(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H10D 30/66 20250101AFI20241225BHJP
H10D 64/23 20250101ALI20241225BHJP
H10D 64/20 20250101ALI20241225BHJP
【FI】
H01L29/78 652F
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652K
H01L29/78 652M
H01L29/78 653C
H01L29/78 652S
H01L29/50 M
H01L29/44 L
(21)【出願番号】P 2021146266
(22)【出願日】2021-09-08
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】馬場 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩朗
(72)【発明者】
【氏名】下村 紗矢
(72)【発明者】
【氏名】西脇 達也
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0117144(US,A1)
【文献】国際公開第2017/168734(WO,A1)
【文献】特開2017-147431(JP,A)
【文献】特開2016-192440(JP,A)
【文献】特開2021-034540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/739
H01L 29/417
H01L 29/41
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた半導体部材と、
前記半導体部材内に設けられ、前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向に対して直交した第2方向に延びる第3電極と、
前記第2電極に接続され、前記第2方向に沿って複数設けられ
、相互に離隔した第4電極と、
前記半導体部材内における前記第1電極と前記複数の第4電極との間に設けられ、前記第2方向に延び、前記複数の第4電極に接続され、前記第1電極から離隔した第5電極と、
を備え
、
前記第4電極の前記第1電極側の第1端は、前記第3電極よりも前記第1電極側に位置する半導体装置。
【請求項2】
前記第4電極は金属を含み、
前記第5電極はシリコンを含む請求項
1に記載の半導体装置。
【請求項3】
少なくとも、前記半導体部材と前記第3電極との間、前記第3電極と前記第4電極との間、前記半導体部材と前記第4電極との間、及び、前記半導体部材と前記第5電極との間に設けられた絶縁部材をさらに備えた請求項1
または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた半導体部材と、
前記半導体部材内に設けられ、前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向に対して直交した第2方向に延びる第3電極と、
前記第2電極に接続され、前記第2方向に沿って複数設けられた第4電極と、
前記半導体部材内における前記第1電極と前記複数の第4電極との間に設けられ、前記第2方向に延び、前記複数の第4電極に接続され、前記第1電極から離隔した第5電極と、
を備え、
前記第1方向から見て、前記第3電極は前記複数の第4電極の少なくとも1つを囲
む半導体装置。
【請求項5】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた半導体部材と、
前記半導体部材内に設けられ、前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向に対して直交した第2方向に延びる第3電極と、
前記第2電極に接続され、前記第2方向に沿って複数設けられた第4電極と、
前記半導体部材内における前記第1電極と前記複数の第4電極との間に設けられ、前記第2方向に延び、前記複数の第4電極に接続され、前記第1電極から離隔した第5電極と、
を備え、
終端領域における前記第2方向に沿った単位長さに占める前記第4電極の割合は、セル領域における前記第2方向に沿った単位長さに占める前記第4電極の割合よりも高
い半導体装置。
【請求項6】
前記第2方向に沿って一列に配列された前記複数の第4電極からなる列は複数あり、複数の前記列は前記第1方向及び前記第2方向に対して直交した第3方向に沿って配列された請求項1~
5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
隣り合う2つの前記列において、前記第2方向における前記第4電極の位置は相互に同じである請求項
6に記載の半導体装置。
【請求項8】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた半導体部材と、
前記半導体部材内に設けられ、前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向に対して直交した第2方向に延びる第3電極と、
前記第2電極に接続され、前記第2方向に沿って複数設けられた第4電極と、
前記半導体部材内における前記第1電極と前記複数の第4電極との間に設けられ、前記第2方向に延び、前記複数の第4電極に接続され、前記第1電極から離隔した第5電極と、
を備え、
前記第2方向に沿って一列に配列された前記複数の第4電極からなる列は複数あり、複数の前記列は前記第1方向及び前記第2方向に対して直交した第3方向に沿って配列されており、
隣り合う2つの前記列において、前記第2方向における前記第4電極の位置は相互に異な
る半導体装置。
【請求項9】
前記半導体部材は、
前記第1電極に接続され、第1導電形の第1部分と、
前記第2電極に接続され、前記第1導電形の第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分に接し、第2導電形の第3部分と、
を有した請求項1~
8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体部材は、
前記第1電極に接続され、第1導電形の第1部分と、
前記第2電極に接続され、前記第1導電形の第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分に接し、第2導電形の第3部分と、
を有し、
前記第4電極の前記第1端は、前記第1部分と前記第3部分の界面よりも前記第1電極側に位置した請求項
1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スイッチング素子に用いる電力制御用半導体装置として、縦型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)が開発されている。縦型のMOSFETにおいては、ソース電極とドレイン電極との間に半導体部材が設けられており、半導体部材中にゲート電極が設けられている。そして、ゲート電極に所定の電位を印加することにより、半導体部材の導電性を制御して、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流を制御する。
【0003】
縦型のMOSFETにおいては、ソース電極とドレイン電極との間の耐圧を向上させるために、半導体部材にトレンチを形成し、トレンチ内に埋込ソース電極を設ける場合がある。この場合、ソース電極と埋込ソース電極との間のソース抵抗は、MOSFETの効率に影響を及ぼすため、設計段階で調整可能であることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】J. Chen, "Design optimal built-in snubber in trench field plate power MOSFET for superior EMI and efficiency performance", Proc. of 2015 SISPAD, pp. 459 - 462 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実施形態の目的は、ソース抵抗を調整可能な半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る半導体装置は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた半導体部材と、第3電極と、複数の第4電極と、第5電極と、を備える。前記第3電極は、前記半導体部材内に設けられ、前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向に対して直交した第2方向に延びる。前記第4電極は、前記第2電極に接続され、前記第2方向に沿って複数設けられている。前記第5電極は、前記半導体部材内における前記第1電極と前記複数の第4電極との間に設けられ、前記第2方向に延び、前記複数の第4電極に接続され、前記第1電極から離隔している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(a)は第1の実施形態に係る半導体装置を示す上面図であり、
図1(b)はその下面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
【
図6】
図6(a)及び(b)は、第1の実施形態の変形例に係る半導体装置を示す上面図であり、(a)は
図1(a)の終端領域Rpを示し、(b)は
図1(a)のセル領域Rcを示す。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
【
図8】
図8は、第3の実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
【
図9】
図9は、第4の実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
【
図12】
図12は、第5の実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
【
図13】
図13は、第6の実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
以下の説明及び図面において、n+、n-及びpの表記は、各不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、「+」が付されている表記は、「+」及び「-」のいずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に高く、「-」が付されている表記は、いずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に低いことを示す。これらの表記は、それぞれの領域にp形不純物とn形不純物の両方が含まれている場合には、それらの不純物が補償しあった後の正味の不純物濃度の相対的な高低を表す。
以下で説明する各実施形態について、各半導体領域のp形とn形を反転させて各実施形態を実施してもよい。
【0011】
<第1の実施形態>
本実施形態に係る半導体装置は、例えば、スイッチング素子として使用される電力制御用の縦型MOSFETである。
【0012】
図1(a)は本実施形態に係る半導体装置を示す上面図であり、(b)はその下面図である。
図2は、本実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
図2は、
図1(a)のセル領域Rcを示し、
図3~
図5に示すD-D’線による断面を示す。
図3は、
図2に示すA-A’線による断面図である。
図4は、
図2に示すB-B’線による断面図である。
図5は、
図2に示すC-C’線による断面図である。
なお、各図は模式的なものであり、適宜強調又は簡略化されている。また、図間において、各構成要素の寸法比及び位置関係は厳密に整合しているとは限らない。後述する他の図についても同様である。
【0013】
図1(a)及び(b)、
図2、
図3、
図4、
図5に示すように、本実施形態に係る半導体装置1においては、ドレイン電極10と、ソース電極20と、ゲート電極30と、上部埋込電極40と、下部埋込電極50と、半導体部材60と、絶縁部材70と、が設けられている。ドレイン電極10、ソース電極20及びゲート電極30は、金属により形成されている。半導体部材60は半導体材料により形成されている。絶縁部材70は絶縁性材料により形成されている。
【0014】
半導体部材60は、ドレイン電極10とソース電極20との間に配置されている。ゲート電極30は半導体部材60内に配置されており、一方向に延びている。半導体部材60の形状は、例えば、矩形の板状である。半導体部材60は、例えば、単結晶のシリコン(Si)からなり、局所的に不純物が導入されることにより、各部の導電形がp形又はn形とされている。半導体部材60の構成は後述する。
【0015】
以下、本明細書においては、説明の便宜上、XYZ直交座標系を採用する。ドレイン電極10からソース電極20に向かう方向を「Z方向」とし、本実施形態においてゲート電極30が延びる方向を「Y方向」とし、Z方向及びY方向に対して直交した方向を「X方向」とする。X方向とY方向とZ方向は相互に直交する。Z方向を「上」ともいい、その反対方向を「下」ともいうが、この表現も便宜的なものであり、重力の方向とは無関係である。
【0016】
図1(a)及び(b)に示すように、半導体部材60の下面61上の全体には、ドレイン電極10が配置されている。半導体部材60の上面62の外縁部上には、ゲートパッド31と、枠状の配線部32が設けられている。ゲートパッド31は、例えば、半導体部材60の上面62の1つの角部上に設けられている。配線部32はゲートパッド31に接続されている。なお、本明細書において、「接続」とは電気的な接続を意味する。半導体部材60の上面62におけるゲートパッド31及び配線部32によって囲まれた領域上には、ソース電極20が配置されている。ソース電極20はゲートパッド31及び配線部32から離隔している。
【0017】
図2~
図5に示すように、半導体部材60においては、上面62側から複数のトレンチ63が形成されている。各トレンチ63はY方向に延びている。複数のトレンチ63はX方向に沿って配列されている。トレンチ63は半導体部材60の下面61には到達していない。各トレンチ63内には、絶縁部材70が配置されている。絶縁部材70の上部は、半導体部材60の上面62から上方に突出し、トレンチ63のX方向両側に延出している。但し、X方向において隣り合う2つの絶縁部材70は、相互に離隔している。絶縁部材70は、例えば、酸化シリコンまたは窒化シリコンのうちどちらかを含む。なお、絶縁部材70は、一体的に形成されていてもよく、一体的に形成されていなくてもよい。
【0018】
絶縁部材70とソース電極20との間、及び、半導体部材60とソース電極20との間には、金属膜46が設けられている。金属膜46は、絶縁部材70における半導体部材60の上面62から突出した部分の上面及び側面を覆い、絶縁部材70間においては、半導体部材60の上面62を覆っている。金属膜46はソース電極20に接し、ソース電極20に接続されている。なお、金属膜46における半導体部材60の上面62を覆う部分とソース電極20との間には、ボイド25が形成されていてもよい。
【0019】
各トレンチ63内には、それぞれ2本のゲート電極30が配置されている。ゲート電極30は、絶縁部材70の一部を介して半導体部材60から離隔している。ゲート電極30のY方向両端部は半導体部材60の上面62まで引き出され、配線部32に接続されている。これにより、ゲート電極30は配線部32を介してゲートパッド31に接続されている。
【0020】
各トレンチ63内に配置された2本のゲート電極30の間には、複数の上部埋込電極40が配置されている。複数の上部埋込電極40はY方向に沿って断続的に一列に配列されている。言い換えると、上部埋込電極40はY方向に沿って複数設けられている。Y方向において隣り合う上部埋込電極40間には、絶縁部材70の一部が配置されている。また、上部埋込電極40は絶縁部材70の一部を介してゲート電極30から離隔している。
【0021】
Y方向に沿って一列に配列された複数の上部埋込電極40からなる列において、Y方向に沿った単位長さLに占める上部埋込電極40の割合を「割合rs」という。半導体装置1の割合rsは、設計により任意に調整することができる。割合rsは0より大きく1未満であり、例えば、0.5である。
【0022】
なお、
図2においては、上部埋込電極40がY方向に沿って周期的に配列されており、単位長さLを上部埋込電極40の配列周期に相当する長さとしているが、上部埋込電極40が周期的に配列されていない場合は、単位長さLは統計的に有意な数の上部埋込電極40を含む長さとする必要がある。例えば、単位長さLは、5以上の上部埋込電極40と、上部埋込電極40と同数の上部埋込電極40間の隙間を含む長さとする。
【0023】
上部埋込電極40の上端41はゲート電極30の上端33よりも上方、すなわち、ソース電極20側に位置している。上部埋込電極40は絶縁部材70の上面まで引き出されており、上部埋込電極40の上端41は金属膜46に接している。これにより、上部埋込電極40は金属膜46を介してソース電極20に接続されている。上部埋込電極40の下端42は、ゲート電極30の下端34よりも下方、すなわち、ドレイン電極10側に位置している。
【0024】
Y方向に沿って一列に配列された複数の上部埋込電極40からなる列は、トレンチ63毎に設けられている。このため、半導体装置1全体では、上部埋込電極40からなる列は複数あり、X方向に沿って配列されている。そして、本実施形態においては、隣り合う2つの列において、Y方向における上部埋込電極40の位置は相互に同じである。例えば、上述の2つの列をX方向から見たときに、ある上部埋込電極40に他の上部埋込電極40が重なる領域のY方向の長さは、ある上部埋込電極40のY方向の長さの半分以上である。したがって、Z方向から見て、上部埋込電極40は行列状に配列されている。
【0025】
また、半導体部材60の上面62のうち、トレンチ63間には、トレンチ64が形成されている。トレンチ64はY方向に延びている。トレンチ64内には、ソースプラグ47が設けられている。ソースプラグ47の上端は金属膜46に接している。これにより、ソースプラグ47は金属膜46を介してソース電極20に接続されている。
【0026】
例えば、上部埋込電極40、金属膜46及びソースプラグ47は、一体的に形成されている。上部埋込電極40、金属膜46及びソースプラグ47は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)からなる群より選択された少なくとも1つの金属を含み、例えば、上記金属群のいずれかの金属からなる金属化合物または合金を含んでいてもよい。
【0027】
各トレンチ63内における複数の上部埋込電極40の下方には、1本の下部埋込電極50が配置されている。下部埋込電極50はY方向に延び、複数の上部埋込電極40の下端42に接している。これにより、各トレンチ63内において、1本の下部埋込電極50が複数の上部埋込電極40に接続されている。したがって、下部埋込電極50は、複数の上部埋込電極40及び金属膜46を介して、ソース電極20に接続されている。下部埋込電極50はシリコンを含み、例えば、不純物が導入されたポリシリコンにより形成されている。
【0028】
下部埋込電極50と半導体部材60との間には、絶縁部材70の一部が配置されている。下部埋込電極50は、半導体部材60内におけるドレイン電極10と複数の上部埋込電極40との間に配置され、複数の上部埋込電極40に接続されているが、半導体部材60及びドレイン電極10からは離隔している。
【0029】
このように、絶縁部材70は、半導体部材60とゲート電極30との間、ゲート電極30と上部埋込電極40との間、ゲート電極30と金属膜46との間、半導体部材60と上部埋込電極40との間、及び、半導体部材60と下部埋込電極50との間に配置されている。
【0030】
半導体部材60においては、導電形がn+形のドレイン層65と、導電形がn-形のドリフト層66と、導電形がn+形のソース層67と、導電形がp形のベース層68が設けられている。ソース層67におけるキャリア濃度は、ドレイン層65及びドリフト層66におけるキャリア濃度よりも高い。なお、「キャリア」は電子及び正孔である。ドレイン層65は半導体部材60の下面61を構成し、ドレイン電極10とドリフト層66との間に配置されている。このため、ドリフト層66はドレイン層65を介してドレイン電極10に接続されている。ソース層67は半導体部材60の上面62を構成し、金属膜46及びソースプラグ47に接している。このため、ソース層67はソースプラグ47及び金属膜46を介してソース電極20に接続されている。
【0031】
ベース層68はドリフト層66とソース層67の間に配置されており、ドリフト層66及びソース層67に接している。ベース層68はソースプラグ47に接しており、ソースプラグ47及び金属膜46を介してソース電極20に接続されている。上述の如く、上部埋込電極40の下端42は、ゲート電極30の下端34よりも下方に位置しているが、さらに、上部埋込電極40の下端42は、ドリフト層66とベース層68とのpn界面69よりも下方、すなわち、ドレイン電極10側に位置していることが好ましい。
【0032】
次に、本実施形態に係る半導体装置1の動作について説明する。
ドレイン電極10とソース電極20との間に、ドレイン電極10の電位がソース電極20の電位よりも高くなるような電圧を印加する。この状態で、ゲート電極30に閾値よりも高い電位を印加すると、ベース層68における絶縁部材70に接する領域に反転層(チャネル)が形成される。これにより、ソース電極20から、金属膜46、ソース層67、ベース層68に形成された反転層、ドリフト層66、ドレイン層65を介して、ドレイン電極10に電子が流れる。この結果、半導体装置1はオン状態となり、ドレイン電極10からソース電極20に電流が流れる。
【0033】
ゲート電極30の電位が閾値よりも低くなると、ベース層68に形成された反転層が消滅し、ドリフト層66とベース層68とのpn界面69を起点として空乏層が拡がる。上部埋込電極40及び下部埋込電極50にもソース電極20と同じ電位が印加されるため、ドリフト層66における絶縁部材70に接する面からも空乏層が拡がる。すなわち、ドリフト層66内において、空乏層はpn界面69から下方に向けて拡がり、絶縁部材70からX方向に向けて拡がる。これにより、半導体装置1はオフ状態となり、ドレイン電極10からソース電極20に向かう電流が遮断される。
【0034】
半導体装置1がオン状態からオフ状態に切り替わると、ソース電極20とドレイン電極10との間の電圧が急激に増加する。ソース電極20の電位は、金属膜46及び上部埋込電極40を介して、下部埋込電極50にも伝わる。半導体装置1がオフ状態になり、下部埋込電極50の電位が上がることで、絶縁部材70は下部埋込電極50とドレイン電極10と間の寄生容量として機能し、電子の充放電が起きる。これにより、ソース電極20とドレイン電極10との間の電圧が振動し、その後、所定の電圧に収束する。
【0035】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る半導体装置1においては、複数の上部埋込電極40をY方向に沿って断続的に配列させている。このため、Y方向における各上部埋込電極40の長さ及び上部埋込電極40間の距離を調整することにより、Y方向に沿った単位長さLに占める上部埋込電極40の割合rsを調整することができる。半導体装置1の設計時に、この割合rsを調整することにより、上部埋込電極40の抵抗、ソース電極20の抵抗、下部埋込電極50の抵抗、それぞれの接合面のコンタクト抵抗、の4つの合成抵抗であるソース抵抗を調整することができる。
【0036】
下部埋込電極50は、フィールドプレート電極とも呼ばれ、下部埋込電極50を設けることで、半導体装置1の耐圧を維持したまま、ドリフト層66の不純物濃度を高めることができる。これにより、半導体装置1のオン抵抗を低減できる。
【0037】
ソース抵抗は、ソース電極20の電位変化に対する下部埋込電極50の電位の追従性に影響を及ぼす。ソース抵抗が高すぎると、半導体装置1のオン/オフを切り替えたときに下部埋込電極50の電位が速やかに追従できず、半導体部材60からのキャリアの排出が遅れ、スイッチング効率が低下する。一方、ソース抵抗が低すぎると、半導体装置1のオン/オフを切り替えたときに下部埋込電極50の電位の振動が顕著になり、やはりスイッチング効率が低下する。ソース抵抗には、半導体装置1のチップサイズ及び必要な耐圧等によって決定される最適値が存在する。
【0038】
従来、上部埋込電極40の下端42がゲート電極30の上端33近傍に位置するように設計していた。そのため、上部埋込電極40よりも抵抗が高く、体積も大きい下部埋込電極50の抵抗がソース抵抗の値を支配的に決めていた。下部埋込電極50の抵抗の値はプロセス条件によって決定されるため、ソース抵抗の値を任意の値に調整することは困難であった。これに対して、本実施形態によれば、単位長さLに占める上部埋込電極40の割合rsを調整することにより、上部埋込電極40と下部埋込電極50の抵抗比が変わり、ソース抵抗において上部埋込電極40の抵抗が支配的になるため、半導体装置1の構造によってソース抵抗の値を調整することが可能となる。この結果、ソース抵抗の値を半導体装置1の用途に応じて調整することができる。
【0039】
また、半導体装置1においては、複数の上部埋込電極40がY方向に沿って断続的に配置されているため、1つの上部埋込電極40がY方向に沿って連続的に配置されている場合と比較して、上部埋込電極40とゲート電極30の間の容量が小さい。このため、ソース電極20、上部埋込電極40及び下部埋込電極50を含むソース構造体と周囲との間の容量が小さい。これによっても、半導体装置1の効率を向上させることができる。
【0040】
<第1の実施形態の変形例>
図6(a)及び(b)は、本変形例に係る半導体装置を示す上面図であり、(a)は
図1(a)の終端領域Rpを示し、(b)は
図1(a)のセル領域Rcを示す。
【0041】
本変形例に係る半導体装置において、セル領域Rcは実効的なソース-ドレイン電流が流れる領域であり、終端領域Rpは実効的なソース-ドレイン電流が流れない領域である。終端領域Rpはセル領域Rcの周囲に配置されている。
【0042】
図6(a)及び(b)に示すように、本変形例に係る半導体装置においては、Y方向に沿った単位長さLに占める上部埋込電極40の割合rsが、セル領域Rcと、セル領域RcのY方向両側に位置する終端領域Rpとで異なっている。終端領域Rpにおける割合rsは、セル領域Rcにおける割合rsよりも高い。例えば、Y方向に関して、終端領域Rpにおける各上部埋込電極40の長さは、セル領域Rcにおける各上部埋込電極40の長さと等しく、終端領域Rpにおける上部埋込電極40間の距離は、セル領域Rcにおける上部埋込電極40間の距離よりも短い。
【0043】
本変形例によれば、終端領域Rpにおける割合rsをセル領域Rcにおける割合rsよりも高くすることにより、終端領域Rpにおける耐圧の低下を抑制することができる。また、Y方向における上部埋込電極40の長さは均一にすることにより、プロセス条件を均一化することができる。
【0044】
なお、半導体装置のX方向両端部に位置する終端領域の割合rsも、セル領域の割合rsより高くしてもよい。但し、X方向両端部に位置する終端領域については、割合rsをセル領域の割合rsと等しくしても、例えば、ダミートレンチ構造を設ける等の方法により、耐圧の低下を抑制することができる。
本変形例における上記以外の構成、動作及び作用効果は、第1の実施形態と同様である。
【0045】
<第2の実施形態>
図7は、本実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
図7に示すように、本実施形態に係る半導体装置2においては、Z方向から見て、上部埋込電極40が千鳥状に配置されている。すなわち、Y方向に沿って一列に配列された複数の上部埋込電極40からなる列のうち、X方向において隣り合う2つの列において、Y方向における上部埋込電極40の位置が相互に異なっている。例えば、上述の2つの列をX方向から見たときに、ある上部埋込電極40に他の上部埋込電極40が重なる領域のY方向の長さは、ある上部埋込電極40のY方向の長さの半分未満である。
【0046】
本実施形態によれば、半導体装置2をオフ状態としたときの空乏層の分布をより均一化することができ、半導体装置2の耐圧を向上させることができる。
本実施形態における上記以外の構成、動作及び作用効果は、第1の実施形態と同様である。
【0047】
<第3の実施形態>
図8は、本実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
図8に示すように、本実施形態に係る半導体装置3においては、複数の上部埋込電極40がY方向に沿って断続的に配置されたトレンチ63と、Y方向に延びる1つの上部埋込電極40が配置されたトレンチ63とが、X方向に沿って交互に配列されている。
【0048】
本実施形態によれば、複数の上部埋込電極40が断続的に配置されたトレンチ63においては、割合rsは0より大きく1未満の値となり、Y方向に延びる1つの上部埋込電極40が配置されたトレンチ63においては、割合rsは1となる。この場合も、半導体装置3全体において割合rsの平均値を調整し、ソース抵抗を調整することができる。
本実施形態における上記以外の構成、動作及び作用効果は、第1の実施形態と同様である。
【0049】
<第4の実施形態>
図9は、本実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
図10は、
図9に示すA-A’線による断面図である。
図11は、
図9に示すB-B’線による断面図である。
【0050】
図9~
図11に示すように、本実施形態に係る半導体装置4においては、Y方向において隣り合う上部埋込電極40間にも、ゲート電極30が配置されている。これにより、Z方向から見て、ゲート電極30の形状が梯子状となり、ゲート電極30は絶縁部材70を介して上部埋込電極40をそれぞれ囲んでいる。換言すれば、各トレンチ63内に、Y方向に延びる2本のゲート電極と、この2本のゲート電極を繋ぐ複数のブリッジ部が設けられ、各ブリッジ部はY方向において隣り合う2つの上部埋込電極40間に配置されている。
【0051】
本実施形態によれば、ゲート電極30の抵抗を低減することができる。
本実施形態における上記以外の構成、動作及び作用効果は、第1の実施形態と同様である。
【0052】
<第5の実施形態>
図12は、本実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
図12に示すように、本実施形態に係る半導体装置5においては、半導体部材60の上面62において、ゲートパッド31及び配線部32の外側に、外縁領域80が設けられている。外縁領域80は、半導体ウェーハから複数の半導体装置5を個片化するためのダイシングのマージン領域であり、半導体装置5の外周縁に沿って枠状に配置されている。外縁領域80には、電極及び配線は配置されていない。ドレイン電極10は、半導体部材60の下面61の全体に配置されている。本実施形態における上記以外の構成、動作及び作用効果は、第1の実施形態と同様である。
【0053】
<第6の実施形態>
図13は、本実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
なお、
図13においては、トレンチ63が延びる方向を破線で表している。
【0054】
図13に示すように、本実施形態に係る半導体装置6においては、領域R1及び領域R2が設定されている。領域R1及び領域R2は、例えば、Y方向に沿って配列されている。領域R1においては、第1の実施形態と同様に、トレンチ63はY方向に延びている。領域R2においては、トレンチ63はX方向に延びている。ソース電極20は、領域R1及びR2のそれぞれに設けられている。例えば、領域R1に設けられたソース電極20と領域R2に設けられたソース電極20は、パッケージの組立時にワイヤ又はコネクタ等により相互に接続されて、単一の電極として用いられる。
【0055】
配線部32は、領域R1の周囲、領域R2の周囲、及び、領域R1と領域R2の間に配置されている。配線部32及びゲートパッド31の周囲には、外縁領域80が設けられている。ドレイン電極10は、半導体部材60の下面61の全体に配置されており、領域R1と領域R2とで共通である。
【0056】
半導体部材60は、トレンチ63が延びる方向に対して垂直な方向を軸として、Z方向に湾曲しやすい。例えば、領域R1では、トレンチ63がY方向に延びているため、X方向を軸にして半導体部材60はZ方向に上凸形状もしくは下凸形状になる。また、領域R2では、Y方向を軸として半導体部材60はZ方向に上凸形状もしくは下凸形状になる。本実施形態においては、領域R1のトレンチ63が延びる方向と領域R2のトレンチ63が延びる方向が直交することで、半導体装置6の全体がZ方向に湾曲しにくくなる効果がある。これは、領域R1のトレンチ63がX方向に延び、領域R2のトレンチ63がY方向に延びるように配置した場合も同様である。本実施形態における上記以外の構成、動作及び作用効果は、第1の実施形態と同様である。
【0057】
以上説明した実施形態によれば、ソース抵抗を調整可能な半導体装置を実現することができる。
【0058】
以上で説明した各実施形態における、各半導体領域の間の不純物濃度の相対的な高低については、例えば、SCM(走査型静電容量顕微鏡)を用いて確認することが可能である。なお、各半導体領域におけるキャリア濃度は、各半導体領域において活性化している不純物濃度と等しいものとみなすことができる。従って、各半導体領域の間のキャリア濃度の相対的な高低についても、SCMを用いて確認することができる。また、各半導体領域における不純物濃度については、例えば、SIMS(二次イオン質量分析法)により測定することが可能である。
【0059】
以上、本発明のいくつかの実施形態及びその変形例を説明したが、これらの実施形態及びその変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態及びその変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。また、前述の実施形態及びその変形例は、相互に組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0060】
1、2、3、4、5、6:半導体装置
10:ドレイン電極
20:ソース電極
25:ボイド
30:ゲート電極
31:ゲートパッド
32:配線部
33:上端
34:下端
40:上部埋込電極
41:上端
42:下端
46:金属膜
47:ソースプラグ
50:下部埋込電極
60:半導体部材
61:下面
62:上面
63、64:トレンチ
65:ドレイン層
66:ドリフト層
67:ソース層
68:ベース層
69:pn界面
70:絶縁部材
80:外縁領域
L:単位長さ
R1、R2:領域
Rc:セル領域
Rp:終端領域