(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】結晶成長装置
(51)【国際特許分類】
C30B 23/02 20060101AFI20241225BHJP
F27B 14/10 20060101ALI20241225BHJP
C30B 23/06 20060101ALI20241225BHJP
C30B 25/08 20060101ALI20241225BHJP
C30B 25/10 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
C30B23/02
F27B14/10
C30B23/06
C30B25/08
C30B25/10
(21)【出願番号】P 2021528851
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(86)【国際出願番号】 EP2019081770
(87)【国際公開番号】W WO2020104444
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】102018129492.1
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521217105
【氏名又は名称】エブナー インドゥストリーオーフェンバウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト エブナー
(72)【発明者】
【氏名】グハサン バルバル
(72)【発明者】
【氏名】チー-ユン ション
(72)【発明者】
【氏名】ベルント グルーン
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-084240(JP,A)
【文献】特表2007-500664(JP,A)
【文献】特開2014-224014(JP,A)
【文献】米国特許第06056820(US,A)
【文献】特開2009-215116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 23/02
F27B 14/10
C30B 23/06
C30B 25/08
C30B 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶を成長させるための装置(100)であって、前記装置(100)は、
チャンバ(101)と、
前記チャンバ(101)の加熱可能な収容空間(103)に配置されている坩堝(102)と、を備えており、
前記坩堝(102)は、内部で結晶を成長させるように構成された内部容積(104)を備えており、
前記坩堝(102)は、各側壁(106)が前記坩堝(102)の上部(107)へ延在する底部(105)を備えており、
前記坩堝(102)は、
複数の堆積セクション(D2-D7)を備え、複数の前記堆積セクション(D2-D7)は、いずれも、種結晶(108)を取り付けるように構成
され、
各前記堆積セクション(
D2-D7)は、前記坩堝(102)の前記側壁(106)又は前記上部(107)
に形成され、
前記坩堝(102)は、内面から前記内部容積(104)へ延在する、複数の突起(109)を備え、
前記堆積セクション(
D2-D7)は、前記突起(109)に形成され、
前記突起(109)は、互いに離間して配置されている、装置(100)。
【請求項2】
前記底部(105)は、
前記種結晶(108)のための
前記堆積セクション(
D2-D7)を含まない、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記坩堝(102)は、前記底部(105)と前記上部(107)との間に垂直方向に沿って延在する、請求項1又は請求項2に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記堆積セクション(
D2-D7)は、互いに離間して配置され、前記坩堝(102)の前記側壁(106)及び前記上部(107)の少なくとも1つに形成されている、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の装置(100)。
【請求項5】
前記突起(109)は、前記坩堝(102)の前記側壁(106)又は前記上部(107)から前記内部容積(104)へ延在
し、
付加的な突起(109)が、前記坩堝(102)の前記上部(107)から前記内部容積(104)へ延在し、前記付加的な突起(109)は、付加的な堆積セクション(D1)を形成し、付加的な種結晶(108)を取り付けるように構成されている、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項6】
前記坩堝(102)は、少なくとも1つのノズル(110)を備えており、
前記ノズル(110)は、反応ガス/反応液体(111)を前記坩堝(102)の前記内部容積(104)に注入するように構成されている、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の装置(100)。
【請求項7】
少なくとも1つの前記ノズル(110)は、反応ガス/反応液体(111)を前記堆積セクション(
D2-D7)のうちの1つへ向けた方向に排出するように構成されている、請求項6に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記坩堝(102)は、前記坩堝(102)の前記底部(105)と前記上部(107)との間に部分的に延在する排出柱要素(112)を備えており、
前記排出柱要素(112)は、少なくとも1つの前記ノズル(110)を備えている、請求項6又は請求項7に記載の装置(100)。
【請求項9】
前記排出柱要素(112)は、前記坩堝(102)の前記底部(105)に形成された反応ガス/反応液体インタフェイス(113)と連結されている、請求項8に記載の装置(100)。
【請求項10】
前記坩堝(102)は、注入ガス/注入液体を注入するための注入インタフェイス(116)を備える、請求項1から請求項9の何れか1項に記載の装置(100)。
【請求項11】
前記注入インタフェイス(116)は、前記内部容積(104)内の圧力を調整するための圧力調整弁(120)に連結可能とされている、請求項10に記載の装置(100)。
【請求項12】
前記チャンバ(101)は、前記坩堝(102)に熱エネルギーを提供するために、複数の加熱要素(119)を備える、請求項1から請求項11の何れか1項に記載の装置(100)。
【請求項13】
前記複数の加熱要素(119)は、前記チャンバ(101)の外壁を取り囲む、請求項12に記載の装置(100)。
【請求項14】
前記複数の加熱要素(119)は、前記内部容積(104)を1350℃から1450℃の間の温度に加熱するように構成されている、請求項12又は請求項13に記載の装置(100)。
【請求項15】
前記複数の加熱要素(119)は、RFヒータ、抵抗ヒータ、及び加熱発生器のうちの1つから選択される、請求項12から請求項14の何れか1項に記載の装置(100)。
【請求項16】
前記坩堝(102)と前記チャンバ(101)の壁との間の前記収容空間(103)に配置された断熱材(121)をさらに備える、請求項1から請求項15の何れか1項に記載の装置(100)。
【請求項17】
前記坩堝(102)は、金属ベース、酸化物ベース、窒化物ベース、炭素ベース及び緻密なグラファイトを含む群のうちの1つから選択される材料からなる、請求項1から請求項16の何れか1項に記載の装置(100)。
【請求項18】
前記堆積セクションにおける結晶の核形成を増強するための成長力強化装置(117)をさらに備えており、
前記成長力強化装置(117)は、プラズマ源、マイクロ波源、及び、レーザ源からなる群のうちの1つから選択される、請求項1から請求項17の何れか1項に記載の装置(100)。
【請求項19】
請求項1に記載の装置を使用して、結晶を成長させるための方法であって、前記方法は、
前記坩堝(102)の
前記堆積セクション(
D2-D7)に種結晶(108)を取り付けるステップであって、前記堆積セクション(
D2-D7)は、前記坩堝(102)の
前記側壁(106)及び
前記上部(107)のうちの少なくとも1つに形成されるステップと、
前記チャンバ(101)の加熱可能な収容空間(103)に配置された前記坩堝(102)の
前記内部容積(104)の内部で結晶を成長させるステップと、
を備える、方法。
【請求項20】
前記坩堝(102)内に、反応流体及び注入流体のうちの1つからなる原料(118)を提供するステップであって、前記原料(118)は、固相材料、液相材料、気相材料、及びC-、H-、CH-溶液を含む混合相材料からなる群のうちの1つから選択されるステップをさらに備える、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記反応流体は液体(111)であり、前記注入流体は液体(116)である、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶を成長させるための装置、及び、結晶を成長させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶又は単結晶固体は、サンプル全体の結晶格子が連続しており、結晶粒界のないサンプルのエッジまで壊れていない材料である。結晶粒界に関連する欠陥がないことは、単結晶に、特に機械的、光学的、電気的なユニークな特性を与えることができ、結晶構造のタイプによっては異方性をも有する。これらの特性は、いくつかの宝石を貴重なものにすることに加えて、技術的用途、特に光学機器及び電子機器において工業的に使用されている。
【0003】
結晶成長は、より多くの分子又はイオンが結晶格子内のこれらの位置に追加されるにつれて、前から存在する結晶がより大きくなるプロセスである。結晶は、規則正しく繰り返されるパターンで配置された原子、分子、又はイオンであり、3つの空間次元全てにおいて延在する結晶格子として定義される。それゆえ、結晶成長は、液滴の成長とは異なり、秩序だった結晶が成長するために、成長中に分子又はイオンが正しい格子位置に落ちる必要がある。
【0004】
タンパク質などの生体高分子の結晶化は、基本的に、無機塩などの一般的な低分子化合物の場合と同様に、その高分子を含む水溶液や無水溶液から溶媒を除去し、それによって過飽和状態にし、結晶を成長させる処理を行うように適用されている。そのための典型的な方法は、例えば、バッチ法、透析法、気液相関拡散法であり、サンプルの種類、量、特性などに応じて選択される。
【0005】
例えば、結晶成長は、半導体(例えば、シリコン、ゲルマニウム及びガリウムヒ素)、金属(例えば、パラジウム、白金、銀、金)、塩及び合成宝石の単結晶を得るために使用され得る。
【0006】
さらなる用途は、集積回路のような半導体デバイスを製造するために電子産業で使用されている単結晶シリコンの大きな円筒形インゴット又はブール(boules)の成長であり得る。
【0007】
結晶を成長させるには、坩堝が、炉のチャンバ内に設置される。結晶成分を形成するために、種結晶が、坩堝の中に配置される。種結晶は、一般的に、形成する結晶成分の材料である所望の結晶材料からなる。坩堝内の結晶材料が溶融状態かつ液体状態で提供されるように、炉が加熱される。坩堝の底部における種結晶を起点として結晶成分を成長させることによって、結晶成分が形成される。
【0008】
しかしながら、成長過程の間、安定した温度、圧力、ガスを供給することは困難である。それゆえ、SiCやAl203等で作られた大型で高品質の単結晶を成長させることは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、大きな結晶を成長させるための均質な雰囲気を有する、結晶を成長させるための炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、独立請求項に係る結晶を成長させるための装置及び結晶を成長させる方法によって解決される。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、結晶を成長させるための装置が提示される。装置は、チャンバと、チャンバの加熱可能な収容空間に配置された坩堝と、を備え、坩堝は、内部で結晶を成長させるように構成された内部容積を備える。坩堝は、各側壁が、坩堝の上部へ延在する底部を備える。坩堝は、種結晶を取り付けるように構成された少なくとも1つの堆積セクションを備えており、堆積セクションは、坩堝の側壁及び上部の少なくとも1つに形成される。
【0012】
本発明のさらなる態様によれば、結晶を成長させるための方法が提示される。この方法によれば、種結晶は、坩堝の堆積セクションに取り付けられており、堆積セクションは、坩堝の側壁及び上部の少なくとも1つに形成されている。さらに、結晶は、チャンバの加熱可能な収容空間内に配置されている坩堝の内部容積内で成長する。
【0013】
装置は、坩堝に加熱可能な収容空間を提供するチャンバを備える炉とされてもよい。装置及び坩堝は、それぞれ、所望の温度に達するまで坩堝の内部容積を加熱する。内部容積の内部に提供され得る温度は、100℃から1400℃、好ましくは約2100℃以上とされてもよい。坩堝の内部容積が、筐体を取り囲む環境、すなわち中間容積から熱的に隔離されるように、チャンバは、断熱材を含み得る。
【0014】
坩堝は、結晶成長が発生する内部容積を備える。坩堝の内部に、種要素が配置されてもよい。種要素は、サファイアなどの所望の単結晶材料からなる。さらに、反応流体、例えば、高純度アルミナクラックル(alumina crackle)といった所望の結晶材料などの反応液体又は反応ガスは、坩堝の内部容積内に入れられる。坩堝内部の温度が上昇すると、反応液体/反応ガス内の所望の材料は、種結晶の表面上で成長する。坩堝は、円形、楕円形又は長方形の底面を有する円筒形状を備える。
【0015】
坩堝の内部容積の内部において、結晶の成長を制御するための望ましい温度勾配を提供することが目的とされている。しかしながら、対流のために、例えば、坩堝の内部容積の他の領域よりも底部領域に高い温度を提供することは困難である。
【0016】
従って、本発明のアプローチによって、種結晶の堆積は、坩堝の側壁又は坩堝の上部に画定された堆積セクションに配置される。種結晶は、例えば、特定の接着剤によって堆積セクションに取り付けられてもよい。さらに、種結晶が、何らの接着剤なしで堆積セクションを形成するステップ上に配置され得るように、堆積セクションは、坩堝の内壁にステップを形成してもよい。
【0017】
従って、結晶成長は、内部容積の領域において、温度制御をより正確に行うことができ得る、底部から離間した状態で行われる。堆積セクションが坩堝の側壁又はその上部に配置されている場合、それぞれの種結晶からの結晶成長は、坩堝の側壁から坩堝の中心へ向けて横方向に、又は、坩堝の上部から底部へ向けて逆さまに、方向付けられている。横方向の成長及び上部から底部への成長方向に基づいて、原子の積層欠陥を減らすことができるように、堆積セクション上の核形成が適切に制御される。従って、結晶成長は、坩堝の内部容積の内側の所望の成長雰囲気で起こり、より大きな結晶を成長させ得る。
【0018】
本発明の例示的な実施形態によれば、底部は、種結晶のための堆積セクションを有さない。従って、内部容積の内側の底部付近の温度は、坩堝の中央部及び上部の内側の均一な結晶成長に影響を与えない。
【0019】
さらなる例示的な実施形態によれば、坩堝は、底部と上部との間を垂直方向に沿って延在する。言い換えれば、坩堝の最下部の底部と坩堝の最上部の上部である。
【0020】
本発明のさらなる例示的な実施形態によれば、坩堝は、それぞれが種結晶を取り付けるように構成された複数の堆積セクションを備える。堆積セクションは、互いに離間して配置され、坩堝の側壁及び上部の少なくとも1つに形成される。従って、坩堝の異なる横方向位置及び上部位置から、複数の結晶を坩堝の中心へ向かう方向に成長させることができる。
【0021】
さらなる例示的な実施形態によれば、坩堝は、内面から、特に、坩堝の側壁又は上部から内部容積内へ延在する少なくとも1つの突起を備えており、堆積セクションは、突起に形成されている。従って、種結晶が、何らの接着剤無しで堆積セクションを形成するステップ上に配置され得るように、堆積セクションは、坩堝の内壁にステップを形成され得る。
【0022】
さらなる例示的な実施形態によれば、坩堝は、坩堝の内面から内部容積内へ延在する複数の突起を備えており、突起は互いに離間されている。
【0023】
さらなる例示的な実施形態によれば、坩堝は、少なくとも1つのノズルを備えており、ノズルは、反応流体(例えば、反応液体又は反応ガス)を坩堝の内部容積に注入するように構成されている。
【0024】
特に、さらなる例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのノズルは、堆積セクションの1つに向かう方向へ反応流体/反応液体を放出するように構成されている。反応流体/反応液体は、気体、蒸気、又は液体媒体とされてもよい。具体的には、反応流体/反応液体は、C-、H-、CH-溶液又は蒸気の単一物又は混合物を有するガス混合物又は蒸気混合物とされてもよい。
【0025】
さらなる例示的な実施形態によれば、坩堝は、坩堝の底部と上部との間に部分的に延在し、少なくとも1つのノズルを備えた排出柱要素を備える。排出柱要素は、棒形状を備えており、例えば、坩堝の底部に固定することができる。排出柱要素は、例えば、複数のノズルを備えた一種のシャワーヘッドとされており、各ノズルは、それぞれの堆積側へ方向付けられてもよい。具体的には、排出柱要素は、例えば、坩堝の円筒形状の中心軸に沿って延在する。従って、排出柱要素に配置された各ノズルは、坩堝の中心から坩堝の側壁へ方向付ける。さらに、排出柱要素の上端は、坩堝の上部と間隔を置いて配置されてもよい。排出柱要素の上端において、坩堝の上部に配置された堆積セクションへ方向付けられる各ノズルが配置されてもよい。
【0026】
さらなる例示的な実施形態によれば、排出柱要素は、坩堝の底部に形成された反応液体インタフェイスと連結されている。従って、排出柱要素は、例えば、中空コラム又はピラーが形成され、ガスラインは、コラムの底部から排出柱要素に配置された各ノズルまで延在する。
【0027】
さらなる例示的な実施形態によれば、坩堝は、例えば、注入液体又は注入ガスといった、注入流体を注入するための注入インタフェイスを備えており、注入インタフェイスは、例えば、内部容積内の圧力を調整するための圧力調整弁に連結可能とされている。例えば、注入インタフェイスは、例えば、坩堝の上部に配置された1つ又は複数の開口部を備える。具体的には、注入インタフェイスは、反応液体インタフェイスに対して、坩堝の反対側の位置に配置されてもよい。具体的には、注入液体の圧力を、例えば、1ミリバール(100Pa)から10バール(1MPa)の間で調節する圧力調整弁が設けられている。注入液体は、液体及び/又は気体の状態で注入されてもよい。注入液体は、反応液体と反応されてもよい。例えば、反応液体は、第1の成分とされてもよく、注入液体は、第2の成分とされてもよい。第1の成分と第2の成分との反応後、種結晶上に昇華させ得る原料が生成され、種結晶上にすでに形成された結晶層が、それぞれ生成される。
【0028】
内部容積内の圧力を調整するための圧力調整弁及び注入インタフェイスは、液体/ガスを注入するために、かつ、坩堝内の圧力を低下させるために、液体/ガスを流すために連結される。
【0029】
さらなる例示的な実施形態によると、チャンバは、坩堝に熱エネルギーを提供するための、特に、チャンバの外壁を取り囲む複数の加熱要素を備える。加熱要素は、また、チャンバの外壁と坩堝の側壁との間の収容空間に配置されてもよい。加熱要素は、例えば、チャンバ及び坩堝をそれぞれ取り囲む管とされてもよく、管は、高温の液体又は高温のガスといった加熱媒体を含む。例えば、加熱要素は、側壁を取り囲み、さらに坩堝の上部及び底部を取り囲んでもよい。
【0030】
さらなる例示的な実施形態によれば、複数の加熱要素は、内部容積を1350℃から1450℃の間の温度に加熱するように構成されている。
【0031】
さらなる例示的な実施形態によれば、複数の加熱要素は、RF(無線周波数)ヒータ、抵抗ヒータ、及び、加熱発生器のうちの1つから選択される。
【0032】
さらなる例示的な実施形態によれば、坩堝とチャンバの壁との間の収容空間に配置された断熱材が設けられている。断熱材は、空間の温度勾配を保ち、チャンバ壁を保護する。
【0033】
さらなる例示的な実施形態によれば、坩堝は、金属ベース、酸化物ベース、窒化物ベース、炭素ベース、及び、緻密なグラファイトを含む群のうちの1つから選択される材料からなる。
【0034】
さらなる例示的な実施形態によれば、装置は、堆積部上での結晶の核形成を増強するための成長力強化装置を備えており、成長力強化装置は、プラズマ源、マイクロ波源、及び、レーザ光源からなる群の1つから選択される。成長力強化装置は、結晶の成長速度が増加するように、坩堝内側の温度を上昇させる。坩堝内側の温度は、成長力増強装置によって、例えば、坩堝を囲む加熱要素よりもより正確に制御することができる。従って、ベース温度は、加熱要素によって制御することができ、坩堝内の温度変化又はより詳細な温度プロファイルは、成長力強化装置によって制御することができる。
【0035】
成長力強化装置は、坩堝の内側(例えば、成長力強化装置がレーザ源である場合)、又は、坩堝の外側(例えば、成長力強化装置がマイクロ波源である場合)に直接配置することができる。例えば、レーザ光源は、坩堝の上部又は底部に設置されてもよい。
【0036】
本方法のさらなる例示的な実施形態によれば、原料は、坩堝内に提供され、原料は、固相材料、液相材料、及び、混合相材料からなる群のうちの1つから選択される。
【0037】
本方法のさらなる例示的な実施形態によれば、反応流体/反応液体は、坩堝の内部容積に注入され、反応流体/反応液体は、C-、H-、CH-の溶液又は蒸気の単一物又は混合物を有するガス又は蒸気からなる群のうちの1つから選択される。
【0038】
さらなる例示的な実施形態によれば、坩堝内の反応ガス/反応液体及び注入ガス/注入液体のうちの1つからなる原料が提供され、原料は、固相材料、液相材料、C-、H-、CH-溶液を備えた気相材料及び混合相材料からなる群のうちの1つから選択される。反応ガス/反応液体及び注入ガス/注入液体は、メチルシリコクロロホルム(MTS)、及び、例えば、-C5H5又はCxHyといった先行核を備えてもよい。
【0039】
本発明の実施形態は、異なる主題を参照して説明されてきたことに留意されたい。特に、いくつかの実施形態は、装置タイプの請求項を参照して説明されているが、他の実施形態は、方法タイプの請求項を参照して説明されている。しかしながら、当業者は、他に周知されない限り、あるタイプの主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、異なる主題に関連する特徴間の任意の組み合わせ、特に、本出願で開示されるものとみなされる、装置タイプの請求項の特徴と方法タイプの請求項の特徴との間の任意の組み合わせもまた、本出願に沿って開示されていると考えられる。
【0040】
上記で定義された態様及び本発明のさらなる態様は、以下に説明する実施形態の例から明らかであり、実施形態の例を参照して説明される。本発明は、実施形態の例を参照して以下により詳細に説明されるが、本発明はそれに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、本発明の例示的な実施形態による結晶を成長させるための装置の概略図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の例示的な実施形態による、装置の上方側の堆積セクションに形成された多結晶片を示す。
【
図3】
図3は、本発明の例示的な実施形態による、装置の横方向の堆積セクションにおける複数の結晶を示す。
【
図4】
図4は、本発明の例示的な実施形態による、装置の横方向の堆積セクションの下方側に生成された複数の無配向結晶を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図面の図は概略図とされている。異なる図では、類似又は同一の要素に同じ参照記号が付けられていることに留意すべきである。
【0043】
図1は、本発明の例示的な実施形態による、結晶を成長させるための装置100の概略図を示す。装置は、チャンバ101と、チャンバ101の加熱可能な収容空間103内に配置された坩堝102と、を備えており、坩堝102は、内部で結晶を成長させるように構成された内部容積104を備える。坩堝102は、各側壁106が、坩堝102の上部107まで延在する底部105を備える。坩堝102は、種結晶108を取り付けるように構成された少なくとも1つの堆積セクションを備えており、堆積セクションは、坩堝102の側壁106及び上部107の少なくとも1つの上に、形成される。
【0044】
チャンバ101は、坩堝102のための加熱可能な収容空間103を設けている。装置100及び坩堝102は、それぞれ、所望の温度に達するまで坩堝の内部容積104を加熱する。内部容積104の内部に提供され得る温度は、100℃から1400℃、好ましくは約2100℃以上であり得る。チャンバ101は、坩堝の内部容積104が、チャンバ101を取り囲む環境、すなわち、中間容積から熱的に隔離されるように、断熱材121を備える。
【0045】
坩堝102は、結晶成長が行われる内部容積104を備える。坩堝104の内部には、種要素108が配置されている。種要素108は、サファイアなどの所望の単結晶材料からなる。さらに、所望の結晶材料、例えば、高純度アルミナクラックルなどの反応ガス/反応液体111は、坩堝102の内部容積104に注入される。坩堝102内の温度が上昇すると、反応ガス/反応液体内の所望の材料が種結晶108の表面上に成長する。坩堝102は、円形、楕円形、又は、長方形の底面を有する円筒形を備えてもよい。
【0046】
種結晶108は、坩堝102の側壁106、又は、坩堝102の上部107に画定される堆積セクションD1-D7に配置される。種結晶108は、例えば、特定の接着剤によって堆積セクションD1-D7に取り付けられる。さらに、堆積セクションD1-D7は、種結晶108が、接着剤なしで堆積セクションD1-D7を形成するステップ上に配置され得るように、坩堝102の内壁106にステップを形成する。
【0047】
従って、結晶成長は、内部容積104の領域において底部105から離間して行われ、より正確に温度制御することができる。堆積セクションD1-D7が、坩堝の側壁106又はその上部107に配置される場合、各種結晶108からの結晶成長は、坩堝102の側壁106から坩堝102の中心へ向けて横方向に、又は、坩堝102の上部107から坩堝102の底部105へ逆さまに、方向付けられる。横方向の成長及び上部107から底部105への成長方向に基づいて、堆積セクションD1-D7上での核形成は、原子積層欠陥を低減することができるように適切に制御される。
図1から得られるように、底部105は、種結晶108のための堆積セクションD1-D7を備えていない。したがって、内部容積104内の底部105の近傍の温度は、坩堝102の中央部及び上部の内側の均一な結晶成長に影響を及ぼさない。
【0048】
図1から得られるように、坩堝102は、各種結晶108を取り付けるように構成された複数の堆積セクションD1-D7を備える。堆積セクションD1-D7は、互いに間隔を置いて配置され、坩堝102の側壁106及び上部107のうちの少なくとも1つに形成される。したがって、坩堝100の異なる横方向位置及び上部位置から、坩堝100の中心へ向けた方向に複数の結晶を成長させることができる。
【0049】
堆積セクションD1-D7は、内面から、特に、坩堝102の側壁106又は上部107から内部容積104へ延在する突起によって形成される。
【0050】
さらに、坩堝102の内部容積104に反応ガス/反応液体を注入するように構成された坩堝102のノズル110が示されている。ノズル110は、反応ガス/反応液体を堆積セクションD1-D7へ向けた方向に注入するように構成されている。反応ガス/反応液体111は、ガス、蒸気又は液体媒体とされてよい。具体的には、反応ガス/反応液体は、C-、H-、CH-溶液又は蒸気の単一物又は混合物を有するガス混合物又は蒸気混合物とされてよい。
【0051】
ノズル110は、坩堝102の底部105から少なくとも部分的に上部107へ延在する排出柱要素112の内側に配置されている。排出柱要素112は、棒形状を備え、坩堝102の底部105に固定されている。排出柱要素112は、例えば、複数のノズル110を備えた一種のシャワーヘッドとされており、各ノズル110は、各堆積セクションD1-D7へ向けられている。具体的には、排出柱要素112は、例えば、坩堝102の円筒形状の中心軸に沿って延在する。従って、各ノズル110は、坩堝102の中心から側壁106へ向けて排出柱要素112に配置されている。さらに、排出柱要素112の上端は、坩堝102の上部107と離間されている。排出柱要素112の上端には、坩堝102の上部107に配置された堆積セクションD1へ向けられるノズル110が配置されている。
【0052】
排出柱要素112は、坩堝102の底部105に形成された反応ガス/反応液体インタフェイス113と連結される。排出柱要素112は、コラム102の底部105から排出柱要素112に配置された各ノズル110まで延在するガスラインを備える。
【0053】
坩堝102は、注入液体/注入ガス115を注入するための注入液体/注入ガスインタフェイス116を備えており、注入液体インタフェイス116は、内部容積104内の圧力を調整するための圧力調整弁114に連結可能とされている。例えば、注入液体インタフェイス116は、例えば、坩堝102の上部107に配置された複数の開口部を備える。注入液体インタフェイス116は、反応液体インタフェイス113に対して坩堝102の反対側の位置に配置されている。
【0054】
圧力調整弁120は、注入液体/注入ガスインタフェイス116に連結されている。内部容積内の圧力を調節するための圧力調整弁120及び注入液体/注入ガスインタフェイス116は、坩堝内部の圧力を制御、すなわち、増加又は減少させるために、液体/ガスを注入し、かつ、液体/ガスを流すために連結されている。
【0055】
チャンバ102は、坩堝102に熱エネルギーを提供するために、特に、チャンバ102の外壁を取り囲む複数の加熱要素119を備える。
【0056】
装置100は、堆積部D1-D7の結晶の核形成を強化するための成長力強化装置117をさらに備えており、成長力強化装置117は、プラズマ源、マイクロ波源、及び、レーザ源からなる群のうちの1つから選択される。
【0057】
底部105には、未使用の反応ガス/反応液体111が集められている。従って、堆積側D1-D7は、底部105から離間されており、底部105には堆積部D1-D7がないため、種結晶108は、坩堝102の底部領域に集められた反応液体111と接触していない。従って、ノズル110及び液体インタフェイス116からそれぞれ堆積部D1-D7にすでに注入された反応液体111及び注入液体115は、原料118と反応し、底部105に流れ落ちる。坩堝102の底部105に集められた原料118は、もはや結晶の成長に影響を与えない。
【0058】
図2は、
図1に示された坩堝102の上方側堆積セクションD1に形成された一片の多結晶200を示す。成長した結晶に十分な空間を提供するために、排出柱要素112は、排出柱要素112の上端ノズル110から成長した結晶の近接点までの距離を一定に保つことができるように、坩堝102の中心(垂直)軸に沿って移動可能とされてもよい。
【0059】
図3は、
図1に示された坩堝102のそれぞれの横方向の堆積セクションD2-D7における複数の結晶を示す。
図3から分かるように、1つの共通の坩堝102を用いて、多数の結晶を同時に形成することができる。
【0060】
図4は、
図1に示された坩堝102の横方向の堆積セクションの下方側(例えば、堆積セクションD2-D7の下方側)に発生した複数の無方向の結晶を示す。この複数の無方向の結晶は、再び注入液体や反応液体を受け入れるために、集めて溶かされてもよい。
【0061】
なお、「備える」という用語は、他の要素やステップを排除するものではなく、「a」又は「an」は、複数を排除するものではないことに留意すべきである。また、異なる実施形態に関連して記載されている要素が組み合わされてもよい。また、特許請求の範囲における参照符号は、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことにも留意すべきである。
態様(1)によれば、結晶を成長させるための装置(100)であって、前記装置(100)は、
チャンバ(101)と、
前記チャンバ(101)の加熱可能な収容空間(103)に配置されている坩堝(102)と、を備えており、
前記坩堝(102)は、内部で結晶を成長させるように構成された内部容積(104)を備えており、
前記坩堝(102)は、各側壁(106)が前記坩堝(102)の上部(107)へ延在する底部(105)を備えており、
前記坩堝(102)は、種結晶(108)を取り付けるように構成された少なくとも1つの堆積セクション(D1-D7)を備えており、
前記堆積セクション(D1-D7)は、前記坩堝(102)の前記側壁(106)及び前記上部(107)の少なくとも1つに形成されている。
態様(2)によれば、前記底部(105)は、種結晶(108)のための堆積セクション(D1-D7)を含まない。
態様(3)によれば、前記坩堝(102)は、前記底部(105)と前記上部(107)との間に垂直方向に沿って延在する。
態様(4)によれば、前記坩堝(102)は、各々が種結晶(108)を取り付けるように構成された複数の堆積セクション(D1-D7)を備えており、
前記堆積セクション(D1-D7)は、互いに離間して配置され、前記坩堝(102)の前記側壁(106)及び前記上部(107)の少なくとも1つに形成されている。
態様(5)によれば、前記坩堝(102)は、内面から前記内部容積(104)へ延在する、少なくとも1つの突起(109)を備えており、
前記堆積セクション(D1-D7)は、前記突起(109)に形成されている。
態様(6)によれば、前記突起(109)は、前記坩堝(102)の前記側壁(106)又は前記上部(107)から前記内部容積(104)へ延在する。
態様(7)によれば、前記坩堝(102)は、前記坩堝(102)の前記内面から前記内部容積(104)へ延在する複数の突起(109)を備えており、
前記突起(109)は、互いに離間して配置されている。
態様(8)によれば、前記坩堝(102)は、少なくとも1つのノズル(110)を備えており、
前記ノズル(110)は、反応ガス/反応液体(111)を前記坩堝(102)の前記内部容積(104)に注入するように構成されている。
態様(9)によれば、少なくとも1つの前記ノズル(110)は、反応ガス/反応液体(111)を前記堆積セクション(D1-D7)のうちの1つへ向けた方向に排出するように構成されている。
態様(10)によれば、前記坩堝(102)は、前記坩堝(102)の前記底部(105)と前記上部(107)との間に部分的に延在する排出柱要素(112)を備えており、
前記排出柱要素(112)は、少なくとも1つの前記ノズル(110)を備えている。
態様(11)によれば、前記排出柱要素(112)は、前記坩堝(102)の前記底部(105)に形成された反応ガス/反応液体インタフェイス(113)と連結されている。
態様(12)によれば、前記坩堝(102)は、注入ガス/注入液体を注入するための注入インタフェイス(116)を備える。
態様(13)によれば、前記注入インタフェイス(116)は、前記内部容積(104)内の圧力を調整するための圧力調整弁(120)に連結可能とされている。
態様(14)によれば、前記チャンバ(101)は、前記坩堝(102)に熱エネルギーを提供するために、複数の加熱要素(119)を備える。
態様(15)によれば、前記複数の加熱要素(119)は、前記チャンバ(101)の外壁を取り囲む。
態様(16)によれば、前記複数の加熱要素(119)は、前記内部容積(104)を1350℃から1450℃の間の温度に加熱するように構成されている。
態様(17)によれば、前記複数の加熱要素(119)は、RFヒータ、抵抗ヒータ、及び加熱発生器のうちの1つから選択される。
態様(18)によれば、前記坩堝(102)と前記チャンバ(101)の壁との間の前記収容空間(103)に配置された断熱材(121)をさらに備える。
態様(19)によれば、前記坩堝(102)は、金属ベース、酸化物ベース、窒化物ベース、炭素ベース及び緻密なグラファイトを含む群のうちの1つから選択される材料からなる。
態様(20)によれば、前記堆積セクションにおける結晶の核形成を増強するための成長力強化装置(117)をさらに備えており、
前記成長力強化装置(117)は、プラズマ源、マイクロ波源、及び、レーザ源からなる群のうちの1つから選択される。
態様(21)によれば、結晶を成長させるための方法であって、前記方法は、坩堝(102)の堆積セクション(D1-D7)に種結晶(108)を取り付けるステップであって、前記堆積セクション(D1-D7)は、前記坩堝(102)の側壁(106)及び上部(107)のうちの少なくとも1つに形成されるステップと、
チャンバ(101)の加熱可能な収容空間(103)に配置された前記坩堝(102)の内部容積(104)の内部で結晶を成長させるステップと、を備える。
態様(22)によれば、前記坩堝(102)内に、反応流体及び注入流体のうちの1つからなる原料(118)を提供するステップであって、前記原料(118)は、固相材料、液相材料、気相材料、及びC-、H-、CH-溶液を含む混合相材料からなる群のうちの1つから選択されるステップをさらに備える。
態様(23)によれば、前記反応流体は液体(111)であり、前記注入流体は液体(116)である。
【符号の説明】
【0062】
100 装置
101 チャンバ
102 坩堝
103 収容空間
104 内部容積
105 底部
106 側壁
107 上部
108 種結晶
109 突起
110 ノズル
111 反応ガス/反応液体
112 排出柱要素
113 反応液体インタフェイス
114 制御弁
115 注入ガス/注入液体
116 注入インタフェイス
117 成長力強化装置
118 原料
119 加熱要素
120 圧力調整弁
121 断熱材
200 一片の多結晶
300 多結晶
400 方向付けられていない結晶
D1-D7 堆積セクション