(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】フォーム、フォーム形成用組成物及びフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20241225BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20241225BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20241225BHJP
C08K 5/31 20060101ALI20241225BHJP
C08K 3/016 20180101ALI20241225BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20241225BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20241225BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20241225BHJP
【FI】
C08G18/00 L
C08G18/08 038
C08L75/04
C08K5/31
C08K3/016
C08K3/32
C08K5/49
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2021101315
(22)【出願日】2021-06-18
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000127307
【氏名又は名称】株式会社イノアック技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敦史
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-158023(JP,A)
【文献】特開昭59-197416(JP,A)
【文献】特表平03-503774(JP,A)
【文献】特開2010-001485(JP,A)
【文献】特開平07-216048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08L 75/00- 75/16
C08K 3/00- 13/08
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上のイソシアナト基を有するポリイソシアネート化合物(A)と、2以上の活性水素部位を有する活性水素化合物(B)と、発泡剤(C)と、触媒(D)と、を含有するフォーム形成用組成物において、
グアニジン系化合物(E)を更に含有
し、
前記グアニジン系化合物(E)の含有量が、ポリイソシアネート化合物(A)と活性水素化合物(B)との合計質量を基準として4~9質量%であり、
前記グアニジン系化合物(E)が、ジシアンジアミド又はリン酸グアニジンであり、
リン系難燃剤(F)を更に含有する
ことを特徴とするフォーム形成用組成物。
【請求項2】
前記グアニジン系化合物(E)の平均粒子径が、80μm以下である、請求項
1記載のフォーム形成用組成物。
【請求項3】
前記グアニジン系化合物(E)と前記リン系難燃剤(F)との質量比{(E):(F)}が95:5~30:70である、請求項
1又は2記載のフォーム形成用組成物。
【請求項4】
グアニジン系化合物(E)を含有
するフォームであり、
前記フォームが、ウレタンフォーム又はウレアフォームであり、
前記グアニジン系化合物(E)の含有量が、前記フォームの全質量を基準として4~9質量%であり
前記グアニジン系化合物(E)が、ジシアンジアミド又はリン酸グアニジンであり、
リン系難燃剤(F)を更に含有する
ことを特徴とするフォーム。
【請求項5】
前記グアニジン系化合物(E)の平均粒子径が、80μm以下である、請求項
4記載のフォーム。
【請求項6】
前記グアニジン系化合物(E)と前記リン系難燃剤(F)との質量比{(E):(F)}が95:5~30:70である、請求項
4又は5記載のフォーム。
【請求項7】
請求項1~
3のいずれか一項記載のフォーム形成用組成物を発泡及び硬化させてフォームを得る工程を含む、フォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーム、フォーム形成用組成物及びフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高い難燃性を有するフォームが各種提案されている(例えば、特許文献1~4)。それらの内、三酸化アンチモンを難燃剤として含むウレタンフォームが特に優れた難燃性を有する(例えば、特許文献1)。
【先行文献】
【0003】
【文献】特公昭-006279号公報
【文献】特公昭61-50965号公報
【文献】特開平9-195415号公報
【文献】特開2005-60643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、三酸化アンチモンは、毒物及び劇物取締法により劇物に指定されている。そのため、使用の際の安全性が危惧される。そこで、本発明は、三酸化アンチモンを必ずしも用いなくても優れた難燃性を示す樹脂フォームを製造可能な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明(1)は、2以上のイソシアナト基を有するポリイソシアネート化合物(A)と、2以上の活性水素部位を有する活性水素化合物(B)と、発泡剤(C)と、触媒(D)と、を含有するフォーム形成用組成物において、グアニジン系化合物(E)を更に含有することを特徴とするフォーム形成用組成物である。
本発明(2)は、前記グアニジン系化合物(E)が、下記一般式:
で示される化合物(Rは、相互に独立して、水素又は1価の有機基)又はその塩である、前記発明(1)のフォーム形成用組成物である。
本発明(3)は、前記グアニジン系化合物(E)の平均粒子径が、80μm以下である、前記発明(1)又は(2)のフォーム形成用組成物である。
本発明(4)は、前記前記ポリイソシアネート化合物(A)と前記活性水素化合物(B)の合計質量を基準として、前記グアニジン系化合物(E)の含有量が1~15質量%である、前記発明(1)~(3)のいずれか一つのフォーム形成用組成物である。
本発明(5)は、前記窒素化合物(E)が、ジシアンジアミド又はリン酸グアニジンである、前記発明(1)~(4)のいずれか一つのフォーム形成用組成物である。
本発明(6)は、リン系難燃剤(F)を更に含有する、前記発明(1)~(5)のいずれか一つのフォーム形成用組成物である。
本発明(7)は、前記グアニジン系化合物(E)と前記リン系難燃剤(F)との質量比{(E):(F)}が95:5~30:70である、前記発明(6)のフォーム形成用組成物である。
本発明(8)は、グアニジン系化合物(E)を含有することを特徴とするフォームである。
本発明(9)は、前記グアニジン系化合物(E)が、下記一般式:
で示される化合物(Rは、相互に独立して、水素又は1価の有機基)又はその塩である、前記発明(8)のフォームである。
本発明(10)は、前記グアニジン系化合物(E)の平均粒子径が、80μm以下である、前記発明(8)又は(9)のフォームである。
本発明(11)は、前記フォームの全質量を基準として、前記グアニジン系化合物(E)の含有量が0.5~15質量%である、前記発明(8)~(10)のいずれか一つのフォームである。
本発明(12)は、前記窒素化合物(E)が、ジシアンジアミド又はリン酸グアニジンである、前記発明(8)~(11)のいずれか一つのフォームである。
本発明(13)は、リン系難燃剤(F)を更に含有する、前記発明(8)~(12)のいずれか一つのフォームである。
本発明(14)は、前記グアニジン系化合物(E)と前記リン系難燃剤(F)との質量比{(E):(F)}が95:5~30:70である、前記発明(13)のフォームである。
本発明(15)は、前記発明(1)~(7)のいずれか一つのフォーム形成用組成物を発泡及び硬化させてフォームを得る工程を含む、フォームの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、三酸化アンチモンを必ずしも用いなくても優れた難燃性を示す樹脂フォームを製造可能な技術を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係るフォーム(好適には、ウレタンフォーム、ウレアフォーム)、該フォームの製造原料であるフォーム形成用組成物、該フォームの製造方法及び用途を順に説明する。
【0008】
≪フォーム≫
本発明に係るフォームは、グアニジン系化合物(E)を含有することを特徴とする。ここで、フォームは、軟質フォームであることが好適である。尚、軟質フォームは、2以上の活性水素部位を有する活性水素化合物(例えば、ポリオール、ポリアミン)、ポリイソシアネート、触媒、発泡剤及び難燃剤を含む発泡原料から発泡形成されたものであり、密度(JIS K 7222:2005)が8~120kg/m3である。以下、該フォームに含まれる特徴成分について詳述する。
【0009】
<成分>
(グアニジン系化合物(E))
本発明に係るグアニジン系化合物(E)は、化学構造中にグアニジン構造を有する限り特に限定されない。ここで、好適な前記グアニジン系化合物(E)は、下記一般式:
で示される化合物(Rは、相互に独立して、水素又は1価の有機基)又はその塩である。尚、「有機基」とは、ヒドロキシ、直鎖状又は分枝状のアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、ハロゲン、エステル、カルボキシ、アルデヒド、アミノ、イミノ、イミド、ニトリル、アミド、イミド、シアノ、スルホ、ニトロ、スルフィド、チオール、イソシアネート及びニトロ等が挙げられるが、この限りではない。また、上記例の基(例えば、アルキル、シクロアルキル及びアリール等の炭化水素基)は、骨格の炭素の一部がヘテロ原子(例えば、S、N、O、P等)で置換されていてもよく、また、他の置換基で置換されていてもよい。また、「その塩」とは、例えば、上記一般式で示される化合物と酸(例えば、リン酸、塩酸、炭酸、硫酸、硝酸)との塩である。該グアニジン系化合物又はその塩としては、例えば、ジシアンジアミド、リン酸グアニジンを挙げることができる。
【0010】
ここで、グアニジン系化合物(E)の融点は、好適には150~400℃、より好適には170~350℃、更に好適には180℃~330℃である。前記好適融点で融解するグアニジン系化合物(E)は、高温下での酸素遮断効果をより発揮できるため、より高い難燃性を実現できる。
【0011】
また、グアニジン系化合物(E)が熱分解した際、該熱分解物の一部がメラミンであることが好適である。高温下でメラミンが生成し昇華することで、酸素希釈効果をもたらし、より高い難燃性を実現できる。
【0012】
また、グアニジン系化合物(E)の平均粒子径は、好適には80μm以下であり、より好適には50μm以下であり、更に好適には30μm以下である。尚、下限値は特に限定されず、例えば1μm以上である。グアニジン系化合物(E)が前記好適範囲であると、より高い難燃性を実現できる。ここで、本明細書及び特許請求の範囲にいう「平均粒子径」とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、体積50%に相当する点の粒子径のことである。
【0013】
(リン系難燃剤(F))
本発明に係るフォームは、好適には、難燃性成分として、グアニジン系化合物(E)以外に、リン系難燃剤(F)を更に含有する。ここで、リン系難燃剤は、リン元素を含有している限り特に限定されず、例えば、リン系粉体難燃剤、例えば、赤リン;脂肪族リン酸エステル、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ハロゲンリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル等のリン酸エステル系難燃剤;リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩;ポリリン酸アンモニウムが挙げられる。例えば、市販のリン系粉体難燃剤として、大八化学工業社製の製品名「SH-850」、「CR-900」、「DAIGUARD-1000」、「PX-200」等がある。
【0014】
ここで、リン系難燃剤(F)の平均粒子径は、好適には80μm以下であり、より好適には50μm以下であり、更に好適には30μm以下である。尚、下限値は特に限定されず、例えば1μm以上である。リン系難燃剤(F)が前記好適平均粒子径であると、より高い難燃性を実現できる。
【0015】
(他の成分)
本発明に係るフォームは、酸化防止剤、着色剤、分散剤等、他の成分を含有していてもよい。
【0016】
<配合量・配合比>
(グアニジン系化合物(E))
グアニジン系化合物(E)の含有量は、フォームの全質量(乾燥質量)を基準として、0.5~15質量%が好適であり、0.9~15質量%がより好適であり、1~15質量%が更に好適である。該範囲の中では特に、1~14質量%が好適であり、4~9質量%がより好適であり、5~8質量%が更に好適である。グアニジン系化合物(E)含有量が前記好適範囲であると、より高い難燃性を実現できる。
【0017】
(リン系難燃剤(F))
リン系難燃剤(F)の含有量は、フォームの全質量(乾燥質量)を基準として、0.05~15質量%が好適であり、0.09~15質量%がより好適であり、0.1~15質量%が更に好適である。該範囲の中では特に、0.1~14質量%が好適であり、1.0~6質量%がより好適であり、1.5~5質量%が更に好適である。リン系難燃剤(F)の含有量が前記好適範囲であると、より高い難燃性を実現できる。
【0018】
(三酸化アンチモン)
三酸化アンチモンの含有量は、フォームの全質量を基準として、好適には3質量%以下である(より好適には検出限界以下か含有しない)。三酸化アンチモンの含有量が非常に少ない又はゼロであると、より安全なフォームが提供できる。
【0019】
(ハロゲン含有難燃剤)
ハロゲン含有難燃剤の含有量は、フォームの全質量を基準として、好適には8質量%以下である(より好適には検出限界以下か含有しない)。尚、ここでのハロゲン含有難燃剤は、前記のグアニジン系化合物(E)やリン系難燃剤(F)以外の難燃剤であり、例えば、ポリ塩化ビニル、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、塩素化パラフィン、臭素化シクロパラフィン、 テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン(HBB)である。ハロゲン含有難燃剤の含有量が非常に少ない又はゼロであると、高温でフォームを熱プレスしても黄変が防止できるので、短時間処理が可能となる。
【0020】
(グアニジン系化合物(E)とリン系難燃剤(F)との質量比)
グアニジン系化合物(E)とリン系難燃剤(F)との質量比{(E):(F)}は、95:5~30:70であることが好適であり、85:15~40:60質量%がより好適であり、80:20~50:50質量%が更に好適である。グアニジン系化合物(E)とリン系難燃剤(F)との質量比が前記好適範囲であると、より高い難燃性を実現できる。
【0021】
≪フォームの製造方法≫
以下、フォームの製造方法について、製造原料(フォーム形成用組成物)と製造プロセスの順に説明する。
【0022】
<製造原料(フォーム形成用組成物)>
本発明に係るフォーム形成用組成物は、好適には、2以上のイソシアナト基を有するポリイソシアネート化合物(A)と、2以上の活性水素部位を有する活性水素化合物(B)と、発泡剤(C)と、触媒(D)と、グアニジン系化合物(E)と、リン系難燃剤(G)と、を含有する。以下、各成分及び含有量等を詳述する。
【0023】
(2以上のイソシアナト基を有するポリイソシアネート化合物(A))
フォーム形成用組成物で使用されるポリイソシアネート化合物(A)は、2以上のイソシアナト基を有する限り特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの他、イソシアナト基末端プレポリマー{2以上のイソシアナト基を有するポリイソシアネート化合物と、2以上の活性水素部位を有する化合物(例えば、ポリオールやポリアミン)と、の反応物であり、2以上のイソシアナト基を有する化合物}を挙げることができる。ジフェニルメタンジイソシアネートとしては、モノリックMDI (ピュアMDI)、ポリメリックMDI及びポリメリックMDIのプレポリマーの一又は複数種類の併用が挙げられる。ここで、ジフェニルメタンジイソシアネート系イソシアネートとして、具体的には、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの混合物であるポリメリックMDI、ジフェニルメタンジイソシアネートと2以上の活性水素部位を有する化合物(例えば、ポリオール、ポリアミン)を反応させて得られるMDIプレポリマー等を挙げることができる。これらは1種単独で用いてもよく、TDIとMDIを併用するなど、2種以上を必要に応じて併用してもよい。本発明においては、トリレンジイソシアネート(TDI)を好適に用いることができる。TDIとしては、特に限定されるものではないが、2,4-TDIと2,6-TDIとの配合比(質量比:2,4-TDI/2,6-TDI)が100/0~50/50の混合物であることが好ましく、80/20~65/35の混合物であることが特に好ましい。
【0024】
イソシアネートインデックスは、通常70~130、好ましくは80~120である。イソシアネートインデックスは、ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基のモル数を活性水素化合物の活性水素基(例えばポリオールの水酸基やポリアミンのアミノ基)や発泡剤としての水等の活性水素基の合計モル数で割った値に100を掛けた値であり、[ポリイソシアネートのNCO当量/活性水素当量×100]で計算される。
【0025】
(2以上の活性水素部位を有する活性水素化合物(B))
フォーム形成用組成物で使用される活性水素化合物は、2以上の活性水素部位を有する化合物であれば特に限定されず、例えばポリオールやポリアミンである。ここで、軟質フォームの場合には、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールであることが好適である。
【0026】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。特に、分子量2000~7000、官能基数2~6のポリエーテルポリオールが好ましい。
【0027】
アルキル基の側鎖を1以上持つポリエステルポリオールは、脂肪族分岐グリコールと脂肪族ジカルボン酸とを構成単位とする重合物である。前記脂肪族分岐グリコールとしては、具体的には、1,2-プロピレングリコール、1-メチル-1,3-ブチレングリコール、2-メチル-1,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1-メチルー1,4-ペンチレングリコール、2-メチル-1,4-ペンチレングリコール、1,2-ジメチル-ネオペンチルグリコール、2,3-ジメチル-ネオペンチルグリコール、1-メチルー1,5-ペンチレングリコール、2-メチル-1,5-ペンチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンチレングリコール、1,2-ジメチルブチレングリコール、1,3-ジメチルブチレングリコール、2,3-ジメチルブチレングリコール、1,4-ジメチルブチレングリコール等を例示することができる。これらの脂肪族分岐グリコールは、単独又は2種類以上併用して用いられる。前記脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸及びドデカン二酸、1,6-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステル等の誘導体及び酸無水物等も挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。また、アルキル基の側鎖を1以上持つポリエステルポリオールである、脂肪族二塩基酸と脂肪族分岐2価アルコールとから得られる脂肪族ポリエステルポリオールの平均分子量(数平均分子量)が1000~5000(より好ましくは2000~3000)の脂肪族ポリエステルポリオールが好ましい。また、官能基数は、2~4が、柔軟さと強靭さを両立させるためには好ましい。
【0028】
(発泡剤(C))
フォーム形成用組成物で使用される発泡剤は、特に限定されず、例えば、水単独や、水と併用する補助発泡剤としてハロゲン化脂肪族炭化水素、例えばメチレンクロライド、トリクロロエタン、炭酸ガス等との併用、酸アミドとの併用が採用される。水の場合は、例えばポリオールとポリイソシアネートが反応してウレタン結合が形成するとともに、ポリイソシアネートが水と反応することにより炭酸ガスが発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。発泡剤の量は、水の場合、例えば樹脂成分(ポリオール+ポリイソシアネート)100質量部に対して0.5~7.0質量部が好ましい。水の含有量が7.0質量部より多い場合には、水とポリイソシアネート類との反応により過剰に発熱したり、発泡体の連続気泡構造が十分に形成されず好ましくない。
【0029】
(触媒(D))
フォーム形成用組成物で使用される触媒は、例えば、フォーム形成用の公知のものであり、例えば、トリエチルアミンやテトラメチルグアニジン等のアミン系触媒、スタナスオクトエート等のスズ系触媒、フェニル水銀プロピオン酸塩又はオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される)を挙げることができる。触媒の一般的な量は、例えば樹脂成分(ポリオール+ポリイソシアネート)100質量部に対して0.05~2.0質量部である。
【0030】
(グアニジン系化合物(E)及びリン系難燃剤(F))
フォーム形成用組成物で使用されるグアニジン系化合物(E)及びリン系難燃剤(F)は、フォームの項目にて説明した通りである。尚、グアニジン系化合物(E)の比重(25℃における水の比重を1とする基準)は、1~2であることが好適であり、1.2~1.6であることがより好適であり、1.3~1.5であることが更に好適である。同様に、リン系難燃剤(F)の比重は、1~2であることが好適であり、1.2~1.6であることがより好適であり、1.3~1.5であることが更に好適である。これらの比重が上記好適範囲内にあると、液内での沈降安定性により優れる。
【0031】
ここで、グアニジン系化合物(E)の含有量は、樹脂成分{ポリイソシアネート化合物(A)と活性水素化合物(B)}の合計質量を基準として、1~15質量%であることが好適であり、4~9質量%であることがより好適であり、5~8質量%であることが更に好適である。
【0032】
また、リン系難燃剤(F)の含有量は、樹脂成分{ポリイソシアネート化合物(A)と活性水素化合物(B)}の合計質量を基準として、0.1~15質量%であることが好適であり、1.0~6質量%であることがより好適であり、1.5~5質量%であることが更に好適である。
【0033】
グアニジン系化合物(E)とリン系難燃剤(F)との質量比{(E):(F)}は、95:5~30:70であることが好適であり、85:15~40:60質量%がより好適であり、80:20~50:50質量%が更に好適である。
【0034】
(他の成分)
フォーム形成用組成物に対して適宜添加される助剤として、整泡剤、酸化防止剤、着色剤、分散剤等を挙げることができる。整泡剤は、例えば、フォーム用として公知のものを使用することができる。例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、シリコーン系整泡剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、フェノール系化合物、含フッ素化合物系整泡剤及び公知の界面活性剤を挙げることができる。シリコーン系整泡剤は、特に限定されないが、シリコーン化合物でもポリジメチルシロキサン鎖の数(N)が25~100のものが好ましい。整泡剤量は、好適には、2以上の活性水素部位を有する化合物(例えば、ポリオール、ポリアミン)100質量部に対して0.1~3.0質量部である。前記範囲内であると、より好適な軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、リン系、ジフェニルアミン系等を挙げることができ、特にリン系酸化防止剤及びジフェニルアミン系酸化防止剤の何れか一方又は併用が好ましい。また、分散剤は、粉体難燃剤と溶液の濡れ性を高め、均一分散させることができ、沈降安定性向上に繋がる。更に、分散剤を使用すると、発泡中の粘度、チキソ性を下げることができるため、高通気且つ低圧縮歪のフォームが得られる。分散剤としては、例えば、リン酸エステル、脂肪酸エステル、ポリエーテル燐酸エステルアミン、脂肪族多価カルボン酸、長鎖アミノアマイド、ポリエステル酸アミドアミン塩、非イオン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0035】
<製造プロセス>
(システム液)
本発明に係るフォーム形成用組成物は、システム液として提供することが好適である。システム液構成としては、例えば、第一液{イソシアネート化合物(A)含有}と、第二液{活性水素化合物(B)、グアニジン系化合物(E)及び/又はリン系難燃剤(F)等を含有}と、第三液{発泡剤(C)、触媒(D)及び場合により一部の活性水素化合物}の形にて提供し、使用直前で第一液と第二液を混合する。尚、第二液は、イソシアネート化合物(A)以外の成分を含むことが好適である。
【0036】
(プロセス)
フォームには、スラブ発泡体とモールド発泡体がある。例えば、スラブ発泡体製造プロセスの場合、フォーム形成用組成物をコンベア上に吐出し、常温及び大気圧下で活性水素化合物とポリイソシアネートとを反応させて上方へ膨らんだ蒲鉾状に連続発泡成形させる。その後、発泡後に裁断等によって適宜の寸法・形状にする。一方、モールド発泡体製造プロセスの場合、製品形状のキャビティを有する金型にフォーム形成用組成物を充填して製品形状に発泡させる。
【0037】
≪用途≫
本発明に係るフォームは、単独及び複合(例えば、金属板やプラスチック板等に積層)、いずれでも使用可能である。該フォームは、幅広い分野において使用可能である。特に、自動車、鉄道、航空機等の車両の緩衝材、吸音材、隙間充填材として有用である。例えば、車両用防音材として使用される場合、耐熱性が要求される部材(例えば、エンジンフード裏面の防音シートや、エンジンカバーや、オイルパンカバー等)の用途に好適である。尚、上記を含め様々な用途にて、スラブフォームでもモールドフォームでも適用可能である。
【0038】
より具体的に説明すると、複合の場合は、プラスチック、フィルム、ファブリック表皮(ナイロン生地、ポリエステル生地、ポリウレタン生地)、人工皮革、本革、不織布、メッシュ生地、金属等と積層する態様を例示できる。例えば、クッション性自動車座席シートの表皮材や天井材、家具のソファーの上張り材、ベッドの上張り材等を挙げることができる。また、自動車等の車両用途、例えば、クッション性自動車座席シートの表皮材や天井材、ライニング及びガスケット用途、車両用防音材用途(例えば、エンジンフード裏面の防音シートや、エンジンカバーや、オイルパンカバー、フードサイレンサー、ダッシュサイレンサー、サイドカバー、アンダーカバー等音響減衰材及び隙間充填材)、家具用途(寝具類、家具、オフィス家具シート用途、カーペットクッション用途、フローリング下敷き)、ボート用途、バスシート用途、列車・航空機等の大量輸送機関内装、トラクタ用途、自転車用途、圧縮機用途、被覆用途、スポーツ用品用途、靴用途、包装緩衝クッション用途、織物用途等を挙げることができる。
【実施例】
【0039】
<製造例>
以下の原料を用いて表1及び表2の配合に調製したポリウレタン原料を混合・攪拌し、発泡BOXに移して発泡させることで、実施例1~17及び比較例1~4に係るポリウレタンフォームを製造した。
ポリイソシアネート化合物(A):トリレンジイソシアネート(2,4-TDI異性体比率80%)
活性水素化合物(B):ポリエーテルポリオール(三洋化成工業株式会社製 GP3050NS;官能基数:3、Mw:3000)
発泡剤(C):水
触媒(D):N,N-ジメチルアミノヘキサノール(アミン触媒)、スズ触媒
グアニジン系化合物(E):ジシアンジアミド(平均粒子径30μm、50μm、80μm)、リン酸グアニジン(平均粒子径17μm)
リン系難燃剤(F):ホスフィン酸アルミニウム(平均粒子径30μm、50μm)、ポリリン酸アンモニウム(平均粒子径15μm)
整泡剤:シリコーン整泡剤(東レ・ダウコーニング株式会社製、「SZ-1136」)
他の添加剤:塩化ビニル、三酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化防止剤
【0040】
<初期試験>
まず、実施例1~17及び比較例1~4に係るポリウレタンフォームについて、難燃性{FMVSS 302(水平試験)}、ドリップの有無及び熱プレス時黄変有無に関し評価した。結果を表1~表3に示す。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
次に、初期試験において「〇評価」のサンプルについて、二次評価を実施した。難燃性は、UL94 HBF(水平試験)、UL94 HF燃焼試験(水平試験)、航空機内装品燃焼試験 FAR25.853(垂直試験)で評価した。
【0045】
【0046】