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特許7610535セリアック病の診断、スクリーニング、および治療のための患者由来腸オルガノイドの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】セリアック病の診断、スクリーニング、および治療のための患者由来腸オルガノイドの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20241225BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20241225BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20241225BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20241225BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20241225BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241225BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20241225BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N5/0783
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/02
G01N33/53 Y
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021572024
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 US2020035964
(87)【国際公開番号】W WO2020247528
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】62/856,481
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】クオ,カルビン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】サントス,アントニオ
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0230417(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0038279(US,A1)
【文献】国際公開第2018/089743(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/000
C12Q 1/68
C12Q 1/00
G01N 33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビトロ(in vitro)でセリアック病のための哺乳類オルガノイドモデルを培養する方法であって、
気液界面を有するゲル中で、培地中で哺乳類小腸組織を培養することを含み、
前記哺乳類小腸組織は同系腸管上皮および天然腸管免疫細胞を含む間質を含み、前記哺乳類小腸組織は生検試料からの組織であり、
前記天然腸管免疫細胞を活性化するために有効な用量のグルテン由来ペプチドを前記培地に添加する、方法。
【請求項2】
前記グルテン由来ペプチドは、長さが約8~約35アミノ酸の小麦グリアジンのペプチドである、請求項に記載の方法。
【請求項3】
グリアジンペプチドが脱アミド化される、請求項またはに記載の方法。
【請求項4】
養物中に存在する免疫細胞を活性化するために有効な用量は、0.5μM~100μMの濃度である、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記小腸組織は、内視鏡生検試料である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記小腸組織は、セリアック病に罹患している疑いがある個体またはセリアック病に罹患していることが知られている個体からの組織である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記培地は、R-スポンジン、WNTアゴニスト、ノギン、およびEGFのうちの1つ以上を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
セリアック病の特徴の存在を判定するグルテンチャレンジ後のステップをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記セリアック病の特徴は、T細胞へのグリアジン提示、T細胞増殖、T細胞活性化、上皮細胞死、および上皮細胞増殖のうちの1つ以上である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
上皮細胞が、アネキシンV、切断カスパーゼ3のうちの1つ以上を含むアポトーシスマーカーの細胞染色またはRT-qPCRによって測定され、対照に対するレベルを定量する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
上皮細胞増殖が、Ki67、CCND1、PCNAのうちの1つ以上を含む増殖マーカーの細胞染色またはRT-qPCRによって測定され、対照に対するレベルを定量する、請求項に記載の方法。
【請求項12】
T細胞増殖が、対照と比較して、培養物中のCD3、CD4およびCD8T細胞のうちの1つ以上の増加の定量化によって測定される、請求項に記載の方法。
【請求項13】
T細胞の活性化が、対照と比較して、培養物中に存在するT細胞におけるIFN-γ(IFNG)、パーフォリン1(PRF1)、グランザイムB(GZMB)、IL2、IL21、IL10、IL25、CD38、CD25のうちの1つ以上の発現を判定することによって測定される、請求項に記載の方法。
【請求項14】
気液界面を有するゲル中における、培地中における、同系腸管上皮および天然腸管免疫細胞を含む間質を含む哺乳類小腸組織と、培養物中に存在する前記天然腸管免疫細胞を活性化するために有効な用量のグルテン由来ペプチドとを含む、インビトロ(in vitro)オルガノイド培養
【請求項15】
哺乳類組織に対する効果について候補薬剤をスクリーニングするための方法であって、
候補薬剤を請求項14に記載のオルガノイド培養物と接触させ、セリアック病の特徴である薬剤の効果を判定することを含む、方法。
【請求項16】
前記判定することは、請求項13のいずれか一項に記載のステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
個体におけるセリアック病活性の存在またはセリアック病の素因を判定するための方法に使用するためのインビトロ組成物であって、前記方法は、
求項のいずれか一項に記載の方法で組織を培養すること、および、
請求項13のいずれか一項に記載のセリアック病の特徴の存在を判定すること
を含み、
対照と比較した特徴応答の存在は、個体がセリアック病に罹患しているかまたはセリアック病の素因を有するかを判定する、
インビトロ(in vitro)組成物
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
グルテンに対する病理学的反応は、遺伝的な素因を有する個体で起こり、一般に、セリアック病患者は、HLA-DQ2(90%)またはHLA-DQ8のいずれかであるが、これらのMHC IIハプロタイプ自体の発現は、疾患を発症するためにに十分ではなく、セリアックスプルーの発症を引き起こすために他の因子(複数可)が必要であることを示す。
【0002】
セリアック病(CeD)の診断は、通常、患者の血清中のトランスグルタミナーゼ2 (TG2)自己抗体の検査から始まり、陽性の場合、組織学的解析に必要な腸生検を伴う内視鏡検査が行われ、絨毛の鈍化によって引き起こされる十二指腸粘膜のスカロップ状の外観は、CeDの診断を確定する。
【0003】
しかしながら、個体は、消化器内科の診察の前に自らグルテンフリーな食事(GFD)を開始することが多く、したがって、TG2血清自己抗体の陰性検査を行い、初期診断検査では正常に見える十二指腸粘膜を提示するが、HLA-DQ2またはHLA-DQ8の遺伝子検査では陽性である。したがって、セリアック病に罹患している疑いがある患者は、確実な診断を受けるために、グルテンが豊富な食事(GRD)を4~6週間続ける必要がある。
【0004】
陽性例では、個体は、血清学的および組織学的分析が繰り返され、診断が確定される前に、腹痛、下痢、膨満感、倦怠感といった苦痛を伴う症状をこの入念な過程を通じて経験する。一方、グルテンを含む食事をしている他のセリアック病に罹患している疑いがある患者は、血清学的検査で陽性であり、DQ2またはDQ8であるにもかかわらず、正常な十二指腸粘膜を呈する。これらの症例においてGFDを導入するか否かは、臨床的に有意な粘膜傷害を発症するこれらの個体の割合がどの程度であるか不明であるため、議論の余地がある問題である。
【0005】
セリアック病を診断するための現在の方法は、遺伝学的および血清学的検査ならびに十二指腸生検の組織学的解析、または患者にグルテンを摂取することを要求し、症状を生じさせる(いわゆる「経口グルテンチャレンジ」)に依存している。これらの方法は、グルテンが豊富な食事(GRD)のセリアック病患者のいくつかのケースでは効率的であるが、それらは依然として、完了するために数週間かかる、多大な労力を要する3つのまったく異なる解析的アプローチを必要とする。さらに、すでにグルテンフリーな食事(GFD)をしているセリアック病の疑いがある個体については、これらの検査は決定的な診断ができず、実際にセリアック病に罹患する個体に重度の痛みを伴う症状を伴う、4~6週間のGRDに戻る必要がある。現在使用されている診断ツールは、GRDであるものの、いかなる腸疾患も発症しない一部のセリアック病患者にとっても決定的ではない。小腸オルガノイド培養におけるグリアジンチャレンジは、生検収集から診断まで約15~20日しかかからない、低侵襲的で、より簡単な診断(採血または遺伝子検査は不要)を可能にする。
【0006】
セリアック病に対する非侵襲的かつより迅速な診断方法は、非常に興味深いものである。さらに、セリアック病療法に対する個別化された応答を試験するためのインビトロ(in vitro)システムも緊急に必要とされる。
【発明の概要】
【0007】
セリアック病の診断およびセリアック病の治療のための候補薬剤のスクリーニングのための組成物および方法が提供される。本明細書に記載の方法は、小腸の組織に由来す気液界面オルガノイドのインビトロ培養を利用し、培養物は、小腸からの上皮細胞および免疫間質組織、例えば、小腸組織試料から培養した上皮細胞および免疫間質を含む。いくつかの実施形態では、試料は、単一の試料からの培養物中の両方の細胞セットを提供し、再構築を伴わない、同系腸管上皮および天然腸管免疫細胞の両方を含むヒト小腸生検組織である。組織は、上皮細胞および免疫細胞の両方の維持および活性をサポートする培地中で培養される。組織試料は、セリアック病の疑いがある個体、またはセリアック病の素因を有している疑いがある個体、または正常対照から得てもよい。いくつかの実施形態では、培養物は、培養物中に存在する免疫細胞を活性化するために有効な用量で外因的に供給されるグルテン由来ペプチドを含む。
【0008】
インビトロ培養細胞は、セリアック病のための新規の診断方法のためのツールを提供する。診断方法は、グルテン由来ペプチドを、培養物中に存在する免疫細胞を活性化するために有効な用量でオルガノイド培養物に添加する方法、ならびに、1)T細胞応答[)T細胞の増殖および3)T細胞の活性化など]をもたらす免疫細胞によるグリアジン提示、4)上皮細胞死およびその結果、5)グリアジンに対する増殖性上皮細胞応答の増加を含むがこれらに限定されない特徴を伴う、活性セリアック病の特徴の発達のための培養物を評価する方法を含むことができる。本明細書では、GRDまたはGFDのいずれかのセリアック病患者が、これらの試験に対して陽性であることが示されている。他の実施形態では、オルガノイドは、候補治療薬の応答を検査するために使用され、(1)T細胞活性化もしくは増殖、または(2)オルガノイド上皮細胞死のグリアジン依存性の低減を評価する。
【0009】
気液界面(ALI)オルガノイドは、ヒト小腸組織を含む培養を開始するために使用される臓器組織からの上皮成分および間質成分の両方を有する。ALI法は、起源臓器の機能および顕微解剖学を反復する凝集性の3次元単位として、上皮と間質とを一緒に培養することを可能にする。ALIでは、トランスウェル(「インナーディッシュ」)内のコラーゲンマトリックス内に埋め込まれた組織の微視的な断片を培養することにより、適切な酸素化が達成され、そこで上部から直接空気暴露が得られる。その一方で、「アウターディッシュ」に含まれる組織培養培地との接触は、トランスウェル透過性膜を介して下部から得られる。
【0010】
ALI法を使用して、セリアック病活性患者(GRDのセリアック病患者)、寛解患者(GFDのセリアック病患者)および健常対照からの培養ヒト小腸オルガノイドを、1、2、3、4、5、6、7、8個以上、例えば4~8個の小生検片を使用して、正常に開始した。これらのオルガノイドは、例えば、T細胞染色およびFACS(蛍光活性化細胞選別)を使用する単離後のIFN-γ(IFNG)、パーフォリン1(PRF1)およびグランザイムB(GZMB)などの特定の転写物のRT-qPCRによるT細胞増殖および活性化、ならびに例えば、アポトーシスマーカー(例えば、アネキシンVまたは切断カスパーゼ3)および増殖マーカー(例えば、Ki67)による細胞死等の上皮損傷応答を、FACSおよび免疫蛍光顕微鏡を使用して、測定することを可能にする。グリアジンに対するオルガノイドの免疫応答(グルテンチャレンジ)と患者の臨床状態との間には優れた相関があり、セリアック病活性患者由来のオルガノイドはグリアジンに対する免疫応答をマウントするが、セリアック病に罹患していない患者由来のオルガノイドはマウントしない。グルテンチャレンジ後に少なくとも1つの疾患関連応答があり、グルテンチャレンジ後に2つ、3つ、または全ての疾患関連応答があってもよい場合、セリアック病またはセリアック病の素因の診断を行うことができる。
【0011】
本発明の別の態様では、セリアック病の開始プロセスおよび治療プロセス、ならびに上述の実験的に修飾された培養物の使用を含む、異なる組織の細胞に対する作用についての薬剤のインビトロスクリーニング方法が提供される。本明細書に記載の方法によって培養した組織外植片を候補薬剤に曝露する。関心がある薬剤としては、医薬品剤、(例えば、低分子、抗体、ペプチドなど)、および遺伝子剤、(例えば、アンチセンス、RNAi、発現可能なコード配列)および同等物(例えば、候補分泌成長因子、サイトカイン、その受容体もしくは阻害剤、または他の目的のタンパク質等の発現可能なコード配列など)が挙げられる。いくつかの実施形態では、例えば、薬剤が、化学療法、モノクローナル抗体または他のタンパク質系薬剤、放射線/放射線増感剤、cDNA、siRNA、shRNA、低分子などを含み得るが、これらに限定されない、セリアック病関連の免疫応答に対する候補治療薬の効果、または腸上皮細胞もしくは幹細胞のアポトーシスもしくは増殖に対するそれらの下流効果が判定される。免疫応答に対する効果は、例えば、異なるタイプの免疫細胞の有病率、その活性化マーカーの発現、遺伝子発現、プロテオーム、またはセリアック病に関連するT細胞受容体配列の発現を測定することによって検出することができる。他の実施形態では、かかる候補治療が幹細胞に及ぼす影響が判定される。組織特異的幹細胞上で活性な薬剤は、組織外植片の増殖の変化、および組織特異的幹細胞を示す多系統分化マーカーの存在によって検出される。加えて、活性剤は、長期的な再構築活性のための組織外植片を解析することによって検出される。組織機能を調節する薬剤をスクリーニングするために、外植外植片を使用するための方法も提供される。
【0012】
培養物中の免疫細胞、分化した腸上皮細胞または腸幹細胞におけるグルテン依存性変化を調節する能力について、集団中の細胞、例えば、複数の細胞型の複合体集団、選別、培養などによって複合体集団から単離された精製細胞集団などをスクリーニングするための方法が提供される。この方法は、セリアック病関連エンドポイントの調節をアッセイするために、前述の検出可能に標識された候補細胞と本発明の組織外植片との共培養を伴う。これには、オルガノイド中のグルテン依存性免疫応答を抑制または促進する追加の免疫細胞が含まれ得る。肝細胞電位を有する候補細胞は、グルテン治療および標識された候補細胞との組織特異的幹細胞の存在を示す多系統分化マーカーの共局在化にもかかわらず、基底レベルを上回る培養外植物の増殖によって検出される。
【0013】
本発明の別の態様では、本発明の外植片培養に対する毒性をスクリーニングすることによって、異なる組織に対する細胞傷害性のための薬剤のインビトロスクリーニング方法が提供される。さらに別の実施形態では、本発明の外植片培養による薬物の吸収を評価することによって、異なる組織による薬物吸収を評価する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】Aの左上では、ヒト小腸生検が微視的な断片に粉砕され、トランスウェル(「インナーディッシュ」)内のコラーゲンマトリックスに埋め込まれ、そこで上部から直接空気暴露が得られ、その一方で、「アウターディッシュ」に含まれる組織培養培地との接触は、トランスウェル透過性膜を介して下部から得られ、気液界面(ALI)を生成することを示す。右上は、しばしば絨毛様構造を示す粘膜層に囲まれた中央に管腔の形成を示す、12~14日間にわたって増殖した様々なヒト小腸オルガノイドのヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色である。左下は、絨毛構造のヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色(上)および増殖マーカーKi-67の免疫蛍光顕微鏡(緑色)およびオルガノイドの細胞分裂が主に下の細胞層で起こることを示すDAPI(青色)(矢印)である。右下は、上皮細胞マーカーE-カドヘリン(白色)、T細胞マーカーCD3(緑色)、およびマクロファージマーカーCD14(赤色)の免疫蛍光顕微鏡検査で、これらの腸内オルガノイドが免疫間質を含有することを示す。Bは、免疫細胞(CD45)、特にCD4およびCD8T細胞、CD79aB細胞、およびEpCam上皮細胞を含む、 セリアック病に関連するオルガノイドからの細胞の単一細胞RNA-seq転写プロファイリングを示す。Cは、ALI小腸ヒトオルガノイドを使用してセリアック病をモデル化するために使用される方法論のスキームを示す。4~8個の生検咬合を収集し、7~12日間増殖させた後、対照ペプチド(CLIP)またはグリアジンのいずれかで処置した微視的な断片に粉砕される。オルガノイドは、解析のために2日後に培養物から採取される。
図2】Aは、オルガノイドから採取した単一細胞を、上皮細胞マーカーEpCamのFACS免疫染色後に選別しおよび解析した結果を示す。Bでは、アポトーシスマーカーアネキシンVを死細胞マーカーAmCyanは、CLIPではなくグリアジンによる治療が、健常なオルガノイドではなく、セリアック病のオルガノイドでのみ細胞死(右上の象限)の増加につながることを示す。Cでは、in vitroグリアジンまたはCLIP治療の前に2日間与えられたCD3抗体によるT細胞の枯渇は、セリアック病のオルガノイドにおけるグリアジンによって誘発される細胞死の増加を抑制させたことを示す。Dでは、アポトーシスマーカー切断カスパーゼ3 (緑色)および上皮細胞マーカーE-カドヘリン(赤色)の免疫蛍光顕微鏡検査は、グリアジンで治療したセリアック病のオルガノイドでは上皮細胞死の増加を確認したが、健常なオルガノイドでは効果はなかったことを示し、DAPI(青色)である。
図3】Aは、オルガノイドから採取した単一細胞をFACSによって選別し、死細胞を除外するための染色後および上皮細胞を単離するためのEpCamのための免疫染色後に解析した結果を示す。B~Dは、選別された上皮細胞を、RT-qPCR(リアルタイム定量PCR)によって遺伝子発現解析のために処理した結果を示す。ここでは、グルテンが豊富な食事(GRD)におけるセリアック病活性患者に由来するオルガノイド、およびグルテンフリー食事(GFD)におけるセリアック病寛解患者に由来するオルガノイドにおいて、上皮幹細胞マーカーLGR5および増殖マーカーC)CCND1およびD)PCNAのCLIP治療と比較して、グリアジン治療時の転写物の増加を明らかにしたが、セリアック病に罹患していない健常者由来のオルガノイドにおいては増加しなかった。Eでは、増殖マーカーKi67(緑色)および上皮細胞マーカーE -カドヘリン(赤色)の免疫蛍光顕微鏡検査において、グリアジンで治療したセリアック病のオルガノイドにおいては上皮細胞増殖の増加が確認されたが、CLIPで治療したセリアックオルガノイドにおいては変化がなかったこと示し、DAPI(青色)である。オルガノイドを培地に配置して、in vitroグリアジン治療の前に、腸上皮分化を誘導し、静止を誘導した。Fでは、CLIPと比較してグリアジンで治療したKi67細胞の数の倍率増加の定量化は、セリアック病活性患者に由来するオルガノイドにおける増殖細胞の6倍の増加を明らかにした。
図4】Aは、オルガノイドから採取した単一細胞を、FACSの死細胞を除外するための染色後およびCD45、CD3、CD4、またはCD8の免疫染色後に選別および解析した結果を示す。Bでは、CD45、CD3T細胞の数について、グリアジン治療とCLIP治療とを比較した倍率増加として計算し、セリアック病活性患者に由来するオルガノイドのみでのT細胞の増加を明らかにしたが、寛解または健常なオルガノイドでは有意な変化は観察されなかったことを示す。CおよびDでは、C)CD45、CD3、CD4Tヘルパー細胞およびD)CD45、CD3、CD8、細胞傷害性T細胞の定量化は、これら2つのサブタイプのT細胞の拡大を、セリアック活性患者に由来するオルガノイドにおいてのみ示したが、寛解または健常なオルガノイドにおいて有意な変化は観察されなかったことを示す。Eでは、CD3T細胞および上皮細胞マーカーE-カドヘリン(白色)の免疫蛍光顕微鏡検査は、グリアジンで治療したセリアック病のオルガノイドにおいてFACSによって観察されたT細胞の増殖を確認したが、セリアック病のオルガノイドをCLIPで治療した場合には変化はなかったことを示し、DAPI(青色)である。
図5】Aは、オルガノイドから採取した単一細胞をFACSによって選別して死細胞を除外した後、次いでRT-qPCRによって遺伝子発現解析ために処理されたTヘルパー細胞を単離するためにCD45、CD3およびCD4について免疫染色を行った結果を示す。ここでは、IL-2、IL-22、IL-17A、IL-10、IL-25およびIFNGなどのいくつかの炎症促進性サイトカイン、記憶T細胞マーカーであるCD38およびCD25、IL-2受容体、ならびにセリアック病活性患者に由来するオルガノイドにおけるCCND1およびPCNAなどの増殖マーカーのCLIP治療と比較して、48時間後のグリアジン治療における転写物の増加を明らかにした(セリアック病寛解患者に由来するオルガノイドではある程度)が、セリアック病に罹患していない健常者由来オルガノイドにおいては明らかにならなかった。Bは、オルガノイドから採取した単一細胞を、死細胞を除外するための染色後および細胞傷害性T細胞を単離するためCD45、CD3、CD8の免疫染色後、選別して分析し、次いでRT-qPCRによって遺伝子発現解析のために処理した結果を示す。これにより、IFNG、PRF1、GZMBなどのいくつかの活性、記憶T細胞マーカーであるCD38とILー2受容体であるCD25、セリアック病活性患者に由来するオルガノイドにおけるCCND1およびPCNAなどの増殖マーカーのCLIP治療と比較して、48時間後のグリアジン治療における転写物の増加を明らかにした(セリアック病寛解患者に由来するオルガノイドではある程度)が、セリアック病に罹患していない健常者由来オルガノイドにおいては明らかにならなかった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[定義]
以下の説明では、細胞培養の分野で従来使用されてきたいくつかの用語を広く利用する。明細書および特許請求の範囲、ならびにそのような用語に付与される範囲の明確かつ一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される。
【0016】
「細胞培養」または「培養」という用語は、人工的なインビトロ環境における細胞の維持を意味する。しかしながら、「細胞培養」という用語は、一般用語であり、個々の細胞だけでなく、組織または器官の培養を包含するために使用され得ることを理解されたい。
【0017】
「培養システム」という用語は、本明細書では、細胞および組織の微細構造の増殖、多系統分化および反復発生を伴う長期間の組織増殖を促進する対象外植片が増殖される培養条件を指すために使用される。
【0018】
「ゲル基質」は、本明細書で使用される場合、半固体細胞外マトリックスの従来の意味を有する。本明細書に記載のゲルには、コラーゲンゲル、マトリゲル、細胞外マトリックスタンパク質、フィブロネクチン、ラミニン、エンタクチン(ニドゲン)、フィブロネクチン、およびヘパリン硫酸塩のうちの1つ以上との様々な組み合わせのコラーゲン、ヒト胎盤細胞外マトリックスが含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
「気液界面」とは、本明細書に記載の培養物中で腸細胞が暴露される界面である。一次組織は、ゲル溶液と混合してもよく、ゲル溶液は、次いで、低い半透過性支持体(例えば、膜)を備えた容器内に形成されたゲル層の上に注ぎ込まれる。この容器は、培地中に組織を含むゲルが培地中に浸されないように、培地を含む外側の容器に入れられる。一次組織は、上部からの空気および下部からの液体媒体に曝露される(図1A)。
【0020】
「容器」とは、細胞を培養するための無菌環境を提供することができるガラス、プラスチック、または金属容器を意味する。
【0021】
「外植片」という用語は、本明細書では、例えば、本発明の方法に従ってインビトロで培養される哺乳動物組織に由来する組織およびその細胞片を意味するために使用される。外植片が由来する哺乳動物組織は、個体、すなわち、一次外植片から得られてもよく、または、例えば、誘導された多能性幹細胞の分化によって、インビトロで得られてもよい。
【0022】
「オルガノイド」という用語は、本明細書では、例えば、増殖、多系統分化、細胞および組織超構造の反復発生などによる長期間の組織拡大など、インビボ(in vivo)で組織の特徴を保持する培養物中の哺乳動物細胞の3次元増殖を意味するために使用される。一次オルガノイドは、外植片、すなわち培養された外植片から培養されるオルガノイドである。二次オルガノイドは、一次オルガノイドの細胞のサブセットから培養されるオルガノイドであり、すなわち、一次オルガノイドは、例えば、機械的または化学的手段によって断片化され、断片は、再播種され、培養される。三次オルガノイドは、二次オルガノイドなどから培養されるオルガノイドである。
【0023】
「哺乳類細胞」という語句は、哺乳類組織に由来する細胞を意味する。典型的には、本発明の方法において、組織片は、外科的に得られ、約1mm未満のサイズ(約0.5mm未満であっても、または約0.1mm未満であってもよい)に粉砕される。本明細書で使用される「哺乳類」には、ヒト、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、齧歯動物(例えば 、マウス、ラット、ハムスター、霊長類など)が含まれる。「哺乳類組織細胞」および「一次細胞」は、同義的に使用される。
【0024】
「組織特異的幹細胞」は、本明細書では、特定の組織に存在する、および例えば、全ての造血系統を再構築する造血幹細胞の能力、または全ての神経/グリア系統を再構築する神経幹細胞の能力が存在する組織の細胞のクローン再生が可能である多能性幹細胞を指すために使用される。「前駆細胞」とは、通常、それらが広範な自己再生能力を有さず、しばしば、それらが由来する組織内の系統のサブセットのみ、例えば、造血環境におけるリンパ系統もしくは赤血球系統のみ、または神経系統におけるニューロンもしくはグリアのみを再生することができるという点で組織特異的幹細胞とは異なる。
【0025】
関心がある培養条件は、分化を許容する環境を提供し、この環境では、外植片胞からの複合細胞システムは、インビトロで増殖、分化、または成熟する。かかる条件はまた、「分化条件」と称されてもよい。環境の特徴としては、細胞が培養される培地、存在し得る任意の増殖因子または分化誘導因子、および存在する場合、支持構造(固体表面上の基質など)が挙げられる。
【0026】
「多系統分化マーカー」という用語は、異なる細胞型の特徴的な分化マーカーを意味する。これらの分化マーカーは、親和性試薬(例えば、マーカーに特異的な抗体)を使用することによって、または当該技術分野において既知の細胞型などを特異的に染色する化学物質を使用することによって検出することができる。
【0027】
「微細構造」は、インビボで観察される細胞または組織の三次元構造を指す。例えば、微細構造は、インビボでのその極性またはその形態であってもよく、その一方で、組織の微細構造は、組織内で相互に関連するさまざまな細胞型の配置となる。
【0028】
「候補細胞」という用語は、本明細書に記載の組織外植片と共培養することができる任意の種類の細胞を指す。候補細胞としては、混合細胞集団、ES細胞およびその子孫、例えば、胚様体、胚性様体、胚性生殖細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
「候補薬剤」という用語は、本明細書に記載の外殖片培養物およびその細胞に導入され、その外殖片に対する効果をアッセイする任意のオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、siRNA、shRNA、遺伝子、遺伝子産物、ペプチド、抗体、低分子または薬理学的化合物を意味する。
【0030】
「接触する」という用語は、本明細書に記載されるように、候補細胞または候補薬剤に外殖片培養物を配置することを指す。接触させることはまた、組織移植片を半透過性基質中に配置する前に、培地内で少なくとも1時間、または2時間以上、または4時間以上にわたって、組織移植片と候補細胞とを共培養することを包含する。あるいは、接触とは、候補細胞を、例えば、外殖片の管腔内に注入することを指す。
【0031】
「スクリーニング」とは、本明細書に記載の外殖片培養物と候補細胞とを共培養するか、または候補薬剤を添加するかのいずれか、および候補細胞または候補薬剤が外植片に及ぼす影響を評価するプロセスを指す。効果は、任意の簡便なパラメータ、例えば、外植片の増殖速度、幹細胞を示す多系統分化マーカーの存在などを評価することによって評価され得る。
【0032】
グルテン由来ペプチド.いくつかの実施形態では、本明細書に記載の培養物は、培養物中に存在する免疫細胞を活性化するために有効な用量で外因的に供給されたグルテン由来ペプチドを含む。様々なグルテンペプチドは、例えば、とりわけ、米国特許第7,462,688号、Sjostrom,H.,et al.Scand J Immunol48,111-115(1998);DorumS.et al .J.Proteome Res.2009;8:1748-55;Mothes Adv Clin Chem 2007;44:35-63に記載されているとおり、免疫原性であることが当該技術分野で公知であり、それぞれ参照により具体的に本明細書に組み込まれる。グルテンの主な成分は、タンパク質グリアジンである。Triticum aestivum(小麦)に由来するグリアジンペプチドは、セリアック病に存在する主な免疫毒性抗原である。それらは、組織トランスグルタミナーゼの基質であり、これらのペプチド内のグルタミン残基を特異的に脱アミド化し、したがって、それらの免疫原性を強く増加させる。患者T細胞によって頻繁に認識されるα-グリアジン由来のエピトープは、頻繁に認識されないγ-グリアジン由来のエピトープの大部分と比較して、有意に高いレベルの脱アミド化を示したことが見出されている。ペプチド内の個々の残基の脱アミド化の程度は、一部のエピトープがDQ2またはDQ8の文脈でよりよく認識されるかどうかにも影響を及ぼすようである。
【0033】
この目的のためのグリアジンペプチドは、例えば、33量体、26量体、14量体、13量体などを含む、長さが約6~35のアミノ酸であってもよく、任意に脱アミノ酸化される。この目的のためのペプチドは、例えば、グリアジン-α1(14aa、Genscript)およびグリアジン-α2(13aa、Genscript)で市販されている。グルテン由来ペプチドは、培養物中に、約0.5μM~約100μM、通常は約1μM、約5μM、約10μM~約100μM、約50μM~約25μMの濃度で提供され得る。
【0034】
培養システムおよび方法を提供する。長期培養とは、長期間、例えば15日以上、1ヶ月以上、2ヶ月以上、3ヶ月以上、6ヶ月以上、または最大1年以上にわたって、外植片を継続的に増殖させることを意味する。継続的な増殖とは、組織の持続的な生存率、組織化、および機能性を意味する。例えば、実験的に改変されない限り、本出願の培養システムにおいて継続的に増殖する組織外植片における増殖細胞は、その自然な速度で増殖し続ける一方で、組織外植片における非増殖性、例えば分化した細胞は、静止状態を維持する。このため、本発明の方法により培養した外殖片を「オルガノイド」と称する。
【0035】
このようにして培養された外植片は、生理学的温度(例えば37℃)、例えば、空気中の5%のCOの加湿雰囲気中で長期間維持され得る。培地は、通常、便宜的に、約10日またはそれ以下(例えば、約1日、2日、または3日、場合によっては4日、5日、または6日)ごとに交換し、場合によっては7日、8日、9日、10日、11日、または12日ごとに交換する。
【0036】
本発明の目的のために、外植片は、多くの場合、約5日、約6日、約7日、約8日、約1 0日、約12日、約15日から培養され、約30日以下で培養され得る。免疫応答は、グルテンチャレンジ後約1日以内、約2日以内、約3日以内、約4日以内、約5日以内、約1~約2週間以内に観察され得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、組織、すなわち、一次組織は、哺乳動物の臓器から得られる。組織は、任意の哺乳動物種、例えば、ヒト、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、霊長類など)に由来し得る。哺乳動物は、任意の年齢、例えば、胎児、新生児、幼体、成体であってもよい。
【0038】
組織は、任意の簡便な方法、例えば、生検(例えば、内視鏡検査中、手術中、針など)によって得られてもよく、通常は、可能な限り無菌的に得られる。除去後、組織を、氷冷緩衝溶液、例えばPBS、Ham’s F12、MEM、培地などに浸漬する。組織片は、約1mm未満のサイズ(約0.5mm未満、または約0.1mm未満であってもよい)に粉砕される。粉砕組織を、ゲル基質、例えば、コラーゲンゲル溶液、例えば、Cellmatrix type I-A collagen(新田ゼラチン株式会社)、マトリゲル溶液などと混合する。続いて、組織含有ゲル基質を、基礎ゲル層をサポートする膜などの下部半透過性支持体を有する容器内のゲル層(「基材層」)上に層状にし、組織含有ゲル基質を固化させる。この容器は、好適な培地、例えば、約1~約25%、通常約5~約20%などの濃度でウシ胎児血清(FCS)を補充したHAMs F-12培地を含む外側容器に置かれる。
【0039】
上述の配置は、栄養素が底部から膜および基礎ゲル層を通って組織を含有するゲル層に移動することを可能にする。培地のレベルは、ゲルの上部、すなわち、外植片を含有するゲル層が液体中に浸漬されていないが、空気に曝露されるように維持される。したがって、組織は、気液界面を有するゲル中で成長する。気液界面培養システムの例の説明は、Nat Med.2009 Jun;15(6):701-6に記載されており、その開示内容は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0040】
移植片の継続的な増殖は、任意の簡便な方法、例えば、位相差顕微鏡、実体顕微鏡、組織学、免疫組織化学、電子顕微鏡法などによって確認することができる。いくつかの事例では、細胞微細構造および多系統分化が評価され得る。培養物中の腸管外植片の微細構造は、当該技術分野で既知の方法を使用して、ヘマトキシリン-エオシン染色、PCNA染色、電子顕微鏡検査などを行うことによって判定することができる。多系統分化は、例えば、以下により詳細に記載されるように、末端分化マーカーに対する抗体による標識を行うことによって判定することができる。分化マーカーを検出する抗体は、多くの供給源から市販されている。
【0041】
いくつかの実施形態では、培養物中の外植片の増殖は、R-スポンジンを培地に導入することによって刺激され得る。R-スポンジン1(Rspo1, Genbank Accession NP_001033722)は、Wntと相乗作用を起こしてβ -カテニン依存性シグナル伝達を活性化する分泌糖タンパク質である(Kim et al. 2005, Kim et al.,2006 )。RSpo1に曝露される本発明の方法によって培養された外植片は、増加した増殖を示す(Nat Med.2009 Jun;15(6):701-6)。因子は、培地を1~2日毎に交換しながら、約500ng/ml、少なくとも約0.5μg/ml、少なくとも約50μg/ml、および約1mg/ml以下の濃度で培地に添加してよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、EGFは、培地中に、例えば、約1ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約50ng/ml、および約1mg/ml以下の濃度で提供される。
【0043】
いくつかの実施形態では、ノギンは、培地中に、例えば、約1ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約50ng/ml、および約1mg/ml以下の濃度で提供される。
【0044】
いくつかの実施形態では、培地は、WNT経路の活性剤を含み得、これには、例えば、CHIR99021(6-[[2-[[4-(2、4-ジクロロフェニル-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル)、WNTファミリーリガンド(例えば、WnT-1、WnT-2、WnT-2b、WnT-3a、WnT-4、WnT-5a、WnT-5b、WnT-6、WnT-7a、WnT-7a/b、WnT-7b、WnT-8a、WnT-8b、WnT-9a、WnT-9b、WnT-10a、WnT-10b、WnT-11、WnT-16bなどを含むが、これらに限定されない)、RSPO共アゴニスト(例えばRSPO2)、塩化リチウム、TDZD8(4-ベンジル-2-メチル-1、2、4-チアジアゾリジン-3、5-ジオン)、BIO-アセトキシム((2′Z,3′E)-6-ブロモインジルビン-3′-アセトキシム)、A1070722(1-(7-メトキシキノリン-4-イル)-3-[6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]尿素)、HLY78(4-エチル-5、6-ジヒドロ-5-メチル-[1、3]ジオキソロ[4、5-J]フェナントリジン)、CID11210285塩酸塩(2-アミノ-4-(3、4-(メチレンジオキシ)ベンジルアミノ)-6-(3-メトキシフェニル)ピリミジン塩酸塩)、WAY-316606、(ヘテロ)アリールピリジン、IQ1、QS11、SB-216763、DCAなどが含まれるが、これらに限定されない。WNT活性剤は、約0.5μM、1μM、5μM、10μM、最大約1mMの濃度で提供することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、DMEMベースの培地は、R-スポンジン、WNTアゴニスト、ノギン、およびEGFのそれぞれで補充される。培地は、例えば、p160ROCKの阻害剤、およびp38MAPキナーゼの阻害剤、例えば、それぞれ約0.5μM、1μM、5μM、10μM、最大約1mMの濃度で、rho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)シグナル伝達経路およびSB202190の研究で使用される生化学的ツールであるY-27632をさらに任意に含んでもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、培養された外植片中の細胞は、実験的に修飾される。例えば、外植片細胞は、ウイルスまたは細菌病原体への曝露によって修飾されてもよく、例えば、治療剤の抗ウイルスまたは抗細菌効果を評価するための実験用試薬を開発してもよい。外植片細胞は、例えば、多能性を誘導するか、または他の方法で分化能を変化させるため、または外植片培養を形成する細胞の能力もしくは腫瘍転換を受ける細胞の能力に対する遺伝子活性の獲得もしくは喪失の効果を決定するために、リプログラミング因子を提供することによる、遺伝子発現のパターンを変化させることによって修飾され得る。外植片細胞は、免疫細胞または腸上皮細胞上のセリアック病表現型を調節するために、増殖因子またはサイトカインまたは他の遺伝子で形質転換されるように修飾され得る。
【0047】
実験的修飾は、例えば、スクリーニング目的で外植片およびその細胞に、核酸、ポリペプチド、低分子、ウイルスなどである候補薬剤を提供する方法に関して以下に記載されるように、当該技術分野において既知の任意の方法によって行われ得る。
【0048】
[診断方法]
セリアック病の診断のための組成物および方法が提供される。本方法は、小腸の組織に由来する気液界面オルガノイドのインビトロ培養物を利用し、培養物は、上皮細胞および小腸由来の免疫間質組織を含む。通常、試料は、同系腸上皮および天然腸免疫細胞の両方を含むヒト小腸生検組織であり、単一の試料からの培養物中の両方の細胞セットを提供し、再構築を伴わない。組織試料は、セリアック病の疑いがある個体、またはセリアック病の素因を有している疑いがある個体、または正常対照から得てもよい。
【0049】
インビトロでのオルガノイド培養の確立後、例えば、培養約5~約14日後に、培養物中に存在する免疫細胞を活性化するために有効な用量で外因的に供給されたグルテン由来ペプチドを培地に添加することによって、培養物にグルテンチャレンジを提供する。グルテンチャレンジに対する応答は、チャレンジの約1日後~約5日後(例えば、1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、またはそれ以降)に評価される。チャレンジに対する応答は、セリアック病表現型を示すものとして以下に記載される1つ以上の特徴の増加によって証明され得、1、2、3、4、5つの特徴の増加によって証明され得る。増加は、対照非グルテンペプチド、またはセリアック病の素因がない正常なオルガノイドに関するいずれかの正常な対照の応答と比較して、少なくとも5%、10%、25%、50%以上の増加として証明される。
【0050】
特徴には、1)T細胞応答(2)T細胞の増殖および3)T細胞の活性化など)をもたらす免疫細胞によるグリアジン提示、4)上皮細胞死およびその結果、5)グリアジンに対する増殖性上皮細胞応答の増加が含まれるが、これらに限定されない。本明細書では、GRDまたはGFDのいずれかのセリアック病患者が、これらの検査のうちの1つ以上に対して陽性であることが示されている。
【0051】
セリアック病は、免疫介在性上皮細胞死に起因する周知の絨毛鈍化を含む影響力が強い組織学的特徴を特徴とする。CeDにおいてあまり理解されていないことは、代償性増殖を表し得る陰窩の過形成の均一かつ同時の存在である。1つの特徴として、活性CeD培養物が、陰性対照ペプチド(CLIP)と比較して、グルテンチャレンジとしてグリアジンペプチドで治療される場合、グルテンチャレンジは、活性または寛解であり得るCeD患者からのALIオルガノイドにおける上皮細胞死を誘導する。別の特徴では、グルテンチャレンジはまた、CeD患者からの上皮細胞における増殖マーカーの発現を増加させ、これは活性であっても寛解中であってもよい。細胞死の測定は、例えば、アポトーシスマーカー、例えば、アネキシンV、切断カスパーゼ3などの培養物中の細胞を染色することによって定量化され得る。増殖の測定は、例えば、増殖マーカー、例えば、Ki67、CCND1、PCNAなどの培養物中の細胞を染色することによって定量化してよい。フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡法、マスサイトメトリーなどを使用して、染色のレベルを検出することができる。培養物は任意に、上皮細胞上にゲートするためにEpCamで対比染色される。
【0052】
グルテンチャレンジ後の疾患の他の特徴としては、T細胞応答が挙げられる。グルテンチャレンジに続いて、疾患の素因となるオルガノイドがあり、CD3+、CD4、およびCD8T細胞の増加があるが、T細胞増殖は、活性CeDオルガノイドに特異的であってもよく、対照/非CeDまたはセリアック病寛解患者(すなわち、GFDをしている無症候性CeD患者)からのオルガノイドに特異的ではなくてもよい。T細胞の増殖および活性化を測定することは、例えば、T細胞染色および単離後のIFN-γ(IFNG)、パーフォリン1(PRF1)およびグランザイムB(GZMB)などの特定の転写物のRT-qPCRを利用することができる。
【0053】
qRT-PCRにより、グルテンチャレンジは、CD4T細胞におけるIL2、IL21、IL10、IL25、CD8T細胞における活性化マーカー(IFNG、PRF1、CD38、CD25)、および両方における増殖マーカー(PCNA、CCND1)を含む、CLIP対照にわたって複数のmRNAを増加させた。
【0054】
セリアック病活性またはセリアック病の素因に対する陽性試験の判定は、患者または適切な医師に提供され得る。
【0055】
[スクリーニング方法]
本発明のいくつかの態様では、関心がある活性について候補薬剤または細胞をスクリーニングするための方法および培養システムが提供される。これらの方法において、候補薬剤または細胞は、本発明のオルガノイド内の細胞に対するそれらの効果についてスクリーニングされる。関心があるオルガノイドとしては、非修飾細胞を含むもの、および実験的に修飾された細胞を含むものが挙げられ、薬剤は、上述のグルテンチャレンジの前または後に試験され得る。セリアック病の応答の特徴は、疾患の特徴に関して上述されるように測定され得、疾患の予防または治療に有用な薬剤は、陽性対照と比較して、1つ以上の特徴の数またはレベルを減少させる。
【0056】
薬剤または細胞の効果は、通常、薬剤または細胞を欠く細胞の対照培養と併せて、本明細書に記載の培養された移植片の細胞に薬剤または細胞を添加することによって判定される。次いで、候補薬剤または細胞の効果は、1つ以上の出力パラメータを監視することによって評価される。パラメータは、外植片またはその細胞の定量化可能な構成要素、特に、場合によっては、ハイスループットシステムにおいて正確に測定することができる構成要素である。例えば、外植片のパラメータは、外植片またはその細胞のマーカーなど、例えば、細胞表面決定基、受容体、タンパク質もしくはその立体構造もしくは翻訳後修飾、脂質、炭水化物、有機分子もしくは無機分子、核酸(例えばmRNA、DNAなど)、またはそのような細胞成分もしくはそれらの組み合わせに由来する部分を含む任意の細胞成分または細胞産物のマーカーに関する増殖、分化、遺伝子発現、プロテオーム、表現型であり得る。ほとんどのパラメータは定量的リードアウトを提供するが、いくつかの例では、半定量的または定性的な結果は許容される。リードアウトは、単一の決定値を含んでもよく、または平均値、中央値もしくは分散などを含んでもよい。特徴的に、パラメータ読み出し値の範囲は、同じアッセイの多重性から各パラメータについて取得される。変動性が期待され、試験パラメータの各セットの値の範囲は、単一の値を提供するために使用される一般的な統計的方法を使用して標準的な統計的方法を使用して取得される。
【0057】
いくつかの実施形態では、候補薬剤または細胞は、無傷のオルガノイド内の細胞に添加される。他の実施形態では、オルガノイドは解離され、候補薬剤または細胞が解離細胞に添加される。細胞は、新たに単離されたもの、培養されたもの、上述のように遺伝的に変化したものなどであってよい。細胞は、環境的に誘導されたクローン培養の変異体であってもよく、例えば、独立した培養物に分割され、別個の条件下で、例えば、病原体の有無にかかわらず、他のサイトカインまたはそれらの組み合わせの存在下または不在下で、オルガノイドに成長してもよい。応答のタイミングを含む、細胞が薬剤、特に薬理学的薬剤に応答する方法は、細胞の生理学的状態の重要な反映である。
【0058】
スクリーニングの対象となる候補薬剤には、有機金属分子、無機分子、遺伝子配列などを含み得る、多数の化学クラス、主に有機分子を包含する既知および未知の化合物が含まれる。本発明の重要な態様は、毒性試験などを含む候補薬物を評価することである。
【0059】
候補薬剤としては、特に水素結合との構造的相互作用に必要な官能基を含む有機分子が挙げられ、典型的には、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基、多くの場合は少なくとも2つの官能性化学基が挙げられる。候補薬剤は、多くの場合、上記官能基のうちの1つ以上で置換された環状炭素またはヘテロ環式構造、および/または芳香族または多芳香族構造を含む。候補薬剤はまた、ペプチド、ポリヌクレオチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体、またはそれらの組み合わせを含む生体分子の中に見出される。薬理活性薬物、遺伝活性分子などが含まれる。関心がある化合物としては、化学療法剤、ホルモンまたはホルモン拮抗剤などが挙げられる。本発明に好適な薬剤の例としては、“The Pharmacological Basis of Therapeutics”,Goodman and Gilman,McGraw-Hill,New York,N.Y.,(1996),Ninth editionに記載される。毒素、および生物学的および化学兵器剤も含まれる(例えば、Somani,S.M.(Ed.)、“Chemical Warfare Agents”,Academic Press,New York,1992を参照されたい)。
【0060】
スクリーニングのための関心がある候補薬剤としては、核酸、例えば、siRNA、shRNA、アンチセンス分子、もしくはmiRNAをコードする核酸、またはポリペプチドをコードする核酸も挙げられる。核酸を標的細胞に移行するために有用な多くのベクターが利用可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、ミニサークルDNA、サイトメガロウイルス、アデノウイルスなどのウイルス由来ベクターとしてエピソーム的に維持されてもよく、または相同組換えもしくはランダム組み込み、例えば、MMLV、HIV-1、ALVなどのレトロウイルス由来ベクターを通じて標的細胞ゲノムに組み込まれてもよい。ベクターは、対象細胞に直接提供されてもよい。言い換えると、多能性細胞は、ベクターが細胞に取り込まれるように、関心がある核酸を含むベクターと接触する。
【0061】
細胞を、エレクトロポレーション、塩化カルシウムトランスフェクション、およびリポフェクションなどの核酸ベクターと接触させる方法は、当該技術分野において周知である。あるいは、関心がある核酸は、ウイルスを介して対象細胞に提供されてもよい。言い換えれば、多能性細胞は、目的の核酸を含むウイルス粒子と接触する。レトロウイルス、例えばレンチウイルスは、本発明の方法に特に好適である。一般的に使用されるレトロウイルスベクターは、「欠陥がある」ものであり、すなわち、生産的感染に必要なウイルスタンパク質を産生することができない。むしろ、ベクターの複製は、パッケージング細胞株内での増殖を必要とする。関心がある核酸を含むウイルス粒子を生成するために、核酸を含むレトロウイルス核酸を、パッケージング細胞株によってウイルスキャプシドにパッケージングする。異なるパッケージング細胞株は、キャプシドに組み込まれる異なるエンベロープタンパク質を提供し、このエンベロープタンパク質は、細胞に対するウイルス粒子の特異性を判定する。エンベロープタンパク質は少なくともエコトロピック、アンフォトロピック、ゼノトロピックの3種類である。エコトロピックエンベロープタンパク質(例えば、MMLV)でパッケージされたレトロウイルスは、ほとんどのマウスおよびラット細胞型に感染することができ、BOSC23などのエコトロピックパッケージング細胞株を使用して生成される(Pear et al.(1993)P.N.A.S.90:8392-8396)。両種性エンベロープタンパク質、例えば4070A(Danos et al.,上記)を有するレトロウイルスは、ヒト、イヌおよびマウスを含むほとんどの哺乳類細胞型に感染することが可能であり、PA12などの両種性パッケージング細胞株を使用して生成する(Miller et al.(1985)Mol.Cell.Biol.5:431-437);PA317(Miller et al.(1986)Mol.Cell.Biol.6:2895-2902);GRIP(Danos et al.(1988)PNAS 85:6460-6464)。ゼノトロピックのエンベロープタンパク質(例えば、AKR env)でパッケージされたレトロウイルスは、マウス細胞を除くほとんどの哺乳類細胞型に感染することができる。適切なパッケージング細胞株を使用して、対象のCD33分化体細胞がパッケージングされたウイルス粒子によって標的化されることを確実にしてもよい。リプログラミング因子をコードする核酸を含むレトロウイルスベクターをパッケージング細胞株に導入する方法およびパッケージング株によって生成されるウイルス粒子を収集する方法は、当該技術分野において周知である。
【0062】
対象細胞に関心がある核酸を提供するために使用されるベクターは、典型的には、関心がある核酸の発現、すなわち転写活性化を駆動するための好適なプロモーターを含む。これには、普遍的に作用するプロモーター、例えば、CMV-b-アクチンプロモーター、または特定の細胞集団において活性であるか、またはテトラサイクリンなどの薬物の存在に応答するプロモーターなどの誘導性プロモーターが含まれ得る。転写活性化によって、転写は、標的細胞における基底レベルを超えて、少なくとも約10倍、少なくとも約100倍、より通常は少なくとも約1000倍増加することが意図される。加えて、対象細胞にリプログラミング因子を提供するために使用されるベクターは、例えば、Cre/Loxなどのリコンビナーゼ系を使用して、後で除去しなければならない遺伝子、または例えば、ヘルペスウイルスTK、bcl-xsなどの選択的毒性を可能にする遺伝子を含むことによって、破壊するそれらを発現する細胞を含み得る。
【0063】
スクリーニングのための関心がある候補薬剤としては、ポリペプチドも挙げられる。かかるポリペプチドは、所望により、生成物の溶解性を増加させるポリペプチドドメインに融合されてもよい。ドメインは、定義されたプロテアーゼ切断部位、例えば、TEVプロテアーゼによって切断されるTEV配列を介してポリペプチドに連結され得る。リンカーはまた、1つ以上のフレキシブル配列、例えば、1~10個のグリシン残基を含んでもよい。いくつかの実施形態では、融合タンパク質の切断は、生成物の溶解性を維持する緩衝液中、例えば、0.5~2Mの尿素の存在下、溶解性を増加させるポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドの存在下などで行われる。関心があるドメインとしては、エンドソーム溶解性ドメイン、例えば、インフルエンザHAドメイン、および産生を補助する他のポリペプチド、例えば、IF2ドメイン、GSTドメイン、GRPEドメインなどが挙げられる。
【0064】
候補のポリペプチド剤が、細胞内での凝集シグナル伝達を阻害する能力についてアッセイされている場合、ポリペプチドは、ポリペプチド透過性ドメインに融合された対象のポリペプチド配列を含んでもよい。多数の透過性ドメインが当該技術分野で既知であり、ペプチド、ペプチド模倣物、および非ペプチド担体を含む、本発明の非組み込みポリペプチドに使用され得る。例えば、透過性ペプチドは、アミノ酸配列RQIKIWFQNRRMKWKKを含む、ペネトラチンと称される、キイロショウジョウバエの転写因子アンテナペディアの第3のアルファヘリックスに由来し得る。別の例として、透過性ペプチドは、HIV-1tat塩基性領域アミノ酸配列を含み、これは、例えば、天然に存在するtatタンパク質のアミノ酸49~57を含み得る。他の透過性ドメインとしては、ポリアルギニンモチーフ、例えば、HIV-1 revタンパク質のアミノ酸34~56の領域、ノナアルギニン、オクタアルギニンなどが挙げられる(例えば、Futaki et al.(2003)Curr Protein Pept Sci .2003年4月;4(2):87-96、およびWender et al.(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A2000年11月.21日;97(24):1303-8、公開された米国特許出願第20030220334号、第20030083256号、第20030032593号、および第20030022831号を参照、トランスロケーションペプチドおよびペプトイドの教示のために参照により本明細書に具体的に組み込まれる)。ノナアルギニン(R9)配列は、特徴付けられているより効率的なPTDの1つである(Wender et al.2000;Uemura et al.2002)。
【0065】
候補のポリペプチド剤が、細胞外での凝集シグナル伝達を阻害する能力についてアッセイされている場合、ポリペプチドは、改善された安定性のために製剤化され得る。例えば、ペプチドは、PEG化されてもよく、ここで、ポリエチレンオキシ基は、血流中の向上した寿命を提供する。ポリペプチドは、追加の機能性を提供するため、例えば、in vivo安定性を増加させるために、別のポリペプチドに融合させてもよい。一般に、かかる融合パートナーは、安定した血漿タンパク質であり、これは、例えば、融合として存在する場合、特に、かかる安定した血漿タンパク質が免疫グロブリン定常ドメインである場合、ポリペプチドのインビボ血漿半減期を延長し得る。安定した血漿タンパク質が通常、同じまたは異なるポリペプチド鎖が通常ジスルフィドであり、かつ/または非共有結合して組み立てられた多鎖ポリペプチドを形成する多様型、例えば、免疫グロブリンまたはリポタンパク質で見出されるほとんどの場合において、ポリペプチドを含有する本明細書の融合物もまた、安定した血漿タンパク質前駆体と実質的に同じ構造を有する多量体として産生され、用いられる。これらの多量体は、それらが含むポリペプチド剤に関して均質であるか、または複数のポリペプチド剤を含有し得る。
【0066】
候補のポリペプチド剤は、原核細胞によって産生された真核生物から産生されてもよく、それは、アンフォールディング、例えば、熱変性、DTT還元などによってさらに処理されてもよく、当該技術分野で既知の方法を使用して、さらにリフォールドされてもよい。一次配列を変化させない関心がある修飾としては、ポリペプチドの化学的誘導体化、例えば、アシル化、アセチル化、カルボキシル化、アミド化などが挙げられる。また、グリコシル化の修飾、例えば、ポリペプチドの合成および処理中、またはさらなる処理工程中に、ポリペプチドのグリコシル化パターンを修飾することによって、例えば、哺乳類のグリコシル化または脱グリコシル化酵素などのグリコシル化に影響を与える酵素にポリペプチドを曝露することによって行われるものも含まれる。また、リン酸化アミノ酸残基、例えば、ホスホチロシン、ホスホセリン、またはホスホスレオニンを有する配列も包含される。ポリペプチドは、タンパク質分解に対する耐性を向上させるために、または溶解性特性を最適化するために、または治療剤としてより適切にするために、通常の分子生物学的技法および合成化学を使用して修飾されていてもよい。かかるポリペプチドの類似体には、天然に存在するL-アミノ酸、例えばD-アミノ酸または天然に存在しない合成アミノ酸以外の残基を含有するものが含まれる。D-アミノ酸は、アミノ酸残基の一部または全てに置換されてもよい。
【0067】
候補ポリペプチド剤は、当技術分野で既知の従来の方法を使用して、インビトロ合成によって調製され得る。様々な市販の合成装置が入手可能であり、例えば、Applied Biosystems,Inc.,Beckmanなどによる自動合成装置である。シンセサイザーを使用することにより、天然アミノ酸は非天然アミノ酸で置換され得る。特定の配列および調製方法は、利便性、経済性、必要な純度などによって決定される。あるいは、候補ポリペプチド剤を、従来の組換え合成方法に従って単離および精製し得る。溶解物は、HPLC、排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、親和性クロマトグラフィー、または他の精製技術を使用して精製された発現宿主および溶解物から調製されてもよい。ほとんどの場合、使用される組成物は、製品の調製方法およびその精製に関連する汚染物質に関して、所望の生成物の少なくとも重量20%、より通常は少なくとも重量約75%、好ましくは少なくとも重量約95%、および治療目的のために、通常は少なくとも重量約99.5%を含む。通常、パーセンテージは、総タンパク質に基づいている。
【0068】
いくつかの場合では、スクリーニングされる候補ポリペプチド剤は抗体である。「抗体」または「抗体部分」という用語は、エピトープに適合し、エピトープを認識する特定の形状を有する任意のポリペプチド鎖含有分子構造を含むことを意図し、1つ以上の非共有結合相互作用が分子構造とエピトープとの間の複合体を安定化する。所与の構造およびその特定のエピトープの特異的または選択的適合は、「ロックアンドキー」適合と呼ばれることがある。アーキタイプ抗体分子は、免疫グロブリンであり、あらゆる供給源(例えば、ヒト、げっ歯類、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、他の哺乳類、ニワトリ、他の鳥類など)からのあらゆる種類の免疫グロブリン、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDなどは、「抗体」であると見なされる。本発明で利用される抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれであってもよい。抗体は、典型的には、細胞が培養される培地中に提供される。
【0069】
候補薬剤は、合成または天然化合物のライブラリを含む多種多様な供給源から入手することができる。例えば、無作為化オリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を含む、生体分子を含む多種多様な有機化合物の無作為かつ有向性合成のための多数の手段が利用可能である。あるいは、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリが入手可能であるか、または容易に作製される。加えて、天然または合成で作製されたライブラリおよび化合物は、従来の化学的、物理的および生化学的手段を通じて容易に修飾され、組み合わせライブラリを作製するために使用され得る。既知の薬理学的薬剤は、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などの指向性または無作為な化学修飾を受けて、構造的類似体を生成し得る。
【0070】
候補薬剤は、通常、薬剤と接触していない外植片と併せて、少なくとも1つ、通常は複数の外植片または細胞試料に薬剤を添加することによって、生物学的活性についてスクリーニングされる。薬剤に対するパラメータの変化を測定し、例えば作用物質の存在下および非存在下で、参照培養物との比較により結果を評価し、他の薬剤などと得られる。
【0071】
これらの薬剤は、溶液中、または容易に可溶性の形態で、培養中の細胞の培地に簡便に添加される。薬剤は、フロースルーシステムに、流れとして、間欠的または連続的に、または代替的に、化合物のボーラスを、別様では静的溶液に、単独でまたは増分的に添加してもよい。フロースルーシステムでは、2つの流体が使用され、1つは生理学的に中性の溶液であり、もう1つは試験化合物を添加した同じ溶液である。第1の流体は細胞の上を通過し、続いて第2の流体が通過する。単一溶液法では、試験化合物のボーラスを、細胞を取り囲む培地の体積に添加する。培地の成分の全体的な濃度は、ボーラスの添加、またはフロースルー法における2つの溶液の間で有意に変化してはならない。あるいは、薬剤は、外植片に、例えば、外植片の管腔に注入することができ、それらの効果は、対照の注入と比較してもよい。
【0072】
好ましい薬剤製剤は、全体的な製剤に有意な影響を及ぼし得る保存剤などの追加の成分を含まない。したがって、好ましい製剤は、本質的に、生物活性化合物および生理学的に許容される担体、例えば、水、エタノール、DMSOなどからなる。しかしながら、化合物が溶媒を含まない液体である場合、製剤は、化合物自体から本質的に構成され得る。
【0073】
複数のアッセイを異なる薬剤濃度と並行して実行して、様々な濃度に対する差分応答を得ることができる。当技術分野で既知のように、薬剤の有効濃度の判定には、典型的には、1:10、または他の対数スケールの希釈から生じる濃度の範囲を使用する。必要に応じて、濃度を第2の一連の希釈液でさらに精製してもよい。典型的には、これらの濃度のうちの1つは、陰性対照として機能する、すなわち、ゼロ濃度で、または薬剤の検出レベル未満で、または増殖速度に検出可能な変化をもたらさない薬剤の濃度未満である。
【0074】
疾患を予防または治療するための薬剤のスクリーニング.関心があるスクリーニング方法の他の例としては、疾患の治療または予防における活性について候補薬剤をスクリーニングする方法が挙げられる。そのような実施形態では、外植片は、疾患をモデル化し、例えば、外植片は、疾患組織から得られたものであってもよく、または、例えば、遺伝子変異によって疾患をモデル化するために実験的に修飾されてもよい。移植片の増殖、細胞の生存率、細胞の微細構造、組織の微細構造などのパラメータは、該スクリーニングにおける出力パラメータとして特定の用途を見出す。
【0075】
薬剤の薬物動態および薬力学を判定するためのススクリーニング.他の例としては、組織に対する毒性について候補薬剤をスクリーニングする方法が挙げられる。これらの用途では、培養された外植片を候補薬剤またはビヒクルに曝露し、その増殖および生存率を評価する。これらの用途では、外植片の微細構造の分析も有用である。
【0076】
[ハイスループットスクリーニング]
本発明のいくつかの態様では、ハイスループットフォーマットで候補薬剤をスクリーニングするための方法および培養システムが提供される。「ハイスループット」または「HT」とは、関心がある活性について多数の候補薬剤または候補細胞を同時にスクリーニングすることを意味する。多数とは、一度に20以上の候補、例えば40以上の候補、例えば100以上の候補、200以上の候補、500以上の候補、または1000以上の候補をスクリーニングすることを意味する。
【0077】
いくつかの実施形態では、ハイスループットスクリーニングは、使用される組織培養プレートのウェルの数、例えば、24個の候補薬剤(またはそれ以下、プラス対照)がアッセイされる24ウェルフォーマット、48個の候補薬剤(またはそれ以下、プラス対照)がアッセイされる48ウェルフォーマット、96個の候補薬剤(またはそれ以下、プラス対照)がアッセイされる96ウェルフォーマット、384個の候補薬剤(またはそれ以下、プラス対照)がアッセイされる384ウェルフォーマット、1536個の候補薬剤(またはそれ以下、プラス対照)がアッセイされる1536ウェルフォーマット、または3456個の候補薬剤(またはそれ以下以下、プラス対照)がアッセイされる3456ウェルフォーマットに基づいてフォーマットされる。このようにフォーマットされたハイスループットスクリーニングは、例えば、トランスウェルインサートを使用することによって達成され得る。トランスウェルインサートは、マルチウェル組織培養皿のウェル内に収まるように設計された、透過性支持体(例えば微孔性膜)を有するウェルである。いくつかの事例では、トランスウェルは個々に使用される。いくつかの事例では、トランスウェルは、自動化を可能にし、一度に複数のトランスウェルの取り扱いを容易にするために、特別なホルダーに取り付けられる。
【0078】
ハイスループットスクリーニングを実施するために必要なオルガノイドの数を達成するために、一次オルガノイド(すなわち、組織断片から直接培養されたオルガノイド)を単一の細胞懸濁液に解離し、複数のトランスウェルにわたって再播種し、マルチウェルフォーマットの二次オルガノイドを生成する。解離は、任意の簡便な方法、例えば、手動処理(粉砕)、または組織内の細胞の解離を促進する、例えば、EDTA、トリプシン、パパインなどによる化学的もしくは酵素的処置によってであってよい。次いで、解離したオルガノイド細胞を、96ウェルあたり10000以上の細胞、例えば20000以上の細胞、30000以上の細胞、40000以上の細胞、または50000以上の細胞の密度でトランスウェルに再播種する。解離および播種の追加の反復を実行して、薬剤で治療されるオルガノイドの所望の数の試料を達成してもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、二次(または三次)オルガノイドは、最初に培養されてもよく、その後、候補薬剤または細胞をオルガノイド培養物に添加し、所望の活性が評価された場合にパラメータを反映する。他の実施形態では、候補薬剤または細胞は、再播種時に解離細胞に添加される。この後者のパラダイムは、例えば、発生中のオルガノイドの細胞の分化に影響を与える活性について候補薬剤/細胞を評価するために特に有用であり得る。これらのステップのうちのいずれか1つ以上は、例えば、外植片の播種のためのロボット液体取扱い、媒体の添加、および/または候補薬剤の添加、パラメータのロボット検出、およびデータ取得など、簡便に自動化され得る。
【0080】
[有用性]
主題の方法によって調製されたオルガノイドは、基礎研究において、例えば、疾患の基礎をよりよく理解するために、および創薬において、例えば、以下にさらに記載されるものなどのスクリーニングにおける試薬として、および診断目的で使用され得る。オルガノイドはまた、薬剤の薬物動態および薬力学、例えば、哺乳動物組織が活性薬剤を吸収する能力、一次哺乳動物組織上または発がん性哺乳動物組織上の薬剤の細胞傷害性などを評価するために有用である。
【0081】
以下の実施例は、本発明の作製および使用方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために提示されるものであり、発明と見なされるものについての範囲を限定することを意図するものではない。
【0082】
[実験]
セリアック病(CeD)は、グルテンへの食事による曝露が、症候学に関連する腸管上皮の自己免疫破壊を誘導する、一般的かつ潜在的に障害な状態である。CeDの病因は、主要な危険因子対立遺伝子としてのグリアジン反応性T細胞受容体(TCR)およびHLA-DQ2および-DQ8の実証によって推測されるように、グルテン依存性T細胞の活性化から始まると推定される。これまでのCeD病態生理学の実質的な洞察にもかかわらず、研究は、インビボおよびインビトロ実験モデルの欠如によって実質的に妨げられてきている。特に、CeDのインビトロ研究は、再構築することなく、内因性の多様な浸潤免疫集団とともに腸上皮をまとめて保存する全体的な組織培養モデルの著しい欠如に悩まされてきている。従来のオルガノイドモデルは、CeD患者から腸上皮を確実に増殖させるが、免疫成分は特に存在しない。
【0083】
我々は、線維芽細胞および免疫細胞を含む内因性間質とともに腸上皮細胞またはがん細胞を増殖させる新規の気液界面(ALI)オルガノイドモデルを開発した。我々は、腸管上皮がT細胞、B細胞、骨髄系細胞、線維芽細胞と共に再構成されずに保存されているCeD患者からの内視鏡生検の堅牢なオルガノイド培養にALI法を拡張した。注目すべきことに、ALI CeDオルガノイドへのグリアジンのインビトロ添加は、CeDの組織学的特徴である上皮死および過剰増殖を誘導する。重要なことに、ALIオルガノイドのグリアジン治療は、CeD患者からのオルガノイドにおけるT細胞の活性化および拡大を迅速に刺激するが、非CeD対照からのものではない。さらに、単一細胞配列決定は、オルガノイドに存在するT細胞内の既知のグリアジン結合TCRクローンタイプを容易に実証する。
【0084】
総合的なALIセリアック病のオーガノイド法は、免疫上皮クロストークに焦点を当てて、グリアジン曝露後の最初期の事象について以前はアクセスできなかった洞察を得るために使用される。CeDオルガノイドは、グルテン誘発性自己免疫中の免疫細胞型およびサイトカインの本質的な役割を、系統的な薬理学的調節によって、再び免疫および上皮摂動の単一の細胞測定で機能的に分解するために使用し得る。全体的に、我々は、グルテン誘発性自己免疫の経路を分析するために、CeDの上皮成分と免疫成分との両方を保存する新規のオルガノイド方法論を利用し、基本的な意味合いと翻訳的な意味合いとの両方を有する。
【0085】
セリアック病(CeD)は、食物グルテンおよびMHCクラスIIリスクアレル、HLA-DQ2またはHLA-DQ8がCD4T細胞依存性小腸粘膜傷害を開始する、一般的であり、潜在的に障害となる自己免疫疾患である。CeD診断は、血清抗体の検出および確認内視鏡検査、または経口対症療法的グルテンチャレンジに依存しており、感度、特異性、および患者の不快感の欠点がある。上皮と免疫細胞との間の炎症性クロストークの性質、細胞性免疫カスケードの定義、上皮内対リンパ球/末梢血T細胞の相対的寄与、および必須グルテン提示細胞の同一性を含む、CeD病因に関する多くの疑問がある。このような調査は、ヒト腸管上皮と間質および人工再構築を伴わない内因性上皮内免疫成分を統合する堅牢なCeD組織培養システムの著しい欠如に悩まされている。
【0086】
2つの消化器科クリニックで行われた生検からの健常なヒト小腸組織、ならびに膵頭十二指腸切除術による切除からの病院により提供された組織、腫瘍手術からの末梢腸組織、および短腸症候群患者からの組織を使用した。上皮細胞および間質細胞を含有するこれらの検体は、機械的に粉砕され、トランスウェル(「インナーディッシュ」)内のコラーゲンゲル内の気液界面で増殖し、そこで上部から直接空気暴露が得られ、その一方、「アウターディッシュ」に含まれる組織培養培地との接触は、トランスウェル透過性膜を介して下部から得られ、図1に示される気液界面(ALI)を生成する。
【0087】
ヒトオルガノイド-4~8個の生検咬合を、上皮、間葉間質、および重要なことに、多様で機能的な腸管免疫系を含む3Dオルガノイドとして、7~12日間まとめて増殖する微視的な断片にハサミで機械的に粉砕する(図1A~B)。
【0088】
オルガノイドを、一般的な食餌性デンプンの高免疫原性グルテンタンパク質成分の確立された模倣物として、脱アミドグリアジンペプチドで治療した。かかる脱アミド化グルテンペプチドは、HLA-DQ2に結合し、CeD特異的CD4T細胞を刺激するように十分に確立されているため、セリアック病の分野で広く使用される。対照として、ALIオルガノイドを、全てのMHCクラスII分子によって提示されることが可能なMHC不変鎖に由来するCLIPペプチドで治療した。グリアジンペプチド、またはCLIPペプチドを、10μMの培地中の最終濃度に添加した。具体的には、脱アミドグリアジンは、グリアジン-α1(5μM、14aa、Genscript)およびグリアジン-α2(5μM、13aa、Genscript)またはCLIP対照ペプチド(10μM、Genscript)の50:50混合物であってもよい。オルガノイドは、分析のために2日後に培養物から採取される(図1C)。
【0089】
図2に示されるように、オルガノイドから採取された単一細胞を、上皮細胞マーカーEpCamおよびアポトーシスマーカーアネキシンVについて、死細胞マーカーとともに免疫染色した後に選別および分析し、グリアジンであるがCLIPではない治療が細胞死の増加をもたらすことを示した。データは、グリアジンで治療したが、健常なオルガノイドでは影響を及ぼさないセリアック病のオルガノイドにおける上皮細胞死の増加を確認した(図2A~B)。
【0090】
検証された抗ヒトCD3抗体OKT3でインタクトの活性CeDオルガノイドを治療すると、CD4の約90%およびCD8T細胞の約80%が効率的に枯渇し、グリアジン誘発性上皮アポトーシスが抑制され、T細胞依存性が強く示される(図3C)。抗CD3はまた、ベースラインのアポトーシスを低下させ、基底T細胞上皮クロストークを示唆した。
【0091】
上皮細胞死は、グリアジンチャレンジ後のセリアック病のオルガノイドにおけるIFによるアポトーシスマーカー切断カスパーゼ3の陽性免疫染色シグナル後にも見ることができるが、CLIPは見られない(図2C)。図3は、FACSで選別されたEpCAM上皮細胞のRT-qPCRによる、LGR5、CCND1、およびPCNAなどの幹細胞および増殖性マーカーの増殖を示し(図3A~D)、IF染色によるセリアック病活性患者由来のオルガノイドにおけるKi67+増殖性細胞の6倍の増加を示すことが明らかになった(図3E~F)。
【0092】
図4において、我々は、グリアジンで治療したセリアック病のオルガノイドで観察されたT細胞の増殖を確認したが、セリアック病のオルガノイドをFACS(図4A~D)およびIF(図4E)によってCLIPで治療したときに変化はなかった。図5において、我々は、培養物から選別されたT細胞FACSは、IL-2、IL-22、IL-17A、IL-10、IL-25およびIFNGなどのいくつかの炎症促進性サイトカイン、記憶T細胞マーカーであるCD38およびCD25、IL-2受容体、ならびにセリアック病活性患者に由来するオルガノイドにおけるCCND1およびPCNAなどの増殖マーカーのCLIP治療と比較して、グリアジン治療における転写物の増加を示す(セリアック病寛解患者に由来するオルガノイドではある程度)が、セリアック病に罹患していない健常者由来オルガノイドにおいては示していない(図5A~B)。
【0093】
我々は、セリアック病(CeD)の新規のヒト気液界面(ALI)オルガノイドモデルの適用を提供し、内因性浸潤免疫細胞を組み込んだ腸上皮をまとめて再構築せずに保存し、CeD病因の研究に応用する。摂取されたグルテンペプチドに対する免疫応答は、MHCクラスIIアレルHLA-DQ2または-DQ8を担持する個体のサブセットにおいて小腸粘膜破壊を引き起こす。小麦の摂取後、グルテン内のグリアジンペプチドは、固有積層内の組織トランスグルタミナーゼ2(TG2)によって脱アミノ化される。脱アミノ化は、負電荷を導入し、MHC結合を増強し、T細胞媒介性腸炎および粘膜損傷ならびに抗グリアジンおよび抗TG2自己抗体を伴うグリアジン特異的T1媒介性HLA-DQ2またはDQ8-制限免疫応答で最高潮に達する。同時に、グルテン特異的CD4および疾患関連CD8およびγδT細胞は、腸管上皮および血液中で上昇する。組織学的特徴としては、吸収不良、消化管症状および腸管外症状とともに、絨毛状萎縮、陰窩の過剰増殖、固有層炎症、および上皮内リンパ球症が挙げられる。
【0094】
CeD関連MHCクラスIIが最も強力な危険因子であり、T細胞媒介性細胞傷害性が重要であるが、調節不全免疫および環境トリガーを含む他の因子が寄与している可能性が高い。健常な集団では、30~35%がHLA-DQ2またはHLA-DQ8を有するが、CeDを発症するものは3~5%である。GWAS研究は、40個の非HLA CeD遺伝子座を同定し、いくつかは先天性免疫またはバリア機能に関与する。上皮バリア機能障害はCeDの特徴であるが、直接の原因または炎症の結果である可能性がある。先天性免疫は、粘膜損傷/バリア機能障害を誘発し、続いてTG2活性化してCeDを開始し得る。改善された疾患モデルは、オルガノイドを使用して本明細書で広範囲にわたって研究されるように、CeDにおける上皮および免疫細胞の相互作用を分析し、グルテン誘発免疫上皮クロストークの急性時間経過を定義し、これらの培養物で診断方法を提供するために必要である。
【0095】
ヒト内視鏡生検由来のCeDオルガノイドモデルは、同系腸管上皮および天然腸管免疫細胞の両方を再構築せずに保持し、重要なことに、インビトログルテンチャレンジに応答してT細胞活性化を示す。これはCeDの最初の天然オルガノイドモデルである。気液界面(ALI)オルガノイドは、多様なマウスおよびヒト臓器および腫瘍からの上皮成分および間質成分の両方を有する(Nature Medicne 2009、Nature Medicne 2014、Cell 2018)。ALI法は、浸漬されたマトリゲル法よりも大きな組織断片を培養する真の器官型のアプローチであり、したがって、より大きな細胞シートが、上皮と間質とを凝集単位としてまとめて保存することを可能にする。ALIでは、大きな組織断片の適切な酸素化は、細胞外マトリックスおよび上部に直接空気曝露が得られる細胞を含有するトランスウェル(「インナーディッシュ」)内での培養によって達成され、組織培養培地は「アウターディッシュ」に排他的に含まれ、トランスウェル透過性膜を介してインナーディッシュに入る。CeD患者および正常(すなわち、非CeD)対照からの十二指腸内視鏡生検を使用して、ヒトALIオルガノイド培養を最適化した。改良された検体処理および Wnt/EGF/ノギン/R-スポンジン(WENR)培地により、95%超の成功率および100日超の堅牢な連続培養(最長試行時間)を行った。ALIオルガノイドは、基本的に位置する増殖を伴って絨毛および陰窩様ドメインを再現する。
【0096】
ALIオルガノイドは、多数の間質集団を保存する。強調するために、間質細胞は、再構成によって外因的に添加されるのではなく、むしろ上皮とともにまとめて内因的に保持され、別個のSMAおよびPDGFRα筋線維芽細胞およびPGP9.5神経細胞が存在する。重要なことに、ALIオルガノイドはまた、CeDの上皮リンパ球浸潤を強固に再現する。CeD活性患者の内視鏡的十二指腸生検からのALIオルガノイドは、再構築することなく、腸管上皮とともに内因性T、B細胞およびマクロファージを堅牢に保存する。これらの免疫集団は、少なくとも3週間持続する。
【0097】
CeDは、免疫介在性上皮細胞死に起因する周知の絨毛の鈍化を含む、影響力が強い組織学的特徴を特徴とする。CeDにおいてあまり理解されていないことは、代償性増殖を表し得る陰窩の過形成の均一かつ同時の存在である。我々は、多様な免疫集団を広く保存し、上皮細胞死と二次上皮増殖との両方のグルテン誘導を再現するCeD ALIオルガノイドの能力を検証した。活性CeD培養物を、一般的な食餌性デンプンの高免疫原性グルテン成分の確立された模倣物として脱アミドグリアジンペプチドで治療した(Sjostrom,H.,et al.Identification of a gliadin T-cell epitope in coeliac disease:general importance of gliadin deamidation for intestinal T-cell recognition.ScandJ Immunol 48,111-115(1998)を参照されたい)。かかる脱アミド化グルテンペプチドは、HLA-DQ2に結合し、CeD特異的CD4T細胞を刺激するように十分に確立されているため、セリアック病の分野で広く使用される。対照として、ALIオルガノイドを、全てのMHCクラスII分子によって提示されることが可能なMHC不変鎖に由来するCLIPペプチドで治療した。これらの条件下では、CLIPではなくグリアジンは、CeD活性患者由来のALIオルガノイドにおいて上皮細胞死を誘導したが、非CeD患者由来の対照オルガノイドでは誘導しなかった。さらに、グリアジンであるがCLIPではない、CeD活性オルガノイドにおいても同様に増殖性マーカーが増加したが、対照では増加しなかった(図5C、D)。増殖試験では、オルガノイドをWnt/R-スポンジンを欠く分化培地に切り替え、静止ベースラインを誘導した。したがって、ALIオルガノイドは、標準的なCeDグルテン依存性上皮アポトーシスおよび増殖を再現する。
【0098】
我々はさらに、ALI CeDオルガノイドにおけるグリアジン誘発性T細胞応答を特徴付ける。事前に確立されたCeDオルガノイドを、脱アミド化されたグリアジンまたはCLIPでインビトロ治療した。CD4およびCD8 IFは、グリアジンであるがCLIPではないオルガノイド内のT細胞のホットスポット病巣を誘導することを明らかにした。FACSは、オルガノイド対CLIPにおけるCD3、CD4およびCD8T細胞存在量のグリアジン刺激を確認したが、CD19B細胞は変化しなかった。特に、CD3、CD4およびCD8存在量のグリアジン:CLIP比の上昇は、活性CeD病のオルガノイドに非常に特異的であり、対照/非CeDまたはセリアック病寛解(すなわち、GFDをしている無症候性CeD患者)由来のオルガノイドには特異的ではなかった。
【0099】
グリアジンはまた、複数の基準によってCeDオルガノイド内のT細胞を活性化した。(1)CeD活性、(2)CeD寛解、または(3)非CeD内視鏡的生検からのALIオルガノイドを、脱アミド化グリアジンペプチドまたはCLIPのいずれかで治療し、続いてCD4またはCD8T細胞のFACS精製を行った。qRT-PCRにより、グリアジンは、CD4T細胞におけるIL2、IL21、IL10、IL25、CD8T細胞における活性化マーカー(IFNG、PRF1、CD38、CD25)および両方における増殖性マーカー(PCNA、CCND1)を含む、CLIP対照にわたって複数のmRNAを増加させた。同様に、scRNA-seqは、T細胞サブセットにおいて選択的に細胞傷害性マーカー(IFNGおよびPRF1、ならびにより低い程度にGZMBおよびIL2)を誘導したが、他の造血細胞においては誘導されなかったことを明らかにした。グリアジンで治療したCeDのオルガノイドからのT細胞受容体(TCR)のCDR3領域のタンデム単一細胞TCR-seqは、Koning/Leidenデータベースからのグリアジン結合TCRクローノタイプと一致するTCRβ配列を示し、CeDのALIオルガノイドの妥当性を再確認した。さらに、バイオインフォマティックGLIPH分析は、既知のKoning/Leidenグリアジン結合TCRとの配列予測抗原重複を有する追加のTCRクローンタイプをビニングした。
【0100】
全体として、我々は、特に再構築を伴わない、多様な免疫細胞(T細胞サブセット、B、形質細胞、骨髄)とともに、腸管上皮としてのCeD内視鏡的生検をまとめて保存および拡張することを可能にする総合的なオルガノイドシステムを確立した。この独自の方法論を利用して、腸管上皮内の抗原性グルテン曝露後の事象の最初期の配列に関する分子および細胞の洞察を得る。
【0101】
CeD ALIオルガノイドは、グリアジン曝露後の単一の生体試料の縦断的サンプリングに理想的であり、それ以外の場合、グルテン摂取後数時間から数日間にわたって繰り返しの内視鏡検査を必要とする。これは、グルテン刺激免疫事象の急性時間経過の単一細胞RNA-seq(トランスクリプトーム)、懸濁液-CyTOF(プロテオーム)、および撮像-CyTOF(空間)分析によって判定することができ、CeDにおける免疫カスケードおよび上皮クロストークの多原子単一細胞ネットワークモデルを構築する。加えて、扱いやすく総合的なCeDオルガノイドは、ヒト実験モデルにおける必須CeD免疫細胞タイプおよびサイトカインの第1のインビトロ脱構築を可能にする。
【0102】
非CeD対照由来ではなく、CeD由来のALIオルガノイドに対するグリアジン応答の顕著な特異性は、生細胞からの生物学的リードアウトを使用したインビトロのCeD診断アッセイとして有用である。
【0103】
CeD ALIオルガノイドは、グリアジン曝露後の単一の生体試料の縦断的サンプリングに理想的であり、それ以外の場合、グルテン摂取後数時間から数日間にわたって同一の粘膜領域の反復内視鏡検査を必要とする。ここでは、CeDオルガノイドシステムを利用して、転写物、プロテオミクスおよび空間単一細胞技術を統合して、CeDにおける急性グリアジン誘発性免疫応答および上皮クロストークの第1の単一細胞ランドスケープを経時的に生成する。
【0104】
CeD由来のオルガノイドであって、対照ではない患者は、グリアジンのインビトロ刺激に強く応答し、上皮アポトーシス、反応性過剰増殖、および重要なことに、グリアジン結合TCRクローンタイプとともにT細胞の活性化および増殖を含む疾患特徴を有する。すべてのT細胞に特有のTCRクローノタイプ配列は、「バーコード」として利用して、どのT細胞がクローン的に増殖したかを識別することができ、グルテンの認識への潜在的な関与を示唆する。我々は、単一のセリアック病活性患者の内視鏡的十二指腸生検からALIオルガノイドを増殖させ、グリアジン刺激の有無にかかわらず、FACS精製CD45免疫細胞上でタンデムTCR-seq/5’RNA-seqを行った。これにより、形質B細胞、成熟B細胞、様々なT細胞サブセット(メモリーCD4、メモリーCD8、複製T細胞、FOXP3reg)、骨髄細胞、および好塩基球様細胞からなる非常に多様な腸免疫コンパートメントの保存が明らかになった。さらに、既知のグルテン反応性T細胞クローンに対するTCR配列相同性を容易に同定した。
【0105】
各ALIディッシュは、典型的には、約1~2×10個の生細胞/ディッシュを産生する。(1)CD45免疫(全体の約15%)および(2)EPCAM上皮(大部分)コンパートメントを、記述したとおり、10×ゲノミクスクロミウム免疫プロファイリングシステムおよびNextSeq/HiSeq配列決定を用いて単一細胞5 ’RNA/TCR-seqに続いて、各状態からFACS精製する。得られた単一細胞5 ’トランスクリプトームおよびTCRαβ CDR3配列を分析して、(1)CeD関連免疫細胞集団、および(2)既知のまたはGLIPHビニングされたグリアジン特異性を伴うTCRを有するT細胞に特に関心がある腸上皮のグリアジン誘発性発現プロファイルを判定する。これは、グリアジン誘発性遷移をマッピングする推定分化軌道に沿った発現によって遺伝子をクラスター化する擬似時間アルゴリズムによっても解析される。上皮細胞の死および増殖は、アネキシンV/7-AAD FACSおよび増殖性幹細胞マーカー(PCNA、MKI67、CCND1、LGR5)の発現によってEPCAM細胞において測定される。グルテン反応性T細胞を直接同定するDQ2:グリアジン四量体を用いたオーバーレイにより、さらなる解析が提供される。これらの解析は、腸上皮の変化に伴うグリアジン誘発性免疫応答の離散的な動態を捕捉する。グリアジン特異的四量体の包含は、グルテン特異的T細胞を検出し、単一細胞分解能でそれらのトランスクリプトームおよびTCRレパートリーを決定する。並行して、TCR配列決定は、RNAレベルで評価されるように、疾患関連T細胞集団のTCRレパートリーをそれらの表現型および分化段階に関連付ける。
【0106】
同じCD45CeDオルガノイド時間経過(0.6時間、1日、2日)+/-グリアジンおよび新鮮な生検(n=10CeDおよび対照)を、40plex CyTOF免疫抗体パネル(グリアジン調節候補のための抗体を含む)で解析する。生成されたCyTOFデータは、データのダウンサンプリングを必要とせずに、単一細胞の分解能で数百万個の細胞を偏りなく研究するためのHSNEアルゴリズムによって解析される。
【0107】
我々の初期結果は、EPCAM上皮細胞層(上皮内リンパ球、IEL)内に埋め込まれたCD3T細胞、ならびに基礎となるオルガノイド固有層のCD3T細胞、CD14骨髄細胞、およびCD19B細胞を有する、IF染色による腸オルガノイドにおける明確な細胞組織を示した。また、CLIPではなく。グリアジンが、CeDオルガノイド内のCD4およびCD8T細胞の病巣を誘導した。オルガノイドの組織構造および高次元細胞ランドスケープをその場で包括的に可視化するために、細胞下分解能で最大40個のマーカーを多重化するためのイメージング-CyTOFを利用する。これは、IHC染色と金属同位体抱合抗体、レーザーアブレーション、および質量分析ベースの検出を組み合わせて、高含有画像を生成する。生成されたイメージング-CyTOFデータは、(1)マーカー可視化のためのMCDビューア(Fluidigm)および(2)ImaCytEソフトウェアによってデータ駆動方式で解析される。この計算パイプラインは、細胞セグメント化画像からの細胞相互作用の偏りがない高次元分析を可能にし、オルガノイド内の細胞微小環境をその場で明らかにする。
【0108】
検証された抗ヒトCD3抗体OKT3でインタクトの活性CeDオルガノイドを治療すると、CD4の約90%およびCD8T細胞の約80%が効率的に枯渇し、グリアジン誘発性上皮アポトーシスが抑制され、T細胞依存性が強く示される。抗CD3はまた、ベースラインのアポトーシスを低下させ、基底T細胞上皮クロストークを示唆した。CeDオルガノイドにおけるT細胞枯渇の後遺症は、以下のように評価される。インタクトの事前に確立されたCeD活性オルガノイドは、48時間の抗CD3前処置で抗CD3/OKT3汎-T細胞枯渇を受け、次に48時間の抗CD3+/-グリアジンまたはCLIPを受ける。エンドポイントとしては、(1)アネキシンV/AmCyan FACSおよび切断カスパーゼ3 IFによるEPCAM上皮細胞死の定量化、(2)Aim 1Aあたりの免疫および腸上皮細胞のscRNA-seqおよびFACS(n=3患者)、ならびに(3)分泌サイトカインのLuminexおよびNanostringの定量化およびバルクデジタル転写物免疫プロファイリング(n=6患者)が挙げられる。これらはまた、B細胞および骨髄系細胞の存在量および活性化を検出する。
【0109】
特に、グリアジンはCeD活性オルガノイドにおいてIL-15発現を強く誘導する。IL-15の機能喪失は、可溶性組換えIL-15受容体(可溶性hIL15Rα、R&D #7194-IR)または抗ヒトIL-15中和抗体(R&D#MAB647)による、グリアジンで治療されたCeD活性オルガノイド+/-IL-15中和において研究される。エンドポイントとしては、(1)HLA-DQ2:FACSによるグリアジン四量体陽性T細胞存在量、(2)scRNA-seqおよびFACSで選別された免疫サブセットのFACSおよびNanostringデジタル転写物カウントによる四量体(+)CD4T細胞または四量体(-)CD8IEL活性化、ならびに(3)グリアジン誘導上皮アポトーシスおよび増殖の阻害というグリアジン誘発性応答の阻害が挙げられる。CeDオルガノイドの機能獲得組換えIL-15治療(R&D#247-ILB)は、(1)FACSによるHLA-DQ2:グリアジン四量体82陽性T細胞の拡大、(2)scRNA-seqおよびFACS/Nanostring解析によるこれらの四量体(+)CD4T細胞または四量体(-)CD8IELの活性化、ならびに(3)上皮アポトーシスおよび増殖の誘導を増強する。
【0110】
相互参照
本出願は、2019年6月3日に出願された米国仮特許出願第62/856.481号の利益を主張し、これらの出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5