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特許7610507光学バイオセンサを用いて細胞外小胞を分析するシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】光学バイオセンサを用いて細胞外小胞を分析するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20241225BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20241225BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12M1/00 A
C12M1/34 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021529766
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 US2019061998
(87)【国際公開番号】W WO2020112408
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】62/773,753
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,グレゴリー ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】タナー,アリソン ジーン
【審査官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0316487(US,A1)
【文献】特表2007-509351(JP,A)
【文献】特表2011-514963(JP,A)
【文献】特表2013-509596(JP,A)
【文献】LANGMUIR,2018年06月20日,Vol. 34, No. 29,pp. 8522-8531,DOI: 10.1021/acs.langmuir.7b04214
【文献】Nanoscale,2014年,Vol. 6,pp. 1741-1747,DOI: 10.1039/c3nr04432g
【文献】OPTICS EXPRESS,2018年10月15日,Vol. 26, No. 21,pp. 26985-27000,http://dx.doi.org/10.1364/OE.26.026985
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00 - 3/00
C12M 1/00 - 3/10
BIOSISMEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外小胞を含むサンプルを光導波路バイオセンサ上に配置するステップと、
前記細胞外小胞を前記光導波路バイオセンサに結合するステップと、
前記光導波路バイオセンサに結合した前記細胞外小胞を検出するステップと、
前記光導波路バイオセンサに結合した前記細胞外小胞の特性を分析するステップと
を含み、
前記光導波路バイオセンサが、その表面に固定された、前記細胞外小胞上のマーカーに特異的な結合物質を含み、
前記細胞外小胞を前記光導波路バイオセンサに結合するステップが、前記細胞外小胞を、前記結合物質を用いて前記光導波路バイオセンサの表面に結合させることを含み、
前記光導波路バイオセンサが光学共鳴導波路格子バイオセンサである、方法。
【請求項2】
前記細胞外小胞の前記特性が、前記サンプル中の細胞外小胞の数、前記サンプル中の細胞外小胞のサイズおよび/または前記サンプル中の細胞外小胞のタイプを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記細胞外小胞の前記特性を分析するステップが、前記細胞外小胞にリガンドを結合す るステップを含み、
前記リガンドが、前記細胞外小胞上の第1のマーカーに結合する第1のリガンドと、前 記細胞外小胞上の第2のマーカーに結合する第2のリガンドとを含むか、
前記リガンドが標識を含むか、または
これらの組合せを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記細胞外小胞の前記特性を分析するステップが、前記細胞外小胞の小胞内含有物を分 析するステップを含み、
前記細胞外小胞の前記小胞内含有物を分析するステップが、前記小胞内含有物中のタン パク質、RNAおよび/またはDNAを分析するステップを含むか、
前記細胞外小胞の前記小胞内含有物を分析するステップが、前記細胞外小胞を溶解させ るステップを含むか、または
これらの組合せを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルが未精製の生体サンプルである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記細胞外小胞を検出するステップが、前記光導波路バイオセンサを照明するステップと、前記光導波路バイオセンサから反射された光の共振波長の変化を検出するステップとを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
細胞外小胞を分析するシステムであって、
光導波路バイオセンサと、
前記光導波路バイオセンサに結合した細胞外小胞と、
前記細胞外小胞に結合した、標識を含むリガンドと、を備え、
前記光導波路バイオセンサは、前記細胞外小胞上のマーカーに特異的な結合物質を付着および固定化するための該光導波路バイオセンサ上の活性表面に結合した前記結合物質を含み、
前記細胞外小胞は、前記結合物質を用いて前記光導波路バイオセンサの表面に結合され、かつ
前記光導波路バイオセンサが光学共鳴導波路格子バイオセンサである、システム。
【請求項8】
前記リガンドが第1のリガンドであり、前記標識が第1の標識であり、
前記システムが、前記細胞外小胞に結合した第2のリガンドを備え、前記第2のリガンドが第2の標識を含み、
前記第1のリガンドが、前記細胞外小胞上の1つのマーカーに結合するように構成され ており、
前記第2のリガンドが、前記細胞外小胞上の別のマーカーに結合するように構成されている、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
前記光導波路バイオセンサに結合した前記細胞外小胞を検出するように構成された光学 リーダーを備える、請求項7記載のシステム。
【請求項10】
複数の前記光導波路バイオセンサと、
前記複数の光導波路バイオセンサの少なくとも1つをそれぞれ備える複数のウェルを含 むマイクロプレートと
を備える、請求項7記載のシステム。
【請求項11】
細胞外小胞を分析するシステムであって、
複数のウェルを含むマイクロプレートと、
前記複数のウェルのそれぞれに配置された光導波路バイオセンサと、
前記複数のウェルのそれぞれに配置されたサンプルと、を備え、
前記サンプルがそれぞれ、前記光導波路バイオセンサに結合した、破裂した細胞外小胞 の小胞内含有物を含み、
前記光導波路バイオセンサは、前記細胞外小胞上のマーカーに特異的な結合物質を付着および固定化するための該光導波路バイオセンサ上の活性表面に結合した前記結合物質を含み、
前記細胞外小胞は、前記結合物質を用いて前記光導波路バイオセンサの表面に結合され、かつ
前記光導波路バイオセンサが光学共鳴導波路格子バイオセンサである、システム。
【請求項12】
前記サンプルが溶解試薬を含むか、
前記破裂した細胞外小胞の前記小胞内含有物が、タンパク質、RNAおよび/またはDNAを含むか、または
これらの組合せを含む、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
細胞外小胞を分析するキットであって、
複数のウェルを含むマイクロプレートと、
前記複数のウェルのそれぞれに配置された光導波路バイオセンサと、
前記光導波路バイオセンサのそれぞれの活性表面に結合した、細胞外小胞上のマーカーに特異的で、細胞外小胞に結合するように構成された結合物質と、
(a)前記細胞外小胞に結合するように構成された、標識を含むリガンド、または (b)前記細胞外小胞を破裂させるように構成された試薬の少なくとも一方と
を含み、
前記光導波路バイオセンサが光学共鳴導波路格子バイオセンサである、キット。
【請求項14】
前記リガンドが、第1の標識を含む第1のリガンドと、第2の標識を含む第2のリガン ドとを含み、前記第1のリガンドが、前記細胞外小胞上の第1のマーカーに結合するよう に構成されており、前記第2のリガンドが、前記細胞外小胞上の第2のマーカーに結合するように構成されている、請求項13記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、米国特許法第120条のもと、2018年11月30日に出願された米国仮特許出願第62/773,753号の優先権の利益を主張し、その内容が依拠され、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、光学バイオセンサを用いて細胞外小胞を分析するシステムおよび方法、特に光学バイオセンサを用いて細胞外小胞を精製、フェノタイピングおよび定量化するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞外小胞(EV)は、膜で囲まれた小胞の不均一集団である。EVは細胞間コミュニケーションにおける重要な要素と認識されており、多数の生物学的および病理学的過程に関与する。EVは疾患の発症および進行に関連付けられており、これに基づいてEV分析が臨床状況で使用されている。EVへの関心が高まっていることから、EVを特性評価する手法が開発されている。これらの手法はサイズ分布、計数、タンパク質組成および小胞内含有物等のEVの種々の特徴を特性評価するものである。
【0004】
これらの手法の開発にもかかわらず、様々なEVを単離および/または区別することは依然として大きな課題である。例えば、超遠心分離等の従来の方法は、多くの研究室で利用可能でない非常に特殊な装置を必要とし、EVを損傷する恐れがある極度の力がEVに加えられる。特定の分子量カットオフまたは細孔径を有する膜を利用する限外濾過等の方法は、膜材料へのEVの非特異的結合のためにEVの喪失を引き起こす恐れがある。EVの沈殿を伴う方法は、タンパク質または他の分子で汚染された結果をもたらすことが多い。親和性、サイズ排除またはイオン交換に基づいてEVを分離するクロマトグラフィーカラムを用いる方法は、労力および時間を要する。マイクロ流体デバイスを使用する方法は、非常に低いスループットを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より使いやすく、かつ/またはより良好な結果をもたらす特性評価法を開発することが望ましい。マイクロプレートフォーマットでEVを単離すると共に分析することができる手法を開発することが特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
光学バイオセンサ、特に光導波路バイオセンサを用いて細胞外小胞(EV)を分析または評価する多数の方法が開示されている。方法はEVを精製し、かつ/またはEVの様々な特性を分析するために用いることができる。例えば、サンプル培地中のEV、特に1つ以上の特異的マーカーを有するEVを定量化および/または特定するために方法を用いることができる。方法は好適なEV分析システムを用いて実施することができる。一実施態様では、EV分析システムは、多数のウェルを有するマイクロプレートを受容し、分析するように構成された光学リーダーを備え、各ウェルが光導波路バイオセンサを備える。
【0007】
方法および対応するシステムは、以下の潜在的利点の1つ以上を実現するために様々な形で実施することができる。利点の1つは、EVを光導波路バイオセンサの表面に結合したままで単離、精製および分析し得ることであり、これにより、これらのプロセスがより単純かつ容易になる。別の利点は、既知のEV表面マーカーまたは受容体に特異的な結合物質(例えば抗体)を用いてEVを光導波路バイオセンサの表面に結合する場合、EVを単一工程で捕捉し、フェノタイピングし得ることである。別の利点は、マイクロプレートを用いてEV分析システムを実施し得ることであり、これにより、マイクロプレート処理装置が殆どの研究室に普及していることから、採用が容易となる。別の利点は、EVをハイスループットベースで分析し得ることである。
【0008】
EV分析法の革新的な一態様は、或る特定のEV表面マーカーに特異的な結合物質を用いて、EVを光導波路バイオセンサの表面に結合することによって実施することができる。結合物質は、標的マーカーを有するEVのみを捕捉するように選択することができる。このようにして、EVを光導波路バイオセンサに結合するプロセスを用いて、標的マーカーを欠いた他のEVを含む残りのサンプル培地から対象のEVを分離することができる。これにより、標識を用いずにサンプルから直接EVをフェノタイピングすることが可能である。
【0009】
EV分析法の別の革新的な態様は、EVを光導波路バイオセンサに結合した後にEVの付加的なフェノタイピング分析を行うことによって実施することができる。かかる付加的な分析は、EVの定量化、1つ以上の付加的なマーカーの有無に基づくEVの分類および分離、ならびに/またはEVの小胞内含有物の分析を含み得る。
【0010】
一実施態様では、サンプル中のEVまたは光導波路バイオセンサの表面に結合したEVの量は、サンプルの測定値と既知量の同じEVまたは同じマーカーを有するEVを含む1つ以上のサンプルの測定値とを比較することによって決定することができる。例えば、標準曲線を、既知量の特定のEVを含むサンプルを用いて作成し、未知量の同じEV(または同じマーカーを有するEV)を含むサンプルによって作成された曲線と比較して、未知のサンプル中のEVの量を決定することができる。
【0011】
別の実施態様では、EV上に存在する付加的なマーカーまたは受容体に1つ以上の標識リガンドを結合することによってEVをさらに分析することができる。リガンドは蛍光標識、比色標識および/または発光標識で標識することができる。標識リガンドを用いて、光導波路バイオセンサの表面に結合したEVのタイプをさらに特性評価することができる。
【0012】
別の実施態様では、結合したEVの小胞内含有物を分析することができる。これは、適切な試薬を用いてEVを破裂させ、タンパク質、DNAおよび/またはRNAを含み得る内容物を分析することによって行うことができる。一実施態様では、TRIzol等の溶解試薬を用いてEVを破裂させることができる。
【0013】
「表現型」という用語が物理的、形態学的、生化学的または分子的な任意のレベルでEVの観察可能な特性を指すことに留意されたい。
【0014】
本開示のシステム、方法およびデバイスは、それぞれ幾つかの革新的な態様を有し、それらの1つだけが記載の望ましい特質に関与するものではない。発明の概要は、下記の発明を実施するための形態にさらに記載する概念の選択を簡略化した形で紹介するために提示される。発明の概要および背景技術は、開示される主題の重要な概念または不可欠な態様を特定することを意図したものではなく、特許請求の範囲を制約または限定するために用いられるべきではない。例えば、特許請求の範囲は、列挙される主題が発明の概要に記載されたいずれかもしくは全ての態様を含み、かつ/または背景技術に記載された問題のいずれかに対処するか否かに基づいて限定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
添付の図面によって好ましい他の実施態様を開示する。
図1】本開示の実施形態に従う細胞外小胞(EV)を分析するシステムの透視図である。
図2】本開示の実施形態に従う、結合物質を上面に有する光導波路バイオセンサの横断面図である。
図3】本開示の実施形態に従う、EVが結合物質に結合した図2の光導波路バイオセンサの横断面図である。
図4】本開示の実施形態に従う光学共鳴導波路格子(RWG)バイオセンサの動作を示す図である。
図5】本開示の実施形態に従うEVを分析する一手順を示す図である。
図6】ポリ(エチレン-alt-無水マレイン酸)(EMA)を含む表面化学層を用いて結合物質をEVとバイオセンサの表面とに結合する光導波路バイオセンサの横断面図である。
図7】ストレプトアビジンを含む表面化学層を用いて結合物質をEVとバイオセンサの表面とに結合する光導波路バイオセンサの横断面図である。
図8】結合したEVを標識リガンドに結合することによってさらに特性評価した光導波路バイオセンサの横断面図である。
図9】小胞内含有物を分析することができるように、結合したEVを破裂させた光導波路バイオセンサの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
EV分析システム
図1を参照すると、細胞外小胞(EV)を分析するシステム10(代替的にはEV分析システムまたはEVアッセイシステムと称される)の透視図が示されている。システム10は、マイクロプレート12、光学リーダー14(代替的には光学プレートリーダーと称される)およびラップトップコンピュータ16を備える。マイクロプレート12は、EVを含有するサンプルを収容するように構成されている。光学リーダー14は、マイクロプレート12内のサンプルを分析するように構成されている。コンピュータ16は、機器の操作およびデータ分析のためのソフトウェアを備える。コンピュータ16を用いて、光学リーダー14および他の関連実験装置の動作を制御することができる。
【0017】
システム10は、任意の好適なサンプルスループットを有するように構成することができる。幾つかの実施態様では、システム10は、8時間にわたって数百個またはさらには数千個のウェルを測定することが可能なハイスループットシステム(HTS)とみなすことができる。例えば、システム10は、8時間に少なくとも500個のウェル、8時間に少なくとも1000個のウェル、8時間に少なくとも2000個のウェル、8時間に少なくとも3000個のウェル、8時間に少なくとも4000個のウェルまたは8時間に少なくとも5000個のウェルを測定するように構成することができる。
【0018】
ハイスループットの実施態様では、システム10は、多数のマイクロプレート12の迅速な処理および分析を容易にする他の装置と容易に統合されるように構成することができる。付加的な装置としては、液体処理システム、スケジューラ等を挙げることができる。これらの実施態様では、システム10の動作の全てではないとしても多くを自動化することができる。
【0019】
図1では、光学リーダー14およびコンピュータ16を別個の構成要素として示す。しかしながら、他の実施態様において、光学リーダー14およびコンピュータ16を単一ユニットに組み合わせてもよいことを理解されたい。多数の他の変更を光学リーダー14およびコンピュータ16の構成に加えることができる。
【0020】
マイクロプレート
マイクロプレート12(代替的にはマイクロウェルプレートまたはマルチウェルと称される)は概して、小さな試験管として機能する複数のウェル18を有する平らなプレートである。各ウェル18は、ウェル18の底部に組み込まれた光導波路バイオセンサ20を備える。図1に示すマイクロプレート12は、384個のウェル18を含む。
【0021】
しかしながら、マイクロプレート12が任意の好適な形で配置された任意の好適な数のウェル18を含み得ることを理解されたい。例えば、マイクロプレート12は6、12、24、48、96、384、768または1536個のウェル18を含み得る。また、ウェル18を2:3の長方形の行列等の様々な形で配置することができる。
【0022】
ウェル18はそれぞれ、数ナノリットルから数ミリリットルに及ぶ様々な量の液体を収容するように構成することができる。原則として、マイクロプレート12上のウェル18の数が増加するにつれ、ウェル18のサイズが減少する。これが厳格な規則ではないことを理解されたい。マイクロプレート12が少数の小さなウェル18または多数の大きなウェル18を有する状況もあり得る。
【0023】
ウェル18はまた、任意の好適な形状を有することができ、任意の好適な材料から作製することができる。幾つかの実施態様では、ウェル18は円形、正方形、多角形等であり得る。幾つかの実施態様では、ウェル18は、少なくとも部分的にポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、シクロオレフィン、金属、ガラス、セラミック、石英等から作製され得る。
【0024】
マイクロプレート12は、サンプルを収容することが可能な限りにおいて、任意の好適な構成を有することができる。幾つかの実施態様では、マイクロプレート12は、生体分子スクリーニング協会(Society for Biomolecular Screening)(SBS)によって規定された標準規格、例えばSBS標準384ウェル規格に従って構築される。
【0025】
光導波路バイオセンサ
図2および図3を参照すると、光導波路バイオセンサ20の一実施態様の横断面図が示されている。光導波路バイオセンサ20は、基板層22、基板層22上の導波路層24(代替的には導波路コーティングまたは導波路薄膜と称される)、および導波路層24上の表面化学層26(代替的には結合層または結合表面と称される)を備える。基板層22は、ガラス等の基板材料に埋め込まれた光学格子を備える。導波路層24は、高い屈折率を有する誘電材料である。
【0026】
光導波路バイオセンサ20が任意の好適な構成を有する任意の好適なタイプの導波路バイオセンサであり得ることを理解されたい。例えば、光導波路バイオセンサ20は、シングルモードまたはマルチモード光導波路バイオセンサであり得る。光導波路バイオセンサは、共鳴導波路格子、ナノ構造光学格子、平面導波路等の任意の好適なタイプの導波路を備えることもできる。光学格子を基板層22、導波路層24、または層22、24の界面に埋め込むことができる。一実施態様では、光導波路バイオセンサ20は、光学共鳴導波路格子バイオセンサ(RWGバイオセンサ)である。
【0027】
表面化学層26は、EV特異的結合物質または標的28の付着および固定化のために光導波路バイオセンサ20の上面に活性表面30をもたらす表面化学(代替的には結合化学と称される)の薄層を含む。表面化学は、非特異的結合のレベルが低い高結合能の表面をもたらす。「結合する」および「結合した」という用語が吸着、共有結合、非共有結合、化学吸着等を含む様々な結合法を指すために用いられることに留意されたい。
【0028】
任意の好適な表面化学を用いて、結合物質28を光導波路バイオセンサ20の表面30に結合することができる。一実施態様では、表面化学は、結合物質28上の第一級アミン基との共有結合を形成する。別の実施態様では、表面化学はビオチン化結合物質28と結合する。
【0029】
一実施態様では、表面化学層26は、ポリ(エチレン-alt-無水マレイン酸)(EMA)を含む。EMAは直接アミン結合を用い、結合物質28上のアミン基と光導波路バイオセンサ20の表面30との間に共有結合を作り出すことによって結合物質28を固定化する。
【0030】
別の一実施態様では、表面化学層26は、例えば結合物質28がビオチン化されたもの(結合物質28にビオチンが付着している)等のビオチン化分子を表面30に結合するために用いることができるストレプトアビジンを含む。ストレプトアビジンは、共有結合と同様の強度の非常に高親和性の結合をビオチンに対して有する。
【0031】
他の実施態様では、表面化学層26は、本明細書の末尾に列挙される特許文献に記載されている表面化学のいずれかを含み得る。
【0032】
光導波路バイオセンサ20は、上面30へのEV32の結合等の生化学的結合事象の指標となる屈折率の変化をバイオセンサ20の上面30の近くで検出するように構成されている。光導波路バイオセンサ20は、上面30の約150~200nm上の領域で屈折率の変化を検出することができる。以下は、光導波路バイオセンサ20がRWGバイオセンサである一実施態様の詳細な説明である。
【0033】
図4を参照すると、光学RWGバイオセンサ20の動作が説明されている。光源34が、各RWGバイオセンサ20の底面を広帯域偏光によって照明する。最大インカップリング(incoupling)効率が達成される特定波長(共振波長)の光が導波路層24に結合し、それに沿って伝搬する。これにより、本質的にエバネッセントの、すなわち上面30から指数関数的に減衰する電磁場36が上面30と溶液との界面に生じる。電磁場がその初期値の1/e(eは2.71828に等しい数値定数である)まで減衰する距離は、侵入として知られ、特定のRWGバイオセンサ20の設計に応じるが、通例150~200nmである。
【0034】
共鳴光は、最終的に導波路層24から漏出し、反射されてRWGバイオセンサ20の下の検出器38(代替的には検出ヘッドまたは検出ユニットと称される)に戻る。反射光の波長は、導波路を構成する材料と表面30から約200nm以内の生体分子との屈折率の組合せの関数である。EV32等の分析物が表面30に結合すると、局所屈折率が変化し、これがRWGバイオセンサ20から反射された光の波長のシフトを誘導する。波長シフトは、表面30に結合する分析物の量に比例する。
【0035】
RWGバイオセンサ20の使用は、多数の利点をもたらし得る。表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサと比較したRWGバイオセンサ20の利点の1つは、公称上直角の入射角の光を用いてRWGバイオセンサ20を照明することができることである。このことは、多数のバイオセンサを同時にサンプリングする場合に重要であり得る。
【0036】
光学リーダー
光学リーダー14は、入射光の波長のシフトを測定するために統合光ファイバを用いる検出器システム40を備える。検出器システム40は、反射スペクトルをマイクロプレート12内の各ウェル18から同時に収集することができるように直線状に配置された一連の照明ヘッド42および検出ヘッド38を備える。各光導波路バイオセンサ20を複数回アドレスし、各カラムを順にアドレスするようにマイクロプレート12全体をスキャンすることができる。入射光の波長を測定し、分析を行うために用いる。光学リーダー14は、温度変動による入射波長の偽シフトを低減または最小化する働きをする温度制御ユニットを備えていてもよい。
【0037】
検出ヘッド38は、反射光の波長を測定するように構成された分光計を備え得る。分光計は、ピーク出力または共鳴強度を測定し、光源34が光導波路センサ20上にあるかを確認するために用いることもできる。
【0038】
光学リーダー14を用いて、下記の条件のいずれかでの反射光の波長を測定することができる(図5の左の図に条件を説明する)。測定値を用いてサンプル曲線および参照曲線を作成することができ、これらも図5に示す。
【0039】
参照波長44-バッファー溶液のみ、かつ表面30上に固定化された結合物質28なし。
【0040】
参照波長46-バッファー溶液中の非結合EV32、かつ表面30上に固定化された結合物質28なし。
【0041】
サンプル波長48-バッファー溶液のみ、および表面30上に固定化された結合物質28。
【0042】
サンプル波長50-バッファー溶液中の結合したEV32および非結合EV32、ならびに表面30上に固定化された結合物質28。
【0043】
波長測定を用いて、EV32についての付加的な情報を得ることができる。例えば、EV結合シグナル52は、サンプル波長50から参照波長46を減算することによって決定することができる。幾つかの実施態様では、標準波長を測定することができ、対応する曲線を既知量のEV32を含むサンプルについて作成することができる。標準波長をサンプル波長50と比較して、所与のサンプル中のEV32の量を決定することができる。
【0044】
EV分析法
図6および図7を参照すると、光導波路バイオセンサ20の横断面図が示されている。図6の光導波路バイオセンサ20は、表面化学層26としてポリ(エチレン-alt-無水マレイン酸)を含み、図7のバイオセンサ20は、表面化学層26としてストレプトアビジンを含む。
【0045】
表面化学層26は、結合物質28を光導波路バイオセンサ20の表面30に結合する。幾つかの実施態様では、表面化学層26および/または結合物質28が既に配置されたマイクロプレート12を提供することができる。この状況では、マイクロプレート12は受領後即座に使用可能である。他の実施態様では、表面化学層26および/または結合物質28が配置されていないマイクロプレート12を提供することができる。この状況では、ユーザーが所望の表面化学層26および/または結合物質28を表面30に適用する必要がある。
【0046】
結合物質
結合物質28は、EV32上のマーカーまたは受容体54に結合することが可能な任意の好適な物質であり得る。好適な物質の例としては、タンパク質、抗体、抗体フラグメント等が挙げられる。幾つかの実施態様では、結合物質28は、EV32上の表面マーカーに特異的な抗体または抗体フラグメントであり得る。
【0047】
「抗体」という用語は、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然源または組み換え源に由来する無傷免疫グロブリンであってもよく、無傷免疫グロブリンの免疫反応性部分であってもよい。抗体は免疫グロブリン分子の四量体であり得る。四量体は、天然に存在するものであっても、または一本鎖抗体もしくは抗体フラグメントから再構成されてもよい。
【0048】
抗体はまた、天然に存在するものであっても、または一本鎖抗体もしくは抗体フラグメントから構成されてもよい二量体を含む。抗体は、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab’)、ならびに一本鎖抗体(scFv)、ヒト化抗体およびヒト抗体を含む様々な形態で存在し得る。
【0049】
「抗体フラグメント」という用語は、無傷抗体の一部を指し、無傷抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、Fvフラグメント、線状抗体、scFv抗体、標的に対して十分な親和性を示すVLまたはVHドメインのいずれかから構成されるラクダ科動物抗体等のシングルドメイン抗体、および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。抗体フラグメントには、ヒト抗体もしくはヒト化抗体、またはヒト抗体もしくはヒト化抗体の一部も含まれる。
【0050】
「フラグメント」という用語は、参照タンパク質または核酸と実質的に同一であり、参照の生物活性を保持する、タンパク質または核酸分子の一部(例えば、少なくとも10、25、50、100、125、150、200、250、300、350、400または500個のアミノ酸または核酸)を指す。
【0051】
結合物質28は、EV32上の特定の膜結合受容体54と結合するように選択することができる。EV32は、様々なEV特異的結合物質28に結合することができる様々な異なる表面分子を含み得る。
【0052】
細胞外小胞
「細胞外小胞」(EV)という用語は、内皮細胞、上皮細胞、血小板、付加的には腫瘍細胞等の様々な細胞型によって細胞外空間に放出される膜で囲まれた小さな構造を指す。通例、EV32の膜の少なくとも一部が細胞(ドナー細胞としても知られる)から直接得られる。EV32は、膜の反転、エキソサイトーシス、脱落、ブレブ形成および/または出芽によって細胞から生じ得る。生成様式(例えば膜の反転、エキソサイトーシス、脱落または出芽)に応じて、EV32は異なる表面/脂質特性を示し得る。
【0053】
EV32は、EV32の膜の内部に不均一組成のタンパク質、脂質、核酸または他の生体分子を含み得る。EV32の分子含有物は、表面および細胞質タンパク質、メッセンジャーRNA、ならびにマイクロRNAを含むその起源細胞を表し得る。EV32は、これらの分子を身体または生体系内の様々な標的細胞および位置に輸送することができる。EV32内の遺伝情報は、レシピエント細胞の膜に融合し、遺伝情報を細胞内に放出することによって伝達され得る。
【0054】
EV32は様々なサイズであり得る。例えば、EV32は10~5000nm、20~3000nmまたは30~2000nmの直径(または構造が球状でない場合に最大寸法)を有し得る。EV32は少なくとも10nm、少なくとも20nmまたは少なくとも30nmの直径(または構造が球状でない場合に最大寸法)を有していてもよい。EV32は5000nm以下、3000nm以下または2000nm以下の直径(または構造が球状でない場合に最大寸法)を有していてもよい。
【0055】
EV32はマウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、霊長類またはヒト等の哺乳動物を含む様々な生物源から単離することができる。EV32は血清、血漿、全血、尿、唾液、乳汁、涙液、汗、関節液、脳脊髄液、精液、膣液、腹水および羊水等の体液から単離することができる。EV32は、培養細胞から採取される培地(「馴化培地」、細胞培地および細胞培養培地)等の実験サンプルから単離することもできる。
【0056】
EV32は外科的サンプル、生検サンプルおよび培養細胞等の組織サンプルから単離することもできる。EV32を組織源から単離する場合、単細胞懸濁液を得るために組織を均質化し、続いて細胞を溶解してEV32を放出させることが有益であり得る。EV32を組織サンプルから単離する場合、EV32の破壊を引き起こさない均質化および溶解手順を用いる必要がある。
【0057】
EV32はサイズ、生合成、細胞起源、タンパク質組成、生物学的機能等の特定の特性に基づいて多数の亜集団に分類することができる。EV32は、下記表に示すように、それらの細胞起源に応じて3つの主要サブタイプ、すなわちエキソソーム、微小胞(MV)(脱落小胞とも称される)、およびアポトーシス小体に大別することができる。
【0058】
【表1】
【0059】
エキソソームは通例、エンドサイトーシス起源であり、エンドソーム区画内に小胞を形成し、多小胞体(MVB)を生成するエンドソーム膜の陥入によって形成される。MVBが原形質膜と融合するとエキソソームが細胞外空間に放出される。エキソソームは通例、30~100nmのサイズであり、1.13~1.19g/mlの密度を有する。
【0060】
エキソソームの生合成のために、エキソソーム膜タンパク質の配向は原形質膜と同様である。同様の配向に加え、エキソソーム膜の脂質組成は原形質膜と同様であり、エキソソームの特定に用いることができる幾つかのタンパク質マーカーと共にコレステロール、セラミドおよびホスファチジルセリン(PS)を含有する。これらには、MVB形成機構に関与するタンパク質(例えばAlixおよびTsg101)、膜および融合機構によるタンパク質(例えばGTPアーゼ、アネキシンおよびフロチリン)、ならびにテトラスパニン(CD9、CD63およびCD81)が含まれる。エキソソームは、表面上に糖基を提示する場合もある。
【0061】
種々のマーカーが、全てのエキソソーム上に普遍的に存在しない可能性もあるが、大部分のエキソソーム上に存在するため、エキソソームマーカーとして一般に認められる。エキソソームタンパク質に加え、エキソソームは、親細胞の分子署名を反映する分子組成を呈することが多い。場合によっては、エキソソームの分子含有物は、親細胞からの分子の偶然のサンプリングに起因するものではなく、特定の分子をエキソソームに搭載する能力から生じたものである可能性がある。エキソソームは、相当量のmiRNA、ノンコーディングRNA、mRNA、miRNA等を含むRNAを含有する場合もある。
【0062】
微小胞は通例、MVを細胞外空間に直接放出する原形質膜の外側への出芽によって形成される。一部のMVは膜の外葉にPSを提示し、この特徴を用いて生体サンプル中のMVを単離および特定することができる。MVはCD40リガンド、アデノシン二リン酸リボシル化因子6、ならびに或る特定のインテグリンおよびセレクチン等のマーカーを含み得る。MVの小胞内含有物は、膜および細胞質タンパク質、mRNA、miRNA等を含み得る。MVは50~1000nmのサイズであり得る。
【0063】
アポトーシス小体は通例、細胞がアポトーシスを起こした場合に放出され、アポトーシス小体を細胞外空間に直接放出する原形質膜のブレブ形成によって形成される。EV32の他のサブタイプと同様、アポトーシス小体は脂質二重層の外葉にPSを提示する。加えて、アポトーシス小体はトロンボスポンジンおよび補体成分C3bを提示し、これらを用いてアポトーシス小体を特定することができる。さらに、アポトーシス小体は、親細胞のサイトゾルに由来するタンパク質および他の分子に加えてオルガネラ、DNAフラグメントおよびヒストンを小胞内カーゴの一部として含有することで他のEVサブタイプから区別することができる。アポトーシス小体は500~4000nmのサイズであり、1.16~1.28g/mlの密度を有し得る。
【0064】
「マイクロRNA」、「miRNA」または「miR」という用語は、通例、標的メッセンジャーRNA(mRNA)転写産物の3’非翻訳領域(3’UTR)中の相補配列に結合し、通常は遺伝子サイレンシングをもたらすことによって転写後に遺伝子の発現を調節するように機能するRNAを指す。miRNAは通例、例えば21または22ヌクレオチド長(100ヌクレオチド長以下または50ヌクレオチド長以下)の小型調節RNA分子である。「マイクロRNA」、「miRNA」および「miR」という用語は、区別なく使用される。
【0065】
EVの単離
EV32は、以下の手順を用いてサンプルから単離することができる。結合物質28がマイクロプレート12に既に付着していない場合、最初の工程は、結合物質28を付着させることである。これは、結合物質28を含有する固定化バッファー溶液をウェル18のそれぞれに添加し、結合物質28が表面化学層26上に固定化されるまでマイクロプレート12をインキュベートすることによって行われ得る。
【0066】
固定化バッファー溶液を除去し、表面化学層26上の残存する固定化部位を不活性化するブロッキングバッファー溶液に置き換える。ブロッキングバッファー溶液を除去し、ウェル18をすすぐ。この時点で、マイクロプレート12はEV32を含有するサンプルを受容し、分析することができる状態にある。
【0067】
EV32を含有するサンプルをウェル18内に入れる。EV32は、図6および図7に示す形でバイオセンサ20の表面30に結合した結合物質28に結合する。サンプルの残存物をウェル18から洗い流すと、マイクロプレート12上に結合したEV32のみが残る。このようにして、結合したEV32を、結合物質28に結合することが可能なマーカーの存在に基づいて単離およびフェノタイピングすることができる。また、これは全て単一工程で行うことができる。
【0068】
EVの定量化
所与のサンプル中のEV32の量は、サンプルの波長を測定し、それを既知濃度の同じEV32を含むサンプルから得られた1つ以上の標準波長と比較することによって決定することができる。既知濃度のEV32を含むサンプルの標準波長を測定し、それらを未知濃度のEV32を含むサンプルについて測定された波長と比較する手順は上に記載している。
【0069】
EVの二次フェノタイピング
図8を参照すると、EV32上の別のマーカーまたは受容体60に結合するように構成された1つ以上の標識またはタグ付きリガンド56を用いて、結合したEV32をさらに分離および分類することができる。リガンド56は、任意の好適なタイプの標識またはタグ58を含み得る。例えば、リガンド56は蛍光標識、比色標識または発光標識を含み得る。
【0070】
リガンド56は、EV32上の特異的マーカーに結合することが可能な任意の好適なタンパク質、化合物、分子等であり得る。幾つかの実施態様では、リガンド56は、結合物質28またはEV32に関連して上に記載した抗体のいずれかであり得る。幾つかの実施態様では、それぞれ異なる標識58を有する2つ、3つ、4つまたはそれ以上の異なるリガンド56を用いて、EV32をさらに分離および分類することができる。
【0071】
所与のリガンド56に結合したEV32の数は、結合したEV32に関連して上に記載したものと同じ手法を用いて定量化することができる。すなわち、標準波長測定値を、既知量の関連EV32を含むサンプルを用いて得て、標識EV32の波長測定値と比較することができる。
【0072】
EVの小胞内含有物
図9を参照すると、結合したEV32の小胞内含有物を、以下の手順を用いて分析することができる。試薬62をウェル18に添加し、EV32を破裂または溶解させ、それらの内容物を更なる分析のために露出させることができる。任意の好適な試薬62を用いてEV32を破裂させることができる。幾つかの実施態様では、試薬62は、TRIzol溶解試薬等の溶解試薬である。
【0073】
EV32の小胞内含有物はタンパク質、DNA、RNA(マイクロRNA)等を含み得る。これらの分子を別の容器に取り出し、標準的な相分離抽出プロトコルを完了することによって抽出することができる。これらの分子を疾患の診断、疾患の予後の決定等のために分析することができる。
【0074】
EV32を分析する方法は、多数の利点をもたらし得る。利点の1つは、この技術を、体液、例えば血清、細胞培養培地、尿等の複雑な生体サンプルから中間精製工程なしにEV32を直接単離、定量化およびフェノタイピングするために用いることができることである。
【0075】
EV分析キット
EV32を分析するキットは、上記の物質および構成要素のいずれかを含み得る。一実施態様では、キットはマイクロプレート12と、標識リガンド56または試薬62の少なくとも1つとを含み得る。他の実施態様では、キットは、キットの構成要素を合わせて収容するか、または構成要素がキットの一部であることを示すように構成されたパッケージを含み得る。
【実施例
【0076】
以下の実施例は、開示される主題をさらに説明するために提示される。実施例は、いかなる形でも特許請求の範囲を制約または限定するために用いられるべきではない。
【0077】
実施例1
本実施例では、サンプル中の特異的バイオマーカーを有する細胞外小胞(EV)の量を、無標識ハイスループットスクリーニングシステムであるCorningのEpicシステムを用いて分析する。システムは、384個のサンプルウェルを有するバイオセンサマイクロプレートを備える。各サンプルウェルは、底面に配置された光学共鳴導波路格子バイオセンサ(RWGバイオセンサ)を有する。RWGバイオセンサは、基板に埋め込まれたナノメートルスケールの光学格子、および基板に塗布された高屈折率導波路層またはコーティングを備える。システムはまた、広帯域光源によってRWGバイオセンサを照明する光学リーダーを備える。
【0078】
共振波長の光が導波路層に結合し、それに沿って伝搬する。光の共鳴結合によって生じたエバネッセント場は、局所屈折率を探査するRWGバイオセンサの上の層をおよそ150nm侵入する。共振波長をRWGバイオセンサからアウトカップリングされた(outcoupled)後にCMOSカメラで検出する。光の共振波長は、RWGバイオセンサに結合するEVによって引き起こされる検知ゾーンの屈折率の変化のためにシフトする。
【0079】
RWGバイオセンサは、上面に表面化学層を備える。表面化学層は、抗体上のアミン基と上面との間に共有結合を生じることによって抗体をRWGバイオセンサ上に固定化するポリエチレン-無水マレイン酸(EMA)を含む。
【0080】
EV特異抗体のアレイを以下のようにマイクロプレートのウェル内に作り出す。抗体をバッファー溶液で希釈し、マイクロプレート内のウェルの大部分に添加する。対照バッファー溶液を残りのウェルに添加し、抗体固定化レベルの定量化に用いられるバッファーのみの対照ウェルを形成する。マイクロプレートをインキュベートし、RWGバイオセンサの上面への抗体の固定化を促進する。バッファー溶液を除去し、残存する固定化部位を不活性化するブロッキングバッファー溶液に置き換える。ブロッキングバッファーを除去し、ウェルをすすぐ。
【0081】
EVを以下のようにRWGバイオセンサに結合する。血清を含まない新鮮な細胞培養培地をウェルに添加する。マイクロプレートを光学リーダーに装着し、およそ2時間平衡化してセンサを安定させる。ウェルの共振波長を測定してベースラインを作成する。特異的マーカーを有する既知量のEVを含有する細胞培養培地および未知量の同じEVを含有する細胞培養培地を抗体固定化ウェルに添加し、EVを含まないウェルを幾つか残して対照とする。マイクロプレートをおよそ1時間インキュベートし、EVを抗体に結合する。ウェルの共振波長を測定する。
【0082】
既知量のEVを含む細胞培養培地および対照の測定値を用いて標準曲線を作成する。未知の細胞培養培地中のマーカーを有するEVの量を、標準曲線と未知量のEVを含む細胞培養培地を用いて作成した曲線とを比較することによって決定する。
【0083】
実施例2
本実施例では、EVについての付加的な表現型情報を、CorningのEpicシステムおよび標識抗体を用いて得る。EVをRWGバイオセンサに結合し、実施例1に記載の方法で分析する。結合したEVを含有するウェルの共振波長を測定した後に、培地をウェルから除去し、蛍光標識抗体を含有するバッファー溶液を添加する(本実施例を、比色または発光標識を用いて繰り返すこともできる)。標識抗体は、或る特定のEVの第2のマーカーまたはエピトープに結合する。標識抗体は、特定の疾患に対するマーカーである可能性があるものを含む他の表面マーカーの特定によってEVについての付加的な表現型情報をもたらす。第2のマーカーを有する結合したEVの量を、実施例1に記載の方法で標準曲線を作成し、同じマーカーを有する未知量のEVを含む細胞培養培地を用いて作成した曲線と比較することによって決定する。
【0084】
実施例3
本実施例では、EVの小胞内含有物を調べることによって付加的な表現型情報を得る。EVをRWGバイオセンサに結合し、実施例1または実施例2に記載の方法で分析する。TRIzol試薬(フェノールおよびグアニジンイソチオシアネートの単相溶液)を、ウェル内の結合したEVに添加することによってEVを溶解させる。これによりタンパク質、DNA、RNA(例えばmiRNA)等を含むEVの小胞内含有物が放出される。ウェルの内容物を別の容器に取り出し、標準的な相分離抽出プロトコルに従って分離する。miRNAは、疾患の診断および/または疾患の予後の決定のために分析される。
【0085】
例示的な実施態様
以下は開示される主題の様々な実施態様の説明である。各実施態様は、開示される主題の様々な特徴、特性または利点の1つ以上を含み得る。実施態様は、開示される主題の幾つかの態様を説明することを意図し、考え得る全ての実施態様の包括的または徹底的な説明とみなされるべきではない。
【0086】
P1.細胞外小胞を含むサンプルを光導波路バイオセンサ上に配置することと、細胞外小胞を光導波路バイオセンサに結合することと、光導波路バイオセンサに結合した細胞外小胞を検出することと、光導波路バイオセンサに結合した細胞外小胞の特性を分析することとを含む、方法。
【0087】
P2.細胞外小胞の特性が、サンプル中の細胞外小胞の数を含む、段落P1記載の方法。
【0088】
P3.細胞外小胞の特性が、サンプル中の細胞外小胞のサイズを含む、段落P1またはP2記載の方法。
【0089】
P4.細胞外小胞の特性が、サンプル中の細胞外小胞のタイプを含む、段落P1からP3までのいずれか1つ記載の方法。
【0090】
P5.細胞外小胞の特性を分析することが、細胞外小胞にリガンドを結合することを含む、段落P1からP4までのいずれか1つ記載の方法。
【0091】
P6.リガンドが、細胞外小胞上の第1のマーカーに結合する第1のリガンドと、細胞外小胞上の第2のマーカーに結合する第2のリガンドとを含む、段落P5記載の方法。
【0092】
P7.細胞外小胞を光導波路バイオセンサに結合しながら細胞外小胞にリガンドを結合することを含む、段落P5またはP6記載の方法。
【0093】
P8.リガンドが標識を含む、段落P5からP7までのいずれか1つ記載の方法。
【0094】
P9.標識が蛍光標識である、段落P8記載の方法。
【0095】
P10.標識が比色標識である、段落P8またはP9記載の方法。
【0096】
P11.標識が発光標識である、段落P8からP10までのいずれか1つ記載の方法。
【0097】
P12.細胞外小胞の特性を分析することが、細胞外小胞の小胞内含有物を分析することを含む、段落P1からP11までのいずれか1つ記載の方法。
【0098】
P13.細胞外小胞の小胞内含有物を分析することが、小胞内含有物中のタンパク質、RNAおよび/またはDNAを分析することを含む、段落P12記載の方法。
【0099】
P14.細胞外小胞の小胞内含有物を分析することが、小胞内含有物の組成を分析することを含む、段落P12またはP13記載の方法。
【0100】
P15.細胞外小胞の小胞内含有物を分析することが、細胞外小胞を破裂させることを含む、段落P12からP14までのいずれか1つ記載の方法。
【0101】
P16.細胞外小胞を光導波路バイオセンサに結合しながら細胞外小胞を破裂させることを含む、段落P15記載の方法。
【0102】
P17.細胞外小胞の小胞内含有物を分析することが、細胞外小胞を溶解させることを含む、段落P12からP16までのいずれか1つ記載の方法。
【0103】
P18.細胞外小胞を光導波路バイオセンサに結合しながら細胞外小胞を溶解させることを含む、段落P17記載の方法。
【0104】
P19.サンプルが未精製の生体サンプルである、段落P1からP18までのいずれか1つ記載の方法。
【0105】
P20.サンプルが未精製の体液である、段落P1からP19までのいずれか1つ記載の方法。
【0106】
P21.細胞外小胞を検出することが、光導波路バイオセンサを照明することと、光導波路バイオセンサから反射された光の共振波長の変化を検出することとを含む、段落P1からP20までのいずれか1つ記載の方法。
【0107】
P22.光導波路バイオセンサに結合物質を結合することと、結合物質に細胞外小胞を結合することとを含む、段落P1からP21までのいずれか1つ記載の方法。
【0108】
P23.結合物質が抗体を含む、段落P22記載の方法。
【0109】
P24.光導波路バイオセンサが光学共鳴導波路格子バイオセンサである、段落P1からP23までのいずれか1つ記載の方法。
【0110】
P25.細胞外小胞を分析するシステムであって、光導波路バイオセンサと、光導波路バイオセンサに結合した細胞外小胞と、細胞外小胞に結合した、標識を含むリガンドとを備える、システム。
【0111】
P26.リガンドが、細胞外小胞上のマーカーに結合するように構成された抗体を含む、段落P25記載のシステム。
【0112】
P27.リガンドが第1のリガンドであり、標識が第1の標識であり、システムが、細胞外小胞に結合した第2のリガンドを備え、第2のリガンドが第2の標識を含む、段落P25またはP26記載のシステム。
【0113】
P28.第1のリガンドが、細胞外小胞上の1つのマーカーに結合するように構成されており、第2のリガンドが、細胞外小胞上の別のマーカーに結合するように構成されている、段落P27記載のシステム。
【0114】
P29.標識が蛍光標識である、段落P25からP28までのいずれか1つ記載のシステム。
【0115】
P30.標識が比色標識である、段落P25からP29までのいずれか1つ記載のシステム。
【0116】
P31.標識が発光標識である、段落P25からP30までのいずれか1つ記載のシステム。
【0117】
P32.光導波路バイオセンサに結合した細胞外小胞を検出するように構成された光学リーダーを備える、段落P25からP31までのいずれか1つ記載のシステム。
【0118】
P33.光学リーダーが、光導波路バイオセンサを照明するように構成された光源を備える、段落P32記載のシステム。
【0119】
P34.光源が広帯域光源である、段落P33記載のシステム。
【0120】
P35.光導波路バイオセンサを照明し、光導波路バイオセンサから反射された光の共振波長の変化を検出するように構成された光学リーダーを備える、段落P25からP34までのいずれか1つ記載のシステム。
【0121】
P36.光導波路バイオセンサが光学共鳴導波路格子バイオセンサである、段落P25からP35までのいずれか1つ記載のシステム。
【0122】
P37.細胞外小胞がエキソソームである、段落P25からP36までのいずれか1つ記載のシステム。
【0123】
P38.細胞外小胞が微小胞である、段落P25からP37までのいずれか1つ記載のシステム。
【0124】
P39.細胞外小胞がアポトーシス小体である、段落P25からP38までのいずれか1つ記載のシステム。
【0125】
P40.複数の光導波路バイオセンサと、複数の光導波路バイオセンサの少なくとも1つをそれぞれ備える複数のウェルを含むマイクロプレートとを備える、段落P25からP39までのいずれか1つ記載のシステム。
【0126】
P41.マイクロプレートが少なくとも24個のウェルを含む、段落P40記載のシステム。
【0127】
P42.マイクロプレートが少なくとも96個のウェルを含む、段落P40記載のシステム。
【0128】
P43.マイクロプレートが少なくとも384個のウェルを含む、段落P40記載のシステム。
【0129】
P44.細胞外小胞を分析するシステムであって、複数のウェルを含むマイクロプレートと、複数のウェルのそれぞれに配置された光導波路バイオセンサと、複数のウェルのそれぞれに配置されたサンプルとを備え、サンプルがそれぞれ、光導波路バイオセンサに結合した、破裂した細胞外小胞の小胞内含有物を含む、システム。
【0130】
P45.サンプルがそれぞれ、光導波路バイオセンサに結合した、溶解した細胞外小胞の小胞内含有物を含む、段落P44記載のシステム。
【0131】
P46.サンプルが溶解試薬を含む、段落P44またはP45記載のシステム。
【0132】
P47.破裂した細胞外小胞の小胞内含有物が、タンパク質、RNAおよび/またはDNAを含む、段落P44からP46までのいずれか1つ記載のシステム。
【0133】
P48.光導波路バイオセンサに結合した細胞外小胞を検出するように構成された光学リーダーを備える、段落P44からP47までのいずれか1つ記載のシステム。
【0134】
P49.光学リーダーが、光導波路バイオセンサを照明するように構成された光源を備える、段落P48記載のシステム。
【0135】
P50.光源が広帯域光源である、段落P49記載のシステム。
【0136】
P51.光導波路バイオセンサを照明し、光導波路バイオセンサから反射された光の共振波長の変化を検出するように構成された光学リーダーを備える、段落P44からP50までのいずれか1つ記載のシステム。
【0137】
P52.光導波路バイオセンサが光学共鳴導波路格子バイオセンサである、段落P44からP51までのいずれか1つ記載のシステム。
【0138】
P53.破裂した細胞外小胞がエキソソームである、段落P44からP52までのいずれか1つ記載のシステム。
【0139】
P54.破裂した細胞外小胞が微小胞である、段落P44からP53までのいずれか1つ記載のシステム。
【0140】
P55.破裂した細胞外小胞がアポトーシス小体である、段落P44からP54までのいずれか1つ記載のシステム。
【0141】
P56.マイクロプレートが少なくとも24個のウェルを含む、段落P44からP55までのいずれか1つ記載のシステム。
【0142】
P57.マイクロプレートが少なくとも96個のウェルを含む、段落P44からP56までのいずれか1つ記載のシステム。
【0143】
P58.マイクロプレートが少なくとも384個のウェルを含む、段落P44からP57までのいずれか1つ記載のシステム。
【0144】
P59.細胞外小胞を分析するキットであって、複数のウェルを含むマイクロプレートと、複数のウェルのそれぞれに配置された光導波路バイオセンサと、光導波路バイオセンサのそれぞれに結合した、細胞外小胞に結合するように構成された結合物質と、(a)細胞外小胞に結合するように構成された、標識を含むリガンド、または(b)細胞外小胞を破裂させるように構成された試薬の少なくとも一方とを含む、キット。
【0145】
P60.光導波路バイオセンサのそれぞれに結合した結合物質が、細胞外小胞上のマーカーに結合するように構成された抗体を含む、段落P59記載のキット。
【0146】
P61.リガンドが、細胞外小胞上の第1のマーカーに結合するように構成された第1のリガンドと、細胞外小胞上の第2のマーカーに結合するように構成された第2のリガンドとを含む、段落P59またはP60記載のキット。
【0147】
P62.試薬が、細胞外小胞を溶解させるように構成された溶解試薬を含む、段落P59からP61までのいずれか1つ記載のキット。
【0148】
P63.(a)および(b)の両方を含む、段落P59からP62までのいずれか1つ記載のキット。
【0149】
P64.光導波路バイオセンサに結合した細胞外小胞を検出するように構成された光学リーダーを含む、段落P59からP63までのいずれか1つ記載のキット。
【0150】
P65.マイクロプレートと(a)または(b)の少なくとも一方とがユニットであることを示すパッケージを含む、段落P59からP64までのいずれか1つ記載のキット。
【0151】
P66.マイクロプレートと(a)または(b)の少なくとも一方とを共にユニットとして収容するパッケージを含む、段落P59からP65までのいずれか1つ記載のキット。
【0152】
P67.光導波路バイオセンサが光学共鳴導波路格子バイオセンサである、段落P59からP66までのいずれか1つ記載のキット。
【0153】
P68.細胞外小胞がエキソソームである、段落P59からP67までのいずれか1つ記載のキット。
【0154】
P69.細胞外小胞が微小胞である、段落P59からP68までのいずれか1つ記載のキット。
【0155】
P70.細胞外小胞がアポトーシス小体である、段落P59からP69までのいずれか1つ記載のキット。
【0156】
P71.マイクロプレートが少なくとも24個のウェルを含む、段落P59からP70までのいずれか1つ記載のキット。
【0157】
P72.マイクロプレートが少なくとも96個のウェルを含む、段落P59からP71までのいずれか1つ記載のキット。
【0158】
P73.マイクロプレートが少なくとも384個のウェルを含む、段落P59からP72までのいずれか1つ記載のキット。
【0159】
一般的な専門用語および解釈上の慣例
特許請求の範囲または本明細書に記載されるいずれの方法も、明示的に記載されない限り、工程を特定の順序で行う必要があると解釈されるべきではない。また、方法は、明示的に記載されない限り、列挙される工程を任意の順序で行うことを支持すると解釈されるべきである。
【0160】
別個の実施態様との関連で記載される或る特定の特徴を、単一の実施態様に組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施態様との関連で記載される様々な特徴を、複数の実施態様において別個にまたは任意の好適な部分的組合せで実施することもできる。さらに、特徴が或る特定の組合せで作用するとして上に記載され、さらには最初にそのように特許請求されることがあるが、特許請求される組合せの1つ以上の特徴が、場合によっては組合せから削除されてもよく、特許請求される組合せが、部分的組合せまたは部分的組合せの変形例を対象としてもよい。
【0161】
「the」、「a」および「an」等の冠詞は、単数または複数を含意し得る。また、「または」という語は、先行する「いずれか」(または「または」が排他的であることを明白に意味することを示す他の同様の言葉、例えばxまたはyの一方のみ等)なしに使用される場合、包括的であると解釈されるものとする(例えば、「xまたはy」は、xまたはyの一方または両方を意味する)。
【0162】
「および/または」という用語も包括的であると解釈されるものとする(例えば、「xおよび/またはy」は、xまたはyの一方または両方を意味する)。「および/または」または「または」が3つ以上の項目の群に対する接続詞として使用される状況では、その群は1つの項目を単独で、全ての項目を合わせて、または任意の組合せもしくは数の項目を含むと解釈されるべきである。
【0163】
有するおよび含む(have, having, include, and including)という用語は、含む(comprise and comprising)という用語と同義であると解釈されるべきである。また、これらの用語の使用は、これらの用語が「からなる」または「から本質的になる」に置き換えられた、より狭い代替的な実施態様を開示および支持するとして理解されるべきである。
【0164】
他に指定のない限り、本明細書(特許請求の範囲以外)で使用される全ての数または式、例えば寸法、物理的特性等を表すものは、いずれの場合にも「およそ」という用語で修飾されると理解される。少なくとも、また特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、「およそ」という用語で修飾される、本明細書または特許請求の範囲において列挙される各数値パラメータは、列挙される有効桁数を考慮し、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0165】
開示される全ての範囲は、各範囲に包まれる任意の部分範囲またはあらゆる個々の値を列挙する特許請求の範囲を包含および支持すると理解されるべきである。例えば、規定される1~10の範囲は、最小値1と最大値10との間、かつ/または最小値1および最大値10を含むあらゆる部分範囲または個々の値、すなわち、1以上の最小値で始まり10以下の最大値で終わる全ての部分範囲(例えば、5.5~10、2.34~3.56等)、または1~10の任意の値(例えば3、5.8、9.9994等)を列挙する特許請求の範囲を含み、支持するとみなされるべきであり、これらの値は、単独でまたは最小値(例えば少なくとも5.8)もしくは最大値(例えば9.9994以下)として表すことができる。
【0166】
開示される全ての数値は、いずれの方向にも0~100%で変動し得ると理解されるべきであり、したがって、かかる値(単独で、または最小もしくは最大として、例えば少なくとも<値>または<値>以下)、またはかかる値によって形成され得る任意の範囲もしくは部分範囲を列挙する特許請求の範囲を支持する。例えば、規定される8という数値は、0から16まで変動し(いずれの方向にも100%)、その範囲自体(例えば0~16)、その範囲内の任意の部分範囲(例えば2~12.5)、または個別に表される、その範囲内の任意の個々の値(例えば15.2)を最小値(例えば少なくとも4.3)または最大値(例えば12.4以下)として列挙する特許請求の範囲を支持すると理解されるべきである。
【0167】
特許請求の範囲に列挙される用語は、広く使用されている一般的な辞書および/または関連の専門用語辞書中の関連エントリーを参照することによって決定される、それらの通常の慣習的な意味、当業者によって一般に理解される意味等が与えられるべきであるが、これらの情報源のいずれか1つまたは組合せによって与えられる最も広い意味が特許請求の範囲の用語に与えられるべきである(例えば、エントリーの組合せの最も広い意味がもたらされるように2つ以上の関連辞書エントリーを組み合わせる必要がある)ことが理解され、例外は以下のみである:(a)用語がその通常の慣習的な意味よりも広範な形で使用される場合、その用語には、その通常の慣習的な意味に加えて、付加的な広範な意味が与えられるべきである、または(b)「本明細書で使用される場合、~を意味するものとする」という表現または同様の言葉(例えば「この用語は~を意味する」、「この用語は~と定義される」、「本開示の目的上、この用語は~を意味するものとする」等)に続けて用語を列挙することによって、用語が異なる意味を有することが明示的に定義されている場合。特定の例への言及、「すなわち」の使用、「発明」という語の使用等は、例外(b)を行使すること、または他の形で列挙される特許請求の範囲の用語の範囲を制限することを意図するものではない。例外(b)が適用される状況以外で、本明細書のいかなる内容も特許請求の範囲の放棄または否認とみなされるべきではない。
【0168】
特許請求の範囲において列挙される主題は、本明細書で記載または説明される任意の実施態様、特徴、または特徴の組合せと同一の範囲を有するものではなく、同一の範囲を有すると解釈されるべきではない。このことは、特徴または特徴の組合せの単一の実施態様のみが説明および記載される場合であっても当てはまる。
【0169】
参照による援用
下に挙げられるそれぞれの文献の全内容は、参照により本明細書に援用される。本明細書と援用された文献の1つ以上との両方で同じ用語が使用される場合、本明細書でその用語が異なる意味を有することが明示的に定義されていない限り、これらの情報源のいずれか1つまたは組合せによって与えられる最も広い意味を有すると解釈されるべきである。以下の文献のいずれかと本明細書との間に矛盾がある場合、本明細書が優先されるものとする。援用された主題は、明示的に列挙されるかまたは示される主題の範囲を限定するかまたは狭めるために使用されるべきではない。
【0170】
-1986年5月29日に出願され、1989年3月28日に発行された、「Optical Sensor for Selective Detection of Substances and/or for the Detection of Refractive Index Changes in Gaseous, Liquid, Solid and Porous Samples」と題する米国特許第4,815,843号明細書(出願番号07/019,557)。
【0171】
-1994年7月18日に出願され、1998年4月14日に発行された、「Optical Biosensor Matrix」と題する米国特許第5,738,825号明細書(出願番号08/854,586)。
【0172】
-2003年6月24日に出願され、2006年6月6日に発行された、「Optical Interrogation System and Method for Using Same」と題する米国特許第7,057,720号明細書(出願番号10/602,304)。
【0173】
-2004年10月28日に出願され、2006年11月14日に発行された、「Single-Fiber Launch/Receive System for Biosensing Applications」と題する米国特許第7,136,550号明細書(出願番号10/977,520)。
【0174】
-2004年9月21日に出願され、2007年4月10日に発行された、「Self-Referencing Waveguide Grating Sensors」と題する米国特許第7,203,386号明細書(出願番号10/947,021)。
【0175】
-2004年5月27日に出願され、2007年7月3日に発行された、「Optical Interrogation Systems with Reduced Parasitic Reflections and a Method for Filtering Parasitic Reflections」と題する米国特許第7,239,395号明細書(出願番号10/856,572)。
【0176】
-2004年12月21日に出願され、2007年10月23日に発行された、「Arrayed Sensor Measurement System and Method」と題する米国特許第7,286,221号明細書(出願番号11/019,439)。
【0177】
-2005年4月5日に出願され、2007年11月6日に発行された、「Optical Interrogation System and Method for 2-D Sensor Arrays」と題する米国特許第7,292,333号明細書(出願番号11/100,199)。
【0178】
-2005年2月14日に出願され、2008年3月18日に発行された、「Single Mode (SM) Fiber Optical Reader System and Method for Interrogating Resonant Waveguide-Grating Sensor(s)」と題する米国特許第7,346,233号明細書(出願番号11/058,155)。
【0179】
-2004年12月29日に出願され、2009年10月20日に発行された、「Spatially Scanned Optical Reader System and Method for Using Same」と題する米国特許第7,604,984号明細書(出願番号11/027,547)。
【0180】
-2009年6月9日に出願され、2012年2月14日に発行された、「Label-Free High Throughput Biomolecular Screening System and Method」と題する米国特許第8,114,348号明細書(出願番号12/480,886)。
【0181】
-2004年11月24日に出願され、2006年5月25日に公開された、「Polymer-Coated Substrates for Binding Biomolecules and Methods of Making and Using Thereof」と題する米国特許出願公開第2006/0110594号明細書(出願番号10/996,952)。
【0182】
-2004年12月29日に出願され、2006年6月29日に公開された、「Method for Creating a Reference Region and a Sample Region on a Biosensor and the Resulting Biosensor」と題する米国特許出願公開第2006/0141527号明細書(出願番号11/027,509)。
【0183】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0184】
実施形態1
細胞外小胞を含むサンプルを光導波路バイオセンサ上に配置するステップと、
前記細胞外小胞を前記光導波路バイオセンサに結合するステップと、
前記光導波路バイオセンサに結合した前記細胞外小胞を検出するステップと、
前記光導波路バイオセンサに結合した前記細胞外小胞の特性を分析するステップと
を含む、方法。
【0185】
実施形態2
前記細胞外小胞の前記特性が、前記サンプル中の細胞外小胞の数、前記サンプル中の細胞外小胞のサイズおよび/または前記サンプル中の細胞外小胞のタイプを含む、実施形態1記載の方法。
【0186】
実施形態3
前記細胞外小胞の前記特性を分析するステップが、前記細胞外小胞にリガンドを結合するステップを含む、実施形態1記載の方法。
【0187】
実施形態4
前記リガンドが、前記細胞外小胞上の第1のマーカーに結合する第1のリガンドと、前記細胞外小胞上の第2のマーカーに結合する第2のリガンドとを含む、実施形態3記載の方法。
【0188】
実施形態5
前記リガンドが標識を含む、実施形態3記載の方法。
【0189】
実施形態6
前記細胞外小胞の前記特性を分析するステップが、前記細胞外小胞の小胞内含有物を分析するステップを含む、実施形態1記載の方法。
【0190】
実施形態7
前記細胞外小胞の前記小胞内含有物を分析するステップが、前記小胞内含有物中のタンパク質、RNAおよび/またはDNAを分析するステップを含む、実施形態6記載の方法。
【0191】
実施形態8
前記細胞外小胞の前記小胞内含有物を分析するステップが、前記細胞外小胞を溶解させるステップを含む、実施形態6記載の方法。
【0192】
実施形態9
前記サンプルが未精製の生体サンプルである、実施形態1記載の方法。
【0193】
実施形態10
前記細胞外小胞を検出するステップが、前記光導波路バイオセンサを照明するステップと、前記光導波路バイオセンサから反射された光の共振波長の変化を検出するステップとを含む、実施形態1記載の方法。
【0194】
実施形態11
前記光導波路バイオセンサが光学共鳴導波路格子バイオセンサである、実施形態1記載の方法。
【0195】
実施形態12
細胞外小胞を分析するシステムであって、
光導波路バイオセンサと、
前記光導波路バイオセンサに結合した細胞外小胞と、
前記細胞外小胞に結合した、標識を含むリガンドと
を備える、システム。
【0196】
実施形態13
前記リガンドが第1のリガンドであり、前記標識が第1の標識であり、前記システムが、前記細胞外小胞に結合した第2のリガンドを備え、前記第2のリガンドが第2の標識を含む、実施形態12記載のシステム。
【0197】
実施形態14
前記第1のリガンドが、前記細胞外小胞上の1つのマーカーに結合するように構成されており、前記第2のリガンドが、前記細胞外小胞上の別のマーカーに結合するように構成されている、実施形態13記載のシステム。
【0198】
実施形態15
前記光導波路バイオセンサに結合した前記細胞外小胞を検出するように構成された光学リーダーを備える、実施形態12記載のシステム。
【0199】
実施形態16
複数の前記光導波路バイオセンサと、
前記複数の光導波路バイオセンサの少なくとも1つをそれぞれ備える複数のウェルを含むマイクロプレートと
を備える、実施形態12記載のシステム。
【0200】
実施形態17
細胞外小胞を分析するシステムであって、
複数のウェルを含むマイクロプレートと、
前記複数のウェルのそれぞれに配置された光導波路バイオセンサと、
前記複数のウェルのそれぞれに配置されたサンプルと
を備え、
前記サンプルがそれぞれ、前記光導波路バイオセンサに結合した、破裂した細胞外小胞の小胞内含有物を含む、
システム。
【0201】
実施形態18
前記サンプルが溶解試薬を含む、実施形態17記載のシステム。
【0202】
実施形態19
前記破裂した細胞外小胞の前記小胞内含有物が、タンパク質、RNAおよび/またはDNAを含む、実施形態17記載のシステム。
【0203】
実施形態20
細胞外小胞を分析するキットであって、
複数のウェルを含むマイクロプレートと、
前記複数のウェルのそれぞれに配置された光導波路バイオセンサと、
前記光導波路バイオセンサのそれぞれに結合した、細胞外小胞に結合するように構成された結合物質と、
(a)前記細胞外小胞に結合するように構成された、標識を含むリガンド、または
(b)前記細胞外小胞を破裂させるように構成された試薬
の少なくとも一方と
を含む、キット。
【0204】
実施形態21
前記リガンドが、第1の標識を含む第1のリガンドと、第2の標識を含む第2のリガンドとを含み、前記第1のリガンドが、前記細胞外小胞上の第1のマーカーに結合するように構成されており、前記第2のリガンドが、前記細胞外小胞上の第2のマーカーに結合するように構成されている、実施形態20記載のキット。
【0205】
実施形態22
(a)および(b)の両方を含む、実施形態20記載のキット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9