープ帯域を+1次周波数から-1次周波数までの周波数帯域に抑え、送信用スキャナ3から出射される出射光の出射角が初期値以上に広がらず、空間分解能の増大を抑えることができる。
【0019】
以上に説明したように第1実施形態によれば、次に示す作用効果を得ることができる。
測距装置1において、出射光の出射角が入力光に対する周波数依存性を持つ送信用スキャナ3を用い、第1変調光の変調周波数及び第2変調光の変調周波数が同時に同じ変調周波数となるように変調周波数を互いに近付く方向にチャープするようにした。チャープ帯域を最大RF中心周波数帯域の2倍まで広げることができ、距離分解能及びフレームレートを高めることができる。又、送信用スキャナ3から出射される出射角が初期値以上に広がらず、空間分解能の増大を抑えることができる。これにより、距離分解能及びフレームレートを高めると共に空間分解能の増大を抑えることで、自装置から測距対象物までの距離及び測距対象物の速度を適切に計測することができる。第1波長可変レーザー6及び第2波長可変レーザー7を用いることで、外部変調器を用いずに実現することができる。
【0020】
(第2実施形態)
第2実施形態について
図3から
図9を参照して説明する。第1実施形態は、第1波長可変レーザー6と第2波長可変レーザー7との2つの波長可変レーザーを用いた構成であるが、第2実施形態は、1つのレーザーと外部変調器とを用いる構成である。
図3に示すように、測距装置11は、変調光出力部12と、送信用スキャナ13と、受信用スキャナ14と、計測部15とを備える。変調光出力部12は、レーザー16と、外部変調器17とを備える。計測部15は、コヒーレント検波器18と、DSP19とを備える。レーザー16は、レーザー光源に相当する。送信用スキャナ14、受信用スキャナ15、コヒーレント検波器18及びDSP19は、それぞれ第1実施形態で説明した送信用スキャナ3、受信用スキャナ4、コヒーレント検波器8及びDSP9と同等である。
【0021】
レーザー16は、所定周波数の発振光を外部変調器17に出力する。外部変調器17は、例えばマッハツェンダー変調器であり、レーザー16から発振光を入力すると、その入力した発振光を、外部から入力するRF信号(交流信号)及び直流バイアスに基づいて外部変調し、所定周波数から高周波帯域側及び低周波帯域側でアップチャープ又はダウンチャープした変調周波数の変調光を出力する。即ち、所定周波数に相当するキャリア周波数をfc、RF中心周波数をfo、RFチャープ帯域をk、時間をtとすると、外部変調器17が出力する変調光f1,f2は、第1実施形態と同様に、
f1=fc+fo±kt
f2=fc-fo±kt
となる。
【0022】
外部変調器1から出力される変調光は第1実施形態と同様に入力光と参照光とに分岐され、入力光は送信用スキャナ14に入力され、参照光はコヒーレント検波器18に入力される。送信用スキャナ14、受信用スキャナ15、コヒーレント検波器18及びDSP19は、第1実施形態と同様の処理を行う。
【0023】
上記した測距装置11において、外部変調器17は、以下に示すように変調光を変調出力する。尚、外部変調器17が出力する変調光のうち+1次の「fc+fo」を初期値とする変調光を第1変調光と称し、-1次の「fc-fo」を初期値とする変調光を第2変調光と称する。
図4に示すように、外部変調器17は、第1変調光の変調周波数を「fc+fo」から「fc」まで「T0」から「T1」の時間で直線的にダウンチャープして出力し、第2変調光の変調周波数を「fc-fo」から「fc」まで「T0」から「T1」の時間で直線的にアップチャープして出力する。その後、外部変調器17は、第1変調光の変調周波数を「fc」から「fc+fo」まで「T1」から「T2」の時間で直線的にアップチャープして出力し、第2変調光の変調周波数を「fc」から「fc-fo」まで「T1」から「T2」の時間で直線的にダウンチャープして出力する。即ち、外部変調器17は、第1実施形態で説明した第1波長可変レーザー6及び第2波長可変レーザー7がそれぞれ第1変調光及び第2変調光を変調出力することと同様に、第1変調光及び第2変調光を変調出力する。
【0024】
この場合、外部変調器17は、RF信号の周波数を変えることで変調周波数のチャープの傾きを制御し、直流バイアスを調整することでキャリア周波数の出力を抑制することが可能となり、変調周波数のバランスを維持することが可能となる。即ち、第1変調光を出力する第1波長可変レーザー6と第2変調光を出力する第2波長可変レーザー7とが別々である第1実施形態では、第1変調光の変調周波数をダウンチャープする傾きと第2変調光の変調周波数をダウンチャープする傾き、第2変調光の変調周波数をアップチャープする傾きと第1変調光の変調周波数をアップチャープする傾きを一致させることが容易でない。これに対し、外部変調器17を用い、チャープの傾きを自在に制御することで、チャープの傾きの直線性を確保することができる。又、自装置から測距対象物までの距離及び測距対象物の速度を計測する際にノイズとなるキャリア周波数の出力を抑えることで、計測精度を高めることができる。
【0025】
外部変調器17は、変調光を
図4に示した波形とは異なる波形で変調出力しても良い。
図5に示すように、外部変調器17は、第1変調光の変調周波数を「fc+fo」から「fc」を下回った周波数まで「T0」から「T2」の時間で直線的にダウンチャープして出力し、第2変調光の変調周波数を「fc-fo」から「fc」を上回った周波数まで「T0」から「T2」の時間で直線的にアップチャープして出力する。その後、外部変調器17は、第1変調光の変調周波数を「fc」を下回った周波数から「fc+fo」まで「T2」から「T4」の時間で直線的にアップチャープして出力すると共に、第2変調光の変調周波数を「fc」を上回った周波数から「fc-fo」まで「T2」から「T4」の時間で直線的にダウンチャープして出力する。即ち、第1波長可変レーザー6及び第2波長可変レーザー7は、第1変調光の変調周波数と第2変調光の変調周波数とが互いに近付くように変調出力し、第1変調光の変調周波数と第2変調光の変調周波数とが同じとなったタイミングではチャープ方向を切り換えず、第1変調光の変調周波数と第2変調光の変調周波数とが同じとなったタイミングから一定時間が経過したタイミングでチャープ方向を切り換える。
【0026】
この場合、外部変調器17は、
図4に説明した変調出力に対し、変調出力の開始から第1変調光及び第2変調光の各チャープ方向を切り換えるまでの時間(
図4では「T0」~「T1」、
図5では「T0」~「T2」)を長く確保することができ、同じ計測時間で対比した場合にチャープ方向を切り換える回数を低減させることができる。同じ計測時間で対比した場合にチャープ方向を切り換える回数が少ないほどフレームレートの低下が抑えられるので、
図4に説明した変調出力に対し、フレームレートの低下を抑えることができる。
【0027】
図6に示すように、外部変調器17は、第1変調光の変調周波数を「fc+fo」から「fc-fo」まで「T0」から「T2」の時間で直線的にダウンチャープして出力し、第2変調光の変調周波数を「fc-fo」から「fc+fo」まで「T0」から「T2」の時間で直線的にアップチャープして出力する。その後、外部変調器17は、第1変調光の変調周波数を「fc-fo」から「fc+fo」まで「T2」から「T4」の時間で直線的にアップチャープして出力し、第2変調光の変調周波数を「fc+fo」から「fc-fo」まで「T2」から「T4」の時間で直線的にダウンチャープして出力する。第1変調光の占有周波数帯域と第2変調光の占有周波数帯域とは同じとなる。
【0028】
この場合、外部変調器17は、
図5に説明した変調出力に対し、変調出力の開始から第1変調光及び第2変調光の各チャープ方向を切り換えるまでの時間(
図6では「T0」~「T2」)を更に長く確保することができ、同じ計測時間で対比した場合にチャープ方向を切り換える回数を更に低減させることができる。
図4や
図5に説明した変調出力に対し、フレームレートの低下を更に抑えることができる。
【0029】
図7に示すように、外部変調器17は、第1変調光の変調周波数を「fc+fo」から「fc」まで「T0」から「T1」の時間で直線的にダウンチャープして出力し、第2変調光の変調周波数を「fc-fo」から「fc」まで「T0」から「T1」の時間で直線的にアップチャープして出力する。その後、外部変調器17は、第1変調光の変調周波数を「fc」から「fc+fo」まで「T1」から「T2」の時間で直線的にアップチャープして出力し、第2変調光の変調周波数を「fc」から「fc-fo」まで「T1」から「T2」の時間で直線的にダウンチャープして出力する。この場合、外部変調器17は、第1変調光がダウンチャープする傾きをモニタし、第2変調光がダウンチャープする傾きを、そのモニタした第1変調光がダウンチャープしていた傾きに対して一致するように調整して直線性を確保する。又、外部変調器17は、第2変調光がアップチャープする傾きをモニタし、第1変調光がアップチャープする傾きを、そのモニタした第2変調光がアップチャープしていた傾きに対して一致するように調整して直線性を確保する。
【0030】
図8に示すように、外部変調器17は、第1変調光の変調周波数を「fc+fo」から「fc+fo´」まで「T0」から「T1」の時間で直線的にダウンチャープして出力し、第2変調光の変調周波数を「fc-fo」から「fc-fo´」まで「T0」から「T1」の時間で直線的にアップチャープして出力する。その後、外部変調器17は、第2変調光の変調周波数がアップチャープしていた傾きの延長線に対して第1変調光の変調周波数がアップチャープする傾きを近付けて一致するように、第1変調光の変調周波数を「fc+fo´」から「fc+fo」まで「T2」から「T3」の時間で直線的にアップチャープして出力する。この場合、第2変調光の変調周波数がアップチャープしていた傾きの延長線に対して第1変調光の変調周波数がアップチャープする傾きが完全一致しなくても良く、ある程度まで近付けば良い。又、外部変調器17は、第1変調光の変調周波数がダウンチャープしていた傾きの延長線に対して第2変調光の変調周波数がダウンチャープする傾きを近付けて一致するように、第2変調光の変調周波数を「fc-fo´」から「fc-fo」まで直線的にダウンチャープして出力する。この場合、第1変調光の変調周波数がダウンチャープしていた傾きの延長線に対して第2変調光の変調周波数がダウンチャープする傾きが完全一致しなくても良く、ある程度まで近付けば良い。
【0031】
図9に示すように、外部変調器17は、第1変調光の変調周波数を「fc+fo」から「fc+fo´」まで直線的にダウンチャープして出力し、第2変調光の変調周波数を「fc-fo」から「fc-fo´」まで直線的にアップチャープして出力する。外部変調器17は、第1変調光の変調周波数のダウンチャープ及び第2変調光の変調周波数のアップチャープを終了したタイミングと、第1変調光の変調周波数のダウンチャープの傾き又は第2変調光の変調周波数のダウンチャープの傾きとに基づいて、第1変調光の変調周波数のアップチャープ及び第2変調光の変調周波数のダウンチャープを開始する起点を特定する。
【0032】
即ち、外部変調器17は、第1変調光の変調周波数のダウンチャープ及び第2変調光の変調周波数のアップチャープを終了したタイミングを「T1」とし、第1変調光の変調周波数のアップチャープ及び第2変調光の変調周波数のダウンチャープを開始するタイミングを「T2」とすると、
T2=T1+2fo´/k
の算出式により「T2」を算出する。
【0033】
その後、外部変調器17は、第2変調光の変調周波数がアップチャープしていた傾きの延長線に対して一致するように、第1変調光の変調周波数を「fc+fo´」から「fc+fo」まで「T2」から「T3」の時間で直線的にアップチャープして出力すると共に、第1変調光の変調周波数がダウンチャープしていた傾きの延長線に対して一致するように、第2変調光の変調周波数を「fc-fo´」から「fc-fo」まで「T2」から「T3」の時間で直線的にダウンチャープして出力する。
【0034】
以上に説明したように第2実施形態によれば、次に示す作用効果を得ることができる。
測距装置11において、出射光の出射角が入力光に対する周波数依存性を持つ送信用スキャナ14を用い、第1変調光の変調周波数及び第2変調光の変調周波数が同時に同じ変調周波数となるように変調周波数を互いに近付く方向にチャープするようにした。又、第1変調光の変調周波数及び第2変調光の変調周波数が同時に同じ変調周波数とならないように変調周波数を互いに近付く方向にチャープするようにした。第1実施形態と同様に、距離分解能及びフレームレートを高めると共に空間分解能の増大を抑えることで、自装置から測距対象物までの距離及び測距対象物の速度を適切に計測することができる。外部変調器17を用い、チャープの傾きを自在に制御することで、チャープの傾きの直線性を確保することができる。又、自装置から測距対象物までの距離及び測距対象物の速度を計測する際にノイズとなるキャリア周波数の出力を抑えることで、計測精度を高めることができる。
【0035】
又、変調出力の開始から第1変調光及び第2変調光のそれぞれのチャープ方向を切り換えるまでの時間を長く確保することで、フレームレートの低下を抑えることができる。又、チャープする傾きをモニタして直線性を更に確保することで、計測精度を更に高めることができる。
【0036】
(第3実施形態)
第3実施形態について
図10から
図14を参照して説明する。変調信号同士が重複する周波数付近では距離起因以外によりビート信号が発生してノイズが生じる可能性がある。即ち、
図10に示すように、測距対象物に起因するビート信号「f
R」、参照光同士のビート信号「f
△」、反射光同士のビート信号「f
△´」、参照光と他の反射光とのビート信号「f
△+R」が発生する。
図11に示すFFT(Fast Fourier Transform)区間において、
図12に示すように、FFT強度は、測距対象物に起因するビート信号「f
R」が最大とならず、参照光同士のビート信号「f
△」が最大となる。そのため、DSP19は、そのFFT強度が最大となっている参照光同士のビート信号「f
△」を除去する必要がある。
【0037】
図13に示すように、DSP19は、外部変調器17が外部から入力するRF信号と同じRF信号を入力する。DSP19は、RF信号を発生するための線形周波数変調器(LFM:linear-frequency-modulated)の線形信号から+1次の変調周波数と-1次の変調周波数との差分を算出する。即ち、DSP19は、第1変調光がダウンチャープする変調周波数を、
f1=fc+fo-kt
として算出し、第2変調光がアップチャープする変調周波数を、
f2=fc-fo+kt
として算出し、その差分を、
f1―f2=2(fo-kt)
として算出する。
【0038】
DSP19は、その算出した周波数帯をコヒーレント検波後のFFT結果において無視する、又は「0」を乗じることで、
図14に示すように、測距対象物に起因するビート信号「f
R」のピークを最大とする。測距対象物に起因するビート信号「f
R」のピークを最大とすることで、自装置から測距対象物までの距離及び測距対象物の速度を適切に計測することができる。
【0039】
以上に説明したように第3実施形態によれば、FFT強度が最大となっている参照光同士のビート信号「f△」を除去するようにした。測距対象物に起因するビート信号「fR」のピークを最大とすることで、自装置から測距対象物までの距離及び測距対象物の速度を適切に計測することができる。
【0040】
(第4実施形態)
第4実施形態について
図15から
図16を参照して説明する。
図15に示すように、測距装置21は、第2実施形態で説明した構成に加え、参照光をモニタする光検出器22を備えている。外部変調器17から出力される変調光は入力光と参照光とに分岐され、参照光はコヒーレント検波器18と光検出器22とに入力される。DSP19は、光検出器22から入力する信号から+1次と-1次との参照光同士のビート信号「f
△」を検出し、その検出したビート信号をコヒーレント検波後の計測結果から差し引き、FFT処理を行い、参照光同士のビート信号「f
△」を除去することで、
図16に示すように、測距対象物に起因するビート信号「f
R」のピークが最大とする。この場合も、測距対象物に起因するビート信号「f
R」のピークを最大とすることで、自装置から測距対象物までの距離及び測距対象物の速度を適切に計測することができる。
【0041】
以上に説明したように第4実施形態によれば、第3実施形態と同様に、測距対象物に起因するビート信号「fR」のピークを最大とすることで、自装置から測距対象物までの距離及び測距対象物の速度を適切に計測することができる。
【0042】
(その他の実施形態)
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、更には、それらに一要素のみ、それ以上、或いはそれ以下を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0043】
周波数依存性を持つスキャナとして、OPAを例示したが、SAW(Surface Acoustic Wave)デバイス、プリズム、液晶等を適用しても良い。
送信用スキャナと受信用スキャナとが別々の構成を例示したが、送信用スキャナと受信用スキャナとが1つのスキャナで兼用され、変調光出力部とスキャナとの間にサーキュレータが設けられ、サーキュレータにより入力光と反射光とが分離される構成としても良い。
【符号の説明】
【0044】
図面中、1,11,21は測距装置、2,12は変調光出力部、6は第1波長可変レーザー(レーザー光源)、7は第2波長可変レーザー(レーザー光源)、16はレーザー(レーザー光源)、17は外部変調器、3,13は送信用スキャナ,4,14は受信用スキャナ、5,15は計測部、22は光検出器である。