(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/08 20060101AFI20241225BHJP
【FI】
F25D23/08 S
(21)【出願番号】P 2021175591
(22)【出願日】2021-10-27
【審査請求日】2024-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】中谷 遼
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-056500(JP,A)
【文献】実開昭64-035392(JP,U)
【文献】特開2012-078086(JP,A)
【文献】特開平04-203787(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0187942(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0065837(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02-23/08
F25D 29/00
B29C 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外箱と、
前記外箱の内側に所定の間隔を介して配置されている内箱と、
前記外箱と前記内箱との間の空間に充填されている発泡断熱材と、
前記内箱の前記発泡断熱材側に取り付けられ、前記内箱に形成されている開口部を閉鎖する蓋部材と、を備え、
前記蓋部材は、前記発泡断熱材が充填される空間と貯蔵室側の空間とを前記内箱よりも前記外箱側で仕切る仕切部と、前記仕切部と前記内箱側との間を繋ぐ壁部とを有し、
前記蓋部材の前記壁部に、前記発泡断熱材側の空間と貯蔵室側との空間とを繋ぐ態様で前記壁部を貫通している1つ以上の貫通孔が形成されて
おり、
前記貫通孔は、充填時における前記発泡断熱材の流動方向において上流側となる前記壁部に形成されている冷蔵庫。
【請求項2】
外箱と、
前記外箱の内側に所定の間隔を介して配置されている内箱と、
前記外箱と前記内箱との間の空間に充填されている発泡断熱材と、
前記内箱の前記発泡断熱材側に取り付けられ、前記内箱に形成されている開口部を閉鎖する蓋部材と、を備え、
前記蓋部材は、前記発泡断熱材が充填される空間と貯蔵室側の空間とを前記内箱よりも前記外箱側で仕切る仕切部と、前記仕切部と前記内箱側との間を繋ぐ壁部とを有し、
前記蓋部材の前記壁部に、前記発泡断熱材側の空間と貯蔵室側との空間とを繋ぐ態様で前記壁部を貫通している1つ以上の貫通孔が形成されて
おり、
前記貫通孔は、前記壁部において、充填時における前記発泡断熱材の流動方向において上流側となる位置に形成されている冷蔵庫。
【請求項3】
外箱と、
前記外箱の内側に所定の間隔を介して配置されている内箱と、
前記外箱と前記内箱との間の空間に充填されている発泡断熱材と、
前記内箱の前記発泡断熱材側に取り付けられ、前記内箱に形成されている開口部を閉鎖する蓋部材と、を備え、
前記蓋部材は、前記発泡断熱材が充填される空間と貯蔵室側の空間とを前記内箱よりも前記外箱側で仕切る仕切部と、前記仕切部と前記内箱側との間を繋ぐ壁部とを有し、
前記蓋部材において充填時における前記発泡断熱材の流動方向において上流側となる部位に、前記発泡断熱材側の空間と貯蔵室側との空間とを繋ぐ態様で当該蓋部材を貫通している1つ以上の貫通孔が形成されて
おり、
前記貫通孔は、前記壁部において、充填時における前記発泡断熱材の流動方向において上流側となる位置に形成されている冷蔵庫。
【請求項4】
前記仕切部は、前記外箱側に凸になる湾曲した形状に形成されている
請求項1から3のいずれか一項記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記蓋部材は、前記発泡断熱材を接する面に、前記発泡断熱材側に突出している突出構造部、または、内方に窪んでいる窪み構造部の少なくとも一方が形成されている
請求項1から4のいずれか一項記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記壁部と前記仕切部とが繋がる部位は、曲面状または平面状になっている
請求項1から5のいずれか一項記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記壁部は、
前記仕切部に繋がる先端側が
内側に向かって傾斜した状態に形成されている
請求項1から6のいずれか一項記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貯蔵室内に操作部を設けた冷蔵庫が知られている。このような操作部は、電気部品や回路基板などを収容するための収容空間が必要になるものの、貯蔵室の容量が低下しないようにするために、また、食材の出し入れを阻害しないようにするために、内箱と外箱との間を収容空間として利用している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、内箱と外箱との間を収容空間として利用すると、内箱と外箱との間には、内箱から外箱側に突出した部位が形成されることになる。そして、外箱側に突出した部位が形成されると、内箱と外箱との間に発泡断熱材を充填する際に発生する発泡ガスや内箱と外箱との間に存在している空気のような気体の流れが阻害されたり、突出している部位に気体が滞留されて発泡断熱材が充填されない箇所が生じたりするおそれがある。
【0005】
そこで、内箱と外箱との間の空間から気体を効率的に排出することができ、発泡断熱材を適切に充填することができる冷蔵庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の冷蔵庫は、外箱と、外箱の内側に所定の間隔を介して配置されている内箱と、外箱と内箱との間の空間に充填されている発泡断熱材と、内箱の発泡断熱材側に取り付けられ、内箱に形成されている開口部を閉鎖する蓋部材と、を備え、蓋部材は、発泡断熱材が充填される空間と貯蔵室側の空間とを内箱よりも外箱側で仕切る仕切部と、仕切部と内箱側との間を繋ぐ壁部とを有し、蓋部材の壁部に、発泡断熱材側の空間と貯蔵室側との空間とを繋ぐ態様で壁部を貫通している1つ以上の貫通孔が形成されている冷蔵庫。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態による冷蔵庫の構成例を模式的に示す図
【
図7】発泡断熱材の充填態様例を模式的に示す図その1
【
図8】発泡断熱材の充填態様例を模式的に示す図その2
【
図9】発泡断熱材を充填した状態の一例を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、冷蔵庫1は、本体2に冷蔵室3、野菜室4、並んで配置されている製氷室5と小冷凍室6、および大冷凍室7などの複数の貯蔵室を備えている。以下、冷蔵庫1を設置した状態における天地方向を上下方向と称し、正面視における図示左右の向きを左右方向と称し、上下方向および左右方向に垂直な向きを前後方向として説明する。
【0009】
各貯蔵室は、周知のように前面が開口しており、回動式あるいは引き出し式の扉によってその開口が開閉される。例えば、冷蔵室3は、左右に並んで設けられている左扉3aと右扉3bとによって開閉される。また、野菜室4は、引き出し式の扉4aによって開閉され、製氷室5は、引き出し式の扉5aによって開閉され、小冷凍室6は、引き出し式の扉6aによって開閉され、大冷凍室7は、引き出し式の扉7aによって開閉される。
【0010】
本体2は、内箱2aおよび外箱2bによって形成されている。内箱2aは、前面が開口した箱状に形成されていて、貯蔵室の壁面や貯蔵室間の仕切りを形成する。外箱2bは、内箱2aの外側に配置され、前面が開口している箱状に形成されていて内箱2aとの間に所定の間隔を空けて配置される。これら内箱2aと外箱2bとの間の空間には、後述する発泡断熱材8が充填されているとともに、例えば貯蔵室の側面などの所定の位置に後述する真空断熱材9が配置されている。以下、内箱2aの外箱2b側の面を表面とも称し、内箱2aの貯蔵室側の面を内面とも称する。
【0011】
この冷蔵庫1は、
図2に示すように、例えば冷蔵室3の内部に棚板11や収納容器12、給水装置13などが配置されている。また、本実施形態に関連して、冷蔵室3の壁面には、操作部14が設けられている。この操作部14は、冷蔵庫1の運転の制御や各種の設定を行うものであり、図示は省略するが例えばLEDなどの光源による表示部や、静電式スイッチやメンブレンスイッチなどの入力部などを備えている。この操作部14は、貯蔵室側から取り付けられることで設置されるものである。なお、
図2では、説明の簡略化のために扉の図示は省略している。
【0012】
操作部14は、内部に電気部品や回路基板などを収容するための収容空間(S)を有している。そして、操作部14は、貯蔵室の容量が低下しないようにするために、また、食材の出し入れを阻害しないようにするために、発泡断熱材8が充填される内箱2aと外箱2bとの間を利用して配置されている。より具体的には、操作部14は、操作する側の面が貯蔵室の壁面と概ね同一面となる状態で、あるいは、貯蔵室側に若干突出した状態であって、収容空間の多くが内箱2aと外箱2bとの間に位置する状態で配置されている。
【0013】
このとき、内箱2aに操作部14を収容する窪みを設けることが製造上難しいことなどの理由のより、本実施形態では、
図3に開放状態として示すように内箱2aには貯蔵室側に繋がる開口部15を形成している。そして、封鎖状態として示すように開口部15を塞ぐ態様で蓋部材16を設けることにより、発泡断熱材8が充填される内箱2aと外箱2bとの間の空間を、貯蔵室側に開口した収容空間として利用可能にしている。なお、開口部15の位置や大きさは、操作部14の大きさに基づいて、また、操作部14を設置する位置に応じて適宜設定することができる。
【0014】
蓋部材16は、
図4に示すように、角部が面取りされた概ね矩形状に形成されている。なお、
図4における正面視は蓋部材16を内箱2aに取り付けた状態において冷蔵庫1の左方から見た状態を示しており、側面視は蓋部材16を内箱2aに取り付けた状態において冷蔵庫1の後方から見た状態を示しており、上面視は蓋部材16を内箱2aに取り付けた状態において冷蔵庫1の上方から見た状態を示している。
【0015】
より具体的には、蓋部材16は、開口部15よりも大きく形成されていて、開口部15の外周において内箱2aの表面に張り付けられる概ね平枠状の鍔部20と、鍔部20の内縁側つまりは開口部15側から外箱2b側に延びて形成されていて、開口部15の外周を囲う側壁部21と、側壁部21の外箱2b側の端部を塞ぎ、収容空間(S)の底面を形成している底壁部22とを有している。このとき、蓋部材16は、側壁部21が概ね矩形状に配置されていることから、その内側が中空状に形成されている。
【0016】
つまり、蓋部材16は、開口部15を塞ぐ態様で配置されることにより、発泡断熱材8が充填される内箱2aと外箱2bとの間の空間と、開口部15によって繋がっている貯蔵室側の空間とを仕切っている。この蓋部材16の鍔部20は、内箱2aに蓋部材16を取り付けるための基部に相当する。また、蓋部材16の底壁部22は、内箱2aから外箱2b側に離間した位置に設けられ、発泡断熱材8が充填される空間と貯蔵室側の空間とを仕切る仕切部に相当する。また、蓋部材16の側壁部21は、仕切部と内箱2a側との間を繋ぐ壁部に相当する。
【0017】
以下、説明のために、
図4における図示左方側の側壁部21を第1側壁部21Aと称し、図示上方側の側壁部21を第2側壁部21Bと称し、図示右方側の側壁部21を第3側壁部21Cと称し、図示下方側の側壁部21を第4側壁部21Dと称するとともに、各側壁部21に共通する説明をする場合にはA~Dを付さず、単に側壁部21と称する。
【0018】
蓋部材16は、
図4のA-A線での断面視である
図5に示すように、両面接着部材などによって鍔部20が内箱2aの表面に気密に張り付けられている。また、側壁部21は、外箱2b側に向かって開口部15側に若干傾斜する形状に形成されている。なお、
図5では、図面を見やすくするために蓋部材16の断面を塗りつぶした態様で示している。また、内箱2aは、冷蔵庫1の前方に向かって幅広に形成されているため、冷蔵庫1の前方となる図示右方側が若干下方に傾斜した状態で描かれている。
【0019】
また、第1側壁部21A、第2側壁部21Bおよび第3側壁部21Cには、その壁面から内方に窪んだ窪み構造部としての溝部23が側壁部21に沿って形成されている。そして、各溝部23の外箱2b側の端部には、鍔部20と概ね平行な状態で溝部23から外方に突出している突出構造部としての返し部24が側壁部21に沿って形成されている。このとき、返し部24は、溝部23の表面と滑らかな曲面で繋がった状態に形成されている。また、第1側壁部21Aの溝部23に設けられている返し部24は、溝部23の長さよりも短く形成されている。
【0020】
また、本実施形態では、第1側壁部21Aには、
図4の側面視に示すように、発泡断熱材8側となる表面から中空部分まで貫通している3つの貫通孔25が設けられている。この貫通孔25は、
図4のVI領域に対するB-B線での断面視である
図6に示すように、表面側から裏面側に向けてその直径が徐々に小さくなるくさび状に形成されている。なお、
図6における最下段の貫通孔25は、蓋部材16を補強するための補強壁26に囲まれている範囲に繋がっているが、補強壁26で囲まれている部位は図示奥側が開放されている。
【0021】
そのため、内箱2aと外箱2bとの間の気体は、貫通孔25を通り、内箱2aの開口部15を経由して貯蔵室側まで移動可能になっている。なお、本実施形態では、蓋部材16の成型のし易さを考慮して、貫通孔25を第1側壁部21Aの一端側に集約させているが、貫通孔25の数や配置は一例である。つまり、貫通孔25は、
図4や
図6に示す構成に限定されず、4つ以上設けてもよいし、例えば第1側壁部21Aの長手方向に分散させて設けることもできる。
【0022】
蓋部材16の各側壁部21は、
図4の側面視、上面視および斜視にて示すように、底壁部22と繋がっている部位に曲面状になっている。ただし、底壁部22と繋がっている部位は、平面状に形成することができるし、平面状の部位と曲面状の部位分とが混在した形状に形成することもできる。
【0023】
底壁部22は、外箱2b側つまりは発泡断熱材8側に凸となる湾曲した形状に形成されており、表面から内方に窪んだ窪み構造部としての円形の凹部27が形成されている。但し、この凹部27は、表面からから窪んで形成されているものの貯蔵室側となる裏面には繋がっていない。
【0024】
また、蓋部材16は、本実施形態では第4側壁部21Dに、電気部品との間を繋ぐ信号線などを通すための引き込み口28が設けられている。この引き込み口28の両側には、発泡断熱材8の発泡圧から信号線への圧力を弱めるための防護壁部29がそれぞれ設けられている。この引き込み口28は、信号線を通した後で封止材によって封止される。また、外箱2bには真空断熱材9が張り付けられており、底壁部22と真空断熱材9との間には数ミリ程度の隙間が形成されている。
【0025】
次に、上記した構成の作用について説明する。
上記したように、内箱2aと外箱2bとの間を操作部14の収容空間として利用することにより、操作部14が貯蔵室側に突出することによって容量が低下してしまったり、食材の出し入れを阻害してしまったりするおそれを低減することができると考えられる。
【0026】
しかし、内箱2aと外箱2bとの間を収容空間として利用することによる弊害も存在する。具体的には、発泡断熱材8は、
図7に充填態様として示すように内箱2aの前面を下方にした状態で背面側に形成されている充填口31から原液を充填することによって内箱2aと外箱2bとの間に充填される。なお、
図7では、説明の簡略化のために充填用の治具や装置の図示は省略している。また、内箱2aと外箱2bの前面側は、内箱2aの前端部に形成されている前端フランジ2a1によって閉鎖されている。
【0027】
さて、発泡断熱材8が発泡すると発泡ガスが発生することから、発泡断熱材8を適切に充填するためには、内箱2aと外箱2bとの間の空間から発泡ガスを排出する必要がある。また、内箱2aと外箱2bとの間にはもともと空気が存在していることから、その空気も排出する必要がある。以下、発泡断熱材8を充填する際に排出する必要がある発泡ガスおよび空気を気体と総称する。
【0028】
このとき、
図7にC方向側面視として示すように、内箱2aと外箱2bとの間に蓋部材16のような突出した部位が存在していると、発泡断熱材8の充填時における気体の流れが阻害されたり、突出している部位に気体が滞留されて発泡断熱材8が適切に充填されない箇所が生じたりするおそれがある。
【0029】
そこで、本実施形態では、内箱2aから突出した状態で配置される蓋部材16において、その側壁部21に、いわゆるガス抜き穴として機能する貫通孔25を形成している。そして、
図7から明らかなように、蓋部材16は、底壁部22と真空断熱材9との間の隙間がごく小さくなっているものの、側壁部21が概ね内箱2aと外箱2bとの間の空間に開放された状態となっている。換言すると、蓋部材16の側壁部21は、矢印Fにて示す気体の流れを受け入れやすい向きに配置されている。
【0030】
また、本実施形態では、開口部15を囲うように配置されている側壁部21のうち、充填時における発泡断熱材8の流動方向において上流側となる第1側壁部21Aに貫通孔25を形成している。そして、
図8に充填状態その1から充填状態その4として時系列的に示すように、第1側壁部21Aは、発泡断熱材8の充填時に蓋部材16が徐々に発泡断熱材8に覆われていく場合において最後まで発泡断熱材8が充填されない側壁部21である。換言すると、貫通孔25は、蓋部材16において発泡断熱材8で覆われるまで継続することができる側壁部21、換言すると、最後までガス抜き穴として機能することができる側壁部21に形成されている。
【0031】
これにより、発泡断熱材8を充填する際、貫通孔25を通して内箱2aと外箱2bとの間の空間から気体を効率的且つ適切に排出することが可能になる。なお、内箱2aには貫通孔25以外にも貯蔵室側に繋がった孔部32が複数設けられている。それらの孔部32は、充填時には気体のみを通す図示しない封止部材が貯蔵室側の面に張り付けられてガス抜き穴として機能するようになっている。そのため、絨毯状態その4として示すように蓋部材16が発泡断熱材8で覆われたとしても、気体の排出は可能になっている。
【0032】
また、側壁部21が開口側に傾斜して形成されていることから、蓋部材16の下方から発泡断熱材8が充填される際、発泡断熱材8や気体を傾斜に沿って上方に流すことができ、気体が滞留するおそれを低減することができる。
【0033】
また、蓋部材16は、
図9に示すように、側壁部21に溝部23が設けられている。なお、
図9では、説明の簡略化のために真空断熱材9などの図示は省略し、要部のみを示している。
【0034】
この場合、充填状態として示すように、蓋部材16の全体が発泡断熱材8で覆われた状態においては、溝部23に充填された発泡断熱材8によって、蓋部材16が図示左右方向および図示上下方向に移動することが制限される。すなわち、溝部23は、蓋部材16の位置を規定する規定部として機能する。
【0035】
また、D-D線断面視として示すように、蓋部材16の底壁部22に形成されている凹部27にも発泡断熱材8が充填される。そのため、この凹部27も、蓋部材16の位置を規定する規定部として機能する。これらにより、蓋部材16は、開口部15を塞ぐ位置から内箱2aに沿った向きへの移動が制限され、適切に開口部15を塞ぐ位置に位置決めされる。
【0036】
また、E-E線断面視として示すように、溝部23には返し部24が形成されている。このとき、蓋部材16は鍔部20において両面接着剤30で内箱2aに張り付けられているものの、発泡断熱材8の充填圧や発泡圧が鍔部20に加わると内箱2aから離間するおそれがある。そのため、図示左方向つまりは内箱2aから離間した向きに力が加わっても、返し部24によって図示左方向への移動が規制される。つまり、返し部24も、蓋部材16の位置を規定する規定部として機能する。
【0037】
これにより、蓋部材16は、返し部24が発泡断熱材8に刺さった態様となることにより、内箱2aから離間する向きへの移動が制限され、適切に開口部15を塞いだ状態に位置決めされる。なお、蓋部材16は、充填時に下方となる第3側壁部21Cにも溝部23や返し部24が存在するが、側壁部21を傾斜させていることから、また、返し部24が溝部23の表面から繋がる滑らかな曲面となるように形成されていることから、傾斜に沿って空気が押し出される形で発泡断熱材8が充填され、蓋部材16の下方に空気が滞留するおそれが低減されている。
【0038】
以上説明した冷蔵庫1によれば、次のような効果を得ることができる。
実施形態の冷蔵庫1は、外箱2bと、内箱2aと、外箱2bと内箱2aとの間の空間に充填されている発泡断熱材8と、内箱2aの発泡断熱材8側に取り付けられ、内箱2aに形成されている開口部15を閉鎖する蓋部材としての底壁部22とを備え、蓋部材16は、発泡断熱材8が充填される空間と貯蔵室側の空間とを内箱2aよりも外箱2b側で仕切る仕切部としての底壁部22と、仕切部と内箱2a側との間を繋ぐ壁部としての側壁部21とを有し、蓋部材16の壁部に、発泡断熱材8側の空間と貯蔵室側との空間とを繋ぐ態様で壁部を貫通している1つ以上の貫通孔25が形成されている。
【0039】
このように、内箱2aと外箱2bとの間の空間に開放されていて、気体の流れを受け入れやすくなっている側壁部21に貫通孔25を設けることにより、内箱2aと外箱2bとの間の空間から気体を効率的に排出することができ、発泡断熱材8を適切に充填することができる。
【0040】
また、貫通孔25は、開口部15を囲う態様で設けられている側壁部21のうち、充填時における発泡断熱材8の流動方向において上流側となる側壁部21である第1側壁部21Aに形成されている。このとき、流動方向において上流側となる側壁部21は、発泡断熱材8を充填する際において最後に発泡断熱材8で覆われる側壁部21であると考えられる。そして、その側壁部21に貫通孔25を設けることにより、蓋部材16を通した空気の排出を、蓋部材16が発泡断熱材8で覆われるまで継続することができる。
【0041】
また、底壁部22は、外箱2b側に凸となる湾曲した形状に形成されている。これにより、発泡断熱材8の充填圧や発泡圧に耐えうる強固な構造を実現することができる。
【0042】
また、蓋部材16は、発泡断熱材8を接する面に、発泡断熱材8側に突出している突出構造部または当該面から内方に窪んでいる窪み構造部の少なくとも一方が形成されている。なお、本実施形態では、双方が形成されている。これにより、発泡断熱材8が溝部23に充填されることにより、また、返し部24が発泡断熱材8に刺さった態様となることにより、開口部15を塞ぐ位置からの内箱2aの表面に沿った向きへの移動、または、内箱2aからから離間する向きへの移動が制限され、適切に開口部15を塞いだ状態に位置決めすることができる。
【0043】
また、側壁部21と底壁部22とが繋がる部位は、曲面状または平面状になっている。これにより、側壁部21によって発泡断熱材8の充填や気体の流れが阻害されるおそれを低減することができ、気体が滞留したり充填が不十分な個所ができたりするおそれを低減できる。
【0044】
また、側壁部21は、先端側が開口部15側に傾斜した状態に形成されている。これにより、発泡断熱材8の充填や気体の流れを傾斜に沿って促すことができ、気体が滞留したり充填が不十分な個所ができたりするおそれを低減できる。
【0045】
実施形態では第1側壁部21Aに貫通孔25を設ける構成としたが、
図10に示すように、第2側壁部21B、第3側壁部21Cあるいは第4側壁部21Dに貫通孔25Aを設ける構成とすることができる。この場合、第2側壁部21B、第3側壁部21Cおよび第4側壁部21Dのいずれか1つに貫通孔25Aを設ける構成とすることができるし、2以上あるいはすべてに貫通孔25Aを設ける構成とすることができる。これにより、内箱2aと外箱2bとの間の空間から気体を効率的に排出することができ、発泡断熱材8を適切に充填することができる。
【0046】
このとき、貫通孔25Aを、開口部15を囲う態様で設けられている側壁部21において、充填時における発泡断熱材8の流動方向において上流側となる位置に形成することができる。例えば、
図10に示す第2側壁部21Bや第3側壁部21Cにおいては、充填時に上流側つまりは図示上方側となる上端側に貫通孔25Aが形成されている。これにより、発泡断熱材8が図示下方から充填されている際に、第2側壁部21Bあるいは第3側壁部21Cに形成した貫通孔25Aがガス抜き穴として機能する期間をより長くすることができる。内箱2aと外箱2bとの間の空間からの気体の排出を促すことができる。
【0047】
つまり、冷蔵庫1は、外箱2bと、内箱2aと、外箱2bと内箱2aとの間の空間に充填されている発泡断熱材8と、内箱2aの発泡断熱材8側に取り付けられ、内箱2aに形成されている開口部15を閉鎖する蓋部材としての底壁部22とを備え、蓋部材16は、発泡断熱材8が充填される空間と貯蔵室側の空間とを内箱2aよりも外箱2b側で仕切る仕切部としての底壁部22と、仕切部と内箱2a側との間を繋ぐ壁部としての側壁部21とを有し、蓋部材16において充填時における発泡断熱材8の流動方向において上流側となる部位に、発泡断熱材8側の空間と貯蔵室側との空間とを繋ぐ態様で当該蓋部材16を貫通している1つ以上の貫通孔25を形成する構成とすることができる。
【0048】
この場合、底壁部22における上流側となる部位、例えば、底壁部22の中央よりも上流側となる範囲内、底壁部22において上流側から1/3程度となる範囲内、底壁部22と側壁部21とが接続されている部位の底壁部22側の部位などに1つあるいは複数の貫通孔25を設ける構成とすることができる。このような構成によっても、発泡断熱材8を充填する際に内箱2aと外箱2bとの間の空間から気体を効率的に排出することができるなど、上記した冷蔵庫1と同様の各種の効果を得ることができる。また、蓋部材16は、仕切部の外縁側が例えば緩やかに内箱2a側まで延長されている形状、つまりは、仕切部と壁部とが一体になった形状とすることもできる。
【0049】
実施形態では溝部23と返し部24の双方を設ける構成例を示したが、いずれか一方を備える構成とすることができる。また、いずれかの側壁部21に溝部23を設け、他の側壁部21に返し部24を設けるといった構成とすることもできる。
【0050】
実施形態では開口部15側に傾斜する形状の側壁部21を例示したが、側壁部21を例えば外側に湾曲した形状に形成することができる。例えば、発泡断熱材8を充填する際に下方に位置する側壁部21を湾曲形状とすることにより、気体が湾曲した側壁部21に沿って外方に流れることで、気体の流れが阻害されたり滞留されたりするおそれを低減できる。また、発泡時の圧力に耐える強固な構造とすることもできる。勿論、側壁部21を傾斜しつつ湾曲した形状に形成することもできる。
【0051】
実施形態では操作部14を収容する収容空間を形成する蓋部材を例示したが、操作部14ではなく、他の部品などを収容するための収容空間を形成する際に蓋部材16を設ける構成とすることができる。
【0052】
実施形態では基部として鍔部20を例示したが、基部の構成はこれに限定されない。例えば、側壁部21を肉厚に形成し、内箱2a側の端面を基部として利用する構成とすることができる。
【0053】
また、実施形態では壁部としての側壁部21を、開口部15の外周側に開口部15を囲う態様で設ける構成を例示したが、壁部の構成はこれに限定されない。例えば、開口部15の周囲の一部を壁部とは異なる形状にすることができる。また、側壁部21を、
図3の開放状態に示す開口部15の縁よりも内側に位置させる構成とすることができる。すなわち、蓋部材16は、少なくとも基部が開口部15の縁を覆う態様であれば、収容空間(S)の大きさに応じて側壁部21の位置や底壁部22の大きさを設定することができる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
図面中、1は冷蔵庫、2aは内箱、2bは外箱、3は冷蔵室(貯蔵室)、4は野菜室(貯蔵室)、5は製氷室(貯蔵室)、6は小冷凍室(貯蔵室)、7は大冷凍室(貯蔵室)、8は発泡断熱材、9は真空断熱材、14は操作部、15は開口部、16は蓋部材、21、21A、21B、21C、21Dは側壁部(壁部)、22は底壁部(仕切部)、23は溝部(窪み構造部)、24は返し部(突出構造部)、25、25Aは貫通孔、27は凹部(窪み構造部)を示す。