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特許7610543自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20241225BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20241225BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01B69/00 301
G05D1/43
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022031819
(22)【出願日】2022-03-02
(65)【公開番号】P2023127874
(43)【公開日】2023-09-14
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】西井 康人
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-108603(JP,A)
【文献】特開2005-215742(JP,A)
【文献】特開2019-088259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させることと、
前記作業車両の一部が前記圃場の領域外に位置するか否かを判定することと、
前記作業車両の一部が前記領域外に位置すると判定した場合において、前記作業車両の走行方向が、前記作業車両における前記領域外に位置する部分の範囲が増加しない方向である場合に、前記作業車両の自動走行を許可することと、
を実行する自動走行方法。
【請求項2】
前記作業車両の一部が前記領域外に位置する場合において、前記作業車両の走行方向が、前記作業車両における前記領域外に位置する部分の範囲が増加する方向である場合に、前記作業車両の自動走行を禁止すること、
をさらに実行する請求項1に記載の自動走行方法。
【請求項3】
前記作業車両の一部が前記領域外に位置する場合において、前記作業車両の走行方向が、前記作業車両における前記領域外に位置する部分の範囲が減少する方向である場合に、前記作業車両の自動走行を許可する、
請求項1又は2に記載の自動走行方法。
【請求項4】
前記目標経路は、前記作業車両が所定の作業を行う作業経路と、前記作業車両の現在位置と前記作業経路の作業開始位置とを接続する移動経路とを含み、
前記作業車両の一部が前記領域外に位置する場合において、前記作業車両の前記移動経路の走行方向が、前記作業車両における前記領域外に位置する部分の範囲が増加しない方向である場合に、前記移動経路における前記作業車両の自動走行を許可する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の自動走行方法。
【請求項5】
操作端末において、前記作業経路と前記移動経路とを互いに異なる態様で表示させることをさらに実行する、
請求項4に記載の自動走行方法。
【請求項6】
前記作業車両の走行方向が、前記作業車両の周囲に設定される仮想領域のうち前記領域外に位置する第1仮想領域の面積が増加しない方向である場合に、前記作業車両の自動走行を許可する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の自動走行方法。
【請求項7】
前記作業車両の走行方向が、前記第1仮想領域の面積が減少する方向である場合に、前記作業車両の自動走行を許可する、
請求項6に記載の自動走行方法。
【請求項8】
前記作業車両は、自動走行中に前記作業車両の一部が前記領域外に飛び出した場合に自動走行を停止させる機能を備えており、
前記作業車両の一部が前記領域外に位置する場合において前記作業車両の自動走行を許可する場合に前記機能を無効に設定し、前記作業車両が自動走行を開始して前記作業車両の全体が前記圃場の領域内に位置した場合に前記機能を有効に設定する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の自動走行方法。
【請求項9】
前記作業車両の一部が前記領域外に位置する場合において前記作業車両が自動走行を開始した場合に第1走行速度に設定し、前記作業車両の全体が前記圃場の領域内に位置した場合に前記第1走行速度よりも速い第2走行速度に設定する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の自動走行方法。
【請求項10】
前記圃場に対して前記作業車両の走行開始位置の設定操作を受け付けることと、
前記走行開始位置から前記作業車両が作業を開始する作業開始位置までの移動経路であって、前記作業車両における前記領域外に位置する部分の範囲が増加しない移動経路を生成することと、
をさらに実行する請求項1~9のいずれか1項に記載の自動走行方法。
【請求項11】
圃場に設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させる処理と、前記作業車両の一部が前記圃場の領域外に位置するか否かを判定する処理とを実行する走行処理部を備え、
前記走行処理部は、前記作業車両の一部が前記領域外に位置すると判定した場合において、前記作業車両の走行方向が、前記作業車両における前記領域外に位置する部分の範囲が増加しない方向である場合に、前記作業車両の自動走行を許可する、
自動走行システム。
【請求項12】
圃場に設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させることと、
前記作業車両の一部が前記圃場の領域外に位置するか否かを判定することと、
前記作業車両の一部が前記領域外に位置すると判定した場合において、前記作業車両の走行方向が、前記作業車両における前記領域外に位置する部分の範囲が増加しない方向である場合に、前記作業車両の自動走行を許可することと、
を一又は複数のプロセッサーに実行させるための自動走行プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両を自動走行させる自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業機械の自動化技術の進歩により、圃場内を自動走行しながら作業を行う作業車両が導入されている。圃場内において設定された走行経路(目標経路)の自動走行を開始するためには走行開始位置までオペレータが作業車両を手動走行(運転操作)する必要があり手間がかかる。従来、作業車両を現在位置から走行開始位置まで自動走行させることが可能な技術が知られている(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、例えば、枕地領域において、作業車両を走行開始位置まで自動走行させることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-135670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、例えば作業車両の一部(作業機など)が圃場外に位置している(はみ出している)場合には自動走行を開始させることができない構成となっている。このため、オペレータは少なくとも作業車両の車体全体が圃場内に収まる位置まで手動走行させる必要があり依然として手間がかかる。
【0005】
本発明の目的は、作業車両の一部が圃場外に位置する場合であっても自動走行を開始させることが可能な自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自動走行方法は、圃場に設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させることと、前記作業車両の一部が前記圃場の領域外に位置する場合において、前記作業車両の走行方向が、前記作業車両における前記領域外に位置する部分の範囲が増加しない方向である場合に、前記作業車両の自動走行を許可することと、を実行する。
【0007】
本発明に係る自動走行システムは、圃場に設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させる走行処理部を備える。前記走行処理部は、前記作業車両の一部が前記圃場の領域外に位置する場合において、前記作業車両の走行方向が、前記作業車両における前記領域外に位置する部分の範囲が増加しない方向である場合に、前記作業車両の自動走行を許可する。
【0008】
本発明に係る自動走行プログラムは、圃場に設定された目標経路に従って作業車両を自動走行させることと、前記作業車両の一部が前記圃場の領域外に位置する場合において、前記作業車両の走行方向が、前記作業車両における前記領域外に位置する部分の範囲が増加しない方向である場合に、前記作業車両の自動走行を許可することと、を一又は複数のプロセッサーに実行させるための自動走行プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業車両の一部が圃場外に位置する場合であっても自動走行を開始させることが可能な自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る自動走行システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る作業車両の一例を示す外観図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る圃場及び目標経路の一例を示す図である。
図4A図4Aは、本発明の実施形態に係る作業車両の走行方法の具体例を示す図である。
図4B図4Bは、本発明の実施形態に係る作業車両の走行方法の具体例を示す図である。
図4C図4Cは、本発明の実施形態に係る作業車両の走行方法の具体例を示す図である。
図4D図4Dは、本発明の実施形態に係る作業車両の走行方法の具体例を示す図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る作業車両の判定対象の範囲の一例を示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る操作端末に表示されるメニュー画面の一例を示す図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される操作画面の一例を示す図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る自動走行システムによって実行される自動走行処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図9A図9Aは、本発明の他の実施形態に係る目標経路の一例を示す図である。
図9B図9Bは、本発明の他の実施形態に係る目標経路の一例を示す図である。
図10図10は、本発明の実施形態に係る作業車両の補給処理の一例を示す図である。
図11図11は、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される操作画面の一例を示す図である。
図12図12は、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される経路生成画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る自動走行システム1は、作業車両10と操作端末20とを含んでいる。作業車両10及び操作端末20は、通信網N1を介して通信可能である。例えば、作業車両10及び操作端末20は、携帯電話回線網、パケット回線網、又は無線LANを介して通信可能である。
【0013】
本実施形態では、作業車両10がトラクタである場合を例に挙げて説明する。なお、他の実施形態として、作業車両10は、田植機、コンバイン、建設機械、又は除雪車などであってもよい。作業車両10は、予め登録された圃場内を自動走行(自律走行)可能な構成を備える、所謂ロボットトラクタである。例えば、オペレータは作業対象の圃場を登録し、当該圃場に対して作業車両10を自動走行させる走行経路(目標経路)を設定する。作業車両10は、測位装置16により算出される作業車両10の現在位置の位置情報に基づいて、圃場に対して予め設定された目標経路に従って自動走行する。また、作業車両10は、圃場内において自動走行しながら所定の作業を行うことが可能である。
【0014】
例えば、作業車両10は、図3に示す圃場Fにおいて、目標経路Rに従って自動走行する。具体的には、作業車両10は、走行開始位置Sから移動経路R1に従って自動走行を開始し、作業開始位置A1に到達すると作業を開始する。作業車両10は、作業開始位置A1から作業終了位置A2まで作業経路R2に従って自動走行しながら作業を行う。作業車両10は、作業終了位置A2に到達すると作業を終了して走行終了位置Gまで移動経路R3に従って自動走行する。目標経路Rには、移動経路R1、作業経路R2、及び移動経路R3が含まれる。作業経路R2には、複数の直進経路及び複数の旋回経路が含まれる。目標経路Rは、図3に示す経路に限定されず、作業内容に応じて適宜設定される。また、走行開始位置S及び走行終了位置Gは、圃場F内の任意の位置(出入口又は畦付近など)に設定可能である。
【0015】
ここで、作業車両10を目標経路Rに従って自動走行させる場合、オペレータは、作業車両10を走行開始位置S又は走行開始位置Sの近傍まで手動走行する。例えば、オペレータが作業車両10を走行開始位置Sまで手動走行すると、作業車両10が自動走行可能な状態になる。作業車両10が自動走行可能な状態になると、オペレータは操作端末20において作業車両10に自動走行を開始させる指示(走行開始指示)を行うことが可能になる。オペレータが前記走行開始指示を行うことにより、作業車両10は目標経路Rに従って自動走行を開始する。
【0016】
作業車両10は上述のようにして自動走行を開始することが可能である。しかし、従来の技術では、例えば作業車両10の一部(作業機14など)が圃場Fの領域外に位置している(はみ出している)場合には自動走行を開始させることができない構成となっている。このため、オペレータは少なくとも作業車両10の車体全体が圃場F内に収まる位置まで手動走行させる必要があり依然として手間がかかる。また、従来の技術では、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する状態になる場所に走行開始位置Sを設定できない構成となっている。このため、走行開始位置Sを圃場Fの境界から離れた場所に設定する必要があるため、オペレータは作業車両10を当該場所まで手動走行させなければならず作業効率が悪い。これに対して、本実施形態に係る自動走行システム1は、以下に示すように、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する場合であっても自動走行を開始させることが可能である。
【0017】
[作業車両10]
図1及び図2に示すように、作業車両10は、車両制御装置11、記憶部12、走行装置13、作業機14、通信部15、測位装置16などを備える。車両制御装置11は、記憶部12、走行装置13、作業機14、測位装置16などに電気的に接続されている。なお、車両制御装置11及び測位装置16は、無線通信可能であってもよい。
【0018】
通信部15は、作業車両10を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して操作端末20などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。作業車両10は、通信部15を介して操作端末20と無線通信を行うことが可能である。
【0019】
記憶部12は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部である。記憶部12には、車両制御装置11に自動走行処理を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、フラッシュROM、EEPROM、CD、又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部12に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して作業車両10にダウンロードされて記憶部12に記憶されてもよい。また、記憶部12には、操作端末20において生成される目標経路Rの経路データが記憶されてもよい。
【0020】
走行装置13は、作業車両10を走行させる駆動部である。図2に示すように、走行装置13は、エンジン131、前輪132、後輪133、トランスミッション134、フロントアクスル135、リアアクスル136、ハンドル137などを備える。なお、前輪132及び後輪133は、作業車両10の左右にそれぞれ設けられている。また、走行装置13は、前輪132及び後輪133を備えるホイールタイプに限らず、作業車両10の左右に設けられるクローラを備えるクローラタイプであってもよい。
【0021】
エンジン131は、不図示の燃料タンクに補給される燃料を用いて駆動するディーゼルエンジン又はガソリンエンジンなどの駆動源である。走行装置13は、エンジン131とともに、又はエンジン131に代えて、電気モーターを駆動源として備えてもよい。なお、エンジン131には、不図示の発電機が接続されており、当該発電機から作業車両10に設けられた車両制御装置11等の電気部品及びバッテリー等に電力が供給される。なお、前記バッテリーは、前記発電機から供給される電力によって充電される。そして、作業車両10に設けられている車両制御装置11及び測位装置16等の電気部品は、エンジン131の停止後も前記バッテリーから供給される電力により駆動可能である。
【0022】
エンジン131の駆動力は、トランスミッション134及びフロントアクスル135を介して前輪132に伝達され、トランスミッション134及びリアアクスル136を介して後輪133に伝達される。また、エンジン131の駆動力は、PTO軸(不図示)を介して作業機14にも伝達される。作業車両10が自動走行を行う場合、走行装置13は、車両制御装置11の命令に従って走行動作を行う。
【0023】
作業機14は、例えば耕耘機、草刈機、プラウ、施肥機、播種機、散布機などであって、作業車両10に着脱可能である。これにより、作業車両10は、作業機14各々を用いて各種の作業を行うことが可能である。図2では、作業機14が耕耘機である場合を示している。
【0024】
作業機14は、作業車両10において、不図示の昇降機構により昇降可能に支持されてもよい。車両制御装置11は、前記昇降機構を制御して作業機14を昇降させることが可能である。例えば、車両制御装置11は、作業車両10が作業経路R2を前進方向に直進走行する場合に作業機14を下降させ、作業車両10が旋回走行する場合及び移動経路R1、R3を走行する場合に作業機14を上昇させる。また、車両制御装置11は、作業の停止指示を取得した場合に、作業機14に作業の停止命令を出力する。例えば、車両制御装置11は、操作端末20においてオペレータが停止指示操作を行った場合に操作端末20から前記停止指示を取得する。車両制御装置11は、作業の停止指示を取得すると、PTO軸の駆動を停止させて作業機14の作業を停止させる。
【0025】
ハンドル137は、オペレータ又は車両制御装置11によって操作される操作部である。例えば走行装置13では、車両制御装置11によるハンドル137の操作に応じて、不図示の油圧式パワーステアリング機構などによって前輪132の角度が変更され、作業車両10の進行方向が変更される。オペレータが圃場Fを登録する際のティーチング操作を行う場合に、オペレータはハンドル137を操作して作業車両10を手動走行させる。また、作業車両10を走行開始位置Sに移動させる場合に、オペレータはハンドル137を操作して作業車両10を手動走行させる。
【0026】
また、走行装置13は、ハンドル137の他に、車両制御装置11によって操作される不図示のシフトレバー、アクセル、ブレーキ等を備える。そして、走行装置13では、車両制御装置11による前記シフトレバーの操作に応じて、トランスミッション134のギアが前進ギア又はバックギアなどに切り替えられ、作業車両10の走行態様が前進又は後進などに切り替えられる。また、車両制御装置11は、前記アクセルを操作してエンジン131の回転数を制御する。また、車両制御装置11は、前記ブレーキを操作して電磁ブレーキを用いて前輪132及び後輪133の回転を制動する。
【0027】
測位装置16は、測位制御部161、記憶部162、通信部163、及び測位用アンテナ164などを備える通信機器である。例えば、測位装置16は、図2に示すように、オペレータが搭乗するキャビン138の上部に設けられている。また、測位装置16の設置場所はキャビン138に限らない。さらに、測位装置16の測位制御部161、記憶部162、通信部163、及び測位用アンテナ164は、作業車両10において異なる位置に分散して配置されていてもよい。なお、前述したように測位装置16には前記バッテリーが接続されており、測位装置16は、エンジン131の停止中も稼働可能である。また、測位装置16として、例えば携帯電話端末、スマートフォン、又はタブレット端末などが代用されてもよい。
【0028】
測位制御部161は、一又は複数のプロセッサーと、不揮発性メモリ及びRAMなどの記憶メモリとを備えるコンピュータシステムである。記憶部162は、測位制御部161に測位処理を実行させるためのプログラム、及び測位情報、移動情報などのデータを記憶する不揮発性メモリなどである。例えば、前記プログラムは、フラッシュROM、EEPROM、CD、又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部162に記憶される。なお、前記プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して測位装置16にダウンロードされて記憶部162に記憶されてもよい。
【0029】
通信部163は、測位装置16を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して基地局(不図示)などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0030】
測位用アンテナ164は、衛星から発信される電波(GNSS信号)を受信するアンテナである。
【0031】
測位制御部161は、測位用アンテナ164が衛星から受信するGNSS信号に基づいて作業車両10の現在位置を算出する。例えば、作業車両10が圃場Fを自動走行する場合に、測位用アンテナ164が複数の衛星のそれぞれから発信される電波(発信時刻、軌道情報など)を受信すると、測位制御部161は、測位用アンテナ164と各衛星との距離を算出し、算出した距離に基づいて作業車両10の現在位置(緯度及び経度)を算出する。また、測位制御部161は、作業車両10に近い基地局(基準局)に対応する補正情報を利用して作業車両10の現在位置を算出する、リアルタイムキネマティック方式(RTK-GPS測位方式(RTK方式))による測位を行ってもよい。このように、作業車両10は、RTK方式による測位情報を利用して自動走行を行う。なお、作業車両10の現在位置は、測位位置(例えば測位用アンテナ164の位置)と同一位置であってもよいし、測位位置からずれた位置であってもよい。例えば図4Aに示す例では、作業車両10の現在位置P1は、測位用アンテナ164の位置と同一位置となっている。
【0032】
車両制御装置11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、車両制御装置11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより作業車両10を制御する。
【0033】
車両制御装置11は、作業車両10に対する各種のユーザー操作に応じて作業車両10の動作を制御する。また、車両制御装置11は、測位装置16により算出される作業車両10の現在位置と、予め設定される目標経路Rとに基づいて、当該作業車両10の自動走行処理を実行する。
【0034】
図1に示すように、車両制御装置11は、走行処理部111などの各種の処理部を含む。なお、車両制御装置11は、前記CPUで前記自動走行プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記自動走行プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0035】
走行処理部111は、作業車両10の走行を制御する。具体的には、走行処理部111は、圃場Fに設定された目標経路Rに従って作業車両10を自動走行させる。また、走行処理部111は、作業車両10が自動走行を開始することが可能な状態であるか否かを判定する。例えば、走行処理部111は、作業車両10の現在位置P1(図4A参照)が圃場Fに設定された走行開始位置Sに対して所定の条件(走行開始条件)を満たすか否かを判定する。前記走行開始条件には、「走行開始位置Sから作業車両10まで前後の距離が5m以内であること」、「目標経路Rから作業車両10まで左右の距離が各1m以内であること」、「作業車両10の方向が目標経路Rの方向から35度以内であること」、「直進経路の旋回位置までの残り距離が10m以上であること」などが含まれる。走行処理部111は、これら全ての走行開始条件を満たす場合に、作業車両10が自動走行可能な状態にあると判定する。
【0036】
また、走行処理部111は、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置するか否かを判定する。図4Aには、作業車両10の車体の後方部分が圃場Fの領域外に位置している状態を示している。走行処理部111は、例えば図5に示すように、地図データ(地図画像)において作業車両10の周囲に設定される仮想領域C0の位置情報(又は画像情報)と、圃場Fの位置情報(又は画像情報)とに基づいて作業車両10の全体が圃場Fの領域内に収まっているか、又は、作業車両10の一部が圃場Fの領域外にはみ出しているかを判定する。なお、図5には、仮想領域C0(実線枠の領域)のうち圃場Fの領域外に位置する第1仮想領域C1(点線枠の領域)を示している。
【0037】
走行処理部111は、前記走行開始条件を満たすか否かの判定処理の結果と、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置するか否かの判定処理の結果とに基づいて、作業車両10の自動走行を許可するか否かを決定する。
【0038】
例えば、走行処理部111は、前記走行開始条件を満たし、かつ作業車両10の全体が圃場Fの領域内に位置する場合に、作業車両10の自動走行を許可する。この場合、走行処理部111は、操作端末20から前記走行開始指示を取得すると作業車両10に自動走行を開始させる。
【0039】
また例えば、走行処理部111は、前記走行開始条件を満たし、かつ作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する場合には、さらに、作業車両10の走行方向が、作業車両10における前記領域外に位置する部分(図4Aの後方部分)の範囲B1が増加しない方向であるか否かを判定する。図4A及び図4Bに示す例では、作業車両10が走行開始位置S(図4A参照)から移動する方向(走行方向)又は車体方位が、範囲B1が減少する方向となっている。この場合、走行処理部111は、範囲B1が増加しない方向であると判定し、作業車両10の自動走行を許可する。このように、走行処理部111は、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する場合において、作業車両10の走行方向が、範囲B1が増加しない方向である場合に、作業車両10の自動走行を許可する。また、走行処理部111は、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する場合において、作業車両10の移動経路R1の走行方向が、範囲B1が増加しない方向である場合に、作業車両10の自動走行を許可する。また、走行処理部111は、作業車両10の走行方向が、仮想領域C0のうち圃場Fの領域外に位置する第1仮想領域C1(図5参照)の面積が増加しない方向である場合に、作業車両10の自動走行を許可する。例えば、走行処理部111は、第1仮想領域C1の面積が減少する方向である場合に、作業車両10の自動走行を許可する。
【0040】
一方、走行処理部111は、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する場合において、作業車両10の走行方向が、範囲B1が増加する方向である場合には、作業車両10の自動走行を禁止する。また、走行処理部111は、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する場合において、作業車両10の移動経路R1の走行方向が、範囲B1が増加する方向である場合に、作業車両10の自動走行を禁止する。また、走行処理部111は、作業車両10の走行方向が、仮想領域C0のうち圃場Fの領域外に位置する第1仮想領域C1(図5参照)の面積が増加する方向である場合に、作業車両10の自動走行を禁止する。
【0041】
また例えば、走行処理部111は、前記走行開始条件を満たさない場合、又は、作業車両10の全体が圃場Fの領域外に位置する場合には、作業車両10の自動走行を禁止する。走行処理部111は、作業車両10の自動走行を禁止する場合に、所定の情報(エラー情報、ガイダンス情報)をオペレータに報知してもよい。
【0042】
走行処理部111は、作業車両10の自動走行を許可すると、操作端末20から前記走行開始指示の受け付けを許可する。この場合、操作端末20は、操作画面D2(図7参照)に走行開始指示の入力ボタン(スタートボタン)を表示させて、オペレータから走行開始指示を受け付ける。走行処理部111は、操作端末20から前記走行開始指示を取得すると、走行開始位置Sから作業車両10の自動走行を開始させる。
【0043】
作業車両10は、自動走行を開始すると、走行開始位置Sから移動経路R1に従って自動走行し(図4A図4C参照)、作業開始位置A1に到達すると作業機14を下降させて作業を開始し(図4D参照)、作業経路R2に従って自動走行しながら作業を行う。なお、作業車両10は、測位用アンテナ164の位置が作業開始位置A1に一致した場合に作業機14を下降させてもよいし、作業機14の位置(取付位置、中心位置など)が作業開始位置A1に一致した場合に作業機14を下降させてもよい。すなわち、車両制御装置11は、測位用アンテナ164の位置又は作業機14の位置を基準として、作業機14の昇降制御を行う。
【0044】
このように、走行処理部111は、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する場合であっても、作業車両10の走行方向が所定の条件を満たす場合には自動走行を許可し、圃場Fに設定された目標経路R(図3参照)に従って作業車両10を自動走行させる。
【0045】
ここで、作業車両10は、自動走行中に作業車両10の一部が圃場Fの領域外に飛び出した場合に自動走行を停止させる機能を備えてもよい。この機能により、作業車両10が例えば圃場Fの土壌の荒れ具合、測位精度の低下などの影響により目標経路Rから逸脱して圃場Fの領域外に飛び出した場合に、作業車両10を停止させて安全を確保することが可能となる。例えば、走行処理部111は、仮想領域C0(図5参照)と圃場Fとの位置関係に基づいて作業車両10の圃場外飛び出しを検知してもよいし、作業車両10に搭載された検知部(センサー、カメラなど)の検知結果に基づいて作業車両10の圃場外飛び出しを検知してもよい。
【0046】
作業車両10が前記圃場外飛び出しの機能を備える場合、走行処理部111は、作業車両10が走行開始位置Sから自動走行を開始する時点では前記機能を無効に設定してもよい。例えば図4Aに示すように、作業車両10の後方部分が圃場Fの領域外に位置する場合に、走行処理部111は、前記機能を無効に設定する。また、走行処理部111は、作業車両10が自動走行を開始して作業車両10の全体が圃場Fの領域内に収まるまで前記機能を無効に設定する。そして、走行処理部111は、作業車両10の全体が圃場Fの領域内に収まると(図4C参照)、前記機能を有効に設定する。
【0047】
このように、走行処理部111は、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する場合において作業車両10の自動走行を許可する場合に前記機能を無効に設定し、作業車両10が自動走行を開始して作業車両10の全体が圃場Fの領域内に位置した場合に前記機能を有効に設定する。これにより、自動走行の開始直後に前記機能により作業車両10が停止してしまう事態を回避することができる。
【0048】
また、走行処理部111は、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する場合の走行速度(車速)を制御してもよい。具体的には、走行処理部111は、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する場合において作業車両10が自動走行を開始した場合に第1走行速度に設定し、作業車両10の全体が圃場Fの領域内に位置した場合に前記第1走行速度よりも速い第2走行速度に設定する。例えば操作端末20において直進時の走行速度を「8km/h」に設定した場合に、走行処理部111は、作業車両10の一部が圃場Fの領域外にはみ出した状態で自動走行する場合の走行速度を「5km/h」(第1走行速度の一例)に設定し、作業車両10の全体が圃場Fの領域内に収まった時点で走行速度を「8km/h」(第2走行速度の一例)に変更する。このように、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する場合の走行速度を低速に設定することにより走行安定性を向上させることができる。
【0049】
走行処理部111は、上述の処理に加えて、周知の処理を実行する。例えば、走行処理部111は、操作端末20から走行停止指示を取得すると作業車両10の自動走行を停止させる。例えば、操作端末20の操作画面D2(図7参照)においてオペレータが一時停止ボタン(不図示)を押下すると、操作端末20は走行停止指示を作業車両10に出力する。
【0050】
また、走行処理部111は、作業車両10が障害物を検出した場合に作業車両10の自動走行を停止させる。例えば、作業車両10に搭載される障害物検出装置(不図示)が作業車両10の前方3m~8mの範囲で障害物を検出した場合に、走行処理部111は、作業車両10を減速走行させる。また前記障害物検出装置が作業車両10の前方3mまでの範囲で障害物を検出した場合に、走行処理部111は、作業車両10を停止させる。
【0051】
[操作端末20]
図1に示すように、操作端末20は、操作制御部21、記憶部22、操作表示部23、及び通信部24などを備える情報処理装置である。操作端末20は、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末で構成されてもよい。
【0052】
通信部24は、操作端末20を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して一又は複数の作業車両10などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0053】
操作表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス、又はキーボードのような操作部とを備えるユーザーインターフェースである。オペレータは、前記表示部に表示される操作画面において、前記操作部を操作して各種情報(後述の作業車両情報、圃場情報、作業情報など)を登録する操作を行うことが可能である。例えば、オペレータは、前記操作部において、作業対象の圃場Fを登録する操作を行う。
【0054】
また、オペレータは、前記操作部を操作して作業車両10に対する走行開始指示、走行停止指示などを行うことが可能である。さらに、オペレータは、作業車両10から離れた場所において、操作端末20に表示される走行軌跡により、圃場Fを目標経路Rに従って自動走行する作業車両10の走行状態を把握することが可能である。
【0055】
記憶部22は、各種の情報を記憶するHDD又はSSDなどの不揮発性の記憶部である。記憶部22には、操作制御部21に所定の処理を実行させるための制御プログラムが記憶されている。例えば、前記制御プログラムは、フラッシュROM、EEPROM、CD、又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部22に記憶される。なお、前記制御プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して操作端末20にダウンロードされて記憶部22に記憶されてもよい。
【0056】
また、記憶部22には、作業車両10を自動走行させるための専用アプリケーションがインストールされている。操作制御部21は、前記専用アプリケーションを起動させて、作業車両10に関する各種情報の設定処理、作業車両10の目標経路Rの生成処理、作業車両10に対する自動走行指示などを行う。
【0057】
また、記憶部22には、作業車両10に関する情報である作業車両情報、目標経路Rに関する情報である目標経路情報などのデータが記憶される。前記作業車両情報には、作業車両10ごとに、車両番号、型式などの情報が含まれる。前記車両番号は、作業車両10の識別情報である。前記型式は、作業車両10の型式である。
【0058】
また、記憶部22には、1台の作業車両10に関する前記作業車両情報が記憶されてもよいし、複数台の作業車両10に関する前記作業車両情報が記憶されてもよい。例えば、特定のオペレータが複数台の作業車両10を所有する場合、各作業車両10に関する前記作業車両情報が記憶部22に記憶される。
【0059】
前記目標経路情報には、目標経路Rごとに、経路名、圃場名、住所、圃場面積、作業時間などの情報が含まれる。前記経路名は、操作端末20において生成された目標経路Rの経路名である。前記圃場名は、目標経路Rが設定された作業対象の圃場Fの名称である。前記住所は、圃場Fの住所であり、前記圃場面積は、圃場Fの面積である。前記作業時間は、作業車両10により圃場Fの作業に要する時間である。
【0060】
また、記憶部22には、一つの目標経路Rに関する前記目標経路情報が記憶されてもよいし、複数の目標経路Rに関する前記目標経路情報が記憶されてもよい。例えば、特定のオペレータが、自身が所有する一又は複数の圃場Fに対して複数の目標経路Rを生成した場合、各目標経路Rに関する前記目標経路情報が記憶部22に記憶される。なお、一つの圃場Fに対して、一つの目標経路Rが設定されてもよいし、複数の目標経路Rが設定されてもよい。
【0061】
なお、他の実施形態として、前記作業車両情報、前記目標経路情報などの情報の一部又は全部が、操作端末20からアクセス可能なサーバーに記憶されてもよい。オペレータは、前記サーバー(例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバーなど)において前記作業車両情報及び前記目標経路情報を登録する操作を行ってもよい。
【0062】
操作制御部21は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリとして使用される。そして、操作制御部21は、前記ROM又は記憶部22に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより操作端末20を制御する。
【0063】
図1に示すように、操作制御部21は、設定処理部211、出力処理部212などの各種の処理部を含む。なお、操作制御部21は、前記CPUで前記制御プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0064】
設定処理部211は、作業車両10に関する情報(以下、作業車両情報という。)、圃場Fに関する情報(以下、圃場情報という。)、作業を具体的にどのように行うかに関する情報(以下、作業情報という。)を設定する。設定処理部211は、例えば図6に示す設定画面D1においてオペレータの設定操作を受け付けて各設定情報を登録する。
【0065】
具体的には、設定処理部211は、作業車両10の機種、作業車両10において測位用アンテナ164が取り付けられている位置、作業機14の種類、作業機14のサイズ及び形状、作業機14の作業車両10に対する位置、作業車両10の作業中の走行速度及びエンジン回転数、作業車両10の旋回中の走行速度及びエンジン回転数等の情報について、オペレータが操作端末20において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。
【0066】
また、設定処理部211は、圃場Fの位置及び形状、走行を開始する走行開始位置S及び走行を終了する走行終了位置G、作業方向等の情報について、操作端末20において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。
【0067】
圃場Fの位置及び形状の情報は、例えばオペレータが作業車両10に搭乗して圃場Fの外周に沿って一回り周回するように運転し、そのときの測位用アンテナ164の位置情報の推移を記録することで、自動的に取得することができる。また、圃場Fの位置及び形状は、操作端末20に地図を表示させた状態でオペレータが操作端末20を操作して当該地図上の複数の点を指定することで得られた多角形に基づいて取得することもできる。取得された圃場Fの位置及び形状により特定される領域は、作業車両10を走行させることが可能な領域(走行領域)である。
【0068】
設定処理部211は、作業情報として、作業車両10(無人トラクタ)と有人の作業車両10の協調作業の有無、作業車両10が枕地において旋回する場合にスキップする作業経路の数であるスキップ数、枕地の幅、及び非耕作地の幅等を設定可能に構成されている。
【0069】
例えば、設定処理部211は、登録された圃場Fにおいて実際に作業を行うための作業領域を設定する。例えば、オペレータが設定画面D1(図6参照)の「作業領域登録」を選択し、作業領域を登録する圃場Fを選択すると、設定処理部211は、走行開始位置S及び走行終了位置Gを登録する登録画面(地図画面)を表示させる。オペレータは前記登録画面において、圃場F内の任意の位置に走行開始位置S及び走行終了位置Gを登録する。例えば、オペレータは圃場Fの出入口又は畦付近に走行開始位置S及び走行終了位置Gを登録する(図3参照)。本実施形態では、オペレータは、例えば作業車両10の一部が圃場Fの領域外にはみ出す位置(圃場Fの境界付近など)に走行開始位置Sを登録することができる。
【0070】
また、設定処理部211は、前記各設定情報に基づいて、圃場Fにおいて作業車両10を自動走行させる目標経路Rを生成する。例えば、オペレータが設定画面D1(図6参照)の「経路作成」を選択すると、設定処理部211は、経路を生成するための登録画面(不図示)を表示させる。前記登録画面において、オペレータは、圃場F、作業機14、旋回方法、枕地、車速、エンジン回転などの各情報を登録した後、経路生成指示を行う。設定処理部211は、前記経路生成指示を取得すると、走行開始位置S、走行終了位置G、及び前記各情報に基づいて目標経路Rを生成する。
【0071】
例えば図3に示すように、設定処理部211は、走行開始位置S、移動経路R1、作業開始位置A1、作業経路R2、作業終了位置A2、移動経路R3、及び走行終了位置Gを含む目標経路Rを生成する。設定処理部211は、生成した目標経路Rを圃場Fに関連付けて登録する。また、本実施形態では、設定処理部211は、例えば走行開始位置Sに位置する作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する場合において、作業車両10の走行方向が、前記領域外に位置する部分の範囲B1(図4A等参照)が増加しない方向となる目標経路Rを生成する。また、設定処理部211は、走行開始位置Sから作業開始位置A1までの移動経路R1であって、作業車両10における前記領域外に位置する部分の範囲B1が増加しない移動経路R1を生成する。例えば、設定処理部211は、走行開始位置Sに位置する作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する場合において、作業車両10の走行方向が、前記領域外に位置する部分の範囲B1が減少する方向となる目標経路R(図3参照)を生成する。また、設定処理部211は、作業車両10における前記領域外に位置する部分の範囲B1が減少する移動経路R1を生成する。
【0072】
出力処理部212は、目標経路Rの経路データを作業車両10に出力する。例えば、オペレータが作業対象の圃場F及び作業経路(目標経路R)を選択して作業開始操作を行うと、圃場Fに対応する目標経路Rの経路データを作業車両10に出力する。
【0073】
作業車両10は、操作端末20において生成された目標経路Rの経路データを受信すると記憶部12に記憶する。
【0074】
また、作業車両10は、上述のように、前記走行開始条件を満たし、かつ作業車両10の全体が圃場Fの領域内に位置する場合に、オペレータによる走行開始指示に応じて自動走行を開始する。また、作業車両10は、前記走行開始条件を満たし、かつ作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する場合には、作業車両10の走行方向が、範囲B1(図4A等参照)が増加しない方向である場合に、オペレータによる走行開始指示に応じて自動走行を開始する。
【0075】
オペレータは、作業車両10が自動走行している間、操作端末20において、圃場F内における走行状態を把握することが可能である。
【0076】
なお、操作端末20は、サーバー(不図示)が提供する農業支援サービスのウェブサイト(農業支援サイト)に通信網N1を介してアクセス可能であってもよい。この場合、操作端末20は、操作制御部21によってブラウザプログラムが実行されることにより、前記サーバーの操作用端末として機能することが可能である。そして、前記サーバーは、上述の各処理部を備え、各処理を実行する。
【0077】
[自動走行処理]
以下、図8を参照しつつ、自動走行システム1が実行する前記自動走行処理の一例について説明する。
【0078】
なお、本発明は、前記自動走行処理に含まれる一又は複数のステップを実行する自動走行方法の発明として捉えることができる。また、ここで説明する前記自動走行処理に含まれる一又は複数のステップは適宜省略されてもよい。なお、前記自動走行処理における各ステップは同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。さらに、ここでは車両制御装置11が前記自動走行処理における各ステップを実行する場合を例に挙げて説明するが、一又は複数のプロセッサーが当該自動走行処理における各ステップを分散して実行する自動走行方法も他の実施形態として考えられる。
【0079】
先ず、ステップS1において、作業車両10の車両制御装置11は、オペレータの運転操作に応じて作業車両10の手動走行を開始させる。例えば、オペレータは、農道から圃場F内に作業車両10を移動させる(図4A参照)。
【0080】
次に、ステップS2において、車両制御装置11は、作業車両10が走行開始条件を満たすか否かを判定する。例えば、車両制御装置11は、オペレータが作業車両10を手動走行させて停止させた位置(図4A参照)において、「走行開始位置Sから作業車両10まで前後の距離が5m以内であること」、「目標経路Rから作業車両10まで左右の距離が各1m以内であること」、「作業車両10の方向が目標経路Rの方向から35度以内であること」、「直進経路の旋回位置までの残り距離が10m以上であること」の各走行開始条件を満たすか否かを判定する。車両制御装置11は、作業車両10が前記各走行開始条件を満たすと判定すると(S2:Yes)、処理をステップS3に移行させる。一方、車両制御装置11は、作業車両10がいずれかの走行開始条件を満たさないと判定すると(S2:No)、処理をステップS21に移行させる。ステップS21では、車両制御装置11は、前記走行開始条件を満たさないことを表す情報(エラー情報)をオペレータに報知する。オペレータは、前記エラー情報に基づいて、作業車両10が前記走行開始条件を満たす位置まで手動走行を継続する(S2:No、S21)。
【0081】
ステップS3において、車両制御装置11は、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置するか否かを判定する。例えば、車両制御装置11は、圃場Fの地図画像において、作業車両10の仮想領域C0(仮想画像)が圃場F内に収まっているか否かを判定する(図5参照)。車両制御装置11は、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置すると判定した場合(S3:Yes)、処理をステップS4に移行させる。一方、車両制御装置11は、作業車両10の全体が圃場Fの領域内に位置すると判定した場合(S3:No)、処理をステップS5に移行させる。
【0082】
ステップS4において、車両制御装置11は、作業車両10の走行方向が、作業車両10における前記領域外に位置する部分(図4Aの後方部分)の範囲B1が減少する方向であるか否かを判定する。例えば、図4A及び図4Bに示す例では、車両制御装置11は、作業車両10が走行開始位置S(図4A参照)から移動する方向(走行方向)が、範囲B1が減少する方向であると判定する。車両制御装置11は、作業車両10の走行方向が、範囲B1が減少する方向であると判定すると(S4:Yes)、処理をステップS5に移行させる。一方、車両制御装置11は、作業車両10の走行方向が、範囲B1が増加する方向であると判定すると(S4:No)、処理をステップS41に移行させる。
【0083】
ステップS41では、車両制御装置11は、作業車両10の自動走行を禁止する。車両制御装置11は、ステップS41の後、処理をステップS2に移行させる。ステップS2に戻ると、オペレータは、作業車両10の走行方向が、範囲B1が減少する方向になる位置まで手動走行を継続する(S4:No、S41)。なお、車両制御装置11は、作業車両10の自動走行を禁止する場合にエラー情報をオペレータに報知してもよい。
【0084】
ステップS5において、車両制御装置11は、作業車両10の自動走行を許可する。具体的には、車両制御装置11は、操作端末20から前記走行開始指示の受け付けを許可する。操作端末20は、操作画面D2(図7参照)に走行開始指示の入力ボタン(スタートボタン)を表示させて、オペレータから前記走行開始指示を受け付ける。
【0085】
なお、車両制御装置11は、前記走行開始条件を満たさない場合(S2:No)、及び、作業車両10の自動走行を禁止する場合(S41)に、操作画面D2に、スタートボタンを表示させない構成としてもよいし、エラー情報を表示させる構成としてもよい。
【0086】
ステップS6において、車両制御装置11は、操作端末20から前記走行開始指示を取得したか否かを判定する。車両制御装置11は、前記走行開始指示を取得すると(S6:Yes)、処理をステップS7に移行させる。車両制御装置11は、前記走行開始指示を取得するまで待機する(S6:No)。
【0087】
ステップS7において、車両制御装置11は、作業車両10の自動走行を開始させる。図4Aに示す例では、車両制御装置11は、走行開始位置Sから移動経路R1に従って作業車両10の自動走行を開始させる。例えば作業車両10は、作業機14を上昇させた状態で移動経路R1を自動走行する。
【0088】
次にステップS8において、車両制御装置11は、作業車両10が作業開始位置A1に到達したか否かを判定する。車両制御装置11は、作業車両10が作業開始位置A1に到達すると(図4D参照)(S8:Yes)、処理をステップS9に移行させる。車両制御装置11は、作業車両10が作業開始位置A1に到達するまで自動走行を継続する(S8:No)。
【0089】
ステップS9において、車両制御装置11は、作業車両10に作業を開始させる。例えば、車両制御装置11は、作業機14を下降させて作業を開始させる。作業車両10は、作業経路R2(図3参照)に従って自動走行しながら作業を行う。
【0090】
次にステップS10において、車両制御装置11は、作業車両10が走行終了位置Gに到達したか否かを判定する。例えば、車両制御装置11は、作業車両10が作業終了位置A2に到達すると作業機14を上昇させて作業を終了させ、移動経路R3に従って走行終了位置Gまで自動走行させる(図3参照)。車両制御装置11は、作業車両10が走行終了位置Gに到達すると(S10:Yes)、処理を終了する。車両制御装置11は、作業車両10が走行終了位置Gに到達するまで自動走行を継続する(S10:No)。車両制御装置11は、以上のようにして前記自動走行処理を実行する。
【0091】
[他の実施形態]
本発明の他の実施形態として、車両制御装置11は、図9Aに示すように、作業車両10の側方の一部が圃場Fの領域外に位置する場合において、作業車両10が走行開始位置Sから移動する方向(走行方向)又は車体方位が、範囲B1が減少する方向である場合に、作業車両10の自動走行を許可してもよい。図9Aに示す例では、走行開始位置Sと作業開始位置A1とを接続する移動経路R1が、作業経路R2に対して斜め方向に延伸する経路となっている。この場合、作業車両10は、走行開始位置Sにおいて、圃場Fの境界に対して平行又は斜めに跨いだ状態となる。このように、作業車両10の側方が圃場Fの領域外に位置する場合においても、車両制御装置11は、前記走行方向又は前記車体方位が、範囲B1が減少する方向である場合には、走行開始位置Sから自動走行を許可してもよい。なお、図9Aに示す移動経路R1によれば、作業車両10は走行開始位置Sから最短経路で作業開始位置A1に到着することができる。
【0092】
また、他の実施形態として、車両制御装置11は、図9Bに示すように、作業車両10の側方の一部が圃場Fの領域外に位置する場合において、走行方向が、作業車両10における前記領域外に位置する部分の範囲B1が変化しない方向である場合に、作業車両10の自動走行を許可してもよい。図9Bに示す例では、走行開始位置Sと作業開始位置A1とを接続する移動経路R1の一部が、圃場Fの境界に平行に延伸する経路となっている。この場合、作業車両10は、自動走行を開始して移動経路R1を走行する際に範囲B1が変化しない状態で走行することになる。この場合においても、車両制御装置11は、走行開始位置Sから自動走行を許可してもよい。図9Bに示す移動経路R1によれば、作業車両10は圃場F内の作業領域を踏み荒らさずに作業開始位置A1まで移動することができる。特に、畑作など圃場F内に畝が成型されている場合には有効となる。
【0093】
なお、図9Bに示す移動経路R1では、作業車両10が旋回する場合に、範囲B1のうち作業機14のはみ出し部分の面積が増加することが考えられる。すなわち、作業車両10が移動経路R1において旋回走行する際に範囲B1が増加する場合がある。この場合には、車両制御装置11は、以下の第1構成例、第2構成例、及び第3構成例の少なくともいずれかを追加してもよい。
【0094】
第1構成例として、車両制御装置11は、範囲B1から作業機14の範囲(面積)を除外する。この場合、車両制御装置11は、作業車両10の走行方向が、作業機14を除外した範囲B1が変化しない方向又は減少する方向である場合に、作業車両10の自動走行を許可する。
【0095】
第2構成例として、車両制御装置11は、範囲B1に所定のマージンを設ける。例えば、車両制御装置11は、範囲B1よりも面積が大きい判定範囲に設定する。この場合、車両制御装置11は、範囲B1が前記判定範囲を超えない場合に、作業車両10の自動走行を許可する。すなわち、車両制御装置11は、作業車両10の走行方向が、前記判定範囲が変化しない方向又は減少する方向である場合に、作業車両10の自動走行を許可する。前記マージンは、操作端末20の設定画面においてオペレータが可変可能であってもよい。また、前記マージンは、走行開始位置S及び移動経路R1に応じて自動的に設定されてもよい。
【0096】
第3構成例として、操作制御部21は、走行開始位置Sを、作業車両10が移動経路R1において旋回走行する際に範囲B1が増加しない位置に設定する。これにより、作業車両10が移動経路R1を走行(旋回)した場合に、範囲B1が増加することを防ぐことができる。
【0097】
このように、車両制御装置11は、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する場合において、作業車両10の走行方向が、作業車両10における前記領域外に位置する部分の範囲B1が減少する方向である場合又は変化しない方向である場合に、作業車両10の自動走行を許可し、範囲B1が増加する方向である場合に、作業車両10の自動走行を禁止する構成としてもよい。なお、操作制御部21は、図9Aに示すように、圃場Fにおいて、走行開始位置Sから、作業車両10の前記領域外に位置する部分の範囲B1が減少する移動経路R1を生成してもよい。
【0098】
上述の実施形態では、作業車両10が走行開始位置Sから自動走行を開始する際の自動走行の許可又は禁止を判定する構成であるが、他の実施形態として、車両制御装置11は、作業車両10が作業経路R2を作業中に自動走行の許可又は禁止を判定してもよい。例えば、図10に示すように、作業車両10は作業経路R2を作業中に退避エリアf1に移動する場合がある。退避エリアf1は、補給物(燃料、苗、肥料、散布物など)を作業車両10に補給したり、作業車両10が収穫した収穫物をコンテナに収容したりするために作業中の作業車両10が一時的に退避する領域である。
【0099】
車両制御装置11は、例えば作業中断位置A3において補給指示を取得すると、作業を一時停止させて移動経路R4に従って退避エリアf1まで自動走行する。作業車両10は、車体の一部が圃場Fの領域外の退避エリアf1にはみ出した状態で停止し、オペレータにより補給処理が行われる。補給処理が終了すると、車両制御装置11は、作業中断位置A3まで自動走行を許可するか否かを判定する。
【0100】
ここでは、車両制御装置11は、作業車両10の一部(前方部分)が圃場Fの領域外に位置する場合において、作業車両10の走行方向(後進方向)が、作業車両10における前記領域外に位置する部分の範囲B1が増加しない方向(例えば減少する方向)である場合に、作業車両10の自動走行を許可する。図10に示す例では、車両制御装置11は、退避エリアf1から作業中断位置A3までの自動走行を許可する。これにより、作業車両10は、オペレータによる手動走行に依らず、作業中断位置A3まで自動走行により復帰することができる。このため、オペレータは、圃場F内に踏み入る必要がなくなる。
【0101】
なお、この場合においても、車両制御装置11は、作業車両10の全体が圃場Fの領域内に収まるまで前記圃場外飛び出し機能を無効に設定し、作業車両10の全体が圃場Fの領域内に収まった場合に前記圃場外飛び出し機能を有効に設定する。また、車両制御装置11は、作業車両10の全体が圃場Fの領域内に収まるまで走行速度を低速に設定し、作業車両10の全体が圃場Fの領域内に収まった時点で走行速度を設定速度に上昇させる。
【0102】
本発明の他の実施形態として、操作端末20の操作制御部21は、操作端末20において、移動経路R1と作業経路R2とを互いに異なる態様(経路の線種、経路の色など)で表示させてもよい。例えば、図11に示す操作画面D2において、操作制御部21は、移動経路R1を第1態様(点線)で表示させ、作業経路R2を第2態様(実線)で表示させる。操作制御部21は、移動経路R1を赤色で表示させ、作業経路R2を青色で表示させてもよい。
【0103】
また、本発明の他の実施形態として、操作制御部21は、図11に示すように、操作画面D2において、仮想領域C0(図5参照)に対応する枠画像と、第1仮想領域C1(図5参照)に対応する枠画像とを表示させてもよい。また、操作制御部21は、各画像の表示態様を互いに異なる態様で表示させてもよい。また、操作制御部21は、作業車両10の車体の全体が圃場Fの領域内に収まった場合に前記枠画像を削除してもよい。
【0104】
また、本発明の他の実施形態として、作業車両10が、車体の一部が圃場Fの領域外に位置する状態で自動走行している間、車両制御装置11及び操作制御部21のそれぞれが、所定の音(ブザー音、音声ガイダンスなど)を作業車両10及び操作端末20から出力させてもよい。これにより、オペレータ及び周囲に注意喚起することができる。
【0105】
また、本発明の他の実施形態として、操作制御部21は、図12の経路生成画面D3に示すように、目標経路Rを生成する際に、作業車両10の一部が圃場Fの領域外にはみ出した状態で自動走行を開始することを許可する第1生成モードと、作業車両10の一部が圃場Fの領域外にはみ出した状態で自動走行を開始することを禁止する第2生成モードとを選択可能に構成してもよい。オペレータが前記第1生成モード(図12の「許可する」)を選択した場合、操作制御部21は、オペレータから、圃場F内の任意の位置に走行開始位置Sを設定する操作を受け付ける。すなわち、オペレータは、圃場F内の所望の位置、例えば、出入口又は畦付近に走行開始位置Sを設定することが可能になる。この場合、操作制御部21は、出入口又は畦付近に設定された走行開始位置Sに基づいて目標経路Rを生成するため、例えば作業車両10の一部が圃場Fの領域外にはみ出した状態の目標経路R(図3参照)を生成する。
【0106】
これに対して、オペレータが前記第2生成モード(図12の「許可しない」)を選択した場合、操作制御部21は、オペレータから、圃場F内の所定範囲内の位置に走行開始位置Sを設定する操作を受け付ける。すなわち、オペレータは、圃場F内の所定範囲内において走行開始位置Sを設定することが可能になり、作業車両10の一部が圃場Fの領域外にはみ出す位置に走行開始位置Sを設定することはできない。この場合、操作制御部21は、所定範囲内に設定された走行開始位置Sに基づいて目標経路Rを生成するため、例えば作業車両10の全体が圃場Fの領域内に収まる状態の目標経路Rを生成する。
【0107】
また、本発明の他の実施形態として、車両制御装置11は、走行開始位置Sに依らず、作業車両10の任意の位置に基づいて自動走行を許可するか否かを決定してもよい。例えば、作業車両10が、車体の一部が圃場Fの領域外にはみ出した状態の任意の位置に停車している場合において、当該位置(現在位置)から移動する移動方向(走行方向)が、作業車両10における前記領域外に位置する部分の範囲B1が増加しない方向である場合に、作業車両10の自動走行を許可する構成としてもよい。この構成によれば、オペレータが圃場内の任意の位置に作業車両10を車体の一部が圃場Fの領域外にはみ出した状態で停車させた場合に、当該位置から自動走行を開始させることが可能になる。例えば、オペレータが、作業車両10を農道から圃場Fに移動(手動走行)して作業車両10の一部が圃場Fの領域内に進入した時点で停車させた場合に、当該位置から自動走行を開始させることが可能になる。なお、車両制御装置11は、作業車両10が圃場Fの領域内に進入し始めてから位置情報を取得可能(測位可能状態)になった時点で自動走行を許可してもよい。
【0108】
また、本発明の他の実施形態として、車両制御装置11は、作業車両10が車体の一部が圃場Fの領域外に位置する状態で所定時間以上自動走行を継続した場合には自動走行を停止させる構成としてもよい。また、操作制御部21は、作業車両10が車体の一部が圃場Fの領域外に位置する状態で所定時間以上自動走行が継続しない目標経路Rを生成してもよい。これにより、作業車両10の一部が圃場Fの領域外にはみ出した状態で長時間自動走行することを防ぐことができるため安全性を向上させることができる。
【0109】
以上説明したように、本実施形態に係る自動走行システム1は、圃場Fに設定された目標経路Rに従って作業車両10を自動走行させることと、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する場合において、作業車両10の走行方向が、作業車両10における前記領域外に位置する部分の範囲B1が増加しない方向である場合に、作業車両10の自動走行を許可することと、を実行する。
【0110】
上記構成によれば、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する場合であっても自動走行を開始させることが可能となる。また、作業車両10の一部が圃場Fの領域外に位置する場合に自動走行を開始させる条件として、作業車両10の走行方向が、作業車両10における前記領域外に位置する部分の範囲B1が増加しない方向であることとすることにより安全性を確保することができる。
【0111】
また、上記構成によれば、例えば、オペレータは、出入口又は畦付近に設定した走行開始位置Sまで作業車両10を移動させることにより自動走行を開始することができる。このため、出入口又は畦から離れた位置に走行開始位置Sが設定される場合と比較して、作業効率を向上させることができる。また、オペレータは、出入口又は畦付近で作業車両10を降車することができるため、圃場F内に踏み入ることなく自動走行を開始することができる。
【0112】
本実施形態に係る車両制御装置11の走行処理部111の機能は、作業車両10の外に配置されてもよいし、操作端末20の操作制御部21に含まれてもよい。すなわち、上述の実施形態では、車両制御装置11が本発明に係る自動走行システムに相当するが、本発明に係る自動走行システムは、操作端末20単体で構成されてもよい。また、本発明に係る自動走行システムは、作業車両10及び操作端末20を含んで構成されてもよい。また、走行処理部111の機能が、作業車両10と通信可能なサーバーに含まれてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1 :自動走行システム
10 :作業車両
11 :車両制御装置
14 :作業機
16 :測位装置
20 :操作端末
21 :操作制御部
111 :走行処理部
211 :設定処理部
212 :出力処理部
F :圃場
B1 :圃場の領域外に位置する部分の範囲
S :走行開始位置
G :走行終了位置
A1 :作業開始位置
A2 :作業終了位置
A3 :作業中断位置
R :目標経路
R1 :移動経路
R2 :作業経路
R3 :移動経路
R4 :移動経路
C0 :仮想領域
C1 :第1仮想領域
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12