(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】物体をスプレー形成する方法
(51)【国際特許分類】
B22F 3/04 20060101AFI20241225BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20241225BHJP
C22C 1/04 20230101ALI20241225BHJP
C22C 33/02 20060101ALI20241225BHJP
C22C 21/02 20060101ALN20241225BHJP
C22C 21/06 20060101ALN20241225BHJP
【FI】
B22F3/04 B
B22F3/24 A
C22C1/04
C22C33/02
C22C21/02
C22C21/06
(21)【出願番号】P 2021523616
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(86)【国際出願番号】 AU2019051148
(87)【国際公開番号】W WO2020093085
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-09-29
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】521173867
【氏名又は名称】エフュージョンテック アイピー ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カミッレーリ,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】デグッド,アンドリュー
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-212313(JP,A)
【文献】特開平09-111308(JP,A)
【文献】特開2018-123405(JP,A)
【文献】特表2018-524466(JP,A)
【文献】特表2008-538385(JP,A)
【文献】国際公開第2012/128327(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/067086(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2007/0098913(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0279703(US,A1)
【文献】米国特許第08591986(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/04
3/24
10/25
10/64
B33Y 10/00 - 70/10
C22C 1/04
21/02
21/06
33/02
C23C 24/04
24/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元固体物体を形成する方法であって、
1つ以上の金属粉末をコールドスプレーして、3次元の固形の物品を形成するステップであって、前記粉末は、マトリックス形成粉末と、焼結用粉末との混合物を含む、ステップであって、
前記マトリックス形成粉末は、
Mgを0.8~1.2重量%
Siを0.4~0.8重量%
Feを0.7重量%以下
Cuを0.15~0.40重量%
Znを0.25重量%以下
Tiを0.15重量%以下
Mnを0.15重量%以下
Crを0.04~0.35重量%
含有し、残部がAlを含む第1アルミニウム合金粉末と、
Mgを0.25~0.35重量%
Siを9.5~10.5重量%
Feを0.7重量%以下
Cuを
0.05重量%以下
Znを0.25重量%以下
Tiを0.15重量%以下
Mnを0.15重量%以下
Crを0.04~0.35重量%
含有し、残部がAlを含む第2アルミニウム合金粉末と、を含み、
前記第1アルミニウム合金粉末と重量基準で5%の前記第2アルミニウム合金粉末とが混合され、
前記焼結用粉末はCuであり、
前記混合物は、前記マトリックス形成粉末と重量基準で1%の前記焼結用粉末とが混合された混合物であるステップと、
前記スプレーされた前記金属粉末の一部が液化し、且つ前記物品の1つ以上の固体部分間の空間及び非接着性の少なくとも一方を減少させるように、前記物品を焼結させるステップであって、
前記マトリックス形成粉末及び前記焼結用粉末によって形成される合金を、
500℃で少なくとも20分以上維持し、
500℃より高い温度で少なくとも4時間以上維持する、焼結ステップと、
前記物品を530℃で少なくとも1時間以上維持して液化した前記スプレーされた前記金属粉末の前記一部を固体化させるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
形成された前記物品の形状は、前記マトリックス形成粉末によって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記焼結ステップにおいて、前記焼結用粉末のみが液化する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
3次元固体物体を形成する方法であって、
1つ以上の金属粉末をコールドスプレーして、3次元の固形の物品を形成するステップであって、前記粉末は、マトリックス形成粉末と、焼結用粉末との混合物を含む、ステップであって、
前記マトリックス形成粉末は、
Mgを0.8~1.2重量%
Siを0.4~0.8重量%
Feを0.7重量%以下
Cuを0.15~0.40重量%
Znを0.25重量%以下
Tiを0.15重量%以下
Mnを0.15重量%以下
Crを0.04~0.35重量%
含有し、残部がAlを含み、
前記焼結用粉末はCuであり、
前記混合物は、前記焼結用粉末と重量基準で10%の前記マトリックス形成粉末とが混合された混合物であるステップと、
前記スプレーされた前記金属粉末の一部が液化し、且つ前記物品の1つ以上の固体部分間の空間及び非接着性の少なくとも一方を減少させるように、前記物品を焼結させるステップであって、
前記マトリックス形成粉末及び前記焼結用粉末によって形成される合金を、
325℃で少なくとも16時間以上維持し、
555℃で少なくとも30分間以上維持する、焼結ステップと、
前記物品を950℃で少なくとも
16時間以上維持して液化した前記スプレーされた前記金属粉末の前記一部を固体化させるステップと、
を含む、方法。
【請求項5】
形成された前記物品の形状は、前記マトリックス形成粉末によって決定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記焼結ステップにおいて、前記焼結用粉末のみが液化する、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
3次元固体物体を形成する方法であって、
1つ以上の金属粉末をコールドスプレーして、3次元の固形の物品を形成するステップであって、前記金属粉末は、マトリックス形成粉末及び焼結用粉末を含み、銅及び重量基準で少なくとも15重量パーセントであるアルミニウムが混合された混合物であるステップと、
前記スプレーされた前記金属粉末の一部が液化し、且つ前記物品の1つ以上の固体部分間の空間及び非接着性の少なくとも一方を減少させるように、前記物品を焼結させるステップであって、
前記金属粉末によって形成される合金を、
325~400℃で4~18時間維持し、
850~1000℃で8~16時間維持する、焼結ステップと、
前記物品を800~1000℃で維持して液化した前記スプレーされた前記金属粉末の前記一部を固体化させるステップと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記3次元の固形の物品を形成するステップにおける前記スプレーされた前記金属粉末は、
a)球又は扁球を含む回転楕円体粒子、及び
b)不規則でないか、とがっていないか、又は粗くない粒子、及び
c)少なくとも90パーセントが全長(直径)において15~80μmである粒子、及び
d)少なくとも90パーセントが全長(直径)において15~45μmである粒子、
の少なくとも1つからなるか又は少なくとも1つを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記マトリックス形成粉末は、200HV未満の硬度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記マトリックス形成粉末は、150HV未満の硬度を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マトリックス形成粉末は、100HV未満の硬度を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、例えば、コールドスプレーされた粉末によって物体をスプレー形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
3D製品を形成するための金属粉末のコールドスプレーは、周知である。このプロセスは、3D印刷の一種と見なすことができる。粉末は、典型的には、促進剤ガスによって運ばれ、ハンドヘルドガン又はロボット装置のノズルからスプレーされて、製品又はその一部の形成又は修復が行われる。
【0003】
少なくとも多くのコールドスプレープロセスに関連する問題は、堆積した金属粒子の不完全な結合により、不十分な強度を有する最終製品が得られることである。これは、スプレーされた粒子の結合部分間の冶金的不連続性に起因し得ると考えられる。例えば、過剰な間隙又は充填されない空隙が、堆積した粒子間に残存する場合がある。さらに、粒子表面の非常に多くの部分が隣接粒子と結合しない場合がある。これらの問題に対処するために、例えば速度の増加、温度の上昇又は熱間静水圧プレスによるスプレーされた粉末の圧縮により、粉末をより激しくスプレーすることができる。これらの対策は、欠点を改善することができるが、これらによって容認できないレベルで製造コストが増加することもある。
【0004】
別の問題は、好都合な機械的硬度を有する合金が、粉末自体が非常に硬質であるため、粉末の保持率が低く(すなわち低い堆積効率)、コールドスプレーを用いて堆積することが非常に困難となる場合があることである。この問題は、粉末のアニーリングによって修正できる場合があるが、これには時間及び費用がかかる。
【0005】
金属粉末から物体を形成するための冶金技術の使用も知られている。これらは、金属粉末の加熱前又は加熱中に金属粉末を圧縮することを伴う。圧縮と熱との組み合わせは、クローズドダイ若しくはオープンダイ中で粉末を結合させる役割を果たすか、又は最初に圧縮され、その後、加熱されて固体金属物体を生成する。
【0006】
幾つかの場合、粉末を最初にクローズドダイ中で軽く圧縮し、次に加熱し、第2のダイを強く打ち付ける(これは、粉末鍛造として知られている)。しかし、このようなダイは、望ましくなく高価になる場合があり、製造に時間がかかる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の目的
本発明の好ましい一実施形態の目的は、上記の問題への対処に少なくともある程度役立つことである。この目的は、好ましい実施形態に適用されるが、より広く表現される請求項の範囲を限定するものとして見なすべきではない。この点に関して、本発明の目的自体は、単に公共に有用な選択を提供することである。
【0008】
定義
ステップ又は特徴の組み合わせに関して本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、別の明記されないステップ又は特徴が存在する選択肢を除外するものと見なすべきではない。したがって、この用語は、非排他的であると解釈すべきである。
【0009】
本明細書で使用される場合、「コールドスプレー」という用語は、粉末の融点未満の温度において、粉末が標的に衝突するときに結合を形成するのに十分速い速度でノズルから粉末をスプレーすることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明の一態様によると、3次元固体物体を形成する方法であって、
a)1つ以上の金属粉末をコールドスプレーして、3次元の固形の物品を形成するステップと、
b)スプレーされた粉末の一部が液化し、且つ物品の1つ以上の固体部分間の空間及び非接着性を減少させるように、物品を焼結させるステップと、
c)加熱で液化したスプレーされた粉末の一部が固体になることを引き起こすか又はそれを可能にするステップと、
を含む方法が提供される。
【0011】
任意選択的に、スプレーされた粉末は、少なくとも主要マトリックス形成粉末である多量粉末と、少なくとも焼結用粉末である少量粉末との混合物とを含む。
【0012】
任意選択的に、多量粉末及び/又は少量粉末は、それぞれ合金を含む。
【0013】
任意選択的に、ステップb)において、物品は、マトリックス形成粉末及び焼結用粉末によって形成される合金の最低溶融温度よりも高い温度まで加熱される。
【0014】
任意選択的に、ステップb)において、物品は、マトリックス粉末及び焼結用粉末によって形成される合金の最低溶融温度よりも低い1つ以上の温度に、このような温度を超える前に加熱及び保持される。
【0015】
任意選択的に、形成されたときの物品の形状は、マトリックス形成粉末によって実質的に決定される。
【0016】
任意選択的に、ステップb)において液化するのは、実質的に焼結用粉末のみである。
【0017】
任意選択的に、マトリックス形成粉末は、
a)3重量%未満;
b)2.2重量%未満;又は
c)1.5重量%未満
の含有量の追加の金属を有する。
【0018】
任意選択的に、マトリックス形成粉末の少なくとも大部分は、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄及び/又は6000系アルミニウム合金のうち少なくとも1つ以上を主に含む。
【0019】
任意選択的に、マトリックス形成粉末は、セラミック物質を含む。
【0020】
任意選択的に、ステップb)における焼結は、アルミニウム、銅、ニッケル、スズ及び亜鉛の1つ以上の金属を主に含む焼結用粉末によるものである。
【0021】
任意選択的に、ステップb)における焼結は、
a)スプレーされた粉末の15重量%未満;
b)スプレーされた粉末の10重量%未満;又は
c)スプレーされた粉末の5重量%未満
である焼結用粉末によるものである。
【0022】
任意選択的に、マトリックス形成粉末と焼結用粉末との組み合わせは、ステップb)において焼結を提供する元素の少量部分を有し、この少量部分は、マグネシウム、ケイ素、炭素、ニッケル、銅、亜鉛、スズ、アルミニウム、リチウム、クロム、鉄及びマンガンの1つ以上を含む。
【0023】
アルミニウム、Al-Si-Mg合金及び銅の粉末
任意選択的に、スプレーされた粉末は、アルミニウム(例えば、6000系合金中)、Al-Si-Mg合金及び銅からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、
a)524~610℃で任意選択的に少なくとも1~7時間にわたって保持され、
b)470~550℃で保持され、
c)合金元素が飽和固溶体中に存在するように冷却される。
【0024】
任意選択的に、スプレーされた粉末は、アルミニウム(例えば、6000系合金)、Al-Si-Mg合金及び銅からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、
a)450~525℃で任意選択的に15~300分間にわたって保持され、
b)524~610℃で任意選択的に少なくとも1~7時間にわたって保持され、
c)470~550℃で保持され、
d)合金元素が飽和固溶体中に存在するように冷却される。
【0025】
銅及びアルミニウムの粉末
任意選択的に、スプレーされた粉末は、銅及びアルミニウム(最大で約15重量%のアルミニウム)からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、850~1000℃で任意選択的に少なくとも8~16時間にわたって保持される。
【0026】
任意選択的に、スプレーされた粉末は、銅及びアルミニウム(最大で約15重量%のアルミニウム)からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、
a)325~400℃で任意選択的に少なくとも4~18時間にわたって保持され、
b)850~1000℃で任意選択的に少なくとも8~16時間にわたって保持される。
【0027】
任意選択的に、スプレーされた粉末は、銅及びアルミニウム(任意選択的に最大で約15重量%のアルミニウム)からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、
a)325~400℃で任意選択的に少なくとも4~18時間にわたって保持され、
b)850~1,000℃で任意選択的に少なくとも8~16時間にわたって保持され、
c)800~1000℃で保持され、
d)合金元素が飽和固溶体中に存在するように冷却される。
【0028】
銅、アルミニウム、鉄及びニッケル又はケイ素の粉末
任意選択的に、スプレーされた粉末は、銅及びアルミニウム(任意選択的に最大で約15重量%のアルミニウム)からなるか又はそれらを含み、最大で4%の鉄及び最大で3%のニッケル又はケイ素を有する。
【0029】
銅及び亜鉛の粉末
任意選択的に、スプレーされた粉末は、銅及び亜鉛(任意選択的に最大で約15重量%の亜鉛)からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、850~950℃で任意選択的に少なくとも8~14時間にわたって保持される。
【0030】
任意選択的に、スプレーされた粉末は、銅及び亜鉛(任意選択的に最大で約15重量%の亜鉛)からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、
a)320~400℃で任意選択的に少なくとも1~8時間にわたって保持され、
b)850~950℃で任意選択的に少なくとも8~14時間にわたって保持される。
【0031】
任意選択的に、スプレーされた粉末は、銅及び亜鉛(任意選択的に最大で約15重量%の亜鉛)からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、
a)320~400℃で任意選択的に少なくとも1~8時間にわたって保持され、
b)420~550℃で任意選択的に少なくとも5~25分間にわたって保持され、
c)850~950℃で任意選択的に少なくとも8~14時間にわたって保持される。
【0032】
銅及びスズの粉末
任意選択的に、スプレーされた粉末は、銅及びスズ(任意選択的に最大で約10重量%のスズ)からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、850~950℃で任意選択的に少なくとも8~14時間にわたって保持される。
【0033】
任意選択的に、スプレーされた粉末は、銅及びスズ(任意選択的に最大で約10重量%のスズ)からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、
a)200~230℃で任意選択的に少なくとも1~8時間にわたって保持され、
b)850~950℃で任意選択的に少なくとも8~14時間にわたって保持される。
【0034】
任意選択的に、スプレーされた粉末は、銅及びスズ(任意選択的に最大で約10重量%のスズ)からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、
a)231~400℃で任意選択的に少なくとも5~25分間にわたって保持され、
b)850~950℃で任意選択的に少なくとも8~14時間にわたって保持される。
【0035】
銅及び鉄の粉末
任意選択的に、スプレーされた粉末は、鉄及び銅(任意選択的に最大で約5重量%の銅)からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、1,096~1,200℃で任意選択的に少なくとも8~14時間にわたって保持される。
【0036】
任意選択的に、スプレーされた粉末は、鉄及び銅(任意選択的に最大で約5重量%の銅)からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、
a)800~1,096℃で任意選択的に少なくとも1~8時間にわたって保持され;及び続いて、
b)1,096~1,200℃で任意選択的に少なくとも8~14時間にわたって保持される。
【0037】
任意選択的に、スプレーされた粉末は、鉄及び銅(任意選択的に最大で約5重量%の銅)からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、
a)1,096~1,200℃で任意選択的に少なくとも8~14時間にわたって保持され、
b)750~900℃で保持され、及び続いて、任意選択的に、
c)マルテンサイト組織を生成するように冷却される。
【0038】
鉄及びニッケルの粉末
任意選択的に、スプレーされた粉末は、鉄及びニッケル(任意選択的に最大で約5重量%のニッケル)からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、1,455~1,490℃で任意選択的に少なくとも8~14時間にわたって保持される。
【0039】
任意選択的に、スプレーされた粉末は、鉄及びニッケル(最大で約5重量%のニッケル)からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、
a)1,000~1,455℃で任意選択的に少なくとも1~8時間にわたって保持され、
b)1,455~1,490℃で任意選択的に少なくとも8~14時間にわたって保持される。
【0040】
任意選択的に、スプレーされた粉末は、鉄及びニッケル(最大で約5重量%のニッケル)からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、
a)1,455~1,490℃で任意選択的に少なくとも8~14時間にわたって保持され、
b)750~900℃で保持され、
c)マルテンサイト組織を生成するように冷却される。
【0041】
ニッケル及び銅の粉末
任意選択的に、スプレーされた粉末は、ニッケル及び銅(最大で約15重量%の銅)からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、1,100~1,300℃で任意選択的に少なくとも8~14時間にわたって保持される。
【0042】
任意選択的に、スプレーされた粉末は、ニッケル及び銅(最大で約15重量%の銅)からなるか又はそれらを含み、及びステップb)において、物品は、
a)900~1,100℃で任意選択的に少なくとも1~8時間にわたって保持され、
b)1,100~1,300℃で任意選択的に少なくとも8~14時間にわたって保持される。
【0043】
任意の粉末
任意選択的に、ステップa)におけるスプレーされた粉末は、回転楕円体粒子、例えば球又は扁球からなるか又はそれを含む。
【0044】
任意選択的に、ステップa)におけるスプレーされた粉末は、不規則でないか、とがっていないか、又は粗くない粒子からなるか又はそれを含む。
【0045】
任意選択的に、ステップa)におけるスプレーされた粉末は、少なくとも90%が全長(例えば、直径)において15~80μmである粒子からなるか又はそれを含む。
【0046】
任意選択的に、ステップa)におけるスプレーされた粉末は、少なくとも90%が全長(例えば、直径)において15~45μmである粒子からなるか又はそれを含む。
【0047】
任意選択的に、マトリックス形成粉末は、200HV未満の硬度を有する。
【0048】
任意選択的に、マトリックス形成粉末は、150HV未満の硬度を有する。
【0049】
任意選択的に、マトリックス形成粉末は、100HV未満の硬度を有する。
【0050】
画像
ここで、本発明の幾つかの好ましい実施形態は、例として添付の画像を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図2】Al-Si10-Mg粉末+3%Cu粉末の混合物のコールドスプレーによって作製された一連のブロックを写真で示す。
【
図4】Al-Si10-Mg合金+3%Cuの混合物のコールドスプレーによって作製されたさらなるブロックを写真で示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
詳細な説明
以下に詳細が示されるコールドスプレーにより、種々の3次元物体を形成した。
【実施例】
【0053】
実施例1
コールドスプレーされたアルミニウム合金6061粉末
アルミニウム合金6061は、例えば、https://en.wikipedia.org/wiki/6061_aluminium_alloyに記載されるような市販製品である。
【0054】
アルミニウム合金6061は、約2.7g/cm3の密度、約580℃の融点、約70~80GPaの弾性率、約0.33のポアソン比、約173W/m・Kの熱伝導率及び約3.7~4.0×10-6Ω・cmの電気抵抗率を有する無垢「展伸用」製品として使用される場合がある。
【0055】
アルミニウム合金6061は、Kymera International(https://www.kymerainternational.com/)の系列会社であるEcka Granules Germany製の粉末としてオーストラリアで入手可能であり、実質的に以下の表に示されるような組成を有する。
【0056】
【0057】
コールドスプレーされる粉末アルミニウム合金6061は、最終製品の引張強度に関して、展伸のための種類に対して標準未満であることが多い。これは、コールドスプレーされた物品の微細構造における層中及び/又はスプレーされた層間の粒子の結合が不完全であることに起因すると思われる。
【0058】
30バール及び500℃の圧縮空気を用いて、アルミニウム合金6061粉末をコールドスプレーして、一連の標準引張試験片を作製した。これらを以下のように熱処理した。
焼きなまし:575℃×4時間+空冷
溶体化:530℃×1時間+水焼入れ
時効:200℃×1時間
【0059】
次に、試験片の破断及び伸びの試験を行い、以下の表に示されるような平均結果を得た。この表は、展伸用アルミニウム合金6061との比較も示す。
【0060】
【0061】
表に示されるように、アルミニウム合金6061粉末から物品を効果的にコールドスプレーすることができる。これらは、効果的に堆積し、形成されるが、含まれる粒子は、同様に結合せず、展伸用アルミニウムと同じ強度が得られない。
【0062】
実施例2
コールドスプレーされたアルミニウム合金6061粉末+4%Cu粉末
銅粒子は、コールドスプレーされた場合に十分に堆積することが分かった。しかし、純銅は、熱硬化の能力がないか又は不十分であると思われ、そのため、構造用途への使用は、限定されると一般に考えられる。これは、十分な強度を有する必要がある物品のコールドスプレーの候補になりそうになかった。
【0063】
しかし、本発明者らは、銅粉末をアルミニウム合金6061粉末と組み合わせてコールドスプレーして、良好な効果を得ることができることを発見した。アルミニウム合金6061粉末との混合物中でスプレーされる場合、銅粉末は、548℃よりも高温で液相を形成し、3D製品が得られることが分かった(
図1に示される)。驚くべきことに、銅により、アルミニウム合金6061粉末単独の場合よりもはるかに硬い最終物品が得られることが発見された。銅は、アルミニウムに対して中程度の拡散係数を有し、そのため、銅は、直ちに焼結する液相を形成することができ、アルミニウムマトリックス中に単に溶解することがあまりないことが分かった。
【0064】
30バール及び500℃の圧縮空気を用いて、アルミニウム合金6061粉末と、重量基準で4%のCu粉末との混合物をコールドスプレーして、一連の標準引張試験片を形成した。これらを以下のように熱処理した。
焼結:610℃×3時間+炉冷
溶体化:505℃×1時間+水焼入れ
時効:160℃×1時間
【0065】
結果として得られた材料の引張試験を行うと、かなり高い強度を有することが分かった。これは、実施例1の結果との比較を含めて以下の表に示されている。
【0066】
【0067】
実施例2の物品、すなわち混合物中に銅を有する物品は、実施例1の物品よりもはるかに強く、展伸用物品ともほぼ同等であった。要約すると、銅粉末の添加を「スプレー後の熱処理」とともに行うことで、破断応力及び伸びのパラメーターが非常に改善された。
【0068】
実施例3
6061+4%Cuの多孔性は、熱処理に依存して変動する
図2を参照すると、30バール及び500℃において、アルミニウム合金6061粉末と、重量基準で4%のCu粉末との混合物をコールドスプレーすることによって一連のブロックを形成した。
【0069】
次に、これらを以下のように熱処理した。
【0070】
【0071】
図2に示されるように、試料Aは、目に見える多孔性を示さなかった。しかし、試料B及びCは、熱処理中に実質的に全体的な多孔性を示し、これらの密度は、低下し、最終物品は、多くの機械的用途に適さなくなった。対照的に、驚くべきことに、試料Dは、目に見える多孔度を示さず、機械的用途の候補となった。
【0072】
実施例4
Al-Si10-Mg+3%Cuは、コールドスプレーできない
3D印刷(例えば、選択的レーザー溶融)に一般的な粉末合金は、Al-Si10-Mgである。この典型的な組成を以下に示す。
【0073】
【0074】
Al-Si10-Mg合金は、溶融するように設計されており、コールドスプレーに関連して液相焼結に適していると考えられた。
図3に示されるように、液体形成に適した大きい2相領域(例えば、固体又は液体になることができる大きい温度帯)を有する。さらに、それは、スプレーされたアルミニウム合金6061と類似の方法で硬化させることができる。Cuの添加は、焼結する液体が最初に存在する温度を524℃(
図2)まで低下させるのに十分であると考えられた。これにより、液相焼結の作用が促進され、前述のような最終熱処理での硬化応答が増強されると考えられた。
【0075】
前述の試験を行うために、Al-Si10-Mg粉末と、重量基準で3%のCu粉末との混合物を用いて、材料のブロックをコールドスプレーした。粉末は、30バール及び500℃の空気を用いて塗布した。しかしながら、
図4に示されるように、ブロックは、正しく形成されなかった。この理由は、Al-Si10-Mgが、スプレーされた材料の約15%のみがブロック中に問題なく組み込まれ、残りがはね返ったという点で低い堆積効率を有することが分かったからであった。この驚くべき不十分な結果は、アルミニウム粉末中の硬質なケイ素の過剰な比率によるものであった。
【0076】
実施例5:6061+5%Al-10Si-Mg+1%Cuに予備焼結処理を行うことで驚くべき性能が得られる
実施例1及び2の6061合金粉末を5%Al-10Si-Mg及び1%Cuと混合物し、次にコールドスプレーを行った。スプレーされた部分に対して、以下のような「予備焼結」処理を含む通常と異なる熱処理を行った。
予備焼結:500℃×20分
焼結:595℃×4時間
溶体化する:530℃×1時間+水焼入れ
【0077】
次に、試料を150℃×2.5時間時効させた。
【0078】
これにより、以下の表に示す顕著な結果に戻った。
【0079】
【0080】
実施例6:アルミニウム青銅への予備焼結の適用
理論によって束縛されることを望むものではないが、実施例5における予備焼結処理は、不十分に結合した界面に沿った液体の浸透を改善し、多孔度を減少させることができると考えられる。この効果は、種々の合金系、例えばアルミニウム青銅に一般化させることができる。
【0081】
純銅粉末を実施例1及び2の10%の6061粉末と混合物した。これをコールドスプレーして部品を作製し、次に以下の表のように2つの方法で熱処理し、次に試験を行った。さらに、比較のために、完全に合金化したアルミニウム青銅粉末(すなわち焼結剤なし)をコールドスプレーして試験を行った。2つの予備焼結ステップを行った混合物粉末は、非常に優れた性能を示した。
【0082】
【0083】
開示に関して、本明細書は、これにより、本明細書で言及されるそれぞれの物品、ステップ又は他の特徴を、本明細書で開示される1つ以上の任意の他の物品、ステップ又は他の特徴と組み合わせて、それぞれの場合にこのような組み合わせが特許請求されるかどうかとは無関係に想定及び開示するものである。
【0084】
本発明の幾つかの好ましい形態が例として記載されてきたが、本発明又は以下の請求項から逸脱することなく、修正形態及び改良形態が可能であることが理解されるべきである。