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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20241225BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20241225BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G01C21/26 A
G09B29/10 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021116206
(22)【出願日】2021-07-14
(65)【公開番号】P2023012649
(43)【公開日】2023-01-26
【審査請求日】2024-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】的野 春樹
(72)【発明者】
【氏名】永崎 健
(72)【発明者】
【氏名】三苫 寛人
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-177699(JP,A)
【文献】特開2015-204097(JP,A)
【文献】特開2015-011086(JP,A)
【文献】特開2007-333532(JP,A)
【文献】特表2009-510455(JP,A)
【文献】特開2016-130971(JP,A)
【文献】特開2005-055201(JP,A)
【文献】特開2010-215029(JP,A)
【文献】特開2019-021029(JP,A)
【文献】特開2002-163765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G08G 1/16
G01C 21/26
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両外の環境を認識する情報取得装置と、
前記情報取得装置で得た情報から、所定のランドマークを検出するランドマーク検出部と、
前記車両の走行履歴から注意喚起対象物の位置を検出する注意喚起対象物管理部と、
前記所定のランドマーク、前記注意喚起対象物、およびこれらの位置関係を登録したデータベースと、を備え、
前記注意喚起対象物管理部は、前記ランドマーク検出部で前記所定のランドマークを検出した場合、前記位置関係に基づき、前記車両の進行路上にある前記注意喚起対象物に対する前記車両の制御または前記車両の乗員への通知を行う車両制御装置であって、
前記注意喚起対象物は、障害物とサイネージであり、
前記データベースは、前記所定のランドマークと前記障害物の位置関係を登録した障害物データベースと、前記所定のランドマークと前記サイネージの位置関係を登録したサイネージデータベースであり、
前記注意喚起対象物管理部は、前記障害物を運転者に通知し、前記サイネージを同乗者に通知することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項に記載の車両制御装置において、
前記注意喚起対象物管理部は、前記障害物を車載の報知装置に通知し、前記サイネージを携帯端末に通知することを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項に記載の車両制御装置において、
前記注意喚起対象物管理部は、前記障害物を運転者の携帯端末に通知し、前記サイネージを同乗者の携帯端末に通知することを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
車両に搭載され、前記車両外の環境を認識する情報取得装置と、
前記情報取得装置で得た情報から、所定のランドマークを検出するランドマーク検出部と、
前記車両の走行履歴から注意喚起対象物の位置を検出する注意喚起対象物管理部と、
前記所定のランドマーク、前記注意喚起対象物、およびこれらの位置関係を登録したデータベースと、を備え、
前記注意喚起対象物管理部は、前記ランドマーク検出部で前記所定のランドマークを検出した場合、前記位置関係に基づき、前記車両の進行路上にある前記注意喚起対象物に対する前記車両の制御または前記車両の乗員への通知を行う車両制御装置であって、
さらに、地図情報を保持し位置情報を取得するGNSS車載機を備え
前記注意喚起対象物管理部は、
前記GNSS車載機を利用できる環境では、前記GNSS車載機から取得した位置情報に基づいて前記車両の制御または前記車両の乗員への通知を行い、
前記GNSS車載機を利用できない環境では、前記車両の走行履歴から推測した位置情報に基づいて前記車両の制御または前記車両の乗員への通知を行うことを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
車両に搭載され、前記車両外の環境を認識する情報取得装置と、
前記情報取得装置で得た情報から、所定のランドマークを検出するランドマーク検出部と、
前記車両の走行履歴から注意喚起対象物の位置を検出する注意喚起対象物管理部と、
前記所定のランドマーク、前記注意喚起対象物、およびこれらの位置関係を登録したデータベースと、を備え、
前記注意喚起対象物管理部は、前記ランドマーク検出部で前記所定のランドマークを検出した場合、前記位置関係に基づき、前記車両の進行路上にある前記注意喚起対象物に対する前記車両の制御または前記車両の乗員への通知を行う車両制御装置であって、
前記注意喚起対象物管理部は、前記情報取得装置が認識した他車両の位置から死角を推定し、該死角の領域を前記ランドマークの検出領域から除外することを特徴とする車両制御装置。
【請求項6】
車両に搭載され、前記車両外の環境を認識する情報取得装置と、
前記情報取得装置で得た情報から、所定のランドマークを検出するランドマーク検出部と、
前記車両の走行履歴から注意喚起対象物の位置を検出する注意喚起対象物管理部と、
前記所定のランドマーク、前記注意喚起対象物、およびこれらの位置関係を登録したデータベースと、を備え、
前記注意喚起対象物管理部は、前記ランドマーク検出部で前記所定のランドマークを検出した場合、前記位置関係に基づき、前記車両の進行路上にある前記注意喚起対象物に対する前記車両の制御または前記車両の乗員への通知を行う車両制御装置であって、
前記情報取得装置の出力に基づいて、前記データベースに登録された注意喚起対象物を検出できなかった場合、前記注意喚起対象物管理部は、前記データベースに登録された注意喚起対象物を削除することを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を利用できない場合であっても、自車位置に対応した情報を乗員やシステムに提供できる、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車位置に応じた情報をシステムに提供する従来技術として、特許文献1の運転行動データ生成装置が知られている。同文献の要約書には、課題として「道路上の二次元空間分布を表現する運転行動支援装置に用いられ、人間に近い運転行動に基づく自動運転を支援するために、局所的なルールや周辺環境に適した知識、及び経験的なノウハウが考慮された運転行動データベースを生成する。」と記載されており、解決手段として「運転者(人間)が慣例的に行っている局所的な運転行動(交差点内のコース取り、停止線のない交差点での停止位置、単一車線の多重利用等)の分布情報を集約し、道路ネットワーク情報に関連付けて管理・保存する。自動運転システムは、これらの分布情報を利用することで、環境に適した、乗員に違和感の少ない自動走行を実現する。自動運転システムは、環境や天候に合わせた人間らしい運転行動を計画する。車載センサ群12を活用した自動処理によりデータベースを生成するため、オペレータによるマニュアル処理がなく、低コストに情報を生成する。」と記載されている。
【0003】
また、同文献の段落0057には「測位センサ30は、主にGPS(Global Positioning System)を想定し、GPS衛星からの受信信号に基づいて自車の絶対位置や移動方向、速度を計測する。」と記載されおり、局所的な運転行動データベースの作成時や利用時に、GPSに基づく自車の絶対位置等を参照することが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-109675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、自車位置に対応した局所的情報を道路ネットワーク情報に関連付けて管理・保存するための前提として、道路ネットワーク情報(地図情報)を保持した記憶装置(具体的には、GNSS車載機)が必須であるだけでなく、自車の絶対位置に関連付けた情報を車両制御システムに提供するための前提として、車両制御システムと連携可能な高価なGNSS車載機が必須であった。
【0006】
しかしながら、専ら近隣移動にのみ使用される車両には、車両制御システムと連携可能な高価なGNSS車載機が搭載されないことも多く、また、GNSS車載機を搭載した車両であっても、トンネル内や地下駐車場等では、自車の絶対位置等を検知できないため、特許文献1の技術では、自車位置に応じた情報を出力できないこともあった。
【0007】
そこで、本発明は、GNSSを利用できない場合でも、自車位置に対応した情報を乗員や車両制御システムに提供できる、車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の車両制御装置は、車両に搭載され、前記車両外の環境を認識する情報取得装置と、前記情報取得装置で得た情報から、所定のランドマークを検出するランドマーク検出部と、前記車両の走行履歴から注意喚起対象物の位置を検出する注意喚起対象物管理部と、前記所定のランドマーク、前記注意喚起対象物、およびこれらの位置関係を登録したデータベースと、を備え、前記注意喚起対象物管理部は、前記ランドマーク検出部で前記所定のランドマークを検出した場合、前記位置関係に基づき、前記車両の進行路上にある前記注意喚起対象物に対する前記車両の制御または前記車両の乗員への通知を行うものとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両制御装置によれば、GNSSを利用できない場合でも、自車位置に対応した情報を乗員や車両制御システムに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の車両と、その走行環境の説明図
図2】障害物と車両の位置関係の説明図
図3】実施例1の車両制御装置の機能ブロック図
図4】実施例1の車両制御装置の処理フローチャート
図5】実施例2の車両制御装置の機能ブロック図
図6】実施例3の車両制御装置の機能ブロック図
図7】実施例4の車両制御装置の機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の車両制御装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0012】
まず、図1から図4を用いて、本発明の実施例1に係る車両制御装置100を説明する。
【0013】
図1は、本実施例の車両制御装置100を搭載した車両Vと、その走行環境の一例の説明図である。同図において、1はステレオカメラ、2はECU(Electronic Control Unit)、3は乗員に情報を報知(通知)するスピーカやディスプレイ等の報知装置、4は車両Vを操舵する操舵装置、5は車両Vを減速する制動装置である。また、車両Vの進路には、運転者に減速を促すための突起であるスピードバンプ200が設けられている。なお、スピードバンプ200は、車両制御装置100が運転者に報知する障害物の一例であるが、報知対象の障害物は、例えば、路面上の落下物や、路面破損により生じた凹凸等であっても良い。
【0014】
ステレオカメラ1は、2つのカメラを左右に配置して、車両前方の同一対象物を左右の視点から撮像することで、左右の画像データを出力する情報取得装置であり、例えば、車両Vのフロントガラス内面上部に装着されたものである。
【0015】
ECU2は、ステレオカメラ1からの画像データに基づいて、車両Vの各部を制御する制御ユニットであり、具体的には、CPU等の演算装置、半導体メモリ等の記憶装置、有線または無線の通信装置などのハードウェアを備えたコンピュータである。そして、記憶装置にロードされたプログラムを演算装置が実行することで、後述する各種機能が実現されるが、以下では、演算装置や記憶装置の一般的な動作等の周知技術を適宜省略しながら説明する。なお、図1では、ステレオカメラ1とECU2が分離した構成を例示しているが、両者を一体に構成としても良い。
【0016】
ステレオカメラ1とECU2の協働による機能の一つとして、ステレオカメラ1が撮像した左右の画像データにおける見え方のずれ(視差)に基づいて、画像データ中の対象物までの距離を算出する機能がある。一般的なステレオカメラ1では、以下の式1で対象物までの距離を算出することができる。
【0017】
【数1】
【0018】
ここで、Z[mm]は対象物までの距離、f[mm]はカメラの焦点距離、w[mm/px]は画素ピッチ、B[mm]は左右カメラ間の距離(基線長)、D[px]は視差を表す。
【0019】
視差を算出する際には、左右の画像データを水平に並べ、左画像データ内の特定の点に対して右画像データ内で同一の点が撮像されている位置を探索する。この探索を効率よく実施するため、一般には平行化処理を事前に実施する。ここで、平行化とは、画像データの縦方向の位置合わせを意味する。すなわち、左右の画像データで同一の点は同一の高さに撮像されているよう画像データを校正する処理である。平行化された画像データでは、対応点を探索する際に、ある横一列のみを探索すればよく、処理効率が高い。そして、平行化された左右の画像データをブロック毎に左右の一致する位置を探索して画素毎の距離を算出できる。この距離データから平面を推定して、平面上の点群を除去し、残った点群のうち距離が近いものをグルーピングすることで、道路標識や交通信号機や障害物を検出することができる。
【0020】
また、落下物のような小さな障害物を検出したい場合は、進行路上の道路はなだらかな平面と仮定できるため、なだらか平面から段差になっている部分を落下物として検出する方法がある。しかし、落下物のような高さが低く小さい段差などを検出するためには、ステレオカメラ1の焦点距離を大きくする、すなわちズームレンズを使用するか、高解像度のカメラセンサを使用する必要がある。車の周辺の障害物を広くカバーするためには視野を広く見る必要がありこれを両立するためには高画素なセンサをつけるか、焦点距離の異なる複数のセンサをつける必要がある。
【0021】
スピードバンプ200等の段差を障害物として運転者に事前報知することは、減速せずに段差を通過して発生する事故の回避に有効である。既知の段差を事前報知するためには、その段差に対する自車位置の把握が必要であるが、GNSS車載機を搭載しない車両や、GNSS車載機を搭載した車両であってもトンネル内等のGNSSを利用できない環境では、自車位置を検知できないため、障害物データベースに登録された既知の段差に接近しても、その段差の存在を事前に警告することが難しい。そこで、本実施例の車両制御装置100では、新規の段差(障害物)を検知した場合、その段差(障害物)の直近のランドマーク情報も併せて障害物データベースに登録しておくことで、そのランドマークを次回通過した場合に、段差(障害物)の存在を早期に警告できるようにした。
【0022】
<車両制御装置100による事前警告>
図2は、車両Vが、EUC2の障害物データベースに登録された既知のスピードバンプ200に接近する場合の、車両制御装置100の動作を例示している。既知のスピードバンプ200の直近のランドマークとして、図示する道路標識群と交通信号機の組み合わせが障害物データベースに登録されている場合、ECU2がランドマーク(道路標識群と交通信号機の組み合わせ)を検知した図2(a)の時点で、ステレオカメラ1が未だ検知していないスピードバンプ200までの距離Lを算出することができる。なお、この例では、車両Vが専ら近隣移動にのみ使用される車両であり、車両Vの日常的な移動範囲には、図示するような、道路標識群の指示内容、道路標識群と交通信号機の形状や位置、道路標識群と交通信号機の距離等の組み合わせは、他に存在しておらず、これらのランドマーク情報の組み合わせに基づいて、車両Vの自車位置や移動方向を一義的に特定できるものとする。
【0023】
その後、図2(b)では、スピードバンプ200までの距離が所定距離Lになった時点で、ECU2は報知装置3を介して、運転者にスピードバンプ200の存在を事前警告する。そのため、運転者は、車両Vがスピードバンプ200に到達する前に車両Vを十分に減速させることができ、図2(c)のように、スピードバンプ200を低速で安全に通過することができる。なお、警告後に運転者が車両Vを十分に減速させない場合は、ECU2が制動装置5を制御して減速を支援しても良い。
【0024】
<車両制御装置100の機能ブロック図>
図3は、本実施例の車両制御装置100の機能ブロック図である。ここに示すように、ECU2は、画像入力部21、距離測定部22、物体検知部23、ランドマーク検出部24、自車挙動推定部25、障害物管理部26を備えている。以下、各部の詳細を説明する。なお、情報取得装置として、ステレオカメラ1に代えてLiDARを利用する場合は、画像入力部21を省略すれば良い。
【0025】
画像入力部21は、ステレオカメラ1で撮像した画像データを入力するインターフェースである。なお、同一時刻に撮像した左右の画像データが同期入力されると、後段の処理で距離や物体をより正確に求めることができる。画像入力部21に入力された画像データは、ECU2の記憶装置(図示せず)に格納される。
【0026】
距離測定部22は、ステレオカメラ1から入力された左右の画像データの各画素に対して、上記した式1の演算を実行し、画素毎に距離データ等の3次元データを算出する。算出した3次元データは、ECU2の記憶装置(図示せず)に格納される。
【0027】
物体検知部23は、画像入力部21からの画像データ、または、距離測定部22からの3次元データに基づいて、物体が存在する領域(物体領域)を検知する。物体領域の検知方法は、画像データから人や車のパターンを検出する方法や、3次元データに含まれる距離データから距離の近い領域をグルーピングする方法などがある。また、スピードバンプ200等の道路の段差を検出するには、進行方向の平面である道路部分を検出して、その奥行高さ情報から路面の凹凸を検出する方法などがある。路面の凹凸の検出には、奥行き高さ情報の極大値と極小値をそれぞれ検出し、自車の移動に沿って時系列に対応する点を追跡し、追跡が複数回成功した点を段差の位置とすることで、段差を精度良く検出することができる。また、路面の極大値と極小値の検出ではなく、奥行き高さのデータを入力とした機械学習により、どの位置が段差かどうかを教師データとして学習させる方法もある。この方法によれば、複雑な形状の段差や、複数連続した段差なども検出できるようになり、検出精度向上に効果的である。
【0028】
ランドマーク検出部24は、画像入力部21からの画像データ、または、距離測定部22からの3次元データを利用して、ランドマーク情報を検出する。ここで検出されるランドマーク情報は、例えば、道路標識の指示内容、道路標識や交通信号機の形状や位置、ランドマーク同士の距離等である。
【0029】
自車挙動推定部25は、自車の車速、ヨーレート、操舵角等に基づいて、移動経路等の自車挙動を計算する。なお、本実施例では、自車挙動推定部25の入力として、自車の車速、ヨーレート、操舵角を挙げたが、画像データ中の点を追跡してカメラの移動量を推定する方法を使用してもよい。その場合、自車の車速、ヨーレート、操舵角等のセンサ出力の利用が不要となる。
【0030】
障害物管理部26は、ECU2の記憶装置(図示せず)に格納された障害物データベースを管理するとともに、障害物データベースを参照しながら車両Vの各部を制御する。具体的には、物体検知部23が未知の障害物を検知した場合であれば、その障害物と直前のランドマーク情報の組み合わせを障害物データベースに登録する。一方、ランドマーク検出部24が障害物データベースに登録されたランドマークを検出した場合であれば、車両Vがそのランドマーク情報に対応する障害物に接近したときに、報知装置3を介して運転者に障害物への接近を事前報知したり、操舵装置4や制動装置5に障害物を安全に通過するための指令を出力したりする。そのため、障害物管理部26は、ランドマーク検出部24がランドマークを検出した時点から、自車挙動推定部25から得た自車の移動軌跡を記憶する。
【0031】
上記の通り、ECU2の記憶装置には、画像データ、3次元データ、障害物データベース等が記憶される。しかし、記憶装置のメモリ量は有限であるため、一定量を繰り返し利用するのが良い。また、ランドマークが多数見つかるときには、障害物管理部26から出力される移動量が一定以上離れた場合を保持するのが望ましい。一定間隔内で、特に際立ったランドマークに絞って記憶することで、広範囲のエリアの情報を記憶することができるとともに、記憶装置のメモリ量を少なく保持することができるため、廉価なシステムへの搭載性が向上する。
【0032】
<本実施例の車両制御装置の処理フローチャート>
次に、図4の処理フローチャートを用いて、本実施例の車両制御装置100の具体的な処理内容を説明する。
【0033】
まず、ステップS1では、ステレオカメラ1は、車両前方を撮像し、左右の画像データを生成する。そして、ECU2の画像入力部21は、ステレオカメラ1から取得した左右の画像データを記憶装置に記憶する。
【0034】
次に、ステップS2では、距離測定部22は、記憶装置に記憶された左右の画像データに基づいて画素毎の距離を演算し、3次元データとして記憶装置に記憶する。
【0035】
ステップS3では、物体検知部23は、画像データまたは3次元データに基づいて、物体を検知し、物体の種別を判断する。
【0036】
ステップS4では、ランドマーク検出部24は、ステップS3で検知した物体が障害物データベースに登録されたランドマークであるかを判定する。そして、登録されたランドマークであればステップS5に進み、そうでなければステップS6に進む。
【0037】
ステップS5では、障害物管理部26は、そのランドマークに対応する障害物の相対位置を障害物データベースから読み取るとともに、自車挙動推定部25の出力に基づいて推定した自車位置も踏まえて、報知装置3を介して障害物の手前で運転者に障害物の存在を警告したり(図2参照)、通信装置を介して車両制御システムに障害物の位置を通知したりする。その後、ステップS1に戻る。
【0038】
一方、ステップS6では、ステップS3で検知した物体が障害物データベースに未登録の障害物であるかを判定する。そして、検知した物体が未知の障害物であればステップS7に進み、そうでなければステップS1に戻る。
【0039】
ステップS7では、ランドマーク検出部24は、記憶装置に記憶された左右の画像データまたは3次元データに基づいて、未知の障害物の直近のランドマーク情報を検出する。
【0040】
ステップS8では、障害物管理部26は、新規の障害物と、その障害物の直近のランドマーク情報を関連付けて障害物データベースに登録する。
【0041】
以上で説明した本実施例の車両制御装置によれば、ステレオカメラの出力に基づいて、障害物データベースに登録済みのランドマークを検知した場合に、そのランドマークに対応する障害物の存在を運転者に警告したり、車両制御システムに通知したりするので、GNSSを利用できない場合であっても、自車位置に対応した情報を乗員やシステムに提供することができる。
【実施例2】
【0042】
次に、図5を用いて、本発明の実施例2に係る車両制御装置100を説明する。なお、実施例1との共通点は重複説明を省略する。
【0043】
本実施例の車両制御装置100は、実施例1の障害物管理部26に代えて、サイネージ管理部27を設けたものである。このサイネージ管理部27は、車両Vが所定位置に接近したときに、ECU2のサイネージデータベースに登録されたサイネージ情報を、報知装置3を介して運転者や同乗者に報知するものである。なお、サイネージとは、広告に類する情報であり、例えば、近辺の食堂の広告である。
【0044】
例えば、車両Vの前方の壁面等に、QRコード(登録商標)などの画像形式情報が描かれている環境では、物体検知部23は、ステレオカメラ1で撮像した画像データ中の画像形式情報をデコードすることで、サイネージ情報を取得することができる。そして、このサイネージ情報を、その画像形式情報の直近のランドマーク情報と組み合わせてサイネージデータベースに登録しておくことで、以後は、ランドマーク検出部24でそのランドマーク情報を検出した時点で、未だ撮像できない位置の画像形式情報に相当するサイネージ情報を車両Vの乗員に通知することができる。なお、サイネージ情報の登録にステレオカメラ1を介在させる必要は無く、例えば、EUC2の無線通信装置を利用し、サイネージ情報を無線通信で登録しても良い。
【0045】
このように、外部からサイネージ情報を登録することができれば、任意の場所で任意の情報を運転者等に通知できるので、GNSS車載機を備えない車両Vであっても、自車位置に応じた広告を表示したり、仮想現実空間を応用したコンピュータゲーム等のアプリケーションを実現したりすることができる。
【実施例3】
【0046】
次に、図6を用いて、本発明の実施例3に係る車両制御装置100を説明する。なお、上記の実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0047】
実施例1の報知装置3は、障害物管理部26の出力である障害物を報知し、また、実施例2の報知装置3は、サイネージ管理部27の出力であるサイネージを報知したが、本実施例の車両制御装置100では、障害物管理部26の出力である障害物を報知装置3で報知し、サイネージ管理部27の出力であるサイネージを携帯端末6で報知するようにした。
【0048】
障害物とサイネージの報知では、運転者にとっての重要度が異なるため、情報種別毎に異なる報知音が割り当てられることが多い。しかしながら、報知音から情報種別を区別するにはある程度の学習が必要であるためユーザにとって煩雑であるだけでなく、とっさの判断が難しく、すぐに情報内容を理解することが難しい。
【0049】
そこで、本実施例では、障害物情報とサイネージ情報の報知先を異ならせることとした。すなわち、車両制御装置100にスマートフォン等の携帯端末6を事前に登録しておき、障害物情報は車載の報知装置3に報知し、サイネージ情報は携帯端末6に報知することで、運転者が情報種別を容易に区別できるようにした。なお、障害物情報を運転者の携帯端末(図示せず)に報知し、サイネージ情報を同乗者の携帯端末6に報知しても良い。
【0050】
このようにすることで、運転者への安全を担保しながら優先度の低いサイネージ情報を通知することができる。また、障害物に関する警報とそれ以外の優先度を調停することができるため重要な情報を確実に通知できる利点がある。
【実施例4】
【0051】
次に、図7を用いて、本発明の実施例4に係る車両制御装置100を説明する。なお、上記の実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0052】
上記の実施例では、自車挙動推定部25の出力に基づいて自車位置を推定したが、GNSS7を装備した車両Vであれば、GNSS7の出力を利用することでより正確な自車位置を推定できる。そこで、本実施例では、GNSS7を利用できる環境ではGNSS7の出力を利用して自車位置を推定し、GNSS7を利用できない環境(例えば、トンネル内、屋内駐車場、等)では自車挙動推定部25の出力を利用して自車位置を推定することとした。
【0053】
図7に示すように、ECU2とGNSS7が連携している場合、障害物管理部26は、GNSS7から自車の位置情報を受信できるので、GNSS7を利用できる環境では、GNSS7からの位置情報と障害物データベースに登録された障害物の位置情報を比較することで、運転者に障害物を事前通知することができる。しかし、GNSS7から位置情報を正しく受信できない場合には、上記した各実施例のように、ランドマーク検出部24がランドマークを検出した位置と、自車挙動推定部25の出力から推定した自車位置の関係に基づいて、障害物を事前通知する。
【実施例5】
【0054】
次に、本発明の実施例5に係る車両制御装置100を説明する。なお、上記の実施例との共通点は重複説明を省略する。本実施例では、ランドマーク検出の精度向上方法について説明する。
【0055】
本実施例では、データベースに登録するランドマーク情報として、路面の勾配情報を使用する。図2では、道路標識や交通信号機をランドマークとして利用したが、これらは撤去されたり、新設されたりする可能性がある。これに対し、3次元情報の平面部を検出した路面の勾配情報は、道路標識や交通信号機に比べ恒久的であり、また、路面状態や降雪降雨などの環境変化に対してもロバストである。従って、路面の勾配情報をランドマーク情報としてデータベースに登録することで、道路標識や交通信号機等が撤去された場合でもランドマークを検出することができる。路面勾配は変化が起きにくいため、ランドマーク情報として長期間活用できる可能性が高い。
【実施例6】
【0056】
次に、本発明の実施例6に係る車両制御装置100を説明する。なお、上記の実施例との共通点は重複説明を省略する。本実施例では、ランドマーク情報の高速探索方式について説明する。
【0057】
ランドマーク情報は、車両Vの周囲の物体の位置関係情報であるため、複数の地点を登録すると、ランドマーク情報の生成に大きな計算コストがかかる。そこで、本実施例では、画像入力部21にて、画像データを単調化し(車線幅や道路の色、幅情報、標識情報から道路の種別を絞り込み)、かつ、探索するランドマークを分割することで、探索回数を減らすことができ、ランドマーク情報を高速に探索できる。これにより、少ないCPUリソースで多くのランドマーク情報を記憶し探索することが可能となる。
【実施例7】
【0058】
次に、本発明の実施例7に係る車両制御装置100を説明する。なお、上記の実施例との共通点は重複説明を省略する。本実施例では、自車以外の移動体が存在する環境下での、ランドマーク情報の登録方法、および、ランドマーク情報の利用方法を説明する。
【0059】
図2では自車以外の車両が存在しない環境を例示したが、通常は、自車以外にも走行車両や停止車両が存在することが多い。ランドマークとしては、容易に変化しない構造物を選択する必要があるが、停止車両が存在する環境では次のような問題が生じる。
【0060】
例えば、停止車両を含むランドマーク情報をデータベースに登録すると、その停止車両の移動後には、ランドマーク検出部24が検出したランドマーク情報とデータベースに登録されたランドマーク情報が一致しないため、自車が本来障害物を通知すべき位置に至っても障害物を通知できない可能性がある。そこで、本実施例では、停止車両のように移動可能性のある構造物はランドマークから除外する。
【0061】
また、他車両が存在する場合、その他車両の死角にランドマークに適した構造物が存在しても正しく登録できない可能性がある。そこで、本実施例では、同一特徴を複数回検出したときに、つまり、同じ道路を複数回通過し、同じランドマークを繰り返し抽出したときに、そのランドマークをランドマーク情報として登録することで、移動体を含まないランドマーク情報を登録することができる。
【0062】
また、他車両等が存在する環境では、一部のランドマークが他車両等で隠れてしまい、本来は検出できるはずのランドマーク情報を検出できない場合がある。そこで、本実施例では、他車両の位置から死角の位置を推定し、その位置をランドマーク情報の候補から除外して、検出したランドマークがデータベースに登録されたランドマークであるかを判定することで、自車位置推定時の推定不良を防ぐことができる。
【実施例8】
【0063】
次に、本発明の実施例8に係る車両制御装置100を説明する。なお、上記の実施例との共通点は重複説明を省略する。本実施例では、データベースに登録されたランドマーク情報を検出した後に、関連する障害物が検出できない場合のデータベースの更新方法について説明する。
【0064】
道路の状況は時々刻々と変化しているため、例えば、障害物データベースに登録された障害物が修繕により道路からなくなることがある。従って、本実施例では、ランドマークから所定距離の位置において、ステレオカメラ1により障害物が検出できなかった場合は、データベースに登録されたランドマーク情報を削除することとする。ただし、障害物を偶然検出できなかっただけの可能性もあるため、障害物の未検出を複数回繰り返した場合にデータベースから障害物を削除することで、実在する障害物を誤って削除する問題を防止することができる。また、ステレオカメラを使用した場合、有効視差が多い時に信頼度が高いため、有効視差が多い時に未検知だった場合はすぐに削除する。これにより、素早く削除することができ情報を常に最新状態にすることができる。
【0065】
以上の各構成は、それらの一部又は全部が、ハードウェアで構成されても、プロセッサでプログラムが実行されることにより実現されるように構成されてもよい。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0066】
V 車両、
100 車両制御装置、
1 ステレオカメラ、
2 ECU、
21 画像入力部、
22 距離測定部、
23 物体検知部、
24 ランドマーク検出部、
25 自車挙動推定部、
26 障害物管理部、
27 サイネージ管理部、
3 報知装置、
4 操舵装置、
5 制動装置、
6 携帯端末、
7 GNSS、
200 スピードバンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7