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▶ チルドレンズ ホスピタル メディカル センターの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】造血幹細胞の生成および拡大方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20241225BHJP
   C12N 5/0789 20100101ALI20241225BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALI20241225BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20241225BHJP
【FI】
C12N5/071 ZNA
C12N5/0789
C12N5/0781
C12N5/0783
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021570130
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 US2020035385
(87)【国際公開番号】W WO2020243613
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】62/855,524
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/855,536
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500469235
【氏名又は名称】チルドレンズ ホスピタル メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】武部 貴則
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、カイル
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0002602(US,A1)
【文献】国際公開第2018/226267(WO,A1)
【文献】Nat. Commun.,2016年,7:10243
【文献】Blood Res.,2015年,Vol. 50,pp.194-203
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血幹細胞(HSC)を産生する肝臓オルガノイドを産生する方法であって、
前腸スフェロイドを、前記前腸スフェロイドを肝臓オルガノイドに分化させるのに十分な条件下で培養することであって、前記前腸スフェロイドを培養することは、ノッチ活性化因子またはノッチリガンドと接触させることを含む、培養することを含み、
前記肝臓オルガノイドが、造血幹細胞に分化するCD34造血性内皮集団を含み、
前記前腸スフェロイドが、間葉を含む、方法。
【請求項2】
前記ノッチ活性化因子またはノッチリガンドが、
a)DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2のうちの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせ、および/または、
b)DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2の1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせを発現する細胞
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記前腸スフェロイドが、DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のノッチ活性化因子またはノッチリガンドを発現する細胞をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記前腸スフェロイドを培養することは、前記前腸スフェロイドを、IL-3、IL-34、もしくはGM-CSFのうちの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせと接触させることをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記前腸スフェロイドを培養することは、前記前腸スフェロイドを、幹細胞因子(SCF)もしくはトロンボポエチン(TPO)、またはその両方と接触させることをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記肝臓オルガノイドから、前記造血性内皮集団もしくは前記造血幹細胞、またはその両方を単離することをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記造血性内皮集団もしくは前記造血幹細胞、またはその両方を単離することは、CD34、CD45 またはその両方である前記肝臓オルガノイドから細胞集団を選別することによって実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記肝臓オルガノイドからリンパ球細胞を単離することをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記リンパ球細胞が、B細胞、T細胞、NK細胞、または一般的なリンパ球前駆細胞のうちの1つ以上を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記B細胞が、B1細胞もしくはB2細胞、またはその両方である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記肝臓オルガノイドから単一細胞懸濁液を作製し、間質細胞上で前記単一細胞懸濁液を培養した後に前記リンパ球細胞を単離することをさらに含み、間質細胞上で前記単一細胞懸濁液を培養することは、前記単一細胞懸濁液においてリンパ球細胞を拡大する、請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記単一細胞懸濁液を、FLT3リガンド、SCF、もしくはIL-7のうちの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせと接触させる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記肝臓オルガノイドから単一細胞懸濁液を作製し、間質細胞上で前記単一細胞懸濁液を培養した後に前記リンパ球細胞を単離することをさらに含み、間質細胞上で前記単一細胞懸濁液を培養することは、前記単一細胞懸濁液においてリンパ球細胞を拡大し、前記B1細胞が、CD20CD43CD27であり、前記B1細胞を単離することは、CD20、CD43、CD27のうちの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせである前記単一細胞懸濁液から細胞集団を選別することによって実施される請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2019年5月31日に出願された米国仮特許出願第62/855,524号および2019年5月31日に出願された米国仮特許出願第62/855,536号の優先権の利益を主張し、これらのそれぞれは、参照によりその全体が明示的に本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
本出願は、電子形式の配列表とともに提出されている。配列表は、CHMC63_019WOSeqListing.TXTという名称のファイルとして提供され、2020年5月18日に作成され、最終更新され、サイズは2,077バイトである。電子配列表の情報は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示の態様は、一般に、造血幹細胞組成物およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0004】
臨床的には、骨髄由来の造血幹細胞(HSC)移植は、世界中で1年に40,000回超実施されている一般的な手順である。これらの移植は、様々な種類の血液がん、免疫障害、および血液細胞の遺伝子欠損を治療するために行われ得る。HSC移植は、自己(患者自身の細胞を使用する)または同種異系(ヒト白血球抗原(HLA)適合ドナーを使用する)のいずれかで実施され得る。しかしながら、自家移植は、患者自身の健康な細胞の利用可能性が限られているため、多くの場合選択肢ではなく、同種異系移植は、慢性であり得る移植片対宿主病(GVHD)をもたらし、患者を感染のリスクにさらす免疫抑制剤を必要とし得る。このため、同種異系移植は生存率が低い。
【0005】
臍帯血(UCB)からHSCを収集して患者に使用することができるが、この方法で得ることができる細胞の数は限られており、現在、インビトロでそれらの数を大幅に拡大する培養方法はない。さらに、iPSCからHSCを産生する以前の試みでは、未知のリスクをもたらす外来導入遺伝子の導入が必要であるため、潜在的な臨床応用が阻まれている。例えば、自家または同種異系移植で使用するために、HSCの強力な産生および拡大に対する必要性が現在および永続的に存在する。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2016/0002602号明細書
(特許文献2) 国際公開第2018/085615号
(非特許文献)
(非特許文献1) ZHANG et al. "The existence of epithelial-to-mesenchymal cells with the ability to support hematopoiesis in human fetal liver" Cell Biology International,March 2005,Vol 29,No 3,pp 213-219; pg 214,col 1,para 2,pg 215,col 1,para 2,pg 216,col 2,para 2,pg 217,col 1,para 1,pg 218,Table 2
(非特許文献2) JONES et al. "Stromal Expression of Jagged 1 Promotes Colony Formation by Fetal Hematopoietic Progenitor Cells" Blood,1 September 1998,Vol 92,No 5,pp 1505-1511; abtract
【発明の概要】
【0006】
本開示のいくつかの態様は、造血幹細胞を産生する肝臓オルガノイドを産生する方法に関する。いくつかの実施形態では、方法は、前腸スフェロイドを、前腸スフェロイドを肝臓オルガノイドに分化させるのに十分な条件下で培養することを含む。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、造血幹細胞に分化するCD34造血性内皮集団を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを、前腸スフェロイドを肝臓オルガノイドに分化させるのに十分な条件下で培養することは、前腸スフェロイドを、FGFシグナル伝達経路活性化因子、Wntシグナル伝達経路活性化因子、もしくはBMP阻害剤のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3つ)、またはそれらの任意の組み合わせと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを、前腸スフェロイドを肝臓オルガノイドに分化させるのに十分な条件下で培養することは、前腸スフェロイドを、FGFシグナル伝達経路活性化因子もしくはWntシグナル伝達経路活性化因子、またはその両方と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、FGFシグナル伝達経路活性化因子は、FGF4である。いくつかの実施形態では、Wntシグナル伝達経路活性化因子は、CHIR99021である。いくつかの実施形態では、BMP阻害剤はノギンである。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、前腸スフェロイドをノッチ活性化因子またはリガンドと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、ノッチ活性化因子またはリガンドは、DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2のうちの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせであるか、それらを含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、ノッチ活性化因子またはリガンドは、DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2のうちの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせを発現する細胞であるか、それを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のノッチ活性化因子またはリガンドを発現する細胞を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、前腸スフェロイドを、IL-3、IL-34、もしくはGM-CSFのうちの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、前腸スフェロイドを、幹細胞因子(SCF)もしくはトロンボポエチン(TPO)、またはその両方と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、前腸スフェロイドをレチノイン酸(RA)と接触させることを含まない。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、前腸スフェロイドを、デキサメタゾン、オンコスタチンM、もしくは肝細胞成長因子のうちの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせと接触させることを含まない。いくつかの実施形態では、造血幹細胞は、ERG、HOXA5、HOXA9、HOXA10、LCOR、RUNX1、SPI1、FOSB、もしくはGFI1のうちの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせを外因的に発現していない。いくつかの実施形態では、方法は、肝臓オルガノイドから、造血性内皮集団もしくは造血幹細胞、またはその両方を単離することを含む。いくつかの実施形態では、造血性内皮集団もしくは造血幹細胞、またはその両方を単離することは、CD34+、CD45+、またはその両方である肝臓オルガノイドから細胞集団を選別することによって実施される。いくつかの実施形態では、方法は、人工多能性幹細胞を、人工多能性幹細胞を胚体内胚葉に分化させるのに十分な条件下で培養することと、胚体内胚葉を、胚体内胚葉を前腸スフェロイドに分化させるのに十分な条件下で培養した後に、前腸スフェロイドを、前腸スフェロイドを肝臓オルガノイドに分化させるのに十分な条件下で培養することと、を含む。いくつかの実施形態では、方法は、胚体内胚葉を、胚体内胚葉を前腸スフェロイドに分化させるのに十分な条件下で培養した後に、前腸スフェロイドを、前腸スフェロイドを肝臓オルガノイドに分化させるのに十分な条件下で培養することを含む。
【0007】
本開示のいくつかの態様は、肝臓オルガノイドに関する。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、本明細書に開示される方法のうちのいずれか1つによって産生された肝臓オルガノイドである。
【0008】
本開示のいくつかの態様は、造血性内皮集団に関する。いくつかの実施形態では、造血性内皮集団は、本明細書に開示される方法のうちのいずれか1つによって産生される。
【0009】
本開示のいくつかの態様は、造血幹細胞に関する。いくつかの実施形態では、造血幹細胞は、本明細書に開示される方法のうちのいずれか1つによって産生される。
【0010】
本開示のいくつかの態様は、肝臓オルガノイドからリンパ球細胞を単離するための方法に関する。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、本明細書に開示される方法のうちのいずれか1つによって産生された肝臓オルガノイドのうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、リンパ球細胞は、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つによって産生された肝臓オルガノイドのうちのいずれか1つから単離される。いくつかの実施形態では、リンパ球細胞は、B細胞、T細胞、NK細胞、または一般的なリンパ球前駆細胞のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、B細胞は、B1細胞である。いくつかの実施形態では、B細胞は、B2細胞である。いくつかの実施形態では、B細胞は、B1細胞およびB2細胞の両方である。いくつかの実施形態では、リンパ球細胞を単離する前に、方法は、肝臓オルガノイドから単一細胞懸濁液を作製し、間質細胞上で単一細胞懸濁液を培養することを含む。いくつかの実施形態では、間質細胞上で単一細胞懸濁液を培養することは、単一細胞懸濁液においてリンパ球細胞を拡大する。いくつかの実施形態では、間質細胞は、MS-5細胞である。いくつかの実施形態では、単一細胞懸濁液を、FLT3リガンド、SCF、もしくはIL-7のうちの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせと接触させる。いくつかの実施形態では、B1細胞は、CD20CD43CD27である。いくつかの実施形態では、B1細胞を単離することは、CD20、CD43、CD27のうちの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせである単一細胞懸濁液から細胞集団を選別することによって実施される。
【0011】
本開示のいくつかの態様は、リンパ球細胞に関する。いくつかの実施形態では、リンパ球細胞は、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つによって産生されたリンパ球細胞である。いくつかの実施形態では、リンパ球細胞はB1細胞であり、B1細胞は本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つによって産生されたB1細胞である。
【0012】
本開示のいくつかの態様は、造血幹細胞の集団を拡大する方法に関する。いくつかの実施形態では、方法は、肝臓オルガノイドと接触して造血幹細胞の集団を培養することを含む。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、造血ニッチ環境を含む。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つによって産生される肝臓オルガノイドである。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団を培養することは、造血幹細胞の集団を、SCFもしくはTPO、またはその両方と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の拡大された集団は、多能性を維持する。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、臍帯血、動員された末梢血、骨髄、多能性幹細胞、胚性幹細胞、胎児肝臓、もしくは胎児脾臓、またはそれらの任意の組み合わせから得られる。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、肝臓オルガノイドに対して自家または同種異系である。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、個体から得られる。いくつかの実施形態では、個体は、造血幹細胞を必要とする個体である。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、個体に由来する人工多能性幹細胞から産生される。
【0013】
本開示のいくつかの態様は、造血幹細胞の集団を必要とする個体に投与する方法に関する。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つによって産生された造血幹細胞の集団である。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、必要とする個体に対して自家または同種異系である。
【0014】
本開示のいくつかの態様は、細胞組成物に関する。いくつかの実施形態では、細胞組成物は、造血幹細胞の集団と、肝臓オルガノイドと、を含む。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つによって産生された造血幹細胞の集団である。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つによって産生される肝臓オルガノイドである。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団および肝臓オルガノイドは、同じ個体に由来する。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団および肝臓オルガノイドは、異なる個体に由来する。
【0015】
本開示のいくつかの態様は、必要とする個体を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、方法は、単離された造血性内皮集団を必要とする個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、単離された造血性内皮集団は、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つによって産生された、単離された造血性内皮集団である。いくつかの実施形態では、方法は、単離された造血幹細胞を必要とする個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、単離された造血幹細胞は、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つによって産生された、単離された造血幹細胞である。いくつかの実施形態では、方法は、単離されたリンパ球細胞を必要とする個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、単離されたリンパ球細胞は、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つによって産生される単離されたリンパ球細胞である。いくつかの実施形態では、方法は、単離されたB1細胞を必要とする個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、単離されたB1細胞は、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つによって産生された、単離されたB1細胞である。
【0016】
本明細書で提供される本開示の実施形態は、以下の番号が付けられた代替案によって説明される。
1.肝臓オルガノイドにおいて造血細胞を生成する方法であって、前腸スフェロイドを、FGFシグナル伝達経路活性化因子、Wntシグナル伝達経路活性化因子、およびBMP阻害剤と接触させて、中胚葉細胞集団を有する肝臓オルガノイドを形成することを含み、
該肝臓オルガノイドが、造血幹細胞(HSC)を産生する、方法。
2.該前腸スフェロイドが間葉を含む、代替案1に記載の方法。
3.該前腸スフェロイドをノッチ活性化因子と接触させることを含む、代替案1または2に記載の方法。
4.該ノッチ活性化因子が、DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、JAG2、およびそれらの組み合わせから選択される1つ以上のタンパク質から選択される、代替案3に記載の方法。
5.該ノッチ活性化因子が、DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、JAG2、およびそれらの組み合わせを発現する1つ以上の細胞から選択される、代替案3に記載の方法。
6.該ノッチ活性化因子が、DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、JAG2のうちの1つ以上、およびそれらの組み合わせを発現する骨髄細胞株である、先行代替案のいずれかに記載の方法。
7.該肝臓オルガノイドをサイトカインと接触させるステップを含む、先行代替案のいずれかに記載の方法。
8.該サイトカインが、約1~約10ng/mL、約2~約15ng/mL、約3~約20ng/mL、約4~約25ng/mL、または約5~約30ng/mLの濃度で添加される、代替案7に記載の方法。
9.該HLOが、アルブミン(遺伝子受入番号HGNC:399)、アルファ-フェトプロテイン(HGNC:317)、およびエリスロポエチン(HGNC:3415)のうちの1つ以上を発現する、代替案1に記載の方法。
10.該造血幹細胞(HSC)が、フローサイトメトリーによって、lin-、CD34+、CD38-、CD90+、CD45RA-、CD49f+のうちの1つ以上として特定される、先行代替案のいずれかに記載の方法。
11.該造血幹細胞が、HLO培養において約1/10,000個の細胞の濃度である、先行代替案のいずれかに記載の方法。
12.該ノッチ活性化因子が、ノッチ4(HGNC:7884)を活性化する、代替案3に記載の方法。
13.幹細胞の集団を拡大するための方法であって、肝臓オルガノイドの存在下で該幹細胞を培養することを含む、方法。
14.該幹細胞が、臍帯血、末梢血、胎児肝臓、胎児脾臓、骨髄、腸、卵黄嚢、またはそれらの組み合わせから得られる、代替案13に記載の方法。
15.該拡大された幹細胞が、多能性を維持する、代替案13または14に記載の方法。
16.該幹細胞が、幹細胞による治療を必要とする個体から得られる、先行代替案のいずれかに記載の方法。
17.該拡大された幹細胞を、それを必要とする個体に投与することを含む、先行代替案のいずれかに記載の方法。
18.拡大前、拡大中、および拡大後から選択される1つ以上の期間で該幹細胞を遺伝子修飾することを含む、先行代替案のいずれかに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
上記の特徴に加えて、追加の特徴および変形例は、以下の図面および例示的な実施形態の説明から容易に明らかになるであろう。これらの図面は実施形態を示しており、範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0018】
図1A】肝臓オルガノイド分化方法の概略図の実施形態を示す。
図1B】ヘマトキシリン/エオシンを含むマトリゲル液滴における18日目の肝臓オルガノイド培養物の組織学、ならびにアルブミン、アルファ-フェトプロテイン、CD34、およびCD45の免疫組織化学(IHC)の実施形態を示す。ボックス領域は、右下の挿入図に拡大画像として示される。
図1C】rt-PCRによって測定された、異なる日の肝臓オルガノイド培養物におけるCD34、AFP、HBG1、およびALBの発現の実施形態を示す。
図1D】ELISAで測定された、肝臓分化培地(RA/HCM)で培養された肝臓オルガノイド培養物または異なるiPSC株(72_3、1383D6、449)からの未分化肝臓オルガノイド(+FGF+BMP/HCMおよび+FGF+BMP)培養物によるアルブミン発現の実施形態を示す。
図2】標識された目的の異なる集団を含む14日目のオルガノイド培養物からのscRNA-seqデータのt-SNEプロットの実施形態を示す。
図3】標識された肝臓、内皮/HSC、および赤血球集団を含む14日目のオルガノイド培養物からのscRNA-seqデータのt-SNEプロットの実施形態を示す。
図4A-C】(A)肝集団、(B)造血性内皮集団、および(C)赤血球集団を示す関連遺伝子のt-SNEプロットの実施形態を示す。
図5A】14日目のオルガノイド培養物の細胞から実施されたCFCアッセイ後のギムザ染色からの代表的な画像の実施形態を示す。
図5B】CD34UCB細胞、18日目の肝臓オルガノイド細胞、および未分化iPSCからのコロニー形成単位のアッセイの実施形態を示す。
図6A】EpCAM染色された肝臓オルガノイド細胞、CD34染色された内皮細胞、およびGYPA染色された赤血球の隣接するクラスターの存在を示す免疫蛍光画像の実施形態を示す。
図6B】18日目のオルガノイド培養物におけるCD34およびCD45のIHC染色の実施形態を示す。
図6C】11、13、および15日目の時点でのオルガノイド培養物においてCD34を検出するフローサイトメトリープロットの実施形態を示す。
図6D】UCB CD34対照と比較した、分化の異なる日のオルガノイド培養物の細胞から形成されたコロニーの数を示すグラフの実施形態を示す。
図6E】異なる日のオルガノイド培養物におけるHES1の発現レベルを示すqPCRの結果を示すグラフの実施形態を示す。
図7A】CD34およびノッチシグナル伝達に関連するいくつかの遺伝子を共発現する細胞の集団を示すscRNA-seqデータのt-SNEプロットの実施形態を示す。
図7B】肝臓オルガノイドを調製し、培養6日目にDLL4を添加する概略図の実施形態を示す。
図8】DLL4およびサイトカイン(IL-3、IL-34、GM-CSF)を添加した後の肝臓オルガノイド培養物におけるCD45発現の実施形態を示す。
図9A】18日目のオルガノイドにおけるIL-6発現のqPCRの結果を示すグラフの実施形態を示す(N=陰性対照、D=DLL4添加、C=サイトカイン添加、DC=DLL4およびサイトカイン添加)。
図9B】18日目のオルガノイドにおけるアルブミン発現のqPCRの結果を示すグラフの実施形態を示す(N=陰性対照、D=DLL4添加、C=サイトカイン添加、DC=DLL4およびサイトカイン添加)。
図10A】12日間の処理後のDMSO対照または100μMのDAPTのいずれかを含むオルガノイド培養物の光学顕微鏡画像の実施形態を示す。
図10B】培養6日目にDAPTを4日間添加する(培養10日目にDAPTを除去する)概略図の実施形態を示す。
図10C】4日間の処理後の異なる濃度のDAPTでのHES1発現の実施形態を示す。
図10D】4日間の処理後の異なる濃度のDAPTでのALB発現の実施形態を示す。
図11A】共培養系のレイアウトを示す概略図の実施形態を示す。MS-5細胞は、FLT3L、SCF、およびIL-7とともに培養される。
図11B】UCB細胞またはオルガノイド培養細胞のいずれかとの20日目のMS-5共培養物を示す明視野画像の実施形態を示す。
図11C】26日目のオルガノイド/MS-5共培養物のフローサイトメトリープロットの実施形態を示す。左端のパネルは、次のパネルでCD43およびCD27にさらにゲートされるCD45およびCD20サブセットを示す。
図12A】CD34およびネスチンのIHCを示す18日目のオルガノイド培養物の組織学の実施形態を示す。
図12B】18日目のオルガノイド培養物におけるDAPI、CD34、およびネスチンを示す免疫蛍光画像の実施形態を示す。
図12C】TPOおよびSCFの発現を示すscRNA-seqデータのt-SNEプロットの実施形態を示す。
図12D】SCFおよびTPOを添加した場合と添加しない場合の18日目のオルガノイド培養物におけるCD34およびCD45のフローサイトメトリープロットの実施形態を示す。
図12E】オルガノイド培養6日目にUCB細胞、SCF、およびTPOを添加した後、オルガノイド培養18日目にマトリゲル液滴あたり産生されたCFCコロニーの数を示すグラフの実施形態を示す。「H+U」は、マトリゲル液滴において組み合わされたHLOおよびUCB細胞を示す。
図12F】1000個のUCB細胞あたり形成されたCFCコロニーの数を示すグラフの実施形態を示す。X軸はオルガノイド培養日数を示す。オルガノイド培養6日目にUCB細胞をHLOと組み合わせた。「UCB」は、HLOと共培養されていない新鮮なUCB細胞対照を示す。「DMEM-RA」は、advanced DMEMのみ(レチノイン酸なし)で共培養されたUCB細胞およびHLOを示す。「HCM」は、4日間のDMEM+RA(オルガノイド培養6~10日目)、続いてHCM肝臓分化培地で共培養されたUCB細胞およびHLOを示す。
図12G図12Fに示される異なる条件でのCFCアッセイにおける異なるコロニー型の相対量を示すグラフの実施形態を示す。
図13A】マウス生着実験のレイアウトを示す概略図の実施形態を示す。
図13B】細胞を注射した7週間後のマウスからの単離されたPMBCにおいてCD45を検出するフローサイトメトリーブロットの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
人工多能性幹細胞(iPSC)からの造血幹細胞(HSC)の作製は、臨床使用の大きな可能性を秘めているが、これまでのところ達成しがたかった。最近の成功は、直接変換のために外因性遺伝子(例えば、ERG、HOXA5、HOXA9、HOXA10、LCOR、RUNX1、SPI1、FOSB、またはGFI1)をiPS細胞または内皮細胞のいずれかに追加することで見られた。しかしながら、この偉業に必要なゲノム操作は、任意の潜在的な臨床翻訳を制限する。同時に、オルガノイド培養系の出現により、最近、複数の細胞型からなる複雑な系を模倣し、制御された環境でそれらを経時的に研究するための強力なツールが研究者に提供された。本明細書に開示されるオルガノイド系は、胎児肝臓微小環境の複雑なニッチを再作製し、クリニックで使用するための細胞を作製することを目的として、インビトロで造血を研究するより効率的な方法を提供する。オルガノイド系における造血細胞の産生は、PCT公開第2020/056158号で検討されている。
【0020】
胎児肝臓における造血は、HSCが大規模に拡大する独特の時間枠である。このため、HSCニッチとしてモデル化するのに特に魅力的である。HSCは培養物中で維持することができないため、これまでのところインビトロでの拡大は限られているが、成長因子のカクテルを使用したマウスHSCで、最近、ある程度の成功が見られた。インビトロHSC拡大のための現在の最先端技術は、細胞を維持および拡大するために造血サイトカインを含む培地の系を実現する。しかしながら、これは、直接および一時的なシグナル伝達を介して相互作用する複数の細胞型を含む複雑な微小環境を完全には再現しない。本明細書に記載のオルガノイド系は、治療用途のHSCの拡大を可能にする方法でこのニッチをモデル化する独特な機会を提供する。
【0021】
胎児肝臓の微小環境をモデル化することにより、胎児発生中に分化する造血細胞の独特の型であるB1細胞の作製が可能になる。これらの細胞は、特に胎児肝臓で作られ、脾臓および腹膜において出生後非常に低いレベルでしか存在しない。成体では非常に少量であるため、ほとんどのB1細胞研究ではマウス細胞を使用するが、ヒトのB1細胞はまだ完全には説明されておらず、潜在的な前駆細胞集団はまだ不明である。B1細胞のもう1つの態様は、刺激を受けることなくIgMを分泌する能力である。このため、それらはワクチン接種中の初期応答に関与する。それらの分化および発生に関する追加の分析は、インビトロでのそれらの作製を可能にし、抗体の有用な供給源を提供し、潜在的なワクチン開発を支援する可能性がある。
【0022】
本明細書に記載のオルガノイド系は、大きな臨床的影響を与えるために配置される。HSC移植を必要とする患者からの細胞は、生成されたiPSCを有し、それを使用して、拒絶反応およびGVHDのリスクなしに再移植することができるカスタマイズされたHSCを作製することができるため、自家または同種異系移植で使用するためのHSCの大量供給の必要性を満たす。
【0023】
以下の発明を実施するための形態では、その一部を形成する添付の図面を参照する。図面では、文脈上別段の指示がない限り、典型的には、類似の記号は類似の構成要素を特定する。発明を実施するための形態、図面、および特許請求の範囲に記載の例示的な実施形態は、限定することを意味するものではない。本明細書に提示される主題の趣旨または範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、他の変更を行うことができる。本明細書に一般的に記載され、図に例示される本開示の態様は、多種多様の異なる構成で配置する、置換する、組み合わせる、分離する、および設計することができ、それらはすべて明示的に企図されることが容易に理解されよう。
【0024】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者が本開示に照らして読んだときに一般に理解されるのと同じ意味を有する。本開示の目的のために、以下の用語を以下に説明する。
【0025】
本明細書の実施形態は、一般に、多数の実施形態を説明するために肯定的な言葉を使用して開示される。実施形態はまた、物質または材料、方法のステップおよび条件、プロトコル、または手順などの主題が全体的または部分的に除外されるものを含む。
【0026】
冠詞「a」および「an」は、本明細書では、冠詞の文法的目的語の1つまたは2つ以上(例えば、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0027】
「約」とは、参照数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さに対して10%程度変動する数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さを意味する。
【0028】
本明細書全体を通して、文脈上別段の必要がない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含むこと」という語は、記載されたステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群を含むことを意味するが、任意の他のステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群を除外することを意味するものではないと理解される。「からなる」とは、「からなる」という句に続くものを含み、これに限定されることを意味する。したがって、「からなる」という句は、列記された要素が必要または必須であり、他の要素が存在しない可能性があることを示す。「本質的にからなる」とは、句の後に列記された任意の要素を含むことを意味し、列記された要素の開示において指定された活動または行動を妨害しないか、またはそれに寄与しない他の要素に限定される。したがって、「本質的にからなる」という句は、列記された要素が必要または必須であることを示すが、他の要素は任意選択であり、列記された要素の活動または行動に重大な影響を与えるかどうかに応じて存在してもしなくてもよい。
【0029】
本明細書で使用される場合、「個体」、「対象」、または「患者」という用語は、本明細書に照らして理解されるそれらの明白な通常の意味を有し、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、非ヒト霊長類、または鳥、例えば、ニワトリ、ならびに任意の他の脊椎動物または無脊椎動物を意味する。「哺乳動物」という用語は、通常の生物学的意味で使用される。したがって、これには、サル(simian)(チンパンジー、類人猿、サル(monkey))、およびヒト、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、げっ歯類、ラット、マウス、モルモットなどを含む霊長類が具体的に含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書で使用される場合、「有効量」または「有効用量」という用語は、本明細書に照らして理解されるそれらの明白な通常の意味を有し、観察可能な効果をもたらす列挙された組成物または化合物のその量を指す。現在開示されている主題の活性組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の主題および/または用途に対して所望の応答を達成するのに有効な活性組成物または化合物の量を投与するように変えることができる。選択される投与量レベルは、組成物の活性、製剤、投与経路、他の薬物または治療との組み合わせ、治療される状態の重症度、ならびに治療される対象の身体的状態および以前の病歴を含むが、これらに限定されない様々な要因に依存する。いくつかの実施形態では、最小用量が投与され、用量制限毒性がない場合、用量は最小有効量に増量される。本明細書では、有効用量の決定および調整、ならびにそのような調整をいつどのように行うかの評価が企図される。
【0031】
本明細書で使用される場合、「機能」および「機能的」という用語は、本明細書に照らして理解されるそれらの明白な通常の意味を有し、生物学的、酵素的、または治療的機能を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「阻害する」という用語は、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、生物学的活性の低減または防止を指す場合がある。低減は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%のパーセンテージ、約それらのパーセンテージ、少なくともそれらのパーセンテージ、少なくとも約それらのパーセンテージ、それらのパーセンテージ以下、または約それらのパーセンテージ以下で、あるいは前述の値のうちの任意の2つで定義された範囲内の量であり得る。本明細書で使用される場合、「遅延」という用語は、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、生物学的事象の、そうでない場合に予想されるよりも遅い時間への遅れ、延長、または延期を指す。遅延は、0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%のパーセンテージ、約それらのパーセンテージ、少なくともそれらのパーセンテージ、少なくとも約それらのパーセンテージ、それらのパーセンテージ以下、もしくは約それらのパーセンテージ以下の遅延であるか、または前述の値のうちの任意の2つで定義された範囲内の量の遅延であり得る。阻害および遅延という用語は、必ずしも100%の阻害または遅延を示すとは限らない。部分的な阻害または遅延が実現され得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、(1)最初に産生されたとき(自然界および/または実験環境であるかにかかわらず)、それが関連する構成要素のうちの少なくとも一部から分離された物質および/もしくは実体、ならびに/または(2)人の手によって産生、調製、および/もしくは製造された物質および/もしくは実体を指す。単離された物質および/または実体は、10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約98%、約99%、実質的に100%、または100%と等しい、約それらの%、少なくともそれらの%、少なくとも約それらの%、それらの%以下、または約それらの%以下(または前述の値を含む、および/またはそれらにわたる範囲)の、それらが最初に関連する他の構成要素から分離され得る。いくつかの実施形態では、単離された化学物質は、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、実質的に100%、または100%純粋、約それらの%純粋、少なくともそれらの%純粋、少なくとも約それらの%純粋、それらの%以下純粋、または約それらの%以下純粋(または前述の値を含む、および/またはそれらにわたる範囲)である。本明細書で使用される場合、「単離される」物質は、「純粋」であり得る(例えば、他の構成要素を実質的に含まない)。本明細書で使用される場合、「単離された細胞」という用語は、多細胞生物または組織に含まれない細胞を指す場合がある。
【0034】
本明細書で使用される場合、「インビボ」は、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、組織抽出物または死んだ生物とは対照的に、生体、通常は動物、ヒトを含む哺乳動物、および植物内での方法の実施を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「エクスビボ」は、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、自然条件の変化がほとんどない生体外での方法の実施を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「インビトロ」は、明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、生物学的条件の外、例えばペトリ皿または試験管内での方法の実施を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「核酸」または「核酸分子」という用語は、本明細書に照らして理解されるそれらの明白な通常の意味を有し、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、自然に細胞に現れるもの、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成された断片、ならびにライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用、およびエキソヌクレアーゼ作用のいずれかによって生成された断片を指す。核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド(DNAおよびRNAなど)である単量体、もしくは天然に存在するヌクレオチドの類似体(例えば、天然に存在するヌクレオチドのエナンチオマー型)、またはその両方の組み合わせから構成され得る。修飾されたヌクレオチドは、糖部分および/またはピリミジンもしくはプリン塩基部分に変化を有し得る。糖修飾には、例えば、1つ以上のヒドロキシル基を、ハロゲン、アルキル基、アミン、およびアジド基に置き換えることが含まれるか、または糖をエーテルもしくはエステルとして官能化することができる。さらに、糖部分全体を、アザ糖および炭素環式糖類似体などの立体的および電子的に類似した構造に置き換えることができる。塩基部分の修飾の例としては、アルキル化プリンおよびピリミジン、アシル化プリンもしくはピリミジン、または他の周知の複素環式置換基が挙げられる。核酸単量体は、ホスホジエステル結合またはそのような連結の類似体によって連結され得る。ホスホジエステル連結の類似体には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニリデート、またはホスホルアミデートが含まれる。「核酸分子」という用語はまた、いわゆる「ペプチド核酸」を含み、これは、ポリアミド骨格に結合した天然に存在するまたは修飾された核酸塩基を含む。核酸は、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る。「オリゴヌクレオチド」は、核酸と交換可能に使用することができ、二本鎖または一本鎖のDNAまたはRNAのいずれかを指し得る。核酸(複数可)は、核酸ベクターまたは核酸構築物(例えば、プラスミド、ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、バクテリオファージ、コスミド、フォスミド、ファージミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、または様々な生物学系における核酸(複数可)の増幅および/または発現に使用され得るヒト人工染色体(HAC))に含まれ得る。典型的には、ベクターまたは構築物はまた、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、インデューサー、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、開始コドン、停止コドン、ポリアデニル化シグナル、複製起点、クローニング部位、複数のクローニング部位、制限酵素部位、エピトープ、レポーター遺伝子、選択マーカー、抗生物質選択マーカー、標的配列、ペプチド精製タグ、もしくはアクセサリー遺伝子、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない要素を含む。
【0038】
核酸または核酸分子は、異なるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードする1つ以上の配列を含み得る。これらの1つ以上の配列は、同じ核酸もしくは核酸分子において隣接して、または間に余分な核酸、例えば、リンカー、リピート、もしくは制限酵素部位を入れて、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、もしくは300塩基長、約それらの塩基長、少なくともそれらの塩基長、少なくとも約それらの塩基長、それらの塩基長以下、もしくは約それらの塩基長以下、または前述の長さのうちの任意の2つで定義される範囲の任意の長さである任意の他の配列により結合され得る。本明細書で使用される場合、核酸の「下流」という用語は、明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、核酸が二本鎖の場合、コード配列(センス鎖)を含む鎖上の前の配列の3'端の後にある配列を指す。本明細書で使用される場合、核酸の「上流」という用語は、明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、核酸が二本鎖の場合、コード配列(センス鎖)を含む鎖上の後続の配列の5'端の前にある配列を指す。本明細書で使用される場合、核酸上の「群化された」という用語は、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、直接、または間に余分な核酸、例えば、リンカー、リピート、もしくは制限酵素部位を入れて、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、もしくは300塩基長、約それらの塩基長、少なくともそれらの塩基長、少なくとも約それらの塩基長、それらの塩基長以下、もしくは約それらの塩基長以下、または前述の長さのうちの任意の2つで定義される範囲の任意の長さである任意の他の配列による(但し、一般に、間に機能または触媒ポリペプチド、タンパク質、またはタンパク質ドメインをコードする配列は入れない)いずれかで、近接して生じる2つ以上の配列を指す。
【0039】
本明細書に記載の核酸は、核酸塩基を含む。一次、標準、天然、または未修飾の塩基は、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、およびウラシルである。他の核酸塩基には、プリン、ピリミジン、修飾された核酸塩基、5-メチルシトシン、シュードウリジン、ジヒドロウリジン、イノシン、7-メチルグアノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、5,6-ジヒドロウラシル、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ブロモウラシル、イソグアニン、イソシトシン、アミノアリル塩基、色素標識塩基、蛍光塩基、またはビオチン標識塩基が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書に照らして理解されるそれらの明白な通常の意味を有し、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸から構成される高分子を指す。ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質の多くの機能は、当技術分野で知られており、酵素、構造、輸送、防御、ホルモン、またはシグナル伝達が含まれるが、これらに限定されない。ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質は、必ずではないが、多くの場合、核酸テンプレートを使用してリボソーム複合体によって生物学的に産生されるが、化学合成も利用することができる。核酸テンプレートを操作することにより、2つ以上のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の置換、欠失、短縮、付加、複製、または融合などのペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質の変異を実施することができる。2つ以上のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のこれらの融合物は、同じ分子において隣接して、または間に余分なアミノ酸、例えば、リンカー、リピート、エピトープ、もしくはタグを入れて、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、もしくは300塩基長、約それらの塩基長、少なくともそれらの塩基長、少なくとも約それらの塩基長、それらの塩基長以下、もしくは約それらの塩基長以下、または前述の長さのうちの任意の2つで定義される範囲の任意の長さである任意の他の配列により結合され得る。本明細書で使用される場合、ポリペプチドの「下流」という用語は、明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、前の配列のC末端の後にある配列を指す。本明細書で使用される場合、ポリペプチドの「上流」という用語は、明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、後続の配列のN末端の前にある配列を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、任意の所与の物質、化合物、または材料の「純度」という用語は、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、予想される存在量に対する物質、化合物、または材料の実際の存在量を指す。例えば、物質、化合物、または材料は、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%純粋(その間のすべての小数を含む)であり得る。純度は、核酸、DNA、RNA、ヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、脂質、細胞膜、細胞片、小分子、分解産物、溶媒、担体、ビヒクル、もしくは汚染物質、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない望ましくない不純物の影響を受ける可能性がある。いくつかの実施形態では、物質、化合物、または材料は、宿主細胞タンパク質、宿主細胞核酸、プラスミドDNA、汚染ウイルス、プロテアソーム、宿主細胞培養構成要素、プロセス関連構成要素、マイコプラズマ、パイロジェン、細菌内毒素、および外来物質を実質的に含まない。純度は、電気泳動、SDS-PAGE、キャピラリー電気泳動、PCR、rtPCR、qPCR、クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、分光法、UV可視分光法、赤外分光法、質量分析法、核磁気共鳴、重量測定、もしくは滴定、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない技術を使用して測定され得る。
【0042】
本明細書で使用される場合、任意の所与の物質、化合物、または材料の「収率」という用語は、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、予想される全体量に対する物質、化合物、または材料の実際の全体量を指す。例えば、物質、化合物、または材料の収率は、予想される全体量の80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100%、約それらの%、少なくともそれらの%、少なくとも約それらの%、それらの%以下、または約それらの%以下(その間のすべての小数を含む)である。収率は、反応またはプロセスの効率、望ましくない副反応、分解、投入物質、化合物、もしくは材料の品質、または産生の任意のステップ中の所望の物質、化合物、もしくは材料の損失によって影響を受ける可能性がある。
【0043】
本明細書で使用される場合、「w/w%」または「重量/重量%」という用語は、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、組成物の総重量に対する成分または薬剤の重量に100を掛けたものに関して表されるパーセンテージを指す。本明細書で使用される場合、「v/v%」または「体積/体積%」という用語は、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、組成物の総液体体積に対する化合物、物質、成分、または薬剤の液体体積に100を掛けたものに関して表されるパーセンテージを指す。
【0044】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、有効量の本明細書に記載の細胞組成物と、薬学的に許容される担体、賦形剤、またはそれらの組み合わせとを含む、本質的にそれらからなる、またはそれらからなる医薬組成物に関する。本明細書に記載の医薬組成物は、ヒトおよび/または獣医の用途に好適である。
【0045】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」は、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、用いられる投与量および濃度でそれに曝露される細胞もしくは哺乳動物に対して無毒であるか、または許容レベルの毒性を有する担体、賦形剤、および/または安定剤を指す。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」「希釈剤」、「賦形剤」、および/または「担体」は、本明細書に照らして理解されるそれらの明白な通常の意味を有し、ヒト、ネコ、イヌ、または他の脊椎動物宿主への投与と適合性のあるありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むことが意図される。典型的には、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、および/または担体は、ヒトならびにネコおよびイヌなどの非ヒト哺乳動物を含む動物で使用するために、連邦政府、州政府、もしくは他の規制機関によって承認された、または米国薬局方もしくは他の一般的に認められた薬局方に列記される希釈剤、賦形剤、および/または担体である。希釈剤、賦形剤、および/または「担体」という用語は、医薬組成物が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指し得る。そのような医薬希釈剤、賦形剤、および/または担体は、石油、動物、植物または合成由来のものを含む、水および油などの減菌液体であり得る。水、生理食塩水、ならびにデキストロースおよびグリセロールの水溶液は、特に注射溶液のための、液体希釈剤、賦形剤、および/または担体として用いることができる。好適な医薬希釈剤および/または賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。生理学的に許容される担体の非限定的な例は、pH緩衝水溶液である。生理学的に許容される担体はまた、以下のうちの1つ以上を含み得る:アスコルビン酸などの抗酸化剤、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、アミノ酸、グルコース、マンノース、もしくはデキストリンなどの炭水化物、EDTAなどのキレート剤、マンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコール、ナトリウムなどの塩形成対イオン、ならびにTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(登録商標)などの非イオン性界面活性剤。組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤、増量剤、乳化剤、またはpH緩衝剤を含むこともできる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、徐放性製剤などの形態をとることができる。製剤は、投与方法に適合している必要がある。
【0046】
凍結保護剤は、大きな氷の結晶の形成を防止することにより、低温凍結保存の効率および収率を改善するための細胞組成物添加剤である。凍結保護剤としては、DMSO、エチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、トレハロース、ホルムアミド、メチル-ホルムアミド、ジメチル-ホルムアミド、グリセロール3-リン酸、プロリン、ソルビトール、ジエチルグリコール、スクロース、トリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、またはヒドロキシエチルデンプンが挙げられるが、これらに限定されない。凍結保護剤は、細胞の解凍後の生存率を向上させるための栄養素(例えば、アルブミン、血清、ウシ血清、ウシ胎仔血清[FCS])などの他の構成要素を含む凍結保存培地の一部として使用され得る。これらの凍結保存培地において、少なくとも1つの凍結保護剤は、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、または約それらの濃度以下で、または前述の数値のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意のパーセンテージの濃度で見出され得る。
【0047】
望ましい特性を有する追加の賦形剤としては、防腐剤、アジュバント、安定剤、溶媒、緩衝液、希釈剤、可溶化剤、洗剤、界面活性剤、キレート剤、抗酸化剤、アルコール、ケトン、アルデヒド、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、塩、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム糖、デキストロース、フルクトース、マンノース、ラクトース、ガラクトース、スクロース、ソルビトール、セルロース、血清、アミノ酸、ポリソルベート20、ポリソルベート80、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、オクチルフェノールエトキシレート、塩化ベンゼトニウム、チメロサール、ゼラチン、エステル、エーテル、2-フェノキシエタノール、尿素、もしくはビタミン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一部の賦形剤は、血清、アルブミン、オボアルブミン、抗生物質、不活性化剤、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、β-プロピオラクトン、ゼラチン、細胞片、核酸、ペプチド、アミノ酸、もしくは成長培地構成要素またはそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない、製造プロセスからの残留量または汚染物質であり得る。賦形剤の量は、0w/w%、0.1w/w%、0.2w/w%、0.3w/w%、0.4w/w%、0.5w/w%、0.6w/w%、0.7w/w%、0.8w/w%、0.9w/w%、1w/w%、2w/w%、3w/w%、4w/w%、5w/w%、6w/w%、7w/w%、8w/w%、9w/w%、10w/w%、20w/w%、30w/w%、40w/w%、50w/w%、60w/w%、70w/w%、80w/w%、90w/w%、95w/w%、100w/w%のパーセンテージ、約それらのパーセンテージ、少なくともそれらのパーセンテージ、少なくとも約それらのパーセンテージ、それらのパーセンテージ以下、もしくは約それらのパーセンテージ以下で、または前述の数値のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の重量パーセンテージで組成物中に見出され得る。
【0048】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、鎮痛剤、治療薬、他の材料などを含むがこれらに限定されない、組成物または賦形剤の比較的非毒性の無機酸および有機酸または塩基付加塩を含む。薬学的に許容される塩の例としては、塩酸および硫酸などの鉱酸に由来するもの、およびエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などの有機酸に由来するものが挙げられる。塩の形成に適した無機塩基の例としては、アンモニア、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛などの水酸化物、炭酸塩、および重炭酸塩が挙げられる。塩はまた、非毒性であり、そのような塩を形成するのに十分に強いものを含む、好適な有機塩基で形成され得る。例えば、そのような有機塩基のクラスは、メチルアミン、ジメチルアミン、およびトリエチルアミンを含む、モノ-、ジ-、およびトリアルキルアミン;モノ-、ジ-、およびトリエタノールアミンを含む、モノ-、ジ-、またはトリヒドロキシアルキルアミン;グリシン、アルギニン、およびリジンを含む、アミノ酸;グアニジン;N-メチルグルコサミン;N-メチルグルカミン;L-グルタミン;N-メチルピペラジン;モルホリン;エチレンジアミン;N-ベンジルフェネチルアミン;トリヒドロキシメチルアミノエタンを含み得るが、これらに限定されない。
【0049】
適切な製剤は、選択した投与経路に依存する。本明細書に記載の化合物の製剤化および投与のための技術は、当業者に知られている。化合物を投与する複数の技術が当技術分野に存在し、これらに限定されないが、経腸、経口、直腸、局所、舌下、頬、耳内、硬膜外、皮膚上、エアロゾル、非経口送達(筋肉内、皮下、動脈内、静脈内、門脈内、関節内、皮内、腹膜、髄内注射、髄腔内、直接脳室内、腹腔内、鼻腔内、または眼内注射を含む)を含む。医薬組成物は、一般に、特定の意図された投与経路に合わせる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「担体」は、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、細胞、組織、および/または身体器官への化合物の通過、送達、および/または組み込みを容易にする化合物、粒子、固体、半固体、液体、または希釈剤を指す。
【0051】
本明細書で使用される場合、「希釈剤」は、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、薬理学的活性を欠くが薬学的に必要または望ましい可能性がある医薬組成物中の成分を指す。例えば、希釈剤を使用して、その質量が製造および/または投与するには小さすぎる強力な薬物のかさを増加させることができる。それはまた、注射、摂取、または吸入によって投与される薬物の溶解のための液体であり得る。当技術分野における希釈剤の一般的な形態は、ヒトの血液の組成を模倣するリン酸緩衝生理食塩水などであるがこれに限定されない緩衝水溶液である。
【0052】
幹細胞
本明細書で使用される場合、「全能性(totipotent)幹細胞」(全能性(omnipotent)幹細胞としても知られる)という用語は、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、胚性および胚外細胞型に分化することができる幹細胞である。そのような細胞は、完全で生存可能な生物を構築することができる。これらの細胞は、卵子および精子細胞の融合から産生される。受精卵の最初の数分割によって産生される細胞も全能性である。
【0053】
本明細書で使用される場合、「胚性幹細胞(ESC)」という用語は、一般にES細胞とも略され、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、多能性であり、初期胚である胚盤胞の内部細胞塊に由来する細胞を指す。本開示の目的のために、「ESC」という用語は、胚性生殖細胞を包含するために広義で使用される場合がある。
【0054】
本明細書で使用される場合、「多能性幹細胞(PSC)」という用語は、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、体のほぼ全ての細胞型、すなわち、内胚葉(胃内壁、消化管、肺)、中胚葉(筋肉、骨、血液、泌尿生殖器)、および外胚葉(表皮組織および神経系)を含む3つの胚葉(胚上皮)のいずれかに由来する細胞に分化することができる任意の細胞を包含する。PSCは、着床前胚盤胞の内部細胞塊細胞の子孫であり得るか、またはある特定の遺伝子の発現を強制することによって、非多能性細胞、例えば成体体細胞の誘導によって得られてもよい。多能性幹細胞は、任意の好適な供給源に由来し得る。多能性幹細胞の供給源の例は、ヒト、げっ歯類、ブタ、およびウシを含む哺乳動物の供給源を含む。
【0055】
本明細書で使用される場合、「人工多能性幹細胞(iPSC)」という用語は、一般にiPS細胞とも省略され、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、ある特定の遺伝子の「強制」発現を誘導することによって、通常、非多能性細胞、例えば成体体細胞から人工的に得られた一種の多能性幹細胞を指す。hiPSCは、ヒトiPSCを指す。当技術分野で知られるいくつかの方法では、iPSCは、ある特定の幹細胞関連遺伝子の成体線維芽細胞などの非多能性細胞へのトランスフェクションによって得ることができる。トランスフェクションは、レトロウイルスまたはレンチウイルスなどのウイルスを使用したウイルス形質導入によって達成され得る。トランスフェクトされた遺伝子は、マスター転写調節因子Oct-3/4(POU5F1)およびSox2を含み得るが、他の遺伝子も誘導の効率を向上させ得る。3~4週間後、少数のトランスフェクトされた細胞は、形態学的および生化学的に多能性幹細胞と同様になり始め、通常、形態学的選択、倍加時間、またはレポーター遺伝子および抗生物質性選択によって単離される。本明細書で使用される場合、iPSCは、第一世代iPSC、マウスにおける第二世代iPSC、およびヒト誘導多能性幹細胞を含む。いくつかの方法において、4つの極めて重要な遺伝子であるOct3/4、Sox2、Klf4、およびc-Mycを使用して多能性幹細胞にヒト線維芽細胞を形質転換するためにレトロウイルス系が使用される。他の方法において、体細胞をOCT4、SOX2、NANOG、およびLIN28で形質転換するためにレンチウイルス系が使用される。iPSCで発現が誘導される遺伝子には、Oct-3/4(POU5F1)、Sox遺伝子ファミリーのある特定のメンバー(例えば、Soxl、Sox2、Sox3、およびSox15)、Klfファミリーのある特定のメンバー(例えば、Klfl、Klf2、Klf4、およびKlf5)、Mycファミリーのある特定のメンバー(例えば、C-myc、L-myc、およびN-myc)、Nanog、LIN28、Tert、Fbx15、ERas、ECAT15-1、ECAT15-2、Tcl1、β-カテニン、ECAT1、Esg1、Dnmt3L、ECAT8、Gdf3、Fth117、Sal14、Rex1、UTF1、Stella、Stat3、Grb2、Prdm14、Nr5a1、Nr5a2、もしくはE-カドヘリン、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書で使用される場合、「前駆細胞」という用語は、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、本明細書に記載の方法で使用することができる任意の細胞を包含し、それを通じて、1つ以上の前駆細胞は、それ自体を再生するか、または1つ以上の特殊化した細胞型に分化する能力を獲得する。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、多能性であるか、または多能性になる能力を有する。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、多能性を獲得するために外部因子(例えば、成長因子)の処理に供される。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、全能性(totipotent)(または全能性(omnipotent))幹細胞、多能性幹細胞(誘導性または非誘導性)、複能性幹細胞、寡能性幹細胞、および単能性幹細胞であり得る。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、胚、乳児、小児、または成人由来であり得る。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、遺伝子操作またはタンパク質/ペプチド処理を介して多能性が付与されるような処理に供される体細胞であり得る。前駆細胞には、胚性幹細胞(ESC)、胚性がん腫細胞(EC)、および胚盤葉上層幹細胞(EpiSC)が含まれる。
【0057】
いくつかの実施形態では、1つのステップは、多能性であるかまたは多能性になるように誘導され得る幹細胞を得ることである。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞は胚性幹細胞に由来し、また、この胚性幹細胞は哺乳動物初期胚の全能性細胞に由来し、インビトロで無限の未分化増殖が可能である。胚性幹細胞は、初期段階の胚である胚盤胞の内部細胞塊に由来する多能性幹細胞である。胚盤胞から胚性幹細胞を誘導するための方法は、当技術分野でよく知られている。ヒト胚性幹細胞H9(H9-hESC)は、本出願に記載の例示的な実施形態で使用されるが、本明細書に記載の方法および系は、任意の幹細胞に適用可能であることが当業者によって理解される。
【0058】
本開示による実施形態で使用することができる追加の幹細胞には、National Stem Cell Bank(NSCB)、San FranciscoのUniversity of California(UCSF)の、Human Embryonic Stem Cell Research Center、Wi Cell Research InstituteのWISC cell Bank、University of Wisconsin Stem Cell and Regenerative Medicine Center(UW-SCRMC)、Novocell,Inc.(San Diego,Calif.)、Cellartis AB(Goteborg,Sweden)、ES Cell International Pte Ltd(Singapore)、Israel Institute of Technology(Haifa,Israel)のTechnion、およびPrinceton UniversityおよびUniversity of Pennsylvaniaによって主宰されるStem Cell Databaseによってホストされるデータベースによって提供されるか、または記載されるものが含まれるが、これらに限定されない。本開示による実施形態で使用することができる例示的な胚性幹細胞には、SA01(SA001)、SA02(SA002)、ES01(HES-1)、ES02(HES-2)、ES03(HES-3)、ES04(HES-4)、ES05(HES-5)、ES06(HES-6)、BG01(BGN-01)、BG02(BGN-02)、BG03(BGN-03)、TE03(13)、TE04(14)、TE06(16)、UCO1(HSF1)、UC06(HSF6)、WA01(HI)、WA07(H7)、WA09(H9)、WA13(H13)、WA14(H14)が含まれるが、これらに限定されない。例示的なヒト多能性細胞株には、TkDA3-4、1231A3、317-D6、317-A4、CDH1、5-T-3、3-34-1、NAFLD27、NAFLD77、NAFLD150、WD90、WD91、WD92、L20012、C213、1383D6、FF、または317-12細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
発生生物学では、細胞分化は、より専門化されていない細胞がより専門化された細胞型になるプロセスである。本明細書で使用される場合、「有向分化」という用語は、より専門化されていない細胞が特定の専門化された標的細胞型になるプロセスを記載する。専門化された標的細胞型の特殊性を、最初の細胞の運命を定義または変更するために使用することができる任意の適用可能な方法によって決定することができる。例示的な方法には、遺伝子操作、化学処理、タンパク質処理、および核酸処理が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
いくつかの実施形態では、アデノウイルスを使用して、必要な4つの遺伝子を輸送し、胚性幹細胞と実質的に同一のiPSCをもたらすことができる。アデノウイルスは、それ自身の遺伝子を標的の宿主と組み合わせないため、腫瘍を創出する危険性が排除される。いくつかの実施形態では、iPSCを生成するために非ウイルスベースの技術が用いられる。いくつかの実施形態では、非常に低い効率ではあるが、いずれのウイルストランスフェクション系も全く使用せずに、プラスミドを介して再プログラミングを達成することができる。他の実施形態では、タンパク質の直接送達を使用してiPSCを生成し、そのようにしてウイルスまたは遺伝子修飾の必要性を排除する。いくつかの実施形態では、マウスiPSCの生成は、同様の方法論を使用して可能である。ポリアルギニンアンカーを介して細胞に運ばれるある特定のタンパク質による細胞の反復処理は、多能性を誘導するのに十分であった。いくつかの実施形態では、低酸素条件下で体細胞をFGF2で処理することによって多能性誘導遺伝子の発現を増加させることもできる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「フィーダー細胞」という用語は、本明細書に照らして理解されるその明白な通常の意味を有し、成長因子を培地に分泌するか、または細胞表面に表示することなどによって、多能性幹細胞の成長を支持する細胞を指す。フィーダー細胞は一般に付着細胞であり、成長を停止させてもよい。例えば、フィーダー細胞は、照射(例えば、ガンマ線)、マイトマイシン-C処理、電気パルス、または穏やかな化学固定(例えば、ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒド)によって成長が停止される。しかしながら、フィーダー細胞は必ずしも成長を停止させる必要はない。フィーダー細胞は、成長因子の分泌、細胞表面への成長因子の表示、培養培地の無毒化、または細胞外マトリックスタンパク質の合成などの目的に役立ち得る。いくつかの実施形態では、フィーダー細胞は、支持された標的幹細胞に対して同種または異種であり、これは、下流の用途に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態では、フィーダー細胞は、マウス細胞である。いくつかの実施形態では、フィーダー細胞は、ヒト細胞である。いくつかの実施形態では、フィーダー細胞は、マウス線維芽細胞、マウス胚性線維芽細胞、マウスSTO細胞、マウス3T3細胞、マウスSNL 76/7細胞、ヒト線維芽細胞、ヒト包皮線維芽細胞、ヒト皮膚線維芽細胞、ヒト脂肪間葉細胞、ヒト骨髄間葉系細胞、ヒト羊膜間葉系細胞、ヒト羊膜上皮細胞、ヒト臍帯間葉系細胞、ヒト胎児筋細胞、ヒト胎児線維芽細胞、またはヒト成人ファロピウス管上皮細胞である。いくつかの実施形態では、フィーダー細胞から調製された馴化培地は、フィーダー細胞共培養の代わりに、またはフィーダー細胞共培養と組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、フィーダー細胞は、標的幹細胞の増殖中に使用されない。
【0062】
血球産生は、単一の細胞型である造血幹細胞から派生し、増殖および分化を通して、全体的な造血系までに至る。造血幹細胞は、自己複製で、幹細胞のそれら自体の集団を拡大することができると考えられ、それらは多能性である(造血系における任意の細胞に分化することができる)。このまれな細胞集団から、リンパ球(免疫系のB細胞とT細胞)および骨髄細胞(赤血球、巨核球、顆粒球、およびマクロファージ)を含む成熟した造血系全体が形成される。B細胞およびT細胞を含むリンパ系統は、抗体の生成、細胞免疫系の調節、血液中の外来物質の検出、宿主にとって異質である細胞の検出などをもたらす。単球、顆粒球、巨核球、ならびに他の細胞を含む骨髄系統は、異物の存在を監視し、新生物細胞に対する防護をもたらし、異物を除去し、血小板を産生する、などを行う。赤血球系統は、酸素運搬体として機能する赤血球をもたらす。
【0063】
肝臓は、外因性化合物の解毒および凝固、ならびに脂質、タンパク質、アンモニウム、および胆汁の産生など、生命に不可欠な多くの代謝機能を提供する重要な器官である。初代肝細胞は、高度に極性の代謝細胞型であり、微絨毛で覆われたチャネルを有する毛細胆管構造を形成し、末梢循環を胆汁酸分泌経路から分離する。患者の肝臓のインビトロ再構成は、再生療法、創薬、および薬物毒性研究を含む用途を提供し得る。初代肝細胞を使用した既存の方法論は、必須の解剖学的構造の欠如に主に起因して、非常に貧弱な機能性を示し、製薬産業におけるそれらの実際的使用を制限している。内在化された微絨毛および間葉系細胞を有する管腔構造を含み、肝細胞、星状細胞、クッパー細胞、および肝臓内皮細胞などの肝臓細胞型を示す肝臓オルガノイドの形成、ならびにそれらの作製および使用の方法は、以前に、PCT公開第2018/085615号、同第2018/085622号、同第2018/085623号、および同第2018/226267号に記載されており、これらのそれぞれは、参照によりその全体が明示的に本明細書に組み込まれる。
【0064】
いくつかの実施形態では、ESC、生殖細胞、またはiPSCは、幹細胞の成長を支持する成長培地で培養される。いくつかの実施形態では、ESC、生殖細胞、またはiPSCは、幹細胞成長培地で培養される。いくつかの実施形態では、幹細胞成長培地は、RPMI 1640、DMEM、DMEM/F12、Advanced DMEM、肝細胞培養培地(HCM)、StemFit、mTeSR 1、またはmTeSR Plus培地である。いくつかの実施形態では、幹細胞成長培地は、ウシ胎仔血清(FBS)を含む。いくつかの実施形態では、幹細胞成長培地は、0%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、もしくは20%の濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下で、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意のパーセンテージ、例えば、0%~20%、0.2%~10%、2%~5%、0%~5%、もしくは2%~20%でFBSを含む。いくつかの実施形態では、幹細胞成長培地は、異種構成要素を含まない。いくつかの実施形態では、成長培地は、1つ以上の小分子化合物、活性化因子、阻害剤、または成長因子を含む。いくつかの実施形態では、幹細胞を、フィーダー細胞基質上で成長させる。いくつかの実施形態では、幹細胞を、フィーダー細胞基質上で成長させない。いくつかの実施形態では、幹細胞を、ラミニンでコーティングされたプレート上で成長させる。いくつかの実施形態では、幹細胞を、FGF2もしくはROCK阻害剤(例えば、Y-27632)、またはその両方を補充して成長させる。いくつかの実施形態では、FGF2は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400、もしくは500ng/mLの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の濃度、例えば、1~500ng/mL、10~200ng/mL、100~150ng/mL、1~100ng/mL、もしくは100~500ng/mLである。いくつかの実施形態では、ROCK阻害剤は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30nMの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義される範囲内の任意の濃度、例えば、1~30nM、5~25nM、10~20nM、1~15nM、もしくは10~30nMである。いくつかの実施形態では、幹細胞を、ラミニンでコーティングされたプレート上で成長させる。
【0065】
胚体内胚葉分化方法
多能性細胞(例えば、iPSCまたはESC)から胚体内胚葉(DE)を産生するための任意の方法が、本明細書に記載の方法に適用可能である。例示的な方法は、例えば、米国特許第9,719,068号に開示されている。いくつかの実施形態では、iPSCを使用して胚体内胚葉を産生する。
【0066】
いくつかの実施形態では、1つ以上の成長因子が、多能性幹細胞からDE細胞への分化プロセスにおいて使用される。いくつかの実施形態では、分化プロセスで使用される1つ以上の成長因子は、TGF-ベータスーパーファミリーからの成長因子を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の成長因子は、成長因子のTGF-ベータスーパーファミリーのNodal/アクチビンおよび/またはBMPサブグループを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の成長因子は、Nodal、アクチビンA、アクチビンB、BMP4、またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、PSCを、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、もしくは240時間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の時間数、例えば、1~240時間、20~120時間、30~50時間、1~100時間、もしくは50~240時間、1つ以上の成長因子と接触させる。いくつかの実施形態では、PSCを、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、もしくは1000ng/mLの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下で、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の濃度、例えば、10~1000ng/mL、50~800ng/mL、100~500ng/mL、10~200ng/mL、もしくは100~1000ng/mLで、1つ以上の成長因子と接触させる。いくつかの実施形態では、1つ以上の成長因子の濃度は、接触の期間を通して一定のレベルで維持される。いくつかの実施形態では、1つ以上の成長因子の濃度は、接触の期間中に変化する。いくつかの実施形態では、1つ以上の成長因子は、成長培地に溶解される。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞が豊富である細胞の集団が使用される。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞は、単離されるか、または実質的に精製される。いくつかの実施形態では、単離されたまたは実質的に精製された胚体内胚葉細胞は、OCT4、AFP、TM、SPARC、またはSOX7マーカーのうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、3、5つ)よりも大きな程度まで、SOX17、FOXA2、またはCXRC4マーカーのうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、3つ)を発現する。
【0067】
いくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞を、本明細書に記載のシグナル伝達経路の1つ以上のモジュレーターと接触させる。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48時間、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下、あるいは前述の日数または時間数のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の時間数または日数、例えば、1時間~20日間、20時間~10日間、1時間~48時間、1日~20日間、1時間~5日間、または24時間~20日間、シグナル伝達経路の1つ以上のモジュレーターで処理される。いくつかの実施形態では、シグナル伝達経路の1つ以上のモジュレーターの濃度は、接触の期間を通して一定のレベルで維持される。いくつかの実施形態では、シグナル伝達経路の1つ以上のモジュレーターの濃度は、接触の期間中に変化する。
【0068】
いくつかの実施形態では、胚体内胚葉を前腸スフェロイドに分化させるために、胚体内胚葉細胞を、FGF経路およびWnt経路の1つ以上のモジュレーターと接触させる。いくつかの実施形態では、Wntおよび/またはFGFシグナル伝達経路に関連する細胞成分、例えば、経路の天然の阻害剤、アンタゴニスト、活性化因子、またはアゴニストを使用して、Wntおよび/またはFGFシグナル伝達経路の阻害または活性化をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、Wntおよび/またはFGFシグナル伝達経路に関連する細胞成分を標的にするsiRNAおよび/またはshRNAを使用して、これらの経路を阻害または活性化する。
【0069】
線維芽細胞成長因子(FGF)は、血管新生、創傷治癒、および胚発生に関与する成長因子のファミリーである。FGFはヘパリン結合タンパク質であり、細胞表面関連ヘパラン硫酸プロテオグリカンとの相互作用がFGFシグナル伝達に不可欠であることが示されている。FGFは、多種多様な細胞および組織の増殖および分化のプロセスで重要な役割を果たす。ヒトでは、FGFファミリーの22のメンバーが特定されており、そのすべてが構造的に関連するシグナル伝達分子である。メンバーFGF1~FGF10はすべて、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)に結合する。FGF1は酸性としても知られており、FGF2は塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)としても知られている。FGF相同因子1~4(FHF1~FHF4)としても知られるメンバーFGF11、FGF12、FGF13、およびFGF14は、FGFと比較して明確な機能差を有することが示されている。これらの因子は非常に類似した配列相同性を有するが、それらはFGFRに結合せず、FGFとは無関係の細胞内プロセスに関与している。このグループは「iFGF」としても知られている。メンバーFGF15~FGF23はより新しく、十分に特徴付けされていない。FGF15は、ヒトFGF19のマウスオルソログである(したがって、ヒトFGF15はない)。ヒトFGF20は、Xenopus FGF-20(XFGF-20)とのその相同性に基づいて特定された。他のFGFの局所活性とは対照的に、FGF15/FGF19、FGF21、およびFGF23は、より全身的な効果を有する。いくつかの実施形態では、使用されるFGFは、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15(FGF19、FGF15/FGF19)、FGF16、FGF17、FGF18、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、3、5つ)である。いくつかの実施形態では、使用されるFGFは、FGF4である。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉を、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、もしくは2000ng/mLの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下で、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の濃度、例えば、10~2000ng/mL、50~1500ng/mL、500~100ng/mL、10~1000ng/mL、もしくは500~2000ng/mLで、FGFと接触させる。
【0070】
いくつかの実施形態では、胚体内胚葉を前腸スフェロイドに分化させるために、胚体内胚葉を、Wntタンパク質または活性化因子と接触させる。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉を、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3)阻害剤と接触させる。GSK3阻害剤は、Wnt経路を活性化するように作用する。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉を、GSK3阻害剤カイロン(CHIR99021)と接触させる。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉を、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10μMの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下のCHIR99021で、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の濃度、例えば、0.1~10μM、0.4~6μM、1~5μM、0.1~1μM、または0.5~10μMのCHIR99021で、CHIR99021と接触させる。
【0071】
いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、中胚葉を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、中胚葉細胞を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、中胚葉系前駆細胞を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、間葉を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、間葉系細胞を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、間葉系幹細胞を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、間葉系前駆細胞を含む。いくつかの実施形態では、中胚葉、中胚葉細胞、中胚葉系前駆細胞、間葉、間葉系細胞、間葉系幹細胞、もしくは間葉系前駆細胞のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)、またはそれらの任意の組み合わせが、造血性内皮集団に分化する。いくつかの実施形態では、間葉は、造血性内皮集団に分化する。いくつかの実施形態では、造血性内皮集団は、CD34造血性内皮集団である。いくつかの実施形態では、造血性内皮集団は、本明細書に記載の肝臓オルガノイドのうちのいずれか1つの造血性内皮集団である。
【0072】
前腸スフェロイド分化方法
いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、肝臓オルガノイドに分化される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、前腸スフェロイドをレチノイン酸(RA)と接触させることによって肝臓オルガノイドに分化される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドとの接触から産生される肝臓オルガノイドは、成熟肝臓組織に似ている。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、胎児肝臓組織により密接に似ている肝臓オルガノイドに分化される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、前腸スフェロイドをRAと接触させないことによって、胎児肝臓組織により密接に似ている肝臓オルガノイドに分化される。
【0073】
いくつかの実施形態では、胎児肝臓オルガノイドは、マトリゲル液滴法によって産生される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、100%マトリゲルに包埋され、マトリゲルを固化するために37℃でインキュベートされる。いくつかの実施形態では、マトリゲルに包埋された前腸スフェロイドを、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の日数の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義される範囲内の任意の日数、例えば、1~30日間、10~20日間、12~18日間、1~20日間、または10~30日間、レチノイン酸(例えば、DMEM/F12)を含まない培地で成長させる。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを、デキサメタゾン、オンコスタチンM、または肝細胞成長因子のうちの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせを含まない培地で成長させる。
【0074】
いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方を、サイトカインと接触させる。いくつかの実施形態では、サイトカインは、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン34(IL-34)、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、またはそれらの任意の組み合わせを伝達している。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方は、サイトカインと接触させる前に単一細胞に解離される。いくつかの実施形態では、サイトカインは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000ng/mL、もしくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000μg/mLの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の濃度、例えば、1ng/mL~1000μg/mL、50ng/mL~100μg/mL、500ng/mL~10μg/mL、1ng/mL~1000ng/mL、1μg/mL~1000μg/mL、1ng/mL~50μg/mL、または100ng/mL~1000μg/mLである。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは50日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の日数、例えば、1~50日間、5~40日間、10~30日間、1~30日間、もしくは20~50日間、サイトカインと接触させる。
【0075】
いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方を、ノッチ活性化因子またはリガンドと接触させる。ノッチシグナル伝達は、造血性内皮における二次造血(definitive hematopoiesis)を確立する上で重要であり、ノッチ活性化因子またはリガンドは、ノッチシグナル伝達経路を活性化する。いくつかの実施形態では、ノッチリガンドは、ノッチ活性化因子である。いくつかの実施形態では、ノッチ活性化因子またはリガンドとの接触は、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方におけるCD45造血細胞の産生を増加させる。いくつかの実施形態では、ノッチ活性化因子またはリガンドとの接触は、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方によって産生される赤血球の数を増加させる。いくつかの実施形態では、ノッチ活性化因子またはリガンドとの接触は、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方におけるIL-6の発現を増加させる。いくつかの実施形態では、ノッチ活性化因子またはリガンドとの接触は、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方におけるHES1の発現を増加させる。いくつかの実施形態では、ノッチ活性化因子またはリガンドは、DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ノッチ活性化因子またはリガンドは、DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)、またはそれらの任意の組み合わせを発現する細胞を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)のノッチ活性化因子またはリガンドを発現する細胞を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)のノッチ活性化因子を発現する。いくつかの実施形態では、ノッチ活性化因子またはリガンドは、DLL4である。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方は、ノッチ活性化因子またはリガンドと接触させる前に単一細胞に解離される。いくつかの実施形態では、ノッチ活性化因子またはリガンドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000ng/mL、もしくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000μg/mLの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の濃度、例えば、1ng/mL~1000μg/mL、50ng/mL~100μg/mL、500ng/mL~10μg/mL、1ng/mL~1000ng/mL、1μg/mL~1000μg/mL、1ng/mL~50μg/mL、または100ng/mL~1000μg/mLである。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは50日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の日数、例えば、1~50日間、5~40日間、10~30日間、1~30日間、もしくは20~50日間、ノッチ活性化因子またはリガンドと接触させる。
【0076】
いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方のアルブミン分泌が定量化される。いくつかの実施形態では、アルブミン分泌は、ELISAによって定量化される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方は、免疫組織化学によって検査される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方は、アルブミン、CD34、もしくはCD45発現、またはそれらの任意の組み合わせについて検査される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方は、フローサイトメトリーによって検査される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方は、CD45、CD34、CD11b、CD19、CD27、CD43、もしくはCD45発現、またはそれらの任意の組み合わせについて検査される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方は、造血コロニー形成細胞アッセイで検査される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方は、赤血球コロニー、骨髄コロニー、またはリンパ球コロニー、またはそれらの任意の組み合わせを産生する。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方は、RT-qPCRによって検査される。いくつかの実施形態では、RT-qPCRは、配列番号1~12の配列を使用して実施される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方を、RT-qPCRによって検査して、AFP、ALB、CD34、HBG1、HES1、もしくはHES5、またはそれらの任意の組み合わせの発現を定量化する。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドもしくは肝臓オルガノイド、またはその両方は、単一細胞RNA配列決定によって検査される。
【0077】
いくつかの実施形態では、造血幹細胞(HSC)を産生する肝臓オルガノイドを産生する方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、人工多能性幹細胞を、人工多能性幹細胞を胚体内胚葉に分化させるのに十分な条件下で培養することと、胚体内胚葉を、胚体内胚葉を前腸スフェロイドに分化させるのに十分な条件下で培養することと、前腸スフェロイドを、前腸スフェロイドを肝臓オルガノイドに分化させるのに十分な条件下で培養することと、を含む。いくつかの実施形態では、方法は、人工多能性幹細胞を、人工多能性幹細胞を胚体内胚葉に分化させるのに十分な条件下で培養することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、胚体内胚葉を、胚体内胚葉を前腸スフェロイドに分化させるのに十分な条件下で培養することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、前腸スフェロイドを、前腸スフェロイドを肝臓オルガノイドに分化させるのに十分な条件下で培養することを含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを、前腸スフェロイドを肝臓オルガノイドに分化させるのに十分な条件下で培養することは、前腸スフェロイドを、FGFシグナル伝達経路活性化因子、Wntシグナル伝達経路活性化因子、もしくはBMP阻害剤のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3つ)、またはそれらの任意の組み合わせと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを、前腸スフェロイドを肝臓オルガノイドに分化させるのに十分な条件下で培養することは、前腸スフェロイドを、FGFシグナル伝達経路活性化因子もしくはWntシグナル伝達経路活性化因子、またはその両方と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、FGFシグナル伝達経路活性化因子は、FGF4である。いくつかの実施形態では、Wntシグナル伝達経路活性化因子は、CHIR99021である。いくつかの実施形態では、BMP阻害剤は、ノギンである。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、中胚葉を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、中胚葉細胞を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、中胚葉系前駆細胞を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、間葉を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、間葉系細胞を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、間葉系幹細胞を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、間葉系前駆細胞を含む。いくつかの実施形態では、中胚葉、中胚葉細胞、中胚葉系前駆細胞、間葉、間葉系細胞、間葉系幹細胞、間葉系幹細胞、もしくは間葉系前駆細胞のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)、またはそれらの任意の組み合わせが、造血性内皮集団に分化する。いくつかの実施形態では、造血性内皮集団は、CD34造血性内皮集団である。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、CD34造血性内皮集団を含む。いくつかの実施形態では、造血性内皮集団は、造血幹細胞に分化する。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドの造血性内皮集団は、前腸スフェロイドの、中胚葉、中胚葉細胞、中胚葉系前駆細胞、間葉、間葉細胞、間葉系幹細胞、もしくは間葉系前駆細胞のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)、またはそれらの任意の組み合わせから分化される。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドの造血性内皮集団は、前腸スフェロイドの間葉から分化される。いくつかの実施形態では、造血性内皮集団は、赤血球に分化する。いくつかの実施形態では、造血性内皮集団は、外因性造血サイトカインを添加することなく赤血球に分化する。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、肝集団、赤血球集団、もしくは造血性内皮集団のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3つ)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、EpCAMを発現する細胞を含む。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、CD34内皮を含む。いくつかの実施形態では、CD34内皮は、ノッチ1、ノッチ4、HEY1、HEY2、DLL4、もしくはGATA2のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、3、5つ)、またはそれらの任意の組み合わせを発現する。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、GYPAを発現する赤血球細胞を含む。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、CD45を発現する造血細胞を含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、人工多能性幹細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは50日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義される範囲内の任意の日数、例えば、1~50日間、5~40日間、10~30日間、1~30日間、もしくは20~50日間培養される。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは50日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義される範囲内の任意の日数、例えば、1~50日間、5~40日間、10~30日間、1~30日間、もしくは20~50日間培養される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは50日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義される範囲内の任意の日数、例えば、1~50日間、5~40日間、10~30日間、1~30日間、もしくは20~50日間培養される。
【0079】
いくつかの実施形態では、人工多能性幹細胞を培養することは、人工多能性幹細胞をアクチビンAまたはBMP4のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1または2つ)と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉を培養することは、胚体内胚葉をCHIR99021またはFGFのうちの1つ以上(例えば、少なくとも1または2つ)と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、前腸スフェロイドをBMP4およびFGF2のうちの1つ以上と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、細胞外マトリックスにおいて、前腸スフェロイドをBMP4およびFGF2のうちの1つ以上と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、前腸スフェロイドをノッチ活性化因子またはリガンドと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、ノッチ活性化因子またはリガンドは、DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2のうちの1つ以上(例えば、少なくとも、1、3、5つ)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ノッチ活性化因子またはリガンドは、DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2のうちの1つ以上(例えば、1、3、5つ)、またはそれらの任意の組み合わせを発現する細胞を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)のノッチ活性化因子またはリガンドを発現する細胞を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)のノッチ活性化因子またはリガンドを発現する。いくつかの実施形態では、ノッチ活性化因子またはリガンドは、DLL4である。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、前腸スフェロイドを、IL-3、IL-34、もしくはGM-CSFのうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3つ)、またはそれらの任意の組み合わせと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、前腸スフェロイドを、幹細胞因子(SCF)もしくはトロンボポエチン(TPO)、またはその両方と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、前腸スフェロイドを、IL-3、IL-34、EPO、G-CSF、GM-CSF、SCF、もしくはTPOのうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)、またはそれらの任意の組み合わせと接触させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、前腸スフェロイドをレチノイン酸(RA)と接触させることを含まない。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、前腸スフェロイドを、RA、デキサメタゾン、オンコスタチンM、もしくは肝細胞成長因子のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4つ)、またはそれらの任意の組み合わせと接触させることを含まない。
【0080】
造血幹細胞を産生する肝臓オルガノイドを産生する方法が本明細書に記載される。本方法は、前腸スフェロイドを、前腸スフェロイドを肝臓オルガノイドに分化させるのに十分な条件下で培養することを含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、間葉を含む。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、造血幹細胞に分化するCD34造血性内皮集団を含む。いくつかの実施形態では、CD34造血性内皮集団は、前腸スフェロイドの間葉に由来する。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、PSC、iPSC、または胚体内胚葉を培養することによって得られる。いくつかの実施形態では、PSCまたはiPSCは、胚体内胚葉を得るために、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、1、2、3、4、もしくは5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間培養される。いくつかの実施形態では、PSCまたはiPSCは、胚体内胚葉を得るために、1、2、3、4、もしくは5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間、アクチビンAもしくはBMP4、またはその両方と培養される。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉は、前腸スフェロイドを得るために、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、1、2、3、4、または5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間培養される。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉は、前腸スフェロイドを得るために、1、2、3、4、もしくは5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間、FGF4もしくはCHIR99021、またはその両方と培養される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、前腸スフェロイドをノッチ活性化因子またはリガンドと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、ノッチ活性化因子またはリガンドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50μg/mLの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下で、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の濃度、例えば、1ng/mL~50μg/mL、5ng/mL~40μg/mL、10ng/mL~30μg/mL、1ng/mL~20ng/mL、もしくは5μg/mL~20μg/mLで提供される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の日数、例えば、1~20日間、5~15日間、10~14日間、1~15日間、もしくは5~20日間、ノッチ活性化因子またはリガンドと接触させる。
【0081】
造血幹細胞を産生する肝臓オルガノイドを産生する方法が本明細書に記載される。本方法は、前腸スフェロイドを肝臓オルガノイドに分化させるのに十分な条件下で前腸スフェロイドを培養することを含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、間葉を含む。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、造血幹細胞に分化するCD34造血性内皮集団を含む。いくつかの実施形態では、CD34造血性内皮集団は、前腸スフェロイドの間葉に由来する。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、PSC、iPSC、または胚体内胚葉を培養することによって得られる。いくつかの実施形態では、PSCまたはiPSCは、胚体内胚葉を得るために、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、1、2、3、4、もしくは5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間培養される。いくつかの実施形態では、PSCまたはiPSCは、胚体内胚葉を得るために、1、2、3、4、もしくは5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間、アクチビンAもしくはBMP4、またはその両方と培養される。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉は、前腸スフェロイドを得るために、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、1、2、3、4、または5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間培養される。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉は、前腸スフェロイドを得るために、1、2、3、4、もしくは5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間、FGF4もしくはCHIR99021、またはその両方と培養される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、前腸スフェロイドを、ノッチ活性化因子もしくはリガンドDLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)、またはそれらの任意の組み合わせと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、ノッチ活性化因子もしくはリガンドDLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)、またはそれらの任意の組み合わせは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50μg/mLの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下で、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の濃度、例えば、1ng/mL~50μg/mL、5ng/mL~40μg/mL、10ng/mL~30μg/mL、1ng/mL~20ng/mL、もしくは5μg/mL~20μg/mLで提供される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の日数、例えば、1~20日間、5~15日間、10~14日間、1~15日間、もしくは5~20日間、ノッチ活性化因子もしくはリガンドDLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)、またはそれらの任意の組み合わせと接触させる。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)のノッチ活性化因子またはリガンドを発現する細胞を含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、DLL1、DLL3、DLL4、JAG1、もしくはJAG2、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)のノッチ活性化因子またはリガンドを発現する。いくつかの実施形態では、ノッチ活性化因子またはリガンドは、DLL4である。
【0082】
造血幹細胞を産生する肝臓オルガノイドを産生する方法が本明細書に記載される。本方法は、前腸スフェロイドを、前腸スフェロイドを肝臓オルガノイドに分化させるのに十分な条件下で培養することを含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、間葉を含む。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、造血幹細胞に分化するCD34造血性内皮集団を含む。いくつかの実施形態では、CD34造血性内皮集団は、前腸スフェロイドの間葉に由来する。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、PSC、iPSC、または胚体内胚葉を培養することによって得られる。いくつかの実施形態では、PSCまたはiPSCは、胚体内胚葉を得るために、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、1、2、3、4、もしくは5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間培養される。いくつかの実施形態では、PSCまたはiPSCは、胚体内胚葉を得るために、1、2、3、4、もしくは5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間、アクチビンAもしくはBMP4、またはその両方と培養される。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉は、前腸スフェロイドを得るために、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、1、2、3、4、または5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間培養される。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉は、前腸スフェロイドを得るために、1、2、3、4、もしくは5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間、FGF4もしくはCHIR99021、またはその両方と培養される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、前腸スフェロイドをDLL4と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、DLL4は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50μg/mLの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下で、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の濃度、例えば、1ng/mL~50μg/mL、5ng/mL~40μg/mL、10ng/mL~30μg/mL、1ng/mL~20ng/mL、もしくは5μg/mL~20μg/mLで提供される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の日数、例えば、1~20日間、5~15日間、10~14日間、1~15日間、もしくは5~20日間、DLL4と接触させる。
【0083】
造血幹細胞を産生する肝臓オルガノイドを産生する方法が本明細書に記載される。本方法は、前腸スフェロイドを、前腸スフェロイドを肝臓オルガノイドに分化させるのに十分な条件下で培養することを含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、間葉を含む。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、造血幹細胞に分化するCD34造血性内皮集団を含む。いくつかの実施形態では、CD34造血性内皮集団は、前腸スフェロイドの間葉に由来する。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、PSC、iPSC、または胚体内胚葉を培養することによって得られる。いくつかの実施形態では、PSCまたはiPSCは、胚体内胚葉を得るために、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、1、2、3、4、もしくは5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間培養される。いくつかの実施形態では、PSCまたはiPSCは、胚体内胚葉を得るために、1、2、3、4、もしくは5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間、アクチビンAもしくはBMP4、またはその両方と培養される。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉は、前腸スフェロイドを得るために、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、1、2、3、4、または5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間培養される。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉は、前腸スフェロイドを得るために、1、2、3、4、もしくは5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間、FGF4もしくはCHIR99021、またはその両方と培養される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、前腸スフェロイドをサイトカインと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、サイトカインは、0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、もしくは200ng/mLの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下の濃度で、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義される範囲内の任意の濃度、例えば、0~200ng/mL、50~150ng/mL、80~120ng/mL、0~100ng/mL、もしくは100~200ng/mLで提供される。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL-3、IL-34、またはGM-CSFのうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3つ)、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の日数、例えば、1~20日間、5~15日間、10~14日間、1~15日間、もしくは5~20日間、ノッチ活性化因子またはリガンドと接触させる。
【0084】
造血幹細胞を産生する肝臓オルガノイドを産生する方法が本明細書に記載される。本方法は、前腸スフェロイドを、前腸スフェロイドを肝臓オルガノイドに分化させるのに十分な条件下で培養することを含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、間葉を含む。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、造血幹細胞に分化するCD34造血性内皮集団を含む。いくつかの実施形態では、CD34造血性内皮集団は、前腸スフェロイドの間葉に由来する。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、PSC、iPSC、または胚体内胚葉を培養することによって得られる。いくつかの実施形態では、PSCまたはiPSCは、胚体内胚葉を得るために、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、1、2、3、4、もしくは5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間培養される。いくつかの実施形態では、PSCまたはiPSCは、胚体内胚葉を得るために、1、2、3、4、もしくは5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間、アクチビンAもしくはBMP4、またはその両方と培養される。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉は、前腸スフェロイドを得るために、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、1、2、3、4、または5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間培養される。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉は、前腸スフェロイドを得るために、1、2、3、4、もしくは5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間、FGF4もしくはCHIR99021、またはその両方と培養される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、前腸スフェロイドを、サイトカインSCF、IL-3、IL-6、IL-34、EPO、TPO、G-CSF、もしくはGM-CSFのうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)、またはそれらの任意の組み合わせと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、サイトカインSCF、IL-3、IL-6、IL-34、EPO、TPO、G-CSF、もしくはGM-CSFのうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)、またはそれらの任意の組み合わせは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、もしくは200ng/mLの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下で、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の濃度、例えば、0~200ng/mL、5~10ng/mL、20~100ng/mL、もしくは100~200ng/mLで提供される。いくつかの実施形態では、サイトカインSCF、IL-3、IL-6、IL-34、EPO、TPO、G-CSF、もしくはGM-CSFのうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)、またはそれらの任意の組み合わせは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100μg/mLの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下で、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の濃度、例えば、0~100μg/mL、1~10μg/mL、10~50μg/mL、20~100μg/mL、または5~15μg/mLで提供される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の日数、例えば、1~20日間、5~15日間、10~14日間、1~15日間、もしくは5~20日間、サイトカインSCF、IL-3、IL-6、IL-34、EPO、TPO、G-CSF、もしくはGM-CSFのうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5つ)、またはそれらの任意の組み合わせと接触させる。
【0085】
造血幹細胞を産生する肝臓オルガノイドを産生する方法が本明細書に記載される。本方法は、前腸スフェロイドを、前腸スフェロイドを肝臓オルガノイドに分化させるのに十分な条件下で培養することを含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、間葉を含む。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、造血幹細胞に分化するCD34造血性内皮集団を含む。いくつかの実施形態では、CD34造血性内皮集団は、前腸スフェロイドの間葉に由来する。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、PSC、iPSC、または胚体内胚葉を培養することによって得られる。いくつかの実施形態では、PSCまたはiPSCは、胚体内胚葉を得るために、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、1、2、3、4、もしくは5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間培養される。いくつかの実施形態では、PSCまたはiPSCは、胚体内胚葉を得るために、1、2、3、4、もしくは5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間、アクチビンAもしくはBMP4、またはその両方と培養される。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉は、前腸スフェロイドを得るために、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、1、2、3、4、または5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間培養される。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉は、前腸スフェロイドを得るために、1、2、3、4、もしくは5日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、または約それらの日数以下の間、FGF4もしくはCHIR99021、またはその両方と培養される。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを培養することは、前腸スフェロイドを、IL-3、IL-34、もしくはGM-CSFのうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3つ)、またはそれらの任意の組み合わせと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、IL-3、IL-34、もしくはGM-CSFのうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3つ)、またはそれらの任意の組み合わせは、0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、もしくは200ng/mLの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下で、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義される範囲内の任意の濃度、例えば、0~200ng/mL、50~150ng/mL、80~120ng/mL、0~100ng/mL、もしくは100~200ng/mLで提供される。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL-3、IL-34、またはGM-CSFのうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3つ)、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドを、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の日数、例えば、1~20日間、5~15日間、10~14日間、1~15日間、もしくは5~20日間、IL-3、IL-34、もしくはGM-CSFのうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3つ)、またはそれらの任意の組み合わせと接触させる。
【0086】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つは、人工多能性幹細胞を、人工多能性幹細胞を胚体内胚葉に分化させるのに十分な条件下で培養することと、胚体内胚葉を、胚体内胚葉を前腸スフェロイドに分化させるのに十分な条件下で培養した後に、前腸スフェロイドを、前腸スフェロイドを肝臓オルガノイドに分化させるのに十分な条件下で培養することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つは、胚体内胚葉を、胚体内胚葉を前腸スフェロイドに分化させるのに十分な条件下で培養した後に、前腸スフェロイドを、前腸スフェロイドを肝臓オルガノイドに分化させるのに十分な条件下で培養することをさらに含む。いくつかの実施形態では、人工多能性幹細胞を胚体内胚葉に分化させるのに十分な条件は、胚体内胚葉を得るために、人工多能性幹細胞をアクチビンAもしくはBMP4、またはその両方と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉を前腸スフェロイドに分化させるのに十分な条件は、前腸スフェロイドを得るために、胚体内胚葉をFGF4もしくはCHIR99021、またはその両方と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、中胚葉、中胚葉細胞、中胚葉系前駆細胞、間葉、間葉系細胞、間葉系幹細胞、もしくは間葉系前駆細胞、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、前腸スフェロイドは、間葉を含む。いくつかの実施形態では、人工多能性幹細胞、胚体内胚葉、前腸スフェロイド、もしくは肝臓オルガノイドのうちの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせは、本明細書に記載の方法により調製される。いくつかの実施形態では、人工多能性幹細胞、胚体内胚葉、前腸スフェロイド、もしくは肝臓オルガノイドのうちの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせは、PCT公開第2018/085615号、同第2018/191673号、同第2018/226267号、同第2019/126626号、同第2020/023245号、同第2020/056158号、および同第2020/069285号に記載される方法により調製され、これらのそれぞれは、人工多能性幹細胞、胚体内胚葉、前腸スフェロイド、もしくは肝臓オルガノイド、またはそれらの任意の組み合わせを産生する目的のために、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0087】
本明細書に記載されるように、肝臓オルガノイドのいくつかの実施形態は、造血性内皮細胞、造血細胞、造血幹細胞、もしくは造血前駆細胞のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3つ)、またはそれらの任意の組み合わせを産生する。いくつかの実施形態では、造血性内皮細胞、造血細胞、造血幹細胞、もしくは造血前駆細胞のうちの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせは、肝臓オルガノイドの間葉に由来する。いくつかの実施形態では、造血性内皮細胞、造血細胞、造血幹細胞、もしくは造血前駆細胞のうちの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせは、肝臓オルガノイドに分化する前腸スフェロイドの間葉に由来する。いくつかの実施形態では、造血性内皮細胞、造血細胞、造血幹細胞、もしくは造血前駆細胞、またはそれらの任意の組み合わせは、肝臓オルガノイドから単離される。いくつかの実施形態では、単離される造血性内皮細胞、造血細胞、造血幹細胞、もしくは造血前駆細胞、またはそれらの任意の組み合わせは、必要とする個体に投与される。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドから単離される造血性内皮細胞、造血細胞、造血幹細胞、もしくは造血前駆細胞、またはそれらの任意の組み合わせは、個体に対して同種異系である。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、個体に対して自家であり、結果として、造血性内皮細胞、造血細胞、造血幹細胞、もしくは造血前駆細胞、またはそれらの任意の組み合わせもまた、個体に対して自家である。いくつかの実施形態では、造血性内皮細胞、造血細胞、造血幹細胞、もしくは造血前駆細胞、またはそれらの任意の組み合わせは、ERG、HOXA5、HOXA9、HOXA10、LCOR、RUNX1、SPI1、FOSB、もしくはGFI1のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、3、5つ)、またはそれらの任意の組み合わせを外因的に発現していない。
【0088】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、肝臓オルガノイドから、造血性内皮集団もしくは造血幹細胞、またはその両方を単離することを含む。いくつかの実施形態では、造血性内皮集団もしくは造血幹細胞、またはその両方を単離することは、CD34+、CD45+、またはその両方である肝臓オルガノイドから細胞集団を選別することによって実施される。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、肝臓オルガノイドからリンパ球細胞を単離することを含む。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つによって産生された肝臓オルガノイドのうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、リンパ球細胞は、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つによって産生された肝臓オルガノイドのうちのいずれか1つから単離される。いくつかの実施形態では、リンパ球細胞は、B細胞、T細胞、NK細胞、または一般的なリンパ球前駆細胞のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、B細胞は、B1細胞である。いくつかの実施形態では、B細胞は、B2細胞である。いくつかの実施形態では、B細胞は、B1細胞およびB2細胞の両方である。いくつかの実施形態では、単離されるリンパ球細胞は、B1細胞である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、肝臓オルガノイドから単一細胞懸濁液を作製することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、間質細胞上で単一細胞懸濁液を培養することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、リンパ球細胞を単離する前に間質細胞上で単一細胞懸濁液を培養することを含む。いくつかの実施形態では、間質細胞上で単一細胞懸濁液を培養することは、単一細胞懸濁液においてリンパ球細胞を拡大する。いくつかの実施形態では、間質細胞は、MS-5細胞である。いくつかの実施形態では、単一細胞懸濁液は、間質細胞上で、2、3、4、または5週間の数週、約それらの数週、少なくともそれらの数週、少なくとも約それらの数週、それらの数週以下、または約それらの数週以下の間培養される。いくつかの実施形態では、単一細胞懸濁液を、1つ以上のサイトカインと接触させる。いくつかの実施形態では、1つ以上のサイトカインまたはそれらの任意の組み合わせは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、もしくは200ng/mLの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下で、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の濃度、例えば、0~200ng/mL、5~10ng/mL、20~100ng/mL、もしくは100~200ng/mLで提供される。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドを、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の日数、例えば、1~20日間、5~15日間、10~14日間、1~15日間、もしくは5~20日間、1つ以上のサイトカインと接触させる。いくつかの実施形態では、単一細胞懸濁液を、SCF、IL-3、IL-6、IL-7、IL-34、EPO、TPO、G-CSF、GM-CSF、もしくはFms様チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3リガンド、FLT3L)のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3つ)、またはそれらの任意の組み合わせと接触させる。いくつかの実施形態では、SCF、IL-3、IL-6、IL-7、IL-34、EPO、TPO、G-CSF、GM-CSF、もしくはFLT3リガンドのうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3つ)、またはそれらの任意の組み合わせは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、もしくは200ng/mLの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下で、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の濃度、例えば、0~200ng/mL、5~10ng/mL、20~100ng/mL、もしくは100~200ng/mLで提供される。いくつかの実施形態では、SCF、IL-3、IL-6、IL-7、IL-34、EPO、TPO、G-CSF、GM-CSF、もしくはFLT3リガンドのうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3つ)、またはそれらの任意の組み合わせは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100μg/mLの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下で、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の濃度、例えば、0~100μg/mL、1~10μg/mL、10~50μg/mL、20~100μg/mL、または5~15μg/mLで提供される。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドを、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数の任意の2つで定義された範囲内の任意の日数、例えば、1~20日間、5~15日間、10~14日間、1~15日間、もしくは5~20日間、SCF、IL-3、IL-6、IL-7、IL-34、EPO、TPO、G-CSF、GM-CSF、もしくはFLT3リガンドのうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3つ)、またはそれらの任意の組み合わせと接触させる。いくつかの実施形態では、単一細胞懸濁液を、FLT3リガンド、SCF、もしくはIL-7のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3つ)、またはそれらの任意の組み合わせと接触させる。いくつかの実施形態では、FLT3リガンド、SCF、もしくはIL-7のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3つ)、またはそれらの任意の組み合わせは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、もしくは200ng/mLの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下で、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の濃度、例えば、0~200ng/mL、5~10ng/mL、20~100ng/mL、もしくは100~200ng/mLで提供される。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドを、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の日数、例えば、1~20日間、5~15日間、10~14日間、1~15日間、もしくは5~20日間、FLT3リガンド、SCF、もしくはIL-7のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3つ)、またはそれらの任意の組み合わせと接触させる。いくつかの実施形態では、リンパ球細胞を単離することは、単一細胞懸濁液から細胞集団を選別することによって実施される。いくつかの実施形態では、リンパ球細胞は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは50日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義される範囲内の任意の日数、例えば、10~50日間、15~40日間、20~30日間、10~30日間、もしくは20~50日間培養した後に、単一細胞懸濁液から単離される。いくつかの実施形態では、B1細胞は、CD20CD43CD27CD70である。いくつかの実施形態では、B1細胞を単離することは、CD20、CD43、もしくはCD27のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3つ)、またはそれらの任意の組み合わせである単一細胞懸濁液から細胞集団を選別することによって実施される。いくつかの実施形態では、B1細胞は、自己免疫特性を有するか、または表面IgMを生得的に発現するか、あるいはその両方である。いくつかの実施形態では、B1細胞は、UCB細胞には見られない。いくつかの実施形態では、B1細胞は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは50日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義される範囲内の任意の日数、例えば、10~50日間、15~40日間、20~30日間、10~30日間、もしくは20~50日間培養した後に、単一細胞懸濁液から単離される。
【0090】
いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団を拡大する方法が提供される。いくつかの実施形態では、胎児肝臓もしくは肝臓オルガノイド、またはその両方における造血幹細胞は、ネスチン門脈管に関連している。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、幹細胞因子(SCF)もしくはトロンボポエチン(TPO)、またはその両方を発現し、これは、HSCの拡大および維持を誘導する。いくつかの実施形態では、方法は、肝臓オルガノイドと接触して造血幹細胞の集団を培養することを含む。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、造血ニッチ環境を含む。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つによって産生または単離される肝臓オルガノイドである。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団を培養することは、造血幹細胞の集団を、1つ以上のサイトカインと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団を培養することは、造血幹細胞の集団を、SCFもしくはTPO、またはその両方と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、SCFもしくはTPO、またはその両方は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、もしくは200ng/mLの濃度、約それらの濃度、少なくともそれらの濃度、少なくとも約それらの濃度、それらの濃度以下、もしくは約それらの濃度以下で、または前述の濃度のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の濃度、例えば、0~200ng/mL、5~10ng/mL、20~100ng/mL、もしくは100~200ng/mLで提供される。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、もしくは25日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義された範囲内の任意の日数、例えば、1~25日間、5~20日間、10~20日間、1~20日間、もしくは10~25日間、SCFもしくはTPO、またはその両方と接触させる。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の拡大された集団は、多能性を維持する。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の拡大された集団は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは50日間の日数、約それらの日数、少なくともそれらの日数、少なくとも約それらの日数、それらの日数以下、もしくは約それらの日数以下の間、または前述の日数のうちの任意の2つで定義される範囲内の任意の日数、例えば、1~50日間、5~40日間、10~30日間、1~30日間、もしくは20~50日間多能性を維持する。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、臍帯血、動員された末梢血、骨髄、多能性幹細胞、胚性幹細胞、胎児肝臓、もしくは胎児脾臓、またはそれらの任意の組み合わせから得られる。いくつかの実施形態では、RA、デキサメタゾン、オンコスタチンM、もしくは肝細胞成長因子のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4つ)、またはそれらの任意の組み合わせで分化される肝臓オルガノイドは、造血細胞ならびに未分化の胎児様肝臓オルガノイドを支持しない。
【0091】
いくつかの実施形態では、拡大される造血幹細胞の集団は、個体に移植される。いくつかの実施形態では、個体は、マウスである。いくつかの実施形態では、個体は、免疫無防備状態のマウスである。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、免疫無防備状態のヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、造血幹細胞を必要とする個体である。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、個体に注射される。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、大腿内に注射される。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、肝臓オルガノイド細胞を注射される。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、肝臓オルガノイド細胞が残っていない造血幹細胞の集団を単離した後に注射される。いくつかの実施形態では、個体は、SCFもしくはTPO、またはその両方も投与される。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、個体に生着される。いくつかの実施形態では、造血幹細胞を必要とする個体は、再生不良性貧血、ファンコニ貧血、ダイヤモンド-ブラックファン症候群、鎌状赤血球症、サラセミア、発作性夜間ヘモグロビン尿症、チェディアック・東症候群、慢性肉芽腫性疾患、グランツマン血小板無力症、大理石骨病、ゴーシェ病、ニーマン-ピック病、ムコ多糖症、糖タンパク質症、免疫不全症、AIDS、毛細血管拡張性運動失調症、ディジョージ症候群、重度の複合免疫不全症、ウィスコット・アルドリッチ症候群、コストマン症候群、シュワックマン・ダイアモンド症候群、白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、有毛細胞白血病、慢性リンパ球性白血病、骨髄異形成、ホジキン病、非ホジキン病、多発性骨髄腫、骨髄増殖性腫瘍、骨髄線維症、真性多血症、慢性骨髄性白血病、神経芽細胞腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、ユーイング肉腫、もしくは絨毛がん、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない状態の治療、阻害、または改善を必要とする。
【0092】
いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、肝臓オルガノイドに対して自家または同種異系である。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、個体から得られる。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、個体から得られた細胞から分化される。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、個体に由来する人工多能性幹細胞から産生される。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団および肝臓オルガノイドは、同じ個体から得られるか、またはそれに由来する。いくつかの実施形態では、個体は、造血幹細胞を必要とする個体である。
【0093】
造血幹細胞の集団を必要とする個体に投与する方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、造血幹細胞の単離された集団である。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、拡大、産生、もしくは単離されるか、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、必要とする個体に対して自家または同種異系である。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、必要とする個体に対して自家である。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、必要とする個体に対して同種異系である。
【0094】
造血性内皮集団を必要とする個体に投与する方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、造血性内皮集団は、単離された造血性内皮集団である。いくつかの実施形態では、造血性内皮集団は、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、産生もしくは単離されるか、またはその両方である。いくつかの実施形態では、造血性内皮集団は、必要とする個体に対して自家である。いくつかの実施形態では、造血性内皮集団は、必要とする個体に対して同種異系である。
【0095】
リンパ球細胞を必要とする個体に投与する方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、リンパ球細胞は、単離されたリンパ球細胞である。いくつかの実施形態では、リンパ球細胞は、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、産生もしくは単離されるか、またはその両方である。いくつかの実施形態では、リンパ球細胞は、必要とする個体に対して自家である。いくつかの実施形態では、リンパ球細胞は、必要とする個体に対して同種異系である。いくつかの実施形態では、リンパ球細胞は、B細胞、T細胞、NK細胞、もしくは一般的なリンパ球前駆細胞のうちの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、B細胞は、B1細胞もしくはB2細胞、またはその両方である。
【0096】
B1細胞を必要とする個体に投与する方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、B1細胞は、単離されたB1細胞である。いくつかの実施形態では、B1細胞は、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、産生もしくは単離されるか、またはその両方である。いくつかの実施形態では、B1細胞は、必要とする個体に対して自家である。いくつかの実施形態では、B1細胞は、必要とする個体に対して同種異系である。
【0097】
細胞組成物の実施形態が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、細胞組成物は、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つによって産生される肝臓オルガノイドを含む。いくつかの実施形態では、細胞組成物は、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つによって産生または単離された造血性内皮集団を含む。いくつかの実施形態では、細胞組成物は、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つによって産生または単離された造血幹細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞組成物は、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つによって産生または単離されたB1細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞組成物は、本明細書に記載の他の細胞組成物の任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、細胞組成物は、本明細書に開示される肝臓オルガノイド、造血性内皮集団、造血幹細胞、もしくはB1細胞のうちの1つ以上(例えば、少なくとも1、2、3、4つ)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、細胞組成物は、造血幹細胞の集団と、肝臓オルガノイドと、を含む。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団は、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、調製もしくは単離されるか、またはその両方である。いくつかの実施形態では、肝臓オルガノイドは、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより、調製もしくは単離されるか、またはその両方である。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団および肝臓オルガノイドは、同じ個体からであるか、それから得られるか、またはそれに由来する。いくつかの実施形態では、造血幹細胞の集団および肝臓オルガノイドは、異なる個体からであるか、それから得られるか、またはそれに由来する。
【実施例
【0098】
上記の実施形態のいくつかの態様は、以下の実施例でさらに詳細に開示されており、これらは、本開示の範囲を限定することを決して意図するものではない。当業者は、本明細書の上記および特許請求の範囲に記載されているように、他の多くの実施形態も本開示の範囲内に含まれることを理解するであろう。
【0099】
実施例1.材料および方法
hPSCの維持
ヒトiPSC株を以前に説明されているように維持した(Takebeら、2015、Takebeら、2014)。未分化のhiPSCを、ラミニン(PBS中1%のiMatrix-511 silk)でコーティングされたプレート上のStemFit培地(StemCell Technologies)において、フィーダーフリー条件で、37℃で2時間維持した。iPSCを、5%CO中37℃で、100ng/mLのFGF2および10nMのROCK阻害剤Y-27632を補充したStemFit培地において、8×10細胞/ウェルの6ウェル細胞培養処理プレート(BD Falcon)に播種した。
【0100】
胚体内胚葉誘導
以前に説明されている方法にわずかに修正を加えて(Spenceら、2011)、ヒトiPSCの胚体内胚葉への分化を誘導した。簡単に説明すると、ヒトiPSCのコロニーを、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、Life Technologies)中のAccutase(Thermo Fisher)において単離し、150,000細胞/mLを、1日目に100ng/mLのアクチビンA(R&D Systems)および50ng/mLの骨形成タンパク質4(BMP4、R&D Systems)を補充し、3日目に100ng/mLのアクチビンAおよび2%胎仔ウシ血清(FCS)を補充したRPMI 1640培地(Life Technologies)において、組織培養プレート上の1/30希釈のマトリゲルにプレーティングした。4~6日目に、細胞を、B27(Life Technologies)およびN2(Gibco)を補充したAdvanced DMEM(Thermo Fisher)において培養し、さらに500ng/mLの線維芽細胞成長因子4(FGF4、R&D Systems)および3μMのCHIR99021(Stemgent)を補充した。細胞を、5%CO中、37℃で維持し、培地を毎日交換した。分化の7日目にスフェロイドがプレート上に現れた。
【0101】
ヒト肝臓オルガノイド(HLO)形成
7日目に、スフェロイドを手動ピペッティングで収集し、遠心分離によりペレット化した。培地を吸引し、細胞ペレットを均質化するために穏やかにピペッティングすることにより、細胞を100%マトリゲルに包埋した。必要に応じて、ノッチ活性化因子またはリガンド(例えば、10μg/mLのDLL4)をマトリゲルに添加する。あるいは、任意選択で、オルガノイドとの共培養のために、UCB細胞(例えば、75μLのマトリゲルあたり1,000個のUCB細胞)をマトリゲルに添加する。胚体内胚葉培養の24ウェルプレートのウェルあたり250μLのマトリゲル(Corning)を使用した。新しい24ウェルプレート(VWR)の各ウェルに1滴ずつ、75μLのマトリゲル液滴を作製した。プレートを5%CO/95%空気の雰囲気下で37℃に5~15分間放置した。マトリゲルが固化した後、1×B27、1×N2、2mMのL-グルタミン、15mMのHEPES、および1×ペニシリン/ストレプトマイシンを含むAdvanced DMEM/F12をウェルに添加した。この培地に、20ng/mLのBMP4および10ng/mLのFGF2を4日間補充した後、BMP4およびFGF2を除去した。
【0102】
アルブミンELISA
HLOのアルブミン分泌レベルを測定するために、マトリゲルに包埋したHLOから200μLの培養上清を収集した。培地交換の24時間後に培養上清を収集し、使用するまで-80℃で保存した。上清は、製造元の指示に従い、Human Albumin ELISA Quantitation Setキット(Bethyl Laboratories、E80-129)を用いてアッセイした。
【0103】
組織学
マトリゲル液滴中の試料を収集し、4%のパラホルムアルデヒドに固定し、パラフィンに包埋した。切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)、ならびに免疫組織化学的染色に供した。以下の一次抗体を使用した:抗ヒトアルブミン(Sigma Aldrich、A668)、抗ヒトCD34(Roche、760-2620)、抗ヒトCD45(Roche、760-2505)。
【0104】
フローサイトメトリー
オルガノイドをマトリゲル液滴から単離し、1×PBSで洗浄した。HLOを、トリプシン-EDTA(0.05%、フェノールレッドを含む、Gibco)で10分間処理することにより、単一細胞に解離した。細胞を10%のFBSを含むDMEM/F12において洗浄し、2%のFBSを含むPBSに懸濁した。濾過後(例えば、40~50μmナイロンフィルタを通して)、単一細胞を以下の抗体を用いたフローサイトメトリーに供した:抗CD45-APC(Miltenyl、130-098-143)、抗CD34-APC/Cy7(BioLegend、343513)、抗CD11b-PE/Cy7(BioLegend、301322)、抗CD19-BV421(BioLegend、302233)、抗CD27-AF700(BioLegend、356415)、抗CD43-FITC(BioLegend、315204)。マウス生着実験には、抗マウスCD45-BV421(BioLegend、103133)を使用した。
【0105】
コロニー形成細胞(CFC)アッセイ
150,000細胞/mLを、3mLのMethoCult SF H4436無血清メチルセルロースベースの培地(StemCell Technologies)にプレーティングした。混合物を60mmの皿に均等に分配し、37℃の加湿チャンバー内で14日間維持した後、光学顕微鏡で検査した。使用した培地は、インスリン、トランスフェリン、サイトカインとしてSCF、IL-3、IL-6、EPO、G-CSF、およびGM-CSFを含む。SCF、IL-3、IL-6、G-CSF、およびGM-CSFは100ng/mLで補充され、EPOは1~8IU/mL(約10~100ng/mL)で補充される。
【0106】
Cytospinおよびギムザ染色
CFCアッセイからの細胞を、PBSで洗浄することによってメチルセルロース培地から収集し、7,000個の細胞を、Cytospin遠心分離機(500rpmで10分間)を使用してガラスのスライド上に薄層として適用した。スライドを風乾し、製造元の指示に従って、Wright-Giemsa染色キット(Thermo Fisher)で染色した後、光学顕微鏡で検査した。
【0107】
マウス移植
NSG-SGM3(NSGS、NOD-scid IL2Rgnull-3/GM/SF)マウスを繁殖させ、動物管理施設に収容した。動物実験は、動物管理委員会により承認された施設のガイドラインに従って実施された。細胞注射の24時間前にIP注射によって投与されたブスルファン(10μL容量中30μg/g体重)でマウスを亜致死的に免疫切除した。細胞を大腿内に注射した。オルガノイド培養物を臍帯血(UCB)CD34細胞と共培養し、培地に幹細胞因子(SCF)およびトロンボポエチン(TPO)を12日間補充した。2×10HLO+UCB細胞または2×10UCB CD34細胞のみを、マウスに注射した。7週間後、大腿骨髄および血液を収集し、フローサイトメトリーにより分析した。
【0108】
RNA単離およびRT-qPCR
RNeasyミニキット(Qiagen)を使用して、RNAを単離した。逆転写を、製造元のプロトコルに従って、High-Capacity cDNA逆転写キット(Thermo Fisher)を使用して実行した。qPCRを、QuantStudio 3リアルタイムPCRシステム(Thermo Fisher)で、TaqMan Gene Expression Master Mix(Applied Biosystems)およびUniversal Probe Library(Roche)のプローブを使用して2つ組で実行した。各標的遺伝子のすべてのプライマーおよびプローブ情報は、Universal Probe Library Assay Design Center(ワールドワイドウェブのqpcr.probefinder.com/organism.jspからアクセス可能)から得た。プライマーは以下のとおりである:
アルファ-フェトプロテイン(AFP)フォワード:tgtactgcagagataagtttagctgac(配列番号1)
AFPリバース:tccttgtaagtggcttcttgaac(配列番号2)
アルブミン(ALB)フォワード:gtgaggttgctcatcggttt(配列番号3)
ALBリバース:gagcaaaggcaatcaacacc(配列番号4)
CD34フォワード:ggcacagctggaggtcttat(配列番号5)
CD34リバース:tgttcaggcatcagagaagtg(配列番号6)
ヘモグロビンサブユニットガンマ-1(HBG1)フォワード:tggatcctgagaacttcaagc(配列番号7)
HBG1リバース:gccactgcagtcaccatct(配列番号8)
HES1フォワード:gaagcacctccggaacct(配列番号9)
HES1リバース:gtcacctcgttcatgcactc(配列番号:10)
HES5フォワード:cccggggttctatgatatttg(配列番号11)
HES5リバース:gccctgaagaaagtcctctaca(配列番号12)
【0109】
受入番号は、HUGO Gene Nomenclature Committee IDとして入手することができる:AFP(HGNC:317)、ALB(HGNC:399)、CD34(HGNC:1662)、HBG1(HGNC:4831)、HES1(HGNC:5192)、HES5(HGNC:19764)、EPO(HGNC:3415)、TPO(THPO、HGNC:11795)、SCF(KITリガンド、KITLG、HGNC:6343)。
【0110】
単一細胞RNA配列決定
HLOをマトリゲル液滴から単離し、1×PBSで洗浄した。HLOを、トリプシン-EDTA(0.05%、フェノールレッドを含む、Gibco)で10分間処理することにより、単一細胞に解離した。細胞を10%のFBSを含むDMEM/F12において洗浄し、2%のFBSを含むPBSに懸濁した。次に、細胞は単一細胞RNA-seqライブラリ調製を受け、10X Genomics Chromiumプラットフォームで配列決定され、2868個の細胞が分析のために回収された。配列決定されたリードは、バーコードおよびリードデータの逆多重化およびfastqファイルへの変換から開始して、Cell Ranger遺伝子発現パイプラインmkfastqおよびcountを使用して処理された。生のリードをHg19ゲノムにアラインメントしてフィルタリングし、遺伝子バーコードマトリックスを作製した。AltAnalyzeで分析を実施し、目的変数なしの分析によって遺伝子および細胞のクラスターが特定され、発現クラスタリングを介して優勢試料群が特定された。外れ値を削除した後、クラスターは、>5細胞、ピアソン相関の最小値0.5、およびクラスター間の倍率変化>4を有するように制限された。細胞周期の影響は取り除かれた。クラスターベースのヒートマップおよび対応するtSNEプロットは、Rv3.3.3を使用して生成された。細胞クラスターの同一性は、ToppGene(ワールドワイドウェブのtoppgene.cchmc.orgで入手可能)の系統相関および存在論分析によって決定された。tSNEプロットは、Loupe Cell Browser v1.0.5によって確立された。
【0111】
実施例2.肝内胚葉および造血性内皮の並行分化
胎児肝臓環境を模倣するために、iPSC由来の中腸スフェロイドを、アクチビンAの存在下で内胚葉誘導により産生し、本明細書に記載されるマトリゲル液滴に包埋した。次に、中腸スフェロイドを、初期の肝臓特定に重要であるBMP4およびFGF2の存在下で培養した。得られたオルガノイド培養物は、アルブミン(ALB)およびアルファ-フェトプロテイン(AFP)を含む肝遺伝子、および内皮マーカーCD34を発現した(図1A~D)。オルガノイドはまた、胎児ヘモグロビンを発現する造血集団を含んだ(ヘモグロビンガンマサブユニットの存在によって証明される)。追加の分析により、オルガノイド系には、外因性造血サイトカインを添加せずに赤血球を産生することができる造血性内皮集団が含まれていることが明らかになった(図1A)。これは、14日目のオルガノイド培養物の単一細胞RNA配列決定(scRNA-seq)によってさらに検証された。発現プロファイル分析は、この時点で、中胚葉および外胚葉マーカーを発現する大きな間葉集団に加えて、3つの目的の集団が存在したことを示した(図2、3)。目的のクラスターは、肝集団、赤血球集団、および造血性内皮集団を含んだ(図4A~C)。これらの造血性内皮細胞は、コロニー形成細胞(CFC)アッセイによってさらに分析され、このアッセイでは、オルガノイド培養物からの細胞が単一細胞懸濁液に分散され、サイトカインを含むメチルセルロースベースの培地にプレーティングされた。プレーティングした細胞は赤血球および骨髄コロニーの両方を産生し、オルガノイド培養の14日目頃にコロニー形成のピークが発生した(図5A~B)。
【0112】
実施例3.ノッチ依存性造血性内皮の出現
肝臓オルガノイド培養物の組織学的検査により、グリコホリンA(CD235a、GYPA)を発現する隣接する赤血球細胞およびCD45発現造血細胞を伴ってCD34内皮とともに上皮細胞接着分子(EpCAM)発現細胞が明らかになった(図6A~B)。CD34発現細胞の経時的分析により、CD34細胞の数が、CFCアッセイ活性のピークの前に減少したことが明らかになった(図6C~D)。
【0113】
ノッチシグナル伝達は、造血性内皮における二次造血を確立する上で重要であることが以前に示された。具体的には、ノッチ受容体ノッチ1およびノッチ4は、ノッチリガンドJAG1、JAG2、およびDLL4とともに大動脈内皮細胞によって発現され、造血性内皮を介した初期の造血に不可欠である。このプロセス中に、受容体ノッチ1またはノッチ4を発現する内皮細胞は、リガンドDLL4を発現する隣接する内皮細胞と相互作用して、HES1/5、HEY1/2、GATA2などの下流の標的遺伝子の発現の増加をもたらす。ノッチシグナル伝達の急激な増加は、オルガノイド培養の10日目頃にピークに達するHES1発現レベルの増加によって証明される。このピークは、CFCアッセイによって示される造血活性のピークの直前であり、12~14日目頃にピークに達する(図6D~E)。CD34を検出するためのオルガノイド細胞のフローサイトメトリーは、オルガノイドが分化するにつれてCD34細胞数が着実に減少することを示した(図6C)。本明細書に記載のオルガノイド系の個体群動態をよりよく理解するために、14日目のオルガノイド培養物をscRNA-seqにより分析した。CD34内皮集団のより厳密な分析により、ノッチシグナル伝達遺伝子ノッチ1、ノッチ4、HEY1、HEY2、DLL4、およびGATA2の非常に特異的な発現が明らかになった(図7A、4C)。
【0114】
オルガノイド培養系におけるノッチ依存性を試験するために、オルガノイド播種中にノッチリガンドDLL4(1~10μg/mL)をマトリゲル液滴に添加し、オルガノイド成長培地に造血サイトカインIL-3、IL-34、およびGM-CSF(各100ng/mL)を補充した(図7B)。DLL4を添加すると、CD45造血細胞の産生におけるサイトカインの効率が高まった(図8)。これにより、IL-6の発現が大幅に増加し、アルブミンの発現はわずかに減少したのみであった(図9A~B)。逆に、ノッチ活性を阻害するためにγ-セクレターゼ阻害剤DAPTで処理されたオルガノイド培養物は、アルブミン発現を維持しながら、目に見える赤血球およびHES1発現の減少をもたらした(図10A~D)。
【0115】
実施例4.オルガノイド培養からのB1細胞の作製
二次造血は、骨髄およびリンパ系統両方の産生を特徴とする。本明細書に記載のオルガノイド培養物のリンパ球の可能性を検査するために、細胞をオルガノイド培養の14日目頃に収集し、コンフルエントなMS-5マウス間質細胞にプレーティングして、B細胞に分化させた(図11A~B)。MS-5細胞を、5ng/mLのFLT3リガンド(FLT3L)、100ng/mLのSCF、および5ng/mLのIL-7を補充した培地で培養する。発生中、胎児肝臓は、独特のB1細胞集団源である。これらの細胞は、HSCとは独立して発生するという点で成体(B2)細胞とは異なる。B1細胞は、自己免疫特性を有し、本質的に表面IgMを発現し、CD20CD43CD27CD70であることが記載されている。オルガノイドからの細胞を、MS-5共培養からのB細胞のそれらの産生においてUCB細胞と比較した。興味深いことに、オルガノイドおよびUCBの両方がB細胞分化を示すことができた一方で、オルガノイド由来のB細胞集団は、UCB細胞から再作製することができなかった独特のB1細胞表現型を含んだ。FACS分析により、CD20CD43CD27細胞の集団が明らかになった(図11C)。
【0116】
実施例5.造血ニッチ環境の作製
造血幹細胞および前駆細胞は、まだ完全には理解されていない、特に胎児肝臓のHSCが大規模に拡大する胎児の発生中の、特定の複雑なニッチ環境内に存在する。本明細書に記載のオルガノイド培養物における造血細胞の起源をよりよく理解するために、造血ニッチマーカーについてオルガノイド細胞を分析した。胎児肝臓におけるHSCは、ネスチン門脈管に関連している。オルガノイド培養物内で、CD34細胞のポケットもネスチン染色により密接に関連して見られ、scRNA-seqは、CD34/ネスチン共発現細胞の集団も示した(図12A~B、4A~D)。興味深いことに、scRNA-seqは、肝集団とクラスター化した細胞が、HSCの拡大および維持に不可欠であり、エクスビボでHSCを拡大する試みでよく使用される幹細胞因子(SCF)およびトロンボポエチン(TPO)を発現したことも明らかにした(図12C)。
【0117】
オルガノイド培養物におけるニッチ環境をさらに試験するために、CD34ヒトUCB細胞をオルガノイド播種中にマトリゲル液滴に添加した。外因性組換えSCFおよびTPOを成長培地に添加して、造血細胞の産生および維持の効率を改善した。100ng/mLのSCFおよび10ng/mLのTPOを添加すると、オルガノイド培養物におけるCD34およびCD45細胞の産生が大幅に増加し、形成されるコロニーの数も増加した(図12D~E)。
【0118】
これらの結果が造血ニッチの存在に起因するのか、または単なる造血分化をもたらす中胚葉集団の汚染によるものなのかを判断するために、オルガノイド培養物と混合した後にUCB細胞がコロニーを形成する能力を検査した。レチノイン酸(RA)、続いて肝細胞培養培地(HCM、Lonza)を添加し、任意選択で0.1μMのデキサメタゾン、10ng/mLのオンコスタチンM、および10ng/mLの肝細胞成長因子(HGF)を補充したオルガノイドの肝分化の促進は、造血コロニー形成能力の着実な低下をもたらした。逆に、肝分化を制限するために変更された本明細書に記載のプロトコルは、コロニー形成細胞の存在およびそれらの多様な分化能を維持し、胎児肝臓造血の一過性段階をモデル化し、未成熟肝集団の存在に依存する独特のニッチの存在を示す(図12F~G)。
【0119】
UCB細胞は、免疫不全のレシピエントに生着し、完全な造血系を再構築することができる。しかしながら、これらの細胞の潜在的な治療用途の制限要因は、インビトロで培養または拡大することができないことである。本明細書に記載のオルガノイド系のニッチ環境をさらに分析するために、オルガノイドと共培養した後のUCB細胞の生着を試験した。UCB細胞をマトリゲル液滴においてオルガノイドと組み合わせ、オルガノイド培養6日目に成長培地にSCFおよびTPOを補充した。12日後、UCBおよびオルガノイド細胞を単一細胞懸濁液に収集し、NSGSマウスの骨髄に大腿内注射した。7週間後、マウスはヒト特異的CD45細胞の生着を示した(図13A~B)。得られた生着は、共培養なしの約16%の生着と比較して、UCB細胞をオルガノイドと共培養した後、約3%の生着であった。この生着は新鮮な臍帯血細胞と比較して減少しているが、オルガノイドなしで同じ条件で培養されたUCBは、生着可能性をすぐに失った。したがって、これは、生着能力を維持しながら、HSCを培養するための新しい系を提供する。
【0120】
本明細書に示されるように、ヒトiPSCに由来する新規の胎児肝臓オルガノイド系は、共生共分化系において肝細胞および造血細胞の両方を生じさせることができる。この系の造血細胞は、造血性内皮集団から生じ、サイトカインの存在下で骨髄系統およびリンパ系統の両方に分化する。オルガノイド細胞をMS-5マウス間質細胞と共培養すると、フローサイトメトリーによって特定されるように、胎児B1様細胞集団が生じる。UCB細胞のオルガノイドとの共培養後の生着は限られたが、この系は、自然環境を模倣することで培養中のHSCを維持する新しい方法の証拠を提供する。
【0121】
前述の実施形態の少なくともいくつかでは、実施形態で使用される1つ以上の要素は、そのような置換が技術的に実現可能でない限り、別の実施形態で交換可能に使用することができる。当業者は、特許請求される主題の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法および構造に対して、他の様々な省略、追加、および修正を行うことができることを理解されたい。そのようなすべての修正および変更は、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、主題の範囲内に入ることが意図されている。
【0122】
本明細書における実質的に任意の複数形および/または単数形の用語の使用に関して、当業者は、文脈および/または用途に適切であるように、複数形から単数形へ、および/または単数形から複数形へと翻訳することができる。明確にするために、様々な単数形/複数形の順列が本明細書に明示的に記載され得る。
【0123】
一般に、本明細書で、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本文)で使用される用語は、一般に「非限定」用語であることが意図される(例えば、「含む(including)」という用語は、「含むがこれに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」という用語は「含むがこれに限定されない」と解釈されるべきであるなど)。特定数の導入された請求項の記載が意図されている場合、そのような意図は請求項に明示的に記載され、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しないことが当業者によってさらに理解されるであろう。例えば、理解を助けるために、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の記載を導入するための「少なくとも1つ」および「1つ以上」という導入句の使用を含み得る。しかしながら、そのような句の使用は、不定冠詞「a」または「an」による請求項の記載の導入が、同じ請求項が、「1つ以上」または「少なくとも1つ」という導入句、および「a」または「an」などの不定冠詞が含まれる場合でも、そのような導入された請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、そのような記載を1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではなく(例えば、「a」および/または「an」は「少なくとも1つ」または「1つ以上」と解釈されるべきである)、請求項の記載を導入するために使用される定冠詞の使用にも同じことが当てはまる。加えて、特定数の導入された請求項の記載が明示的に記載される場合でも、そのような記載は、少なくとも記載された数を意味するように解釈されるべきであることを当業者は認識するであろう(例えば、他の修飾語のない、単なる「2つの記載」の記載は、少なくとも2つの記載、または2つ以上の記載を意味する)。さらに、「A、B、およびCなどのうちの少なくとも1つ」に類似する表記が使用される場合、一般に、そのような構成は、当業者が慣習を理解するという意味で意図されている(例えば、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つを有する系」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを一緒に、AおよびCを一緒に、BおよびCを一緒に、ならびに/またはA、B、およびCを一緒に有する系などを含むが、これらに限定されない)。「A、B、またはCなどのうちの少なくとも1つ」に類似する表記が使用される場合、一般に、そのような構成は、当業者が慣習を理解するという意味で意図されている(例えば、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つを有する系」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを一緒に、AおよびCを一緒に、BおよびCを一緒に、ならびに/またはA、B、およびCを一緒に有する系などを含むが、これらに限定されない)。さらに、2つ以上の代替用語を提示するあらゆる離接語および/または離接句は、明細書、特許請求の範囲、または図面のいずれにあろうと、それら用語のうちの1つ、それらの用語のうちのいずれか、またはそれらの用語の両方を含む可能性を企図すると理解されるべきであることが、当業者には理解されるであろう。例えば、「AまたはB」という句は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むことが理解されるであろう。
【0124】
加えて、本開示の特徴または態様がマーカッシュ群に関して記載される場合、当業者は、開示がそれにより、マーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの部分群に関しても記載されていることを認識するであろう。
【0125】
当業者によって理解されるように、書面による説明を提供することに関してなど、あらゆる目的のために、本明細書に開示されるすべての範囲は、ありとあらゆる可能な部分的な範囲およびその部分的な範囲の組み合わせも包含する。任意の列記される範囲は、同じ範囲が少なくとも2等分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分割されることを十分に説明し、それを可能にするものとして容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で説明される各範囲は、下部3分の1、中部3分の1、および上部3分の1などに容易に分割することができる。また、当業者には理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」などの言葉はすべて、列挙される数を含み、本明細書で記載される、部分的な範囲に後に分割することができる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は、各個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3つの項目を有する群は、1、2、または3つの項目を有する群を指す。同様に、1~5つの項目を有する群は、1、2、3、4、または5つの項目を有する群などを指す。
【0126】
様々な態様および実施形態が本明細書に開示されているが、他の態様および実施形態は当業者には明らかであろう。本明細書に開示される様々な態様および実施形態は、例示を目的とするものであり、限定することを意図するものではなく、真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
【0127】
公開および未公開の出願、特許、ならびに文献の参照を含むが、これらに限定されない本明細書で引用されるすべての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、これによって本明細書の一部となる。参照により組み込まれる刊行物および特許または特許出願が本明細書に含まれる開示と矛盾する範囲で、本明細書は、任意のそのような矛盾する資料に取って代わる、および/または優先することを意図している。
【0128】
参考文献
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図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図12G
図13A
図13B
【配列表】
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