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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】放射線不透過性ガラス材料
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/097 20060101AFI20241225BHJP
   A61B 6/50 20240101ALI20241225BHJP
   A61N 5/10 20060101ALI20241225BHJP
   A61M 36/06 20060101ALI20241225BHJP
   A61K 49/04 20060101ALI20241225BHJP
   A61K 51/00 20060101ALI20241225BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
C03C3/097
A61B6/50 511G
A61N5/10 Z
A61M36/06
A61K49/04
A61K51/00 100
A61P35/00
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021563261
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-26
(86)【国際出願番号】 CA2020050754
(87)【国際公開番号】W WO2020237399
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】62/855,285
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519169580
【氏名又は名称】エービーケー バイオメディカル インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】Unit 32-155 Chain Lake Dr.,Halifax,Nova Scotia B3S 1B3(CA)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】レジェール,シャロン
(72)【発明者】
【氏名】ボイド,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】オコネル,キャスリーン
(72)【発明者】
【氏名】グレゴワール,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ヘドリー,ジュニア.,エフ.アンソニー
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-139341(JP,A)
【文献】特表2017-537152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00,
C03B 29/00-29/16,
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス材料であって、前記ガラスは、
約0.55~約0.85モル分率のSiOと、
約0.01~約0.23モル分率のNaO、KO、又はNaO及びKOの配合物と、
約0.05~約0.28モル分率のY、BaO、又はY及びBaOの配合物と、
約0.05~約0.12モル分率のTaと、
最大で0.20モル分率のBとを含み、
前記Y、前記BaO、及び前記Taの合計が、約0.10~約0.31モル分率であ
前記ガラス材料は、0.01モル分率未満のLi Oを含む、ガラス材料。
【請求項2】
前記ガラスは、約0.05~約0.10モル分率のTa を含む、請求項1に記載のガラス材料。
【請求項3】
前記ガラスは、約0.03~約0.23モル分率、例えば、約0.05~約0.23モル分率のNaO、KO、又はNaO及びKOの配合物を含む、請求項1又は2に記載のガラス材料。
【請求項4】
前記ガラスは、約0.55~約0.82モル分率、例えば、約0.55~約0.80モル分率のSiOを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス材料。
【請求項5】
前記ガラスは、
約0.55~約0.80モル分率のSiOと、
約0.05~0.22モル分率のNaO、KO、又はNaO及びKOの配合物とを含む、請求項1に記載のガラス材料。
【請求項6】
前記Y、前記BaO、及び前記Taの合計が、約0.10~約0.25モル分率、例えば、約0.10~約0.15モル分率である、請求項1~のいずれか1項に記載のガラス材料。
【請求項7】
前記ガラスは、約0.05~約0.12、例えば、約0.05~約0.08モル分率のY、BaO、又はY及びBaOの配合物を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のガラス材料。
【請求項8】
前記B及び前記SiOの合計が、約0.60~約0.85、例えば、約0.60~約0.80モル分率である、請求項1に記載のガラス材料。
【請求項9】
前記ガラスは、BaO及びNaOを含み、前記BaO及び前記NaOの合計が、約0.10~約0.33モル分率、例えば、約0.15~約0.33モル分率であり、約0.10~約0.25モル分率、又は約0.15~約0.25モル分率である、請求項1~のいずれか1項に記載のガラス材料。
【請求項10】
前記SiO及び前記NaOの合計が、約0.65~約0.90モル分率である、請求項1~のいずれか1項に記載のガラス材料。
【請求項11】
前記SiO及び前記NaOの合計が、約0.69~約0.90モル分率であり、
前記ガラスが、約0.05~約0.09モル分率のTaを含み、且つ、
前記Y、前記BaO、及び前記Taの合計が、約0.10~約0.17モル分率である、請求項に記載のガラス材料。
【請求項12】
約0.55~約0.82モル分率、例えば、約0.55~0.75モル分率のSiO
約0.03~約0.23モル分率、例えば、約0.05~約0.22モル分率のNaO;
約0.05~約0.12モル分率、例えば、約0.05~約0.08モル分率のY、BaO、又はY及びBaOの配合物;及び、
約0.05~約0.12モル分率、例えば、約0.05~約0.09モル分率のTa
選択的に最大0.1モル分率のBを含む、
請求項1に記載のガラス材料。
【請求項13】
約0.65~約0.82モル分率、例えば、約0.73~約0.80モル分率のSiO
約0.03~約0.23モル分率、例えば、約0.03~約0.11モル分率のNaO;
約0.06~約0.12モル分率、例えば、約0.07~約0.10モル分率のBaO;
約0.06~約0.12モル分率、例えば、約0.07~約0.10モル分率のTa;及び、
約0.001~約0.015モル分率、例えば、約0.001~約0.006モル分率のBを含む、
請求項12に記載のガラス材料。
【請求項14】
約0.69モル分率のSiO
約0.16モル分率のNa O;
約0.07モル分率のBaO;
約0.07モル分率のTa ;及び、
約0.012モル分率のB を含む、
請求項12に記載のガラス材料。
【請求項15】
O、V、ZnO、FeO、及びフッ化物の1以上を実質的に含まない、請求項1~14のいずれか1項に記載のガラス材料。
【請求項16】
前記ガラスは、
SiO
Na O、K O、又はNa O及びK Oの配合物;
、BaO、又はY 及びBaOの配合物;
Ta ;及び
からなる、
請求項1~15のいずれか1項に記載のガラス材料。
【請求項17】
前記ガラス材料は、血管塞栓に適した形状及び粒子直径を有するように構成された微粒子ガラス材料である、請求項1~16のいずれか1項に記載のガラス材料。
【請求項18】
前記ガラス材料は、不規則な微粒子ガラス材料であり、例えば、約15μm~約1200μmの平均直径を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載のガラス材料。
【請求項19】
微粒子ガラス材料であって、
請求項15に記載の不規則な微粒子ガラス材料の球形化から得られる、実質的に球形であり、
好ましくは、約15μm~約1200μm、例えば、約15μm~約35μm;約40μm~約500μm;約40μm~約300μm;約300μm~約500μm;約500μm~約700μm;又は約700μm~約1200μmの平均直径を有し、
選択的には、放射線イメージング、コンピュータ断層(CT)イメージング、コーンビームCTイメージング、又は蛍光透視イメージングに用いられる、微粒子ガラス材料。
【請求項20】
実質的に球形である微粒子ガラス材料であって、
前記ガラス材料は、請求項1~16のいずれか1項に記載のガラス材料であり、
前記微粒子ガラス材料は、約15μm~約1200μmの平均直径を有する、微粒子ガラス材料。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の微粒子ガラス材料と、放射性ガラス微粒子との混合物であって、
前記微粒子ガラス材料及び前記放射性ガラス微粒子が、実質的に同じサイズであり、例えば、前記微粒子ガラス材料及び前記放射性ガラス微粒子の平均サイズの差が、これら2つの平均サイズの平均の40%以内、又は10%以内であり、
好ましくは、前記微粒子ガラス材料及び前記放射性ガラス微粒子は、実質的に同じ密度を有し、例えば、前記微粒子ガラス材料及び前記放射性ガラス微粒子の平均サイズの差が、これら2つの平均サイズの平均の30%以内であり、好ましくは15%以内である、混合物。
【請求項22】
前記ガラス材料は、
0.65~0.82モル分率のSiO
0.03~0.23モル分率のNa O;
0.06~0.12モル分率のBaO;
0.06~0.12モル分率のTa
0.001~0.015モル分率のB ;及び
0.01モル分率未満のLi Oを含む、
請求項21に記載の混合物。
【請求項23】
前記ガラス材料は、
約0.69モル分率のSiO
約0.16モル分率のNa O;
約0.07モル分率のBaO;
約0.07モル分率のTa ;及び
約0.012モル分率のB を含む、
請求項21に記載の混合物。
【請求項24】
前記放射性ガラス微粒子は、イットリウム酸化アルミノケイ酸塩ガラスである、請求項21~23のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項25】
前記イットリウム酸化アルミノケイ酸塩ガラスは、40質量%のSiO 、20質量%のAl 、及び40質量%のY を含むガラスである、請求項24に記載の混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月31日に出願された米国仮特許出願第62/855,285号の利益を主張し、全体の内容が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、患者に投与可能な微粒子の形成に適した放射線不透過性ガラス材料に関する。
【背景技術】
【0003】
次の段落は、その中で論じられている何れもが先行技術であること、又は当業者の知識の一部であることを認めるものではない。
【0004】
治療上の血管閉塞(塞栓術)は、特定の病的状態をin situで治療するために用いられる技術である。治療上の塞栓術は、一般に、カテーテルを使用して、様々な過程(腫瘍、血管奇形、及び出血過程)の血管などの循環器に塞栓剤を配置するために実施される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下の序文は、本明細書を読者に紹介することを意図したものであって、発明を定義するものではない。1以上の発明は、下記の又は本文書の他の部分に記載された、装置要素又は方法のステップのコンビネーション又はサブコンビネーションに属し得る。本発明者らは、単に、特許請求の範囲に他の一発明又は複数の発明の記述がないことによっては、本明細書に開示されたあらゆる発明に対する権利を放棄せず又は権利の主張を撤回しない。
【0006】
血管塞栓術に使用される粒子状塞栓剤は、放射線不透過性でないことがあり、したがって、粒子状塞栓剤が注入される前に造影剤で処理されない限り、放射線イメージングで観察することが困難である。TheraSphere(商標)イットリウム-90の微粒子は、市販の放射性微粒子であり、原発性肝癌及び転移性肝癌の治療に使用されており、120kVpで約6,000ハンスフィールドユニット(HU)の放射線不透過性を有する。
【0007】
放射線不透過性の粒子状塞栓剤は、塞栓形成治療中又は治療後に放射線イメージングで観察できるため、望ましい。1つ以上の本開示に記載される例は、別の手段で、粒子状塞栓剤よりも大きな放射線不透過性を有する放射線不透過性ガラス材料を提供することを試みる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
最終的に血管塞栓に使用されることが意図されるガラス材料は、約2.7g/cm~約4.3g/cmの密度を有してもよい。特定の例では、ガラス材料は、約2.9g/cm~約3.7g/cm、又は、約3.3g/cm~約3.6g/cmの密度を有してもよい。この範囲の密度を有する粒子は、患者の脈管構造内に適切に分布すると考えられている。
【0009】
本開示のガラス材料では、Y、BaO、及びTaのすべては、ガラスの放射線不透過性に寄与する。しかしながら、これらの成分の量の増加は、得られるガラス材料の密度をも増加させる。本開示の著者らは、血管塞栓に適した密度で、望ましい値の放射線不透過性を提供するガラス組成物を確認した。本開示のいくつかのガラス材料は、120kVpで9,000HUを超える放射線不透過性を有し得る。本開示のいくつかのガラス材料は、約2.7g/cm~約4.3g/cm、例えば、約2.9g/cm~約3.7g/cm、又は約3.3g/cm~約3.6g/cmの密度を有し得る。
【0010】
一態様では、本開示は、約0.55~約0.85モル分率のSiO;約0.01~約0.23モル分率のNaO、KO、又はNaO及びKOの配合物;約0.05~約0.28モル分率のY、BaO、又はY及びBaOの配合物;及び選択的にTaを含む、ガラス材料を提供する。該ガラス材料において、Y、BaO及び選択的なTaの合計は、約0.10~約0.31モル分率である。
【0011】
いくつかの例では、ガラス材料は、約0.03~約0.23、例えば、約0.05~約0.23モル分率のNaO、KO、又はNaO及びKOの配合物を含む。
【0012】
いくつかの例において、ガラス材料は、約0.55~約0.82、例えば、約0.55~約0.80モル分率のSiOを含む。
【0013】
特定の例において、ガラス材料は、約0.55~約0.80モル分率のSiO、約0.05~約0.22モル分率のNaO、KO、又はNaO及びKOの配合物を含む。
【0014】
1つの特定の例において、ガラス材料は、約0.74モル分率のSiO;約0.09モル分率のNaO;約0.085モル分率のBaO;約0.085モル分率のTa;及び約0.006モル分率のBを含む。この特定のガラス材料は、120kVpで約16,000HUの放射線不透過性を示す。
【0015】
別の特定の例において、ガラス材料は、約0.79モル分率のSiO;約0.06モル分率のNaO;約0.08モル分率のBaO;約0.07モル分率のTa;及び約0.003モル分率のBを含む。
【0016】
さらに別の特定の例では、ガラス材料は、約0.77モル分率のSiO;約0.031モル分率のNaO;約0.10モル分率のBaO;約0.096モル分率のTa;及び約0.002モル分率のBを含む。
【0017】
さらに別の特定の例では、ガラス材料は、約0.80モル分率のSiO;約0.033モル分率のNaO;約0.82モル分率のBaO;約0.085モル分率のTa;及び約0.001モル分率のBを含む。
【0018】
本開示のいくつかの例では、本開示のガラス材料は、バルクガラスである。用語「バルクガラス」は、血管塞栓に適したガラス材料を作製するために、追加でいかなる加工もなされていない出発試剤からガラスを形成することによって得られるガラス材料を意味する。例えば、不規則な微粒子ガラス材料を作製するために、いかなる加工工程も実施せず商業スケールで製造されたガラス材料は、バルクガラスと考えてよい。
【0019】
他の例では、本開示のガラス材料は、不規則な微粒子ガラス材料である。用語「不規則な微粒子ガラス材料」は、血管塞栓のためにサイズ化されているが、適切に成形されていない微粒子材料を意味する。不規則な微粒子ガラス材料は、バルクガラスを粉砕し、得られた粒子を篩にかけ、所望のサイズの微粒子を回収することによって調製され得る。
【0020】
さらに他の例では、本開示のガラス材料は、実質的に球形の微粒子ガラス材料である。用語「実質的に球形の微粒子ガラス材料」は、血管塞栓のためにサイズ化され及び成形された微粒子材料を意味する。実質的に球形の微粒子ガラス材料は、不規則な微粒子ガラス材料の表面を再溶融し、且つ、実質的に球形の粒を形成させることによって調製され得る。
【0021】
別の態様では、本開示のガラス材料の作製方法が提供される。
【0022】
本開示のさらに別の態様では、本明細書に記載されているような実質的に球形の微粒子ガラス材料は、放射線イメージング、コンピュータ断層(CT)イメージング、コーンビームCTイメージング、又は蛍光透視イメージングなどの、X線に基づく放射線イメージング技術に使用され得る。本開示は、さらに、本明細書に記載の実質的に球形の微粒子ガラス材料を用いて哺乳動物をイメージングする方法を提供する。
【0023】
放射性微粒子を使用する血管塞栓治療では、微粒子の数を増加させることにより、より少ない微粒子をより高い比放射能で投与するよりも良好な腫瘍有効範囲(tumor coverage)が得られるため、より低い比放射能を有する微粒子をより多く投与することが望ましいと考えられている。理論に拘束されることは望まれないが、本開示の著者らは、微粒子は、それらが遭遇する血管内の最初の有効な局在スポットに留まることになると考えている。投与された粒子の大部分と相互作用するのに十分な局在スポットが存在する場合には、少量の微粒子の投与は、一部の粒子を腫瘍の一部分に濃縮させ得る。これに対して、低い比放射能の粒子をより多く投与すると、有効な局在スポットの飽和度が高くなり、腫瘍有効範囲がより均一になる。
【0024】
少なくともいくつかの腫瘍のサイズ及び/又は血管新生の程度に対しては、(i)放射性微粒子及び(ii)本開示による放射線不透過性の非放射性微粒子の混合物を患者に投与することによって、個々の放射性微粒子がより高い比放射能であっても、より低い比放射能でより多くの微粒子を投与することに伴う利点の少なくともいくつかが提供され得る。
【0025】
一態様では、本開示は、(i)放射性ガラス微粒子及び(ii)本開示による非放射性の放射線不透過性微粒子ガラス材料の混合物を提供し、放射性ガラス微粒子は、肝臓における腫瘍の治療に適しており、放射性ガラス微粒子及び非放射性の放射線不透過性微粒子ガラス材料は、実質的に同じサイズである。特定の例では、本開示の微粒子ガラス材料及び放射性ガラス微粒子は、実質的に同じ密度である。
【0026】
いくつかの例では、混合物は、放射性付与前のガラス微粒子を中性子の放射線に曝露して放射性ガラス微粒子を形成し、放射性ガラス微粒子を本開示の放射線不透過性微粒子ガラス材料と混合することによって、調製され得る。
【0027】
特定の例では、混合物は、(i)約40質量%のSiO、約20質量%のAl、及び約40質量%のYを含む、実質的に球形の放射性イットリウム酸化アルミノケイ酸塩ガラス微粒子(約0.170モル分率のY、約0.189モル分率のAl、及び約0.641モル分率のSiOに相当)、及び、(ii)約0.73~約0.80モル分率のSiO、約0.03~約0.11モル分率のNaO、約0.07~約0.10モル分率のBaO、約0.07~約0.10モル分率のTa、及び約0.001~約0.006モル分率のBを含む、実質的に球形の微粒子ガラス材料を含む。
【0028】
本開示のさらに別の態様では、混合物が放射性ガラス微小球を含む場合、該混合物を哺乳動物に投与することによって、放射線が哺乳動物に送達される。かかる方法は、追加的に、X線に基づく放射線イメージング技術を用いて、特に静止イメージング技術を用いて、哺乳動物をイメージングすることを含んでもよい。イメージング技術は、蛍光透視、コンピュータ断層撮影/ポジトロン放射断層撮影(CT/PET)、又はコーンビームコンピュータ断層撮影(CBCT)を含んでもよい。
【0029】
本開示によるガラス材料は、組成物若しくは送達デバイスに含まれてもよく、又は、診断方法若しくは治療方法に使用されてもよい。
【0030】
いくつかの態様では、本開示は、放射性微粒子、及び非放射性微粒子の混合物を含み、非放射性微粒子の少なくともいくつかは本開示のガラス材料を含む、治療用又は診断用組成物を提供する。
【0031】
他の態様では、本開示は、治療用又は診断用組成物を患者に投与することを含む方法であって、該投与が血管内送達、腹腔内送達、又は経皮送達による方法を提供する。
【0032】
一態様では、本開示は、放射性微粒子及び非放射性微粒子の混合物の患者への血管内送達、腹腔内送達、又は経皮送達のための送達デバイスを提供する。送達デバイスは、混合輸送媒体に流体的に結合可能である。送達デバイスは、混合輸送媒体に流体的に結合可能な流体入口と、流体出口と、流体入口及び流体出口に流体的に結合した流体ミキサーと、流体ミキサーに流体的に結合した放射性微粒子源と、流体ミキサーに流体的に結合した非放射性微粒子源とを含む。非放射性微粒子の少なくともいくつかは、本開示によるガラス材料から構成される。放射性微粒子源は、非放射性微粒子源とは区別されるものである。流体ミキサーは、放射性微粒子を非放射性微粒子と混合し、放射性及び非放射性微粒子の混合物を混合輸送媒体を利用して流体出口の外へ送達する。
【0033】
別の態様では、本開示は、放射性微粒子及び非放射性微粒子の混合物の患者への血管内送達、腹腔内送達、又は経皮送達のための送達デバイスを提供する。送達デバイスは、輸送媒体に流体的に結合可能な少なくとも1つの流体入口と、少なくとも1つの流体入口に流体的に結合した放射性微粒子源と、少なくとも1つの流体入口に流動的に結合した放射性微粒子源と、放射性微粒子源に流動的に結合した第1流体出口と、非放射性微粒子源に流動的に結合した第2の流体出口とを含む。非放射性微粒子の少なくともいくつかは、本開示によるガラス材料から構成される。放射性微粒子源は、非放射性微粒子源とは区別されるものである。
【0034】
本開示の文脈において、微粒子の1つの集合体は、2つの集合体が混合されない場合には、他の微粒子の集合体とは区別されるものと理解されるべきである。例えば、2つのシリンジが流体的に結合されて混合物を形成するために微粒子を排出することが可能であっても、1つのシリンジの筒中の放射性微粒子は、第2のシリンジの筒内の非放射性微粒子とは区別されるものと理解されるべきである。
【0035】
さらに別の態様では、本開示は、(i)放射性微粒子の第1の集合体と、(ii)非放射性微粒子の第2の集合体とを混合すること、及び、治療用又は診断用に適切な量の混合物を患者に投与することを含む方法を提供する。非放射性微粒子の少なくともいくつかは、本開示によるガラス材料から構成される。
【0036】
さらに別の態様では、本開示は、治療用又は診断用に適切な量の微粒子を患者に投与する方法を提供する。該方法は、非放射性微粒子を患者に投与することと、非放射性微粒子を最初に検出することなく放射性微粒子を患者に投与することとを含む。非放射性微粒子の少なくともいくつかは、本開示によるガラス材料から構成される。投与は、血管内送達、腹腔内送達、又は経皮送達によるものであり、非放射性微粒子の投与経路は、放射性微粒子の投与経路と同じである。
【0037】
さらに別の態様では、本開示は、治療用に又は診断用に適切な量の微粒子を患者に投与する方法を提供する。該方法は、放射性微粒子を患者に投与することと、放射性微粒子を最初に検出することなく非放射性微粒子を患者に投与することとを含む。非放射性微粒子の少なくともいくつかは、本開示によるガラス材料から構成される。投与は、血管内送達、腹腔内送達、又は経皮送達によるものであり、非放射性微粒子の投与経路は、放射性微粒子の投与経路と同じである。
【0038】
さらに別の態様では、本開示は、治療用に又は診断用に適切な量の微粒子を投与する方法を提供する。該方法は、(i)放射性微粒子の第1の集合体と、(ii)非放射性微粒子の第2の集合体との患者への同時投与を含む。非放射性微粒子の少なくともいくつかは、本開示によるガラス材料から構成される。
【0039】
さらに別の態様では、本開示は、治療用に又は診断用に適切な量の微粒子を投与する方法を提供する。該方法は、非放射性微粒子及び放射性微粒子の患者への単一の治療セッションにおける連続投与を含む。非放射性微粒子の少なくともいくつかは、本開示によるガラス材料から構成される。
【0040】
さらに別の態様では、本開示は、(i)治療用の放射性微粒子、次いで、(ii)非放射性微粒子の患者への連続投与を含む方法を提供する。非放射性微粒子の少なくともいくつかは、本開示によるガラス材料から構成される。
【0041】
上記のいずれの態様においても、非放射性微粒子は、以下の「ガラス組成物」と題するセクションで議論されている非放射性ガラス組成物のいずれであってもよく、及び/又は、以下の「ガラス材料」と題するセクションで議論されているガラス材料の特徴のいずれかを単独で、又は組み合わせて有してもよい。上記のいずれの態様においても、放射性微粒子は、以下のセクションで述べる放射線治療用混合物に関する放射性ガラス組成物のいずれかであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
以下、本開示の実施形態について、例示としてのみの添付図面を参照して説明する。
【0043】
図1図1は、カルシウム及びマグネシウムを含まないリン酸緩衝生理食塩水(CMF-PBS)中で抽出した、本開示の例示的なガラス組成物(球形、球形化後)について得られた累積イオン放出曲線を示すグラフである。
【0044】
図2A図2Aは、不規則なBIC2ガラス粉末の250x及び1000xでのSEM画像のセットである。
【0045】
図2B図2Bは、球形化後のBIC2微粒子の250x及び1000xでのSEM画像のセットである。
【0046】
図2C図2Cは、球形化後であり且つ処理後(24時間)に篩にかけられたBIC2微粒子の250x及び1000xでのSEM画像のセットである。
【0047】
図2D図2Dは、球形化後であり且つ処理後(72時間)に篩にかけられたBIC2微粒子の250x及び1000xでのSEM画像のセットである。
【0048】
図3図3は、各種のガラス微粒子の体積分率の関数としてのCT放射線不透過性を示すグラフである。
【0049】
図4図4は、種々のガラス微小球の体積分率の関数としてのR1緩和度を示すグラフである。
【0050】
図5図5は、種々の分数体積でのT1強調、T2強調及びT2強調BIC2及びCOMP1の代表画像である。
【0051】
図6図6は、種々のガラス微小球の体積分率の関数としてのR2緩和度を示すグラフである。
【0052】
図7図7は、種々のガラス微小球の体積分率の関数としてのR2緩和度を示すグラフである。
【0053】
図8図8は、種々のガラス微小球の体積分率の関数として、MRI磁化率(susceptometry)測定で得られた局所磁気線量(LMD)緩和度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本開示の文脈においては、「ガラス材料」は、概して、バルク又は微粒子材料などの物質的な材料と理解されるべきであり、明記された組成物のガラスを含むものと理解されるべきである。用語「ガラス」又は「ガラス組成物」は、組成物の特定の成分を定義する。従って、材料の物理的特性(例えば粒子サイズ)への言及は、ガラス材料に関係し、一方、組成物特性(例えばモル分率)への言及は、ガラス又はガラス組成に関係する。本開示のいくつかの部分では、用語「ガラス」、「ガラス組成物」及び「ガラス材料」は、例えば、ガラス材料が、記載されたガラス組成物のみから構成されている場合のように、すべてが同じ構成要素を指すかのように、互換的に使用される。
【0055】
本開示の文脈において、開示された値の範囲は、範囲の限界として明示的に列挙された数値だけでなく、あたかもそれぞれの数値及び副範囲が明示的に列挙されているかのように、個々の数値又は該範囲内に包含される副範囲のすべてを含むような、柔軟な方法で解釈されるべきである。例えば、「約1~約10」の範囲は、単に約1~約10を含むだけでなく、開示されている値の範囲内の個々の値(例えば、1、1.5、2、4・・・など)及び副範囲(例えば、1~3、2~7、5~6など)も含むと解釈されるべきである。
【0056】
ガラス組成物
概して、本開示は、ガラス材料を提供し、該ガラスは、約0.55~約0.85モル分率のSiO、及び約0.01~約0.23モル分率のNaO、KO、又はNaO及びKOの配合物を含む。ガラス中のY、BaO、及びTaの量はすべて、放射線不透過性及びガラスの密度に影響し、追加的に、ガラスを形成するための他の成分の性能に影響し得るため、Y、BaO及び/又はTaの許容量は、従来、予測不可能である。本開示の著者らは、実験結果に基づいて、本開示のガラス材料は、約0.05~約0.28モル分率のY、BaO、又はY及びBaOの配合物、及び任意のTaを含み、且つ、Y、BaO、及び任意のTaの合計は、約0.10~約0.31モル分率であるべきことを決定した。いくつかの例では、Y、BaO、及び選択的なTaの合計は、約0.10~約0.25モル分率であってもよく、例えば、約0.10~約0.15モル分率であってもよい。
【0057】
モル分率の文脈では、「約Xモル分率」は、付記された値と測定される酸化物とに関連する推定不確性の範囲内の任意の値を意味するものと理解されるべきである。例えば、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)の文脈では、SiOの推定不確実性は報告値の1%、NaOの推定不確実性は報告値の10%、BaOの推定不確実性は報告値の2%、Taの推定不確実性は報告値の1%であり得る。
【0058】
本開示のガラスは、約0.05~約0.08モル分率のY、BaO、又はY及びBaOの配合物を含んでもよい。本開示のいくつかの例示的なガラスは、いかなるYも含まない。このような例示的なガラスは、以下において詳細に議論されるように、微粒子の混合物において有用であり得る。
【0059】
本開示のガラスは、約0.12モル分率までの量のTa、例えば、約0.10モル分率までのTa、例えば、約0.05~約0.12モル分率、例えば、約0.05~約0.10モル分率のTaを含んでいてもよい。
【0060】
本開示のガラスは、追加的に、0.20モル分率までの量のBを含んでいてもよい。B及びSiOの合計は、約0.60~約0.85、例えば、約0.60~約0.80モル分率であってもよい。Bは、ガラス形成剤として当技術分野で知られており、Bをケイ酸ナトリウムガラス中に含有させると、ホウケイ酸ナトリウムガラスが得られる。本開示のホウケイ酸ナトリウムガラスのいくつかの例は、分解に対してより耐性であり得る。本開示のホウケイ酸ナトリウムガラスのいくつかの例は、改良されたガラス形成能を有し得る。
【0061】
本開示はケイ酸ナトリウムガラスに焦点を当てているが、NaO及びKOの両方は、ガラスネットワークの改質剤として作用し、ガラス特性に多くの類似の効果を及ぼすことが知られている。本開示のいくつかの意図されたガラスにおいて、ガラス組成物は、NaOのみ(KOなし)、又はKOのみ(NaOなし)を含んでいてもよい。他の意図されたガラスでは、ガラス組成物は、100:1~1:100比率でNaO及びKOを含んでいてもよい。本開示はさらに、50:1、25:1、10:1、5:1、1:1、1:5、及び1:10の比率など、及びこれらの間の任意の範囲の比率を意図する。本開示のいくつかの例では、Na:Kの比率は、約75:25、約50:50、約25:75、又は約10:90であり得る。
【0062】
ガラスの放射線不透過性への影響に加えて、BaOは、ガラスネットワークの改質剤として作用することが本技術において知られている。ケイ酸ナトリウムガラス中のネットワーク改質剤の総量が多すぎる場合、ガラスが形成されないか、ガラスネットワークの不安定性のために、ガラスが耐久的な塞栓剤として適さない可能性がある。BaOを含む本開示のガラス材料では、BaO、NaO、及びKOの合計は、約0.10~約0.33モル分率、例えば、約0.15~約0.33モル分率であってもよい。例えば、BaO、NaO、及びKOの合計は、約0.10~約0.25、例えば、約0.15~約0.25モル分率であってもよい。
【0063】
本開示のガラスは、好ましくは、主としてケイ酸ナトリウムガラスである。本開示のガラス中のSiO及びNaOの合計は、約0.65~約0.90モル分率であってもよい。
【0064】
本明細書に開示されたガラス材料のいくつかの例では、SiO及びNaOの合計は、約0.69~約0.90モル分率であり、ガラスは、約0.05~約0.09モル分率のTaを含み、Y、BaO、及びTaの合計は、約0.10~約0.17モル分率である。かかる組成の例示的なガラス材料は、高レベルの放射線不透過性と3.3~3.6g/cm粒子密度との間の有益なバランスを示す。
【0065】
本明細書に開示されたガラス材料の他の例では、SiO及びNaOの合計は、約0.65~約0.80モル分率であり、ガラスは、約0.05~約0.10モル分率のTaを含み、Y、BaO、及びTaの合計は、約0.18~約0.31モル分率である。かかる組成の例示的なガラス材料は、高密度ではあるが、高レベルの放射線不透過性を示し得る。
【0066】
本明細書に開示されたガラス材料のさらに他の例では、ガラスは、約0.55~約0.80、例えば、約0.55~約0.75モル分率のSiOと、約0.03~約0.23、例えば、約0.05~約0.22モル分率のNaOと、約0.05~約0.12、例えば、約0.05~約0.08モル分率のY、BaO、又はY及びBaOの配合物と、約0.05~約0.12、例えば、約0.05~約0.09モル分率のTaを含む。
【0067】
例えば、ガラスは、約0.70~約0.73モル分率のSiOと、約0.16~約0.18モル分率のNaOと、約0.05~約0.7モル分率のYと、約0.05~約0.7モル分率のTaとを含んでいてもよい。1つの特定の例では、約0.71モル分率のSiOと、約0.17モル分率のNaOと、約0.06モル分率のYと、約0.06モル分率のTaを含むガラスである。別の特定の例は、約0.72モル分率のSiOと、約0.17モル分率のNaOと、約0.05モル分率のYと、約0.06モル分率のTaとを含むガラスである。
【0068】
本明細書に開示されているガラス材料のいくつかの例では、ガラスは、約0.55~約0.82、例えば、約0.55~約0.75モル分率のSiOと、約0.03~約0.23、例えば、約0.05~約0.22モル分率のNaOと、約0.05~約0.12、例えば、約0.05~約0.08モル分率のY、BaO、又はY及びBaOの配合物と、約0.05~約0.12、例えば、約0.05~約0.09モル分率のTaと、0.1モル分率までのBとを含む。
【0069】
いくつかの例では、ガラスは、約0.65~約0.82、例えば、約0.73~約0.80モル分率のSiOと、約0.03~約0.23、例えば、約0.03~約0.11モル分率のNaOと、約0.06~約0.12、例えば、約0.07~約0.10モル分率のBaOと、約0.06~約0.12、例えば、約0.07~約0.10モル分率のTaと、約0.001~約0.015、例えば、約0.001~約0.006モル分率のBを含む。
【0070】
1つの特定の例は、約0.69モル分率のSiOと、約0.16モル分率のNaOと、約0.07モル分率のBaOと、約0.07モル分率のTaと、約0.01モル分率のBとを含むガラスである。
【0071】
別の特定の例は、約0.66モル分率のSiOと、約0.20モル分率のNaOと、約0.065モル分率のBaOと、約0.06モル分率のTaと、約0.011モル分率のBとを含むガラスである。
【0072】
別の特定の例は、約0.73モル分率のSiOと、約0.10モル分率のNaOと、約0.08モル分率のBaOと、約0.08モル分率のTaと、約0.01モル分率のBとを含むガラスである。
【0073】
さらに別の特定の例は、約0.74モル分率のSiOと、約0.09モル分率のNaOと、約0.085モル分率のBaOと、約0.085モル分率のTaと、約0.006モル分率のBとを含むガラスである。
【0074】
さらに別の特定の例は、約0.79モル分率のSiOと、約0.06モル分率のNaOと、約0.08モル分率のBaOと、約0.07モル分率のTaと、約0.003モル分率のBとを含むガラスである。
【0075】
さらなる特定の例は、約0.77モル分率のSiOと、約0.031モル分率のNaOと、約0.10モル分率のBaOと、約0.096モル分率のTaと、約0.002モル分率のBとを含むガラスである。
【0076】
さらに別の特定の例は、約0.80モル分率のSiOと、約0.033モル分率のNaOと、約0.082モル分率のBaOと、約0.085モル分率のTaと、約0.001モル分率のBとを含むガラスである。
【0077】
さらなる例は、約0.58モル分率のSiOと、約0.20モル分率のNaOと、約0.06モル分率のY及びBaOの配合物と、約0.07モル分率のTaと、約0.09モル分率のBとを含むガラスである。該ガラスは、約0.024モル分率のYと、約0.035モル分率のBaOとを含んでいてもよい。
【0078】
本開示のガラス組成物は、好ましくは、LiO、RbO、V、ZnO、FeO、及びフッ化物の一つ以上を実質的に含まない。リチウム酸化物、ルビジウム酸化物、及びバナジウム酸化物は、これらの酸化物が十分に高い濃度で存在し、これらの酸化物がガラス材料から浸出する場合、細胞毒性のあるガラスになり得る。これらの酸化物は、0.01、例えば、0.001又は0.0001モル分率、好ましくは0モル分率であることが望ましい。ガラス中のフッ化物は、生理的な状態を劣化させる。望ましくは、フッ化物を、0.005モル分率以下、例えば、0.0001モル分率、好ましくは0モル分率とする。酸化亜鉛は、十分に高い濃度で存在する場合でガラス材料から溶出し得る場合、肝機能を損なわせる可能性がある。望ましくは、酸化亜鉛を0.01モル分率以下、例えば、0.001又は0.0001モル分率、好ましくは0モル分率とする。望ましくは、酸化鉄を0.01モル分率以下、例えば、0.001又は0.0001モル分率、好ましくは0モル分率とする。
【0079】
本開示の著者らは、血管塞栓用途に特に望ましい特性を有するガラス組成物を確認した。該ガラス組成物は、表1に示されている。
【0080】
処方“TRCR#”及び“BIC#”の組成物は、出発物質の相対量に基づいて報告されているが、実際に製造されたガラスの組成は理論組成と若干異なることがある。
【0081】
処方“BIC#-IGP”の組成物は、45μm以下の粒子を回収するために篩にかけられた対応する不規則なガラス粉末の測定値に基づいて報告されている。これらの組成物は、製造されたガラスの実際の組成をより正確に反映していると考えられる。
【0082】
処方“BIC#-MPS”の組成物は、対応するBIC#-IGPの組成物から製造された実質的に球形の微粒子ガラス材料の測定値に基づいて報告されている。ガラス微小球は、篩にかけられ、平均サイズ範囲が20μm~30μmの微小球で得られた。不規則なガラス粒子の組成物は、粒子を火炎処理して不規則な粒子の表面を再溶融させ、続いて、実質的に球形の粒を形成させると変化する。
【0083】
処方“BIC#-MPC”の組成は、対応するBIC#から製造した後処理材料の測定値に基づいて報告されている。実質的に球形の微粒子ガラス材料は、カルシウム及びマグネシウムを含まない0.2g/mLリン酸緩衝生理食塩水(CMF-PBS)を用いて、50℃、72時間~366時間、後処理されている。火炎処理粒子の組成は、火炎処理の結果生じる表面反応析出物を低減するように粒子が処理されたときに変化する。
【0084】
処方“BIC2-MPC#”の組成物は、不規則なBIC2ガラス粉末から製造され、実質的に球形への処理後の微粒子ガラス材料の測定値に基づいて報告されている。ここで、処方で組成が異なるのは、異なる火炎処理パラメータの結果である。不規則なBIC2ガラス粉末は、45μm以下の粒子を回収するために篩にかけられ、不規則な粒子の表面を再溶融し実質的に球形の粒を形成するように火炎処理され、平均サイズ範囲が20μm~30μmの微小球を得るために篩にかけられ、カルシウム及びマグネシウムを含まない0.2g/mLリン酸緩衝生理食塩水(CMF-PBS)を用いて80℃で72時間後処理されたものである。
【0085】
ガラスの組成は、(a)出発試薬の一部と、(b)製造されたガラスの測定された組成と、(c)塞栓血管形成に有用な実質的に球形に処理された微粒子とを比較した際異なっていてもよいが、本開示において、これらのすべては、種々の製造段階における同一の血管塞栓生成物を指すものと理解されるべきである。従って、例えば、理論モル%に基づく“約0.69モル分率のSiO”のBIC2組成物は、(i)“約0.66モル分率のSiO”を有する不規則なガラス粉末と、(ii)“約0.73モル分率のSiO”を有する処理後のガラス材料と、(iii)“約0.74モル分率のSiO”、“約0.77モル分率のSiO”、“約0.79モル分率のSiO”、又は“約0.80モル分率のSiO”を有する処理後のガラス材料とを意味する。特に明記しない限り、本明細書で議論されるモル%/分率は、出発試薬の量に基づく理論%/分率を意味する。
【表1】
【0086】
45μm以下の微粒子を回収するために篩にかけられた不規則な微粒子ガラス材料の密度、実質的に球形の微粒子ガラス材料の密度、及び実質的に球形のガラス組成物の放射線不透過性が、表2に示されている。
【表2】
【0087】
種々の試験では、以下でより詳細に開示されるように、TheraSpher(商標)イットリウム-90の微小球で使用されるガラスがコントロールとして使用されており、該微小球は、40質量%のY、20質量%のAl、及び40質量%のSiO(本明細書では“YAS4”又は“COMP1”と称する)を含む。YAS4の不規則ガラス粉末は、45μm以下の粒子を回収するために篩にかけられ、65.795mol%のSiO(36.56質量%)、19.111mol%のAl(20.90質量%)、及び15.095mol%のY(42.40質量%)の測定組成を有していた。実質的に球形の微粒子YAS4ガラスは、64.448mol%のSiO(38.12質量%)、19.492mol%のAl(20.89質量%)、及び16.060mol%のY(40.70質量%)の測定組成を有していた。
【0088】
上記の例示的なガラス組成物とは対照的に、YAS4ガラスは、45μm以下の粒子を回収するために篩にかけられた不規則なガラス粉末で3.3466±0.0060g/cmの密度を有し、実質的に球形の材料で3.3078±0.0077g/cmの密度を有し、CT放射線不透過性測定法を用いて測定した際に、実質的に球形の材料の70kVpでのCT放射線不透過性は10,387±245HUであり、実質的に球形の材料の120kVpでのCT放射線不透過性は5,955±202HUである。
【0089】
ガラスの処方TRCR3、TRCR9、TRCR12、TRCR13、TRCR16、TRCR23、BIC1-MPS、BIC2-MPS、及びBIC3-MPSはすべて、120kVpで13,000HUを超えるCT放射線不透過性を示し、これは、コントロールのYAS4ガラス組成物の放射線不透過性の2倍を超えている。これらの処方のうち、TRCR3、TRCR9、TRCR13、BIC1-MPS、BIC2-MPS、及びBIC3-MPSは、実質的に球形の微粒子ガラス材料で、コントロールYAS4ガラス組成物の密度の10%以内の密度を有する。
【0090】
ガラス材料
本開示による実質的に球形の微粒子は、塞栓血管形成に有用であり得、第1にバルクガラスを形成することによって製造される。次いで、バルクガラスは、本開示による不規則な微粒子ガラス材料を提供するために加工される。不規則な微粒子は、実質的に球形の微粒子を形成するために火炎処理される。実質的に球形の微粒子を形成するための不規則なガラス微粒子の火炎処理は、当技術分野において周知である。火炎処理の例には、火炎球形化、超音波噴霧熱分解、液滴発生器、及び垂直熱炎が含まれる。本開示の種々のガラス組成物は、種々の温度で融解し得る。不規則な微粒子の表面を再溶融するために使用される火炎処理加工は、対象となる不規則なガラス微粒子の表面を再溶融可能な温度を提供するために、プロパン-酸素又はアセチレン-酸素などの種々のガス又は混合ガスを使用することができる。火炎処理によって球形化される微粒子は、火炎処理の結果として生じる表面の反応堆積物を減少又は除去するように処理され得る。
【0091】
本開示の文脈において、用語“微粒子”及び“微小粒子”は、互換的に使用することができ、1200μm未満の直径を有する粒子を意味する。粒子の混合物では、該混合物は、1200μmの平均直径を有する。
【0092】
本開示は、“微小球”又は“ガラス微小球”又は“球形粒子”を参照することができるが、本開示の粒子は完全に球形である必要はないと理解されるべきである。本開示の文脈では、“実質的に球形”は、少なくとも90%の平均球形度(%SPHT)を有する粒子の混合物を意味する。球形度(%SPHT)は、ISO9276-6及びISO133322-2にそれぞれ従い、動的画像解析原理に基づいて動作するCamSizer P4(ATS Scientific, Burlington, ON)システムを用いて測定することができる。
【0093】
%SPHTは、以下の式を用いて決定することができる、
【数1】
ここで、Pは、測定された粒子突出部の境界/円周、Aは、粒子突出部により覆われた測定面積であり、理想的な微粒子の%SPHTは100%と予測される。
【0094】
用語“微小球”及び“実質的に球形の微粒子”は、互換的に使用することができ、1200μm未満の平均直径を有する実質的に球形の粒子を意味する。微粒子の混合物は、1200μm未満の平均直径を有する。
【0095】
本開示によるバルクガラスは、上述したようなガラス組成を有することができ、これは、理論的に示される構成要素のmol%を反映し得る。かかるバルクガラスの1つの具体例は、BIC2のガラスであり、0.687モル分率のSiO、0.163モル分率のNaO、0.068モル分率のBaO、約0.070モル分率のTa、及び約0.012モル分率のBの理論組成を有する。
【0096】
不規則な微粒子は、当該技術分野で周知の任意の技術、例えばZrO粉砕媒体を含む遊星型ボールミルを使用してバルクガラスを粉砕して、得られた粒子を篩にかけて所望のサイズの粒子を回収することによって製造され得る。粉砕媒体としてのZrOの使用は、バルクガラスに対する粉砕媒体の靭性のため、プロセス中の汚染物質の低減に役立つ可能性がある。本開示による不規則な微粒子の1つの具体例は、BIC2-IGPのガラスであり、0.659モル分率のSiO、0.146モル分率のNaO、0.065モル分率のBaO、約0.062モル分率のTa、及び約0.011モル分率のBを有する。他の具体的な例は、BIC1-IGP及びBIC3-IGPのガラスである。
【0097】
不規則な微粒子は、約15μm~約1200μmの平均直径を有し得る。様々なサイズの微粒子は、様々な血管塞栓プロトコルに使用され得る。本開示の微粒子は、腫瘍脈管系において正常組織よりも優先的に分布させるために選択され得る。微粒子の大きさはこの分布に影響する。本開示による微粒子は、例えば、肝腫瘍を可視化又は治療するための微小球を作製するのに有用であり、約15μm~約45μmの平均直径を有し得る。特定の例では、微粒子は、約20μm~約35μmの平均直径を有し得る。他の例では、本開示の不規則な微粒子は、約40μm~約500μm、約40μm~約300μm、約300μm~約500μm、約500μm~約700μm、又は約700μm~約1200μmの粒子を提供するために、篩にかけられてもよい。様々なサイズの微粒子から得られた微小球は、閉塞する血管の内径に応じて選択することができる。例えば、実体的な腫瘍(solid tumour)からは離れているが、腫瘍の増殖をサポートする血液を供給する血管は、腫瘍内に認められる血管よりも直径が大きいことがある。微小球が腫瘍自体を可視化するのに有用でない場合であっても、より大きな血管をブロックするために、より大きな粒子を使用することが望ましい場合がある。
【0098】
粒子サイズ及び粒子直径の文脈における“約Xμm”は、示されたサイズの試験用篩でのASTM E-11に従った許容範囲に基づいて決定されることを理解すべきである。例えば、50μm試験用篩の許容誤差は、3μmである。従って、“約50μm”とは、47μm~53μmのサイズの粒子を意味する。別の例では、35μmの試験用篩の許容誤差は2.6μmである。従って、“約35μm”とは、32.4μm~38.6μmのサイズの粒子を意味する。25μmの篩のASTM許容誤差は、2.2μmである。基準のない試験用篩(例えば、20μm未満の試験用篩)については、“約Xμm”との表示は、5~15μmで±15%、5μm未満で±50%を意味する。例えば、“約1μm”とは、0.5~1.5μmのサイズの粒子を意味する。
【0099】
不規則な微粒子は、火炎処理されて表面が再溶融され、実質的に球形の粒子を形成する。火炎処理された不規則な微粒子は、適切なサイズの不規則な微粒子をプロパン/酸素の火炎に導入し、火炎を捕集システムに向けることによる火炎球形化で達成され得る。
【0100】
本開示による実質的に球形の微粒子の1つの具体例は、BIC2-MPSのガラスであり、0.733モル分率のSiO、0.109モル分率のNaO、0.073モル分率のBaO、0.074モル分率のTa、及び0.011モル分率のBのガラス組成を有する。他の具体的な例は、BIC1-MPS及びBIC3-MPSのガラスである。
【0101】
表面反応性を低下させるためにガラス微小球を処理することは、当技術分野において周知である。該処理は、例えば、火炎処理された微粒子を、好ましくは120rpmで撹拌しながら、CMF-PBS溶液に80℃の温度で少なくとも72時間接触させ、超高純度水で洗浄することによって達成され得る。微粒子は、CMF-PBS1mLあたり0.2gの濃度であってよい。本開示による処理された微粒子の1つの具体的な例は、BIC2-MPCのガラスであり、0.739モル分率のSiO、0.086モル分率のNaO、0.085モル分率のBaO、0.085モル分率のTa、及び0.006モル分率のBのガラス組成を有する。
【0102】
球形化している不規則な微粒子は、粒子の直径が実質的に変化することが期待されない。しかしながら、球形化された粒子は、処理の前後のいずれかで篩にかけられて、所望のサイズの粒子を提供し得る。
【0103】
イメージング
本開示による放射線不透過性ガラス微小球は、放射線撮影イメージング、コンピュータ断層(CT)イメージング、コーンビームCTイメージング、又は蛍光透視イメージングなどのX線に基づくイメージングに用いられ得る。
【0104】
ガラス微小球の望ましい放射線不透過性は、使用されるイメージングのタイプ、標的となる治療領域、及び/又は微小球の推定充填密度などの臨床シナリオに依存し得る。比較的少数の微粒子が送達されている場合、微粒子が比較的広い面積にわたって分布することが期待される場合、比較的低出力のイメージング技術が使用される場合、又はこれらの任意の組み合わせの場合には、より高度の放射線不透過性のガラスが望ましい。一方、放射線不透過性が高すぎると、イメージングアーチファクトが生じる可能性があり、イメージング品質が低下するため、放射線不透過性の低いガラスは、比較的多数の微粒子が送達されている場合、微粒子が比較的小さな領域にわたって分布することが期待される場合、比較的高出力のイメージング技術が使用される場合、又はそれらの任意の組み合わせの場合に望ましい。
【0105】
45μm未満であり且つ2.7g/cm~約4.3g/cm、例えば、約2.9g/cm~約3.7g/cm、又は約3.3g/cm~約3.6g/cmの密度を有する本開示によるガラス微小球は、微小球が動脈内又は静脈内送達によって投与される用途において有用であり得る。約3.3g/cmの密度を有する本開示によるガラス微小球は、現在商業的に入手可能な放射線微粒子と実質的に同じ密度を有する。
【0106】
本開示によるいくつかのガラス微小球は、ガラス微小球が陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)、又は磁気共鳴イメージング(MRI)に影響を与えない点で、PET、SPECT、及び/又はMRIに適合し得る。
【0107】
患者の肝臓をイメージングするために、ガラス微小球が動脈内又は静脈内送達を介して患者に投与されるイメージング用途では、肝臓1グラムあたり少なくとも約750の微小球が患者に投与され得る。いくつかの例において、肝臓1グラムあたり約1000~約5000の微小球が投与され得る。典型的な成人患者では、約100万~約700万の微小球が投与され得る。
【0108】
放射線療法用混合物、組成物、送達デバイス、及び方法
放射性微粒子は、少数の場所でのみ製造されており、世界中の病院に届けるために準備されている。微粒子の比放射能は、投与における計画された時間に所望の活性を提供するように較正される。例えば、TheraSphereたるイットリウム-90のガラス微粒子は、較正時に約110GBq/gの公称比活性を有する微粒子を生成するために、イットリウム-89含有ガラス微粒子の中性子による放射化(neutron activation)によって調製され、典型的には、バイアルあたり約120万個の微粒子(約27mg中に約3GBq)から800万個の微粒子(約180mg中に約20GBq)の量で提供される。較正及び投与間の遅れに依存して、送達される有効な放射能の量は、1バイアルあたり0.17GBq(較正から9日後に注入される120万個の微粒子)から18GBq(較正から1日後に注入される800万個の微粒子)までの範囲であり得る。
【0109】
前述のように、微粒子の数を増加させると、より高い比放射能でより少ない微粒子を投与するよりも良好な腫瘍有効範囲が得られるため、所与の量の放射能の送達では、より低い比放射能を有するより多くの微粒子を投与することが望ましいと考えられる。例えば、患者に3GBqの放射能を投与するためには、全体的な比放射能が22GBq/gの微粒子が600万個投与されることが、88GBq/gで150万個の微粒子が投与されるよりも、腫瘍有効範囲において良好な結果が得られると考えられる。
【0110】
理論に拘束されることは望まれないが、本開示の著者らは、少なくともいくつかの腫瘍サイズ及び/又は血管新生の程度では、(i)放射性微粒子、及び(ii)本開示による非放射性微粒子の混合物を患者に投与することにより、個々の放射性微粒子がより高い比放射能であっても、より多くの微粒子をより低い比放射能で投与することに伴う少なくともいくつかの利点を提供できると考えている。
【0111】
本開示は、(i)放射性ガラス微粒子、及び(ii)本開示による非放射性の放射線不透過性微粒子ガラス材料の混合物を提供する。放射性ガラス微粒子は、肝臓の腫瘍を治療するのに適している。放射性ガラス微粒子及び非放射性の放射線不透過性微粒子のガラス材料は、実質的に同じサイズを有する。実質的に同じサイズの粒子は、患者への注入後に実質的に同じように挙動すると予想される。従って、実質的に同じサイズの粒子の混合物を投与することは、放射性及び非放射性粒子の均一な分布をもたらすと考えられる。
【0112】
本開示の文脈において、実質的に同じサイズを有する粒子は、(a)放射性微粒子、及び(b)放射線不透過性の非放射性微粒子の平均サイズが、これら2つの平均サイズの平均の40%以内であることを意味する。例えば、放射性微粒子は、20μmの平均直径を有し、一方で、放射線不透過性の非放射性微粒子は、30μmの平均直径を有してもよい。2つのタイプの微粒子間の10μmの差は、2つの値の平均の40%である。サイズ差が小さいほど、粒子の挙動は類似していると予想される。従って、平均サイズの差は、2つの平均サイズの10%以内であることが好ましい。
【0113】
微粒子の密度は、さらに、患者への注入後の微粒子の挙動に影響を及ぼし得る。特定の例では、本開示の放射線不透過性微粒子及び放射性ガラス微粒子は、実質的に同じ密度を有する。
【0114】
用語“粒子密度”は、単位体積あたりの個々の粒子の質量を意味する。これは、総体積あたりの多数の粒子の質量を意味する用語“かさ密度”とは対照的である。粒子密度は、材料の固有の特性であり、かさ密度は、全体積における材料の特性に依存して変化する。粒子密度は、標準物質の密度に対する物質の密度の比である比重の観点で議論され得る。本開示の文脈では、比重は水に関するものである。本開示の文脈では、実質的に同じ密度を有する粒子は、平均の約30%以内、好ましくは約15%以内の粒子を意味する。
【0115】
(a)放射性微粒子、及び(b)放射線不透過性の非放射性微粒子の粒子密度は、平均の約30%以内、好ましくは約15%以内であってもよい。例えば、放射性微粒子は3.3g/cmの粒子密度を有してもよく、一方で、放射線不透過性の非放射性微粒子は、3.9g/cmの粒子密度を有してもよい。2つタイプの微粒子間の0.6g/cmの差は、これら2つの値の平均の16.7%である。
【0116】
本開示による混合物は、本明細書に開示された任意の放射線不透過性ガラス組成物を用いて作製され得る。
【0117】
混合物は、放射性付与前のガラス微粒子を中性子の放射線に曝露して、放射性ガラス微粒子を形成し、放射性ガラス微粒子と本開示の放射線不透過性微粒子ガラスとを混合することによって調製することができる。
【0118】
1つの特定の例では、混合物は、(i)約40質量%のSiO、約20質量%のAl、及び約40質量%のY(約0.170モル分率のY、約0.189モル分率のAl、及び約0.641モル分率のSiOに相当)を含む実質的に球形の放射性イットリウム-酸化アルミノケイ酸塩ガラス微粒子、及び、(ii)約0.741モル分率のSiO、約0.086モル分率のNaO、約0.085モル分率のBaO、約0.085モル分率のTa、及び約0.006モル分率のBを含む実質的に球形の放射線不透過性微粒子ガラス材料を含む。
【0119】
イットリウム-89は、微粒子に含まれるイットリウム-89を中線子束に曝露することによってイットリウム-90に変換することができる。得られた微粒子の比放射能は、束のレベル及び曝露時間に依存する。例えば、イットリウム-89は、名目上1014中性子/cm/秒の束に曝露されて、中性子の放射線を何日間も作用させて、150GBq/gを超える比放射能に達し得る。
【0120】
腫瘍有効範囲の改善、例えばより均一な微粒子の分布は、組成物中の微粒子の総質量の約80%~約10%(w/w)の量の放射性微粒子を有する混合物を用いて達成され得る。本開示の文脈において、改善についてのあらゆる言及は、追加の非放射性微粒子の非存在下での同数の放射性微粒子との比較であることが理解されるべきである。
【0121】
140GBq/gのような高い比放射能を有する放射性微粒子では、混合物は、より少ない放射性微粒子(約10質量%など)を有してもよい。対照的に、4GBq/gのような低い比放射能を有する放射性微粒子では、混合物は、より多くの放射性微粒子(約80質量%など)を有してもよい。特定の例において、例えば約88GBq/gの比放射能を有する放射性微粒子では、混合物は、約25質量%の放射性微粒子を有してもよい。
【0122】
“比放射能”とは、放射性微粒子の単位質量あたりの放射能を意味し、一方で“全体比放射能”とは、放射性及び非放射性微粒子の混合物の単位質量あたりの放射能を意味すると理解されるべきである。例えば、10GBq/gの比放射能を有する放射性微粒子1グラムを取り、これらの微粒子を1グラムの非放射性微粒子と混合すると、全体として5GBq/gの全体比放射能を有する微粒子の混合物が得られる。
【0123】
放射性及び非放射性粒子の混合物は、所望の放射能で、種々の数の総微粒子を処方することによって調製され得る。微粒子の総数は、腫瘍サイズ及び/又は血管新生の程度に基づいて選択され得る。例えば、0.5グラムの微粒子中に10GBqの放射能を有する処方は、特定の程度の血管新生で腫瘍を治療するのに望ましく、一方、1グラム中に10GBqの放射能を有する処方は、より血管新生された腫瘍を治療するのに望ましい場合がある。
【0124】
本開示のさらに別の態様では、混合物が放射性ガラス微小球を含む場合、治療用の量の混合物を哺乳動物に投与することによって、放射線が哺乳動物に送達される。かかる方法は、追加的に、X線に基づく放射線イメージング技術を用いて哺乳動物をイメージングすることを含んでもよい。かかる微粒子の混合物の治療用の量での患者への投与は、組織内の非放射性の放射線不透過性微粒子の測定された分布に基づいた、イメージング不可の放射性微粒子による組織への放射線の送達線量の計算を可能にし得る。
【0125】
理論に縛られることを望まれないが、本開示の著者らは、さらに、放射性及び非放射性微粒子の混合物を投与することの少なくともいくつかの利点が、放射性及び非放射性微粒子の別々の投与の際に得られ得ると考えている。
【0126】
いくつかの態様では、本開示は、放射性微粒子及び非放射性微粒子の混合物を含む治療用又は診断用組成物を提供し、ここで、非放射性微粒子の少なくともいくつかは、本明細書に開示されたガラス材料である。
【0127】
放射性微粒子及び非放射性微粒子は、粒子密度において差があり、該差は、これら2つの粒子密度の平均の30%以内、好ましくは15%以内である。
【0128】
放射性微粒子は、約10~約1200ミクロンの平均直径、例えば、約20~約40ミクロンの平均直径を有してもよい。非放射性微粒子は、約10~約1200ミクロンの平均サイズ、例えば、約20~約40ミクロンの平均直径を有してもよい。放射性微粒子及び非放射性微粒子は、平均サイズに差があってもよく、該差は、これら2つの平均サイズの平均の40%以内である。
【0129】
いくつかの例では、放射性微粒子及び非放射性微粒子は、導管を通る液体中に流したときに、実質的に同じ抵抗を有する。
【0130】
当業者は、導管を通る液体中を流れる物体の抵抗は、抗力係数によって反映され、抗力係数は、表面摩擦及び形状抗力の関数であることを理解するであろう。従って、導管を通る液体中を流れる微粒子の抵抗は、例えば、微粒子のサイズ、表面積、形状、密度、及び/又は微粒子の表面状態によって影響され得る。当業者は、さらに、抗力を増加させるために特徴を変化させることは、抗力を減少させるために別の特徴を変化させることによって相殺され得るので、2つの異なる粒子は実質的に同じ抵抗を有し得ることを容易に理解するであろう。例えば、第1の粒子の表面状態が第2の粒子の表面状態よりも十分に滑らかである場合、第1の粒子が第2の粒子より大きいとしても、2つの粒子は、なお実質的に同じ抗力係数を有し得る。
【0131】
本開示の文脈では、液体を通る微粒子のボーラス(bolus)が設定距離落下するのに要する時間は、導管を通る液体中を流れる微粒子の抵抗を表し得る。この時間は、蒸留水を充填した透明カラムに既知数の微粒子を充填することによって測定することができる。微粒子のボーラスの高さがカラムの内径の2~5倍になるように、微粒子の数を選択すべきである。いったん微粒子をカラムの底部に沈降させ、カラムを反転させ、重力に対抗する抗力によって微粒子を蒸留水中に落下させる。微粒子が遷移点(transition point)を落下して通過するのに要する総時間を測定する。遷移点は、微粒子のボーラスの頂点から測定され、カラムの内径の少なくとも100倍とされる。例えば、内径0.5cmのカラムでは、沈降した微粒子は、1.5cmの高さであってもよく、微粒子のボーラスが落下する総時間は、すべての微粒子が、沈降した微粒子の頂点から50cm離れた点を落下して通過するのに要する時間である。
【0132】
この総落下時間は、同じ条件下(すなわち、同じ液体、同じカラム、同じ遷移点)で試験された実質的に等しい数の異なる微粒子群の総落下時間と比較される。相対的な抗力比は、第1の微粒子群の落下時間を、第2の微粒子群の落下時間で除すことによって計算される。本開示の文脈では、第1及び第2の微粒子は、相対的な抗力比が約0.95:1~約1:0.95である場合に、導管を通る液体中を流れる際、実質的に同じ抵抗を有すると考える。
【0133】
いくつかの例では、放射性微粒子は、組成物における微粒子の総質量に対して、約10%~約80%、例えば、約25%に構成される。
【0134】
いくつかの例では、放射性微粒子は、診断用放射性微粒子である。いくつかの例では、放射性微粒子は、治療用放射性微粒子である。
【0135】
診断用放射性微粒子は、銅-67、ホルミウム-166、インジウム-111、ヨウ素-131、ルテチウム-177、モリブデン-99、リン-32、ルビジウム-82、テクネチウム-99m、及びタリウム-201からなる群から選択される放射性同位体の1以上を含んでいてもよい。
【0136】
治療用放射性微粒子は、アクチニウム-225、ビスマス-213、銅-67、インジウム-111、ヨウ素-131、ヨウ素-125、ガドリニウム-157、ホルミウム-166、鉛-212、ルテチウム-177、パラジウム-103、リン-32、ラジウム-223、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、ストロンチウム-89、及びタングステン-188からなる群から選択される1以上の放射性同位体を含んでいてもよい。
【0137】
放射性ガラス微粒子は、実質的に球形であり得る。非放射性微粒子は、実質的に球形であり得る。
【0138】
別の態様では、本開示は、上記のように、放射性微粒子及び非放射性微粒子の混合物を患者に投与することを含む方法を提供し、ここで、投与は、血管内送達、腹腔内送達、又は経皮送達によるものである。
【0139】
さらに別の態様では、本開示は、放射性微粒子及び非放射性微粒子の混合物の患者への血管内送達、腹腔内送達、又は経皮送達のための送達デバイスを提供する。送達デバイスは、混合輸送媒体に流体的に結合可能であり、混合輸送媒体に流体的に結合可能な流体入口、流体出口、流体入口及び流体出口に流体的に結合した流体ミキサー、流体ミキサーに流体的に結合した放射性微粒子供給源、及び流体ミキサーに流体的に結合した非放射性微粒子源を含む。放射性微粒子源は、非放射性微粒子源とは区別されるものである。流体ミキサーは、放射性微粒子と非放射性微粒子とを混合し、混合輸送媒体を利用して、流体出口から放射性微粒子と非放射性微粒子との混合物を送達する。非放射性微粒子の少なくともいくつかは、本開示によるガラス材料から構成される。
【0140】
さらに別の態様では、本開示は、放射性微粒子及び非放射性微粒子の混合物の患者への血管内送達、腹腔内送達、又は経皮送達のための送達デバイスを提供する。送達デバイスは、輸送媒体に流体的に結合可能な少なくとも1つの流体入口、少なくとも1つの流体入口に流体的に結合した放射性微粒子源、少なくとも1つの流体入口に流体的に結合した非放射性微粒子源、放射性微粒子源に流体的に結合した第1の流体出口、及び非放射性微粒子源に流体的に結合した第2の流体出口を含む。放射性微粒子源は、非放射性微粒子源とは区別されるものである。非放射性微粒子の少なくともいくつかは、本開示によるガラス材料から構成される。いくつかの例では、送達デバイスは、単一の治療セッションにおいて放射性微粒子及び非放射性微粒子を送達する。いくつかの例では、第1の流体出口及び第2の流体出口は、互いに近接している。本開示の文脈では、例えば単一の治療セッションの過程で、患者に放射性微粒子及び非放射性微粒子を実質的に同時に投与可能な場合に流体出口は互いに近接していると理解されるべきである。
【0141】
送達デバイス中の放射性微粒子は、本明細書に開示された任意の放射性微粒子であり得る。送達デバイス内の非放射性微粒子は、本明細書に開示されている任意の非放射性微粒子であり得る。いくつかの例では、放射性微粒子は、送達デバイス中の微粒子の総質量に対して約10%~約80%、例えば、約25%に構成される。
【0142】
さらに別の態様では、本開示は、(i)放射性微粒子の第1の集合体と(ii)非放射性微粒子の第2の集合体とを混合し、治療用又は診断用に適切な量の混合物を患者に投与することを含む方法を提供する。少なくともいくつかの非放射性微粒子は、本開示によるガラス材料から構成される。前記方法で使用される放射性微粒子は、本明細書に開示された任意の放射性微粒子であってもよい。前記方法で使用される非放射性微粒子は、本明細書に開示された任意の非放射性微粒子であってもよい。いくつかの例では、放射性微粒子は、本方法で使用される微粒子の総質量に対して、約10%~約80%、例えば、約25%に構成される。投与は、血管内送達、腹腔内送達、又は経皮送達によることができる。
【0143】
他の態様では、本開示は、治療用又は診断用に適切な量の微粒子を患者に投与する方法を提供する。該方法は、非放射性微粒子を患者に投与すること、及び最初に非放射性微粒子を検出することなく放射性微粒子を患者に投与すること、又は、放射性微粒子を患者に投与すること、及び最初に放射性微粒子を検出することなく非放射性微粒子を患者に投与すること、のいずれかを含む。非放射性微粒子の少なくともいくつかは、本開示によるガラス材料から構成される。投与は、血管内送達、腹腔内送達、又は経皮送達による。非放射性微粒子の投与経路は、放射性微粒子の投与経路と同じである。
【0144】
いくつかの例では、前記方法は、非放射性微粒子及び放射性微粒子の同時投与を含む。他の例では、前記方法は、非放射性微粒子及び放射性微粒子の連続投与、又は放射性微粒子及び非放射性粒子の連続投与を含む。
【0145】
さらに別の態様では、本開示は、治療用又は診断用に適切な量の微粒子を投与する方法を提供する。該方法は、(i)放射性微粒子の第1の集合体、及び(ii)非放射性微粒子の第2の集合体の患者への同時投与を含む。非放射性微粒子の少なくともいくつかは、本開示によるガラス材料で構成される。
【0146】
いくつかの例では、放射性微粒子の第1の集合体は、非放射性微粒子の第2の集合体とは区別されるものである。放射性微粒子の第1の集合体及び非放射性微粒子の第2の集合体は、混合物として投与することができる。
【0147】
さらに別の態様では、本開示は、治療用又は診断用に適切な量の微粒子を投与する方法を提供する。該方法は、単一の治療セッションでの非放射性微粒子及び放射性微粒子の患者への連続投与を含む。非放射性微粒子の少なくともいくつかは、本開示によるガラス材料から構成される。
【0148】
さらに別の態様では、本開示は、(i)治療用放射性微粒子、次いで(ii)非放射性微粒子の患者への連続投与を含む方法を提供する。非放射性微粒子の少なくともいくつかは、本開示によるガラス材料から構成される。
【0149】
いくつかの例では、連続投与は、非放射性微粒子及び放射性微粒子の間欠投与を含む。間欠投与は、放射性微粒子及び放射性微粒子の交互投与を含み得る。
【0150】
いくつかの例では、連続投与は、次のタイプの微粒子の投与前に、1タイプの微粒子の全ての投与を含む。例えば、連続投与は、放射性微粒子のいずれかを投与する前に、非放射性微粒子のすべてを投与すること、又は、非放射性微粒子のいずれかを投与する前に、放射性微粒子のすべてを投与することを含み得る。
【0151】
本開示による方法によれば、治療に適切な量の放射線を患者に送達することができ、又は、診断に適切な量の非放射性微粒子を患者に送達することができる。
【0152】
本開示による方法では、投与は、血管内送達、腹腔内送達、又は経皮送達によることができ、放射性微粒子及び/又は非放射性微粒子は、上述のようなものであってもよく、送達される微粒子の総質量に対して約10%~約80%、例えば、約25%は、放射性微粒子であってもよく、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0153】
上記の説明は、放射性微粒子及び非放射性微粒子を投与する方法に関するが、本開示は、開示された方法において有用な微粒子を含む微粒子の対応する「使用」、及び、開示された方法において有用な投与可能な処方の製造における微粒子の使用を同様に意図している。
【0154】
本開示の文脈において、本開示のこのセクションで議論される非放射性微粒子は、「ガラス材料」と題する上記セクションで議論されるガラス材料のいずれかの特徴の1つ又は組み合わせを有し得ることが理解されるべきである。例えば、非放射性微粒子は、上記の微粒子、微小球、ガラス微小球、又は球形の粒子に関連する特徴のいずれか又はすべてを有し得る。
【0155】
本開示の文脈において、本開示のこのセクションで議論される放射性微粒子は、本開示で議論される放射性ガラス材料のいずれかの特徴の1つ又は組み合わせを有し得ることが理解されるべきである。
【0156】
実施例
【0157】
不規則なガラス粉末及び微小球の合成
本開示に従って、種々のガラスを合成した。TRCR#及びBIC#のガラスの理論組成を上記の表1に示した。加えて、比較用のガラスCOMP#も合成した。これらの比較例の理論的組成を表3に示した。
【表3】
【0158】
45μm以下の微粒子を回収するために篩にかけた不規則な微粒子ガラス材料の密度、実質的に球形の微粒子のガラス材料の密度、及び実質的に球形のガラス組成物の放射線不透過性を表4に示した。
【表4】
【0159】
比較例“COMP1”は、米国特許第4,789,501号に開示されるYAS4に対応する。このガラスの臨床的有用性及び既知の組成-構造-特性の関係性のために、本開示の著者らは、この比較例を用い、実質的に同等の微小球密度(±10%)、強化された放射線不透過性、許容可能なin vitro細胞毒性、許容可能な血液適合性、及び/又は許容可能な遺伝毒性を有するガラス組成物を確認した。理論に拘束されないが、本開示の著者らは、これらの要件の多く又はすべてを満たすガラス組成物が、経動脈的放射線塞栓術における適用に有用であると期待している。
【0160】
ガラス合成のために、分析グレードの試薬を、表1及び表3に概説した理論組成に従って計量した。1時間以上均一にブレンドした後、試薬を白金ロジウムるつぼ(50cc~200cc)に配置し、電気炉(SheffieldのCarbolite Furnaces, UK)を用いて焼成(1500℃~1600℃、3時間~5時間)し、次いで注射用水(USP, Ph. Eur. Grade,
Rocky Mountain Biologics, MT, US)にショッククエンチした。得られた不規則なガラス粉末をオーブン(120℃)で一晩乾燥させた。
【0161】
本開示の例示的なガラスの全て、並びに、COMP1及びCOMP3は、ショッククエンチの前に、容易に溶融し、非粘性流体を提供した。COMP2のガラスは、溶融せず、相分離し、又は粘性流体を提供した。
【0162】
種々の溶融物からの不規則なガラス粉末を混ぜ合わせ、ZrO粉砕媒体を含む遊星ボールミルを用いて1ロットとして粉砕した。得られた砕かれた不規則なガラス粉末を篩にかけ、45μm以下の粒子を回収した。
【0163】
次に、適切に分類した不規則なガラス粉末を、酸素及びプロパンの流れを適切に制御したプロパン/酸素の火炎に導入した。材料を再溶融し、別名球形化として知られている加工において、球形の粒を表面張力によって形成した。バーナーの炎を、ガラス微小球が炎から放出されるときにガラス微小球を回収するステンレス鋼の回収システムにむけた。その後、ガラス微小球を篩にかけ、平均サイズ範囲20μm~30μmの微小球を得た。
【0164】
X線回折
不規則なガラスの粉末及び/又は微粒子のX線回折(XRD)測定を、X線発生器(30kV;10mA)に結合され、CuターゲットX線管を備えたBruker D2 Phaser回折計(Bruker AXS Inc., Madison, WI)を用いて実施した。不規則なガラス粉末又は微粒子を中空のゼロバックグラウンドホルダーの中へプレスすることによって各実験材料の試料を調製した。粉末回折粉末を走査角範囲10°<2θ<100°、ステップサイズ0.02°で取得した。XRDスペクトルの収集時間は4930秒とした。
【0165】
ヘリウムピクノメトリー
不規則なガラス粉末及び/又は微粒子の密度を、ヘリウムピクノメトリー(AccuPyc II 1340, Micromeritics)を用いて測定し、不規則なガラス粉末の形態ではクエンチ後の材料で記録した10~60回の測定の平均値(±標準偏差SD)を用い、最終の微粒子の形態では10回の測定(±SD)の平均値を用いた。
【0166】
示差走査熱量測定
不規則なガラス粉末の熱特性について、Netzsch Pegasus F404示差走査熱量計(DSC、Burlington、MA)によって特徴づけた。周囲温度から1000℃まで、加熱速度10℃/分でDSC測定を行い、Proteus 6.0ソフトウェアを用いて、開始時(Tg、開始時)及び中間点(Tg、中間点)のガラス転移温度をグラフで決定した。本研究で使用したDSCの許容誤差は2%である。
【0167】
微小球の処理
球形化の結果として生じるいかなる表面反応堆積物も実質的にない、実質的に平滑な表面を得るために、火炎処理した微小球をカルシウム及びマグネシウムを含まないリン酸緩衝液(CMF-PBS、製品コード: MT21040CV, Corning (商標), NY, US)中で0.2g/mLの割合で抽出することにより、球形化後の処理加工を行った。
【0168】
初めの実験は、微小球を密閉容器内で振とう水浴中50℃で、72±2時間、120±2時間、240±2時、288±2時間、360±2時間、120rpmでの連続撹拌下で抽出した。その後のさらなる分析では、製造向けに設計された処理工程を容易にする可能性を検討するために、微小球を密閉容器内で振とう水浴中の加速条件(80℃)で、24±2時間及び72±2時間、120rpmでの連続撹拌下で抽出して完了した。
【0169】
抽出後、微粒子をCMF-PBSから分離し、注射用滅菌水(USP, Ph. Eur.グレード、Rocky Mountain Biologics, MT, US)で洗浄(10回)した後、恒量(質量差≦0.1%)になるまで120±2℃で乾燥した。
【0170】
その後、ガラス微小球を分析又は再粉砕するために保存した。最終の平均サイズが20μm~30μmの微粒子を確保するために、バルク保存用の洗浄済みガラス保存バイアルに詰める前に、サイズを選別した。
【0171】
微小球の清浄度(すなわち、目視検査によって表面の反応堆積物及び/又は汚染物が実質的にないこと)を走査型電子顕微鏡(SEM)分析により確認した。上述の72±2時間、120±2時間、240±2時間、288±2時間、及び360±2時間の処理の研究中に得られた微粒子の抽出物について、ISO17025認定試験所(NSL Analytical, 4450 Cranwood Pkwy, Warrensville Heights, OH, US)において、検証された試験プロトコルを用いて、ICP-OESによりSi、Na、Ta、B、及びBa元素の濃度を分析した。
【0172】
組成分析
組成分析のために、不規則なガラス粉末及び/又は微小球を、融合/マイクロ波酸分解によって試料調製に供し、ISO17025認定試験所(米国NSL Analytical, 450 Cranwood Pkwy, Warrensville Heights, OH)において、検証された試験プロトコルを用いて、ICP-OESにより分析した。
【0173】
走査型電子顕微鏡
不規則なガラス粉末及び/又は微小球をカーボンコーティングした形態について、1.5KV~10.0KVの加速電圧、約15μA~22μAの発光電流、及び約12mm~14mmの作動距離で動作する日立S-4700電界放出SEM(FE-SEM)を用いて調べた。そして、250倍及び1000倍の倍率でSEM画像を得た。
【0174】
体軸コンピュータ断層撮影(CT)スキャン及びMRIの安全性評価
バルク微小球のCT放射線不透過性を定量的な放射線不透過性測定により評価し、ここで、該測定では、滅菌生理食塩水6μL中に500mgの微粒子を含む1.2mLのガラス製v-vial(製品コード:Z115061, Sigma Aldrich, カナダ)を用いて、それぞれの軸方向CTスキャン(1mmスライス厚、ピッチ=0.5、70kVp及び120kVp)から記録された重要な5つの反復領域(ROL、n=5)から得られたハンスフィールドユニット(HU)として示した。すべての測定は、平均直径(±SD)が20μm~30μmの範囲内の実験材料について実施し、Siemens Somatom Definition AS+スキャナー(Siemens Healthcare, Erlangen, ドイツ)及びスキャンに使用した拡張HUレンジオプションを用いた。
【0175】
定量的なCTの放射線不透過性及びMRIの安全性に対する微小球の濃度の影響を調べるために、BIC1~BIC3とCOMP1コントロールとの微小球を5つの異なる濃度で(次の体積分率:1.25%、2.5%、5%、7.5%、及び10%で)調製した(3回)。ゲル専用チューブ(0%)もベースラインコントロールとして使用した。すべての体積分率を表2及び表4の微小球の密度を用いて計算し、1.5mLの8%ゼラチン中で調製し、5mmのNMRチューブ内で激しく振り混ぜたゼラチンに微小球を添加し、微粒子分布の均一性を最適化した後、氷上に迅速にセットした。チューブが過度に不均一である場合、ゲルを融解し、微小球を再分散させ、続いて氷を用いてリセットした。微小球の密度によっては、チューブの周囲及び底部に微小球の多少の凝集が形成した。
【0176】
CTデータは、Trifoil Preclinical PET/CTスキャナーを用いて、100μmのサンプル分解能で80kVpで取得し、その後の分析のためにすべてのCTイメージをHUに変換した。MRIデータは、INOVAコンソールを用いた3T Varian MRIシステムで取得した。バルクT1、T2、及びT2*の定量測定のために、鳥かご型RF送受信コイルを用い、バルクの測定は、コイル内の単一のスライスに限定されないチューブの部分を示し、微小球のバルクがコイルのイメージング領域に入るようにチューブを配置した。定性的なMRI測定は、標準傾きエコーシーケンス(T2強調)、スピンエコーシーケンス(T2強調)、及び短いTR解剖学的ローカライザースキャン(T1強調)を用いても取得した。科学的な比較を改善するために、すべての定量的パラメータは、R1、R2、又はR2と記されることに留意されたい。ここで、緩和度(R)は時間減衰定数(T)に反比例し、R1は1/T1、R2は1/T2、R2は1/T2である。
【0177】
次に、CT放射線不透過性、R1緩和度、R2緩和度、R2緩和度、及び磁化率の5つの画像特性を評価した。各特性について、例えば、各チューブのR1(又はR2など)を測定し、コントロールゲルチューブと比較し、デルタ(D)R1を計算した。次に、各チューブセットについて、体積分率に対してDR1をグラフ化し、線形回帰線をプロットした。
【0178】
In vitroでの細胞毒性
実験材料に応答する哺乳動物細胞単層、L929マウス線維芽細胞の生物学的反応性を、
ISO10993-5:2009、医療機器の生物学的評価-パート5:検証された生体適合性試験室を採用したin vitro細胞毒性試験(Toxikon Corporation, Bedford, MA, and Nelson Labs, Salt Lake City, UT, Nelson Labs, Salt Lake City, UT, US)に従って決定した。
【0179】
ISO10993-12: 2012、医療機器の生物学的評価-パート12:試料調製及び標準物質に従って、抽出比0.2g/mLの質量/体積を採用して実験材料を調製した。試験系の機能性を検証するために、陽性(天然ゴム)及び陰性(プラスチック)コントロール物質を調製した。
【0180】
実験材料及びコントロール材料の抽出物を細胞培養の維持培養液に置き換えて使用した。実験材料の抽出物を、5%ウシ血清(1XMEM5)の有り無しで、血清添加(完全)最小必須培地(MEM)中、100%(NEAT)、50%、25%、及び12.5%の一連の希釈液で試験した。
【0181】
すべての培養液を、37±1℃、5±1%COを含む加湿雰囲気中、24±2時間(最初のスクリーニング中の処理前の微小球の場合)又は72±2時間(微小球の最適化を促進した処理後の微小球の場合)、少なくとも6回反復することで培養した。
【0182】
抽出物への曝露後の細胞の生存能力を、生体染色色素、MTT試薬を取り込む能力によって測定した。この色素を細胞に添加し、生存細胞に積極的に取り込ませた。生存細胞数は、抽出後の570nmでの光度測定によって決定される色彩強度に相関がある。
【0183】
In vitroでの遺伝毒性
本研究は、ISO10993-3:2014「医療機器の生物学的評価-パート3:遺伝毒性、発がん性、及び生殖毒性の試験」、及び、経済協力開発機構(OECD)471、及び、化学物質の試験ガイドライン「認定生体適合性試験機関(NAMSA Corporation, Northwood, OH, US)を用いた細菌復帰突然変異試験」の要件を、部分的に満たすよう実施した。
【0184】
被験物質、コントロール、及び実験用ブランク(被験物質を含まない抽出溶媒)は、ISO10993-12:2012「医療機器の生物学的評価-パート12:DMSO及び生理食塩水中、50℃、72時間の連続撹拌下での試料調製及び標準物質」に従って、0.2g/mLの質量/体積抽出比を採用して、調製した。抽出後、すべての抽出物の色、濁度、及び粒子を目視で検査し、使用前に3時間未満室温で維持した。抽出物は、遠心分離せず、ろ過せず、又は代替のその他の方法に供しなかった。投与及び試験に先立ち、試験菌株培養液(ネズミチフス菌試験菌株TA98、TA100、TA1535、及びTA1537、並びに、大腸菌試験菌株WP2uvrA)を、遺伝子マーカーについてチェックした。
【0185】
これに続いて、溶融したトップアガーに、ネズミチフス菌又は大腸菌試験菌株のそれぞれの、ヒスチジン-ビオチン溶液又はトリプトファン溶液を添加した。この添加により、プレート上の細菌は、ダークフィールドコロニーカウンター(darkfield colony counter)で検査可能であり、肉眼で見ることが可能な背景細菌叢を形成する数回の分裂を起こした。2.0mLの溶融したトップアガーを添加した別々の試験管に、5つの試験菌株それぞれの0.1mL培養液及び0.1mLDMSO又は生理食塩水被験物質抽出物を接種した。代謝活性化系を提供する注射用滅菌水又はS9ホモジネートの0.5mLのアリコートを必要に応じて加えた。この混合物を、試験番号、適切な試験菌株、及びS9代謝活性化系(該当する場合)でラベル化した最小E培地3枚に注いだ。各陰性コントロール及び6つの陽性コントロールについても、並行して試験を実施した。ヒスチジンを含まない培地プレート(ネズミチフス菌用)及びトリプトファンを含まない培地プレート(大腸菌用)を、次のように3回調製した。
I.S9活性の有り無しにおけるDMSO及び生理食塩水の被験物質抽出物
II.S9活性の有り無しにおける陰性コントロール
III.S9有りにおけるベンゾ[a]ピレン及びTA98株を有するS9活性有りにおける2-ニトロフルオレン
IV.S9有りにおける2-アミノアントラセン及びTA100株を有するS9活性無しにおけるアジ化ナトリウム
V.S9有りにおける2-アミノアントラセン及びTA1535株を有するS9活性無しにおけるアジ化ナトリウム
VI.S9有りにおける2-アミノアントラセン及びTA1537株を有するS9活性無しにおけるICR-191
VII.S9有りにおける2-アミノアントラセン及びWP2uwAを有するS9活性無しにおけるMMS
【0186】
プレートを37℃で2日間培養した。培養期間後に、復帰突然変異体の平均数及び算出された標準偏差によって、各プレートの復帰突然変異体コロニーを記録した。次に、試験に用いた各菌株について、試験プレート上の復帰突然変異体の平均数を陰性対照プレート上の復帰突然変異体の平均数と比較し、また、背景細菌叢の特性も記録した。
【0187】
In vitroでの血液適合性
この手順は、ASTM F756:2017に概説されている原則を採用する。ASTM法は、ISO10993-4:2017、「医療機器の生物学的評価-パート3:血液との相互作用の試験の選択」に準拠して、認証された生体適合性試験所(Nelson Labs、Salt Lake City、UT及びNelson Labs LLC、Salt Lake City、UT)を使用し、米国FDAのGMP規則21CFRパート210、211及び820に準拠し、手順から逸脱することなく、検証されている。試験は、ASTM F756:2017に概説されている原則に従ったもので、抽出溶媒としてカルシウム及びマグネシウムを含まないPBSを使用し、ISO10993-4:2017(血液活性の相違により、可能であればヒト血液を使用すべきであると述べている)に準拠したクエン酸添加ヒト血液を用いてASTM法を検証した。
【0188】
採血では、3名のドナーからの同量の血を9:1の比で0.1Mクエン酸ナトリウム(血液に対して3.2%抗凝固剤)を含むバキュテイナに採取した。採取した血液は、血液を用いた検査が実施されるまで冷蔵し、プールし、採取後4時間以内に試験に使用した。ヘモグロビン標準物質をDrabkin’s試薬で希釈して、0.80、0.60、0.40、0.30、0.20、0.10、0.02、及び0.01mg/mL濃度の溶液を得た。これらの溶液を室温で最低15分間静置し、吸光度を540ナノメートル(nm)の分光光度計で読み取った。その後、ヘモグロビンの吸光度値と標準濃度とによる直線回帰を用いて標準曲線を決定した。血漿ヘモグロビンを測定するために、血液を700~800×gで15分間遠心分離した。次いで、血漿の1mLアリコートを1mLのDrabkin’s試薬に添加し、室温で最低15分間静置した後、吸光度を540nmの分光光度計で読み取った。ヘモグロビン濃度を標準曲線から決定し、係数2を乗じることによって、血漿遊離ヘモグロビン濃度を求めた(2mg/mL未満と確認)。存在する総ヘモグロビン量は、血液の20μLアリコートをDrabkin’s試薬5mLに加え、540nmでの分光光度計で吸光度を読み取る前に、溶液を室温で最低15分間静置することによって、二回繰り返して測定した。次いで、標準曲線からヘモグロビン濃度を決定し、希釈を考慮するために係数251を乗じた。存在する総ヘモグロビンに基づいて、血液をCMF-PBS中で10±1mg/mLに希釈した。血液の希釈を検証するために、希釈した血液のアリコート300μLを4.5mLのDrabkin’s試薬に加え、これを3回行い、波長540nmでの分光光度計で吸光度を読み取る前に、室温で最低15分間静置した。その後、ヘモグロビン濃度を標準曲線から決定し、希釈を考慮するために係数16を乗じた。
【0189】
実験材料の陽性コントロール(溶血性)、陰性コントロール(非溶血性)、及びブランクを、0.2g/mLの質量/容量比又は6cm/mLの表面積/抽出容量を採用して調製し、これは、ISO10993-12:2012「医療機器の生物学的評価-パート12:試料調製および標準物質」に準拠しており、50±2℃(撹拌)、72±2時間CMF-PBS中で調製した間接接触(抽出液)分析用試料に準拠している。間接接触(抽出液)法及び直接接触法の両方について、適切な濃度の抽出物又は材料を、ラベルしたガラス管に添加し、3回調製し、希釈した血液1mLをそれぞれに添加した。次いで、ガラス管を37±2℃で最低3時間培養し、培養期間を通して30分間隔で2回穏やかに反転させた。培養後、被験物質及びコントロール物質を700~800×gで15分間遠心分離し、1mLの上清液を1mLのDrabkin’s試薬と混合し、室温で最低15分間放置した。遠心分離後、被験物質、ブランク、及びコントロールの各上清の色、濁度、及び微粒子を目視で検査した。その後、すべての被験物質及びコントロール物質を分光光度計で540nmで読み取った。
【0190】
溶血指数(%溶血率)を次の式を用いて表現した。
溶血指数=放出したヘモグロビン(mg/mL)/存在するヘモグロビン(mg/mL)×100
放出したヘモグロビン(mg/mL)=(光学濃度×係数X+定数)×16
存在するヘモグロビン(mg/mL)=希釈血液10±1mg/mL
【0191】
被験物質及びコントロール物質の溶血指数からCMF-PBSブランク液の溶血指数を差し引くことによって補正した溶血指数を計算し、被験物質の溶血指数から陰性コントロールの溶血指数を差し引くことによって被験物質と陰性コントロールとを比較した。
【0192】
統計解析
3回の反復の平均(±標準誤差平均、SEM)として表したCT及びMRI測定値を、種々の体積分率で調製した各微小球の処方について線形回帰分析に供し、それがゼロでないことを確認するために統計学的に評価し、さらにPrism8.0ソフトウェア(GraphPad. Software Inc.、San Diego, CA, US)を用いて他の処方と比較した。有意水準をp<0.05に設定した。
【0193】
アモルファス形態、密度、及びガラス転移温度
本開示の実施例のガラス、及び比較例のガラスを、不規則なガラス粉末及び微小球の形態で、アモルファス形態、密度、及びガラス転移温度について評価した。不規則なガラス粉末の作製後の熱処理(球形化)に関係なく、すべての試料はアモルファスのままであり、評価した処方のいずれにおいても同定可能な結晶ピークは検出されなかった。表5に、不規則なガラス粉末及び球形化後に形成された微小球の両方における比較例のガラス及び本開示の実施例のガラスについて、密度、Tg(中間点TgM及び変曲点TgI)を示す。
【表5】
【0194】
密度について、市販のコントロール“COMP1”は、約3.3g/cmの密度を提供し、不規則なガラス粉末と微小球の形態との間にわずかな変動のみを提供した。要約すると、TRCRのガラスシリーズは、低くて約3.05g/cm(TRCR20)から高くて4.2674g/cm(TRCR23)までの広範囲の密度を提供し、同様に、不規則なガラス粉末と微粒子の形態との間の処方のそれぞれには、顕著な差異は認められなかった。TRCRの処方自体の検討では、ガラスネットワークにおけるTaの増分にともなって、フリット(flit)及び微小球の密度が増加する傾向が観察された。BICの処方は、不規則なガラス粉末と微小球の形態との間の密度において同様の傾向を示した(それぞれ、3.459g/cm~3.542g/cm及び3.4326g/cm~3.5739g/cm)。
【0195】
ガラス転移温度の分析では、市販のコントロールは、909℃(TgM)と915℃(TgI)の間のTgMとTgIのデータポイントから構成された。これに対して、TRCR及びBICのガラスシリーズは、512℃~794℃及び513℃~799℃の間のデータポイントの広範囲のTgM及びTgIを示した。
【0196】
処理の検討
図1は、BIC2の微小球(球形化後)について、CMF-PBS中0.2g/mLで360時間(連続撹拌下(120rpm)で50℃に維持した場合)にわたって抽出して得られた累積イオン放出曲線を示す。要約すると、Baが、72時間の抽出段階後にICP-OES検出限界(10ppm)未満で記録された唯一の元素であり、B、Ta、Na、Siは、それぞれ20ppm、30ppm、500ppm、及び430ppm~440ppmで検出された。その後120時間の抽出時間枠で、残りのすべての元素について徹底的な抽出(ICP-OES検出限界(10ppm)未満と報告)が確認されたが、Si(530ppm~540ppm)は例外であり、その後、240時間~360時間の間に徹底的な抽出に達することが示された。
【0197】
化学分析及び表面形態
表6は、COMP1品目と、球形化用の供給物質(不規則なガラス粉末)として用いたBICの処方と、球形化後の回収した微小球(処方ごとに同じロットを加工)とを比較した化学組成のばらつきを示す。
【0198】
要約すると、3種類のBICの処方のすべては、球形化後のアルカリ元素の顕著な揮発が観察され、供給材料の出発組成の最大半分(10.05質量%から7.84質量%へ(BIC1)、14.60質量%から7.03質量%へ(BIC2)、及び10.95質量%から5.36質量%へ(BIC3))までのNaO濃度の顕著な低下(外部の試験所により報告された質量%の点で)が観察された。合同的に、他の元素濃度(すなわちTa及び/又はSiO)は、球形化後にこれらの元素濃度が明らかに増加することによって、相対的損失を補うように観察された。これに加えて、BIC3は、B濃度の顕著な減少(3.62質量%から1.12質量%)の結果として、球形化によるBの明らかな揮発を示した。対照的に、供給材料として使用された場合、COMP1品目(表)は、組成的に変化しないままであった(すなわち±3質量%以内であり各元素成分間に認められる(許容できる)範囲)。
【0199】
供給材料の表面形態を図2Aに示し、球形化後の微小球の表面形態(図2B)と比較する。球形化した材料と同様に収集したSEM画像は、(I)ガス環境でのガラス反応による表面堆積物の蓄積、及び/又は、(II)ガラス製造工程からの残屑又は空気中の粒子若しくは製品接触面上の粒子による汚染、に帰する微小球上の表面反応堆積物の堆積を示す。
【0200】
表7は、360時間後に分離したBIC2の微小球ロットを処理して得られた化学組成の変動を示し、先の図1に示すように、水性環境の結果、ガラスネットワークからのNaOの徹底的な抽出に達している。球形化と比較したこの加工工程の結果としてのNaOの低下は、広範囲ではなく(それぞれ、7.03質量%から5.36質量%対14.60質量%から7.03質量%)、最初の抽出を評価した時間枠(72時間)の前の、結合していない表面反応堆積物を除去する処理工程に主に起因する可能性があり、ここでは、ガラスネットワークからのNaOの最小限の溶出を伴う。
【0201】
本研究の知見を活用し、加速的な抽出温度で且つ時間枠を24時間に短縮し(抽出比、温度、及び撹拌速度などの他のすべての変数は変化させず)、(プロセス最適化のための)さらなる抽出分析を実施し、表面反応堆積物のない微小球がSEMによって観察され得るかどうかを確認した。図2Cは、80℃で24時間処理した微小球を示しており、球形化直後に観察された表面反応堆積物及び/又は汚染物のほぼ完全な除去を提供し(図2B)、これに対して、80℃で72時間処理し且つ球形化後に再篩にかけた微小球は、表面反応堆積物の完全な除去をはっきりと示している(図2D)。24時間後及び72時間後に処理したBIC2の微小球をその後、生体適合性評価のために保存した。
【表6】
【表7】
【0202】
CT放射線不透過性
表1の実施例のガラスの組成では、コントロール品目(COMP1:5,952±180HU)と比較して、臨床的に適切なチューブ電位(120kVp)において、放射線不透過性が強化されている。ベンチトップ型CTの放射線不透過性は、9,978±579HU(TRCR8)から21,858±1037HU(TRCR23)の範囲に観察された。TRCR3、8及び13の密度は、比較例の品目COMP1の密度の10%であり、それらの放射線不透過性は、9,978±579HU(TRCR8)から16,374±465HU(TRCR13)の範囲に観察された。
【0203】
BIC1、BIC2、及びBIC3は、コントロール品目COMP1に匹敵する望ましい標的範囲内の密度を有し、13,676±642HU~16,952±205HUの範囲の放射線不透過性を示した。
【0204】
コントロール品目と比較したBIC1~BIC3の微小球の濃度のばらつきによるCT放射線不透過性の評価について、図3は、80kVpで種々の体積分率を備える調製した試料の微小球の濃度(体積分率)の増加にともない、放射線不透過性の増加を示している。さらに、得られたHU値と微小球の体積分率との間には良好な相関関係が存在し、これによって、作成した各検量線の傾き及びR値は、次のようなものであった(低いCT放射線不透過性から高い放射線不透過性):COMP1(R=0.9739で287.2)、BIC3(R=0.9465で357.9)、BIC1(R=0.9994で394.5)、及びBIC2(R=0.9742で407.7)であった。データは、治療目的で投与されるべきと期待される微小球の濃度において、COMP1品目と比較して強化された放射線不透過性を提供する有望な候補材料として、BIC1からBIC3をサポートする。
【0205】
MRI評価
BIC1~BIC3の微小球の処方及びCOMP1品目は、R1緩和度のために作成した図4に示される検量線によってサポートされるように、大きなT1コントラスト効果をもたらすことは期待されない。検量線は、R1緩和度と微小球の濃度との間に有意な相関を示す。0.007(COMP1)~0.034(BIC3)の範囲の傾きは統計的にゼロではないが(p<0.002)、傾きは非常に小さいので、これらの微小球の処方は検出可能なT1差を生じないと予想される。このことは、図5によってもサポートされており、T1コントラストの変化はチューブのイメージでは明らかではない。
【0206】
同様に、BIC1~BIC3の微小球の処方又はCOMP1品目は、R2緩和度のために作成した図6に示される検量線によってサポートされるように、大きなT2コントラスト効果をもたらすことは期待されない。検量線は、R2緩和度と微小球の濃度との間に有意な相関を示す。0.068(COMP1)から0.688(BIC3)の範囲の傾きは統計的にゼロではないが(p<0.003)、傾きは非常に小さいので、これらの処方は生理学的な差と比較して、シグナルコントラストに大きな差異を生じない。このことは、図5においても示されており、ここでは、最も高いBIC2の微小球濃度イメージにおいて非常に軽度のT2コントラスト変化がある。
【0207】
R2緩和度の測定のために、図7に検量線を示す。微小球の処方は、(図5に示すように)T2コントラストのいくらかの変化を誘導する。しかしながら、血管系における微小球の標的位置(血液による顕著なT2効果がある)を考えると、該コントラストの変化は、臨床的なT2強調スキャンにおいて顕著な変化を誘発するために十分である可能性は低い。作成したT1及びT2検量線と同様に、R2緩和度の傾きは統計的にゼロではなく(p<0.04)、傾きは3.5s-1~6.3s-1の範囲である。図5に示すように、コントロール品目の最も高い微小球濃度では、可視T2コントラストに知覚可能な差があり、BIC2の微小球では比較的少なく、いくつかの気泡が見える。
【0208】
MRI磁化率(susceptometry)の結果(図8に示す)から得られた局所磁気線量(LMD)は、BIC1からBIC3の微小球の処方が小さな負の傾き(-0.0074~-0.0190)と同様であり、これらの材料がわずかに反磁性であることを示している。これは、COMP1品目とは対照的であり、COMP1品目は、小さな正の傾き(0.0264)を生成し、わずかな常磁性であると分類される。BIC1は、0(すなわち磁化率はニュートラル)から統計的な有意性は観察されなかったのに対して、BIC2、BIC3、及びYAS4の全ては、非ゼロから統計学的な有意性が観察された(p<0.04)。
【0209】
BIC1、BIC2、及びBIC3の微小球の処方のMRIの安全性をサポートするために、次の問題を考察した:(I)磁気誘起変位トルク、(II)磁気誘起変位力、及び(III)装置まわりの組織のRF誘発組織加熱。
【0210】
磁気誘起変位トルク
医療デバイスは、デバイスの磁気モーメントとMRIシステムの主な静磁界との相互作用に起因する変位力及び/又は回転トルクを示すことがある。回転トルクは、所定のある方向に磁化される非対称に成形されたデバイスにおける傾向であり、磁気モーメントの方向が主磁場の方向に整列する。BIC及びCOMP1の微小球の処方などの、磁化された微小球は、対称的な形状であり、トルクを発生させる能力を有しない。トルクは、装置磁気モーメント(μ)と主静的MRI磁場(B)とのベクトル積から計算される。BIC及びCOMP1の微小球の処方などの遷移金属から構成される金属酸化物であって磁性材料に分類されるものは、常磁性又は反磁性のいずれかを示すことがある。これらの材料は、外部磁場中に置かれるまで磁気モーメントを有さず、誘導された磁気モーメントは、主静磁場の方向に整列(常磁性)するか、又は完全に対向(反磁性)する。MRI磁化率(図8参照)を用いてBIC1からBIC3、及びCOMP1の懸濁液について得られた測定値は、コントロールの微小球自体に対して、0.0264ppm(SI単位)のわずかな常磁性体積磁化率(懸濁媒体の影響を補正)を有することが示された。これに対して、BIC1、BIC2、及びBIC3の微小球は、微小球自体に対して、それぞれ-0.0074ppm、-0.0119ppm、及び-0.019ppmのわずかな反磁性体積磁化率(懸濁媒体の影響を補正)を有することが示された。
【0211】
反磁性材料の磁気モーメントは(定義により)主磁場の反対であり、トルク(磁気モーメントと主磁場とのベクトル積T=μ×Bから計算)はゼロであるため、BIC1、BIC2、又はBIC3の微小球に粒子の回転トルクのリスクはない。それにもかかわらず、磁気モーメントは、コントロールの微小球を含めて、試験したすべての試料についてほぼ0であるため、微小球の処方のいずれも粒子の回転トルクのリスクを示さない。
【0212】
磁気誘起変位力
変位力は、MRIシステム(又は患者の体内)へのデバイスの衝撃を促すリスクを引き起こすものであり、デバイスの磁気モーメントとMRIシステムの主静磁場の空間を通る変化率との相互作用から計算される。この空間的な主磁場の勾配は、典型的にはMRIシステムの入り口付近(入口の穴)で最大であり、一般的な3T臨床用MRIシステムではおよそ15Tesla/M以下である(例:GE Healthcare MR750 3T MRIの場合、操作マニュアルの安全セクションに規定されているように14.7T/mである)。
【0213】
具体的には、変位力は、磁気モーメント(μ)と静磁場勾配(勾配(B))とのドット積から式[F=μ・勾配(B)]によって計算される。BIC2の微粒子のような常磁性材料は、強力な磁場に曝された結果としてのみ磁気モーメントを発生し、適用された磁場と同方向に整列する。これに対して、BIC1、BIC2、及びBIC3の微粒子などの反磁性材料は、強力な磁場に曝された結果としてのみ磁気モーメントを発生し、適用された磁場と反対方向に整列する。それにもかかわらず、すべての微粒子の処方に生じた力は、ppmオーダー(μ=V*ΔX、Vは放射線不透過MS体積)であり、ブラウン運動(粒子の分散)の力と比較して小さく、したがって磁気誘起変位力に対するリスクを示さない。
【0214】
高周波(RF)による組織の加熱
Parmarらが“酸化鉄単一ドメインナノ粒子のサイズ依存加熱効率”Procedia Engineering (2015)Volume 102, pages 527-533、において議論したように、磁化された粒子のRF加熱は、誘導的なメカニズム(電気伝導)ではなく、主として磁気加熱メカニズムによって生じる。RF磁場からの磁気加熱は、Neelの機構(粒子の内部磁気モーメントが、粒子を回転させることなく、印加されたRF磁場によって回転する)又はBrownの機構(粒子が、抵抗加熱を生成するRF回転磁場の影響下で物理的に回転する)のいずれかによって生じ得る。これらのメカニズムは、磁気媒介高熱(MMH)及び治療的応用(標的癌アブレーション)などの応用のための酸化鉄ナノ粒子に関連する。これらの粒子は、10kA/MオーダーのRF磁場を含む条件下でのみ、低温条件(2℃~4℃の局所的な温度上昇)を作り出すことができる。
【0215】
反対に、MRIシステムは、約0.1kA/M(1ガウス)のピークRF磁場、又は、MMH用途より2桁弱いピークRF磁場を生成する。加えて、超常磁性酸化鉄(SPIO)粒子は、微小球の処方(0.0264ppm(COMP1)対0.0074ppm(BIC1)、-0.0119ppm(BIC2)、及び-0.019ppm(BIC3))よりも約5桁大きい磁気モーメントを有する。本開示のBIC1、BIC2、及びBIC3の微小球は、常磁性/反磁性が弱い材料であるため、磁気加熱能力はSPIO剤と比較して無視できる。
【0216】
加えて、SPIOナノ粒子は、FDAに承認された造影剤(例えばFerridex)であり、BIC1からBIC3の処方のように金属酸化物粒子であるにもかかわらず、また、磁気モーメントがはるかに大きいにもかかわらず、RF加熱にともなう問題は生じない。BICの微粒子のRF加熱の能力は、これらSPIO剤よりも磁気モーメントが数オーダー弱く、磁気モーメントが弱いため、BICの微粒子がMRI環境における組織加熱のリスクを引き起こすことはないはずである。
【0217】
In vitroでの細胞毒性
In vitro細胞毒性スクリーニングでは、実験用の陰性コントロール及び陽性コントロール材料の抽出物に曝露した細胞の生存率は、それぞれ>70%及び<70%であり、分析法の妥当性を確認した。試験の要件を満たす処方は、未処理のコントロールの70%以上の細胞生存率を示した。表8は、種々の一連の希釈での処理前の各微小球の処方について得られた細胞生存率の結果を示す。
【表8】
【0218】
COMP1品目は、細胞毒性を示さず、98~94%の細胞生存率を示した。対照的に、TRCRの微粒子の処方の大部分は、TRCR13の原液試験(48%細胞生存率)を除いて、細胞毒性の可能性がないと考えられた。他のすべてのTRCR処方は、75%~112%(原液、未希釈)の細胞生存率を示した。BICの微小球の処方に関しては、3つのうち2つ、すなわちBIC2(100%~105%)及びBIC3(72%~103%)は細胞毒性を示さなかった。BIC1の細胞生存率は、22%(原液、未希釈)及び44%(50%希釈)であり、用量依存性の細胞毒性を示した。
【0219】
In vitroでの遺伝毒性
COMP1品目及び処理前のBIC2の微小球の両方について、DMSO及び生理食塩水の試験抽出物の背景叢は正常に見えた。DMSO及び生理食塩水の試験抽出物の存在下で、試験菌株TA98、TA100、及びWP2uvrAの復帰突然変異体の平均数が2倍以上増加したケースはなく、試験菌株TA1535及びTA1537の復帰突然変異体の平均数が3倍以上増加したケースもなかった。各試験菌株の陰性コントロールの結果は、試験会社で収集された過去のデータによると、自然復帰突然変異体の特徴的な数を示した。各陽性コントロールの平均値は、5つの試験菌株それぞれについて、陰性コントロールの平均値の少なくとも3倍の増加を示した。表9に結果をまとめ、コントロール品目及びBICの微粒子の処方のDMSO及び生理食塩水の抽出物はいずれも、ネズミチフス菌試験株TA98、TA100、TA1535、及びTA1537、並びに、大腸菌試験株WP2uvrAに対して変異原性を示さないと考えられた。
【表9】
【0220】
処理後の微小球のIn vitroでの細胞毒性及び溶血
表10は、24時間~72時間処理したBIC2の微小球の反復細胞毒性及び/又は溶血評価を示す。In vitro細胞毒性では、拡大観察した場合、細胞曝露ステップ後に正常な増殖特性を示す培地コントロール細胞によって試験方法の妥当性を確認した。陽性コントロール抽出物(未希釈)は、培地コントロールの生存率を70%未満に低下させたのに対して、陰性コントロール抽出物は、培地コントロールの生存率を70%未満に低下させなかった。要約すると、24時間及び27時間処理したBIC2の微小球は、一連の希釈12.5%~50%対原液(未希釈)での試験において、細胞毒性を示さず(すなわち、細胞生存率(CV)>70%)、細胞生存率はそれぞれ82%~84%及び88%~92%の範囲であった。続いて、処理工程が、MTT分析の前に72±2時間に延長した抽出によっても、処理前の(0時間)のBIC2の微小球(細胞生存率が24±2時間の抽出後に100%~105%の範囲であることが示された)と比較して、in vitroでの細胞毒性に悪影響がないことを確認した。
【0221】
In vitroでの溶血(直接及び間接接触溶血)では、処理されたBIC2の微小球と実験的な陰性コントロールとの溶血指数の差がすべての試験条件で2%未満であることによって、試験方法の妥当性を確認した。ASTM F756:2017によれば、溶血性材料反応を示す反応>5に対して、0~2の溶血率は非溶血性反応を表し、2~5は軽度の溶血性反応を表す。この溶血性評点方式によれば(表10):
・質量/体積抽出比(0.2g/mL)を用いて調製した処理されたBIC2の微粒子は、非溶血性とみなされ、24時間から72時間処理した場合、それぞれ(直接接触法)1.29%~0.29%であるのに対して、24時間から360時間処理した場合、それぞれ(間接接触法)0.00%~0.00%である。
・表面積(SA)/体積抽出比(0.2g/mL)を用いて調製した処理されたBIC2の微粒子も、非溶血性とみなされ、24時間から72時間処理した場合、それぞれ(直接接触法)0.00%~0.00%である。
【表10】
【0222】
表10に示すデータは、加速的な処理パラメータ(80℃で24時間)に供したBIC2の微小球が、図2のSEMによって表面清浄度の明らかな欠如が観察されたにもかかわらず、細胞毒性(処理後82%~92%対球形化後100%~106%)又は溶血性に悪影響がないことを確認するものである。それにもかかわらず、72時間の処置の時間枠は、直接接触法による溶血率を0.29に有意に低下させることが観察された。
【0223】
先の説明では、説明の目的で、実施例の完全な理解を提供するために多数の詳細が記載されている。しかしながら、これらの特定の詳細が必要でないことは当業者には明らかであろう。従って、記載された事項は、記載された実施例の適用を単に例示するに過ぎず、上記の教示に照らして、多くの修飾及び変形が可能である。
【0224】
上記の説明は例を提供するものであるため、修飾及び変形は、当業者により特定の例に対して実施され得るものと理解されることとなる。従って、特許請求の範囲は、本明細書に記載された特定の実施例によって限定されるべきではなく、全体としての明細書と一致する方法で解釈されるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8