(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
F21S 41/67 20180101AFI20241225BHJP
F21S 45/00 20180101ALI20241225BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20241225BHJP
F21S 41/145 20180101ALI20241225BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20241225BHJP
F21W 103/60 20180101ALN20241225BHJP
F21W 105/00 20180101ALN20241225BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20241225BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20241225BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20241225BHJP
【FI】
F21S41/67
F21S45/00
F21V23/00 140
F21V23/00 110
F21S41/145
F21W102:13
F21W103:60
F21W105:00
F21W103:20
F21Y115:10
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2021153595
(22)【出願日】2021-09-21
【審査請求日】2024-07-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】北澤 達磨
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-172234(JP,A)
【文献】国際公開第2020/067113(WO,A1)
【文献】特開2010-100073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/67
F21S 45/00
F21V 23/00
F21S 41/145
F21W 102/13
F21W 103/60
F21W 105/00
F21W 103/20
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前照灯配光パターンを照射する配光可変型前照灯ユニットと、車両周辺を撮像する周辺検出ユニットと、前記配光可変型前照灯ユニットの照射領域および照射光量をそれぞれ調整する配光可変制御部と、を備えた車両用前照灯において、
前記配光可変型前照灯ユニットは、ターンシグナルランプの点灯に連係し、
前記配光可変型前照灯ユニットを搭載した自車両の車線変更先の車線路面へ、部分照射を行う部分照射領域を少なくとも一部に有
し、
前記配光可変型前照灯ユニットが、前照灯配光パターンの照射時に、前記部分照射領域への照射強度を、前記前照灯配光パターンの他の領域への照射強度よりも強くすることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前照灯配光パターンを照射する配光可変型前照灯ユニットと、車両周辺を撮像する周辺検出ユニットと、前記配光可変型前照灯ユニットの照射領域および照射光量をそれぞれ調整する配光可変制御部と、を備えた車両用前照灯において、
前記配光可変型前照灯ユニットは、ターンシグナルランプの点灯に連係し、
前記配光可変型前照灯ユニットを搭載した自車両の車線変更先の車線路面へ、部分照射を行う部分照射領域を少なくとも一部に有
し、
前記配光可変型前照灯ユニットが、自車両の車線変更先の道路分離帯の端部まで、前記部分照射領域による部分照射を行うことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項3】
前記部分照射領域における部分照射光が、点滅光であることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記周辺検出ユニットによる先行車両または後方走行車両の検出時に、前記配光可変型前照灯ユニットが、前記部分照射領域による部分照射を行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記周辺検出ユニットによる先行車両の検出時に、前記配光可変型前照灯ユニットが、前記先行車両の車線変更側端部から車線変更方向に、前記部分照射領域による部分照射を行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【請求項6】
前記周辺検出ユニットによる、前記部分照射領域内における反射物の検出時に、前記配光可変型前照灯ユニットが、検出された前記反射物への照射光の照射強度を、前記部分照射領域内の他の領域の照射光よりも強くすることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【請求項7】
降雨を検出する降雨センサーを有し、
前記降雨センサーによる降雨の検出時に、前記周辺検出ユニットが、反射物である路面上の白線を検出し、
前記配光可変型前照灯ユニットが、検出された前記白線への照射光の照射強度を、前記部分照射領域内の他の領域の照射光よりも強くすることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【請求項8】
前記配光可変型前照灯ユニットが、前照灯用配光パターンの表示範囲の側方に、前記部分照射領域による部分照射光を照射することを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行車両や追越車線後方から接近する車両に自車両の車線変更を報知可能な車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の
図3及び
図4には、走査機構により、白色光の所定の点消灯制御を行いつつ車両の前方に高速で走査し、所定形状の白色配光パターンを表示する車両用前照灯が開示されている。
【0003】
また、特許文献2の[0019]、
図3及び
図4には、ランプハウジング内において、照明用のランプユニット(前照灯ユニット)と別に設けられたレーザー表示装置が開示されている。
【0004】
特許文献2のレーザー表示装置は、撮像カメラCAMによる車両前方の撮像結果に基づき、自車両の走行先の道路形状が曲路であることや、交差点があることを知らせる支援画像を自車両前方の空間に表示することで、自車両のドライバーに予め報知する(特許文献2の[0023][0024]を参照)。また、特許文献2のレーザー表示装置は、支援画像の照射先に歩行者等の存在を検出すると、予め支援画像の表示を停止して、歩行者等へレーザー光が照射されることを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-130398号公報
【文献】特開2015-156080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の車両用前照灯は、自車両の前方を前照灯配光パターンによって照明するものの、当該前照灯配光パターンは、自車両の周囲を走行する他車両に、具体的な進路変更方向を知らせるものではない。また、特許文献2のレーザー表示装置は、自車両のドライバーに対して支援画像による運転支援を行うことが出来るが、前記支援画像は、先行車両や、自車両の後方で追い越し車線を走行する他車両に、自車両の進路変更先を知らせることが出来ない。また、特許文献2のレーザー表示装置は、照明用のランプユニットと別に設けられているため、車両用前照灯を大型化する点で問題となる。
【0007】
本願は、上記問題に鑑みて、先行車両や、自車両の後方で追い越し車線を走行する他車両に、自車両の進路変更先を知らせることの出来る、コンパクトな車両用前照灯を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前照灯配光パターンを照射する配光可変型前照灯ユニットと、車両周辺を撮像する周辺検出ユニットと、前記配光可変型前照灯ユニットの照射領域および照射光量をそれぞれ調整する配光可変制御部と、を備えた車両用前照灯において、前記配光可変型前照灯ユニットは、ターンシグナルランプの点灯に連係し、前記配光可変型前照灯ユニットを搭載した自車両の車線変更先の車線路面へ、部分照射を行う部分照射領域を少なくとも一部に有するようにした。
【0009】
(作用)配光可変型前照灯ユニットが、車線変更時にターンシグナルランプの点灯に連動して、部分照射領域による部分照射光を車線変更先の車線路面へ照射する。
【0010】
また、車両用前照灯において、前記配光可変型前照灯ユニットが、前照灯配光パターンの照射時に、前記部分照射領域への照射強度を、前照灯配光パターンの他の領域への照射強度よりも強くするようにすることが望ましい。
【0011】
(作用)配光可変型前照灯ユニットによる前照灯配光パターンの照射時において、車線変更表示が、前照灯配光パターンの内側に、前照灯配光パターンよりも明るく表示される。
【0012】
また、車両用前照灯において、前記部分照射領域における部分照射光を点滅光にすることが望ましい。
【0013】
(作用)配光可変型前照灯ユニットの部分照射領域による部分照射光によって、自車両の車線変更先の路面に表示される車線変更表示が、点滅光として表示される。
【0014】
また、車両用前照灯において、前記周辺検出ユニットによる先行車両または後方走行車両の検出時に、前記配光可変型前照灯ユニットが、前記部分照射領域による部分照射を行うようにすることが望ましい。
【0015】
(作用)配光可変型前照灯ユニットの部分照射領域による車線変更表示が、先行車両または後方走行車両の検出時にのみ表示される。
【0016】
また、車両用前照灯において、前記配光可変型前照灯ユニットが、自車両の車線変更先の道路分離帯の端部まで、前記部分照射領域による部分照射を行うことが望ましい。
【0017】
(作用)配光可変型前照灯ユニットの部分照射領域による車線変更表示が、自車両の車線変更先の道路分離帯の端部まで表示される。
【0018】
また、車両用前照灯において、前記周辺検出ユニットによる先行車両の検出時に、前記配光可変型前照灯ユニットが、前記先行車両の車線変更側端部から車線変更方向に、前記部分照射領域による部分照射を行うようにすることが望ましい。
【0019】
(作用)配光可変型前照灯ユニットは、検出された先行車両の車線変更側端部(例えば、右車線への車線変更時には、先行車両の右ドアミラーの端部等)から車線変更方向に車線変更表示を表示する。
【0020】
また、車両用前照灯において、前記周辺検出ユニットによる、前記部分照射領域内における反射物の検出時に、前記配光可変型前照灯ユニットが、検出された前記反射物への照射光の照射強度を、前記部分照射領域内の他の領域の照射光よりも強くすることが望ましい。
【0021】
(作用)配光可変型前照灯ユニットの部分照射領域内に表示される車線変更表示が、反射物の検出領域を他の領域よりも強く照射して、強い反射光を発生させる。
【0022】
また、車両用前照灯において、降雨を検出する降雨センサーを有し、前記降雨センサーによる降雨の検出時に、前記周辺検出ユニットが、反射物である路面上の白線を検出し、前記配光可変型前照灯ユニットが、検出された前記白線への照射光の照射強度を、前記部分照射領域内の他の領域の照射光よりも強くすることが望ましい。
【0023】
(作用)降雨時において、配光可変型前照灯ユニットの部分照射領域内に表示される車線変更表示が、白線の検出領域を他の領域よりも強く照射して、強い反射光を発生させる。
【0024】
また、車両用前照灯において、前記配光可変型前照灯ユニットが、前照灯用配光パターンの表示範囲の側方に、前記部分照射領域による部分照射光を照射することが望ましい。
【0025】
(作用)前照灯用配光パターンの外側において、左右側方のいずれかに、配光可変型前照灯ユニットによる車線変更表示が表示される。
【発明の効果】
【0026】
車両用前照灯によれば、配光パターンを形成する配光可変型前照灯ユニットによる部分的な照射光が、車線変更時に自車両の車線変更先の路面を照明することで、先行車両や、自車両の後方で追い越し車線を走行する他車両のドライバーに、自車両の車線変更先を知らせることが出来る。また、前照灯用の配光パターンを表示する配光可変型前照灯ユニットが、車線変更表示灯を兼ねることで、車両用前照灯の灯室内に進路変更表示灯の配置スペースを別途確保する必要が無くなるため、車両用前照灯を小型化出来る。
【0027】
車両用前照灯によれば、車線変更先の路面を照明する前照灯配光パターンの内側において、前照灯配光パターンよりも明るい車線変更表示光が照射されることで、先行車両や、自車両の後方で追い越し車線を走行する他車両のドライバーに、照明中の自車両が、車線変更表示光を照射した路面に車線変更することを知らせることが出来る。
【0028】
車両用前照灯によれば、点滅するターンシグナルランプと同様に、配光可変型前照灯ユニットの部分照射光によって、自車両の車線変更先に表示される車線変更表示も点滅させることで、先行車両や、自車両の後方で追い越し車線を走行する他車両のドライバーに、配光可変型前照灯ユニットの部分照射光による車線変更先への照射光が、車線変更先を知らせる表示であることを知得させやすくすることが出来る。
【0029】
車両用前照灯によれば、車線変更先を知徳させるべき先行車両または後方走行車両が検出されない場合において、配光可変型前照灯ユニットによる無駄な車線変更表示の発生を防止できる。
【0030】
車両用前照灯によれば、配光可変型前照灯ユニットの部分照射領域による車線変更表示を、路肩や中央分離帯等の道路分離帯の端部まで表示することにより、車線変更表示の光が、道路分離帯に設置される反射要素(リフレクタや白線など)を発光させるため、先行車両や、自車両の後方で追い越し車線を走行する他車両のドライバーに、自車両の車線変更先をより強く認識させることが出来る。
【0031】
車両用前照灯によれば、先行車両の車線変更側端部(例えば、右車線への車線変更時には、先行車両の右ドアミラーの端部等)から車線変更方向に車線変更表示を表示することで、車線変更表示が先行車両を避けて照射されるため、先行車両のドライバーに発生するまぶしさ生じさせることがない。
【0032】
車両用前照灯によれば、配光可変型前照灯ユニットによる車線変更表示の発生時において、車線変更表示の照射領域内に検出された反射物をより強く光らせることで、自車両に対する先行車両や、後方走行車両のドライバーに対し、自車両の車線変更先をより強く認識させることが出来る。
【0033】
車両用前照灯によれば、路面への反射光が見にくくなる降雨時において、配光可変型前照灯ユニットによる車線変更表示が、当該車線変更表示の照射領域内に検出された白線をより強く光らせることで、自車両に対する先行車両や、後方走行車両のドライバーに対し、自車両の車線変更先をより強く認識させることが出来る。
【0034】
車両用前照灯によれば、配光可変型前照灯ユニットによる車線変更表示が、配光パターンの外側に別途表示されることにより、自車両に対する先行車両や、後方走行車両のドライバーに対し、自車両の車線変更先をより強く認識させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の車両用前照灯を含む車両用前照灯システムの概略構成図。
【
図2】(a)車両用前照灯の配光可変型前照灯ユニットの走査機構をほぼ正面から見た斜視図。(b)配光可変型前照灯ユニットの水平断面図。
【
図3】(a)走査機構による配光パターン形成手段の説明図。(b)車両用前照灯によって形成される各配光パターンの説明図。
【
図4】配光可変型前照灯ユニットにより、車線変更先の車線路面へ照射される部分照射光による車線変更表示の説明図。
【
図5】配光可変型前照灯ユニットにより、車線変更先の車線路面へ照射される部分照射光による車線変更表示を自車両の上方から見た説明図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の車両用前照灯の実施形態を
図1から
図5に基づいて説明する。各図においては、車両用前照灯の各方向を(上方:下方:左方:右方:前方:後方=Up:Lo:Le:Ri:Fr:Re)として説明する。
【0037】
図1は、本発明である左右一対の車両用前照灯(1L,1R)と、左右一対のターンシグナルランプ(2L,2R)と、車両用CPU3と、降雨センサー14を備え、自車両C1(
図5を参照)に搭載された、車両用前照灯システムHLS1を示す。左車両用前照灯1Lは、ランプボディ1LB及び透光性を有する前面カバー1LCの内側に、左前照灯ユニット4Lと、左前照灯用CPU6Lと、周辺検出ユニットである車載カメラ5を備え、右車両用前照灯1Rは、ランプボディ1RBと透光性を有する前面カバー1RCの内側に、右前照灯ユニット4Rと、右前照灯用CPU6Rを有する。左前照灯ユニット4Lは、右前照灯ユニット4Rと共通の構成を有する。尚、車載カメラ5は、右前照灯ユニット4R内に設置されてもよく、ランプボディ(1LB、1RB)と、前面カバー(1LC,1RC)の外において、降雨センサー14と共に、
図5に示す自車両C1の車体のいずれかの箇所に設置されても良い。
【0038】
ターンシグナルランプ(2L,2R)、車載カメラ5及び降雨センサー14は、信号ケーブル7を介して接続された車両用CPU3によって、動作を制御される。前照灯ユニット(4L,4R)は、それぞれ前照灯用CPU(6L,6R)を介して車両用CPU3に接続され、前照灯用CPU(6L,6R)は、車両用CPU3の制御信号に基づいて、前照灯ユニット(4L,4R)を所定の態様で点消灯制御する。車両用CPU3は、車載カメラ5の撮像結果を解析することで、他の車両や路上物体などを検出し、更に、降雨センサー14による降雨を検出し、これらの検出結果に基づいて、前照灯ユニット(4L,4R)に所定の点消灯を行わせる。
【0039】
図2(a)は、走査機構8を示す。走査機構8は、2軸方向に傾動可能な反射鏡を有するスキャンデバイスである。走査機構8は、一対の第1トーションバー19を介し、第1回動体17を回動可能に支持するベース16と、一対の第2トーションバー20を介し、第1回動体17によって回動可能に支持される第2回動体18を有する。ベース16には、第1及び第2トーションバー(19、20)の伸びる方向に、永久磁石21と、永久磁石22とが一対ずつ設けられる。第1及び第2回動体(18、19)には、それぞれ端子部23を介して通電される第1及び第2のコイル(図示せず)が設けられ、第1及び第2のコイルは、
図1に示す前照灯用CPU(6L,6R)によって、それぞれ独立した通電制御を行われる。
【0040】
図2(a)に示す、第1回動体17は、第1コイル(図示せず)への通電のオンまたはオフに基づいて第1トーションバー19の軸線回りに往復傾動し、第2回動体18は、第2コイル(図示せず)への通電のオンまたはオフに基づいて第2トーションバー20の軸線回りに往復傾動する。反射面24は、第1または第2コイル(図示せず)への通電に基づいて上下左右に傾動し、LED光源9(レーザー光源でもよい)からの光を反射させ、上下左右に走査する。蛍光体12を通過した光は、投影レンズ11と
図1に示す前面カバー(1LC,1RC)を透過し、車両の前方に走査に基づいた所定形状の白色配光パターンを表示する。尚、前照灯ユニット(4L,4R)は、走査機構8の替わりに配列された多数のLEDの点消灯によって所定形状の配光パターンを表示可能なLEDアレイを備えるようにしてもよい。
【0041】
図2(b)は、
図1に示す前照灯ユニット(4L,4R)の構成を示す。前照灯ユニット(4L,4R)は、走査機構8,LED光源9,投影レンズ11,蛍光体12及び光学系である集光レンズ13をそれぞれ有し、これらはいずれも支持部材10に取り付けられる。台座10aに固定されたLED光源9から出射した光L1は、集光レンズ13によって集光されつつ反射面24に入射する。反射面24によって反射された光L1は、投影レンズ11と、
図1の前面カバー(1LC,1RC)を透過し、
図5に示す自車両C1の前方に走査に基づいた所定形状の白色配光パターン及び後述する車線変更表示を表示する。
【0042】
図3(a)により、前照灯ユニット(4L,4R)が行う走査によって車両前方に表示される配光パターンの形成方法を説明する。符号S1は、走査機構8による走査線の軌跡を示す。車両前方の矩形の走査領域(符号Sc1)内において、
図3(a)の走査機構8は、
図2(a)(b)に示す反射面24の傾動によって左端S11から右端S12への走査を行った後、左端S11から微小距離d1だけ下方にずれた次の左端S13に向けて反射面24を左斜め下方に傾動させ、再び右端S14へ走査することを高速で繰り返し行う。LED光源9は、前照灯用CPU(6L,6R)の制御に基づいて点消灯する。具体的には、LED光源9は、配光パターンLaを表示するP2からP3までの区間において点灯して左右に伸びる線像を表示し、配光パターンを表示しないP1からP2までの区間と、P3からP4までの区間において消灯する。走査機構8は、所定の点消灯を伴う走査を微小距離d1ずつ下方にずらしながら左右方向に高速に繰り返し行い、線像を上下に積層することで、所定形状の白色配光パターンLaを車両の前方に表示する。
【0043】
図3(b)は、車両用前照灯(1L,1R)によって車両の前方に表示される各種配光パターンを示すものである。符号LBは、カットオフラインCfを備え、符号Pt1、Pt2、Pt3、Pt4を結ぶ実線で囲まれた領域に表示されたロービーム用配光パターンを示す。符号HBは、符号Pt1,Pt2、Pt5,Pt6を結ぶ、実線と二点鎖線に囲まれた領域に表示されたハイビーム用配光パターンを示す。符号ABは、ハイビーム用配光パターンHBの点灯領域内において、三点鎖線で囲まれた符号Sh領域を消灯させて形成された可変型配光パターンを示す。
【0044】
図3(b)の可変型配光パターンABは、先行車両C2のドライバーのまぶしさを低減するために、
図1の車載カメラ5で撮像して検出された先行車両C2を照射せずに形成された配光パターンである。このように本実施形態の車両用前照灯(1L,1R)においては、車載カメラ5の撮像結果に基づき、車両用CP3が、撮像可能エリアにおける所定対象に向けた照射の有無や、照射の強弱を決定し、前照灯用CPU(6L,6R)を介して配光可変型前照灯ユニット(4L,4R)による光の照射を制御することで、所定形状の可変型配光パターンを表示する。
【0045】
図4及び
図5により、車両用前照灯(1L,1R)によって形成される車線変更表示SHを説明する。符号SLは、自車両C1の走行する走行車線を示し、符号PLは、追い越し車線を示し、符号CBは、道路分離帯である中央分離帯(人が通過できる路肩でも良い)を示す。自車両C1のドライバーが、先行車両C2を追い越すために、右方向へのウインカースイッチ(図示せず)をオンにすると、
図1の車両用CPU3は、右ターンシグナルランプ2Rの点灯に連動させて、右車両用前照灯1Rを制御し、全照射領域の一部を利用した部分照射光からなる車線変更表示SHを車線変更先である追い越し車線PLに表示する。尚、自車両C1が、追い越し車線PLから走行車線SLに戻る場合、車両用CPU3は、左ターンシグナルランプ2Lの点灯に連動させて、左車両用前照灯1Lを制御し、全照射領域の一部を利用した部分照射光からなる車線変更表示SHを車線変更先である走行車線SLに表示する。
【0046】
また、
図4に示すように、車線変更表示SHの形成光は、符号Pt7、Pt8、Pt9,Pt10、Pt11を結ぶ、二点鎖線で囲まれた領域に照射されることが望ましい。具体的には、車線変更表示SHの表示光は、
図1の車載カメラ5によって撮像・検出された、先行車両C2の右ドアミラーMR1(右側の車線変更側端部)から、車線変更方向である右方向(符号Pt7及びPt8を結ぶ垂直線分Lt1の右側)へ照射されることが望ましい。そのようにすることで、車線変更表示SHは、先行車両C2及びそのドライバーに直接照射されないため、先行車両C2のドライバーにまぶしさを与えることがない。
【0047】
また、
図4に示すように車線変更表示SHの形成光は、追い越し車線PLにおいて、車線分離帯SBから中央分離帯CBまでそれぞれを含むように表示させることが望ましい。そのように車線変更表示SHを追い越し車線PLの幅一杯まで表示することで、先行車両C2や自車両C1の後方から接近する追い越し車線PL上の他車両C3のドライバーは、車線変更表示SHを認識しやすくなる。また、車線変更表示SHの表示光が、中央分離帯CBに照射されると、中央分離帯CBに設置されたリフレクタRf1に反射されてリフレクタRf1を光らせるため、先行車両C2や他車両C3のドライバーは、反射光を含む車線変更表示SHをみて、自車両C1の車線変更を認識しやすくなる。
【0048】
また、一般に、雨天時のぬれた路面上に車両用前照灯によって表示される配光パターンは、晴天時に比べて暗く表示される。車線分離帯SBは、これを形成する白線に含まれる反射成分により、光を照射されると白く光るため、雨天時においては、車線分離帯SBを含むように車線変更表示SHを表示することが望ましい。そのようにすることで、先行車両C2や自車両C1の後方から接近する追い越し車線PL上の他車両C3のドライバーは、路面上の車線変更表示SHが晴天時よりも見にくくても、白線が光ることで、自車両C1の車線変更を認識しやすくなる。
【0049】
また、車線変更表示SHは、常時点灯としてもよいが、点滅光とすることがより望ましい。追い越し車線PL上に表示される車線変更表示SHを点滅表示させることにより、先行車両C2及び自車両C1の後方から接近する追い越し車線PLの他車両C3のドライバーは、追い越し車線PL上に照射された車線変更表示SHが、自車両C1の前照灯(1L,1R)による単なる前方照明の一部では無く、点滅するターンシグナルランプ2Rに連動した、車線変更の報知であることを認識しやすくなる。
【0050】
特に、車両用前照灯の部分照射によって表示される車線変更表示は、日中や薄暮の薄暗い時間帯において、路面上に表示しても、暗く見えにくくなりがちになるため、常時点灯と異なり、変化のある点滅光とすることにより、他の車両のドライバーに認識しやすくなる。
【0051】
また、
図4や
図5に示すように、車線変更表示SHは、自車両C1が、夜間走行する場合において、所定形状の前照灯配光パターン(一例として、ロービーム用配光パターンLBを記載している)と同時に、かつ一部領域を重複させた態様で表示される。その場合、車線変更表示SHを表示する照射光は、ロービーム用配光パターンLBとの重複領域CA及び車線変更表示SHのその他の領域において、ロービーム用配光パターンLBを形成する光よりも強い照射強度で照射されることが望ましい。車線変更表示SHが、ロービーム用配光パターンLBと一部の領域を重複させ、かつロービーム用配光パターンLBと同じ明るさで表示された場合、他の車両のドライバーは、車線変更表示SHが、単なる前方照明(配光パターン)の一部であると誤認し、車線変更表示であることを認識出来なくなるおそれがある。車線変更表示SHが、ロービーム用配光パターンLBとの重複領域CAを含みつつ、ロービーム用配光パターンLBよりも明るく表示されることで、他の車両のドライバーは、車線変更表示SHをロービーム用配光パターンLBとは異なるものと認識しやすくなる。
【0052】
また、夜間走行時の車線変更表示SHを点滅表示とする場合、ロービーム用配光パターンLBと、車線変更表示SHの重複領域CAもまた、点滅表示とすることが望ましい。仮に、
図5に示す車線変更表示SHについて、ロービーム用配光パターンLBの常時点灯を優先し、重複領域CAを常時点灯にすると、自車両C1の後方から追い越し車線PLを進行する他車両C3のドライバーは、車線変更表示SH内に点滅領域と常時点灯領域が混在することにより、車線変更表示SHを自車両C1の車線変更報知と認識しづらくなる。また、車線変更表示SHの点滅領域の大半が自車両C1から遠い位置に表示されることにより、他車両C3のドライバーは、車線変更表示SHの点滅表示が、ターンシグナルランプ2Rの点滅表示に連動した表示であることを認識しづらくなる。夜間走行時に車線変更表示SHを表示するにあたり、重複領域CAを点滅表示にすれば、上記の問題は解消される。
【0053】
また、
図5に示すように、車両用前照灯(1L,1R)による車線変更表示SHは、車載カメラ5によって先行車両C2を検出し、または
図1の車両用CPU3に接続された後方車載カメラ25によって、後方の他車両C3を検出したときに限り、表示されるようにしても良い。自車両C1の周囲に先行車両C2や、他車両C3が存在しない場合、自車両C1の車線変更を報知すべき他の車両のドライバーが存在しなくなるため、ターンシグナルランプ2Rの表示のみに留め、車線変更表示SHを表示しないことにより、電力消費の無駄を解消出来る。
【0054】
また、
図4及び
図5に示すように、車載カメラ5により、車線変更表示SHの表示領域内に、リフレクタRf1や、道路上の反射する白線(車線分離帯SBや、速度制限表示SS1)等の反射物を検出した場合、車両用前照灯(1L,1R)は、車線変更表示SH内に検出された反射物に対し、車線変更表示SH内の他の領域の照射光よりも照射強度の強い光を照射するようにすることが望ましく、検出された反射物に照射される光は、自車両C1の走行に伴い、反射物を追随するように照射されることが望ましい。その場合、車線変更表示SHの表示範囲内に存在する反射物は、車線変更表示SH内の他の領域よりも強く光ることで、先行車両C2や、自車両C1の後方から接近する他車両C3のドライバーに対し、自車両C1の車線変更先をより強く認識させることが出来る。
【0055】
また、
図4に示すように、車線変更表示SHの照射光は、ロービーム用配光パターンLBの表示領域の内側のみならず、表示範囲の右側方、または下方にも照射されることが望ましい。そのようにすると、追い越し車線PLに表示される車線変更表示SHの後端部SH1は、
図5に示すように、自車両C1及び他車両C3のより近傍に形成されるため、他車両C3のドライバーに更に見やすくなる。更に、車線変更表示SHは、前端部SH2を先行車両C2の前端部C21よりも前方に形成されるように、追い越し車線PL上に表示されることが望ましい。その場合、先行車両C2のドライバーは、目線を前方から切ること無く、即ち首を横に向けること無く、右斜め前方に表示される車線変更表示SHを確認することで、自車両C1の車線変更報知を確認することが出来る。
【符号の説明】
【0056】
1L,1R 車両用前照灯
2L,2R ターンシグナルランプ
4L,4R 配光可変型前照灯ユニット
5 車載カメラ(周辺検出ユニット)
6L,6R 前照灯用CPU(配光可変制御部)
14 降雨センサー